しかしながら、発明者は、上記暖機期間が終了した後であっても触媒がその排ガス浄化能力を十分に発揮できない場合があることを見出した。以下、この点について述べる。
上述したように、触媒は、排ガス中の未燃物(HC,CO等)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進する。この酸化還元反応においては、担持体に担持された触媒成分(上述の貴金属等)が酸化還元反応の活性点(触媒活性点)となる。適正な効率にて酸化還元反応を進行させるには、触媒活性点における酸素濃度を適切な値に保つことが重要である。そこで、触媒は、CeO2等の酸素吸蔵物質をその担持体に担持している。
酸素吸蔵物質は、空燃比が理論空燃比よりもリーン側である排ガス(以下、「リーン側空燃比ガス」とも称呼する。)が触媒に流入するときに酸素を吸蔵するとともに、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側である排ガス(以下、「リッチ側空燃比ガス」とも称呼する。)が触媒に流入するときに触媒活性点に酸素を放出することにより、触媒活性点における酸素濃度の調節を行うと考えられている。
酸素吸蔵物質のこのような機能は、酸素吸蔵能力(OSC(Oxygen Storage Capacity)、酸素ストレージ能力)と称呼される。酸素吸蔵物質は、その温度が所定の温度以上(以下、「酸素移動可能温度」とも称呼する。)であるとき、酸素をその物質内で容易に移動させることができる。酸素移動可能温度は、例えば400℃程度である。
上述したように、触媒温度が酸素移動可能温度よりも低いとき(例えば、上述の暖機期間)、酸素吸蔵物質はその酸素吸蔵能力を十分に発揮することができない。即ち、触媒温度が酸素移動可能温度よりも低いとき、その触媒が吸蔵することができる酸素量の最大値(以下、「酸素吸蔵可能量」とも称呼する。)は、触媒温度が酸素移動可能温度以上であるときの酸素吸蔵可能量よりも小さい。従って、例えば、このような状態の触媒にリッチ側空燃比ガスが流入した場合、リッチ側空燃比ガス中の未燃物(HC,CO等)の酸化反応に伴って酸素吸蔵物質に吸蔵されていた酸素が消費され、酸素吸蔵物質の吸蔵酸素量がゼロ近傍にまで減少する場合がある(以下、この状態を「還元状態」とも称呼する。)。
この還元状態にある触媒にリッチ側空燃比ガスが更に流入し続けた場合、触媒成分及び酸素吸蔵物質の周囲を未燃物の一つである炭化水素(HC)が被覆する現象が生じる(以下、この現象を「HC被毒」とも称呼する。)。HC被毒が生じた場合、触媒成分が被覆されることによって触媒活性点の数が低下し、酸素吸蔵物質が被覆されることによって酸素吸蔵能力が低下する。これらの被覆が進行し、触媒に重度のHC被毒が生じた場合、触媒はその排ガス浄化性能を十分に発揮できない状態となる(以下、この状態を「半死活状態」とも称呼する。)。
一方、暖機期間が終了した後(即ち、触媒温度がその活性温度以上となった場合)においても、上述のHC被毒によって触媒が半死活状態に至る場合がある。
例えば、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減させること等を目的とし、機関の空燃比は「実質的に理論空燃比であるが、理論空燃比よりも若干リッチ側の空燃比」に制御される場合がある(以下、この制御を「弱リッチ制御」とも称呼する。)。この弱リッチ制御が長時間継続された場合、触媒に流入する排ガスの空燃比の中心(平均)は、理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比になる。従って、暖機期間が終了した後(即ち、触媒温度がその活性温度以上となった後)であっても、弱リッチ制御が長時間継続されると、触媒に流入する過剰な未燃物の酸化反応に伴って酸素吸蔵物質の吸蔵酸素量が減少し、HC被毒が生じる。そして、触媒に重度のHC被毒が生じた場合、上記同様に触媒は半死活状態となる。
触媒が重度のHC被毒によって半死活状態になった場合、暖機期間が終了した後であっても、その触媒は排ガスを十分に浄化することができない。この結果、機関のエミッションが悪化するという問題が生じる。
触媒の「半死活状態」及び「半死活状態に至るまでのHC被毒状態」(以下、これらの状態を便宜的に「HC被毒・半死活状態」とも称呼する。)は、触媒に多量の酸素を供給することによって解消することができる。触媒に多量の酸素を供給する代表的な運転として、機関への燃料供給が停止された運転である「フューエルカット運転」が挙げられる。
しかしながら、一般に、フューエルカット運転は、機関の運転状態が所定の運転状態となったとき(例えば、機関が搭載された車両が減速中であるとき等)に実行される。従って、運転者の意図とは無関係な「触媒の状態のみ」に基づいてフューエルカット運転を行うとドライバビリティが悪化する虞がある。このため、触媒がHC被毒・半死活状態となった場合、フューエルカット運転を任意に実行することによりそのHC被毒・半死活状態を解消することは困難である。
更に、一般に、暖機期間及び暖機期間終了直後においてはフューエルカット運転が実行され難い。この点につき、以下に説明する。
フューエルカット運転の開始条件は、一般に、「スロットルバルブ開度が実質的にゼロであり、且つ、機関回転速度が所定の閾値回転速度以上である場合」である。更に、フューエルカット運転によって機関回転速度が過度に低下しないように、暖機期間及び暖機期間終了直後における閾値回転速度の値は、暖機期間終了後に十分な時間が経過した通常運転時における閾値回転速度よりも大きい値に設定されている。従って、通常運転時に比較し、これらの期間においてはフューエルカット運転が実行され難い。
このように、触媒の暖機期間及び暖機期間終了以降において触媒がHC被毒・半死活状態となった場合、この状態を長期間に亘り解消することができず、その結果、未燃物(HC,CO等)及び窒素酸化物(NOx)の排出量が増大するという問題が生じる。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、食媒がHC被毒によって半死活状態となることを抑制し、もって、機関のエミッションを良好に維持することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
より具体的に述べると、本発明の内燃機関の第1の制御装置は、
排気通路に配設されるとともに排ガスを浄化する触媒を有する内燃機関に適用される。
この制御装置は、
(1)前記触媒の温度が所定の許容温度以上であるか否かを判定する触媒温度判定手段と、
(2) 前記機関に対する加速操作量が所定の閾値操作量以下であるか否か及び前記機関の機関回転速度が所定の第1回転速度以上であるか否かを判定することにより、同加速操作量が同閾値操作量以下であり且つ同機関回転速度が同第1回転速度以上であることからなる「フューエルカット開始条件」が成立するか否かを判定するとともに、同フューエルカット開始条件が成立している期間(即ち、フューエルカット運転実行中)において所定の「フューエルカット復帰条件」が成立するか否かを判定するフューエルカット運転条件判定手段と、
(3)前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット開始条件が成立すると判定された時点から同フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定される時点までの期間、前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行する運転状態制御手段と、
を備える。
更に、この制御装置は、
(4)前記触媒温度判定手段により前記触媒の温度が前記許容温度以上であると判定されているときに前記フューエルカット運転が実行された場合、「有効フューエルカット運転履歴」が存在すると記録するフューエルカット運転履歴記録手段と、
(5)前記触媒温度判定手段により前記触媒の温度が前記許容温度以上であると判定された時点である「第1基準時点」以降に前記機関に吸入された空気の流量を積算することにより得られる「第1積算流量」を求める第1流量積算手段と、
(6)前記第1基準時点以降において、前記フューエルカット運転が実行される毎に「ゼロ」に設定されて前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定された時点である「第2基準時点」以降に前記機関に吸入された空気の流量を積算することにより得られる「第2積算流量」を求める第2流量積算手段と、
を備える。
この制御装置において、
前記運転状態制御手段は、
前記フューエルカット運転条件判定手段により、「前記機関に対する加速操作量が前記閾値操作量以下であり」、且つ、「前記機関の機関回転速度が前記第1回転速度より小さい」と判定されているとき、
(A)前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されていなければ」、
前記第1積算流量が所定の第1許容流量よりも大きく、且つ、前記機関の機関回転速度が「前記第1回転速度よりも小さい第2回転速度」以上である場合に前記触媒に流入する前記排ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比とする「リーン運転」を実行し、
(B)前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されていれば」、
前記第2積算流量が所定の第2許容流量よりも大きく、且つ、前記機関の機関回転速度が前記「第2回転速度」以上である場合に前記「リーン運転」を実行し、
(C)前記フューエルカット運転及び前記リーン運転の何れもが実行されていないとき前記排ガスの空燃比を実質的に理論空燃比に一致させる理論空燃比運転を実行するように構成される。
上記構成によれば、「触媒の温度が所定の許容温度以上である」と判定されているときに「フューエルカット運転」が実行された場合に限り、「有効フューエルカット運転履歴が存在する」と記録される。換言すれば、触媒の温度が所定の許容温度にまで到達していない期間(例えば、上述の暖機期間)においては、仮にフューエルカット運転が実行されたとしても、有効フューエルカット運転履歴が存在するとは記録されない。つまり、「有効フューエルカット運転履歴」は、「暖機期間終了後にフューエルカット運転が実行され、そのフューエルカット運転が実行される時点までに触媒に生じたHC被毒が解消された」ことを示す指標である。
更に、上記構成によれば、有効フューエルカット運転履歴が存在するか否かに基づき、後述する「積算流量」が取得されるとともに、「積算流量の許容量(許容流量)」が設定される。そして、「積算流量」と「許容流量」との関係、及び、「機関回転速度」に基づき、機関の運転態様(以下、「運転モード」とも称呼される。)が制御される。
具体的に述べると、上記フューエルカット開始条件につき、「機関に対する加速操作量が所定の閾値操作量以下」であり、且つ、「機関の機関回転速度が所定の第1回転速度より小さい」と判定されているとき(例えば、機関に対して加速は要求されていないが、フューエルカット運転を実行するには機関回転速度が小さ過ぎるとき)に有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されていない」場合、「第1積算流量」が運転モードの決定のために取得される。
そして、この第1積算流量が所定の許容流量(第1許容流量)よりも大きく、且つ、機関の機関回転速度が「第1回転速度よりも小さい第2回転速度」以上である場合、触媒に流入する排ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比とする「リーン運転」が実行される。
一方、上記フューエルカット開始条件につき、「機関に対する加速操作量が所定の閾値操作量以下」であり、且つ、「機関の機関回転速度が所定の第1回転速度より小さい」と判定されているとき(上記同様、例えば、機関に対して加速は要求されていないが、フューエルカット運転を実行するには機関回転速度が小さ過ぎるとき)に有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されている」場合、「第2積算流量」が運転モードの決定のために取得される。
そして、この第2積算流量が所定の許容流量(第2許容流量)よりも大きく、且つ、機関回転速度が上記「第2回転速度」以上である場合、上記「リーン運転」が実行される。
ここで、上記「第1積算流量」は、機関の始動時にゼロに設定され、「暖機期間が終了した時点(第1基準時点)」以降に機関に吸入される空気の流量が積算されることにより増加する。また、上記「第2積算流量」は、フューエルカット運転が実行される毎にゼロに設定され、「暖機期間の終了後に実行されたフューエルカット運転が停止(復帰)した時点(第2基準時点)」以降に機関に吸入される空気の流量が積算されることにより増加する。
上述したように、「フューエルカット運転」は、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいときに常に実行されるとは限らない。そのため、触媒の暖機期間が終了した後であっても、触媒がHC被毒・半死活状態となる虞がある。そこで、第1の制御装置は、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性の大きさを「第1積算流量」又は「第2積算流量」に基づいて評価する。
「第1積算流量」は、触媒の暖機期間が終了した時点以降に機関に流入する空気の積算流量であり、「暖機期間終了後に触媒に生じるHC被毒の程度」を示す値である。そして、第1の制御装置においては、この第1積算流量が第1許容流量よりも大きくなるとき、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいと判断される。そこで、このとき(即ち、機関に対する加速操作量が閾値操作量以下であり、機関回転速度が第1回転速度より小さく、且つ、第1積算流量が第1許容流量より大きいとき)、機関回転速度が第2回転速度以上であれば、「リーン運転」が実行される。
また、「第2積算流量」は、暖機期間終了後において実行されたフューエルカット運転が停止(復帰)した時点以降に機関に流入する空気の積算流量であり、「フューエルカット運転停止(復帰)後に触媒に生じるHC被毒の程度」を示す値である。そして、第1の制御装置においては、この第2積算流量が第2許容流量より大きくなるときにも、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいと判断される。そこで、このとき(即ち、機関に対する加速操作量が閾値操作量以下であり、機関回転速度が第1回転速度より小さく、且つ、第2積算流量が第2許容流量より大きいとき)にも、機関回転速度が第2回転速度以上であれば、「リーン運転」が実行される。
一方、第1の制御装置において、「フューエルカット運転」及び「リーン運転」の何れもが実行されていないとき、触媒に流入する排ガスの空燃比を実質的に理論空燃比に一致させる「理論空燃比運転」が実行される。
「リーン運転」は、上述したように、触媒に流入する排ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比とする運転である。従って、「リーン運転」が実行されることにより、「理論空燃比運転」が実行されている場合に比べて多量の酸素を含む排ガスが、触媒に流入する。これにより、触媒のHC被毒の程度を低下させることができ、触媒が半死活状態になることを出来る限り防ぐことができる。
このように、第1の制御装置によれば、触媒のHC被毒の度合いが的確に評価されるとともに、触媒のHC被毒の度合いが高くなると判断される場合に「リーン運転」を実行し、触媒に流入する酸素の量を増加する運転を実行することができる。これにより、触媒が半死活状態になることをできる限り防ぐことができる。その結果、触媒の排ガス浄化性能の低下を出来る限り防ぎ、エミッションを良好に維持することができる。
ここで、触媒の温度の「許容温度」は、触媒に含まれる貴金属が排ガスの酸化還元反応を促進する機能を十分に発現するために必要な「貴金属の活性温度」に基づく値である。即ち、「許容温度」は、例えば、貴金属の活性温度そのものであってもよく、貴金属の活性温度から所定温度を減じた温度(その温度よりも低下した場合、触媒の排気浄化率が許容できない程度まで低下する温度)等に設定することができる。或いは、「許容温度」は、上述した「酸素移動可能温度」を考慮して決定されてもよい。
「フューエルカット開始条件」の一つである「加速操作量」は、例えば、「アクセルペダル操作量」又はアクセルペダル操作量に連動する「スロットルバルブ開度」に基づき、決定することができる。また、加速操作量の「閾値操作量」は、フューエルカット運転を実行するにあたり機関への加速要求が発生していないと判断できる値であればよく、例えば、ゼロ或いはゼロ近傍の値に設定することができる。
「第1回転速度」は、機関の排気量、機関の回転速度が過度に低下することのない回転速度、及び、燃費等を考慮した適値とすることができる。また、「第2回転速度」は、第1回転速度よりも小さい値であればよく、第1回転速度と同様、機関の排気量、機関の回転速度が過度に低下することのない回転速度、及び、燃費等を考慮した適値とすることができる。
「フューエルカット復帰条件」は、例えば、「スロットルバルブ開度がゼロ或いはゼロ近傍の値よりも大きい場合、又は、機関回転速度が「第1回転速度よりも所定回転速度ΔNだけ小さい回転速度」よりも小さい場合、のうちの少なくとも一つが成立する場合」と設定することができる。ここで、回転速度ΔNは、上記同様、機関の排気量、機関の回転速度が過度に低下することのない回転速度、及び、燃費等を考慮した適値とすることができる。
「第1許容流量」は、例えば、第1積算流量がこの第1許容流量に達したときにHC被毒によって触媒が期待される排ガス浄化性能を発揮できなくなると判断できる値に設定することができる。また、「第2許容流量」は、例えば、第1許容流量と同様、第2積算流量がこの第2許容流量に達したときにHC被毒によって触媒が期待される排ガス浄化性能を発揮できなくなると判断できる値に設定することができる。
「リーン運転」が実行される場合に設定される空燃比(目標空燃比)は、理論空燃比よりもリーン側の空燃比であればよく、例えば、機関に要求される出力及び燃費、並びに、触媒の排ガス浄化性能等を考慮した適値に設定することができる。また、「理論空燃比運転」が実行される場合に設定される空燃比(目標空燃比)は、厳密な理論空燃比に限られず、理論空燃比よりも若干リッチ側の空燃比(上記弱リッチ制御が実行されるときの目標空燃比に相当。)としてもよい。即ち、触媒は触媒に流入するガスの空燃比が「理論空燃比を含む所定の空燃比幅(図3に示したウインドウW)」内にある場合、触媒は高い効率にて未燃物と窒素酸化物とを浄化することができる。従って、本明細書において、触媒に流入するガスの空燃比がこの空燃比幅(ウインドウW)内に制御される場合、「排ガスの空燃比を実質的に理論空燃比に一致させる理論空燃比運転が実行される。」と表現される。
本発明の内燃機関の第2の制御装置は、排気通路に配設された触媒を有する内燃機関に適用される。
この制御装置は、
(1)前記触媒の温度が所定の許容温度以上であるか否かを判定する触媒温度判定手段と、
(2)前記機関に対する加速操作量が所定の閾値操作量以下であるか否か及び前記機関の機関回転速度が所定の第1回転速度以上であるか否かを判定することにより、同加速操作量が同閾値操作量以下であり且つ同機関回転速度が同第1回転速度以上であることからなる「フューエルカット開始条件」が成立するか否かを判定するとともに、同フューエルカット開始条件が成立した後の期間において所定の「フューエルカット復帰条件」が成立するか否かを判定するフューエルカット運転条件判定手段と、
(3)前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット開始条件が成立すると判定された時点から同フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定される時点までの期間、前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行する運転状態制御手段と、
を備える。
更に、この制御装置は、
(4)前記触媒温度判定手段により前記触媒の温度が前記許容温度以上であると判定されているときに前記フューエルカット運転が実行された場合、「有効フューエルカット運転履歴」が存在すると記録するフューエルカット運転履歴記録手段と、
(5)前記触媒温度判定手段により前記触媒の温度が前記許容温度以上であると判定された時点である「第1基準時点」以降に前記機関に吸入された空気の流量を積算することにより得られる「第1積算流量」を求める第1流量積算手段と、
(6)前記第1基準時点以降において、前記フューエルカット運転が実行される毎に「ゼロ」に設定されて前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定された時点である「第2基準時点」以降に前記機関に吸入された空気の流量を積算することにより得られる「第2積算流量」を求める第2流量積算手段と、
を備える。
この制御装置において、
前記フューエルカット運転条件判定手段は、更に、
「前記機関に対する加速操作量が前記閾値操作量以下であり」、且つ、「前記機関の機関回転速度が前記第1回転速度より小さい」と判定しているとき、
(A)前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されていなければ」、
前記第1積算流量が所定の第1許容流量よりも大きく、且つ、前記機関の機関回転速度が「前記第1回転速度よりも小さい第2回転速度」以上である場合に「前記フューエルカット開始条件が成立する」と判定し、
(B)前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されていれば」、
前記第2積算流量が所定の第2許容流量よりも大きく、且つ、前記機関の機関回転速度が前記「第2回転速度」以上である場合に「前記フューエルカット開始条件が成立する」と判定するように構成される。
上記構成によれば、上述した第1の制御装置と同様、「触媒の温度が所定の許容温度以上である」と判定されているときに「フューエルカット運転」が実行されたときに限り、「有効フューエルカット運転履歴が存在する」と記録される。更に、上記構成によれば、有効フューエルカット運転履歴が存在するか否かに基づき、上述した第1の制御装置と同様の処理により、「第1積算流量」又は「第2積算流量」が取得されるとともに、運転モードを決定する際に使用されるパラメータとして「第1許容流量」又は「第2許容流量」の何れかが設定される。
第2制御装置は、上記フューエルカット開始条件が成立したとき、「フューエルカット運転」を実行する。更に、第2制御装置は、上記フューエルカット開始条件が成立しなくとも、後述する状況においてフューエルカット運転を実行する。
第一に、「第1積算流量」が運転モードの決定のために取得されるとき、フューエルカット開始条件が成立しなくとも(即ち、機関に対する加速操作量が閾値操作量以下であって機関回転速度が第1回転速度よりも「小さい」場合においても)その第1積算流量が第1許容流量よりも大きく且つ機関回転速度が「第1回転速度よりも小さい第2回転速度」以上である場合、「フューエルカット運転」が実行される。
第二に、「第2積算流量」が運転モードの決定のために取得されるとき、フューエルカット開始条件が成立しなくとも(上記参照。)その第2積算流量が第2許容流量よりも大きく、且つ、機関回転速度が前記第2回転速度以上である場合に「フューエルカット運転」が実行される。
第2の制御装置は、第1の制御装置と同様、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性の大きさを「第1積算流量」又は「第2積算流量」に基づいて評価する。そして、この可能性が大きいと判断されるとき、フューエルカット開始条件が成立しなくとも(上記参照。)、機関回転速度が第2回転速度以上であれば「フューエルカット運転」が実行される。
上述したように、「フューエルカット開始条件」には、機関回転速度が所定の閾値(第1回転速度)「以上」であることが含まれている。ここで、上述した「第2回転速度」は、フューエルカット開始条件に含まれる「第1回転速度よりも小さい」値に設定されている。即ち、第2の制御装置は、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいと判断すると、上述した機関回転速度の閾値を低下させることにより、フューエルカット運転が実行され易くする。
このように、第2の制御装置によれば、第1の制御装置と同様、触媒のHC被毒の度合いが的確に評価される。そして、触媒のHC被毒の度合いが高くなると判断される場合にフューエルカット運転が実行され易いように機関が制御されることにより、フューエルカット運転が実行される可能性を大きくすることができる。これにより、触媒が半死活状態になることをできる限り防ぐことができる。その結果、触媒の排ガス浄化性能の低下を出来る限り防ぎ、エミッションを良好に維持することができる。
第2の制御装置おいて、触媒の温度の「許容温度」、「フューエルカット開始条件」、「フューエルカット復帰条件」、「第1許容流量」、「第2許容流量」、「第1回転速度」、及び、「第2回転速度」は、上述した本発明の第1の制御装置と同様に設定することができる。
本発明の内燃機関の第3の制御装置は、
「第1変速制御則」に従う変速比制御を行う変速制御手段により制御される変速装置を有する車両に搭載される内燃機関であって、同機関の排気通路に配設された触媒を有する内燃機関に適用される。
この制御装置は、
(1)前記触媒の温度が所定の許容温度以上であるか否かを判定する触媒温度判定手段と、
(2)前記機関に対する加速操作量が所定の閾値操作量以下であるか否か及び前記機関の機関回転速度が所定の第1回転速度以上であるか否かを判定することにより、同加速操作量が同閾値操作量以下であり且つ同機関回転速度が同第1回転速度以上であることからなる「フューエルカット開始条件」が成立するか否かを判定するとともに、同フューエルカット開始条件が成立した後の期間において所定の「フューエルカット復帰条件」が成立するか否かを判定するフューエルカット運転条件判定手段と、
(3)前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット開始条件が成立すると判定された時点から同フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定される時点までの期間、前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行する運転状態制御手段と、
を備える。
更に、この制御装置は、
(4)前記触媒温度判定手段により前記触媒の温度が前記許容温度以上であると判定されているときに前記フューエルカット運転が実行された場合、「有効フューエルカット運転履歴」が存在すると記録するフューエルカット運転履歴記録手段と、
(5)前記触媒温度判定手段により前記触媒の温度が前記許容温度以上であると判定された時点である「第1基準時点」以降に前記機関に吸入された空気の流量を積算することにより得られる「第1積算流量」を求める第1流量積算手段と、
(6)前記第1基準時点以降において、前記フューエルカット運転が実行される毎に「ゼロ」に設定されて前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定された時点である「第2基準時点」以降に前記機関に吸入された空気の流量を積算することにより得られる「第2積算流量」を求める第2流量積算手段と、
を備える。
更に、この制御装置は、
(7)前記フューエルカット運転条件判定手段により、「前記機関に対する加速操作量が前記閾値操作量以下であり」、且つ、「前記機関の機関回転速度が前記第1回転速度より小さい」と判定されているとき、
(7−1)前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されていなければ」、
前記第1積算流量が所定の第1許容流量よりも大きい場合、「前記第1変速制御則に従う変速比以上の変速比が少なくとも一部の運転領域において得られる第2変速制御則」に従って前記変速装置を制御するように前記変速制御手段に要求を発生し、
(7−2)前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると「記録されていれば」、
前記第2積算流量が所定の第2許容流量よりも大きい場合、前記「第2変速制御則」に従って前記変速装置を制御するように前記変速制御手段に要求を発生する変速要求手段と
を備える。
上記構成によれば、上述した第1の制御装置と同様、「触媒の温度が所定の許容温度以上である」と判定されているときに「フューエルカット運転」が実行されたときに限り、「有効フューエルカット運転履歴が存在する」と記録される。更に、上記構成によれば、有効フューエルカット運転履歴が存在するか否かに基づき、上述した第1の制御装置と同様の処理により、「第1積算流量」又は「第2積算流量」が取得されるとともに、変速制御則を決定する際に使用されるパラメータとして「第1許容流量」又は「第2許容流量」の何れかが設定される。
そして、「第1積算流量」が運転モードの決定のために取得されるとき、フューエルカット開始条件が成立しない状況にて(即ち、機関に対する加速操作量が閾値操作量以下であって機関回転速度が第1回転速度よりも「小さい」状況にて)その第1積算流量が第1許容流量よりも大きくなると、変速装置を制御するための変速制御則が「第1変速制御則」から「第1変速制御則以上の変速比が少なくとも一部の運転領域において得られる第2変速制御則」へと変更される。
一方、「第2積算流量」が運転モードの決定のために取得されるとき、フューエルカット開始条件が成立しない状況にて(上記参照。)その第2積算流量が第2許容流量よりも大きくなると、上記変速制御則が「第1変速制御則」から上記「第2変速制御則」へと変更される。
第3の制御装置は、第1の制御装置と同様、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性の大きさを「第1積算流量」又は「第2積算流量」に基づいて評価する。そして、フューエルカット開始条件が成立しない状況にて(上記参照。)この可能性が大きいと判断されるとき、変速制御則が「第1変速制御則」から「第2変速制御則」へと変更される。ここで、「第1変速制御則」は、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいと判断されていない場合に採用される変速制御則である。
第3の制御装置においては、変速装置の「変速比」は、予め設定された「変速制御則」に基づいて制御される。変速制御則は、一般に、「機関を搭載した車両の速度(車速)」、「スロットルバルブ開度」、及び、「変速比」等の関係を示した変速比マップにて規定することができる。また、この変速比マップにおいては、一般に、変速比は車速が低速になるにつれて大きくなるように設定される。なお、ここでの「変速比」とは、周知のように、機関回転速度と駆動輪の回転速度との比を意味する。
第3の制御装置は、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいと判断されるとき、変速比マップを「第1変速制御則」に対応した変速比マップから「第2変速制御則」に対応した変速比マップへと変更する。このとき(第2変速制御則が採用されているとき)、第1変速制御則が採用されているときに比べ、「車速がより大きく」なるまで「より大きな変速比」が維持される。車速が一定であるとき、変速比が大きいほど機関回転速度は大きい。従って、第2変速制御則が採用されているとき、第1変速制御則が採用されているときに比べてより大きな機関回転速度が得られる車速領域が生じる。
上述したように、「フューエルカット開始条件」には、機関回転速度が所定の閾値(第1回転速度)「以上」であることが含まれている。第3の制御装置は、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいと判断されるとき、「第2変速制御則」を採用することによって所定の車速領域において大きな機関回転速度が得られるようにし、もって、フューエルカット開始条件が成立し易くする。
このように、第3の制御装置によれば、第1の制御装置と同様、触媒のHC被毒の度合いが的確に評価される。そして、触媒のHC被毒の度合いが高くなると判断される場合に変速制御則が第1変速制御則から第2変速制御則へと変更されることにより、フューエルカット運転が実行される可能性を大きくすることができる。これにより、触媒が半死活状態になることをできる限り防ぐことができる。その結果、触媒の排ガス浄化性能の低下を出来る限り防ぎ、エミッションを良好に維持することができる。
第3の制御装置において、触媒の温度の「許容温度」、「フューエルカット開始条件」、「フューエルカット復帰条件」、「第1許容流量」、「第2許容流量」、「第1回転速度」は、上述した本発明の第1の制御装置と同様に設定することができる。
「第1変速制御則」及び「第2変速制御則」は、機関に要求される出力、加速性能及び燃費、並びに、触媒の排ガス浄化性能等を考慮した適値に設定することができる。また、これらの変速制御則が適用される「変速装置」は、例えば、多段式の自動変速機であっても無段式の変速機(CVT)であってもよい。
以下、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)について説明する。
<装置の概要>
図1は、第1制御装置が適用される内燃機関10の一例を示す概略断面図である。図1は、第1制御装置を4サイクル火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50と、変速制御装置80(電磁弁を含む油圧回路)により制御される変速装置90(自動変速機)と、を含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21の壁面及びピストン22の上面は、シリンダヘッド部30の下面とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角及びリフト量を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
なお、機関10は、上記インジェクタ39に代えて或いは上記インジェクタ39に加えて、燃料を燃焼室25内に直接噴射する筒内インジェクタ(図示省略)を備えてもよい。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42及び吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットルバルブ43を備えている。スロットルバルブ43は、DCモータからなるスロットルバルブアクチュエータ43aにより吸気管41内で回転駆動されるようになっている。
排気系統50は、各気筒の排気ポート34に一端が接続された複数の枝部を含むエキゾーストマニホールド51、各エキゾーストマニホールド51の枝部の他端であって総ての枝部が集合している集合部に接続されたエキゾーストパイプ52、エキゾーストパイプ52に配設された触媒53を備えている。排気ポート34、エキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
なお、排気系統50は、触媒53に加えて、エキゾーストパイプ52の触媒53よりも下流側に下流側触媒(図示省略)を備えてもよい。
触媒53(上記下流側触媒が配設される場合、触媒53及び下流側触媒のそれぞれ。以下同様。)は、所謂、ジルコニア等のセラミックからなる担持体に「白金等の貴金属からなる触媒成分」及び「セリア(CeO2)等の酸素吸蔵物質」を担持する三元触媒装置(排気浄化触媒)である。各触媒は、触媒物質の温度が活性温度以上であり、且つ、触媒53に流入するガスの空燃比が理論空燃比である場合、未燃物(HC,CO等)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進し、流入するガスを浄化する。
この制御装置は、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、上流側空燃比センサ66、下流側空燃比センサ67、アクセル開度センサ68及び車速センサ(図示省略)を備えている。
エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の質量流量(機関10に単位時間あたりに吸入される空気の質量。本発明においては、単に「流量」とも称呼する。)Gaに応じた信号を出力するようになっている。
スロットルポジションセンサ62は、スロットルバルブ43の開度(スロットルバルブ開度)を検出し、スロットルバルブ開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。
クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、後述する電気制御装置70によって機関回転速度NEに変換される。
水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
上流側空燃比センサ66は排気通路に配設されている。上流側空燃比センサ66の配設位置は、エキゾーストマニホールド51の枝部の集合部又はその集合部よりも下流側である。上流側空燃比センサ66は限界電流式の酸素濃度センサである。上流側空燃比センサ66は、図2に示したように、「被検出ガス」の空燃比A/Fに応じた電圧である出力値Vabyfsを出力するようになっている。従って、本実施形態において、上流側空燃比センサ66は、排気通路であって上流側空燃比センサ66が配設されている部位を流れるガスの空燃比(従って、触媒53に流入するガスの空燃比、及び、機関に供給される混合気の空燃比)に応じた出力値Vabyfsを出力するようになっている。
この出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるときに値Vstoichに一致する。出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が大きくなる(リーンとなる)ほど増大する。上流側空燃比センサ66は、被検出ガスの空燃比の変化に対して出力が連続的に変化する広域空燃比センサである。
後述する電気制御装置70は、図2に示したテーブル(マップ)Mapabyfsを記憶しており、そのテーブルMapabyfsに実際の出力値Vabyfsを適用することによって空燃比を検出する(検出空燃比abyfsを取得する)ようになっている。以下、上流側空燃比センサ66の出力値VabyfsとテーブルMapabyfsとによって取得される空燃比を、「上流側空燃比abyfs」とも称呼する。
下流側空燃比センサ67は、排気通路であって触媒53よりも下流側に配設されている。なお、下流側触媒が配設される場合、下流側空燃比センサ67は、触媒53と下流側触媒との間の排気通路に配設されることが好適である。下流側空燃比センサ67は、周知の起電力式の酸素濃度センサ(安定化ジルコニアを用いた周知の濃淡電池型の酸素濃度センサ)である。下流側空燃比センサ67は、排気通路であって下流側空燃比センサ67が配設されている部位を流れるガスである被検出ガスの空燃比(機関に供給される混合気の空燃比の時間的平均値)に応じた出力値Voxsを発生するようになっている。
この出力値Voxsは、図3に示したように、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのとき最大出力値max(例えば、約0.9V)となり、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのとき最小出力値min(例えば、約0.1V)となり、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるとき最大出力値maxと最小出力値minの略中間の電圧Vst(中間電圧Vst、例えば、約0.5V)となる。更に、この出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比からリーンな空燃比へと変化する際に最大出力値maxから最小出力値minへと急変し、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比からリッチな空燃比へと変化する際に最小出力値minから最大出力値maxへと急変する。
再び、図1を参照すると、アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
車速センサ(図示省略)は、例えば駆動輪周辺に設置され、車速SPDを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、ROM72、RAM73、バックアップRAM74、及び、ADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース75は、前記センサ61〜68と接続され、CPU71にセンサ61〜68からの信号を供給するようになっている。更に、インターフェース75は、CPU71の指示に応じて各アクチュエータ(可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39及びスロットルバルブアクチュエータ43a等)に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
変速制御装置80は、電気制御装置70からの要求に基づき、スロットルポジションセンサ62からの出力信号に基づいて得られるスロットルバルブ開度TA及び車速センサ(図示省略)からの出力信号に基づいて得られる車速SPD等を所定の変速制御則(変速比マップ)に適用することによって採用すべき変速比を決定し、この変速比が得られるように変速装置90を制御するようになっている。
次に、上述したように構成された第1制御装置の作動について説明する。
<制御の概要>
第1制御装置は、機関10の運転状態を示すパラメータ(アクセルペダル開度Accp、機関回転速度NE、及び、筒内吸入空気量Mc等)に基づいて機関の運転モード(後述するフューエルカット運転、リーン運転、理論空燃比運転等)を決定する。そして、第1制御装置は、決定された運転モードに従う運転を実行するようにインターフェース75を介して各アクチュエータ等に指示を与える。
以下、機関10の運転状態及びこの運転状態に基づいて決定される運転モードにつき、図4に示すタイムチャートを参照して説明する。
図4は、機関10が冷間始動された後、その運転モードが随時変化する様子の一例を示すタイムチャートである。機関10が時刻t0において冷間始動された後、触媒53の温度(以下、「触媒温度TempC」とも称呼する。)は徐々に上昇し、時刻t3において触媒閾値温度TempCth(上述した活性温度)に到達する。即ち、時刻t3において触媒53の暖機期間が終了する。触媒温度TempCは、時刻t3以降も上昇を続けて所定の定常温度に到達する。その後、触媒温度TempCはこの定常温度近傍の温度に維持される。
ここで、触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCthに到達した時点(時刻t3)において、触媒53の暖機が完了したか否かを示す指標である暖機判定フラグXTCの値は「0」から「1」に変更される。暖機判定フラグXTCの値は、触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上であるときに「1」に維持される。
上述したように、触媒53がその活性温度に到達するまでの期間(即ち、暖機期間)、触媒53はその排ガス浄化性能を十分に発揮することができない。そこで、第1制御装置は、この暖機期間(時刻t0から時刻t3までの期間)においては、「触媒53に流入する未燃物及び窒素酸化物を低減する運転モード、又は、触媒53の暖機を促進する運転モード」(後述する「暖機運転」。図4では「W」と表示。)に従う運転を実行する。
ここで、暖機期間が終了した後(時刻t3以降)、機関10が上述した「弱リッチ制御」に基づいた運転を継続すると仮定する。弱リッチ制御は、例えば、上流側空燃比センサ66の出力値により求められる空燃比(上流側空燃比)を理論空燃比に一致させるメインフィードバック制御を実行するとともに、下流側空燃比センサ66の出力値により求められる空燃比(下流側空燃比)を理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比(下流側目標空燃比)に一致させるサブフィードバック制御を行うことにより実現される。下流側目標空燃比は、触媒53の所謂ウインドウの範囲内の空燃比である。これにより、未燃物及び窒素酸化物が触媒53によって浄化され、且つ、機関に供給される混合気の空燃比が僅かにリーン側にずれた場合であっても、その空燃比における触媒53の窒素酸化物の浄化率は高いから、窒素酸化物の排出量を低減することができる。なお、上述したように、この弱リッチ制御による運転は、「排ガスの空燃比を実質的に理論空燃比に一致させる理論空燃比運転」である。空燃比制御の詳細は、後述される。
この時点(時刻t3)以降、第1制御装置は、後述する「理論空燃比運転」(図4では「S」と表示。)を実行する。また、第1制御装置は、この時点(時刻t3)以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算するとともに、積算された流量をフューエルカット運転「前」積算流量Gasc(以下、「F/C前積算流量Gasc」とも称呼する。)として取得する。このF/C前積算流量Gascは時間の経過とともに上昇し、時刻t4にて許容積算流量GA(sc)に到達する。
上述したように、弱リッチ制御に基づいた運転が継続された場合、触媒53にHC被毒が生じる。そして、触媒53が重度のHC被毒状態となった場合、触媒53が半死活状態となる。そこで、第1制御装置は、F/C前積算流量Gascが許容積算流量GA(sc)に到達した時点(時刻t4)以降であってフューエルカット運転が実行されるまでの期間、車両の運転状態が減速運転状態であれば後述する「リーン運転」(図4では「L」と表示。)を実行する。上述したように、リーン運転が実行されることにより、触媒53のHC被毒の程度が低下され、触媒53が半死活状態になることを出来る限り防ぐことができる。
その後、例えば、時刻t5の直前において自動変速機が低速側に運転者によって強制的にシフトダウンされることに起因して機関回転速度NEが上昇し、それにより時刻t5から時刻t6の期間において「フューエルカット運転」(図4では「F/C」と表示。)が実行されると仮定する。図4に示すように、フューエルカット運転が実行される期間、フューエルカットフラグXFCの値は「1」に設定される。また、このフューエルカット運転が実行された時点(時刻t5)において、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値が「0」から「1」に設定される。なお、触媒53の暖機期間中にフューエルカット運転が実行された場合(図4の時刻t1を参照。)、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」に維持される。
このフューエルカット運転が実行されることにより、触媒53のHC被毒が解消される。従って、第1制御装置は、このフューエルカット運転が停止された時点(時刻t6)から「理論空燃比運転」を再開する。また、第1制御装置は、この時点(時刻t6)以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算するとともに、積算された流量をフューエルカット運転「後」積算流量Gafc(以下、「F/C後積算流量Gafc」とも称呼する。)として取得する。このF/C後積算流量Gafcは時間の経過とともに上昇し、時刻t7にて許容積算流量GA(fc)に到達する。
上述したように、上記フューエルカット運転が実行されることにより、そのフューエルカット運転が実行されるまでに触媒53に生じたHC被毒は解消される。しかし、フューエルカット運転が実行された後に弱リッチ制御に基づいた運転(理論空燃比運転)が継続されると、触媒53に再びHC被毒が生じる。そこで、第1制御装置は、F/C後積算流量Gafcが許容積算流量GA(fc)に到達した時点(時刻t7)以降であってフューエルカット運転が実行されるまでの期間、車両の運転状態が減速運転状態であれば上述した「リーン運転」を実行する。上述したように、リーン運転が実行されることにより、触媒53のHC被毒の程度が低下され、触媒53が半死活状態になることを出来る限り防ぐことができる。
その後、例えば、時刻t8の直前において自動変速機が低速側に運転者によって強制的にシフトダウンされることに起因して機関回転速度NEが上昇し、それにより時刻t8から時刻t9の期間においてフューエルカット運転が実行されると、その時点(時刻t8)までに触媒53に生じたHC被毒は解消される。そして、第1制御装置は、このフューエルカット運転が停止された時点(時刻t9)から「弱リッチ制御に基づいた運転(理論空燃比運転)」を再開する。そして、第1制御装置は、時刻t9以降においても時刻t6以降と同様の制御を繰り返す。
なお、第1制御装置は、時刻t6以降にフューエルカット運転が実行される毎に許容積算流量GA(fc)の値をゼロに再設定し、そのフューエルカット運転が停止されて「理論空燃比運転」が再開された時点から再びF/C後積算流量Gafcの積算を行う。
第1制御装置が上述のように機関10の運転モードを制御することにより、触媒53のHC被毒の度合いを的確に評価するとともに、触媒が半死活状態になることを出来る限り防ぐことができる。この結果、触媒53の排ガス浄化性能の低下を出来る限り防ぎ、エミッションを良好に維持することができる。
<空燃比制御>
以下、上述した空燃比制御を説明する。
第1制御装置は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて得られる上流側空燃比abyfsを上流側目標空燃比abyfrに一致させるための「メインフィードバック制御」、及び、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを下流側目標値Voxsrefに一致させるための「サブフィードバック制御」を含む空燃比フィードバック制御を実行する。
実際には、まず、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsが、「下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの出力偏差量Dvoxsを小さくするように算出されたサブフィードバック量Vafsfb」により補正される。そして、この補正によって得られた「フィードバック制御用出力値Vabyfc」が上述したテーブルMapabyfs(図2を参照。)に適用されることにより、「フィードバック制御用空燃比(補正検出空燃比)abyfsc」が算出される。更に、このフィードバック制御用空燃比abyfscが「上流側目標空燃比abyfr」に一致するように燃料噴射量が制御される。第1制御装置においては、このように空燃比フィードバック制御が行われる。以下にて、この空燃比フィードバック制御をより詳細に説明する。
1.メインフィードバック制御
より具体的に述べると、第1制御装置は、フィードバック制御用出力値Vabyfcを下記(1)式に従って算出する。(1)式において、Vabyfsは上流側空燃比センサ66の出力値、Vafsfbは下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて算出されるサブフィードバック量である。これらの値は、何れも現時点において得られている値である。サブフィードバック量Vafsfbの算出方法は後述される。
Vabyfc=Vabyfs+Vafsfb ・・・(1)
第1制御装置は、下記(2)式に示したように、フィードバック制御用出力値Vabyfcを図2に示したテーブルMapabyfsに適用することによってフィードバック制御用空燃比abyfscを得る。
abyfsc=Mapabyfs(Vabyfc) ・・・(2)
一方、第1制御装置は、現時点(時点k)にて気筒内に吸入される空気量である筒内吸入空気量Mc(k)を求める。筒内吸入空気量Mc(k)は、各気筒の吸気行程毎に、その時点のエアフローメータ61の出力Gaと機関回転速度NEとに基づいて求められ(例えば、エアフローメータ61の出力Gaに対して一次遅れ処理を施した値を機関回転速度NEで除することにより求められ)、各吸気行程に対応されながらRAM73内に記憶される。筒内吸入空気量Mc(k)は、周知の空気モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
第1制御装置は、下記(3)式に示したように、その筒内吸入空気量Mc(k)を現時点における上流側目標空燃比abyfr(k)によって除すことにより基本燃料噴射量Fbaseを求める。なお、上流側目標空燃比abyfr(k)は、後述するように機関10の運転モードに応じて決定され、各吸気行程に対応されながらRAM73内に記憶される。
Fbase=Mc(k)/abyfr(k) ・・・(3)
第1制御装置は、下記(4)式に示したように、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiにより補正する(基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量DFiを加える)ことにより、最終燃料噴射量Fiを算出する。そして、第1制御装置は、最終燃料噴射量Fiの燃料を吸気行程を迎えている気筒のインジェクタ39から噴射する。メインフィードバック量DFiの算出方法は後述される。
Fi=Fbase+DFi ・・・(4)
上記(4)式におけるメインフィードバック量DFiは、以下のようにして求められる。
まず、第1制御装置は、下記(5)式に示したように、現時点よりもNサイクル(即ち、N・720°クランク角)「前」の時点における筒内吸入空気量Mc(k−N)を、上記フィードバック制御用空燃比(補正検出空燃比)abyfscにて除すことにより、現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室25に実際に供給された燃料の量である「筒内供給燃料量Fc(k−N)」を求める。
Fc(k−N)=Mc(k−N)/abyfsc ・・・(5)
このように、現時点からNサイクル前の筒内燃料供給量Fc(k−N)を求めるために、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)をフィードバック制御用空燃比abyfscで除すのは、燃焼室25内で燃焼された混合気が上流側空燃比センサ66に到達するまでにNサイクルに相当する時間を要しているからである。
次に、第1制御装置は、下記(6)式に示したように、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNサイクル前の上流側目標空燃比abyfr(k−N)で除すことにより現時点からNサイクル前の「目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)」を求める。
Fcr(k−N)=Mc(k−N)/abyfr(k−N) ・・・(6)
第1制御装置は、下記(7)式に示したように、現時点からNサイクル前の目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減じた値を「筒内燃料供給量偏差DFc」として設定する。この筒内燃料供給量偏差DFcは、「Nサイクル前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分」を表す量となる。
DFc=Fcr(k−N)−Fc(k−N) ・・・(7)
その後、第1制御装置は、下記(8)式に基づいてメインフィードバック量DFiを求める。この(8)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン、Giは予め設定された積分ゲインである。(8)式の係数KFBは、機関回転速度NE及び筒内吸入空気量Mc等により可変とすることが好適である。なお、ここでは係数KFBを「1」としている。また、(8)式の値SDFcは筒内燃料供給量偏差DFcの積分値である。即ち、第1制御装置は、フィードバック制御用空燃比abyfscと上流側目標空燃比abyfrとに基づく比例積分制御によりメインフィードバック量DFiを算出する。このメインフィードバック量DFiは上記(4)式に示したように基本燃料噴射量Fbaseに加えられ、それにより、最終的な燃料噴射量Fiが算出される。
DFi=(Gp・DFc+Gi・SDFc)・KFB ・・・(8)
2.サブフィードバック制御
第1制御装置は上述したサブフィードバック量Vafsfbを次のように算出する。
即ち、第1制御装置は、下記(9)式に示したように、下流側目標値Voxsrefから現時点の下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを減じることにより出力偏差量DVoxsを求める。(9)式における下流側目標値Voxsrefは、後述するように機関10の運転モードに応じて決定される。
DVoxs=Voxsref−Voxs ・・・(9)
第1制御装置は、下記(10)式に基づいてサブフィードバック量Vafsfbを求める。(10)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)である。また、SDVoxsは、出力偏差量DVoxsの積分値である。
Vafsfb=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs ・・・(10)
このように、第1制御装置は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとに基づく比例積分制御によりサブフィードバック量Vafsfbを算出する。このサブフィードバック量Vafsfbは、上述した(1)式に示したように、フィードバック制御用出力値Vabyfcを算出するために使用される。
以上に説明したように、第1制御装置は、サブフィードバック量Vafsfbを加えることによって上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsを補正し、その補正によって得られたフィードバック制御用出力値Vabyfc(=Vabyfs+Vafsfb)に基づいてフィードバック制御用空燃比abyfscを取得する(図2を参照。)。そして、第1制御装置は、取得したフィードバック制御用空燃比abyfscが上流側目標空燃比abyfrに一致するように燃料噴射量Fiを制御する。
その結果、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに相当する上流側空燃比abyfsは上流側目標空燃比abyfrに近づき、同時に、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsは下流側目標値Voxsrefに近づく。即ち、第1制御装置は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsとサブフィードバック量Vafsfbとに基づいて機関の混合気の空燃比を上流側目標空燃比abyfrに一致させる空燃比フィードバック制御手段を備えている。
<運転モード>
以下、上述したフューエルカット運転、暖機運転、理論空燃比運転、及び、リーン運転について説明する。
第1制御装置において、「フューエルカット運転」とは、機関10への燃料供給(燃料噴射)を停止する運転である。
第1制御装置において、「暖機運転」とは、触媒53の暖機期間に実行される運転である。例えば、上述した空燃比フィードバック制御において上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比よりもリッチ側の空燃比とする運転、及び、混合気への点火時期をMBT(Maximum advance for Best Torque)よりも遅角させる運転等が挙げられる。
第1制御装置において、「理論空燃比運転」とは、触媒がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいと判断されて「いない」場合に実行される運転であり、ある時点での機関10の運転状態(負荷、機関回転速度、及び、機関10を搭載した車両の速度等)に基づいて決定される通常の運転を実行するための運転モードである。例えば、上述した空燃比フィードバック制御において上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比とするとともに下流側目標値Voxsrefを理論空燃比に対応する値よりも僅かにリッチ側の値とする運転(即ち、上述した「弱リッチ制御」に基づく運転)等が挙げられる。
第1制御装置において、「リーン運転」とは、触媒53に流入する排ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比(ウインドウWを外れた領域内の空燃比。図3を参照。)とする運転である。リーン運転は、上述した空燃比フィードバック制御(ここでは、メインフィードバック制御)において、上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比よりもリーン側の値にすることにより実行することができる。このとき、サブフィードバック制御は停止される。
なお、上述した上流側目標空燃比abyfr及び下流側目標値Voxsrefの設定方法は、後述される。
<実際の作動>
以下、第1制御装置の実際の作動につき、以下の(1)乃至(3)の期間に場合を分けて説明する。
(1)触媒の暖機が完了するまでの期間(図4における時刻t0から時刻t3までの期間)
(2)触媒の暖機が完了した時点から初回のフューエルカット運転が実行されるまでの期間(同時刻t3から時刻t5までの期間)
(3)初回のフューエルカット運転が実行された時点以降の期間(同時刻t5以降の期間)
(1)触媒の暖機が完了するまでの期間
第1制御装置の電気制御装置70のCPU71は、図5乃至図14にフローチャートにより示した各ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。
具体的に述べると、CPU71は、所定のタイミングにて図5に示す触媒温度推定ルーチンを実行し、機関始動時の冷却水温TWSを取得するとともに、触媒温度TempCを取得(推定)する。即ち、まず、CPU71は、図5のステップ500から処理を開始してステップ510に進み、現時点が機関10の始動直後であるか否かを判定する。
いま、現時点が機関10が冷間始動された直後であると仮定する。この仮定に従えば、CPU71はステップ510にて「Yes」と判定し、ステップ520に進む。CPU71はそのステップ520にて、水温センサ65の出力値に基づいて始動時冷却水温TWSを取得するとともに、始動時冷却水温TWSと触媒温度TempCとの関係を予め定めた始動時触媒温度推定関数f(TWS)に取得した始動時冷却水温TWSを適用することにより、「機関が冷間始動した時点における触媒温度TempC」を取得(推定)する。始動時触媒温度推定関数f(TWS)は、始動時冷却水温TWSに対して触媒温度TempCが単調に増加する関数として定められている。
次いで、CPU71は図5のステップ530に進み、筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NE対する排気温度Texの関係を予め定めた排気温度テーブルMapTex(Mc,NE)に現時点における筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NEを適用することにより、現時点における排気温度Texを取得(推定)する。
その後、CPU71はステップ540に進み、下記(11)式に従って触媒温度TempCを更新・取得(推定)する。(11)式において、αは0よりも大きく1よりも小さい所定の定数、TempC(k)は更新される前の触媒温度TempC、TempC(k+1)は更新後の触媒温度TempCである。
TempC(k+1)=α・TempC(k)+(1−α)・Tex ・・・(11)
CPU71は、上記(11)式に従って触媒温度TempCを更新・取得(推定)した後、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図6に示す暖機判定フラグ設定ルーチンを実行し、触媒53の暖機が完了しているか否かを確認する。即ち、CPU71は、図6のステップ600から処理を開始してステップ610に進み、触媒温度TempCが所定の触媒閾値温度TempCth以上であるか否かを判定する。暖機判定フラグXTCは、その値が「0」であるとき、触媒53の暖機が完了していない(暖機期間中である)ことを示す。一方、暖機判定フラグXTCは、その値が「1」であるとき、触媒53の暖機が完了している(暖機期間が終了している)ことを示す。
上記仮定に従えば、現時点は機関10が冷間始動された直後であるので、触媒温度TempCは触媒閾値温度TempCthより小さい。従って、CPU71は、図6のステップ610にて「No」と判定し、ステップ620に進んで暖機判定フラグXTCの値に「0」を設定する。次いで、CPU71は、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図7に示す流量積算ルーチンを実行し、機関10に吸入される空気の流量を積算する。即ち、CPU71は、図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、暖機判定フラグXTCの値が「1」であるか否かを判定する。現時点では暖機判定フラグXTCの値は「0」である。従って、CPU71はそのステップ710にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、暖機期間が終了するまでの期間、吸入される空気の流量の積算は行われない。なお、図7のステップ730に示されるF/C前積算流量Gasc、及び、ステップ740に示されるF/C後積算流量Gafcは、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときに実行されるイニシャルルーチンにおいてゼロに設定されようになっている。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図8に示す許容流量設定ルーチンを実行し、HC被毒の点で触媒53が許容し得る吸入空気の積算流量の上限値を取得する。即ち、CPU71は、図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、暖機判定フラグXTCの値が「1」であるか否かを判定する。現時点では暖機判定フラグXTCの値は「0」である。従って、CPU71はそのステップ810にて「No」と判定し、ステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、暖機期間が終了するまでの期間、流量の上限値は取得されない。
なお、図8のステップ850に示される補正後許容積算流量GAは、上記イニシャルルーチンにおいてゼロよりも大きい所定値に設定されるようになっている。この所定値は、後述する図10のルーチンにおいて暖機期間中に限って使用される便宜的な値であり、実際の許容積算流量を示すものではない。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図9に示すフューエルカット運転閾値回転速度設定ルーチンを実行し、後述する「フューエルカット開始条件」の一つである閾値回転速度を取得する。即ち、CPU71は、図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進み、機関10の冷却水温THWと閾値回転速度との関係を予め定めた閾値回転速度テーブルMapNEfcth1(THW)及びMapNEfcth2(THW)に対し、水温センサ65の出力値に基づいて取得した現時点での冷却水温THWを適用することにより、現時点における「第1閾値回転速度NEfcth1」及び「第2閾値回転速度NEfcth2」を取得する。その後、CPU71はステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
「第1閾値回転速度NEfcth1」及び「第2閾値回転速度NEfcth2」は、冷却水温THWが高くなるにつれて小さくなるように設定される。また、「第1閾値回転速度NEfcth1」は「第2閾値回転速度NEfcth2」よりも大きくなるように設定されている。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図10に示す運転モード設定ルーチンを実行し、現時点での機関10の状態に基づき、現時点がフューエルカット運転を実行・停止すべき状態であるか否か、及び、現時点がリーン運転を実行・停止すべき状態であるか否かを確認する。即ち、CPU71は、図10のステップ1000から処理を開始してステップ1005に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。
フューエルカットフラグXFCは、その値が「0」であるとき、機関10がフューエルカット運転を実行すべきではない状態であることを示す。一方、フューエルカットフラグXFCは、その値が「1」であるとき、機関10がフューエルカット運転を実行すべき状態であることを示す。フューエルカットフラグXFCの値は、上記イニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
上記イニシャルルーチンが実行されるとき、触媒53の暖機期間終了後に触媒53のHC被毒を解消する点で有効なフューエルカット運転(以下、「有効フューエルカット運転」とも称呼する。)が実行された履歴が存在するか否かを示す有効フューエルカット運転履歴フラグXFChも「0」に設定されるようになっている。有効フューエルカット運転履歴フラグXFChは、その値が「1」であるとき、有効フューエルカット運転が実行された履歴が存在することを示す。一方、有効フューエルカットフラグXFChは、その値が「0」であるとき、有効フューエルカット運転が実行された履歴が存在しないことを示す。
上記仮定に従えば、現時点は機関10が冷間始動された直後である。従って、フューエルカットフラグXFCの値は、上記イニシャルルーチンにおいて設定された「0」である。従って、CPU71は、図10のステップ1005にて「Yes」と判定してステップ1015以降に進み、後述するフューエルカット開始条件が成立しているか否かを判定する。
第1制御装置においては、フューエルカット開始条件は以下に述べる条件1及び条件2の双方が成立したときにのみ成立する。
(条件1)スロットルバルブ43の開度TAが「ゼロ(又は所定開度TAth以下)」であること。なお、CPU71は、スロットルバルブ43の開度を、アクセルペダル開度Accpが大きくなるほど大きくなるように制御している。また、CPU71は、アクセルペダル開度Accpが閾値開度δであるときにスロットルバルブ43の開度TAが上記所定開度TAthとなるように制御している。
(条件2)機関回転速度NEが「第1閾値回転速度NEfcth1以上」であること。なお、第1閾値回転速度NEfcth1は、上述した図9のルーチンにおいて取得される。
上記仮定に従えば、現時点は機関10が冷間始動された直後である。ここで、更に、機関10が冷間始動された後、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」状態が継続されたと仮定する。このような状態は、例えば、機関10が車両に搭載されているとき、機関10が冷間始動された後に機関10の暖機を目的として車両を停止している場合等に生じる。
CPU71は、図10のステップ1010にて、アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下であるか否かを判定する。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1010にて「Yes」と判定し、ステップ1015に進んで機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1以上であるか否かを判定する。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1010にて「No」と判定し、ステップ1020に進んで有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値が「0」であるか否かを判定する。現時点においては、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は、上記イニシャルルーチンにて設定されたゼロである。従って、CPU71はそのステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、上述したF/C前積算流量Gascを積算流量Sumに格納する。現時点におけるF/C前積算流量Gascは、上記イニシャルルーチンにて設定されたゼロである。従って、積算質量流量Sumにはゼロが格納される。
次いで、CPU71はステップ1030に進み、積算流量Sumが上述した補正後許容積算流量GAよりも大きいか否かを判定する。上述したように、現時点における補正後許容積算流量GAはゼロよりも大きい値に設定されている。従って、CPU71は、そのステップ1030にて「No」と判定し、ステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、このとき、フューエルカットフラグXFCの値は「0」に維持される。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図11に示した燃料噴射制御ルーチンを実行し、最終燃料噴射量Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。CPU71は、このルーチンを、所定の気筒のクランク角が吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、その気筒(以下、「燃料噴射気筒」とも称呼する。)に対して繰り返し実行するようになっている。即ち、CPU71は図11のステップ1100から処理を開始してステップ1105に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。現時点において、フューエルカットフラグXFCの値は「0」である。従って、CPU71、そのステップ1105にて「Yes」と判定する。
次いで、CPU71は、ステップ1110に進み、暖機判定フラグXTCの値が「1」であるか否かを判定する。現時点において、暖機判定フラグXTCの値は「0」である。従って、CPU71は、そのステップ1110にて「No」と判定してステップ1115に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比よりもリッチ側の空燃比rich(以下、「リッチ空燃比rich」とも称呼する。)を格納する。
次いで、CPU71は、後述するステップ1120乃至ステップ1135の処理を順に行い、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1120:CPU71は、エアフローメータ61により計測された吸入空気量Gaと機関回転速度NEとに基づき、燃料噴射気筒に吸入される空気量である筒内吸入空気量Mc(k)を取得する。
ステップ1125:CPU71は、上記(3)式に従って基本燃料噴射量Fbaseを求める。
ステップ1130:CPU71は、上記(4)式に従って基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiにより補正し、最終燃料噴射量Fiを求める。
ステップ1135:CPU71は、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対応して設けられているインジェクタ39から噴射する。
以上により、最終燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に対して噴射される。このようにして、上流側目標空燃比abyfrがリッチ空燃比richに設定された「暖機運転」が実行される。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図12に示すメインフィードバック量DFi算出ルーチンを実行する。即ち、CPU71は、ステップ1200から処理を開始してステップ1205に進み、メインフィードバック制御条件(上流側空燃比フィードバック制御条件)が成立しているか否かを判定する。第1制御装置において、メインフィードバック制御条件は、触媒53の暖機期間が終了しており、フューエルカット運転の実行中でなく、機関10の冷却水温THWが所定の第1温度以上であり、機関の一回転当りの吸入空気量(負荷)が所定値以下であり、且つ、上流側空燃比センサ66が活性化しているときに成立する。従って、例えば、暖機期間中及びフューエルカット運転中等には、メインフィードバック制御条件は成立しない。
現時点は、触媒53の暖機期間中であり、上記メインフィードバック制御条件は成立しない。従って、CPU71はステップ1205にて「No」と判定してステップ1210に進み、メインフィードバック量DFiにゼロを格納する。次いで、CPU71は、ステップ1215に進んで筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcにゼロを格納し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、メインフィードバック制御条件が成立しないとき、メインフィードバック量DFiはゼロに設定される。従って、このとき、上述した基本燃料噴射量Fbaseのメインフィードバック量DFiによる補正はなされない。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図13に示すサブフィードバック量Vafsfb算出ルーチンを実行する。即ち、CPU71は、ステップ1300から処理を開始してステップ1310に進み、サブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。第1制御装置において、サブフィードバック制御条件は、図12に示すメインフィードバック条件(ステップ1205)が成立し、上流側目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichに設定され、機関の冷却水温THWが前記第1温度よりも高い第2温度以上であり、且つ、下流側空燃比センサ67が活性化しているときに成立する。従って、例えば、暖機運転中及びフューエルカット運転中及びリーン運転中等には、サブフィードバック制御は成立しない。
現時点は、触媒53の暖機期間中であり、上記サブフィードバック条件は成立しない。従って、CPU71は、そのステップ1310にて「No」と判定してステップ1320に進み、サブフィードバック量Vafsfbにゼロを格納する。次いで、CPU71は、ステップ1330に進んで出力偏差量DVoxsの積分値SDVoxsにゼロを格納し、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、メインフィードバック条件が成立しないときにはサブフィードバック条件も成立せず、サブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される。従って、このとき、フィードバック制御用出力値Vabyfcのサブフィードバック量Vafsfbによる補正はなされない。
その後、触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCthに到達するまでの期間(即ち、上述した暖機期間)において、上記フューエルカット開始条件が成立したと仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図10のステップ1000から処理を開始し、ステップ1005乃至ステップ1015にて「Yes」と判定してステップ1035に進み、フューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1040に進んでフューエルカットフラグXFCの値が「1」であるか否かを判定する。現時点において、暖機判定フラグXTCの値は「0」である。従って、CPU71は、ステップ1040にて「No」と判定してステップ1045に直接進み、リーン運転フラグXLEANの値を「0」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は、上記イニシャルルーチンにて設定された「0」に維持される。
リーン運転フラグXLEANの値は、上記イニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。リーン運転フラグXLEANは、その値が「1」であるとき、機関10がリーン運転を実行すべき状態であることを示す。一方、リーン運転フラグXLEANは、その値が「0」であるとき、機関10がリーン運転を実行すべきではない状態であることを示す。即ち、このとき、リーン運転フラグXLEANの値はイニシャルルーチンにて設定された「0」に維持される。
この状態(フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定された状態)において、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105にて「No」と判定する。そして、CPU71はステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、ステップ1135の処理が実行されないので、燃料の噴射がなされない。即ち、「フューエルカット運転」が実行される。
以上に説明したように、この時点にて、フューエルカット運転が実行される。ただし、上述したように、暖機期間中にフューエルカット運転が実行されたとしても、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」に維持される。
また、フューエルカット運転が実行されたとき、後述する「フューエルカット復帰条件」が成立するまでフューエルカット運転は継続される。この点につき、以下に説明する。
第1制御装置においては、フューエルカット復帰条件は、以下に述べる条件3及び条件4のうちの少なくとも一つが成立したときに成立する。
(条件3)スロットルバルブ開度TAが「ゼロ(又は所定開度以下)」より大きいこと。
(条件4)機関回転速度NEが「第1閾値回転速度NEfcth1よりも所定回転速度ΔNだけ小さい回転速度(以下、便宜上、「フューエルカット復帰閾値回転速度NEfcre」と称呼する。)よりも小さい」こと。
CPU71は、所定のタイミングにて図14に示すフューエルカット復帰判定ルーチンを実行し、現時点での機関10の運転状態がフューエルカット運転を停止すべき状態であるか否かを確認する。即ち、CPU71は、図14のステップ1400から処理を開始してステップ1410に進み、そのステップ1410にてフューエルカットフラグXFCの値が「1」であるか否かを判定する。現時点では、フューエルカットフラグXFCの値は「1」である。従って、CPU71は、そのステップ1410にて「Yes」と判定してステップ1420に進み、アクセルペダル開度Accpが閾値開度δより大きいか否かを判定する。
ここで、上述したようにフューエルカット運転が開始された後、現時点では上記フューエルカット復帰条件が成立していない(即ち、上記条件3及び条件4の双方が成立していない)と仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1420にて「No」と判定してステップ1430に進み、機関回転速度NEが上記フューエルカット復帰閾値回転速度NEfcreよりも小さいか否かを判定する。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1430にて「No」と判定してステップ1495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、この場合、後述するステップ1440の処理が実行されないので、フューエルカットフラグXFCは「1」に維持される。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105を経てステップ1195に進む。このとき、燃料噴射の指示(ステップ1135)はなされず、フューエルカット運転が実行される。このように、フューエルカット運転が実行されている期間において上記フューエルカット復帰条件が成立しない場合、フューエルカット運転が継続される。
ここで、上記フューエルカット運転復帰条件が成立したと仮定する。このような状況は、例えば、フューエルカット運転の実行中において、機関10に加速が要求された場合(アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下でなくなったとき)、或いは、車両の減速に伴って機関回転速度NEがフューエルカット復帰閾値回転速度NEfcreよりも小さくなった場合等に生じる。以下では、後者の状況(機関回転速度NEがフューエルカット復帰閾値回転速度NEfcreよりも小さくなった場合)によってフューエルカット復帰条件が成立したと仮定する。
上記仮定に従えば、CPU71は、図14のステップ1400から処理を開始すると、ステップ1410、ステップ1420及びステップ1430を経てステップ1440に進み、フューエルカットフラグXFCの値を「0」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1450に進んでF/C後積算流量Gafcをゼロに設定し、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始してステップ1105に進むと、そのステップ1105にて「Yes」と判定する。そして、CPU71は、ステップ1110を経てステップ1115に進み、ステップ1115に続くステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対して噴射する。その後、CPU71は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、「暖機運転」が再開される。
以上に説明したように、CPU71は、機関が冷間始動してから暖機期間が終了するまでの期間、暖機運転を実行する。また、この期間においてフューエルカット開始条件が成立した場合、CPU71はフューエルカット運転を実行する。更に、このフューエルカット運転を実行中にフューエルカット復帰条件が成立した場合、CPU71はフューエルカット運転を停止し、暖機運転を再開する。
(2)触媒の暖機が完了した時点から初回のフューエルカット運転が実行されるまでの期間
暖機運転が再開された後、機関10の運転が継続するとともに触媒53の温度は上昇する。ここで、現時点が、触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上となった直後であると仮定する。なお、触媒温度TempCは、CPU71が図5のルーチンを実行する毎に更新・取得(推定)されている。
上記仮定に従えば、CPU71は、図6のステップ600から処理を開始してステップ610に進んだとき、そのステップ610にて「Yes」と判定する。そして、CPU71は、ステップ630に進んで暖機判定フラグXTCの値を「1」に設定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1140に進み、リーン運転フラグXLEANの値が「0」であるか否かを判定する。現時点では、上述したように、リーン運転フラグXLEANの値はイニシャルルーチンにて設定された「0」に維持されている。従って、CPU71は、そのステップ1140にて「Yes」と判定してステップ1145に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)に、理論空燃比stoichを格納する。次いで、CPU71は、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対して噴射する。その後、CPU71は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、ここで、図12に示すメインフィードバック制御条件が成立すると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図12のステップ1200から処理を開始すると、ステップ1205にて「Yes」と判定する。次いで、CPU71は、後述するステップ1220乃至ステップ1250の処理を順に行い、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1220:CPU71は、上記(1)式に従ってフィードバック制御用出力値Vabyfcを取得する。なお、このときの上流側目標空燃比abyfrは、図11のステップ1145にて設定された理論空燃比stoichである。
ステップ1225:CPU71は、上記(2)式に従ってフィードバック制御用空燃比abyfscを取得する。
ステップ1230:CPU71は、上記(5)式に従って筒内燃料供給量Fc(k−N)を取得する。
ステップ1235:CPU71は、上記(6)式に従って目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を取得する。
ステップ1240:CPU71は、上記(7)式に従って筒内燃料供給量偏差DFcを取得する。
ステップ1245:CPU71は、上記(8)式に従ってメインフィードバック量DFiを取得する。なお、第1制御装置において、係数KFBは「1」に設定されている。筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcは次のステップ1250にて求められる。
ステップ1250:CPU71は、その時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ1240にて求められた筒内燃料供給量偏差DFcを加えることにより、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを取得(更新)する。
以上により、メインフィードバック量DFiが比例積分制御により求められ、このメインフィードバック量DFiが最終燃料噴射量Fiに反映される(図11のステップ1130を参照。)。
更に、ここで、図13に示すサブフィードバック制御条件が成立すると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図13のステップ1300から処理を開始すると、ステップ1310にて「Yes」と判定する。次いで、CPU71は、後述するステップ1340乃至ステップ1360の処理を順に行い、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1340:CPU71は、上記(9)式に従って下流側目標値Voxsrefと下流側空燃比センサ67の出力値Voxsとの差である出力偏差量DVoxsを取得する。なお、このとき、下流側目標値Voxsrefは理論空燃比に対応する値よりも僅かにリッチ側の値Vrich(以下、「弱リッチ目標値rich」とも称呼する。)に設定する。リッチ側の値Vrichは、図3に示したように、触媒のウインドウWの幅内の空燃比に相当する値である。
ステップ1350:CPU71は、上記(10)式に従ってサブフィードバック量Vafsfbを取得する。なお、この時点における積分ゲインKiは、予め求められた適値に設定されている。
ステップ1360:CPU71は、その時点における出力偏差量の積分値SDVoxsに上記ステップ1340にて求めた出力偏差量DVoxsを加えて、新たな出力偏差量の積分値SDVoxsを取得する。
以上により、サブフィードバック量Vafsfbが比例積分制御により求められ、このサブフィードバック量Vafsfbによって前述した上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsが補正される(図12のステップ1220を参照。)。そして、補正されたフィードバック制御用出力値Vabyfcに基づいてメインフィードバック量DFiが求められ(図12のステップ1245を参照。)、このメインフィードバック量DFiが最終燃料噴射量Fiに反映される(図11のステップ1130を参照)。
以上のメインフィードバック制御及びサブフィードバック制御により、現時点からNストローク前の燃料供給量の過不足が補償され、機関の空燃比(従って、触媒53に流入するガスの空燃比)の平均値が上流側目標空燃比abyfr(現時点では、理論空燃比stoich)よりも僅かにリッチ側の空燃比に制御される。このようにして、触媒53に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりも若干リッチ側の空燃比である「理論空燃比運転」が実行される。
また、上記仮定(現時点が、触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上となった直後であるとの仮定)に従えば、CPU71は、図7のステップ700から処理を開始すると、ステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進み、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値が「0」であるか否かを判定する。現時点での有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」である。従って、CPU71は、そのステップ720にて「Yes」と判定してステップ730に進み、下記(12)式に従ってF/C前積算流量Gascを更新・取得する。(12)式において、Gaは現時点にて機関10に吸入される空気の流量、Gasc(k)は更新される前のF/C前積算流量Gasc、Gasc(k+1)は更新後のF/C前積算流量Gascである。
Gasc(k+1)=Gasc(k)+Ga ・・・(12)
CPU71は、上記(12)式に従ってF/C前積算流量Gascを更新・取得した後、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、このとき、CPU71が図8のステップ800から処理を開始すると、ステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値が「0」であるか否かを判定する。現時点では、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」である。従って、CPU71はそのステップ820にて「Yes」と判定し、ステップ830に進む。
CPU71は、そのステップ830にて、触媒温度TempCと許容積算流量ga1との関係を予め定めた許容積算流量テーブルMapga1sc(TempC)に現時点での触媒温度TempCを適用することにより、現時点における許容積算流量ga1を取得する。
この許容積算流量テーブルMapga1sc(TempC)によれば、触媒温度TempCが温度T1よりも小さいとき、許容積算流量ga1はゼロに設定される。また、許容積算流量ga1は、触媒温度TempCが温度T1以上であるときに触媒温度TempCが高くなるにつれて大きくなり、触媒温度TempCが温度T2に到達するときに最大値max1に到達するように設定される。更に、許容積算流量ga1は、触媒温度TempCが温度T2より大きいときに最大値max1を維持するように設定される。
次いで、CPU71は、ステップ840に進む。CPU71は、そのステップ840にて、「触媒53の劣化の程度を表す触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax」と「補正係数kcmax」との関係を予め定めた補正係数テーブルMapkc(Cmax)に現時点での最大酸素吸蔵量Cmaxを適用することにより、現時点における補正係数kcmaxを取得する。最大酸素吸蔵量Cmaxは、図示しないルーチンにより、周知の手法により算出される。
この補正係数テーブルMapkc(Cmax)によれば、最大酸素吸蔵量Cmaxが値C1よりよりも大きいとき、補正係数kcmaxは1.0に設定される。また、補正係数kcmaxは、最大酸素吸蔵量Cmaxが値C1よりも小さいときに最大酸素吸蔵量Cmaxが小さくなるにつれて小さくなり、最大酸素吸蔵量Cmaxがゼロとなるときに最小値k1となるように設定される。
なお、最大酸素吸蔵量Cmaxに代え、触媒53が使用された合計時間及び触媒53に流入した排ガスの総積算量等に基づいて取得される値を用いてもよい。何れにせよ、補正係数テーブルMapkc(x)に使用される変数xは、触媒が劣化するほど(暖機期間終了後の最大酸素吸蔵量Cmaxが小さくなるほど)小さくなる値として求められる値であればよい。
次いで、CPU71は、ステップ850に進み、下記(13)式に従って補正後許容積算流量GAを取得する。(13)式において、ga1は上記ステップ830にて取得した許容積算流量ga1、kcmaxは上記ステップ840にて取得した補正係数kcmaxである。
GA=ga1×kcmax ・・・(13)
CPU71は、上記(13)式に従って補正後許容積算流量GAを取得した後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。このようにして求められる補正後許容積算流量GAは、触媒53の現時点における酸素吸蔵能力に応じた値となる。なお、上記ステップ830にて求められた許容積算流量ga1に基づいてステップ840にて計算された補正後許容積算流量GAは、便宜上、第1許容流量GAとも称呼される。
更に、CPU71は、図9のルーチンを実行し、現時点での冷却水温THWに基づく第1閾値回転速度NEfcth1及び第2閾値回転速度NEfcth2を取得する。
このとき、CPU71は、図10のステップ1000から処理を開始すると、ステップ1005を経てステップ1010に進む。ここで、現時点では、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」と仮定する。このような状態は、例えば、機関10を搭載した車両が機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい状態にて減速された場合等に発生する。
上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1010にて「Yes」と判定してステップ1015に進み、そのステップ1015にて「No」と判定してステップ1020に進む。現時点では、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」である。従って、CPU71はそのステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、上述したF/C前積算流量Gascを積算流量Sumに格納する。
次いで、CPU71はステップ1030に進む。現時点は、触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上となった直後である。従って、現時点では、積算流量Sumは補正後許容積算流量GAよりも小さい。従って、CPU71はそのステップ1030にて「No」と判定し、ステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105、ステップ1110及びステップ1140にて「Yes」と判定し、ステップ1145進む。次いで、CPU71は、そのステップ1145にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定し、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を行う。その後、CPU71はステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU71は、上述した図12のルーチン及び図13のルーチンに示す処理を実行する。即ち、このとき、「理論空燃比運転」が継続される。
その後、機関10が理論空燃比運転を継続すると、図7のステップ730の処理が繰り返し実行され、F/C前積算流量Gascは徐々に上昇する。いま、F/C前積算流量Gascが補正後許容積算流量GA以上となったと仮定する。更に、現時点では、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」と仮定する。
上記仮定に従えば、CPU71は、図10のステップ1000から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、及び、ステップ1015を経てステップ1020に進む。現時点では有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」であるので、CPU71は、そのステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、F/C前積算流量Gascを積算流量Sumに格納してステップ1030に進む。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1050に進む。
ここで、現時点での機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2以上であると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1055に進み、リーン運転フラグXLEANの値を「1」に設定する。その後、CPU71はステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1140に進み、リーン運転フラグXLEANの値が「0」であるか否かを判定する。現時点では、リーン運転フラグXLEANの値は「1」である。従って、CPU71は、そのステップ1140にて「No」と判定してステップ1150に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)に、理論空燃比よりもリーン側の空燃比lean(以下、「リーン空燃比lean」とも称呼する。)を格納する。
次いで、CPU71は、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対して噴射する。その後、CPU71は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。このようにして、上流側目標空燃比abyfrがリーン空燃比leanに設定された「リーン運転」が実行される。
このとき、上記同様、CPU71は、図12に示すルーチン及び図13に示すルーチンを実行してメインフィードバック量DFi及びサブフィードバック量Vafsfbを算出する。但し、サブフィードバック制御条件は不成立であるので、ステップ1320の処理によってサブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される。そして、算出された各フィードバック量に基づき、触媒53に流入するガスの空燃比が上流側目標空燃比abyfr(現時点では、リーン空燃比lean)と略一致せしめられる。
一方、現時点での機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2よりも小さいとき、CPU71は、図10のステップ1050にて「No」と判定してステップ1045に進む。そして、CPU71は、そのステップ1045にてリーン運転フラグXLEANの値を「0」に設定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、リーン運転は実行されず、理論空燃比運転が継続される。
リーン運転が実行されているときに自動変速機が低速側に運転者によって強制的にシフトダウンされることに起因して機関回転速度NEが上昇し、又は、機関回転速度NEが十分に大きい理論空燃比運転が実行されているときにアクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下に設定されることにより、上記フューエルカット開始条件が成立したと仮定する。このとき、CPU71は、図10のステップ1000から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、及び、ステップ1015を経由してステップ1035に進み、フューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定してステップ1040に進む。現時点での暖機判定フラグXTCの値は「1」であるので、CPU71は、ステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値を「1」に設定する。その後、CPU71は、ステップ1045に進んでリーン運転フラグXLEANの値を「0」に設定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この状態(フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定された状態)において、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105にて「No」と判定してステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。このとき、燃料の噴射(ステップ1135の処理)がなされず、「フューエルカット運転」が実行される。
以上に説明したように、CPU71は、触媒53の暖機が完了した時点から初回のフューエルカット運転が実行されるまでの期間、理論空燃比運転を行う。理論空燃比運転が実行されている期間、機関10に吸入される空気量Gaに応じてF/C前積算流量Gascが積算される。そして、F/C前積算流量Gascが補正後許容積算流量GAよりも大きくなると、フューエルカット開始条件が成立しなくとも、機関10が減速運転中であり且つ機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2以上であれば、リーン運転が実行される。更に、リーン運転が実行されているときに自動変速機が低速側に運転者によって強制的にシフトダウンされることに起因して機関回転速度NEが上昇し、又は、機関回転速度NEが十分に大きい理論空燃比運転が実行されているときにアクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下に設定されることによってフューエルカット開始条件が成立すると、フューエルカット運転が実行されるとともに、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値が「1」に設定される。
(3)初回のフューエルカット運転が実行された時点以降の期間
上述したように、フューエルカット運転が実行されたとき、CPU71は、上記フューエルカット復帰条件が成立するまでフューエルカット運転を継続する。ここで、フューエルカット運転が実行されている期間において上記フューエルカット運転復帰条件が成立したと仮定する。
上記仮定に従えば、CPU71は、図14のステップ1400から処理を開始すると、ステップ1420又はステップ1430の何れかにて「Yes」と判定してステップ1440に進み、フューエルカットフラグXFCの値を「0」に設定する。次いで、CPU71はステップ1450に進んで、フューエルカット運転後積算流量Gafcをゼロに設定する。その後、CPU71は、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図7のステップ700から処理を開始すると、ステップ710を経てステップ720に進む。現時点での有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「1」であるので、CPU71はそのステップ720にて「No」と判定し、ステップ740に進む。
そして、CPU71は、そのステップ740にて、下記(14)式に従ってF/C後積算流量Gafcを更新・取得する。(14)式において、Gaは現時点にて機関10に吸入される空気の流量、Gafc(k)は更新される前のF/C後積算流量Gafc、Gafc(k+1)は更新後のF/C後積算流量Gafcである。
Gafc(k+1)=Gafc(k)+Ga ・・・(14)
CPU71は、上記(14)式に従ってF/C後積算流量Gafcを更新・取得した後、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図8のステップ800から処理を開始すると、ステップ810を経てステップ820に進む。現時点では有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「1」であるので、CPU71はそのステップ820にて「No」と判定し、ステップ860に進む。
CPU71は、そのステップ860にて、触媒温度TempCと許容積算流量ga2との関係を予め定めた許容積算流量テーブルMapga2fc(TempC)に現時点での触媒温度TempCを適用することにより、現時点における許容積算流量ga2を取得する。そして、許容積算流量ga2を許容積算流量ga1として格納する。
この許容積算流量テーブルMapga2sc(TempC)によれば、上述した許容積算流量テーブルMapga1sc(TempC)と同様、触媒温度TempCが温度T1よりも小さいとき、許容積算流量ga2はゼロに設定される。また、許容積算流量ga2は、触媒温度TempCが温度T1以上であるときに触媒温度TempCが高くなるにつれて大きくなり、触媒温度TempCが温度T3に到達するときに最大値max2に到達するように設定される。更に、許容積算流量ga2は、触媒温度TempCが温度T3より大きいときに最大値max2を維持するように設定される。
なお、上記最大値max2は、上述した許容積算流量テーブルMapga1sc(TempC)の最大値max1よりも大きい値となるよう設定される。これは、現時点は「触媒53の暖機期間終了後にフューエルカット運転が実行された直後」であるので、触媒53のHC被毒は解消されており、従って、より多くの排ガス(リッチ側空燃比ガス)が触媒53を通過するまで触媒53のHC被毒の程度が軽微であるという理由による。
次いで、CPU71はステップ840に進んで補正係数kcmaxを取得してステップ850に進み、上記(13)式に従って補正後許容積算流量GAを取得する。その後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、上記ステップ860にて求められた許容積算流量ga1に基づいてステップ860にて計算された補正後許容積算流量GAは、便宜上、第2許容流量GAとも称呼される。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105、ステップ1110及びステップ1140にて「Yes」と判定し、ステップ1145進む。次いで、CPU71は、そのステップ1145にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定し、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を行う。その後、CPU71はステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、このとき、上述した「理論空燃比運転」が開始される。
その後、理論空燃比運転が継続されると、図7のステップ740の処理が繰り返し実行されるので、F/C後積算流量Gafcは徐々に上昇する。いま、F/C後積算流量Gafcが補正後許容積算流量GAよりも大きくなったと仮定する。更に、現時点では、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」と仮定する。なお、第1閾値回転速度NEfcth1及び第2閾値回転速度NEfcth2は、CPU71が図9のルーチンを実行する毎に取得・更新されている。
上記仮定に従えば、CPU71は、図10のステップ1000から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、及び、ステップ1015を経由してステップ1020に進む。現時点では有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「1」であるので、CPU71は、そのステップ1020にて「No」と判定してステップ1065に進み、F/C後積算流量Gafcを積算流量Sumに格納してステップ1030に進む。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1050に進む。
ここで、現時点での機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2以上であると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1055に進み、リーン運転フラグXLEANの値を「1」に設定する。その後、CPU71はステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110にて「Yes」と判定し、ステップ1140に進む。現時点ではリーン運転フラグXLEANの値は「1」であるので、CPU71は、そのステップ1140にて「No」と判定してステップ1150に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)に、リーン空燃比leanを格納する。
次いで、CPU71は、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対して噴射する。その後、CPU71は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、「リーン運転」が実行される。
このとき、上記同様、CPU71は、上述した図12のルーチン及び図13のルーチンに示す処理を実行し、空燃比のフィードバック制御を行う。
更に、リーン運転又は理論空燃比運転が実行されているとき、上記フューエルカット開始条件が成立したと仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図10のステップ1000から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、及び、ステップ1015の全てにて「Yes」と判定し、ステップ1035にてフューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値を「1」に設定する。その後、CPU71は、ステップ1045に進んでリーン運転フラグXLEANの値を「0」に設定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この状態(フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定された状態)において、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105にて「No」と判定してステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。このとき、燃料の噴射(ステップ1135の処理)がなされず、「フューエルカット運転」が実行される。
更に、フューエルカット運転が実行されているとき、上述のフューエルカット復帰条件が成立すると、CPU71は、図14のステップ1420又はステップ1430の何れかにて「Yes」と判定してステップ1440に進み、フューエルカットフラグXFCの値を「0」に設定する。次いで、CPU71はステップ1450に進んで、フューエルカット運転後積算流量Gafcをゼロに設定する。その後、CPU71は、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1105、ステップ1110及びステップ1140にて「Yes」と判定し、ステップ1145に進む。次いで、CPU71は、そのステップ1145にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定し、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を行う。その後、CPU71はステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU71は、上述したように図12のルーチン及び図13のルーチンに示す処理を実行する。即ち、このとき、理論空燃比運転が再開される。
以上、説明したように、第1制御装置においては、暖機期間終了後に初回のフューエルカット運転が実行され、そのフューエルカット運転の実行中にフューエルカット復帰条件が成立したとき、フューエルカット運転が停止されるとともに理論空燃比運転が実行される。理論空燃比運転が再開された後、機関10に吸入される空気量Gaに応じてF/C後積算流量Gafcが積算される。そして、F/C後積算流量Gafcが補正後許容積算流量GAよりも大きくなると、フューエルカット開始条件が成立しなくとも、機関10が減速運転中であり且つ機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2以上であれば、リーン運転が実行される。更に、フューエルカット開始条件が成立すると、フューエルカット運転が実行される。また、フューエルカット復帰条件が成立するとき、理論空燃比運転が再開されるとともにF/C後積算流量Gafcがゼロに再設定される。その後、第1制御装置は、上記同様の処理を繰り返す。
以上、期間(1)乃至(3)に分けて説明したように、第1制御装置は、
触媒53の温度TempCが所定の許容温度TempCth以上であるか否かを判定する触媒温度判定手段(図5及び図6のルーチンを参照。)と、
機関10に対する加速操作量Accpが所定の閾値操作量δ以下であるか否か及び機関10の機関回転速度が所定の第1回転速度NEfcth1以上であるか否かを判定することにより、同加速操作量が同閾値操作量以下であり且つ同機関回転速度が同第1回転速度以上であることからなるフューエルカット開始条件(図10のステップ1010及びステップ1015)が成立するか否かを判定するとともに、同フューエルカット開始条件が成立した後の期間において所定のフューエルカット復帰条件(図14のステップ1410、ステップ1420及びステップ1430)が成立するか否かを判定するフューエルカット運転条件判定手段(図14のルーチンを参照。)と、
前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット開始条件が成立すると判定された時点から同フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定される時点までの期間、機関10への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行する運転状態制御手段(図11のルーチンを参照。)と、
を備える。
更に、第1制御装置は、
前記触媒温度判定手段により触媒53の温度TempCが前記許容温度TempCth以上であると判定されているとき(XTC=1のとき)に前記フューエルカット運転が実行された場合、有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録する(XFChの値を「1」に設定する)フューエルカット運転履歴記録手段(図10のステップ1040及びステップ1060)と、
前記触媒温度判定手段により触媒53の温度TempCが前記許容温度TempCth以上であると判定された時点である第1基準時点以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算することにより得られる第1積算流量Gascを求める第1流量積算手段(図7のステップ730)と、
前記第1基準時点以降において、前記フューエルカット運転が実行される毎にゼロに設定されて(図14のステップ1450)前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定された時点である第2基準時点以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算することにより得られる第2積算流量Gafcを求める第2流量積算手段(図7のステップ740)と、
を備える。
第1制御装置において、
前記運転状態制御手段は、
前記フューエルカット運転条件判定手段により、機関10に対する加速操作量Accpが前記閾値操作量δ以下であり、且つ、機関10の機関回転速度NEが前記第1回転速度NEfcth1より小さいと判定されているとき(図10のステップ1010にて「Yes」と判定され、ステップ1015にて「No」と判定されたとき)、
前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録されていなければ(XFCh=0のとき)、
前記第1積算流量Gascが所定の第1許容流量GAよりも大きく(図10のステップ1030にて「Yes」と判定され)、且つ、機関10の機関回転速度NEが前記第1回転速度NEfcth1よりも小さい第2回転速度NEfcth2以上である場合(図10のステップ1050にて「Yes」と判定された場合)に触媒53に流入する前記排ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比leanとするリーン運転(図11のステップ1150にて上流側目標空燃比abyfrをリーン空燃比leanに設定する運転)を実行し、
前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録されていれば(XFCh=1のとき)、
前記第2積算流量Gafcが所定の第2許容流量GAよりも大きく(図10のステップ1030にて「Yes」と判定され)、且つ、機関10の機関回転速度NEが前記第2回転速度NEfcth2以上である場合(図10のステップ1050にて「Yes」と判定された場合)に前記リーン運転を実行し、
前記フューエルカット運転及び前記リーン運転の何れもが実行されていないとき前記排ガスの空燃比を実質的に理論空燃比に一致させる理論空燃比運転(図11のステップ1145にて上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比stoichに設定し、図13のステップ1340における下流側目標値Voxsrefを弱リッチ目標値Vrichに設定する運転)を実行するように構成される。
このように、第1制御装置は、「触媒53がHC被毒・半死活状態となる可能性の大きさ」を「機関10に吸入される空気の流量の積算値(第1積算流量Gasc又は第2積算流量Gafc)」に基づいて評価する。そして、この可能性が大きいと判断される場合、機関10が減速状態にあるときに、機関回転速度NEがフューエルカット開始のための閾値回転速度よりも小さくても、そのフューエルカット開始のための閾値回転速度より小さい閾値回転速度以上であれば、リーン運転を実行する。これにより、フューエルカット運転が実行できないために触媒のHC被毒の度合いが高くなる時期にリーン運転が実行される。従って、第1制御装置は、触媒のHC被毒を抑制し、触媒が半死活状態になることを出来る限り防ぐことができる。この結果、触媒の排ガス浄化性能の低下を出来る限り防ぎ、エミッションを良好に維持することができる。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。第2制御装置は、そのCPUが、図10に示すフローチャートに代わる図15のフローチャートに示す処理を実行し、図11に示すフローチャートに代わる図16のフローチャートに示す処理を実行し、且つ、図14に示すフローチャートに代わる図17のフローチャートに示す処理を実行する点につき、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第2制御装置は、第1制御装置と同様、図5乃至図9の処理を所定の時間毎に繰り返し実行する。即ち、第2制御装置は、現時点での筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NEに基づき、図5の処理によって現時点での触媒温度TempCを取得(推定)する。そして、第2制御装置は、得られた触媒温度TempCに基づき、図6の処理によって触媒53の暖機が完了しているか否か(暖機期間が終了しているか否か)を確認する。また、第2制御装置は、機関10の運転状態(暖機期間が終了しているか否か、及び、有効フューエルカット運転履歴が存在するか否か)に基づき、図7の処理によってF/C前積算流量Gasc又はF/C後積算流量Gafcを取得するとともに、図8の処理によって補正後許容積算流量GAを取得する。更に、第2制御装置は、現時点での冷却水温THWに基づき、図9の処理によって第1閾値回転速度NEfcth1及び第2閾値回転速度NEfcth2を取得する。
以下、第2制御装置の実際の作動につき、第1制御装置と同様、以下の(1)乃至(3)の期間に場合を分けて説明する。
(1)触媒の暖機が完了するまでの期間
(2)触媒の暖機が完了した時点から初回のフューエルカット運転が実行されるまでの期間
(3)初回のフューエルカット運転が実行された時点以降の期間
(1)触媒の暖機が完了するまでの期間
CPU71は、所定のタイミングにて図15に示す運転モード設定ルーチンを実行し、現時点での機関10の状態に基づいて各運転モードを選択する。図15に示したルーチンは、現時点での機関10の運転状態(アクセルペダル開度、機関回転速度、有効フューエルカット運転履歴、積算流量、補正後許容積算流量)に基づいて機関10の運転モードを選択する点につき、図10に示したルーチンと類似している。そこで、図15において図10に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図10のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は適宜省略される。
いま、触媒53の暖機期間において(即ち、暖機判定フラグXTC=0)、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」であると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図15のステップ1500から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010及びステップ1015を経てステップ1020に進む。上述した第1制御装置の場合と同様、現時点での有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」である。従って、CPU71は、そのステップ1020にて「Yes」と判定し、ステップ1025に進んでF/C前積算流量Gascを積算質量流量Sumに格納する。ここで、第1制御装置と同様、現時点におけるF/C前積算流量Gascはイニシャルルーチンにて設定されたゼロであるので、積算質量流量Sumにはゼロが格納される。
次いで、CPU71は、ステップ1030に進む。第1制御装置と同様、現時点における補正後許容積算流量GAはイニシャルルーチンにてゼロよりも大きい値に設定されている。従って、CPU71は、そのステップ1030にて「No」と判定してステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、フューエルカットフラグXFCの値は、イニシャルルーチンにて設定された「0」に維持される。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図16に示す燃料噴射制御ルーチンを実行する。図16に示したルーチンは、ステップ1140及びステップ1150を含まない点についてのみ図11と相違している。そこで、図16において図11に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図11のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は適宜省略される。
いま、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110を経てステップ1115に進み、そのステップ1115にて上流側目標空燃比abyfr(k)にリッチ空燃比richを格納する。次いで、CPU71は、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対して噴射する。その後、CPU71は、ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。このようにして、上流側目標空燃比abyfrがリッチ空燃比richに設定された「暖機運転」が実行される。
(2)触媒の暖機が完了した時点から初回のフューエルカット運転が実行されるまでの期間
暖機運転が実行されている期間、触媒53の温度は上昇する。ここで、現時点において触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上となった直後(暖機期間が終了した直後)であると仮定する。このとき、図6に示すルーチンにより、暖機判定フラグXTCの値は「1」に設定される。なお、第1制御装置と同様、触媒温度TempCは、CPU71が図5のルーチンを実行する毎に更新・取得(推定)されている。また、第1閾値回転速度NEfcth1及び第2閾値回転速度NEfcth2も、CPU71が図9のルーチンを実行する毎に取得・更新されている。
このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110を経てステップ1145に進み、そのステップ1145にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを格納する。次いで、CPU71は、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対して噴射する。その後、CPU71は、ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、第1制御装置と同様、CPU71は、図12のルーチン及び図13のルーチンに示す処理を実行し、空燃比のフィードバック制御を行う。なお、このとき、下流側目標値Voxsref(図13のステップ1340を参照。)は、弱リッチ目標値Vrichに設定される。このようにして、触媒53に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりも若干リッチ側の空燃比である「理論空燃比運転」が実行される。
以下、フューエルカット運転を実行するときの第2制御装置の作動について説明する。
第2制御装置においては、フューエルカット運転は、以下に述べる状況1及び状況2のうちの何れかの状況が生じたときに実行(開始)される。
(状況1)上述した「フューエルカット開始条件」が成立する。
(状況2)上述した「フューエルカット開始条件」が成立しない状況において、触媒53がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きく且つ機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2以上である。
なお、上述したように、触媒53がHC被毒・半死活状態となる可能性が大きいか否かは、機関10に吸入される空気の積算流量(F/C前積算流量Gasc又はF/C後積算流量Gafc)に基づいて判断される。また、上述したように、「第2閾値回転速度NEfcth2」は、フューエルカット開始条件に含まれる「第1閾値回転速度NEfcth1」よりも小さい機関回転速度である。以下、上記各状況における第2制御装置の作動について説明する。
まず、上記「状況1」が生じたときの第2制御装置の作動について説明する。
上述したように、暖機期間が終了した後、CPU71は理論空燃比運転を実行する。ここで、理論空燃比運転が実行されているとき、「フューエルカット開始条件」が成立したと仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図15のステップ1500から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010及びステップ1015の全てのステップにて「Yes」と判定し、ステップ1510に進む。そして、CPU71は、そのステップ1510にて閾値回転速度識別フラグXNEの値を「1」に設定する。
次いで、CPU71は、ステップ1035に進んでフューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定し、ステップ1040に進む。現時点では暖機期間は終了している(即ち、暖機判定フラグXTCの値は「1」である。)ので、CPU71は、そのステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値を「1」に設定する。その後、CPU71は、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105にて「No」と判定してステップ1695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。このとき、ステップ1135の処理が実行されないので、燃料の噴射がなされない。即ち、「フューエルカット運転」が実行される。
次に、上記「状況2」が生じたときの第2制御装置の作動について説明する。
暖機期間が終了した後に理論空燃比運転が継続されると、図7のステップ730の処理が繰り返し実行され、F/C前積算流量Gascは徐々に上昇する。いま、F/C前積算流量Gascが補正後許容積算流量GA以上となったと仮定する。更に、現時点では、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」(即ち、上述したフューエルカット開始条件が成立していない)と仮定する。
上記仮定に従えば、CPU71は、図15のステップ1500から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、ステップ1015を経てステップ1020に進む。現時点では有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」であるので、CPU71は、そのステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、F/C前積算流量Gascを積算流量Sumに格納してステップ1030に進む。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1050に進む。
ここで、現時点での機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2以上であると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1520に進み、閾値回転速度識別フラグXNEの値を「0」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1035に進み、上記「状況1」における処理と同様、ステップ1035、ステップ1040、及び、ステップ1060を経てステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、上記「状況1」における処理と同様、ステップ1105を経てステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、燃料の噴射(ステップ1135の処理)がなされず、「フューエルカット運転」が実行される。
なお、上述した閾値回転速度識別フラグXNEは、その値が「1」であるとき、上記「状況1」が生じたことによってフューエルカット運転が実行されたことを示す。また、閾値回転速度識別フラグXNEは、その値が「0」であるとき、上記「状況2」が生じたことによってフューエルカット運転が実行されたことを示す。
(3)初回のフューエルカット運転が実行された時点以降の期間
CPU71は、所定のタイミングにて図17に示すフューエルカット復帰判定ルーチンを実行する。図17に示したルーチンは、アクセルペダル開度及び機関回転速度に基づいてフューエルカット運転を停止すべきか否かを判定する点につき、図14に示したルーチンと類似している。そこで、図17において図14に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図14のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は適宜省略される。
第2制御装置においては、上述した状況1及び状況2のうちの何れかの状況が生じたとき、フューエルカット運転が実行(開始)される。そこで、第2制御装置は、上述した何れの状況に基づいてフューエルカット運転が開始されたかを確認するとともに、フューエルカット運転が開始された状況に応じてフューエルカット運転を停止すべきか否かを個別に判断する。
即ち、CPU71は、図17のステップ1700から処理を開始すると、現時点でのフューエルカットフラグXFCの値は「1」であるので、ステップ1410にて「Yes」と判定してステップ1420に進む。ここで、フューエルカット運転が実行された後、アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下である状態が継続されると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1420にて「No」と判定してステップ1710に進む。
CPU71は、そのステップ1710にて、閾値回転速度識別フラグXNEの値が「1」であるか否かを判定する。換言すると、CPU71は、ステップ1710にて、上述した状況1及び状況2のうちの何れの状況に基づいてフューエルカット運転が実行(開始)されたかを判定する。
即ち、状況1に基づいてフューエルカット運転が実行された場合、閾値回転速度識別フラグXNEの値は「1」である。従って、このとき、CPU71はそのステップ1710にて「Yes」と判定してステップ1720に進み、閾値回転速度NEfcthに第1閾値回転速度NEfcth1を格納する。次いで、CPU71は、ステップ1730に進み、機関回転速度NEが閾値回転速度NEfcthから所定回転速度ΔNだけ小さい回転速度(以下、便宜上、「第1フューエルカット復帰閾値回転速度NEfcre1」とも称呼する。)よりも小さいか否かを判定する。
ここで、機関回転速度NEが第1フューエルカット復帰閾値回転速度NEfcre1よりも小さいとき、CPU71は、そのステップ1730にて「Yes」と判定してステップ1440に進み、フューエルカットフラグXFCの値を「0」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1450に進んでF/C後積算流量Gafcをゼロに再設定し、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、状況2に基づいてフューエルカット運転が実行された場合、閾値回転速度識別フラグXNEの値は「0」である。従って、このとき、CPU71はそのステップ1710にて「No」と判定してステップ1740に進み、閾値回転速度NEfcthに第2閾値回転速度NEfcth2を格納する。次いで、CPU71は、ステップ1730に進み、機関回転速度NEが閾値回転速度NEfcthから所定回転速度ΔNだけ小さい回転速度(以下、便宜上、「第2フューエルカット復帰閾値回転速度NEfcre2」とも称呼する。)よりも小さいか否かを判定する。
ここで、機関回転速度NEが第2フューエルカット復帰閾値回転速度NEfcre2よりも小さいとき、CPU71は、上述した「状況1」によりフューエルカット運転が実行された場合と同様、ステップ1440にてフューエルカットフラグXFCの値を「0」に設定するとともにステップ1450にてF/C後積算流量Gafcをゼロに再設定し、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
上述した何れの場合においても、フューエルカットフラグXFCの値が「0」に設定されているとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110を経てステップ1145に進み、そのステップ1145にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを格納する。次いで、CPU71は、ステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、最終燃料噴射量Fiの燃料を燃料噴射気筒に対して噴射する。更に、CPU71は、図12及び図13に示す空燃比フィードバック制御を行う。このようにして、「理論空燃比運転」が再開される。
なお、フューエルカット運転が実行されている期間においてアクセルペダル開度が閾値開度δよりも大きくなったとき、CPU71は、図17のステップ1420にて「Yes」と判定し、ステップ1420に続くステップ1440及びステップ1450の処理を実行する。その結果、上記同様、「理論空燃比運転」が再開される。即ち、このとき(アクセルペダル開度が閾値開度δよりも大きくなったとき)、状況1及び状況2のうちの何れに基づいてフューエルカット運転が実行された場合においても、フューエルカット運転が停止されて「理論空燃比運転」が再開される。また、CPU71がステップ1730に進んだとき、機関回転速度NEが閾値回転速度NEfcthから所定回転速度ΔNだけ小さい回転速度以上であると、CPU71はそのステップ1730にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
理論空燃比運転が再開された後、第2制御装置は、上記同様、上述した「状況1」及び「状況2」のうちの何れかの状況が生じたときにフューエルカット運転を実行する。「状況1」が生じたときの第2制御装置の作動は、上述した作動と同一である。そこで、以下では、理論空燃比運転が再開された後に「状況2」が生じたときの第2制御装置の作動について説明する。
理論空燃比運転が再開された後、その理論空燃比運転が継続されると、図7のステップ740の処理が繰り返し実行されるので、F/C後積算流量Gafcは徐々に上昇する。いま、F/C後積算流量Gafcが補正後許容積算流量GAよりも大きくなったと仮定する。更に、現時点では、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」と仮定する。なお、第1閾値回転速度NEfcth1及び第2閾値回転速度NEfcth2は、CPU71が図9のルーチンを実行する毎に取得・更新されている。
上記仮定に従えば、CPU71は、図15のステップ1500から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、ステップ1015を経てステップ1020に進む。現時点では有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「1」であるので、CPU71は、そのステップ1020にて「No」と判定してステップ1065に進み、F/C後積算流量Gafcを積算流量Sumに格納してステップ1030に進む。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1050に進む。ここで、現時点での機関回転速度NEが第2閾値回転速度NEfcth2以上であれば、CPU71は、そのステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1520に進み、閾値回転速度識別フラグXNEの値を「0」に設定する。
次いで、CPU71は、ステップ1035に進んでフューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定し、ステップ1040に進む。現時点では暖機期間は終了している(即ち、暖機判定フラグXTCの値は「1」である。)ので、CPU71は、そのステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値を「1」に設定する。その後、CPU71は、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105にて「No」と判定してステップ1695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。このとき、燃料の噴射(ステップ1135の処理)がなされず、「フューエルカット運転」が実行される。
上述したように、フューエルカット運転が実行されている期間において、第2制御装置は、状況1及び状況2のうちの何れの状況に基づいてフューエルカット運転が開始されたかを確認するとともに、フューエルカット運転が開始された状況に応じてフューエルカット運転を停止すべきか否かを個別に判断する。そして、第2制御装置は、フューエルカット運転を停止すべきと判断したとき、フューエルカット運転を停止するとともに理論空燃比運転を再開する。
以上、説明したように、第2制御装置においては、暖機期間が終了した後、理論空燃比運転が実行される。そして、理論空燃比運転が実行されているとき、フューエルカット開始条件が成立すればフューエルカット運転が実行される。一方、フューエルカット開始条件が成立しなくとも、触媒53がHC被毒・半死活状態となる可能性が高いと判断されれば、フューエルカット開始条件に定められる第1閾値回転速度NEfcth1よりも「小さい」回転速度(第2閾値回転速度NEfcth2)を閾値回転速度として「フューエルカット運転」が実行される。フューエルカット運転が開始された後、そのフューエルカット運転が開始された状況に応じてフューエルカット運転が停止されるべきか否かが判断される。そして、フューエルカット運転が停止されたとき、理論空燃比運転が再開される。その後、第2制御装置は、上記同様の処理を繰り返す。
以上、期間(1)乃至(3)に分けて説明したように、第2制御装置は、
触媒53の温度TempCが所定の許容温度TempCth以上であるか否かを判定する触媒温度判定手段(図5及び図6のルーチンを参照。)と、
機関10に対する加速操作量Accpが所定の閾値操作量δ以下であるか否か及び機関10の機関回転速度が所定の第1回転速度NEfcth1以上であるか否かを判定することにより、同加速操作量が同閾値操作量以下であり且つ同機関回転速度が同第1回転速度以上であることからなるフューエルカット開始条件(図15のステップ1010及びステップ1015)が成立するか否かを判定するとともに、同フューエルカット開始条件が成立した後の期間において所定のフューエルカット復帰条件(図17のステップ1410、ステップ1420及びステップ1730)が成立するか否かを判定するフューエルカット運転条件判定手段(図17のルーチンを参照。)と、
前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット開始条件が成立すると判定された時点から同フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定される時点までの期間、機関10への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行する運転状態制御手段(図16のルーチンを参照。)と、
を備える。
更に、第2制御装置は、
前記触媒温度判定手段により触媒53の温度TempCが前記許容温度TempCth以上であると判定されているとき(XTC=1のとき)に前記フューエルカット運転が実行された場合、有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録する(XFChの値を「1」に設定する)フューエルカット運転履歴記録手段(図15のステップ1040及びステップ1060)と、
前記触媒温度判定手段により触媒53の温度TempCが前記許容温度TempCth以上であると判定された時点である第1基準時点以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算することにより得られる第1積算流量Gascを求める第1流量積算手段(図7のステップ730)と、
前記第1基準時点以降において、前記フューエルカット運転が実行される毎にゼロに設定されて(図17のステップ1450)前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定された時点である第2基準時点以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算することにより得られる第2積算流量Gafcを求める第2流量積算手段(図7のステップ740)と、
を備える。
第2制御装置において、
前記フューエルカット運転条件判定手段は、更に、
機関10に対する加速操作量Accpが前記閾値操作量δ以下であり(図15のステップ1010にて「Yes」と判定され)、且つ、機関10の機関回転速度NEが前記第1回転速度NEfcth1より小さいと判定しているとき(図15のステップ1015にて「No」と判定されているとき)、
前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録されていなければ(XFCh=0のとき)、
前記第1積算流量Gascが所定の第1許容流量GAよりも大きく(図15のステップ1030にて「Yes」と判定され)、且つ、機関10の機関回転速度NEが前記第1回転速度NEfcth1よりも小さい第2回転速度NEfcth2以上である場合(図15のステップ1050にて「Yes」と判定された場合)に前記フューエルカット開始条件が成立すると判定し、
前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録されていれば(XFCh=1のとき)、
前記第2積算流量Gafcが所定の第2許容流量GAよりも大きく(図15のステップ1030にて「Yes」と判定され)、且つ、機関10の機関回転速度NEが前記第2回転速度NEfcth2以上である場合(図15のステップ1050にて「Yes」と判定された場合)に前記フューエルカット開始条件が成立すると判定するように構成される。
このように、第2制御装置は、触媒53がHC被毒・半死活状態となる可能性の大きさを機関10に吸入される空気の流量に基づいて評価する。そして、第2制御装置は、この可能性が大きい場合、フューエルカット開始のための機関回転速度の閾値を低下させることにより、フューエルカット運転が実行され易くする。これにより、第2制御装置は、触媒のHC被毒の度合いを的確に評価することができるとともに、触媒のHC被毒の度合いが高くなると判断される時期にフューエルカット運転が実行される頻度を高める。従って、触媒のHC被毒を抑制して触媒が半死活状態になることを出来る限り防ぐことができる。この結果、触媒の排ガス浄化性能の低下を出来る限り防ぎ、エミッションを良好に維持することができる。
(第3制御装置)
以下、本発明の第3実施形態に係る制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。第3制御装置は、そのCPUが、図9に示すフローチャートに代わる図18のフローチャートに示す処理を実行し、図10に示すフローチャートに代わる図19のフローチャートに示す処理を実行し、且つ、図11に示すフローチャートに代わる図16(第2制御装置と同様。)をする点につき、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第3制御装置は、第1制御装置と同様、図5乃至図8の処理を所定の時間毎に繰り返し実行する。即ち、第3制御装置は、現時点での筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NEに基づき、図5の処理によって現時点での触媒温度TempCを取得(推定)する。そして、第3制御装置は、得られた触媒温度TempCに基づき、図6の処理によって触媒53の暖機が完了しているか否か(暖機期間が終了しているか否か)を確認する。また、第3制御装置は、機関10の運転状態(暖機期間が終了しているか否か、及び、有効フューエルカット運転履歴が存在するか否か)に基づき、図7の処理によってF/C前積算流量Gasc又はF/C後積算流量Gafcを取得するとともに、図8の処理によって補正後許容積算流量GAを取得する。
更に、第3制御装置は、所定のタイミングにて図18に示すフューエルカット運転閾値回転速度設定ルーチンを実行し、上述した「フューエルカット開始条件」の一つである第1閾値回転速度NEfcth1を取得する。即ち、CPU71は、所定のタイミングにて図18のステップ1800から処理を開始し、ステップ1810に進む。CPU71は、そのステップ1810にて、機関10の冷却水温THWと閾値回転速度との関係を予め定めた閾値回転速度テーブルMapNEfcth1(THW)及びMapNEfcth1(THW)に対し、水温センサ65の出力値に基づいて取得した現時点での冷却水温THWを適用することにより、現時点における「第1閾値回転速度NEfcth1」を取得する。その後、CPU71はステップ1895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以下、第3制御装置の実際の作動につき、第1制御装置と同様、以下の(1)乃至(3)の期間に場合を分けて説明する。
(1)触媒の暖機が完了するまでの期間
(2)触媒の暖機が完了した時点から初回のフューエルカット運転が実行されるまでの期間
(3)初回のフューエルカット運転が実行された時点以降の期間
(1)触媒の暖機が完了するまでの期間
CPU71は所定のタイミングにて図19に示す運転モード設定ルーチンを実行し、現時点での機関10の状態に基づいて各運転モードを選択する。図19に示したルーチンは、現時点での機関10の運転状態(アクセルペダル開度、機関回転速度、有効フューエルカット運転履歴、積算流量、補正後許容積算流量)に基づいて機関10の運転モードを選択する点につき、図10に示したルーチンと類似している。そこで、図19において図10に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図10のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は適宜省略される。
いま、触媒53の暖機期間において(即ち、暖機判定フラグXTC=0)、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」であると仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図19のステップ1900から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010及びステップ1015を経てステップ1020に進む。上述した第1制御装置の場合と同様、現時点での有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」である。従って、CPU71は、そのステップ1020にて「Yes」と判定し、ステップ1025に進んでF/C前積算流量Gascを積算質量流量Sumに格納する。ここで、第1制御装置と同様、現時点におけるF/C前積算流量Gascはイニシャルルーチンにて設定されたゼロであるので、積算質量流量Sumにはゼロが格納される。
次いで、CPU71は、ステップ1030に進む。第1制御装置と同様、現時点における補正後許容積算流量GAはイニシャルルーチンにてゼロよりも大きい値に設定されている。従って、CPU71は、そのステップ1030にて「No」と判定してステップ1910に進み、変速制御則識別フラグXCRの値を「0」に設定する。次いで、CPU71はステップ1995に進み、本ルーチンを一旦終了する。このとき、フューエルカットフラグXFCの値は、イニシャルルーチンにて設定された「0」に維持される。
変速制御則識別フラグXCRは、その値が「0」であるとき、変速装置90を制御するための変速制御則として通常の運転時の「第1変速制御則」を採用することを示す。また、変速制御則識別フラグXCRは、その値が「1」であるとき、上記変速制御則として「第1変速制御則以上の変速比が少なくとも一部の運転領域において得られる第2変速制御則」を採用することを示す。なお、第1変速制御則及び第2変速制御則については後述する。
更に、CPU71は、所定のタイミングにて図20に示す運転制御則設定ルーチンを実行する。即ち、CPU71は、所定のタイミングにて図20のステップ2000から処理を開始すると、ステップ2010に進んで変速制御則識別フラグXCRの値が「0」であるか否かを判定する。現時点での変速制御則識別フラグXCRの値は「0」であるので、CPU71は、そのステップ2010にて「Yes」と判定してステップ2020に進む。そして、CPU71は、そのステップ2020にて、「第1変速制御則」に従って変速装置90を制御するよう変速制御装置80に指示を与える。その後、CPU71は、ステップ2095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU71は、第2制御装置と同様、所定のタイミングにて図16に示す燃料噴射制御ルーチンを実行する。図16に示すルーチンにおける第3制御装置の作動は、第2制御装置と同一である。即ち、このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110を経てステップ1115に進み、そのステップ1115に続くステップ1120乃至1135の処理を実行し、ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。これらの処理により、上流側目標空燃比abyfrがリッチ空燃比richに設定された「暖機運転」が実行される。
(2)触媒の暖機が完了した時点から初回のフューエルカット運転が実行されるまでの期間
暖機運転が実行されている期間、触媒53の温度は上昇する。ここで、現時点において触媒温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上となった直後(暖機期間が終了した直後)であると仮定する。このとき、図6に示すルーチンにより、暖機判定フラグXTCの値は「1」に設定される。なお、第1制御装置と同様、触媒温度TempCは、CPU71が図5のルーチンを実行する毎に更新・取得(推定)されている。また、第1閾値回転速度NEfcth1は、CPU71が図18のルーチンを実行する毎に取得・更新されている。
このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105及びステップ1110を経てステップ1145に進み、そのステップ1145に続くステップ1120乃至ステップ1135の処理を実行し、ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、第1制御装置と同様、CPU71は、図12のルーチン及び図13のルーチンに示す処理を実行し、空燃比のフィードバック制御を行う。なお、このとき、下流側目標値Voxsref(図13のステップ1340を参照。)は、弱リッチ目標値Vrichに設定される。このようにして、触媒53に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりも若干リッチ側の空燃比である「理論空燃比運転」が実行される。
暖機期間が終了した後に理論空燃比運転が継続されると、図7のステップ730の処理が繰り返し実行され、F/C前積算流量Gascは徐々に上昇する。いま、F/C前積算流量Gascが補正後許容積算流量GA以上となったと仮定する。更に、現時点では、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」(即ち、上述したフューエルカット開始条件が成立していない)と仮定する。
上記仮定に従えば、CPU71は、図19のステップ1900から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、ステップ1015を経てステップ1020に進む。現時点では有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「0」であるので、CPU71は、そのステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、F/C前積算流量Gascを積算流量Sumに格納してステップ1030に進む。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1030にて「Yes」と判定してステップ1920に進み、変速制御則識別フラグXCRの値を「1」に設定する。
このとき、CPU71は、図20のステップ2000から処理を開始すると、現時点での変速制御則識別フラグXCRの値は「1」であるので、ステップ2010にて「No」と判定してステップ2030に進む。CPU71は、そのステップ2030にて「第2変速制御則」に従って変速装置90を制御するよう変速制御装置80に指示を与える。その後、CPU71は、ステップ2095に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この時点から、変速装置90は「第2変速制御則」に従うよう制御される。
図21に、第3制御装置を多段式の自動変速装置に適用する場合の変速比マップ(変速線図)の一例を示す。図21において、実線は「第1変速制御則」に対応する変速比マップ(変速線)を示し、点線は「第2変速制御則」に対応する変速比マップ(変速線)を示す。変速制御則を第1変速制御則(XCR=0)から第2変速制御則(XCR=1)に変更すると、図21に示すように、第1変速制御則が採用されているときに比べてより大きな機関回転速度が得られる車速領域(実線と点線とで挟まれる領域)が生じる。この結果、フューエルカット開始条件が成立し易くなる。
変速装置90が第2変速制御則に従うよう制御されつつ理論空燃比運転が実行されているとき、上記フューエルカット開始条件が成立したと仮定する。本仮定に従えば、CPU71は、図19のステップ1900から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010及びステップ1015の全てのステップにて「Yes」と判定し、ステップ1035に進む。CPU71は、そのステップ1035にてフューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定し、ステップ1040に進む。現時点では暖機期間は終了している(即ち、暖機判定フラグXTCの値は「1」である。)ので、CPU71は、そのステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値を「1」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1910に進んで変速制御則識別フラグXCRの値を「0」に設定し、ステップ1995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図20のステップ2000から処理を開始すると、ステップ2010にて「Yes」と判定してステップ2010に進み、「第1変速制御則」に従って変速装置90を制御するよう変速制御装置80に指示を与える。その後、CPU71は、ステップ2095に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この時点から、変速装置90は「第1変速制御則」に従うよう制御される。
更に、このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105にて「No」と判定してステップ1695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。このとき、燃料の噴射(ステップ1135の処理)がなされず、「フューエルカット運転」が実行される。
(3)初回のフューエルカット運転が実行された時点以降の期間
CPU71は、所定のタイミングにて図14に示すフューエルカット復帰判定ルーチンを実行する。図14に示すルーチンにおける第3制御装置の作動は、第1制御装置と同一である。即ち、ここでフューエルカット復帰条件が成立すると、「理論空燃比運転」が再開される。
理論空燃比運転が再開された後、その理論空燃比運転が継続されると、図7のステップ740の処理が繰り返し実行されるので、F/C後積算流量Gafcは徐々に上昇する。いま、F/C後積算流量Gafcが補正後許容積算流量GAよりも大きくなったと仮定する。更に、現時点では、「アクセルペダル開度Accpが閾値開度δ以下」であり、且つ、「機関回転速度NEが第1閾値回転速度NEfcth1より小さい」と仮定する。なお、第1閾値回転速度NEfcth1は、CPU71が図18のルーチンを実行する毎に取得・更新されている。
上記仮定に従えば、CPU71は、図19のステップ1900から処理を開始すると、ステップ1005、ステップ1010、ステップ1015を経てステップ1020に進む。現時点では有効フューエルカット運転履歴フラグXFChの値は「1」であるので、CPU71は、そのステップ1020にて「No」と判定してステップ1065に進み、F/C後積算流量Gafcを積算流量Sumに格納してステップ1030に進む。上記仮定に従えば、CPU71は、そのステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1920に進んで、変速制御則識別フラグXCRの値を「1」に設定する。その後、CPU71は、ステップ1995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、CPU71は、図20のステップ2000から処理を開始すると、ステップ2010を経てステップ2030に進み、「第2変速制御則」に従って変速装置90を制御するよう変速制御装置80に指示を与える。その後、CPU71は、ステップ2095に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この時点から、変速装置90は「第2変速制御則」に従うよう制御される。
変速装置90が第2変速制御則に従うよう制御されつつ理論空燃比運転が実行されているとき、上記フューエルカット開始条件が成立すると、CPU71は、図19のステップ1005、ステップ1010及びステップ1015を経てステップ1035に進み、フューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定する。次いで、CPU71は、ステップ1040及びステップ1060を経てステップ1910に進んで変速制御則識別フラグXCRの値を「0」に設定し、ステップ1995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このとき、このとき、CPU71は、図16のステップ1600から処理を開始すると、ステップ1105にて「No」と判定してステップ1695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。このとき、燃料の噴射(ステップ1135の処理)がなされず、「フューエルカット運転」が実行される。
更に、フューエルカット運転の実行中にフューエルカット復帰条件が成立すると、上述したように「理論空燃比運転」が再開される。
以上、説明したように、第3制御装置においては、暖機期間が終了した後に理論空燃比運転が実行される。理論空燃比運転が実行されているとき、フューエルカット開始条件が成立せず触媒53がHC被毒・半死活状態となる可能性が高くなると、変速装置90を制御するための変速制御則が「第1変速制御則」から「第2変速制御則」へと変更される。そして、変速装置90が「第2変速制御則」に従うよう制御されているとき、フューエルカット開始条件が成立すると、フューエルカット運転が実行されるとともに変速制御則が「第1変速制御則」に変更される。そして、フューエルカット運転が実行されているときにフューエルカット復帰条件が成立した場合、フューエルカット運転を停止して理論空燃比運転を再開する。
以上、期間(1)乃至(3)に分けて説明したように、第3制御装置は、
触媒53の温度TempCが所定の許容温度TempCth以上であるか否かを判定する触媒温度判定手段(図5及び図6のルーチンを参照。)と、
機関10に対する加速操作量Accpが所定の閾値操作量δ以下であるか否か及び機関10の機関回転速度が所定の第1回転速度NEfcth1以上であるか否かを判定することにより、同加速操作量が同閾値操作量以下であり且つ同機関回転速度が同第1回転速度以上であることからなるフューエルカット開始条件(図19のステップ1010及びステップ1015)が成立するか否かを判定するとともに、同フューエルカット開始条件が成立した後の期間において所定のフューエルカット復帰条件(図14のステップ1410、ステップ1420及びステップ1430)が成立するか否かを判定するフューエルカット運転条件判定手段(図14のルーチンを参照。)と、
前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット開始条件が成立すると判定された時点から同フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定される時点までの期間、機関10への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行する運転状態制御手段(図16のルーチンを参照。)と、
を備える。
更に、第3制御装置は、
前記触媒温度判定手段により触媒53の温度TempCが前記許容温度TempCth以上であると判定されているとき(XTC=1のとき)に前記フューエルカット運転が実行された場合、有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録する(XFChの値を「1」に設定する)フューエルカット運転履歴記録手段(図19のステップ1040及びステップ1060)と、
前記触媒温度判定手段により触媒53の温度TempCが前記許容温度TempCth以上であると判定された時点である第1基準時点以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算することにより得られる第1積算流量Gascを求める第1流量積算手段(図7のステップ730)と、
前記第1基準時点以降において、前記フューエルカット運転が実行される毎にゼロに設定されて(図14のステップ1450)前記フューエルカット運転条件判定手段により前記フューエルカット復帰条件が成立すると判定された時点である第2基準時点以降に機関10に吸入された空気の流量Gaを積算することにより得られる第2積算流量Gafcを求める第2流量積算手段(図7のステップ740)と、
を備える。
更に、第3制御装置は、
前記フューエルカット運転条件判定手段により、機関10に対する加速操作量Accpが前記閾値操作量δ以下であり、且つ、機関10の機関回転速度NEが前記第1回転速度NEfcth1より小さいと判定されているとき(図19のステップ1010にて「Yes」と判定され、ステップ1015にて「No」と判定されたとき)、
前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録されていなければ(XFCh=0のとき)、
前記第1積算流量Gascが所定の第1許容流量GAよりも大きい場合(図19のステップ1030にて「Yes」と判定された場合)、前記第1変速制御則に従う変速比以上の変速比が少なくとも一部の運転領域(特に、スロットルバルブ開度がゼロに近い微小な角度であるとき)において得られる第2変速制御則に従って前記変速装置を制御するように前記変速制御手段に要求を発生し(図20のステップ2020)、
前記有効フューエルカット運転履歴が存在すると記録されていれば(XFCh=1のとき)、
前記第2積算流量Gafcが所定の第2許容流量GAよりも大きい場合(図19のステップ1030にて「Yes」と判定された場合)、前記第2変速制御則に従って前記変速装置を制御するように前記変速制御手段に要求を発生する(図20のステップ2030)変速要求手段と
を備える。
このように、第3制御装置は、触媒53がHC被毒・半死活状態となる可能性の大きさを機関10に吸入される空気の流量に基づいて評価する。そして、第3制御装置は、この可能性が大きい場合、変速装置90を制御するための変速制御則を「第1変速制御則」から「第2変速制御則」へと変更することにより、所定の車速領域において大きな機関回転速度が得られるようにする。この結果、フューエルカット開始条件が成立し易くなる。これにより、触媒のHC被毒の度合いを的確に評価するとともに、触媒のHC被毒の度合いが高くなると判断される時期にフューエルカット運転の実行頻度が高められる。従って、触媒のHC被毒を抑制して触媒が半死活状態になることを出来る限り防ぐことができる。この結果、触媒の排ガス浄化性能の低下を出来る限り防ぎ、エミッションを良好に維持することができる。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上述した各制御装置においては、上流側目標空燃比abyfrをリッチ空燃比richに設定することにより、「暖機運転」が実行されている。これに代え、本発明の制御装置は、混合気への点火時期をMBT(Maximum advance for Best Torque)よりも遅角させることによって暖機運転が実行されるように構成されてもよい。更に、本発明の制御装置は、これらを組み合わせることによって暖機運転が実行されるように構成されてもよい。
また、上述した各制御装置は、触媒53の暖機期間の終了後にフューエルカット運転が実行されたとき、そのフューエルカット運転が停止される時点にてF/C後積算流量Gafcをゼロに再設定するように構成されている(図14のステップ1450、図17のステップ1450を参照。)。しかし、F/C後積算流量Gafcをゼロに再設定するタイミングはこの時点に限られない。即ち、本発明の制御装置は、触媒53の暖機期間の終了後にフューエルカット運転が開始されてからそのフューエルカット運転が停止されるまでの期間のうちの何れかの時点にてF/C後積算流量Gafcがゼロに再設定されるように構成されてもよい。
また、上述した各制御装置は、許容積算流量テーブル(図8のステップ830又はステップ860)にて取得した許容積算流量ga1を補正係数テーブル(図8のステップ840)にて取得した補正係数kcmaxによって補正するよう構成されている。しかし、本発明の制御装置は、許容積算流量ga1の補正を行わないで許容積算流量ga1そのものに基づいて(即ち、図8のステップ840を削除して)機関10の運転モードを決定するように構成されてもよい。
また、上述した各制御装置は、触媒53の暖機期間中においてもフューエルカット運転が実行されるように構成されている。しかし、本発明の制御装置は、触媒53の暖機期間中においてはフューエルカット運転を禁止するように構成されてもよい。
10…内燃機関、20…シリンダブロック部、21…シリンダ、22…ピストン、25…燃焼室、30…シリンダヘッド部、31…吸気ポート、32…吸気弁、34…排気ポート、35…排気弁、37…点火プラグ、39…インジェクタ、40…吸気系統、41…吸気管、43…スロットルバルブ、50…排気系統、51…エキゾーストマニホールド、52…エキゾーストパイプ、53…触媒、61…熱線式エアフローメータ、66…上流側空燃比センサ、67…下流側空燃比センサ、70…電気制御装置、71…CPU、74…バックアップRAM。