ところで、微粒子捕集フィルタに捕集された微粒子を燃焼させるためには、微粒子捕集フィルタが高温であること、及び、微粒子捕集フィルタに酸素が供給されること、が必要である。上記従来の制御装置は、供給される混合気の空燃比が非常にリーン(希薄)であるディーゼル機関に適用される。従って、微粒子捕集フィルタには微粒子を燃焼させるための酸素が十分に供給されている。そこで、上記従来の制御装置は、燃料噴射時期の遅角、燃料噴射量の増大及び吸気絞り弁による吸気量の減少等を実行することによって微粒子捕集フィルタの温度を上昇させ、以って、捕集した微粒子を燃焼させている。
一方、近年においては、ガソリン機関から排出される微粒子の量を低減するため、ガソリン機関の排気通路にも微粒子捕集フィルタを配設することが検討されている。他方、一般のガソリン機関においては、未燃物(HC及びCO等)の大気中への排出量及び窒素酸化物(NOx)の大気中への排出量を低減することを目的として排気通路に三元触媒が備えられ、機関に供給される混合気の空燃比(以下、「機関の空燃比」とも称呼する。)が理論空燃比近傍の空燃比となるように燃料量が制御されている。
前述したように、微粒子捕集フィルタを再生させる(微粒子を燃焼させる)ためには、微粒子捕集フィルタに酸素が供給されなければならない。ところが、機関の空燃比が理論空燃比近傍の空燃比に制御されていると、微粒子捕集フィルタに酸素が殆ど供給されない。
特に、微粒子捕集フィルタの上流に三元触媒(第1三元触媒)が備えられている場合、第1三元触媒により酸素が消費及び吸蔵されるから、微粒子捕集フィルタに流入する酸素量は極めて少なくなる。従って、このようなガソリン機関において微粒子捕集フィルタを再生させるためには、機関の空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比(以下、「強制リーン空燃比」とも称呼する。)に制御することにより、微粒子捕集フィルタに酸素を供給しなければならない。
ところが、機関の空燃比を三元触媒の状態に関わらず強制リーン空燃比に設定し続けると、機関の空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときに機関から多く排出される窒素酸化物を三元触媒によって浄化できない場合(例えば、三元触媒の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に到達して窒素酸化物を還元できない場合等)が生じ、窒素酸化物が大気中へ多く排出されてしまうという問題が発生する。
そこで、微粒子捕集フィルタの下流に配設された下流側空燃比センサの出力を監視し、その下流側空燃比センサの出力が理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応した出力となったとき、一時的に機関の空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比(強制リッチ空燃比)に設定し、その後、下流側空燃比センサの出力が理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応した出力となったとき、機関の空燃比を再び強制リーン空燃比に設定する「フィルタ再生制御」を行うことが有効であると考えられる。このような空燃比制御は、本明細書において「アクティブ空燃比制御」とも称呼される。
しかしながら、微粒子捕集フィルタを再生するために機関の空燃比を強制リーン空燃比に設定した際、微粒子捕集フィルタ内には微粒子が存在しているにも拘らず、微粒子捕集フィルタに流入した酸素が微粒子捕集フィルタ内において消費されずに微粒子捕集フィルタから漏洩する場合がある。この場合、機関の空燃比は直ちに強制リッチ空燃比に変更される。従って、一時に多量の酸素を微粒子捕集フィルタに流入させられないから、微粒子捕集フィルタの再生が十分に行われないか、又は、「エミッションの観点からは最適であるとは言えないアクティブ空燃比制御」を行っている期間が長くなるという問題が生じる。
従って、本発明の目的は、排気通路に微粒子捕集フィルタと三元触媒とを備えた内燃機関(ガソリン機関)の制御装置であって、窒素酸化物の排出量を増大させることなく微粒子捕集フィルタを効率的に再生させる(微粒子捕集フィルタに捕集された微粒子を効率的に燃焼させる)ことができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による制御装置は、フィルタ収容触媒装置と、下流側空燃比センサと、フィルタ再生要求発生判定手段と、フィルタ再生手段と、を備える。
前記フィルタ収容触媒装置は、前記内燃機関の排気通路に配設される。フィルタ収容触媒装置は、排ガスの上流側から下流側に向かう順に配列された「第1三元触媒、微粒子捕集フィルタ及び第2三元触媒」を備える。第1三元触媒、微粒子捕集フィルタ及び第2三元触媒は、一つのケーシング(筐体)内に収容されている。ここで、「排ガスの上流側から下流側に向かう順」とは、「排気通路内の排ガスの流れの上流側から下流側に向かって順番に」の意味である。
前記下流側空燃比センサは、前記排気通路であって前記フィルタ収容触媒装置よりも下流側に配設されている。従って、下流側空燃比センサは、「第2三元触媒から流出した排ガスであって下流側空燃比センサが配設された位置に到達する排ガス」の空燃比に応じた値を出力する。
前記フィルタ再生要求発生判定手段は、フィルタ再生要求が発生したか否かを判定する。フィルタ再生要求は、「微粒子捕集フィルタに捕集された微粒子を、その微粒子捕集フィルタ内において燃焼させる」ことにより、「その微粒子捕集フィルタを再生させる要求」である。フィルタ再生要求は、例えば、前回のフィルタ再生制御の終了後からの吸入空気流量の積算値が閾値以上となったとき発生する。
前記フィルタ再生手段は、前記フィルタ再生要求が発生したと判定された場合、アクティブ空燃比制御(フィルタ再生制御)を所定期間実行する。
アクティブ空燃比制御は、
(1)前記機関に供給される混合気の空燃比を「理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である強制リッチ空燃比」及び「理論空燃比よりもリーン側の空燃比である強制リーン空燃比」のうちの何れか一方の「第1空燃比」に設定し、
(2)前記下流側空燃比センサの出力が、「同強制リッチ空燃比及び同強制リーン空燃比のうちの何れか他方」の「第2空燃比」に応じた値から「同第1空燃比」に応じた値に変化したとき、同機関に供給される混合気の空燃比を「同第2空燃比」に設定し、
(3)その後、前記下流側空燃比センサの出力が、「同第1空燃比に応じた値」から「同第2空燃比に応じた値」に変化したとき、同機関に供給される混合気の空燃比を「同第1空燃比」に設定する、
空燃比制御である。
これによれば、第2三元触媒が微粒子捕集フィルタの下流に配設されている。従って、機関の空燃比が強制リーン空燃比に設定されている場合において、微粒子捕集フィルタに流入した酸素が微粒子捕集フィルタにて完全に消費されることなくその下流に漏洩したとしても、その酸素は第2三元触媒により消費又は貯蔵される。従って、下流側空燃比センサの出力が強制リーン空燃比に応じた値に変化するまでの時間が遅れる。この結果、機関の空燃比が「強制リーン空燃比に設定されている時間」が長くなるので、微粒子捕集フィルタに十分な量の酸素を流入させることができる。従って、微粒子捕集フィルタを効率よく再生させることができる。
更に、第1三元触媒が微粒子捕集フィルタの上流に配設されている。従って、第1三元触媒は機関の冷間始動後において早期に暖機され活性化する。この結果、機関の冷間始動後におけるエミッションを良好にすることができる。
ところで、前記微粒子捕集フィルタとして、ウォールフロータイプの微粒子捕集フィルタが採用され得る。ウォールフロータイプの微粒子捕集フィルタは、微粒子捕集フィルタに流入する排ガスの流れの方向に沿うように伸びる通路を複数形成する壁部を備える。壁部は例えば多孔質の薄板からなり、排ガスが通過(透過)し得るように構成されている。この複数の通路のうちの幾つかは、その最上流端において閉鎖(目封じ)されている。更に、その複数の通路のうちの最上流端において閉鎖されていない残りの通路は、最下流端において閉鎖(目封じ)されている。排ガスは最上流端において閉鎖されていない通路に流入し、壁部を通過し、その後、最下流端において閉鎖されていない通路から流出する。排ガス中の微粒子は、排ガスが壁部を通過する際に捕集される。
このように、前記微粒子捕集フィルタとして「ウォールフロータイプの微粒子捕集フィルタ」が採用された場合、前記フィルタ収容触媒装置は、前記第1三元触媒と前記微粒子捕集フィルタとの間に第1空間を備えるとともに、前記微粒子捕集フィルタと前記第2三元触媒との間に第2空間を備えるように形成されることが好ましい。
これにより、第1三元触媒から流出した排ガスは第1空間へと一旦流出し、その後、第1空間から「微粒子捕集フィルタの複数の通路のうち最上流端において閉鎖されていない通路」へと効率よく流入する。更に、「微粒子捕集フィルタの複数の通路のうち最下流端において閉鎖されていない通路」から流出した排ガスは第2空間へと一旦流出し、その後、第2空間から第2三元触媒へと効率よく流入する。従って、微粒子捕集フィルタ及び第2三元触媒に効率よく且つ満遍なく(均一)に排ガスを流入させることができる。
本発明の制御装置が用いるフィルタ収容触媒装置において、前記第1三元触媒のパラジウムの担持率は、前記第2三元触媒のパラジウムの担持率よりも大きいことが好適である。
未燃物(HC及びCO等)を酸化するために触媒に担持される貴金属の代表例は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)である。白金は、パラジウムに比べ、高温であり且つ理論空燃比よりもリーンな空燃比のガスが流入したとき(以下、「高温・リーンガス雰囲気」とも言う)、シンタリングによって劣化し易い。一方、白金は、パラジウムに比べ、高温であり且つ理論空燃比よりもリッチでありリッチの程度が大きい強リッチ空燃比のガスが流入したとき、劣化し難い。
他方、フィルタ再生制御(アクティブ空燃比制御)においては、排ガスの空燃比は比較的リーンの程度が小さい強制リーン空燃比と、比較的リッチの程度が小さい強制リッチ空燃比と、に変化する。従って、「高温の排ガスが最初に流入することによって高温になり易い第1三元触媒」が白金を多く担持していると、機関の空燃比が強制リーン空燃比に設定されたとき、第1三元触媒は「高温・リーンガス雰囲気」に曝されるから、容易に劣化する。そこで、上記構成のように、第1三元触媒は、第2三元触媒よりも、パラジウムの担持率が大きくなるように構成されていることが好ましい。この結果、第1三元触媒のフィルタ再生制御中における劣化の進行を抑制することができる。
更に、本発明の制御装置が用いるフィルタ収容触媒装置において、第1三元触媒及び第2三元触媒の活性化程度(温度)が同じであったとしても、前記第2三元触媒は第1三元触媒よりも最大酸素吸蔵量が大きくなる(酸素吸蔵能力が大きい)ように構成されていることが好適である。
これによれば、第1三元触媒の最大酸素吸蔵量が小さいので、機関の空燃比が強制リーン空燃比に切り換えてから短時間のうちに微粒子捕集フィルタに酸素が供給され始める。従って、微粒子捕集フィルタの再生開始時期が早くなる。更に、第2三元触媒の最大酸素吸蔵量が大きいので、機関の空燃比が強制リーン空燃比に切り換えられてから第2三元触媒の下流に酸素が流出するまでの時間が長くなる。
即ち、「機関の空燃比を強制リーン空燃比に設定した時点」から「下流側空燃比センサが強制リッチ空燃比に応じた値から強制リーン空燃比に応じた値に変化するまでの時間」が長くなる。従って、機関の空燃比を強制リーン空燃比に設定している時間が長くなるから、微粒子捕集フィルタに多量の酸素を流入させることができる。その結果、微粒子捕集フィルタを効率よく再生することができる。
加えて、本発明の制御装置が用いるフィルタ収容触媒装置において、前記第2三元触媒は、上流側の部分が下流側の部分よりもパラジウムの担持率が大きくなるように形成されたゾーンコート三元触媒であることが好適である。
前述したように、パラジウムは「高温・リーンガス雰囲気」に対して白金よりも劣化し難い。また、第2三元触媒において、その上流側の部分は下流側の部分よりも高温になる。更に、前述したように、フィルタ再生制御において、排ガスの空燃比は比較的リーンの程度が小さい強制リーン空燃比と、比較的リッチの程度が小さい強制リッチ空燃比と、に変化する。従って、高温になり易い第2三元触媒の上流側の部分が白金を多く担持していると、機関の空燃比が強制リーン空燃比に設定された際、その上流側の部分が劣化する可能性が高まる。そこで、上記構成のように、第2三元触媒としてゾーンコート触媒を採用し、且つ、第2三元触媒の上流側の部分のパラジウム担持率を下流側の部分のパラジウム担持率よりも大きくする。これにより、フィルタ再生制御中における第2三元触媒の劣化(上流側の部分の劣化)の進行を抑制することができる。
以下、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)を内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。機関10は、火花点火式・多気筒(本例では4気筒)・ガソリン燃料機関である。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50と、を含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22の上面は、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともにインテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射する燃料噴射弁39を備えている。燃料噴射手段としての燃料噴射弁39は、噴射指示信号に応答して同噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料を噴射するようになっている。
吸気系統40は、インテークマニホールド41、吸気管(吸気ダクト)42、エアフィルタ43、スロットル弁44及びスロットル弁アクチュエータ44aを備えている。
インテークマニホールド41は、各気筒の燃焼室25の吸気ポート31に接続されている。より詳細には、図2に示したように、インテークマニホールド41は各吸気ポートに接続された複数の枝部41aと、それらの枝部41aが集合したサージタンク部41bと、を備えている。図1及び図2に示したように、吸気管42はサージタンク部41bに接続されている。インテークマニホールド41及び吸気管42は吸気通路を構成している。図1に示したエアフィルタ43は吸気管42の端部に設けられている。スロットル弁44は吸気管42に回動可能設けられ、回動することにより吸気管42が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ(スロットル弁駆動手段)44aは、DCモータからなり、指示信号に応答してスロットル弁44を回転駆動するようになっている。
排気系統50は、エキゾーストマニホールド51、排気管(エキゾーストパイプ)52、第1三元触媒53と微粒子捕集フィルタ54と第2三元触媒55とを含むフィルタ収容触媒装置CwF、及び、第3三元触媒56を備えている。
エキゾーストマニホールド51は、図1に示したように、各気筒の燃焼室25の排気ポート34に接続されている。より詳細には、図2に示したように、エキゾーストマニホールド51は各排気ポートに接続された複数の枝部51aと、それらの枝部51aが集合した集合部51bと、を備えている。排気管52は、エキゾーストマニホールド51の集合部51bに接続されている。エキゾーストマニホールド51及び排気管52は排気経路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド51の集合部51bと排気管52とが形成する「排ガスを通過させるための経路」を、便宜上「排気通路」と称呼する。
前述したように、フィルタ収容触媒装置CwFは、第1三元触媒53と微粒子捕集フィルタ54と第2三元触媒55とを含んでいる。フィルタ収容触媒装置CwFは、一つのケーシング(筐体、ケース)C内にこれらを収容している。フィルタ収容触媒装置CwFは排気通路(排気管52)に配設される。即ち、フィルタ収容触媒装置CwFは集合部51bよりも下流側に配設される。フィルタ収容触媒装置CwFが排気通路に配設されたとき、第1三元触媒53は最も上流側に位置し、微粒子捕集フィルタ54は第1三元触媒53の下流側に位置し、第2三元触媒55は微粒子捕集フィルタ54の下流側に位置するようになっている。
第1三元触媒53は、セラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(パラジウムPd及び白金Pt、ロジウムRd)」及び「セリア(CeO2)」を担持している。これらの物質により、第1三元触媒53は、触媒機能と、酸素吸蔵・放出機能(単に「酸素吸蔵機能」又は「O2ストレージ機能」とも称呼する。)と、を有する。第1三元触媒53は、フロントスタートキャタリティックコンバータ(FrSC)とも称呼される。
微粒子捕集フィルタ54は多孔質セラミック(例えば、コージェライト等)からなる周知の微粒子フィルタである。微粒子捕集フィルタ54は、機関10から排出される微粒子を捕集するようになっている。微粒子捕集フィルタ54はパティキュレート・マター・フィルタ(PMF)とも称呼される(例えば、特開2005−83346号公報を参照。)。
第2三元触媒55は、第1三元触媒53と同様、セラミックからなる担持体に貴金属(触媒物質)及びセリアを担持していて、触媒機能及び酸素吸蔵機能を有する三元触媒である。第2三元触媒55は、リアスタートキャタリティックコンバータ(RrSC)とも称呼される。
第3三元触媒56は、フィルタ収容触媒装置CwFよりも下流の位置において排気通路(排気管52)に配設(介装)されている。第3三元触媒56は、第1三元触媒53と同様、セラミックからなる担持体に貴金属(触媒物質)及びセリアを担持していて、触媒機能及び酸素吸蔵機能を有する三元触媒である。第3三元触媒56は、機関10が搭載された車両のフロア下方に配設されているため、アンダフロア・キャタリティック・コンバータ(UFC)とも称呼される。
第1三元触媒53、第2三元触媒55及び第3三元触媒56等の三元触媒は、三元触媒に流入するガスの空燃比が所謂「ウインドウW」(理論空燃比を含む所定の空燃比範囲)内にあるとき、未燃物(HC,CO等)を酸化するとともに窒素酸化物(NOx)を還元する。これにより、三元触媒は、これらの有害成分を高い効率で浄化する特性(触媒機能)を有する。
また、三元触媒は、酸素吸蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC、CO及びNOxを浄化することができる。即ち、機関の空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比となって三元触媒に流入するガスに過剰の酸素及びNOxが含まれると、触媒はそれらの酸素を奪い(NOxを還元し)、その奪った酸素を吸蔵する。更に、機関の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比になって三元触媒に流入するガスにHC,CO等の未燃物(還元成分)が多量に含まれると、三元触媒は吸蔵している酸素をこれらの未燃物に対して与え、これらの成分を酸化する。
更に、このシステムは、図1に示したように、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、上流側空燃比センサ66、下流側空燃比センサ67及びアクセル開度センサ68を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管42内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁44の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。
クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにクランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。クランクポジションセンサ64から出力されるパルスは後述する電気制御装置70により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置70は、カムポジションセンサ63及びクランクポジションセンサ64からの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
上流側空燃比センサ66は、図2に示したように、エキゾーストマニホールド51の集合部51bと第1三元触媒53(従って、フィルタ収容触媒装置CwF)との間の位置においてエキゾーストマニホールド51及び排気管52の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ66は、上流側空燃比センサ66が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(被検出ガス)の空燃比に応じた値(電流値及び電圧値等)を出力するようになっている。
より具体的に述べると、上流側空燃比センサ66は限界電流式の酸素濃度センサである。上流側空燃比センサ66は、被検出ガスの空燃比A/F(従って、機関に供給される混合気の空燃比)に応じた電圧である出力値Vabyfsを出力するようになっている。この出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるときに値Vstoichに一致する。出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が大きくなる(リーンとなる)ほど増大する。即ち、上流側空燃比センサ66は、被検出ガスの空燃比の変化に対して出力が連続的に変化する広域空燃比センサである。
後述する電気制御装置70は、空燃比変換テーブル(マップ)Mapabyfsを記憶していて、そのテーブルに実際の出力値Vabyfsを適用することによって空燃比を検出する(検出空燃比abyfsを取得する)ようになっている。
下流側空燃比センサ67は、図1及び図2に示したように、第2三元触媒55(従って、フィルタ収容触媒装置CwF)と第3三元触媒56との間の位置において排気管52(排気通路)に配設されている。下流側空燃比センサ67は、下流側空燃比センサ67が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(被検出ガス、第3三元触媒56に流入するガス)の空燃比に応じた出力値Voxsを出力するようになっている。
より具体的に述べると、下流側空燃比センサ67は起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサである。従って、下流側空燃比センサ67は、酸素濃度センサ67とも称呼される。下流側空燃比センサ67は、理論空燃比近傍において急変する電圧である出力値Voxsを出力する。即ち、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリーン側の空燃比であるときに略0.1(V)、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチ側の空燃比であるときに略0.9(V)、空燃比が理論空燃比のときは0.5(V)となる。
更に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比近傍の空燃比(前述した、三元触媒のウインドウWに実質的に対応する空燃比)であるとき、被検出ガスの空燃比がリッチからリーンに変化するに従って急激に減少する(略0.9(V)から略0.1(V)に向けて変化する。)。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比近傍の空燃比であるとき、被検出ガスの空燃比がリーンからリッチに変化するに従って急激に増大する(略0.1(V)から略0.9(V)に向けて変化する。)。下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて得られる第2三元触媒55の下流側空燃比afdownは、その出力値Voxsと下流側空燃比afdownとの関係を表す関数をfとするとき、afdown=f(Voxs)により求められる。
このように、機関10の排気通路には、その上流側から下流側に向けて、上流側空燃比センサ66、第1三元触媒53、微粒子捕集フィルタ54、第2三元触媒55、下流側空燃比センサ67及び第3三元触媒56が順に直列に配設されている。
再び、図1を参照すると、アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセルペダルAPの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続された「CPU71、ROM72、RAM73、バックアップRAM74、並びに、ADコンバータを含むインターフェース75」等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース75は、前記センサ61〜68と接続され、CPU71にセンサ61〜68からの信号を供給するようになっている。更に、インターフェース75は、CPU71の指示に応じて、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、各気筒のイグナイタ38、各気筒の燃料噴射弁39及びスロットル弁アクチュエータ44a等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
次に、第1制御装置による空燃比制御の概要について述べる。
<メインフィードバック制御の概要>
第1制御装置は、メインフィードバック制御条件が成立したとき、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて取得された上流側空燃比abyfsが上流側目標空燃比abyfr(メインフィードバック目標値)に一致するように機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御(メインフィードバック制御)する。本例において、メインフィードバック制御条件は、上流側空燃比センサ66が活性化しているときに成立し、その他の場合に不成立となる。なお、メインフィードバック制御条件には、他の条件が加えられてもよい。
後述するように、メインフィードバック制御においては、上流側目標空燃比abyfrと筒内吸入空気量Mcとに基づいて基本燃料噴射量(フィードフォワード燃料噴射量)Fbaseが決定される。その基本燃料噴射量Fbaseは、メインフィードバック補正値KFmainにより補正される。メインフィードバック補正値KFmainは、「出力値Vabyfsに基づいて取得された上流側空燃比abyfs」を「上流側目標空燃比abyfr」に一致させるように算出されるフィードバック量である。
(通常空燃比フィードバック制御)
上流側目標空燃比abyfrは、微粒子捕集フィルタ54を再生する要求が発生していないとき(フィルタ再生要求非発生時)に実行される「通常空燃比フィードバック制御時」において、理論空燃比stoichである第1上流側目標空燃比に設定される。
(フィルタ再生制御)
ところで、微粒子捕集フィルタ54は微粒子を捕集するほと微粒子の捕集能力が低下する。逆に、微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子を微粒子捕集フィルタ54内において燃焼させれば、微粒子捕集フィルタ54の微粒子捕集能力は復帰する。即ち、微粒子捕集フィルタ54を再生させることができる。微粒子捕集フィルタ54内に捕集された微粒子を燃焼させるためには、
(1)微粒子捕集フィルタ54内が高温であること、及び、
(2)微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されること、
が必要である。
一般に、理論空燃比近傍の空燃比にて運転されるガソリン機関が通常の運転状態(始動直後等を除く運転状態)にあるとき、微粒子捕集フィルタ54内の温度は捕集された微粒子を燃焼させるのに十分な程度の高い温度になる。一方、所定の減速運転状態となってフューエルカット(燃料供給停止)制御が行われると、機関10から多量の酸素を含む空気が排出される。従って、フューエルカット制御が所定時間以上継続して実行されると、第1三元触媒53の酸素吸蔵量OSA1は第1三元触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達し、酸素が第1三元触媒53から流出し始める。第1三元触媒53から流出した酸素は微粒子捕集フィルタ54内に流入する。
この結果、微粒子捕集フィルタ54内は高温であり且つ微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されるので、微粒子捕集フィルタ54に捕集されていた微粒子が微粒子捕集フィルタ54内において燃焼し、微粒子捕集フィルタ54は再生される。しかしながら、フューエルカット制御がどのような頻度にて実行されるか、及び、フューエルカット制御時間がどの程度に及ぶか、は機関10の運転がどのように行われるかに依存する。従って、フューエルカット制御のみによって微粒子捕集フィルタ54を再生させることを常に期待することは適当ではない。
そこで、第1制御装置は、微粒子捕集フィルタ54を再生する要求が発生したとき(フィルタ再生要求発生時)、「フィルタ再生制御(アクティブ空燃比制御)」を実行する。このフィルタ再生制御において、上流側目標空燃比abyfrは、強制リーン空燃比afenLと強制リッチ空燃比afenRとの何れかに所定のタイミングにて交互に変化させられる。
より詳細に述べると、図3に示したように、フィルタ再生制御中において「上流側目標空燃比abyfrが強制リーン空燃比afenL」に設定されている場合、上流側目標空燃比abyfrは、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチな空燃比を表す値から理論空燃比よりもリーンな空燃比を表す値へと変化した時点(リーン反転時)にて強制リッチ空燃比afenRに変更させられる(図3の時刻t2及び時刻t4を参照。)。更に、フィルタ再生制御中において「上流側目標空燃比abyfrが強制リッチ空燃比afenR」に設定されている場合、上流側目標空燃比abyfrは、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリーンな空燃比を表す値から理論空燃比よりもリッチな空燃比を表す値へと変化した時点(リッチ反転時)にて強制リーン空燃比afenLに変更させられる(図3の時刻t3を参照。)。
強制リーン空燃比afenLは、前記理論空燃比を含む所定の空燃比範囲(三元触媒のウインドウW)外であって理論空燃比よりも空燃比ΔafL(ΔafL>0)だけリーン側の空燃比である。即ち、強制リーン空燃比afenL=理論空燃比stoich+ΔafLである。
強制リッチ空燃比afenRは、前記理論空燃比を含む所定の空燃比範囲(三元触媒のウインドウW)外であって理論空燃比よりも空燃比ΔafR(ΔafR>0)だけリッチ側の空燃比である。即ち、強制リッチ空燃比afenR=理論空燃比stoich−ΔafRである。
この結果、上流側目標空燃比abyfrは、幅AC1(=ΔafL+ΔafR)を有しながら矩形波状に変化する。
なお、本例において、空燃比ΔafLと空燃比ΔafRとは等しいが、空燃比ΔafLは空燃比ΔafR以上に設定されることが好ましい。
<サブフィードバック制御の概要>
第1制御装置は、サブフィードバック制御条件が成立したとき、上記メインフィードバック制御に加えてサブフィードバック制御を実行する。このサブフィードバック制御は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを用いて行われる。
本例において、サブフィードバック制御条件は、メインフィードバック制御実行中であり、且つ、下流側空燃比センサ67が活性化しているときに成立し、その他の場合に不成立となる。サブフィードバック制御は、通常空燃比フィードバック制御中及びフィルタ再生制御中の何れの場合にも実行される。なお、サブフィードバック制御条件には、他の条件が加えられてもよい。
第1制御装置は、サブフィードバック制御において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが、下流側目標空燃比に相当する値である下流側目標値Voxsrefに一致するように、機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する。
換言すると、サブフィードバック制御は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsにより表される下流側空燃比afdownが、下流側目標値Voxsrefにより表される下流側目標空燃比に一致するように、機関に供給される混合気の空燃比(燃料量)を調整するフィードバック制御である。サブフィードバック制御は、「下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの偏差(出力偏差量DVoxs)に基づく値」を、PI(比例・積分)制御又はPID(比例・積分、微分)制御によって「0」に一致させようとする制御である。
下流側目標値Voxsrefは、理論空燃比相当値(Voxsst=0.5V)に設定されている。これにより、機関10に供給される混合気の空燃比(より正確には、第3三元触媒56に流入するガスの空燃比)の平均(中心、中央値)が理論空燃比に一致させられる。
<作動>
次に、第1制御装置の作動について説明する。第1制御装置のCPU71は、図4の概略フローチャートに示した手順を所定時間の経過毎に繰り返すことにより、上述した各種の制御を行うようになっている。なお、以下の説明において、上流側空燃比センサ66及び下流側空燃比センサ67は総て活性化していると仮定する。
CPU71は、所定のタイミングにてステップ400から処理を開始し、ステップ410に進んでフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定する。フィルタ再生要求フラグXPMの値は、微粒子捕集フィルタ54を再生する要求(フィルタ再生要求)が発生しているときに「1」に設定され、微粒子捕集フィルタ54を再生する必要がないとき「0」に設定される。フィルタ再生要求フラグXPMの操作については後述する(図5を参照。)。
いま、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ410にて「No」と判定し、ステップ430に進んで上述した「通常空燃比フィードバック制御」を実行する。
より具体的に述べると、CPU71は、ステップ430において、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御の両方を実行する。この場合、メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichに設定され、サブフィードバック制御の下流側目標値Voxsref(下流側目標空燃比に対応する値)は理論空燃比に相当する理論空燃比相当値Voxsstに設定される。
上述したように、メインフィードバック制御は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて得られる上流側空燃比abyfsを上流側目標空燃比abyfrに一致させるフィードバック制御である。更に、サブフィードバック制御は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを下流側目標値Voxsref(理論空燃比相当値Voxsst)に一致させるフィードバック制御である。その後、CPU71はステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、機関の空燃比の平均は実質的に理論空燃比に一致する。つまり、上流側空燃比abyfs及び下流側空燃比afdownに基づいて、機関の空燃比が理論空燃比(理論空燃比を含む所定の空燃比範囲内の空燃比)となるようにフィードバック制御される。
ところで、CPU71は図5にフローチャートにより示した「フィルタ再生要求判定ルーチン」を所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、CPU71は所定のタイミングにてステップ500から処理を開始し、ステップ510に進んで「前回のフィルタ再生制御」を終了してからの吸入空気量Gaの積算値SGaが所定の閾値(フィルタ再生制御実行閾値)SGath以上となっているか否かを判定する。
この積算値SGaは所定時間Δtsの経過毎に実行される図示しない吸入空気量積算ルーチンにより更新されている。即ち、CPU71は、所定時間Δtsの経過毎に、「その時点の積算値SGa」に「その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気量Ga」を加えることにより、積算値SGaを更新する。積算値SGaはバックアップRAM74内に格納される。機関10の運転によって発生する微粒子の量は吸入空気量Gaが大きくなるほど大きくなるので、積算値SGaは微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子の量を表す量となる。なお、積算値SGaはフィルタ再生制御(フィルタ再生制御)の実行が完了したとき(及び、フューエルカット制御が実行されたとき)、吸入空気量積算ルーチンによって「0」に設定(クリア)されるようになっている。
この時点において、積算値SGaが閾値SGathより小さいと、CPU71はステップ510にて「No」と判定してステップ530に直接進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値が最後に「0」から「1」へと変化した後に所定時間(フィルタ再生制御実行時間)が経過したか否かを判定する。このフィルタ再生要求フラグXPMの値は、後述するように、積算値SGaが閾値SGath以上となったとき(即ち、フィルタ再生制御が開始されたとき)、「1」に設定される(図5のステップ520を参照。)。
現時点においては、積算値SGaが閾値SGathより小さいため、フィルタ再生要求フラグXPMの値は「0」に維持されている。従って、CPU71は、ステップ530にて「No」と判定してステップ595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、フィルタ再生要求フラグXPMの値は「0」に維持されるので、通常空燃比フィードバック制御が続行され、フィルタ再生制御は開始されない(図4のステップ410及びステップ430を参照。)。
これに対し、図5のステップ510の処理時において、積算値SGaが閾値SGath以上になっていると、CPU71はステップ510にて「Yes」と判定してステップ520に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値を「1」に設定する。この時点においては、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」から「1」に変化した後、所定時間(フィルタ再生制御実行時間)が経過していない。従って、CPU71は、ステップ530からステップ595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。このとき、CPU71が図4のステップ410の処理を実行すると、CPU71はそのステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ420に進んで上述した「フィルタ再生制御」を実行する。
より具体的に述べると、CPU71は、ステップ420において、メインフィードバック制御を実行する。この場合、メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrは図3に示したように、強制リーン空燃比afenLと強制リッチ空燃比afenRとを時間の経過とともに交互に繰り返す空燃比に設定される。
即ち、CPU71は、図3の時刻t1に示したように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比相当値Voxsstよりも小さい値から大きい値へと変化したとき、上流側目標空燃比abyfrを強制リーン空燃比afenLに設定する。このタイミングは、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsにより表される空燃比afdownが、理論空燃比よりリーン側の空燃比からリッチ側の空燃比へと反転する時点である。即ち、このタイミングは、出力値Voxsが強制リーン空燃比afenLに応じた値から強制リッチ空燃比afenRに応じた値に変化する「出力値Voxsのリッチ反転時」とも称呼される。
その後、CPU71は、図3の時刻t2に示したように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比相当値Voxsstよりも大きい値から小さい値へと変化したとき、上流側目標空燃比abyfrを強制リッチ空燃比afenRに設定する。このタイミングは、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsにより表される空燃比afdownが理論空燃比よりリッチ側の空燃比からリーン側の空燃比へと反転する時点である。即ち、このタイミングは、出力値Voxsが強制リッチ空燃比afenRに応じた値から強制リーン空燃比afenLに応じた値に変化する「出力値Voxsのリーン反転時」とも称呼される。
更に、CPU71は、図3の時刻t3に示したように、次の「出力値Voxsのリッチ反転時」に上流側目標空燃比abyfrを強制リーン空燃比afenLに設定し、図3時刻t4に示したように、次の「出力値Voxsのリーン反転時」に上流側目標空燃比abyfrを強制リッチ空燃比afenRに設定する。以降、CPU71はこのような動作を繰り返す。
そして、CPU71は、このように設定される上流側目標空燃比abyfrに対してメインフィードバック制御を実行する。更に、CPU71は、サブフィードバック制御を実行する。この場合、サブフィードバック制御の下流側目標値Voxsrefは理論空燃比に相当する理論空燃比相当値Voxsstに設定される。これにより、上述した「フィルタ再生制御」が実行されるので、微粒子捕集フィルタ54内に酸素が多量に供給される。この結果、微粒子が燃焼し、微粒子捕集フィルタ54の再生が開始する。その後、CPU71はステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
この状態が継続すると、微粒子捕集フィルタ54の再生が進行する。そして、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」から「1」へと変化した後に所定時間(フィルタ再生制御実行時間)が経過した直後において、CPU71が図5のステップ530に進むと、CPU71はそのステップ530にて「Yes」と判定する。そして、CPU71は、ステップ540に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値を「0」に設定する。その後、CPU71はステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この結果、CPU71は図4のステップ410にて「No」と判定してステップ430に進むようになる。従って、フィルタ再生制御が中止され、且つ、通常空燃比フィードバック制御が再開される。
(作動の詳細)
図6はCPU71が実行する燃料噴射制御ルーチンの詳細を示している。以下、このルーチンによる処理について簡単に説明する。
CPU71は、この図6に示したルーチンを、各気筒のクランク角が各気筒の吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が上記所定クランク角度になると、CPU71はステップ600から処理を開始してステップ610に進み、機関回転速度NE、吸入空気量Ga及びテーブルMapMc(NE,Ga)に基づいて「今回の吸気行程を迎える気筒(以下、「燃料噴射気筒」と云うこともある。)に吸入される今回の筒内吸入空気量Mc」を推定・決定する。
次に、CPU71はステップ620に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であるか否かを判定する。そして、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であれば、CPU71は以下に述べるステップ630乃至ステップ680の処理を順に行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ630:CPU71は、上流側目標空燃比abyfrに理論空燃比stoichを設定する。
ステップ640:CPU71は、筒内吸入空気量Mcを上記上流側目標空燃比abyfrで除することにより、基本燃料噴射量Fbaseを算出する。
ステップ650:CPU71は、図示しないルーチンにより別途求められているメインフィードバック補正値KFmainを読み込む。
ステップ660:CPU71は、図示しないルーチンにより別途求められているサブフィードバック補正値Fisubを読み込む。
ステップ670:CPU71は、下記の(1)式に従って最終燃料噴射量Fiを求める。
Fi=Fbase・KFmain+Fisub …(1)
ステップ680:CPU71は、最終燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に対する燃料噴射弁39から噴射されるように、その燃料噴射弁39に対して噴射指示を行う。
上記ステップ650において読み込まれるメインフィードバック補正値KFmainの算出方法は、例えば、特開2005−273524等に記載されているように周知である。
簡単に述べると、CPU71は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsと、予め記憶されているテーブルMapabyfsと、に基づいて、上流側空燃比センサ66が検出している現時点の検出空燃比abyfsを求める。
CPU71は、上流側目標空燃比abyfrから検出空燃比abyfsを減じることにより、空燃比偏差Dafを求める。
CPU71は、空燃比偏差Dafに対してハイパスフィルタ処理を施し、メインフィードバック制御用偏差DafHiを求める。このハイパスフィルタ処理の結果、メインフィードバック制御用偏差DafHiは、フィルタ収容触媒装置CwFの下流に現れない空燃比変動を表す値となる。
CPU71は、メインフィードバック制御用偏差DafHiに比例ゲインGpHiを乗じることにより、メインフィードバック補正値KFmainを求める。
更に、上記ステップ660において読み込まれるサブフィードバック補正値Fisubの算出方法も、例えば、特開2005−273524等に記載されているように周知である。
簡単に述べると、CPU71は、「理論空燃比に相当する値(例えば、0.5(V))に設定されている下流側目標値Voxsref」から「現時点の下流側空燃比センサの出力値Voxs」を減じることにより、出力偏差量DVoxs(DVoxs=Voxsref−Voxs)を求める。なお、下流側目標値Voxsrefは、理論空燃比よりも僅かにリッチ側であって前述したウインドウWの範囲内の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に対応する値Vrich(例えば、0.55(V))に設定されてもよい。
CPU71は、出力偏差量DVoxsに対してローパスフィルタ処理を施すことにより、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを取得する。
CPU71は、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを下記(2)式に基づいて比例・積分・微分処理(PID処理)し、サブフィードバック補正値Fisubを求める。
Fisub=Kp・DVoxslow+Ki・SDVoxslow+Kd・DDVoxslow …(2)
上記(2)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間積分値であり、DDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間微分値である。
一方、図6のステップ620の処理を実行する時点において、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であると、CPU71はそのステップ620に「No」と判定する。そして、CPU71はステップ690に進み、上流側目標空燃比abyfrを図3に示したように「強制リーン空燃比afenL」又は「強制リッチ空燃比afenR」に設定する(図4のステップ420を参照。)。以降、CPU71は、ステップ640乃至ステップ680の処理を実行する。
この場合、CPU71は、図3の時刻t1に示したように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比相当値Voxsstよりも小さい値から大きい値へと変化したとき、上流側目標空燃比abyfrを強制リーン空燃比afenLに設定する。これにより、フィルタ収容触媒装置CwFの第1三元触媒53に過剰な酸素が流入し、その後、第1三元触媒53から酸素が流出する。この酸素はフィルタ収容触媒装置CwFの微粒子捕集フィルタ54に流入する。これにより、微粒子捕集フィルタ54に捕集されている微粒子が燃焼し、微粒子捕集フィルタ54が再生される。
このとき、微粒子の総てが燃焼される前の時点において酸素が微粒子捕集フィルタ54から漏れ出したとしても、その酸素はフィルタ収容触媒装置CwFの第2三元触媒55によって吸蔵又は消費されるので、下流側空燃比センサ67に到達しない。従って、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比相当値Voxsstよりも大きい値から小さい値へと変化する時点(出力値Voxsのリーン反転時)が遅れるから、上流側目標空燃比abyfrが強制リーン空燃比afenLに設定されている時間が長くなる。この結果、微粒子捕集フィルタ54に多量の酸素を流入させることができる(酸素を継続的に流入させることができる)ので、微粒子捕集フィルタ54を効率的に再生することができる。
以上、説明したように、第1制御装置は、フィルタ再生要求が発生したと判定された場合(図5のステップ520にてXPM=1となった場合)、「機関10に供給される混合気の空燃比」を「強制リッチ空燃比afenR及び強制リーン空燃比afenLのうちの何れか一方」の「第1空燃比」に設定するとともに、下流側空燃比センサ67の出力Voxsが「強制リッチ空燃比afenR及び強制リーン空燃比afenLのうちの何れか他方」の「第2空燃比」に応じた値から「第1空燃比」に応じた値に変化したとき、機関10に供給される混合気の空燃比を「第2空燃比」に設定し、その後、下流側空燃比センサ67の出力Voxsが「第1空燃比」に応じた値から「第2空燃比」に応じた値に変化したとき、機関10に供給される混合気の空燃比を「第1空燃比」に設定するアクティブ空燃比制御を所定期間実行する「フィルタ再生手段」を備える(図4のステップ420、図5のステップ530及びステップ540を参照。)。
更に、フィルタ収容触媒装置CwFは、上流から下流に向けて、第1三元触媒53と微粒子捕集フィルタ54と第2三元触媒55とを備えている。即ち、第2三元触媒55が微粒子捕集フィルタ54の下流に配設されている。従って、機関の空燃比が強制リーン空燃比afenLに設定されている場合において、微粒子捕集フィルタ54に流入した酸素が微粒子捕集フィルタ54にて完全に消費されることなくその下流に漏洩したとしても、その酸素は第2三元触媒55により消費又は貯蔵される。従って、下流側空燃比センサ67の出力Voxsが強制リーン空燃比afenLに応じた値に変化するまでの時間が遅れる。この結果、機関の空燃比が「強制リーン空燃比afenLに設定されている時間」が長くなるので、微粒子捕集フィルタ54に十分な量の酸素を流入させることができる。従って、微粒子捕集フィルタ54を効率よく再生させることができる。
更に、第1三元触媒53が微粒子捕集フィルタ54の上流に配設されている。従って、第1三元触媒53は機関の冷間始動後において早期に暖機され活性化する。この結果、機関の冷間始動後におけるエミッションを良好にすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。第2制御装置は、フィルタ収容触媒装置の構造が第1制御装置のフィルタ収容触媒装置CwFと相違している。以下、第2制御装置が採用したフィルタ収容触媒装置CwFをフィルタ収容触媒装置CwF2と表記する。
フィルタ収容触媒装置CwF2は、図7に示したように、第1三元触媒53と、微粒子捕集フィルタ54aと、第2三元触媒55と、を含む。
第1三元触媒53及び第2三元触媒55は、第1制御装置のフィルタ収容触媒装置CwFが備える第1三元触媒53及び第2三元触媒55とそれぞれ同一である。
微粒子捕集フィルタ54aは、周知の「ウォールフロータイプの微粒子捕集フィルタ」である。図8は、微粒子捕集フィルタ54aの概略断面図である。図9は、微粒子捕集フィルタ54aの下流側から微粒子捕集フィルタ54aを見た概略正面図である。図8及び図9に示したように、微粒子捕集フィルタ54aは、複数の壁部54a1と、複数の上流側閉鎖部54a2と、複数の下流側閉鎖部54a3と、外枠体54a4と、を含んでいる。
複数の壁部54a1は、微粒子捕集フィルタ54aに流入する排ガスの流れの方向に沿うように伸びる「第1通路P1及び第2通路P2」を複数形成している。壁部54a1は多孔質の薄板(例えば、コージェライト等の多孔質セラミック)からなり、排ガスが通過し得るように構成されている。
「第1通路P1及び第2通路P2」の各断面形状は略正方形である。第1通路P1及び第2通路P2は、断面視における正方形の一つの辺を共有しながら隣り合うように配列されている。
上流側閉鎖部54a2は、第2通路P2の上流側端部(最上流端)にて第2通路P2を閉鎖するように配置されている。
下流側閉鎖部54a3は、第1通路P2の下流側端部(最下流端)にて第1通路P1を閉鎖するように配置されている。
このように、微粒子捕集フィルタ54aは、微粒子捕集フィルタ54aに流入する排ガスの流れの方向に沿うように伸びる通路(P1及びP2)を複数形成するとともに排ガスが通過し得る「壁部54a1」を備え、その複数の通路(P1及びP2)のうちの幾つか(本例において約半数)がその最上流端において閉鎖され、且つ、同複数の通路(P2)のうちの最上流端において閉鎖されていない残りの通路が最下流端において閉鎖されている。
このように構成された微粒子捕集フィルタ54aには、排ガスが第1通路P1に流入する。そして、その流入した排ガスは図8に矢印により示したように、壁部54a1を通過して第2通路P2に流入し、その後、第2通路P2から外部に排出される。排ガス中の微粒子は、排ガスが、第1通路P1から壁部54a1を通って第2通路P2に流入する際に壁部54a1にて捕集される。
再び、図7を参照すると、フィルタ収容触媒装置CwF2において、第1三元触媒53と微粒子捕集フィルタ54aとの間には空間(空隙、第1空間)SP1が形成されている。更に、微粒子捕集フィルタ54aと第2三元触媒55との間にも空間(空隙、第2空間)SP2が形成されている。
従って、第1三元触媒53から流出した排ガスは第1空間SP1へと一旦流出し、その後、第1空間SP1から「微粒子捕集フィルタの複数の通路のうち最上流端において閉鎖されていない第1通路P1」へと流入する。従って、微粒子捕集フィルタ54aに効率よく且つ満遍なく(均一)に排ガスを流入させることができる。更に、「微粒子捕集フィルタ54aの複数の通路のうち最下流端において閉鎖されていない第2通路P2」から流出した排ガスは第2空間SP2へと一旦流出し、その後、第2空間SP2から第2三元触媒55へと流入する。従って、第2三元触媒55に効率よく且つ満遍なく(均一)に排ガスを流入させることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。第3制御装置は、フィルタ収容触媒装置の第1三元触媒及び第2三元触媒が、第2制御装置のフィルタ収容触媒装置CwF2のそれらと相違している。以下、第3制御装置が採用したフィルタ収容触媒装置をフィルタ収容触媒装置CwF3と表記する。
フィルタ収容触媒装置CwF3は、図10に示したように、第1三元触媒53aと、微粒子捕集フィルタ54aと、第2三元触媒55aと、を含む。微粒子捕集フィルタ54aは、フィルタ収容触媒装置CwF2が備えるウォールフロータイプの微粒子捕集フィルタ54aと同一のフィルタである。第1三元触媒53a及び第2三元触媒55aは、フィルタ収容触媒装置CwF及びCwF2が備える「第1三元触媒53及び第2三元触媒55」と同様な三元触媒である。
但し、第1三元触媒53aは、第2三元触媒55aよりも「パラジウム(Pd)」の担持率が大きくなっている。
未燃物(HC及びCO等)を酸化するために触媒に担持される貴金属の代表例は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)である。白金は、パラジウムに比べ、高温であり且つ理論空燃比よりもリーンな空燃比のガスが流入したとき(「高温・リーンガス雰囲気」とも言う)、シンタリングによって劣化し易い。一方、白金は、パラジウムに比べ、高温であり且つ理論空燃比よりもリッチでありリッチの程度が大きい強リッチ空燃比のガスが流入したとき、劣化し難い。
他方、上述したフィルタ再生制御(アクティブ空燃比制御)において、排ガスの空燃比は「比較的リーンの程度が小さい強制リーン空燃比afenL」と、「比較的リッチの程度が小さい強制リッチ空燃比afenR」と、に変化する。従って、上流側に配置されることによって高温になり易い第1三元触媒53aが白金を多く担持していると、第1三元触媒53aは「高温・リーンガス雰囲気」に曝され容易に劣化する。そこで、上記構成のように、第1三元触媒53aは、第2三元触媒55aよりも、パラジウムの担持率が大きくなるように構成される。また、第1三元触媒53aは、第2三元触媒55aよりも、白金の担持率が小さくなるように構成される。この結果、第3制御装置は、フィルタ再生制御中における第1三元触媒53aの劣化の進行を抑制することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第4制御装置」とも称呼する。)について説明する。第4制御装置は、フィルタ収容触媒装置の第1三元触媒及び第2三元触媒が、第2制御装置のフィルタ収容触媒装置CwF2のそれらと相違している。以下、第4制御装置が採用したフィルタ収容触媒装置をフィルタ収容触媒装置CwF4と表記する。
フィルタ収容触媒装置CwF4は、図11に示したように、第1三元触媒53bと、微粒子捕集フィルタ54aと、第2三元触媒55bと、を含む。微粒子捕集フィルタ54aは、フィルタ収容触媒装置CwF2が備えるウォールフロータイプの微粒子捕集フィルタ54aと同一のフィルタである。第1三元触媒53b及び第2三元触媒55bは、フィルタ収容触媒装置CwF及びCwF2が備える「第1三元触媒53及び第2三元触媒55」と同様な三元触媒である。
但し、第2三元触媒55bは、その最大酸素吸蔵量が、第1三元触媒53bの最大酸素吸蔵量よりも大きくなるように構成されている。つまり、仮に、第1三元触媒53bの温度と第2三元触媒55bの温度とが同一である場合、第2三元触媒55bは第1三元触媒53bよりも多くの酸素を吸蔵することができるように構成されている。より具体的には、第2三元触媒55bの酸素吸蔵物質であるセリア(CeO2)の担持量は、第1三元触媒53bのセリアの担持量よりも多くなっている。
この場合、第2三元触媒55bの「触媒単位体積あたりのセリアの担持量(セリアの担持率)」が第1三元触媒53bのセリアの担持率より大きく且つ第2三元触媒55bの容量が第1三元触媒53bの容量以上であることが望ましい。但し、第2三元触媒55bのセリアの担持率は第1三元触媒53bの担持率以下であるが、第2三元触媒55bの容量が第1三元触媒53bの容量よりも大きいために、結果的に第2三元触媒55bのセリアの担持量が第1三元触媒53bのセリアの担持量よりも多くなっていてもよい。即ち、セリアの担持率と三元触媒の容量とで決まるセリアの総担持量(即ち、最大酸素吸蔵量、酸素吸蔵能力)が、第2三元触媒55bの方が第1三元触媒53bよりも大きければよい。
これによれば、第1三元触媒53bの最大酸素吸蔵量が小さいので、機関の空燃比が強制リーン空燃比afenLに切り換えてから短時間のうちに微粒子捕集フィルタ54aに酸素が供給され始める。従って、微粒子捕集フィルタ54aの再生開示時期が早くなる。
更に、第2三元触媒55bの最大酸素吸蔵量が大きいので、機関の空燃比が強制リーン空燃比afenLに切り換えてから第2三元触媒55bの下流に酸素が流出するまでの時間が長くなる。即ち、「機関の空燃比を強制リーン空燃比afenLに設定した時点」から「下流側空燃比センサが強制リッチ空燃比afenRに応じた値から強制リーン空燃比afenLに応じた値に変化するまでの時間」が長くなる。従って、機関の空燃比を強制リーン空燃比afenLに設定している時間が長くなるから、微粒子捕集フィルタ54aに多量の酸素を流入させることができる。その結果、微粒子捕集フィルタ54aを効率よく再生することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第5制御装置」とも称呼する。)について説明する。第5制御装置は、フィルタ収容触媒装置の第2三元触媒が、第3制御装置のフィルタ収容触媒装置CwF3の第2三元触媒55aと相違している。以下、第5制御装置が採用したフィルタ収容触媒装置をフィルタ収容触媒装置CwF5と表記する。
フィルタ収容触媒装置CwF5は、図12に示したように、第1三元触媒53aと、微粒子捕集フィルタ54aと、第2三元触媒55cと、を含む。微粒子捕集フィルタ54aは、フィルタ収容触媒装置CwF3が備えるウォールフロータイプの微粒子捕集フィルタ54aと同一のフィルタである。第1三元触媒53a及び第2三元触媒55cは、フィルタ収容触媒装置CwF3が備える「第1三元触媒53a及び第2三元触媒55a」と同様な三元触媒である。
但し、第2三元触媒55cは、各貴金属の担持率を領域(ゾーン)別に設定することができるゾーンコート三元触媒である。第2三元触媒55cは、上流側の部分55c1が下流側の部分55c2よりもパラジウムの担持率が大きく(且つ、白金の担持率が小さく)なるように形成されている。下流側の部分55c2は、第2三元触媒55cの軸線方向(排ガス通過方向)において、上流側の部分55c1よりも下流に位置する部分である。
前述したように、パラジウムは「高温・リーンガス雰囲気」に対して白金よりも劣化し難い。また、第2三元触媒55cにおいて、その上流側の部分55c1は下流側の部分55c2よりも高温になる。更に、前述したように、フィルタ再生制御において、排ガスの空燃比は比較的リーンの程度が小さい強制リーン空燃比afenLと、比較的リッチの程度が小さい強制リッチ空燃比afenRと、に変化する。従って、高温になり易い第2三元触媒55cの上流側の部分55c1が白金を多く担持しているとその部分が劣化する可能性が高まる。しかしながら、第5制御装置の第2三元触媒55cは、その上流側の部分55c1が下流側の部分55c2よりもパラジウムの担持率が大きく白金の担持率が小さいので、フィルタ再生制御中における第2三元触媒55cの劣化の進行を抑制することができる。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態は、微粒子捕集フィルタの下流に第2三元触媒を備え、且つ、フィルタ再生制御における空燃比の強制リッチ空燃比afenRへの切換えを第2三元触媒よりも下流に配置された下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて行っている。従って、フィルタ再生制御中に機関の空燃比を強制リーン空燃比afenLに設定している時間を長くすることができるので、微粒子捕集フィルタを効率よく再生することができる。
なお、上記各制御装置は、フィルタ再生要求が発生してないと判定されているとき(XPM=0)、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて定められる空燃比が「理論空燃比を含む所定の空燃比範囲内の上流側目標空燃比abyfr」に一致するとともに、下流側空燃比センサの出力値Voxsにより表される空燃比が「理論空燃比を含む所定の空燃比範囲内の下流側目標空燃比」に一致するように、「機関に供給される混合気の空燃比を制御する通常空燃比フィードバック制御」を行なう装置でもある。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、メイン及びサブフィードバック制御は、例えば、特開2007−278186号公報に開示されているように下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが下流側目標値に一致するように、上流側空燃比センサ66によって検出される空燃比を見かけ上補正するような態様であってもよい。また、特開平06−010738号公報に開示されているように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて、上流側空燃比センサ66の出力値に基づいて作成される空燃比補正係数を変更する態様であってもよい。
また、第5制御装置において、第1三元触媒53a、第2三元触媒55cの上流側の部分55c1、第2三元触媒55cの下流側の部分55c2、第3三元触媒56の順に、パラジウムの担持率が低下するように構成されてもよい。同時に、第3三元触媒56、第2三元触媒55cの下流側の部分55c2、第2三元触媒55cの上流側の部分55c1、第1三元触媒53aの順に、白金の担持率が低下するように構成されてもよい。更に、各実施形態は、相互に矛盾のない範囲において、組み合わされ得る。例えば、第3制御装置のフィルタ収容触媒装置CwF3の特徴と、第4制御装置のフィルタ収容触媒装置CwF4の特徴と、を組み合わせてもよい。また、フィルタ収容触媒装置CwF3、フィルタ収容触媒装置CwF4及びフィルタ収容触媒装置CwF5において、第1空間SP1及び第2空間SP2は適宜省略されてもよく、更に、それらの微粒子捕集フィルタ54aはウォールフロータイプ以外の微粒子捕集フィルタであってもよい。
10…内燃機関、20…シリンダブロック部、25…燃焼室、30…シリンダヘッド部、34…排気ポート、40…吸気系統、50…排気系統、51…エキゾーストマニホールド、52…排気管、53,53a,53b…第1三元触媒、54,54a…微粒子捕集フィルタ、54a1…壁部、54a2…上流側閉鎖部、54a3…下流側閉鎖部、54a4…外枠体、55,55a,55b,55c…第1三元触媒、56…第3三元触媒、66…上流側空燃比センサ、67…下流側空燃比センサ、70…電気制御装置。