JP2010074952A - 送電線路の再閉路方式 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】送電線路TLの各端子で検出した電圧信号VLおよび電流信号Iを入力して所定の保護演算を行うことにより送電線路の事故相を遮断する保護演算機能部Proおよび当該事故遮断相に再閉路条件が整ったときに自端子の遮断器に再閉路指令を出力する再閉路機能部Recを備えた保護リレーRYにより高速再閉路を行うようにした送電線路の再閉路方式において、自端子で検出された事故遮断後の事故相の線路電圧の値VLが、事故相の開放健全時の線路電圧値Vkで定めた許容範囲(||VL|―|Vk||<k1)に存在するとき、事故相遮断器に投入指令を送出する。
【選択図】図4
Description
以下、図1乃至図3を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
この第1の実施形態は、事故遮断後の事故相の線路電圧値が、隣回線連系条件等が整い、かつ、予め決めてある所定値と近似したときに遮断器へ投入指令を送出するようにした送電線路の再閉路方式である。
図1は計器用変圧器VTLで検出した線路電圧信号VLのみを用いて再閉路の実施可否を判定する再閉路機能付き保護リレーRYを相対向するA端子およびB端子にそれぞれ設置した電力系統図であり、図2は再閉路機能付き保護リレーRYの一例を示す構成図である。
mVa=jωM(Ib+Ic) ・・・(3)
従って、事故遮断されて欠相中のa相には静電結合電圧sVaと、電磁結合電圧mVaとを合成した電圧sVa+mVaが生じることになる。
なお、Cs、Cm、Mについてはa相、b相、c相に関連して表記すべきであるが図および式が煩雑になることから簡略化した。
Vc=CmE/(Cs+2Cm) ・・・(4)
但し、E:系統の定格相電圧
また、電磁結合電圧mVaは、前記式(3)で示したように、欠相状態の相に誘導電圧が誘起される。
Ic=jωCm・L(Vb+Vc) ・・・(5)
但し、L:線路長
なお、事故遮断により欠相状態となったa相送電線路が健全状態のときに、遮断器CB−Aを開放させて健全相のb相およびc相送電線路に設置されている計器用変流器CT−Aから導入された電流Iと計器用変圧器VTL−Aから導入された電圧VLとを用いて前記式(4)により予め求めておいた(計算しておいた)電圧値Vkとして、再閉路機能付き保護リレーRY−Aの記憶手段に保存しておく。なお、この予め計算しておいた電圧値Vkは、誘導電圧値(sVa+mVa)に相当する。
図4は再閉路機能付き保護リレーRYの再閉路機能Recの一例を示す構成図であり、この例の誘導電圧検出部Rec-1は誘導された線路電圧VLを絶対値比較で検出する例を示す。
電圧条件検出部Rec−1の一例として、VLの大きさがVkの大きさに対して再閉路許容定数k1で定めた0.9Vk〜1.1Vk(Vkの0.9〜1.1)倍の範囲に入ったとき、VLがVkに近似した大きさになったと判定し、遮断器CBへ再閉路指令を送出する。
図5は第1の実施形態による送電線路の高速再閉路方式に関するフローチャートを示す。
ステップ1で送電線に事故が発生して保護リレーで事故遮断(Yes)し、その後、ステップ2で再閉路条件(図4の再閉路条件検出部Rec−2)が不成立(No)の場合、最終遮断とする(ステップ3)。
図7は再閉路機能Recの誘導電圧検出部Rec-1の第2例を示す構成図である。
前述の図4で示した誘導電圧検出部Rec-1の第1例の場合、線路電圧が式(6)のVLが0.9Vk<VL<1.1Vk満たしている場合再閉路指令を出力したが、誘導電圧検出部Rec-1の第2例の場合、以下の式(7)で示すように、計測値VLの絶対値と計算値Vkの絶対値との差分と、計算値Vkの絶対値との比率が一定値k2以内に入っていれば再閉路を実施するようにしたものである。
||VL|―|Vk||/|Vk|<k2 ・・・(7)
以上述べたように本発明の第1の実施形態によれば、健全相から誘導される電圧を予め求めておいて再閉路機能付き保護リレーに所定値Vkとして保存しておき、この保存されている所定値と事故時に測定された誘導電圧VLとを比較することにより、容易に再閉路実施の判断を行うことができる。なお、この方式は送電線の電流を取り込んでいない再閉路専用装置の場合も同様である。
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
(構成)
この第2の実施形態と前記第1の実施形態との違いは、第1の実施形態が誘導電圧を事前に求めておく方式であるのに対して、本実施形態では、事故遮断後に健全相の計器用変流器CT、計器用変圧器VTLから導入する電流と電圧とを用いて事故相のアークイオンが消滅したものとして求めた計算値Vkと事故相の計測値VLとを比較し、両方の値が近似していれば遮断器へ投入指令を送出するようにしたものである。
図8は第2の実施形態による送電線路の高速再閉路方式のフローチャートである。
図8が、図5と異なる点は、ステップ5をステップ5Aに置換えた点にある。すなわち、ステップ4の事故相選択の次に処理するステップ5Aでは、健全相の端子電流および電圧から、事故相の開放健全時の電圧(Vk)を演算する。その他の演算処理については同じなので説明を省略する。
以上述べたように本発明の第2の実施形態によれば、事故遮断後の事故相の線路電圧の値VLが、健全相から誘導される電圧から再閉路機能付き保護リレー内で演算により求めた誘導電圧(Vk)と近似しているかを確認するだけで容易に再閉路実施の判断ができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図9は本実施形態による再閉路機能付き保護リレーRYを設置した電力系統図であり、図10は本実施形態による再閉路機能付き保護リレーRYの一例を示す図である。
本実施形態の再閉路機能付き保護リレーRYは、図9および10で示すように、図1、2で示した再閉路機能付き保護リレーRYの構成に対して、自端子(A端子)に設置した計器用変圧器VTLで検出した線路電圧VL信号を対向する相手端子に送信する送信手段Sと、相手端子から送信されてきた線路電圧VL信号を受信する受信手段Rとを新たに付加するとともに、これら自端子および相手端子の線路電圧信号VLを用いて再閉路の実施可否を判定する手段を再閉路機能Recに付加するように構成されている。CLは、自端子と対向する相手端子間を結ぶ伝送路である。
自端子(A端子)及び対向する相手端子(B端子)でそれぞれ検出した線路電圧VLデータは送信手段Sおよび伝送路CLを使用して相互に再閉路機能付き保護リレーRYへ受け渡しする。
本実施形態による送電線路の高速再閉路方式が、第1の実施形態による高速再閉路方式に関するフローチャート(図5)と異なる点は、自端子でステップ1により事故遮断を判定する前に、自端子から相手端子へ線路電圧の送信する処理ステップAを実施し、次に相手端子からの線路電圧を受信する処理ステップBを実施する点と、処理ステップ5および6に替えて、事前に保護リレーに保存しておいた事故相の開放健全時の電圧データ(VkA、VKB)を用いて、それぞれ線路電圧のVLA,VLBとVkを比較する(ステップ51、6および61)ようにした点である。その他の点は図5と同じである。
第3の実施形態によれば、第1の実施形態に比べて自端子と対向端子で検出した線路電圧VLを相互に受け渡し、自端子と対向端子データの両方を使用することで両端子間の判定レベルを同一レベルに合わせられることから、再閉路実施可否の判定の信頼度を向上させることができる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態に用いられる再閉路機能付き保護リレーRYは、線路電圧を対向端子と送受する手段を持ち、事故遮断後の線路両端の事故相線路電圧の値が、送電線健全相の電流、電圧から演算により事故相が開放健全状態としたときに求めた線路電圧値と近似したときに遮断器へ投入指令を送出するように機能するものである。なお、本実施形態に用いられる再閉路機能付き保護リレーRYの構成は第3の実施形態で用いた図9、10と同様なので説明を省略する。
本実施形態は、自端子及び対向端子で検出した線路電圧VLのデータは伝送路を使用して自端子と対向端子の再閉路機能付き保護リレーRYへ受け渡しする。再閉路機能付き保護リレーRYでは健全回線からの誘導電圧を演算で求め、この演算で求めた値と事故相の線路電圧VLとを比較する。そして、自端子及び対向端子の演算値と線路電圧VLの値がそれぞれ近似していれば遮断器へ投入指令を送出する。
本実施形態が第3の実施形態と違うところは、ステップ51Aで、事故相選択後に用いるのは健全相端子電流・電圧から、事故相の開放健全時の電圧を演算で求める箇所で自端子のVkAと対向端子のVkBを用いる点である。その他は図11のフローチャートと同じなので説明を省略する。
自端子および対向端子で検出したVLのデータを相互に受け渡し、そのデータと送電線健全相の電流、電圧から演算により事故相が開放健全状態としたときに求めた線路電圧値と近似していることの確認を自端子と対向端子データの両方で比較するようにしたので、両端子間の判定レベルを同一レベルに合わせられることができ、再閉路実施可否の判定の信頼度を向上させることができる。
次に本発明の第5の実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態は、第3の実施形態または第4の実施形態における線路側電圧データの送信条件として、特に、再閉路の起動条件で行うようにしたことを特徴とするものである。なお、本実施形態に用いられる再閉路機能付き保護リレーRYの構成は第3の実施形態で用いた図9、10と同様なので説明を省略する。
第3の実施形態または第4の実施形態に比べ異なる点は、第3の実施形態または第4の実施形態の場合、それぞれの端子の線路電圧情報は常時送受しているが、本実施形態では図13のフローチャートで示すように、再閉路を必要とするタイミング(再閉路の起動時)に合わせて送信するように、ステップ2の再閉路条件が成立したか否かを判定するステップ2と、対向端子へ線路電圧値VLA送信ステップAとの間に、再閉路起動のステップCを介在させるようにしたものである。なお、ステップ4以降の処理ステップについては、図12等の既出のフローチャートと同様であるので図示および説明を省略する。
常時、電圧情報を伝送しないことで再閉路機能付き保護リレーRY内の演算負担を軽減することと、伝送量に制限のある伝送路を使用することができる。
次に本発明の第6の実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態は、第1の実施形態乃至第5の実施形態において、事故遮断後の事故相の線路電圧の値が所定値と近似しない場合は、所定時間経過で遮断器へ投入指令を送出するようにしたものである。
図14は第6の実施形態に関するフローチャートを示す。
本実施形態は、ステップ6において、事故遮断後の事故相の線路電圧の値VLが所定値Vkと近似しない場合(No)は、ステップ9で所定時間(Tm;無電圧時間設定値)経過すると、ステップ7をパスしてステップ8で遮断器を投入する。無電圧時間タイマーは遮断器CBの遮断と同時に起動する。この間に線路電圧が所定値と近似の有無を検出し、近似しない場合はタイマーがカウントアップのうえ遮断器へ投入指令を送出する。
線路電圧が所定値と近似しない場合に再閉路できないことを防ぐため、従来から使用されている無電圧時間カウントタイマーによる再閉路方式を併用することでバックアップの効果がある。
次に本発明の第7の実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態は、第1乃至第5実施形態における事故遮断後の事故相の線路電圧と健全相との間に生じる電圧と位相(θ)の値が、予め決めてある所定値と近似したときに遮断器へ投入指令を送出するようにしたものである。
本実施形態が第1乃至第5の実施形態と異なるのは、健全相から事故相に誘導される電圧とその位相は3相交流電圧である。再閉路機能付き保護リレーに予め設定した所定の電圧と位相との関係をデータベース化したものを保存しておく。事故遮断後の事故相の線路電圧の値と位相を予め関連づけた所定値と比較する。比較した結果、近似していれば遮断器へ投入指令を送出する。
ステップ6において、事故相の開放健全時の線路電圧Vkと線路電圧のVLを比較し、以下の式(8)で示すように、予め関連づけた所定の電圧と位相の範囲に入っていれば再閉路を許可し、遮断器を投入する。
0.9Vk<VL<1.1Vk・・・(8)
(VL∧Vk≦θ)
事故相に誘導される電圧とその位相は3相交流電圧であることから容易に判断でき、再閉路実施判定の信頼性をより向上することができる。
次に第8の実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態は、前記した第3の実施形態乃至第5の実施形態、および第7の実施形態において、自端子の装置で再閉路の許可判定をしたら対向端子にも送信して双方の条件が一致した時のみ再閉路を実施するようにしたものである。なお、本実施形態に用いられる再閉路機能付き保護リレーRYの構成、再閉路機能Recの構成は、第1の実施形態で用いた図1、2、4、7あるいは、第3の実施形態で用いた図9、10と同様なので説明を省略する。
第3の実施形態乃至第5の実施形態、および第7の実施形態に比べて異なる点は、自端子の装置で再閉路の許可判定をしたら対向端子に送信し、対向端子でも再閉路許可の可否を判定し、双方の条件が一致した時に再閉路するようにしたものである。
本実施形態では、図11、12のフローチャートで説明したステップ7の後に、対向端子へ投入許可信号を送信するステップ71および対向端子より許可信号を受信するステップ72を設け、ステップ72が不成立の場合、ステップ9の無電圧時間カウント用オンディレータイマーTFを起動するとともに、再閉路条件に対向端子も再閉路許可条件が成立した時のみ、再閉路を許可し遮断器を投入する。
第8の実施形態では、対向端子へ投入許可信号を送信すると共に、対向端子より許可信号を受信することで両端子同時に遮断器を投入することができる。対向端からの投入許可信号を受信できなかった場合、一定時間後に最終遮断とする。両端子とも再閉路許可条件が成立した時のみ再閉路を許可し遮断器を投入するようにしたので、再閉路実施判定の信頼性をより向上することができる。
Claims (10)
- 送電線路の各端子に設置され、計器用変圧器および計器用変流器で検出した電圧信号および電流信号を入力して所定の保護演算を行うことにより送電線路の事故相を遮断する保護演算機能部および当該事故遮断相に再閉路条件が整ったときに自端子の遮断器に再閉路指令を出力する再閉路機能部を備えた保護リレーにより高速再閉路を行うようにした送電線路の再閉路方式において、
前記自端子の線路電圧検出用の計器用変圧器によって検出された事故遮断後の事故相の線路電圧の値が、事故相の開放健全時の線路電圧値で定めた許容範囲内に存在するとき、事故相遮断器に投入指令を送出することを特徴とする送電線路の再閉路方式。 - 送電線路の各端子に設置され、計器用変圧器および計器用変流器で検出した電圧信号および電流信号を入力して所定の保護演算を行うことにより送電線路の事故相を遮断する保護演算機能部および当該事故遮断相に再閉路条件が整ったときに自端子の遮断器に再閉路指令を出力する再閉路機能部を備えた保護リレーにより高速再閉路を行うようにした送電線路の高速再閉路方式において、
前記自端子の線路電圧検出用の計器用変圧器によって検出された事故遮断後の事故相の線路電圧の値が、送電線健全相の電流、電圧から演算により事故相が開放健全状態としたときに求めた線路電圧値で定めた許容範囲内に存在するとき、事故相遮断器に投入指令を送出することを特徴とする送電線路の再閉路方式。 - 線路電圧を対向する相手端子と送受する送信手段および受信手段を備え、事故遮断後の送電線路の両端子の事故相線路電圧が予め決めてある許容範囲内にあるとき、遮断器へ投入指令を送出することを特徴とする請求項1又は2記載の送電線路の再閉路方式。
- 線路電圧を対向する相手端子と送受する送信手段および受信手段を備え、事故遮断後の線路両端子の事故相線路電圧の値が、送電線健全相の電流、電圧から演算により事故相が開放健全状態としたときに求めた線路電圧値と近似したときに遮断器へ投入指令を送出することを特徴とする請求項1又は2記載の送電線路の再閉路方式。
- 線路側電圧データの送信は、再閉路の起動条件で行うことを特徴とした請求項3又は4に記載の送電線路の再閉路方式。
- 事故遮断後の事故相の線路電圧の値が許容範囲に存在しない場合は、所定時間で遮断器へ投入指令を送出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の送電線路の再閉路方式。
- 事故遮断後の事故相の線路電圧と位相の値が予め決めてある所定値と近似したときに遮断器へ投入指令を送出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の送電線路の再閉路方式。
- 自端子の装置で再閉路の許可判定をしたら対向する相手端子にも送信して双方の再閉路許可条件が一致した時のみ再閉路を実施することを特徴とする請求項3、4、5、7のいずれかに記載の送電線路の再閉路方式。
- 前記許容範囲を、
||VL|―|Vk||<k1とし、VLが0.9Vk〜1.1Vkに入っていることを特徴とする請求項1又は2記載の送電線路の再閉路方式。
(ただし、VL;事故相の線路電圧の値、Vk;事故相の送電線路に健全相から誘導された電圧を予め算出しておいた電圧値、k1;送電線路に流れる電流に基づいて予め算出しておいた再閉路許容定数) - 前記許容範囲を、
||VL|―|Vk||/|Vk|<k2とし、VLが0.9Vk〜1.1Vkに入っていること)を特徴とする請求項1又は2記載の送電線路の再閉路方式。
(ただし、VL;事故相の線路電圧の値、Vk;事故相の送電線路に健全相から誘導された電圧を予め算出しておいた電圧値、k2;送電線路に流れる電流に基づいて予め算出しておいた再閉路許容比率)
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