JP2010059125A - シトルリンの晶析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶解度が低い温度で、シトルリン無水化物結晶を安定的に、及び/又は、高収率で取得すること。
【解決手段】シトルリン水性溶液からシトルリン無水化物の晶析を行い、シトルリン無水化物結晶を採取する、シトルリン無水化物結晶の製造法において、晶析をオルニチン、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸の存在下で、好ましくは、シトルリン水性溶液中の水に対して、0.003〜10.0g/100g H2Oの濃度で存在下で行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、シトルリン無水化物結晶を製造する方法に関する。
シトルリンは、欧米などで古くから、医薬品や健康食品として利用されてきた。日本においても、2007年に厚生労働省より正式に食品添加物として認可されたことで、従来の医薬品用途に加え、食品、飲料などへの用途展開が期待されている。このシトルリンの生産方法として、発酵法(特許文献1)などが利用されていることは周知の通りである。
シトルリン結晶には、大きく分けて無水化物と2水化物の2種類の結晶多形が存在する。この結晶多形の存在は古くから知られており、無水化物については、45℃以上のシトルリン過飽和溶液に無水化物を接種することで容易に析出させることができるが、45℃以下で晶析すると、無水化物スラリー中において、2水化物が起晶することが分かっている(特許文献2)。さらに、40〜50℃以下で2水化物をシトルリン溶液に接種して晶析を行った場合、2水化物を容易に取得できることが知られている(特許文献3)。つまり、従来技術では、45℃以下の状態では、2水化物の起晶や無水化物から2水化物への転移が起こりやすくなると考えられていた。転移が起きた場合、無水化物スラリーは無水化物と2水化物の混合物、又は2水化物のみの状態に変わる。尚、無水化物にはα、γ、δの3種の結晶型が存在するが、δ型結晶が安定系であり、濃縮や冷却等の通常の晶析で得られるのはδ晶である(特許文献2)。
最終製品形態が無水化物と2水化物の混合物、又は2水化物単独の場合、乾燥工程と包装工程に問題が生じる。すなわち、高温で乾燥すると乾燥品が着色してしまうため2水化物を低温で乾燥せざるを得ず、その結果、2水化物の結晶水が飛散しにくいことと相まって乾燥に長時間を要していた。また、乾燥中に飛散した結晶水の作用で結晶同士が結着して塊状になりやすく、生成した塊状物の分離、粉砕等の手間がかかっていた。さらに、包装においても、無水化物が粒状晶で比容が小さい傾向になるのに対し、2水化物は針状もしくは柱状晶で比容が大きくなる傾向にあるため、同じ重量のシトルリンを包装する際も、包装袋の大きさに違いが生じる。つまり、同じ重量のシトルリンを包装する際、無水化物の方が包装袋は小さく、又は包装回数が少なくて済むので、製品形態は無水化物が望ましい。
しかしながら、無水化物を取得する場合、次の問題が生じる。シトルリンの溶解度は温度依存性であり、高温ほど溶解度が高くなる(非特許文献1)。よって、晶析を行う温度によって、その収率は大きく異なる。しかし、従来技術では無水化物の晶析は45℃以上で行うことが望ましいため、晶析母液中のシトルリン濃度が高い状態で分離する必要がある。よって、より低い温度で取得しやすい2水化物を製品形態として晶析する場合に比べ、低収率になってしまう。
特開昭57−163488号公報 特開昭56−99453号公報 特公昭46−174号公報 「アミノ酸ハンドブック」工業調査会、2003年
本発明の課題は、従来よりも溶解度が低い温度で、シトルリン無水化物結晶を安定的に、及び/又は、高収率で取得することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を行い、シトルリン無水化物の晶析を、塩基性アミノ酸存在下で行うと、添加していない場合に比べ、2水化物の起晶及び無水化物の2水化物への転移が大きく阻害され、無水化物を安定的に取得できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)シトルリン水性溶液からシトルリン無水化物の晶析を行い、シトルリン無水化物結晶を採取する、シトルリン無水化物結晶の製造法において、晶析を塩基性アミノ酸存在下で行うことを特徴とする方法。
(2)前記晶析を、45℃より低い温度で行うことを特徴とする、前記方法。
(3)塩基性アミノ酸がオルニチン、リジン、及びアルギニンから選ばれるアミノ酸である、前記方法。
(4)シトルリンがL−シトルリンであり、塩基性アミノ酸がL−オルニチン、L−リジン、及びL−アルギニンから選ばれるL−アミノ酸である、前記方法。
(5)塩基性アミノ酸を、シトルリン水性溶液中の水に対して、0.003〜10.0g/100g H2Oの濃度で存在させる、前記方法。
(6)晶析を、濃縮晶析及び/又は冷却晶析により行う、前記方法。
本発明により、シトルリン2水化物の起晶、及び無水化物から2水化物への転移を大きく阻害することで、従来技術よりも低温での無水化物の晶析を可能とし、高収率で無水化物を取得することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、シトルリン水性溶液からシトルリン無水化物の晶析を行い、シトルリン無水化物結晶を採取する、シトルリン無水化物結晶の製造法において、晶析を塩基性アミノ酸存在下で行うことを特徴とする方法である。本発明により製造されるシトルリン無水化物結晶は、好ましくはδ型結晶である。
水性溶液とは、水のみを溶媒とする溶液、又は主として水を溶媒とする溶液を意味する。水性溶液は、水以外に、本発明の効果を害さない限り、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン等の水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
シトルリン水性溶液とは、少なくとも溶解したシトルリンを含む水性溶液であり、シトルリンが完全に溶解した溶液であってもよく、溶解したシトルリンに加え、シトルリンの結晶を含んでいてもよい。
また、シトルリン水性溶液は、本発明の効果を害さない限り、シトルリン及び塩基性アミノ酸以外の溶質を含んでいてもよい。そのような溶質としては、塩及び緩衝剤等が挙げられる。さらに、シトルリン水性溶液は、シトルリンを含む発酵液の上清、シトルリンを生成する反応液等であってもよい。シトルリン水性溶液のpHは特に制限されないが、pH2.0〜10.0が好ましく、3.0〜9.0がより好ましい。
本発明に用いるシトルリンは、どのような製造法によって得られたものであってもよいが、光学活性なシトルリンであることが好ましい。本発明においては、L−シトルリンが
好ましい。シトルリンを製造する方法としては、発酵法(例えば特開昭57-163488号)、
微生物触媒法(特開平5-168486号、特開平8-89269号)及び化学反応による方法が挙げら
れる。化学反応によるシトルリンの製造法としては、例えば、オルニチン銅塩に尿素を作用させる方法、及び、アルギニンをアルカリで分解させる方法等が挙げられる(特公昭46-174号)。
本発明に用いる塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン、及びオルニチン等が挙げられる。シトルリンがL−シトルリンの場合は、塩基性アミノ酸はL−体であることが好ましい。
本発明において、シトルリン水性溶液からシトルリン無水化物の晶析を行う際に、シトルリン水性溶液に塩基性アミノ酸を存在させる。シトルリン水性溶液に塩基性アミノ酸を存在させるには、シトルリン水性溶液に塩基性アミノ酸を添加してもよく、塩基性アミノ酸溶液にシトルリンを添加してもよい。添加する塩基性アミノは、固体であってもよく、溶液であってもよい。固体の塩基性アミノ酸を添加する場合は、添加後に溶解させることが好ましい。
また、塩基性アミノ酸は、晶析を行う前にシトルリン水性溶液に添加してもよく、シトルリンの一部をシトルリン無水化物として晶析させた後、2水化物への転移が始まる前に添加してもよい。
晶析の方法としては、特に制限されないが、シトルリン水性溶液を濃縮することにより晶析を行う濃縮晶析、シトルリン水性溶液を冷却することにより晶析を行う冷却晶析、及び、シトルリン含有液のpHを調整して晶析する方法等が挙げられる。これらの中では、濃縮晶析、冷却晶析、又はこれらの両方によって行うことが好ましい。
シトルリン水性溶液を濃縮、又は冷却し、シトルリン濃度を溶解度以上に高めることによって、シトルリン結晶が起晶する。あるいはシトルリン水性溶液のpHを調整して溶解度を低くすることによって、シトルリン結晶が起晶する。その際に、塩基性アミノ酸を存在させることによって、塩基性アミノ酸非存在下に比べて、より低い温度でシトルリン無水化物結晶を晶析することができる。また、晶析したシトルリン無水化物結晶は、塩基性アミノ酸存在下では、非存在下に比べて、より低い温度でシトルリン結晶を無水化物のまま安定に維持することができる。このように、低い温度でシトルリン無水化物の晶析を行うことが可能となるため、高収率で無水化物結晶を得ることができる。
尚、濃縮又は冷却操作に先だって、又はこれらの操作中に、シトルリン無水化物結晶(δ晶)を種晶として加えてもよい。シトルリン無水化物結晶は、例えば、シトルリン水溶液から45℃以上で晶析を行うこと、又は、シトルリン2水化物結晶スラリーを40〜50℃に置き、2水化物を無水化物に転移させることによって、取得することができる。
塩基性アミノ酸非存在下では、45℃以下で晶析を行うと、シトルリン2水化物が起晶したり、シトルリン無水化物が起晶しても、2水化物への転移が起こる。この現象は、晶析の温度が低くなるとより顕著である。それに対し、塩基性アミノ酸存在下では、非存在下に比べて、シトルリン無水化物の起晶や2水化物への転移が起こる温度をより低くすることができる。また、同じ温度であっても、無水化物から2水化物への転移が起きる時間を遅くすることができる。
本発明の一形態においては、シトルリン水性溶液を濃縮して、シトルリンの一部を無水化物結晶として析出させ、得られたスラリーを冷却することによって、溶存しているシトルリンを無水化物結晶としてさらに析出させる。その際、シトルリン水性溶液の濃縮の前
又は後、少なくとも冷却時に塩基性アミノ酸を存在させる。
シトルリンの晶析において、無水化物スラリーを冷却していくと2水化物への転移が始まるが、このような状態下でシトルリンと側鎖の炭素数など構造が類似しているアルギニン、リジン、オルニチンのような塩基性アミノ酸が存在すると、シトルリンの無水化物又は2水化物の結晶表面にこれら塩基性アミノ酸が相互作用して、2水化物への転移を阻害すると推定される。
本発明においてシトルリン無水化物の晶析を行う温度は、シトルリン無水化物の起晶や2水化物への転移が起らない限り特に制限されないが、より低い方が収率の点で好ましい。具体的には、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、特に好ましくは20℃以下である。また、シトルリン無水化物の起晶や2水化物への転移が起らない温度は、塩基性アミノ酸の種類又は濃度によっても異なる。したがって、晶析を行う温度の下限は条件によっても異なるが、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上である。
シトルリン水性溶液に存在させる塩基性アミノ酸の濃度としては、例えば晶析温度が15℃以上では、好ましくは0.003〜10.0g/100g H2O、より好ましくは0
.25〜4.0g/100g H2Oが例示される。しかしながら、塩基性アミノ酸の種類
、晶析を行う温度、シトルリン水性溶液に含まれるシトルリンと塩基性アミノ酸以外の成分の種類や濃度等によって、塩基性アミノ酸によるシトルリン無水化物から2水化物への転移の阻害の効果は左右されると考えられる。例えば、シトルリン水性溶液中の不純物とシトルリンとの相互作用により前記効果は影響を受け、純粋なシトルリン結晶を溶解させた水溶液とシトルリン発酵液とでは、好適な塩基性アミノ酸濃度は異なることが予想される。従って、好適な塩基性アミノ酸の添加量は、本発明が適用される原料シトルリン水性溶液、使用する塩基性アミノ酸、及び晶析の温度設定に応じて、適宜設定することが好ましい。いずれにしても、晶析温度をより低くするには、塩基性アミノ酸濃度を高くすることが好ましい。
好適な塩基性アミノ酸の添加量は、例えば以下のようにして決定することができる。シトルリン無水化物スラリー中の水に対し、塩基性アミノ酸を0〜10.0g/100g H2O程度になるように添加し、冷却晶析を行う。冷却晶析中に一部結晶を分離し、その結
晶を顕微鏡で観察して結晶がすべて無水化物か、あるいは2水化物の起晶又は無水化物から2水化物への転移が起きているかを判断する。また、顕微鏡での判断が困難な場合は、粉末X線回折パターンを確認し、得られた結晶の回折パターンによって無水化物か2水化物かを判断する。このようにして、シトルリン無水化物結晶のみが得られる塩基性アミノ酸濃度、及び晶析温度を決定することができる。
上記のようにしてシトルリン無水化物を晶析させた後、結晶を採取することにより、シトルリン無水化物結晶が得られる。無水化物結晶は、再結晶又は洗浄等により、塩基性アミノ酸及び不純物を除去することができる。得られた結晶は、2水化物への転移を防ぐため、乾燥させることが好ましい。乾燥は、減圧及び/又は加熱により行うことができる。加熱は、60〜100℃が好ましい。乾燥させたシトルリン無水化物結晶は、適宜包装して最終製品とすることができる。
シトルリン水性溶液中の塩基性アミノ酸は、リサイクルすることにより、再度シトルリン無水化物の晶析に使用することができる。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。
〔実施例1〕シトルリン無水化物の調製
L−シトルリン試薬(シグマ アルドリッチ ジャパン(株))200gを3Lビーカーに計りとり、水を加え、2Lになるまでメスアップした。40℃で加温して結晶を溶かし、溶液の重量が400gになるまでエバポレーターにて濃縮して、シトルリンの濃縮晶析を行った。濃縮晶析において、無水化物を得る必要があったため、従来法に従い(特開昭56-99453号公報)、濃縮温度が45℃以上になるように管理した。
濃縮晶析終了後、得られた晶析スラリーをヌッチェにて分離した。スラリーを風乾してシトルリン結晶161gを得た。得られた結晶の顕微鏡写真を図1に示す。また、晶析スラリーを10℃まで冷却後、24時間置いて、ヌッチェにて分離した時に得られた結晶の顕微鏡写真を図2に示す。
なお、図1、図2に示した顕微鏡写真、または既に明らかにされている無水化物の粉末X線回折パターン(特開昭56-99453号公報)と得られた結晶の粉末X線回折パターン((株)リガク MiniFlexII)との比較から、シトルリンの無水化物(δ型)が得られたと判断した。
〔実施例2〕塩基性アミノ酸のシトルリン結晶型に対する効果1
実施例1で調製したシトルリン無水化物6.33gと水30gを100ml三角フラスコに添加した。その調製液にL−オルニチン塩酸塩、又はL−リジン塩酸塩(すべて和光純薬工業(株))を表1に示す組成で添加して溶解させた。三角フラスコを15℃、10℃、又は5℃に設定した恒温槽(東京理化器(株)NCS−1300)にて120rpmで24時間振とうさせた。24時間後、液底体の結晶を顕微鏡観察して、無水化物の状態か2水化物へ転移したのかを判断した。また、目視で判断できない時は粉末X線回折パターンを観測し、結晶が無水化物か2水化物かを判断した。結晶の観察結果を表2に示した。
塩基性アミノ酸を添加していない実験7では5℃、10℃、15℃のいずれにおいても、24時間で無水化物は2水化物へ転移していた。一方、塩基性アミノ酸を添加した実験1〜6では、10℃又は15℃では転移することなく無水化物のままであった。また、5〜10℃においては、塩基性アミノ酸の添加量が多いほど、無水化物から2水化物への転
移が起こりにくかった。
すなわち、塩基性アミノ酸添加により、2水化物への転移を大きく阻害し、無水化物を安定的に保持することに成功した。
〔実施例3〕塩基性アミノ酸のシトルリン結晶型に対する効果2
実施例1で調製したシトルリン無水化物6.33gと水30gを100ml三角フラスコに添加した。その調製液にL−アルギニン塩酸塩(和光純薬工業(株))を表3に示す組成で添加して溶解させた。三角フラスコを15℃、10℃、又は5℃に設定した恒温槽にて120rpmで24時間振とうさせた。24時間後、液底体の結晶を顕微鏡観察して、無水化物の状態か2水化物へ転移したのかを判断した。また、目視で判断できない時は粉末X線回折パターンを観測し、無水化物か2水化物かを判断した。結晶の観察結果を表4に示した。
実験8〜12において、15℃、24時間では結晶はすべて無水化物のままであった。また、5〜10℃においては、塩基性アミノ酸の添加量が多いほど、2水化物へ転移が起こりにくかった。すなわち、塩基性アミノ酸添加により、2水化物への転移を大きく阻害し、無水化物を安定的に保持することに成功した。
〔実施例4〕シトルリン結晶型に対するpHの影響
実施例1で調製したシトルリン無水化物6.33gと水30gを100ml三角フラスコに添加した。その調製液にL−アルギニン塩酸塩を表5に示す組成で添加して溶解させた。さらに、表5に示したように1M塩酸(和光純薬工業(株))と1M水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株))とでpHを調整した。この三角フラスコを20℃又は10℃に設定した恒温槽にて120rpmで24時間振とうさせた。24時間後、液底体の結晶を顕微鏡観察して、無水化物の状態か2水化物へ転移したのかを判断した。また、目視で判断できない時は粉末X線回折パターンを観測し、無水化物か2水化物かを判断した。結晶の観察結果を表6に示した。
いずれのpHにおいても結晶は無水化物のままであった。
〔比較例1〕塩基性アミノ酸無添加での結晶転移
実施例1で調製したシトルリン無水化物6.33gと水30gを100ml三角フラスコに添加した。表7に示したように1M塩酸と1M水酸化ナトリウムでpHを調整した。この三角フラスコを10℃に設定した恒温槽にて120rpmで24時間振とうさせた。24時間後、液底体の結晶を顕微鏡観察して、無水化物の状態か2水化物へ転移したのかを判断した。また、目視で判断できない時は粉末X線回折パターンを観測し、無水化物か2水化物かを判断した。結晶の観察結果を表8に示した。
24時間後では、すべての結晶の2水化物への転移が確認された。
〔実施例5〕L−シトルリンの晶析
L−シトルリン(シグマ アルドリッチ ジャパン)試薬70gを2Lビーカーに計りとり、水を加え、1000gになるまでメスアップした。40℃で加温して結晶を溶かし、エバポレーターにて濃縮液175gになるまで濃縮を行った。この作業を実験23とした。この濃縮液中に析出したL−シトルリン結晶は、顕微鏡観察により無水化物であることを確認した。
同様に、L−シトルリン試薬70gを2Lビーカーに計りとり、さらに、アルギニン塩酸塩1.26gを添加し、水を加え、1000gになるまでメスアップした。40℃で加温して結晶を溶かし、エバポレーターにて濃縮液175gになるまで濃縮を行った。この作業を実験24とした。この濃縮液中に析出したL−シトルリン結晶は、顕微鏡観察により無水化物であることを確認した。
各々の濃縮液を入れたフラスコを50℃の恒温槽に浸漬し、攪拌しながら5℃/hrの
速度で20℃まで冷却し、8時間20℃で保持した。その後、液底体の結晶の一部を顕微鏡観察して、無水化物か2水化物かを判断した。さらに、結晶が無水化物の場合のみ、上清の一部を分取し、ポアザイズ0.45μmのフィルターにて濾過し、上清のシトルリン濃度を定量した。
続いて恒温槽を15℃まで冷却した後、6時間15℃で保持した。その後、液底体の結晶を顕微鏡観察して、無水化物か2水化物かを判断した。また、液底体が無水化物の場合のみ、上清の一部を分取し、ポアザイズ0.45μmのフィルターにて濾過し、上清のシトルリン濃度を定量した。
続いて恒温槽を10℃まで冷却した後、6時間10℃で保持した。その後、液底体の結晶の一部を顕微鏡観察して、無水化物か2水化物かを判断した。また、液底体が無水化物の場合のみ、上清をポアザイズ0.45μmのフィルターにて濾過し、上清のシトルリン濃度を定量した。
実施例5における液底体の結晶形と上清のシトルリン濃度について、表9に示した。
実験23では20℃で一部2水化物への転移が始まっていた。それに対し、実験24で
は10℃でも無水化物のままであった。
実験23において、20℃での液底体は無水化物と2水化物の混合状態であったが、その時の上清のシトルリン濃度は9.95wt%であった。それに対し、実験24において、10℃での液底体は無水化物であったが、その時の上清のシトルリン濃度は7.80wt%であった。すなわち、本発明により、従来よりも低温下で無水化物を取得することができ、結果として晶析母液のシトルリン濃度が低い状態で分離できるため、シトルリン無水化物を高収率で取得できるようになった。
実験23の10℃の液底体、すなわち無水化物が転移したことで得られたシトルリン2水化物をヌッチェにて分離した。同様に実験24の10℃の液底体、すなわち2水化物へ転移しなかった無水化物をヌッチェにて分離した。分離した結晶を減圧加熱乾燥(80mmHg、70℃)した後、両結晶の粗比容と密比容を、特開昭59-172444号公報に記載の
方法で測定した。表10に示したように粗比容、密比容ともに実験24で得られた無水化物の結晶の方が小さかった。つまり、実施例5で得られた結晶を包装する場合、実験25で得られた無水化物の方が包装回数を減らすことができ、包装作業の負荷を小さくできることが考えられた。
以上、実施例に挙げて具体的に示したように、塩基性アミノ酸を存在下でシトルリン無水化物を晶析すると、塩基性アミノ酸非存在下に比べ、シトルリン2水化物の起晶、及び、シトルリン無水化物から2水化物への転移が大きく阻害されることがわかった。
無水化物結晶(A)と2水化物結晶(B)の結晶写真。 無水化物δ晶(A)と2水化物結晶(B)の粉末X線回折パターンを示す図。

Claims (6)

  1. シトルリン水性溶液からシトルリン無水化物の晶析を行い、シトルリン無水化物結晶を採取する、シトルリン無水化物結晶の製造法において、晶析を塩基性アミノ酸存在下で行うことを特徴とする方法。
  2. 前記晶析を、45℃より低い温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 塩基性アミノ酸がオルニチン、リジン、及びアルギニンから選ばれるアミノ酸である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. シトルリンがL−シトルリンであり、塩基性アミノ酸がL−オルニチン、L−リジン、及びL−アルギニンから選ばれるL−アミノ酸である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 塩基性アミノ酸を、シトルリン水性溶液中の水に対して、0.003〜10.0g/1
    00g H2Oの濃度で存在させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 晶析を、濃縮晶析及び/又は冷却晶析により行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
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