JP2010046952A - プラスチックメッキ体の製造方法及びプラスチックメッキ体 - Google Patents

プラスチックメッキ体の製造方法及びプラスチックメッキ体 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な工程で、表面平滑性を良好とし、メッキ密着強度が高く、耐熱性の良好なPAS樹脂のプラスチックメッキ体及びその製造方法の提供。
【解決手段】ポリアリーレンスルフィド(A)と、アミド基及び/又はイミド基を有するポリマー(B)と、を含む樹脂組成物からなるプラスチック成形体に、5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素を接触させる工程を用いてメッキを施すことを特徴とするプラスチックメッキ体の製造方法;該製造方法により得られるプラスチックメッキ体。
【選択図】なし

Description

本発明は、通常のメッキ前処理におけるエッチングに用いられるクロム硫酸溶液、アルカリ溶液などを使用する必要がなく、簡単な工程でメッキすることができる、ポリアリーレンスルフィドのプラスチックメッキ体の製造方法及び該方法により得られるプラスチックメッキ体に関する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PAS樹脂」という。)は高い融点と、優れた難燃性、耐薬品性を有し、成形時の流動性も良好であるため、主に射出成形用エンジニアリングプラスチックとして各種電子部品、機械部品、自動車部品に広く使われている。
近年、ランプリフレクター等、長期的な耐熱性が要求され、かつ表面を蒸着や塗装の手法を用いて鏡面化する用途にもPAS樹脂が応用されている。しかしながら、PAS樹脂にプライマー塗装を施さないと、鏡面膜とPAS樹脂との間に十分な密着性が得られない現状にある。また、プライマー塗装を施す場合には、加工工程が増加し、生産性が低下するといった問題があった。
一方、PAS樹脂に化学メッキを施す方法も検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、PAS樹脂にメッキを施すためには、PAS樹脂に酸またはアルカリに溶解する成分を含有させた組成物を製造し、該PAS組成物の成形品を作製して、その後、酸またはアルカリに接触させて酸またはアルカリに溶解する成分を溶解させるエッチング処理が必要であった。かかるエッチング処理により表面の微小な凹凸を形成させ、該凹凸にメッキ触媒を付与してメッキを施さなければ、十分な基材とメッキとの密着性が得られなかった。また、該凹凸に起因して、得られるメッキ面の平滑性が十分ではなく、更に、かかるエッチング処理に好適に用いられるクロム硫酸溶液は、メッキ後の廃液処理が必要であり、トータルでの生産性が低下するといった問題があった。
更に、簡便で、エッチング液の廃棄が問題とならない樹脂へのメッキ方法としては、超臨界媒体を用いるメッキ方法が提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。このメッキ方法は、超臨界二酸化炭素等の高圧二酸化炭素は表面張力が低く、プラスチックの自由体積内に速やかに浸透する性質を利用し、超臨界二酸化炭素にメッキの触媒核となる金属錯体を溶解させたものをプラスチック表面に浸透させ、金属錯体を固定化し、その後無電解メッキ液に浸漬させてエッチングレスでメッキ膜を形成する方法である。
しかしながら、超臨界二酸化炭素を用いたメッキ法を用いたとしても、PAS樹脂の極めて良好な耐薬品性や良好なバリヤ性に起因して、超臨界二酸化炭素に溶解する金属錯体のPAS樹脂に対する親和性が低く、樹脂内部に浸透及び固定化されないため、PAS樹脂とメッキ膜との密着性が低いという問題があった。
特開平5−320507号公報 特開2001−316832号公報 堀照夫,「超臨界流体を用いる高分子材料のめっき」,表面技術,第7−13頁,vol.56,No.2,2005年
本発明が解決しようとする課題は、通常のメッキ前処理においてエッチングに用いられるクロム硫酸溶液、アルカリ溶液などを使用する必要がなく、簡単な工程で、表面平滑性を良好とし、メッキ密着強度が高く、耐熱性の良好なPAS樹脂のプラスチックメッキ体及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)とを含む樹脂組成物を用いたプラスチック成形体に、特定の圧力範囲にある高圧二酸化炭素を接触させる工程を経てメッキを施こした場合に、表面平滑性が良好であり、メッキ密着強度が高く、耐熱性の良好なプラスチックメッキ体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(A)、並びにアミド基及び/又はイミド基を有するポリマー(B)を含む樹脂組成物からなるプラスチック成形体に、5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素を接触させる工程を用いてメッキを施すことを特徴とするプラスチックメッキ体の製造方法及び該製造方法によって得られるプラスチックメッキ体を提供するものである。
本発明によれば、表面平滑性、メッキ密着強度が良好で、かつ耐熱性の高いプラスチックメッキ体を提供することができる。
したがって、本発明のプラスチックメッキ体は、各種鏡面体に用いることができる。特に、耐熱性が要求されるリフレクタ類、例えば、プロジェクタ用リフレクタ、自動車ヘッドランプ用リフレクタ、LEDランプ用リフレクタ、非接触で物体の有無を検出する光センサであるフォトリフレクタ等に有用である。
次に、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを現すものではない。
本実施の形態が適用される二酸化炭素を用いたプラスチック成形体のメッキ方法(表面改質方法)は、高圧二酸化炭素に金属錯体等の改質材料を溶解させるステップと、該改質材料の溶解した高圧二酸化炭素をプラスチック成形体に接触させ、該改質材料を浸透させるステップからなる。改質材料に金属錯体を用いることで、金属錯体が無電解メッキの触媒核の前駆体となり、プラスチック内にエッチングレスで触媒となる金属微粒子を浸透させることができる。
前記改質材料としては、メッキ用触媒としての金属微粒子や他の金属微粒子、カーボン微粒子等が挙げられる。
ここで、メッキ用触媒としての金属微粒子としては、プラスチック表面へのメッキ反応を触媒する物質が挙げられる。通常は、酸化還元反応によりメッキするため、メッキ金属との酸化還元反応に適した触媒が用いられる。メッキ用触媒しては種々の金属が挙げられるが、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、すず、鉛、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、銅、銀、金、亜鉛、カドミウムなどが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を使用してもよい。メッキ用触媒は、金属の単体でもよいが、金属を含む化合物が好ましく、可溶性の金属を含む化合物が特に好ましい。
前記改質材料としての他の金属微粒子としては、銀等が挙げられる。銀を浸透させることにより、抗菌機能を有する樹脂成形品を得ることができる。
本実施の形態において、金属微粒子は、有機溶媒に均一分散させるために、有機保護基を有してもよい。ある種の有機金属錯体、金属アルコキシドは高圧二酸化炭素に溶解するので好適である。特に、フッソ化合物を配位子に有するフッソ含有金属錯体が特に高い溶解度を有するため、金属微粒子をプラスチック内部に高効率にて浸透させることができるので望ましい。
本実施の形態において、前記改質材料は有機溶媒中に分散可能なナノカーボンであってもよい。ナノカーボンとして、単層または多層のカーボンナノチューブまたはカーボンファイバーを用いることで導電性、及び強度の高い樹脂成形体を得ることができる。また、フラーレンを用いることで、摩擦摺動特性等の優れた成形品を得ることができる。
上記ナノカーボンを高圧二酸化炭素へ溶解、分散させるために、公知の物理、化学修飾を用いてもよい。例えば、カーボンナノチューブを強酸中にて超音波振動を与えることで、末端にカルボキシル基が現れ、それを基点にニトロ基等を修飾することで高圧二酸化炭素に可溶化することができる。
本実施の形態において、プラスチック成形体を改質する高圧容器もしくは金型の形態は特に限定されないが、通常、バッチ処理における高圧容器、射出成形における金型等を採用することができる。または、射出成形における加熱溶融シリンダー、押し出し成形における加熱シリンダーやダイ等、溶融状態の樹脂が内包された箇所でもよい。成形機の加熱シリンダーにおける溶融樹脂に改質材料の溶解した高圧二酸化炭素を導入することで、射出成形や押し出し成形と同時にプラスチックを改質できるのでコスト低減が可能となる。
本発明において用いる二酸化炭素は金属錯体等の溶解度を得るため、密度の高いことが必要である。そのため圧力はある種の金属錯体を溶解せしめる5MPa以上が必要である。望ましくは臨界点を超えた7.38MPa以上である。また、高圧容器の圧力保持やシールが困難になることから35MPa以下が必要である。
高圧二酸化炭素の温度は密度が高くなる観点からは低いほうが好適であるが、温度が低すぎると二酸化炭素を冷却するためのコストが高くなる、或いはプラスチックへの浸透性が低下する等の問題が生じることから10℃以上が望ましい。より望ましくは臨界点を超えた31℃以上である。温度が高すぎると金属錯体が熱分解してしまい二酸化炭素に不溶になるリスクがあることから200℃以下が望ましい。
本発明においては、高圧二酸化炭素に対する溶解度を高める目的で、有機溶媒を助溶媒として用いてもよい。本発明に用いる有機溶媒は二酸化炭素に相溶させることができれば任意であるが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の各種アルコール類、ヘキサン、アセトン、トルエン等を用いることができる。環境負荷低減の観点より、エタノール、プロパノールがより望ましい。なお、高圧二酸化炭素と有機溶媒を混合させるため、攪拌機を用いてもよい。
本発明におけるプラスチック成形体のメッキ法においては、金属錯体等を前駆体とした金属触媒を高圧二酸化炭素に溶解させてプラスチック内部に浸透させた後、高圧二酸化炭素を無電解メッキ液に混合してプラスチックに接触させてもよい。メッキ液の表面張力が低減し、プラスチック表面が高圧二酸化炭素の接触により膨潤するので、メッキ液がプラスチック内部に浸透する。その後、プラスチック内部の金属触媒を利用し、プラスチック内部より無電解メッキが成長し表面を導体化できる。そして、プラスチック内部にメッキ膜が混在した層が形成され、強固なアンカー効果が発現する。本高圧二酸化炭素を用いたメッキ法は、特にポリマー(B)に対して有効である。ポリマー(B)は、高圧二酸化炭素の溶解したメッキ液の浸透性や親和性が高く、金属膜との接着性に影響する濡れ性がポリマー(A)よりも高いためと考えられる。よって、プラスチック表面のポリマー(B)の体積比率が大きいほど、メッキ膜の密着強度向上が期待できる。
本発明のメッキ方法は、上記高圧二酸化炭素を用いた無電解メッキを施す以外に、通常のメッキ処理により行うことができるが、メッキ処理としては導体化するために、無電解メッキ処理が好ましい。無電解メッキとしては任意であり、公知であるCu、Ni、Ag、Au、Pd、Coメッキ等を施すことができる。またさらに通常のCuやNi、Ag、Cr等の電解メッキにより金属膜の膜厚を形成することができる。電解メッキは無電解メッキの薄膜上に5μm以上の金属の厚膜を容易に形成可能である。それによりプラスチック成形体の熱伝導性、機械強度や電気伝導性を向上させることができる。本発明におけるプラスチック基材は耐熱性に優れるので、厚い電解メッキ膜を形成することにより、より一層高い温度での仕様環境に耐えうる放熱プラスチック部品が創製できる。
次に、本発明に使用するポリアリーレンスルフィド樹脂(A)(以下、「PAS樹脂(A)」という。)は、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記構造式(1)で表される構造部位を繰り返し単位とする樹脂である。
Figure 2010046952
(式中、R及びRは、それぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)
ここで、前記構造式(1)で表される構造部位は、特に該式中のR及びRは、前記PAS樹脂(A)の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記構造式(2)で表されるパラ位で結合するもの、及び下記構造式(3)で表されるメタ位で結合するものが挙げられる。
Figure 2010046952
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記構造式(2)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記PAS樹脂(A)の耐熱性や結晶性の面で好ましい。
また、前記PAS樹脂(A)は、前記構造式(1)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(4)〜(7)で表される構造部位を、前記構造式(1)で表される構造部位との合計の30モル%以下で含んでいてもよい。特に本発明では下記構造式(4)〜(7)で表される構造部位は10モル%以下であることが、PAS樹脂(A)の耐熱性、機械的強度の点から好ましい。また、前記PAS樹脂(A)中に、下記構造式(4)〜(7)で表される構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
Figure 2010046952
また、前記PAS樹脂(A)は、その分子構造中に、下記構造式(8)で表される3官能性の構造部位、或いは、ナフチルスルフィド結合などを有していてもよいが、他の構造部位との合計モル数に対して、3モル%以下が好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
Figure 2010046952
かかるPAS樹脂(A)は、例えば下記(1)〜(3)によって製造することができる。
(1)N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法。
(2)p−ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法。
(3)p−クロルチオフェノールの自己縮合による方法。
これらの中でも(1)のN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が反応の制御が容易であり、工業的生産性に優れる点から好ましい。ここで、前記(1)の方法において、前記硫化ナトリウムは市販のものを用いてもよいし、或いは、予めアミド系溶剤やスルホン系溶媒中で、水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムとを反応させるか、または、硫化水素と水酸化ナトリウムとを反応させて、硫化ナトリウムを生成させて、次いで、p−ジクロルベンゼンを反応系内に加えて重合を行う方法を採用してもよい。また、前記(1)の方法において、硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる際には、重合度を調節するためにカルボン酸のアルカリ金属塩やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリを添加することが好ましい。
また、前記PAS樹脂(A)の中でも特に成形物の機械的強度、芳香族ポリアミド(B)の分散能に優れ、成形物の耐熱性が飛躍的に向上する点から実質的に線状構造を有する所謂リニア型ポリアリーレンスルフィド樹脂であることが好ましい。具体的には、非ニュートン指数が1.3〜0.9のもの、特に1.2〜1.0であることが好ましい。
ここで、前記非ニュートン指数とは、前記PAS樹脂(A)をキャピラリーレオメーターにて、温度300℃の条件下、直径1mm、長さ40mmのダイスを用いて100〜1000sec−1の剪断速度に対する剪断応力を測定し、これらの対数プロットした傾きから計算した値である。
また、前記PAS樹脂(A)は、芳香族ポリアミド(B)との相溶性の点から、メルトフローレートが、1〜3000g/10分、更に好ましくは10〜1500g/10分の範囲にあるものが好ましい。なお、当該メルトフローレートは、ASTM D1238−86による316℃/5000g荷重下(オリフィス:0.0825±0.002インチ径×0.315±0.001インチ長さ)で測定した値である。
更に、前記PAS樹脂(A)は、バリの発生を抑制して成形性を向上させる点から、前記したリニア型ポリアリーレンスルフィド樹脂に、前記構造式(8)で表されるような多分岐構造を有する分岐状ポリアリーレンスルフィド樹脂を少量配合して粘度調整することが好ましく、この場合、混合物の状態で非ニュートン指数が1.3〜0.9であって、かつ、メルトフローレートが10〜1500g/10分のものであることが好ましい。
ここで、上記したリニア型ポリアリーレンスルフィド樹脂は、例えば、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属過硫化物、酢酸ナトリウム三水和物等のアルカリ金属カルボン酸、有機アミドの混合物に、p−ジハロゲンベンゼンを、加え反応させる方法が挙げられる。
以上詳述したPAS樹脂(A)は、更に、残存金属イオン量を低減して耐湿特性を改善するとともに、重合の際副生する低分子量不純物の残存量を低減できる点から、該PAS樹脂(A)を製造した後に、酸で処理し、次いで、水で洗浄されたものであることが好ましい。
ここで使用し得る酸は、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸、プロピル酸がPAS樹脂(A)の分解することなく残存金属イオン量を効率的に低減できる点から好ましく、なかでも酢酸、塩酸が好ましい。
酸処理の方法は、酸または酸水溶液にPAS樹脂を浸漬する方法が挙げられる。この際、必要に応じさらに攪拌または加熱してもよい。
ここで、前記酸処理の具体的方法は、酢酸を用いる場合を例に挙げれば、まずpH4の酢酸水溶液を80〜90℃に加熱し、その中にPAS樹脂(A)を浸漬し、20〜40分間攪拌する方法が挙げられる。
このようにして酸処理されたPAS樹脂(A)は、残存している酸または塩等を物理的に除去するため、次いで、水または温水で数回洗浄する。このときに使用される水としては、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
また、前記酸処理に供せられるPAS樹脂(A)は、粉粒体であることが好ましく、具体的には、ペレットのような粒状体でも、重合した後のスラリ−状態体にあるものでもよい。
次に、本発明に使用するアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)としては、ポリアミドやポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。PAS樹脂(A)とポリマー(B)との併用により、表面平滑性、メッキ密着強度が良好で、かつ耐熱性の高いプラスチックメッキ体が得られる。耐熱性と成形性、PAS樹脂(A)との相溶性、コストの面から、芳香族ポリアミドが特に好ましい。
芳香族ポリアミドとしては、特に、テレフタル酸アミドを必須の構造単位として分子構造中に有するものが好ましい。このようなテレフタル酸アミドを必須の構造単位とする場合に、その剛直な分子構造に起因して、特に優れた耐熱性と機械的強度を樹脂組成物に付与することができる。
ここで、芳香族ポリアミドに好ましい構造単位であるテレフタル酸アミド構造は、具体的には、下記構造式aで表される構造部位が挙げられる。
Figure 2010046952
前記構造式a中、Rは炭素原子数2〜12アルキレン基を表す。かかるテレフタル酸アミド構造は、具体的には、テレフタル酸、またはテレフタル酸ジハライドと、炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンとの反応によって形成されるものである。ここで用いる炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンは、具体的には、エチレンジアミン、プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族アルキレンジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環族ジアミン類が挙げられる。
これらの中でも特に耐湿性と機械的強度の点から炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン、炭素原子数5〜10の分岐鎖状脂肪族アルキレンジアミンが好ましい。
また、前記芳香族ポリアミドは、テレフタル酸アミド構造の他に、下記構造式bで表されるイソフタル酸アミド構造を有することが、前記芳香族ポリアミド自体の融点を下げてPAS樹脂(A)との相溶性を改善できる点から好ましい。
Figure 2010046952
(式中、Rは構造式aのおけるRと同義である。)
更に、前記芳香族ポリアミドは、テレフタル酸アミド構造の他に、下記構造式cで表される酸アミド構造を有していてもよい。
Figure 2010046952
(式中、Rは構造式aのおけるRと同義であり、Rは、テレフタル酸またはイソフタル酸の他の芳香族炭化水素基または炭素原子数4〜10の脂肪族炭化水素基を表す。)
ここで、上記構造式cで表される酸アミド構造は、テレフタル酸若しくはイソフタル酸の他の芳香族ジカルボン酸、または、炭素原子数4〜10の脂肪族ジカルボン酸、その酸エステル化物、その酸無水物、またはその酸ハライドと、炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンとの反応によって形成されるものである。ここで用いるテレフタル酸若しくはイソフタル酸の他の芳香族ジカルボン酸は、具体的には、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、9−オキソフルオレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、アントラキノンジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸、テルフェニルジカルボン酸、クアテルフェニルジカルボン酸、アゾベンゼンジカルボン酸等のジカルボン酸類が挙げられる。
また、炭素原子数4〜10の脂肪族ジカルボン酸は、具体的には、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられる。
上記したテレフタル酸若しくはイソフタル酸の他の芳香族ジカルボン酸、または、炭素原子数4〜10の脂肪族ジカルボン酸の酸エステル化物は、具体的には、メチルエステル体、エチルエステル体、t−ブチルエステル体等が挙げられ、また、前記芳香族ジカルボン酸または前記脂肪族ジカルボン酸の酸ハライドを構成するハロゲン原子は臭素原子、塩素原子が挙げられる。
前記芳香族ポリアミド中のテレフタル酸アミド構造の含有率が、該芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸残基の総数に対して、50モル%以上となる割合であることが、耐熱性改善の効果が顕著になる点から好ましい。ここで、ジカルボン酸残基とは、前記芳香族ポリアミドの原料として用いたジカルボン酸に起因する構造部位であり、その総数は前記芳香族ポリアミドを製造する際のジカルボン酸の仕込み総数に等しい。
更に前記芳香族ポリアミドは、耐熱性と耐湿性とのバランスから
前記構造式aで表されるテレフタル酸アミド構造を65〜95モル%、
前記構造式cで表される酸アミド構造を35〜5モル%で構成されるポリアミド(b1)、或いは、
前記構造式aで表されるテレフタル酸アミド構造を50〜70モル%、
前記構造式bで表されるイソフタル酸アミド構造を1〜50モル%、
前記構造式cで表される酸アミド構造を1〜50モル%、
で構成されるポリアミド(b2)が好ましい。
特に、構造式cとして、アジピン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸由来の酸アミド構造を有することが好ましい。この場合に、特に成形品表面にポリアミドが多くなる傾向があり、メッキの密着性が良好となる。
また、前記芳香族ポリアミドは、前記PAS樹脂(A)への分散性の点から融点290〜330℃、また、Tg90〜140℃であることが好ましい。
本発明に使用する芳香族ポリアミドは、例えば、以下の(1)〜(3)の方法によって製造することができる。
(1)テレフタル酸を含むジカルボン酸成分の酸ハライドと、炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンを含むジアミン成分とを、お互いに相溶しない二種の溶媒に溶解した後、アルカリおよび触媒量の第4級アンモニウム塩の存在下に2液を混合、撹拌して重縮合反応を行う界面重合法。
(2)テレフタル酸を含むジカルボン酸成分の酸ハライドと、炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンを含むジアミン成分とを第3級アミンなどの酸を受容するアルカリ性化合物の存在下、有機溶媒中で反応せしめる溶液重合法。
(3)テレフタル酸を含むジカルボン酸成分のジエステル化物と、芳香族ジアミンを原料として溶融状態でアミド交換反応する溶融重合法。
また、本発明のPAS樹脂(A)を含む樹脂組成物では、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の合計100質量部に対し、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)が30質量部以上80質量部以下の範囲にあることが好ましく、特に、35質量部以上60質量部以下の範囲にあることが好ましい。該範囲にある場合に、特に、メッキ密着性と耐熱性のバランスが良好となる。
更に、プラスチックメッキ体のメッキ前の成形品表面において、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の量が、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の合計100面積%に対し、30〜100面積%の範囲であることが好ましい。特に、50〜100面積%の範囲にあることが好ましい。アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の量が、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の合計100面積%に対し、30面積%以上である場合、特に、50面積%以上である場合にメッキ密着性が特に良好である。
なお、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の面積%の他の算出方法としては、成形品表面を含む断面を観察した写真を用いる方法がある。例えば、成形品表面を含む断面を、アルゴンエッチング等で平滑化して、前記評価方法と同様にコントラストをつけて観察した画像を用いる方法である。この場合、成形品表面は画像上、線になるので、線上のPAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の分率を求め、該分率から面積率に換算することができる。樹脂組成物中に無機フィラーが含まれる場合には、表面観察からは組成の判別が困難な場合があり、本法のように断面側から表面の組成を確認する方が好ましい。
特に、PAS樹脂(A)を含む樹脂組成物の、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の含有量が、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の合計100質量部に対しX質量部であって、該組成物を用いたプラスチックメッキ体のメッキ前の成形品表面における、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の量が、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の合計100面積%に対し、X+10面積%以上であることが好ましい。この場合に、成形品のコア部がPAS樹脂(A)を表面より多く含有し、表面が、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)をコア部より多く含有する傾斜構造を達成することから、特に、PAS樹脂(A)の高い耐熱性をコア部で発現しながら、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)のメッキとの親和性によりメッキ密着性を向上させることができる。
本発明のプラスチックメッキ体では、メッキ前の成形品表面において、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)とのモルフォロジーは、特に限定されないが、海島構造をとる場合には、島状分散体の平均粒径が5μm以下であることが好ましい。特に、島状分散体の平均粒径が3μm以下であることが好ましい。この範囲にある場合に、特に、メッキ密着性が良好となる。特に、成分(A)が島、成分(B)が海となることが好ましい。
PAS樹脂(A)の好ましい溶融粘度は、温度340℃、せん断速度100sec−1において20Pa・s〜1000Pa・sであり、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の好ましい溶融粘度は、温度340℃、せん断速度100sec−1において20Pa・s〜500Pa・sである。PAS樹脂(A)及びアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の溶融粘度がこれらの範囲にある場合に、射出成形により成形体を作製する際の成形性が良好であり、且つ、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との相溶性が良好となり易い。
本発明における、温度340℃、せん断速度100sec−1における、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との溶融粘度比(A)/(B)は、0.8〜50の範囲であることが好ましくい。本発明者らが鋭意検討した結果、該範囲の粘度比にある場合に、特に、成形品表面のアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の含有量が多くなり、且つ、成形品表面において、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)が海島構造をとり、且つ、該島状分散体の平均粒径が5μm以下になり易いので、メッキ密着性が良好となる。
特に、温度340℃、せん断速度100sec−1における、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との溶融粘度比(A)/(B)が5〜50の範囲であることが好ましい。該範囲にある場合に特に、成形品のコア部がPAS樹脂(A)を表面より多く含有し、表面が、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)をコア部より多く含有する傾斜構造を達成し易い。
本発明の樹脂組成物には、更にエポキシ基及び/またはアミノ基を有するオルガノシラン化合物を併用することが、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との相溶性が飛躍的に向上し、良好なモルフォルジーを形成することによって、耐熱性に優れ、メッキの密着性が良好となる点から好ましい。
ここで前記エポキシ基及び/またはアミノ基を有するオルガノシラン化合物は、エポキシ構造含有基及び/またはアミノ基と2個以上のアルコキシ基とが珪素原子に結合した構造を有するシラン化合物であり、前記エポキシ構造含有基はグリシドキシアルキル基、3,4−エポキシシクロヘキシルアルキル基が挙げられる。また、これらの構造中に存在するアルキル基は炭素原子数1〜4の直鎖型アルキル基であることが好ましく、一方、前記アルコキシ基は具体的にはメトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。
このようなオルガノシラン化合物は、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びエポキシ基及び/またはアミノ基を有するシリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルは炭素原子数2〜6アルコキシ基を繰り返し単位として2〜6単位で構成されるポリアルキレンオキシ基を有する化合物が挙げられる。前記エポキシ基及び/またはアミノ基を有するオルガノシラン化合物のなかでも、特に、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との相溶性向上の効果が顕著である点からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランに代表されるグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン化合物が好ましい。
前記オルガノシラン化合物の配合量は、前記PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との合計量100質量部に対し、0.01〜5質量部であることが好ましく、特に0.1〜2質量部であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物には、更に繊維状強化材及び/または無機質フィラーを配合することが成形物の機械的強度や表面平滑性等の外観の点から好ましい。
前記繊維状強化材は、例えば、ガラス繊維、PAN系またはピッチ系の炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、チタン酸カリウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真ちゅう等の金属の繊維状物の無機質繊維状物質、及びアラミド繊維等の有機質繊維状物質等が挙げられる。
また、無機質フィラーは、例えば、マイカ、タルク、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、クレー、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、ゼオライト、パイロフィライトなどの珪酸塩や炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化鉄などの金属酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムなどが挙げられる。これらの繊維状強化材、無機質フィラーは、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
本発明に使用する繊維状強化材及び/または無機質フィラーの配合量は、PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との合計量100質量部に対し、1〜200質量部の範囲であること、特に20〜120質量部の範囲であることが好ましい。また繊維状強化材及び/または無機質フィラーは、本発明の耐熱性樹脂成形物品の性能を損なわない範囲で、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤等の表面処理剤で表面処理を施したものであってもよい。
更に、本発明の耐熱性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、加工熱安定剤、可塑剤、離型剤、着色剤、滑剤、耐候性安定剤、発泡剤、防錆剤、ワックスを適量添加してもよい。
更に本発明の耐熱性樹脂組成物は、更に、要求される特性に合わせてその他の樹脂成分を適宜配合してもよい。ここで使用し得る樹脂成分としては、エチレン、ブチレン、ペンテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどの単量体の単独重合体または共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレ−ト・ポリエチレンテレフタレ−ト等のポリエステル、ポリアセタ−ル、ポリカ−ボネ−ト、ポリサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエ−テルサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエ−テルケトン、ポリエ−テルエ−テルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエ−テルイミド、シリコ−ン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、液晶ポリマー、ポリアリールエーテルなどの単独重合体、ランダム共重合体またはブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。
以上詳述した耐熱性樹脂組成物を製造する方法は、具体的には、前記PAS樹脂(A)及びアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)を、更に必要に応じてその他の配合成分をタンブラーまたはヘンシェルミキサーなどで均一に混合、次いで、2軸押出機に投入し、樹脂成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.02〜0.2(kg/hr・rpm)なる条件下に溶融混練する方法が挙げられる。かかる条件下に製造することによって前記PAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との相溶性を良好にすることができる。
上記製造方法につき更に詳述すれば、前記した各成分を2軸押出機内に投入し、設定温度330℃、樹脂温度350℃程度の温度条件下に溶融混練する方法が挙げられる。この際、樹脂成分の吐出量は回転数250rpmで5〜50kg/hrの範囲となる。なかでも特に分散性の点から20〜35kg/hrであることが好ましい。よって、樹脂成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)は、特に0.08〜0.14(kg/hr・rpm)であることが好ましい。また、2軸押出機のトルクは最大トルクが20〜100(A)、特に25〜80(A)となる範囲であることがPAS樹脂(A)とアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)との相溶性が良好となる点から好ましい。
また、前記配合成分のうち繊維状強化材は、前記2軸押出機のサイドフィーダーから該押出機内に投入することが該繊維状強化材の分散性が良好となる点から好ましい。かかるサイドフィーダーの位置は、前記2軸押出機のスクリュー全長に対する、押出機樹脂投入部から該サイドフィーダーまでの距離の比率が、0.1〜0.6であることが好ましい。中でも0.2〜0.4であることが特に好ましい。
このようにして溶融混練された耐熱性樹脂組成物はペレットとして得られ、次いで、これを成形機に供して溶融成形することにより、目的とする成形物が得られる。
ここで溶融成形する方法は、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形等が挙げられるが、このうちメッキを施す成形体を得る方法としては射出成形が特に好ましい。特に、金型キャビティー内に表面の面粗さが、Ra値で30nm以下の面を有する金型を用いて成形することが好ましく、該金型を用いた場合に成形品の面粗さも小さくなり、メッキ後の表面粗さも小さくなりやすい。成形品の面粗さはRa値で20nm以下であることが好ましい。
本発明のプラスチックメッキ体の用途としては、各種鏡面体が挙げられる。特に、本発明のプラスチックメッキ体の用途としては、耐熱性が要求されるリフレクタ類、例えば、プロジェクタ用リフレクタ、自動車ヘッドランプ用リフレクタ、LEDランプ用リフレクタ、非接触で物体の有無を検出する光センサであるフォトリフレクタ、等が挙げられる。
以下に実施例に基づき本実施の形態をより具体的に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されない。
[原料ポリマーの溶融粘度の測定方法]
キャピラリーレオメーターを用いて、330℃で、せん断速度100sec−1の溶融粘度を測定した。
(実施例1〜10、及び、比較例1〜3)
[樹脂組成物のペレットの製造方法]
後記の表1に記載する配合比率に従い、ポリアリーレンスルフィド樹脂、芳香族ポリアミド及びその他配合材料(ガラス繊維チョップドストランドを除く)をタンブラーで均一に混合した。その後、東芝機械(株)製ベント付き2軸押出機「TEM−35B」に前記配合材料を投入し、また、サイドフィーダー(スクリュー全長に対する樹脂投入部から該サイドフィーダーまでの距離の比率:0.28)から繊維径7μm、長さ3mmのガラス繊維チョップドストランドを所定の割合で供給しながら、樹脂成分吐出量25kg/hr、スクリュー回転数250rpm、樹脂成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)=0.1(kg/hr・rpm)、最大トルク65(Å)、設定樹脂温度310〜330℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。
[樹脂組成物のペレットを用いたプラスチック成形体の製造方法]
樹脂組成物ペレットを、スクリュー径:26.0mm射出成形機を用いて、シリンダー温度330℃、金型温度150℃で射出成形して、プラスチック成形体を得た。用いた成形体の形状は下記の通りである。
(1)メッキ密着性、表面平滑性、成分(B)表面面積率、表面島平均粒径の評価用
精密研磨した後にDLC(コーティング)を施し、面粗度Raが10nmのキャビティーを片面に有する金型を用いて成形した、100mmφで、厚さ3mmの円板。
(2)耐熱性評価用
125mm×12.5mm×3.1mmの角棒。
次いで、このプラスチック成形体を用いて以下の各種評価試験を行った。
[メッキ密着性の評価方法]
上記円板状の成形品から、幅15mm、長さ90mmの短冊状の試験片を切り出した。次に後述する高圧二酸化炭素を用いたメッキ法にてニッケル・リンの無電解メッキ膜を形成した。ニッケル・リンの無電解メッキ金属膜は、まず、後述する方法により高圧二酸化炭素に溶解させた金属錯体を原料とする触媒を浸透させ、次に高圧二酸化炭素を用いたメッキ法によりおよそ1μm形成した。
その後、二酸化炭素を排出する目的で、試験片を150℃で1時間乾燥させ、次にニッケル・リン膜表面の酸化膜を除去する目的で1Nの塩酸溶液中に1分間浸漬した。その後、公知の電解メッキ法により、ニッケル・リン膜上にニッケルメッキ膜を50μm形成し、さらに80℃で1時間乾燥させた。
次いで、プラスチック試験片上のニッケルの金属膜をカッターで10mm幅90mm長さに切断した。10mm幅に切り出された金属膜の試験片末端部をプラスチック表面から20mm剥離させた。金属膜の剥離部を垂直引張試験機((株)島津製作所製「オートグラフAGS−100NJ」)にて試験片に対し垂直に引張り、メッキ膜の密着強度(単位:N/cm)を測定した。
上記で得られた密着強度の値から、以下の基準でメッキ密着性を評価した。
◎:密着強度が5以上である。
○:密着強度が3以上5未満である。
×:密着強度が3未満である。
[表面平滑性の評価方法]
メッキ後の成形品表面を段差・表面粗さ(あらさ)・微細形状測定装置(KLA−Tencor社製「P−16+」)にて算術平均粗さ(Ra)(単位:nm)を測定した。20mmの測定長さの平均値を測定した。得られた表面粗さ(Ra)の値から、以下の基準で表面平滑性を評価した。
◎:表面粗さ(Ra)が10以下である。
○:表面粗さ(Ra)が10を超えて20以下である。
×:表面粗さ(Ra)が20を超える。
[成形品表面の成分(B)の面積率の評価方法]
成形品表面を含む断面ができるように、機械的に切削し、その後、アルゴンエッチングにより、断面を平滑化した。次に、該成形品表面を白金で約10nm厚みに蒸着した。次いで、走査型電子顕微鏡(SEM;日本電子社製「JSM−636OA」)を用いて、スポットサイズを55〜60に上げて、成形品表面を含む断面のフォルフォロジーを観察した。コントラストの明確な画像の中で、暗色部をアミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)の部位と判定した(概ね3段階の明暗があり、最も明色の部位は無機フィラー、中間明度の部位はPAS樹脂(A)と断定した)。面積率は、断面写真の中の表面の部分を測定部位として、アミド基、イミド基のうちの少なくとも1種類の官能基を有するポリマー(B)になっている長さをBμm、PAS樹脂(A)の長さをAμmと測定された場合に、B/(A+B)[%]の計算式より算出した。
[成形品表面の島分散体粒子径の評価方法]
成形品表面のモルフォロジーが海島分散である場合に、前記成形品表面の成分(B)の面積率の評価で得られたSEMのコントラスト像の電子写真を用いて、島状分散体(無機フィラー以外)の直径を測定し、体積平均粒子径を算出した。
[耐熱性の評価方法]
前記125mm×12.5mm×3.1mmの角棒を用い、ASTM D790に準じて、180℃における曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。得られた曲げ弾性率の値から、以下の基準で耐熱性を評価した。
◎:曲げ弾性率が2.5以上である。
○:曲げ弾性率が2以上2.5未満である。
×:曲げ弾性率が2未満である。
[表面改質方法とメッキ方法]
表面改質装置を用いてプラスチック成形体の表面を改質した。本実施例においては、プラスチック内部に金属微粒子を浸透させた後、高圧二酸化炭素を用いた無電解メッキ法によりプラスチック内よりメッキ膜を成長させた。初めに、表面改質装置について説明する。
本実施例においては、図1に示す同じ装置構成で高圧容器の内容積が異なる2種類の装置を用いた。第一の装置における高圧容器1の内容積は200mlであり、金属錯体を高圧二酸化炭素に溶解させてプラスチック基材にメッキの触媒核を付与する触媒付与の装置である。第二の装置は高圧容器の内容積は1000mであり、無電解メッキ液と高圧二酸化炭素を混合して、第一の装置にて処理したプラスチック基材に接触させることにより、メッキ液をプラスチック内部に浸透させてメッキ膜を成長させる装置である。
本実施例に用いた図1に示す高圧装置は高圧容器1、シリンジポンプ3(ISCO社製、260D)、回収容器11、手動バルブ13、14,15、背圧弁16、圧力計5、7、安全弁23から構成される。まず、シリンジポンプ3を用いて二酸化炭素を加圧する。サイフォン式の二酸化炭素ボンベ8より、圧力4〜6MPaの液体二酸化炭素はフィルター12を介しシリンジプンプ3のヘッド29に吸引され、次いで所定圧力に加圧される。ヘッド29は二酸化炭素の密度が安定になるように、冷却ジャケット17により10℃に冷却されている。所定圧力に保持された液体二酸化炭素は、手動バルブの開放により、導入口18より高圧容器1の内部9に導入される。高圧容器1は、容器本体2とシール6の内蔵された容器蓋4より構成され、加熱ジャケット10により所定の温度に保持されている。容器底面には図示しないマグネチックスターラで回転し、内部9を攪拌する攪拌子22が内蔵されている。高圧容器1の内部圧力は圧力計5によりモニターされ、導入圧力である15MPaよりも過剰な圧力である18MPaに到達した際は、安全弁23が作動する。
二酸化炭素に可溶な改質材料を回収する際は、高圧容器1の出口19より背圧弁16を通じて、高圧二酸化炭素を流動させ回収容器11に回収する。まず、背圧弁16の設定を圧力計7の表示を監視しながら高圧容器1の内圧と同圧に保持するようにしておく。それにより、高圧容器1の所定内圧を越えた分の過剰な二酸化炭素は回収容器11に排出される。次に、シリンジポンプ3を流量制御にして、流量一定にして、高圧容器1の内部9を圧力一定の状態にて内部を攪拌しながら流動させる。それにより、改質材料は回収容器に回収される。回収容器11内部で大気に急減圧された高圧二酸化炭素はガス化し、回収容器11の排出口30より排気される。改質材料は回収容器11内部にて析出し回収容器11底部に溜まる。改質材料は手動バルブ20の開放により回収槽21に回収される。高圧容器1の高圧二酸化炭素を排気する際は、手動バルブ13を閉鎖し次いでシリンジポンプ3を停止した後、手動バルブ15を開放することにより大気圧に減圧される。
まず、プラスチック内部に高圧二酸化炭素を用いて金属錯体を導入した。本発明において、高圧二酸化炭素に溶解した金属錯体をプラスチック基材の内部に固定化するために、プラスチックに浸透させた後にプラスチック及び金属錯体を加熱し、金属錯体を熱還元してもよい。プラスチック内部にて熱分解することで高圧二酸化炭素に不溶となり固定化されるが、この手法の場合、プラスチックに浸透しなかった金属錯体も高圧容器内部で熱分解してしまい、材料ロスが大きくなる。そのため、プラスチック基材に予めアルコール等の還元剤を浸漬させておいてもよい。高圧二酸化炭素に高溶解性を示すフッソ含有金属錯体は、プラスチックに対する親和性が低いため、プラスチック内部に固定化されにくい。そのため、金属錯体を還元し金属化する還元剤を浸透させておくことにより、プラスチック内部に浸透した金属錯体が反応及び分解し、高圧二酸化炭素の排気時に排出されにくくなる。また、本方法によれば、高圧二酸化炭素を浸透させる処理温度を低温化できるので、熱分解しやすい金属錯体が回収可能になり、金属錯体の使用量が低減でき、低コスト化を図れる。
本実施例においては、まず、短冊状に切削したプラスチック基材をアルコール溶液中に浸漬しアルコールを浸透させた。アルコールの種類は任意であるが、本実施例においては、2−メトキシエタノールと水を50容量%混合した溶液を調合し、該溶液を90℃に加温し、プラスチック基材を浸漬させた。その後、図2に示すアルミ製の治具25内部にプラスチック基材24及び図示しない金属錯体を仕込んだ。
本発明に用いることのできる金属錯体の種類は高圧二酸化炭素に可溶であれば任意であり、例えばビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ジメチル(シクロオクタジエニル)プラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトヒドレート銅(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトプラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナト(トリメチルホスフィン)銀(I)、ジメチル(ヘプタフルオロオクタネジオネート)銀(AgFOD)等を用いることができる。本実施例では、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用いた。プラスチック基材の総質量50gに対し、金属錯体0.2質量%(100mg)をガラスクロスに内包し治具25内に仕込んだ。
本実施例における治具25の底部33は網目状であり、その中心部には穴にはパイプ31が溶接されている。該パイプ31の壁面には多数の穴32が空いている。このプラスチック基材24及び金属錯体の入った治具25を50℃に加温された高圧容器1の内部9に挿入し、容器蓋4を閉めた後、手動バルブ13を開き導入口18より液体二酸化炭素を容器の内部9に導入した。シリンジポンプ3により圧力制御で導入した液体二酸化炭素の圧力は15MPaとした。その後、攪拌子22を300rpmで攪拌した。それにより、治具9内のパイプ31内部の穴を通じて金属錯体の溶解した二酸化炭素が流通し、容器内のプラスチック基材24周囲における金属錯体の高圧二酸化炭素中の濃度が安定化させた。
本実施例においては、高圧容器1の内部9を圧力15MPa、温度50℃で45分間保持した。その後、手動バルブ14を開放し、予め1次側(高圧容器側)の圧力が15MPaになるように設定された背圧弁16を通じ、二酸化炭素を排出しながら余剰な金属錯体を回収した。まず、シリンジポンプ3を流量制御に切り換え、高圧容器1の内部9圧力を15MPaと一定にした状態にて10ml/min.の流速で容器内を攪拌しながら二酸化炭素を流動させた。そして、回収容器11内部で減圧ガス化した二酸化炭素と金属錯体を遠心分離の原理で分離した後、排気口30より二酸化炭素のみを排出し、回収容器11の底部に金属錯体を回収した。その後、手動バルブ15を開き、高圧容器1の内圧を大気圧に減圧し、サンプルを取り出した。さらに、容器下部のバルブ20を開き回収槽21に金属錯体を回収した。
次に金属錯体を浸透させたプラスチック基材に高圧二酸化炭素を用いたメッキ法を用いて、プラスチック内部よりメッキ膜を成長させた。本メッキ方法は、メッキ液と高圧二酸化炭素を混合してメッキ反応が起きない温度条件下にてプラスチック内部にメッキ液を浸透させた後、プラスチック内部の触媒核を利用して内部からメッキ反応させることを目的としている。
まず、図3に示すテフロン容器26に上述した方法にて金属錯体とメッキ液を浸透させたプラスチック基材24を仕込んだ。メッキ液にはニッケルリンメッキ液(奥野製薬社製ニコロンDK)を用い、二酸化炭素の親和性を高めメッキ液の界面張力を低化させる目的でエタノールを40容量%混合した。テフロン容器26の蓋27を閉めた後、80℃に加温した高圧容器1の内部9に該テフロン容器26を挿入した。その後、シリンジポンプ3により15MPaに圧力制御された高圧二酸化炭素を導入口18より高圧容器1内部9に導入した。高圧二酸化炭素は、テフロン容器26及び蓋27の隙間からテフロン容器内部に浸透する。そして、メッキ反応温度に到達していないメッキ液と混合される。さらに、プラスチック基材内部にメッキ液と二酸化炭素が浸透していくと考えられる。
テフロン容器26内部のメッキ液温度は、高圧容器1や二酸化炭素よりの熱伝達によりメッキ反応開始温度である65℃に到達するのに15MPaの二酸化炭素を導入してから15分要することを測定しておいた。そして、メッキ成長が開始してから10分後に手動バルブ14、15を開放して、回収容器11より、高圧容器1の内部9の圧力を大気開放した。テフロン容器26より蓋27の外にメッキ液はこぼれず、メッキ液とプラスチック基材24とともに取り出した。プラスチック基材24は上記方法で電解メッキした後、メッキ膜の引っ張り強度を試験した。
(比較例4)
実施例1で行った高圧二酸化炭素を用いた前処理の代わりに、下記前処理条件で、プラスチック成形体にエッチング、触媒付与、触媒活性化を施す以外は、実施例1と同様に評価した。
〔前処理条件〕
エッチング(CrO400g/l、HSO20容量%)60℃、15分間、酸処理(HCl 10容量%)室温、1分間キャタライザ−〔奥野製薬工業株式会社製「キャタリストA−30」)20℃、2分間アクセラレーター(HSO10容量%)40℃。
下記の表1に、実施例及び比較例で用いた樹脂組成物の配合組成及び評価結果を示す。
Figure 2010046952
上記の表1の配合組成中の各略号は、以下のものである。また、表1中の「島 平均粒径(体積平均)」で「※」となっているのは、明確な海島構造を形成しなかったことを表す。
PPS−1:リニア型ポリフェニレンスルフィド(DIC株式会社製「DSP ML−320」;溶融粘度200Pa・s)
PPS−2:分岐型ポリフェニレンスルフィド(DIC株式会社製「DSP LT−10G」;溶融粘度1200Pa・s)
PPS−3:架橋型ポリフェニレンスルフィド(DIC株式会社製「DSP LD−10G」;溶融粘度1000Pa・s)
PPS−4:リニア型ポリフェニレンスルフィド(DIC株式会社製「DSP LR−300G」;溶融粘度35Pa・s)
PA−1:芳香族系ポリアミド(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸52モル%、イソフタル酸3モル%、アジピン酸45モル%を、ジアミン成分としてヘキサメチレンジアミン100モル%を必須の単量体成分として反応させたもの;溶融粘度29Pa・s、融点308℃)
PA−2:芳香族系ポリアミド(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸66モル%、イソフタル酸23モル%、アジピン酸11モル%を、ジアミン成分としてヘキサメチレンジアミン100モル%を必須の単量体成分として反応させたもの;溶融粘度50Pa・s、融点314℃)
LCP:液晶ポリマー(p−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸=70/30(モル比);溶融粘度55Pa・s、融点280℃)
Si:エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
ADD−1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「イルガノックス1098」)
ADD−2:リン系加工熱安定剤(株式会社ADEKA製「アデカスタブPEP−36」)
ADD−3:塩基性炭酸亜鉛
ADD−4:ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製「DHT−4A」)
GF:ガラス繊維チョップドストランド(繊維径7μm、長さ3mm)
Filler:球状シリカ(平均粒径1μm)
実施例1〜10のプラスチックメッキ体は、メッキ密着性、表面平滑性、耐熱性のいずれもバランスがとれた優れた物性を示した。比較例1、3、4のプラスチックメッキ体は、メッキ密着性が低く、表面平滑性、耐熱性も十分ではなかった。
本発明は、PAS樹脂を用いる電子部品、機械部品、自動車部品等の分野で利用が可能である。
本実施例に用いる高圧装置である。 本実施例に用いるアルミ製の治具である。 本実施例に用いるテフロン容器である。

Claims (11)

  1. ポリアリーレンスルフィド(A)と、アミド基及び/又はイミド基を有するポリマー(B)と、を含む樹脂組成物からなるプラスチック成形体に、5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素を接触させる工程を用いてメッキを施すことを特徴とするプラスチックメッキ体の製造方法。
  2. 前記ポリマー(B)が、テレフタル酸アミドを必須の構造単位とする芳香族ポリアミドである請求項1に記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  3. 前記樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド(A)と、前記ポリマー(B)の合計100質量部に対し、前記ポリマー(B)が30〜80質量部の範囲にある請求項1または2の何れかに記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  4. プラスチックメッキ体のメッキ前の成形体の表面において、前記ポリマー(B)の面積比率が、ポリアリーレンスルフィド(A)と前記ポリマー(B)との合計100面積%に対し、30〜100面積%である請求項1〜3の何れかに記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  5. 前記樹脂組成物中の前記ポリマー(B)の含有量が、ポリアリーレンスルフィド(A)と前記ポリマー(B)との合計100質量部に対しX質量部であって、前記樹脂組成物を用いたプラスチックメッキ体のメッキ前の成形体の表面における、前記ポリマー(B)の面積比率が、ポリアリーレンスルフィド(A)と前記ポリマー(B)との合計100面積%に対し、X+10面積%以上である請求項1〜4の何れかに記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  6. 温度340℃、せん断速度100sec−1における、ポリアリーレンスルフィド(A)と前記ポリマー(B)との溶融粘度比(A)/(B)が、0.8〜50である請求項1〜5の何れかに記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  7. 前記樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド(A)と前記ポリマー(B)の合計100質量部に対し、0.01〜5質量部のエポキシ基及び/又はアミノ基を有するオルガノシラン化合物を含有する請求項1〜6の何れかに記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  8. 前記5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素を接触させる工程を用いてメッキを施す工程が、5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素に改質材料を溶解させるステップと、該改質材料の溶解した5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素をプラスチック成形体に接触させ、該改質材料を浸透させるステップを有する請求項1〜7の何れかに記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  9. 前記改質材料の溶解した5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素をプラスチック成形体に接触させ、該改質材料を浸透させるステップの後に、5〜35MPaの範囲にある高圧二酸化炭素を無電解メッキ液に混合してプラスチックに接触させるステップを有する請求項8に記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  10. 前記改質材料が、有機保護基を有する金属微粒子である請求項8又は9に記載のプラスチックメッキ体の製造方法。
  11. 請求項1〜10の何れかに記載のプラスチックメッキ体の製造方法によって製造されたことを特徴とするプラスチックメッキ体。
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