JP2010076100A - 透明導電性積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】特に耐筆記性などの耐久性を向上させた透明導電性積層フィルムの提供。
【解決手段】透明なプラスチックフィルムからなる基材層(A)上に、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を硬化してなる厚さ0.1μm以上20μm以下の被膜層(B)、その上に透明導電膜層(C)が積層されてなり、前記被膜層(B)を形成する前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であることを特徴とする透明導電性積層フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶ディスプレイ等の表示素子、タッチパネル等の表示入出力装置、太陽電池変換素子等に使用される透明導電性積層フィルムに関する。
近年、ディスプレイ画面を指で触ったり、ペンで押圧するだけで入力できる透明タッチパネルが普及している。このタッチパネルには、透明導電性フィルムが使われている。タッチパネルの電圧感知方法は、アナログ式とマトリックス式がある。前者のアナログ式は、両端に電極を備えた2枚の透明導電性基体をスペーサーを介して対向配置させ、上下の電極に電圧を印加して押圧位置の電圧値をX−Y座標の位置として検知する。後者のマトリックス式は、導電層をストリップ状に形成した2枚の透明導電性基体をマトリックス状に配列し、各々の電極により押圧位置を検知する。
通常のタッチパネル用透明導電性層は、液晶表示素子の最上層に重ね合わせて用いられ、基本的にはガラスもしくは高分子フィルムに導電層(主にITO膜)を積層した構成を有している。一般的には、少なくとも可視光の透過率が80%以上であり、表面抵抗が数kΩから数百Ω/□であり、かつ耐筆記性に優れることが要求される。
特許文献1(特開平10−71667号公報)では、薬品性及び剛性に優れており、ガラス基板を使用したものより軽量で、液晶ディスプレイ製造の際にガラス基板プロセスを利用することが可能で、耐衝撃性にも優れた透明導電性シートを提供する目的で、光硬化性樹脂シートの表面に透明導電膜を形成した透明導電性シートが開示されている。
ところで従来の導電膜層としては、酸化インジウム、酸化錫に酸化珪素や酸化アルミニウム等をドープしたもの、酸化インジウム、酸化錫に窒素をドープしたものがある(特許文献2:特開平11−110110号公報)。しかしながら、単に透明導電膜層を透明高分子基体上に形成しただけでは、アナログ用途として求められる250g荷重10万文字筆記テストには耐えられない。
特開平10−71667号公報 特開平11−110110号公報
従来の透明導電性基体は、先にも述べたように、基本的にはガラスもしくは高分子フィルム/導電層(主にITO膜)の層構成を有する。ガラス基体を用いる場合は、基体を高温に加熱する事により化学的に安定な透明導電膜層を形成し、耐筆記性および密着性に優れるが、割れる、重い、厚いといった問題がある。一方、プラスチックフィルムなどの高分子基体(高分子フィルム)を用いる場合は、ガラス基体のような問題は生じない。しかしながら、光学的に等方性な透明高分子基体を使用すると、透明導電膜層を形成する際の温度は高分子基体の耐熱温度に制限され、低温化せざるを得ない。
そのため、プラスチックフィルム基材上に、耐筆記性および密着性に優れた透明導電膜層を形成するのは容易でない。さらに、高分子基体として従来提案されているものを用いた場合、光等方性、透明性、耐熱性、耐薬品性、密着性などの要求性能を全て満たすことは難しい。本発明では、上記要求性能を満たすとともに、特に耐筆記性などの耐久性を向上させた透明導電性積層フィルムの提供が課題である。
請求項1に記載の発明は、透明なプラスチックフィルムからなる基材層(A)上に、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を硬化してなる厚さ0.1μm以上20μm以下の被膜層(B)、その上に透明導電膜層(C)が積層されてなり、前記被膜層(B)を形成する前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であることを特徴とする透明導電性積層フィルムである。
請求項2に記載の発明は、前記被膜層(B)が、真空蒸着装置内において、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を蒸発源に滴下して気化させて形成され、紫外線または電子線を照射することで硬化されていることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性積層フィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)が、モノアクリレート、ジアクリレートのうちの少なくとも1つを含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電性積層フィルムである。
請求項4に記載の発明は、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)における前記モノアクリレートと前記ジアクリレートを合わせた含有率が50重量%以上であることを特徴とする請求項3記載の透明導電性積層フィルムである。
請求項5に記載の発明は、前記基材層(A)と前記被膜層(B)の間に無機酸化物蒸着薄膜層(D)がある、または、前記基材層(A)と前記被膜層(B)の間に、無機酸化物蒸着薄膜層(D)と前記被膜層(B)が交互に積層され、「C/(B/D)×n/B/A」もしくは「C/(B/D)×n/A」(nは1以上の整数)という構成になっている事を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルムである。
請求項6に記載の発明は、前記無機酸化物蒸着薄膜層(D)が、酸化珪素(SiOx)である事を特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルムである。
請求項7に記載の発明は、前記被膜層(B)の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルムである。
請求項8に記載の発明は、直径8mmのポリアセタールペンを用いて、250g荷重で10万往復(3往復/1秒、片道距離35mm)した後、等間隔に電圧測定を行い、直線近似した値と実測値とのズレが1.0%以下となる、請求項1から7のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルムである。
本発明によれば、透明なプラスチックフィルムからなる基材層(A)上に、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を硬化してなる厚さ0.1μm以上20μm以下の被膜層(B)、その上に透明導電膜層(C)が積層されてなり、前記被膜層(B)を形成する前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であることを特徴としているので、引張りなどの外部応力に対して耐久性を上げることができる。例えば、直径8mmのポリアセタールペンを用いて、250g荷重で10万往復(3往復/1秒、片道距離35mm)した後、等間隔に電圧測定を行い、直線近似した値と実測値とのズレが1.0%以下とする事が出来る。
とくに、前記被膜層(B)が、真空蒸着装置内において、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を蒸発源に滴下して気化させて形成され、紫外線または電子線を照射することで硬化されている場合は、生産性の向上した透明導電性フィルムを提供することができる。とくに上記請求項5に記載の層構成を形成する際、当該構成によれば、真空蒸着装置内での効率的な連続生産が可能となり、生産コストを低減できる効果がある。
以下、本発明の透明導電性積層フィルムを実施するための最良の形態を、図面に沿って説明する。図1は、本発明の透明導電性積層フィルムの断面図である。
基材層(A)上に、被膜層(B)、透明導電膜層(C)が順次積層されている。
本発明の透明導電性積層フィルムにおいて、基材層(A)は透明なプラスチックフィルムからなっている。透明なプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムがある。その他ホモポリマーとして、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリサルフォン等、およびこれら樹脂のモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマー等から成るプラスチックフィルムなどがある。
これらの透明なプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性などが優れたものが好ましい。特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、二軸方向に延伸したポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、透明なプラスチックフィルムの内部もしくは表面上に、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等、硬化剤、ハードコート剤、防湿コート剤、ガスバリアコート剤、腐食剤などを添加もしくは積層してもよい。さらに、透明なプラスチックフィルムにおいて、他の層を積層する側の表面には、密着性をよくするために、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理など、または、アンカーコートなどの公知の表面処理を施してもよい。基材層(A)の厚みに特に制限は無いが、タッチパネル用途を考慮した場合、10〜250μm程度が好ましい。
被膜層(B)は、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を硬化させて形成する。後述する透明導電膜層(C)の耐久性向上のためには、硬化収縮率が0.2%以上10%以下であればよく、ドライコーティング、ウェットコーティング、どちらでも構わず、特に限定されるものではない。
硬化収縮率は、{(硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度}×100により測定する。
ただし、真空蒸着装置内において、高温の蒸発源の中に挿入したノズルなどから、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を滴下して気化させる手法(フラッシュ蒸着法)を用いて、未硬化の被膜層として基材層(A)上に積層し、紫外線または電子線を照射して硬化すれば、真空蒸着装置内で真空中において、基材層(A)上に連続して、被膜層(B)と透明導電膜層(C)または後述する無機酸化物蒸着薄膜層(D)を積層することができ、効率的で生産コストの低減が可能であるため、現時点では上記手法を用いることが望ましい。
未硬化の被膜層に紫外線を照射して硬化させる場合には、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)に光重合開始剤を混合する。具体的な光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、キサントン類、アセトフェノン誘導体などを挙げることができる。これらの光重合開始剤を0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%の割合で混合する。
未硬化の被膜層に電子線を照射して硬化させる場合には、蒸着した被膜層の膜厚と、電子線のエネルギー条件、加工速度、除電とのバランスが重要になる。これは、過度の電子線エネルギーを供給すると、蒸着した被膜層に帯電を引き起こし、その結果として、剥離放電によって隣接する層が損傷するおそれがあるためである。
本発明の透明導電性積層フィルムにおける被膜層(B)の役割は、隣接する透明導電膜層(C)もしくは無機酸化物蒸着薄膜層(D)に対して、折り曲げや引っ張りなどの外部応力が加わった場合の保護機能、および、ラミネートなどの通常の加工を施した場合の保護機能である。これにより、耐筆記性などの耐久性が向上する。
さらに、被膜層(B)に隣接して、ガスバリア性のある無機酸化物蒸着薄膜層(D)がある場合、被膜層(B)の形成時の硬化収縮による内部応力によりガスバリア性が向上し、耐筆記性などの耐久性が向上する。上記被膜層(B)を形成する重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の硬化収縮率は0.2%以上10%以下であることが好ましく、硬化収縮率が0.2%未満であると被膜層(B)形成時の硬化収縮による内部応力が僅かに生じるだけで、十分な保護機能は得られない。また、硬化収縮率が10%を超えると被膜層(B)形成時の硬化収縮による内部応力が過度に働き、隣接する層との密着性が低下する可能性が高くなる。
被膜層(B)の厚さは、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。膜厚が0.1μm未満であると、均一な被膜層を形成することは難しく、被膜層(B)形成時の硬化収縮による内部応力が僅かに生じるだけで、十分な保護機能が発揮できない。また、膜厚が20μmを超えると被膜層(B)形成時の硬化収縮による内部応力が過度に働き、隣接する層との密着性が低下する可能性が高くなる。
上記被膜層(B)に隣接してガスバリア性のある無機酸化物蒸着薄膜層(D)がある場合、ガスバリア性を向上させ、耐久性を上げるには、上記被膜層(B)を形成する重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の硬化収縮率はやはり0.2%以上10%以下であることが好ましく、厚さも、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。
本発明の透明導電性積層フィルムにおいて、被膜層(B)の原材料である、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)は、モノアクリレート、ジアクリレートのうちの少なくとも1つを含有し、上記モノアクリレートと上記ジアクリレートを合わせた含有率が50重量%以上であることが好ましい。すなわち、3官能以上のアクリロイル基を有するアクリレートを合わせた含有率が50重量%以上であると、被膜層(B)形成時の硬化収縮率を10%以下に抑えることが難しく、硬化収縮による内部応力が過度に働き、隣接する層と被膜層(B)との密着性が低下する可能性が高くなるためである。但し、3官能以上のアクリロイル基を有するアクリレートは架橋度を向上させる効果があるため、強固な被膜層(B)を形成する際には少量使用することが好ましく、例えばトリアクリレートを混合する場合であれば10重量%程度が望ましい。
これらのアクリレートとしては、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリアセタールアクリレート、ポリブタジエン系アクリレート、メラミンアクリレートなどの重合性が高いアクリル系のモノマーまたはオリゴマーを、適宜選定して用いることができる。
モノアクリレート、ジアクリレートおよびトリアクリレートには様々な種類があり、特に限定されないが、透明導電膜層(A)や無機酸化物蒸着薄膜層(D)との密着性が良好であって、効率良く未硬化の蒸着被膜層が形成できる事が好ましい。必要に応じ、衛生性に優れたものを選択することが好ましい。具体的には、モノアクリレートとしては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレートなどが挙げられる。ジアクリレートとしては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが挙げられる。トリアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。これらの比率は、たとえば、モノアクリレート/ジアクリレート/トリアクリレート=60/30/10(重量%)に設定することが望ましい。
重合可能なアクリル系のモノマーまたはこのモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の粘度は、200mPa・s/25℃以下、より好ましくは100mPa・s/25℃以下であることが望ましい。これは、真空蒸着装置内で、高温の蒸発源の中に挿入したノズルなどから、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を滴下して、瞬間的に気化させて、未硬化の蒸着被膜層を形成する際に、その粘度が高すぎると、高温の蒸発源の中に挿入したノズルなどから少量ずつ一定速度で滴下させることが困難になるためである。
本発明の透明導電性積層フィルムは、液晶ディスプレイ等の表示素子、タッチパネル等の表示入出力装置及び太陽電池変換素子等の電子機器関連部材分野、および食品、日用品、医薬品などの包装分野において包装材料として用いられるため、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)は、そのPII(Primary Irritation Index)が2.0以下であることが望ましい。なお、PIIとは、化学品の皮膚障害の度合を示すものであって、値が小さいほど刺激性が低い。
本発明の透明導電性積層フィルムにおいては、被膜層(B)の表面を、コロナ放電やグロー放電を始めとするプラズマ処理することが望ましい。そうする事で、隣接する層との密着性を向上させる事が出来る。また、原材料として使用した重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の未硬化成分を除去して、その硬化度を向上させる為でもある。食品、日用品、医薬品などの包装分野において、包装材料として用いられる際には、硬化度を向上させる事で、食品衛生上などの問題に対処する事にもなる。
この被膜層(B)をプラズマ処理する際に、DC電源またはRF電源を用いて、プラズマを連続的に安定して発生させ、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の未硬化成分を効率よく除去するためには、水素、酸素、窒素、二酸化炭素などの通常のガスと、ヘリウム、アルゴンなどの少なくとも1種類の不活性ガスとを含むプラズマ処理用の混合ガスを使用することが望ましい。
透明導電膜層(C)は、酸化インジウム錫(ITO)からなるものであればよい。比抵抗や可視光線透過率を考慮すると、錫の含有率は3〜50重量%が好ましい。その厚みは、表面抵抗および可視光線透過率に影響するので、要求される表面抵抗と可視光線透過率によって厚みを適宜決定すれば良い。通常は、10〜50nm程度が好ましい。その他、材料として、酸化亜鉛(ZnO)などを使用しても良い。
また、透明導電膜層(C)の表面抵抗値は通常、数百Ω/□程度である。
透明導電膜層(C)の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった従来の公知技術の何れも採用できる。スパッタリング法においては、ターゲットに酸化インジウム錫(ITO)を使用しても、インジウム錫合金を使用しても良い。
本発明の透明導電性積層フィルムにおいて、基材層(A)と被膜層(B)の間に無機酸化物蒸着薄膜層(D)がある、または、基材層(A)と被膜層(B)の間に、無機酸化物蒸着薄膜層(D)と被膜層(B)が交互に積層されている、すなわち「C/(B/D)×n/B/A」もしくは「C/(B/D)×n/A」(nは1以上の整数)という構成(図2、3)にすると、透明導電性積層フィルムのガスバリア性が向上し、それに伴い耐久性も向上するので好ましい。
無機酸化物蒸着薄膜層(D)には、酸化珪素(SiOx)蒸着薄膜(xは2に近いほど好ましい)、酸化アルミニウム蒸着薄膜、酸化マグネシウム蒸着薄膜などが用いられる。
中でも、透明性、酸素や水蒸気を遮断するガスバリア性、およびそれに伴う耐久性向上の点から、酸化珪素(SiOx)が好ましい。
無機酸化物蒸着薄膜層(D)の形成方法は特に限定されるものではないが、基材層(A)の表面に、酸化珪素(SiOx)蒸着薄膜の無機酸化物蒸着薄膜層(D)を真空中において、より速い速度で積層する場合には、現時点では真空蒸着法が最も優れている。現時点の真空蒸着法において、真空蒸着装置内での蒸発源材料の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式や誘導加熱方式などが好ましい。また基材層(A)や被膜層(B)との密着性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法などを用いることも可能である。さらに、蒸着薄膜層の透明性を上げるために、酸素ガスなど吹き込んで反応性蒸着を行ってもよい。
本発明の透明導電性積層フィルムにおいて、無機酸化物蒸着薄膜層(D)は、透明であり、かつ酸素、水蒸気などの収容物を変質させる気体を遮断する優れたガスバリア性を有している。この無機酸化物蒸着薄膜層(D)の厚さは、5〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。ここで、膜厚が5nm未満であると、均一な蒸着薄膜層が得られないことがあり、ガスバリア性が出ず、耐久性向上の機能を十分に果たすことができない。一方、膜厚が200nmを越えると、蒸着薄膜層に折り曲げや引っ張りなどの外部応力が加わると、蒸着薄膜層に亀裂を生じ、耐久性が悪化するおそれがある。
本発明の透明導電性積層フィルムは、直径8mmのポリアセタールペン(ペン全体がポリアセタール製であり、ペン先は円筒状であり、該円筒の直径が8mmである)を用いて、250g荷重で10万往復(3往復/1秒、片道距離35mm)した後、等間隔に電圧測定を行い、直線近似した値と実測値とのズレ(リニアリティ)が1.0%以下であることを特徴とする。以下、このリニアリティの測定法(筆記特性評価法)を、図面に沿って説明する。
まずリニアリティについて説明する。
図4は、リニアリティの測定法を説明するためのグラフである。基準となる電極から測定点までの距離と電圧との関係を測定すると、この図4の示す鎖線のように、理想的には直線となる筈である(理想電圧)。しかし、実際には、その距離と電圧との関係は、図4に示す実線のように曲線となる(測定電圧)。ここで、理想電圧値とのズレの最大値(ΔVmax)と、その距離での理想電圧の値(V)を用いて、以下の式より、リニアリティを算出する。
リニアリティ[%]=(△Vmax/V)×100
図5は、本発明のタッチパネルサンプルのリニアリティを測定する状態を示す模式的断面図である。この図において、タッチパネルサンプルは、導電膜付きガラス1上に、スペーサー2を介して、透明導電性積層フィルム3が積層され、さらにその上に接着層4を介してハードコート付き偏光フィルム5が積層されてなる。このタッチパネルの透明電極として使用される透明導電性積層フィルム3のリニアリティを測定する場合は、この図1に示すように、直径8mmのポリアセタールペン6を用いて、250g荷重で10万往復(速度:3往復/1秒、片道距離35mm)する。
図6は、本発明のタッチパネルサンプルのリニアリティを測定する状態を示す模式的平面図である。ポリアセタールペン6を摺動させる場合は、この図6に示すように、電極7の間(摺動部8)を往復摺動させる。測定は、具体的には図6に示すように、5cm×9cm角に切ったサンプルの9cm方向に電圧を5V印加し、1cm間隔で電圧を測定し、理想値からのズレ(△Vmax)を算出する。
<実施例1>
基材層(A)として厚さ100μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、大気圧下において、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(b)(硬化収縮率:6.3%)をメチルエチルケトンにて希釈したアクリル固形分50重量%の希釈混合液を基材層(A)上に塗布し、70℃乾燥にてメチルエチルケトンを十分に蒸発させた後、電子線を照射して硬化させ、厚さ0.5μmの被膜層(B)を形成した。その後、真空蒸着装置内で、DCマグネトロンスパッタリング法により、酸化インジウム錫(ITO)を表面抵抗値が500Ω/□になる膜厚(約20nm)を成膜し、透明導電膜層(C)を形成した。
<実施例2>
基材層(A)として厚さ100μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、フラッシュ蒸着法により、その上に2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(b)(硬化収縮率:6.3%)を、高温の蒸発源に滴下して気化させ、厚さ0.5μmの未硬化の蒸着被膜層を積層した。この蒸着被膜層に電子線を照射して硬化させ、被膜層(B)を形成した。その後、真空蒸着装置内で、DCマグネトロンスパッタリング法により、酸化インジウム錫(ITO)を表面抵抗値が500Ω/□になる膜厚(約20nm)を成膜し、透明導電膜層(C)を形成した。
<実施例3>
実施例2と同様にして、基材層(A)上に酸化珪素(SiOx)蒸着薄膜からなる無機酸化物薄膜層(D)と被膜層(B)とを順次積層した後、DC電源を用い窒素とアルゴンとの1/1混合ガスをプラズマ化して、被膜層(B)の表面をプラズマ処理した。その後、真空蒸着装置内で、DCマグネトロンスパッタリング法により、酸化インジウム錫(ITO)を表面抵抗値が500Ω/□になる膜厚(約20nm)を成膜し、透明導電膜層(C)を形成した。
<実施例4>
基材層(A)として厚さ100μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、真空蒸着装置内に設置した。電子線加熱方式で酸化珪素を蒸発させて、基材層(A)上に厚さ20nmの酸化珪素(SiOx)蒸着薄膜からなる無機酸化物薄膜層(D)を積層した。その後、実施例2と同様にして、被膜層(B)、透明導電膜層(C)を形成した。
<実施例5>
実施例2と同様に、基材層(A)の上に、被膜層(B)を形成し、その後は、実施例4と同様にして、無機酸化物薄膜層(D)、被膜層(B)、透明導電膜層(C)を順に形成した。
<比較例1>
実施例1の透明導電性積層フィルムにおいて、基材層(A)上に、被膜層(B)は積層せず、透明導電膜層(C)を形成した。
<比較例2>
実施例1の透明導電性積層フィルムにおいて、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(b)(硬化収縮率:6.3%)の代わりに、トリプロピレングリコールジアクリレート(硬化収縮率:11.5%)を用いた。その他の条件は実施例1と同様であった。
<比較例3>
実施例2の透明導電性積層フィルムにおいて、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(b)(硬化収縮率:6.3%)の代わりに、トリプロピレングリコールジアクリレート(硬化収縮率:11.5%)を用いた。その他の条件は実施例2と同様であった。
<比較例4>
実施例2の透明導電性積層フィルムにおいて、被膜層の厚みを25μmにした。その他の条件は実施例2と同様であった。
<比較例5>
実施例2の透明導電性積層フィルムにおいて、被膜層の厚みを0.08μmにした。その他の条件は実施例2と同様であった。
<比較評価>
1.筆記耐性(リニアリティ評価)
実施例1〜5、および比較例1〜5について、筆記耐性を、リニアリティ測定により評価した。導電膜付きガラス1の導電膜はSnO2膜、スペーサー2の材質はアクリル系樹脂、幅は100μm、高さは200μm、接着剤4の厚みは20μm、ハードコート付き偏光フィルム5の硬度は2H以上、厚みは180μmのものを用いた。リニアリティ値[%]は、1.0以下を○、1.0〜1.2を△、1.2超を×とした。
ポリアセタールペンの摺動を10万往復する前の状態では、各サンプルともリニアリティは1.0%以下だった。
2.酸素透過度
実施例1〜5、および比較例1〜5について、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX-TRAN 2/21)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(cc/m・24h・MPa)を測定した。
20cc/m・24h・MPa以下を○、20超〜100cc/m・24h・MPaを△、100cc/m・24h・MPa超を×とした。
3.水蒸気透過度
実施例1〜5、および比較例1〜5について、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN-W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m・24h)を測定した。
2g/m・24h以下を○、2超〜4g/m・24hを△、4g/m・24h超を×とした。
4.耐アルカリ性
実施例1〜5、および比較例1〜5について、3.5%KOH水溶液に3分浸漬後の抵抗値(R)を測定した(23℃環境下)。浸漬前の抵抗値はR0とする。
R/R0≦1.1を○、1.1<R/R0<1.2を△、1.2<R/R0を×とした。
これらの測定結果を表1に示す。
Figure 2010076100
本発明にかかる、透明導電性積層フィルムの断面図である。 本発明にかかる、透明導電性積層フィルムの断面図である。 本発明にかかる、透明導電性積層フィルムの断面図である。 リニアリティ測定法を説明するためのグラフである。 リニアリティ測定をする状態を示す模式的断面図である。 リニアリティ測定をする状態を示す模式的平面図である。
符号の説明
1・・・導電膜付きガラス
2・・・スペーサー
3・・・透明導電性積層フィルム
4・・・接着層
5・・・ハードコート付き偏光フィルム
6・・・ポリアセタールペン
7・・・電極
8・・・摺動部

Claims (8)

  1. 透明なプラスチックフィルムからなる基材層(A)上に、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を硬化してなる厚さ0.1μm以上20μm以下の被膜層(B)、その上に透明導電膜層(C)が積層されてなり、前記被膜層(B)を形成する前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であることを特徴とする透明導電性積層フィルム。
  2. 前記被膜層(B)が、真空蒸着装置内において、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)を蒸発源に滴下して気化させて形成され、紫外線または電子線を照射することで硬化されていることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性積層フィルム。
  3. 前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)が、モノアクリレート、ジアクリレートのうちの少なくとも1つを含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電性積層フィルム。
  4. 前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物(b)における前記モノアクリレートと前記ジアクリレートを合わせた含有率が50重量%以上であることを特徴とする請求項3記載の透明導電性積層フィルム。
  5. 前記基材層(A)と前記被膜層(B)の間に無機酸化物蒸着薄膜層(D)がある、または、前記基材層(A)と前記被膜層(B)の間に、無機酸化物蒸着薄膜層(D)と前記被膜層(B)が交互に積層され、「C/(B/D)×n/B/A」もしくは「C/(B/D)×n/A」(nは1以上の整数)という構成になっている事を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルム。
  6. 前記無機酸化物蒸着薄膜層(D)が、酸化珪素(SiOx)である事を特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルム。
  7. 前記被膜層(B)の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルム。
  8. 直径8mmのポリアセタールペンを用いて、250g荷重で10万往復(3往復/1秒、片道距離35mm)した後、等間隔に電圧測定を行い、直線近似した値と実測値とのズレが1.0%以下となる、請求項1から7のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルム。
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