以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1、図2、図3は、本発明の実施の形態に係る、利用者(不図示)により入金された入金硬貨(不図示)及び係員(不図示)により補充された補充硬貨(不図示)を処理する硬貨処理装置1の構成を示すブロック図である。
図1は、入金硬貨の流れ(L1)を太い直線で示し、利用者が取引を取り消した場合に返却される硬貨の流れ(L2)および入金をリジェクトされたリジェクト硬貨の流れ(L3)を太く短い破線で示し、回収される回収硬貨の流れ(L4)を太い点線で示す。図2は、補充硬貨の流れ(L5)を太い一点鎖線で示し、補充をリジェクトされた補充リジェクト硬貨の流れ(L6)を太い二点鎖線で示し、利用者との取引の終了後に出金される出金硬貨の流れを太い破線(L7)で示す。図3は、制御信号の流れを細い点線(L8)で示す。
硬貨処理装置1は、箱状の装置本体2と、装置本体2内に配置される、入金口3と、入金繰出部4と、入金搬送部5と、一時保留部6と、スタッカ部7と、出金搬送部8と、出金口9と、補充部10と、金庫部11と、補充リジェクト庫12と、制御部13と、操作部(不図示)とを備える。
入金口3は、接客面(不図示)に開口して設けられ、利用者(不図示)から取引に際し一枚または複数枚投入される硬貨(貨幣)(不図示)を硬貨処理装置1内に受け入れる。入金繰出部4は、入金口3が受け入れた硬貨を一枚ずつ分離し、入金搬送部5へ繰り出す。
入金搬送部5は、入金搬送路(不図示)と、搬送駆動手段(不図示)と、識別部14と、搬送センサ部(不図示)と、振分部15とを含んで構成される。入金搬送部5は、入金繰出部4によって繰り出された硬貨を搬送し、搬送された硬貨を識別部14によってを識別し、識別された硬貨を振分部15によって振り分ける。
入金搬送路(不図示)は、板金(不図示)と搬送ベルト(不図示)とを組み合わせて構成され、入金繰出部4によって繰り出された硬貨を板金と搬送ベルトとの間に挟んで搬送する。搬送ベルトは、搬送ベルトの幅方向略中央に硬貨を挟み込むようにして硬貨を搬送する。搬送駆動手段は、搬送ベルトが掛けわたされ、硬貨を搬送するために搬送ベルトを移動させるプーリ(不図示)と、プーリを回転駆動する回転駆動手段としての駆動モータ(不図示)とを含んで構成される。
識別部14は、搬送される硬貨の真偽、および金種を一枚ずつ識別するものである。本発明の硬貨処理装置は、複数の金種を取り扱えるものであり、本実施の形態では、金種は、10円、50円、100円、500円の4金種である。識別部14は、内部に検知回路(不図示)、CPU(不図示)、データ格納庫(不図示)を含んで構成され、各種識別情報が、識別部14から制御部13へ出力される。硬貨の真偽とは、正硬貨(真性硬貨)と偽硬貨との別のことであり、正規の形状の正硬貨と極端に磨耗した正硬貨/変形した正硬貨との別、また、例えば装置が日本国に設置された場合、日本国の硬貨と外国の硬貨との別、日本国の硬貨のうち処理対象の金種を限定した場合は、処理対象硬貨と処理対象外硬貨との別を含む。これらの硬貨のうち、後者をリジェクト硬貨と呼ぶ。
搬送センサ部(不図示)は、識別部14と振分部15との間の適宜な位置に設けられ、入金搬送路を搬送されて通過する硬貨を一枚ずつ検知するものである。検知結果は制御部13に出力される。
振分部15は、リジェクト部16と振分板17とを含んで構成され、リジェクト部16により硬貨を正硬貨とリジェクト硬貨とを振り分ける。さらに振分板17により正硬貨を金種別ごとに振り分ける。
リジェクト部16は、振分板17の上流側(硬貨の流れに対し上流側)に設けられ、リジェクト硬貨を振り分ける振分爪(不図示)と、振分爪の鉛直方向下方のシュート(不図示)と、リンク機構(不図示)と、リンク機構を介して振分爪を駆動する振分爪駆動手段(ソレノイド)(不図示)とを含んで構成される。リジェクト部16は、入金動作の場合には、正硬貨以外の硬貨の入金をリジェクトする。後述のシャッタ機構77はリジェクト部16によりリジェクトされたリジェクト硬貨を出金搬送部8を経由して出金口9に向かうよう振り分ける。また、リジェクト部16は、補充動作の場合は、受け入れることのできない補充硬貨をリジェクトする。後述のシャッタ機構77はリジェクト部16によりリジェクトされた補充硬貨を補充リジェクト庫12に向かうよう振り分ける。
リジェクト部16によるリジェクト硬貨及び補充リジェクト硬貨の振り分けは、識別部14からの識別情報に基づき、制御部13から振分爪駆動手段(不図示)へ振分爪の動作指令、及び動作タイミングが出力され、振分爪駆動手段により振分爪が駆動され、振分爪が動作することにより行われる。なお、本実施の形態の場合、入金動作と補充動作の切換は係員の操作部(不図示)の操作により行われる。入金動作の場合と補充動作の場合の硬貨の振り分けは、一時保留部6の後述の入金/補充振分手段18により行われる。リジェクト部16の振分爪(不図示)の下方のシュート(不図示)は、一時保留部6の後述の一時保留室19の上部の上部シュート51(図5)に接続される。
リジェクト部16の下流側の振分板17は、金種別に違った大きさの孔を有する。リジェクト硬貨がリジェクト部16により除かれた後に、正硬貨は、搬送ベルトにより振分板17まで搬送される。振分板17は、硬貨を振分板17の孔を通過して落下させ、金種別に対応する後述の一時保留室19へそれぞれ振り分ける。本実施の形態では、径が最小の50円硬貨をまず振り分けて落下させ、100円硬貨、10円硬貨、500円硬貨と径が小さい順に振り分けて落下させる。振分板17の代わりに、硬貨を金種別にそれぞれ振り分ける振分爪(複数)(不図示)を備えてもよい。
一時保留部6は、利用者が投入した入金硬貨や、係員が補充した補充硬貨を金種ごとに一旦保留するものである。一時保留部6は、保留した入金硬貨を入金処理の確定によりスタッカ部(循環釣銭部)7側に振り分ける。また、取引の取消による入金処理の取消や、硬貨の搬送ミスがあった場合一時保留部6は、入金硬貨をスタッカ部7に送らず出金搬送部8側に振り分ける。スタッカ部7に振り分けられ金種ごとに貯留されている入金硬貨は、利用者との取引の終了後の出金にあたりスタッカ部7から、出金搬送部8、出金口9を経て利用者に出金される。
一時保留部6は、一時保留した補充硬貨を補充処理の確定(例えば、所定の補充枚数の補充が一時保留部6に対してなされた場合、あるいは一時保留部6への補充が終了した場合をいう)によりスタッカ部7側に振り分ける。また、補充処理のエラーがあった場合、一時保留部6は補充硬貨を補充リジェクト庫12側に振り分け、振り分けられた補充硬貨は補充リジェクト庫12に収納される。
次に、図4、図5、図6を参照して、一時保留部6の構成を述べる。図4は、一時保留部6の底面図である。図5は、一時保留部6の後述の一時保留室19の縦断面図(図4におけるM1−M1断面)を上下180度反転した図である。図6は、一時保留部6の後述のシュート室57の縦断面図(図4におけるM2−M2断面)を上下180度反転した図である。ただし、図4では、後述の第1のシャッタ221(図4中、左側)を、第1のシャッタ221の第1の先端251の形状が分かるように部分的開状態にして描いている。一方、図5では、後述の一対の第1のシャッタ221と第2のシャッタ222がともに閉状態にある場合を描いている。
一時保留部6は、入金/補充振分手段18と、入金側に金種(4金種)ごとに水平に一列(図4中、Y方向)に配置された一時保留室19(合計4個)と、補充側に金種(4金種)ごとに水平に一列(図4中、Y方向)に配置された一時保留室19(合計4個)と、入金側の一時保留室19に残留する硬貨をそれぞれ検知する第1の残留硬貨検知手段45(合計4個)と、補充側の一時保留室19に残留する硬貨をそれぞれ検知する第1の残留硬貨検知手段45(合計4個)と、入金側の一時保留室19に残留する硬貨を一括して検知する第2の残留硬貨検知手段67(1個)と、補充側の一時保留室19に残留する硬貨を一括して検知する第2の残留硬貨検知手段67(1個)とを有する。図4中、X方向、Y方向は、ともに水平方向であり、互いに直角である。
一時保留部6は、さらに入金側に、シャッタ機構21(1個)と、回動機構31(1個)と、回動駆動手段(不図示)(1個)と、回動機構31の後述のカム32の回転位置および回動機構31の後述のシャッタレバー33の回動位置を検知する角度位置検知手段40(1組)とを有し、同様に、補充側に、シャッタ機構21(1個)と、回動機構31(1個)と、回動駆動手段(不図示)(1個)と、後述のカム32の回転位置および後述のシャッタレバー33の回動位置を検知する角度位置検知手段40(1組)とを有する。回動機構31はシャッタ機構21を駆動し、回動駆動手段は回動機構31を駆動する。一時保留部6は、さらに、入金側の一時保留室19及び補充側の一時保留室19の上方にそれぞれ配置された、上部シュート51(合計4個)と、入金側の一時保留室19の下部に配置された入金側の仕切板23(合計4個)と、補充側の一時保留室19の下部に配置された補充側の仕切板23(合計4個)とを有する。
一時保留部6は、さらに入金側のシュート室57(1個)を有する。シュート室57は、リジェクト部16の下方に配置され、上部に上部シュート58、下部に上部シュート58から分岐する入金側の下部シュート59と、補充側の下部シュート60を有する。下部シュート59は、水平断面が矩形の第3の出口61を有し、第3の出口61は、第3の出口61の下方に配置されたシュート(不図示)を介して出金口9(図1)に連通する。下部シュート60は、水平断面が矩形の第4の出口62を有し、第4の出口62は、第4の出口62の下方に配置されたシュート(不図示)を介して補充リジェクト庫12(図1)に連通する。
入金/補充振分手段18は、シャッタ機構76と、シャッタ機構77と、シャッタ機構76とシャッタ機構77とを駆動するシャッタ駆動手段(不図示)とを有する(各1個)。シャッタ駆動手段はソレノイドとするとよい。
シャッタ機構76は、各上部シュート51に配置されたシャッタ20(合計4枚)を有する。装置の入金/補充の動作に対応して、振分板17(図1)により金種ごとに振り分けられた硬貨は、上部シュート51に向けて鉛直方向(図5のZ方向)下方に送られ、シャッタ20により、入金側の一時保留室19(図4中、右側)(図5中、左側)と補充側の一時保留室19(図4中、左側)(図5中、右側)とに振り分けられる。
シャッタ機構77は、上部シュート58に配置されたシャッタ56(1枚)を有する。装置の入金/補充の動作に対応して、リジェクト部16により振り分けられた硬貨は、上部シュート58に向けて鉛直方向(図6のZ方向)下方に送られ、シャッタ56により、下部シュート59と下部シュート60とに振り分けられる。
図6において、シャッタ56が下部シュート60を閉にする位置(図6中、実線で表す)にあるとき、シャッタ56は、上部シュート58と下部シュート60との境にある。シャッタ56が下部シュート59を閉にする位置(図6中、一点鎖線で表す)にあるとき、シャッタ56は、上部シュート58と下部シュート59との境にある。
前述のように下部シュート59は、出金口9に連通し、下部シュート60は、補充リジェクト庫12に連通するので、シャッタ機構77は、リジェクト部16により振り分けられた硬貨を、出金口9(図1)側と補充リジェクト庫12(図2)側とに振り分ける。実線で示す位置にシャッタ56(図6)がある場合は、硬貨は出金口9に導かれ、シャッタ56が実線で示す状態から回動し、一点鎖線で示す位置にある場合(図6)は、硬貨は補充リジェクト庫12に導かれる。
一時保留室19の具体的構成をさらに説明する。
入金側の一時保留室19(各金種ごとに合計4個)が、図4中、Y方向に互いに隣合って配置され、補充側の一時保留室19(各金種ごとに合計4個)が、図4中、Y方向に互いに隣り合って配置されている。また、同じ金種用の入金側の一時保留室19と同じ金種用の補充側の一時保留室19とが、図4中、X方向に、隣合って配置されている。すなわち、例えば、10円用の入金側の一時保留室19と10円用の補充側の一時保留室19とが、図4中、X方向に、隣合って配置されている。
前述のように、入金側の一時保留室19と補充側の一時保留室19の、硬貨の流れに対して上流側である各上部シュート51には、1枚のシャッタ20が設置され、シャッタ20により硬貨が入金側の一時保留室19と補充側の一時保留室19とに振り分けられる。
シャッタ20が入金側の一時保留室19を開とし補充側の一時保留室19を閉にする位置(図5中、実線で表す)にあるとき、シャッタ20は、上部シュート51と補充側の一時保留室19との境にある。シャッタ20が補充側の一時保留室19を開とし、入金側の一時保留室19を閉にする位置(図5中、一点鎖線で表す)にあるとき、シャッタ20は、上部シュート51と入金側の一時保留室19との境にある。
実線で示す位置にシャッタ20がある場合(図5)は、硬貨は上部シュート51から入金側の一時保留室19に導かれる。シャッタ20が実線の状態から回動し、一点鎖線で示す位置にある場合(図5)は、硬貨は上部シュート51から補充側の一時保留室19に導かれる。
シャッタ駆動手段(不図示)は、4枚のシャッタ20と1枚のシャッタ56を同時に一括して駆動して回動させる。すなわち、同時に一括してシャッタ20とシャッタ56を開閉させる。
シャッタ機構21は、第1のシャッタ221(4枚)と、第2のシャッタ222(4枚)と、第1の回動軸271(1本)と、第2の回動軸272(1本)とを有する。以下、シャッタ機構21のシャッタ、回動軸等の「第1の」、「第2の」が付いた構成要素について、「第1」と「第2」を区別する必要の無い場合は、「第1の」、「第2の」を省略して記載し、符号の「1」、「2」を省略する。
各回動軸27には、4枚のシャッタ22が固定されている。4枚のシャッタ22は各金種の一時保留室19にそれぞれ配置されている。各回動軸27は、4枚のシャッタ22を同時に回動させ同時に開閉する。一つの一時保留室19には、1枚の第1のシャッタ221と、1枚の第2のシャッタ222が配置されている。各回動軸27は、Y方向に一列に並んで配置された4つの一時保留室19を貫通する。第1のシャッタ221は、第1の回動軸271が固定される第1の固定端241と、第1の固定端241に対向する第1の自由端としての第1の先端251とを有する。第2のシャッタ222は、第2の回動軸272が固定される第2の固定端242と、第2の固定端242に対向する第2の自由端としての第2の先端252とを有する。各回動軸27は、図4中、Y方向に平行に配置されている。
次に、一時保留室19内の第1のシャッタ221と第2のシャッタ222と、第1の回動軸271と第2の回動軸272の配置の関係を説明する。前述のように一時保留室19には第1のシャッタ221と第2のシャッタ222が配置され、第1の回動軸271と第2の回動軸272が一時保留室19の内壁面28に沿って貫通する。
図5において、入金側の一時保留室19内で右側に配置されているのが第1のシャッタ221であり、左側に配置されているのが第2のシャッタ222であり、右側に配置されているのが第1の回動軸271であり、左側に配置されているのが第2の回動軸272である。
同様に、補充側の一時保留室19内で左側に配置されているのが第1のシャッタ221であり、右側に配置されているのが第2のシャッタ222であり、左側に配置されているのが第1の回動軸271であり、右側に配置されているのが第2の回動軸272である。
シャッタ22は、一時保留室19の下部に位置する。閉鎖状態のときに、シャッタ22は、先端25を下方に向け、シャッタ22同士が互いに観音開きに回動し、シャッタ22は、回動軸27の回りに回動するよう構成されている。回動軸27の回りに回動するとは、回動軸27によって回動軸27の中心軸線(不図示)の回りに回動することをいう。
シャッタ22の先端25は、幅方向に切込みが入れられた切込部26が形成され、シャッタ22がともに閉状態にある場合、一方のシャッタ22の先端25の切込部が形成されていない部分が、他方のシャッタ22の先端25の切込部26と係合するよう構成されている。このように係合することを、一方のシャッタ22の先端25と他方のシャッタ22の先端25とが係合するというものとする。したがって、シャッタ22がともに閉状態にあるとき回動軸27に沿った水平方向から見た場合、一対のシャッタ22はV字に配置されている。すなわち、一対のシャッタ22は、回動軸27の鉛直方向下方で係合している。
入金側の仕切板23は、入金側の一時保留室19の下部に形成されている出口を、図5中、左側の第2の出口52と、図5中、右側の第1の出口53(第2の出口とは別)とに分割する。第2の出口52が第2のシャッタ222が閉状態になることによって閉鎖され(塞がれ)、さらに第1の出口53が第1のシャッタ221が閉状態になることによって閉鎖されれば(塞がれれば)、硬貨を入金側の一時保留室19内に一時的に保留することが可能となる。第1の出口53、第2の出口52の水平断面は矩形である。
補充側の仕切板23は、補充側の一時保留室19の下部に形成されている出口を、図5中、右側の第2の出口54と、図5中、左側の第1の出口55(第2の出口とは別)とに分割する。第2の出口54が第2のシャッタ222が閉状態になることによって閉鎖され(塞がれ)、さらに第1の出口55が第1のシャッタ221が閉状態になることによって閉鎖されれば(塞がれれば)、硬貨を補充側の一時保留室19内に一時的に保留することが可能となる。
第1の出口53および第1の出口55は、第1の出口53の下方に配置されたシュート(不図示)、および第1の出口55の下方に配置されたシュート(不図示)を介してスタッカ部7に連通している。入金側の一時保留室19の第1のシャッタ221が開状態となったときに、入金側の一時保留室19内に一時保留されていた硬貨は第1の出口53から放出(第1の放出)される。補充側の一時保留室19の第1のシャッタ221が開状態となったときに、補充側の一時保留室19内に一時保留されていた硬貨は第1の出口55から放出(第1の放出)され、これらの硬貨は、スタッカ部7に導かれる。
第2の出口52は、第2の出口52の下方に配置されたシュート(不図示)を介して出金口9に連通し、入金側の一時保留室19の第2のシャッタ222が開状態となったときに、入金側の一時保留室19内に一時保留されていた硬貨は第2の出口52から放出(第2の放出(第1の放出とは異なる))され、出金口9に導かれる。第2の出口54は、第2の出口54の下方に配置されたシュート(不図示)を介して補充リジェクト庫12に連通し、補充側の一時保留室19の第2のシャッタ222が開状態となったときに、補充側の一時保留室19内に一時保留されていた硬貨は第2の出口54から放出(第2の放出(第1の放出とは異なる))され、補充リジェクト庫12に導かれる。
仕切板23は、一時保留部6の内部であってシャッタ22の下方に設けられ、一方のシャッタ22が開状態になった場合、開状態になった一方のシャッタ22の直下方に配置されたシュート(不図示)に確実に落下し、閉状態にある他方のシャッタ22の直下方にある出口に対応するシュート(不図示)に落下しないようにしている。
一時保留部として、前身の装置では、筒式の保留機構を採用していた。しかし、筒式の硬貨立ちやジャムの問題、残留検知センサの配置、振分機構の板金加工の複雑化を改善するために本実施の形態の機構を採用した。
さらに、図7、図8、図9、図10を追加して参照して、一時保留部6の残りの構成を説明する。図7は、図4におけるM3−M3矢視図を上下180度反転して示した図であり、入金側の一時保留室19の隔壁を省略し、シャッタ22をともに閉状態にして描いたカムに関連する図である。図7は、また図4におけるM4−M4矢視図でもあり、補充側の一時保留室19の隔壁、及びシュート室57を省略し、シャッタ22をともに閉状態にして描いた図にも相当する。図8は、カムの側面図を上下180度反転して示した図である。図9は、図4のM5−M5矢視図であり、図4における500円用の入金側の一時保留室19とその周辺の部分正面図であり、シャッタ22が見えるよう外壁を一部省略している。図10は、後述の残留検知センサ46の構成と配置を示すブロック図である。
回動機構31には、入金側の回動機構31と補充側の回動機構31とがある。回動機構31は、一つの円板形状のカム32と、一つの第1のシャッタレバー331と一つの第2のシャッタレバー332と、一つのカム回転位置検知板34(図7、図8中、破線)とを備える。第1のシャッタレバー331は、第1の回動軸271のカム32側の端部に固定的に接続され、カム32の回転を第1の回動軸271に伝動する。第2のシャッタレバー332は、第2の回動軸272のカム32側の端部に固定的に接続され、カム32の回転を第2の回動軸272に伝動する。シャッタレバー33が回動することにより、シャッタ22が回動する。シャッタレバー33は耳部36を有し、耳部36は後述のようにシャッタの回動角度位置の検知に用いられる。なお、カム32の回転の回転軸線(不図示)は、Y方向(図4)に平行である。
ここで、図4を参照して説明する。入金側のカム32は、入金側の一時保留室19の側壁30(X方向に平行な鉛直面)に平行に取り付けられている。補充側のカム32は、シュート室57の側壁63(X方向に平行な鉛直面)に平行に取り付けられている。カム32の側壁30または側壁63と直接対向する側面68には環状の溝35(図7)が形成されている。第1のシャッタレバー331は、側壁30または側壁63に直接対向する側とは反対側の面に、一端部としての第1の係合部371を有し、第1の係合部371は溝35(図7)により形成された軌道に係合する。
図7〜図10に戻って説明する。カム32の回転は、溝35により形成された軌道に係合する第1の係合部371を介して第1のシャッタレバー331に伝達され、第1のシャッタレバー331を回動させる。第2のシャッタレバー332も、同様に、一端部としての第2の係合部372を有し、第2の係合部372は溝35により形成された軌道に係合する。カム32の回転は、溝35により形成された軌道に係合する第2の係合部372を介して第2のシャッタレバー332に伝達され、第2のシャッタレバー332を回動させる。
カム32は、対称軸線65を有し、カム32は、対称軸線65に対して図7中、左右対称に形成されている。溝35も、対称軸線65に対して図7中、左右対称に形成されている。カム32が図7中、反時計方向(一方向)、あるいは時計方向(他方向)に回転すると係合部37は、溝35より形成された軌道内を移動する。図7に示す状態では、カム32の回転角度は0度であり、カム32の対称軸線65は、鉛直方向にある。この状態がカム32が基準位置にある状態であり、第1のシャッタ221と第2のシャッタ222がともに閉状態にある。
図8中、カム32が反時計方向に回動し、第1の係合部371が溝35より形成された軌道に沿って移動する場合の、第1の係合部371の中心OE1とカム32の回転中心OCを結んだ線を、カム32の回転角度に応じて、KS1、KT1、KU1、KV1、KW1、KX1で示す。カム32の回転角度が基準状態から0度のとき、第1の係合部371は、線KS1上にある。線KT1は、線KS1から約27度、線KU1は、線KS1から約40度、線KV1は、線KS1から約50度、線KW1は、線KS1からから約65度、線KX1は、線KS1から約93度の位置のある。
第2の係合部372の中心OE2とカム32の回転中心OCを結んだ線をKS2で示し、第2の係合部372が約50度回動したときの第2の係合部372の中心OE2とカム32の回転中心OCを結んだ線をKM2とすし、第2の係合部372が約95度回動したときの第2の係合部372の中心OE2とカム32の回転中心OCを結んだ線をKN2とする。
第1の係合部371が、線KS1から線KT1まで、溝35より形成された軌道内を移動しているときに、溝35の回転中心OCからの距離は変化しないので、第1のシャッタ221は、閉状態を維持する。溝35の線KS1から線KT1までは、第1の溝曲率半径不変域Z1である。
第1の係合部371が、線KT1から線KU1まで、溝35より形成された軌道内を移動しているときに、溝35の回転中心OCからの距離は減少するので、第1のシャッタ221は、わずかに開く(微開)。溝35の線KT1から線KU1までは、第1の溝曲率半径変化域Z2である。
第1の係合部371が、線KU1から線KW1まで、溝35より形成された軌道内を移動しているときに、溝35の回転中心OCからの一定であるので、第1のシャッタ221は、わずかに開いた状態を維持する。溝35の線KU1から線KW1までは、第2の溝曲率半径不変域Z3(曲率半径は第1の溝曲率半径不変域Z1の曲率半径よりも小)である。
第1の係合部371が、線KV1を通過するとき、第2のシャッタ222の第2の係合部372が、線KM2を通過する。溝35の線KM2が横切る溝35の箇所に段差69が形成されており、この段差69が溝35より形成された軌道に沿って移動する第2の係合部372にカム32の径方向の変位を与えるので、この変位が第2のシャッタレバー332を介して、第2のシャッタ222に伝達され、第2のシャッタ222が振動する。この振動が起こる状態の前後では、第2のシャッタ222は閉状態に維持されている。第1のシャッタ221が閉状態から開状態に移行する前の微開状態に維持されているときに、第2のシャッタ222のこの振動が生ずる。この振動によって、硬貨に外乱を与え、硬貨の噛み込み状態が発生していたときは噛み込み状態を変化させ、第1のシャッタ221が開いたときに噛み込みが外れやすいようにすることができる。溝35の線KY2の周辺は段差69が形成された段差部である。典型的には、段差部では曲率半径が第2の係合部372の通過前後でわずかに増加しかつその後減少する。
第1の係合部371が、線KW1から線KX1まで、溝35より形成された軌道内を移動しているときに、溝35の回転中心OCからの距離は大きく減少するので、第1のシャッタ221は、僅かに開いた状態から大きく開く。溝35の線KW1から線KX1までは、第2の溝曲率半径変化域Z4である。なお、第2の溝曲率半径変化域Z4は、溝35に中間段差74が形成されているととらえることができ、第2の溝曲率半径変化域Z4は、中間段差部であるといえる。
第1の係合部371が、溝35の線KX1に到達した後も、第1の係合部371は、溝35より形成された軌道内の摺動を続け、最終的に停止するまでの間に、第2の係合部372が、線KN2を通過する。溝35の線KN2が横切る溝35の箇所に段差69が形成されており、この段差69が第2の係合部372にカム32の径方向の変位を与えるので、第2のシャッタ222が振動する。このとき、第1のシャッタ221は、全開の状態を維持しており、この振動によって一時保留部6(図1)の第1の出口53から硬貨を確実に落下させることができる。
カム32の回転位置(回転角度位置)を検知するカム回転位置検知板34(図7、図8中、破線)は、側壁30(図4)または側壁63(図4)と直接に対向するカム32の側面68と反対側の側面78に取り付けられた突起部75に、カム32のY方向の中心軸線(不図示)と同軸に取り付けられている。したがって、カム回転位置検知板34の中心軸線(不図示)はY方向であり、カム32の中心軸線に一致する。カム回転位置検知板34は、円板部38と、円板部38の外縁部66に取り付けられた二つの扇状部39を有する。カム回転位置検知板34は、二つの扇状部39の間に対称軸線43を有し、カム回転位置検知板34は、対称軸線43に関し図7中、左右対称である。カム回転位置検知板34の扇状部39は、後述のようにカム32の回転位置の検知に用いられる。
角度位置検知手段40は、(1)カム回転位置検知手段としての、カム回転位置検知板34の回転位置を検知するカム回転位置検知センサ41と、(2)第1のシャッタレバー回動位置検知手段としての、第1のシャッタレバー331の回動位置を検知する第1のシャッタ回動位置検知センサ421と、(3)第2のシャッタレバー回動位置検知手段としての、第2のシャッタレバー332の回動位置を検知する第2のシャッタ回動位置検知センサ422とを含んで構成される。
カム回転位置検知センサ41は、カム32の回転位置を検知し、カム回転位置信号を制御部13に出力する。シャッタ回動位置検知センサ42は、シャッタレバー33の回動位置を検知し、シャッタレバー回動位置信号を制御部13に出力する。
カム回転位置検知センサ41は、投光器41Pと受光器41Qとからなり、投光器41Pと受光器41Qが対向してカム回転位置検知板34を厚さ方向に挟んで配置されている。受光器41Qは、カム32の回転位置が、カム回転位置検知板34の対称軸線43が鉛直方向(基準位置)にある場合、投光器41PのY方向の投光を検知し、カム回転位置信号としての投光信号(ハイ信号)を制御部13に出力する。カム32が左右どちらかの方向に鉛直に対して約15度傾く位置まで回転した場合、扇状部39が光を遮断するため受光器41Qが投光を検知しなくなり、遮光信号(ロー信号)を制御部13に出力する。さらに鉛直に対して約88度傾く位置まで回転した場合、扇状部39が光を遮断しなくなるので、受光器41Qが投光を検知し、カム回転位置信号としての投光信号を制御部13に出力する。
第1のシャッタ回動位置検知センサ421は、第1の投光器42P1と第1の受光器42Q1とを有し、第2のシャッタ回動位置検知センサ422は、第2の投光器42P2と第2の受光器42Q2とを有する。
投光器42Pと受光器42Qが対向して板状のシャッタレバー33の耳部36を厚さ方向に挟んで配置されている。シャッタレバー33は回動軸27に固定的に接続され、回動軸27にシャッタ22が固定的に接続される。シャッタ22が閉状態のときに、シャッタ22は水平に対して約45度の角度の位置にある。このとき受光器42Qは、投光器42PからのY方向の投光を検知し、シャッタレバー回動位置信号としての投光信号を制御部13に出力するよう配置されている。
シャッタ22が回動して開状態になり、水平に対して約55度の角度となったときに(微開状態)、シャッタ22の回動を起こすために回動していたシャッタレバー33は、受光器42Qが耳部36による光の遮断により投光を検知しなくなり、遮光信号を制御部13に出力する角度位置にくる。シャッタ22が全開状態となったとき(水平に対して約90度の角度位置)も耳部36が光の遮断を継続しているため、受光器42Qは投光を検知していない状態が続いており、遮光信号を制御部13に出力している状態が続いている。
第1の残留硬貨検知手段45と第2の残留硬貨検知手段67は、原則としてシャッタ22がともに閉じた状態にあるときに一時保留室19内の硬貨の残留の有無を検知するものである。第1の残留硬貨検知手段45は、各一時保留室19の内部に設けられた、残留検知センサ46とプリズム48とを含んで構成され、第2の残留硬貨検知手段67は、一時保留室19の外部に設けられた残留検知センサ47(図4)で構成される。
残留検知センサ46は、投光器46Pと受光器46Qとからなり、一時保留室19の一方の内壁面28(図5)に投光器46Pと受光器46Qが取り付けられ、対向する他方の内壁面28(図5)にプリズム48が取り付けられ、投光器46Pから発せられた光は、一時保留室19内に硬貨が残留していないときは、シャッタ22に形成された一の孔(不図示)を通り、プリズム48に入りプリズム48により進行方向が反転され再びシャッタ22に形成された一の孔とは異なる他の孔(不図示)を通り、受光器46Qにより受光され、受光器46Qにより投光信号(ハイ信号)が制御部13に出力される。一時保留室19内に硬貨が残留しているときは、硬貨により、残留検知センサ46の投光器46Pにより投光された光またはプリズムにより進行方向が反転された光は遮光されるので、受光器46Qは投光を検知しなくなり、遮光信号(ロー信号)を制御部13に出力する。このように配置したので残留検知センサ46は、プリズム48を併用しない場合と比較して、広い領域の硬貨残留を検知することができる。
残留検知センサ47(図4)は、500円用の一時保留室19の側壁30(図4)に取り付けられた投光器47Pと、シュート室57の側壁44(図4)に取り付けられた受光器47Qとからなる。投光器47Pから投光された光は、Y方向に受光器47Qに向かい、受光器47Qに受光される。各一時保留室の側壁、シュート室57の側壁には孔70〜73(図5、図6)が形成され、投光器47Pから投光された光が、孔70〜73を貫通して受光器47Qに受光され、受光器47Qは投光信号を制御部13に出力する。一時保留室19内に硬貨が残留しているときは、硬貨により、残留検知センサ47の投光器47Pにより投光された光は遮光されるので、受光器47Qは投光を検知しなくなり、遮光信号を制御部13に出力する。本実施の形態では、残留検知センサ46、47の遮光信号が制御部13に出力されることを、残留硬貨検知信号が制御部13に出力されるということとする。
回動機構31を駆動する回動駆動手段(不図示)は、DCモータ(不図示)である。一つの回動機構31は、一つのDCモータによって回転駆動される。
図1〜図3を参照して、スタッカ部7、出金搬送部8、出金口9、補充部10,制御部13の構成を説明する。
スタッカ部7は、金種ごとの4個のスタッカ50を含んで構成され、各スタッカ50は、硬貨を大量に収納する収納部(不図示)と、硬貨を放出する放出機構(不図示)とを含んで構成される。放出機構は、取引により取引者への出金が必要な場合や、収納した硬貨を回収する場合に作動する。放出機構は、振分爪(不図示)を有し、振分爪が出金搬送部8側にある場合、当該振分爪によって硬貨は出金硬貨として出金搬送部8へ放出され、振分爪が金庫部11側にある場合、当該振分爪によって硬貨は回収硬貨として金庫部11へ放出される。出金硬貨は、例えば、釣銭硬貨であり、通常は複数の硬貨を含むが、一枚の硬貨の場合もある。
出金搬送部8は、出金搬送路(不図示)と、搬送駆動手段(不図示)とを含んで構成される。出金搬送路は、搬送ベルトを含んで構成される。搬送駆動手段は、搬送ベルトが掛けわたされ、硬貨を搬送するために搬送ベルトを移動させるプリー(不図示)と、プーリを回転駆動する回転駆動手段としての駆動モータ(不図示)とを含んで構成される。出金搬送路8には、出金硬貨(取引後に釣り銭として出金)に加えて、リジェクト部16からのリジェクト硬貨、一時保留部6からの返却硬貨(取引の取消により返却)も放出される。
出金口9は、接客面(不図示)に開口して設けられる。出金口9には、出金搬送部8の搬送ベルト(不図示)により搬送された出金硬貨、リジェクト硬貨、返却硬貨が放出される。入金繰出部4に残留した異物は、入金繰出部4の操作により入金繰出部4から排出させ、出金口9に向けて放出することができる。
補充部10は、係員により補充される硬貨をスタッカ部7に補充するものであり、収納部(不図示)と、放出機構(不図示)と、補充搬送路(不図示)と、補充リジェクト庫12とを含んで構成される。収納部は、補充硬貨を大量に(例えば、10円硬貨500枚、50円硬貨200枚、100円硬貨500枚、500円硬貨200枚の合計1400枚程度)収納するものである。放出機構は、収納された補充硬貨を1枚ずつ放出するものである。補充搬送路は、放出機構から繰り出される硬貨を搬送するものである。補充搬送路は、入金搬送部5の入金搬送路に合流するよう構成され、補充搬送路により搬送された硬貨は、入金搬送部5の入金搬送路により搬送され、識別部14により識別され、振分部15により振り分けられスタッカ部7に硬貨が補充される。補充リジェクト庫12は、補充部10から繰り出され、識別部14によりリジェクト硬貨と判定された補充リジェクト硬貨を収納するものである。
制御部13は、硬貨処理装置1の各部(入金口3、入金繰出部4、入金搬送部5、一時保留部6、スタッカ部7、補充部10、出金搬送部8、出金口9、金庫部11、補充リジェクト庫12)の動作を制御するものである。
一時保留室19の仕切板23の詳細な構成について説明する。仕切板23はY方向に延在し、一時保留室19の下部に形成されている出口を第1の出口53、55と第2の出口52、54(図5)とに分割するが、Z方向に延在する鉛直仕切板64を有する。鉛直仕切板64は、シャッタ22が共に閉状態にあるとき、シャッタ22の切込部26に入り込み、シャッタ22と係合し、一方のシャッタ22が開状態になったとき、確実に開状態になった一方のシャッタ22の下方にある出口に硬貨が導かれるように構成されている。
次に、図1〜10を参照して、本実施の形態に係る硬貨処理装置1の作用を説明する。以下の入金動作、回収動作、補充動作、出金動作は、制御部13の制御によって行われる。
まず、入金収納動作から説明する。硬貨処理装置1は、利用者からの入金を待機する。利用者から入金口3へ、硬貨が投入され、不図示の検知器が入金口3へ投入された硬貨を検知する。当該検知器は硬貨を検知すると検知信号を制御部13に出力する。制御部13は検知信号を受け、以下のように硬貨処理装置1が入金動作を行うよう制御する。
入金口3に投入された硬貨は、入金繰出部4に供給される。入金繰出部4は供給された硬貨を収納し、収納した硬貨を1枚ずつ入金搬送部5に繰り出す。次に、入金繰出部4から1枚ずつ繰り出された硬貨は入金搬送部5で搬送され、入金搬送部5に設けられた識別部14に到達する。識別部14は搬送され到達した硬貨を識別し、識別結果を示す識別信号を制御部13に出力する。識別部14を通過した硬貨は入金搬送部5により振分部15へと搬送される。
振分部15まで搬送された硬貨であって識別部14によって正硬貨と判別された硬貨は、リジェクト部16をリジェクトされることなく通過し、振分板17により金種ごとに振り分けられ、一時保留部6に送られる。識別部14によって正硬貨と判別されなかった硬貨、例えば、外国硬貨、処理対象以外の硬貨(本実施の形態では、例えば、1円硬貨、5円硬貨)などは、リジェクト硬貨としてリジェクト部16により振り分けられ、出金搬送部8に送られ、出金搬送部8により出金口9に送られ、利用者に返却される。
振分部15と一時保留部6の間にはセンサ(不図示)が設けられており、一時保留部6に送られる硬貨の枚数を計数する。当該センサは金種ごとに設けられており、計数結果は金種ごとに入金データとして制御部13に出力される。入金データは、後述の出金処理に利用される。
一時保留部6に送られた硬貨は、シャッタ機構76のシャッタ20が硬貨を入金側の一時保留室19側に導く位置(図5で実線で表示)にあるので、入金側の一時保留室19に導かれる。シャッタ22は、ともに閉状態にあるので硬貨は入金側の一時保留室19に一時的に保留される。入金側の一時保留室19に保留された硬貨は、利用者との取引の終了により、図5中、第1のシャッタ221が開状態になり、第1の出口53からスタッカ部7へ向けて放出され、スタッカ部7に収納される。また、利用者が取引を取り消す操作をした場合は、図5中、第2のシャッタ222が開状態になり、第2の出口52から放出され出金搬送部8を経て出金口9に返却される。
次に、硬貨処理装置1の回収動作について説明する。硬貨処理装置1は、操作部(不図示)を有し、係員の操作部の操作により操作部より回収指示信号(不図示)が制御部13に出力され、制御部13は以下のように制御を行う。
制御部13は、スタッカ部7の放出機構の振分爪を金庫部11側に設置し、放出機構を作動させ、硬貨を金庫部11に放出する。スタッカ部7から放出された硬貨は金庫部11に収納される。
次に、硬貨処理装置1の補充動作について説明する。
係員により硬貨処理装置1の補充部10に補充硬貨がセットされる。係員の操作部の操作により操作部から補充指示信号(不図示)が制御部13に出力され、制御部13は以下のように制御を行う。
補充部10は、供給された硬貨を大量に収納し、収納した硬貨を1枚ずつ放出機構(不図示)により補充搬送路(不図示)に繰り出す。補充搬送路は、入金搬送部5の入金搬送路に合流するので、硬貨は合流後さらに入金搬送路により搬送され入金搬送路に設けられた識別部14に到達する。
識別部14は、搬送されてきた硬貨を識別し、識別結果を示す識別信号を制御部13に出力する。識別部14を通過した硬貨は入金搬送部5により振分部15へと搬送される。振分部15まで搬送された硬貨であって識別部14によって正硬貨と判別された硬貨は、リジェクト部16をリジェクトされることなく通過し、振分板17により金種ごとに振り分けられ、一時保留部6に送られる。識別部14によって正硬貨と判別されなかった硬貨は、補充リジェクト硬貨としてリジェクト部16により振り分けられ、シャッタ機構77により補充リジェクト庫12に向けられ、補充リジェクト庫12に送られる。
一時保留部6に送られる硬貨の枚数が、振分部15と一時保留部6の間に金種ごとに設けられたセンサ(不図示)により計数され、計数結果は金種ごとに補充データとして制御部13に出力される。
一時保留部6に送られた硬貨は、シャッタ機構76のシャッタ20が硬貨を補充側の一時保留室19側に導く位置(図5で一点鎖線で表示)にあるので、補充側の一時保留室19に導かれる。シャッタ22は、ともに閉状態にあるので硬貨は補充側の一時保留室19に一時的に保留される。補充側の一時保留室19に保留された硬貨は、補充終了、または所定の補充枚数の計数毎に、第1のシャッタ221が開状態になり、第1の出口55からスタッカ部7へ向けて放出され、スタッカ部7に収納される。ここで、所定の補充枚数とは、本実施の形態では、30枚である。補充部10から放出され、振分部15と一時保留部6の間に設けられたセンサ(不図示)により計数された補充硬貨の枚数が30枚に達した場合は、補充部10からの放出を停止するが、停止後に既に繰り出され例えば補充搬送路に残っている分の硬貨は補充するため、補充側の一時保留室19に補充される枚数は正確に30枚とはならない場合がある。
また、硬貨の補充が停止された場合には、第1のシャッタ221が開状態になり、補充側の一時保留室19に保留されている硬貨(補充搬送路に残っているものを含む)は、第2の出口54から放出され、補充リジェクト庫12に送られる。
次に、硬貨処理装置1の出金動作について説明する。出金動作は入金動作に続けて行われる。制御部13は、入金データに基づき、入金された金額と、例えば利用者の操作部(不図示)の操作で確定された取引に必要な金額とを比較して、余剰金額すなわち出金に必要な硬貨の金種と各々の金種の硬貨の枚数を算出する。制御部13は、この算出結果に基づき、出金が必要ない場合は、出金処理を行わずに動作を終了し、入金を待機する。
制御部13は、出金が必要な場合には、該当する金種のスタッカ50へ必要枚数の繰り出しを指示する支払指示信号を出力する。これにより、各スタッカ50は必要枚数の硬貨を出金搬送部8に放出する。出金搬送部8に放出された硬貨は出金口9まで搬送され、出金処理が終了する。
次に、図11〜図14、図1、図7、図8を参照して、制御部13のシャッタ22、DCモータ(不図示)の制御について説明する。
制御部13が、第1のシャッタ221と第2のシャッタ222がともに閉状態にある場合に、第1のシャッタ221を閉状態から開方向に回動させて開状態にし(前半)、さらに第1のシャッタ221を開状態から閉方向に回動させ閉状態にする(後半)制御である第1の制御について説明する。第1の制御は、第2のシャッタ222を閉状態から開方向に回動させて開状態にし、さらに第2のシャッタ222を開状態から閉方向に回動させ閉状態にする場合を含むが前者の場合で説明する。
図11〜図14、図16は、カム32の回転位置、シャッタ22の回動位置、シャッタレバー33の係合部37の溝35より形成された軌道への係合の位置を表し、さらにカム回転位置検知板34の回転角度(直接的には表示していない。カム32の回転角度と同じである)、カム回転位置検知センサ41の投光/遮光の状態、シャッタレバー33の回動角度、シャッタ回動位置検知センサ42の投光/遮光の状態を表す。図中、カム32の回転角度によって状態をA〜Pに分類し、カム回転位置検知センサ41を「センサ1」、第1のシャッタ221のシャッタ回動位置検知センサ421を「センサ2」、第2のシャッタ222のシャッタ回動位置検知センサ422を「センサ3」と表示する。また、センサ1〜3が投光の場合を黒く塗りつぶしていない中抜きの四角形で表示し、遮光の場合を黒く塗りつぶした四角形で表示する。
状態A〜Pにおいて、カム32は、図11〜図12、図16中、反時計方向に回転し、前述のように第1のシャッタ221が開閉し、第2のシャッタ222は特記しなければ閉状態にある。なお、カム32が、図11〜図12中、時計方向に回転した場合は、第2のシャッタ222が開閉し、第1のシャッタ221は、閉状態にある。
図14は、第1のシャッタ221が微開あるいは全開の状態にあるときの、閉状態にある第2のシャッタ222の振動について説明する図である。なお、状態A〜Pにおいて、センサ3は常に投光状態にある。
Aの状態では、カム32の回転角度は0度であり、カム32の対称軸線65(図8)は、鉛直方向にある。この状態がカム32が基準位置にある状態であり、第1のシャッタ221と第2のシャッタ222がともに閉状態にある。このときセンサ1〜3は、すべて投光状態にある。制御の開始にともない制御部13(図1)は、硬貨の振り分けを指示した後、第1のシャッタ221を開くためにDCモータ(不図示)を駆動するDCモータ駆動信号を出力する。DCモータ駆動信号は、DCモータ(不図示)をカム32を基準位置から反時計方向に回転させる。A状態にあるときの第1の係合部371の中心OE1とカム32の回転中心OCを結んだ線を線KA1とすると、線KA1は前述の線KS1に一致する。
カム32が、さらに反時計方向に回転し、Bの状態に移行すると、カム回転位置検知板34の図7中、右側の扇状部39がセンサ1を遮光する。この状態で第1のシャッタ221は閉状態を維持している。また、センサ2、3は投光状態を維持している。このときカム32は基準位置から約15度回転している。B状態にあるときの第1の係合部371の中心OE1とカム32の回転中心OCを結んだ線を線KB1とする。第1の係合部371は、溝35の第1の溝曲率半径不変域Z1にある。
カム32がさらに回転すると第1の係合部371は、前述の線KT1に達し、さらに回転すると溝35の第1の溝曲率半径変化域Z2に入るので、第1のシャッタ221が閉状態から開状態に移行し始め、第1のシャッタレバー331が開く方向に回動し始める。このときカム32は、基準位置から約27度回転している。
カム32がさらに回転し、Cの状態に移行すると、第1のシャッタ221の第1のシャッタレバー331が、センサ2を遮光する。このときカム32は、基準位置から約30度回転している。C状態にあるときの第1の係合部371の中心OE1とカム32の回転中心OCを結んだ線を線KC1とすると、線KC1は溝35の第1の溝曲率半径変化域Z2にあり、第1のシャッタレバー331が開きつつある。
カム32がさらに回転すると第1の係合部371は、前述の線KU1に達し、溝35の第2の溝曲率半径不変域Z3に入るので、第1のシャッタ221が部分的開いた状態で、回動を停止する(第1のシャッタ221は微開状態にある)。このときカム32は、基準位置から約40度回転している。
次に、第1の係合部371は、前述の線KV1に達し、このとき第2の係合部が線KM2に達し、この前後に第2の係合部372は溝35の段差69を通過するので、第2のシャッタ222が振動する。第1の係合部371が線KV1に達したとき、カム32は基準位置から約50度回転している。第1の係合部371は、依然溝35の第2の溝曲率半径不変域Z3にあるので、第1のシャッタ221は回動を停止している。第2のシャッタ222は第2の回動軸272回りに回動するように振動し、第2のシャッタ222の先端は、鉛直方向に振動する(図14(a)の図中、右側の回動状態を示す図が振動状態の第2のシャッタ222を表し、図中、左側の回動状態を示す図が静止状態の第2のシャッタ222を表す。)。
カム32がさらに回転すると第1の係合部371は、前述の線KW1に達し、さらに回転すると溝35の第2の曲率半径変化域Z4に入るので、第1のシャッタ221が部分的に開いた位置からさらに開く方向に回動し始める。第1の係合部371が線KW1に達したとき、カム32は基準位置から約65度回転している。
カム32が回転し、Dの状態に移行すると、カム回転位置検知板34の図7中、右側の扇状部39がセンサ1を遮光しなくなり、センサ1は投光状態になる。このときカム32は基準位置から約88度回転している。D状態にあるときの第1の係合部371の中心OE1とカム32の回転中心OCを結んだ線を線KD1とする。第1の係合部371は、溝35の第2の曲率半径変化域Z4にあるので、第1のシャッタ221は開方向に回動中である。センサ2は遮光されており、センサ1は投光状態にある。制御部13は、センサ1が遮光状態から投光状態になったとき、センサ1から出力される投光信号(ハイ信号)に基づき、カム32を回転駆動するDCモータ(不図示)へのモータ停止信号を出力する。カム32は、DCモータが回転の慣性のためモータ停止信号とは同時に停止しないため以下のように開方向にさらに回転し、下記のE状態で停止する。
カム32がDの状態からさらに回転すると第1の係合部371は、前述の線KX1に達し、溝35の第2の溝曲率半径変化域Z4の最終部に到達し、第1のシャッタ221は全開に達する。このときカム32は、基準位置から約93度回転している。この先、第1の係合部371は溝35の第3の溝曲率半径不変域Z5に移行し、第1のシャッタ221は回動を停止する。次に、第1の係合部371は、前述の線KY1に達し、このとき第2の係合部372が線KN2に達し、この前後に第2の係合部372は溝35の段差69を通過するので、第2のシャッタ222が振動する。第2のシャッタ222は第2の回動軸272回りに回動するように振動し、第2のシャッタ222の先端は、鉛直方向に振動する(図14(b)の図中、左側の回動状態を示す図が振動状態の第2のシャッタ222を表し、図中、右側の回動状態を示す図が静止状態の第2のシャッタ222を表す)。 第1の係合部371が線KY1に達したとき、カム32は基準位置から約95度回転している。
カム32が回転し、Eの状態に移行すると、カム32は回転を終了する。このときカム32は基準位置から約103度回転している。この状態で、センサ1は投光状態、センサ2は遮光状態にある。Eの状態で第1のシャッタ221は全開状態にある。
制御部13は、モータ停止信号の出力によりシャッタ開放を継続するためのタイマ(不図示)をセットする。制御部13は、タイマのタイムアップ(ここではタイマセットから500ms)により、回転方向を今までとは逆方向とするモータ駆動信号を出力する。DCモータは制御部13からの出力に基づきカム32の回転方向を今までとは逆方向(図8中、時計方向)として回転を開始する。
カム32が反転しE状態からI状態に移行し、第1の制御の後半が行われ、第1のシャッタ221を開状態から閉方向に回動させ閉状態にする制御が行われる。第1の制御の後半は、前述の第1の制御の前半を逆に辿る制御が行われる。
以下、第1の制御の後半について、センサの投光/遮光の変化に関する部分について記述する。
カム32が図8中、時計方向に回転し、Fの状態(Dの状態に対応)に移行すると、カム回転位置検知板34の図7中、右側の扇状部39がセンサ1を遮光するようになり、センサ1は投光状態から遮光状態に変化する。カム32が、さらに回転すると、Gの状態(Cの状態に対応)に移行し、第1のシャッタレバー331が、センサ2を遮光しなくなり、センサ2は投光状態に変わる。カム32がさらに回転し、Hの状態(Bの状態に対応)になると、カム回転位置検知板34の図7中、右側の扇状部39がセンサ1を遮光しなくなり、センサ1は投光状態に変わる。制御部13はセンサ1からのこのときの投光信号の出力に基づき、モータ停止信号を出力する。このときDCモータがモータ停止信号と同時に停止しないので、カム32がさらに回転し、カム32が基準状態、すなわちIの状態(Aの状態に対応)で停止するよう、装置を適正に設計する。
次に、第1の制御の後に、制御部13は、残留硬貨の確認制御を以下のように行う。制御部13は、第1の残留硬貨検知手段45と第2の残留硬貨検知手段67から投光信号(ハイ信号)が出力されていることを確認し、投光信号が出力されている場合は残留硬貨がないと判断し、ここでの硬貨残留の確認処理を終了する。第1の残留硬貨検知手段45または第2の残留硬貨検知手段67が遮光されている場合は、遮光されている検知手段から遮光信号(ロー信号)が制御部13に出力され、制御部13は、一時保留部6に残留硬貨があると判断し、直前に開閉したシャッタである第1のシャッタ221を開閉する第1の制御を行う。この第1の制御の動作は遮光が解除されるまで所定回数(例えば、3回)繰り返し行う。所定回数行っても遮光が解除されない場合は、制御部13は異常と判断して装置の動作を停止する。
なお、Eの状態からIの状態の移行時で、制御部13がモータ駆動信号を出力したときに、制御部13は、タイマ(不図示)をセットする。残留硬貨が検知されない場合であっても、当該タイマセットからのタイムアップ(ここではタイマセットから250ms)までに、制御部13が第1のシャッタ221が閉鎖状態にあるという検知ができない場合、すなわちセンサ2からの投光信号が制御部13に出力されない場合、例えば、複数枚の硬貨が一時保留部6に楔状(ブリッジ)に挟み込まれ、DCモータのロック状態が発生した場合、このロック状態をDCモータの過電流によって判断して、このロックの解除動作のため、直前に開閉したシャッタである第1のシャッタ221を開閉する第1の制御を行う。このロック状態の解除動作はロックが解除されるまで所定回数(例えば、3回)繰り返し行う。所定回数行っても遮光が解除されない場合は、制御部13は異常と判断して装置の動作を停止する。
上記の対策を施しても、残留硬貨の残留を解除できない場合がある。または残留硬貨があるにもかかわらず残留硬貨がセンサの死角にあるため残留硬貨を検知できない場合がある。この場合、一時保留部6を上部から下部に斜めに光が横断するセンサ(不図示)を追加して、硬貨の残留を検知できるようにすることが考えられる。しかし、装置の小型化をしたい場合は、センサを配置するスペースの確保が難しく、またセンサを増やすことで電気的な検知回路を増やす必要性が出てくる。そこで本実施の形態では、対策として、残留硬貨が検知されず、第1のシャッタ221が閉鎖状態にあるという検知ができた場合であっても、以下の微回動動作を第1の制御の後に追加する。
制御部13は、第1の制御部の後半においてモータ停止信号を出力し、シャッタ開放動作を行うためのタイマをセットする。制御部13はタイマのタイムアップ(ここでは、例えば、モータ停止信号の出力から50ms経過後)により、カム32の回転方向を直前の回転方向(図8で時計方向)とは逆方向(図8で反時計方向)とするモータ駆動信号を出力する。逆方向の回転が行われるのはIの状態(カム32の回転状態はAの状態と同じ状態)からである。
カム32が回転し、Jの状態になると(カム32の回転状態はBの状態と同じ)カム回転位置検知板34がセンサ1を遮光する。このためセンサ1は遮光信号を制御部13への出力する。カム32の回転が継続され、センサ2は、Kの状態になると(カム32の回転状態はCの状態と同じ)第1のシャッタレバー331がセンサ2を遮光する。センサ2は遮光信号を制御部13への出力する。制御部13は、センサ2からの遮光信号の出力を受け、直前の回転とは反対の方向へ回転するモータ駆動信号をDCモータ(不図示)に出力する。
Jの状態で第1の係合部371は、カム32の溝35の第1の溝曲率半径変化域Z2にあり、第1の溝曲率半径変化域Z2の始まりである線KT1と、線KU1の間に位置し、第1のシャッタ221が部分的に開いている状態である。本実施の形態の硬貨処理装置1は、第1の係合部371が、第1の溝曲率半径変化域Z2の終わりである線KU1に達したとき、第1のシャッタ221の開度が、処理する硬貨のうち最小の厚みの硬貨が第1のシャッタ221から(一時保留部6から)落下することを回避できる角度以下であり、一時保留部6内に残留している硬貨の一対のシャッタ22の構造に起因する噛み込みやブリッジを解消できる、すなわち硬貨の一時保留部6内の残留を回避できる最小角度以上の角度となるように構成されている。第1のシャッタ221が、この角度で回動することを微回動するという、またこの角度で開くことを微開という。カムが反転したとき、この反転の時点で第1の係合部371はKU1の位置にある。
なお、シャッタ22が、共に閉鎖状態にあるときには(Aの状態)、先端25同士が係合しているので、係合している状態(シャッタの開度がゼロ)を維持しつつシャッタが微回動するようにすることも可能である。
カム32が反対方向(図8中、時計方向)に回転し、Lの状態(Cの状態に対応)に移行し、第1のシャッタレバー331が、センサ2を遮光しなくなり、センサ2は投光状態に変わる。カム32がさらに回転し、Mの状態(Bの状態に対応)になると、カム回転位置検知板34がセンサ1を遮光しなくなり、センサ1は投光状態に変わる。制御部13はセンサ1からの投光信号の出力に基づき、モータ停止信号を出力する。このときDCモータが回転の慣性のためモータ停止信号と同時に停止しないので、カム32がさらに回転し、カム32がNの状態(Aの状態に対応)で停止する。
このように第1の制御の後に微回動動作を行うことにより硬貨の噛み込みを解除することができる。
微回動動作は次のような硬貨残留について効果的である。すなわち、図15に示すように、Iの状態でシャッタ22の間に硬貨100が噛み込まれる事象が発生することがある。この場合、硬貨100が水平の姿勢で、シャッタ22と硬貨100が頂点を下にした逆二等辺三角形を形成するように噛み込まれると、硬貨100は第1の残留硬貨検知手段45によって検知されず、第2の残留硬貨検知手段67(図4)によっても検知されない状況が発生する。第1のシャッタ221が微開し、Kの状態になると、硬貨100の図中一端に接触していた第1のシャッタ221が硬貨100から離れれるので、硬貨100は倒れ、第2のシャッタ222に一方の表面が接触するように斜めの姿勢になる(噛み込みの解消)。この姿勢で、Nの状態に移行し、微回動動作が終了した時点で、硬貨100は、第1の残留硬貨検知手段45によって残留が検知されるようになる。
微開動作の終了後に、制御部13は、第1の残留硬貨検知手段45と第2の残留硬貨検知手段67により一時保留部6内の硬貨の残留の発生の確認を行う。硬貨の残留が検知された場合は、第1の制御(微開動作と同じシャッタ22を開閉する)を行う。この第1の制御の動作は遮光が解除されるまで所定回数(例えば、3回)繰り返し行う。所定回数行っても遮光が解除されない場合は、制御部13は異常と判断して装置の動作を停止する。ここで所定回数行われる第1の制御は、それぞれその後に微回動動作を伴うものであってもよい。
図16に示すように、第1の制御の後半において、Fの状態から第1のシャッタ221が閉まろうとするときに、Oの状態のように硬貨の挟み込みによる残留が発生する場合がある。この場合は、硬貨が鉛直の姿勢から第2のシャッタ222の方に僅かに傾いた状態で、完全に閉まりきらず僅かに開いたままの状態の第1のシャッタ221の先端部と、仕切板23/閉状態の第2のシャッタ222の先端部との間に、硬貨の厚さ方向に挟まれる場合である。前述した硬貨の一時保留部6における残留状態には様々なものがあり、Oの状態となることは希ではあるが、この状態が発生することがありうる。
Fの状態からカム32が回転し、第1の係合部371がセンサ2の投光が開始される溝35の位置(線KC1の位置)(図8)に来ても、第1のシャッタ221の動きが硬貨により拘束され第1のシャッタレバー331の動きを拘束するので、第1のシャッタレバー331がセンサ2を遮光したままとなり、センサ2の投光が開始されない。さらに、カム32が回転すると、Pの状態になり、硬貨は噛み込まれたままの状態である。Pの状態では、第1の係合部371が、センサ1の投光が開始される溝35の位置(線KT1の位置)(図8)にくるので、センサ1の投光が開始される。しかし、第1のシャッタレバー331は拘束されたままなので、センサ2は第1のシャッタレバー331により遮光され続ける。
これは、DCモータ(不図示)の駆動力、およびDCモータとカム32との間、カム32の溝35と第1の係合部371との間、第1の係合部371と第1のシャッタレバー331との間、第1のシャッタレバー331と第1のシャッタ221の間の遊びおよび弾性変形などの関係から、第1のシャッタ221が完全に閉状態とならない場合であっても、カム32が基準状態に戻ることがある。この場合、第1のシャッタレバー331の位置が基準状態に対応する位置に戻らず、センサ1を遮光し続ける状態を維持する。
制御部13は、センサ1〜3の投光信号(ハイ信号)の出力、遮光信号(ロー信号)の出力が予め定められた順序で行われているか常に確認している。すなわち、制御部13は、カム32、第1のシャッタレバー331、第2のシャッタレバー332が、それぞれに対し予め設定された回動位置を、予め定められた順序で通過し、センサ1〜3によって検知されることを常に確認している。センサ1〜3の投光信号の出力、遮光信号の出力の順序を予め定められた順序と比較することで、噛み込みによる一時保留部6への硬貨の残留に対して速やかに対応することができる。
予め定められた順序は、図11にAの状態からIの状態に対応させて記載されている。Fの状態の直後にOの状態が発生した場合は、図11に記載されている予め定められた順序とは異なるので、制御部13は、順番が予め定められた通常動作とは異なると判断する。制御部13は、この判断により直ちに回転方向を直前のものとは逆とするようモータ駆動信号を出力する。この場合、制御部13は、Cの状態へ移行し、第1の制御を、カム32を逆転した状態から繰り返すよう制御する。
Oの状態が発生した場合、例えば、第1のシャッタ221が完全に閉まらない状態で、第2のシャッタ222を開にした場合は、一時保留部6に残留した硬貨が第1のシャッタ221から第1の出口53から放出されるべきであったにもかかわらず、第2のシャッタ222から第2の出口52へ放出される事態(誤放出)が発生する。このような残留硬貨をなくすことにより誤放出を回避することができる。
以上第2のシャッタを閉状態に維持し、第2のシャッタが閉状態を維持している間に、第1のシャッタを開閉する場合で説明したが、以上の説明において、第1のシャッタを第2のシャッタに置き換えて、カム32の回動方向を反対とするよう置き替えて、溝35の対称軸線65が鉛直方向にある場合に対して軸対称な動きをするよう置き換え、またセンサ2をセンサ3に置き換えて適宜適用することができる。
ここで以下の発明を開示する。
本発明の第5の態様に係る硬貨処理装置は、例えば図7に示すように、前述した第1の態様または前述した第2の態様の硬貨処理装置において、溝35の第1のシャッタレバー331と接触する部分に中間段差74を設け、カム32が第1のシャッタ221を閉状態から開方向に回動させる際に、最初に閉鎖状態にある第1のシャッタ221を開方向にわずかに回動させた後、段階的に回動して開くように構成され、また、溝35の第2のシャッタレバー332と接触する部分に中間段差74を設け、カム32が第2のシャッタ222を閉状態から開方向に回動させる際に、最初に閉鎖状態にある第2のシャッタ222を開方向にわずかに回動させた後、段階的に回動して開くように構成されてもよい。
なお、ここでいう段階的な変化は、開放側のシャッタを一定で連続的な開放とするのではなく、全開放の過程でシャッタ開放の開始から途中開放を停止する動作や、停止から再び開放する動作で、開放工程に対してシャッタの回動角度を、段階的に変化させることからなる動作(不連続的なもの)を含むものとする。本態様のカム32の溝35の中間段差74は、典型的には、第3の態様の振動を与える段差69とは形状が異なるものとするとよい。
このシャッタを回動を段階的(不連続的)に行う動作により、回動の慣性の変化で開放動作中のシャッタに振動が発生し、一時保留部の第1のシャッタと第2のシャッタとにまたがってひっかかったあるいは挟まれた残留硬貨のひっかかりまたは挟まりを解除し、残留硬貨を排出することができる。カム32の溝35の中間段差74を、第3の態様の振動を与える段差69とは形状が異なるものとすると、硬貨に、段差69により生ずる振動と異なった振動を与えることができ、硬貨のひっかかりまたは挟まりを崩しやすくなる。