JP2009250163A - 可変圧縮比内燃機関の制御装置 - Google Patents

可変圧縮比内燃機関の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】フューエルカット(FC)運転中に触媒の温度が低下した場合にのみFC運転の終了後に速やかに触媒の温度を上昇させるように機械圧縮比を低下させ、触媒の酸素吸蔵量を速やかに適正値に近づけることが可能な内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置は機械圧縮比を変更する圧縮比変更機構を備えるとともに排気通路に触媒を備えた機関に適用される。制御装置は、機関の運転状態に応じて通常運転時の基本目標機械圧縮比εmtgtbを決定する(ステップ710)。そして、フューエルカット運転中に例えば触媒の温度が所定温度以下になったとき、圧縮比低下フラグXDの値を「1」に設定する。圧縮比低下フラグXDの値が「1」に設定されると、制御装置は「基本目標機械圧縮比εmtgtbを所定機械圧縮比Bだけ減少させた圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比εmtgt」に設定する(ステップ720、ステップ750乃至ステップ770)。
【選択図】図7

Description

本発明は、排気通路に触媒を備えるとともに機械圧縮比を変更することができる可変圧縮比内燃機関の制御装置に関する。
従来から、運転状態に応じて機械圧縮比を変更することができる可変圧縮比内燃機関が提案されている。このような可変圧縮比内燃機関は、例えば、以下の何れかの手法等に基づいて機械圧縮比を変更する。
(1)リンク機構を用いてピストンの移動量(ピストンが下死点位置から上死点位置にまで移動する際の移動距離)を変更させる(例えば、特許文献1を参照。)。
(2)クランクケースに対するシリンダブロックの傾斜角を変更させる。
(3)シリンダブロックをクランクケースに対してシリンダの軸線方向に移動させる(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照。)。
(4)ピストンとクランク軸との距離を変更させる(例えば、特許文献4を参照。)。
このような可変圧縮比内燃機関の排気通路にも、通常の内燃機関と同様、排気浄化用の触媒装置(三元触媒、以下、単に「触媒」とも称呼する。)が配設される。一般に、触媒はセラミックからなる担持体に白金及びロジウム等の貴金属を担持している。触媒は、その貴金属の温度が活性温度以上である場合(即ち、触媒が活性化している場合)、機関から排出され且つ触媒に流入する未燃物(HC,CO等)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進する。従って、触媒が活性化していて且つ機関の排ガスの空燃比(即ち、触媒に流入するガスの空燃比)が理論空燃比であるとき、触媒は排ガス中の未燃物及び窒素酸化物を同時に高い浄化率にて浄化することができる。
このような酸化還元反応においては、触媒に担持された貴金属の微粒子が酸化還元反応の活性点(触媒活性点)となる。適正な効率で酸化還元反応を進行させるには、触媒活性点において適正な酸素濃度を保つことが必要である。そこで、触媒は、「セリア(CeO2)」等の酸素吸蔵物質を担持している。酸素吸蔵物質は、酸素を吸蔵するともに触媒活性点へ酸素を供給することにより触媒活性点における酸素濃度の調整を行うと考えられている。触媒のこのような機能は、「酸素吸蔵機能(酸素吸蔵放出機能、O2ストレージ機能)」と称呼される。触媒に加えられた酸素吸蔵物質は、その物質の温度が所定の温度(以下、便宜上「酸素移動可能温度」と称呼する。)以上であるときに酸素をその物質内で容易に移動させることができる。酸素移動可能温度は例えば400℃程度であり、一般に、上記貴金属の活性温度(例えば600℃程度)よりも低い。
一方、内燃機関の運転状態が減速運転状態等になると、機関への燃料供給が停止される。即ち、フューエルカット運転が実行される。フューエルカット運転中、機関からは空気のみが排出される。従って、触媒には多量の酸素が流入するから、触媒の酸素吸蔵量(触媒が吸蔵している酸素の量)は、その触媒の酸素吸蔵量の最大値である最大酸素吸蔵量に到達するか又は最大酸素吸蔵量近傍にまで増大する。
フューエルカット運転中に減速運転状態が終了する等の所定の条件(フューエルカット復帰条件)が満たされると、フューエルカット運転が停止される。即ち、燃料供給が再開される。このとき、触媒の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量又は最大酸素吸蔵量近傍になっているから、その後に触媒に流入する未燃物は、触媒に吸蔵されている酸素により消費される。その結果、触媒の窒素酸化物を還元する能力が低下する。
そこで、従来の制御装置は、フューエルカット運転の終了後(燃料供給再開後、フューエルカット復帰後)の所定の期間、機関に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比になるように、燃料噴射量(燃料供給量)を増量する。この増量は「フューエルカット復帰時リッチ増量」又は「フューエルカット復帰増量」とも称呼される。このフューエルカット復帰増量により、過剰な未燃物が触媒に流入する。従って、触媒に吸蔵されている酸素が迅速に消費される。その結果、酸素吸蔵量はフューエルカット運転の終了後から短期間のうちに適正な量(例えば、最大酸素吸蔵量の半分程度)に到達する。これにより、触媒は多量の窒素酸化物を還元することができる状態となる。
ところで、フューエルカット運転中、触媒は触媒に流入する低温の空気により急速に冷却される。従って、フューエルカット運転中、酸素吸蔵物質の温度は酸素移動可能温度よりも高いが、貴金属の温度がその活性温度よりも低くなる場合がある。この場合、触媒は依然として酸素を吸蔵することができるから、酸素吸蔵量は最大酸素吸蔵量に到達するか又は最大酸素吸蔵量近傍にまで増大する。
このような状態において、燃料供給が再開し、フューエルカット復帰増量が実行されることにより触媒に過剰の未燃物が流入した場合、貴金属の温度はその活性温度より低いから、触媒は未燃物を効率的に酸化することができない。即ち、フューエルカット運転中に触媒に吸蔵された酸素は、フューエルカット復帰増量によって過剰な未燃物が触媒に流入しても、その未燃物により効率良く消費されない。その結果、触媒の酸素吸蔵量が過度に大きい(最大酸素吸蔵量に近い)期間が長くなり、触媒が窒素酸化物を効率良く浄化し得ない期間が長くなるという問題が発生する。更に、この場合、フューエルカット復帰増量時間を長くせざるを得ないから、無駄な燃料が消費されるという問題も発生する。
特開2004−239147号公報 特開2003−206771号公報 特開2007−303423号公報 特開平2−163429号公報
本発明者は、上記課題に着目して鋭意検討を行った結果、触媒を備える機関が上述した機械圧縮比を変更できる可変圧縮比内燃機関であれば、少なくともフューエルカット運転の終了後において機械圧縮比を低下させることにより、触媒の温度を速やかに上昇させることができ、酸素吸蔵量が過大である期間を短縮することができるとの知見を得た。更に、本発明者は、フューエルカット運転中に触媒の温度がそれほど低下していないにも拘らずフューエルカット運転の終了後において必ず機械圧縮比を低下させるようにすると、触媒の温度が過度に高くなる場合が発生し、その結果、触媒のシンタリング等による熱劣化を早めてしまう場合があるという知見を得た。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。即ち、本発明による可変圧縮比内燃機関の制御装置は、フューエルカット期間中に触媒の温度が必要以上に低下した場合にのみ機械圧縮比を低下させる。これにより、本発明による制御装置は、フューエルカット運転が終了された後の期間において、必要な場合にのみ触媒の温度を速やかに上昇させ、触媒の貴金属の温度を速やかに活性温度に到達させる。この結果、本発明による制御装置は、フューエルカット運転が終了された後の期間において、触媒に流入する未燃物により酸素を効率よく消費させることができる。従って、この制御装置は、触媒の酸素吸蔵量を速やかに適正値に近づけることができるので、大気中に排出される「窒素酸化物の量」を低減することができるとともに、触媒の熱劣化が進行しないようにすることができる。
より具体的に述べると、本発明による可変圧縮比内燃機関の制御装置は、
排気通路に配設された触媒と、ピストンが「上死点位置にあるときの燃焼室容積」に対する「ピストンが下死点位置にあるときの燃焼室容積」の比である「機械圧縮比」を指示に応じて変更し得る機械圧縮比変更機構と、を備えた可変圧縮比内燃機関に適用される。
この制御装置は、
所定のフューエルカット開始条件が成立したとき前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行するとともに同フューエルカット運転の実行中において所定のフューエルカット復帰条件が成立したとき同フューエルカット運転を中止して前記機関への燃料供給を再開するフューエルカット制御手段と、
前記フューエルカット運転の実行中において前記触媒の温度が「閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定された場合、「前記フューエルカット復帰条件が成立することにより前記フューエルカット制御手段が前記フューエルカット運転を中止して前記機関への燃料供給を再開した時点」から「所定時間が経過する時点」までのフューエルカット復帰後期間における前記機械圧縮比が、前記フューエルカット運転の実行中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定されない場合よりも「低く」なるように前記機械圧縮比変更機構に指示を与える機械圧縮比制御手段と、
を備える。
機械圧縮比が低い場合、機械圧縮比が高い場合に比べ、燃焼効率は低下する。従って、エネルギーの大きい排ガスが燃焼室から排気通路へと排出される。即ち、機械圧縮比が低い場合、機械圧縮比が高い場合に比較して高温の排ガスによって触媒が加熱されるので、触媒の温度はより速やかに上昇する。
上記構成によれば、フューエルカット運転の実行中において触媒の温度が「閾値温度に基づく温度」より低くなったと判定された場合、フューエルカット運転終了後(燃料供給再開後)の機械圧縮比が、フューエルカット運転の実行中において触媒の温度が「閾値温度に基づく値」より低くなったと判定されない場合よりも、低下させられる。「閾値温度に基づく温度」とは、例えば、触媒が担持している貴金属が酸化還元反応を促進する機能を発現するために必要な「貴金属の活性温度」に基づく値であって、貴金属の活性温度そのもの及び貴金属の活性温度から所定温度を減じた温度等である。
この構成により、フューエルカット運転の実行中に低下した触媒の温度は、フューエルカット運転の終了後においてより迅速に上昇する。これにより、触媒の貴金属の温度が速やかに活性温度に達するから、フューエルカット運転中に触媒の酸素吸蔵物質に吸蔵された酸素は触媒に流入する未燃物の酸化のために使用される。その結果、フューエルカット運転の終了後において触媒の酸素吸蔵量を速やかに適正値に近づけることができるので、大気中に排出される「窒素酸化物の量」を低減することができる。
更に、上記構成によれば、機械圧縮比は、フューエルカット運転の実行中において「触媒の温度が閾値温度に基づく値より低くなったと判定されない場合」には、相対的に高い値に維持される。この結果、フューエルカット運転の終了後において触媒の温度が過度に高くならないから、シンタリング等による触媒の熱劣化が進行することを回避することができる。なお、本発明において、フューエルカット復帰増量は必ずしも必要ない。但し、フューエルカット復帰増量が実施された場合、フューエルカット運転の終了後に多量の未燃物が触媒に流入するから、触媒の酸素吸蔵量をより速やかに低下させることができる。
なお、前記フューエルカット復帰後期間の終了時点を定める「前記フューエルカット運転を中止して前記機関への燃料供給を再開した時点からの所定時間」は、一定であってもよく、可変であってもよい。例えば、フューエルカット復帰後期間の終了時点は、以下の何れかの時点とすることができる。
(1)触媒の温度が、触媒に担持されている貴金属の活性温度よりも高い温度になった時点。
(2)触媒の下流に、理論空燃比よりもリッチな空燃比のガスが流出した時点。
(3)触媒の酸素吸蔵量及び最大酸素吸蔵量を周知の方法により推定し、その酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量の半分等の所定値に到達した時点。
(4)フューエルカット運転の終了後から一定の時間が経過した時点。
(5)フューエルカット復帰増量を終了し、機関に供給される混合気の空燃比が理論空燃比に制御され始める時点。
(好ましい態様)
本発明の制御装置は、以下の態様にても実施され得る。
<態様1>
前記機械圧縮比制御手段は、
前記機関の運転状態を表すパラメータ(例えば、機関の負荷、機関の負荷及び機関回転速度、等)に基づいて基本目標機械圧縮比を求めるとともに、前記フューエルカット運転中(前記フューエルカット運転の実行中)において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定された場合、少なくとも前記フューエルカット復帰後期間において「前記基本目標機械圧縮比を所定圧縮比だけ低下させた圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比」として設定するとともに、前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定されない場合、「前記基本目標機械圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比」として設定し、且つ、「実際の機械圧縮比」が「前記設定された最終的な目標機械圧縮比」と一致するように前記機械圧縮比変更機構に指示を与えるように構成される。
<態様2>
前記機械圧縮比制御手段は、
前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」より低くなったと判定された時点にて、その時点の機械圧縮比を所定圧縮比だけ低下せしめるように構成される。
換言すると、前記機械圧縮比制御手段は、
前記機関の運転状態を表すパラメータに基づいて基本目標機械圧縮比を求めるとともに、前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定された場合、その時点から前記フューエルカット復帰後期間の終了時点まで、「前記基本目標機械圧縮比を所定圧縮比だけ低下させた圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比」として設定するように構成される。
この態様2によれば、機械圧縮比変更機構が「機械圧縮比を変更する指示」を受けてから「実際の機械圧縮比が変更される」までに時間を要する場合であっても、フューエルカット運転終了時までに機械圧縮比を予め低下させておくことが可能となる。従って、フューエルカット運転終了直後から触媒の温度を迅速に上昇させることができる。
<態様3>
前記機械圧縮比制御手段は、
前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」より低くなったと判定された場合、フューエルカット運転が終了するまではその時点の機械圧縮比を維持するとともに、フューエルカット運転を終了して燃料供給を再開する時点にて、その時点の機械圧縮比を所定圧縮比だけ低下せしめるように構成される。
換言すると、前記機械圧縮比制御手段は、
前記機関の運転状態に基づいて基本目標機械圧縮比を求めるとともに、前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定された場合、その時点から前記フューエルカット運転の終了時点までは「前記基本目標機械圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比」として維持し、且つ、前記フューエルカット運転の終了時点(即ち、前記フューエルカット復帰後期間の開始時点)から前記フューエルカット復帰後期間の終了時点まで「前記基本目標機械圧縮比を所定圧縮比だけ低下させた圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比」として設定するように構成される。
これによれば、フューエルカット運転中に機械圧縮比が低下されないので、フューエルカット運転が減速運転時に行われる場合(即ち、前記フューエルカット開始条件が減速運転であることを示す条件である場合)、空気を筒内において圧縮する際の仕事量が大きくなる。従って、減速時におけるエンジンブレーキ力を高めることができる。
<態様4>
前記機械圧縮比制御手段は、
前記触媒の温度を推定する触媒温度推定手段と、
前記推定された触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」より低いか否かを判定する触媒活性判定手段と、
を含む。
<態様5>
前記態様4において、
前記触媒温度推定手段は、前記機関の運転状態を表すパラメータ(少なくとも、機関の負荷及び機関回転速度)に基づいて前記触媒の温度を推定するように構成される。
<態様6>
前記態様4又は態様5において、
前記触媒温度推定手段は、前記機関の運転状態を表すパラメータ(少なくとも、機関の負荷及び機関回転速度)に基づいて前記機関から排出される排ガスの温度を推定するとともに、同推定された排ガスの温度に基づいて(例えば、同推定された排ガスの温度を一次遅れ処理する等により)、前記触媒の温度を推定するように構成される。
態様4乃至態様6によれば、触媒の温度(触媒の貴金属の温度)が推定されるとともに、フューエルカット運転中、その推定された触媒の温度が前記閾値温度に基づく値より低いと判定されたとき、少なくともフューエルカット復帰後期間において機械圧縮比が低下させられる。
<態様7>
前記機械圧縮比制御手段は、
前記フューエルカット運転の継続時間が所定時間(フューエルカット運転継続閾値時間)以上となったか否かを判定するとともに、同フューエルカット運転の継続時間が同所定時間以上となったと判定されたとき、前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が前記閾値温度に基づく値より低くなったと判定するように構成される。
この態様7によれば、フューエルカット運転が「フューエルカット運転継続閾値時間」以上に渡り継続されたとき、前記触媒の温度が前記閾値温度に基づく値より低くなったものとみなされ、少なくとも前記フューエルカット復帰後期間、機械圧縮比が低下させられる。従って、フューエルカット運転の終了後において、触媒の温度を迅速に上昇させるべきであって且つ機械圧縮比を低下させても触媒の温度が過度に高くならい場合にのみ、機械圧縮比が低下させられる。このように、態様7によれば、簡単な構成により、フューエルカット運転終了後において、必要な場合にのみ機械圧縮比が低下させられる。従って、態様7は、必要な場合にのみ触媒の温度を速やかに上昇させることができるので、触媒の熱劣化を招くことを回避しながら、酸素吸蔵量を速やかに低下させることができる。
<態様8>
本発明及び上記各態様に係る制御装置は、更に、
前記フューエルカット運転が終了した時点(燃料供給再開時点)から所定の空燃比リッチ化期間が経過するまで、前記機関に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に制御するとともに、同空燃比リッチ化期間が経過した後、前記機関に供給される混合気の空燃比を理論空燃比に制御する空燃比制御手段を備える。
この場合、空燃比リッチ化期間は、上記フューエルカット復帰後期間と一致していることが好ましい。但し、空燃比リッチ化期間は、上記フューエルカット復帰後期間と必ずしも一致していなくてもよい。
これによれば、フューエルカット運転が終了した時点から触媒に過剰な未燃物を多量に流入させることができる。しかも、触媒の温度は機械圧縮比が低下させられることにより迅速に活性温度に到達する。従って、フューエルカット運転中に吸蔵されていた酸素をフューエルカット運転の終了時点から短期間のうちに所望の値(例えば、最大酸素吸蔵量の半分程度)にまで低下させることができる。
以下、本発明による可変圧縮比内燃機関の制御装置の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)が適用される可変圧縮比内燃機関10の概略断面図である。
この機関10は、多気筒(直列4気筒)・ピストン往復動型・火花点火式・ガソリン内燃機関である。また、この機関10は機械圧縮比を変更するための機械圧縮比変更機構15を備えている。なお、図1は特定の気筒の断面を示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
機関10は、クランクケース11、オイルパン12、シリンダブロック13及びシリンダヘッド部14を含んでいる。
クランクケース11は、クランクシャフト11aを回転可能に支持している。オイルパン12は、クランクケース11の下方(下部)においてクランクケース11に固定されている。オイルパン12は、クランクケース11とともに、クランクシャフト11a及び潤滑油等を収容する空間を形成している。
シリンダブロック13は、クランクケース11の上方に配置されている。シリンダブロック13は、中空円筒状のシリンダ(シリンダボア)13aを複数個(4気筒分)備えている。ピストン13bは略円筒形であり、シリンダ13aに収容されている。ピストン13bは、コネクティングロッド13cによってクランクシャフト11aに連結されている。シリンダブロック13は、後述するように、クランクケース11に対してシリンダ13aの軸線CC方向(以下、「上下方向」とも称呼する。)に移動することにより、機関10の機械圧縮比を変更するようになっている。なお、機械圧縮比は、「ピストン13bが上死点(圧縮上死点)位置にあるときの燃焼室容積に対するピストン13bが下死点(吸気下死点)位置にあるときの燃焼室容積の比」として定義される。
シリンダヘッド部14は、シリンダブロック13の上方に配置され、シリンダブロック13に固定されている。シリンダヘッド部14には、燃焼室の上面を形成するシリンダヘッド下面14a、燃焼室に連通する吸気ポート14b、及び、燃焼室に連通する排気ポート14cが形成されている。
更に、シリンダヘッド部14は、吸気ポート14bを開閉する吸気弁14d、吸気弁14dを駆動するインンテークカムを備えるインテークカムシャフト14e、可変吸気タイミング装置14f、排気ポート14cを開閉する排気弁14g、排気弁14gを駆動するエキゾーストカムを備えるエキゾーストカムシャフト14h、点火プラグ14i及びイグニッションコイルを含むイグナイタ14j等を収容している。イグナイタ14jは、後述する電気制御装置からの点火指示信号に応答して燃焼室内に露呈した点火プラグ14iの火花発生部に点火用の火花を発生させるようになっている。シリンダヘッド部14の上部には、ヘッドカバー14kが固定されている。
可変吸気タイミング装置14fは、例えば、特開2007−303423号公報(上記特許文献3)等に記載されているように周知の装置である。可変吸気タイミング装置14fは、図示しない作動油供給制御弁及び図示しない油圧ポンプを備え、これらによって作動油が給排されることにより、インテークカムシャフト14eに対するインテークカムの位相を所望の量だけ進角及び遅角させることができる。なお、本例において、吸気弁14dが開弁している期間(開弁クランク角度幅)は一定である。従って、可変吸気タイミング装置14fにより吸気弁開弁時期が所定角度だけ進角又は遅角させられると、吸気弁14dの閉弁時期も同所定角度だけ進角又は遅角させられる。
可変吸気タイミング装置14fは、電磁コイルと、吸気弁14dに連結された磁性移動体と、を備えた「電磁式動弁機構」に置換されてもよい。この電磁式動弁機構を用いた可変吸気タイミング装置14fは、電気制御装置からの駆動信号に応答してその移動体をその電磁コイルが発生する磁力により移動させ、以って、吸気弁14dの開弁時期及び閉弁時期を任意のクランク角に設定することができる。
以下において、可変吸気タイミング装置14fにより吸気弁開弁時期が最も遅角側にある場合を基準とし、その基準から実際に制御されている吸気弁開弁時期までのクランク角度を吸気弁進角角度VVTと称呼する。従って、吸気弁進角角度VVTは吸気弁閉弁時期である圧縮作用の開始時期に応じた値となる。
機関10は機械圧縮比を変更するための機械圧縮比変更機構15を備えている。この機械圧縮比変更機構15は、例えば、特開2003−206771号公報(上記特許文献2)、特開2007−303423号公報(上記特許文献3)、特開2007−321589号公報及び特開2004−218522号公報等に開示された機構と同様の周知の機構である。以下、図1乃至図4を参照しながら簡単に説明する。
機械圧縮比変更機構15は、ケース側軸受形成部15aと、ブロック側軸受形成部15bと、軸状駆動部15cと、を含んでいる。
ケース側軸受形成部15aは、図2に示したように、複数の第1軸受形成部15a1と複数の第2軸受形成部15a2とにより構成される。
第1軸受形成部15a1のそれぞれは、クランクケース11の左右の縦壁部に形成されている。第1軸受形成部15a1のそれぞれは、半円形の凹部を形成している。互いに隣接する第1軸受形成部15a1の間には、縦壁部を貫通する縦長孔15a3が形成されている。
第2軸受形成部15a2のそれぞれは、第1軸受形成部15a1が形成する半円形の凹部と同径の半円形の凹部を備えている。第2軸受形成部15a2のそれぞれは、第1軸受形成部15a1の半円形の凹部と第2軸受形成部15a2の半円形の凹部とが互いに対向するように、第1軸受形成部15a1のそれぞれにボルトにより固定されるキャップである。
複数の第1軸受形成部15a1及び複数第2軸受形成部15a2は、図1に示した円柱状の軸受孔(カム収納孔)H1を複数形成する。複数の軸受孔H1の中心軸は一つの直線上に配列される。その軸受孔H1の軸線は、クランクケース11の上部にシリンダブロック13が配置された状態において、複数のシリンダ13aの配列方向に平行な方向に延びる。
ブロック側軸受形成部15bのそれぞれは、図1乃至図3に示したように、略直方体であり、円柱状の軸受孔H2を備える部材である。ブロック側軸受形成部15bは、クランクケース11の上部にシリンダブロック13が配置された状態において、クランクケース11の縦壁部に形成された縦長孔15a3内に収容される。ブロック側軸受形成部15bは、シリンダブロック13の左右の側壁部にボルト固定される。このような構成により、軸受孔H1及び軸受孔H2は、シリンダ13aの配列方向に沿って交互に配列される。
縦長孔15a3のシリンダ軸線CC方向の長さは、ブロック側軸受形成部15bのシリンダ軸線CC方向の長さより長く設定されている。これにより、ブロック側軸受形成部15bは、シリンダブロック13と一体的となってクランクケース11に対してシリンダ軸線CC方向に移動可能となっている。
総てのブロック側軸受形成部15bがシリンダブロック13に固定されたとき、ブロック側軸受形成部15bのそれぞれが備える軸受孔H2の中心軸は一つの直線上に配列される。その軸受孔H2の軸線は、複数のシリンダ13aの配列方向に平行な方向に延びている。シリンダブロック13の左の側壁部に形成される軸受孔H2の軸線とシリンダブロック13の右の側壁部に形成される軸受孔H2の軸線との距離は、クランクケース11の左側に形成される軸受孔H1の軸線とクランクケース11の右側に形成される軸受孔H1の軸線との距離と同一である。
一方、軸状駆動部15cは、軸受孔H1及び軸受孔H2に挿通される。軸状駆動部15cは、図2及び軸状駆動部15cの断面図である図4に示したように、小径の軸部15c1と、固定円筒部15c2と、回転円筒部15c3と、を備えている。
固定円筒部15c2は、軸部15c1の中心軸に対して偏心した状態にて軸部15c1に固定されている。固定円筒部15c2は、軸部15c1よりも大径であって且つ軸受孔H1と同一径の正円形のカムプロフィールを備えた円筒状部材である。固定円筒部15c2は、クランクケース11のケース側軸受形成部15aに設けられた軸受孔H1に収容される。固定円筒部15c2は、その中心軸回りに軸受孔H1の壁面に当接しながら回転する。
回転円筒部15c3は、軸部15c1の中心軸に対して偏心した状態で軸部15c1に回転可能に取り付けられている。回転円筒部15c3は、軸部15c1及び固定円筒部15c2よりも大径であって軸受孔H2と同一径の正円形のカムプロフィールを備えた円筒状部材である。回転円筒部15c3は、シリンダブロック13に固定されたブロック側軸受形成部15bに設けられた軸受孔H2に収容される。回転円筒部15c3は、軸受孔H2の壁面に当接しながら回転する。なお、左右一対の軸状駆動部15c、左右の軸受孔H1及び左右の軸受孔H2は、複数のシリンダ軸線CCを通る平面に関して互いに鏡像の関係を有している。
更に、軸状駆動部15cのそれぞれは、図2に示したように、その軸線方向中央位置近傍にギア15c4を備えている。ギア15c4は、軸部15c1の中心軸に対して偏心し、且つ、固定円筒部15c2(従って、軸受孔H1)と同軸となるように軸部15c1に固定されている。即ち、ギア15c4の回転中心軸は固定円筒部15c2の中心軸と一致している。一対のギア15c4のそれぞれには、図示しない一対のウォームギアのそれぞれが噛合している。そのウォームギアはクランクケース11に固定された図示しない単一のモータ(図5に示したモータ15Mを参照。)の出力軸に取り付けられている。一対のウォームギアは、互いに逆方向に回転する螺旋溝を有している。従って、一対の軸状駆動部15cは、モータを回転させたとき、各固定円筒部15c2の中心軸周りに互いに逆方向に回転するようになっている。
図4は、クランクケース11及びシリンダブロック13の前面Pf側からみて右側に位置する軸状駆動部15cの動きを概念的に示した図である。例えば、図4の(A)に示したように、固定円筒部15c2の中心c2、軸部15c1の中心c1及び回転円筒部15c3の中心c3が、この順に同一直線上に位置している場合、クランクケース11(軸受孔H1の中心)とシリンダブロック13(軸受孔H2の中心)との距離Dは距離D1となって、最大の距離となる。従って、ピストン13bが上死点位置にあるときの燃焼室の容積は大きくなる。この結果、内燃機関10の機械圧縮比は低く(小さく)なる。
図4の(A)に示した状態からモータが駆動されることにより固定円筒部15c2及び軸部15c1が固定円筒部15c2の中心軸周りに回転すると、図4の(B)に示した状態となる。このとき、前記距離Dは距離D2となる。更に、図4の(B)に示した状態からモータが同一回転方向に駆動されることにより固定円筒部15c2及び軸部15c1が固定円筒部15c2の中心軸周りに回転すると、図4の(C)に示した状態となる。このとき、前記距離Dは距離D3となる。距離D3は距離D2より小さく、距離D2は距離D1より小さい。従って、図4の(B)に示した状態にあるときの機械圧縮比は図4の(A)に示した状態にあるときの機械圧縮比よりも高く(大きく)なる。図4の(C)に示した状態にあるときの機械圧縮比は図4の(B)に示した状態にあるときの機械圧縮比よりも高く(大きく)なる。
このような構造を備える機械圧縮比変更機構15は、後述する電気制御装置からの電動モータ15M(機械圧縮比変更機構のアクチュエータ)への駆動信号に応じて、シリンダブロック13とクランクケース11との距離を変更し、機関10の機械圧縮比を変更するようになっている。
機関10は、図1に示したように、燃料噴射弁(インジェクタ)16を備えている。燃料噴射弁16は、インテークマニホールド21の枝部に固定されている。燃料噴射弁16は燃料噴射指示信号に応答して、その噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料を吸気ポート14b内に噴射するようになっている。図5に示したように、燃料噴射弁16は各気筒毎に設けられている。
機関10は、図5に示したように、燃焼室にガソリン混合気を供給するための吸気系統20と、燃焼室からの排気ガスを外部に放出するための排気系統30と、を含んでいる。
吸気系統20は、前述したインテークマニホールド21、吸気管(吸気ダクト)22、エアフィルタ23、スロットル弁24及びスロットル弁アクチュエータ24aを備えている。
インテークマニホールド21は、複数の枝部21aとサージタンク21bとからなっている。各枝部21aの一端は各吸気ポート14bに接続され、各枝部21aの他端はサージタンク21bに接続されている。吸気管22はサージタンク21bに接続されている。インテークマニホールド21及び吸気管22は、各吸気ポート14bとともに吸気通路を構成している。エアフィルタ23は吸気管22の端部に設けられている。スロットル弁24は吸気管22に回動可能に設けられ、回動することにより吸気管22が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ(スロットル弁駆動手段)24aは、DCモータからなり、電気制御装置50からの指示信号に応答してスロットル弁24を回転駆動するようになっている。
排気系統30は、エキゾーストマニホールド31、エキゾーストパイプ(排気管)32及び触媒33を備えている。
エキゾーストマニホールド31は、各排気ポート14cに接続された複数の枝部31aと、それらの枝部31aが集合した集合部31bと、を備えている。エキゾーストパイプ32は、エキゾーストマニホールド31の集合部31bに接続されている。エキゾーストマニホールド31及びエキゾーストパイプ32は、各排気ポート14cとともに排気経路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド31の集合部31bとエキゾーストパイプ32とが形成する排ガスを通過させるための経路を、便宜上「排気通路」とも称呼する。
触媒33は、ジルコニア等のセラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(白金及びロジウム等)」及び「セリア(CeO2)等の酸素吸蔵物質」を担持する三元触媒である。触媒33は、その貴金属の温度が活性温度以上である場合(即ち、触媒が活性化している場合)、機関10から排出され且つ触媒33に流入する未燃物(HC,CO等)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進する。従って、触媒33が活性化していて且つ機関の排ガスの空燃比(即ち、触媒33に流入するガスの空燃比)が理論空燃比であるとき、触媒33は排ガス中の未燃物及び窒素酸化物を同時に高い浄化率にて浄化することができる。
このような酸化還元反応においては、触媒33に担持された貴金属の微粒子が酸化還元反応の活性点(触媒活性点)となる。適正な効率で酸化還元反応を進行させるには、触媒活性点において適正な酸素濃度を保つことが必要である。酸素吸蔵物質は、触媒33に流入する排ガス中の余剰の酸素を吸蔵するともに、触媒活性点へその吸蔵した酸素を供給することにより、触媒活性点における酸素濃度の調整を行う。触媒33のこのような機能は、「酸素吸蔵機能」と称呼される。触媒33に加えられた酸素吸蔵物質は、酸素移動可能温度以上であるときに酸素をその物質内で容易に移動させることができる。酸素移動可能温度は例えば400℃程度であり、一般に、上記貴金属の活性温度(例えば600℃程度)よりも低い。
更に、第1制御装置は、図5に示したように、熱線式エアフローメータ41、吸気温度センサ(大気温度センサ)42、スロットルポジションセンサ43、機関回転速度センサ44、ストロークセンサ45、上流側空燃比センサ46、下流側空燃比センサ47及びアクセル開度センサ48を備えている。
エアフローメータ41は、吸気管22内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
吸気温度センサ42は、大気の温度を検出し、その温度Tairを表す信号を出力するようになっている。
スロットルポジションセンサ43は、スロットル弁24の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
機関回転速度センサ44は、インテークカムシャフトが5°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにインテークカムシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。機関回転速度センサ44から出力される信号は電気制御装置50により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置50は、機関回転速度センサ44及び図示しないカムポジションセンサからの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
ストロークセンサ45は、クランクケース11(例えば、クランクケース11の上端)とシリンダブロック13(例えば、シリンダブロック13の下端)との距離を計測し、その距離STを表す信号を出力するようになっている。電気制御装置50は、距離STに基づいて機関10の実際の機械圧縮比εmactを取得することができる。
上流側空燃比センサ46は、エキゾーストマニホールド31の集合部31bと触媒33との間の位置においてエキゾーストマニホールド31及びエキゾーストパイプ32の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ46は、上流側空燃比センサ46が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(被検出ガス)の空燃比に応じた出力値を出力するようになっている。より具体的に述べると、上流側空燃比センサ46は限界電流式の酸素濃度センサである。上流側空燃比センサ46は、被検出ガスの空燃比A/Fが大きくなる(リーンとなる)ほど増大する出力値Vabyfsを出力するようになっている。電気制御装置50は、この出力値Vabyfsに基づいて検出空燃比abyfsを取得するようになっている。
下流側空燃比センサ47は、触媒33の下流においてエキゾーストパイプ32(主通路部)に配設されている。より詳細には、下流側空燃比センサ47は、触媒33の下流におけるエキゾーストパイプ32に配設されている。下流側空燃比センサ47は、下流側空燃比センサ47が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(即ち、触媒33から流出した排ガスである被検出ガス)の空燃比に応じた出力値Voxsを出力するようになっている。
より具体的に述べると、下流側空燃比センサ47は起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサである。従って、下流側空燃比センサ47は、酸素濃度センサとも称呼される。下流側空燃比センサ47は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリーン側の空燃比であるときに略0.1(V)、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチ側の空燃比であるときに略0.9(V)、空燃比が理論空燃比のときは0.5(V)(=Vstoich)の電圧を出力するようになっている。更に、下流側空燃比センサ47は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比近傍の空燃比であるとき、被検出ガスの空燃比がリッチからリーンに変化するに従って急激に減少する(略0.9(V)から略0.1(V)に向けて変化する)電圧を出力するようになっている。
アクセル開度センサ48は、運転者によって操作されるアクセルペダルApの操作量を検出し、アクセルペダルApの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置50は、CPU、ROM、RAM、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等からなる周知のマイクロコンピュータである。
電気制御装置50のインターフェースは、前記センサ41〜48と接続され、CPUにセンサ41〜48からの信号を供給するようになっている。更に、電気制御装置50のインターフェースは、CPUの指示に応じて、可変吸気タイミング装置14f、各気筒のイグナイタ14j、各気筒の燃料噴射弁16、スロットル弁アクチュエータ24a及び機械圧縮比変更機構15の電動モータ15M等に指示信号及び/又は駆動信号等を送出するようになっている。
次に、上記のように構成された第1制御装置の作動について説明する。
(制御の概要)
第1制御装置は、機関の運転状態を表すパラメータ(例えば、負荷KL及び機関回転速度NE)に基づいて基本目標機械圧縮比を決定する。通常運転時、この基本目標機械圧縮比が最終的な目標機械圧縮比に設定される。第1制御装置は、実際の機械圧縮比が「設定された目標機械圧縮比」に一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。
一方、第1制御装置は、所定のフューエルカット開始条件が成立したとき、フューエルカット運転の実行を開始する。即ち、燃料噴射弁16からの燃料の噴射を停止することにより、機関10への燃料供給を停止する。更に、フューエルカット運転中において所定のフューエルカット復帰条件が成立したとき、燃料噴射弁16からの燃料噴射を再開し、機関10への燃料供給を再開する。
更に、第1制御装置は、フューエルカット運転中において触媒33の温度(触媒温度)TempCが閾値温度TempCth(触媒33の貴金属の活性温度)よりも低くなったと判定された場合、フューエルカット運転中において触媒温度TempCが閾値温度TempCthよりも低くなったと判定されない場合(即ち、触媒温度TempCが閾値温度TempCthよりも高いと判定される場合)よりも、「フューエルカット運転を停止して燃料供給を再開する時点」から「所定時間が経過する時点」までの期間(フューエルカット復帰後期間)における機械圧縮比が低くなるように機械圧縮比変更機構15(電動モータ15M)に指示を与える。
機械圧縮比が低い場合の排ガス温度は、機械圧縮比が高い場合の排ガス温度よりも高い。従って、フューエルカット復帰後期間において、触媒33が高温の排ガスにより加熱されるので、触媒33の温度はより速やかに上昇する。その結果、フューエルカット運転中に閾値温度TempCthよりも低くなった触媒33の温度TempCが、フューエルカット運転終了後においてより迅速に上昇する。これにより、触媒33の貴金属の温度が速やかに活性温度に達するから、フューエルカット運転中に触媒33に吸蔵された酸素はフューエルカット運転終了後において触媒33に流入する未燃物を酸化するために多量に消費される。その結果、フューエルカット運転終了後において触媒33の酸素吸蔵量を速やかに適正値に近づけることができるので、大気中に排出される「未燃物及び窒素酸化物の量」を低減することができる。
(実際の作動)
以下、第1制御装置の実際の作動について説明する。電気制御装置50のCPUは、図6にフローチャートにより示した燃料噴射制御を各気筒のクランク角が吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°)に一致する毎に繰り返し実行するようになっている。以下、クランク角が吸気上死点前の前記所定クランク角度に一致した気筒を燃料噴射気筒とも称呼する。従って、何れかの気筒のクランク角が吸気上死点前の所定クランク角度に一致すると、CPUはステップ600から処理を開始し、ステップ610に進んでフューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。
フューエルカットフラグXFCは、その値が「1」である場合、現時点がフューエルカット運転を実行すべきとき(燃料噴射を停止することにより機関10への燃料の供給を停止すべきとき)であることを示す。換言すると、フューエルカットフラグXFCは、その値が「1」である場合、機関10の運転状態がフューエルカット運転状態であることを示す。
フューエルカットフラグXFCは、その値が「0」である場合、現時点がフューエルカット運転を実行すべきときでない(燃料噴射を実行することにより機関10への燃料の供給を実行すべきとき)であることを示す。換言すると、フューエルカットフラグXFCは、その値が「0」である場合、機関10の運転状態が通常運転状態であることを示す。
フューエルカットフラグXFCの値は後述する図8のフューエルカットフラグ設定ルーチンにより変更される。更に、フューエルカットフラグXFCの値は図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときに実行されるイニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。
いま、機関10の運転状態が通常運転状態にあってフューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUはステップ610にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ620乃至ステップ650の処理を順に行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ620:CPUは、エアフローメータ41により計測された吸入空気量Gaと、機関回転速度センサ44からの出力信号により得られる機関回転速度NEと、テーブルMapMc(Ga,NE)と、に基づいて、今回吸気行程を迎える気筒(燃料噴射気筒)に吸入される吸入空気量(筒内吸入空気量)Mcを取得する。なお、筒内吸入空気量Mcは機関10の吸気通路における空気の挙動をモデル化した周知の空気量推定モデル(空気モデル)を用いて求められてもよい。
ステップ630:CPUは、筒内吸入空気量Mcを目標空燃比abyfrで除することによって、基本燃料噴射量Fbaseを求める。この基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるためのフィードフォワード量である。なお、目標空燃比abyfrは図示しないイニシャルルーチンにおいて理論空燃比stoichに設定されている。目標空燃比abyfrは後述するフューエルカット復帰増量が実施されるとき、理論空燃比stoichよりも小さい値に設定される。
ステップ640:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseに図示しない空燃比フィードバック制御ルーチンによって別途求められているフィードバック補正係数KFBを乗じることにより最終的な燃料噴射量(最終燃料供給量)Fiを求める。フィードバック補正係数KFBは、例えば、上流側空燃比センサ46の出力値Vabyfsに基づいて取得される検出空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも大きい(即ち、実際の空燃比が目標空燃比abyfrよりもリーン)であるとき、徐々に増大させられる。但し、フィードバック補正係数KFBの最大値は例えば1.2である。フィードバック補正係数KFBは、例えば、検出空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも小さい(即ち、実際の空燃比が目標空燃比abyfrよりもリッチ)であるとき、徐々に減少させられる。但し、フィードバック補正係数KFBの最小値は例えば0.8である。
ステップ650:CPUは、最終燃料噴射量Fiの燃料を噴射するための噴射指示信号を燃料噴射気筒に対して設けられている燃料噴射弁16に対して送出する。
以上により、最終燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に供給され、その結果、機関の空燃比は目標空燃比abyfrに一致するように制御される。
更に、CPUは図7に示した圧縮比制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ700から処理を開始してステップ710に進み、負荷KLと基本目標機械圧縮比εmtgtbと、の関係を予め定めた基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(KL)に、現時点の負荷KLを適用することにより、現時点における基本目標機械圧縮比εmtgtbを決定する。
この基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(KL)は機関10が通常運転状態にある場合に対して適合されている。例えば、この基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(KL)によれば、負荷KLが閾値負荷KLthよりも小さいとき(即ち、機関10の負荷が軽中負荷であるとき)、基本目標機械圧縮比εmtgtbは最大目標機械圧縮比εmaxに設定される。更に、この基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(KL)によれば、負荷KLが閾値負荷KLth以上であるとき(即ち、機関10の負荷が高負荷であるとき)、基本目標機械圧縮比εmtgtbは負荷KLの増大とともに最大目標機械圧縮比εmaxから最小目標機械圧縮比εminに減少するように設定される。
なお、CPUは、図示しない負荷算出ルーチンにより、上述した機関の負荷KLを、下記(1)式に従って求めている。このように求められる負荷KLは、充填効率又は負荷率とも称呼される。(1)式において、ρは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関10の排気量(単位は(l))、4は機関10の気筒数である。排気量Lは、ストロークセンサ45によって測定される距離STに基づいて修正されてもよい。
KL={Mc/(ρ・L/4)}・100(%)…(1)
また、CPUは、機関回転速度NE及びアクセルペダル操作量Accpと、基本目標機械圧縮比εmtgtbと、の関係を予め定めた基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(NE,Accp)に、現時点の機関回転速度NE及び現時点のアクセルペダル操作量Accpを適用することにより、現時点における基本目標機械圧縮比εmtgtbを決定してもよい。
次に、CPUはステップ720に進み、圧縮比低下フラグXDの値が「1」であるか否かを判定する。圧縮比低下フラグXDは、その値が「1」である場合、ステップ710にて決定された基本目標機械圧縮比εmtgtbを所定機械圧縮比Bだけ低下させた値を「最終的な目標機械圧縮比」に設定すべきとき(即ち、機械圧縮比を通常時の機械圧縮比よりも低下させるべきとき)であることを示す。圧縮比低下フラグXDは、その値が「0」である場合、ステップ710にて決定された基本目標機械圧縮比εmtgtbを最終的な目標機械圧縮比に設定すべきとき(即ち、機械圧縮比を通常時の機械圧縮比に設定すべきとき)であることを示す。圧縮比低下フラグXDの値は後述する図9の圧縮比低下フラグ設定ルーチンにより変更される。更に、圧縮比低下フラグXDの値は図示しないイニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。
後述するように、圧縮比低下フラグXDは、フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定されている場合(即ち、フューエルカット運転中)においてのみ「1」に設定される(図9のステップ910及びステップ930を参照。)。現時点においてフューエルカットフラグXFCの値は「0」であるから、圧縮比低下フラグXDの値も「0」である。従って、CPUは図7のステップ720にて「No」と判定してステップ730に進み、最終的な目標機械圧縮比εmtgtに基本目標機械圧縮比εmtgtbを格納する。次いで、CPUはステップ740に進み、実際の機械圧縮比が目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。
更に、CPUは図8に示したフューエルカットフラグ設定ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ800から処理を開始してステップ810に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。現時点においては、フューエルカット運転は実行されていないから、フューエルカットフラグXFCの値は「0」である。従って、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、アクセル開度センサ48により検出されるアクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δ以下であるか否かを判定する。
ところで、フューエルカット条件は、以下に述べるFC条件1及びFC条件2の両方が成立したときにのみ成立する。このフューエルカット条件は減速フューエルカット条件とも称呼される。
(FC条件1)アクセル開度センサ48により検出されるアクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δ以下である。即ち、アクセルペダルApが操作されていない。
(FC条件2)機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEFC以上である。
アクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δよりも大きい(上記FC条件1が成立していない)場合、CPUはステップ820にて「No」と判定し、ステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、フューエルカットフラグXFCの値は「0」に維持される。
一方、アクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δ以下であるが、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEFCよりも小さい場合、CPUはステップ820にて「Yes」と判定し、「機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEFC以上であるか否かを判定するステップ830」にて「No」と判定し、ステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、フューエルカットフラグXFCの値は「0」に維持される。
更に、CPUは図9に示した圧縮比低下フラグ設定ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ900から処理を開始してステップ910に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるか否かを判定する。現時点においては、フューエルカットフラグXFCの値は「0」である。従って、CPUはステップ910にて「No」と判定し、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、圧縮比低下フラグXDの値を「1」に設定するステップ930の処理が実行されない。従って、圧縮比低下フラグXDの値は「0」に維持される。
図10は各種の値を示したタイムチャートである。以上に説明した「機関10の運転状態が通常運転状態である場合」についての各値は、図10の時刻t1以前に示されている。即ち、機関10の運転状態が通常運転状態である場合、フューエルカットフラグXFC、圧縮比低下フラグXD及び後述する復帰増量フラグ(空燃比リッチ化フラグ)XRICHの値は、いずれも「0」に設定されている。
次に、機関10の運転状態がこのような通常運転状態から減速運転状態に移行し、その結果、フューエルカット条件(FC条件1及びFC条件2の両条件)が成立したと仮定する。この場合、CPUは図8のステップ810乃至ステップ830の総てのステップにおいて「Yes」と判定し、ステップ840に進んでフューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定する(図10の時刻t1を参照。)。その後、CPUはステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この場合、CPUが図6に示したルーチンを実行すると、CPUはステップ610にて「No」と判定し、ステップ695に直接進む。従って、燃料噴射を行うためのステップ650の処理が実行されないので、燃料供給(燃料噴射)が停止され、フューエルカット運転が開始する。
このとき、CPUが図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始してステップ910に進むと、CPUはそのステップ910にて「Yes」と判定し、ステップ920に進む。そして、CPUはステップ920にて触媒温度TempCが閾値温度TempCthよりも低くなったか否かを判定する。なお、触媒温度TempCは、後述する図14に示した触媒温度推定ルーチンにより別途推定(取得)されている。
この場合、フューエルカット運転が開始された直後であるあるから、触媒33に多量の空気が流れ込み始める。但し、フューエルカット運転の開始直後であるから、触媒温度TempCは閾値温度TempCth以上である(図10の時刻t1〜t2を参照。)。従って、CPUは図9のステップ920にて「No」と判定し、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、圧縮比低下フラグXDの値は「0」に維持されるから、CPUが図7に示したルーチンのステップ710を経由してステップ720に進んだとき、そのステップ720にて「No」と判定し、ステップ730及びステップ740を経由してステップ795に進む。従って、ステップ710にて求めた基本目標機械圧縮比εmtgtbは低下させられることなく最終的な目標機械圧縮比εmtgtとなる。
その後、更にフューエルカット運転が継続すると、触媒温度TempCは閾値温度TempCthより小さくなる(図10の時刻t2を参照。)。この場合、CPUは図9のステップ920にて「Yes」と判定し、ステップ930に進んで圧縮比低下フラグXDの値を「1」に設定する。
これにより、CPUが図7に示したルーチンのステップ710を経由してステップ720に進んだとき、CPUはそのステップ720にて「Yes」と判定する。そして、CPUはステップ750に進み、上述したステップ710にて決定されている基本目標機械圧縮比εmtgtbから正の所定値(所定圧縮比)Bを減じた値を、最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定する。
次いで、CPUはステップ760に進み、前記ステップ750にて設定された目標機械圧縮比εmtgtが最小目標機械圧縮比εmin以下であるか否かを判定する。このとき、目標機械圧縮比εmtgtが最小目標機械圧縮比εminよりも大きいと、CPUはステップ760にて「No」と判定してステップ740に直接進む。
これに対し、前記ステップ750にて設定された目標機械圧縮比εmtgtが最小目標機械圧縮比εmin以下であると、CPUはステップ760にて「Yes」と判定してステップ770に進み、目標機械圧縮比εtgtに最小目標機械圧縮比εminを設定する。その後、CPUはステップ740に進む。このように、CPUはステップ760及びステップ770の処理により、目標機械圧縮比εmtgtが最小目標機械圧縮比εmin以下とならないように設定する。以上の処理により、実際の機械圧縮比が、基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtbに基づいて定められる「通常運転時の機械圧縮比」に比べて所定量Bだけ低い機械圧縮比に一致させられる。
なお、フューエルカット運転の継続時間が短く、フューエルカット運転中に触媒温度TempCが閾値温度TempCthより小さくならない場合、CPUは図9のステップ920にて「No」と判定し続ける。従って、ステップ930の処理が実行されないから、圧縮比低下フラグXDの値は「0」に維持される。その結果、この状態にてフューエルカット運転が終了した場合、実際の機械圧縮比は、基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtbに基づいて定められる「通常運転時の機械圧縮比」に維持される。
ところで、CPUは図8のルーチンを繰り返し実行している。また、この時点においては、フューエルカットフラグXFCの値は「1」に維持されている。従って、CPUが図8のルーチンの処理をステップ800から開始すると、CPUはステップ810に進んで「No」と判定する。そして、CPUはステップ850に進み、アクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δより大きいか否かを判定する。
いま、運転者がアクセルペダルを踏み込むことにより、アクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δよりも大きくなったと仮定する。この場合、CPUは図8のステップ850にて「Yes」と判定し、ステップ860に進んでフューエルカットフラグXFCの値を「0」に設定する(図10の時刻t3を参照。)。
更に、運転者はアクセルペダルを踏み込んではいないが、機関回転速度NEがフューエルカット復帰(終了)回転速度(NEFC−ΔN)よりも小さくなったと仮定する。この場合、CPUは図8のステップ850にて「No」と判定し、「機関回転速度NEがフューエルカット復帰回転速度(NEFC−ΔN)よりも小さいか否かを判定するステップ870」にて「Yes」と判定し、ステップ860に進んでフューエルカットフラグXFCの値を「0」に設定する(図10の時刻t3を参照。)。なお、ΔNは、フューエルカット回転速度NEFCよりも小さい正の所定値である。
この結果、CPUは図6のステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ620乃至ステップ650の処理を行うようになる。従って、燃料噴射が実行される。即ち、フューエルカット運転が終了され、燃料供給が再開される。
なお、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であり、且つ、アクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δよりも小さく、且つ、機関回転速度NEがフューエルカット復帰回転速度(NEFC−ΔN)以上である場合、CPUは図8のステップ810、ステップ850及びステップ870の総てのステップにて「No」と判定し、フューエルカットフラグXFCを変更することなくステップ895に進む。
このように、フューエルカット運転を終了させる「フューエルカット復帰条件」は、以下の復帰条件1及び復帰条件2の何れかが成立したときに成立する。
(復帰条件1)アクセルペダルの操作量Accpが微小な正の値δよりも大きくなった。
(復帰条件2)機関回転速度NEがフューエルカット復帰(終了)回転速度(NEFC−ΔN)よりも小さくなった。
更に、CPUは図11に示したフューエルカット復帰増量開始判定ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1100から処理を開始してステップ1110に進み、現時点が、フューエルカットフラグXFCの値が「1」から「0」へと変化した直後であるか否かを判定する。
現時点(図10の時刻t3直後)は、フューエルカットフラグXFCの値が「1」から「0」へと変化した直後である。従って、CPUはステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1120に進み、復帰増量フラグXRICHの値を「1」に設定する。
この復帰増量フラグXRICHは、その値が「1」であるとき目標空燃比abyfrを理論空燃比よりも小さい(即ち、理論空燃比よりもリッチ側の空燃比)に設定し、フューエルカット復帰増量を実施すべきときであり且つフューエルカット復帰増量が実施中であることを示す。また、復帰増量フラグXRICHは、その値が「0」であるとき目標空燃比abyfrを理論空燃比に設定することにより、フューエルカット復帰増量を実施すべきときでなく且つフューエルカット復帰増量を実施していないことを示す。なお、復帰増量フラグXRICHの値はイニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。
その後、CPUはステップ1130に進み、フューエルカット復帰後タイマTimerの値を「0」に設定し、ステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
なお、CPUは現時点が「フューエルカットフラグXFCの値が「1」から「0」へと変化した直後でない」場合、図11のステップ1110にて「No」と判定し、ステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
更に、CPU71は図12に示したフューエルカット復帰増量ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1200から処理を開始し、ステップ1210にて復帰増量フラグXRICHの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、復帰増量フラグXRICHの値が「1」でなければ、CPUはステップ1210にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
現時点(図10の時刻t3の直後)は、図11のステップ1120にて復帰増量フラグXRICHの値は「1」に設定されている。従って、CPUは図12のステップ1210にて「Yes」と判定し、ステップ1220に進んで下流側空燃比センサ47の出力値Voxsが理論空燃比に対応するVstoich(=0.5V)より小さいか否かを判定する。
この時点は、フューエルカット運転が終了して燃料供給が再開された直後である。従って、触媒33にはフューエルカット運転中に吸蔵された多量の酸素が残存しているので、触媒33からは空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比であるガスが流出する。よって、下流側空燃比センサ47の出力値Voxsは理論空燃比に対応するVstoichより小さい。このため、CPUはステップ1220にて「Yes」と判定してステップ1230に進む。
CPUはステップ1230にて、フューエルカット復帰後タイマTimerの値を「1」だけ増大する。次に、CPUはステップ1240に進み、フューエルカット復帰後タイマTimerの値が所定時間T1より小さいか否かを判定する。この時点は、フューエルカット運転が終了して燃料供給が再開された直後であるから、図11のステップ1130にてフューエルカット復帰後タイマTimerの値が「0」に設定された直後である。従って、フューエルカット復帰後タイマTimerの値は所定時間T1より小さい。よって、CPUはステップ1240にて「Yes」と判定し、ステップ1250に進んで目標空燃比abyfrを「理論空燃比stoichから正の所定値richを減じた値」に設定する。即ち、目標空燃比abyfrは、理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定される。その後、CPUはステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この結果、CPUが図6の燃料噴射ルーチンを実行すると、図6のステップ630にて求められる基本燃料噴射量Fbaseは機関の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比にするために必要な燃料噴射量となる。また、図6のステップ640にて使用されるフィードバック補正係数KFBは、機関の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に設定された目標空燃比abyfrに一致させるように変化する。従って、機関の空燃比は理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に制御される。即ち、フューエルカット復帰増量が実行される。
その後、この状態が継続すると、図12のステップ1230の処理が繰り返し実行されるので、フューエルカット復帰後タイマTimerは次第に増大し、所定時間T1に到達する。このとき、CPUが図12のステップ1240を実行すると、CPUはそのステップ1240にて「No」と判定してステップ1260に進み、その時点の目標空燃比abyfrにΔaf・(Timer−T1)を加えた値を新たな目標空燃比abyfrとして設定する。これにより、以降、目標空燃比abyfrは徐々に理論空燃比に近づくように増大(リーン化)されて行く。
次に、CPUはステップ1270にて目標空燃比abyfrが理論空燃比stoich以上となったか否かを判定する。この時点において、目標空燃比abyfrは理論空燃比stoich以上にはなっていない。従って、CPUはステップ1270にて「No」と判定し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
そして、更に所定の時間が経過すると、ステップ1260に処理が繰り返し行われることにより、目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichに到達する。従って、CPUが図12のステップ1270を実行すると、CPUはそのステップ1270にて「Yes」と判定してステップ1280に進み、復帰増量フラグXRICHの値を「0」に設定する。次いで、CPUはステップ1290に進み、目標空燃比abyfrを理論空燃比stoichに設定する。これにより、フューエルカット復帰増量が終了する。換言すると、フューエルカット復帰増量は、フューエルカット運転が終了した時点からフューエルカット運転が終了してから所定の時間が経過した時点までの「空燃比リッチ化期間」にて実行される。
なお、ステップ1270にて「Yes」と判定される前の時点において、下流側空燃比センサ47の出力値Voxsが理論空燃比に対応するVstoichより大きくなった場合(即ち、、触媒33に吸蔵されていた酸素の量が十分に小さくなり、触媒33の下流に理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を有するガスが流出した場合)、CPUはステップ1220にて「No」と判定し、上述したステップ1280及びステップ1290の処理を実行する。従って、この場合にもフューエルカット復帰増量は終了させられる(図10の時刻t4を参照。)。
加えて、CPUは図13に示した圧縮比低下フラグ解除ルーチンを所定時間の経過毎に実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1300から処理を開始してステップ1310に進み、圧縮比低下フラグXDの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、圧縮比低下フラグXDの値が「1」でなければ、CPUはステップ1310にて「No」と判定し、ステップ1395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、前述したように、現時点が図10の時刻t2以降であるとすると、圧縮比低下フラグXDの値は図9のステップ930にて「1」に設定されている。
従って、CPUはステップ1310にて「Yes」と判定してステップ1320に進み、現時点が「復帰増量フラグXRICHの値が「1」から「0」に変更された直後」であるか否かを判定する。そして、現時点が「復帰増量フラグXRICHの値が「1」から「0」に変更された直後(図10の時刻t4直後)」であれば、CPUはステップ1320にて「Yes」と判定してステップ1330に進み、圧縮比低下フラグXDの値を「0」に設定する。また、現時点が「復帰増量フラグXRICHの値が「1」から「0」に変更された直後」でなければ、CPUはステップ1320にて「No」と判定してステップ1395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
圧縮比低下フラグXDの値が「0」に設定されると(図10の時刻t4を参照。)、CPUは図7のステップ720にて「No」と判定し、ステップ730を経由してステップ740に進むようになる。従って、目標機械圧縮比εmtgtは図7のステップ710にて決定される通常時の基本目標機械圧縮比εmtgtbに設定される。この結果、実際の機械圧縮比は通常運転時における機械圧縮比に一致させられる。
このように、CPUは、少なくともフューエルカット復帰増量が実行されている期間(空燃比リッチ化期間)、実際の機械圧縮比を通常運転時における機械圧縮比よりも低下させる。
ところで、CPUは前述した触媒33の温度TempCを、「図14にフローチャートにより示した触媒温度推定ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行することにより、推定している。即ち、所定のタイミングになると、CPUは図14のステップ1400から処理を開始し、ステップ1410に進んで現時点が機関10の始動直後であるか否かを判定する。そして、現時点が機関10の始動直後であれば、CPUはステップ1410にて「Yes」と判定してステップ1420に進み、吸気温度センサ42により検出された吸気温度(大気温度)Tairを触媒温度TempCとして設定する。その後、CPUはステップ1430に進む。これに対し、現時点が機関10の始動直後でなければ、CPUはステップ1410にて「No」と判定し、ステップ1430に直接進む。
CPUはステップ1430にて、負荷KL及び機関回転速度NEと、排気温度Texと、の関係を予め定めた排気温度テーブルMapTex(KL,NE)に、現時点の負荷KL及び現時点の機関回転速度NEを適用することにより、現時点における排気温度Texを取得(推定)する。
次いで、CPUはステップ1440に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、フューエルカットフラグXFCの値が「1」でなければ(即ち、フューエルカット運転中でなければ)、CPUはステップ1440にて「No」と判定してステップ1450に進み、下記の(2)式に従って触媒温度TempCを更新・決定する。(2)式においてγは0より大きく1より小さい所定の定数、TempC(k)は更新される前の触媒温度TempC、TempC(k+1)は更新後の触媒温度TempCである。その後、CPUはステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
TempC(k+1)=γ・TempC(k)+(1−γ)・Tex …(2)
一方、CPUがステップ1440の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると(即ち、フューエルカット運転中であると)、CPUはそのステップ1440にて「Yes」と判定してステップ1460に進み、下記の(3)式に従って触媒温度TempCを更新・決定する。(3)式においてΔTは所定の正の値である。なお、CPUはステップ1460にて更新された触媒温度TempCが大気温度Tair以下とならないようにしている。その後、CPUはステップ1495に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
TempC(k+1)=TempC(k)−ΔT …(3)
以上、説明したように、第1制御装置は、
所定のフューエルカット開始条件が成立したとき前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行するとともに同フューエルカット運転の実行中において所定のフューエルカット復帰条件が成立したとき同フューエルカット運転を中止して前記機関への燃料供給を再開するフューエルカット制御手段(図6のステップ610及び図8のルーチンを参照。)と、
前記フューエルカット運転の実行中(フューエルカットフラグXFC=1のとき)において触媒33の温度が「閾値温度TempCthに基づく値(本例では、閾値温度TempCth)」よりも低くなったと判定された場合(図9のステップ910及びステップ920にて「Yes」と判定された場合)、前記フューエルカット復帰条件が成立することにより前記フューエルカット制御手段が前記フューエルカット運転を中止して前記機関への燃料供給を再開した時点(図10の時刻t3)から所定時間(時刻t3〜t4)が経過する時点までのフューエルカット復帰後期間における前記機械圧縮比が、前記フューエルカット運転の実行中において前記触媒の温度が前記閾値温度に基づく値よりも低くなったと判定されない場合(図9のステップ910にて「Yes」、ステップ920にて「No」と判定される場合)よりも「低く」なるように前記機械圧縮比変更機構に指示を与える機械圧縮比制御手段(図7、図9及び図13のルーチンを参照。)と、
を備えている。
従って、第1制御装置は、フューエルカット運転が終了された後の期間において、必要な場合(フューエルカット運転中に触媒33の温度TempCが閾値温度TempCthよりも低くなることに基づいて、触媒33の温度TempCを急速に上昇させる必要がある場合)にのみ、機械圧縮比を低下させることによってフューエルカット終了後に触媒33の温度を速やかに上昇させる。この結果、第1制御装置は、フューエルカット運転が終了された後の期間において、触媒33の酸素吸蔵量を速やかに適正値に近づけることができるので、大気中に排出される「未燃物及び窒素酸化物の量」を低減することができる。更に、触媒の温度が過度に高くなることを回避することができるので、触媒33のシンタリング等による熱劣化が進行しないようにすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。第2制御装置は、そのCPUが図9及び図14に代わる図15にフローチャートにより示した「圧縮比低下フラグ設定ルーチン」を実行する点においてのみ、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第2制御装置のCPUは、図15に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図15のステップ1500から処理を開始し、ステップ1510に進んで現時点が「フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へ変化した直後であるか否か」を判定する。即ち、CPUは「現時点がフューエルカット運転が開始された直後であるか否か」を判定する。
ここで、現時点が「フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へ変化した直後」であると仮定する。この場合、CPUはステップ1510にて「Yes」と判定してステップ1520に進み、フューエルカット継続時間タイマTFCの値を「0」に設定する。
次に、CPUはステップ1530に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるか否かを判定する。前述の仮定に従うと、フューエルカットフラグXFCの値は「1」である。従って、CPUはステップ1530にて「Yes」と判定してステップ1540に進み、フューエルカット継続時間タイマTFCの値を「1」だけ増大する。
次いで、CPUはステップ1550に進み、フューエルカット継続時間タイマTFCの値がフューエルカット継続閾値時間TFCth以上であるか否かを判定する。現時点は、フューエルカットが開始された直後であるから、フューエルカット継続時間タイマTFCの値は継続閾値時間TFCthより小さい。従って、CPUはステップ1550にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
この状態において、CPUが図15のルーチンを再び実行すると、CPUはステップ1510にて「No」と判定してステップ1510からステップ1530に直接進む。そして、ステップ1540及びステップ1550を経由してステップ1595に進む。このように、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合、フューエルカット継続時間タイマTFCの値は次第に増大される。即ち、フューエルカット継続時間タイマTFCの値はフューエルカット開始時点からの時間を表す値となる。
従って、フューエルカット運転が継続すると、フューエルカット継続時間タイマTFCの値はフューエルカット継続閾値時間TFCthに到達する。このとき、CPUがステップ1550の処理を実行すると、CPUはそのステップ1550にて「Yes」と判定し、ステップ1560に進んで圧縮比低下フラグXDの値を「1」に設定する。これにより、CPUが図7のステップ720にて「Yes」と判定してステップ750乃至ステップ770の処理を実行するようになるので、機械圧縮比は通常運転時の機械圧縮比よりも低下させられる。
なお、CPUは、フューエルカットフラグXFCの値が「1」でない場合、ステップ1530にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。また、フューエルカット運転の継続時間が短く、フューエルカット継続時間タイマTFCの値はフューエルカット継続閾値時間TFCthに到達する前にフューエルカット運転が終了した場合、ステップ1560の処理は実行されない。よって、圧縮比低下フラグXDの値は「0」に維持される。その結果、この状態にてフューエルカット運転が終了した場合、実際の機械圧縮比は、基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtbに基づいて定められる「通常運転時の機械圧縮比」に維持される。
以上、説明したように、第2制御装置は、フューエルカット継続時間タイマTFCの値がフューエルカット継続閾値時間TFCthに到達したとき、即ち、フューエルカット運転が継続閾値時間TFCthに対応する値よりも長い時間だけ継続されたとき、触媒33の温度が触媒33の貴金属の活性温度以下となったと判定し、機械圧縮比を通常運転時の機械圧縮比(基本目標機械圧縮比εmtgtb)よりも低下させる。
従って、第2制御装置は、フューエルカット運転が終了された後の期間において、必要な場合(フューエルカット運転中に触媒33の温度TempCが閾値温度TempCthよりも低くなったために、フューエルカット制御の終了後に触媒33の温度TempCを急速に上昇させる必要がある場合)にのみ、機械圧縮比を低下させることによって触媒33の温度を速やかに上昇させる。この結果、第2制御装置は、第1制御装置と同様、フューエルカット運転が終了された後の期間において、触媒33の酸素吸蔵量を速やかに適正値に近づけることができるので、大気中に排出される「未燃物及び窒素酸化物の量」を低減することができる。更に、触媒の温度が過度に高くなることを回避することができるので、触媒33のシンタリング等による熱劣化が進行しないようにすることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。第3制御装置は、そのCPUが図13に代わる図16にフローチャートにより示した「圧縮比低下フラグ解除ルーチン」を実行する点においてのみ、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第3制御装置のCPUは、図16に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図16のステップ1600から処理を開始し、ステップ1610に進んで圧縮比低下フラグXDの値が「1」であるか否かを判定する。即ち、CPUは、フューエルカット復帰後において触媒33の温度を速やかに上昇させるために機械圧縮比を通常運転時の機械圧縮比(基本目標機械圧縮比εmtgtb)よりも低下させているか否かを判定する。
このとき、圧縮比低下フラグXDの値が「1」でなければ、CPUはステップ1610にて「No」と判定し、ステップ1695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、圧縮比低下フラグXDの値が「1」であると、CPUはステップ1610にて「Yes」と判定してステップ1620に進み、図14に示したルーチンによって別途推定されている触媒温度TempCが「上述した閾値温度TempCthに正の所定値ΔTmarginを加えた値(高側閾値温度)」以上であるか否かを判定する。即ち、CPUは、機械圧縮比を低下させている状態において、触媒33の温度が触媒33に担持されている貴金属の活性温度よりも十分に高い温度になったか否かを判定する。
そして、触媒温度TempCが「上述した閾値温度TempCthに正の所定値ΔTmarginを加えた値」より低いと、CPUはステップ1620にて「No」と判定し、ステップ1695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、触媒温度TempCが「上述した閾値温度TempCthに正の所定値ΔTmarginを加えた値」以上であれば、CPUはステップ1620にて「Yes」と判定し、ステップ1630に進んで圧縮比低下フラグXDの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上、説明したように、第3制御装置は、第1制御装置と同様、フューエルカット運転が終了された後の期間において、必要な場合(フューエルカット運転中に触媒33の温度TempCが閾値温度TempCthよりも低くなったために、フューエルカット制御の終了後に触媒33の温度TempCを急速に上昇させる必要がある場合)にのみ、機械圧縮比を低下させることによって触媒33の温度を速やかに上昇させる。この結果、第3制御装置は、フューエルカット運転が終了された後の期間において、触媒33の酸素吸蔵量を速やかに適正値に近づけることができるので、大気中に排出される「未燃物及び窒素酸化物の量」を低減することができる。更に、触媒33の温度が過度に高くなることを回避することができるので、触媒33のシンタリング等による熱劣化が進行しないようにすることができる。
更に、第3制御装置は、フューエルカット運転が終了された後の期間において触媒の温度が十分に上昇した時点にて機械圧縮比を通常運転時の機械圧縮比に復帰させる。従って、機械圧縮比が低い状態が必要以上に継続することに起因して触媒33の温度が過度に高くなることを回避することができるので、触媒33のシンタリング等による熱劣化が進行しないようにすることができる。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る各制御装置は、フューエルカット終了後に触媒33の温度を貴金属の活性温度以上にまで急速に上昇させる。従って、フューエルカット終了後に触媒33の酸素吸蔵量を迅速に低下することができるので、大気中に排出される窒素酸化物の量を低減することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、図14のステップ1430とステップ1440との間に、最終的な機械圧縮比εmtgtが小さいほどステップ1430にて推定された排気温度Texを大きい値に補正するステップを設けてもよい。或いは、ステップ1430を、「負荷KL、機関回転速度NE及び機械圧縮比εmtgtと、排気温度Texと、の関係を予め定めた排気温度テーブルMapTex(KL,NE,εmtgt)に、現時点の負荷KL、現時点の機関回転速度NE及び現時点の最終的な機械圧縮比εmtgtを適用することにより、現時点における排気温度Texを取得(推定)するステップ」に置換してもよい。更に、図14のステップ1430とステップ1440との間に、目標空燃比abyfrが理論空燃比よりリッチ側の空燃比になるほど、ステップ1430にて推定された排気温度Texを小さい値に補正するステップを設けてもよい。
第2制御装置は、第3制御装置と同様、触媒温度TempCが「上述した閾値温度TempCthに正の所定値ΔTmarginを加えた値」以上となったとき、圧縮比低下フラグXDを「0」に戻し、機械圧縮比を低下させる制御を停止するように構成されることもできる。
更に、第1−第3制御装置は、機関10の運転状態を表すパラメータに基づいて基本目標機械圧縮比εmtgtbを求めるとともに、前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定された場合、その時点(その判定がなされた時点)から前記フューエルカット復帰後期間の終了時点まで、「前記基本目標機械圧縮比εmtgtbを所定圧縮比Bだけ低下させた圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比εmtgt」として設定するように構成されていた。
これに代え、第1−第3制御装置は、機関10の運転状態を表すパラメータに基づいて基本目標機械圧縮比εmtgtbを求めるとともに、前記フューエルカット運転中において前記触媒の温度が「前記閾値温度に基づく値」よりも低くなったと判定された場合、その時点(その判定がなされた時点、図10の時刻t2)からフューエルカット運転が終了して燃料供給が再開される時点(図10の時刻t3)までは「基本目標機械圧縮比εmtgtb」を「最終的な目標機械圧縮比εmtgt」として維持し、その後、フューエルカット運転が終了して燃料供給が再開される時点(即ち、前記フューエルカット復帰後期間の開始時点、図10の時刻t3)から前記フューエルカット復帰後期間の終了時点(図10の時刻t4)まで「基本目標機械圧縮比εmtgtbを所定圧縮比Bだけ低下させた圧縮比」を「最終的な目標機械圧縮比εmtgt」として設定するように構成されてもよい。
更に、フューエルカット復帰後期間の終了時点は、以下の何れかの時点とすることができる。
(1)触媒の温度が、触媒に担持されている貴金属の活性温度よりも高い温度(例えば、閾値温度TempCthに正の所定値ΔTmarginを加えた値)になった時点。
(2)触媒の下流に、理論空燃比よりもリッチな空燃比のガスが流出した時点。
(3)触媒の酸素吸蔵量及び最大酸素吸蔵量を周知の方法により推定し、その酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量の半分等の所定値にまで減少した時点。
(4)フューエルカット運転の終了後から一定の時間が経過した時点。
(5)フューエルカット復帰増量を終了し、機関に供給される混合気の空燃比が理論空燃比に制御され始める時点。
本発明の第1実施形態に係る制御装置(第1制御装置)が適用される可変圧縮比内燃機関の概略断面図である。 図1に示した内燃機関の機械圧縮比変更機構を示す同機関の分解斜視図である。 図1に示した内燃機関のシリンダブロックの斜視図である。 図1に示した機械圧縮比変更機構の作動を説明するための図である。 図1に示した内燃機関の概略平面図である。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 第1制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
符号の説明
10…可変圧縮比内燃機関、11…クランクケース、11a…クランクシャフト、13…シリンダブロック、13a…シリンダ、13b…ピストン、14…シリンダヘッド部、14c…排気ポート、14g…排気弁、15…機械圧縮比変更機構、15M…アクチュエータ(電動モータ)、16…燃料噴射弁(インジェクタ)、20…吸気系統、30…排気系統、31…エキゾーストマニホールド、32…エキゾーストパイプ、33…触媒、50…電気制御装置。

Claims (1)

  1. 排気通路に配設された触媒と、ピストンが上死点位置にあるときの燃焼室容積に対する同ピストンが下死点位置にあるときの燃焼室容積の比である機械圧縮比を指示に応じて変更し得る機械圧縮比変更機構と、を備えた可変圧縮比内燃機関の制御装置であって、
    所定のフューエルカット開始条件が成立したとき前記機関への燃料供給を停止するフューエルカット運転を実行するとともに同フューエルカット運転の実行中において所定のフューエルカット復帰条件が成立したとき同フューエルカット運転を中止して前記機関への燃料供給を再開するフューエルカット制御手段と、
    前記フューエルカット運転の実行中において前記触媒の温度が閾値温度に基づく値よりも低くなったと判定された場合、前記フューエルカット復帰条件が成立することにより前記フューエルカット制御手段が前記フューエルカット運転を中止して前記機関への燃料供給を再開した時点から所定時間が経過する時点までのフューエルカット復帰後期間における前記機械圧縮比が、前記フューエルカット運転の実行中において前記触媒の温度が前記閾値温度に基づく値よりも低くなったと判定されない場合よりも低くなるように前記機械圧縮比変更機構に指示を与える機械圧縮比制御手段と、
    を備えた制御装置。
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