JP2010084262A - 紙又は板紙、及び段ボールシート - Google Patents

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Abstract

【課題】段ボールシートを構成する外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーの全てに用いることができ、また、この段ボールシートを用いて作製した機密古紙を収容する容器は、易溶解性、易離解性に優れ、機密古紙を梱包したまま未開梱の状態でも、再利用を目的とした溶解処理することができる紙又は板紙、及びこの段ボールシートを提供する。
【解決手段】離解パルプの重量平均繊維長を0.5〜1.5mmとし、かつ離解パルプを用いて作成したシートの散乱係数を35〜80とする。
【選択図】なし

Description

本発明は紙又は板紙に関し、さらに詳細には、段ボールシートを構成する外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーの全てに用いることができ、また離解性、溶解性に優れ、再生溶解処理が容易にできる紙又は板紙、及び段ボールシートに関するものである。
一般的な段ボールシートは、通常、外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーで構成されているが、この段ボールシートを製造する際、段ボールシートを用いて形成される段ボールケースの用途別に、外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーのそれぞれを取捨選択して使用している。このため、各原紙の在庫管理も煩雑になってきており、外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーのいずれとしても用いることができる兼用紙の要望が近年大きくなってきている。
さらに、例えば官公庁、事業所等において不要となった重要文書や機密文書などの社外秘書類(以下、これを「機密古紙」という。)が溜まり、これらを廃棄処分する際に、大量の書類をシュレッダーで裁断しており、非常に手間がかかっている。そのため事業所の多くはこれら書類の廃棄を専門の処理業者に委託する。
この場合、配送業者が廃棄処理施設に持ち運んだ廃棄書類である機密古紙を直ちに溶解や焼却などの処理をするために、廃棄処理業者と配送業者の双方が万全の情報処理体制を整え、機密古紙に記載された情報が漏洩しないように、例えば書類の輸送経路に第三者が立ち入ることのないようにするなどの様々な方策を講じている。その際の梱包容器(収容容器)としては、一般に段ボールケースや、布、不透明な合成樹脂材料からなる回収袋が用いられている。そして、機密古紙が梱包されたまま溶解処理して、機密古紙を古紙として有効に再利用している。しかしながら、合成樹脂材料からなる回収袋は、焼却処理には向いているが、そのまま溶解処理するには、無理がある。また、段ボールケースの場合は、そのまま溶解処理することができるが、段ボールケースは、低白色度の古紙を再利用した原紙を用いて形成された段ボールシートで製造されている。このため、事業所で書類に使用されている上質紙やPPC用紙などは、チラシ古紙、上白、色上等の古紙と同様に、主に上質、中質系のグレードの紙に再利用されるのが好ましいが、一般的には、段ボールシートとともに離解した離解パルプは、段ボール用の原料(WP)として処理されてしまい、上物の古紙である機密古紙を有効に利用できない。また、一般の段ボールシートに使用されているライナー、中芯等の段ボール原紙の離解性は、上記上物の古紙である機密古紙に比べ、易離解性に劣っている。そのため、上記古紙を混合して溶解、離解した場合、上物古紙のパルプ繊維を過度に傷めてしまうという問題もある。
このような段ボールシートの原紙として白板紙や、家庭用ラップの芯や粘着テープの芯など、ものを巻き付ける芯棒として用いられる紙管を形成する紙管原紙が用いられることがある。なお、この紙管原紙としては、段ボールシートに使用される外装ライナー、内装ライナー、中芯原紙等の板紙の他、クラフト紙等の紙が、紙管の用途別に取捨選択して使用されている。しかしながら、白板紙や、紙管原紙が、段ボールシートの原紙として用いられると、コルゲーターでの加工適性や、製函適性(フラップでの割れ)が悪いという問題があった。さらには、機密古紙の収容容器として用いられた際、機密古紙を回収し、収納したまま未開梱で、再利用を目的に溶解処理を行なう工程において溶解性、離解性の問題を抱えている。そこで、機密古紙を運搬する際の収容容器に用いられる段ボールシートに用いられる紙として、以下に示す各種用紙を用いることが考えられ、提案されている。
まず、特許文献1では、裏層に脱墨処理を施さない古紙を多配合し、裏面に顔料を塗工したコート白ボールが開示されている。このコート白ボールは、裏面印刷時のインキ発色性が高められ、また、表面印刷の印刷適性にも優れ、耐罫線割れ適性にも優れるとされている。しかしながら、このコート白ボールによると、裏層に脱墨処理を施さない古紙が多く配合されているので、印刷適性の点では問題がないとしても、これらを原紙として使用した段ボールケースを古紙原料として利用する場合には、裏層に脱墨処理を施さない古紙が多く配合されているため、再生したパルプの白色度が低く、上質・中質グレードに使用する古紙原料としては、低白色であり、ゴミ、塵等の問題があり、品質を悪化させる要因になる。また、このようなコート白ボールで構成した段ボールケースも、機密古紙を梱包したまま再利用を目的に溶解処理をする際に、溶解性・離解性の問題を抱えている。
また、特許文献2は、所定の両性界面活性剤をパルプスラリーに添加することにより、耐罫線割れ適性に優れた板紙を製造する方法を開示している。しかしながら、この製造方法によって製造された板紙によると、耐罫線割れ適性には優れるものの、引張り強度、圧縮強度の点で劣るという問題が発生する。また、特許文献2に記載された製造方法によって製造された板紙を利用して作られた段ボールケースにおいても、溶解性、離解性の問題を抱えており、上述の機密古紙を梱包して未開梱のまま、再利用を目的に溶解処理することは難しかった。
また、特許文献3では、密度やプリントサーフラフネス、透気度などを所定範囲とした低密度塗工板紙が開示されている。この板紙は、グラビア印刷適性及び耐罫線割れ適性に優れるとされている。しかしながら、この板紙によると、表層に顔料塗工層を有するため、段ボール構成の厳しいケースの場合には、フラップ部分で罫割れが発生しやすい問題が発生する。また、古紙パルプとして再生する場合にも塗工層部分が溶け難く、離解が悪いという問題がある。
また、特許文献4では、少なくとも一層のライナーが伸長紙である段ボールシートが開示されている。この段ボールシートによれば、罫線割れの発生を防止することができるとされている。しかしながら、この段ボールシートによると、伸びがあるので優れた耐罫線割れ適性を有するものの、この段ボールシートにおいても、溶解性、離解性の問題を抱えており、機密古紙を梱包し、未開梱のまま、再利用を目的に溶解処理することは難しかった。
すなわち、そもそも上述の特許文献1〜4に記載されたコート白ボールや板紙等は、組み上げられた段ボールケースが機密古紙の収容容器として用いられた際、機密古紙を回収収納したまま未開梱で、再利用を目的とした溶解処理する離解性については検討されていない。
また、上質系古紙である機密古紙からは、白色度の高い古紙パルプが得られる可能性が高いため、収容容器ごと溶解処理するに際して、収容容器が白色度の低下を招く要因とならないことが望まれる。しかしながら、特許文献1〜4においては、白色度についての言及があったとしても、それは印刷適性の観点からのものであり、再利用という観点からの言及はない。また、これら特許文献1〜4に記載されている板紙等については、段ボールケースを構成する外装ライナー及び内装ライナーに用いられるものであるため、中芯原紙として用いると、貼合・製函工程で段飛びが発生するなどの問題を抱えている。
また、段ボールシートの外装ライナー、内装ライナーは、圧縮強度及び破裂強度、中芯原紙は圧縮強度及び引張り強度がそれぞれJISに規定されているだけである。これら品質は、段ボールケースのケース強度を確保するためのみに最低限決められている強度基準である。このため、段ボールシートの製造工程において、箱の使用用途により、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙の選定を個別に行っている。特に中芯原紙と、外装ライナー・内装ライナーとの使用方法は大きく異なっており、それぞれの用途に合わせた品質設計となっているのである。すなわち、例えば、外装ライナーとしての強度を確保すると紙は硬くなってしまい、このような外装ライナーを中芯原紙として用いると、段繰り加工を施した際に、段割れや、段飛びが発生してしまい、外装ライナーを中芯原紙として用いることは難しかった。
また、段ボールケースを製造する際に、外装ライナー、内装ライナー、中芯とそれぞれの用途ごとに原紙を確保しなければならず、在庫の管理も煩雑であるため、外装、内装、中芯のいずれにも使用できる紙又は板紙の開発の要望もあった。
特開2000−192395号公報 特開2001−262496号公報 特開2002−105895号公報 特開2001−105516号公報
本発明は上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、段ボールシートを構成する外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーの全てに用いることができ、また、この段ボールシートを用いて作製した機密古紙を収容する容器は、易溶解性、易離解性に優れ、機密古紙を梱包したまま未開梱の状態でも、再利用を目的とした溶解処理することができる紙又は板紙、及びこの段ボールシートを提供することである。
本発明の上記目的は、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプの、JIS−P8226に準拠し、メッツォ製FiberLabにより測定した重量平均繊維長が0.5〜1.5mmであり、かつ前記離解パルプを用い、JIS−P8222(1998)に準じて作成したシートのISO9416(1998)に準じて測定した散乱係数が35〜80であることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって達成される。
また、本発明の上記目的は、前記離解パルプは、JIS−P8121(1995)に準拠して測定したフリーネスが220〜580ccであり、少なくとも片面に水溶性樹脂を含む塗工液が塗工され、JIS−P8129(1997)に規定されるデニソンワックス値を13A以上とすることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、無機顔料の含有量が10質量%未満であって、紙密度が0.5〜0.8g/cmであることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって、より効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記水溶性樹脂は、スチレン系樹脂であることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって、より効果的に達成される。
さらにまた、本発明の上記目的は、外装ライナーと、中芯原紙と、内装ライナーとから成る段ボールシートにおいて、前記外装ライナー、前記中芯原紙、及び前記内装ライナーの全てに、前記紙又は板紙を用いて形成したことを特徴とする段ボールシートを提供することによって、より効果的に達成される。
本発明に係る紙又は板紙によれば、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプの、JIS−P8226に準拠し、メッツォ製FiberLabにより測定した重量平均繊維長が0.5〜1.5mmとなるように調整し、且つ、この離解パルプを用い、JIS−P8222(1998)に準じて作成したシートのISO9416(1998)に準じて測定した散乱係数が35〜80となるようにしたので、優れた易離解性及び易溶解性を有する紙又は板紙を得ることができる。
また、この紙又は板紙を、段ボールシートを構成する外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーの全てに用いることができ、このような段ボールシートは、例えば機密古紙を梱包したまま未開梱の状態で離解処理することができる。
以下、本発明に係る紙又は板紙について詳細に説明する。
本発明に係る紙又は板紙(以下、「本紙又は板紙」という。)の基紙は、原料として、JIS−P8141(2001)に基づく白色度が75%以上、好適には80%以上、更に好適には85%以上のパルプ及び/又はクラフトパルプで、JIS−P8120(1998)に規定する紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法に準ずるC染色法による呈色表に基づいて測定したクラフトパルプの繊維配合率が50質量%以上、好ましくは90〜100質量%の原料パルプを用いて形成されている。なお、原料パルプの白色度が75%未満であると、後述するように、紙又は板紙が段ボールケースに使用された場合において、機密古紙を回収収納したまま、段ボールケースごと溶解処理した際に、上質・中質系の紙に配合する古紙パルプとして用いることができる白色度を保つことができる。
本紙又は板紙において、使用が望ましい原料パルプは、バージンのケミカルパルプ(広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、その他の繊維原料を化学的に処理されたパルプ)、特に広葉樹晒クラフトパルプであるが、この他にも、木材またはチップに薬液をしみ込ませた後、機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、ケミメカニカルパルプ及びチップをやや柔らかくなるまで蒸解した後、リファイナーでパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプを含有させてもよい。
また、上記原料パルプの他にも、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に平版、凸版、凹版印刷等、電子写真方式、感熱方式、熱転写方式、感圧記録方式、インクジェット記録方式、カーボン紙などにより印字された古紙、水性、油性インクや鉛筆などで筆記した古紙、新聞古紙等の古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)、製紙スラッジ、製紙工場排水スカム等を用いることができる。すなわち、古紙再生促進センターが分類している上白、クリーム上白、罫白、カード、特白、中白、白マニラ、模造、色上、ケント、白アート、飲料パック、オフィスペーパー、特上切、別上切、中質反古、ケントマニラ、新聞、雑紙、切茶、無地茶、雑茶、クラフト段ボール、段ボール、ワンプ、上台紙、台紙、ボールなどを用いることができる。中でも上白、クリーム上白、罫白、カード、特白、模造、色上、ケント、白アート、飲料用パック、オフィスペーパー等の古紙は、白色度が高く、脱墨処理を施したパルプの白色度を75%以上に確保しやすいので好ましい。
上記原料パルプの中でも、本紙又は板紙には、特に白色度75%以上の主に広葉樹晒クラフトパルプが50〜100重量%の範囲で配合されていると好適であり、90〜100重量%の範囲で配合されると、より好ましい。なお、古紙から回収した広葉樹クラフトパルプを配合してもよい。
また、針葉樹パルプには、繊維長が長く、引張り強度に優れているという性質がある。従って、針葉樹パルプを配合することにより、段ボール原紙として必要な引張強度、破裂強度、耐罫線割れ適性の向上という効果が認められる。しかしながら、本紙又は板紙は、針葉樹パルプが無配合であっても、他の条件を定めれば、本紙又は板紙に必要な強度や印刷適性を得ることができるので問題はない。
さらに、本紙又は板紙は、従来の段ボール古紙からなる原料パルプを抄紙した多層抄き板紙と比べ、紙厚が低下する。そこで、機械パルプを3重量%以上、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%にすることで、機密古紙回収ボックス等の古紙収容容器として必要な圧縮強度を確保できるともに、機密古紙を回収収容したまま、本紙又は板紙で構成された段ボールケースは、古紙パルプとして段ボールケースのまま再生する場合に、水が浸透しやすく、溶解性に適している。
さらに、本紙又は板紙をJIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解したパルプ(以下、「離解パルプ」とも言う。)の、JIS−P8226「パルプ光学的自動分析法による繊維長測定方法」に準拠し、メッツォ製FiberLabにより測定した重量平均繊維長(以下、「平均繊維長」と言う。)が0.5〜1.5mm、より好ましくは0.7〜1.20mmとなるようにする。加えて、上述した方法で本紙又は板紙を離解した離解パルプを用いて、JIS−P8222(1998)に準じて作成したシートの、ISO9416(1998)に準じて測定した散乱係数が35〜80、好ましくは50〜80となるように調整する。なお、散乱係数は、一般的には不透明度を向上させるため、本発明においては、光散乱係数を参考にしている。
このように、紙の強度を向上させるため、原料パルプのフリーネスを調整するが、調整したパルプの繊維の状態がどのようになっているかで、品質への影響度が大きく変わってくる。しかしながら、繊維長を調整するだけでは、紙の強度を向上させることはできるが、紙の強度以外に、この紙及び板紙を、再利用を目的とした溶解処理を行うことができ溶解性、離解性を得ることにおいて、紙表面の繊維の毛羽立ちの状態を把握することが、重要であることが分かってきた。
そこで、本発明において、繊維の毛羽立ちの状態を把握するため、従来、不透明度を目的に測定していた光散乱係数で繊維の質を管理することを見出し、かつ繊維長を特定の範囲とすることで、本発明の紙又は板紙を得ることができることが分かった。
なお、重量平均繊維長が0.5mm未満であると、引張り強度及び伸びが減少し、曲げ応力に対して弱くなる傾向があるので、耐罫線割れ適性が低下したり、本紙又は板紙を、例えば紙管原紙として用いるために小幅のボビン加工を施す際の、スリッター紙紛の発生要因となる問題がある。一方、1.5mmを超えると、耐罫線割れ適性は良好となるものの、紙又は板紙の表面が凹凸になり、小幅のボビン加工を施す際に、この表面の凹凸の影響を受けやすくなるので、竹の子状の巻き取りになりやすい傾向にあり、好ましくない。
また、散乱係数が35未満であると、繊維表面の毛羽立ちが少なく、繊維間の結合、絡み合いが少なくなる傾向になるので、引張り強度が低くなる。一方、散乱係数が80を超えると、繊維表面の毛羽立ちが多くなり、繊維同士の結合、絡み合いは向上するものの、原料スラリー中に繊維同士の拠れが発生しやすく、繊維同士が拠れたものの塊が異物として紙に発生する可能性があり、好ましくない。
さらにまた、本紙又は板紙は、JIS−P8121(1995)に準拠して測定した離解パルプのフリーネス(以下、「離解フリーネス」と言う。)が220〜580cc、より好ましくは400〜535ccとなるように調整する。離解フリーネスが220cc未満の場合には、繊維の微細化が進むため、濾水速度が遅くなる。この結果、抄紙性を著しく低下させてしまう傾向にあるので好ましくない。一方、離解フリーネスが580ccを超えると濾水速度が速くなりすぎ、ワイヤー上での繊維の絡み合いが無くなる。この結果、湿紙強度が低下するため、断紙トラブルが発生しやすくなり、好ましくない。
また、本紙又は板紙を、段ボールシートの外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙の全てに用いることができるように、本紙又は板紙の坪量は、120〜210g/mとするのが好ましく、140〜180g/mとするのがより好ましい。特に、本紙又は板紙の坪量を140〜180g/mにすることで、段ボールシートを構成する外装ライナー、内装ライナー、中芯原紙として、同一の本紙又は板紙を用いることができるので好適である。なお、坪量が120g/m未満であると、本紙又は板紙を段ボールシートの外装ライナーもしくは内装ライナーとして用いた場合、機密古紙の収容容器としての強度を満足することが難しくなる。一方、坪量が210g/mを超えると、機密古紙を回収収納したまま段ボールケースを溶解処理する工程において、溶解離解性が低下し、溶解に著しく時間がかかるという問題がある。
本紙又は板紙は、少なくとも片面に、好適には両面に塗工液を塗工することが好ましい。また、この場合には、紙への浸透性がよく、造膜性が良好な水溶性樹脂を含む塗工液を用い、ゲートロール等のトランスファー塗工方式で塗布または含浸させることが好ましい。このように水溶性樹脂を含む塗工液を塗布・乾燥されて塗工層を形成するこれにより、雑誌古紙のように灰分を含む古紙パルプを主成分として配合しても、JIS−P8129(1997)に規定されるデニソンワックス値での表面強度を13A以上とすることができ、印刷適性と貼合適性と内容物の搬送に必要な引張り強度とを保持しつつ、罫線割れの発生も抑制することができる。さらに、段ボールシートとしての圧縮強度や古紙として処理する際の溶解・離解容易性を向上させることができる。
また、塗工液の片面あたりの塗工量(以下、単に「塗工量」とする。)は0.1〜10g/m、より好ましくは0.2〜5.0g/mであることが好ましい。これにより、本紙又は板紙は、段ボールケースの外装ライナー、内装ライナーとして必要な引張強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、中芯原紙としての段繰り加工適性を有するようになる。従って、本紙又は板紙を外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーの全てに用いることができ、段ボールシートを全て同一の原紙により形成することができる。なお、塗工液の塗工量が0.1g/m未満であると、表面強度が弱くなり、製函・貼合・印刷時に毛羽立ちが発生し、段ボールシートとしての適性が失われる傾向にあり、一方、塗工量が10g/mを超えると表面強度の点では向上するものの、中芯原紙として使用した際に、段繰り工程での段割れが発生しやすくなる。
以下に、本紙又は板紙に好適に用いられる水溶性樹脂を含む塗工液について詳述する。
本紙又は板紙に用いられる塗工液に含有される水溶性樹脂としては公知の種々のものを用いることができるが、澱粉を配合することが好ましく、より好ましくはスチレン系樹脂を配合することが好ましい。これにより、引張強度に優れ、耐罫線割れ適性、印刷適性、段ボールシートの中芯原紙としての段繰り加工適性を向上させることができることはもちろんのこと、本紙又は板紙が外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーに用いられた段ボールシートを用いて形成された段ボールケースの圧縮強度を高めることができ、さらには、段ボールケースをそのまま溶解処理する工程において、溶解離解性を向上させることができる。
本塗工液に配合される澱粉としては、分子量が300万未満、好ましくは230万〜290万である化工澱粉が好適である。澱粉が紙製造業者に提供される際の形態は固体材料であり、一般に、澱粉の分子量が高いほど、固体の澱粉が水系に溶解する速度が遅くなる。加えて、特に分子量の高い澱粉は、せん断に非常に高い敏感性を示すため、取り扱い及び品質管理が難しくなるという問題も生じてくる。従って、澱粉を用いる際には、澱粉を予め水溶液に溶解させておく必要があるが、分子量が300万以上の澱粉であると、完全な溶解を確保するためには、強力な混合を行う必要がある。しかしながら、このような強力な混合操作を行うと、高分子量の澱粉は、せん断に対して高い敏感性を示すため、高分子量特性を得ることができないと共に、最終的に得られる澱粉分散液において、澱粉を均一に分散させることができない。このため、本紙又は板紙に用いられる澱粉には、分子量が300万未満のものが用いられる。しかしながら、澱粉の分子量が300万未満であっても、分子量が低すぎると、少なくとも基紙の表裏面に塗工しても、粘性が低く、増膜性にも劣るため、澱粉が基紙の表裏面に止まらず、紙中に染込みやすくなるため、表面強度の面で劣る傾向にある。従って、分子量が230万以上である澱粉を用いることが、より好ましい。
このような澱粉としては、例えば、酸化澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、α化澱粉、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸変性澱粉、未変性澱粉等、公知の種々のものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、これらの澱粉の原料についても特に限定されるものではないので、例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、トウモロコシ澱粉等、公知の種々の原料澱粉を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本紙又は板紙においては、これらの澱粉の中でもリン酸変性された澱粉、特にリン酸エステル化澱粉及び/又は尿素リン酸変性澱粉の使用が好ましい。また、リン酸エステル化澱粉の場合は、リン酸の結合率が、リン酸エステル化澱粉の固形分当たりリン酸HPOとして0.1〜10重量%であるリン酸変性された澱粉の使用が好ましい。リン酸変性された澱粉は、高濃度であっても粘性の上昇が低く、塗工性にも優れている。また、基紙中への適度な浸透性を有するため、段ボールシートに用いられる原紙として必要な引張強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、適度の水の浸透性を確保することができる。
また、本紙又は板紙に用いられる澱粉は、フェノール硫酸法による澱粉の比色定量により分析した値で、本紙又は板紙中に、澱粉が2.5〜10g/m、好適には3.0〜5g/m含有されるように、塗工液を塗布するのが好ましい。なお、澱粉含有量が2.5g/m未満である紙又は板紙を外装ライナー、内装ライナーに用いると、段ボールケースに必要な圧縮強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、貼合・製函適性を向上させることが困難となる。他方、澱粉含有量が10g/mを超えると、塗工層が硬くなり、耐罫線割れ適性が低下するとともに、水の浸透性が悪化するので、溶解処理効率が悪化する傾向になり、離解性が低下する。
さらに、澱粉を、塗工液の濃度が35%、温度40℃での粘度が85cp以下、好ましくは10〜80cp、より好ましくは30〜75cpのものとすることにより、基紙中の澱粉含有量が2.5g/m以上となるように塗布することがより容易になる。これにより、段ボールケースの外装ライナー、内装ライナーとして必要な引張強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、中芯原紙としての段繰り加工適性を有することができる。従って、本紙又は板紙を外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーに用いることができ、段ボールシートを全て同一の原紙により形成することができる。
また、塗工液には、本発明の効果に影響のない範囲内で、澱粉のほか、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等を用いることができる。さらに、例えば滑剤、サイズ剤、填料分散剤、pH調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、蛍光消去剤等の公知の添加剤を、単独で、あるいは2種以上を混合して添加しても良い。
特に、本紙又は板紙を中芯原紙として使用する際には、段繰り加工適性が必要とされ、コルゲーターロールでの段繰り工程において、段飛び、段割れが発生しないように、この塗工層上に、さらに非ワックス系の滑剤を塗布することが好ましい。
滑剤としては、フッ素系樹脂(固形物、粉末、繊維状など)を主とするものが使用される。他に液状タイプの滑剤としてはシリコーンオイル、フッ素系のオイル等の合成油、スクワランオイルなどの動物性のオイル、菜種油、紅花油、ゴマ油、椿油などの植物性のオイル、鉱物油等を併用でき、潤滑性を得る手段としてはいずれも有効であるが、長期安定性を考慮した場合、シリコーンオイル、フッ素系のオイル等の合成オイルを使用するのが望ましい。シリコーンオイルにはメチルフェニルオイル、フロロシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、ポリエーテル、フッ素、エポキシ、アルコール等の変性シリコーンオイルなどがあり、多少の効果の違いはあるが、滑剤としてはほぼ使用可能である。フッ素系のオイルとしてはフルオロカーボン油、パーフルオロエーテル油などがある。
また、好適にはステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、低分子量ポリエチレンの水性分散液を好適に用いることができる。これらの中でも特に、液状炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸硫酸化油、脂肪族リン酸エステル、ポリアルキレングリコールまたはその誘導体、あるいはこれらの水性分散液や、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックスなどを使用することができる。しかしながら、石油ワックスは、紙粉の発生(発塵)の抑制効果が低いため、特に非ワックス系の滑剤を用いることが好ましい。
また、本紙又は板紙は、無機顔料の含有量を10重量%未満、好適には5重量%未満とする。これにより本紙又は板紙の剛性を向上させることができ、耐罫線割れ適性を向上させることができる。
その後、ソフトカレンダー、硬質チルド鉱等の金属ロールを数段重ねたカレンダー等を用い、本紙又は板紙の紙密度が0.5〜0.8g/cmとなるように調整する。紙密度が0.5g/cm未満では、表面層等に塗工液を塗布して形成した塗工層の表面の凹凸が大きくなり、印刷カスレの要因となる。一方、0.8g/cmを超えると柔軟性が低下するため、耐罫線割れ適性が低下するという問題がある。
これらにより、特に段ボールシートを構成する外装ライナー、内装ライナー、中芯原紙として、坪量が120〜210g/m、特に140〜180g/mの範囲内で、かつ、同一坪量の本紙又は板紙を用いることができる。
本紙又は板紙は、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックスにて湿紙を形成し、フィルムトランスファー方式による塗布設備で、上述した水溶性樹脂や澱粉を含む塗工液を、湿紙の表裏面に塗工し、乾燥して製造することができる。
また、700m/分以上の高速抄紙において、塗工液は1.0〜2.5%の濃度で本紙又は板紙に塗工するのが好ましい。濃度が1.0%未満では、特にゲートロールにおいて、ミストが発生してしまい、周辺設備の汚損が生じる場合がある。また、必要量の塗工液を塗工することが困難な上に、過大な乾燥能力が必要になり、操業性が低下するという問題が生じる。他方、濃度が2.5%を超えると、粘性が高くなるため、塗工時に紙が取られ断紙が生じたり、走行トラブルが発生したりするため、操業性を低下させるという問題がある。
また、本紙又は板紙は、紙管原紙としても使用できる。特に、引張り強度(縦)が10.9〜24.7kgf、特に15.0〜20.0kgfが好ましい。引張り強度(縦)が10.9kgf未満であると、小幅に仕上げた本紙又は板紙を紙管原紙として用いて紙管を製造する工程において、テンションを調整して巻くことが困難になるため、紙管に使用することが難しくなる。一方、引張り強度(縦)が24.7kgfを超えても、柔軟性が無くなるので、紙管原紙としては好ましくない。
以上に説明した本紙又は板紙は、例えば外装ライナーとして170g/mの本紙又は板紙、内装ライナーとして170g/mの本紙又は板紙、中芯原紙として170g/mの本紙又は板紙という、同一米坪、同一スペックの原紙を使用して段ボールシートを形成しても、段繰り加工、貼合・製函適性を備えた段ボールシートとすることができる。このように、本紙又は板紙のみで段ボールシートを構成しても、貼合、製函、耐罫線割れ適性等の加工適性を満足し、特に機密古紙を回収収容して梱包し、未開梱のまま、再利用を目的として溶解処理することができる易溶解性及び易離解性を有する段ボールケースを得ることができる。また、従来のように、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙を取捨に在庫する必要がなくなり、この結果、煩雑な原紙の在庫管理の必要がなくなるという利点もある。
なお、本紙又は板紙を用いて形成された段ボールシートは、折り曲げ加工等して機密古紙等を回収収容する収容容器となる段ボールケースに加工するが、段ボールシートに施される加工は特に限定されず、公知の種々の加工を施すことができる。
さらに、紙管原紙として用いるには、スパイラルに巻き付けながら加工されるので、巻取り巾が3〜150mmの小幅にスリッター加工されながら使用され、過酷なテンション条件下で使用されることが主流であるが、本紙又は板紙は、紙管用原紙としても十分に使用できる機能を備えている。
本発明に係る紙又は板紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例は、本発明を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜その構成を変更することができることはいうまでもない。
25種類の実施例(これを「実施例1」ないし「実施例25」とする)を表1に示すような構成で作製し、また、これらの実施例1から実施例25と比較検討するための2種類の紙又は板紙(これを「比較例1」及び「比較例2」とする)を表1に示すような構成で作製した。また、市販の白ライナーを用いて作製した段ボールケースを参考例1とし、市販の上質紙を用いて作製した段ボールケースを参考例2として、本発明に係る紙又は板紙を用いて作製した段ボールケースと比較した。なお、各実施例及び比較例の各要因の全てについて、個々のラインを新設したものではなく、テストプラントによるテスト例が主たるものであることを断っておく。
Figure 2010084262
[実施例1]
LBKP100重量%を配合した後に、ダブルディスクリファイナーでカナダ標準濾水度(JIS−P8121に準ずる)が500ccとなるように原料パルプを調整し、原料パルプスラリーを作製した。
次に、水溶性樹脂として、分子量が290万である酸化澱粉(日本コーンスターチ株式会社製 SK−20)を用い、塗布される水性組成物の濃度が2.0%となるように調整して水溶性樹脂を含む塗工液を作成した。
上述したように作製した原料パルプスラリーを、モジュールジェットヘッドボックス(VOITH社製)に入れて、原料パルプの濃度が1.0%になるように濃度調整を行い、単層の湿紙を形成する。その後、搾水方式で湿紙を脱水し、プレドライヤーで乾燥させて、基紙を形成する。なお、抄速は700m/分である。
次いで、ゲートロールにより、上述した水溶性樹脂を含む塗工液を、基紙中の澱粉含有量が2.7g/mとなるように、湿紙の表裏面に塗布し、乾燥させて、仕上がり水分がJIS−P3904で規定する8.0±1.5%の範囲内であって、坪量が170g/mで、紙密度が0.80g/cmで、紙厚が212μmである紙又は板紙(実施例1)を得る。なお、澱粉含有量は、フェノール硫酸法を用いた比色分析にて、酸化澱粉で作成した検量線を用いて定量した値であり、また、紙厚は、JIS−P8118(2006)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に基づいて測定した値である。
また、滑剤として、ステアリン酸カルシウム(ノプコートC−104:サンノプコ社製、固形分濃度50%)を用い、アフタードライヤーの噴霧器にて塗布し、転写した。
[実施例2〜22及び比較例1,2および参考例1]
また、実施例2〜22を表1に示す条件以外は実施例1と同様に作製し、さらに比較例1〜2を表1に示す条件以外は実施例1と同様に作製し、本発明の評価を行った。なお、表1の「水溶性樹脂の種類」の欄の、「エ」とはリン酸エステル化澱粉を表し、「尿」とは尿素リン酸変性澱粉を表し、「スチレン系」とはスチレン系樹脂を表す。また、参考例1として、市販の白ライナーを、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙の全てに用いて段ボールシートを作製し、さらに、参考例2として、市販の上質紙を、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙の全てに用いて段ボールシートを作製した。
なお、表1中、「繊維長(mm)」とは、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解したパルプをJISP8226(2006)に準じて測定できる試験機であるメッツオ製FiberLabにより測定した重量平均繊維長の測定値である。
また、「散乱係数」とは、作成した各試料であるシートを、ISO9416(1998)に準じて測定した値である。
「フリーネス(cc)」とは、JIS−P8121(1995)に準拠して測定した値である。
「灰分率(%)」とは、JIS−P8251(2003)に準拠して測定した値である。
「坪量(g/m)」とは、各試料全層、すなわち紙又は板紙全体の坪量で、JIS−P8124に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
「紙密度(g/cm)」とは、各試料の坪量及び厚さを用いて算出した値である。なお、測定誤差をなくすため、各試料からサンプルを10枚採取して測定した平均値である。
これらの全実施例及び比較例について、品質評価を行った結果は、表2に示すとおりであった。なお、この品質評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
Figure 2010084262
表2中の「引張強度(縦)(kgf)」とは、JIS−P8113に準じて、各試料である白クラフト紙を測定した縦方向の強度の値である。
また、「ワックス値(A)」とは、表面強度を評価するもので、JIS−P8129(1997)に規定されるデニソンワックス値で測定したものである。
また、「貼合適性」とは、各試料である紙又は板紙を、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙として使用して段ボールシートを形成し、この段ボールシートを用いて段ボールケースを形成し、その際の加工性を評価したものである。その評価基準は下記の通りとした。
◎:貼合時、段飛びもなく、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙を貼合でき、シート反りも無かった。
○:貼合時、段飛びが認められたものの、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙を貼合でき、またシート反りは無かった。
△:貼合時、段飛びが発生し、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙の貼合が難しい。
×:貼合時、段飛び及び段割れが発生し、外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙の貼合ができない。
また、「耐罫線割れ適性」とは、各試料である紙又は板紙を使用して、作成した前記段ボールケースのフラップを180°折り曲げて、折り目の頂点に割れが発生しているか否かを目視で観察し、20cm巾あたりの割れを評価したものである。なお、評価基準は下記の通りとした。
◎:割れが認められなかった。
○:2mm未満巾の割れが3箇所未満である。
△:2mm未満巾の割れが3箇所以上ある。
×:2mmを越える割れが連続して発生している。
さらにまた、「離解性」とは、各試料である紙又は板紙を使用して、作成した前記段ボールケース(440mm×310mm×230mm)に、A4サイズの使用したPPC古紙を2500枚梱包して、50ケース準備した。フラップ部分は白のクラフトテープで貼り合わせたまま、段ボールケース50ケースをパルパーに投入し、さらに水10mを投入し、40分間溶解し、溶解した古紙パルプを目視で観察し、評価したものである。なお、評価基準は下記の通りとした。
◎:40分で完全に溶解しており、未溶解物は認められなかった。
○:やや未溶解の古紙が認められるが、問題ない程度である。
△:3mm以上の未溶解古紙が認められる。
×:明らかに未溶解古紙がある。
表2から分かるように、本発明に係る紙又は板紙、すなわち実施例1ないし実施例25に係る紙又は板紙は、貼合適性及び耐罫線割れ適性に優れ、さらに離解性にも優れる。従って、本発明に係る紙又は板紙は、坪量が120〜210g/m、特に140〜180g/mにおいて段ボールケースに使用される外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙として兼用でき、また本発明に係る同一の紙又は板紙を外装ライナー、内装ライナー、及び中芯原紙の全てに用いて作成された段ボールケースは、古紙の回収容器として十分な強度を保つことできる。また、上述のように、本発明に係る紙又は板紙を用いて作成された段ボールケースは、離解性が高く、離解が容易であるため、機密古紙を収納したままの未開梱の状態でも、溶解処理することができるので、機密古紙回収容器としての機密性を保持することができると共に、離解パルプを上物古紙に利用することができる。
また、本発明に係る紙又は板紙は、段ボールシートを構成する中芯原紙としても用いることができるので、段ボールシートを同一の材料で低廉化に簡便に製造することが可能であり、段ボールシートの製造コストをより低減することができる。これに対し、参考例1及び参考例2に示すように、従来の市販品の白ライナー及び上質紙を、外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーの全てに用いて形成した段ボールシートは、貼合適性が低かったり、離解性が悪かったりする。従って、外装ライナー、中芯原紙、及び内装ライナーで、異なる品種を準備する必要があり、煩雑であると共にコストアップになる。

Claims (5)

  1. JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプの、JIS−P8226に準拠し、メッツォ製FiberLabにより測定した重量平均繊維長が0.5〜1.5mmであり、かつ前記離解パルプを用い、JIS−P8222(1998)に準じて作成したシートのISO9416(1998)に準じて測定した散乱係数が35〜80であることを特徴とする紙又は板紙。
  2. 前記離解パルプは、JIS−P8121(1995)に準拠して測定したフリーネスが220〜580ccであり、少なくとも片面に水溶性樹脂を含む塗工液が塗工され、JIS−P8129(1997)に規定されるデニソンワックス値を13A以上とすることを特徴とする請求項1に記載の紙又は板紙。
  3. 無機顔料の含有量が10質量%未満であって、紙密度が0.5〜0.8g/cmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紙又は板紙。
  4. 前記水溶性樹脂は、スチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の紙又は板紙。
  5. 外装ライナーと、中芯原紙と、内装ライナーとから成る段ボールシートにおいて、前記外装ライナー、前記中芯原紙、及び前記内装ライナーの全てに、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の前記紙又は板紙を用いて形成したことを特徴とする段ボールシート。
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