JP2010065174A - 組成物、反射防止膜基板、並びに、太陽電池システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ケイ素化合物を含有する組成物であって、該組成物を基板に塗布し、400℃以上、450℃以下で、1分以上、1時間以下焼成して得られた膜の屈折率が1.25以下とし、かつ該組成物を400℃以上、450℃以下で、1分以上、5時間以下焼成して得られた粉末の、25℃での相対水蒸気圧0.3<P/P0<0.9における水蒸気吸着量差Δが0.03g/g以下とする。
【選択図】なし
Description
また従来、シリカ多孔質体は低誘電率材料として開発されたものが多く、特に特許文献5には、シリカ多孔質体の機械的強度の弱さ、及び水蒸気による誘電率(屈折率)の変化が課題として記載されている。特許文献5には、この水蒸気に対する誘電率(屈折率)の変化を小さくするために、特定のアルコキシシランを特定の比率で配合することによってこの課題が解決できると示されている。具体的には、相対湿度変化に対しても屈折率が変化しない、または少ない組成として、トリエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1から作製された疎水性シリカ膜が示されている。しかしながら、特許文献5における実施例において該疎水性シリカ膜は、確かに広範囲な相対湿度範囲で屈折率変化が小さいものの、相対湿度変化が0.8以上でも屈折率変化がない場合には屈折率の絶対値が大きく(1.25以上)、例えばガラス基板上などに塗布作製された場合には十分な反射防止効果が得られないことがある。
また、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が0.3(mol/mol)以上、0.7(mol/mol)以下であることが好ましい(請求項4)。
さらに、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が10(mol/mol)以上であることが好ましい(請求項5)。
全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の割合が0.001(mol/mol)以上、0.05(mol/mol)以下であることが好ましい(請求項7)。
該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子中の、エチレンオキサイド部位の含有量が20重量%以上であることが好ましい(請求項8)。
また、該有機溶媒が、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール及びエチルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい(請求項11)。
本発明のさらに別の要旨は、上記の反射防止膜基板を受光面側に備えることを特徴とする太陽電池システムに存する(請求項13)。
本発明の組成物は、ケイ素化合物を含有し、さらに下記の条件(1)及び(2)を満たすものである。
(1)組成物を基板上に塗布し、400℃以上、450℃以下で、1分以上、1時間以下焼成して得られた膜の屈折率が1.25以下である。
(2)組成物を室温下、相対湿度40%の条件下で3日間風乾後、400℃以上、450℃以下で、1分以上、5時間以下焼成して得られた粉末の、25℃での相対水蒸気圧0.3<P/P0<0.9における水蒸気吸着量差Δが0.03g/g以下である。(ここでPは、25℃における水蒸気分圧であり、P0は、25℃における飽和水蒸気圧である。)
以下、上記条件(1)及び(2)について詳しく説明する。
本発明の組成物は、該組成物を基板上に塗布後、400℃以上、450℃以下で、1分以上、1時間以下焼成して得られた膜の屈折率が1.25以下となる。該屈折率として好ましくは、1.23以下であり、1.20以下が特に好ましい。屈折率が大きすぎると本発明の組成物を用いて作製されるシリカ膜の反射防止効果が小さくなり、低屈折率膜としての効果が得られ難い。一方、屈折率の下限に特に制限は無いが、通常1.05以上、好ましくは1.08以上である。
本発明の組成物のもう一つの特徴は、組成物を所定の条件下で風乾後、焼成して得られた粉末の水蒸気吸着特性にある。通常のゾルゲル法により作製されるシリカ膜は、未反応アルコキシドや生成したゲル表面のシラノール基の影響により、湿度変化に伴い、親水性が変化する傾向がある。つまり、水蒸気吸着特性を測定した場合、相対水蒸気圧の増加に従い水蒸気吸着量が増加するといった特徴を有している。
しかしながら、シリカ膜を基板上に形成し、これを低屈折率膜として例えば反射防止用途などに使用する場合、水蒸気吸着は屈折率の上昇を招く可能性があり、反射防止効果を得られなくなる可能性がある。従って、シリカ膜を低屈折率反射防止膜として使用する場合には湿度変化に対し、親水性が安定であることが好ましい。
本発明の組成物をシャーレに注ぎ、室温下、相対湿度40℃の条件下で3日間風乾した後、金属製スプーンで削ぎ落として粉末とし、更にマッフル炉で大気下、所定の温度(400℃以上、450℃以下)で所定の時間(1分以上、5時間以下)熱処理することにより有機物を除去したシリカ粉末を得ることができる。この粉末について、相対湿度P/P0を変化させ、平衡状態での水蒸気標準吸着量を容量法または重量法で求めることができる。なお、一般的には、容量法が用いられる。容量法に用いられる装置としては、例えば、日本ベル(株)社製ベルソープ18が挙げられる。
本発明の組成物は、ケイ素化合物を含み、上記条件(1)及び(2)を満たすことが可能な組成物であれば、その組成は特に制限されないが、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなるテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種、及び該テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の組合せと、並びに/又は、該テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種及び他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の部分縮合物と、水と、有機溶媒と、触媒と、エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子とを含むことが好ましい。またさらに、該組成物の組成は、下記の条件(3)〜(6)を満たすことが好ましい。
(4)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が10(mol/mol)以上である。
(5)エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の重量平均分子量が4,300以上である。
(6)該有機溶媒中の80重量%以上が、沸点55℃以上、140℃以下の溶媒である。
本発明の組成物は、ケイ素化合物として、アルコキシシラン類を含有することが好ましく、このアルコキシシラン類として、以下の第1及び第2化合物(群)のうちいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。
テトラアルコキシシラン類群(即ち、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種と、他のアルコキシシラン類群(即ち、他のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種との組み合わせ。
〔第2の化合物(群)〕
特定部分縮合物(即ち、上記テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と、上記他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種との部分縮合物)。
テトラアルコキシシラン類群に含まれるテトラアルコキシシラン類の種類に特に制限は無い。テトラアルコキシシラン類として好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等が挙げられる。また、テトラアルコキシシラン類群の例としては、前記のテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)等も挙げられる。中でも、本発明の組成物の安定性及び生産性という観点では、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン並びにそれらのオリゴマーが好ましく、テトラエトキシシランがさらに好ましい。ただし、テトラアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシラン類と共存することが多い。なお、テトラアルコキシシラン類群に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
他のアルコキシシラン類は、上述したテトラアルコキシシラン類に属さないアルコキシシランであれば、任意のものを使用できる。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したもの;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するもの;などが挙げられる。また、他のアルコキシシラン類群の例としては、前記の他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
特定部分縮合物としては、上述したテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種とが部分縮合した部分縮合物であれば、任意のものを用いることができる。好適な例を挙げると、テトラアルコキシシラン類の好適な例として例示したものと、他のアルコキシシラン類の好適な例として例示したものとが部分縮合した部分縮合物が挙げられる。なお、特定部分縮合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、特定部分縮合物は、特定部分縮合物のみ単独で用いてもよいが、上述したテトラアルコキシシラン類及び他のアルコキシシラン類の一方又は両方と併用してもよい。
上述したテトラアルコキシシラン類及び他のテトラアルコキシシラン類の組み合わせの中でも、特に好ましい組み合わせとしては、テトラアルコキシシラン類としてのテトラエトキシシランと、他のアルコキシシラン類としての芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせによれば、上記条件(1)及び(2)を満たす組成物が容易に得られる。
本発明の組成物において、上述したアルコキシシラン類は、上記条件(3)を満たすことが好ましい。即ち、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が、通常0.3(mol/mol)以上、好ましくは0.35(mol/mol)以上、より好ましくは0.4(mol/mol)以上であり、また通常0.7(mol/mol)以下、好ましくは0.65(mol/mol)以下、より好ましくは0.6(mol/mol)以下である。前記の割合が小さすぎる場合、組成物から得られるシリカ膜の疎水性は高くなるが、−O−Si−O−の結合が少なくなることで、シリカ膜の機械的強度が極めて弱く、同様に耐湿度安定性も低下する傾向がある。一方、前記の割合が大きすぎる場合、シリカ膜中の残存シラノール基が多くなり、やはり耐湿度安定性が低下する傾向がある。
本発明の組成物は、水を含有することが好ましく、用いる水の純度は高いほうが好ましい。通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方または両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、水の使用量は、上記条件(4)を満たすようにすることが好ましい。即ち、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合を、通常10(mol/mol)以上、好ましくは11(mol/mol)以上、より好ましくは12(mol/mol)以上とする。全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が前記の値より小さいと、ゾル−ゲル反応のコントロールが難しく、ポットライフも短く、極めて親水的な表面を有するシリカ膜が得られる可能性がある。このため、本発明の組成物から作製されるシリカ膜の耐湿度安定性が低くなる傾向がある。なお、水の量は、カールフィッシャー法(電量滴定法)により算出できる。
本発明の組成物は、有機溶媒を含有することが好ましい。この有機溶媒の種類は、上記条件(6)、即ち該有機溶媒中の80重量%以上が、沸点55℃以上、140℃以下の溶媒を用いることが好ましい。中でも、有機溶媒としては、上述したアルコキシシラン類及び水を混和させる能力を有するものを1種以上用いることが好ましい。
本発明の組成物は、触媒を含有することが好ましい。触媒は、上述したアルコキシシラン類の加水分解および脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。その例を挙げると、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。また、触媒の例としては、金属キレート化合物も挙げられる。この金属キレート化合物の金属種としては、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン等が挙げられる。金属キレート化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
本発明の組成物は、エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子(以下適宜、「本発明に係る非イオン性高分子」ともいう。)を含有することが好ましい。ただし、本発明に係る非イオン性高分子は、上記条件(5)を満たすことが好ましい。即ち、本発明に係る非イオン性高分子の重量平均分子量は、通常4,300以上であり、5,000以上が好ましく、6,000以上がより好ましい。本発明に係る非イオン性高分子の重量平均分子量が小さすぎると、組成物から作製されるシリカ膜の多孔度を高く維持することが困難となり、低屈折率なシリカ膜を安定して製造することができなくなる可能性がある。なお、前記重量平均分子量の上限は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100,000以下、好ましくは70,000以下、より好ましくは40,000以下である。重量平均分子量が大きすぎると組成物から均質なシリカ膜を製造できなくなる傾向がある。したがって、屈折率、耐湿度安定性とも低下する傾向がある。また、本発明に係る非イオン性高分子は、エチレンオキサイド部位を有することにより、アルコキシシラン類のゾル−ゲル反応中において形成されるアルコキシシラン類の加水分解物や縮合物に対して安定となる。この際、本発明に係る非イオン性高分子中のエチレンオキサイド部位の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常20重量%以上、好ましくは23重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、また、通常100重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。エチレンオキサイド部位の含有量が上記の範囲に収まることで、アルコキシシラン類のゾル−ゲル反応中において形成されるアルコキシシラン類の加水分解物や縮合物に対して、非イオン性高分子がさらに安定に存在することができる。
上記条件(1)及び(2)を満たす組成物を製造することが可能である限り、本発明の組成物には、上述したアルコキシシラン類、水、有機溶媒、触媒及び本発明に係る非イオン性高分子以外の成分を含有していても良い。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の組成物は、屈折率が低く、耐湿度安定性に優れるシリカ膜を製造することが可能なものである。なお、本発明の組成物を用いて、反射防止膜基板の反射防止膜を製造する具体的な方法については、後述する。また、本発明の組成物はポットライフが長く安定しているため、従来の技術に比べて安定して十分に低い屈折率を有するシリカ膜を製造できる。
本発明の組成物を用いて作製されるシリカ膜は、低屈折率であり、当該屈折率を所望の範囲に制御できることから、例えば、低反射材料、反射防止材料として応用できる。また、本発明の組成物により作製されるシリカ膜(低屈折率膜)は平滑性にも優れているため、例えば、エレクトロルミネッセンス素子における光取出し材料としても応用が期待される。さらに、本発明の組成物により作製されるシリカ膜(低屈折率膜)は、湿度変化に対して安定であり、屋外での使用を前提とした用途にも利用でき、例えば太陽電池システム、建材、自動車用内外装に対しても応用できる。具体的には、本発明の組成物により作製されるシリカ膜は、太陽電池用低反射層等として好適に用いることができる。この太陽電池用低反射層は、通常は太陽電池システムの最表面に形成され、光取り込み膜として機能するものである。即ち、太陽電池用低反射層は、太陽電池に入射する光を効率よく内部に取り込み、太陽電池の発電効率を高める働きをするものである。
なお、本発明の組成物の用途は上記用途に限定されるものではない。
本発明の反射防止膜基板は、前述の本発明の組成物を基材に塗布後、熱処理して得られた薄膜を具備することを特徴とする。該反射防止膜基板は、上記組成物を熱処理して得られた薄膜、即ち低屈折率かつ、耐湿度安定性に優れたシリカ膜を具備する。したがって、例えば後述する太陽電池システム等における反射防止膜基板として、非常に有用である。なお、本発明の反射防止膜基板には、基材、及び上記組成物を用いて作製される薄膜(シリカ膜)以外に、必要に応じて、適宜他の部材を備えていてもよい。
本発明の反射防止膜基板に用いられる基材としては、反射防止膜基板の用途等に応じて任意のものを用いることができるが、中でも、汎用材料からなる透明基板を用いることが好ましい。
なお、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の組成物を用い、上記基材上に反射防止膜となる薄膜を形成する方法としては、本発明の組成物を調製後、上記基材上に該組成物を塗布し、熱処理(加熱により硬化)して形成する方法であれば、その形成方法に特に制限はなく、必要に応じて、その他の操作を行なってもよい。例えば、本発明の組成物の調製中又は調製後に熟成を行なってもよく、また組成物を用いて作製した薄膜を熱処理後、反射防止膜基板の冷却及び後処理などを行なってもよい。
なお、本発明の反射防止膜基板において、上記組成物から作製される薄膜の膜厚は、通常0.05μm以上、好ましくは0.08μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、また通常5μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。これにより光学的効果を発現することがすることができる。
本発明の組成物の調製工程では、該組成物を構成する各成分を混合する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合しても良く、2回以上に分けて連続又は断続的に混合しても良い。ただし、従来、制御困難とされているゾル−ゲル反応を制御して、該組成物をより工業的に調製するためには、以下の要領で調製することが好ましい。即ち、アルコキシシラン類、水、触媒及び溶媒を混合し、その混合物を熟成させることでアルコキシシラン類をある程度加水分解及び脱水縮合させる。そして、その混合物に本発明に係る非イオン性高分子を混合して、該組成物を調製する。これにより、ゾル−ゲル反応条件下で、アルコキシシラン類と非イオン性高分子との親和性を維持することができる。なお、熟成は、前記の混合物と本発明に係るイオン性高分子を混合した後で行なってもよい。
上記調製工程の後、組成物を塗布(膜化)する塗布工程を行なう。塗布工程では、通常、上記基材の表面に上記組成物を製膜する。塗布の方法に制限は無いが、例えば、本発明の組成物をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード等を使用して基材上に延ばす流延法;本発明の組成物に基材を浸漬し引き上げるディップコート法;スピンコート法、キャピラリーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などの周知を挙げることができる。これらの方法のうち、流延法、ダイコート法、スプレーコート法及びスピンコート法が本発明の組成物を均一に塗布することができるので好ましく採用される。中でも、均質な膜を形成する上ではスピンコート法が特に好ましい。
さらに、霧化粒子の搬送に利用する気体流の気流速度は、用いる組成物により適宜調整することが好ましいが、通常5m/秒以下、好ましくは4m/秒以下、より好ましくは3m/秒以下である。気流速度が高過ぎると、膜が不均質になる可能性がある。また用いる気体としては特に限定されないが、窒素などの不活性ガスが好ましい。
スプレーノズルと基材との距離は基材サイズにより適宜調整することが好ましいが、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは15cm以上である。また通常100cm以下、好ましくは80cm以下、より好ましくは50cm以下である。この範囲を超えると膜厚ムラが発生する可能性がある。
塗布工程の後、膜を熱処理する熱処理工程を行なう。熱処理工程により、本発明の組成物中の有機溶媒及び水が乾燥、除去されて、膜が硬化し、またさらに非イオン性ポリマーが除去されることによって、基材上に反射防止膜(シリカ膜)が形成される。上記非イオン性ポリマーが除去されることによって、多孔質のシリカ膜が形成されることとなり、本発明の組成物が上述した特性を有するものとすることができる。
熱処理の方式は特に制限されないが、例としては、加熱炉(ベーク炉)内に基材を配置して本発明の組成物の膜を熱処理する炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に基材を搭載しそのプレートを介して本発明の組成物から作製されるシリカ膜を熱処理するホットプレート方式、前記基材の上面側及び/又は下面側にヒーターを配置し、ヒーターから電磁波(例えば赤外線)を照射して、本発明の組成物から作製される膜を熱処理する方式、などが挙げられる。
熱処理工程の後、必要に応じて、冷却工程を行なってもよい。冷却工程では、熱処理工程で高温となった本発明の反射防止膜基板を冷却する。この際、冷却速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは0.8℃/分以上、更に好ましくは1℃/分以上、また、通常50℃/分以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃/分以下、更に好ましくは10℃/分以下である。冷却速度が遅すぎると製造コストが高くなる可能性があり、速すぎると隣接する膜間の線膨張が異なることによる膜質の低下が予想される。また、冷却工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。さらに、温度及び湿度に制限は無いが、通常は常温・常湿で冷却する。
熱処理工程の後、必要に応じて、後処理工程を行なってもよい。後処理工程で行なう具体的な操作に制限は無いが、例えば、得られた反射防止膜基板をシリル化剤で処理することで、表面をより機能性に優れたものにできる。具体例を挙げると、シリル化剤で処理することにより、本発明の反射防止膜基板に疎水性が付与され、アルカリ水などの不純物によりシリカ膜の空孔が汚染されるのを防ぐことができる。
本発明の反射防止膜基板では、本発明の効果を著しく損なわない限り、製造の際、上述した各工程の工程前、工程中及び工程後の任意の段階で、任意の工程を行なってもよい。なお、本発明の反射防止膜基板では本発明の組成物を膜状に形成したが、膜状以外の形状に成形するのであれば、塗布工程の代わりに所定の形状に成形する成形工程を行なえばよい。
本発明の太陽電池システムは、上記反射防止膜基板を受光面側に備えることを特徴とし、例えば、本発明の組成物を用いて反射防止膜を基材上に形成させた反射防止膜基板を、太陽電池システムの光エネルギーを取り入れる受光面側の被覆に用いる構成とすることができる。
本発明の太陽電池システムの一例を図1に示す。太陽電池システムでは、通常は一対の電極1及び3を設け、当該電極1及び3の間に半導体層2が位置するように構成する。また、基材5と電極3との間に中間層4があってもよい。また、通常、上記反射防止膜基板(基材5及び反射防止膜6)が、受光面側となるように構成する。
本発明においては、上記各構成以外に、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、ガスバリア層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、粘着層、ハード層、導電性層、反射層、アンチグレア層、拡散層等(図示せず)をさらに組み合わせてもよい。
半導体層2に用いられる半導体の種類に制限は無い。また、半導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、半導体層2には、太陽電池システムとしての機能を著しく損なわない限りその他の材料が含有されていても良い。
なお、半導体層2の厚さに特に制限はないが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の寸法で形成する。
本発明の組成物から作製されるシリカ膜は、平滑な表面を有する点において、エレクトロルミネッセンス(EL)素子にも好適である。
本発明の組成物から作製されるシリカ膜を用いたエレクトロルミネッセンス素子は、例えば、該シリカ膜、2つの電極、及び上記電極の間にエレクトロルミネッセンス層を有するものであればよく、通常、(i)電極(陰極)、(ii)エレクトロルミネッセンス層、(iii)電極(陽極)、(iv)該シリカ膜、及び(v)透光体がこの順に配置される構成をとること等が可能である。(i)〜(v)の順を維持するものであれば、それぞれの層の間に他の層を有していてもよい。例えば(iii)電極(陽極)と(iv)シリカ膜との間に、光散乱層及び/または高屈折率層を入れること等も可能である。
陽極は、可視光に対して透明性を有する透明電極層とすることも可能であり、透明電極層として形成される場合、可視光波長領域における光線透過率は大きいほど好ましい。この際、下限としては通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。また上限としては通常99%以下である。また陽極の電気抵抗は、面抵抗値として小さいほど好ましく、通常1Ω/□(オームパースクウェア;□=1cm2)以上とされ、通常100Ω/□以下、好ましくは70Ω/□以下、より好ましくは50Ω/□以下とされる。
〔組成物の調製〕
テトラエトキシシラン6.78g、メチルトリエトキシシラン6.92g、エタノール(沸点78.3℃)2.30g、水5.56g、及び、0.3重量%の塩酸水溶液13.0gを混合し、60℃のウォーターバス中で30分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。
次に、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(ALDRICH社製 (重量平均分子量5,800、エチレンオキサイド部位の割合は30重量%);以下適宜「P123」という)6.14gとエタノール3.20gとを混合した混合物(B)に、前記の混合物(A)を添加し、室温で60分撹拌し、0.45μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで、混合物(C)を調製した。
この混合物(C)40mlと、希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)36mlとを混合し、室温で30分撹拌することで本発明の組成物を得た。
この組成物において、全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する、テトラエトキシシラン由来のケイ素原子、水、及びP123の割合は、それぞれ、0.46、14.4及び0.015(mol/mol)であった。
得られた組成物を、120mmφのガラス性シャーレに6.3ml注ぎ、室温下、相対湿度40%の条件にて3日間溶媒を乾燥させた。その後、450℃、2時間、大気雰囲気中で加熱焼成して、粉末を得た。得られた粉末について25℃での相対水蒸気圧と吸着量との関係を日本ベル(株)社製ベルソープ18を用いて測定した。
その結果、水蒸気吸着量は、図2のようになり、相対湿度0.3<P/P0<0.9での水蒸気吸着量差Δは、0.005g/gであった。
次に上記で調製した本発明の組成物を1mlピペッターで測り取り、スピンコーター(ミカサ(株)社製)にセットした青板ガラス基板上に万遍なく塗布し、500rpm、120秒間スピンコートして青板ガラス基板上にシリカ膜を作製した。得られたシリカ膜基板を450℃に設定したホットプレート上に置き、大気雰囲気下で2分間加熱することで外観の良好な反射防止膜基板を得た。得られた反射防止膜(シリカ膜)の屈折率は分光エリプソメーターにより測定し、Cauthyモデルで解析した結果、波長550nmにおける屈折率は1.18であり、膜厚は0.69μmであった。実施例1の結果を表1に示す。
全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合(非イオン性高分子/Si(mol/mol))を0.0058(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なって本発明の組成物を作製した。その後、水蒸気吸着量測定用粉末を作製して水蒸気吸着量測定を行ない、さらにシリカ膜の屈折率測定を行なった。結果を表1に示す。また、水蒸気吸着量測定の結果を図2に示す。
〔組成物の調製〕
テトラエトキシシラン3.47g、メチルトリメトキシシラン2.27g、エタノール(沸点78.3℃)4.60g、水0.60g、及び、塩酸6.1×10−5gを混合し、60℃のウォーターバス中で90分攪拌することで、混合物(A)を調製した。
次に、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC F127(重量平均分子量12,600、エチレンオキサイド部位の割合は70重量%);以下適宜「F127」という)2.52gとエタノール26.07gとを混合溶解し、さらに、水2.4gと塩酸0.0048gとを混合した混合物(B)に、前記の混合物(A)を添加し、室温で3日間撹拌し、0.45μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで組成物を得た。
該組成物において、全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシラン)由来のケイ素原子に対する、テトラエトキシシラン由来のケイ素原子、水、及びF127の割合は、それぞれ、0.50、5.0及び0.006(mol/mol)である。
得られた組成物を、120mmφのガラス性シャーレに6.3ml注ぎ、室温下、相対湿度40%の条件にて3日間溶媒を乾燥させた。その後、400℃、5時間、大気雰囲気中で加熱焼成して、粉末を得た。得られた粉末について25℃での相対水蒸気圧と吸着量との関係を日本ベル(株)社製ベルソープ18を用いて測定した。
次に上記で調製した組成物を1mlピペッターで測り取り、スピンコーター(ミカサ(株)社製)にセットした青板ガラス基板上に万遍なく塗布し、1000rpm、60秒間スピンコートして青板ガラス基板上にシリカ含有コーティング膜を作製した。得られたコーティング膜基板を130℃に設定したホットプレート上に置き、大気雰囲気下で10分間加熱した後、設定温度を400℃にして1時間加熱することで外観の良好な反射防止膜基板を得た。得られた反射防止膜の屈折率は分光エリプソメーターにより測定し、Cauthyモデルで解析した。結果を表1に示す。また、水蒸気吸着量測定の結果を図2に示す。
表1において、非イオン性高分子/Siの欄の数値は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合(mol/mol)を表わす。結果を表1に示す。水蒸気吸着量の測定結果を図2に示す。
組成物より作製されたシリカ膜を温度85℃、相対湿度85%の環境下で100時間保存したものの屈折率変化を測定し、その変化量が0.05以下であり、外観の変化がないものを「○」とした。なお、屈折率は分光エリプソメーターにより測定し、Cauthyモデルで解析した。結果を表1に示す。比較例1では膜にクラックが発生した。
表1より、相対湿度0.3<P/P0<0.9における水蒸気吸着量差Δが0.03g/g以下である実施例1及び実施例2においては、耐湿度安定性が良好であった。一方、上記水蒸気吸着量差Δが0.03より大きい比較例1においては、耐湿度安定性が低かった。
なお、比較例1においては、組成物中のH2O/Siが小さく、水の量が少ないことから、膜中に未反応のアルコキシ基が残存し、ここが熱処理工程によって親水部位となり、水蒸気吸着量差が大きくなり、その結果、対湿度安定性が低くなっていると推察される。
2 半導体層
4 中間層
5 透明基板
6 多孔質体
Claims (13)
- ケイ素化合物を含有する組成物であって、
該組成物を基板に塗布し、400℃以上、450℃以下で、1分以上、1時間以下焼成して得られた膜の屈折率が1.25以下であり、
かつ該組成物を室温下、相対湿度40%の条件下で3日間風乾し、その後400℃以上、450℃以下で、1分以上、5時間以下焼成して得られた粉末の、25℃での相対水蒸気圧0.3<P/P0<0.9における水蒸気吸着量差Δが0.03g/g以下である
ことを特徴とする組成物。
(ここでPは、25℃における水蒸気分圧であり、P0は、25℃における飽和水蒸気圧である。) - テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなるテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種、及び該テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の組合せと、
並びに/又は、該テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種及び他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の部分縮合物と、
水と、
有機溶媒と、
触媒と、
エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の組成物。 - 該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の重量平均分子量が4,300以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の組成物。 - 全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が0.3(mol/mol)以上、0.7(mol/mol)以下である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の組成物。 - 全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が10(mol/mol)以上である
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の組成物。 - 該有機溶媒中の80重量%以上が、沸点55℃以上140℃以下の有機溶媒である
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の組成物。 - 全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の割合が0.001(mol/mol)以上、0.05(mol/mol)以下である
ことを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項に記載の組成物。 - 該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子中の、エチレンオキサイド部位の含有量が20重量%以上である
ことを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項に記載の組成物。 - 該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子が、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー、及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の非イオン性高分子である
ことを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一項に記載の組成物。 - 該テトラアルコキシシラン類がテトラエトキシシランであり、
該テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類が、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランである
ことを特徴とする請求項2〜9いずれか一項に記載の組成物。 - 該有機溶媒が、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール及びエチルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する
ことを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載の組成物。 - 請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を基材に塗布後、熱処理して得られた薄膜を具備する
ことを特徴とする反射防止膜基板。 - 請求項12に記載の反射防止膜基板を受光面側に備える
ことを特徴とする太陽電池システム。
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