JPH0889269A - L−シトルリンの製造法および新種細菌 - Google Patents

L−シトルリンの製造法および新種細菌

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JPH0889269A
JPH0889269A JP25610694A JP25610694A JPH0889269A JP H0889269 A JPH0889269 A JP H0889269A JP 25610694 A JP25610694 A JP 25610694A JP 25610694 A JP25610694 A JP 25610694A JP H0889269 A JPH0889269 A JP H0889269A
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JP
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citrulline
arginine
bacillus
ornithine
organic solvent
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JP25610694A
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Tsutomu Sasaki
努 佐々木
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Kikkoman Corp
Original Assignee
Kikkoman Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 細菌菌体を用いてL−アルギニンからL−シ
トルリンを収率よく生産する。 【構成】 L−アルギニンからL−シトルリンを、かつ
L−シトルリンからL−オルニチンを生産する能力を有
する細菌に水溶性有機溶剤による乾燥処理を施して、得
られるL−オルニチン生産能欠除の水溶性有機溶剤乾燥
処理菌体をL−アルギニンに接触作用させる。更に、上
記の能力を有し、かつ水溶性有機溶剤乾燥処理によりそ
の乾燥菌体のL−オルニチン生産能が欠除する細菌がバ
チルス属のものであり、またバチルス属sp.No.c
it−70株である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はL−シトルリンの製造
法、詳しくは細菌菌体によるL−アルギニンからのL−
シトルリンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】L−シトルリン(以下、シトルリンとい
う)は腎疾患の治療薬として重要なアミノ酸であるが、
現在、微生物の酵素を用いてL−アルギニン(以下、ア
ルギニンという)から主に製造されている。すなわち、
シュードモナス(Pseudomonas)属の細菌、
マイコプラズマ(Mycoplasma)に属する菌の
菌体から酵素アルギニンデイミナーゼ(arginin
e deiminase)を分離精製し、それをアルギ
ニンに接触作用させることにより行なわれている(T.
Kamimoto他、FEBS Letters、第1
9巻、166〜168頁、1971年;特公平3−31
436号公報;特公平5−6998号公報)。この酵素
の分離精製の操作が繁雑であるために、多大な労力を必
要とする。それで、アルギニンからのシトルリン生産能
を有する細菌の菌体自体、またはそのトルエン処理また
はアセトン処理物をアルギニンに接触作用させて、シト
ルリンを生産する方法が案出されたが、どの方法におい
ても、シトルリン生産収率は極度に低いものである
(J.C.G. Ottow、J.Gen.Micro
biol.、84巻、209〜213頁、1974年;
E.L.Oginsky他、J.Biol.Che
m.、第198巻、791〜797頁、1952年)。
それはアルギニンからシトルリンを経てL−オルニチン
(以下、オルニチンという)まで分解してしまうからで
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
問題解決のためになされたもので、すなわち、細菌菌体
を用いてアルギニンからシトルリンを収率よく生産する
方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究した結果、次のような事実を
発見した。アルギニンからシトルリンを、かつシトルリ
ンからオルニチンを生産する能力を有する細菌菌体にア
セトンなどの水溶性有機溶剤による乾燥処理を施し、ア
ルギニンに接触作用させることを、多数の菌株について
試みたところ、 シトルリンもオルニチンも生産しない、 シトルリンとオルニチンを同時に生産する、 オルニチンだけ生産する、 シトルリンだけ生産する、 菌株に分けられた。の性質を有する細菌について更に
詳しく検討した結果、シトルリンからオルニチンを生産
する能力が欠除していた。そして、このような性質を有
する細菌の水溶性有機溶剤乾燥処理菌体をアルギニンに
接触作用さるとシトルリンが収率よく生産できるとの知
見に基づいて、本発明を完成した。
【0005】すなわち、本発明は、アルギニンからシト
ルリンを、かつシトルリンからオルニチンを生産する能
力を有する細菌に水溶性有機溶剤による乾燥処理を施し
て得られるオルニチン生産能欠除の水溶性有機溶剤乾燥
処理菌体を、アルギニンに接触作用させ、シトルリンを
製造する方法に関するものである。更に、その細菌がバ
チルス属のものであり、また、バチルス属sp.No.
cit−70株である。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明法
に使用する細菌は、アルギニンからシトルリンを、かつ
シトルリンからオルニチンを生産する能力を有し、水溶
性有機溶剤による乾燥処理によってオルニチン生産能が
欠除するものであればよく、特に限定されない。アルギ
ニンからシトルリンを、かつシトルリンからオルニチン
を生産する能力を有する細菌とは、以下の培地および条
件で培養して得た生菌体を次の条件でアルギニンまたは
シトルリンに接触作用させたとき、アルギニンからシト
ルリンに、またシトルリンからオルニチンに変換する活
性がモル変換率で各々0.0001%以上ものと定義さ
れる。
【0007】a)培地:0.2%(w/v)アルギニン
塩酸塩、1.0%(w/v)ポリペプトン、1.0%
(w/v)グルコース、1.0%(w/v)ビーフエキ
ス、pH7.0(3N KOHで調整)(120℃、1
5分オートクレーブ殺菌)。 b)培養条件:上記培地5mlを試験管(1.0cm×
20cm)に、肉汁寒天斜面培地の本発明細菌株の培養
物を接種し、30℃、200rpmで2日間振盪培養す
る。 c)反応条件:培養物を遠心分離し菌体を得る。これを
0.2Mリン酸緩衝液(pH6.5)で洗浄後、その適
当量をアルギニン塩酸塩またはシトルリン0.1%(w
/v)含有の上記と同組成の緩衝液5mlに懸濁し、O
660nm値が1になるようにした。次にその懸濁液を3
0℃で攪拌しながら5時間、生菌体をアルギニンまたは
シトルリンに接触作用させる。反応液を100℃で5分
間処理し、反応を停止させる。更に、この各反応液を遠
心分離器に掛け、上澄液を得る。次に各反応液の各アミ
ノ酸を日立製アミノ酸分析計L−8500形により定量
し、各アミノ酸のモル変換率を計算した。
【0008】前記細菌としては、例えば、バチルス属に
属する各種細菌(Bacillussubtilis、
Bacillus subtilis var.nig
er、Bacillus megaterium、Ba
cillus coagulans、Bacillus
stearothermophilus、Bacil
lus licheniformis、Bacillu
s pumilus、Bacillus firmu
s、Bacillus macerans、Bacil
lus circulans、Bacillus ce
reusなど)、シュードモナス(Pseudomon
as)属の各種細菌(Pseudomonas aer
uginosaなど)、ストレプトコッカス(Stre
ptococcus)属の各種細菌(Streptoc
occus hemolyticus、Strepto
coccus faecalisなど)などを好適なも
のとして挙げることができる。これらの中でも、バチル
ス属sp.No.cit−70が属する新種の細菌を、
特に好適なものとして用いることができる。なお、前記
の細菌の変種、変異株、遺伝子組換体株も用いられるこ
とは当然である。また、前記菌株由来のアルギニンから
シトルリンを生成する酵素系をコードし、かつプロモタ
ーなどの酵素生産制御領域をコードするDNAが連結さ
れたDNAを有するプラスミド含有の大腸菌などの各種
菌株も用いることができる。なお、バチルス sp.
No.cit−70は、本発明者が兵庫県内の土壌より
分離した菌株である。その菌学的性質は以下の通りであ
る。
【0009】なお、この菌株の菌学的性質を調べるため
の実験は、主として長谷川武治編著、「微生物の分類と
同定」(東京大学出版会、1975年)に記載されてい
る方法によって行なった。また、分類同定の基準として
は「バージーズ・マニュアル・オブ・システマテック・
バクテレオロジー(Bergey’s Manualo
f Systematic Bacteriolog
y)(1986年)を参考にした。
【0010】バチルス sp. No.cit−70株
の菌学的性質 (A)形態的性質 顕微鏡的観察[肉汁寒天培地(pH7.2)、30℃、
24〜48時間] (1)細胞の形および大きさ:0.8〜1.2×2.0
〜3.5μmの直状桿菌である。周辺鞭毛を有する。 (2)細胞の多形性の有無:なし (3)運動性の有無:有り (4)胞子の有無:胞子嚢は膨出し、胞子は0.6〜
0.7×0.8〜1.2μmの楕円形で、細胞の亜端に
形成される。 (5)グラム染色:陽性 (6)抗酸性染色:陰性
【0011】(B)培養的性質{各培地(pH7.0〜
7.2)における生育状態} (1)肉汁寒天平板培養:30℃、48時間の培養で、
直径2.0〜3.0mmのクリーム色の円形コロニーを
形成する。表面は艶がなく皺があり、周縁はギザギザで
ある。色の産生は観察されない。 (2)肉汁寒天斜面培養:30℃、48時間の培養で、
直径2.0〜3.0mmのクリーム色の円形コロニーを
形成する。表面は艶がなく、周縁はギザギザである。色
の産生は観察されない。 (3)肉汁液体培養:30℃、48時間の静置培養で、
培地表面に薄い菌体の膜が認められ、沈渣(sedim
ent)を生成する。 (4)肉汁ゼラチン穿刺培養:20℃、30日間の静置
培養で、培地の上部にのみ生育し、徐徐にゼラチンを液
化する。 (5)リトマスミルク:30℃、3日間の培養により、
リトマスミルクは酸の生成により赤色に変化し、液化に
より透明となる。
【0012】(C)生理学的性質 (1)硝酸塩の還元:陽性 (2)脱窒反応:陽性 (3)VPテスト:陽性 (4)インドールの生成:陰性 (5)硫化水素の生成:陰性 (6)澱粉の加水分解:陽性 (7)クエン酸の利用:陽性 (8)無機窒素源の利用:陽性(硝酸ソーダ、硫酸アン
モニウム) (9)色素の生成:陰性 (10)ウレアーゼ:陰性 (11)オキシダーゼ:陰性 (12)カタラーゼ:陽性 (13)生育の範囲:温度10〜45℃、pH4.0〜
9.0 (14)酸素に対する態度:好気性 (15)O−Fテスト(Hugh−Leifson
法):発酵 (16)有機酸の生成:L−乳酸(L−lactic
acid) (17)糖類からの酸およびガスの生成:表1の通り
で、いづれからもガスの生成は認められない。
【0013】 表1 ──────────────────────── 糖 類 ガスの生成 酸生成 ──────────────────────── L−アラビノース − − D−キシロース − − D−グルコース − + D−マンノース − + D−フラクトース − + D−ガラクトース − − マルトース − + シュクロース − + ラクト−ス − − トレハース − + D−ソルビトース − − D−マンニトール − − イノシトール − − グリセリン − + ──────────────────────── −、陰性;+、陽性
【0014】(D)その他の性質 (1)レシチナーゼの生産:陰性(NGKG培地、日水
製薬株式会社製) (2)7%食塩培地発育:陽性 (3)カゼイン分解:陽性 (4)嫌気的発育:陽性 (5)Tween20、60、または80の分解:陽性 (6)アルギニンの分解:陽性 (7)チロシンの分解:陽性
【0015】本菌株は、以上のごとき菌学的性質、すな
わち、捍菌で、周辺鞭毛を有し、胞子を形成すること、
グラム陽性で、カタラーゼ生産能を有すること、好気性
菌であることなどからバチルス属に属するものと判定さ
れる。更にバチルス属の中でも、胞子が卵円形、レシチ
ナーゼ反応が陰性、クエン酸塩利用性が陽性、好気性生
育を示すことにより、バチルス・リシニホルミス(Ba
cillus licheniformis)、バチル
ス・コアグランス(Bacillus coagula
ns)に近い種のものと認められる。しかし、マニトー
ル、キシロース、アラビノースを利用しないことより、
バチルス・リシニホルミスとは異なる。またゼラチン液
化能があり、かつ7%食塩下で生育することによりバチ
ルス・コアグランスとも異なる。他に本菌株に近い種の
バチルス属細菌がないことより、本菌株は新種に属する
ものと認められる。よって本菌株をバチルス sp.N
o.cit−70と命名した。なお、バチルス sp.
No.cit−70は工業技術院生命工学工業技術研究
所に、FERM P−14553として寄託されてい
る。
【0016】本発明の細菌株(以下、本細菌株という)
の培養に使用される培地は、通常の公知細菌の培養に用
いる通常のものが用いられる。例えば、本細菌株が資化
し得る炭素源を含有し、さらに適量の窒素源および無機
塩などを含有するものであれば、合成培地、天然培地の
どちらでもよい。炭素源としては、例えば、グルコー
ス、フルクトース、マルトース、シュクロース、ガラク
トース、グリセロール、ソルビトール等の糖類、酢酸、
コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、ケトグルタミン酸、ピ
ルビン酸等の有機酸類、さらに、糖密、ペプトン、肉エ
キス、コーンステープリカーの天然物などを用いること
ができる。
【0017】窒素源としては、硫安、硝安、硝酸カリ、
塩安、アンモニア等の無機窒素源、肉エキス、ポリペプ
トン、カザアミノ酸、ソイト−ン、酵母エキス等の有機
窒素源などを用いることができる。無機塩類としては、
第一及び第二りん酸カリ、ナトリウム及びアンモニウム
塩等、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マンガ
ン塩、第一及び第二鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバル
ト塩、ほう素塩が用いられる。また、微量栄養素とし
て、ビオチン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB
12、パントテン酸、イノシト−ル等も適宜用いられる。
【0018】上記組成からなる培地のpHは、アンモニ
ア、加性カリ、加性ソ−ダ等で6.0〜8.0、好まし
くは6.8〜7.2に調整される。なお、前記培地には
適宜な量の消泡剤も必要に応じて添加される。培地殺菌
はオートクレーブ法、フィルター法のどちらを用いても
よい。またそれらの方法を併用してもよい。その条件
は、例えばオートクレーブ法の場合は、100〜130
℃、5〜30分、好ましくは115〜125℃、10〜
20分である。なお、前記培地にアルギニンを塩酸塩と
して、0.01〜1.0%(w/v)、好ましくは0.
1〜0.5%(w/v)添加した培地で本細菌株を培養
すると、アルギニンからシトルリンを生産する能力の強
い菌体を得ることができる。
【0019】培養も通常の公知細菌に用いられている公
知の方法で、通常の条件で行なってよい。例えば、通気
条件は0.4〜0.7vvm、好ましくは0.5〜0.
6vvmであり、温度は20〜50℃、好ましくは30
〜40℃である。培養時間は24〜120時間、好まし
くは48〜72時間である。
【0020】本発明の特徴は、本細菌株の菌体に水溶性
有機溶剤による乾燥処理を施してシトルリンからのオル
ニチン生産能を欠除させ、それを、アルギニンに接触作
用させることにある。本発明において水溶性有機溶剤と
は、あらゆる割合、または一定の割合で水に溶ける有機
溶剤であればよく、特に制限されないが、具体的には、
例えば、好適なものとして、アセトン、n−ブタノー
ル、n−プロパノール、iso−プロパノール、エタノ
ール、メタノールなどを、これらの中でも特に好適なも
のとして、アセトン、n−ブタノール、n−プロパノー
ル、iso−プロパノールなどを挙げることできる。本
細菌株の菌体に水溶性有機溶剤による乾燥処理を施すに
は、公知の方法で常法通り行なえばよい。例えば、前記
のようにして本細菌株を培養して得られる培養液から、
先ず、遠心分離、濾過などにより菌体を分離する。次
に、その菌体を、5〜500mM、好ましくは20〜2
00mMのリン酸、トリス塩酸などの緩衝液に懸濁し、
その液を、菌体量の10〜700倍量、好ましくは10
0〜500倍量の−20〜−50℃、好ましくは−25
〜−35℃の水溶性有機溶剤に攪拌しながら、徐徐に添
加する。次に、ブフナー濾斗などの濾過器で菌体を可及
的速さで水溶性有機溶剤と濾別する。このように処理さ
れた菌体を直ちに、冷風または温風(例えば10ないし
80℃位)、または減圧下に乾燥させることにより、本
発明に用いる水溶性有機溶剤による乾燥処理菌体が得ら
れる。
【0021】前記水溶性有機溶剤による乾燥処理菌体を
アルギニンに接触作用させるには、先ず、アルギニンま
たはその塩酸塩を、酢酸、トリス塩酸、トリスマレイン
酸、リン酸、その中でも特に好ましくは、リン酸、トリ
ス塩酸などの、pH5.0〜9.0、好ましくは6.5
〜7.5で、5〜500mM、好ましくは50〜200
mMの緩衝液に、アルギニンをフリーのものとして0.
01〜3.0%(w/v)、好ましくは0.1〜1.0
%(w/v)の割合で溶解する。次に、このようにして
調製されたアルギニン溶液に所定量の前記乾燥処理菌体
を添加し、よく攪拌しながら、この乾燥菌体を所定条件
下にアルギニンに接触作用させる。このことによりアル
ギニンは、実質上100%、シトルリンに変換する。
【0022】上記の接触作用の条件は、使用する本細菌
株の種類、菌体量、およびアルギニン量などにより異な
り、一概には特定し得ないが、一般には、温度は、20
〜60℃、好ましくは30〜40℃、pHは5.0〜
9.0、好ましくは6.5〜7.5である。時間は、通
常、1〜6時間程度であるが、3〜4間程度が好適であ
る。水溶性有機溶剤による乾燥処理菌体の使用量は重量
比で基質アルギニンに対して0.5〜3.0、好ましく
は1.0〜2.0である。水溶性有機溶剤による乾燥処
理菌体量が多いほど、反応時間が短縮され、菌体は繰返
し数回使用できる。
【0023】なお、温度が20℃、pHが5.0、時間
が1時間の未満の各条件の下では、シトルリンは十分に
生成しない。また温度が60℃、pHが9.0を越える
反応条件の場合も、シトルリンの生成は十分でない。反
応時間が6時間を越える場合はシトルリンの生成が終了
しているか、または平衡状態に達しているので、それ以
上の反応は意味がなくなる。また、水溶性有機溶剤によ
る乾燥処理菌体の使用量がアルギニンに対して重量比で
0.5未満の場合もシトルリンの生成は十分でない。そ
して、3.0を越えて乾燥処理菌体を使用しても、シト
ルリンの生成が増加しないので、それは意味がなくな
る。なお、本発明に用いるアルギニンは、試薬級ないし
それに近いものが好適に用いられる。また、フリーのも
の、または塩酸塩、硫酸塩などのどちらを採用してもよ
い。
【0024】前記反応液からシトルリンを採取するには
公知の方法を採用すればよい。例えば、反応液中の残渣
を遠心分離などにより除去した後、公知のアミノ酸の分
離・精製法、例えば、分別晶析法、溶媒抽出法、イオン
交換法、分子濾過法などにより容易に行なわれる。そし
て、フリーのもの、塩酸塩、または硫酸塩などとして分
離される。
【0025】
【発明の効果】本発明のシトルリン製造法においては、
シトルリンからオルニチンを生産する能力を欠除した水
溶性有機溶剤乾燥処理菌体を使用しているので、アルギ
ニンからシトルリンを収率よく生産することができる。
【0026】
【実施例】以下本発明を実施例をもって説明する。本実
施例ではアルギニン、シトルリン、オルニチンなどのア
ミノ酸は日立製アミノ酸分析計L−8500形により測
定した。 実施例1 0.2%(w/v)アルギニン塩酸塩、1.0%(w/
v)ポリペプトン、1.0%(w/v)グルコース、
1.0%(w/v)ビーフエキス、pH7.0(3N
KOHで調整)(120℃、15分オートクレーブ殺
菌)なる培地5mlを有する試験管(1.0cm×20
cm)10本に、バチルス sp. No.cit−7
0株の肉汁寒天斜面培地培養物を接種し、30℃、20
0rpmで2日間振盪培養した。各試験管の培養物を各
々前記培地50mlを有する500ml容坂口フラスコ
10本に接種して、30℃、140rpmで2日間振盪
培養した。培養物を集め、更に遠心分離によって菌体を
得た。これを0.2Mリン酸緩衝液(pH6.5)で洗
浄後、同緩衝液50mlに懸濁し、これを1000ml
容三角フラスコ中の−30℃のアセトン500mlに、
この菌懸濁液を攪拌しながら徐徐に添加した。菌懸濁液
全量を添加後更に5分間攪拌し、5℃の冷蔵庫にて30
分間静置した。次に、菌体をブッフナー濾過器上のTO
YO濾紙No.2の上に集め、更に−30℃のアセトン
100mlで洗浄した。その菌体を直ちにデシケターに
移し、6時間減圧下に乾燥した。
【0027】このようにして調製されたアセトンによる
乾燥処理菌体500mg、75mMリン酸緩衝液(pH
7.0)100ml、0.2%(w/v)アルギニン塩
酸塩溶液100mlを500ml容三角フラスコにとっ
た。それを30℃の恒温水槽で、3時間振盪しながら、
アセトン乾燥処理菌体をアルギニンに接触作用させた。
反応液から菌体を遠心分離機で分離し、その上澄液中の
アミノ酸を測定した結果、シトルリン濃度は1.0%
(w/v)であった。シトルリンはアルギニンからモル
変換率99.8%で生産された。また、オルニチンは全
く検出されなかった。なお、アセトン乾燥処理をしな
い、すなわち前記工程における菌体の0.2Mリン酸緩
衝液(pH6.5)による洗浄工程で得た生菌体を、上
記のアセトン処理菌体の代りに用いた場合は(アセトン
乾燥処理菌体の場合と菌体の窒素濃度を同じにした)、
アルギニンからのシトルリンへのモル変換率は50.5
%であり、アルギニンからのオルニチンへのモル変換率
は30.4%であった。このように本発明方法により、
アルギニンから収率よくシトルリンを生産することがで
きる。
【0028】上記上澄液を強酸性イオン交換樹脂アンバ
ーライト120(H型)に通液し、シトルリンを吸着さ
せた。次いで、3%アンモニア水を用いてシトルリンを
溶出させた。その液を減圧濃縮後、冷却、放置すること
により、シトルリンの結晶が析出した。この結晶を採
取、乾燥してシトルリンの結晶165mgを得た(アル
ギニンからのモル生産収率は83.0%であった)。
【0029】実施例2 アセトンの代りに表2に示す各水溶性有機溶剤を用いる
こと以外は、実施例1と同様にして、アルギニン塩酸塩
からシトルリンを表2に示すモル変換率で反応液中に生
産した。そしてこの場合もオルニチンは全く検出されな
かった。
【0030】表2 ─────────────────────────
── 水溶性有機溶剤 モル変換率(%) ─────────────────────────
── メタノール 84.5 エタノール 89.6 n−プロパノール 99.8 iso−プロパノール 99.7 n−ブタノール 92.5 ─────────────────────────
──
【0031】表2から分るように、本発明の方法により
アルギニンからシトルリンを収率よく生産することがで
きる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年12月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】(D)その他の性質 (1)レシチナーゼの生産:陰性(NGKG培地、日水
製薬株式会社製) (2)7%食塩培地発育:陽性 (3)カゼイン分解:陽性 (4)嫌気的発育:陽性 (5)Tween20、60、または80の分解:陽性 (6)アルギニンの分解:陽性 (7)チロシンの分解:陽性 (8)DNAのGC含有量:36.5%(DNAの塩基
組成分析より) (9)菌体脂肪酸組成:C16脂肪酸(パルミチン酸)が
主体
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】本菌株は、以上のごとき菌学的性質、すな
わち、捍菌で、周辺鞭毛を有し、胞子を形成すること、
グラム陽性で、カタラーゼ生産能を有すること、好気性
菌であることなどからバチルス属に属するものと判定さ
れる。更にバチルス属の中でも、胞子が卵円形、レシチ
ナーゼ反応が陰性、クエン酸塩利用性が陽性、好気性生
育を示すことにより、バチルス・リシニホルミス(Ba
cillus licheniformis)、バチル
ス・コアグランス(Bacillus coagula
ns)に近い種のものと認められる。しかし、マニトー
ル、キシロース、アラビノースを利用しないことより、
バチルス・リシニホルミスとは異なる。またゼラチン液
化能があり、かつ7%食塩下で生育することによりバチ
ルス・コアグランスとも異なる。また、DNAのGC含
有量が36.5%であることから、バチルス・セリウス
(Bacillus cereus)(GC含有量:3
5.7%)に近い。しかし、菌体脂肪酸の主体がC16
肪酸(パルミチン酸)であることから、イソ−C15脂肪
酸を主体とするバチルス・セリウス(Bacillus
cereus)とは明確に区別される。他に本菌株に
近い種のバチルス属細菌がないことより、本菌株は新種
に属するものと認められる。よって本菌株をバチルス
sp.No.cit−70と命名した。なお、バチルス
sp.No.cit−70は工業技術院生命工学工業
技術研究所に、FERM P−14553として寄託さ
れている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】窒素源としては、硫安、硝安、硝酸カリ、
塩安、アンモニア等の無機窒素源、肉エキス、ポリペプ
トン、カザミノ酸、ソイト−ン、酵母エキス等の有機窒
素源などを用いることができる。無機塩類としては、第
一及び第二りん酸カリ、ナトリウム及びアンモニウム塩
等、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マンガン
塩、第一及び第二鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバルト
塩、ほう素塩が用いられる。また、微量栄養素として、
ビオチン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、
パントテン酸、イノシト−ル等も適宜用いられる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】上記組成からなる培地のpHは、アンモニ
ア、苛性カリ、苛性ソ−ダ等で6.0〜8.0、好まし
くは6.8〜7.2に調整される。なお、前記培地には
適宜な量の消泡剤も必要に応じて添加される。培地殺菌
はオートクレーブ法、フィルター法のどちらを用いても
よい。またそれらの方法を併用してもよい。その条件
は、例えばオートクレーブ法の場合は、100〜130
℃、5〜30分、好ましくは115〜125℃、10〜
20分である。なお、前記培地にアルギニンを塩酸塩と
して、0.01〜1.0%(w/v)、好ましくは0.
1〜0.5%(w/v)添加した培地で本細菌株を培養
すると、アルギニンからシトルリンを生産する能力の強
い菌体を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:07)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 L−アルギニンからL−シトルリンを、
    かつL−シトルリンからL−オルニチンを生産する能力
    を有する細菌に、水溶性有機溶剤による乾燥処理を施し
    て得られるL−オルニチン生産能欠除の水溶性有機溶剤
    乾燥処理菌体を、L−アルギニンに接触作用させること
    を特徴とするL−シトルリンの製造法。
  2. 【請求項2】 細菌がバチルス属のものである請求項1
    記載のL−シトルリンの製造法。
  3. 【請求項3】 L−アルギニンからL−シトルリンを、
    かつL−シトルリンからL−オルニチンを生産する能力
    を有し、水溶性有機溶剤による乾燥処理によってL−オ
    ルニチン生産能が欠除するバチルス属sp.No.ci
    t−70株。
JP25610694A 1994-09-27 1994-09-27 L−シトルリンの製造法および新種細菌 Pending JPH0889269A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010059125A (ja) * 2008-09-05 2010-03-18 Ajinomoto Co Inc シトルリンの晶析方法

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