JP2010087434A - 導電性ペースト、並びにこの導電性ペーストを用いた乾燥膜及び積層セラミックコンデンサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
本発明に係る積層セラミック電子部品用導電性ペーストは、少なくともセラミック粉末と導電性金属粉末からなる積層セラミック電子部品用導電性ペーストであって、
・前記セラミック粉末は、1)平均粒径が0.01〜0.1μm、2)結晶格子のc軸長とa軸長の格子定数比(c/a)が1.0020以上、3)バリウムとチタンのモル比(Ba/Ti)が0.995以上1.000以下、4)粒径の変動係数CVが35%以下、5)長軸と短軸の比(アスペクト比)が1.15以下のチタン酸バリウム粉末であり、
・前記導電性金属粉末は、1)前記セラミック粉末の平均粒径より大きく、且つ平均粒径0.4μm以下、2)炭素含有量0.06wt%以下のニッケル粉末である
ことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
先ず誘電体層を形成するために、チタン酸バリウム(BaTiO3)とポリビニルブチラール等の有機バインダーからなる誘電体グリーンシート上に、導電性粉末を主成分とし、樹脂バインダー及び溶剤を含むビヒクルに分散させた導電性ペーストを、所定のパターンで印刷、乾燥させて溶剤を飛ばし、内部電極となる乾燥膜を形成する。
この乾燥膜が形成された誘電体グリーンシートを、多層に積み重ねた状態で加熱圧着して一体化し、次いで所定形状に切断した後、500℃以下の酸化性雰囲気又は不活性雰囲気中にて脱バインダー処理を行う。その後、内部電極が酸化しないように還元雰囲気中にて1300℃程度での加熱焼成を行い、この焼成チップに外部電極を設け、外部電極上にニッケルメッキなどを施して完成させる。
この誘電損失を充分には小さくできないという問題は、導電性ペーストから形成される乾燥膜における膜の平滑性や粒子の充填性にも誘電損失が影響されるからである。膜の平滑性や粒子の充填性は、導電性金属粉末やセラミック粉末の粒度分布のばらつきにより変化するが、特許文献2の発明では、同じ粒径を持つ共材でも誘電損失のばらつきが大きく、粒度分布が0.15〜0.4μmの範囲では、導電性ペーストから形成される乾燥膜における膜の平滑性や粒子の充填性は向上できず、電極膜の薄層化に対応できないことに起因している。
・前記セラミック粉末は、1)平均粒径が0.01〜0.1μm、2)結晶格子のc軸長とa軸長の格子定数比(c/a)が1.0020以上、3)バリウムとチタンのモル比(Ba/Ti)が0.995以上1.000以下、4)粒径の変動係数CVが35%以下、5)長軸と短軸の比(アスペクト比)が1.15以下のチタン酸バリウム粉末であり、
・前記導電性金属粉末は、1)前記セラミック粉末の平均粒径より大きく、且つ平均粒径0.4μm以下、2)炭素含有量0.06wt%以下のニッケル粉末である
ことを特徴とする積層セラミック電子部品用導電性ペーストである。
導電性粉末であるニッケル粉末は、その製造方法により炭素を含有することがあり、この炭素はニッケル粉末同士の焼結性を劣化させることから、その含有量を0.06wt%以下に抑えることが望ましい。
含有量が0.06wt%を超えると、その理由は明らかではないが導電性ペーストを乾燥させた乾燥膜の乾燥膜密度に影響を及ぼし、結果として所望の膜厚と有効電極面積を有する電極膜が得られないためである。
尚、ニッケル粉末に含まれる炭素量の分析は高周波燃焼赤外吸収波法で測定している。
尚、ニッケル粉末の粒度分布は、公知の粒度解析装置を用いて測定することができる。
例えば、ニッケル塩水溶液を還元剤により還元し、ニッケル粉末を析出させる液相還元法、塩化物蒸気を水素ガス中で気相から直接析出させる気相還元法、ニッケル水溶液を高温中、例えば、600℃以上で噴霧し、熱分解させる噴霧熱分解法など適宜選択して、炭素含有量が0.06wt%以下、平均粒径がセラミック粉末の平均粒径より大きく、且つ0.4μm以下のニッケル粉末を製造する。
本発明の導電性ペーストに添加されるセラミック粉末は、通常ペロブスカイト型酸化物であるBaTiO3や、これに種々の添加物を添加したものから選択することができ、又、積層セラミックコンデンサの誘電体層を形成するグリーンシートの主成分として使用されるセラミック粉末と同組成、あるいは類似の組成も好ましい。
尚、本発明において、セラミック粉末の粒径は、特に断らない限り比表面積をBET法に基づいて算出した粒径で表す。セラミック粉末にチタン酸バリウム粉末を用いた場合の算出式を数2に示す。
正方晶系のチタン酸バリウム粉末では、そのc/a比が、1.0020よりも小さくなると強誘電性が得られない。又、チタン酸バリウム粉末は、温度変化に伴う相転移により、そのc/aが1.0000〜1.0100の範囲で変動し、c/aが大きいほど焼結温度が高くなるが、チタン酸バリウム粉末のc/aが1.0020を下回ると、焼成時に内部電極層中の共材が誘電体層成形体中に放出され、添加した微粒の共材が誘電体層の焼結に関与し、誘電損失を大きくしてしまうが、そのc/aが1.0020より大きければ、セラミック粉末層及び内部電極層中の共材の粒成長を抑制して積層セラミックコンデンサの誘電損失を小さくし、かつ絶縁抵抗を高めることができる。
一方、モル比(Ba/Ti)が前記範囲外の場合、粒度分布のばらつきが大きくなり、モル比(Ba/Ti)が1.000を超えると、チタン酸バリウム粉末の結晶格子内に存在するヒドロキシル基が増加するため、強熱減量が大きくなるのでc/a比が低くなり、絶縁抵抗や誘電損失などの誘電特性を悪化させ、更には静電容量の低下やばらつきの原因となる。
セラミック粉末の変動係数CV値が35%を超えると、粒度分布の広がりが大きくなりシャープな粒度分布とは言えず、そのため、平均粒径が小さい場合には、略球状ニッケル粉末粒子間の空隙に一様には入り込みにくくなり、乾燥膜密度の低下を起こし、平均粒径がそれより大きいものでは、略球状ニッケル粉末粒子の接触点間に一様には入り込みにくくなり、導電性ペーストの焼結開始温度をセラミック層の焼結開始温度まで遅延する効果を弱めるという問題を生じる。
アスペクト比が1.15より大きいと、平均粒径の小さなものでは、略球状ニッケル粉末粒子間の空隙に入り込みにくくなるため、導電性ペーストの乾燥膜の乾燥膜密度を上げる事が難しく、またセラミック粉末の添加量を必要最低限に抑えることができず、結果として、焼成時におけるニッケル粉末の焼結を遅延させることができなくなり、内部電極層の薄層化が困難となる。
一方、セラミック粉末の含有率が25重量部を超えると、例えば、内部電極層から誘電体層中のセラミック粒子との焼結により誘電体層の厚みが膨張し、組成のずれが生じるため、誘電率の低下等の電気特性に悪影響を及ぼすものである。
本発明の導電性ペーストで使用される有機溶剤は、樹脂成分を溶解するとともに、導電性金属粉末などの無機成分をペースト中で安定に分散させる機能をもつ成分であるが、電子部品のグリーンシートや回路基板などへ塗布(印刷)したとき、これら粉末を均一に展延させ、焼成時までには大気中に逸散する働きを有している。
導電性ペーストのバインダー樹脂としては、エチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル、ポリビニルブチラールなどの有機樹脂の中から1種以上を選択して使用する。
その分子量は、用いる有機溶剤に溶解するものであることが前提であるが、好ましくは20000〜200000の分子量の樹脂を用いる。なお、ペースト中の樹脂量は、1.0〜5.0wt%が望ましく、特に2.0〜4.0wt%がより好ましい。1.0wt%未満ではスクリーン印刷に適した粘度を得ることが困難であり、5.0wt%を超えると脱バインダー時に残留炭素量が増え、積層チップのデラミネ−ションを引き起こすので好ましくない。
通常、導電性ペーストをスクリーン印刷によりグリーンシート等に塗布し、加熱乾燥して有機溶剤及びバインダーを除去し、所定のパターンの内部電極用乾燥膜を形成する。乾燥膜厚みは、スクリーンパターンの厚みを制御することで行なわれる。更に、電極膜中の過剰に残る炭素、即ち有機溶剤やバインダーに由来する残留炭素は、焼成後の電気特性、例えば静電容量、誘電損失、及び絶縁破壊電圧などを悪化させてしまうことから乾燥膜中の残留炭素量も制御される。
尚、乾燥膜密度は高いことが望ましいが、金属ニッケルの真密度を超えることはできない。乾燥膜密度が、5.3g/cm3より低いと、焼成時に緻密な電極膜が得られず、容量欠損などの問題が生じる。
測定数は30箇所で行ない、得られた膜密度の平均値をその導電性ペーストの膜密度とした。
ここで、乾燥膜密度とは、導電性ペーストを乾燥させた後の密度のことである。
具体的には、特定波長領域に限定された光源から光を、試料およびリファレンス鏡に照射し、試料およびリファレンス鏡に照射した光の干渉縞により表面状態を観察する。より詳細には、試料を1/4波長ごとに光が照射される方向に移動させて光の干渉縞から表面状態を観察する。たとえば、光干渉式表面形状測定装置(WYCO製NT−1100)を用いて、乾燥膜の最大突起高さを測定する。
本発明の最大突起高さとは、任意の測定面積における輪郭曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値の和、すなわちRmax値ではなく、任意の測定面積における輪郭曲線の山高さの最大値を示す値としている。
以下、本発明を実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。なお、本発明の範囲は実施例によって何ら限定されるものではない。
導電性ペーストの成分組成は、ニッケル粉末(平均粒径0.4μmと0.2μm)を45wt%、表1に示すセラミック粉末(平均粒径0.12μm、0.07μm、0.05μm、0.04μm、0.02μm)を9.0wt%或いは4.5wt%、ビヒクルが2.8wt%、有機溶剤が43.2wt%或いは47.7wt%とした。
ビヒクルは、樹脂成分としてエチルセルロース(分子量70000):13wt%、有機溶剤としてターピネオール:87wt%からなり60℃に加熱して作製した。
ニッケル粉末の炭素含有率は、いずれも0.04%であった。
(1)で製造した導電性ペーストを用いて積層セラミックコンデンサを作製し、静電容量及び誘電損失の電気特性を評価して、表2に記した。
厚さ3μmの生の誘電体グリーンシート上に導電性ペーストを印刷、乾燥後に、20層積み重ねて圧着、切断し、3.2×1.6mmサイズのチップを作製した。このチップを脱バインダー後に、弱還元雰囲気下にて1260℃で焼成し、焼成後チップに端子電極を塗布した積層セラミックコンデンサを50個作製した。
作製した積層セラミックコンデンサを用いて静電容量C及び誘電損失tanδの電気特性評価を行った。その測定結果を表2に合わせて示した。
尚、チップ焼成後の内部電極厚は1.3μmで、誘電体層厚は2μmであった。
表1のセラミック粉末A、B、C、Dは本願発明の範囲を全て満たすものであるが、セラミック粉末E、F、G、H、Iは何某かの特性が本発明の範囲外のものである。
Claims (4)
- 少なくともセラミック粉末と導電性金属粉末からなる積層セラミック電子部品用導電性ペーストであって、
・前記セラミック粉末は、1)平均粒径が0.01〜0.1μm、2)結晶格子のc軸長とa軸長の格子定数比(c/a)が1.0020以上、3)バリウムとチタンのモル比(Ba/Ti)が0.995以上1.000以下、4)粒径の変動係数CVが35%以下、5)長軸と短軸の比(アスペクト比)が1.15以下のチタン酸バリウム粉末であり、
・前記導電性金属粉末は、1)前記セラミック粉末の平均粒径より大きく、且つ平均粒径0.4μm以下、2)炭素含有量0.06wt%以下のニッケル粉末である
ことを特徴とする積層セラミック電子部品用導電性ペースト。 - 前記セラミック粉末が、前記導電性金属粉末重量を100重量部としたときに、3〜25重量部であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品用導電性ペースト。
- 請求項1又は2記載の積層セラミック電子部品用導電性ペーストを印刷、乾燥して得られる膜密度が5.3g/cm3以上、且つ最大突起高さが1.5μm以下の乾燥膜。
- 請求項3記載の前記乾燥膜を用いた内部電極層の厚みが1.5μm以下の積層セラミックコンデンサ。
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