JP2010075063A - 乳飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラクトース(乳糖)および無脂乳固形分(SNF)の含有量が一定の範囲に属する、牛乳風味を有する乳飲料の提供。
【解決手段】ラクトース(乳糖)の含有量を0.27重量%以上2.30重量%以下および無脂乳固形分(SNF)の含有量を5.0重量%以上8.3重量%未満と一定の範囲とすることで、牛乳風味を有する乳飲料さらに無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却し、乳糖分解酵素を添加して酵素処理して加熱均質化し、殺菌して酵素を失活して冷却してなる乳飲料。
【選択図】なし

Description

本発明は、ラクトース(乳糖)および無脂乳固形分(SNF)の含有量が一定の範囲に属する、牛乳風味を有する乳飲料に関する。
牛乳はタンパク質、カルシウムおよび脂肪等を多く含む栄養価の高い食品である。しかし、乳糖を含んでいるため、乳糖を自ら分解できずお腹がゴロゴロする等の不快症状が生じるような乳糖不耐症者には摂取が困難であった。そこで、乳糖不耐症者が容易に摂取できるように、乳糖を予め酵素で分解した乳糖分解乳や乳糖分解脱脂粉乳が開発され、販売されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの乳糖分解乳は、乳糖分解によって生じるガラクトースおよびグルコースによって、牛乳よりも甘くなり、風味が損なわれるという問題があった。
この問題を解決するために、生乳から一部の乳糖を除去し、残りの乳糖をすべて加水分解することで、甘味を牛乳程度に調製した牛乳風味のラクトースフリーミルクが開発されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、乳糖はカルシウム吸収を促進する作用があるため、効率よくカルシウムを摂取するためには完全に除去しない方が望ましい。そこで、不快症状を感じない程度に乳糖を低減することで、乳糖不耐症者および潜在的乳糖不耐症者からなる乳糖分解不良者において、牛乳よりもカルシウム吸収性が高められ、かつ牛乳風味を有している乳飲料の提供が望まれていた。
特開平10−262549号公報 国際公開番号WO03/094623号公報
本発明は、ラクトース(乳糖)および無脂乳固形分(SNF)の含有量が一定の範囲に属する、牛乳風味を有する乳飲料の提供を課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ラクトース(乳糖)の含有量を0.27重量%以上2.30重量%以下および無脂乳固形分(SNF)の含有量を5.0重量%以上8.3重量%未満と一定の範囲とすることで、牛乳風味を有する乳飲料が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の乳飲料は乳糖の含有量が0.27重量%以上2.30重量%以下と低減されているため、乳糖分解不良者が安心して摂取できる。また、乳糖分解不良者において牛乳類よりもカルシウム吸収性が高められていることから、十分にカルシウムを摂取することができる。さらに、乳糖の含有量が低減されているにも関わらず、牛乳風味を有していることから、乳糖分解不良者以外の者においても牛乳類と同様に摂取することができる。
すなわち、本発明は次の(1)〜(8)の乳飲料に関する。
(1)ラクトース0.27重量%以上2.30重量%以下および無脂乳固形分(SNF)が5.0重量%以上8.3重量%未満である牛乳風味を有する乳飲料。
(2)乳脂肪分(Fat)が0.5重量%以上4.5重量%以下である上記(1)に記載の乳飲料。
(3)上記(1)または(2)に記載の乳飲料であって、さらに無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量が、無脂乳固形分(SNF)の含有量(重量%)をxとして、乳脂肪分(Fat)の含有量(重量%)をyとした場合に、y=−2x+a(5.0≦x<8.3、0.5≦y≦4.5、11.5≦a≦16.5)で表わされる範囲内に属する低脂肪牛乳風味の乳飲料。
(4)上記(1)または(2)に記載の乳飲料であって、さらに無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量が、無脂乳固形分(SNF)の含有量(重量%)をxとして、乳脂肪分(Fat)の含有量(重量%)をyとした場合に、y=−2x+a(5.0≦x<8.3、0.5≦y≦4.5、13.5≦a≦20.5)で表わされる範囲内に属する成分無調整牛乳風味の乳飲料。
(5)上記(1)または(2)に記載の乳飲料であって、さらに無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量が、無脂乳固形分(SNF)の含有量(重量%)をxとして、乳脂肪分(Fat)の含有量(重量%)をyとした場合に、y=−2x+a(5.0≦x<8.3、0.5≦y≦4.5、15.5≦a≦21.5)で表わされる範囲内に属する特濃牛乳風味の乳飲料。
(6)乳糖分解不良者において乳糖量を調整していない牛乳類よりもカルシウム吸収性が高められた)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の乳飲料。
(7)無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却し、乳糖分解酵素を添加して酵素処理して加熱均質化し、殺菌して酵素を失活して冷却してなる上記(1)〜(6)のいずれかに記載の乳飲料。
(8)次の1)〜3)の工程を含む上記(1)に記載の乳飲料の製造方法、
1)無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却する、
2)上記1)の調整乳に乳糖分解酵素を添加して酵素処理する、
3)上記2)を加熱均質化し、殺菌して酵素を失活する。
本発明によって、乳糖分解不良者が安心して摂取できる牛乳風味を有する乳飲料を提供することが可能となった。本発明の乳飲料は、乳糖分解不良者において牛乳類よりもカルシウム吸収性が高められており、かつ牛乳風味を有していることから、乳糖分解不良者以外の者においても牛乳類と同様に摂取することができる。
本発明の「乳飲料」とは、ラクトースが0.27重量%以上2.30重量%以下および無脂乳固形分(SNF)が5.0重量%以上8.3重量%未満である牛乳風味を有する乳飲料のことをいう。本発明の「乳飲料」は、外観が白色の乳飲料であり、コーヒー乳飲料、イチゴ味乳飲料等は含まれない。
本発明において「牛乳類」とは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日 厚生省令第52号)で規定された牛乳、成分調整牛乳、無脂肪牛乳、低脂肪牛乳、加工乳および乳飲料のことをいう。
本発明の乳飲料は、乳脂肪分(Fat)が0.5重量%以上4.5重量%以下であることが好ましい。本発明の乳飲料は、動物が摂取できるいずれの乳飲料でもよく、ヒト、特に乳糖分解不良者が、おなかがゴロゴロするなどの不快感を訴えることなく容易に摂取できる乳飲料であることが好ましい。
本発明の「乳飲料」において、牛乳風味を有する乳飲料を得るには、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量が図4に示された範囲内に属するように調製することが好ましい。さらに、無脂乳固形分(SNF)の含有量(重量%)をxとして、乳脂肪分(Fat)の含有量(重量%)をyとした場合に、次の式1で表わされる範囲内に属するように調製することが好ましい。
[式1]
y=−2x+a
(5.0≦x<8.3、0.5≦y≦4.5、11.5≦a≦21.5)
本発明の乳飲料において「牛乳風味を有する」とは、乳糖量を低減した乳糖分解乳などの牛乳類よりも甘さが抑えられており、かつ市販の低脂肪牛乳、成分無調整牛乳および特濃牛乳と同等の甘味やコクを有することをいう。
ここで、「同等の甘味やコクを有する」とは、表3に示したように、甘味やコクの官能評価の結果において●が1つ以上とされるものであることが好ましい。表3において、●の数が多い程、市販の低脂肪牛乳、成分無調整牛乳および特濃牛乳と同等の甘味やコクを有し、牛乳風味を有するといえる。
本発明の「乳飲料」において、低脂肪牛乳風味を有する乳飲料を得るには、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量を図5に示された範囲内に属するように調製することが好ましい。さらに、上記の式1に属する範囲内であって、かつ11.5≦a≦16.5の範囲内に属するように調製することが好ましい。
ここで、「低脂肪牛乳風味を有する」とは、市販の低脂肪牛乳(例えば、乳脂肪分(Fat)が1.5重量%、無脂乳固形分(SNF)が8.6重量%のもの)と同等の甘味やコクを有することをいう。
また、本発明の「乳飲料」において、成分無調整牛乳風味を有する乳飲料を得るには、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量を図6に示された範囲内に属するように調製することが好ましい。さらに、上記の式1に属する範囲内であって、かつ13.5≦a≦20.5の範囲内に属するように調製することが好ましい。
ここで、「成分無調整牛乳風味を有する」とは、市販の成分無調整牛乳(例えば、乳脂肪分(Fat)が3.7重量%、無脂乳固形分(SNF)が8.6重量%のもの)と同等の甘味やコクを有することをいう。
さらに、本発明の「乳飲料」において、特濃牛乳風味を有する乳飲料を得るには、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量を図7に示された範囲内に属するように調製することが好ましい。さらに、上記の式1に属する範囲内であって、かつ15.5≦a≦21.5の範囲内に属するように調製することが好ましい。
ここで、「特濃牛乳風味を有する」とは、市販の特濃牛乳(例えば、乳脂肪分(Fat)が4.4重量%、無脂乳固形分(SNF)が8.6重量%のもの)と同等の甘味やコクを有することをいう。
本発明の「乳飲料」には、乳糖分解不良者において乳糖量を調整していない牛乳類よりもカルシウム吸収性が高められた乳飲料も含まれる。
本発明において、「乳糖分解不良者」とは、乳糖不耐症者および潜在的乳糖不耐症者のことをいい、「潜在的乳糖不耐症者」とは、乳糖を含む牛乳類や脱脂乳等の摂取によって不快感をおぼえる等の自覚症状はないが、自ら乳糖を完全に分解吸収できず、腸内細菌によって乳糖が分解されることで不快症状をおぼえない者のことである。
「潜在的乳糖不耐症者」は、腸内細菌が乳糖を分解するときに発する水素により、摂取後の呼気中の水素濃度が100ppm前後と高く、乳糖分解がされていないと判断される。
本発明の「乳飲料」において、「カルシウム吸収性が高められ」とは、本発明の「乳飲料」の摂取により乳糖分解不良者において吸収されるカルシウムが、乳糖が低減されていない牛乳類を飲んだときに吸収されるカルシウムと同等またはそれよりも多いことをいう。
本発明の「乳飲料」は、従来知られているいずれの方法でも調製できるが、例えば、無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却し、乳糖分解酵素を添加して酵素処理して加熱均質化し、殺菌して酵素を失活して冷却して調製することが好ましい。または、乳糖分解粉乳や乳糖除去粉乳等の乳糖を低減した乳原料を使用し、無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却し、加熱均質化し、殺菌・冷却して調整することも可能である。
本発明の「乳飲料の製造方法」として、例えば、1)無脂乳固形分(SNF)含有量を5.0重量%以上8.3重量%未満に調製し、かつ乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却する工程、2)1)の調整乳に乳糖分解酵素を添加して酵素処理し、ラクトース含有量を0.27重量%以上2.30重量%以下する工程、3)2)を加熱均質化し、殺菌して酵素を失活する工程、という1)〜3)の工程を含む製造方法を挙げることができる。
上記2)の工程において、ラクトース含有量を0.27重量%以上2.30重量%以下するためには、乳糖分解酵素による調整乳に含まれる乳糖の分解率を50〜95%とすることが好ましく、特に乳糖分解不良者を対象とする場合には、70〜90%とすることが好ましい。
本発明の「乳飲料の製造方法」に用いる乳糖分解酵素としては、市販されているいずれのものも用いることができるが、例えばGODO−YNL(合同酒精株式会社製)、ラクターゼF「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)、スミラクトL(新日本化学工業株式会社製)、ラクトレスL3(大和化成株式会社製)、ラクターゼY−AO(ヤクルト薬品工業株式会社製)、ラクトザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)等を用いることができる。
さらに、本発明の「乳飲料の製造方法」において、乳糖分解不良者の乳糖不耐の程度によってラクトース量をコントロールする時に、無脂乳固形分(SNF)の含有量を一定量とする場合は、乳糖分解率によって決定されるラクトースの含有量に応じて、乳脂肪分(Fat)の含有量を調製することによって、甘さ及びコクが同等の風味を有する乳飲料を製造することができる。
乳糖分解率が高いほど、ラクトースの含有量が減り、乳糖分解によって生成される単糖由来の甘さが強くなるので、乳脂肪分は低く調整する。具体的には、無脂乳固形分(SNF)が5.0重量%以上8.3重量%未満の範囲で、同じ無脂乳固形分の乳飲料を製造する場合、ラクトースの含有量を0.81重量%以上2.30重量%以下の低分解率(例えば、分解率50〜70%)に調整する場合には、ラクトース含有量が0.27重量%以上0.92重量%以下である高分解率(例えば、分解率80〜90%)に調整する場合の乳脂肪分(Fat)の含有量に対して0.5〜1.5%増やした乳脂肪分(Fat)の含有量に調製すればよい。これにより異なるラクトース含量であっても同じSNFで同等の風味の乳飲料を提供することができる。
以下、実施例において本発明によって調製される乳飲料を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.乳飲料の調製方法
牛乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、バター、クリームを混合し、無脂乳固形分5.0重量%以上8.5重量%以下、乳脂肪分0.5重量%以上4.5重量%以下に調製した20Kgの調整乳を10℃に冷却して乳糖分解酵素(ラクターゼ)を12〜21ml添加し、10℃で24時間酵素反応を行い、乳糖分解率が50〜90%となるようにして、ラクトース含有量を調製した。これを70℃に加温し、ホモゲナイザーで15Mpaの圧力で均質化し、130℃で2秒間殺菌して酵素を失活した後、5℃に冷却することにより本発明の乳飲料15Kgを得た。
本発明で調製した乳飲料のラクトースおよびSNFの含有量を表1に示した。また、乳糖分解率を85%として調製した乳飲料のラクトースおよびSNFの含有量と、比較として乳糖不耐症者用として販売されている市販の乳飲料(市販1〜3)に含まれるラクトース及びSNFの含有量を表2に示した。
なお、本発明の乳飲料に含有されるラクトース量は、以下の式a.において、分解前乳糖量を求めた後、式b.において、当該分解前乳糖量に、乳糖が分解されなかった率をかけることにより求めた。
[式1]
a.分解前乳糖量=SNF×54%(54%:牛乳、脱脂粉乳中の乳糖の割合)
b.乳糖量=分解前乳糖量×(100−分解率)%
[試験例1]
<風味の検討>
実施例1において乳糖分解率を85%として調製したそれぞれの乳飲料(表2)について、官能評価専用パネル10−11人で呈味試験を行った。
呈味試験は、「甘味の強さ」および「コクの有無」の2項目に関してそれぞれ低脂肪牛乳(Fat:1.4%、SNF:8.6%)、成分無調製牛乳(Fat:3.7%、SNF:8.6%)、特濃牛乳(Fat:4.4%、SNF8.6%)をコントロールとしてブラインドで実施した。また、比較として、乳糖不耐症者用として販売されている市販の乳飲料(市販2)を用い、「甘味の強さ」についての呈味試験を行った。
サンプル量は50mL、サンプル温度は8℃で行った。評価は−3〜+3の7段階で点数を付け、コントロールと同程度のものを0とした。
その結果、図1〜3に示したように、本発明の乳飲料が、市販の低脂肪牛乳、成分無調製牛乳または特濃牛乳と同等の甘さおよびコクを有していたことから、本発明の乳飲料が低脂肪風味、成分無調製牛乳風味または特濃風味を有し、かつ牛乳類よりも甘さが抑えられている乳飲料であることが確認された。
この図1〜3に示された3.総合の結果より、−1.0≦x<−0.5、0.5<x≦1.0とされたものは●1つ、−0.5≦x≦0.5とされたものは●2つとして、図1〜3を合わせた●の合計数より、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量と、甘さおよびコクとの関係において、本発明の牛乳風味の乳飲料において好ましいとされる傾向を表3に示した。
また、この結果より、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量を図4に示された範囲内に属するように調製することで牛乳風味の乳飲料が得られ、さらに、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量を図5に示された範囲内に属するように調製することで低脂肪牛乳風味の乳飲料が得られることが示された。また、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量を図6に示された範囲内に属するように調製することで成分無調整牛乳風味の乳飲料が得られることが示された。そして、無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量を図7に示された範囲内に属するように調製することで特濃牛乳風味の乳飲料が得られることが示された。図1〜3の3.総合の結果より、−1.0≦x<−0.5、0.5<x≦1.0とされたものは〇、−0.5≦x≦0.5とされたものは◎としてそれぞれ図5〜7に示した。
図1〜3の3.総合の結果および図5〜7において、無脂乳固形分(SNF)の含有量が多くなるにつれ、乳脂肪分(Fat)の含有量を少なくすることで、甘さ及びコクが同等の風味を有する乳飲料となる傾向があることから、無脂乳固形分(SNF)の含有量と乳脂肪分(Fat)の含有量とを組合せて調製することで、本発明の乳飲料が提供できることが示された。
[試験例2]
<カルシウム吸収性の検討>
1.試験乳の調製
5ヶ月の保存試験を行って安全性を確認した牛乳および実施例1と同様の方法によって調製した乳飲料を用い、カルシウム吸収性を検討した。各乳飲料の組成を表4に示した。
2.試験方法
1)試験対象者の選抜
女子大学生(1年生228名、2年生224名、4年生90名)を対象に乳糖不耐症についての事前アンケートを行い、乳糖不耐症の有無、現在および過去の牛乳・乳製品摂取状況を調べた。
事前アンケートにおける「牛乳を飲むとなんらかのおなかの症状がありますか?」という問に対して、「a.いつもある、b.時々ある、c.全くない」のいずれかを回答させたところ、乳糖不耐症の自覚症状として、表5に記載の結果が得られた。
表5の結果より、c.全くないと回答した1年生、4年生に乳糖負荷試験への参加を求め、4年生35名の参加希望者を対象に乳糖負荷試験を行った。
乳糖負荷試験は、試験対象者に早朝空腹時(8時30分)に乳糖7.5gまたは15.0gを水100mlで摂取させ、摂取前、摂取後30分、60分、90分の4回呼気ガスをサンプリングバッグに採取し、水素濃度を測定することで行った。その結果、2名が乳糖15g摂取後90分で呼気中水素濃度は100ppmに上昇したが、その他の対象者にはこの上昇が見られなかった。ただし、90分にかけてわずかに上昇が見られる対象者もいたことから、乳糖15gを摂取させた後、180分までの呼気を集めるという再試験を行った。
再試験には上記試験に参加した35名中25名が参加し、別途10名の大学院生を加えた35名に対して行った。その結果、100ppmを超える上昇は見られなかったが、180分後に上昇する者が数名存在した。
次に1年生29名を対象に、乳糖15g負荷、180分呼気採取の試験を行ったところ、10名が100ppmに近い水素濃度の上昇を示した。これらの対象者には7.5gの負荷試験も行い、その際の上昇は少ないことを確認した。
以上の結果から、1年生10名、大学院生2名(合計12名)を潜在的乳糖不耐症者として、カルシウム吸収性比較試験を行った。
2)安定同位体44Caを用いたカルシウム吸収比較試験
上記2.1)で選抜した潜在的乳糖不耐症者12名を無作為に4グループに分け、上記1.で調製した乳飲料a.〜d.300mlにそれぞれ44Ca25mgとなるように44Ca溶液10mlを添加し、一晩冷蔵庫内で平衡化させた試験乳a.〜dを表6に記載のスケジュールで摂取させた。
試験の手順(A〜E)
A.試験日は早朝空腹時(8時30分)に、飲料摂取前を採尿後(0時尿)、試験乳a.〜d.をそれぞれ200mlを摂取させた。
B.試験開始後60分に採尿を行い(60分尿)、この採尿後ただちに水200mlを摂取させた。
C.試験開始後120分に採尿を行い(120分尿)、採尿後ただちに水200mlを摂取させた。
D.試験開始後240分に採尿を行い(240分尿)、試験を終了した。
E.0時尿と240分尿をサンプルとして、44Caの専門業者(計測機関:株式会社 三井化学分析センター、計測方法:ISP−MS(誘導プラズマ発光質量分析法)にて44Caの測定を行った。60分尿および120分尿は予備サンプルとして凍結保存した。
12名の対象者のうち、初回は10名、2〜4回目は11名の44Caを測定したが、尿量が不足した者などを除き、8名の結果について二次元配置分散解析により、「試験乳の違いによる、尿中の44Ca/42Ca比の変化の違い」を検討した。統計解析にはSPSS(ver15.0)を使用した。なお、試験中およびウォッシュアウト期間中に有害事象は観察されなかった。
その結果、図8に示したように、試験乳b(乳糖分解率50%)および試験乳c(乳糖分解率75%)では、試験乳aに比べてカルシウムの吸収性が高いことが示された。試験乳a(牛乳:乳糖分解率0%)と試験乳d(乳糖分解率100%)とは差が見られなかったことから、潜在的乳糖不耐症者において、適度な乳糖が存在することによりカルシウムの吸収性が高まることが示された。この結果より、本発明によって調製される乳飲料は乳糖の含有量が低下しているにもかかわらず、カルシウム吸収性が高められていることが確認された。
試験例1および試験例2の結果より、本発明のラクトースを0.27重量%以上2.30重量%以下含有し、かつ無脂乳固形分(SNF)を5.0重量%以上8.3重量%未満含有する乳飲料は、乳糖分解不良者において牛乳類よりもカルシウム吸収性が高められ、かつ乳糖量を低減した乳糖分解乳などの牛乳類よりも甘さが抑えられた乳飲料であることが確認された。
本発明の乳飲料は、乳糖分解不良者が安心して摂取できる牛乳風味を有する乳飲料であり、かつ乳糖分解不良者以外の者においても牛乳類と同様に摂取することができる。従って、本発明の乳飲料は、乳糖分解不良者を含めた広い消費者を対象とする乳製品の製造等の原料として用いることもできる。
低脂肪牛乳をコントロールとし官能評価の結果を示した図である(試験例1)。 成分無調製牛乳をコントロールとし官能評価の結果を示した図である(試験例1)。 特濃牛乳をコントロールとし官能評価の結果を示した図である(試験例1)。 牛乳風味を有する乳飲料における無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量の範囲を示した図である(試験例1)。 低脂肪牛乳風味の乳飲料における無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量の範囲を示した図である(試験例1)。 成分無調製牛乳における無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量の範囲を示した図である(試験例1)。 特濃牛乳における無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量の範囲を示した図である(試験例1)。 本発明の乳飲料のカルシウム吸収性を示した図である(試験例2)。

Claims (8)

  1. ラクトース0.27重量%以上2.30重量%以下および無脂乳固形分(SNF)が5.0重量%以上8.3重量%未満である牛乳風味を有する乳飲料。
  2. 乳脂肪分(Fat)が0.5重量%以上4.5重量%以下である請求項1に記載の乳飲料。
  3. 請求項1または2に記載の乳飲料であって、さらに無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量が、無脂乳固形分(SNF)の含有量(重量%)をxとして、乳脂肪分(Fat)の含有量(重量%)をyとした場合に、y=−2x+a(5.0≦x<8.3、0.5≦y≦4.5、11.5≦a≦16.5)で表わされる範囲内に属する低脂肪牛乳風味の乳飲料。
  4. 請求項1または2に記載の乳飲料であって、さらに無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量が、無脂乳固形分(SNF)の含有量(重量%)をxとして、乳脂肪分(Fat)の含有量(重量%)をyとした場合に、y=−2x+a(5.0≦x<8.3、0.5≦y≦4.5、13.5≦a≦20.5)で表わされる範囲内に属する成分無調整牛乳風味の乳飲料。
  5. 請求項1または2に記載の乳飲料であって、さらに無脂乳固形分(SNF)および乳脂肪分(Fat)の含有量が、無脂乳固形分(SNF)の含有量(重量%)をxとして、乳脂肪分(Fat)の含有量(重量%)をyとした場合に、y=−2x+a(5.0≦x<8.3、0.5≦y≦4.5、15.5≦a≦21.5)で表わされる範囲内に属する特濃牛乳風味の乳飲料。
  6. 乳糖分解不良者において乳糖量を調整していない牛乳類よりもカルシウム吸収性が高められた請求項1〜5のいずれかに記載の乳飲料。
  7. 無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却し、乳糖分解酵素を添加して酵素処理して加熱均質化し、殺菌して酵素を失活して冷却してなる請求項1〜6のいずれかに記載の乳飲料。
  8. 次の1)〜3)の工程を含む請求項1に記載の乳飲料の製造方法、
    1)無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却する、
    2)上記1)の調整乳に乳糖分解酵素を添加して酵素処理する、
    3)上記2)を加熱均質化し、殺菌して酵素を失活する。
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