JP4202196B2 - 液圧ブレーキ装置 - Google Patents

液圧ブレーキ装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4202196B2
JP4202196B2 JP2003166462A JP2003166462A JP4202196B2 JP 4202196 B2 JP4202196 B2 JP 4202196B2 JP 2003166462 A JP2003166462 A JP 2003166462A JP 2003166462 A JP2003166462 A JP 2003166462A JP 4202196 B2 JP4202196 B2 JP 4202196B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
chamber
output member
diameter
valve
hydraulic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003166462A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005001488A (ja
Inventor
長典 輿水
泰彦 甘利
栄一 高野
友紀 毛利
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP2003166462A priority Critical patent/JP4202196B2/ja
Publication of JP2005001488A publication Critical patent/JP2005001488A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4202196B2 publication Critical patent/JP4202196B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Transmission Of Braking Force In Braking Systems (AREA)
  • Braking Systems And Boosters (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等に用いて好適な液圧ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液圧を発生させる液圧ブレーキ装置のマスタシリンダとして、ディスクブレーキのブレーキキャリパに対してブレーキ液を供給する際に、作動初期に大容量のブレーキ液を供給する、いわゆるファストフィルを行うことで、ストローク初期の無効液量分を補い、その結果、ペダルストロークを短縮可能なものがある。このマスタシリンダは、大略、段付シリンダとこれに挿入される段付ピストンとで大径与圧室と小径液圧室とを画成し、段付ピストンの小径液圧室側への摺動による大径与圧室の体積減少により大径与圧室側から小径液圧室側へ液補給を行うものとなっており、大径与圧室の内圧が予め設定された解除液圧以上となったとき、大径与圧室からリザーバにブレーキ液を逃がすファストフィルバルブを備えている。
【0003】
ところで、液圧ブレーキ装置は、上記マスタシリンダに加えて、エンジンの吸気系負圧を利用して運転者によるブレーキペダルの入力を助勢しマスタシリンダに伝達するブースタを有している。このブースタは、負圧が導入されなくなるような失陥(負圧失陥と称す)が生じた場合には、当然のことながら、ブレーキペダルへの入力を助勢できない状態が生じてしまう。このような状態が生じた場合であっても、上記マスタシリンダでは、ファストフィルバルブによる解除液圧が予め設定された固定値であり、大径与圧室の液圧が解除液圧となるまでの制動初期においては、必ず大径与圧室を昇圧させる構造のものであるため、運転者は、ブースタの助勢力がない状況で、さらにマスタシリンダの大径の大径与圧室を昇圧させなければならなくなってしまう。
【0004】
このような状況を回避するために、ブースタの負圧を検出するとともにこの負圧に応じて大径与圧室の液圧をリザーバ側に開放する開放機構をブースタおよびマスタシリンダの外部に設け、ブースタに負圧失陥が発生した場合にこの開放機構を開作動させるものがある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−293228号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された液圧ブレーキ装置においては、ブースタの負圧を検出するとともにこの負圧に応じて大径与圧室の液圧をリザーバ側に開放する開放機構をブースタおよびマスタシリンダの外部に設ける構造であることから、組み付けが煩雑になるとともに、装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、組み付けを容易に行うことができ、装置全体をコンパクトにすることができる液圧ブレーキ装置の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、反力をブレーキペダルに伝達する反力機構を有し、ブレーキペダルの操作力を助勢して出力するブースタと、液体を貯留するリザーバを有し、前記ブースタの出力によって作動するマスタピストンにより画成される大径与圧室と小径液圧室とが設けられ、前記大径与圧室の液体を前記小径液圧室に流入して該小径液圧室より液圧を出力し、前記大径与圧室若しくは前記小径液圧室の液圧が所定圧になったときに前記大径与圧室の液圧を解除するファストフィルバルブを有するマスタシリンダとからなる液圧ブレーキ装置において、前記ブースタには、差圧により助勢力を発生するパワーピストンに設けられるバルブボディと、該バルブボディ内を摺動するプランジャと、前記ブレーキペダルから前記プランジャに伝達される入力を前記反力機構を介して出力する第1出力部材と、前記ブレーキペダルから前記プランジャに伝達される入力を前記反力機構を介さずに出力する第2出力部材とが備えられるとともに、前記マスタピストンには、前記リザーバと前記大径与圧室とを連通させる連通路と、前記ブースタによる前記マスタシリンダの稼働時、前記第1出力部材に対する前記第2出力部材の相対移動量が所定量以上であるとき、前記連通路を開放する弁体を有する弁機構とが設けられ、該弁機構は、前記弁体と前記第2出力部材との間に設けられ、前記第2出力部材の相対移動量が前記所定量以上のとき、前記弁機構の弁体に作用してこれを開弁する第3出力部材と、該第3出力部材を前記第2出力部材の方向に押圧し、前記弁体と前記第3出力部材との間に所定量の隙間を形成するスプリングと、を有していることを特徴としている。
【0009】
これにより、ブースタによるマスタシリンダの稼働時において、ブースタに負圧失陥が発生した場合には、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介して出力する第1出力部材に対し、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介さずに出力する第2出力部材の相対移動量が大きくなることから、第1出力部材に対する第2出力部材の相対移動量が所定量以上となって、弁機構がリザーバと大径与圧室とを連通させる連通路を開放する。すると、制動初期でも大径与圧室はリザーバと同じ大気圧となるため、運転者はブレーキペダルの操作で大径の大径与圧室を昇圧させる必要がなくなり小径の小径液圧室のみを昇圧させればよいことになり、ブレーキペダルへの入力に対するブレーキ液圧の不足を最小限に抑えることができる。そして、上記のように、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介して出力する第1出力部材と、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介さずに出力する第2出力部材と、これらの相対移動量を利用してリザーバと大径与圧室とを連通させる連通路を開放する弁機構とを用いるため、これらを容易にブースタおよびマスタシリンダの内部に組み込むことができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記弁体と第3出力部材との間に形成される前記所定量の隙間は、前記バルブボディと前記プランジャとの相対移動可能量よりも小さいことを特徴としている。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記マスタピストンの非作動時に前記大径与圧室と前記リザーバとを連通させる補給路が前記連通路とは別に設けられ、前記弁機構は、前記ブースタによる前記マスタシリンダの稼働時に前記第1出力部材に対する前記第2出力部材の相対移動量が所定量未満であると前記連通路を遮断していることを特徴としている。
【0013】
これにより、マスタピストンの非作動時にリザーバと大径与圧室とを連通路とは別の補給路で連通させているため、待機時に弁機構を開放する必要がなくなる。また、ブースタによるマスタシリンダの稼働時において、ブースタに負圧失陥が発生していない場合には、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介して出力する第1出力部材に対し、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介さずに出力する第2出力部材の相対移動量が大きくならないことから、第1出力部材に対する第2出力部材の相対移動量が所定量未満となって、弁機構がリザーバと大径与圧室とを連通させる連通路を遮断することで、大径与圧室の液圧をリザーバ側に逃がすことなく小径液圧室に導入して大容量のブレーキ液を供給する、いわゆるファストフィルを行うことができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、前記弁機構は、前記大径与圧室若しくは前記小径液圧室の液圧が所定圧となったときに前記大径与圧室の液圧を解除する前記ファストフィルバルブを兼ねていることを特徴としている。
【0015】
このように、弁機構が、大径与圧室若しくは小径液圧室の液圧が所定圧となったときに大径与圧室の液圧を解除するファストフィルバルブを兼ねているため、ファストフィルバルブを含めて容易にブースタおよびマスタシリンダの内部に組み込むことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置を図1〜図8を参照して以下に説明する。
【0017】
第1実施形態の液圧ブレーキ装置11は、図1に示すように、その全体構成が、ブレーキペダル12の操作力を助勢して出力するブースタ13と、液体を貯留するリザーバ14を有しブースタ13の出力によって液圧を出力するマスタシリンダ15とからなるものである。
【0018】
まず、ブースタ13について図2を主に参照して説明する。
ブースタ13は、シェル20と、シェル20のマスタシリンダ15に対し反対側に設けられたシール兼支持リング21によって直線状に摺動可能に支持されるパワーピストン22とを有している。
【0019】
パワーピストン22は、底部24側をシェル20内に配置し開口部25をマスタシリンダ15に対し反対側にしてシール兼支持リング21に支持される略段付有底円筒状のバルブボディ26と、バルブボディ26の底部24側の外周部に固定され径方向外方に広がる有孔円板状のプレート27およびこのプレート27に付設されるようにバルブボディ26の底部24側の外周部に内周部が嵌合されかつシェル20に外周部が嵌合される仕切膜部材28で構成されるダイアフラム29とを有している。そして、このパワーピストン22により、シェル20内は、エンジンのインテークマニホールド等の図示せぬ負圧源に連通するマスタシリンダ15側の負圧室31と、マスタシリンダ15に対し反対側の作動圧室32とに区画されており、パワーピストン22が軸線方向に摺動することでこれら負圧室31および作動圧室32の容積が変化する。
【0020】
バルブボディ26の開口部25側には、パワーピストン22の軸線方向に沿って移動可能に入力ロッド34が設けられている。この入力ロッド34は、バルブボディ26の開口部25側に一端側が挿入されており、図1に示すようにマスタシリンダ15に対し反対側に配置されるブレーキペダル12に他端側が連結させられる。この入力ロッド34の前記一端側には、図2に示すようにスプリング35,36を介して弾性変形可能なポペットバルブ37がバルブボディ26との間に保持され、さらに前記一端側の先端部には入力ロッド34のマスタシリンダ15側に隣接配置されたバルブプランジャ38が係合されている。このバルブプランジャ38はパワーピストン22の軸線方向に沿って摺動可能となるようにバルブボディ26に嵌合されている。
【0021】
バルブボディ26の底部24側には、バルブプランジャ38のマスタシリンダ15側に隣接して弾性材料からなるリアクションディスク(反力機構)41がこのバルブプランジャ38に接触可能に収納されており、このリアクションディスク41のマスタシリンダ15側にリアクションディスク41を覆うように出力体42が隣接して設けられている。ここで、このリアクションディスク41は、ブレーキ操作時の反力をバルブプランジャ38および入力ロッド34を介してブレーキペダル12に伝達するためのものである。
【0022】
この出力体42は、そのマスタシリンダ15側に隣接して設けられたリテーナ43でバルブボディ26からの抜けが規制されている。この出力体42には、バルブプランジャ38およびリテーナ43からマスタシリンダ15側に突出するように円筒部44が形成されている。また、シェル20のマスタシリンダ15側とリテーナ43との間には、パワーピストン22を所定の付勢力でマスタシリンダ15に対し反対方向に付勢するリターンスプリング45が設けられている。
【0023】
バルブボディ26には、負圧室31に連通する負圧流路47と作動圧室32に連通する作動圧流路48とが形成されている。そして、ポペットバルブ37は、負圧流路47と作動圧流路48との連通をバルブボディ26に形成された座部49に着座することにより遮断し、またバルブボディ26の開口部25側つまり大気と作動圧流路48との連通をバルブプランジャ38の座部50に着座することにより遮断する。ここで、ポペットバルブ37とバルブボディ26の座部49とで構成される弁が負圧弁51であり、ポペットバルブ37とバルブプランジャ38の座部50とで構成される弁が大気弁52である。
【0024】
バルブボディ26には、パワーピストン22の軸線方向に所定幅をなすストッパプレート55がパワーピストン22の軸直交方向に延在するように設けられており、このストッパプレート55の一端側は、バルブプランジャ38に形成された、このストッパプレート55より所定量幅の広い溝部56に係止されている。そして、バルブボディ26には、このストッパプレート55の他端側を挿入させる、ストッパプレート55より所定量広い幅の溝部57が形成されている。このストッパプレート55により、バルブプランジャ38のバルブボディ26に対する相対移動の限界範囲が決められることになる。
【0025】
このようなブースタ13は、負圧が正常に導入される正常時において、ブレーキペダル12からの入力がなくパワーピストン22がマスタシリンダ15に対し反対の所定位置にある待機状態から、ブレーキペダル12を介して入力ロッド34に入力がなされバルブボディ26に対し入力ロッド34およびバルブプランジャ38がマスタシリンダ15側に相対移動すると、ポペットバルブ37が、スプリング35,36の付勢力でバルブボディ26の座部49に当接し負圧弁51を閉じた状態で、座部49により移動が規制される結果、移動するバルブプランジャ38から離間し大気弁52を開いて作動圧室32に大気を導入させるようになっている。その結果、パワーピストン22は、その両側に差圧が生じて入力ロッド34の入力をこの差圧で助勢して出力体42をマスタシリンダ15側へ移動させることになる。
【0026】
また、この状態から入力ロッド34の入力が緩められ、図示せぬマスタシリンダ15側から出力体42およびリアクションディスク41を介して伝達される反力によりバルブプランジャ38および入力ロッド34がバルブボディ26に対し反出力方向側に相対移動すると、ポペットバルブ37は、バルブプランジャ38の座部50に当接して大気弁52を閉じ、次いでバルブプランジャ38で押圧されてバルブボディ26の座部49から離間して負圧弁51を開くようになっている。その結果、負圧が作動圧室32に導入され、パワーピストン22の両側の差圧が減少してパワーピストン22がマスタシリンダ15からの反力およびリターンスプリング45の付勢力で後退することになる。そして、パワーピストン22がマスタシリンダ15に対し反対の待機位置に位置すると負圧弁51も閉じられて停止する。
【0027】
次に、マスタシリンダ15について主に図3および図4を参照して説明する。マスタシリンダ15は、底部61と筒部62とを有する有底筒状に一つの素材から加工されて形成されるとともに筒部62の軸線(以下、シリンダ軸と称す)をパワーピストン22の軸線方向と同軸配置した状態でその開口部63側においてブースタ13に取り付けられるシリンダ本体64と、このシリンダ本体64の開口部63側に摺動可能に挿入されるプライマリピストン(マスタピストン)66と、シリンダ本体64のプライマリピストン66よりも底部61側に摺動自在に挿入されるセカンダリピストン67とを有するタンデムタイプのものである。
【0028】
なお、筒部62の内径側は、底部61側つまりブースタ13に対し反対側が小径摺動内径部68とされており、開口部63側つまりブースタ13側が小径摺動内径部68より大径の大径摺動内径部69とされている。そして、セカンダリピストン67は小径摺動内径部68で摺動が案内されることになり、プライマリピストン66は、小径摺動内径部68および大径摺動内径部69で摺動が案内されることになる。
【0029】
シリンダ本体64には、筒部62から筒部62の径方向(以下、シリンダ径方向と称す)における外側に突出しかつシリンダ軸方向に延在する取付台部71が筒部62の円周方向(以下、シリンダ円周方向と称す)における所定位置に一体に形成されており、この取付台部71にリザーバ14を取り付けるための取付穴72,73が、シリンダ径方向に穿設されている。ここで、シリンダ本体64は取付台部71を上部に配置する。そして、取付穴72,73の内側にはリザーバ14を嵌合させるとともにこのリザーバ14との隙間を密封するための取付シール74,75が嵌合されている。
【0030】
シリンダ本体64の小径摺動内径部68には、シリンダ軸方向における位置をずらして複数具体的には3カ所のシリンダ径方向外側に凹む環状のシール周溝77、シール周溝78およびシール周溝79が底部61側から順に形成されている。
【0031】
シリンダ本体64の最も底部61側にあるシール周溝77は、底部61側の取付穴72に近接して形成されており、このシール周溝77にシールリング81が嵌合されている。シールリング81は、C字状断面を有するカップシールであり、底部24側に開口側を配置した状態でシール周溝77に取り付けられる。
【0032】
シリンダ本体64におけるシール周溝77よりも開口部63側には、底部31側の取付穴72から穿設される連通穴82を筒部62内に開口させるように、筒部62の小径摺動内径部68からシリンダ径方向外側に凹む環状の開口溝83が形成されている。ここで、この開口溝83と連通穴82とが、シリンダ本体64とリザーバ14とを連通可能に結ぶとともにリザーバ14に常時連通するセカンダリ補給路84を主に構成している。
【0033】
シリンダ本体64の小径摺動内径部68には、シリンダ円周方向における取付台部71側に、シール周溝78からシリンダ軸方向に直線状に底部61側に向け延出する連通溝85が、シリンダ径方向外側に凹むように形成されている。
【0034】
そして、シリンダ本体64には、シリンダ軸線方向における上記開口溝83のシール周溝77に対し反対側に上記したシール周溝78が形成されており、このシール周溝78にシールリング87が嵌合されている。このシールリング87もC字状断面を有するカップシールであり、開口部63側に開口側を配置した状態でシール周溝78に取り付けられる。
【0035】
シリンダ本体64の小径摺動内径部68のシール周溝78よりも開口部63側には、シリンダ円周方向における取付台部71側に、シール周溝78とシール周溝79とを結ぶようにシリンダ軸方向に直線状に延在する連通溝88がシリンダ径方向外側に凹むように形成されている。この連通溝88は図4に示すように小径摺動内径部68より小径であって小径摺動内径部68と平行な軸を中心とした円弧状をなしている。
【0036】
シリンダ本体64における上記連通溝88よりも開口部63側にシール周溝79が形成されており、このシール周溝79にシールリング90が嵌合されている。このシールリング90は、C字状断面を有するカップシールであり、底部61側に開口側を配置した状態でシール周溝79に取り付けられる。
【0037】
シリンダ本体64におけるこのシール周溝79の開口部63側に、上記した大径摺動内径部69が形成されており、この大径摺動内径部69よりも開口部63側には、開口大径部91が形成されている。そして、開口部63側の取付穴73から穿設される連通穴92が開口大径部91において筒部62内に開口している。ここで、この開口大径部91と連通穴92とが、シリンダ本体64とリザーバ14とを連通可能に結ぶとともにリザーバ14に常時連通するプライマリ補給路93を主に構成している。
【0038】
シリンダ本体64の筒部62の側部には、ブレーキ液を図示せぬブレーキキャリパに供給するための図示せぬブレーキ配管が取り付けられるセカンダリ吐出路95およびプライマリ吐出路96が形成されている。なお、これらセカンダリ吐出路95およびプライマリ吐出路96は、互いに筒部62の円周方向における位置を一致させた状態でシリンダ軸方向における位置をずらして形成されており、一方のセカンダリ吐出路95は連通溝85における底部61の近傍となる位置に形成されており、他方のプライマリ吐出路96は、連通溝88におけるシール周溝78の近傍となる位置に形成されている。
【0039】
シリンダ本体64の底部61側に嵌合されるセカンダリピストン67は、円筒部98と、円筒部98の軸線方向における一側に形成された底部99とを有する有底円筒状をなしており、その円筒部98を底部61側に配置した状態でシリンダ本体64の小径摺動内径部68に摺動可能に嵌合されている。また、円筒部98の底部61に対し反対側の端部には、シリンダ径方向に貫通するポート101が複数放射状に形成されている。
【0040】
ここで、シリンダ本体64の底部61および筒部62の底部61側とセカンダリピストン67とで囲まれた部分が、セカンダリ吐出路95に液圧を供給するセカンダリ液圧室102となっており、このセカンダリ液圧室102は、セカンダリピストン67がポート101を開口溝83に開口させる位置にあるとき、セカンダリ補給路84に連通する。
【0041】
シリンダ本体64の底部61側のシール周溝77に設けられたシールリング81は、内周がセカンダリピストン67の外周側に摺接することになり、セカンダリピストン67がポート101をシールリング81よりも底部20側に位置させた状態では、セカンダリ液圧室102と、セカンダリ補給路84およびリザーバ14との連通を遮断可能となっている。ここで、シールリング81は、セカンダリ液圧室102の液圧がセカンダリ補給路84の液圧(つまり大気圧)より大きくなると、セカンダリ液圧室102とセカンダリ補給路84およびリザーバ14との連通を遮断する一方、セカンダリ液圧室102の液圧がセカンダリ補給路84の液圧より小さくなると、セカンダリ液圧室102とセカンダリ補給路84およびリザーバ14とを連通させてセカンダリ液圧室102への液補給を行う。また、シリンダ本体64のシール周溝78に設けられたシールリング87は、内周がセカンダリピストン67の外周側に摺接することになり、セカンダリ液圧室102と後述するプライマリ液圧室103との連通を遮断する。
【0042】
セカンダリピストン67の底部99とシリンダ本体64の底部61との間には、ブースタ13側から入力がない待機状態(このときの各部の位置を待機位置と以下称す)でこれらの間隔を決めるセカンダリピストンスプリング104が設けられている。
【0043】
シリンダ本体64の開口部63側に嵌合されるプライマリピストン66は、第1円筒部106と第2円筒部107とを連結部108で連結させた形状をなしており、連結部108には、外周側に突出する環状のフランジ部109,110が軸線方向に間隔をあけて形成されている。そして、プライマリピストン66は、その第1円筒部106がシリンダ本体64内における小径摺動内径部68に摺動可能に嵌合されるとともにその第1円筒部106に対し反対側のフランジ部110がシリンダ本体64内における大径摺動内径部69に摺動可能に嵌合されている。プライマリピストン66は、さらに、シリンダ本体64の開口大径部91にストッパリング111およびCリング112で挟持されて取り付けられる円環状の蓋部材113の内径側に第2円筒部107が摺動可能に嵌合されている。
【0044】
ここで、フランジ部109,110の間には、シールリング115が嵌合されている。このシールリング115もC字状断面を有するカップシールであり、底部61側に開口側を配置した状態でフランジ部109,110間に取り付けられる。また、蓋部材113の内径側にも、シールリング116が嵌合されている。このシールリング116もC字状断面を有するカップシールであり、底部61側に開口側を配置した状態で蓋部材113にストッパリング111で係止される。
【0045】
第1円筒部106の連結部108に対し反対側の端部には、径方向に貫通するポート118が複数放射状に形成されている。
【0046】
ここで、シリンダ本体64の小径摺動内径部68とプライマリピストン66とセカンダリピストン67とで囲まれた部分が、プライマリ吐出路96に液圧を供給するプライマリ液圧室(小径液圧室)103となっており、また、シリンダ本体64の大径摺動内径部69とプライマリピストン66とで囲まれた部分がプライマリ液圧室103より大径の大径与圧室120となっている。
【0047】
プライマリ液圧室103は、プライマリピストン66がポート118を大径与圧室120に開口させる位置にあるとき、大径与圧室120に連通する。
【0048】
シリンダ本体64のシール周溝79に設けられたシールリング90は、内周がプライマリピストン66の外周側に摺接することになり、プライマリピストン66がポート118をシールリング90よりも底部61側に位置させた状態では、プライマリ液圧室103と大径与圧室120との連通を遮断可能となっている。ここで、シールリング90は、プライマリ液圧室103の液圧が大径与圧室120の液圧より高くなると、プライマリ液圧室103と大径与圧室120との連通を遮断する一方、プライマリ液圧室103の液圧より大径与圧室120の液圧が高いと、プライマリ液圧室103と大径与圧室120とを連通させる。
【0049】
フランジ部110に設けられたシールリング115は、大径摺動内径部69に摺接することにより、大径摺動内径部69とプライマリピストン66の外周側との隙間を介しての大径与圧室120とプライマリ補給路93との連通を遮断することになり、蓋部材113の内周側に設けられたシールリング116は、プライマリピストン66に摺接することにより、蓋部材113の内周側とプライマリピストン66の外周側との隙間を介してのプライマリ補給路93と外気との連通を遮断することになる。さらに、蓋部材113の外周側に設けられたシールリング121は蓋部材113の外周側とシリンダ本体64との隙間を介してのプライマリ補給路93と外気との連通を遮断する。
【0050】
セカンダリピストン67とプライマリピストン66との間には、ブレーキペダル12側から入力がない待機状態でこれらの間隔を決めるプライマリピストンスプリング123を含む間隔調整部124が設けられている。
【0051】
プライマリピストン66の連結部108に、センタバルブ機構(弁機構)131が設けられている。センタバルブ機構131は、連結部108の中央にプライマリピストン66とこれに嵌合される嵌合部材126とシールリング127とで画成されるCV室132と、このCV室132から半径方向に形成されてCV室132を大径与圧室120に常時連通させる連通穴133と、CV室132から軸線方向に沿って第2円筒部107側に形成された通路穴134と、この通路穴134に直交するように形成されたガイド穴135とを有している。ここで、ガイド穴135は常時プライマリ補給路93つまりリザーバ14に連通しており、その結果、連通穴133、CV室132、通路穴134およびガイド穴135が、リザーバ14と大径与圧室120とを連通させる連通路136を構成している。
【0052】
そして、センタバルブ機構131は、CV室132に弁部138が収納されるとともにステム部139が通路穴134に挿入されてガイド穴135まで延出するCV弁体140と、嵌合部材126およびCV弁体140間に介装されてCV弁体140を通路穴134側に付勢するCVスプリング141とが設けられている。
【0053】
CV弁体140は、ガイド穴135に挿入されたストッパ142でステム部139が押圧されることによりCV室132の通路穴134側の座部143から弁部138を離間させた状態で、CV室132と通路穴134とを連通させ、その結果、連通路136を介して大径与圧室120をプライマリ補給路93つまりリザーバ14に連通させる。また、CV弁体140は、ガイド穴135に挿入されたストッパ142によるステム部139への押圧が解除されることによりCVスプリング141の付勢力でCV室132の座部143に弁部138を当接させた状態で、CV室132と通路穴134との連通を遮断し、その結果、連通路136を介しての大径与圧室120とプライマリ補給路93つまりリザーバ14との連通を遮断する。なお、プライマリピストン66の非作動時(ブースタ13の出力により移動している状態をプライマリピストン66の作動時と称し、そうでない状態をプライマリピストン66の非作動時と称す)に図3に示すようにセンタバルブ機構131は連通路136を開放する。
【0054】
シリンダ本体64には、プライマリ液圧室103に常時連通する液圧室連通流路145と、大径与圧室120に常時連通する与圧室連通流路146と、プライマリ補給路93に常時連通する補給路連通流路147とが形成されており、これらは、シリンダ本体64の筒部62に組み付けられた図4に示すファストフィルバルブ150に導入されている。
【0055】
ファストフィルバルブ150は、シリンダ本体64に形成された収納凹部151と、この収納凹部151内に摺動可能に嵌合されるFFVピストン152と、FFVピストン152を収納凹部151の底部153の方向に押圧するFFVスプリング154と、収納凹部151の開口側に螺合されるとともにFFVピストン152を摺動可能に嵌合させさらにFFVピストン152との間にFFVスプリング154を保持する蓋体155と、蓋体155と収納凹部151との隙間をシールするシールリング156とを有している。
【0056】
FFVピストン152は、先端側に第1軸部158が形成され、この第1軸部158に隣り合ってこれより大径の第2軸部159が形成され、この第2軸部159の第1軸部158に対し反対側にこれより大径の第3軸部160が形成されている。そして、第1軸部158の先端にはシール部材161が嵌合されている。また、第2軸部159には収納凹部151との隙間を常時シールするシールリング162が設けられており、第3軸部160には蓋体155と隙間を常時シールするシールリング163が設けられている。
【0057】
収納凹部151の底部153の中央には、FFVピストン152のシール部材161で開閉されるように与圧室連通流路146が開口しており、また、収納凹部151の底部の側方には、シール部材161で与圧室連通流路146が開放されるとこの与圧室連通流路146に連通しシール部材161で与圧室連通流路146が閉塞されるとこの与圧室連通流路146との連通が遮断されるように補給路連通流路147が開口している。さらに、収納凹部151の側部であってFFVピストン152のシールリング162,163間位置に液圧室連通流路145が開口している。ここで、収納凹部151とFFVピストン152とシールリング162とで囲まれた部分がFFV室164となっている。
【0058】
そして、ファストフィルバルブ150は、FFVピストン152を、与圧室連通流路146から導入される大径与圧室120の液圧と液圧室連通流路145から導入されるプライマリ液圧室103の液圧とFFVスプリング154の付勢力とでバランスさせる。このときのバランスは次式で表される。
【0059】
すなわち、シールリング163によるシール断面積をA1、シールリング162によるシール断面積をA2(ただし、A2<A1)、シール部材161によるシール断面積をA3とし、プライマリ液圧室103の液圧をPa、大径与圧室120の液圧をPb、FFVスプリング154のセット荷重をFとすると、
Pa×(A1−A2)+Pb×A3=F
となる。
【0060】
そして、ブースタ13からの出力によりプライマリピストン66が底部61の方向に移動し、大径与圧室120の液圧が上昇を開始すると、プライマリ液圧室103もシールリング90が開かれることで大径与圧室120の液圧と同圧で上昇する。そして、Pa×(A1−A2)+Pb×A3>Fとなると(この時点の液圧を与圧室解除液圧と称す)、ファストフィルバルブ150のFFVピストン152がFFVスプリング154の付勢力に抗して微小に移動して与圧室連通流路146を微小に開き、大径与圧室120の液圧解除を開始させる。このとき、Pa×(A1−A2)+Pb×A3=Fの式を満足させるようにプライマリ液圧室103の液圧Paの上昇に応じて徐々に大径与圧室120の液圧Pbが下がるように、言い換えれば、プライマリ液圧室103の液圧上昇に相関して大径与圧室120の液圧Pbが低下するように、大径与圧室120の液圧Pbをプライマリ補給路93を介してリザーバ14側に逃がすことになる。
【0061】
ここで、高昇圧時すなわちブレーキペダル12を比較的速い速度で踏圧する操作時においては、ブースタ13からの入力はリニアに上昇することになり、プライマリ液圧室103の液圧Paは一定割合で上昇することになるため、ファストフィルバルブ150は、大径与圧室120の液圧Pbを設定した勾配に沿って徐々に低下するようにリザーバ14側に逃がすことになる。この勾配は任意に設定可能であり、車両に合わせたチューニングが可能である。
【0062】
そして、大径与圧室120の液圧が解除され大気圧になると、バランス式は、
Pa×(A1−A2)>F
となり、ファストフィルバルブ150は開状態が維持されるため、プライマリ液圧室103のみでブレーキ液圧を制御することになる。
【0063】
つまり、このファストフィルバルブ150は、大径与圧室120およびプライマリ液圧室103の液圧が所定圧となったときに大径与圧室120をリザーバ14に連通させる。
【0064】
ここで、上記マスタシリンダ15は、プライマリピストン66の第2円筒部107側をブースタ13のシェル20内に挿入した状態でシリンダ本体64の開口部63側においてシェル20のバルブボディ26に対し反対側に固定されることになる。このとき、プライマリピストン66の第2円筒部107の内側にブースタ13の出力体42の円筒部44が挿入されることになる。
【0065】
そして、本実施形態においては、ブースタ13の失陥時にセンタバルブ機構131により連通路136を強制的に開放させるバルブ制御機構166がブースタ13に設けられている。
【0066】
図5に示すように、このバルブ制御機構166は、出力体42の円筒部44のメネジ167に一端側のオネジ168で螺合されるとともにマスタシリンダ15側に延出し他端側の球面状の頭部169でプライマリピストン66の第2円筒部107のテーパ状の段部170に当接する段付き円筒状の第1出力部材171と、リアクションディスク41と出力体42とを貫通しさらに第1出力部材171を貫通するとともに一端部がバルブプランジャ38に当接し他端部が第1出力部材171から突出する第2出力部材172とを有している。
【0067】
また、バルブ制御機構166は、プライマリピストン66の第2円筒部107内に摺動可能に嵌合されて、第1出力部材171から突出する第2出力部材172の球面状の頭部173にこれより大径の球面状の凹部174で当接する第3出力部材175と、第3出力部材175の凹部174に対し反対側の突出部176を嵌合させるとともに第3出力部材175を第2出力部材172の方向に押圧するスプリング177と、第3出力部材175の外周側に設けられてプライマリピストン66との隙間を密閉するシールリング178とを有している。
【0068】
ここで、第1出力部材171は、リアクションディスク41のマスタシリンダ15側に接触する出力体42に螺合されて固定されていることから、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時にブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介して出力することになる。
【0069】
また、第2出力部材172は、リアクションディスク41と出力体42とを貫通しさらに第1出力部材171を貫通してバルブプランジャ38に当接していることから、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時にブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介さずにマスタシリンダ15側に出力することになる。
【0070】
さらに、第3出力部材175は、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時に、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量未満であって、図6に示すように、第1出力部材171から第2出力部材172が突出量を所定量以上に拡大させなければ、プライマリピストン66に対しCV弁体140側に所定量以上相対移動することはなく、センタバルブ機構131のCV弁体140のステム部139に当接することはない。その結果、センタバルブ機構131は、ストッパ142によるCV弁体140への押圧が解除されると弁部138をCV室132の座部146に着座させることになり、連通路136を遮断して大径与圧室120のプライマリ補給路93つまりリザーバ14への連通を遮断する。
【0071】
逆に、第3出力部材175は、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時に、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量以上であって、図7に示すように第1出力部材171から第2出力部材172が突出量を所定量以上に拡大すると、第2出力部材172で押圧されてプライマリピストン66に対しCV弁体140側に所定量以上相対移動することにより、先端の突出部176でセンタバルブ機構131のCV弁体140のステム部139に当接し、これを押圧する。すると、弁部138をCV室132の座部143から離間させることになり、その結果、連通路136を開放して大径与圧室120をプライマリ補給路93つまりリザーバ14に連通させる。
【0072】
つまり、バルブ制御機構166は、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量以上であると、センタバルブ機構131により連通路136を開放する。逆に、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時に第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量未満であると、センタバルブ機構131により連通路136を遮断する。
【0073】
以上に述べた第1実施形態の液圧ブレーキ装置について、まずブースタ13に負圧が正常に導入されている正常時の動作を、図8にX1で示すペダル踏力とプライマリ液圧室103の液圧との関係を参照しつつ説明する。
【0074】
図2に示すブースタ13は、ブレーキペダル12を介して入力ロッド34に入力がなされると、バルブプランジャ38が大気弁52を開いて作動圧室32に大気を導入させ、パワーピストン22の両側に差圧を生じさせてブレーキペダル12、入力ロッド34、バルブプランジャ38およびリアクションディスク41を介して出力体42に導入される入力をこの差圧で助勢しつつ、出力体42をマスタシリンダ15側へ移動させることになる。
【0075】
すると、図6に示すように、ブースタ13の出力体42に固定された第1出力部材171が、非制動時の待機位置にあったプライマリピストン66を底部61の方向に押圧し移動を開始させる。その結果、プライマリピストンスプリング123を介してセカンダリピストン67も同様に移動を開始する。そして、このようにして開始されたブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部61方向に移動する作動時において、パワーピストン22に負圧による推進力が生じているとバルブプランジャ38はリアクションディスク41を大きく変形させることはなく、バルブ制御機構166は、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量未満と小さくなる。その結果、バルブ制御機構166は、第3出力部材175がCV弁体140を押圧することはなく、ストッパ142により行われていたCV弁体140への押圧がプライマリピストン66の移動で解除され、CV弁体140がCVスプリング141による付勢力で座部143に着座する。その結果、センタバルブ機構131により連通路136が閉じられる。そして、プライマリピストン66のポート118がシールリング90により閉じられた時点で大径与圧室120が液圧を上昇させ、セカンダリピストン67のポート101がシールリング81により閉じられた時点でセカンダリ液圧室102が液圧を上昇させる。プライマリ液圧室103もポート118が閉じた時点で液圧を上昇させることになる。
【0076】
そして、液圧が上昇すると、プライマリ液圧室103については、ほぼプライマリピストン66のストローク量×(大径与圧室120の外径−プライマリ液圧室103の外径)分の液量が、シールリング90を押し開いて大径与圧室120からプライマリ液圧室103に送り込まれ、ストローク初期の無効液量分(主にキャリパロールバック分)を補う。その後、プライマリ液圧室103の小径化に伴う液量不足を補うため、大径与圧室120からプライマリ液圧室103にブレーキ液が送り込まれつつ、大径与圧室120とプライマリ液圧室103とが同圧で与圧室解除液圧まで上昇する。
【0077】
そして、大径与圧室120とプライマリ液圧室103とが与圧室解除液圧まで上昇すると(図8におけるt1時点)、それまで閉状態にあったファストフィルバルブ150が大径与圧室120の液圧を解除する。このとき、ファストフィルバルブ150は、上記したようにプライマリ液圧室103の液圧Paの上昇に応じて徐々に大径与圧室120の液圧Pbが下がるように、大径与圧室120の液圧Pbをプライマリ補給路93を介してリザーバ14側に逃がすことになる。
【0078】
そして、大径与圧室120の液圧の解除点(図8におけるt2時点)以降、ファストフィルバルブ150は開状態が維持され、プライマリ液圧室103のみでブレーキ液圧を制御することになる。ここで、与圧室解除液圧の前後でペダル踏力の上昇に対する液圧の上昇率は高くなるように変化し、全負荷点の前後でペダル踏力の上昇に対する液圧の上昇率は低くなるように変化する。
【0079】
次に、ブースタ13に負圧が正常に導入されていない失陥発生時の動作を、図8にX2で示すペダル踏力とプライマリ液圧室103の液圧との関係を参照しつつ説明する。なお、図8にX3で示すペダル踏力とプライマリ液圧室103の液圧との関係は従来の装置によるものである。
【0080】
失陥発生時、ブレーキペダル12を介して入力ロッド34に入力がなされて、バルブプランジャ38が大気弁を開いてもパワーピストン22の両側に差圧は生じず、ブレーキペダル12、入力ロッド34、バルブプランジャ38およびリアクションディスク41を介して入力される力のみで出力体42をマスタシリンダ15側へ移動させることになる。このとき、パワーピストン22に差圧による推進力がないことから、図7に示すように、リアクションディスク41は大きく変形し、その結果、バルブプランジャ38が出力体42よりも大きな速度でマスタシリンダ15方向に移動する。すると、このようにして開始されたブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部61の方向に移動する作動時において、バルブ制御機構166は、出力体42に固定された第1出力部材171よりもバルブプランジャ38に当接する第2出力部材172の相対移動量が所定量以上と大きくなり、第2出力部材172が第1出力部材171からマスタシリンダ15の方向に突出量を拡大して第3出力部材175を押圧し、第3出力部材175によりCV弁体140を押圧して座部143から離間させる。つまり、図5に示すように、ブースタ13の失陥発生時に、ブレーキペダル12を介して入力ロッド34に入力がなされた場合に、バルブプランジャ38はストッパプレート55をバルブボディ26に当接させ一体に移動させる位置まではリアクションディスク41を容易に変形させながら即座にストロークすることになり、このバルブプランジャ38のストローク量は、待機位置からのストッパプレート55のバルブボディ26の溝部57におけるマスタシリンダ15側への移動可能な隙間L1と、溝部56とストッパプレート55との隙間L2とを合わせた量となる。そして、この隙間を合わせたストローク量L1+L2が、待機位置から第3出力部材175がCV弁体140に当接するストローク量C1より大きく設定されている。その結果、センタバルブ機構131の連通路136が開放され、大径与圧室120はリザーバ14に連通された状態となる。なお、バルブプランジャ38は、上記のようにセンタバルブ機構131を開くとともにストッパプレート55を介してパワーピストン22を押圧し、パワーピストン22を移動させる。
【0081】
このようなブレーキペダル12からの入力のみによるパワーピストン22の移動によっても、ブースタ13の出力体42に固定された第1出力部材171が、非制動時の待機位置にあったプライマリピストン66を底部61の方向に押圧し移動を開始させ、プライマリピストンスプリング123を介してセカンダリピストン67も同様に移動を開始させる。そして、プライマリピストン66が底部61の方向に移動する作動時において、上記のようにセンタバルブ機構131の連通路136が開放されているため、大径与圧室120はリザーバ14に連通した状態が維持される一方、セカンダリピストン67のポート101がシールリング81により閉じられた時点でセカンダリ液圧室102が液圧を上昇させ、プライマリ液圧室103についても、プライマリピストン66のポート118がシールリング90で閉じられた時点で液圧を上昇させることになる。
【0082】
以上に述べた第1実施形態の液圧ブレーキ装置によれば、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時において、ブースタ13に負圧失陥が発生した場合に、バルブ制御機構166は、ブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介して出力する第1出力部材171に対し、ブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介さずに出力する第2出力部材172の相対移動量が大きくなる。これにより、バルブ制御機構166は、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量以上となって、センタバルブ機構131によりリザーバ14と大径与圧室120とを連通させる連通路136を開放させる。すると、制動初期でも大径与圧室120はリザーバ14と同じ大気圧となるため、運転者はブレーキペダル12の操作で大径の大径与圧室120を昇圧させる必要がなくなり小径のプライマリ液圧室103のみを昇圧させればよいことになる。よって、ブレーキペダル12への入力に対するブレーキ液圧の不足を最小限に抑えることができる(図8における従来の特性を示すX3に対する本実施形態の特性を示すX2を参照)。そして、上記のように、ブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介して出力する第1出力部材171と、ブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介さずに出力する第2出力部材172とを有するバルブ制御機構166と、これらの相対移動量を利用してリザーバ14と大径与圧室120とを連通させる連通路136を開放するセンタバルブ機構131とを用いるため、これらを容易にブースタ13およびマスタシリンダ15の内部に組み込むことができる。したがって、組み付けを容易に行うことができ、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0083】
また、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時において、ブースタ13に負圧失陥が発生していない場合に、バルブ制御機構166は、ブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介して出力する第1出力部材171に対し、ブレーキペダル12からの入力をリアクションディスク41を介さずに出力する第2出力部材172の相対移動量が大きくならないことから、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量未満となって、センタバルブ機構131によりリザーバ14と大径与圧室120とを連通させる連通路136を遮断することで、大径与圧室120の液圧をリザーバ14側に逃がすことなくプライマリ液圧室103に導入して大容量のブレーキ液を供給する、いわゆるファストフィルを行うことができる。
【0084】
加えて、センタバルブ機構131はプライマリピストン66の非作動時に連通路136を開放してリザーバ14と大径与圧室120を連通させているため、プライマリピストン66の非作動時に行われるトラクションコントロール時に、プライマリ液圧室103から液が図示せぬポンプで吸引されると、リザーバ14から大径与圧室120およびプライマリ液圧室103を介してポンプに液を即座にかつ大量に流すことができ、ポンプによるキャリパ側への液補給を即座にかつ大量に行うことができる。したがって、トラクションコントロールのための液補給を大量に行うことができ、ハイフロー性を向上させることができる。
【0085】
次に、本発明の第2実施形態の液圧ブレーキ装置について、図9〜図12を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0086】
第1実施形態は、そのセンタバルブ機構131がプライマリピストン66の非作動時に連通路136を開放するものであったが、第2実施形態は、そのセンタバルブ機構131がプライマリピストン66の非作動時に連通路136を閉塞させることになり、プライマリピストン66の非作動時に大径与圧室120とリザーバ14とを連通させる補給路181を連通路136とは別に設けている。この補給路181は、プライマリ補給路93の連通穴92からシリンダ本体64の大径摺動内径部69に穿設されており、プライマリピストン66が非作動状態にあるときに、シールリング115よりも底部61側に開口している。
【0087】
このような第2実施形態の液圧ブレーキ装置11は、ブースタ13に負圧が正常に導入されている状態では、図9に示す状態から図10に示すように、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部61の方向に移動する作動時において、第1実施形態と同様、パワーピストン22に負圧による推進力が生じることから、バルブプランジャ38はリアクションディスク41を大きく変形させることはなく、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量未満と小さくなる。その結果、第3出力部材175が待機状態から座部143に着座しているCV弁体140を押圧することはなく、センタバルブ機構131の連通路136が閉じられた状態が維持される。
【0088】
このような正常時に対し、ブースタ13に負圧失陥が発生した失陥発生時には、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部61の方向に移動する作動時において、第1実施形態と同様、出力体42に固定された第1出力部材171よりもバルブプランジャ38に当接する第2出力部材172の相対移動量が所定量以上と大きくなり、図9に示す状態から図11に示す状態となって、第2出力部材172が第1出力部材171からマスタシリンダ15の方向に突出して第3出力部材175を押圧し、待機状態から座部143に着座しているCV弁体140をこの第3出力部材175が押圧してシール部材161から離間させる。その結果、センタバルブ機構131の連通路136が開放され、大径与圧室120はリザーバ14に連通された状態となる。
【0089】
以上に述べた第2実施形態の液圧ブレーキ装置11によれば、バルブ制御機構166による効果を第1実施形態と同様に奏することができる。
【0090】
加えて、プライマリピストン66の非作動時にリザーバ14と大径与圧室120とを連通路136とは別の補給路181で連通させているため、待機時にセンタバルブ機構131を開放する必要がなくなる。したがって、センタバルブ機構131の構造を簡素化することができる。
【0091】
次に、本発明の第3実施形態の液圧ブレーキ装置について、図12〜図14を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0092】
第1実施形態では、ファストフィルバルブ150をシリンダ本体64の筒部62に設けているが、第3実施形態は、図12に示すように、ファストフィルバルブ150をプライマリピストン66に設けることによってファストフィルバルブ150でセンタバルブ機構131を兼用している。言い換えればセンタバルブ機構131がファストフィルバルブ150となっている。
【0093】
第3実施形態のファストフィルバルブ150は、プライマリピストン66の連結部108に第1円筒部106側から形成された収納凹部151と、この収納凹部151内に摺動可能に嵌合されるFFVピストン152と、FFVピストン152を収納凹部151の底部153の方向つまり第2円筒部107の方向に押圧するFFVスプリング154と、収納凹部151の開口側に嵌合されるとともにFFVピストン152を摺動可能に嵌合させさらにFFVピストン152との間にFFVスプリング154を保持する蓋体155と、蓋体155と収納凹部151との隙間をシールするシールリング156とを有している。そして、収納凹部151の底部153に第1実施形態と同様の通路穴134が形成されており、この通路穴134を囲むように収納凹部151の底部153に環状のシール部材161が嵌合されている。
【0094】
FFVピストン152は、先端側にステム部139が形成され、このステム部139に隣り合って第1軸部158が形成され、この第1軸部158に隣り合ってこれより大径の第2軸部159が形成され、この第2軸部159の第1軸部158に対し反対側にこれより大径の第3軸部160が形成されている。そして、第1軸部158のステム部139側の段部183がシール部材161に当接することで通路穴134を閉塞可能となっている。また、第2軸部159には収納凹部151との隙間を常時シールするシールリング162が設けられており、第3軸部160には蓋体155と隙間を常時シールするシールリング163が設けられている。
【0095】
なお、プライマリピストン66の収納凹部151とFFVピストン152とシールリング162とで画成された部分がFFV室164となっている。そして、FFV室164から半径方向に形成されてFFV室164を大径与圧室120に常時連通させる連通穴133がシールリング162とシール部材161との間位置に開口している。また、収納凹部151の側部におけるシールリング162とシールリング163との間位置に、プライマリ液圧室103に常時連通する連通流路184が形成されている。
【0096】
そして、ファストフィルバルブ150は、FFVピストン152を、連通穴133から導入される大径与圧室120の液圧と連通流路184から導入されるプライマリ液圧室103の液圧とFFVスプリング154の付勢力とで第1実施形態と同様にバランスさせる。
【0097】
なお、FFVピストン152がCV弁体を兼用し、FFVスプリング154がCVスプリングを兼用し、FFV室164がCV室を兼用する等して、FFVピストン152と、FFVスプリング154と、FFV室164と、このFFV室164から半径方向に形成されてFFV室164を大径与圧室120に常時連通させる連通穴133と、FFV室164から軸線方向に沿って第2円筒部107側に形成された通路穴134と、この通路穴134に直交するように形成されたガイド穴135が、第1実施形態と同様のセンタバルブ機構131を構成している。そして、連通穴133、FFV室164、通路穴134およびガイド穴135が、リザーバ14と大径与圧室120とを連通させる連通路136を構成している。
【0098】
このような第3実施形態の液圧ブレーキ装置は、ブースタ13に負圧が正常に導入されている状態では、パワーピストン22に負圧による推進力が生じることから、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部61の方向に移動する作動時において、バルブプランジャ38はリアクションディスク41を大きく変形させることはなく、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量未満と小さくなる。その結果、バルブ制御機構166は、図12に示す状態から図13に示す状態となり、第3出力部材175がFFVピストン152を押圧することはなく、ストッパ142により行われていたFFVピストン152への押圧が解除され、FFVピストン152がFFVスプリング154による付勢力でシール部材161に着座する。その結果、連通路136が閉じられる。そして、第1実施形態と同様、プライマリピストン66のポート118がシールリング90により閉じられた時点で大径与圧室120が液圧を上昇させ、セカンダリピストン67のポート101がシールリング81により閉じられた時点でセカンダリ液圧室102が液圧を上昇させる。プライマリ液圧室103もプライマリピストン66のポート118が閉じた時点で液圧を上昇させることになる。
【0099】
そして、シールリング90を開放させることで同様に上昇する大径与圧室120およびプライマリ液圧室103の液圧が与圧室解除液圧に達すると、それまで閉状態にあったファストフィルバルブ150のFFVピストン152がプライマリピストン66に対し移動し連通路136を開いて大径与圧室120の液圧を第1実施形態と同様に解除する。
【0100】
このような正常時に対し、ブースタ13に負圧失陥が発生した失陥発生時には、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部61の方向に移動する作動時において、図12に示す状態から図14に示す状態となり、出力体42に固定された第1出力部材171よりもバルブプランジャ38に当接する第2出力部材172の相対移動量が所定量以上と大きくなり、第2出力部材172が第1出力部材171からマスタシリンダ15の方向に突出量を拡大して第3出力部材175を押圧し、FFVピストン152をこの第3出力部材175が押圧してシール部材161から離間させる。その結果、連通路136が開放され、大径与圧室120はリザーバ14に連通された状態となる。
【0101】
以上に述べた第3実施形態の液圧ブレーキ装置11によれば、バルブ制御機構166による効果を第1実施形態と同様に奏することができる。
【0102】
加えて、センタバルブ機構131が、大径与圧室120およびプライマリ液圧室103の液圧が所定圧となったときに連通路136を開放するファストフィルバルブ150となっているため、ファストフィルバルブ150を含めて容易にブースタ13およびマスタシリンダ15の内部に組み込むことができる。したがって、ファストフィルバルブ150を含めて組み付けを容易に行うことができ、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0103】
次に、本発明の第4実施形態の液圧ブレーキ装置について、図15〜図17を参照して第3実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第3実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0104】
第3実施形態は、そのセンタバルブ機構131を兼用するファストフィルバルブ150がプライマリピストン66の非作動時に連通路136を開放するものであったが、第4実施形態は、図15に示すように、センタバルブ機構131を兼用するファストフィルバルブ150がプライマリピストン66の非作動時に連通路136を閉塞させており、また、プライマリピストン66の非作動時に大径与圧室120とリザーバ14とを連通させる補給路181が連通路136とは別に設けられている。この補給路181は、プライマリ補給路93の連通穴92からシリンダ本体64の大径摺動内径部69に穿設されており、プライマリピストン66が非作動状態にあるときに、シールリング115よりも底部61側に開口している。これにより、プライマリピストン66の非作動時に行われるトラクションコントロール時に、図示せぬポンプでプライマリ液圧室103のブレーキ液が吸引されると、リザーバ14から補給路181を介して大径与圧室120およびプライマリ液圧室103に液が流れる。
【0105】
このような第4実施形態の液圧ブレーキ装置11は、ブースタ13に負圧が正常に導入されている状態では、パワーピストン22に負圧による推進力が生じることから、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部方向に移動する作動時において、バルブプランジャ38はリアクションディスク41を大きく変形させることはなく、第1出力部材171に対する第2出力部材172の相対移動量が所定量未満と小さくなる。その結果、図15に示す状態から図16に示す状態となり、第3出力部材175が待機状態からシール部材161に着座しているFFVピストン152を押圧することはなく、センタバルブ機構131の連通路136が閉じられた状態が維持される。
【0106】
このような正常時に対し、ブースタ13に負圧失陥が発生した失陥発生時には、ブースタ13によるマスタシリンダ15の稼働時、つまりプライマリピストン66が底部方向に移動する作動時において、図15に示す状態から図17に示す状態となり、出力体42に固定された第1出力部材171よりもバルブプランジャ38に当接する第2出力部材172の相対移動量が所定量以上と大きくなり、第2出力部材172が第1出力部材171からマスタシリンダ15の方向に突出量を拡大して第3出力部材175を押圧し、待機状態からシール部材161に着座しているFFVピストン152をこの第3出力部材175が押圧してシール部材161から離間させる。その結果、センタバルブ機構131を兼用するファストフィルバルブ150の連通路136が開放され、大径与圧室120はリザーバ14に連通された状態となる。
【0107】
以上に述べた第4実施形態の液圧ブレーキ装置によれば、バルブ制御機構166による効果を第1実施形態と同様に奏することができる。
【0108】
加えて、プライマリピストン66の非作動時にリザーバ14と大径与圧室120とを連通路136とは別の補給路181で連通させているため、待機時にセンタバルブ機構131を兼用するファストフィルバルブ150を開放する必要がなくなる。したがって、センタバルブ機構131を兼用するファストフィルバルブ150の構造を簡素化することができる。
【0109】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、ブースタによるマスタシリンダの稼働時において、ブースタに負圧失陥が発生した場合には、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介して出力する第1出力部材に対し、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介さずに出力する第2出力部材の相対移動量が大きくなることから、第1出力部材に対する第2出力部材の相対移動量が所定量以上となって、弁機構がリザーバと大径与圧室とを連通させる連通路を開放する。すると、制動初期でも大径与圧室はリザーバと同じ大気圧となるため、運転者はブレーキペダルの操作で大径の大径与圧室を昇圧させる必要がなくなり小径の小径液圧室のみを昇圧させればよいことになり、ブレーキペダルへの入力に対するブレーキ液圧の不足を最小限に抑えることができる。そして、上記のように、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介して出力する第1出力部材と、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介さずに出力する第2出力部材と、これらの相対移動量を利用してリザーバと大径与圧室とを連通させる連通路を開放する弁機構とを用いるため、これらを容易にブースタおよびマスタシリンダの内部に組み込むことができる。したがって、組み付けを容易に行うことができ、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0111】
請求項3に係る発明によれば、マスタピストンの非作動時にリザーバと大径与圧室とを連通路とは別の補給路で連通させているため、待機時に弁機構を開放する必要がなくなる。したがって、弁機構の構造を簡素化することができる。そして、ブースタによるマスタシリンダの稼働時において、ブースタに負圧失陥が発生していない場合には、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介して出力する第1出力部材に対し、ブレーキペダルからの入力を反力機構を介さずに出力する第2出力部材の相対移動量が大きくならないことから、第1出力部材に対する第2出力部材の相対移動量が所定量未満となって、弁機構がリザーバと大径与圧室とを連通させる連通路を遮断することで、大径与圧室の液圧をリザーバ側に逃がすことなく小径液圧室に導入して大容量のブレーキ液を供給する、いわゆるファストフィルを行うことができる。
【0112】
請求項4に係る発明によれば、弁機構が、大径与圧室若しくは小径液圧室の液圧が所定圧となったときに大径与圧室の液圧を解除するファストフィルバルブを兼ねているため、ファストフィルバルブを含めて容易にブースタおよびマスタシリンダの内部に組み込むことができる。したがって、ファストフィルバルブを含めて組み付けを容易に行うことができ、装置全体をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置における全体構成を示す側断面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置におけるブースタ側の側断面図である。
【図3】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置におけるマスタシリンダ側の側断面図である。
【図4】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置におけるマスタシリンダ側の正断面図である。
【図5】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって待機状態を示すものである。
【図6】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって正常時の作動状態を示すものである。
【図7】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって失陥時の作動状態を示すものである。
【図8】 本発明の第1実施形態の液圧ブレーキ装置におけるベダル踏力に対するプライマリ液圧室の液圧を示す特性線図である。
【図9】 本発明の第2実施形態の液圧ブレーキ装置におけるマスタシリンダ側の側断面図であって待機時の状態を示すものである。
【図10】 本発明の第2実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって正常時の作動状態を示すものである。
【図11】 本発明の第2実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって失陥時の作動状態を示すものである。
【図12】 本発明の第3実施形態の液圧ブレーキ装置におけるマスタシリンダ側の側断面図であって待機時の状態を示すものである。
【図13】 本発明の第3実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって正常時の作動状態を示すものである。
【図14】 本発明の第3実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって失陥時の作動状態を示すものである。
【図15】 本発明の第4実施形態の液圧ブレーキ装置におけるマスタシリンダ側の側断面図であって待機時の状態を示すものである。
【図16】 本発明の第4実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって正常時の作動状態を示すものである。
【図17】 本発明の第4実施形態の液圧ブレーキ装置における要部拡大側断面図であって失陥時の作動状態を示すものである。
【符号の説明】
11 液圧ブレーキ装置
12 ブレーキペダル
13 ブースタ
14 リザーバ
15 マスタシリンダ
41 リアクションディスク(反力機構)
66 プライマリピストン(マスタピストン)
103 プライマリ液圧室(小径液圧室)
120 大径与圧室
131 センタバルブ機構(弁機構)
136 連通路
150 ファストフィルバルブ
171 第1出力部材
172 第2出力部材
181 補給路

Claims (4)

  1. 反力をブレーキペダルに伝達する反力機構を有し、ブレーキペダルの操作力を助勢して出力するブースタと、液体を貯留するリザーバを有し、前記ブースタの出力によって作動するマスタピストンにより画成される大径与圧室と小径液圧室とが設けられ、前記大径与圧室の液体を前記小径液圧室に流入して該小径液圧室より液圧を出力し、前記大径与圧室若しくは前記小径液圧室の液圧が所定圧になったときに前記大径与圧室の液圧を解除するファストフィルバルブを有するマスタシリンダとからなる液圧ブレーキ装置において、
    前記ブースタには、差圧により助勢力を発生するパワーピストンに設けられるバルブボディと、該バルブボディ内を摺動するプランジャと、前記ブレーキペダルから前記プランジャに伝達される入力を前記反力機構を介して出力する第1出力部材と、前記ブレーキペダルから前記プランジャに伝達される入力を前記反力機構を介さずに出力する第2出力部材とが備えられるとともに、
    前記マスタピストンには、前記リザーバと前記大径与圧室とを連通させる連通路と、前記ブースタによる前記マスタシリンダの稼働時、前記第1出力部材に対する前記第2出力部材の相対移動量が所定量以上であるとき、前記連通路を開放する弁体を有する弁機構とが設けられ
    該弁機構は、前記弁体と前記第2出力部材との間に設けられ、前記第2出力部材の相対移動量が前記所定量以上のとき、前記弁機構の弁体に作用してこれを開弁する第3出力部材と、該第3出力部材を前記第2出力部材の方向に押圧し、前記弁体と前記第3出力部材との間に所定量の隙間を形成するスプリングと、を有していることを特徴とする液圧ブレーキ装置。
  2. 前記弁体と第3出力部材との間に形成される前記所定量の隙間は、前記バルブボディと前記プランジャとの相対移動可能量よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の液圧ブレーキ装置。
  3. 前記マスタピストンの非作動時に前記大径与圧室と前記リザーバとを連通させる補給路が前記連通路とは別に設けられ、前記弁機構は、前記ブースタによる前記マスタシリンダの稼働時に前記第1出力部材に対する前記第2出力部材の相対移動量が所定量未満であると前記連通路を遮断することを特徴とする請求項1記載の液圧ブレーキ装置。
  4. 前記弁機構は、前記大径与圧室若しくは前記小径液圧室の液圧が所定圧となったときに前記大径与圧室の液圧を解除する前記ファストフィルバルブを兼ねていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の液圧ブレーキ装置。
JP2003166462A 2003-06-11 2003-06-11 液圧ブレーキ装置 Expired - Fee Related JP4202196B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003166462A JP4202196B2 (ja) 2003-06-11 2003-06-11 液圧ブレーキ装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003166462A JP4202196B2 (ja) 2003-06-11 2003-06-11 液圧ブレーキ装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005001488A JP2005001488A (ja) 2005-01-06
JP4202196B2 true JP4202196B2 (ja) 2008-12-24

Family

ID=34092621

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003166462A Expired - Fee Related JP4202196B2 (ja) 2003-06-11 2003-06-11 液圧ブレーキ装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4202196B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE112006002550T5 (de) * 2005-09-26 2008-10-02 Hitachi, Ltd. Elektrisch betätigter Verstärker
JP4742091B2 (ja) * 2007-10-25 2011-08-10 日立オートモティブシステムズ株式会社 マスタシリンダ
JP4699439B2 (ja) * 2007-11-21 2011-06-08 日立オートモティブシステムズ株式会社 マスタシリンダ
JP2009173264A (ja) * 2007-12-27 2009-08-06 Hitachi Ltd マスタシリンダ
JP2010235018A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Hitachi Automotive Systems Ltd 車両制動システム及びマスタシリンダ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005001488A (ja) 2005-01-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8186772B2 (en) Vehicle brake apparatus
US7293413B2 (en) Vehicle braking device
US8256216B2 (en) Vehicular brake apparatus
JP4385002B2 (ja) 車両用ブレーキ装置
US6550245B2 (en) Hydraulic brake apparatus for a vehicle
JP4202196B2 (ja) 液圧ブレーキ装置
US7360360B2 (en) Vehicle braking device
JP4176730B2 (ja) 車両用ブレーキ装置
US20020152883A1 (en) Fluid pressure boosting device
US7607300B2 (en) Fluid pressure booster
JP4385003B2 (ja) 車両用ブレーキ装置
US9132818B2 (en) Fluid pressure booster for braking device
JP4292167B2 (ja) 車両用ブレーキ装置
JP2003312467A (ja) 車両用ブレーキ液圧制御装置
JP5394364B2 (ja) ブレーキ装置用液圧ブースタ
JP4904613B2 (ja) 車両の液圧ブレーキ装置
JP4502866B2 (ja) 液圧ブースタ
JP4176731B2 (ja) 車両用ブレーキ装置
JP4384997B2 (ja) 液圧ブースタ
JP2003312468A (ja) 車両用ブレーキ液圧制御装置
JP5580189B2 (ja) ブレーキ装置用液圧ブースタ
JP4384998B2 (ja) 液圧ブースタ
JP4474314B2 (ja) 車両用ブレーキ装置
JP2010125976A (ja) マスタシリンダ
JP2006281999A (ja) 車両用ブレーキ装置

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20041129

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060314

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20060314

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070911

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070918

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080930

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20081008

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4202196

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111017

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111017

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111017

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121017

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121017

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131017

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131017

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141017

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees