JP2010050089A - イオン伝導性複合電解質とこれを用いた膜電極接合体、及び膜電極接合体を用いた電気化学装置、並びにイオン伝導性複合電解質膜の製造方法 - Google Patents
イオン伝導性複合電解質とこれを用いた膜電極接合体、及び膜電極接合体を用いた電気化学装置、並びにイオン伝導性複合電解質膜の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】イオン伝導度を向上させるイオン伝導性複合電解質とこれを用いた膜電極接合体及び電気化学装置、並びにイオン伝導性複合電解質膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】プロトン伝導性複合電解質は、プロトン解離性基(−SO3H)を有する電解質と、ルイス酸基MXn-1を有する化合物とを含有し、ルイス酸基とプロトン解離性基とが相互作用している。ルイス酸基をもつ化合物は、ルイス酸化合物MXn、或いは、ルイス酸基MXn-1をもつポリマーである。プロトン解離性基をもつ電解質は、例えば、フラーレン誘導体である。プロトン伝導性複合電解質膜はドナー数が25以下である溶媒を用いて形成され、これを用いる膜電極接合体は、燃料電池に好適に使用される。
【選択図】図1
【解決手段】プロトン伝導性複合電解質は、プロトン解離性基(−SO3H)を有する電解質と、ルイス酸基MXn-1を有する化合物とを含有し、ルイス酸基とプロトン解離性基とが相互作用している。ルイス酸基をもつ化合物は、ルイス酸化合物MXn、或いは、ルイス酸基MXn-1をもつポリマーである。プロトン解離性基をもつ電解質は、例えば、フラーレン誘導体である。プロトン伝導性複合電解質膜はドナー数が25以下である溶媒を用いて形成され、これを用いる膜電極接合体は、燃料電池に好適に使用される。
【選択図】図1
Description
本発明は、イオン伝導性複合電解質とこれを用いた膜電極接合体、及び膜電極接合体を用いた燃料電池等の電気化学装置、並びにイオン伝導性複合電解質膜の製造方法に関する。
化学エネルギーを電気エネルギーに転換する電気化学装置である燃料電池は、そのエネルギー転換時に、効率的でしかも環境汚染物質を発生しないので、携帯情報機器用、家庭用、自動車用等のクリーンな電源として注目され、開発が進められている。
燃料電池は、使用される電解質の種類によって、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、高分子電解質型燃料電池(PEFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)等に分類される。これらの燃料電池は、使用される燃料の種類、運転温度、触媒、電解質等が互いに異なる。このうち、PEFCは低温作動、高出力密度、迅速な駆動と出力応答等が得られるため、小規模な据置型発電装置だけでなく、自動車等の輸送システムに使用される発電装置に有望であるとされている。
PEFCの主要部である膜電極接合体(MEA)は、通常、高分子電解質を膜状とした高分子電解質膜と、その両面に設けられそれぞれカソード及びアノードとして作用する2個の電極(触媒電極)とによって構成される。
高分子電解質膜は、プロトン伝導体としての作用を有し、更に、酸化剤と還元剤との直接接触を防止するための隔離膜としての作用、2つの電極を電気的に絶縁する作用を有している。高分子電解質膜には、(1)高いプロトン伝導度、(2)高い電気絶縁性、(3)燃料電池における反応物及び反応生成物に対する低い透過性、(4)燃料電池の運転条件下で熱的、化学的、機械的安定性が良好であること、(5)低コストであること等の条件が要求される。
これまで、多種類の高分子電解質が開発され、パーフロロスルホン酸系樹脂による電解質は、耐久性及び性能に優れるとされている。
直接メタノール燃料電池(DMFC)の場合、メタノール水溶液が燃料としてアノードに供給されるが、未反応メタノール水溶液のうち一部は、高分子電解質膜に浸透し、この浸透したメタノール水溶液は、電解質膜に広がってカソード触媒層まで到達する。このような現象はメタノールクロスオーバーと呼ばれており、メタノールクロスオーバーによって、水素イオン(プロトン)と酸素とによる電気化学的還元反応が生起すべきカソードにおいてメタノールの直接酸化を生じるので、カソード電位が低下し、燃料電池の性能を低下させる原因となる。この問題は、メタノールだけでなく、他の有機燃料を使用する燃料電池に共通する。
燃料電池の実用化、普及には、電極、貴金属触媒、電解質膜等の材料の長時間運転における劣化の抑制、電気化学反応によって生じる水の影響の抑制、燃料分子が電解質膜を透過し、電極間でクロスオーバーすることによる燃料の損失の抑制、過酸化水素の発生の抑制、過酸化水素に由来するラジカル生成の抑制、ラジカルによる影響の抑制等を図り、燃料電池を長寿命化することが重要な課題となっている。このため、反応活性が高くて劣化の少ない触媒材料や、燃料分子の透過性が低くてプロトン伝導性に優れた電解質膜の開発が望まれている。
電解質のプロトン伝導性の向上、電極間でのクロスオーバーの抑制に関しては、種々の方法が報告されている。
先ず、「イオン導電性膜及びそれを用いた燃料電池」と題する後記の特許文献1には、次の記載がある。
特許文献1の発明は、イオン導電性ポリマーと、窒素含有化合物との複合体からなるイオン導電性膜であって、前記窒素含有化合物は、前記イオン導電性ポリマーへの固定化部位を有し、プロトン化した際に互変異性体構造を示すことを特徴とするイオン導電性膜であって、イオン導電性を維持しつつ、メタノールのクロスオーバーを抑制することを可能にするイオン導電性膜が提供されるとしている。
また、「イオン伝導膜及びその製造方法、並びに電気化学デバイス」と題する後記の特許文献2には、次の記載がある。
特許文献2の発明は、水や燃料に不溶であり、安定したプロトン等のイオン伝導を行うことができるイオン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスを提供することを目的としている。
特許文献2の発明は、フラーレン分子と、炭素を主成分とするクラスターと、線状又は筒状炭素の構造体とからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる炭素物質に、イオン解離性の基が結合してなる誘導体と;塩基性の基を有する物質のポリマーと;を有する、イオン伝導体に係るものである。
また、「電極、電極用組成物、それを用いた燃料電池、及び電極の製造方法」と題する後記の特許文献3には、次の記載がある。
特許文献3の発明における電極は、白金又はその合金からなる触媒金属粒子をSiO2 を主成分とする触媒担体表面に担持する触媒粒子と、導電性粒子と、プロトン伝導性物質とを含有することを特徴とし、前記触媒担体は、SiO2単独、或いはSiO2成分を50wt%以上含有するルイス酸性を呈する複合酸化物であることが好ましいとしている。
また、「プロトン伝導体、触媒電極、触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池及びプロトン伝導体の製造方法」と題する後記の特許文献4には、次の記載がある。
特許文献4の発明の一態様によれば、有機プロトン伝導性高分子、及び、無機固体酸と、無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドと、ケイ素酸化物前駆体とが縮合してなる無機プロトン伝導材料からなり、有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成しているプロトン伝導体が提供されるとしている。
有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料との互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成することにより、水やメタノール等に対する膨潤が抑制され、高い寸法安定性が実現すると共に、可撓性のあるプロトン伝導体を得ることが可能となるとしている。
また、「燃料電池用電極材料及び燃料電池」と題する後記の特許文献5には、次の記載がある。
特許文献5の発明に係る燃料電池用電極材料では、燃料電池用電極が、電解質膜の表面及び/又は裏面に設けられ、Ptを含む貴金属粒子を多孔性無機材料により包接することにより形成された触媒粒子とプロトン伝導性物質とを含有する。このような燃料電池用電極材料によれば、貴金属粒子は多孔性無機材料により包接されているので、Ptが電解質膜中に溶出することを防ぎ、Ptが電解質膜中に溶出することに伴う燃料電池の性能低下を抑制することができるとしている。
なお、特許文献5の発明に係る燃料電池用電極材料においては、多孔性無機材料としてSiO2、ZrO2、 及びTiO2のうちの何れか主成分とする材料を例示することができる。また、多孔性無機材料は、燃料電池用電極として機能するために、プロトン伝導性を有することが望ましく、この場合、多孔性無機材料として、例えば、ルイス酸性を呈する材料(電子対受容体)を用いることにより、多孔性無機材料によりプロトン伝導性を持たせることができる。
また、「プロトン導電性物質」と題する後記の特許文献6には、次の記載がある。
特許文献6の発明は、プロトン導電率の高い電解質材料及びその簡便な製造方法を提供することを目的とする。高いプロトン導電率を得るために、特許文献6の発明ではスルホン酸の解離性を促進する構造としてボロシロキサン骨格に注目し、製造法が容易な加水分解縮合法によるボロシロキサン重合体の調製とそのスルホン化方法について研究した結果、高いプロトン導電率を有する有機・無機ハイブリッド型プロトン導電体を得たとしている。
この特許文献6の発明のプロトン導電性物質の製法の反応機構1においては、チオール基を有するアルコキシシラン誘導体とホウ酸エステルとを加水分解反応させることにより重合体を生成させ、チオール基を酸化することにより、スルホン酸基を有するボロシロキサンポリマーを生成させる。また、反応機構2においては、炭化水素基を有するアルコキシシラン誘導体とホウ酸エステルとを加水分解反応させることにより重合体を生成させ、炭化水素基をスルホン化することにより、スルホン酸基を有するボロシロキサンポリマーを生成させる。即ち、特許文献6の発明のプロトン導電性物質は、アルコキシシラン誘導体とホウ酸エステルとの加水分解、縮合反応に続いてスルホン化することによって製造できるが、適当な反応条件を採用することによってより高いプロトン導電率が得られる可能性がある。
特許文献6の発明のプロトン導電性物質は、ルイス酸性ホウ素の導入によってスルホン酸基の解離が促進され、高いプロトン導電性を有し、更にリン酸をドープすることにより高温(約100〜約180℃、特に約100〜約150℃)でのプロトン導電性を上げることができるとしている。
また、「高分子固体電解質」と題する後記の特許文献7には、次の記載がある。
特許文献7の発明は、ポリアニオン型リチウム塩とエーテル系高分子材との複合体材料にルイス酸化合物(三フッ化ホウ素(BF3)、ボロキシン化合物等)を添加したことを特徴とするリチウム二次イオン電池用高分子固体電解質、より好ましくは該ルイス酸化合物がBF3であることを特徴とするリチウム二次イオン電池用高分子固体電解質に係る。BF3はカルボキシレートアニオンとの相互作用が強く、イオン導電性を改善する効果を有していると考えられる。
また、「イオン伝導性組成物及びその製造方法」と題する後記の特許文献8には、次の記載がある。
特許文献8の発明により提供される一つのイオン伝導性組成物は、一般式LiM(OY)nX4−nで表されるリチウム塩を含有する(ここで、nは1〜3、Mは周期表13族に属する元素、Yはオリゴエーテル基、Xは電子求引性基であり得る)。この組成物は、更に、酸素に配位可能な(即ち、酸素と配位結合し得る)添加剤を含有する。例えば、上記リチウム塩中のMに隣接する(即ち、Mに直接結合する)少なくとも一つの酸素に配位可能な添加剤を含有する。ここに開示される組成物の典型的な態様では、該組成物中において上記添加剤の少なくとも一部が、上記リチウム塩のアニオンに含まれる酸素(好ましくは、主としてMに隣接する酸素)に配位している。換言すれば、該組成物中において、上記添加剤と上記リチウム塩(より詳しくは、該リチウム塩を構成するアニオン)とが配位化合物を形成している。このような組成物は、例えば上記添加剤を含有しない組成物に比べて、上記リチウム塩の解離度がより高いものとなり得る。このことによって、より良好な特性(イオン導電率等)を示す組成物となり得る。
ここに開示される組成物の一つの好適な態様では、上記添加剤が強いルイス酸である。ここで、上記添加剤が「強いルイス酸」であるとは、上記組成物において該添加剤がリチウムイオンよりも優先的に酸素と結合するか、或いはリチウムイオンと該添加剤との結合が平衡的に起こることをいう。何れの場合にも、上記添加剤を含有することによってリチウムイオンと酸素との相互作用は弱まる。従って、かかる添加剤を含む組成物は、より効果的にリチウム塩の解離度が高められたものとなり得る。特許文献8の発明における好ましい添加剤として、例えば、三フッ化ホウ素(BF3)等のハロゲン化ホウ素を挙げることができる。
また、「電解質膜」と題する後記の特許文献9には、次の記載がある。
特許文献9の発明は、プロトン伝導性が向上した電解質膜、特に固体高分子型燃料電池用の炭化水素系電解質膜及びその製造方法を提供することを目的とする。他の目的は、プロトン伝導性が向上し且つ電解質の劣化を抑制/防止できる電解質膜、特に固体高分子型燃料電池用の炭化水素系電解質膜及びその製造方法を提供することである。上記諸目的は、添加剤を、電解質に対して、1〜50質量%、分散させてなる電解質膜によって達成されるとしている。
この特許文献9の発明によれば、電解質膜中に存在する特定量の添加剤により、電解質膜のプロトン伝導性が比較的高い湿度条件下であっても有意に向上でき、このため、燃料電池、特に水素−酸素型燃料電池用の電解質膜に炭化水素系電解質膜を使用しても、十分なプロトン伝導性を発揮することができるとしている。
この特許文献9の発明に係る添加剤は、フラーレン誘導体、金属酸化物等が好ましく、例えば添加剤としてフラレノールを用いた場合、フラレノールはプロトン伝導性を向上させる効果があるため、従来の電解質膜に比して、比較的高い湿度(例えば、相対湿度が60%以上であるような) 条件下であっても、有意に高いプロトン伝導性を発揮できる電解質膜が得られ、このため、従来プロトン伝導性が低いという問題を有する炭化水素系の電解質膜に有用となる可能性がある。
この特許文献9の発明に係る添加剤は、上記したようにフラーレン誘導体、金属酸化物等が好ましく、前記フラーレン誘導体としては、フラレノールが好ましく、前記金属酸化物としては、アルコキシシラン、アルコキシチタンが好ましいとしている。
また、「燃料電池用のフラーレン系電解質」と題する後記の特許文献10には、次の記載がある。
プロトン伝導性フラーレン物質は、ドーピング、機械的混合、又は、化学反応により共有結合を形成することによって、高分子材料に添加される。そのようにして作成されたプロトン伝導体は、幅広い相対湿度、及び、水の沸点以上の幅広い温度で作動する燃料電池の高分子電解質膜として使用可能である。好ましいプロトン伝導性フラーレン物質としては、ポリ水酸化フラーレン、ポリスルホン酸化フラーレン、又は、ポリ水酸化ポリスルホン酸化フラーレンがある。
また、後記の非特許文献1には、(3−メルカトプロピル)メトキシシラン(HS(CH2)3Si(OCH)3)、トリイソプロピルボレート(B(OCH(CH3)2)3)、(n−ヘキシル)トリメトキシシラン(CH3(CH2)5Si(OCH)3)の加水分解重縮合により得られる生成物において、チオール基(−SH)を酸化してスルホン酸基(−SO3H)に転化して得られるボロシロキサン固体電解質、このボロシロキサン固体電解質とナフイオン(登録商標)との複合フィルムの調製に関する記載がある。
また、後記の非特許文献2には、(3−メルカトプロピル)メトキシシラン(HS(CH2)3Si(OCH)3)、トリイソプロピルボレート(B(OCH(CH3)2)3)、(n−ヘキシル)トリメトキシシラン(CH3(CH2)5Si(OCH)3)の加水分解重縮合により得られる生成物において、チオール基(−SH)を酸化してスルホン酸基(−SO3H)に転化して得られるボロシロキサン固体電解質、このボロシロキサン固体電解質と部分スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES:partially sulfonated poly(ether-sulfone))との複合膜の調製に関する記載がある。
なお、後記の非特許文献3は、有機ポリマーの側鎖にルイス酸性ボロンの導入方法についての記載がある。
また、「高分子担持ルイス酸触媒」と題する後記の特許文献11には、次の記載がある。
第1には、一般式MXn(Mは多価元素を示し、Xはアニオン基を示し、nはMの原子価に対応する整数を示す)で表わされるルイス酸基が、SO3又はSO4基を介して高分子膜に結合担持されていることを特徴とする高分子担持ルイス酸基含有触媒を提供する。
第2には、上記ルイス酸基含有触媒であって、一般式−R0−MXn(Mは多価金属元素を示し、Xはアニオン基を示し、nはMの原子価に対応する整数を示し、R0はSO3又はSO4基を示す)で表わされるルイス酸結合基が、スペーサー分子鎖を介して高分子鎖に結合担持されていることを特徴とする高分子担持ルイス酸触媒を提供する。
更に、「疎水性高分子固定化ルイス酸触媒」と題する後記の特許文献12には、次の記載がある。
(1)芳香族重合体を主とする疎水性高分子の芳香族環に、SO3基を介して金属ルイス酸基が制御された担持率で結合担持されていることを特徴とする疎水性高分子固定化ルイス酸基含有触媒を提供する。(2)ルイス酸基は、希土類金属塩であることを特徴とする(1)の疎水性高分子固定化ルイス酸基含有触媒を提供する。(3)ルイス酸基は希土類金属トリフラートであることを特徴とする(2)の疎水性高分子固定化ルイス酸基含有触媒を提供する。
なお、燃料電池では、電解質は電解質膜とされ使用される(後記の特許文献13〜特許文献17を参照。)。電解質を溶媒に分散又は溶解させた後、溶媒を揮散除去した場合に三次元構造を形成し膜状となる場合には、結着剤(バインダー)を使用しないで電界質膜を形成している。しかし、三次元構造を形成し膜状とならない場合には、フッ素系樹脂等の樹脂を結着剤として使用して、この結着剤及び電解質を溶媒に分散又は溶解させたものを用いて、塗膜を形成した後、或いは、多孔性膜に含侵させた後に溶媒を揮散除去させることによって、電解質膜を形成している。従来、多くの場合、溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンといった塩基性溶媒が用いられている。また、C60フラーレンを用いたプロトン伝導体重合体の合成は知られている(後記の特許文献13、特許文献18を参照。)。
PEFC等に用いられる電解質膜が満たすべき性能は非常に多岐にわたる。即ち、プロトン伝導性が高いこと、燃料や酸素の透過(クロスリーク又はクロスオーバー)を遮断する性能が十分であること、機械的強度や耐熱性に優れていること、耐水性や化学的安定性に優れていること等が要求される。
しかし、従来使用されてきた固体高分子電解質型燃料電池用のプロトン伝導体材料では、1つの材料でこれらの要求すべてに応え得る膜を作製できるものは無く、燃料電池の開発と普及における大きな障害となっていた。PEFC等に広く使用されているプロトン伝導体の1つはNafion(商品名;DuPont社製パーフルオロスルホン酸樹脂)であり、これはパーフルオロ化されたスルホン酸系高分子樹脂であり、不飽和結合を含まずパーフルオロ化された構造を有し、熱的、化学的に安定であるが、乾燥雰囲気下や高温下では、樹脂内部に吸蔵された、プロトン伝導性発現に必要な水を失い、プロトン伝導度が低下しやすいという問題があり、また、燃料の透過(クロスリーク又はクロスオーバー)を遮断する性能が十分ではないという問題がある。
燃料が水素である場合、燃料電極に供給された水素ガスが酸素電極側へ透過するのを防止するためには、膜を厚くする必要があり、その結果、膜抵抗が大きくなり、電池の出力が低下するという問題点がある。
パーフルオロスルホン酸系樹脂では、スルホン酸基とその周囲に吸着された水がクラスター構造を形成し、このクラスター内の水をチャネルとしてプロトンが移動することにより、プロトン伝導性が発現する。従って、この樹脂に高いプロトン伝導性を発揮させるには、内部に十分な量の水を保水させる必要があるが、このようにすると、燃料がメタノールである場合、親水性の強いメタノールは、樹脂内部の水に溶解して膜を透過しやすくなる。
フラーレン等の炭素質材料にプロトン解離性基、例えば、スルホン酸基が導入されたフラーレン誘導体は、無加湿状態でもプロトン伝導能を有する点で有望な材料であり、燃料電池への適用が検討されている。しかし、プロトン解離性基が導入されたフラーレン誘導体の多くが水溶性であり、加水分解されやすいという性質を持っている。
なお、ここで、「プロトン解離性基」とは、その基から水素原子がプロトン(H+)として電離し、離脱し得る官能基を意味するものとし、式−XHで表され、Xは2価の結合手を有する任意の原子もしくは原子団であるものとする(以下、同様)。
フラーレン誘導体において、フラーレン分子1個について導入されたプロトン解離性の基の数が多いほど、プロトン伝導性が高くなることが知られている。しかし、プロトン解離性の基は親水性であるため、導入されたプロトン解離性の基の数が多いほどフラーレン誘導体は水和しやすくなり、水への溶解性が増加する。水溶性のフラーレン誘導体を燃料電池の電解質として用いると、燃料電池における電極反応により生成する水に電解質が溶け出して流失してしまうので、フラーレン誘導体を単独で電解質として使用するには、プロトン伝導性が大きく、且つ、難水溶性のフラーレン誘導体を用いる必要があり、材料設計・材料選択に際して非常に制約が多くなる。
電解質のプロトン伝導性の向上と、電解質のメタノール透過性の抑制や不溶化とを両立させることは困難である。プロトン−塩基性化合物間の相互作用を用いて電解質の膨潤抑制や不溶化を行うことができるが、伝導に寄与するプロトンが減少してしまい、プロトン伝導性が低下してしまう。
メタノールクロスオーバーを減らし、且つ、イオン伝導度が良好な高分子電解質膜の開発のため、電解質に関する種々の検討がなされているが、十分な性能を有する高分子電解質膜はまだ得られていない。
電解質膜を形成する場合には、従来方法では、電解質を溶媒に分散又は溶解させた後、溶媒を揮散除去した場合に三次元構造を形成し膜状となる場合には、結着剤を使用しないで電界質膜を形成、或いは、膜状とならない場合には、フッ素系樹脂等の樹脂を結着剤として使用して、この結着剤及び電解質を溶媒に分散又は溶解させたものを用いて、塗膜を形成した後、或いは、多孔性膜に含侵させた後に溶媒を揮散除去させることによって電解質膜を形成している。この従来方法では、有機溶媒等の溶媒を使用するが、溶媒の種類によっては、溶媒とイオン解離性基、例えば、プロトン解離性基との相互作用によって電解質膜に溶媒が残存し、溶媒の揮散除去が不十分となることがあり、溶媒とプロトン解離性基との相互作用によって電解質膜のプロトン伝導度が低下する場合がある。
この相互作用は、従来技術における課題を説明する図14の(A)、(B)に例示するように、例えば、有機溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド)(CH3)2NCHOと、(A)電解質のスルホン酸基(−SO3H)との間での水素結合、(B)電解質である金属(M)の塩化物MClとの間でのオン双極子相互作用に基づく結合によって生じるものと考えられ、電解質膜に溶媒が残存する原因と考えられ、電解質膜における電解質のイオン解離の進行を妨げるものとなっており、イオン伝導度の低下の原因となる。
従来、電解質膜の形成に際して使用されていた、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンといった塩基性溶媒は、イオン解離性と相互作用してしまうため除去が困難であり、形成された電解質膜に溶媒が残存するためイオン伝導を阻害してしまう。このような電解質膜を電気化学デバイスへ応用しようとした際、イオン伝導度が低いため、高性能デバイスの作成が困難である。
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、イオン伝導度を向上させることができ、メタノール等のクロスオーバーの抑制及び不溶化を併せて実現することができるイオン伝導性複合電解質とこれを用いた膜電極接合体、及び膜電極接合体を用いた燃料電池等の電気化学装置、並びにイオン伝導性複合電解質膜の製造方法を提供することにある。
即ち、本発明は、イオン解離性基(例えば、後述の実施の形態におけるSO3H)を有する電解質と、ルイス酸基(例えば、後述の実施の形態におけるMR2)を有する化合物とを含有し、前記ルイス酸基を構成する電子受容性の原子と、前記イオン解離性基を構成する電子供与性の原子とが結合してなるイオン伝導性複合電解質に係るものである。ここで、「ルイス酸基」とは、ルイス酸として機能する官能基を意味する(以下、同様)。
また、本発明は、上記のイオン伝導性複合電解質よりなる電解質膜と、触媒金属を電気伝導性の担体に担持してなる触媒電極とを有し、前記電解質膜の両側に前記触媒電極が配置されてなる膜電極接合体に係るものである。
また、本発明は、上記の膜電極接合体を使用してなり、前記電解質膜の両側に配された一対の前記触媒電極の一方で発生させたイオンを前記電解質膜によって他方の触媒電極へ移動させるように構成された電気化学装置に係るものである。
また、本発明は、イオン伝導性複合電解質をドナー数が25以下である溶媒に添加して分散又は/及び溶解させた溶液を調製する第1工程と、前記溶液を基体に塗布又は含侵させる第2工程と、この第2工程に続いて前記溶液を揮散除去させる第3工程とを有するイオン伝導性複合電解質膜の製造方法に係るものである。
本発明によれば、イオン伝導性複合電解質は、前記ルイス酸基を構成する電子受容性の原子と、前記イオン解離性基を構成する電子供与性の原子とが相互作用により結合してなるので、イオン解離を促進させ、イオン伝導性を向上させると共に、前記イオン解離性基がプロトン解離性基である場合、水による膨潤を抑制して水に対して不溶化し得、クロスオーバーの抑制が可能なイオン伝導性複合電解質を提供することができる。
また、本発明によれば、膜電極接合体は、上記のイオン伝導性複合電解質よりなる電解質膜と、触媒金属を電気伝導性の担体に担持してなる触媒電極とを有し、前記電解質膜の両側に前記触媒電極が配置されてなるので、イオン解離を促進させ、イオン伝導性を向上させると共に、前記イオン解離性基がプロトン解離性基である場合、水による膨潤を抑制して水に対して不溶化とし、メタノール等の透過性を小さくしてメタノールクロスオーバー等を抑制し得る燃料電池に好適な膜電極接合体を提供することができる。
また、本発明によれば、燃料電池等の電気化学装置は、上記の膜電極接合体を使用してなるので、イオン解離を促進させ、イオン伝導性を向上させると共に、前記イオン解離性基がプロトン解離性基である場合、水による膨潤を抑制して水に対して不溶化とし、メタノール等の透過性を小さくしてメタノールクロスオーバー等を抑制し得る燃料電池等の電気化学装置を提供することができる。
また、本発明によれば、イオン伝導性複合電解質をドナー数が25以下である溶媒に添加して分散又は/及び溶解させた溶液を調製する第1工程と、前記溶液を基体に塗布又は含侵させる第2工程と、この第2工程に続いて前記溶液を揮散除去させる第3工程とを有するので、前記溶液を前記溶媒によって侵食されない材質からなる前記基体に塗布した後、前記溶媒を揮散除去し、乾燥された膜を前記基体から剥離して、イオン伝導性複合電解質膜を得ることができる、或いは、前記溶液を前記溶媒によって侵食されない材質からなる多孔性の前記基体に含侵させた後、前記溶媒を揮散除去し乾燥させて、イオン伝導性複合電解質膜を得ることができる。前記溶媒としてドナー数が25以下であるものを使用しているので、前記イオン伝導性複合電解質と前記溶液との相互作用が少ないため、電解質膜に残存する前記溶媒を低下させることができ、イオン伝導性複合電解質膜のイオン伝導度を高くすることができるイオン伝導性複合電解質膜を製造することができる。
本発明のプロトン伝導性複合電解質では、前記イオン解離性基がプロトン解離性基である構成とするのがよい。このような構成によれば、プロトン解離を促進させ、プロトン伝導性を向上させると共に、水による膨潤を抑制し、水に対して不溶化とし得るプロトン伝導性複合電解質を提供することができる。
また、前記化合物は、前記ルイス酸基を側鎖に複数個もつ重合体、特にポリマーである構成とするのがよい。このような構成によれば、プロトン解離を促進させ、プロトン伝導性を向上させると共に、水による膨潤を抑制し、水に対して不溶化とし得るプロトン伝導性複合電解質を提供することができる。
また、前記プロトン解離性基が、スルホン酸基(−SO3H)、ホスホン基(−PO(OH)2)、ビススルホンイミド基(−SO2NHSO2−)、スルホンアミド基(−SO2NH2)、カルボキシル基(−COOH)、ジホスホノメタノ基(=C(PO(OH)2)2)、及び、ジスルホノメタノ基(=C(SO3H)2)からなる群より選ばれた少なくとも1種である構成とするのがよい。このような構成によれば、プロトン解離を促進させ、プロトン伝導性を向上させる。
また、前記ルイス酸基を構成する電子受容性の原子がホウ素(B)又はアルミニウム(Al)である構成とするのがよい。このような構成によれば、プロトン解離を促進させ、プロトン伝導性を向上させる。
また、前記電解質は、スルホン酸基(−SO3H)等の上記プロトン解離性基を有するフラーレン化合物である構成とするのがよい。このような構成によれば、プロトン解離を促進させ、プロトン伝導性を向上させると共に、水による膨潤を抑制して水に対して不溶化とし得るプロトン伝導性複合電解質を提供することができる。こうしたフラーレン化合物と共に、前記プロトン解離性基を有するフラーレン化合物を側鎖に複数個もつ重合体、前記プロトン解離性基を有するフラーレン化合物の複数個が連結されてなる重合体、及び、前記プロトン解離性基を側鎖に複数個もつ重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種も採用可能である。
本発明の膜電極接合体では、前記触媒電極は、前記イオン伝導性複合電解質を含む構成とするのがよい。このような構成によれば、前記イオン解離性基がプロトン解離性基である場合、イオン解離を促進させ、プロトン伝導がスムーズになり、且つ、構造が安定した触媒電極が実現可能となる。
本発明のイオン伝導性複合電解質膜の製造方法では、前記第1工程において、前記ドナー数が8以上である前記溶媒を使用する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記イオン伝導性複合電解質と前記溶媒との相互作用が小さいので、電解質膜に残存する前記溶媒を低下させることができ、プロトン伝導度が高く、燃料電池に好適なイオン伝導性複合電解質膜を得ることができる。
また、前記ルイス酸基を構成する電子受容性の原子と、前記イオン解離性基を構成する電子供与性の原子とが結合してなる前記イオン伝導性複合電解質を使用する構成とするのがよい。このような構成によれば、イオン解離を促進させイオン伝導性を向上させると共に、前記イオン伝導性複合電解質と前記溶液との相互作用が少ないため、電解質膜に残存する前記溶媒を低下させることができ、イオン伝導性複合電解質膜のイオン伝導度を高くすることができるイオン伝導性複合電解質膜を得ることができる。また、前記イオン解離性基がプロトン解離性基である場合、水による膨潤を抑制して水に対して不溶化し得、クロスオーバーの抑制が可能なイオン伝導性複合電解質膜を得ることができる。
また、前記イオン伝導性複合電解質は、プロトン解離性基を有するプロトン伝導性複合電解質である構成とするのがよい。このような構成によれば、プロトン伝導度が高く、燃料電池に好適なイオン伝導性複合電解質膜を得ることができる。
また、前記第1工程において、前記イオン伝導性複合電解質と共に高分子バインダを前記溶媒に添加する構成とするのがよい。このような構成によれば、強度が増大され屈曲に耐え信頼性が向上したイオン伝導性複合電解質膜を得ることができる。
また、前記イオン伝導性複合電解質を前記溶媒に分散させた分散液から前記溶媒を100℃で真空乾燥させて得られる粉体によって形成された圧粉体のイオン伝導度が1×10-4S/cmとなるような前記溶媒が前記第1工程において使用される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記イオン伝導性複合電解質と前記溶媒との相互作用が小さいので、電解質膜に残存する前記溶媒を低下させることができ、プロトン伝導度が高く、燃料電池に好適なイオン伝導性複合電解質膜を得ることができる。
[実施の形態]
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態をプロトン伝導性複合電解質について詳細に説明する。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態をプロトン伝導性複合電解質について詳細に説明する。
<プロトン解離性基をもつ電解質と、ルイス酸基をもつ化合物とを含有するプロトン伝導性複合電解質>
以下の説明において、一般式MXn(n≧3)(Mを多価元素、Xをアニオン基とする。)で表わされるルイス酸から1個のXを除いたMXn-1をルイス酸基という。なお、アニオン基XをRによって示すこともある。
以下の説明において、一般式MXn(n≧3)(Mを多価元素、Xをアニオン基とする。)で表わされるルイス酸から1個のXを除いたMXn-1をルイス酸基という。なお、アニオン基XをRによって示すこともある。
本発明に基づくプロトン伝導性複合電解質は、プロトン解離性基を有する電解質と、ルイス酸基を有する化合物とを含有し、ルイス酸基MXn-1を構成して電子を受容する原子Mと、アニオン基であるプロトン解離性基を構成して電子を供与する原子とが結合されることによって形成され、燃料電池に好適に使用される。
ルイス酸基をもつ化合物は、例えば、ルイス酸化合物MXn、或いは、ルイス酸基MXn-1が主鎖又は側鎖(特に側鎖)に複数個結合されたポリマーである。
ルイス酸基MXn-1を構成して電子を受容する原子Mは、反応性の点から、ホウ素(B)又はアルミニウム(Al)であることが望ましく、またXはハロゲン原子であることが望ましい。
また、プロトン解離性基は、プロトンの解離性が大きなスルホン酸基(−SO3H)であることが好ましいが、ホスホン基(−PO(OH)2)、ビススルホンイミド基(−SO2NHSO2−)、スルホンアミド基(−SO2NH2)、カルボキシル基(−COOH)、ジホスホノメタノ基(=C(PO(OH)2)2)、ジスルホノメタノ基(=C(SO3H)2)であってもよい。こうしたプロトン解離性基は、ポリマーの側鎖やフラーレンに複数個導入されているのがよい。
プロトン解離性基をもつ電解質は、例えば、フッ素系電解質、炭化水素系樹脂、無機系樹脂、有機樹脂と無機系樹脂とのハイブリッド樹脂等からなる電解質、フラーレン化合物である。
本発明に基づくプロトン伝導性複合電解質を膜状とし、この膜の両側に密着するように触媒電極(触媒金属が電気伝導性の担体に担持され、膜状とした電極)が設けられたプロトン伝導性複合電解質膜−触媒電極(MEA、膜電極接合体)は、燃料電池に好適に使用される。
このプロトン伝導性複合電解質は、プロトン解離性基をもつ電解質と、ルイス酸基をもつ化合物とを含有し、ルイス酸基とプロトン解離性基とが結合されてなるので、プロトン解離を促進させ、プロトン伝導性を向上させると共に、水による膨潤を抑制し、水に対して不溶化とすることができ、電解質としてメタノール透過性が小さく、耐熱性をもつ樹脂、例えば、スルホン化ポリフェノキシベンゾイルフェニレン(S−PPBP)を使用することによって、メタノール透過性を小さくしてメタノールクロスオーバーを抑制し、耐熱性を向上させることができる。
このプロトン伝導性複合電解質を燃料電池用の電解質膜として用いることにより、セル抵抗が小さく、且つ、メタノールクロスオーバーの少ない燃料電池が実現可能となる。
更に、このプロトン伝導性複合電解質を燃料電池用の触媒電極中の電解質として用いた場合、プロトン伝導がスムーズになり、且つ、構造が安定した触媒電極が実現可能となる。
図1は、本発明の実施の形態におけるプロトン伝導性複合電解質を説明するための図であり、図1(A)は、複数個のプロトン解離性基を側鎖にもつ電解質(ポリマー)と、ルイス酸基をもつ化合物(低分子化合物)MR3との相互作用によって形成されるプロトン伝導性複合電解質を示し、図1(B)は、複数個のプロトン解離性基を側鎖にもつ電解質(ポリマー)と、複数個のルイス酸基を側鎖にもつ化合物(ポリマー)との相互作用によって形成されるプロトン伝導性複合電解質を示し、図1(C)は、プロトン解離性基をもつフラーレン化合物と、複数個のルイス酸基MR2を側鎖にもつ化合物(ポリマー)との相互作用によって形成されるプロトン伝導性複合電解質を示す。図1(D)は、図1(C)に示されるフラーレン化合物に換えて使用することができる、(a)プロトン解離性基をもつフラーレン化合物の複数個を側鎖にもつポリマー電解質、(b)プロトン解離性基をもつフラーレン化合物の複数個が連結されてなる電解質(ポリマー)を示す。
図1(A)は、ポリマー骨格10aの側鎖にプロトン解離性基としてスルホン酸基(−SO3H)を有するポリマーからなる電解質と、ルイス酸基を有するルイス酸化合物MR3とによって形成されるプロトン伝導性複合電解質を示している。
なお、図1において、ルイス酸化合物MR3から1個のRを除いたMR2をルイス酸基と称する。従って、ルイス酸化合物MR3はルイス酸基MR2をもつ化合物である。また、プロトン伝導性複合電解質はルイス酸基をもつ高分子電解質であり、この高分子電解質によって膜(高分子電解質膜)が形成される。
図1(A)に示す例では、ルイス酸化合物MR3において、Mはアルミニウム(Al)又はホウ素(B)であり、Rは、(a)ペンタフルオロフェニル基(−C6F5)、(b)ヘキサフルオロイソプロポキシル基(−OCH(CF3)2)である。
図1(A)に示すように、スルホン酸基を側鎖に複数個もつポリマー電解質にルイス酸化合物を添加することによって、電解質のスルホン酸基とルイス酸化合物MR3との相互作用(電子の授受)により、スルホン酸基のプロトン解離が促進され、ポリマー骨格10aの側鎖のスルホン酸基からプロトンが解離し、ルイス酸化合物MR3の中心元素であるM(電子受容体)と、プロトンが解離したスルホン酸基のO-(電子供与体)との間に配位結合を形成し、プロトン伝導性複合電解質を形成する。従って、プロトン伝導性に優れたプロトン伝導性複合電解質を得ることができる。しかも、電解質がポリマーからなるので、水に対して不溶化された電解質となる。
図1(B)は、ポリマー骨格10aの側鎖にプロトン解離性基としてスルホン酸基(−SO3H)をもつポリマーからなる電解質と、ポリマー骨格10bの側鎖にルイス酸基MR2をもつポリマーからなる化合物とによって形成されるプロトン伝導性複合電解質を示している。ルイス酸基MR2におけるRは、例えば、図1(A)に示す(a)又は(b)と同じものである。
図1(B)に示すように、スルホン酸基を側鎖に複数個もつポリマー電解質に、ルイス酸基MR2を側鎖に複数個もつポリマーを添加することによって、電解質のスルホン酸基とルイス酸基MR2との相互作用により、スルホン酸基のプロトン解離が促進され、ポリマー骨格10aの側鎖のスルホン酸基からプロトンが解離し、ルイス酸基MR2の中心元素であるM(電子受容体)と、プロトンが解離したスルホン酸基のO-(電子供与体)との間に配位結合を形成し、プロトン伝導性複合電解質を形成する。従って、図1(A)の場合と同様に、プロトン伝導性に優れたプロトン伝導性複合電解質を得ることができると共に、両ポリマーの結合によって更に耐水性が向上する。
側鎖にプロトン解離性基をもつポリマーを電解質として使用せず、プロトン解離性基を有し、ポリマーを形成しない化合物を使用して、プロトン伝導性に優れたプロトン伝導性複合電解質を形成することもできる。
例えば、C36、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84等のフラーレン分子(球状クラスター分子をなす)を母体とするフラーレン誘導体であり、直接、或いは、連結鎖(リンカー)を介して、母体の炭素原子にスルホン酸基等のプロトン解離性基が結合されたフラーレン化合物を使用することができる。
図1(C)は、フラーレン(C60)にプロトン解離性基が結合され、プロトン解離性基としてスルホン酸基(−SO3H)nを有するフラーレン化合物からなり、ポリマーを形成しない電解質と、ポリマー骨格10cの側鎖にルイス酸基MR2を複数個有するポリマーとによって形成されるプロトン伝導性複合電解質を示している。
なお、図1(C)、図1(D)において、スルホン酸基(−SO3H)nは、フラーレン化合物の母体の炭素原子に、直接、或いは、連結鎖(リンカー)を介して、n個(n=1〜12)のスルホン酸基(−SO3H)が結合されていることを示す。スルホン酸基(−SO3H)に換えて、他のプロトン解離性基がフラーレン化合物の母体の炭素原子に結合されていてもよい(上記の例においても同様)。
図1(C)に示すように、スルホン酸基を有するフラーレン化合物からなる電解質に、側鎖にルイス酸基MR2を有するポリマーを添加することによって、電解質のスルホン酸基とポリマーのルイス酸基MR2との相互作用により、スルホン酸基のプロトン解離が促進され、フラーレン化合物の側鎖のスルホン酸基からプロトンが解離し、ルイス酸基MR2の中心元素であるM(電子受容体)と、プロトンが解離したスルホン酸基のO-(電子供与体)との間に配位結合を形成し、プロトン伝導性複合電解質を形成する。従って、図1(A)、図1(B)の場合と同様に、プロトン伝導性に優れたプロトン伝導性複合電解質を得ることができる。フラーレン化合物が水に可溶である場合でも、ルイス酸基をもつポリマーの結合によって水に対して不溶化されたプロトン伝導性複合電解質を得ることができる。
図1(C)に示されるフラーレン化合物に換えて、図1(C)のフラーレン化合物を複数個もつポリマーを電解質として使用することもでき、図1(A)、図1(B)、図1(C)の場合と同様に、プロトン伝導性に優れたプロトン伝導性複合電解質を得ることができる。
図1(D)は、図1(C)のフラーレン化合物を側鎖に複数個もつポリマーからなる電解質の例を示し、(a)スルホン酸基(−SO3H)nを有するフラーレン化合物をポリマー骨格10dの側鎖に複数個もつポリマーからなる電解質、(b)スルホン酸基(−SO3H)nを有するフラーレン化合物の複数個が連結鎖10eによって連結されてポリマー化されてなる電解質を示している。フラーレン化合物が水に可溶である場合でも、図1(D)に示すフラーレン化合物を含むポリマーからなる電解質は、水に対して不溶性となる。
図1では、プロトン解離性基としてスルホン酸基を(−SO3H)を例にとって説明したが、プロトン解離性基は以下に示すものであってもよい。
(プロトン解離性基)
プロトン解離性基は、プロトンが電離により離脱し得る官能基であって、式−XHで表され、Xは2価の任意の原子もしくは原子団であり、上記したものを含め列記すると、例えば、ヒドロキシル基−OH、メルカプト基−SH、カルボキシル基−COOH、スルホン酸基−SO2OH、スルホンアミド基−SO2NH2、ビススルホンイミド基−SO2NHSO2−、ビススルホンイミド基−SO2NHSO2−、スルホンカルボイミド基−SO2NHCO−、ビスカルボンイミド基−CONHCO−、ホスホノメタノ基=CH(PO(OH)2)、ジホスホノメタノ基=C(PO(OH)2)2、ジスルホノメタノ基(=C(SO3H)2)、ホスホノメチル基−CH2(PO(OH)2)、ジホスホノメチル基−CH(PO(OH)2)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルフェノ基−S(OH)、硫酸基−OSO2OH、ホスホン酸基−PO(OH)2、ホスフィン基−HPO(OH)、リン酸基−O−PO(OH)2、−OPO(OH)O−、ホスフォニル基−HPO、ホスフィニル基−H2PO等であり、これらのプロトン解離性基が置換基によって置換されてなる誘導体であってもよい。
プロトン解離性基は、プロトンが電離により離脱し得る官能基であって、式−XHで表され、Xは2価の任意の原子もしくは原子団であり、上記したものを含め列記すると、例えば、ヒドロキシル基−OH、メルカプト基−SH、カルボキシル基−COOH、スルホン酸基−SO2OH、スルホンアミド基−SO2NH2、ビススルホンイミド基−SO2NHSO2−、ビススルホンイミド基−SO2NHSO2−、スルホンカルボイミド基−SO2NHCO−、ビスカルボンイミド基−CONHCO−、ホスホノメタノ基=CH(PO(OH)2)、ジホスホノメタノ基=C(PO(OH)2)2、ジスルホノメタノ基(=C(SO3H)2)、ホスホノメチル基−CH2(PO(OH)2)、ジホスホノメチル基−CH(PO(OH)2)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルフェノ基−S(OH)、硫酸基−OSO2OH、ホスホン酸基−PO(OH)2、ホスフィン基−HPO(OH)、リン酸基−O−PO(OH)2、−OPO(OH)O−、ホスフォニル基−HPO、ホスフィニル基−H2PO等であり、これらのプロトン解離性基が置換基によって置換されてなる誘導体であってもよい。
(プロトン解離性基をもつ電解質)
プロトン解離性基をもつ電解質として、各種のものを使用することができ、例えば、有機樹脂(有機ポリマー)を使用することができる。
プロトン解離性基をもつ電解質として、各種のものを使用することができ、例えば、有機樹脂(有機ポリマー)を使用することができる。
フッ素系電解質、炭化水素系電解質等のプロトン伝導性をもつ公知の電解質を用いることができ、これら電解質を用いて電解質膜を形成することができる。この電解質膜の形成については後述する。
プロトン解離性基をもつフッ素系電解質として、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂等から構成される公知のフッ素系電解質を使用することができる。
プロトン解離性基をもつ炭化水素系電解質として、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、PBI(ポリベンズイミダゾール)、PBO(ポリベンズオキサゾール)、S−PPBP(スルホン化ポリフェノキシベンゾイルフェニレン)、S−PEEK(スルホン化ポリエーテルエーテルケトン)、スルホンアミド型ポリエーテルスルホン、スルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化架橋ポリスチレン、スルホンアミド型架橋ポリスチレン、スルホン化ポリトリフルオロスチレン、スルホンアミド型ポリトリフルオロスチレン、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホンアミド型ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリ(アリールエーテルスルホン)、スルホンアミド型ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリイミド、スルホン化ポリイミド、スルホンアミド型ポリイミド、スルホン化4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホンアミド型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、ホスホン酸型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホンアミド型ポリベンゾイミダゾール、ホスホン酸型ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリビフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリビフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホンアミド型ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェノキシベンゾイルフェニレン、スルホン化ポリスチレン−エチレン−プロピレン、スルホン化ポリフェニレンイミド、ポリベンズイミダゾール−アルキルスルホン酸、スルホアリル化ポリベンズイミダゾール等から構成される公知の炭化水素系電解質を使用することができる。
また、炭化水素系電解質やフッ素系電解質等の有機樹脂と無機系樹脂とのハイブリッドポリマーであり、ハイブリッドポリマーから構成される電解質を使用することもできる。この場合、有機樹脂及び/又は無機系樹脂はプロトン解離性基を有しており、例えば、無機系樹脂として、Si−O結合を主骨格にもつ有機ケイ素ポリマーを使用することができ、スルホン酸置換された基を側鎖にもつポリシロキサン化合物を使用することができる。
<ルイス酸、ルイス酸基>
次に、図1に示したプロトン伝導性複合電解質の形成に使用することができるルイス酸の例、及び、ルイス酸として作用する官能基(ルイス酸基)の例について説明する。
次に、図1に示したプロトン伝導性複合電解質の形成に使用することができるルイス酸の例、及び、ルイス酸として作用する官能基(ルイス酸基)の例について説明する。
図2は、本発明の実施の形態における、ルイス酸の例、及び、ルイス酸として作用する官能基(ルイス酸基)の例を説明する図である。
図2(A)は、ルイス酸の例として、(a)一般式MXnで表わされる化合物、(b)一般式(BOX)3で表わされる化合物例を示し、図2(B)は、ポリマー骨格12の側鎖にルイス酸基(官能基)MXn-1をもつポリマーからなる電解質を模式的に示し、図2(C)は、ポリマー骨格12a〜12eの側鎖にルイス酸基(官能基)MXn-1をもつポリマー骨格を示している。
図2(A)の(a)に示す、一般式MXn(n≧3)で表わされるルイス酸化合物は、無機又は有機化合物である。Mはルイス酸MXnの中心原子である多価元素であり、好ましくは、n=3、4、5であり、例えば、Al、B、Ti、Zr、Sn、Zn、Ga、Bi、Sb、Si、Cd、V、Mo、W、Mn、Fe、Cu、Co、Pb、Ni、Ag、Ce、ランタノイド元素(Sc、Yb、La等)等の元素である。
Xはルイス酸MXnを構成するアニオン基であり、(1)ハロゲン基、(2)脂肪族炭化水素基、(3)脂環式炭化水素基、(4)芳香族炭化水素基、(5)複素環基から選択される一種又は二種以上である。n個のXは、その全部が異なっていてもよいし、その一部又は全部が同じであってもよい。また、n個のXのうちの2個が互いに結合して環を形成してもよく、更に、この基は置換基を有してもよい。
ここで、脂肪族炭化水素基は、脂肪族炭化水素化合物から1個の水素(H)を除いた残基である1価の基であり、脂肪族炭化水素基は任意の置換基で置換されていてもよい。
また、脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素化合物から1個の水素(H)を除いた残基である1価の基であり、脂環式炭化水素基は任意の置換基で置換されていてもよい。
また、芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素化合物から1個の水素(H)を除いた残基である1価の基であり、芳香族炭化水素基は任意の置換基で置換されていてもよい。
また、複素環基は、複素環式化合物の環から1個の水素(H)を除いた残基である1価の基であり、複素環基は任意の置換基で置換されていてもよい。
一般式MXnで表わされるハロゲン化合物は、例えば、BX3で表されるハロゲン化ホウ素、AlX3で表されるハロゲン化アルミニウム、PX5で表される等のハロゲン化リン、SiX4で表されるハロゲン化ケイ素、SnX4で表されるハロゲン化スズ、AsF5、VF5、SbF5等のフッ化物、その他、FeCl3、TiCl4、MoCl5、WCl5等である。
一般式MXnで表わされる有機化合物における有機基Xは、スルホン酸基、リン酸基等の各種の有機酸基、各種の有機基を含み、有機基は、任意の置換基で置換されていてもよい。
例えば、有機基は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ドデシル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、シクロヘキセニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、2―プロペニル基、ヘキサデシニル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基)、ハロゲン基(塩素基、臭素基、フッ素基、沃素基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基)、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、ブチルアミノ基)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ基)、カルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基)、スルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基)、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリフレート基(トリフルオロメタンスルホネート基、CF3SO3基)、複素環基等である。複素環基は、例えば、ピロール基、インドール基、フラン基、チオフェン基、イミダゾール基、チアゾール基、ピリジン基、ピラン基、チオピラン基、オキソジアゾール基、チアジアゾール基等である。
より具体的には、例えば、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリs−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド、トリメトキシボラン、トリスフェノキシボラン等のホウ素アルコキシド、スカンジウムトリイソプロポキシド等のスカンジウムアルコキシド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラt−ブトキシド、チタンテトラフェノキシド等のチタンアルコキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド等のジルコニウムアルコキシド、スズテトライソプロポキシド等のスズアルコキシド、イッテルビウムトリフラート等の金属トリラート等である。
図2(A)の(b)に示す一般式(BOX)3で表わされるボロキシン化合物は、ホウ素Bと酸素Oが交互に結合した6員環のホウ素Bに置換基Xが結合したルイス酸化合物であり、図2(A)の(a)と同様に、Xは、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基等から選択される一種又は二種以上であり、Xは、任意の置換基で置換されていてもよい。また、ボロキシン化合物における3個のXは、一般に異なっていてもよいし、3個のうち2個又は3個が同じであってもよい。
一般式(BOX)3で表わされるボロキシン化合物における基Xは、例えば、アルキル基、フッ素基等のハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、スルホニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、トリフルオロメチル基等のフッ素置換アルキル基、フッ素置換アリール基、複素環基等である。
より具体的には、例えば、トリメチルボロキシン、2,4,6‐トリエチルボロキシン、トリブチルボロキシン、2,4,6‐トリ‐tert‐ブチルボロキシン、2,4,6‐トリシクロヘキシルボロキシン、トリメトキシボロキシン、2,4,6‐トリフェニルボロキシン、2,4,6‐トリス[3‐(トリフルオロメチル)フェニル]ボロキシン等である。
一般式MXnで表わされるルイス酸化合物から1個のXを除いた、図2(B)に示す一般式MXn-1で表わされるルイス酸基を側鎖にもつポリマーは、ルイス酸として作用する。ルイス酸基MXn-1は、高分子鎖に直接、或いは、SO3(スルホン酸)基やSO4(硫酸)基を介して高分子鎖に結合されている。或いは、ルイス酸基は、高分子鎖の側鎖又は高分子鎖の側鎖として結合された連結用分子鎖に結合されている。高分子鎖、連結用分子鎖は疎水性であり、加水分解され難いものとする。連結用分子鎖は、炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基等を含む炭化水素基(置換基を有していてもよい。)を含んでもよい。なお、基Xは図1(B)、図1(C)における基Rに対応するものである。
図2(B)に示すポリマー骨格12の側鎖にルイス酸基MXn-1をもつポリマーは、例えば、ポリマーとクロルスルホン酸を反応させ側鎖にスルホン酸基を導入して、このスルホン酸基とルイス酸化合物MXnを反応させて、側鎖にルイス酸基MXn-1を導入する。
ルイス酸基MXn-1は、図2(A)の(a)によって説明したMXn(n≧3)で表わされるルイス酸化合物から、1個の基Xを除いたものMXn-1であるので、具体的な例について説明を繰り返さない。
ルイス酸基MXn-1を種々のポリマー骨格の側鎖に連結することが可能である。上記したようにルイス酸基MXn-1が結合される高分子鎖は、水又は水性媒体中に溶解し難い疎水性のポリマーであり、フッ素系ポリマー、炭化水素系ポリマー、ハイブリッドポリマー(炭化水素系ポリマーやフッ素系ポリマー等の有機系ポリマーとシロキサン系ポリマー等の無機系ポリマーとのハイブリッド体)等の公知のポリマーである。
ルイス酸基が結合される高分子鎖の骨格は、例えば、図2(C)に示すような、(1)ポリエチレン(PE)の水素(H)をルイス酸基に置換したポリマー骨格、(2)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のフッ素(F)をルイス酸基に置換したポリマー骨格、(3)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の水素(H)をルイス酸基に置換したポリマー、(4)ポリ−p−キシレンの水素(H)をルイス酸基に置換したポリマー骨格、(5)アルキルポリシロキサンのアルキル基(A)をルイス酸基に置換したポリマー骨格等である。ポリマー骨格が、スチレン、α−メチレン、ジビニルベンゼン等の付加重合体の骨格であってもよく、その他の各種のポリマーの骨格であってもよい。
なお、図2(C)に示すmは、その前のカッコ〔〕内の単位構造(ポリマー骨格の繰り返しの単位)の繰り返し数(重合度)を示し、m=2〜10万である。また、側鎖にルイス酸基MX2を有するポリマーにおけるルイス酸基MX2の数は、2〜10万である。
ポリマー骨格としてスチレン重合体(ポリスチレン)の骨格((−(C6H5)CH−CH2−)m)を有し、このポリスチレン骨格のフェニル基(−C6H5)の−Hをルイス酸基−B(C6F5)2に置換した構造を有するポリマーは、次のようにして合成することができる。例えば、4−トリメチルシリルスチレン((CH3)3Si−C6H4−CH=CH2)に重合開始剤(1−フェニルエチルブロマイド)及び触媒(臭化銅(CuBr)/ペンタメチルジエチレントリアミン)を添加してアニソール(C6H5OCH3)中で110℃でラジカル重合を行ない、ポリスチレン骨格のフェニル基(−C6H5)の−Hを−Si(CH3)3に置換した構造を有するポリマーとし、次に、このポリマーの−Si(CH3)3を、ジクロロメタン(CH2Cl2)中で三臭化ホウ素(BBr3)を用いて、ルイス酸基−BBr2で置換する。ルイス酸基−BBr2で置換されたポリマーとペンタフルオロフェニル銅(Cu(C6F5))をジクロロメタン(CH2Cl2)中で反応させて、ポリスチレン骨格のフェニル基(−C6H5)の−Hをルイス酸基−B(C6F5)2で置換した構造を有する目的とするポリマーを得ることができる。このポリマーは、ポリエチレンの骨格((−CH2−CH2−)m)の−Hが基−(C6H4)B(C6F5)2に置換されたポリマーと等価なものである。
図1及び図2を参照して説明した、プロトン解離性基をもつ電解質と、ルイス酸基をもつ化合物とを含有するプロトン伝導性複合電解質を、以下、「ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質」と呼ぶこととし、次に、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質を用いた電解質膜の形成について、説明する。
<ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質を用いた電解質膜の形成>
ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質は、先に説明したように、(1)プロトン解離性基を側鎖に有するポリマー電解質と、ルイス酸基をもつ化合物(ポリリマーではない化合物である。)との相互作用(図1(A)を参照。)、(2)プロトン解離性基を有するポリマー電解質と、ルイス酸基を側鎖に有するポリマーとの相互作用(図1(B)を参照。)、(3)プロトン解離性基をもつフラーレン化合物と、ルイス酸基を側鎖に有するポリマーとの相互作用(図1(C)を参照。)、(4)プロトン解離性基をもつフラーレン化合物を側鎖に有してなるポリマー電解質、或いは、プロトン解離性基をもつフラーレン化合物が連結されてなるポリマー電解質と、ルイス酸基を側鎖に有するポリマーとの相互作用(図1(D)を参照。)によって形成される。
ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質は、先に説明したように、(1)プロトン解離性基を側鎖に有するポリマー電解質と、ルイス酸基をもつ化合物(ポリリマーではない化合物である。)との相互作用(図1(A)を参照。)、(2)プロトン解離性基を有するポリマー電解質と、ルイス酸基を側鎖に有するポリマーとの相互作用(図1(B)を参照。)、(3)プロトン解離性基をもつフラーレン化合物と、ルイス酸基を側鎖に有するポリマーとの相互作用(図1(C)を参照。)、(4)プロトン解離性基をもつフラーレン化合物を側鎖に有してなるポリマー電解質、或いは、プロトン解離性基をもつフラーレン化合物が連結されてなるポリマー電解質と、ルイス酸基を側鎖に有するポリマーとの相互作用(図1(D)を参照。)によって形成される。
上述の(1)〜(4)のように、上述のポリマー電解質と、ルイス酸基を有する化合物(ポリリマーではない化合物である。)との相互作用、或いは、上述のポリマー電解質と、ルイス酸基を側鎖に有するポリマーとの相互作用によって、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質は形成される。
このルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質は次の(a)、(b)によって成膜され電解質膜とすることができる。(a)上述のポリマー電解質又は/及びルイス酸基を側鎖に有するポリマーを溶媒に分散又は/及び溶解して得られる混合体を塗布した後に、溶媒を揮散除去させた場合に、上述のポリマー電解質又は/及びルイス酸基を側鎖に有するポリマーが絡み合って三次元構造を形成し、或いは、ポリマーの重合によって膜状をなして成膜され、電解質膜が形成される場合には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVdF−HFP(ヘキサフルオロプロピレン)共重合体等のフッ素系樹脂からなる結着剤を使用することなく、電解質膜を形成することができる。
また、(b)上述のポリマー電解質又は/及びルイス酸基を側鎖に有するポリマーが、上述の(a)のように、絡み合って3次元構造を形成して、或いは、ポリマーの重合によって、膜状をなさず成膜されない場合には、上述の結着剤を使用して従来方法に従って、ルイス酸基を側鎖に有するポリマー、上述のポリマー電解質、上述の結着剤を溶媒に分散又は/及び溶解させ、塗膜を形成した後に溶媒を揮散除去させて、電解質膜を形成することができる。
上述の(a)、(b)の何れの場合にも、電解質膜を形成する際に溶媒を必要とし、塗膜を形成した後に、溶媒の揮散除去を行ったとしても、溶媒とルイス酸基又は/及びプロトン解離性基との相互作用によって電解質膜に溶媒が残存し、溶媒の揮散除去が不十分となることがあり、溶媒とルイス酸基又は/及びプロトン解離性基との相互作用によって、電解質膜のプロトン伝導度が低下する場合がある。
本発明では、電解質膜の形成に際して、ルイス酸基又は/及びプロトン解離性基との相互作用が小さい溶媒を使用する。このような溶媒として、ドナー数が25以下である溶媒を使用するが、詳細については、後述する。
次に、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質が適用される燃料電池の構成例について、説明する。
<本発明による、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質が適用される燃料電池>
(直接型メタノール燃料電池)
図3は、本発明の実施の形態における、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質が適用されるDMFC(直接型メタノール燃料電池)の構成例を示す断面図である。
(直接型メタノール燃料電池)
図3は、本発明の実施の形態における、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質が適用されるDMFC(直接型メタノール燃料電池)の構成例を示す断面図である。
図3に示すように、メタノール水溶液が燃料25として、流路をもつ燃料供給部(セパレータ)50の入口26aから通路27aへと流され、基体である導電性のガス拡散層24aを通って、ガス拡散層24aによって保持された触媒電極22aに到達し、図3の下方に示すアノード反応に従って、触媒電極22a上でメタノールと水が反応し、水素イオン、電子、二酸化炭素が生成され、二酸化炭素を含む排ガス29aが出口28aから排出される。生成された水素イオンは、ルイス酸基をもつ上述のプロトン伝導性複合電解質によって形成された高分子電解質膜23中を、生成された電子はガス拡散層24a、外部回路70を通り、更に、基体である導電性のガス拡散層24bを通って、ガス拡散層24bによって保持された触媒電極22bに到達する。
図3に示すように、空気又は酸素35が、流路をもつ空気又は酸素供給部(セパレータ)60の入口26bから通路27bへと流され、ガス拡散層24bを通って、ガス拡散層24bによって保持された触媒電極22aに到達し、図3の下方に示すカソード反応に従って、触媒電極22b上で水素イオン、電子、酸素が反応し、水が生成され、水を含む排ガス29bが出口28bから排出される。図3の下方に示すように全反応は、メタノールと酸素から電気エネルギーを取り出して水と二酸化炭素を排出するというメタノールの燃焼反応となる。
(高分子電解質型燃料電池)
図4は、本発明の実施の形態における、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質が適用されるPEFC(高分子電解質型燃料電池)の構成例を示す断面図である。
図4は、本発明の実施の形態における、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質が適用されるPEFC(高分子電解質型燃料電池)の構成例を示す断面図である。
図4に示すように、加湿された水素ガスが燃料25として、燃料供給部50の入口26aから通路27aへと流されガス拡散層24aを通って、触媒電極22aに到達し、図4の下方に示すアノード反応に従って、触媒電極22a上で水素ガスから水素イオン、電子が生成され、余剰の水素ガスを含む排ガス29aが出口28aから排出される。生成された水素イオンは、ルイス酸基をもつ上述のプロトン伝導性複合電解質によって形成された高分子電解質膜23中を、生成された電子はガス拡散層24a、外部回路70を通り、更に、ガス拡散層24bを通って触媒電極22bに到達する。
図4に示すように、空気又は酸素35が、空気又は酸素供給部60の入口26bから通路27bへと流され、ガス拡散層24bを通って触媒電極22aに到達し、図4の下方に示すカソード反応に従って、触媒電極22b上で水素イオン、電子、酸素が反応し、水が生成され、水を含む排ガス29bが出口28bから排出される。図4の下方に示すように全反応は、水素ガスと酸素から電気エネルギーを取り出して水を排出するという水素ガスの燃焼反応となる。
図3、図4において、高分子電解質膜23は、プロトン伝導性複合電解質が結着剤(例えば、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、等…)によって結着されて形成されている。高分子電解質膜23によって、アノード20とカソード30が隔てられ、高分子電解質膜23を通して水素イオンや水分子が移動する。高分子電解質膜23は、水素イオンの伝導性が高い膜であり、化学的に安定であって機械的強度が高いことが好ましい。
図3、図4において、触媒電極22a、22bは、集電体である導電性の基体を構成し、ガスや溶液に対して透過性をもったガス拡散層24a、24b上に密着して形成されている。ガス拡散層24a、24bは、例えば、カーボンペーパー、カーボンの成形体、カーボンの焼結体、焼結金属、発泡金属等の多孔性基体から構成される。燃料電池の駆動によって生じる水によるガス拡散効率の低下を防止するために、ガス拡散層は、フッ素樹脂等で撥水処理されている。
触媒電極22a、22bは、例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金等からなる触媒が担持された担体が、結着剤(例えば、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、等…)によって結着され形成されている。担体として、例えば、アセチレンブラック、黒鉛のような炭素、アルミナ、シリカ等の無機物微粒子が使用される。結着剤を溶解させた有機溶剤に炭素粒子(触媒金属が担持されている。)が分散された溶液を、ガス拡散層24a、24bに塗布し、有機溶剤を蒸発させて結着剤によって結着された膜状の触媒電極22a、22bが形成される。
高分子電解質膜23が、ガス拡散層24a、24b上に密着して形成された触媒電極22a、22bによって挟持され、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)40が形成されている。触媒電極22a、ガス拡散層24aによってアノード20が構成され、触媒電極22b、ガス拡散層24bによってカソード30が構成されている。アノード20及びカソード30は高分子電解質膜23に密着し、炭素粒子の間にプロトン伝導体が入り込み、触媒電極22a、22bに高分子電解質(プロトン伝導体)を含浸させた状態となって、触媒電極22a、22と高分子電解質膜23とが密着して接合され、接合界面で水素イオンの高い伝導性が保持され、電気抵抗が低く保持される。なお、触媒電極は、ルイス酸基をもつ上述のプロトン伝導性複合電解質を含んでいてもよく、上記の接合界面でのプロトン伝導がスムーズになる。
なお、図3、図4に示した例では、燃料25の入口26a、排ガス29aの出口28a、空気又は酸素(O2)35の入口26b、排ガス29bの出口28bの各開口部が、高分子電解質膜23、触媒電極22a、22bの面に垂直に配置されているが、上記の各開口部が、高分子電解質膜23、触媒電極22a、22bの面に平行に配置されている構成とすることもでき、上記の各開口部の配置に関して種々の変形が可能である。
図3、図4に示す燃料電池の製造は、各種文献に公知されている一般的な方法を利用できるので、製造に関する詳細な説明は省略する。
なお、図3、図4に示す燃料電池に対しても、以下で説明するプロトン伝導性複合電解質膜を適用することができることは言うまでもない。
<電解質膜の形成に使用される溶媒>
次に、電解質膜の形成に際して使用される溶媒について説明する。以下では、フラーレン(C60)にプロトン解離性基が結合され、プロトン解離性基としてスルホン酸基(−SO3H)を有するフラーレン化合物が連結されたフラーレン誘導体であるポリマー電解質を例にとり、このフラーレン誘導体と結着剤(フッ素系樹脂)を含むプロトン伝導性複合電解質膜を例にとって説明する。
次に、電解質膜の形成に際して使用される溶媒について説明する。以下では、フラーレン(C60)にプロトン解離性基が結合され、プロトン解離性基としてスルホン酸基(−SO3H)を有するフラーレン化合物が連結されたフラーレン誘導体であるポリマー電解質を例にとり、このフラーレン誘導体と結着剤(フッ素系樹脂)を含むプロトン伝導性複合電解質膜を例にとって説明する。
(電解質:フラーレン誘導体)
図5は、本発明の実施の形態において、プロトン解離性基を有するフラーレン誘導体を説明する図である。
図5は、本発明の実施の形態において、プロトン解離性基を有するフラーレン誘導体を説明する図である。
図5(A)に示すように、フラーレン誘導体は、フラーレン(C60)に、プロトン解離性基としてスルホン酸基(−SO3H)を末端に有する基、−CF2CF2−O−CF2CF2−SO3Hがn個結合されたフラーレン母体(C60)が、m個の連結基、−CF2CF2CF2CF2CF2CF2−によって相互に結合された構造を有している。
図5(B)に示すように、スルホン酸基(−SO3H)を末端に有する基、−CF2CF2−O−CF2CF2−SO3Hを−GrH、連結基、−CF2CF2CF2CF2CF2CF2−を−Link−のように略記すると、フラーレン誘導体は、フラーレン母体(C60)がLinkによって連結され、各フラーレン母体(C60)に複数のGrHが結合された構造を有するポリマーである。
(結着剤)
図6は、本発明の実施の形態において、結着剤として使用するPVdF−HFP共重合体を説明する図である。
図6は、本発明の実施の形態において、結着剤として使用するPVdF−HFP共重合体を説明する図である。
図6に示すように、電解質膜の形成に使用される結着剤PVdF−HFP共重合体は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)(CH2CF2)nとヘキサフルオロプロピレン(HFP)(CF2CF(CF3))mとの共重合体であり、この共重合体は、交互共重合体、周期的共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れか、或いは、これらの混合体である。
(電解質膜の形成に使用された溶媒の影響)
図7は、本発明の実施の形態において、電解質膜の形成に際して使用される溶媒を含む各種溶媒のドナー数(DN)を示す図であり、図8は、図7に示す各種溶媒の化学式を示す図である。
図7は、本発明の実施の形態において、電解質膜の形成に際して使用される溶媒を含む各種溶媒のドナー数(DN)を示す図であり、図8は、図7に示す各種溶媒の化学式を示す図である。
溶媒のドナー数(DN)は溶媒分子の電子供与性の尺度としてGutmannによって定義された溶媒パラメータであり、基準のアクセプターとし、ジクロロエタン中10-3MのSbCl5を選び、ドナーとの反応のモルエンタルピー値(熱量測定によって得られる。)として定義さている。ドナー数の大きな溶媒ほどカチオン種に強く溶媒和しやすい。
電荷質膜の形成において、結着剤である高分子材料を溶解可能であり、イオン伝導体を分散又は溶解可能な溶媒として、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンのような塩基性溶媒がしばしば使用されるが、このようなドアー数の大きな塩基性溶媒はカチオンとの相互作用が強いため、解離したカチオンを溶媒和してしい、イオン伝導の妨げとなってしまう。
図14に示すように、N,N−ジメチルホルムアミドは、電解質のスルホン酸基と相互作用して水素結合を形成するため、N,N−ジメチルホルムアミドを使用して形成された電解質膜を真空乾燥したとしても、この相互作用のため容易に除去することはできず溶媒が残蔵するため、電解質膜のイオン伝導度が低下する原因となる。このような相互作用の影響を除去するためには、例えば、酸処理が必要となってしまう。また、N,N−ジメチルホルムアミドと、電解質である金属(M)の塩化物MClとの間では、オン双極子相互作用に基づく結合が生じてしまう。
従って、電解質膜のイオン伝導度の低下を抑制するためには、電解質膜の形成に使用する溶媒と、電解質のプロトン解離性基との相互作用がより小さなことが望ましく、後述するように、電解質膜の形成に使用する溶媒のドナー数が25以下であることが望ましい。
ドナー数が25以下である溶媒の具体例として、リン酸トリブチル、リン酸トリメチル、ジフェニルリン酸塩化、ジメトキシエタン、エタノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メタノール、フェニルリン酸二塩化物、ガンマ−ブチロラクトン、水、酢酸エチル、アセトン、N−ブチロニトリル、酢酸メチル、炭酸エチレン、フェニル亜リン酸二フッ化物、プロピオノニトリル、ベンゾフェノン、イソブチロニトリル、亜硫酸エチレン、プロピレンカーボネート、シアンカベンジル、スルホラン、ジオキサン、テトラメチレンスルホン、アセトニトリル、フェニルアセトニトリル、オキシ塩化セレン、ベンゾニトリル、オキシ塩化リン、炭酸1,2−ブチレン、無水酢酸、炭酸ジメチル、炭酸エチルイソプロピル、炭酸メチルブチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルブチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸メチルイソプロピル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、炭酸エチルプロピル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、塩化ベンゾイル、フッ化ベンゾイル、炭酸テトラクロロエチレン、塩化アセチル、塩化チオニル、ベンゼン、1,2−ジクロロエタンを挙げることができる。これらの溶媒は、単独、或いは、複数種類を混合して使用することができる。
このような溶媒を用いて形成された電解質膜のイオン伝導度は非常に高く、高性能な燃料電池等の電気化学デバイスを提供することが可能となる。
次に、イオン伝導体と溶媒の相互作用の影響、電解質膜の形成に使用した溶媒の影響、燃料電池の特性とその電解質膜の形成に使用された溶媒の影響を検討した実施例について説明する。
先ず、イオン伝導体と溶媒の相互作用の影響について説明する。
(イオン伝導体と溶媒の相互作用の影響)
[実施例1]
ここでは、イオン伝導体として先述したフラーレン誘導体を使用し、これと各種の溶媒との相互作用の影響について説明する。
[実施例1]
ここでは、イオン伝導体として先述したフラーレン誘導体を使用し、これと各種の溶媒との相互作用の影響について説明する。
フラーレン誘導体を各種の溶媒にそれぞれ分散した後、分散液から溶媒を100℃で真空乾燥によって除去した後に、圧粉体を作成し、この圧粉体を金電極に挟み複素インピーダンス法を用いてイオン伝導度σを測定した。測定結果を図9に示す。なお、この圧粉体は結着剤は含んでいない。
図9は、本発明の実施例において、フラーレン誘導体の圧粉体に残留する溶媒のイオン伝導度に及ぼす影響を説明する図である。図9において、横軸は溶媒のドナー数(DN)、縦軸は圧粉体のイオン伝導度σ(S/cm2)を示し、図中の各測定点の近傍に圧粉体の作製に使用した溶媒の名称を示す。
図9に示すように、圧粉体のイオン伝導度σの測定値は、楕円状の領域に分散しているが、Cを正の定数とするとき、DMC(ジメチルカーネート)を除き、近似直線、logσ=−C×DNによって示される。圧粉体のイオン伝導度σは、ドナー数(DN)の大きな溶媒を使用したほど小さく、使用した8種類の溶媒のイオン伝導度σは、1.2×10-6(S/cm2)〜3×10-3(S/cm2)の広い範囲の値を示している。ドナー数(DN)の大きな溶媒を使用して形成した電解質膜のイオン伝導度σも低いものとなると考えられる。
圧粉体のイオン伝導度σが使用したフラーレン誘導体に固有な一定値とならないことは、フラーレン誘導体の分散に使用した溶媒の種類によって、フラーレン誘導体との相互作用の大きさが異なり、圧粉体に残留する溶媒の量が異なっているものと考えられる。
このような溶媒とフラーレン誘導体との相互作用の相違による影響は、フラーレン誘導体を電解質とし結着剤を使用して電解質膜を形成する場合にも生じると想定され、電解質膜の形成に使用する溶媒によって、電解質膜のイオン伝導度に差を生じるものと予想される。
次に、図9に示した圧粉体のうち、溶媒としてピリジン、THF(テトラヒドロフラン)をそれぞれ使用して作製された圧粉体について、イオン伝導度の湿度依存性を測定した。
図10は、本発明の実施例において、フラーレン誘導体の圧粉体のイオン伝導度の湿度依存性を説明する図である。図10において、横軸は相対湿度(%)、縦軸は圧粉体のイオン伝導度(S/cm2)を示す。
図10に示すように、圧粉体のイオン伝導度は、湿度によって大きく変化することを示している。ピリジンを使用して作製された圧粉体のイオン伝導度の湿度による変化は、THFを使用して作製された圧粉体のイオン伝導度の湿度による変化と比較して、大きな変化を示している。
THFを使用して作製された圧粉体のイオン伝導度の湿度による変化は、2×10-3〜5×10-2と小さく、残存するTHFの量が少ないと考えられるのに対して、ピリジンを使用して作製された圧粉体のイオン伝導度の湿度による変化は、4×10-5〜5×10-3と大きく、残存するピリジンの量が多いと考えられる。また、THFピリジンを使用して作製された圧粉体のイオン伝導度は、ピリジンを使用して作製された圧粉体のイオン伝導度よりも大きな値を示している。
このように、圧粉体に残留する溶媒の種類によって、イオン伝導度の値、その湿度による変化の様相が大きく異なるものと予想される。
同様なことは、フラーレン誘導体を電解質とし結着剤を使用して形成された電解質膜に関しても生じると想定され、電解質膜の形成に使用する溶媒によって、電解質膜のイオン伝導度の湿度による変化に差を生じるものと予想され、電解質膜の残留する溶媒は、電解質膜中に水が存在しても電解質膜のイオン伝導度に大きく影響を与えると考えられる。
[実施例2]
ここでは、イオン伝導体として、スルホン酸基を導入したピッチ材料(以下、「スルホン化ピッチ」と呼ぶ。)を使用し、これと各種の溶媒との相互作用の影響について説明する。スルホン化ピッチは次のようにして合成されたものである。
ここでは、イオン伝導体として、スルホン酸基を導入したピッチ材料(以下、「スルホン化ピッチ」と呼ぶ。)を使用し、これと各種の溶媒との相互作用の影響について説明する。スルホン化ピッチは次のようにして合成されたものである。
コールタール(和光純薬製、10g)を丸底フラスコに量り取り、フラスコ内部を窒素フローにより置換し、フラスコごと氷浴につけ、攪拌子で緩やかに攪拌する。フラスコをよく氷浴させたまま、これにゆっくりと25%発煙硫酸(和光純薬製)200mLを発熱しないように注意深く滴下する。更に、フラスコを氷浴に付けたまま室温下にて激しく攪拌する。3時間後、フラスコを氷浴につけたまま、温度が過熱しないように注意深くイオン交換水(500mL)を加える。得られた懸濁液の遠心分離を行い、上澄みを除去する。このような、イオン交換水(500mL)を加え得られた懸濁液の遠心分離を行い上澄みを除去する操作(洗浄操作)を5回以上行う。上澄み水溶液から硫酸イオンが十分に除去されていることを確認した上で、得られた沈殿物を常温にて真空乾燥させることによって、黒色(やや茶褐色)の凝集物(7g)を得る。得られた凝集物を、ボールミル(フリッチュ社製)を用いて粉砕し、32μmのメッシュパスにより微粉末を回収した。
このようにして得られたスルホン化ピッチの有機元素分析の結果は、炭素(C)が44.5wt%、水素(H)が3.38wt%、硫黄(S)が14.97wt%、窒素(N)が0wt%であった。この分析結果から、硫黄(S)が全てスルホン化している場合にはスルホン酸密度が4.68mmol/gであると計算された。
実施例1と同様にして、実施例1で使用した図9に示した同種の各種溶媒のそれぞれに、スルホン化ピッチを分散した後、分散液から溶媒を100℃で真空乾燥によって除去した後に、圧粉体を作成し、この圧粉体を金電極に挟み複素インピーダンス法を用いてイオン伝導度σを測定した。測定結果を図10に示す。なお、この圧粉体は結着剤は含んでいない。
図11は、本発明の実施例において、スルホン酸基を導入したピッチ材料(スルホン化ピッチ)の圧粉体に残留する溶媒のイオン伝導度に及ぼす影響を説明する図である。図11において、横軸は溶媒のドナー数(DN)、縦軸は圧粉体のイオン伝導度(S/cm2)を示し、図中の各測定点の近傍に圧粉体の作製に使用した溶媒の名称を示す。
図11に示すように、圧粉体のイオン伝導度σの測定値は、楕円状の領域に分散しているが、DMC(ジメチルカーネート)を除き、図9(実施例1)に示す同じ近似直線、σ=−C×DNによって示される。
図9(実施例1)に示す結果と同様に、圧粉体のイオン伝導度σは、ドナー数(DN)の大きな溶媒を使用したほど小さく、使用した8種類の溶媒のイオン伝導度σは、3×10-6(S/cm2)〜3×10-3(S/cm2)の広い範囲の値を示している。この結果からも、ドナー数(DN)の大きな溶媒を使用して形成した電解質膜のイオン伝導度σも低いものとなると考えられる。
図9(実施例1)に示す結果と同様に、圧粉体のイオン伝導度σは、ドナー数(DN)の大きな溶媒を使用したほど小さく、使用した8種類の溶媒のイオン伝導度σは、3×10-6(S/cm2)〜3×10-3(S/cm2)の広い範囲の値を示している。この結果からも、ドナー数(DN)の大きな溶媒を使用して形成した電解質膜のイオン伝導度σも低いものとなると考えられる。
圧粉体のイオン伝導度σが使用したスルホン化ピッチに固有な一定値とならないことは、スルホン化ピッチの分散に使用した溶媒の種類によって、スルホン化ピッチとの相互作用の大きさが異なり、圧粉体に残留する溶媒の量が異なっているものと考えられる。
このような溶媒とスルホン化ピッチとの相互作用の相違による影響は、スルホン化ピッチを電解質とし結着剤を使用して電解質膜を形成する場合にも生じると想定され、電解質膜の形成に使用する溶媒によって、電解質膜のイオン伝導度に差を生じるものと予想される。
以上、図9、図10、図11によって説明したように、ドナー数が8以上、25以下である溶媒を使用することによって、プロトン伝導性複合電解質と溶媒との相互作用を小さくすることができるので、プロトン伝導性複合電解質を分散又は/及び溶解させた溶液を基体に塗布又は含侵させた後、引き続いて溶液を揮散除去させ電解質膜を形成した場合に、電解質膜に残存する溶媒を低下させることができ、プロトン伝導度が高く、燃料電池に好適なプロトン伝導性複合電解質膜を得ることができる。ドナー数が8以上、25以下である溶媒として、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジオキサン、γ-ブチロラクトン(GBL)、メタノール(MeOH)、テトラヒドロフラン(THF)、ホルムアミド(FA)を好適に使用することができる。
次に、電解質膜の形成に使用した溶媒の影響について説明する。
(電解質膜の形成に使用した溶媒の影響)
[実施例3]
ここでは、イオン伝導体として先述したフラーレン誘導体を使用し、フラーレン誘導体を使用した電解質膜の形成に使用した溶媒の影響について説明する。溶媒としてGBL(γ−ブチロラクトン)を使用し、溶媒としてDMF(ジメチルホルムアミド)を使用して形成された電解質膜を比較例とした。
[実施例3]
ここでは、イオン伝導体として先述したフラーレン誘導体を使用し、フラーレン誘導体を使用した電解質膜の形成に使用した溶媒の影響について説明する。溶媒としてGBL(γ−ブチロラクトン)を使用し、溶媒としてDMF(ジメチルホルムアミド)を使用して形成された電解質膜を比較例とした。
電解質膜は次のようにして作製した。フラーレン誘導体をガンマブチロラクトンに添加し2時間攪拌して分散させた。この分散液に対し、結着剤の含有量が30wt%になるように、結着剤としてPVdF−HFP共重合体(PVdF(90mol%)、HFP(10mol%)粉末を添加し、必要に応じてガンマブチロラクトンを添加して、80℃で3時間以上攪拌し、フラーレン誘導体を均一に分散させた。
このようにして得られたフラーレン誘導体及び結着剤を含む分散液を基材(ガラスを使用したが、ポリイミドフィルム、PETフィルム、PPフィルム等も使用することができる。)上にドクターブレードを用いて均一に伸ばし、クリーンベンチ中でゆっくりと加熱乾燥させ薄膜を形成させた。この薄膜を更に一晩100℃で減圧乾燥させた後、乾燥された薄膜を基材からはがして電解質膜を得た。
電解質膜の厚さは、上述の分散液中の結着剤の濃度(溶媒に対する結着剤の濃度、1wt%〜30wt%)、単位面積当たりの塗布量を変化させることによって、3μm〜50μm程度の範囲で制御することができる。なお、本実施例、比較例として共に、厚さ15μmの電解質膜を作製した。
溶媒を、ガンマブチロラクトンからジメチルホルムアミドに変更して、同様にして比較例とする電解質膜を作製した。
上記のようにして作製された電解質膜を、3点締めでトルクが一定になるように1対の金電極の間に挟み、測定セルを作製した。この測定セルを恒温・恒湿槽内に設置し、複素インピーダンス法を用いてイオン伝導度を測定した。イオン伝導度測定結果は、各湿度において恒温・恒湿槽内に設置後の、インピーダンスデータの時間変化がなくなるまで少なくとも3時間程度静置した後の値として採用した。この測定結果を図12に示す。
図12は、本発明の実施例において、フラーレン誘導体を用いた電解質膜のイオン伝導度の湿度依存性を説明する図である。図12において、横軸は相対湿度(%)、縦軸は電解質膜のイオン伝導度(S/cm2)を示す。図12中、△で示す上部の曲線が本実施例の電解質膜、□で示す下部の曲線が比較例の電解質膜に関するイオン伝導度を示す。
図12に示すように、ドナー数が26.6と大きい溶媒DMFを用いて作製した電解質膜のイオン伝導度は、ドナー数が18と小さい溶媒GBLを用いて作製した電解質膜のイオン伝導度測定と比較して、測定した湿度範囲の全域において大きく低下していることが分かる。このことは、このような電解質膜を実装した燃料電池の特性は大きく異なるものと予想される。
次に、本実施例、比較例による電解質膜を実装した燃料電池の特性と、電解質膜の形成に使用された溶媒の影響について説明する。
(燃料電池の特性とその電解質膜の形成に使用された溶媒の影響)
[実施例4]
実施例3による電解質膜(サイズ:14mm×14mm、厚さ15μm)に、触媒インクをカーボンペーパーに塗布して形成されたアノード側及びカソード側のガス拡散層(それぞれのサイズは10mm×10mmである。)を、130℃で15分間、0.5kNの圧力で接合して、膜電極接合体(電解質膜−触媒電極、MEA)を形成し、燃料電池を作成した。この燃料電池は、先述した図3に示す直接型燃料電池と基本的に同じ構成を有する。
[実施例4]
実施例3による電解質膜(サイズ:14mm×14mm、厚さ15μm)に、触媒インクをカーボンペーパーに塗布して形成されたアノード側及びカソード側のガス拡散層(それぞれのサイズは10mm×10mmである。)を、130℃で15分間、0.5kNの圧力で接合して、膜電極接合体(電解質膜−触媒電極、MEA)を形成し、燃料電池を作成した。この燃料電池は、先述した図3に示す直接型燃料電池と基本的に同じ構成を有する。
同様にして、上述の比較例による電解質膜をして、比較例の燃料電池を作製した。
作製された燃料電池のカソード側のガス拡散層に100%のメタノールを燃料として供給し、カソード側のガス拡散層に空気を自然吸気により供給して、燃料電池の特性を測定した。この結果を図13に示す。
図13は、本発明の実施例において、フラーレン誘導体を用いた電解質膜を用いた燃料電池の特性を説明する図である。図13において、横軸は電流密度(mA/cm2)、左側縦軸は出力電圧(V)、右側縦軸は電力密度(mW/cm2)示す。図13中、「△、▲」で示す上部の曲線が実施例3の電解質膜を使用した燃料電池、「□、■」で示す下部の曲線が上述の比較例の電解質膜を使用した燃料電池に関する特性を示す。
図13に示すように、
ドナー数が18と小さい溶媒GBLを用いて作製した実施例3の電解質膜を実装した燃料電池のセル抵抗は、ドナー数が26.6と大きい溶媒DMFを用いて作製した上述の比較例の電解質膜を実装した燃料電池のセル抵抗と比較して、電解質膜のイオン伝導度の違いにより、大きく変化しており、燃料電池の出力が向上している。
ドナー数が18と小さい溶媒GBLを用いて作製した実施例3の電解質膜を実装した燃料電池のセル抵抗は、ドナー数が26.6と大きい溶媒DMFを用いて作製した上述の比較例の電解質膜を実装した燃料電池のセル抵抗と比較して、電解質膜のイオン伝導度の違いにより、大きく変化しており、燃料電池の出力が向上している。
実施例3の電解質膜を実装した燃料電池の出力は、上述の比較例の電解質膜を実装した燃料電池の出力と比較すると、電流密度が100mA/cm2を超えるに従って顕著に上回っており、電流密度320mA/cm2では、電力密度は約1.4倍と大幅に向上している。
以上説明したように、電解質膜の形成に際して使用される溶媒の種類は、形成された電解質膜のイオン伝導度に大きく影響するので、溶媒の種類としてはドナー数が25以下のものが望ましい。このような溶媒を用いて電解質膜を形成することによって、電解質膜のイオン伝導性に影響を及ぼす、溶媒と電解質との相互作用を抑制することができ、電解質膜のイオン伝導度は非常に高くすることができ、このような電解質膜を使用した高性能な電気化学デバイスを提供することが可能となる。
なお、以上の説明では、フラーレン誘導体であるポリマー電解質を例にとって、電解質膜の形成に際して使用される溶媒として、電解質との相互作用が少ない、ドナー数が25以下である溶媒を使用することについて説明したが、電解質として、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質を用いた電解質膜の形成に際して使用される溶媒に関しても、同じように、プロトン伝導度の低下を抑制するために、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質との相互作用が少ない、ドナー数が25以下である溶媒が使用される。
以上、本発明を実施の形態、実施例について説明したが、本発明は上述の実施の形態、実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形が可能である。
例えば、電解質膜の形成に使用するイオン伝導体として、ルイス酸基をもつプロトン伝導性複合電解質、フラーレン誘導体スルホン化ピッチに限らず、カチオン解離性官能基を有するイオン伝導体に適用することができる。また、電解質膜の形成に使用する結着剤として、PTFE、PVDF)、PVdF−HFP共重合体等のフッ素系樹脂に限らず、その他の高分子樹脂を使用することができる。
本発明は、電気化学反応に基づく燃料電池等の発電装置に好適に使用することができる。
10a〜10d、12a〜12e…ポリマー骨格、10e連結鎖、20…アノード、
22a、22b…触媒電極、23…高分子電解質膜、24a、24b…ガス拡散層、
25…燃料、27a、26b…入口、27a、27b…通路、28a、28b…出口、
29a、29b…排ガス、30…カソード、35…空気又は酸素、40…膜電極接合体、
50…燃料供給部、60…空気又は酸素供給部
22a、22b…触媒電極、23…高分子電解質膜、24a、24b…ガス拡散層、
25…燃料、27a、26b…入口、27a、27b…通路、28a、28b…出口、
29a、29b…排ガス、30…カソード、35…空気又は酸素、40…膜電極接合体、
50…燃料供給部、60…空気又は酸素供給部
H. Suzuki et al.," Proton conducting borosiloxane solid electrolytes and their composites with Nafion.", Fuel Cells, 2002, 2, No.1, 46-51(2 Experimental)
T. Fujinami et al.,"Proton conducting borosiloxane-poly(ether-sulfone) composite electrolyte", Electrochimica Acta 50 (2004) 627 - 631(2 Experimental, 3 Results and discussion)
Y. Qin et al.,"Well-defined Boron-Containing Polymeric Lewis Acids", J. AM. CHEM. SOC., VOL.124, NO.43, 2002, 12672 - 12673(Scheme 1)
Claims (16)
- イオン解離性基を有する電解質と、
ルイス酸基を有する化合物と
を含有し、前記ルイス酸基を構成する電子受容性の原子と、前記イオン解離性基を構成する電子供与性の原子とが結合してなるイオン伝導性複合電解質。 - 前記イオン解離性基がプロトン解離性基である、請求項1に記載のイオン伝導性複合電解質。
- 前記化合物は、前記ルイス酸基を側鎖に複数個もつ重合体である、請求項2に記載のイオン伝導性複合電解質。
- 前記プロトン解離性基が、スルホン酸基(−SO3H)、ホスホン基(−PO(OH)2)、ビススルホンイミド基(−SO2NHSO2−)、スルホンアミド基(−SO2NH2)、カルボキシル基(−COOH)、ジホスホノメタノ基(=C(PO(OH)2)2)、及び、ジスルホノメタノ基(=C(SO3H)2)からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項2に記載のイオン伝導性複合電解質。
- 前記ルイス酸基を構成する電子受容性の原子がホウ素(B)又はアルミニウム(Al)である、請求項2に記載のイオン伝導性複合電解質。
- 前記電解質は、前記プロトン解離性基を有するフラーレン化合物、前記プロトン解離性基を有するフラーレン化合物を側鎖に複数個もつ重合体、前記プロトン解離性基を有するフラーレン化合物の複数個が連結されてなる重合体、及び、前記プロトン解離性基を側鎖に複数個もつ重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項4に記載のイオン伝導性複合電解質。
- 請求項1から請求項6の何れか1項に記載のイオン伝導性複合電解質よりなる電解質膜と、触媒金属を電気伝導性の担体に担持してなる触媒電極とを有し、前記電解質膜の両側に前記触媒電極が配置されてなる膜電極接合体。
- 前記触媒電極は、前記イオン伝導性複合電解質を含む、請求項7に記載の膜電極接合体。
- 請求項7又は請求項8に記載の膜電極接合体を使用してなり、前記電解質膜の両側に配された一対の前記触媒電極の一方で発生させたイオンを前記電解質膜によって他方の触媒電極へ移動させるように構成された電気化学装置。
- 燃料電池として構成された、請求項9に記載の電気化学装置。
- イオン伝導性複合電解質をドナー数が25以下である溶媒に添加して分散又は/及び
溶解させた溶液を調製する第1工程と、
前記溶液を基体に塗布又は含侵させる第2工程と、
この第2工程に続いて前記溶液を揮散除去させる第3工程と
を有するイオン伝導性複合電解質膜の製造方法。 - 前記第1工程において、前記ドナー数が8以上である前記溶媒を使用する、請求項11に記載のイオン伝導性複合電解質膜の製造方法。
- 請求項1から請求項6の何れか1項に記載のイオン伝導性複合電解質を使用する、請求項11に記載のイオン伝導性複合電解質膜の製造方法。
- 前記イオン伝導性複合電解質は、プロトン解離性基を有するプロトン伝導性複合電解質である、請求項11に記載のイオン伝導性複合電解質膜の製造方法。
- 前記第1工程において、前記イオン伝導性複合電解質と共に高分子バインダを前記溶媒に添加する、請求項11に記載のイオン伝導性複合電解質膜の製造方法。
- 前記イオン伝導性複合電解質を前記溶媒に分散させた分散液から前記溶媒を100℃で真空乾燥させて得られる粉体によって形成された圧粉体のイオン伝導度が1×10-4S/cmとなるような前記溶媒が前記第1工程において使用される、請求項11から請求項15の何れか1項に記載のイオン伝導性複合電解質膜の製造方法。
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