JP2010074182A - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

窒化物半導体発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】p側電極として透明導電層膜材料からなる透光性の電極を用いた窒化物半導体発光素子における光取り出し効率を改善し、発光効率が向上された窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る窒化物半導体発光素子は、第一の主面および第二の主面を有する窒化物半導体の積層体であって、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を、上記p型窒化物半導体層が上記第一の主面側となるように含む積層体と、上記積層体の第一の主面を覆うように形成された透明導電膜材料からなる透光性の電極とを有し、上記透光性の電極の表面には上記発光層で発生される光を散乱または回折する凹凸が形成されることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は窒化物半導体発光素子に関し、特に、p側電極として透明導電膜材料からなる透光性の電極を用いた窒化物半導体発光素子の発光効率を向上させる技術に関する。
窒化物半導体発光素子は、その発光素子構造の主要部分に窒化物半導体を用いた半導体発光素子で、発光領域に用いられる窒化物半導体の組成を選択することによって、可視〜紫外領域の光を発生させることが可能である。特に、可視短波長(青色)〜近紫外波長の光を発生する窒化物半導体発光素子は、照明光源やフルカラー表示装置用の光源に用いられる白色LEDの励起用光源として注目されている。
窒化物半導体は、一般式AlInGa1−a−bN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)で表される化合物半導体であって、例えば、二元系のGaN、AlN、InN、三元系のAlGaN、InGaN、InAlN、四元系のAlInGaNなど、任意の組成のものが例示される。ここで、3族元素の一部を、B(ホウ素)、Tl(タリウム)等で置換したものや、N(窒素)の一部をP(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)等で置換したものも、窒化物半導体に含まれる。
窒化物半導体は、欠陥として含まれる窒素空孔から電子が供給されるために、アンドープでもn型半導体となるが、更に、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Se(セレン)、Te(テルル)、C(炭素)等の元素をドープすることによってn型導電性が向上する。すなわち、これらの元素は窒化物半導体に対してn型不純物として働く。
また、窒化物半導体は、Mg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Be(ベリリウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)等の元素をドープすることにより、p型半導体とすることができる。すなわち、これらの元素は窒化物半導体に対してp型不純物として働く。
窒化物半導体発光素子は、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を基本構成として有するものであり、発光層において、n型窒化物半導体層から注入される電子と、p型窒化物半導体層から注入される正孔とが再結合し、発光を生じる。
窒化物半導体発光素子において、p型およびn型の窒化物半導体層の両方またはいずれかに電流を供給するための電極を、ITO(酸化インジウム錫)、ZnO等の透明導電膜材料からなる透光性の電極とした構成が公知となっている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
図9に、特許文献1に開示された、p側およびn側の電極がITOで形成された窒化物半導体発光素子の断面構造を示す。図9において、101はサファイア基板、102はn型GaN層102Aとその上に積層されたn型AlGaN層102Bとからなるn型窒化物半導体層、103は多重量子井戸(MQW)構造を有するInGaN発光層、104はp型AlGaN層104Aとその上に積層されたp型GaN層104Bとからなるp型窒化物半導体層、105はキャリア濃度が約1.5×1020cm−3、膜厚が約20オングストロームのn型InGaN層、P101はn型窒化物半導体層102に電流を供給するためのn側電極で、ITOからなる透明オーミック電極、P102はp型窒化物半導体層104に電流を供給するためのp側電極で、ITOからなる透明オーミック電極である

特許文献1には、n側電極およびp側電極の材料に、ITO以外の透明導電膜材料として酸化カドミウム錫(CTO)、窒化チタンタングステン(TiWN)を用い得ることが開示されている。
特許文献2には、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造が、サファイア基板上にn型窒化物半導体層側から順に成長された窒化物半導体発光素子において、p型窒化物半導体層の、発光層と接する側の主面とは反対側の主面上に、In、Ga、Al、Ni、W、Si、Ti等からなる低抵抗領域を介してn型窒化物半導体層が形成され、そのn型窒化物半導体層の表面全面に、p側電極としてZnO等からなる透光性の電極を形成することが開示されている。
特許文献3および特許文献4には、サファイア基板上にn型窒化物半導体層、発光層、p型窒化物半導体層がこの順に積層された窒化物半導体発光素子において、p型窒化物半導体層の表面を覆うように、ZnOからなる透光性のp側電極を形成することが開示されている。
特許文献5には、サファイア基板上にn型窒化物半導体層、発光層、p型窒化物半導体層がこの順に積層された窒化物半導体発光素子において、p型窒化物半導体層の表面のほぼ全面と、エッチングにより露出されたn型窒化物半導体層の表面とに、それぞれオーミック性のp側電極、n側電極として、ITOからなる透光性の電極を形成し、更にその表面にAg、AlまたはRhからなる反射層を形成することが開示されている。
上記従来技術によれば、透明導電膜材料からなる透光性の電極は、窒化物半導体材料とのオーミック接触性および光透過性が良好であるために、窒化物半導体発光素子においては、窒化物半導体からなる積層体の表面に全面的に形成するp側電極に適している。
特開2003−60236号公報 特開2004−179369号公報 特開2002−164570号公報 特開2004−266258号公報 特開2004−179347号公報
図9に示す窒化物半導体発光素子では、素子外部の媒質(空気や、チップ封止用の樹脂材料)と比べて大きな屈折率を有するITOからなるp側電極P102が、平坦な表面を有する層状に形成されているために、発光層103からp側電極P102の内部に入射し、その上側表面に達する光のうち、全反射角よりも小さな入射角でこの表面に入射した成分以外は、素子外部に出ることができない。また、素子外部に出射されなかった光は、反射によって窒化物半導体層側に戻された後、屈折率の異なるn型窒化物半導体層102とサファイア基板101との界面で再び反射を受けることになるが、このように、光反射性を有する平坦面が平行に形成された構造が存在すると、全反射の繰り返しによる多重反射が発生して光が素子内部に閉じ込められ、内部での吸収により損失されることになる。
上記特許文献5に開示された、ITOからなるp側電極P102の表面に反射層が形成された素子の場合においても同様に、反射層で反射された光が、n型窒化物半導体層102とサファイア基板101との界面で再び反射を受けるために、多重反射が発生し、損失
が生じる。
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、p側電極として透明導電層膜材料からなる透光性の電極を用いた窒化物半導体発光素子における光取り出し効率を改善し、発光効率が向上された窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項に係る窒化物半導体発光素子は、以下の特徴を有する。
(1)第一の主面および第二の主面を有する窒化物半導体の積層体であって、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を、そのp型窒化物半導体層側が上記第一の主面側となるように含む積層体と、上記積層体の第一の主面を覆うように形成された透明導電膜材料からなる透光性の電極とを有し、上記電極の表面には上記発光層で発生される光を散乱または回折する凹凸が形成された、窒化物半導体発光素子。
(2)上記凹凸は、高低差が、上記発光層で発生される光の上記透明導電膜材料中における波長の4分の1以上である凹部と凸部を含む、上記(1)に記載の窒化物半導体発光素子。
(3)上記凹凸の凸部が上記積層体の第一の主面上に連続的に広がったパターンに形成されるとともに、上記凹凸の凹部には上記積層体の第一の主面が露出された、上記(1)に記載の窒化物半導体発光素子。
(4)上記凹凸の凸部が上記積層体の第一の主面上に連続的に広がったパターンに形成されるとともに、上記発光層が発光に係る領域としてInGa1−xNからなる領域を含み、該InGa1−xNからなる領域で発生される光の波長が紫色〜近紫外領域の波長である、上記(1)に記載の窒化物半導体発光素子。
(5)第一の主面および第二の主面を有する窒化物半導体の積層体であって、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を、そのp型窒化物半導体層側が上記第一の主面側となるように含む積層体と、上記積層体の第一の主面を覆うように形成された透明導電膜材料からなる透光性の電極と、上記電極の表面を覆うように形成された、上記発光層で発生される光を反射する反射面を有する反射層とを有し、上記電極の表面には凹凸が形成され、上記反射面には、上記電極の表面に形成された凹凸に沿って、上記発光層で発生された光を乱反射する凹凸が形成された、窒化物半導体発光素子。
(6)上記反射面に形成された凹凸は、高低差が、上記発光層で発生される光の上記透明導電膜材料中における波長の4分の1以上である凹部と凸部を含む、上記(5)に記載の窒化物半導体発光素子。
(7)上記反射面に形成された凹凸の凸部において、上記積層体の第一の主面と上記反射面とが接している、上記(5)に記載の窒化物半導体発光素子。
(8)上記反射層は、少なくとも上記反射面が、Ag、Al、Rh、Ptから選ばれる少なくともひとつの材料からなる、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
(9)上記反射層が、上記反射面を含み、Ag、Al、Rh、Ptから選ばれる少なくともひとつの材料からなるミラー層と、上記反射層の最外層として形成された、Auからなる表面層と、上記ミラー層と上記表面層との間に形成されたバリア層と、からなる上記(8)に記載の窒化物半導体発光素子。
(10)上記電極がITOまたはZnOからなる、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
(11)上記積層体の第一の主面を形成する窒化物半導体がn型窒化物半導体である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
(12)上記積層体と上記電極との界面に、上記電極との接触抵抗が上記積層体の第一の
主面を形成する窒化物半導体との接触抵抗よりも相対的に小さい金属材料からなる層が、部分的に形成された、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
(13)上記金属材料からなる層が、横方向の電流拡散のために形成された電流拡散層である、上記(12)に記載の窒化物半導体発光素子。
(14)上記電極の表面にワイヤボンディング用のパッド電極が形成され、上記金属材料からなる層が、上記パッド電極の射影部に形成された、上記(12)に記載の窒化物半導体発光素子。
(15)第一の主面および第二の主面を有する窒化物半導体の積層体であって、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を、そのp型窒化物半導体層側が上記第一の主面側となるように含む積層体と、上記積層体の第一の主面を覆うように形成された透明導電膜材料からなる透光性の電極とを有し、上記積層体と上記電極との界面に、上記電極との接触抵抗が上記積層体の第一の主面を形成する窒化物半導体との接触抵抗よりも相対的に小さい金属材料からなる層が、部分的に形成された、窒化物半導体発光素子。
本発明では、pn接合ダイオード構造を基本構成とする発光素子構造が形成された窒化物半導体の積層体の表面に、p側電極として、透明導電膜材料からなる透光性の電極が形成された窒化物半導体発光素子において、この透光性の電極の表面に凹凸を形成することにより次の効果を発生させ、それによって上記目的を達成する。
(イ)素子外部への出射の促進
発光層で発生され、窒化物半導体層から透光性の電極の内部に入射した光は、電極の表面に達したとき、該表面に形成された凹凸によって散乱または回折を受けて、進行方向を大きく変える。あるいは、該表面上に更に反射層が形成される態様では、電極表面に形成される凹凸に沿って該反射層の反射面に形成される凹凸により、乱反射を受けて、進行方向を大きく変える。これによって、光が、素子の光取り出し面に対して、全反射角よりも小さな、素子外部に出射し得る入射角で入射する確率が高くなる。
(ロ)素子内部での多重反射の抑制
透光性電極の表面で反射され、窒化物半導体層側に戻される光は、該表面に形成された凹凸による散乱または回折によって、進行方向が不規則的に変化する。透光性電極の表面上に更に反射層が形成される態様では、該反射層の反射面に形成された凹凸による乱反射によって、光の進行方向が不規則的に変化する。これにより、素子内部での多重反射の発生が抑制されるために、内部吸収による損失が低減される。
本発明による窒化物半導体発光素子の構造の一例を示した説明図で、(a)は断面図、(b)は上面図である。ハッチングは、領域を区別する目的で、適宜施している(他の図も同様である)。 本発明による窒化物半導体発光素子において、p側電極の表面に形成される凹凸の構造の代表例を示した説明図である。 本発明による窒化物半導体発光素子において、p側電極の表面に形成される凹凸の好ましいサイズを説明するための説明図である。 本発明による窒化物半導体発光素子において、p側電極の表面に形成される凹凸の、凸部のパターンを例示するための説明図である。 本発明による窒化物半導体発光素子において、p側電極の表面に形成される凹凸の、凸部のパターンを例示するため説明図である。 本発明による窒化物半導体発光素子において、p側電極の表面に形成される凹凸の、凸部のパターンを例示するための説明図である。 本発明による窒化物半導体発光素子において、p側電極の表面に形成される凹凸の形成態様の一例を示した説明図である。 本発明による窒化物半導体発光素子の構造の一例を示した説明図である。 従来の窒化物半導体発光素子の構造を示した説明図である。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体発光素子を説明するための構造図であり、同図(a)は断面図、(b)は平面図である。
図1において、11はサファイア基板、12は膜厚2μmのアンドープGaN層12Aと、その上に形成されたSiドープGaN(電子濃度約5×1018cm−3)からなる膜厚3μmのn型クラッド層12Bとからなるn型窒化物半導体層である。サファイア基板11とアンドープGaN層12Aとの間には、アンドープGaN層12Aの成長温度よりも低温で成長された、膜厚20nmのAlGaN低温バッファ層(図示せず)が介在される。
13は発光層であり、例えば、GaN障壁層とInGaN井戸層を各10層交互に積層してなる多重量子井戸(MQW)層からなる。発光波長は井戸層を構成するInGaNのIn組成を調節することによって行われる。
14は、MgドープAlGaNからなる膜厚50nmの第一p型クラッド層14Aと、その上に形成されたMgドープGaN(Mg濃度約1×1020cm−3)からなる膜厚150nmの第二p型クラッド層14Bとからなるp型窒化物半導体層である。
15は、SiドープGaN(電子濃度約1×1019cm−3)からなる膜厚5nmのn型コンタクト層である。
n型コンタクト層15の表面側からのエッチングにより、n型クラッド層12Bを露出させることによって形成されたn側電極形成面sの表面には、Ti/Auからなるn側電極P11が設けられる。
また、n型コンタクト層15の上側表面には、該表面を覆うように、ITOからなるp側電極P12が設けられる。p側電極P12の表面には、発光層13で発生される光を散乱または回折する凹凸が形成される。なお、平面図(b)においては、この凹凸の図示を省略している。
p側電極P12の表面の一部には、Ti/Auからなるワイヤボンディング用のパッド電極P13が形成される。
この素子の主な光取り出し面は、ITOからなるp側電極P12の表面である。
p側電極P12の表面に設けられる凹凸の形状は、発光層13で発生される光を散乱または回折し得るものであればよく、例えば、図2(a)に示すように平行なストライプ状の溝と尾根が交互に並んだ形状、図2(b)に示すように平坦な面上にドット状の窪みが分散形成された形状、図2(c)に示すように平坦な面上にドット状の突起が分散形成された形状、これらの形状が組み合わされた形状などが挙げられる。
ここで、図2(a)の形状においては、溝の部分が凹部、尾根の部分が凸部であり、図2(b)の形状においては、窪みの部分が凹部、平坦面の部分が凸部であり、図2(c)の形状においては、平坦面の部分が凹部、突起の部分が凸部である。
上記例示した形状において、ストライプ状の溝や尾根の断面形状や、ドット状の窪みや突起の平面形状等は、図示されたものに限定されず、また、凹凸の高低差や凹部と凸部の間隔等が一定であったり、周期性を持つことも必須ではない。
p側電極P12の表面に形成される凹凸は、凹部および/または凸部が不規則形状を有してもよいし、その分布がランダムであってもよい。
次に、図2(a)に示す凹凸形状の場合を例に、p側電極P12の表面に形成する凹凸の好ましいサイズを説明する。
図3は、図2(a)に示す凹凸形状の、ストライプ状の溝および尾根に直交する方向の断面図で、Aは凹部、Bは凸部、Hは凹部と凸部の高低差、Lは隣合う凹部の中心部間の間隔である。
発光層13で発生される光が、この凹凸によって効果的に散乱または回折されるようにするには、凹部Aと凸部Bの高低差Hを、発光層13で発生される光のITO中での波長の4分の1以上とし、かつ、このような凹部Aと凸部Bが、隣合う凹部Aの中心部間の間隔Lが、発光層13で発生される光の波長の4分の1以上、50μm以下となるように、交互に並んだ形状とすることが好ましい。
発光層13で発生される光のITO中での波長の4分の1とは、例えば、発光波長が400nmの発光素子であれば、発光層13で発生される光の大気中での波長が400nmということであるから、ITO中での波長は、これをITOの屈折率である約2で除した約200nmとなり、その4分の1は約50nmとなる。
凹凸の高低差Hや隣合う凹部間の間隔Lを、発光層13で発生される光のITO中での波長の4分の1よりも大きくすることが好ましい理由は、HやLがこの長さよりも小さくなると、凹凸と光波との相互作用が弱くなり、散乱や回折が生じ難くなるからである。凹凸と光波の相互作用がより大きくなるようにするには、HやLを、発光層13で発生される光のITO中での波長の2分の1以上とすることがより好ましく、当該波長と同程度以上とすることが更に好ましい。
隣合う凹部間の間隔Lを50μm以下とすることが好ましい理由は、Lがこれより大きくなると、300μm〜400μm角の通常サイズの発光素子チップでは、p側電極P12の表面に形成される凹部と凸部の数が少なくなり、光の散乱や回折の効果が十分に得られなくなるからである。従って、この間隔は、より好ましくは30μm以下であり、特に好ましくは15μm以下である。
p側電極P12の内部における横方向(p側電極P12の厚さ方向と直交する方向)の電流拡散性を確保するために、p側電極P12は、凹部における厚さが50nm以上、より好ましくは100nm以上となるように形成することが好ましい。
ただし、p側電極P12の表面に形成する凹凸の凸部を、発光素子の平面図である図4〜図6に例示するように、網目状(図4)、梯子状(図5)、櫛状(図6)等、n型コンタクト層の表面に連続的に広がったパターンにする場合には、電流がこの凸部を主な経路として電極全体に拡散されるため、凹部を上記厚さより薄く形成してもよい。図4〜図6において、斜線で示した領域が凸部である。この態様においては、電流の主な経路となる凸部の厚さが電流拡散性にとって重要であり、好ましい凸部の厚さは80nm以上、より好ましくは100nm以上である。凹部の厚さに限定はなく、例えば、図7に断面の拡大図を示すように、凹部の厚さがゼロ、すなわち、p側電極P12の凹部にn型コンタクト層15の表面が露出されるようにしてもよい。
p側電極P12の凸部を、上記のように、n型コンタクト層の表面に連続的に広がったパターンに形成した場合、電流が該凸部を主な経路として拡散されるために、発光素子内を上下方向(窒化物半導体の積層方向)に流れる電流も、該凸部の下方の領域に集中することになり、発光層13を流れる電流の密度も、該領域にて高くなる。
ここで、発光層13に含まれるInGaNのIn組成比が大きい、発光波長が緑色〜青色の波長である窒化物半導体発光素子では、発光層13の電流密度を増加させたとき、比較的低い電流密度において電気−光変換効率の低下が起こり、出力が飽和する傾向があるが、In組成比の小さいInGaNを用いた、発光波長が紫色(420nm前後)〜近紫外領域の発光素子では、電流密度の増加に伴う発光層の電気−光変換効率の低下が起こり難い。そのため、発光波長が紫色〜近紫外の窒化物半導体発光素子に、上記連続的に広がったパターンに形成された凸部を有するp側電極P12を適用すると、凸部の下方への電流集中が発光層13の電気−光変換効率に与える影響は小さく、それよりも、凹凸による
散乱や回折の効果と、それに加えて、p側電極P12の凹凸の凹部でITOの膜厚が相対的に薄いために光透過性が高くなることによる、光取り出し効率の向上の効果の方が優勢となり、発光効率が向上する。
第1の実施形態に係る窒化物半導体発光素子においては、n型コンタクト層15とp側電極P12との界面に、金属材料からなる電流拡散層を部分的に形成し、横方向の電流拡散の働きの一部をこの電流拡散層に負担させることによって、p側電極P12の膜厚を薄くすることができる。ITOは可視〜近紫外の透過率が高い材料ではあるが、間接遷移により波長450nm以下の光を吸収するので、p側電極P12の膜厚を薄くすることにより、光取り出し効率を向上させることができる。ITO以外の透明導電膜材料を用いた場合についても、同様のことがいえる。
この電流拡散層は、ITOとの接触抵抗がn型窒化物半導体との接触抵抗よりも相対的に小さい金属材料(例えば、ITOとは良好なオーミック性の接触を形成するが、n型窒化物半導体とは良好なオーミック性の接触を形成しない金属材料)で形成する。このように材料を選択すると、電流拡散層から窒化物半導体層に直接電流が供給されることがなくなり、電流拡散層を通して運ばれた電流も、ITOを介して窒化物半導体層に供給されることになる。
ITOは殆どの金属材料とオーミック性の接触を形成するので、この材料選択は、p側電極形成用のコンタクト層の導電型に応じて行えばよく、n型コンタクト層15の上に形成する電流拡散層には、Ag、Rh、Pt等を用いることが好ましく、p側電極用のコンタクト層をp型窒化物半導体で形成する場合には、Al等を用いることが好ましい。
電流拡散層から窒化物半導体層に直接電流が供給されないことにより、電流拡散層の下方の領域では発光層13に電流が殆ど供給されず、該領域での発光が抑制されるが、この領域で発生する光は、電流拡散層が影になるために素子外部に取り出され難く、その多くが損失となるので、この発光の抑制は好ましい効果を与える。同じ理由から、この電流拡散層は、p側電極の表面に形成されるワイヤボンディング用のパッド電極P13の射影部にも形成することが好ましい。
発光層で発生される光の一部が、この電流拡散層に達する場合があるので、電流拡散層をAl、Ag、Rh、Ptのような反射率の高い金属からなる反射性の層とすると、電流拡散層の吸収による損失が低くなり、好ましい。ただし、p側電極の電流拡散の補助という、この電流拡散層の主目的にとって、反射性の層とすることは必須ではない。
この電流拡散層の平面形状は、p側電極P12の電流拡散を助ける形状であればよく、特に限定されないが、線状の部分を含む形状が好ましい。例えば、幅数μmの細いストライプ状の電流拡散層が、パッド電極P13の射影部、またはその近傍を起点として、n型コンタクト層15の表面に放射状に広がるパターンが挙げられる。ここで、電流拡散層は電流拡散の補助が目的であるので、n型コンタクト層15の表面全体に連続的に形成する必要はない。その他、線状部分が網目状、櫛状、樹枝状等をなすように、n型コンタクト層15上に広がったパターンなども例示される。
このような電流拡散層は、本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体発光素子において有用であるだけでなく、ITO等の透明導電膜材料からなるp側電極が、表面平坦な層状に形成された、従来技術の窒化物半導体発光素子に適用した場合にも、好ましい効果を奏する。特に、従来の窒化物半導体発光素子では、p側電極が平坦であるために多重反射が生じ易いので、電流拡散層を利用してp側電極を薄く形成し、その光透過率を高くすることは、光取り出し効率の向上に顕著な効果がある。
次に、図1の窒化物半導体発光素子の作製方法を説明する。
まず、サファイア基板11上に、有機金属化合物気相成長(MOVPE)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法、分子ビームエピタキシー(MBE)法等の気相成長法を用いて、AlGaN低温バッファ層、アンドープGaN層12A、n型クラッド層12B、発光層13、第一p型クラッド層14A、第二p型クラッド層14B、n型コンタクト層
15を、順次、所定の厚さに成長する。
ここで、基板はサファイア基板に限定されるものではなく、SiC基板、GaN基板、AlN基板、Si基板、スピネル基板、ZnO基板、GaAs基板、NGO基板等、窒化物半導体結晶のエピタキシャル成長に使用可能な基板を適宜用いることができる。
なお、図1に示す発光素子では、第二p型クラッド層14Bとn型コンタクト層15とは、界面で全面的に接触しているが、上記特許文献2を参考にして、この二層間に低抵抗領域を介在させて、実質的にショートさせることによって、界面での整流性の発生を抑制することもできる。n型コンタクト層15の膜厚をより厚くする場合には、このような低抵抗領域を設けることが効果的であると考えられる。
次に、リアクティブイオンエッチング(RIE)等のドライエッチング法を用いて、n型コンタクト層15の表面から、n型クラッド層12Bに達する深さのエッチングを行い、発光層13、第一p型クラッド層14A、第二p型クラッド層14B、n型コンタクト層15の一部を除去し、n側電極形成面sをn型クラッド層12Bに形成する。
なお、基板としてSiC基板、GaN基板、Si基板、ZnO基板、GaAs基板等の導電性基板(半導体基板)を用いる場合は、n側電極を基板の裏面(窒化物半導体層が形成されていない側の面)に形成することができ、その場合には、n側電極形成面sを形成する工程は省略できる。
次に、n型コンタクト層15の表面に、ITOからなるp側電極P12を、CVD法(熱CVD、プラズマCVD、MOCVD、光CVD)、スプレー法、スパッタリング法、真空蒸着法、クラスタービーム蒸着法、パルスレーザ蒸着法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、レーザアブレーション法、その他、公知のITO薄膜の製膜法を適宜用いて形成する。
ここで、p側電極P12には、ITOに代えて、ZnO、CTO、TiWN等の透明導電膜材料を用いることもできる。
ITO、ZnO等の透明導電膜の製膜は、真空蒸着法やスパッタリング法のような物理的手法であれば150℃〜300℃、CVDやスプレー法のような化学的手法でも350℃〜500℃という、窒化物半導体の結晶成長と比べると、かなり低い基板温度で行うことができる。従って、比較的厚い透明導電膜が、発光層13に大きな熱ダメージを与えることなくn型コンタクト層15の表面に製膜できるため、p側電極P12の表面に高低差の大きな凹凸を形成するうえで好都合である。
次に、エッチング、研磨等の方法を用いて、p側電極P12の表面に凹凸を加工形成する。
エッチング法としては、p側電極P12の表面に粒子を堆積させ、その粒子をランダムエッチングマスクとして利用することにより、不規則なエッチングパターンを形成するランダムエッチングや、p側電極P12の表面に形成したフォトレジスト膜にフォトリソグラフィ技法を用いて開口部を形成し、このフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングあるいはウェットエッチングにより該開口部に凹部を形成する方法が挙げられる。
フォトレジスト膜を用いる場合、ITOとのエッチング速度の差が比較的小さいフォトレジストを用いたり、開口部をパターニングした後のフォトレジスト膜に加熱処理を行うなどして、フォトレジスト膜の断面形状に丸みを持たせると、エッチングにより形成されるITO膜表面の凹凸を、丸みを帯びた形状とすることができる。このようにすると、p側電極P12の表面において、発光層13の側から入射する光の全反射が生じ難くなり、光取り出し効率を向上させるうえで好ましい。
透明導電膜材料は、アモルファス状に堆積させた後、レーザ光を照射して結晶化させることができるが、その際に、レーザ光を特定の領域に選択的に照射し、該領域のみを結晶
化させると、照射しなかった部分を選択的にエッチングすることができる。このような方法により、透明導電膜の表面に凹凸形状をパターニングすることもできる。この方法の詳細については、特開2000−31463号公報を参照することができる。
前述のように、p側電極P12の凸部を、n型コンタクト層15の表面に連続的に広がったパターンに形成する場合には、凹部にn型コンタクト層15を露出させることもできる。この態様では、平坦膜を形成した後にエッチング加工で凹部を形成する代りに、最初から凸部を選択的に形成することによって、凹凸を作製することもできる。この方法では、n型コンタクト層15の表面に、開口部を凸部のパターンに形成したフォトレジスト膜を形成し、その上にITO膜を製膜した後、リフトオフによってフォトレジスト膜上に形成されたITO膜を取り除き、フォトレジスト膜の開口部上に形成されたITO膜のみをn型コンタクト層15上に残す。
次に、Ti/Auからなるn側電極P12およびパッド電極P13を、真空蒸着、スパッタリング等により形成する。これらは同時に形成することができる。なお、n側電極P12とパッド電極P13とは、必ずしも同じ材料とする必要はない。n側電極P12とパッド電極P13には、純Al、Ti/Al等、n型窒化物半導体層やITOやとオーミック接触する公知の電極を適宜用いることができる。n側電極P11をITOで形成することもでき、その場合にはn側電極P11に対して、更にボンディング用のパッド電極を形成することが望ましい。この場合、パッド電極P13と同じ材料を用いることができる。
上記説明した製造方法において、工程の順序を変更することは妨げられず、例えば、n型コンタクト層15の形成後、RIEによってn型クラッド層12Bにn側電極形成面sを形成する前に、n型コンタクト層15の表面にp側電極P12を形成し、その表面に凹凸を加工した後に、RIEによるn側電極形成面sの形成を行うこともできる。
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態を説明するための素子構造断面図である。
図8において、サファイア基板21と、その上に形成された窒化物半導体層22〜25からなる積層体、n側電極P21、p側電極P22の構成は、図1に示した、第1の実施形態に係る窒化物半導体発光素子と同じである。
第2の実施形態に係る窒化物半導体発光素子は、n型コンタクト層25の表面を覆うように、反射層Rが形成されることを特徴とし、この反射層Rは、発光層23で発生された光をサファイア基板21の方向に反射する。従って、図8の窒化物半導体発光素子における主な光取り出し面は、サファイア基板21の裏面となる。
反射層Rにおいて、発光層23で発生される光に対する反射面は、p側電極P22の表面と接する面であるが、この反射面には、p側電極P22の表面に形成される凹凸に沿った凹凸が形成される。そのため、この反射面に入射された光は乱反射を受ける。乱反射された光は、その進行方向が不規則的に変わるために、素子内部での多重反射が抑制され、その結果、素子の自己吸収による損失が減少して、発光効率が向上することになる。
反射層Rの材料には、任意の金属材料を用いることができる。金属材料で反射層Rを形成する場合、厚さを20nm以上とすれば反射性とすることができる。十分な反射性を得るためには、40nm以上とすることがより好ましい。
反射層Rには、金属材料の中でも、可視〜近紫外領域における反射率の高さから、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Rh(ロジウム)、Pt(白金)を用いることが、特に好ましい。
金属材料で反射層Rを形成する方法については、従来公知の技術を参照することができ、蒸着、スパッタリング、CVD等の気相法や、メッキ法が例示される。
Agは可視〜近紫外波長において反射率が最も高い金属材料であることから、反射層Rの材料として好適である。また、Agの光反射性を更に向上させたり、耐候性を改善するために、各種の元素が添加されたAg合金が開発されているが、そのようなAg合金も好適に用いることができる。
Alは可視〜近紫外波長においてAgに次いで高い反射率を有し、表面に形成される酸化膜のために化学的にも安定であることから、反射層Rの材料として好適である。ただし、Alの熱膨張係数は約23×10−6−1であり、ITOの熱膨張係数8.5×10−6−1〜10.2×10−6−1との差が大きいために、ITOの表面にAl単体からなる膜を形成すると、素子表面に保護膜を形成する工程や実装工程において、加熱・冷却のサイクルに曝されたときに、界面で発生するストレスによってAl膜の変形が生じる場合がある。この問題を抑制するためには、Alの耐熱性を高める効果を有するTi(チタン)、Si(ケイ素)、Nd(ネオジム)、Cu(銅)等の元素が添加されたAl合金を使用することが好ましい。
反射層Rは、p側電極P22の表面と接する部分、すなわち、反射面を構成する部分を、反射率の高いAg、Al、Rh、Ptから選ばれる金属材料からなるミラー層とし、その上に、Au(金)からなる表面層を積層した多層膜構造としてもよい。Auからなる表面層は、ミラー層を化学的に保護する働きをする他、発光素子をフリップチップ実装する場合等に、接合材料として用いられるAuやAu−Sn共晶等との濡れ性が良好であるために、接合の強度を向上させる効果を有する。
また、Ag、Al、Rh、Ptからなるミラー層の上に、直接、Auからなる表面層を積層すると、素子表面に保護膜を形成する工程や実装工程において、300℃程度以上の高温に加熱された場合に、Au原子がミラー層に熱拡散して合金化が起こり、ミラー層の反射率が低下することがある。
これを防ぐために、ミラー層と表面層との間には、バリア層を介在させることが好ましい。
バリア層には、ミラー層の材料および、表面層の材料であるAuよりも、高融点の金属材料をが用いる。従って、ミラー層の材料に応じて、Ti(チタン)、W(タングステン)、Pd(パラジウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Pt(白金)、Rh、Ir(イリジウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Ni(ニッケル)等の単体または合金を用いることができる。バリア層は、これらの金属からなる単層膜または多層膜とすることができ、また、これらの金属からなる膜とAu膜とを交互に積層した多層膜としてもよい。例えば、ミラー層をAlで形成する場合に、Pt膜とAu膜とを交互に積層した多層膜は、バリア層の好ましい態様のひとつである。
Auからなる表面層の好ましい厚さは50nm〜2000nm、バリア層の好ましい厚さは10nm〜300nmである。
ミラー層、バリア層、Auからなる表面層を積層した反射層Rにおいて、ミラー層をAlで形成した場合、Alからなるミラー層の厚さが100nmよりも大きいと、加熱と冷却のサイクルに曝されたときに、AlとITOとの熱膨張係数差に起因して界面で発生するストレスによって、反射層Rの表面に著しい変形が発生するのに対し、このミラー層の厚さを70nm以下とすると、この変形が効果的に抑制される。従って、この構造の反射層Rにおいて、ミラー層にAlを用いる場合には、その厚さを70nm以下とすることが好ましい。
この第2の実施形態において、反射層Rの反射面に形成される凹凸の好ましい形状やサイズは、前記第1の実施形態においてp側電極の表面に形成する凹凸の好ましい形状やサイズと同じである。従って、この第2の実施形態において、p側電極P22の表面に形成
される凹凸の好ましい形状やサイズは、第1の実施形態の場合と同じである。
この第2の実施形態において、反射層Rのp側電極P22と接する部分を、ITOとオーミック接触する材料で形成すると、反射層Rに、p側電極P22に対するボンディング用の電極を兼用させることができる。
反射層Rのp側電極P22と接する部分が、ITOとオーミック接触しない金属材料からなる場合には、反射層Rとp側電極P22との界面に、部分的に、ITOとオーミック接触する金属からなる層を介在させることによって、やはり、反射層Rをp側電極P22へのボンディング用の電極として用いることができる。このような金属層としては、例えば、Ti層が挙げられる。また、他の方法として、反射層Rとは別に、p側電極P22へのボンディング用の電極として、Ti/Al電極やTi/Au電極を、p側電極P22に直接形成することもできる。
ところで、反射層Rのp側電極P22と接する部分を、ITOとオーミック接触する金属材料で形成する場合のように、反射層Rとp側電極P22との間で、広い領域にわたってオーミック接触が形成される態様では、反射層Rとp側電極P22とが一体となってひとつの電極を構成しているものとみなすことができるが、このような態様では、金属材料からなる導電性の高い反射層Rが電流拡散機能を有するため、ITOからなる部分の膜厚を薄く形成することができる。また、p側電極P22の表面に形成する凹凸を、凹部における厚さがゼロ、かつ、凸部を、互いに孤立したドット状凸部やストライプ状凸部の集まりからなるパターンに形成することもできるが、この場合は、電流拡散機能は実質的に反射層Rが担い、ITOからなる部分P22は、n型コンタクト層25とのオーミック性を確保する機能を担うことになる。
[実施例1]
実施例1として図1に示す構造の発光素子を作製した。
直径2インチ、厚さ約300μmのC面サファイア基板11をMOVPE装置の成長炉内に設けられたサセプタに装着し、水素雰囲気下で基板温度を1100℃まで上昇させて、表面のサーマルクリーニングを行った。
次に、基板温度を330℃まで下げ、3族原料としてトリメチルガリウム(TMG)およびトリメチルアルミニウム(TMA)、5族原料としてアンモニアを用いて、AlGaN低温バッファ層を20nm成長させた。なお、この工程以降、有機金属原料のキャリアガスには水素ガスを用いた。
次に、基板温度を1000℃に上げ、原料としてTMG、アンモニアを供給し、アンドープGaN層12Aを2μm成長させた後、更にシランを供給し、SiドープGaNからなるn型クラッド層12Bを3μm成長させた。
次に、基板温度を800℃に低下させて、GaN障壁層と、InGaN井戸層(発光波長405nm)を各10層交互に積層してなるMQW構造の発光層13を形成した。井戸層成長時のIn原料にはトリメチルインジウムを用いた。
次に、基板温度を1000℃に上げ、Mg原料のビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム(EtCpMg)と、TMG、TMA、アンモニアを供給し、MgドープAlGaNからなる第一p型クラッド層14Aを50nm成長させた。
次に、TMAの供給を停止して、MgドープGaNからなる第二p型クラッド層14Bを150nm成長させた。
次に、EtCpMgの供給を停止し、シランを供給して、SiドープGaNからなるn型コンタクト層15を5nm成長させた。
このようにして発光波長405nmの近紫外LED構造が形成されたウエハを得た。
次に、上記ウエハに対して、n型コンタクト層15の側から、n型クラッド層12Bに
達する深さのドライエッチングを行い、n型コンタクト層15、第二p型クラッド層14B、第一p型クラッド層14A、発光層13の一部を除去することにより、n側電極P11を形成するためのn側電極形成面sを形成した。
次に、素子分離後のLEDチップにおいてn型コンタクト層15の表面となる領域のほぼ全面に、スパッタリング法によって厚さ250nmのITO膜からなるp側電極P12を形成した。
次に、ウエハの表面にフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜の、p側電極P12の表面上を覆う部分に、フォトリソグラフィ技法を用いて複数の開口部を設けた。開口部のパターンは、一辺6μmの正方形状の開口部を、縦横とも間隔2μmで正方行列状に規則的に配列させたパターンとした。フォトレジスト膜の開口部に露出したITOにドライエッチングを行い、その後、フォトレジスト膜を除去することにより、p側電極P12の表面に高低差200nmの凹凸を形成した。
次に、n側電極形成面sおよび、p側電極P12の表面の一部に、電子ビーム蒸着法により、膜厚30nmのTi層、膜厚300nmのAu層をこの順に積層した、n側電極P11およびパッド電極P13をそれぞれ形成した。
最後に、サファイア基板11の裏面を厚さ90μmとなるまで研磨し、通常のスクライビングおよびブレーキングによって素子分離を行い、350mm角のLEDチップを得た。
上記手順で作製したLEDチップをステム台にダイボンドした後、ワイヤボンディングにより通電可能な状態とし、素子特性を評価したところ、p側電極P12を厚さ100nmの平坦なITO膜としたことを除いて同様に作製した従来構造のLEDと比べ、順方向電圧(20mA通電時)はほぼ同じであったが、出力が約1.3倍に増加した。
[実施例2]
実施例1において、ITOからなるp側電極の表面にパッド電極を形成する代わりに、p側電極の上側表面のほぼ全面に、厚さ50nmのAl膜、厚さ50nmのPd膜、厚さ200nmのAu膜を順に積層した反射層を形成して、LEDチップを作製した。
得られたLEDチップを、リード電極パターンが形成されたセラミックパッケージ上に、Al電極側が下となるように、Au−Sn半田をボンディング材料に用いてフリップチップボンディングした。
素子特性を評価したところ、p側電極を厚さ100nmの平坦なITO膜としたことを除いて同様に作製した従来構造の素子と比べ、順方向電圧(20mA通電時)はほぼ同じであったが、出力が1.2倍に増加した。
本発明は、上記説明した実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、窒化物半導体からなる積層体の構造は、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を含むものであればよく、従来公知の技術を参照して、上記説明した構造に追加や省略を行ったり、各窒化物半導体層の厚さ、組成、バンドギャップ、不純物の種類、キャリア濃度等に、種々の変形を加えることができる。
透明導電膜材料からなるp側電極を形成する際の下地層とする窒化物半導体層であるコンタクト層は、n型窒化物半導体からなるn型コンタクト層に限定されるものではなく、p型窒化物半導体層からなるp型コンタクト層であってもよい。また、p側電極に用いる透明導電膜材料の導電型は、コンタクト層の特性に合わせたものとすればよく、n型またはp型のいずれかに限定されない。
上記の各実施形態において、窒化物半導体の積層体を気相成長する際に用いられた基板が、最終的な製品である窒化物半導体発光素子に含まれることは必須ではなく、製造の途中の段階で、該基板を該積層体から分離し、あるいは除去し、別途準備した支持基板を該積層体に接合することができる。
窒化物半導体層の成長に用いられた基板を、窒化物半導体層から分離したり、除去したりする方法は公知であり、例えば、特開2004−87775号公報、特開平11−35397号公報、特開2000−277804号公報、特開2003−309289号公報等を参照することができる。
また、Cu−W基板、Cu−Mo基板、AlSiC基板、Si基板、SiC基板、GaAs基板、GaP基板、InP基板等の導電性基板を、別の基板上に成長された窒化物半導体層に対して、In、Au、ハンダ、銀ペースト等により接合し、新たな支持基板とし得ることが、特開2000−277804号公報等に開示されている。
また、p側電極を陰極として電解メッキを行ったり、蒸着、無電解メッキ、CVD、スパッタ等の方法を用いてp側電極の表面上に厚さ10μm以上の金属膜を形成し、この金属膜を新たな支持基板とすることが、特開2004−47704号公報、特開2004−88083号公報等に開示されている。
pn接合ダイオード構造を含む窒化物半導体の積層体に対して、その成長に用いられた基板とは異なる、別途準備された支持基板を接合させる場合、該積層体のいずれの主面に接合させることも可能であり、その方法は公知である。
11 サファイア基板
12 n型窒化物半導体層
13 発光層
14 p型窒化物半導体層
15 n型コンタクト層
P11 n側電極
P12 p側電極

Claims (15)

  1. 第一の主面および第二の主面を有する窒化物半導体の積層体であって、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を、そのp型窒化物半導体層側が上記第一の主面側となるように含む積層体と、
    上記積層体の第一の主面を覆うように形成された透明導電膜材料からなる透光性の電極とを有し、
    上記電極の表面には上記発光層で発生される光を散乱または回折する凹凸が形成された、窒化物半導体発光素子。
  2. 上記凹凸は、高低差が、上記発光層で発生される光の上記透明導電膜材料中における波長の4分の1以上である凹部と凸部を含む、請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
  3. 上記凹凸の凸部が上記積層体の第一の主面上に連続的に広がったパターンに形成されるとともに、上記凹凸の凹部には上記積層体の第一の主面が露出された、請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
  4. 上記凹凸の凸部が上記積層体の第一の主面上に連続的に広がったパターンに形成されるとともに、上記発光層が発光に係る領域としてInGa1−xNからなる領域を含み、該InGa1−xNからなる領域で発生される光の波長が紫色〜近紫外領域の波長である、請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
  5. 第一の主面および第二の主面を有する窒化物半導体の積層体であって、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を、そのp型窒化物半導体層側が上記第一の主面側となるように含む積層体と、
    上記積層体の第一の主面を覆うように形成された透明導電膜材料からなる透光性の電極と、
    上記電極の表面を覆うように形成された、上記発光層で発生される光を反射する反射面を有する反射層とを有し、
    上記電極の表面には凹凸が形成され、
    上記反射面には、上記電極の表面に形成された凹凸に沿って、上記発光層で発生された光を乱反射する凹凸が形成された、窒化物半導体発光素子。
  6. 上記反射面に形成された凹凸は、高低差が、上記発光層で発生される光の上記透明導電膜材料中における波長の4分の1以上である凹部と凸部を含む、請求項5に記載の窒化物半導体発光素子。
  7. 上記反射面に形成された凹凸の凸部において、上記積層体の第一の主面と上記反射面とが接している、請求項5に記載の窒化物半導体発光素子。
  8. 上記反射層は、少なくとも上記反射面が、Ag、Al、Rh、Ptから選ばれる少なくともひとつの材料からなる、請求項5〜7のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
  9. 上記反射層が、上記反射面を含み、Ag、Al、Rh、Ptから選ばれる少なくともひとつの材料からなるミラー層と、上記反射層の最外層として形成された、Auからなる表面層と、上記ミラー層と上記表面層との間に形成されたバリア層と、からなる請求項8に記載の窒化物半導体発光素子。
  10. 上記電極がITOまたはZnOからなる、請求項1〜9のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
  11. 上記積層体の第一の主面を形成する窒化物半導体がn型窒化物半導体である、請求項1〜10のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
  12. 上記積層体と上記電極との界面に、上記電極との接触抵抗が上記積層体の第一の主面を形成する窒化物半導体との接触抵抗よりも相対的に小さい金属材料からなる層が、部分的に形成された、請求項1〜4のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
  13. 上記金属材料からなる層が、横方向の電流拡散のために形成された電流拡散層である、請求項12に記載の窒化物半導体発光素子。
  14. 上記電極の表面にワイヤボンディング用のパッド電極が形成され、上記金属材料からなる層が、上記パッド電極の射影部に形成された、請求項12に記載の窒化物半導体発光素子。
  15. 第一の主面および第二の主面を有する窒化物半導体の積層体であって、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とで発光層を挟んだpn接合ダイオード構造を、そのp型窒化物半導体層側が上記第一の主面側となるように含む積層体と、
    上記積層体の第一の主面を覆うように形成された透明導電膜材料からなる透光性の電極とを有し、
    上記積層体と上記電極との界面に、上記電極との接触抵抗が上記積層体の第一の主面を形成する窒化物半導体との接触抵抗よりも相対的に小さい金属材料からなる層が、部分的に形成された、窒化物半導体発光素子。
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