JP2010080571A - 面発光レーザ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高歩留まり性及び高信頼性を有し、高速変調動作が可能な面発光レーザを提供すること。
【解決手段】本発明に係る面発光レーザは、基板と、前記基板上に形成された第1の多層膜ブラッグ反射鏡と、前記第1の多層膜ブラッグ反射鏡上に形成され、p型の導電性を有する酸化電流狭窄層と、前記酸化電流狭窄部上に形成され、少なくとも一部にp型の導電性を有する第1の半導体スペーサ層と、前記第1の半導体スペーサ層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成され、少なくとも一部にn型の導電型を有する第2の半導体スペーサ層と、前記第2の半導体スペーサ表面に形成された段差構造と、前記第2の半導体スペーサ上に形成され、屈折率差が1以上の低屈折率層と高屈折率層とから構成される第2の多層膜ブラッグ反射鏡と、を備えたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、面発光レーザに関し、例えば、光通信や光インターコネクションの分野で用いられる面発光レーザ及びその製造方法に関する。
面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、その低コスト性、低消費電力性から広くイーサネット(登録商標)やファイバーチャネルといったデータ通信用の光源として用いられている。これらVCSELの変調速度は、近年のデータ通信容量の増大に従って、10Gbps(ギガビット毎秒)といった高速変調動作が要求されてきている。また、VCSELは、光インターコネクション用の光源としても期待されており、そこでは並列・超高速(20Gbps/チャンネル)性を有する素子が必要となってきている。
一般に、VCSELの変調速度は主に、素子の外因的要因である寄生電気回路特性と、内因的要因である緩和振動周波数(fr)とにより、制限されている。寄生電気回路特性では、素子のCR時定数を通じてその電気的応答が律速される。そこで、素子抵抗の低減、イオン注入や絶縁体埋め込み等による容量の低減により、20Gbpsを越える電気的応答が可能となってきている。
他方、frは注入電流を大きくして光子密度を高くすることで増加させることが原理的には可能である。VCSELの場合、発光部の体積が端面発光型レーザと比べて小さく、活性層への注入電流を大きくすると発光部の温度が非常に高くなる。そのため、ある程度以上の電流を流すとfrが増加しなくなり(約16GHzで飽和)、これがVCSELの変調速度の上限を決めている要因の一つとなっている。
高速変調動作が可能なVCSELを実現するには、frを大きくすることが必要であり、種々の方法が試みられている。その方法の一つとして、酸化電流狭窄構造における狭窄径の狭小化があり、非特許文献1に技術が開示されている。酸化電流狭窄構造は、高いAl組成を有するAlGaAs層をメサ側面から水蒸気により酸化させ、AlGaAs層の一部をAlOxの絶縁体に変化させることにより得られる。
この構造では、電流の狭窄が可能となるだけでなく、半導体と絶縁体の屈折率の違いによる光閉じこめ効果も生じるので、キャリア(電流)と光の両方を同時に閉じ込めることが可能である。このため、酸化狭窄径を狭小化すると小さな電流値でも高い光子密度が得られ、高いfrが得られる(frは光子密度の平方根に比例する)。
このように、酸化狭窄径の狭小化により、frの電流に対する増加率(電流変調効率)は非常に高くなり、電流注入による発熱の影響が顕著になる前に、高いfrを得ることができる。非特許文献1では、酸化狭窄径3μmのVCSELにおいて、わずか0.9mAで15GHzの変調帯域を得ている。
非特許文献1の技術は、VCSELの面方向(光の出射方向に対し垂直な方向)において光が存在する領域を小さくし、光子密度を上げようとするものである。さらに、積層方向(光の出射方向)でも、光が存在する領域を小さくすることで、frの電流変調効率を高めることができる。
非特許文献2の埋め込みトンネル接合型VCSELに、その技術が開示されている。VCSELの積層方向の構造は、上下の分布ブラッグ反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)とそれに挟まれた光共振器からなる。光は上下方向(積層方向)に定在波を形成している。光強度は活性層でもっとも強くなるように設計される。DBRにおける光強度は、光共振器から離れるに従い指数関数的に減衰する。この減衰の仕方は、DBRを形成する多層膜の屈折率差に依存し、屈折率差が大きいほど減衰が早く、光はDBRの侵入長内に強く閉じこめられる。
また、光共振器では、一定の定在波分布をする。このように、積層方向の光の分布範囲は、上下のDBRでの光の侵入長と光共振器の層厚で決まる。frの電流変調効率を高めるためには、DBRでの光の侵入長と光共振器の層厚の和をできるだけ小さくすることが有効である。
非特許文献2では、上部DBRとして屈折率差が大きいSiOとa−Siとからなる誘電体多層膜を用いることにより、上部DBRへの光の侵入長を小さくし、frの電流変調効率を高めている。具体値として、電流狭窄径4μmのVCSELにおいて、fr=27GHzという、従来のfrの飽和値(約16GHz)と比較して大幅な特性を改善している。
frの改善方法として、上述の2つの方法は光を空間的に狭い領域に閉じ込めることでfrの電流変調効率を高め、電流注入による発熱の影響が顕著になる前に高いfrを得る技術である。この他にも、電流注入時の素子の温度上昇を抑えることにより、frが熱飽和しないようにする技術がある。
例えば、非特許文献2では、トンネル接合構造により電流の担体(キャリア)を正孔から電子に変換することで、高抵抗の要因となるp型DBR(正孔が担体)に代わって、低抵抗なn型スペーサ層(電子が担体)を用いることができる。その結果、素子の発熱が抑制され、高いfrが得られる。
また、このトンネル接合部はメサ型にエッチングした後、その周囲を埋め込み成長で埋め込む、所謂埋め込み型トンネル接合構造になっており、このメサ部のみに電流が流れるような電流狭窄の役割も担っている。
さらに、エッチングにより形成されたメサの段差は、その上に積層された誘電体多層膜にも形状が転写され、この段差構造により面内の光閉じ込め効果を発生させ、酸化電流狭窄構造の時と同様に光を空間的に狭い領域に閉じ込めることができる。
ここで、非特許文献1のように酸化電流狭窄構造を用いて狭窄径を狭小化する場合、キャリアの狭窄と光閉じ込めが同一の酸化層により行われている。そのため、キャリアの狭窄される領域と光が閉じ込められる領域を独立に制御することができない。特に、酸化狭窄部の内側は、光閉じ込めを最適にするための設計の自由度が少ない。すなわち、狭窄径を狭小化していくと、キャリアの広がりと光の広がりにずれが生じ、frの大幅な改善は困難となる。
また、電流狭窄径の狭小化に伴い、素子の信頼性が大幅に低下する。これは、電流密度の増加、狭窄構造における酸化領域の比率増大よる素子の機械的強度の低下、非酸化領域への応力集中による通電時の劣化促進などに起因する。
一方、非特許文献2のような埋め込みトンネル接合型VCSELでは、埋め込まれるメサの底面(p型層)とn型の埋め込み層とが広い領域で接しているため、大きな容量が存在する。この容量を小さくするために、埋め込み成長前にメサの底面を酸素イオン注入等で高抵抗化させる。ところが、イオン注入後の埋め込み成長工程やその後のプロセスを通じ、注入した酸素イオンが拡散する。そのため、その分布を精密に制御するのが難しく、製造歩留まりが悪い。
また、酸素イオン注入は非発光中心となる可能性があるなど、信頼性の面でも悪影響が懸念される。さらに、埋め込みトンネル接合型VCSELでは、トンネル接合部を円形にパターニングし、数十nmの深さのメサをウエットエッチングで形成し、そこを埋め込み成長工程で埋め込む。一般に、円形のメサを形成する際、メサの一部に逆メサ形状の部分が生じ、その部分を埋め込む時には結晶欠陥が生じやすくなる。この埋め込み電流狭窄層近傍は、電流が集中するため、結晶欠陥が存在するとその部分から容易に欠陥が増殖して素子が劣化する。
Y. -C. Chang、外2名、Electronics Letters、2007年、Vol.43、No.7、p.396−397 K. Yashiki、外5名、IEEE Photonic Technology Letters、2007年、Vol.19、No.23、p.1883−1885
上述のように、非特許文献1、2に記載の技術では、高速化が不十分であったり、歩留まりや信頼性に問題があった。本発明の目的は、高歩留まり性及び高信頼性を有し、高速変調動作が可能な面発光レーザを提供することにある。
本発明に係る面発光レーザは、
基板と、
前記基板上に形成された第1の多層膜ブラッグ反射鏡と、
前記第1の多層膜ブラッグ反射鏡上に形成され、p型の導電性を有する酸化電流狭窄層と、
前記酸化電流狭窄部上に形成され、少なくとも一部にp型の導電性を有する第1の半導体スペーサ層と、
前記第1の半導体スペーサ層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成され、少なくとも一部にn型の導電型を有する第2の半導体スペーサ層と、
前記第2の半導体スペーサ表面に形成された段差構造と、
前記第2の半導体スペーサ上に形成され、屈折率差が1以上の低屈折率層と高屈折率層とから構成される第2の多層膜ブラッグ反射鏡と、を備えたものである。
本発明に係る面発光レーザの製造方法は、
基板上に第1の多層膜ブラッグ反射鏡を形成し、
前記第1の多層膜ブラッグ反射鏡上に、p型の導電性を有する酸化電流狭窄層を形成し、
前記酸化電流狭窄層上に、少なくとも一部にp型の導電性を有する第1の半導体スペーサ層を形成し、
前記第1の半導体スペーサ層上に、活性層を形成し、
前記活性層上に、少なくとも一部にn型の導電型を有する第2の半導体スペーサ層を形成し、
前記第2の半導体スペーサ表面に段差構造を形成し、
前記第2の半導体スペーサ上に、屈折率差が1以上の低屈折率層と高屈折率層とから構成される第2の多層膜ブラッグ反射鏡を形成するものである。
本発明によれば、高歩留まり性及び高信頼性を有し、高速変調動作が可能な面発光レーザを提供することができる。
本発明に係るVCSELでは、高速変調動作と高信頼性と同時に満足させるために、キャリア狭窄構造と光閉じ込め構造とが分離されている。また、両構造が十分に機能を発揮できるように、効果的に配置されている。これにより、それぞれの構造を比較的に自由に設計することができるので、高速性と高信頼性を同時に満足させるVCSELを実現できる。例えば、キャリア狭窄には酸化狭窄構造を用い、光閉じ込めには段差構造を用いることができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
実施の形態1
図1を用いて第1の実施の形態に係る面発光レーザについて説明する。第1の実施の形態に係る面発光レーザでは、基板101上に、第1のDBR102、電流狭窄層103、第1の半導体スペーサ層104、活性層105、第2の半導体スペーサ層106、第2のDBR107がこの順に積層されている。
第1のDBR102は、p型低屈折率層102aとp型高屈折率層102bとが交互に積層されたp型多層膜DBRである。
電流狭窄層103は、未酸化のp型半導体層からなる電流通過領域103aと酸化されたp型半導体層からなる電流ブロック領域103bとを備えている。
また、少なくとも一部がp型の第1の半導体スペーサ層104、活性層105、少なくとも一部がn型の第2の半導体スペーサ層106から光共振器が構成されている。
この面発光レーザは高速応答できるように、共振器を構成するメサ径を小さくし、メサ脇を樹脂層111で埋め込み、その上にn型電極110を設けている。
また、p型電極109は第1のDBR102の一部分から取っている。
第2のDBR107と接する第2の半導体スペーサ層106の最表面層には、段差構造108が形成されている。ここで、段差構造の段差厚をD、第2の半導体スペーサ層106の最表面層の屈折率をnとして、0.06λ≦D×n≦0.25λとしている。これより、面内に有効屈折率差を生じさせ、面内の光閉じ込めの強さを制御することを可能としている。ここで、下限値0.06λは、半導体DBRで構成された酸化狭窄型VCSELの酸化層厚としてλ/4層分すべてを酸化層にする場合(この構造で現実的に得られる最大の光閉じ込め)と同じ光閉じ込めを、本発明の段差構造で実現する場合の下限段差厚に対応している。すなわち、従来型の酸化狭窄構造では得られないほどの光閉じ込めを本発明では対象にしている。また、上限値0.25λは、光が段差凸部に閉じ込められる上限値である。
さらに、光共振器の共振器光学長が、レーザの発振波長λ又は1.5λである。これにより、積層方向のモード体積を小さくするだけでなく、段差構造による面内光閉じ込めも大きくしている。これは、段差構造の面内有効屈折率差(段差のある部分とない部分の有効屈折率の差)Δneffが、Δneff=neff×ΔLopt/Lopt、ただし、ΔLopt=D×n、で表されるため、Loptを小さくとり、ΔLoptを大きくとることによりΔneffを大きなものとすることができるためである。ここで、neffは段差構造における凸部分の有効屈折率、Loptは実効的な共振器光学長で、光共振器の共振器光学長と上下のDBR層への浸み出した光学長を足し合わせたものである。
従来の酸化狭窄構造で面内の光閉じ込めを大きくする場合、酸化層厚を厚くする必要があるが、それにより酸化層部と半導体層部には大きな歪みが発生する。そして電流の流れる酸化狭窄部に大きな歪みが加わることは信頼性低下に繋がる。本実施の形態では、面内の光閉じ込めを、電流の流れない段差構造に担わせているため、面内の光閉じ込めを強くしても高信頼性が保たれる。
また、第2のDBR107を構成する低屈折率層107aと高屈折率層107bとの屈折率差が1以上となるように構成されている。これにより、積層方向への光閉じ込めを強くしモード体積を小さくし、素子の高速応答を可能としている。半導体で構成された多層膜DBRの場合、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差は0.5程度である。本実施の形態に係る第2のDBR107では、屈折率差を1以上とすることにより、半導体で構成された多層膜DBRの光の侵入長の約1/2以下にすることができる。
上述の通り、第2のDBR107を構成する低屈折率層107aと高屈折率層107bとの屈折率差が1以上である。このような大きな屈折率差がある材料の組み合わせでは、低屈折率層107aが絶縁材料になる場合が多い。そのため、第2のDBR107には電流が流れず、その下の第2の半導体スペーサ層106を通じて面方向に電流が流れる。そのため、第2の半導体スペーサ層106の抵抗を小さくすることが重要で、移動度の高いn型層で構成することが必須となる。
本実施の形態1では、n型電極110から、少なくとも一部がn型の第2の半導体スペーサ層106を通じて、電子が活性層105へと流れる。一方、正孔は、p型電極109からp型の第1のDBR102を通り、電流狭窄層103で通過領域がp型の導電性を有する電流通過領域103aに絞られる。その後、少なくとも一部がp型の第1の半導体スペーサ層104ではそれほど広がらずに、活性層105に注入される。従って、キャリアの閉じ込め領域は、電流通過領域103aの狭窄径を変えることで自由に変えられる。このように、p型電極109とn型電極110の間に順方向電圧を印加すると、活性層105に逆方向から電子と正孔とが注入され、電流通過領域103aとほほ同じ領域が発光する。
一方、光閉じ込めに関しては積層方向と面方向の2方向の閉じ込めがあり、活性層105で発生した光は、積層方向には第1のDBR102と第2のDBR107により閉じ込められる。特に、本実施の形態では、素子の高速動作を実現するために、第2のDBR107を構成する低屈折率層107aと高屈折率層107bとの屈折率差が1以上となるようにして、積層方向のモード体積を小さくしている。また、面方向に関しては、第2のDBR107と接する第2の半導体スペーサ層106の表面層の段差構造108により閉じ込められている。
本実施の形態1では、この面内の光閉じ込めを十分強くするために、実効共振器長と段差厚に前述のような条件を付けている。これにより、光のモード体積を小さくすることができ、高速動作が可能となる。面内の光閉じ込めの領域は、段差構造108によって主に決められ、キャリア閉じ込めと独立に構造設計が可能となる。このため、素子の信頼性に大きく関連するキャリア閉じ込め周りの電流狭窄構造を劣化に耐え得るような構造にしつつ、素子の高速性を確保するような強い光閉じ込め構造を構成することができ、高速性と高信頼性を同時に満足することができる。
段差構造を用いた面内光閉じ込め効果自体は公知の技術であるが、我々は、非常に強い光閉じ込めが、素子の高速化に寄与することを見い出した。一般に、強い面内光閉じ込めは、面内高次モードを誘発するため、ビーム形状が複雑になり、また放射角も非常に大きくなるなど静特性上好ましくない。このため、通常は、面内光閉じ込めを弱くするような設計がなされる。また、高速性の観点からも、電流注入により基本モードから高次モードに移る場合、帯域の伸びが飽和するとの報告もある。
しかし、我々は、非常に強い面内光閉じ込め構造では、電流注入により面内モードが次々に高次のモードへ推移し、そのたびに光モード体積が減り、素子の光子密度は上昇することを見出した。すなわち、従来報告されているようにfrが飽和するのではなく、伸びることを見いだした。このような非常に強い面内光閉じ込めは、上述のようにキャリアと光との閉じ込めを分離し、さらにその構造にこれまで述べてきたような条件を加えることで初めて実現可能となる。
また、従来のトンネル接合型VCSELでも、段差構造を有するが、埋め込み成長による電流狭窄構造も兼ねているため、素子信頼性に問題が生じる。しかし、本実施の形態に係るVCSELでは、電流狭窄は酸化狭窄構造により実現されている。そのため、キャリアを狭窄するだけであれば、酸化狭窄層を光の定在波の節の部分に薄い層厚で配置すればよい。従って、この電流狭窄構造が信頼性に与える影響を無視できるほど小さくすることが可能となる。
さらに、電流の流れない酸化層は絶縁体スペーサ層として素子の容量低減に寄与するため、従来のトンネル接合型VCSELで必要であった容量低減のためのイオン注入をする必要もなく、プロセスによる歩留まり低下を抑制することができる。
実施の形態2
第2の実施の形態は、上記実施の形態1において、段差構造108の凸部パターンを、電流狭窄部の周辺から中心に向かって密になるように構成したものである。その他の構成は同様であるため、説明を省略する。
図2にその一例を示す。図2は、段差構造108を素子の上面から見たものである。凸部パターンは、多数の円形段差構造から構成される。図2では、電流狭窄部との配置を表すために、電流通過領域103aと電流ブロック領域103bとの境界線202も示している。凸部200と凹部201の比率は、境界線202から中心に向かうに従い、凸部200の割合が高くなっている。また、図3には、段差構造が複数の同芯円状構造からなる一例を示す。ここでも凸部300と凹部301の比率は、境界線302から中心に向かうに従い、凸部300の割合が高くなっている。
このような構造により、電流狭窄構造内部の等価屈折率の分布を自由に設計することができ、素子の中心に最も光が閉じ込められるようにすることができる。そのため、閾値電流やスロープ効率等の素子の静特性や変調特性を改善することができる。酸化電流狭窄構造のみにより光閉じ込めも制御していた場合には、このような設計はできなかった。なお、図2や図3では、電流狭窄径が凸部パターンの領域より広く描かれているが、凸部パターンの領域が電流狭窄径より大きくてもよい。
実施の形態3
第3の実施の形態は、実施の形態1において、第1のDBR102の一部にトンネル接合を設けたものである。その他の構成は同様であるため、説明を省略する。
図4にその断面模式図を示す。基板101上にn型低屈折率層102cとn型高屈折率層102dとが交互に積層されたn型多層膜DBRが積層されている。その上に、高濃度n型トンネル接合層102eと高濃度p型トンネル接合層102fが積層されている。さらに、その上に、p型低屈折率層102aとp型高屈折率層102bとが交互に積層されたp型多層膜DBRが積層されている。トンネル接合を設けたことで、実施の形態1における第1のDBR102のp型多層膜DBRの一部がn型多層膜DBRに置き換えられ、素子抵抗が低減する。その結果、発熱によるfrの飽和が緩和され、高速応答がさらに改善される。
実施の形態4
第4の実施の形態は、実施の形態3において、段差構造108を構成する半導体層を、第2の半導体スペーサ層106と選択的なエッチングが可能である材料から構成したものである。その他の構成は同様であるため、説明を省略する。
段差構造108を構成する半導体層と段差底部を構成する第2の半導体スペーサ層106とを異なる材料から形成し、選択的なエッチングを可能とする。選択的なエッチングが可能であるため、段差108の段差厚を、半導体層の層厚で正確に決めることができる。この段差厚は光閉じ込め強さの制御性において極めて重要なパラメータであり、この厚さの制御性が高まることにより、素子の歩留まりが向上する。
実施の形態5
第5の実施の形態は、実施の形態3における第2のDBR107を、半導体と半導体の酸化層とから構成したものである。その他の構成は同様であるため、説明を省略する。
半導体の酸化層からなる低屈折率層107aと半導体層からなる低屈折率層107bとが交互に積層された多層膜により、第2のDBR107が構成されている。屈折率差の大きな多層膜DBRを誘電体膜で形成する際、高屈折率層となる誘電体に適切なものがない場合があるが、この構成によれば、低屈折率層を半導体の酸化層で構成し、高屈折率層を半導体のエピタキシャル層で構成することができるため、材料選択の自由度が高くなる。
次に、具体的な実施例を用いて、実施例1の製造方法を図1に従って説明する。Znドープ(2×1018cm−3)p型GaAsからなる基板101上に、p型低屈折率層102aとしてのCドープ(2×1018cm−3)Al0.9Ga0.1As層とp型高屈折率層102bとしてのCドープ(2×1018cm−3)GaAs層との一対を基本単位にして35ペアのp型多層膜DBRである第1のDBR102を有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法にて積層する。もちろん、分子線エピタキシー成長(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法を用いてもよい。低屈折率層と高屈折率層の間は、電気抵抗低減のためにCドープAlGaAsグレーディット層(不図示)が挿入される。第1のDBR102を構成する各層厚は、いわゆるλ/4の多層反射膜になるように設計される。
次に、酸化電流狭窄層103を積層する。本実施例の場合、発振波長は1050nmで設計された。酸化電流狭窄層103は、基板側から積層された2つの低屈折率層(CドープAl0.9Ga0.1As層及び30nm厚のCドープAl0.98Ga0.02As層)から構成されている。この2層の合計の光学長はλ/4になるように設計される。このような層厚に設定することで、酸化電流狭窄層103も活性層105からの光を反射するDBRとしての機能も持つことができる。
次に、共振器が積層される。具体的には、基板側から順に、CドープGaAsからなる第1の半導体スペーサ層104、アンドープGaAs層(不図示)、5nm厚のアンドープIn0.3Ga0.7Asウエル層と10nm厚のアンドープGaAsバリア層からなる3重量子井戸活性層105、アンドープGaAs層(不図示)、SiドープGaAsからなる第2の半導体スペーサ層106が積層される。共振器長は3/2λとし、活性層105の中心がVCSELのつくる電界強度の腹の位置になるように、酸化電流狭窄層103までの光学長をλ/2とし、また第2の半導体スペーサ層106の最表面までの光学長をλとした。
ここで、一旦成長ウエハを成長炉から取り出し、円形メサ型のマスクレジストをかけてドライエッチングによりp型DBRである第1のDBR102の高屈折率層102bが露出するまでエッチングを行い、直径約20μmの円柱状メサ構造を形成する。この工程により、Al0.98Ga0.02Asの電流狭窄層103の側面が露出する。そして、水蒸気雰囲気中の炉内において温度約400℃で約10分間加熱を行う。電流狭窄層103のAl組成は0.98と大きく、第1のDBR102の中のAlGaAsp型低屈折率層102aのAl組成0.9と差があるため酸化速度が速く、電流狭窄層103で選択的に酸化が進む。これにより、ドーナッツ型の電流ブロック部103bが形成され、中心部には直径が約6μmの電流通過部103aが形成される。
その後、段差構造108を形成するため、凸部として残す部分にマスクレジストをかけてパターニングし、ウエットエッチングによりマスクのかかっていない領域を除去し段差構造108を形成する。段差構造108の径は約6μmと酸化電流狭窄径と同じであった。形成された段差は約50nmであり、SiドープGaAsからなる第2の半導体スペーサ層106の屈折率が約3.5であるから、段差による光学長は175nmであり、0.167λに対応する。その後、SiOからなる低屈折率層107aとアモルファスSiからなる高屈折率層107bとの一対を基本単位にして3ペアの誘電体DBRである第2のDBR107を積層し、メサの周りの一部をポリイミドで埋め込む。そして、CドープGaAs層からなるp型高屈折率層102b上に、チタン(Ti)/金(Au)からなるp型電極109を形成する。また、SiドープGaAsからなる第2スペーサ層106上に、AuGe合金からなるn型電極110を形成する。SiOからなる低屈折率層107aとアモルファスSiからなる高屈折率層107bとの発振波長での屈折率差は約2.5であり、積層方向に非常に強い光閉じ込め効果を有している。
このVCSEL素子に、電圧を印加することで電流が流れ、電流値が閾値電流を越えたところでレーザ発振する。電圧は、電極109と電極110の間に印加し、電極109の方が電極110よりも高電圧になるようにする。このVCSELの電流狭窄径6μmの素子の発振閾値電流は、0.5mA、微分抵抗は80Ωと良好な静特性を有している。このVCSEL素子では、面内及び積層方向に強い光閉じ込めが生じているため、電流に対する変調帯域の増加率が大きく、frが熱飽和する前に高い変調帯域を得ることができる。実際、小信号変調実験から、この素子のfrの最大は、約24GHzであり、通常のλ共振器の酸化狭窄型VCSELの16GHzを大幅に上回った。また、素子の信頼性も酸化電流狭窄層の層厚を30nmと薄くしているため、酸化層と接する半導体部との間にかかる応力が軽減されており、室温での平均寿命として約100万時間を得た。このように本発明を用いると高速性と高信頼性を同時に満足するVCSELを実現することができる。
実施例1において、段差構造108の段差パターンを図5のようにすることで面内光閉じ込めをさらに中心に集中させることができる。凸パターン300は、中心から外径が3μmの円形凸部300a及び外径がそれぞれ5、7.5、10μmで幅がそれぞれ0.5、0.25、0.25μmの3つの円環状凸部300b、300c、300dが同心円状に形成されている。電流酸化狭窄径は6μmであり境界線302も図中に示した。この段差パターンを用いることで、発振閾値電流は、0.4mAと改善され、放射角も実施例1よりも5°程度狭くすることができた。
実施例3では、第3の実施の形態と同様に、実施例1において、第1のDBR102の一部にトンネル接合を設ける。基板101上にSiドープ(2×1018cm―3)Al0.9Ga0.1Asからなるn型低屈折率層102cとSiドープ(2×1018cm―3)GaAsからなるn型高屈折率層102dとを33ペア交互に積層させたn型多層膜DBRが積層されている。引き続き、高濃度Siドープ(1×1019cm―3)In0.15Ga0.85Asからなるn型トンネル接合層102eと高濃度Cドープ(2×1019cm―3)GaAs0.85Sb0.15からなるp型トンネル接合層102fが積層される。さらに、その上に、Cドープ(2×1018cm−3)Al0.9Ga0.1Asからなるp型低屈折率層102aとCドープ(2×1018cm−3)GaAsからなるp型低屈折率層102bとを交互に積層させたp型多層膜DBRが積層される。トンネル接合部は高濃度ドーピングによる吸収の影響を抑制するため定在波の節の位置に設ける。トンネル接合を設けたことで、p型の多層膜DBRの一部をn型の多層膜DBRに置き換えることができ、素子抵抗が約10Ω低減する。その結果、発熱によるfrの飽和が緩和されfrとして26GHzの高速応答が得られる。
また実施例4では、第4の実施の形態と同様に、実施例3において段差構造108を構成する半導体層を、その下の半導体層と選択的なエッチングが可能である材料系から構成する。この場合、段差構造108として、GaAs基板に格子整合するInGaP層を用いる。InGaPの層厚は結晶成長時に正確に決められ、さらにその下のGaAsからなる第2スペーサ層106と塩酸による選択エッチングが可能であるため、段差厚の精密な制御がウエハ面内全体に渡って可能となり、素子の製造歩留まりが大幅し向上する。
また実施例5では、第5の実施の形態と同様に、実施例3において第2のDBR107を半導体と半導体を酸化させた層から構成することができる。例えば、低屈折率層107aとしてAl0.98Ga0.02Asの酸化層を用い、高屈折率層107bとしてAl0.9Ga0.1As層を用いる。水蒸気酸化でAl0.98Ga0.02As層を酸化層に変えることで、850nmでも光吸収の少ない、屈折率差1.5以上のDBRが形成される。例えば、実施例1〜4で用いたSiO層/アモルファスSi層からなる3ペアの誘電体DBRでは、波長1μmより小さい場合、アモルファスSi層の光吸収がに顕著になり、DBRとして使用できなくなる。本実施例のような構成により、材料選択の幅が広がり、設計の自由度が向上する。
本実施例では、面発光レーザの発振波長として1050nmの例を挙げたが、他の材料系を用いた異なる波長帯においても同様の効果が期待される。また、本実施例では量子井戸構造のウエル数を3としたが、発振に必要なゲインが得られるならこれに限定されない。
本発明の第1、4、5の実施の形態及び実施例1に係る面発光レーザの模式断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る段差パターンの一例である。 本発明の第2の実施の形態に係る段差パターンの一例である。 本発明の第3の実施の形態及び実施例3に係る面発光レーザの模式断面図である。 本発明の実施例2に係る段差パターンの一例である。
符号の説明
101 基板
102 第1のDBR
102a p型低屈折率層
102b p型高屈折率層
102c n型低屈折率層
102d n型高屈折率層
102e 高濃度n型トンネル接合層
102f 高濃度p型トンネル接合層
103 電流狭窄層
103a 電流通過部
103b 電流ブロック部
104 第1の半導体スペーサ層
105 活性層
106 第2の半導体スペーサ層
107 第2のDBR
107a 低屈折率層
107b 高屈折率層
108 段差構造
109 電極
110 電極
111 樹脂層
200、300 凸部
201、301 凹部
202、302 境界線

Claims (8)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成された第1の多層膜ブラッグ反射鏡と、
    前記第1の多層膜ブラッグ反射鏡上に形成され、p型の導電性を有する酸化電流狭窄層と、
    前記酸化電流狭窄層上に形成され、少なくとも一部にp型の導電性を有する第1の半導体スペーサ層と、
    前記第1の半導体スペーサ層上に形成された活性層と、
    前記活性層上に形成され、少なくとも一部にn型の導電型を有する第2の半導体スペーサ層と、
    前記第2の半導体スペーサ表面に形成された段差構造と、
    前記第2の半導体スペーサ上に形成され、屈折率差が1以上の低屈折率層と高屈折率層とから構成される第2の多層膜ブラッグ反射鏡と、を備えた面発光レーザ。
  2. 共振器光学長が発振波長λの1倍又は1.5倍であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
  3. 前記段差構造の段差厚Dが、第2の半導体スペーサ層の表面層の屈折率をnとして、0.06λ≦D×n≦0.25λを満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
  4. 前記段差構造が複数の凸部から構成され、当該凸部の形成密度が、電流狭窄部の周辺から中心に向かって高くなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
  5. 前記第1の多層膜ブラッグ反射鏡の一部に、トンネル接合を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
  6. 前記段差構造を形成する半導体層が、その下の半導体層と選択的にエッチングが可能である材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
  7. 前記第2の多層膜ブラッグ反射鏡が、半導体と半導体の酸化層とから構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
  8. 基板上に第1の多層膜ブラッグ反射鏡を形成し、
    前記第1の多層膜ブラッグ反射鏡上に、p型の導電性を有する酸化電流狭窄層を形成し、
    前記酸化電流狭窄層上に、少なくとも一部にp型の導電性を有する第1の半導体スペーサ層を形成し、
    前記第1の半導体スペーサ層上に、活性層を形成し、
    前記活性層上に、少なくとも一部にn型の導電型を有する第2の半導体スペーサ層を形成し、
    前記第2の半導体スペーサ表面に段差構造を形成し、
    前記第2の半導体スペーサ上に、屈折率差が1以上の低屈折率層と高屈折率層とから構成される第2の多層膜ブラッグ反射鏡を形成する面発光レーザの製造方法。
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