JP2019026009A - マスタシリンダ - Google Patents

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峻 立川
Shun Tachikawa
峻 立川
寛隆 河野
Hirotaka Kono
寛隆 河野
伸哉 河西
Shinya Kasai
伸哉 河西
健 眞崎
Ken Masaki
健 眞崎
長典 輿水
Naganori Koshimizu
長典 輿水
和章 坂本
Kazuaki Sakamoto
和章 坂本
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Abstract

【課題】ブレーキ液流通時の流量を増大させることが可能となるマスタシリンダを提供する。
【解決手段】シリンダ本体15内に形成される周溝32内に補給路48と圧力室85との間を密封可能なシール部材45が設けられており、周溝32内には、周溝32の周壁89と、シール部材45のベース部101の端面101aとの間にベース部101よりも硬度が高いスペーサ部材50が設けられ、周壁89は、周壁89とベース部101の端面101aとが当接した状態で、スペーサ部材50を収容する段差部95を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両の制動用シリンダへ液圧を供給するマスタシリンダに関する。
マスタシリンダには、シールカップとガイドとの間に環状のスペーサを介装したものがある(例えば特許文献1参照)。
特開2002−104162号公報
圧力室からリザーバへのブレーキ液の流通を遮断するとともに逆方向のブレーキ液の流通を許容するシール部材を有するマスタシリンダにおいて、ブレーキ液流通時の流量を増大させる要望がある。
したがって、本発明は、ブレーキ液流通時の流量を増大させることが可能なマスタシリンダの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るマスタシリンダは、一側が開口部とされ他側が底部とされる有底筒状をなしてブレーキ液の吐出路とリザーバに連通する補給路とを有するシリンダ本体と、該シリンダ本体内に移動可能に配置され、該シリンダ本体との間に前記吐出路から液圧を供給する圧力室を形成するピストンと、前記シリンダ本体内に形成される周溝内に設けられ前記補給路と前記圧力室との間を密封可能なシール部材とを有するマスタシリンダであって、前記シール部材は、前記周溝における前記開口部側の周壁に当接可能なベース部と、該ベース部から前記底部側に向けて延出して前記ピストンの外周に摺接する内周リップ部と、前記ベース部から前記底部側に向けて延出して前記周溝の溝底に当接する外周リップ部と、を有し、前記周溝内には、該周溝の前記開口部側の周壁と前記ベース部の前記開口部側の端面との間に該ベース部よりも硬度が高いスペーサ部材が設けられ、前記周溝の前記開口部側の周壁は、該周壁と前記ベース部の前記開口部側の端面とが当接した状態で、前記スペーサ部材を収容する段差部を有する、構成とした。
本発明に係るマスタシリンダによれば、ブレーキ液流通時の流量を増大させることが可能となる。
実施形態のマスタシリンダを示す断面図である。 実施形態のマスタシリンダの要部を示す基本状態の部分拡大断面図である。 実施形態のマスタシリンダの要部を示す通常制動時等の状態を示す部分拡大断面図である。 実施形態のマスタシリンダの要部を示すブレーキ液のポンプアップ時の状態を示す部分拡大断面図である。
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す本実施形態のマスタシリンダ11は、図示略のブレーキペダルの操作量に応じた力が図示略のブレーキブースタの出力軸を介して導入されるもので、ブレーキペダルの操作量に応じたブレーキ液圧を発生させるものである。このマスタシリンダ11には、鉛直方向上側にブレーキ液を給排するリザーバ12(図1において一部のみ図示)が取り付けられている。なお、本実施形態においては、マスタシリンダ11に直接リザーバ12を取り付けているが、マスタシリンダ11から離間した位置にリザーバを配置し、リザーバとマスタシリンダ11とを配管で接続するようにしても良い。
マスタシリンダ11は、底部13と筒部14とを有する有底筒状に一つの素材から加工されて形成される金属製のシリンダ本体15を有している。シリンダ本体15は、一側が開口部16とされ、他側が底部13とされている。このシリンダ本体15内の開口部16側には、シリンダ本体15から一部突出して金属製のプライマリピストン18(ピストン)が移動可能に配置されている。また、シリンダ本体15内のプライマリピストン18よりも底部13側には、同じく金属製のセカンダリピストン19(ピストン)が移動可能に配置されている。プライマリピストン18には底面を有する内周孔21が形成されている。セカンダリピストン19には底面を有する内周孔22が形成されている。マスタシリンダ11は、いわゆるプランジャ型のものとなっている。また、マスタシリンダ11は、上記したように2つのプライマリピストン18およびセカンダリピストン19を有するタンデムタイプのマスタシリンダとなっている。なお、本発明は、上記タンデムタイプのマスタシリンダへの適用に限られるものではなく、プランジャ型のマスタシリンダであれば、シリンダ本体に1つのピストンを配したシングルタイプのマスタシリンダや、3つ以上のピストンを有するマスタシリンダ等のいかなるプランジャ型のマスタシリンダにも適用できるものである。
シリンダ本体15には、その筒部14の径方向(以下、シリンダ径方向と称す)の外側に突出する取付台部23が、その筒部14の円周方向(以下、シリンダ周方向と称す)における所定位置に一体に形成されている。この取付台部23には、リザーバ12を取り付けるための取付穴24および取付穴25が形成されている。なお、本実施形態においては、取付穴24および取付穴25は、互いにシリンダ周方向における位置を一致させた状態で、シリンダ本体15の筒部14の軸線(以下、シリンダ軸と称す)方向における位置をずらして鉛直方向上部に形成されている。シリンダ本体15は、シリンダ軸方向が車両前後方向に沿う姿勢で車両に配置される。
シリンダ本体15の筒部14の取付台部23側には、底部13の近傍にブレーキ液の吐出路であるセカンダリ吐出路26(吐出路)が形成されている。また、セカンダリ吐出路26よりもシリンダ本体15の開口部16側にブレーキ液の吐出路であるプライマリ吐出路27(吐出路)が形成されている。これらセカンダリ吐出路26およびプライマリ吐出路27は、図示は略すが、ブレーキ配管を介してディスクブレーキやドラムブレーキ等の制動用シリンダに連通しており、制動用シリンダに向けてブレーキ液を吐出する。なお、本実施形態においては、これらセカンダリ吐出路26およびプライマリ吐出路27が、互いにシリンダ周方向における位置を一致させた状態でシリンダ軸方向における位置をずらして形成されている。
セカンダリ吐出路26およびプライマリ吐出路27には、マスタシリンダ11からブレーキ液をポンプアップして制動用シリンダに向けて吐出する等、制動用シリンダへのブレーキ液圧を制御するVDC装置が設けられている。
シリンダ本体15の筒部14の底部13側の内周部には、シリンダ径方向内方に突出しシリンダ周方向に環状をなす摺動内径部28が形成されている。セカンダリピストン19は、この摺動内径部28の最小内径面28aに摺動可能に嵌合されており、この最小内径面28aで案内されてシリンダ軸方向に移動する。シリンダ本体15の筒部14の開口部16側の内周部には、シリンダ径方向内方に突出しシリンダ周方向に環状をなす摺動内径部29が形成されている。プライマリピストン18は、この摺動内径部29の最小内径面29aに摺動可能に嵌合されており、この最小内径面29aで案内されてシリンダ軸方向に移動する。
摺動内径部28には、シリンダ軸方向における位置をずらして複数具体的には2カ所のいずれも円環状をなす周溝30、周溝31が底部13側からこの順に形成されている。また、摺動内径部29にも、シリンダ軸方向における位置をずらして複数具体的には2カ所のいずれも円環状をなす周溝32、周溝33が底部13側からこの順に形成されている。周溝30,31は、シリンダ周方向に環状をなして最小内径面28aよりもシリンダ径方向外側に凹む形状をなしており、周溝32,33は、シリンダ周方向に環状をなして最小内径面29aよりもシリンダ径方向外側に凹む形状をなしている。周溝30〜33は、シリンダ本体15内に形成されており、いずれも全体が切削加工により形成されている。
摺動内径部28には、周溝30の開口部16側に隣接して、シリンダ軸を中心とする円筒状で、最小内径面28aよりも大径の隣接内径面28bが形成されている。周溝30は、この隣接内径面28bよりもシリンダ径方向外側に凹む形状をなしている。摺動内径部29には、周溝32の開口部16側に隣接して、シリンダ軸を中心とする円筒状で、最小内径面29aよりも大径の隣接内径面29bが形成されている。周溝32は、この隣接内径面29bよりもシリンダ径方向外側に凹む形状をなしている。
周溝30〜33のうち最も底部13側にある周溝30は、取付穴24および取付穴25のうちの底部13側の取付穴24の近傍に形成されている。この周溝30内には、周溝30に保持されるように、いずれも円環状のピストンシール35(シール部材)およびスペーサ部材40が配置されている。
シリンダ本体15の摺動内径部28における周溝30よりも開口部16側には、シリンダ径方向外側に最小内径面28aおよび隣接内径面28bよりもシリンダ径方向外側に凹む環状の開口溝37が形成されている。この開口溝37は、底部13側の取付穴24から穿設される連通穴36を筒部14内に開口させる。ここで、この開口溝37と連通穴36とが、シリンダ本体15に設けられてリザーバ12に常時連通するセカンダリ補給路38(補給路)を構成している。言い換えれば、シリンダ本体15は、リザーバ12に連通するセカンダリ補給路38を有している。隣接内径面28bおよび開口溝37とセカンダリピストン19との間もセカンダリ補給路38を構成している。
シリンダ本体15の摺動内径部28の周溝30よりも底部13側には、周溝30に開口するとともに周溝30からシリンダ軸方向に直線状に底部13側に向け延出する連通溝41が、シリンダ径方向外側に最小内径面28aよりも凹むように形成されている。この連通溝41は、底部13と周溝30との間であって底部13の近傍となる位置に形成されたセカンダリ吐出路26と周溝30とを後述のセカンダリ圧力室68を介して連通させるものである。
シリンダ本体15の摺動内径部28には、シリンダ軸線方向における上記開口溝37の周溝30とは反対側つまり開口部16側に、上記周溝31が形成されている。この周溝31内には、周溝31に保持されるように、円環状の区画シール42が配置されている。
シリンダ本体15の摺動内径部29には、開口部16側の取付穴25の近傍に、上記した周溝32が形成されている。この周溝32内には、周溝32に保持されるように、いずれも円環状のピストンシール45(シール部材)およびスペーサ部材50が配置されている。
シリンダ本体15の摺動内径部29におけるこの周溝32の開口部16側には、シリンダ径方向外側に最小内径面29aおよび隣接内径面29bよりもシリンダ径方向外側に凹む環状の開口溝47が形成されている。この開口溝47は、開口部16側の取付穴25から穿設される連通穴46を筒部14内に開口させる。ここで、この開口溝47と連通穴46とが、シリンダ本体15に設けられてリザーバ12に常時連通するプライマリ補給路48(補給路)を主に構成している。言い換えれば、シリンダ本体15は、リザーバ12に連通するプライマリ補給路48を有している。隣接内径面29bおよび開口溝47とプライマリピストン18との間もプライマリ補給路48を構成している。
シリンダ本体15の摺動内径部29の周溝32よりも底部13側には、周溝32に開口するとともに周溝32からシリンダ軸方向に直線状に底部13側に向け延出する連通溝51が、シリンダ径方向外側に最小内径面29aよりも凹むように形成されている。この連通溝51は、周溝31と周溝32との間であって周溝31の近傍となる位置に形成されたプライマリ吐出路27と、周溝32とを後述するプライマリ圧力室85を介して連通させるものである。
シリンダ本体15の摺動内径部29における上記開口溝47の周溝32とは反対側つまり開口部16に周溝33が形成されている。この周溝33内には、周溝33に保持されるように、円環状の区画シール52が配置されている。
シリンダ本体15の底部13側に配置されるセカンダリピストン19は、第1円筒状部55と、第1円筒状部55の軸線方向における一側に形成された底部56と、底部56の第1円筒状部55とは反対側に形成された第2円筒状部57とを有する形状をなしている。上記内周孔22は、これらのうちの第1円筒状部55と底部56とにより形成されている。セカンダリピストン19は、第1円筒状部55をシリンダ本体15の底部13側に配置した状態で、シリンダ本体15の摺動内径部28に設けられたピストンシール35および区画シール42のそれぞれの内周に摺動可能に嵌合される。
第1円筒状部55の底部56とは反対の端側外周部には、セカンダリピストン19の外周面19Aにおいて最も大径の最大外径面19aよりも径方向内方に凹む円環状の凹部59が形成されている。この凹部59には、その底部56側にシリンダ径方向に貫通するポート60が複数、シリンダ周方向の等間隔位置に放射状となるように形成されている。
セカンダリピストン19とシリンダ本体15の底部13との間には、図示略のブレーキブースタの出力軸から入力がない非制動状態でこれらの間隔を決めるセカンダリピストンスプリング62を含む間隔調整部63が設けられている。この間隔調整部63は、シリンダ本体15の底部13に当接する係止部材64と、この係止部材64に所定範囲内でのみ摺動するように連結されてセカンダリピストン19の底部56に当接する係止部材65とを有している。上記セカンダリピストンスプリング62は、係止部材64と係止部材65との間に介装されている。
ここで、シリンダ本体15の底部13および筒部14の底部13側とセカンダリピストン19とで囲まれて形成される部分が、ブレーキ液圧を発生してセカンダリ吐出路26にブレーキ液圧を供給するセカンダリ圧力室68(圧力室)となっている。言い換えれば、セカンダリピストン19は、シリンダ本体15との間に、セカンダリ吐出路26に液圧を供給するセカンダリ圧力室68を形成している。このセカンダリ圧力室68は、セカンダリピストン19がポート60をセカンダリ補給路38に開口させる位置にあるとき、セカンダリ補給路38つまりリザーバ12に連通するようになっている。
シリンダ本体15の周溝31に保持される区画シール42は、合成ゴムからなる一体成形品であり、その中心線を含む径方向断面の片側形状がC字状をなしている。区画シール42は、内周が、シリンダ軸方向に移動するセカンダリピストン19の外周面19Aに摺接するとともに、外周がシリンダ本体15の周溝31に当接する。これにより、区画シール42は、セカンダリピストン19およびシリンダ本体15の区画シール42の位置の隙間を常時密封する。
シリンダ本体15の周溝30に保持されるピストンシール35は、EPDM等の合成ゴムからなる一体成形品であり、その中心線を含む径方向断面の片側形状がE字状をなしている。ピストンシール35の内周は、シリンダ軸方向に移動するセカンダリピストン19の外周面19Aに摺接する。また、ピストンシール35の外周は、シリンダ本体15の周溝30に当接するようになっている。周溝30に設けられるこのピストンシール35は、セカンダリピストン19がポート60をピストンシール35よりも底部13側に位置させた状態では、セカンダリ補給路38とセカンダリ圧力室68との間を密封可能となっている。つまり、ピストンシール35は、セカンダリ圧力室68と、セカンダリ補給路38およびリザーバ12との連通を遮断して密封することが可能となっている。この密封状態で、セカンダリピストン19が、シリンダ本体15の摺動内径部28およびシリンダ本体15に保持されたピストンシール35および区画シール42の内周で摺動して底部13側に移動することによって、セカンダリ圧力室68内のブレーキ液が加圧される。セカンダリ圧力室68内で加圧されたブレーキ液は、セカンダリ吐出路26から車輪側の制動用シリンダに供給されることになる。
図示略のブレーキブースタの出力軸から入力がなく上述のセカンダリピストン19が図1に示すようにポート60をセカンダリ補給路38に開口させる基本位置(非制動位置)にあるときに、ピストンシール35は、上記セカンダリピストン19の凹部59内にあって、ポート60にその一部がシリンダ軸方向にラップするようになっている。そして、セカンダリピストン19がシリンダ本体15の底部13側へ移動してピストンシール35の内周部がポート60に全て重なると、セカンダリ圧力室68とリザーバ12との連通が遮断されるようになっている。
シリンダ本体15の開口部16側に配置されるプライマリピストン18は、第1円筒状部71と、第1円筒状部71の軸線方向における一側に形成された底部72と、底部72の第1円筒状部71とは反対側に形成された第2円筒状部73とを有する形状をなしている。上記内周孔21は、これらのうちの第1円筒状部71と底部72とにより形成されている。プライマリピストン18は、第1円筒状部71をシリンダ本体15内のセカンダリピストン19側に配置した状態で、シリンダ本体15の摺動内径部29に設けられたピストンシール45および区画シール52のそれぞれの内周に摺動可能に嵌合される。ここで、第2円筒状部73の内側には、図示略のブレーキブースタの出力軸が挿入され、この出力軸によって底部72が押圧されることになる。
第1円筒状部71の底部72とは反対の端側外周部には、プライマリピストン18の外周面18Aにおいて最も大径の最大外径面18aよりも径方向内方に凹む円環状の凹部75が形成されている。この凹部75には、その底部72側に径方向に貫通するポート76が複数、シリンダ周方向の等間隔位置に、放射状となるように形成されている。
セカンダリピストン19とプライマリピストン18との間には、図示略のブレーキブースタの出力軸から入力がない非制動状態でこれらの間隔を決めるプライマリピストンスプリング78を含む間隔調整部79が設けられている。この間隔調整部79は、プライマリピストン18の底部72に当接する係止部材81と、セカンダリピストン19の底部56に当接する係止部材82と、係止部材81に一端部が固定されるとともに係止部材82を所定範囲内でのみ摺動自在に支持する軸部材83とを有している。上記プライマリピストンスプリング78は、係止部材81と係止部材82との間に介装されている。
ここで、シリンダ本体15の筒部14とプライマリピストン18とセカンダリピストン19とで囲まれて形成される部分が、ブレーキ液圧を発生してプライマリ吐出路27にブレーキ液を供給するプライマリ圧力室85(圧力室)となっている。言い換えれば、プライマリピストン18は、セカンダリピストン19およびシリンダ本体15との間に、プライマリ吐出路27に液圧を供給するプライマリ圧力室85を形成している。このプライマリ圧力室85は、プライマリピストン18がポート76をプライマリ補給路48に開口させる位置にあるとき、プライマリ補給路48つまりリザーバ12に連通するようになっている。
シリンダ本体15の周溝33に保持される区画シール52は、区画シール42と共通の部品であり、合成ゴムからなる一体成形品であって、その中心線を含む径方向断面の片側形状がC字状をなしている。区画シール52は、内周が、シリンダ軸方向に移動するプライマリピストン18の外周面18Aに摺接するとともに、外周がシリンダ本体15の周溝33に当接する。これにより、区画シール52は、プライマリピストン18およびシリンダ本体15の区画シール52の位置の隙間を常時密封する。
シリンダ本体15の周溝32に保持されるピストンシール45は、ピストンシール35と共通の部品であり、EPDM等の合成ゴムからなる一体成形品であり、その中心線を含む径方向断面の片側形状がE字状をなしている。ピストンシール45の内周は、シリンダ軸方向に移動するプライマリピストン18の外周面18Aに摺接する。ピストンシール45の外周は、シリンダ本体15の周溝32に当接するようになっている。周溝32に設けられるこのピストンシール45は、プライマリピストン18がポート76をピストンシール45よりも底部13側に位置させた状態では、プライマリ補給路48とプライマリ圧力室85との間を密封可能となっている。つまり、ピストンシール45は、プライマリ圧力室85と、プライマリ補給路48およびリザーバ12との連通を遮断して密封することが可能となっている。この密封状態で、プライマリピストン18が、シリンダ本体15の摺動内径部29およびシリンダ本体15に保持されたピストンシール45および区画シール52の内周で摺動して底部13側に移動することによって、プライマリ圧力室85内のブレーキ液が加圧される。プライマリ圧力室85内で加圧されたブレーキ液は、プライマリ吐出路27から車輪側の制動用シリンダに供給されることになる。
図示略のブレーキブースタの出力軸から入力がなく、プライマリピストン18が図1に示すようにポート76をプライマリ補給路48に開口させる基本位置(非制動位置)にあるときに、ピストンシール45は、上記プライマリピストン18の凹部75内にあって、ポート76にその一部がシリンダ軸方向にラップするようになっている。そして、プライマリピストン18がシリンダ本体15の底部13側へ移動してピストンシール45の内周部がポート76に全て重なると、プライマリ圧力室85とリザーバ12との連通が遮断されるようになっている。
ここで、シリンダ本体15の周溝30およびその近傍部分と、ピストンシール35と、スペーサ部材40と、ピストンシール35の摺接部分であるセカンダリピストン19の第1円筒状部55の先端部分とからなる構造部をセカンダリ側のシール構造部SSと称する。また、シリンダ本体15の周溝32およびその近傍部分と、ピストンシール45と、スペーサ部材50と、ピストンシール45の摺接部分であるプライマリピストン18の第1円筒状部71の先端部分とからなる構造部をプライマリ側のシール構造部SPと称する。ピストンシール35およびピストンシール45は共通部品であり、スペーサ部材40およびスペーサ部材50も共通部品であって、セカンダリ側のシール構造部SSとプライマリ側のシール構造部SPとは同様の構造となっている。したがって、以下においては、これらの詳細についてプライマリ側のシール構造部SPを例にとり、主に図2〜図4を参照して説明する。シリンダ本体15の開口部16側を、シリンダ開口側と称し、シリンダ本体15の底部13側を、シリンダ底側と称す。
図2に示すように、周溝32は、その凹み方向の奥側、すなわちシリンダ径方向外側に溝底88を有している。また、周溝32は、溝底88におけるシリンダ開口側の端縁部からシリンダ径方向内方に延出する周壁89を有している。さらに、周溝32は、溝底88におけるシリンダ底側の端縁部からシリンダ径方向内方に延出する周壁90を有している。これら溝底88、周壁89および周壁90は、シリンダ本体15自体に形成されており、シリンダ本体15に対する切削加工により形成されている。
溝底88は溝底面部88aを有している。溝底面部88aは、シリンダ軸を中心とする円筒面をなしており、シリンダ軸方向の長さがシリンダ周方向の全周に亘って一定となっている。
周溝32のシリンダ開口側の周壁89は、主壁面部89aと、中間面部89bと、内側壁面部89cとを有している。主壁面部89aは、溝底88のシリンダ開口側からシリンダ径方向の内方に、周壁89の径方向の幅の中央位置よりも中心軸線側まで延びている。主壁面部89aは、シリンダ軸の直交面に平行な平坦面からなっている。主壁面部89aは、シリンダ周方向の全周に亘って、一定内径かつ一定外径でシリンダ径方向に一定幅となっており、シリンダ軸を中心とする円環状をなしている。
中間面部89bは、主壁面部89aのシリンダ径方向の内端縁部からシリンダ開口側にシリンダ軸に平行に延びている。中間面部89bは、シリンダ軸を中心とする円筒面であり、シリンダ周方向の全周に亘ってシリンダ軸方向の長さが一定となっている。中間面部89bは、周溝32の溝底面部88aよりもプライマリピストン18の最大外径面18aに、径方向において近い位置に配置されている。言い換えれば、周溝32の溝底面部88aの径と中間面部89bの径との差は、中間面部89bの径とプライマリピストン18の最大外径面18aの径との差よりも大きい。
内側壁面部89cは、中間面部89bのシリンダ軸方向のシリンダ開口側の端縁部からシリンダ径方向の内方に延びて隣接内径面29bに繋がっている。内側壁面部89cは、シリンダ軸の直交面に平行な平坦面からなっている。内側壁面部89cは、シリンダ周方向全周に亘って、一定内径かつ一定外径でシリンダ径方向に一定幅となっており、シリンダ軸を中心とする円環状をなしている。
中間面部89bおよび内側壁面部89cは、主壁面部89aに対しシリンダ開口側に向けて段差状をなす段差部95を構成している。段差部95は、シリンダ軸を中心とする円環状であり、周溝32のシリンダ開口側の周壁89に形成され、主壁面部89aと隣接内径面29bとの間に形成されている。
主壁面部89aの大径側の端縁部と溝底面部88aのシリンダ開口側の端縁部とはR面取りで接続されている。
シリンダ軸方向に沿う中間面部89bが内側壁面部89cと主壁面部89aとの間に設けられることで、内側壁面部89cは全体として主壁面部89aよりもシリンダ開口側にオフセットして設けられている。主壁面部89aのシリンダ径方向の幅は、内側壁面部89cのシリンダ径方向の幅よりも広くなっている。
周溝32のシリンダ底側の周壁90は、周壁89に対向しており、壁面部90aと、斜面部90bとを有している。壁面部90aは、溝底88のシリンダ底側からシリンダ径方向の内方に延びている。壁面部90aは、シリンダ軸の直交面に平行な平坦面からなっている。壁面部90aは、シリンダ周方向の全周に亘って、一定内径かつ一定外径でシリンダ径方向に一定幅となっており、シリンダ軸を中心とする円環状をなしている。
斜面部90bは、壁面部90aのシリンダ径方向の内端縁部からシリンダ径方向の内方に、シリンダ径方向の内側ほどシリンダ底側に位置するようにシリンダ軸に対し傾いて延出している。言い換えれば、斜面部90bは、壁面部90aのシリンダ径方向の内端縁部からシリンダ底側に、シリンダ底側ほど縮径するようにテーパ状をなして延出している。斜面部90bは、連通溝51の開口部分を除いて、シリンダ径方向の幅およびシリンダ軸方向の長さがそれぞれ一定となっている。
壁面部90aの大径側の端縁部と溝底面部88aのシリンダ底側の端縁部とはR面取りで接続されている。斜面部90bの小径側の端縁部と摺動内径部29の最小内径面29aとはR面取りで接続されている。
プライマリピストン18に形成された凹部75は、円筒面75aとテーパ面75bとテーパ面75cとを有している。円筒面75aは、プライマリピストン18において最も大径である円筒面状の最大外径面18aよりも小径となっており、ポート76の形成部分を除いて軸方向に一定幅となっている。テーパ面75bは、円筒面75aのシリンダ開口側の端縁部からシリンダ開口側ほど大径となるように傾斜して延出して、最大外径面18aの凹部75よりもシリンダ開口側の部分に繋がっている。テーパ面75bは、ポート76の形成部分を除いて軸方向に一定幅となっている。テーパ面75cは、円筒面75aのシリンダ底側の端縁部からシリンダ底側ほど大径となるように傾斜して延出して、最大外径面18aの凹部75よりもシリンダ底側の部分に繋がっている。テーパ面75cは、全周に亘って軸方向に一定幅となっている。
これら円筒面75a、テーパ面75bおよびテーパ面75cは、最大外径面18aと同様にプライマリピストン18の中心軸を中心に形成されている。プライマリ圧力室85に常時連通するポート76は、円筒面75aおよびテーパ面75bの両方に架かる位置に形成されており、言い換えれば、そのシリンダ底側の端部が円筒面75aに、そのシリンダ開口側の端部がテーパ面75bに、それぞれ位置している。
周溝32に配置されるピストンシール45は、ベース部101と内周リップ部102と外周リップ部103と中間リップ部104とを有している。ベース部101は、ピストンシール45におけるシリンダ開口側に配置されており、ピストンシール45の軸直交面に平行な円環板状をなしている。内周リップ部102は、ベース部101の内周端縁部からシリンダ軸方向に沿ってシリンダ底側に向け延出する円環筒状をなしている。外周リップ部103は、ベース部101の外周端縁部からシリンダ軸方向に沿ってシリンダ底側に向けて延出する円環筒状をなしている。中間リップ部104は、外周リップ部103と内周リップ部102との間にあってベース部101からシリンダ軸方向に沿ってシリンダ底側に向けて突出する円環筒状をなしている。中間リップ部104は、ベース部101からのシリンダ軸方向の突出量が、内周リップ部102および外周リップ部103のベース部101からの突出量よりも大きくなっている。
ピストンシール45は、内周リップ部102が、シリンダ軸方向に移動するプライマリピストン18の、上記した円筒面75a、テーパ面75b、テーパ面75cおよび最大外径面18aを含む外周面18Aに摺接することになり、外周リップ部103が、シリンダ本体15の周溝32の溝底88の溝底面部88aに当接する。言い換えれば、ピストンシール45は、プライマリピストン18の外周面18Aに摺接する内周リップ部102とシリンダ本体15の周溝32に当接する外周リップ部103とが突出して設けられる円環状のベース部101を有しており、内周リップ部102と外周リップ部103との間には、これらよりもシリンダ本体15の軸方向に突出して中間リップ部104が設けられている。
内周リップ部102および中間リップ部104は、略円筒状をなしており、外周リップ部103は、ベース部101から離れるほど大径となるテーパ筒状をなしている。中間リップ部104の延出側先端部には、中間リップ部104を径方向に貫通する中間溝106が周方向に等間隔で複数形成されている。ベース部101のシリンダ開口側の端部には、ベース部101の中心軸の直交面、すなわちピストンシール45の中心軸の直交面に平行な平坦面からなる端面101aが設けられている。ベース部101のシリンダ開口側の端部には、この端面101aよりもシリンダ底側に凹む径方向溝107が、端面101aを径方向に貫通するように形成されている。径方向溝107は、複数、ベース部101の周方向の等間隔位置に放射状となるように形成されている。ピストンシール45は、ベース部101の端面101aが、周溝32におけるシリンダ開口の周壁89に最も近く、この周壁89に当接可能となっている。
そして、本実施形態においては、周溝32内に金属材料からなるスペーサ部材50が設けられている。スペーサ部材50は、周溝32のシリンダ開口側の周壁89とピストンシール45のベース部101のシリンダ開口側の端面101aとの間に設けられている。金属製のスペーサ部材50は、ベース部101を含む合成ゴム製のピストンシール45よりも硬度が高く剛性が高い。なお、スペーサ部材50は、合成ゴム製のベース部101よりも硬度が高ければ良く、例えば硬質の合成樹脂製としても良い。
スペーサ部材50は、全周に亘って一定外径であって一定内径であり、径方向に一定幅の円環板状である。スペーサ部材50は、外径が、周溝32の中間面部89bの径よりも若干小径であって、隣接内径面29bの径よりも大径となっている。スペーサ部材50の外周面は、その径方向において、周溝32の溝底面部88aよりもプライマリピストン18の最大外径面18aに近い。言い換えれば、周溝32の溝底面部88aの径とスペーサ部材50の外径との差は、スペーサ部材50の外径とプライマリピストン18の最大外径面18aの径との差よりも大きい。
スペーサ部材50は、内径が、隣接内径面29bの径よりも小径であり、プライマリピストン18の最大外径面18aの径よりも若干大径となっている。スペーサ部材50は、厚さが、中間面部89bの軸方向長さと同等となっており、主壁面部89aと内側壁面部89cとの軸方向の距離と同等になっている。
スペーサ部材50は、図3に示すように、プライマリピストン18の最大外径面18a上に位置するとき、外径側の一部が中間面部89bを含む段差部95内に入り込んで中間面部89bと軸方向の位置を重ね合わせることが可能となっている。言い換えれば、スペーサ部材50は、外径側の一部が段差部95に入り込み可能であり、さらに言い換えれば、段差部95はスペーサ部材50の外径側の一部を収容可能となっている。
ここで、開口溝47の溝底面47aの径と隣接内径面29bの径との差は、隣接内径面29bの径とプライマリピストン18の最大外径面18aの径との差よりも小さくなっている。言い換えれば、隣接内径面29bは、径方向において、プライマリピストン18の最大外径面18aよりも、開口溝47の溝底面47aに近い。隣接内径面29bは、斜面部90bの最大径すなわち壁面部90aの最小径よりも大径となっている。
図2は、図示略のブレーキブースタの出力軸側から入力がないマスタシリンダ11の基本状態(ブレーキペダルが操作される前の非制動状態)を示している。この基本状態にあるとき、ピストンシール45は、内周リップ部102がプライマリピストン18の凹部75の円筒面75aに接触しており、外周リップ部103が、周溝32の溝底88の溝底面部88aに当接している。また、この基本状態にあるとき、ピストンシール45は、ベース部101の端面101aが周壁89の主壁面部89aに当接している。さらに、この基本状態にあるとき、スペーサ部材50は、周壁89の段差部95内に外径側の一部が入り込んで収容されており、ベース部101の端面101aで押えられて段差部95からの外れが規制されている。このように周壁89の主壁面部89aとベース部101の端面101aとが当接した状態で、段差部95は、スペーサ部材50の外径側の一部を収容している。この基本状態にあるとき、ピストンシール45は、全体として、シリンダ底側の周壁90から離間している。
マスタシリンダ11が基本状態にあるとき、プライマリピストン18は、図2に示す基本位置(非制動位置)に位置する。プライマリピストン18は、この基本位置にあるときに、ポート76をプライマリ補給路48に開口させている。プライマリピストン18が基本位置にあるときに、ピストンシール45は、その内周リップ部102が、プライマリピストン18の凹部75の円筒面75aの位置にあって、ベース部101の内周部がポート76の一部にシリンダ軸方向の位置を重ね合わせるようになっている。
そして、通常制動時に、図示略のブレーキブースタの出力軸側から入力があって、プライマリピストン18が基本位置からシリンダ底側へ移動すると、ピストンシール45は、プライマリピストン18とともに周溝32内で周壁90側に移動する。その結果、ピストンシール45は、中間リップ部104の先端部において周壁90の壁面部90aに当接して、シリンダ底側への移動が規制されることになる。なお、ピストンシール45が周溝32内で周壁90側に移動すると、ベース部101の端面101aが周壁89の主壁面部89aから離れる。すると、スペーサ部材50は、ピストンシール45による押さえがなくなって周壁89の段差部95から外れる。
プライマリピストン18が、さらにシリンダ底側へ移動すると、周壁90の壁面部90aに当接してシリンダ底側への移動が規制されているピストンシール45は、プライマリピストン18の外周面18Aを摺動して、ベース部101が凹部75のテーパ面75bに乗り上げる。その際に、スペーサ部材50も、ピストンシール45で押されてテーパ面75bに乗り上げる。
プライマリピストン18が、さらにシリンダ底側へ移動すると、プライマリピストン18の外周面18Aを摺接するピストンシール45は、ポート76を越えポート76を閉塞して、プライマリ圧力室85とプライマリ補給路48との連通を遮断した後、全体としてプライマリピストン18の最大外径面18aのシリンダ開口側の部分に乗り上げる。その際に、ピストンシール45は、スペーサ部材50を押して最大外径面18aのシリンダ開口側の部分に移動させる。
上記のようにプライマリ圧力室85とプライマリ補給路48との連通を遮断する位置からプライマリピストン18がシリンダ底側に位置する範囲では、ピストンシール45がプライマリ圧力室85とプライマリ補給路48との間を遮断してプライマリ圧力室85を密封する。この状態では、基本的に、大気圧であるプライマリ補給路48の液圧よりもプライマリ圧力室85の液圧の方が高くなる。その結果、プライマリ圧力室85内の液圧が上昇しプライマリ圧力室85内のブレーキ液が図1に示すプライマリ吐出路27から車輪側の制動用シリンダに供給されることになる。
ピストンシール45は、上記したプライマリ圧力室85の液圧上昇によって周溝32内でプライマリ補給路48側つまり周壁89側に移動する。すると、中間リップ部104が周壁90から離れた後、図3に示すように、ベース部101が端面101aにおいて周壁89の主壁面部89aに当接する。このようにピストンシール45が移動すると、スペーサ部材50は、ピストンシール45で押されて周壁89に近づき、プライマリピストン18の最大外径面18aで案内されて周壁89の段差部95に外径側の一部が収容される。そして、スペーサ部材50は、ピストンシール45のベース部101の端面101aと周壁89の内側壁面部89cとに当接して、これらで挟持されてシリンダ本体15に対し位置が固定される。
このように段差部95に外径側の一部が収容された状態でシリンダ本体15に対し位置が固定されたスペーサ部材50は、プライマリピストン18の最大外径面18aとのクリアランスが、隣接内径面29bと最大外径面18aとのクリアランスよりも小さくなり、よって、ピストンシール45が隣接内径面29bと最大外径面18aとの間に入り込むことを防止する。
すなわち、スペーサ部材50がなければ、ピストンシール45のプライマリ補給路48側に隣り合う部分のクリアランスが、シリンダ本体15の隣接内径面29bとプライマリピストン18の最大外径面18aとの間のクリアランスとなる。ここで、隣接内径面29bの径は、プライマリピストン18の最大外径面18aに乗り上げた状態の内周リップ部102の外径よりも大径であって、隣接内径面29bと最大外径面18aとの間のクリアランスは広い。よって、このクリアランス部分にピストンシール45が入り込んで部分的に切れ込みが入ってしまう、いわゆる喰われが生じてしまう可能性がある。これに対し、段差部95に外径側の一部が収容された状態のスペーサ部材50は、その内径が、プライマリピストン18の最大外径面18aに乗り上げた状態の内周リップ部102の外径よりも小径であって、最大外径面18aとの間のクリアランスは狭い。よって、ピストンシール45のプライマリ補給路48側に隣り合う部分のクリアランスを狭めることになって、このクリアランス部分にピストンシール45が入り込んでしまうことを防止する。
ここで、プライマリピストン18がポート76をピストンシール45よりシリンダ底側に位置させた液圧保持状態で、VDC装置がABS作動を行うときも、図3に示すように、ピストンシール45は、ベース部101が端面101aにおいて周壁89の主壁面部89aに当接し、内側壁面部89cとでスペーサ部材50を挟持する状態を維持したままとなり、ピストンシール45のプライマリ補給路48側に隣り合う部分のクリアランスを狭めることになって、このクリアランス部分にピストンシール45が入り込んでしまうことを防止する。
プライマリピストン18がシリンダ底側へ移動した状態から、制動を解除するために図示略のブレーキペダルを戻すと、図1に示す間隔調整部63の付勢力によってシリンダ開口側に移動するプライマリピストン18と、図1に示す間隔調整部79の付勢力とによって、プライマリピストン18が図2に示す基本位置に戻る。
図3に示すように、プライマリピストン18がポート76をピストンシール45よりシリンダ底側に位置させた液圧保持状態で、VDC装置によるポンプアップによってプライマリ圧力室85内の液圧が低下すると、大気圧であるプライマリ補給路48の液圧とプライマリ圧力室85の液圧とが等しくなった後、プライマリ圧力室85内の液圧は負圧となり、大気圧であるプライマリ補給路48の液圧よりもプライマリ圧力室85の液圧の方が低くなる。
すると、このプライマリ圧力室85内の負圧が、図4に示すように、ピストンシール45を吸引して周壁90側に移動させてベース部101およびスペーサ部材50を周壁89から離間させるとともに、ピストンシール45の外周リップ部103を溝底88から離間させることになる。その結果、プライマリ補給路48のブレーキ液が、図4に破線矢印Xで示すように、プライマリ補給路48の一部であるシリンダ本体15の隣接内径面29bとプライマリピストン18の最大外径面18aとの隙間と、周壁89とスペーサ部材50およびベース部101との隙間と、溝底88と外周リップ部103との隙間と、周壁90と中間リップ部104の中間溝106との隙間とを繋ぐ流路を介して、プライマリ圧力室85に補給されることになる。ここで、このとき、シリンダ本体15の隣接内径面29bは、プライマリピストン18の最大外径面18aに乗り上げた状態の内周リップ部102の外径よりも大径であって、プライマリピストン18の最大外径面18aとの間に広いクリアランスを形成しているため、VDC装置によるポンプアップに対して、大流量でブレーキ液を補給することができることになる。
上記した特許文献1に記載のマスタシリンダは、シールカップとガイドとの間に環状のスペーサを介装して、シールカップがガイドの連通溝に食い込むことを防止するようになっている。このような構造のマスタシリンダでは、シールカップを介してのリザーバから圧力室への液補給がガイドで阻害されてしまう可能性がある。
これに対して、本実施形態のマスタシリンダ11は、周溝32内の、そのシリンダ開口側の周壁89とピストンシール45のベース部101のシリンダ開口側の端面101aとの間に、ベース部101よりも硬度が高いスペーサ部材50を設けるとともに、周溝32の周壁89に、周壁89とベース部101の端面101aとが当接した状態で、スペーサ部材50を収容する段差部95を設けている。このため、ピストンシール45が、プライマリ圧力室85からリザーバ12へのブレーキ液の流通を遮断する際には、図3に示すように、ベース部101の端面101aが周壁89と当接し、スペーサ部材50が段差部95に収容されることになる。この状態では、スペーサ部材50が、ピストンシール45のシリンダ開口側への変形を規制することになって、シリンダ本体15の隣接内径面29bとプライマリピストン18の最大外径面18aとの間のクリアランス部分へ入り込みを規制する。よって、ピストンシール45が上記クリアランス部分へ入り込んで部分的に切れ込みが入ってしまう、いわゆる喰われの現象を抑制することができる。
また、ピストンシール45が、リザーバ12からプライマリ圧力室85へブレーキ液を流通させる際には、図4に示すように、ベース部101の端面101aが周壁89から離間するとともに、スペーサ部材50も周壁89から離間することになる。スペーサ部材50は、段差部95に収容可能な大きさであって外径が小さいため、周溝32の溝底88との間に広いクリアランスを形成することができ、ブレーキ液の流通時の流量を増大させることが可能となる。
また、シリンダ本体15は、周溝32のプライマリ補給路48側に隣り合う隣接内径面29bを、ピストンシール45の内周リップ部102の外径よりも大径としているため、ピストンシール45が、リザーバ12からプライマリ圧力室85へ流通させる際のブレーキ液の流量を、一層増大させることが可能となる。
また、スペーサ部材50は、径方向において、その外周面が、周溝32の溝底面部88aよりもプライマリピストン18の最大外径面18aに近いため、大きさが小さく軽量になる。よって、スペーサ部材50がピストンシール45の移動に及ぼす影響を抑えることができる。
なお、以上の実施形態においては、ピストンシール45およびスペーサ部材50を含むプライマリ側のシール構造部SPを例にとり詳細に説明したが、ピストンシール45と共通部品であるピストンシール35、スペーサ部材50と共通部品であるスペーサ部材40、周溝32と同形状の周溝30、第1円筒状部71と同形状の先端部を有する第1円筒状部55を含むセカンダリ側のシール構造部SSも同様の構造となっている。よって、シール構造部SSもシール構造部SPと同様の効果を奏することができる。
以上の実施形態の態様は、一側が開口部とされ他側が底部とされる有底筒状をなしてブレーキ液の吐出路とリザーバに連通する補給路とを有するシリンダ本体と、該シリンダ本体内に移動可能に配置され、該シリンダ本体との間に前記吐出路から液圧を供給する圧力室を形成するピストンと、前記シリンダ本体内に形成される周溝内に設けられ前記補給路と前記圧力室との間を密封可能なシール部材とを有するマスタシリンダであって、前記シール部材は、前記周溝における前記開口部側の周壁に当接可能なベース部と、該ベース部から前記底部側に向けて延出して前記ピストンの外周に摺接する内周リップ部と、前記ベース部から前記底部側に向けて延出して前記周溝の溝底に当接する外周リップ部と、を有し、前記周溝内には、該周溝の前記開口部側の周壁と前記ベース部の前記開口部側の端面との間に該ベース部よりも硬度が高いスペーサ部材が設けられ、前記周溝の前記開口部側の周壁は、該周壁と前記ベース部の前記開口部側の端面とが当接した状態で、前記スペーサ部材を収容する段差部を有することを特徴とする。これにより、ブレーキ液流通時の流量を増大させることが可能となる。
11 マスタシリンダ
12 リザーバ
13 底部
15 シリンダ本体
16 開口部
18 プライマリピストン(ピストン)
19 セカンダリピストン(ピストン)
26 セカンダリ吐出路(吐出路)
27 プライマリ吐出路(吐出路)
30,32 周溝
35,45 ピストンシール(シール部材)
38 セカンダリ補給路(補給路)
40,50 スペーサ部材
48 プライマリ補給路(補給路)
68 セカンダリ圧力室(圧力室)
85 プライマリ圧力室(圧力室)
88 溝底
89 周壁
95 段差部
101 ベース部
101a 端面
102 内周リップ部
103 外周リップ部

Claims (1)

  1. 一側が開口部とされ他側が底部とされる有底筒状をなしてブレーキ液の吐出路とリザーバに連通する補給路とを有するシリンダ本体と、
    該シリンダ本体内に移動可能に配置され、該シリンダ本体との間に前記吐出路から液圧を供給する圧力室を形成するピストンと、
    前記シリンダ本体内に形成される周溝内に設けられ前記補給路と前記圧力室との間を密封可能なシール部材とを有するマスタシリンダであって、
    前記シール部材は、
    前記周溝における前記開口部側の周壁に当接可能なベース部と、
    該ベース部から前記底部側に向けて延出して前記ピストンの外周に摺接する内周リップ部と、
    前記ベース部から前記底部側に向けて延出して前記周溝の溝底に当接する外周リップ部と、を有し、
    前記周溝内には、該周溝の前記開口部側の周壁と前記ベース部の前記開口部側の端面との間に該ベース部よりも硬度が高いスペーサ部材が設けられ、
    前記周溝の前記開口部側の周壁は、該周壁と前記ベース部の前記開口部側の端面とが当接した状態で、前記スペーサ部材を収容する段差部を有することを特徴とするマスタシリンダ。
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