以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して以下に説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態のマスタシリンダを示す側断面図である。図2は、第1実施形態のマスタシリンダの制御弁を示す部分拡大側断面図である。図3は、第1実施形態のマスタシリンダの制御弁を構成するピストン本体を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図1に示すマスタシリンダ10は、いわゆるプランジャ型のマスタシリンダであり、図示は略すがブレーキペダルの操作等によって移動するブースタの出力軸で押圧されることでディスクブレーキ等のブレーキ装置に導入するブレーキ液圧を発生させるものである。
マスタシリンダ10は、底部12と筒部13とを有する有底筒状をなすとともにその口部14側において図示略のブースタに取り付けられるシリンダボディ(段付シリンダ)15と、このシリンダボディ15のボア16内の口部14側に、筒部13の軸線(以下、シリンダ軸と称す)に沿って摺動可能となるように挿入されるプライマリピストン(段付ピストン)18と、シリンダボディ15のボア16内のプライマリピストン18よりも底部12側に、シリンダ軸方向に沿って摺動可能となるように挿入されるセカンダリピストン20とを有するタンデムタイプのものである。なお、第1実施形態においては、シリンダ軸は水平に配置されるものとしている。
ここで、筒部13の内径側は、底部12側に第1小径摺動内径部22が形成されており、中間に第2小径摺動内径部23が形成されていて、口部14側に第1小径摺動内径部22および第2小径摺動内径部23よりも大径の大径摺動内径部24が形成されている。そして、セカンダリピストン20は常に第1小径摺動内径部22で摺動が案内されることになり、プライマリピストン18は、常に大径摺動内径部24及び第2小径摺動内径部23で摺動が案内されることになる。
シリンダボディ15には、これと一体に、筒部13から筒部13の径方向(以下、シリンダ径方向と称す)における外側、具体的には、上側に突出する二カ所の取付台部25,26が、シリンダ軸方向に離間して筒部13の円周方向(以下、シリンダ円周方向と称す)における同位置に形成されており、これら取付台部25,26それぞれに形成された取付穴25a,26aにリザーバ27が取り付けられる。
シリンダボディ15の第1小径摺動内径部22には、シリンダ軸方向における位置をずらして複数具体的には2カ所のシリンダ径方向外側に凹む環状のシール周溝28およびシール周溝29が底部12側から順に形成されている。底部12側のシール周溝28には、E字状断面を有するカップシールからなるシールリング30が底部12側にリップ側を配置した状態で嵌合されている。また、口部14側のシール周溝29には、C字状断面を有するカップシールからなるシールリング31が口部14側にリップ側を配置した状態で嵌合されている。
第1小径摺動内径部22には、シール周溝28とシール周溝29との間に、シリンダ径方向外側に凹む環状の開口溝33が形成されている。この開口溝33は、底部12側の取付穴25aに開口することでリザーバ27に常時連通状態とされる連通穴34に連通されている。なお、シリンダボディ15のシール周溝28よりも底部12側には、第1小径摺動内径部22よりも若干大径の底部側大径内径部35が形成されている。
シリンダボディ15の第1小径摺動内径部22と第2小径摺動内径部23との間には、これらよりも若干大径の中間大径内径部38が形成されている。
第2小径摺動内径部23には、シリンダ径方向外側に凹む環状のシール周溝40が形成されており、このシール周溝40には、E字状断面を有するカップシールからなるシールリング(逆止開閉部)41が、底部12側にリップ側を配置した状態で嵌合されている。
第2小径摺動内径部23の中間大径内径部38側には、シール周溝40と中間大径内径部38とをつなぐ偏心溝42がシリンダ径方向外側に凹むように形成されている。この偏心溝42は第2小径摺動内径部23よりも小径であって第2小径摺動内径部23と平行な軸を中心とした円弧状をなしている。
シリンダボディ15の第2小径摺動内径部23と大径摺動内径部24との間には、これらよりも大径で、底部側大径内径部35および中間大径内径部38よりも大径の口部側大径内径部44が形成されている。
シリンダボディ15の大径摺動内径部24には、シリンダ軸方向における位置をずらして複数具体的には2カ所のシリンダ径方向外側に凹む環状のシール周溝46およびシール周溝47が底部12側から順に形成されている。底部12側のシール周溝46には、E字状断面を有するカップシールからなるシールリング48が底部12側にリップ側を配置した状態で嵌合されている。また、口部14側のシール周溝47には、C字状断面を有するカップシールからなるシールリング49が底部12側にリップ側を配置した状態で嵌合されている。
大径摺動内径部24には、シール周溝46とシール周溝47との間に、シリンダ径方向外側に凹む環状の開口溝51が形成されている。この開口溝51は、口部14側の取付穴26aに開口することでリザーバ27に常時連通状態とされる連通穴52に連通されている。
シリンダボディ15の筒部13の側部には、ブレーキ液を図示せぬブレーキキャリパに供給するための図示せぬブレーキ配管が取り付けられるセカンダリ吐出路53およびプライマリ吐出路54が形成されている。
ここで、シリンダボディ15は、底部側大径内径部35と第1小径摺動内径部22と中間大径内径部38と第2小径摺動内径部23とが小径シリンダ部55を構成しており、口部側大径内径部44と大径摺動内径部24とが、小径シリンダ部55よりも全体として大径の大径シリンダ部56を構成している。
シリンダボディ15の底部12側に嵌合されるセカンダリピストン20は、円筒部57と、円筒部57の軸線方向における一側に形成された底部58とを有する有底円筒状をなしており、その円筒部57を底部12側に配置した状態でシリンダボディ15の第1小径摺動内径部22に摺動可能に嵌合されている。円筒部57の底部58に対し反対側の端部には、シリンダ径方向に貫通するポート59が複数放射状に形成されている。
ここで、シリンダボディ15の底部12および筒部13の底部12側とセカンダリピストン20とで囲まれてシールリング30でシールされる部分が、セカンダリ吐出路53に液圧を供給するセカンダリ液圧室60となっており、このセカンダリ液圧室60は、セカンダリピストン20がポート59を開口溝33に開口させる位置にあるとき、リザーバ27に連通する。
シリンダボディ15の底部12側のシール周溝28に設けられたシールリング30は、内周がセカンダリピストン20の外周側に摺接することになり、セカンダリピストン20がポート59をシールリング30よりも底部12側に位置させた状態では、セカンダリ液圧室60とリザーバ27との連通を遮断可能となっており、これらに圧力差が生じた場合にリザーバ27側からセカンダリ液圧室60側へのブレーキ液の流れのみを許容する。また、シリンダボディ15のシール周溝29に設けられたシールリング31は、内周がセカンダリピストン20の外周側に摺接することになり、リザーバ27に連通する開口溝33と後述するプライマリ液圧室61との連通を遮断する。
セカンダリピストン20の底部58とシリンダボディ15の底部12との間には、ブースタ側から入力がない待機状態でこれらの間隔を決めるセカンダリピストンスプリング62を含む間隔調整部63が設けられている。
シリンダボディ15の口部14側に嵌合されるプライマリピストン18は、軸線方向一側が、小径ピストン部65とされ、軸線方向他側がこれより大径の大径ピストン部66とされた段付きの外形形状をなしており、軸方向両端側が円筒状をなしている。大径ピストン部66の小径ピストン部65側には環状溝67が形成されており、この環状溝67よりも小径ピストン部65側には軸線方向に沿って延在する連通溝68が複数形成されている。そして、プライマリピストン18は、その小径ピストン部65がシリンダボディ15内における小径シリンダ部55の第2小径摺動内径部23に摺動可能に挿入されるとともに大径ピストン部66がシリンダボディ15内における大径シリンダ部56の大径摺動内径部24に摺動可能に挿入されている。
プライマリピストン18の小径ピストン部65の大径ピストン部66に対し反対側の端部の円筒状部分には、径方向に貫通するポート69が複数放射状に形成されている。
ここで、シリンダボディ15の第1小径摺動内径部22と第2小径摺動内径部23との間とプライマリピストン18とセカンダリピストン20とで囲まれ、シールリング31およびシールリング41でシールされる部分が、小径ピストン部65側にあってプライマリ吐出路54に液圧を供給する上記したプライマリ液圧室(小径液圧室)61となっている。また、シリンダボディ15の第2小径摺動内径部23と大径摺動内径部24との間とプライマリピストン18とで囲まれ、シールリング41およびシールリング48でシールされる部分が、大径ピストン部66側にあってプライマリ液圧室61より大径の大径与圧室70となっている。言い換えれば、プライマリピストン18はシリンダボディ15内を大径与圧室70とプライマリ液圧室61とに区画する。プライマリ液圧室61は、プライマリピストン18がポート69を大径与圧室70に開口させる位置にあるとき、大径与圧室70に連通する。
シリンダボディ15の第2小径摺動内径部23に設けられたシールリング41は、内周がプライマリピストン18の外周側に摺接することになり、プライマリピストン18がポート69をシールリング41よりも底部12側に位置させた状態では、プライマリ液圧室61と大径与圧室70との連通を遮断可能となっている。また、シールリング41は、カップシールであることから、シリンダボディ15内を大径ピストン部66側の大径与圧室70と小径ピストン部65側のプライマリ液圧室61とに区画するとともに、これらの間に圧力差が生じた場合に大径与圧室70側からプライマリ液圧室61側へのブレーキ液の流れのみを許容する。
シール周溝46に設けられたシールリング48は、内周がプライマリピストン18の大径ピストン部66の外周側に摺接することになり、プライマリピストン18が連通溝68および環状溝67をシールリング48よりも底部12側に位置させた状態では、大径与圧室70と連通穴52つまりリザーバ27との連通を遮断可能となっている。このシールリング48も、カップシールであることから、大径与圧室70とリザーバ27との間に圧力差が生じた場合に開口溝51および連通穴52を介してリザーバ27側から大径与圧室70側へのブレーキ液の流れのみを許容する。
また、口部14側のシール周溝47に設けられたシールリング49は、プライマリピストン18の大径ピストン部66に摺接することにより、シリンダボディ15の内周側とプライマリピストン18の外周側との隙間を介しての連通穴52つまりリザーバ27と外気との連通を遮断する。
セカンダリピストン20とプライマリピストン18との間には、図示略のブレーキペダル側から入力がない待機状態でこれらの間隔を決めるプライマリピストンスプリング72を含む間隔調整部73が設けられている。また、プライマリピストン18のシリンダボディ15から突出する部分は、シリンダボディ15の口部14の外周に係止されるカバー74で覆われている。
なお、シリンダボディ15は、底部12と筒部13と取付台部25,26とが、金属、例えばアルミニウム鋳造品からなる一体成形の素材から加工されて形成されている。
セカンダリピストン20は、図示略のブレーキペダル側から入力がない初期状態(このときの各部の位置を初期位置と以下称す)で、間隔調整部63のセカンダリピストンスプリング62の付勢力で最も底部12から離れた初期位置にある。このとき、セカンダリピストン20は、ポート59を開口溝33に開口させており、その結果、セカンダリ液圧室60を連通穴34を介してリザーバ27に連通させている。
この状態からセカンダリピストン20がブレーキペダルの入力で底部12側に移動すると、セカンダリピストン20はそのポート59がシールリング30で閉塞され、その結果、セカンダリ液圧室60とリザーバ27との連通が遮断されることになり、これにより、さらにセカンダリピストン20が底部12側に移動することでセカンダリ液圧室60からセカンダリ吐出路53を介してブレーキ装置にブレーキ液を供給する。なお、ポート59を閉塞させた状態であってもリザーバ27側の液圧(大気圧)よりもセカンダリ液圧室60の液圧が低くなると、シールリング30が開いてリザーバ27のブレーキ液がセカンダリ液圧室60に流れるようになっている。
また、プライマリピストン18は、間隔調整部63のセカンダリピストンスプリング62の付勢力と間隔調整部73のプライマリピストンスプリング72の付勢力とによって最も口部14側の初期位置に配置された状態にあるとき、プライマリ液圧室61に連通するポート69を開いてプライマリ液圧室61と大径与圧室70とを連通させている。
この状態から、プライマリピストン18がブレーキペダルの入力で底部12側に移動すると、プライマリピストン18は、そのポート69がシールリング41で閉塞され、プライマリ液圧室61と大径与圧室70側とのポート69を介しての連通を遮断することになり、この状態からさらに底部12側に移動すると、プライマリ液圧室61からプライマリ吐出路54を介してブレーキ装置にブレーキ液を供給する。なお、ポート69を閉塞させた状態であっても大径与圧室70の液圧がプライマリ液圧室61の液圧より大きくなると、シールリング41を開いて大径与圧室70のブレーキ液がプライマリ液圧室61に流れるようになっている。
また、プライマリピストン18は、初期位置にあるとき、連通溝68と環状溝67と開口溝51と連通穴52とで大径与圧室70とリザーバ27とを連通させている。この状態からプライマリピストン18が、底部12側に摺動すると、連通溝68および環状溝67がシールリング48で閉塞されて、大径与圧室70とリザーバ27との連通を遮断することになり、さらに摺動すると、大径ピストン部66が大径与圧室70の体積を減少させることで、大径与圧室70の液圧を高め、大径与圧室70とプライマリ液圧室61との間に設けられたシールリング41を開いて、大径与圧室70側からプライマリ液圧室61へ液補給を行うことになる。ブレーキ装置に対してブレーキ液を供給する際、このように作動初期に大容量のブレーキ液を供給する、いわゆるファストフィルを行うことで、ストローク初期の無効液量分を補い、ペダルストロークを短縮する。
そして、第1実施形態に係るマスタシリンダ10では、上記したファストフィル時に、プライマリ液圧室61への液補給の進行に伴って大径与圧室70の液圧を徐々に解除する必要がある。このため、上記した大径与圧室70、プライマリ液圧室61およびリザーバ27に接続されるとともに、大径与圧室70またはプライマリ液圧室61が所定の液圧に達したときに、大径与圧室70の液圧をプライマリ液圧室61の所定の液圧上昇に応じて徐々に低下させるようにリザーバ27側に逃がすための制御弁75が、シリンダボディ15に組み込まれて設けられている。
つまり、まずシリンダボディ15に、筒部13のシリンダ軸方向の中間位置、具体的には、二カ所の取付台部25,26の間位置からシリンダ径方向に沿って下方に略円筒状をなして突出する突出部80が形成されている。この突出部80も、シリンダボディ15の鋳造時に底部12、筒部13および取付台部25,26と一体成形される。
突出部80は、その内側にある筒部13の一部とともに制御弁75の制御シリンダ81を構成するもので、その内側には、段付き有底の弁収容穴82が形成されている。弁収容穴82は、筒部13側の小径穴部84と、小径穴部84の筒部13とは反対側に隣り合うこの小径穴部84よりも大径の中間径穴部85と、中間径穴部85の小径穴部84とは反対側に隣り合うこの中間径穴部85よりも大径の大径穴部86とで構成されている。中間径穴部85には小径穴部84側の一部を除いてメネジ部87が形成されている。
また、シリンダボディ15の筒部13における突出部80の内側位置、つまり制御シリンダ81を構成する部分には、一端が筒部13の口部側大径内径部44に開口し、他端が小径穴部84の底部の中央に開口して、小径穴部84を大径与圧室70に連通させる、小径穴部84よりも小径の与圧室連通穴90が、弁収容穴82と同軸をなして形成されている。与圧室連通穴90の内側が、制御シリンダ81において大径与圧室70が連通する大径与圧室通路90aとなっている。図2に示すように、与圧室連通穴90の小径穴部84側の端部には小径穴部84側ほど拡径するテーパ状の面取部91が形成されている。
また、図1に示すように、突出部80と筒部13と取付台部26とには、一端が小径穴部84の側壁部の底部側の端部に開口し、他端が取付台部26の取付穴26aの底部に開口して、小径穴部84をリザーバ27に連通させる、小径穴部84よりも小径のリザーバ連通穴92が形成されている。リザーバ連通穴92の内側が、制御シリンダ81においてリザーバ27が連通するリザーバ通路92aとなっている。
また、突出部80と筒部13とには、一端が中間径穴部85における小径穴部84側の段部88の側壁部側の端部に開口し、他端が偏心溝42の底部に開口して、中間径穴部85をプライマリ液圧室61に連通させる、小径穴部84よりも小径の液圧室連通穴93が形成されている。液圧室連通穴93の内側が、制御シリンダ81においてプライマリ液圧室61が連通する液圧室通路(小径液圧室通路)93aとなっている。
上記した弁収容穴82は、図2に示すように、その開口部が、制御弁75の制御シリンダ81を構成する蓋体95で閉塞されている。この蓋体95は、小径筒部96と、この小径筒部96と同軸かつ同内径をなす一方で外径が小径筒部96よりも大径とされた中間径筒部97と、この中間径筒部97と同軸かつ同内径をなす一方で外径が中間径筒部97よりも大径とされた大径筒部98と、この大径筒部98の中間径筒部97とは反対側を閉塞する底部99とを有する段付きの略有底円筒状をなしており、小径筒部96の外周部にオネジ部100が形成され、中間径筒部97の小径筒部96側の外周部に環状のシール溝101が形成されている。そして、蓋体95は、大径筒部98の中間径筒部97側の段差面が突出部80の開口端面に当接する位置まで、小径筒部96がオネジ部100において突出部80の中間径穴部85のメネジ部87に螺合され、これにより弁収容穴82を閉塞する。シール溝101には、弁収容穴82と蓋体95との隙間をシールするOリング102が嵌合されている。
そして、制御弁75は、筒部13と突出部80と蓋体95とで形成された空間、つまり制御シリンダ81内の空間に、制御ピストン105と、これを筒部13側に付勢する2つの弁スプリング(付勢手段)106および弁スプリング(付勢手段)107とを有している。
制御ピストン105は、図3にも示すように、第1軸部110と、第1軸部110と隣り合うこの第1軸部110と同軸でこれより大径の第2軸部111と、第2軸部111の第1軸部110とは反対側に隣り合うこの第2軸部111と同軸でこれより若干大径の第3軸部112と、第3軸部112の第2軸部111とは反対側に隣り合うこの第3軸部112と同軸でこれより大径の第4軸部113と、第4軸部113の第3軸部112とは反対側に隣り合うこの第4軸部113と同軸でこれより小径の第5軸部114とを有するアルミニウム等の金属製のピストン本体115を有している。
このピストン本体115は、図2に示すように、制御シリンダ81の内周面を構成する弁収容穴82の小径穴部84に第2軸部111において摺動可能に嵌合し、制御シリンダ81の内周面を構成する蓋体95の内周面に第4軸部113において摺動可能に嵌合する。このピストン本体115には、第1軸部110の先端中央にシール凹部117が、第2軸部111の外径側にシール溝118が、第4軸部113の外径側にシール溝119がそれぞれ形成されている。また、ピストン本体115の中央には、第5軸部114および第4軸部113を貫通して第3軸部112の中間位置まで大径軸穴121が形成されており、第3軸部112の中間位置から第2軸部111を貫通して第1軸部110の中間位置まで大径軸穴121よりも小径の小径軸穴122が形成されていて、小径軸穴122と直交するように軸直交穴123が形成されている。この軸直交穴123は、第1軸部110の外周面に開口している。
そして、制御ピストン105は、軸方向の両端面に円環状の突起部125,126が形成されてピストン本体115のシール凹部117に嵌合される円柱状のゴム製の弁シール(ゴムシール)127を有している。この弁シール127は、シール凹部117に嵌合され保持された状態で、外側に臨むように配置された突起部125がピストン本体115の先端よりも軸方向外側に突出することになり、この突起部125が小径穴部84の底面に、与圧室連通穴90の面取部91を全周にわたって囲むように当接する。これにより、弁シール127は、大径与圧室通路90aを開閉することになり、小径穴部84の底面がその際に弁シール127が接離する弁座128となる。
また、制御ピストン105は、第2軸部111のシール溝118に嵌合されるシールリング130と、第4軸部113のシール溝119に嵌合されるOリング131とを有している。シールリング130は、C字状断面を有するカップシールからなり、第3軸部112側にリップ側を配置した状態でシール溝118に嵌合されている。シールリング130は、第2軸部111と小径穴部84との隙間をシールすることになり、Oリング131は、第4軸部113と蓋体95の内周面との隙間をシールすることになる。
制御ピストン105を構成するピストン本体115、シールリング130およびOリング131によって、制御シリンダ81内には、軸線方向の弁座128側に、リザーバ通路92aに常時連通するとともに、弁シール127および弁座128で大径与圧室通路90aとの連通および連通遮断が切り換えられる弁室133が、軸線方向の中間部に液圧室通路93aに常時連通する制御圧力室134が、軸線方向の弁座128とは反対側に室135が画成される。ここで、リザーバ通路92a、弁室133および大径与圧室通路90aが、制御シリンダ81において、大径与圧室70とリザーバ27側とを連通する連通路137を構成している。なお、弁室133と室135とは制御ピストン105内の軸直交穴123、小径軸穴122および大径軸穴121を介して常時連通している。これに対して、制御圧力室134は、弁室133および室135とは基本的に区画されている。制御ピストン105は、弁座128に当接した閉弁状態で大径与圧室70の液圧を大径与圧室通路90aを介して開弁方向に受けることになる。また、弁室133および室135はリザーバ27に連通されて基本的に大気圧となっている。そして、制御ピストン105は、制御圧力室134に導入されるプライマリ液圧室61の液圧を受けるシールリング130およびOリング131の受圧面積差によって、プライマリ液圧室61の液圧に応じた大きさの付勢力が開弁方向に作用する。
以上により、リザーバ通路92aに常時連通する弁室133に配置されて大径与圧室通路90aを開閉するための弁座128は、大径与圧室70とリザーバ27側とを連通する連通路137に設けられており、さらに言えば、大径与圧室通路90aとリザーバ通路92aとの間に設けられている。この弁座128に接離する制御ピストン105の弁シール127は、大径与圧室通路90aとリザーバ通路92aとの間を開閉する。
コイルスプリングからなる弁スプリング106は、室135内および制御ピストン105の大径軸穴121内に配置されており、制御ピストン105の大径軸穴121の底面と蓋体95の底部99との間に介装されている。弁スプリング106は、制御ピストン105をその弁シール127が弁座128に当接する方向、つまり連通路137を閉弁する方向に付勢する。
コイルスプリングからなる弁スプリング107は、弁スプリング106の外側でこれと同心状をなして室135内に配置されており、制御ピストン105の第5軸部114を内側に挿入させながら第4軸部113の端面と蓋体95の底部99との間に介装されている。弁スプリング107も、制御ピストン105をその弁シール127が弁座128に当接する方向、つまり連通路137を閉弁する方向に付勢する。
そして、第1実施形態において、制御ピストン105には、ピストン本体115の外周面における第2軸部111と第3軸部112との間位置に、第3軸部112よりも大径で第4軸部113よりも大径の円環状のフランジ部(当接部)140が径方向に突出して形成されている。このフランジ部140は、制御シリンダ81の内周面に形成された、中間径穴部85の小径穴部84側の段部88に当接して、制御ピストン105のそれ以上の閉弁方向の移動を制限することになり、その結果、制御ピストン105の閉弁方向の移動量を制限する。よって、フランジ部140および段部88が、制御ピストン105と制御シリンダ81との間にあって、制御ピストン105の閉弁方向の移動量を制限して、その移動限界位置を決める閉弁方向規制部(規制部)141を構成している。また、フランジ部140は、蓋体95の端面により制御シリンダ81の内周面に形成される段部143に当接して、制御ピストン105のそれ以上の開弁方向の移動を制限する。つまり、フランジ部140および段部143が、制御ピストン105と制御シリンダ81との間にあって、制御ピストン105の開弁方向の移動量を制限して、その移動限界位置を決める開弁方向規制部(規制部)142を構成している。
ここで、閉弁方向規制部141は、弁シール127が弁スプリング106および弁スプリング107の付勢力により弁座128に当接してこれを閉弁した状態で、当接部140が段部88に当接することになり、このとき、ピストン本体155の先端と弁座128との間に所定量の隙間L2を生じさせる。このときの隙間L2は、この位置から開弁方向規制部142により規制される開弁方向の制御ピストン105の許容ストロークL1よりも小さくなっている。また、閉弁方向規制部141は、弁座128へ当接した状態における弁シール127の軸方向長が、所定量となるように、具体的には閉弁方向規制部141による規制なしで制御ピストン105が弁スプリング106および弁スプリング107により押圧されたときの弁シール127の軸方向長よりも長い所定量となるように、制御ピストン105の閉弁方向の移動量を制限する。また、開弁方向規制部142は、弁スプリング106および弁スプリング107の縮み量を所定範囲内に制限する。
制御弁75は、その制御圧力室134が、液圧室通路93aを介して常時プライマリ液圧室61に連通している。その結果、制御ピストン105には、プライマリ液圧室61の液圧とシールリング130およびOリング131の受圧面積差とで弁スプリング106および弁スプリング107の付勢力に抗する方向の推力つまり開弁方向の推力が生じる。この推力により、制御ピストン105が弁スプリング106および弁スプリング107の付勢力に抗して移動すると、連通路137が開放され、大径与圧室70の液圧を連通路137を介してリザーバ27側に逃がすことになる。ここで、制御圧力室134に導入されるプライマリ液圧室61の液圧に応じて制御ピストン105に生じる推力が変わることになり、その結果、制御ピストン105は、大径与圧室70の液圧を、プライマリ液圧室61の液圧上昇に応じて徐々に低下させるようにリザーバ27側に逃がすことになる。
つまり、上記したファストフィル時に、図1に示すシールリング41を押し開いて大径与圧室70からプライマリ液圧室61にブレーキ液が送り込まれ、ストローク初期の無効液量分(主にキャリパロールバック分)を補うことになるが、その後、プライマリ液圧室61の小径化に伴う液量不足を補うため、大径与圧室70からプライマリ液圧室61にブレーキ液が送り込まれながら、大径与圧室70とプライマリ液圧室61とが同圧で与圧室解除液圧まで上昇する。そして、与圧室解除液圧まで上昇すると、それまで閉状態にあった制御弁75が大径与圧室70の液圧を解除する。このとき、制御弁75は、上記したようにプライマリ液圧室61の液圧の上昇に応じて徐々に大径与圧室70の液圧が下がるように、大径与圧室70の液圧をリザーバ27側に逃がすことになる。
以上に述べた第1実施形態によれば、制御ピストン105の閉弁方向への移動量を規制して弁座128へ当接した状態における弁シール127の軸方向長を所定量とする閉弁方向規制部141、言い換えれば、弁座128へ当接した状態における弁シール127の軸方向長が、規制なしで制御ピストン105が弁スプリング106および弁スプリング107により押圧されたときの弁シール127の軸方向長よりも長くなるように制御ピストン105の移動量を制限する閉弁方向規制部141、さらに言い換えれば、制御ピストン105の外周面に形成されたフランジ部140を制御シリンダ81の内周面に形成された段部88に当接させることで、弁シール127が弁スプリング106および弁スプリング107により弁座128を閉弁した状態でピストン本体115の先端と弁座128との間に所定量の隙間を生じさせる閉弁方向規制部141を設けたため、弁シール127が必要以上に潰れることがなくなって、いわゆるヘタリを生じにくくなり、金属製のピストン本体115と弁座128との間に挟まれる、いわゆるクワレを生じることもなくなる。したがって、制御弁75の制御ピストン105に設けられる弁シール127の耐久性を向上することができる。
また、開弁方向規制部142によって弁スプリング106および弁スプリング107の縮み量を所定範囲内に制限するため、弁スプリング106および弁スプリング107の耐久性を向上することができる。
さらに、弁スプリング106および弁スプリング107の2つが同心状に配置されるため、1つのスプリングで同じ付勢力を設定し同じ開弁圧を設定する場合と比べて、制御弁75の軸方向長を短くすることができ、マスタシリンダ10を小型化することができる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図4に基づいて説明する。
図4は、第2実施形態のマスタシリンダの制御弁を示す部分拡大側断面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態においては、突出部80の弁収容穴82の中間径穴部85が、第1実施形態よりも長く形成されており、制御ピストン105のピストン本体115の第3軸部112が第2軸部111と同径とされて、第1実施形態よりも長く形成されている。また、蓋体95の大径筒部98が第1実施形態よりも短くされている。
そして、弁スプリング107が、制御ピストン105のフランジ部140と蓋体95の小径筒部96の端面との間に介装されている。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、フランジ部140が、制御シリンダ81の内周面に形成された段部88に当接して、制御ピストン105のそれ以上の閉弁方向の移動を制限することになり、その結果、フランジ部140および段部88が、制御ピストン105と制御シリンダ81との間にあって、制御ピストン105の閉弁方向の移動量を制限して、その移動限界位置を決める閉弁方向規制部141を構成している。
他方、第2実施形態では、制御ピストン105の第5軸部114の端部が、蓋体95の底部99に当接して、制御ピストン105のそれ以上の開弁方向の移動を制限する。つまり、第5軸部114と底部99とが、制御ピストン105と制御シリンダ81との間にあって、制御ピストン105の開弁方向の移動量を制限して、その移動限界位置を決める開弁方向規制部(規制部)142’を構成している。
以上に述べた第2実施形態によれば、弁スプリング106および弁スプリング107の2つが同心状に配置されるため、1つのスプリングで同じ付勢力を設定し同じ開弁圧を設定する場合と比べて、制御弁75の軸方向長を短くすることができ、マスタシリンダ10を小型化することができる。ただし、弁スプリング106および弁スプリング107の軸方向の重なり長を長くできる第1実施形態の方が、第2実施形態よりも、制御弁75の軸方向長を短くすることができ、マスタシリンダ10を小型化することができる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図5に基づいて説明する。
図5は、第3実施形態のマスタシリンダの制御弁を示す部分拡大側断面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態においては、第1実施形態の弁スプリング106が設けられずに、1つの弁スプリング107のみで、制御ピストン105を閉方向に付勢するようになっている。このため、弁スプリング107が同じ荷重を発生可能となるように長くなっており、これに合わせて、蓋体95の大径筒部98が第1実施形態よりも長くされている。また、制御ピストン105のピストン本体115の第1実施形態における大径軸穴121が形成されずに小径軸穴122が第5軸部114側の端面に抜けるように形成されている。
以上に述べた第3実施形態によれば、1つの弁スプリング107で制御ピストン105を閉方向に付勢するため、第1,第2実施形態に対して、制御弁75の軸方向長は長くなるものの、部品点数を低減することができる。