以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、紙葉類の一例として紙幣を用いて説明する。
最初に、図1及び図2を用いて本発明に係るハードウェアの構成について説明する。
図1は、本発明に係る紙葉類取引装置100(紙幣取引装置、紙幣取扱装置とも言う)の構成図である。紙葉類取引装置100は、主に現金自動取引装置(ATM)などに実装される。紙葉類取引装置100は、取引の種類、取引内容、取引結果などを表示する表示部101、利用者からの入力を受付ける操作部102、利用者からの紙幣の受け入れ、利用者への紙幣の放出を行う入出金口103、紙幣のイメージデータや磁気データを取得する鑑別センサ105を具備する鑑別部104、紙幣の搬送を行う搬送路107(107a、107b、107c)、紙幣を一時的に収納する一時スタッカ108、入金された紙幣及び出金する紙幣を収納、保管する収納庫110〜113、リジェクト紙幣を収納するリジェクト庫114、点検媒体を保管する点検媒体庫(点検媒体収納庫部ともいう)115、およびこれらの部位を制御する制御部109からなる。また、通常運用モードと保守用モードの切り替え用のスイッチとなる切り替えキー116を備える。なお、本実施例では、107aと107bは入出金口103で区分する。
操作部102は、例えば、液晶(LCD)やCRTなどの表示部101と一体となったタッチパネルで構成する。
また、切り替えキー116が保守モードに切り替えられることにより、操作部102は、保守員、係員あるいは銀行員への保守用のメッセージ、操作ガイダンスなどの情報を表示することも可能である。なお、この操作部102を複数のユニットで構成し、エンドユーザ用と、保守員などとに分けて使用するにようにしても良い。この場合、切り替えキー116を装置に実装する必要がなくなる。また、切り替えキー116は、遠隔操作できるものとしても良い。
制御部109は、入金又は出金取引において、搬送路107にて搬送される紙幣に対して、鑑別部104が図示しない光源から光を照射し、単一または複数の鑑別センサ105で走査して、紙幣の印刷パターンのイメージデータを読み取るように制御する。そして、制御部109は、紙幣の或る領域内のイメージデータに基づき、後述するROM202の金種判定制御プログラム202i、真偽判定制御プログラム202c等に含まれる所定の演算により複数の算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値、平均透磁率、積分透磁率)を算出し、金種判定や真偽判定する。鑑別部104の鑑別センサ105としては、例えば、光(可視光、紫外線など)の反射光又は/及び透過光を検出する光センサや、紙幣の磁気情報を取得する磁気センサなどが含まれる。
搬送路107(107a、107b、107c)は、搬送ローラ106(106a、106b、106c)と、図示しない搬送ベルトからなる。また、搬送路107を搬送される紙幣は、図示しないセンサにより、その搬送状態が検知可能となっている。
収納庫110〜113、一時スタッカ108は、搬送路から紙幣を受け入れ、搬送路に紙幣を放出する。すなわち、一時スタッカ108、収納庫110〜113は、リサイクル庫となっている。一方、リジェクト庫114は、一旦収納した紙幣を搬出することはできない。
次に、紙葉類取引装置100の動作について説明する。
紙葉類取引装置100の通常運用モードにおける処理として、入金処理と出金処理がある。
入金処理は、入金計数処理と入金収納処理からなる。入金計数処理では、入出金口103にて、利用者から紙幣を受付ける。搬送路107aは、入出金口103にて受付けた紙幣を一枚ずつ、鑑別部104に搬送し、鑑別部104は、搬送された紙幣の情報(例えば、紙幣のイメージデータや磁気データ)を鑑別センサ105が取得し、紙幣の種類、真偽などを鑑別する。鑑別部104により、鑑別された紙幣は、一時スタッカ108に搬送され、保管される。なお、鑑別の結果、制御部109が、紙幣と判断しなかったものは、入出金口103に返却される。
入金計数処理により、入金紙幣の種類や枚数が分かると、表示部101は、入金計数処理の結果を利用者に示す。操作部102は、利用者からの入金の確定可否の判断を受付ける。操作部102が、入金確定を受付けた場合、紙葉類取引装置100は、入金収納処理を開始する。入金収納処理では、紙葉類取引装置100は、搬送路107a、107bにより、一時スタッカ108に搬送された紙幣を、紙幣の種類に応じて、収納庫110〜113又はリジェクト庫114に搬送する。リジェクト庫114には、流通に適さない紙幣を搬送し、収納する。
出金処理では、紙葉類取引装置100は、操作部102に入力された利用者から出金指示を受付け、受付けた種類、枚数の紙幣を、収納庫110〜113から搬送路107b上に繰り出す。搬送路107b、107aは、繰り出された紙幣を鑑別部104に搬送する。鑑別部104の鑑別センサ105は、搬送された紙幣の情報を取得し、紙幣の種類、真偽などを鑑別した上で、鑑別部104の上側に位置する搬送路107c上に繰り出し、入出金口103に紙幣を集積する。なお、出金すべき紙幣でない紙幣が搬送されていた場合は、一時スタッカ108に一時的に保管し、保管された紙幣は、出金処理の終了後、搬送路107a上に繰り出され鑑別部104通過後、リジェクト庫114に搬送される。
一方、紙葉類取引装置100の保守モードの処理では、紙葉類取引装置100は、点検媒体庫115から繰り出した点検媒体により、各種センサの点検を行う。
図2は、図1の制御部109のうち、特に、鑑別部104の制御にかかわるものについて詳細に示した制御ブロック図である。
制御部109は、RAM201、ROM202、不揮発性メモリ208からなる記憶部と、端末装置205との通信を行う通信部203と、記憶部に記憶されたデータやプログラムを用いて計算や、各部位に指令を出すCPU200とから構成され、操作部102における利用者や保守員の操作、又は端末装置205における保守員の遠隔操作を受付け、各部、各ユニットを制御する。
以下では、制御部109の各構成について説明する。
最初に制御部109のRAM201について説明する。RAM201は、鑑別センサ105で読み取った紙幣のイメージデータ、磁気センサ、光学センサなどの各種センサの算出値、保守モードにおいて鑑別センサ105で読み取った点検媒体のイメージデータを記憶する。
RAM201に記憶される情報のうち各種センサの算出値は、一時的にRAM201に記憶され、所定のタイミングで、通信部203を介して端末装置205に接続された記憶部にある取引情報データベース206に記憶される。入金又は出金される紙幣のイメージデータから算出された算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値、平均透磁率、積分透磁率)を集積した場合、そのデータ容量が非常に大きくなるため、大容量の取引情報データベース206に記憶する。
なお、RAM201にある紙幣のイメージデータの記憶領域は、紙幣一枚分程度のデータ量を記憶できる容量である。このため、紙葉類取引装置100は、RAM201の紙幣のイメージデータを、その紙幣の鑑別が終了したら、次に搬送されてきた紙幣のイメージデータで上書きする。金種判定制御プログラム202i、真偽判定制御プログラム202cは、RAM201に記憶された紙幣のイメージデータから必要な情報を取得し、金種判定または真偽判定を行う。
次に、制御部109のROM202について説明する。ROM202は、各種プログラム、各種固定的データ、各種補正値、を記憶する。これらの情報は書換えることができないようになっている。
ROM202に記憶されるプログラムとしては、例えば、鑑別部104の各部位を制御するための鑑別装置制御プログラム202a、紙幣の真偽を判定するための真偽判定制御プログラム202c、紙幣の金種を判定するための金種判定制御プログラム202i、などが含まれる。
鑑別装置制御プログラム202aは、鑑別部104に搬送された紙幣のイメージデータを、鑑別センサ105が読み取り、鑑別センサ105により読み取られた紙幣のイメージデータをRAM201に記憶するよう制御するためのプログラムである。
真偽判定プログラム202cは、RAM201に記憶されたイメージデータから紙幣の真偽判定に使用される算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値、平均透磁率、積分透磁率)を算出し、予めROM202に記憶されている真偽判定用閾値202eと算出値とを比較して真偽判定を行うよう制御するためのプログラムである。
金種判定制御プログラム202iは、RAM201に記憶されたイメージデータから紙幣の金種判定に使用される算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値、平均透磁率、積分透磁率)を算出し、予めROM202に記憶されている金種判定用閾値202fと算出値とを比較して金種判定を行うよう制御するためのプログラムである。
また、ROM202は、保守用のプログラムも記憶している。保守用のプログラムとしては、紙葉類取引装置100の各種センサを点検するためのセンサ点検プログラム202b、初期設定として設定されている設定値の書換えを行う補正値書換プログラム202d、頻度分布表示プログラム202gなどが記憶されている。
センサ点検プログラム202bは、紙葉類取引装置100を保守モードに切り替え、保守モードに切り替えられた紙葉類取引装置100が、点検媒体を1枚ずつ点検媒体庫115から繰り出し、搬送路107b,107aが、点検媒体を鑑別部104に搬送し、鑑別センサ105が点検媒体のイメージデータ、磁気データなどの点検結果データを取得し、RAM201に記憶し、搬送路107aが、点検媒体を一時スタッカ108に搬送するよう制御するためのプログラムである。また、センサ点検プログラム202bは、保守モードに切り替えられた紙葉類取引装置100が、一時スタッカ108に一時的に保管された点検媒体を一時スタッカ108から繰り出し、搬送路107aが、再度点検媒体を鑑別部104に搬送し、再度鑑別センサ105により取得された点検結果データをRAM201に記憶し、その点検媒体の使用回数が所定回数以上の場合は、搬送路107a,107bが、リジェクト庫114に搬送し、所定回数未満の場合は、点検媒体庫115に搬送し、点検結果データを端末装置205に送信し、点検が終了したら、通常取引モードに切り替えるよう制御するためのプログラムである。
なお、紙葉類取引装置100が、点検媒体庫115から一時スタッカ108に搬送する場合と、一時スタッカ108から点検媒体庫115に搬送する場合と、それぞれにおいて点検結果データを取得するとしたが、いずれかの場合にのみ点検結果データを取得するとしても良い。
さらには、点検媒体収納庫115の代わりに一時スタッカ108を点検媒体の収納庫とすることにより、紙葉類取引装置100は、一時スタッカ108から点検媒体を搬送し、搬送路の一番奥に位置するリサイクル庫である千円庫113に一時的に点検媒体を収納し、千円庫113から点検媒体を再度一時スタッカ108に戻すように点検媒体を搬送し、点検を実施してもよい。これにより、使用回数が所定回数以上の点検媒体は、一時スタッカからの搬送時にそのままリジェクト庫114に搬送することが可能になるとともに、点検媒体庫115を新たに備える必要がなくなる。
なお、リジェクト庫114は、係員等がリジェクト庫の紙幣を回収するまで、リジェクト庫114に搬送された点検媒体を保管する。係員は、リジェクト庫114の紙幣とともに、点検媒体を回収する。
補正値書換プログラム202dは、不揮発性メモリ208(例えば、フラッシュメモリ)に記憶されている光学センサ用補正値(例えば、白シェーディング補正値)や、磁気センサ用補正値を書換えるためのプログラムである。例えば、経年劣化による光学センサの感度ムラを補正する白シェーディング補正値を端末装置205から受信し、フラッシュメモリに記憶されている値と書き換えるよう制御するためのプログラムなどが含まれる。
頻度分布表示プログラム202gは、取引情報データベース206に集積された算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値、平均透磁率、積分透磁率)を受信して不揮発性メモリ208に記憶し、記憶された算出値を表示部101に表示するよう制御するためのプログラムである。紙葉類取引装置100により、頻度分布表示プログラム202gが実行されると、表示部101は、装置番号選択画面、金種選択画面、センサ名選択画面等を表示し、入力、選択を受付ける。これらの選択画面で入力、選択された内容に応じて算出値の頻度分布などを表示する。
次に、ROM202が記憶する固定的データ202hについて説明する。
固定的データとは、鑑別部104などの各部位の識別番号や、各種プログラムの識別番号などのことを意味する。これらの固定的データは、保守監視センタ207において、各ATMあるいは紙葉類取引装置100に記憶されているプログラムや、各部位を管理する際に利用される情報である。例えば、保守監視センタでは、各ATMの固定的データとそのATMにおいて利用している各プログラムのRevisionなどが記憶されている。
続いて、ROM202が記憶する補正値について説明する。
ROM202が記憶する補正値としては、初期光学センサ用補正値202jと初期磁気センサ用補正値202kなどの初期補正値がある。これらの補正値は、書換えることができないデータであり、書換え可能な不揮発性メモリ208に記憶された光学センサ用補正値、磁気センサ用補正値を初期化する場合に利用される。不揮発性メモリ208に記憶された各種補正値の初期化は、端末装置205あるいは操作部102からの指示により、前述の補正値書換プログラム202cを実行させることにより実施される。
紙葉類取引装置100は、センサが故障し交換作業が発生した際、取り付けた交換用センサが故障したセンサと同一ロットであれば、補正値書換プログラム202cを実行することにより、記憶された初期補正値を用いて、センサの調整作業を実施することができ、迅速なセンサ交換作業が可能となる。なお、紙葉類取引装置の導入当初は、ROM202に記憶されている補正値(初期補正値)と同じ補正値が不揮発性メモリ208にも記憶されている。
次に、制御部109の不揮発性メモリ208について説明する。不揮発性メモリ208は、光学センサ補正値、磁気センサ補正値などの各種センサの補正値、点検媒体の使用回数、点検媒体の枚数、種類などを記憶する。これらの情報は、上述のROM202とは異なり、書き換え可能となっている。なお、紙葉類取引装置100は、点検媒体の枚数が所定の枚数(例えば1、2枚)になったら、枚数が所定枚数になったことを、端末装置205に通知、又は表示部101に表示する。点検媒体の枚数が0枚になったときに通知をしても良いが、残り数枚が1、2枚となったときに通知することにより、早期に点検媒体を補充可能となり、点検媒体が0枚となったことにより遠隔操作での点検ができないことを防止することが可能となる。
各種センサの補正値は、鑑別センサ105などのセンサが取得した情報を補正する際に利用される。また、センサの経年劣化等により、一定の範囲内でセンサ出力が変化した場合には、保守モードなどで、センサ出力の変化に合せて、不揮発性メモリ208に記憶された補正値を調整、変更する。この結果、センサ出力の変化が一定の範囲内であれば、センサの取替えをすることなく、適切な鑑別を実施することが可能となる。
点検媒体の使用回数は、その点検媒体を用いて、鑑別センサ105などのセンサの点検を実施した回数を意味する。点検媒体は、搬送ローラから受ける傷や汚れの付着などにより、点検用の媒体として不適切となるため、所定回数までしか使用しない。これにより、点検媒体の品質維持が可能となる。なお、各点検媒体は、固有の識別情報を保持しており、紙葉類取引装置100は、各点検媒体毎にその使用回数を記憶する。
次に、制御部109の通信部203について説明する。通信部203は、モデムを具備し専用回線や電話回線等の通信回線204を介して、外部の端末装置205とのデータの送受信を行う。
次に、保守監視センタ207の紙葉類の取引に関する情報を保持する取引情報データベース206について説明する。
図3のテーブルは、図2に示した取引情報データベース206の詳細である。取引情報データベース206には、紙葉類取引装置100を識別する装置番号(装置番号001、装置番号002など)、紙葉類取引装置100にて取引された紙幣の金種(千円、二千円など)、データを取得するセンサの種類(光学センサ、磁気センサなど)に基づき、取引ごとに各センサの取得したデータから金種判定や真偽判定などに使用された算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値、平均透磁率、積分透磁率、)を記憶する。
次に、端末装置205からの遠隔保守における紙葉類取引装置100の動作について説明する。
保守監視センタ207には、端末装置205と大容量の記憶容量をもつ取引情報データベース206が設置されている。端末装置205からの遠隔操作により、保守員は、紙葉類取引装置100の点検、特に鑑別センサ105の点検を行うことが可能である。
端末装置205からの指示により、センサ点検プログラム202bが実行されると、紙葉類取引装置100は、保守モードに切り替えられ、点検用の点検媒体が点検媒体庫115から繰り出される。紙葉類取引装置100は、搬送路107が点検媒体を鑑別部104に搬送し、点検媒体が鑑別部104を通過するときに、鑑別センサ105が点検媒体のイメージデータ、磁気データなどの点検結果データを取得し、RAM201に記憶する。
紙葉類取引装置100は、点検媒体の使用回数が所定回数以上になると、搬送ローラ106から受ける傷や搬送路107の汚れの付着などにより、点検媒体が点検用媒体として適切でなくなるため、点検媒体をリジェクト庫114に収納する(以下、廃棄収納ともいう)。所定回数未満であれば、再度点検に使用するため点検媒体庫115に搬送する。
RAM201に記憶された点検媒体の点検結果データは、通信部203、通信回線204を介して、センサ点検プログラムにより端末装置205に送信される。保守員は、送信された端末装置205が受信した点検結果データを解析し、紙葉類取引装置100、特に鑑別センサ105における障害発生(受付率低下など)の可能性の有無を判断する。
次に、点検媒体について説明する。点検媒体は、一枚で複数のセンサの点検をできるように各種センサ出力を点検可能な部分を有している。例えば、光学センサ出力を点検するための反射率/透過率が異なる部分や、白シェーディング補正用にも使用できる白色部分や、予め磁性が分かっており磁力の異なる部分などを、1枚の点検媒体が有している。これにより、センサの種類ごとに点検媒体を保持するよりも、保持する媒体の数を減少させることが可能となり、点検媒体の保持スペースを減少することができる。
図4は、取引情報データベース206の情報に基づき、操作部102あるいは端末装置205に、算出値の頻度分布(図6、図7)を表示する際のフローチャートを示した図である。
また、図5の(a)〜(f)は、図4のフローチャートを実行する際に、表示部101あるいは端末装置205に表示される画像を示したものである。
以下では、図4〜図7を用いて、端末装置205が頻度分布の表示を行う場合について説明する。
保守監視センタ207に設置された端末装置205は、図示しない表示部に装置を保守する内容を選択する画面(a)を表示し、操作画面(a)から保守員による頻度分布表示の選択を受付けると(S401)、取引情報データベースに接続する(S402)。操作画面(a)は、保守選択画面といい、算出値の頻度分布表示以外に、点検媒体による装置点検、各種センサの補正値書換など種々の保守作業について遠隔操作することが可能となっている。
頻度分布表示が選択されると、端末装置205は、取引情報データベース206にアクセスするとともに、図示しない表示部に操作画面(b)を表示する。
保守員は、操作画面(b)が表示されると、頻度分布を調査したい装置番号を入力する。端末装置205は、装置番号の入力を受付けると(S403)、金種選択画面(c)を表示する。保守員による金種の選択を受付けると(S404)、端末装置は、センサ名選択画面(d)を表示する。続いて、保守員によるセンサ名の選択を受付けると(S405)、端末装置205は、算出値選択画面(e)を表示する。保守員による算出値の選択を受付けると(S406)、端末装置は、取引期間選択画面(f)を表示する。S403〜S406の操作により選択された算出値の頻度分布の対象期間及び頻度分布を表示する際の時間間隔(日単位、週単位、月単位、年単位など)の選択を受付けると(S407)、端末装置は、頻度分布を表示する(S408)。
次に、図6、図7を用いて、図4のフローを実施した結果、端末装置205に表示される算出値の頻度分布について説明する。
図6、図7は、図4のフローにおいて、装置番号として001、金種として千円、センサ名として光学センサ、算出値として平均濃度値、取引期間として2008年4月1日〜2008年4月30日、時間間隔として週単位が、それぞれ選択された場合に表示される平均濃度値の頻度分布である。
図6、図7の横軸は平均濃度値(od)、縦軸は頻度(数)を表している。この頻度とは、各紙幣の平均濃度値に該当する紙幣の数である。一般的に、印刷物の平均濃度値はOD(Optical Density)値で表現され、算出値、閾値の上限値と下限値などの単位をODを用いて表示する。
図6、図7の実線aは、顧客に納入前の紙葉類取引装置において、予め閾値の上限値と下限値を設定するために用いた大量の数の紙幣から算出された平均濃度値の頻度分布を表している。一方、図6、図7の点線b1〜b4は、紙葉類取引装置の納入以降、または保守員が定期的に行う保守点検以降における、取引時に投入された紙幣から算出された平均濃度値の頻度分布を週単位で表している。
また、図6、図7では、頻度分布と同一画面に算出値の閾値(上限値c、下限値d)を表示している。頻度分布の時間経過と共に変化する度合が予め設定された閾値(上限値c、下限値d)に対して許容可能なレベルか否かを、保守員が判断する際に利用する。
図6の点線b1〜b4の頻度分布は、図6の実線aの範囲内に収まっている。このため、紙葉類取引装置100の鑑別部104の鑑別センサ105は、正常に機能しており、該装置の障害(受付率低下など)発生の可能性は極めて低いと判断できる。このような場合、点検媒体庫115に格納された点検媒体を使用して、鑑別センサ105の点検作業を実施する必要性はなく、高い品質性確保が求められかつ枚数の限られた点検用媒体の使用回数を抑制することが可能となる。
このような場合、紙葉類取引装置の稼動を停止する必要もなく、該装置の継続稼動、即ち利便性の確保が可能となる。
一方、図7の点線b1〜b4の頻度分布は、時間経過と共に図7の実線aの範囲から外れていく。このため、該装置の障害(受付率低下など)発生の可能性があると保守員に判断させることが可能となる。
頻度分布が図7の実線aの範囲内に入らない理由として、以下の理由が挙げられる。
鑑別センサ105の経年劣化等により鑑別センサ105の感度ムラが発生した場合や、鑑別センサ105の出力が低下した場合に、紙葉類取引装置100の導入当初に比べて、同じ紙幣の平均濃度値を算出したとしても、平均濃度値が実線aの範囲から外れることとなる可能性が高くなる。また、使い古された古い紙幣が投入された場合、発行されたばかりの新しい紙幣に比べて平均濃度値が実線aの範囲から外れる可能性が高くなる。
従って、装置導入時、例えば、紙幣の算出値として平均濃度値(od)を使用している場合、この平均濃度値に対する頻度(数)は、図6、7の実線aのようになる。そして、導入当初の平均濃度値は、許容範囲として閾値、即ち上限値cと下限値dとの範囲内にあるので、鑑別部104にて紙幣は正券と判定される。
しかし、図7において、このまま、紙葉類取引装置を継続稼動させると、図7の点線b4よりも更に下限値d側に頻度分布がずれた場合、導入当初の許容範囲(下限値d)を超え、導入時には正券と判定した紙幣まで、偽券と判定してしまい、真券返却率が高くなる。
図7の場合、上述したように、図7の点線b1〜b4の頻度分布が図7の実線aの範囲から外れる理由は、主に2つあるが、その場合の対処方法を説明する。
前者の場合、つまり、鑑別センサ105の経年劣化等により鑑別センサ105の感度ムラが発生した場合や鑑別センサ105の出力が低下した場合の保守方法として、保守作業者を現地へ出動させ、障害発生の恐れがある機器の交換・調整または各種センサの交換・調整を行う。または、紙葉類取引装置の製造メーカ等に依頼して該当する機器や各種センサの修理を行う。一方、後者の場合、つまり、使い古された古い紙幣が投入された場合の保守方法として、紙葉類取引装置の製造メーカ等に依頼して、金種判定制御プログラムまたは真偽判定制御プログラムを書き換えたり、閾値(上限値、下限値)を書き換えたりする。
しかし、頻度分布の形状、変化からだけでは、上述した2つの理由のどちらが原因かまでは特定できない。そこで、端末装置205からの遠隔操作により、点検媒体庫115に格納された点検用媒体を使用して、各種センサの点検を行う。そして、点検結果データを該端末装置205に送信し、保守員が該点検結果データ(イメージデータ、磁気データを含む)を解析することで上述した2つの理由のどちらが原因かを特定することができる。
例えば次のように特定する。点検結果データの解析後、センサ出力値の変化やセンサ出力値の低下、或いは光学センサの各素子における感度ムラを確認できないが、図7の点線b1〜b4の頻度分布が時間経過と共に図7の実線aの範囲から外れていくことが判明した場合、後者の原因、つまり、使い古された古い紙幣が投入されたと特定できる。一方、点検結果データの解析後、センサ出力値の変化やセンサ出力値の低下、或いは光学センサの各素子における感度ムラを確認できた場合、前者の原因、つまり、鑑別センサ105の経年劣化等により鑑別センサ105の感度ムラが発生したと特定できる。
上述したように、点検媒体には、光学センサ出力を点検するための反射率/透過率が異なる印刷部分や、白シェーディング補正用にも使用できる白色部分や、予め磁性が分かっており磁力の異なる印刷部分等、各種センサ出力を点検可能な印刷部分を有している。保守員は、送信された点検結果データを基に各種センサが読み取った印刷部分の出力値をチェックすることで、経年劣化等によりセンサ出力値が変化しているか否か、またはセンサ出力値が低下しているか否か、さらに光学センサの各素子において感度ムラが発生しているか否かについての情報を収集することが可能となる。
また、端末装置205は、保守員に経時変化する算出値の頻度分布を監視可能とすることにより、紙葉類取引装置100における受付率低下等の障害発生の可能性があるか否かを迅速に判断させることができ、紙葉類取引装置100の障害発生を未然に防止することが可能となる。また、紙葉類取引装置100は、保守員による端末装置205からの遠隔操作が可能となっており、点検媒体による各種センサ等の紙葉類取引装置100の点検が可能となっている。保守員は、点検媒体による点検結果に基づき、紙葉類取引装置100から障害発生の原因、センサ出力の変化の原因などの情報を取得することが可能となり、さらに迅速な保守対応が可能となる。
また、保守員に判断させるのみならず、算出値の頻度分布の変化から端末装置205が自動で障害発生の可能性があるか否かを判断し、障害発生の可能性があると判断した場合にのみ、端末装置205は、紙葉類取引装置100を保守モードに切り替えるよう指示を出し、紙葉類取引装置100は、点検媒体を使用して点検作業を実施することで、紙葉類取引装置100の停止時間及び点検媒体の使用回数を抑制することが可能となる。例えば、ある期間の算出値の頻度分布が図7のように、一定方向に変化していき、閾値と所定の位置に達した場合などに、端末装置205が自動で障害発生の可能性があると判断させてもよい。この場合、紙葉類取引装置100は、アラーム通知や、表示部101に表示することにより、保守員にその旨を知らせる。
図8は、本発明に係る端末装置205からの遠隔操作により、点検媒体を使用した紙葉類取引装置100、特に各種センサの点検作業にかかる操作、処理についてのフローチャートを示している。
保守監視センタ207に設置された端末装置205は、保守員による操作を受付け、受付けた入力情報に基づき、紙葉類取引装置100に、鑑別センサ105等の点検を行うように指示を出す。指示を受けた紙葉類取引装置100の制御部109は、センサ点検プログラム202bを実行する。制御部109が、センサ点検プログラム202bを実行することにより、S801からS812の点検処理が実施される。
紙葉類取引装置100は、保守モードに切り替わり(S801)、点検媒体を点検媒体庫115より繰り出す(S802)。点検媒体は、搬送路107により鑑別部104に搬送される。搬送された点検媒体は、鑑別部104に具備された鑑別センサ105により点検媒体のイメージデータ、磁気データなどを取得され、これらの点検の結果となる点検結果データがRAM201に送られ、記憶される(S803)。一方、点検媒体は、一時スタッカ108に取り込まれ(S804)、今回の点検に使用された全ての点検媒体が一時スタッカ108に搬送された後、一時スタッカ108に取り込まれた点検媒体を、搬送路107aに搬出し、搬送路107aにより搬送され、鑑別センサ105により点検媒体のイメージデータ、磁気データなどを取得され、点検結果データがRAM201に送られ、記憶される(S805)。そして、紙葉類取引装置100は、点検媒体の使用回数をカウントし(S806)、点検媒体の使用回数が一定回数以上か否かをチェックする(S807)。紙葉類取引装置100は、点検媒体の使用回数が一定回数以上になると、搬送ローラから受ける傷や搬送路の汚れの付着など点検用媒体の品質確保が困難になる可能性があるため、リジェクト庫114に収納し(S809)再利用しない。また、紙葉類取引装置100は、点検媒体を再利用しない場合は、点検媒体の使用回数カウンタをリセットする(S810)。紙葉類取引装置100は、一定回数未満であれば、再度点検に使用するため点検媒体庫115に戻す(S808)。紙葉類取引装置100は、RAM201に記憶された点検媒体の点検結果データを、通信部203、通信回線204を介して、端末装置205に送信し(S811)、送信後、通常取引モードに切り替わる(S812)。
端末装置205は、送信された点検結果データを図示しない表示部に表示し、保守員に解析させ、紙葉類取引装置100、特に鑑別センサ105において、経年劣化等による鑑別センサ105の出力変化が起きていないか、また正常な鑑別センサ105の出力補正ができているか否かなどを点検させることができる。
なお、上述したように、算出値の頻度分布の変化から端末装置205が自動で障害発生の恐れがあるか否かを判断し、紙葉類取引装置100に点検媒体による点検を実施させてもよい。
次に、センサ出力補正値の書き換えについて説明する。
端末装置205から各種センサの点検を行った後、経年劣化等によりセンサの出力変化、センサの出力低下、光学センサの各素子における感度ムラ等を確認できた場合、保守作業者を現地へ出動させ、各種センサの交換・調整を行ったり、紙葉類取引装置100の製造メーカ等に依頼して該当する各種センサの修理を行ったりすることが考えられる。しかし、このような場合、各種センサの交換・調整を行うまでの間、装置を継続稼動させると利用者への真券返却率が増加し利用者の利便性が悪くなる可能性がある。また、装置の稼動を停止しても利用者の利便性が悪くなる。
上述したように、点検媒体は光学センサ出力を点検するための反射率/透過率が異なる印刷部分や、予め磁性が分かっており磁力の異なる印刷部分の他に白シェーディング補正用にも使用できる白色部分を有している。
従って、点検結果データに基づき、現在のセンサ出力値を補正する最適な補正値を算出することが可能となる。この場合、端末装置205からの指示に応じて、制御部109は、補正値書換プログラム202dを実行するように制御し、不揮発性メモリ208に該最適な補正値を上書きする。これにより、保守作業の効率化、センサ交換作業の回数の低減が可能となる。
以上、説明したように、算出値の頻度分布の経時変化により、紙葉類取引装置100の障害発生の予兆を迅速に検出して、障害発生を未然に防止することができる。また、紙葉類取引装置100内に収納した点検用媒体を使用して各種センサ出力を点検することで、障害発生の原因を特定することができ、紙葉類取引装置100の保守作業の効率化を高め障害発生を未然に防止することができる。
なお、本実施形態では、点検媒体庫115を用いて説明したが、紙葉類取引装置100内に点検用媒体を収納するスペースを確保できない場合、一時スタッカ108を用いて代用してもよい。これにより、製作コストの増加を抑制することが可能となる。さらに、金種に応じて収納できる収納庫を2つ以上具備した紙葉類取引装置100であれば、その内の1つを点検用媒体収納庫として流用してもよい。
また、本実施形態では、搬送路は双方向搬送路として収納庫と一時スタッカの間を点検媒体が往復するものとして説明したが、ループ型の搬送路などでも良く、当然点検媒体の点検経路は、本実施例に限るものではない。
また、本実施例では、点検媒体の使用回数で廃棄収納の可否を判断するとしたが、使用頻度、使用期間などにより、点検媒体の廃棄収納をしても良い。
また、端末装置205の有する機能を紙葉類取引装置100で実施しても構わない。例えば、本実施形態では、算出値の頻度分布の変化(例えば、図7)から端末装置205が自動で障害発生の可能性があるか否かを判断するとしたが、紙葉類取引装置100が自動で障害発生の可能性があるか否かを判断してもよい。
また、本実施形態では、端末装置205が頻度分布の表示を行う場合について示したが、これに限るものではない。すなわち、紙葉類取引装置100が取引情報データベースから頻度分布等のデータを取得し、表示部101に算出値の頻度分布又は時間経過と共に変化する頻度分布を表示してもよい。この場合、端末装置205は、問合せのあった紙葉類取引装置の固有番号又はROM202の固定データなどで、紙葉類取引装置100のこれまでに収集したデータを識別(特定)して、その紙葉類取引装置100が扱った紙幣のデータ(算出値など)を送信する。一方、紙葉類取引装置100は、受信した紙幣のデータ(算出値など)を不揮発性メモリ208に記憶して図6、図7のような算出値として表示する。
また、本実施形態では、保守監視センタ207の取引情報データベース206に紙幣のデータ(算出値など)を記憶する場合について示したが、各種データをいずれの装置が記憶してもよいことはいうまでもない。
また、本実施形態では、取引に関する情報として、鑑別センサ105の算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値)の頻度分布に基づき、点検媒体による点検を実施する場合を示したが、他のセンサについての算出値の頻度分布に基づき、点検媒体による点検を実施してもよい。また、センサの算出値の頻度分布に基づき、点検媒体による点検を実施するとしたが、取引に関する情報である紙葉類取引装置100の取引期間、取引回数、取引紙幣枚数、受付率若しくはセンサにより取得した紙葉類の情報又はこれらの情報の少なくとも1つに基づき算出された計算値に基づき点検媒体による点検を実施することとしてもよい。
100…紙葉類取引装置、101…表示部、102…操作部、103…入出金口、104…鑑別部、105…鑑別センサ、106…搬送ローラ、107…搬送路、108…一時スタッカ、109…制御部、110〜113…収納庫、114…リジェクト庫、115…点検媒体庫、116…切替キー、200…CPU、201…RAM、202…ROM、203…通信部、204…通信回線、205…端末装置、206…取引情報データベース、207…保守監視センタ、208…不揮発性メモリ