JP2010051200A - 培養容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は培養容器の培養面の結露を防止し、正確な試験を行える培養容器を提供することを目的とする。
【解決手段】培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、前記蓋の内面に親水性ポリマーを塗布しポリマー層を形成したことを特徴とする培養容器。または、培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、培養液が入れられる培養部の開口に対向し、かつこの開口面よりも広い領域に親水性ポリマーを前記蓋の内面に塗布しポリマー層を形成したことを特徴とする培養容器。さらに、前記培養部が複数形成され、この培養部に対応する蓋内面のポリマー層間に突起を形成したものであり、前記親水性ポリマーがリン脂質ポリマーである。
【選択図】図1
【解決手段】培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、前記蓋の内面に親水性ポリマーを塗布しポリマー層を形成したことを特徴とする培養容器。または、培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、培養液が入れられる培養部の開口に対向し、かつこの開口面よりも広い領域に親水性ポリマーを前記蓋の内面に塗布しポリマー層を形成したことを特徴とする培養容器。さらに、前記培養部が複数形成され、この培養部に対応する蓋内面のポリマー層間に突起を形成したものであり、前記親水性ポリマーがリン脂質ポリマーである。
【選択図】図1
Description
本発明は、蓋面の結露を防ぎ培養状態の観察を良好に行える培養容器に関する。
従来、培養容器の結露防止には、蓋の内面にワイパーを備えたもの(特許文献1)や、セルロース系樹脂フィルムをケン化処理して得た防曇フィルムと、シャーレ形成用樹脂フィルムとの積層フィルムを用い、シャーレ本体の内底面および蓋部内側の表面が防曇フィルム面となるように成形加工したもの(特許文献2)等が開発されていた。
しかしながら、特許文献1のように蓋の内面にワイパーを設けたものでは、結露を取り除いた際、ワイパーにより集められた水分が水滴となって培養液に落下する可能性があった。また、特許文献2でも、蓋の内面を全て防曇フィルム面で全面が親水性となり、フィルム面に付着した水分が水滴となって、寒天培地表面や培地中に落ちてしまう可能性があった。この場合に寒天培地表面に形成された細菌のコロニーを崩したり、また顕微鏡観察に支障をきたす虞があった。
そこで、本発明は培養容器の培養面の結露を防止し、正確な試験を行える培養容器を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に対応する発明は、培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、前記蓋の内面に親水性ポリマーを塗布しポリマー層を形成したものである。
請求項2に対応する発明は、培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、培養液が入れられる培養部の開口に対向し、かつこの開口面よりも広い領域に親水性ポリマーを前記蓋の内面に塗布しポリマー層を形成したものである。このようにポリマー層を培養部の開口よりも広くしたことにより、親水性部と疎水性部との境が培養部の直上にかかることがなくなる。したがって、培養容器を移動する際に傾けてしまったときでも、ポリマー層に付着した水分が、前記境に集まり水滴となった場合でも、培養部への落下を防ぐことができる。
請求項3に対応する発明は、請求項2に対応する発明において、培養部を複数形成したものである。このように、培養容器の培養部を複数形成することによって、ポリマー層も各培養部に対応する大きさとなり、一つの培養部のときよりも狭い領域とすることができるので、ポリマー層に水滴を形成するまでの水分量が付着する可能性が低くなる。
請求項4に対応する発明は、請求項3に対応する発明において、前記蓋の内面の前記ポリマー層間に突起を形成したものである。このように、ポリマー層の境界に突起を形成することにより、ポリマー層に付着した水分を突起に伝わせて培養部に水滴が落ちないようにすることができる。
本発明で用いる「培養用恒温槽」とは、インキュベーター、孵卵器など、細胞や細菌の培養にあたり、それらを収容する容器内の温度や湿度を一定に保つための装置を含むものである。
本発明によれば、培養部の開口よりも広い領域にポリマー層を蓋の内面に形成しているので、親水性部と疎水性部との境が培養部の直上にかかることがなくなり、培養容器の移動時でも培養部への水滴の落下を防ぐことができる。
また、培養部が複数形成された培養容器では、蓋のポリマー層の境界に突起を形成することにより、培養部への水滴の落下防止をさらに確実にすることができる。
本発明の培養容器は、皿と蓋とから構成され培養用恒温槽で使用する蓋付きの容器であり、蓋の内面に親水性ポリマーを塗布したポリマー層を形成したものである。そして、このポリマー層は、皿に形成された培養液が入れられる培養部の開口に対向し、かつこの開口面よりも広くなるように形成されている。すなわち、ポリマー層の外周端の鉛直方向には開口が存在しないように形成したのである。
このように、外周端を開口から外したことにより、結露により生じた水滴を培養部へ落下させることがなくなる。
なお、上記親水性ポリマーは、リン脂質ポリマーの2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマー(MPCポリマー)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド重合体および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタリレート共重合体から選ばれたものである。
(実施例1)
この実施例は、ペトリディッシュ(培養面積55cm2)1と呼ばれ、円形の皿全体が培養部となったものについてである(図1)。ペトリディッシュ1は蓋部材2と皿部材3とから構成されている。蓋部材2は天板とこの天板の外周に形成された側壁とから形成され、皿部材3の培養部に対向する天板内面にリン脂質ポリマーを塗布して形成されたポリマー層4が形成されている。皿部材3の外側壁には、蓋部材の側壁開口端と接触し蓋部材を保持する鍔部5が形成されている。蓋部材2がこの鍔部5で保持されることにより、蓋部材2の内面と皿部材3の側壁頂部とが非接触の状態で保たれるようになる。
この実施例は、ペトリディッシュ(培養面積55cm2)1と呼ばれ、円形の皿全体が培養部となったものについてである(図1)。ペトリディッシュ1は蓋部材2と皿部材3とから構成されている。蓋部材2は天板とこの天板の外周に形成された側壁とから形成され、皿部材3の培養部に対向する天板内面にリン脂質ポリマーを塗布して形成されたポリマー層4が形成されている。皿部材3の外側壁には、蓋部材の側壁開口端と接触し蓋部材を保持する鍔部5が形成されている。蓋部材2がこの鍔部5で保持されることにより、蓋部材2の内面と皿部材3の側壁頂部とが非接触の状態で保たれるようになる。
ここで、蓋部材2へのポリマー層4の形成は、まず蓋部材2の内側壁と天板の最外周部にマスキングをした後、コート液を10cm3を流し込み5分間室温(20℃)で保持した。その後コート液を排出し、室温で乾燥させることによって行う。ここで使用したコート液は日油株式会社製のLIPIDUREシリーズ(「LIPIDURE」は日油株式会社の登録商標)を使用した。
このように形成したポリマー層の外周端と皿部材3の側壁頂部から外方へ3mm離すようにした。
(実施例2)
この実施例は、マイクロプレート6と呼ばれ、長方形状の皿に円形の培養部7が6箇所形成されたものについてである(図2)。マイクロプレート6も蓋部材2と皿部材3とから構成されている。蓋部材2には長方形の天板とこの天板の外周に形成された側壁とから形成され、皿部材の6箇所の培養部に対向する天板内面にリン脂質ポリマーを塗布して形成されたポリマー層4が形成されている。この6つポリマー層4は、それぞれ隣り合うものと非接触となるように形成され、かつその端部は培養部7の開口面の外側に位置している。皿部材3には2列−3列の円形の培養部7が、底板から形成された隔壁により等間隔に形成されている。この隔壁の頂部は皿部材3の側壁頂部よりも低く形成されている。したがって、皿部材3に蓋部材2を被せても蓋部材2の内面は隔壁の頂部とは非接触の状態を保つことができる。
この実施例は、マイクロプレート6と呼ばれ、長方形状の皿に円形の培養部7が6箇所形成されたものについてである(図2)。マイクロプレート6も蓋部材2と皿部材3とから構成されている。蓋部材2には長方形の天板とこの天板の外周に形成された側壁とから形成され、皿部材の6箇所の培養部に対向する天板内面にリン脂質ポリマーを塗布して形成されたポリマー層4が形成されている。この6つポリマー層4は、それぞれ隣り合うものと非接触となるように形成され、かつその端部は培養部7の開口面の外側に位置している。皿部材3には2列−3列の円形の培養部7が、底板から形成された隔壁により等間隔に形成されている。この隔壁の頂部は皿部材3の側壁頂部よりも低く形成されている。したがって、皿部材3に蓋部材2を被せても蓋部材2の内面は隔壁の頂部とは非接触の状態を保つことができる。
(実施例3)
この実施例は、実施例2の変形例で天板内面に複数形成されたポリマー層4の境界に突起8を形成したものである(図3)。この突起8は隣接する4つのポリマー層4に囲まれた位置に形成されるものであり、2箇所に形成したものである。そして、この突起8の根元は十字状となっており、その先端は4つのポリマー層4と接触している。そしてこの突起8全面にもポリマー層4が形成されている。
この実施例は、実施例2の変形例で天板内面に複数形成されたポリマー層4の境界に突起8を形成したものである(図3)。この突起8は隣接する4つのポリマー層4に囲まれた位置に形成されるものであり、2箇所に形成したものである。そして、この突起8の根元は十字状となっており、その先端は4つのポリマー層4と接触している。そしてこの突起8全面にもポリマー層4が形成されている。
この突起8を設けたことにより、各ポリマー層4に付着している水分をこの突起8を伝って培養部7以外の皿部材3内面に落下させることができる。
(実施例4)
この実施例は、実施例2の変形例で天板内面に複数形成されたポリマー層4それぞれの輪郭に沿って隔壁を設け、この隔壁の内面全面にもポリマー層4を形成し、培養部7ごとの内蓋9を備えたものである(図4)。このとき、培養部7の隔壁と、内蓋9の隔壁とは非接触の状態となっている。これにより、ポリマー層4に付着した水分は内蓋9の隔壁に沿って皿部材3の内面に落下するようになる。
この実施例は、実施例2の変形例で天板内面に複数形成されたポリマー層4それぞれの輪郭に沿って隔壁を設け、この隔壁の内面全面にもポリマー層4を形成し、培養部7ごとの内蓋9を備えたものである(図4)。このとき、培養部7の隔壁と、内蓋9の隔壁とは非接触の状態となっている。これにより、ポリマー層4に付着した水分は内蓋9の隔壁に沿って皿部材3の内面に落下するようになる。
以上の実施例では、培養部7を円形のもので説明したが、多角形のものでも何ら問題ない。また、培養部7の形状と蓋部材2の形状(内蓋を含む)とを、ポリマー層4に付着した水分が培養部7内に落下しないような相似形としたが、水分が培養部7内に落下しなければ、異形状の組み合わせでもよい。
本発明で示した親水性ポリマーによるポリマー層は、ディッシュやマイクロプレート等に形成することができ、結露の発生を好まない用途で有効に使用することができる。
1:ペトリディッシュ、2:蓋部材、3:皿部材、4:ポリマー層、5:鍔部、6:マイクロプレート、7:培養部、8:突起、9:内蓋。
Claims (5)
- 培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、前記蓋の内面に親水性ポリマーを塗布しポリマー層を形成したことを特徴とする培養容器。
- 培養用恒温槽で使用する蓋付きの培養容器において、培養液が入れられる培養部の開口に対向し、かつこの開口面よりも広い領域に親水性ポリマーを前記蓋の内面に塗布しポリマー層を形成したことを特徴とする培養容器。
- 前記培養部が複数形成されたことを特徴とする請求項2記載の培養容器。
- 前記蓋の内面の前記ポリマー層の境界に突起を形成したことを特徴とする請求項3記載の培養容器。
- 前記親水性ポリマーがリン脂質ポリマーであることを特徴とする1ないし4いずれかに記載の培養容器。
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