以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態の貨幣処理機について説明する。本実施の形態に係る貨幣処理機は、収集特定者側に管理権限がある貨幣収納部と、店舗側に管理権限がある貨幣リサイクル処理部とを1つの筐体内に有するものである。
本実施の形態に係る貨幣処理機は、硬貨および紙幣からなる貨幣の補充処理、納金処理、出金処理、引渡処理、大量引渡処理、両替処理、逆両替処理、精査処理、計数処理、締め処理、警備回収処理等を行う機能を有するものである。図1乃至図6は、本発明の一の実施の形態における貨幣処理システムの構成を示す図である。
図1Aに示すように、本実施の形態の貨幣処理システムは、店舗内に設置された貨幣処理機10と、この貨幣処理機10からそれぞれ隔離して店舗外に設けられた現金センター13およびデータセンター14とを備えている。現金センター13およびデータセンター14には、それぞれ中央制御装置が設置されている。以下の記載において、現金センター13やデータセンター14とは、それぞれ中央制御装置を意味している。貨幣処理機10にはコントローラ12が設けられており、このコントローラ12は現金センター13に有線または無線により通信接続されており、現金センター13に対して信号の送受信を行うようになっている。このことにより、コントローラ12を介して現金センター13から貨幣処理機10に対して遠隔操作を行うことができるようになっている。ここで、コントローラ12は貨幣処理機10に対して例えばLAN等により接続される通信制御装置や端末、もしくは、貨幣処理機10に内蔵された通信部等である。
また、図1Aに示すように、現金センター13とデータセンター14とは有線または無線により互いに通信接続されており、現金センター13とデータセンター14との間で様々なデータの送受信が行われるようになっている。このため、貨幣処理機10からコントローラ12を介して現金センター13に送られた、貨幣処理機10における紙幣や硬貨等の貨幣の処理状況に係る情報はデータセンター14にも送られるようになっている。本発明においては、現金センター13およびデータセンター14にそれぞれ中央制御装置が設けられている。しかしながら、中央制御装置はこのような例に限定されることはなく、例えば現金センター13のみ、あるいはデータセンター14のみに設けられていてもよい。
また、図1Aに示すように、店舗には1または複数のキャッシュレジスタ18が設けられている。なお、図1Aでは2つのキャッシュレジスタ18が店舗に設けられた例を示しているが、店舗に3つ以上のキャッシュレジスタ18が設けられていてもよく、あるいは1つのキャッシュレジスタ18のみが店舗に設けられるようになっていてもよい。各キャッシュレジスタ18は、それぞれ店舗側の管理権限下(第1の管理権限下)にあり、これらのキャッシュレジスタ18は店舗の店員等が操作するようになっている。キャッシュレジスタ18における釣銭準備金は、貨幣処理機10から出金された貨幣が店員等によってキャッシュレジスタ18に補充されるようになっている。
本実施の形態の貨幣処理システムの構成は図1Aに示すようなものに限定されることはなく、代わりに図1Bに示すようなものとすることもできる。図1Bに示すような貨幣処理システムは、貨幣処理機10と、この貨幣処理機10からそれぞれ隔離して店舗外に設けられた現金センター13およびデータセンター14とを備えている点では図1Aに示す貨幣処理システムと略同一の構成となっているが、この貨幣処理機10に設けられるコントローラ17は機能の拡張性の高いコントローラとなっている。
コントローラ17は、現金センター13およびデータセンター14にそれぞれ有線または無線により通信接続されており、現金センター13およびデータセンター14に対してそれぞれ信号の送受信を行うようになっている。
図1Bに示す貨幣処理システムにおけるコントローラ17は機能の追加が可能であり、プリンタ17a、カードリーダ17b、スキャナー17cをそれぞれ接続することができるようになっている。プリンタ17aは、貨幣処理機10における紙幣や硬貨等の貨幣の処理状況に係る情報等を印刷するよう構成されている。また、カードリーダ17bは、貨幣処理機10に備えているカードリーダに加えて接続でき、操作者が携帯しているIDカードのID情報を読み取るよう構成されている。そして、コントローラ17に入力された操作者のID情報に係る信号により、操作者の識別が行われるようになっている。また、スキャナー17cは、紙幣の記番号やバーコード等を撮像するよう構成されている。また、このコントローラ17はルーターとしての機能も有している。
また、コントローラ17には操作者のパーソナルコンピュータ17dを接続することも可能となっている。この場合、コントローラ17に接続されたパーソナルコンピュータ17dにより操作者が貨幣処理機10の操作を行うことができることとなる。また、このパーソナルコンピュータ17dは、後述するデータセンター14とも送受信可能とすることができるようになっている。
また、図1Bに示す貨幣処理システムでも、図1Aに示す貨幣処理システムと同様に、店舗には1または複数のキャッシュレジスタ18が設けられている。
次に、図1Aや図1Bに示す貨幣処理機10の構成の詳細について図2乃至図4を用いて説明する。
図2に示すように、貨幣処理機10は略直方体形状の筐体11を備えており、この筐体11には、貨幣処理機10を前方から見て上部右側に配置された紙幣処理装置20と、貨幣処理機10を前方から見て上部左側に配置された硬貨処理装置30とがそれぞれ設けられている。また、貨幣処理機10の筐体11において、紙幣処理装置20および硬貨処理装置30の下方には、硬貨および紙幣の収納を行う貨幣収納部40が設けられている。ここで、貨幣処理機10のうち、紙幣処理装置20および硬貨処理装置30は店舗側の管理権限下(第1の管理権限下)にあり、貨幣収納部40は収集特定者側の管理権限下(第2の管理権限下)にある。
以下、紙幣処理装置20、硬貨処理装置30および貨幣収納部40の各構成要素について説明する。
まず、紙幣処理装置20の構成について図2および図3Aを用いて説明する。図2および図3Aに示すように、紙幣処理装置20は、当該紙幣処理装置20内への紙幣の取り込みを行う紙幣投入口21と、紙幣処理装置20内に取り込まれた紙幣のうち偽札や識別不能な紙幣等のリジェクトを行う紙幣リジェクト口22と、紙幣処理装置20内に取り込まれた紙幣のうち貨幣収納部40に収納されない紙幣を紙幣処理装置20の外部に返却する紙幣返却口23とを備えている。また、図3Aに示すように、紙幣処理装置20の内部には、紙幣投入口21に投入された紙幣を紙幣処理装置20内で搬送する搬送部25が設けられている。
紙幣投入口21は、操作者により1または束状態の複数の紙幣が短手方向に一括して投入されるよう構成されている。図2に示すように、この紙幣投入口21には紙幣ステージ28が配設されている。紙幣ステージ28は、待機時には上昇位置にありこの際には操作者は紙幣投入口21に紙幣を投入することができず、一方、紙幣の処理時には下降して操作者が紙幣投入口21に紙幣を投入することができるように構成されている。また、図3Aに示すように、紙幣投入口21は搬送部25に接続されており、紙幣投入口21に投入された1または束状態の複数の紙幣は、1枚ずつ搬送部25で搬送されるようになっている。また、紙幣リジェクト口22は、図3Aに示すように搬送部25に接続されており、紙幣投入口21により紙幣処理装置20内に取り込まれた紙幣のうち後述する識別部26によりリジェクトすべき紙幣であると識別された紙幣や識別部26で識別することができなかった紙幣が搬送部25から送られるようになっている。操作者はこの紙幣リジェクト口22に送られた紙幣を取り出すことができるようになっている。
紙幣返却口23には、図3Aに示すように、搬送部25に接続された紙幣保留部29が設けられている。この紙幣保留部29には、搬送部25から紙幣が送られるようになっている。また、紙幣返却口23には開閉可能な扉24が設けられている。紙幣保留部29にある紙幣を返却する場合には、紙幣保留部29の装置前面側の壁面が開いて、操作者は扉24から紙幣を取り出すことができるようになっている。扉24は、紙幣の取り出しが可能な状態になれば、自動的に開くようになっている。なお、後述のように、紙幣保留部29内に保留された紙幣は、操作者により紙幣返却口23から取り出される代わりに、貨幣収納部40内に配置された紙幣収納カセット41(後述)に送られる場合もある。
搬送部25は、紙幣処理装置20の内部で紙幣を1枚ずつ順次搬送する機能を有している。具体的には、搬送部25において、紙幣は一対のベルト間に挟まれて搬送路に沿って搬送されるようになっている。また、図3Aに示すように、搬送部25に設けられた搬送路は様々な箇所で分岐するようになっており、この搬送路が分岐する箇所には分岐部材(図示せず)が設けられている。各分岐部材は例えば分岐爪からなり、これらの分岐部材はそれぞれ後述する制御部15により制御されるようになっている。また、搬送部25には、当該搬送部25で搬送される紙幣の識別を1枚ずつ行う識別部26が介設されている。この識別部26は、搬送部25で搬送される紙幣の金種、真偽、正損等を識別するようになっている。識別部26による紙幣の識別結果は後述する制御部15に送られるようになっている。
紙幣処理装置20の内部には、リサイクル式紙幣収納部27が複数(例えば3つ)並列に設けられている。ここで、複数のリサイクル式紙幣収納部27a〜27cは、概して金種別に紙幣を一時的に収納するようになっている。図3Aに示すように、各リサイクル式紙幣収納部27は、正逆両方向に回転可能なドラム27pをそれぞれ有しており、各ドラム27pに一対のテープが巻き取られて収納される。また、ドラム27pを逆転させると巻き取られた紙幣が1枚ずつ搬送部25に送られる。搬送部25から各リサイクル式紙幣収納部27に送られた紙幣は、この一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつ順次ドラム27pにより巻き取られるようになっている。なお、各リサイクル式紙幣収納部27は、上述のような、ドラム27pおよび一対のテープからなり紙幣が一対のテープの間に挟まれた状態でこの一対のテープごとドラム27pにより巻き取られるような構成に限定されることはなく、他の構成とすることもできる。例えば、各リサイクル式紙幣収納部27をスタッカ式(積層式)のものとしてもよい。
紙幣保留部29は、前述のように紙幣返却口23に設けられており、図3Aに示すように搬送部25に接続されている。この紙幣保留部29には、紙幣投入口21に投入された紙幣や、各リサイクル式紙幣収納部27に収納された紙幣が搬送部25により送られるようになっており、搬送部25から送られた紙幣を束状態で複数保留することができるようになっている。ここで、紙幣保留部29にある紙幣を返却する場合には、前述のように、紙幣保留部29の装置前面側の壁面が開いて、操作者は扉24から紙幣を取り出すことができるようになっている。扉24は、紙幣の取り出しが可能な状態になれば、自動的に開くようになっている。また、紙幣保留部29に紙幣が保留される際に、紙幣は一時保留板に載せられるようになっており、紙幣保留部29にある紙幣を紙幣収納カセット41に収納させる際には、この紙幣収納カセット41に設けられたステージが紙幣保留部29の一時保留板に載せられた紙幣を迎えにいき、一時保留板が退避して紙幣が落下すると、紙幣をステージ上に載せて紙幣保留部29から紙幣収納カセット41へ下降し、そしてステージ上の紙幣を上から押さえ部材で押さえて紙幣収納カセット41へ収納するようになっている。
次に、硬貨処理装置30の構成について図2および図3Bを用いて説明する。図2および図3Bに示すように、硬貨処理装置30は、当該硬貨処理装置30内への硬貨の取り込みを行う硬貨投入口31と、硬貨処理装置30内に取り込まれた硬貨のうち後述する識別部35aにより識別不能な硬貨等のリジェクトを行ったり、硬貨処理装置30内に取り込まれた硬貨のうち貨幣収納部40に収納されない硬貨を硬貨処理装置30の外部に返却したりする硬貨返却口32とを備えている。また、図3Bに示すように、硬貨処理装置30の内部には、硬貨投入口31に投入された硬貨を硬貨処理装置30内で搬送する搬送部35が設けられている。
硬貨投入口31は、操作者により1または複数の硬貨が一括して投入されるよう構成されている。この硬貨投入口31に投入された硬貨は、硬貨処理装置30の内部に送られるようになっている。硬貨返却口32は、搬送部35の下流側端部に接続されており、この搬送部35から送られた硬貨を貯留するようになっている。操作者はこの硬貨返却口32に貯留された硬貨を取り出すことができるようになっている。ここで、硬貨返却口32には、前述のように、硬貨処理装置30内に取り込まれた硬貨のうち後述する識別部35aにより識別不能な硬貨等が送られるとともに、硬貨処理装置30内に取り込まれた硬貨のうち貨幣収納部40に収納されない硬貨が送られるようになっており、このような硬貨が硬貨返却口32により硬貨処理装置30の外部に返却されるようになっている。
図3Bに示すように、硬貨処理装置30の内部には硬貨繰出部33が設けられている。この硬貨繰出部33は硬貨投入口31に連通しており、操作者により硬貨投入口31から投入された硬貨を一時的に貯留するとともに、この貯留された硬貨を後述する搬送部35に繰り出すようになっている。
搬送部35は、硬貨処理装置30の内部で硬貨を1枚ずつ順次搬送する機能を有している。図3Bに示すように、搬送部35の上流側端部および下流側端部は、硬貨繰出部33および硬貨返却口32にそれぞれ接続されている。また、搬送部35には、当該搬送部35で搬送される硬貨の識別を1枚ずつ行う識別部35aが介設されている。この識別部35aは、搬送部35で搬送される硬貨の金種や真偽等を識別するようになっている。識別部35aによる紙幣の識別結果は後述する制御部15に送られるようになっている。
硬貨処理装置30の内部には、筒状の上入れ上出しタイプのリサイクル式硬貨収納部34が複数(例えば6つ)並列に設けられており、各リサイクル式硬貨収納部34はそれぞれ鉛直方向に延びるようになっている。ここで、複数のリサイクル式硬貨収納部34a〜34fは、概して金種別に硬貨を積層状態で一時的に収納するようになっている。
図3Bに示すように、搬送部35の途中部分には、硬貨繰出部33から下流側に向かって順に、間隔をおいて7つの選別孔36が設けられている。ここで、7つの選別孔36のうち最も上流側にある選別孔36(オーバーフロー用の選別孔36)は、搬送部35から後述する横方向搬送部38に直接硬貨を送るために設けられている。具体的には、最も上流側にある選別孔36は、識別部35aによる硬貨の識別結果が所定の条件を満たしたときに(例えば、識別部35aにより識別された硬貨の金種に対応するリサイクル式硬貨収納部34が満杯であったときに)、この硬貨を横方向搬送部38上に送るようになっている。また、上流側から2番目〜7番目の選別孔36は、それぞれ各リサイクル式硬貨収納部34a〜34fに対応するものである。
図3Bに示すように、鉛直方向にそれぞれ延びる各リサイクル式硬貨収納部34の上部には、硬貨を一時的に保留する金種別硬貨一時保留部39が設けられている。7つの選別孔36のうち最も上流側にある選別孔36以外の各選別孔36を介して搬送部35から落下した硬貨は、まず金種別硬貨一時保留部39により一時的に保留されるようになっている。そして、この金種別硬貨一時保留部39に保留された硬貨が各リサイクル式硬貨収納部34に収納されるようになっている。また、この金種別硬貨一時保留部39は投出部材を有しており、この投出部材により、金種別硬貨一時保留部39に保留された硬貨を後述する横方向搬送部38上に投げ出すこともできるようになっている。一方、各リサイクル式硬貨収納部34内に収納された硬貨がこのリサイクル式硬貨収納部34から取り出される場合には、まずリサイクル式硬貨収納部34の下部に設けられたステージ(図示せず)が上方に持ち上げられ、ステージ上の硬貨が金種別硬貨一時保留部39に送られ、そしてこの硬貨は金種別硬貨一時保留部39の投出部材により横方向搬送部38上に投げ出されるようになっている。
図3Bに示すように、硬貨処理装置30の内部には硬貨保留部37aが設けられており、この硬貨保留部37aの上部にはシュート37bが設置されている。ここで、後述する横方向搬送部38からシュート37bの上部に送られた硬貨は、当該シュート37b内を通過して硬貨保留部37aに送られるようになっている。硬貨保留部37aに一時的に保留された硬貨は、貨幣収納部40内に配置された硬貨収納カセット42(後述)に送られるようになっている。
図3Bに示すように、硬貨処理装置30の内部において、鉛直方向にそれぞれ延びる各リサイクル式硬貨収納部34の近傍には、例えば略水平方向に延びる循環ベルト38aを有する横方向搬送部38が設けられている。循環ベルト38aは図3Bの時計回りおよび反時計回りの両方に循環移動可能となっている。また、横方向搬送部38の一端は硬貨繰出部33内に位置しており、横方向搬送部38の他端はシュート37bの上部の近傍に位置している。ここで、循環ベルト38aが図3Bにおける反時計回りに回転したときには、横方向搬送部38上にある硬貨は硬貨繰出部33に送られるようになっている。一方、循環ベルト38aが図3Bにおける時計回りに回転したときには、横方向搬送部38上にある硬貨はシュート37bに送られ、最終的には硬貨保留部37aで保留されることとなる。
次に、貨幣収納部40の構成について図2を用いて説明する。図2に示すように、貨幣収納部40は、貨幣処理機10の筐体11の下部に設けられている。この貨幣収納部40は、図3Aおよび図3Bに示すように、紙幣を収納する紙幣収納カセット41、および硬貨を収納する硬貨収納カセット42を有している。紙幣収納カセット41には、紙幣処理装置20の紙幣保留部29に保留された紙幣が収納されるようになっている(図3A参照)。硬貨収納カセット42には、硬貨処理装置30の硬貨保留部37aに保留された硬貨が収納されるようになっている(図3B参照)。そして、例えば売上金の回収業務を委託された警備会社の警備員等の収集特定者によって、貨幣収納部40の各カセット41、42が筐体11の前面側へ引き出され、この収集特定者が各カセット41、42自体を回収するようになっている。
ここで、前述のように、紙幣処理装置20や硬貨処理装置30は店舗側に管理権限(第1の管理権限)がある。一方、貨幣収納部40は収集特定者側に管理権限(第2の管理権限)がある。このため、紙幣処理装置20におけるリサイクル式紙幣収納部27や、硬貨処理装置30におけるリサイクル式硬貨収納部34にある紙幣や硬貨に対する様々な処理や、この紙幣や硬貨の入出金情報や在高データへのアクセスは店舗側の権限のある操作者のみが行うことができる。一方、貨幣収納部40にある紙幣や硬貨の回収は収集業者の収集特定者のみが行うことができる。
次に、貨幣処理機10に設けられた他の様々な機構について説明する。図2に示すように、貨幣処理機10の筐体11の上面には、操作者が貨幣処理機10の制御部15(後述)に対して様々な指令を行うための操作部45、および貨幣処理機10における貨幣の処理内容等を表示する表示部44が設けられている。ここで、操作部45は、例えばテンキーや確定キー、スタートキー、取消キーならびにリセットキーを有しており、操作者が各キーを押すことにより貨幣処理機10の制御部15に対して様々な指令を行うことができるようになっている。表示部44は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)から構成されている。
図5に、表示部44における表示内容を具体的に示す。図5(a)に示すように、表示部44の初期状態において、枚数計数キー、店舗金キー、警備回収キー、管理業務キー、両替キー、逆両替キー、納金キー、大量納金キーがそれぞれ表示部44に表示されている。そして、操作部45によりこれらの複数のキーの中から1つのキーを選ぶようになっている。ここで、操作部45により枚数計数キーが選択されると、貨幣処理機10において店員等により後述する計数処理が行われる。また、操作部45により店舗金キーが選択されると、表示部44における表示が図5(b)に示す画面に切り替わる。図5(b)に示す画面において、操作部45により入金キーおよび出金キーの中から1つのキーを選ぶようになっている。店舗金キーを選択した後、入金キーまたは出金キーを選択した場合の貨幣処理機10の動作については後述する。また、操作部45により警備回収キーが選択されると、貨幣処理機10において収集特定者により後述する警備回収処理が行われる。また、操作部45により管理業務キーが選択されると、貨幣処理機10が管理業務モードとなる。また、操作部45により両替キー、逆両替キー、納金キー、大量納金キーが選択されると、貨幣処理機10において店員等により後述する両替処理、逆両替処理、納金処理、大量納金処理がそれぞれ行われる。
また、筐体11の前面には、貨幣処理機10における貨幣の処理内容等を印字するプリンタ43、および操作者の操作権限の確認を行うためのカードリーダ46がそれぞれ設けられている。カードリーダ46は、操作者が携帯するIDカードのID情報の読み取りを行うようになっている。
次に、貨幣処理機10における各構成要素の制御を行う制御部15について図4を用いて説明する。制御部15は貨幣処理機10の筐体11内に設置されている。
図4に示すように、制御部15には、紙幣処理装置20の各構成要素(例えば、搬送部25、識別部26、リサイクル式紙幣収納部27、紙幣ステージ28、紙幣保留部29、扉24等)、硬貨処理装置30の各構成要素(例えば、硬貨繰出部33、搬送部35、識別部35a、横方向搬送部38、金種別硬貨一時保留部39を含むリサイクル式硬貨収納部34、硬貨保留部37a等)、貨幣収納部40、表示部44、操作部45、プリンタ43、カードリーダ46、記憶部47等が接続されている。また、制御部15にはインターフェースを介してコントローラ12(17)が接続されている。
制御部15には、紙幣処理装置20の識別部26による紙幣の識別結果や、硬貨処理装置30の識別部35aによる硬貨の識別結果が送られるようになっている。また、制御部15には、操作部45からの入力やカードリーダ46によりカードから読み取られた操作者のID情報等の情報が送られるようになっている。
また、制御部15は、貨幣処理機10の操作が行われる際は操作部45やカードリーダ46から入力された操作者のID情報をもとに操作者の権限の確認を行う。また、制御部15は、紙幣処理装置20や硬貨処理装置30の各構成要素を制御したり、表示部44、プリンタ43等を制御したりするようになっている。
現金センター13またはデータセンター14は、コントローラ12(17)を介して、貨幣処理機10に対して当該貨幣処理機10の各種処理に係る指令の信号を送信するようになっている。具体的には、現金センター13は貨幣処理機10に対して、締めコマンド、引渡コマンド、警備回収コマンド、納金コマンド、出金コマンド、補充コマンド、精算コマンド、両替コマンド、逆両替コマンド、枚数計数コマンド、店舗金コマンド、リセットコマンド、確定コマンド、スタートコマンド、ロック解除コマンド、およびプログラムダウンロードコマンドからなる群のうち少なくとも1つのコマンドに係る信号を送信するようになっている。
また、現金センター13またはデータセンター14は、コントローラ12(17)を介して、貨幣処理機10から当該貨幣処理機10における貨幣の処理状況に係る情報の信号を受信するようになっている。具体的には、データセンター14は、締めデータ、引渡データ、警備回収データ、リサイクル式貨幣収納部在高データ、納金データ、出金データ、補充データ、精算データ、両替データ、逆両替データ、枚数計数データ、在高データ、店舗金データ、システムデータ、障害データ、およびプログラムデータからなる群のうち少なくとも1つのデータに係る信号を貨幣処理機10から受信するようになっている。
ここで、現金センター13またはデータセンター14は、コントローラ12(17)および制御部15を介して、貨幣処理機10の紙幣処理装置20、硬貨処理装置30および貨幣収納部40のそれぞれに対して信号の送受信を行うようになっている。
次に、このような構成からなる貨幣処理機10の動作について説明する。
上述のような貨幣処理機10の動作としては、インターフェース確認モード、運用モードおよび保守メンテナンスモードの3つのモードがある。操作者は、操作部45により、インターフェース確認モード、運用モードあるいは保守メンテナンスモードを選択することができる。
インターフェース確認モードとは、貨幣処理機10の初期状態において、すなわち貨幣処理機10が導入された際に、インターフェースにより貨幣処理機10が上位装置等に通信接続されるか否かを確認するためのモードである。このようなインターフェース確認モードにおいて、インターフェースにより貨幣処理機10が上位装置等に通信接続されたときには、上位装置等から貨幣処理機10に様々な設定データが送られる。
運用モードには、貨幣処理機10が現金センター13やデータセンター14等に通信接続された状態のオンラインモードと、貨幣処理機10と外部との通信接続が遮断された状態のオフラインモードの2つの状態がある。オンラインモードには開店モードと閉店モードの2つのモードがあり、開店モードにおいて、操作者は後述する補充処理、納金処理、出金処理、引渡処理、大量引渡処理、両替処理、逆両替処理、精査処理、計数処理等を行うことができる。また、この開店モードにおいては、例えば売上金の回収業務を委託された収集業者の収集特定者によって、貨幣収納部40の各カセット41、42自体の回収を行うこともできる。一方、閉店モードにおいては、収集特定者による貨幣収納部40の各カセット41、42の回収のみしか行うことができない。なお、これらの開店モードおよび閉店モードの切り換えは、時間帯等による自動での切り替えも可能である。一方、オフラインモードにおいては、現金センター13やデータセンター14等に対する情報の伝達は行われず、納金処理等の処理結果は貨幣処理機10の記憶部47に記憶されることとなる。上述の各モードの選択は、操作者が操作部45により行うことができる。
保守メンテナンスモードの際に、保守員が貨幣処理機10の紙幣処理装置20や硬貨処理装置30、貨幣収納部40の各構成要素の保守メンテナンスを行う。このような保守メンテナンスは、貨幣処理機10が設置された現場で行ってもよく、貨幣処理機10を工場等に持ち帰ってこの工場内で行ってもよい。
上述した補充処理、納金処理、出金処理、引渡処理、大量引渡処理、両替処理、逆両替処理、精査処理、計数処理、締め処理、警備回収処理の各々の詳細について以下に説明する。以下に示す各処理は、制御部15が各構成要素を制御することにより行われる。また、後に詳述するように、以下に示す補充処理、納金処理、出金処理、引渡処理、大量引渡処理、両替処理、逆両替処理、精査処理、計数処理、締め処理、警備回収処理の各々は、操作者により操作部45を介して制御部15に対して各種の命令がなされることにより、あるいは現金センター13またはデータセンター14からコントローラ12(17)を介して制御部15に対して各種の命令がなされることにより行われる。
<補充処理>
まず、紙幣や硬貨の補充処理について簡単に説明する。紙幣や硬貨の補充処理とは、紙幣を金種毎に紙幣処理装置20の各リサイクル式紙幣収納部27に補充したり、硬貨を金種毎に硬貨処理装置30の各リサイクル式硬貨収納部34に補充したりする処理のことをいう。補充処理が行われると、補充された紙幣や硬貨の金額または金種毎の枚数である貨幣補充量が日時や操作者ID等とともに補充データとして記憶部47に記憶される。また、記憶部47に記憶されている各リサイクル式紙幣収納部27や各リサイクル式硬貨収納部34に収納されている紙幣や硬貨の金額または金種毎の枚数である貨幣リサイクル部在高は、貨幣補充量が加算されて更新される。
<納金処理>
次に、紙幣や硬貨の納金処理について簡単に説明する。納金処理には、引渡連動形態のものと引渡非連動形態のものがある。引渡連動形態における納金処理とは、貨幣処理機10に対して貨幣の納金を行い、そのまま後述する引渡処理が連続して実行されるモードのことをいう。具体的には、紙幣はリサイクル式紙幣収納部27に一時保留し(納金)、その後、紙幣保留部29に保留し、最後に紙幣収納カセット41に収納させる(引渡)。また、硬貨は金種別硬貨一時保留部39に保留し(納金)、その後、硬貨保留部37aに保留し、最後に硬貨収納カセット42に収納させる(引渡)。そして、納金された紙幣や硬貨の金額または金種毎の枚数である貨幣納金量が日時や操作者ID等とともに引渡連動形態の納金データとして記憶部47に記憶される。また、記憶部47に記憶されている、貨幣収納部40の紙幣収納カセット41や硬貨収納カセット42に収納されている紙幣や硬貨の金額または金種毎の枚数である貨幣収納部在高は、貨幣納金量が加算されて更新される。一方、引渡非連動形態における納金処理は、単に貨幣処理機10に対して貨幣の納金のみが行われるモードのことをいう。この納金の後、貨幣納金量が日時や操作者ID等とともに引渡非連動形態の納金データとして記憶部47に記憶され、貨幣リサイクル部在高は貨幣納金量が加算されて更新される。その後、貨幣収納部40へ貨幣の引き渡しを行いたければ、独立して引渡処理(後述)を行うこととなる。なお、引渡連動形態および引渡非連動形態は、貨幣処理機10の設置時に設定されるようになっている。
<出金処理>
次に、紙幣や硬貨の出金処理について簡単に説明する。紙幣や硬貨の出金処理とは、紙幣処理装置20の各リサイクル式紙幣収納部27に収納された紙幣を当該紙幣処理装置20の外部に出したり、硬貨処理装置30の各リサイクル式硬貨収納部34に収納された硬貨を当該硬貨処理装置30の外部に出したりする処理のことをいう。出金処理が行われると、出金された紙幣や硬貨の金額または金種毎の枚数である貨幣出金量が日時や操作者ID等とともに引渡連動形態の納金データとして記憶部47に記憶される。また、貨幣リサイクル部在高は、貨幣出金量が減算されて更新される。
<引渡処理>
次に、紙幣や硬貨の引渡処理について説明する。ここで、紙幣や硬貨の引渡処理とは、紙幣処理装置20の各リサイクル式紙幣収納部27に収納された紙幣を貨幣収納部40の紙幣収納カセット41に送ったり、硬貨処理装置30の各リサイクル式硬貨収納部34に収納された硬貨を貨幣収納部40の硬貨収納カセット42に送ったりする処理のことをいう。このような引渡処理が行われると、各リサイクル式紙幣収納部27や各リサイクル式硬貨収納部34から貨幣収納部40に送られた紙幣や硬貨の管理権限は第1の管理権限下(店舗側の管理権限下)から第2の管理権限下(収集特定者側の管理権限下)に変更される。そして、貨幣リサイクル部在高は、引渡処理が行われた紙幣や硬貨の金額や金種毎の枚数である貨幣引渡量分だけ減少し、一方、貨幣収納部在高は、引渡処理が行われた紙幣や硬貨の金額や金種毎の枚数である貨幣引渡量分だけ増加する。貨幣引渡量は、日時や操作者ID等とともに引渡データとして記憶部47に記憶される。
上述のような引渡処理において、紙幣や硬貨が貨幣収納部40に送られると、貨幣引渡量に相当する金額が、収集業者に関連する金融機関の口座から、店舗に関連する金融機関の口座に入金される。すなわち、店舗側からすれば、管理権限下ではなくなった紙幣や硬貨に相当する金額が、店舗に関連する金融機関の口座に入金されることとなる。
<大量引渡処理>
次に、紙幣や硬貨の大量引渡処理について簡単に説明する。ここで、紙幣や硬貨の大量引渡処理とは、大量の紙幣を貨幣収納部40の紙幣収納カセット41内に引渡したり、大量の硬貨を貨幣収納部40の硬貨収納カセット42内に引渡したりする処理のことをいう。このような大量引渡処理においても、上述した引渡処理と同様に、紙幣処理装置20や硬貨処理装置30から貨幣収納部40に送られた紙幣や硬貨の管理権限は第1の管理権限下(店舗側の管理権限下)から第2の管理権限下(収集特定者側の管理権限下)に変更される。また、貨幣収納部40に送られた紙幣や硬貨に相当する金額が、収集特定者に関連する金融機関の口座から、店舗に関連する金融機関の口座に入金される。
<両替処理、逆両替処理>
次に、紙幣や硬貨の両替処理および逆両替処理について説明する。ここで、紙幣や硬貨の両替処理および逆両替処理とは、紙幣や硬貨を紙幣処理装置20内や硬貨処理装置30内に取り込み、合計金額は同じであるが紙幣処理装置20内や硬貨処理装置30内に取り込んだ紙幣や硬貨の金種とは異なる金種の紙幣や硬貨を紙幣処理装置20や硬貨処理装置30の外部に戻すような処理のことをいう。
<精査処理>
次に、紙幣や硬貨の精査処理について簡単に説明する。紙幣の精査処理とは、紙幣処理装置20内にある紙幣を計数し、紙幣リジェクト口22に出して枚数や金額を確認した後、再度入金させるような処理のことをいう。また、硬貨の精査処理とは、硬貨処理装置30内にある硬貨を計数し、硬貨返却口32に出して枚数や金額を確認した後、再度入金させるような通常の精査処理方法と、各リサイクル式硬貨収納部34にある硬貨を横方向搬送部38上へ送り、硬貨繰出部33により繰り出して搬送部35で搬送し、金種別硬貨一時保留部39から各リサイクル式硬貨収納部34に戻すようにした自動精査処理方法の2つの方法がある。ここで、硬貨の精査処理において、前者の方法を行うか後者の方法を行うかは、操作者が表示部44を見ながら操作部45により選択することができるようになっている。
<計数処理>
次に、紙幣や硬貨の計数処理について簡単に説明する。紙幣や硬貨の計数処理とは、手元にある紙幣や硬貨がいくらあるかを計数する処理である。具体的には、紙幣の計数処理とは、紙幣処理装置20内に紙幣を送り、正常な紙幣については紙幣保留部29で一時保留し、異常な紙幣については紙幣リジェクト口22に送ってリジェクトし、この際に紙幣の計数を行い、最終的に扉24が自動的に開いて紙幣保留部29にある紙幣が操作者により取り出されるような処理のことをいう。一方、硬貨の計数処理とは、硬貨処理装置30内に硬貨を送り、正常な硬貨についてはオーバーフロー用の選別孔36を通って横方向搬送部38に送られ、異常な硬貨については硬貨返却口32に送られ、このリジェクト硬貨を取り除いてから、横方向搬送部38に送られた硬貨を硬貨繰出部33、搬送部35を介して硬貨返却口32に送ってこの硬貨返却口32にある硬貨が操作者により取り出されるような処理のことをいう。
<締め処理>
次に、締め処理について簡単に説明する。操作者により操作部45を介して制御部15に対して締め命令がなされると、あるいは現金センター13またはデータセンター14からコントローラ12(17)を介して制御部15に対して締め命令がなされると、対象期間内に、具体的には前回の締め処理から今回の締め処理までの間に、引渡処理によって紙幣収納カセット41に収納された紙幣および硬貨収納カセット42に収納された硬貨の金種毎の枚数または合計金額もしくは金種毎の金額のデータである締めデータを集計する。そして、この締めデータが中央制御装置に送信される。前述の口座への入金は、引渡処理の都度行ってもよく、あるいは、この締め処理時に、締めデータに基づいて、対象期間内の引渡処理の分をまとめて行ってもよい。
<警備回収処理>
次に、回収処理について説明する。収集業者の収集特定者により操作部45を介して回収処理の指令が制御部15に送られたとき、制御部15は貨幣収納部40の扉のロックを解除し、紙幣収納カセット41と硬貨収納カセット42とを取り出し可能とする。収集業者の収集特定者が、各カセットを取り出して代わりの空のカセットと交換して扉を閉じると、回収された紙幣や硬貨の金種毎の枚数または合計金額もしくは金種毎の金額のデータである回収データが中央制御装置に送信される。
以上の各処理は、納金処理の引渡連動態様の引渡処理を除き、操作部45を操作して各処理を選択する等の必要な入力を行い、スタートキーを押下することにより開始される。また、補充処理、納金処理においては、取消キーが押下できるタイミングで確定キーを押下すると、処理が確定して終了する。
あるいは、前述のように、現金センター13またはデータセンター14が貨幣処理機10に対して、締め命令、引渡命令、警備回収命令、納金命令、出金命令、補充命令、精算命令、両替命令、逆両替命令、枚数計数命令、店舗金命令、リセット命令、確定命令、スタート命令、ロック解除命令、およびプログラムダウンロード命令からなる群のうち少なくとも1つの命令に係る信号を送信するようになっている。これらの命令は、上述の各処理における操作部45の操作に代わるものである。
また、貨幣処理機10から現金センター13またはデータセンター14に、締めデータ、引渡データ、警備回収データ、リサイクル式貨幣収納部在高データ、納金データ、出金データ、補充データ、精算データ、両替データ、逆両替データ、枚数計数データ、在高データ、店舗金データ、システムデータ、障害データ、およびプログラムデータからなる群のうち少なくとも1つのデータに係る信号を送信するようになっている。
このようにデータセンター14または現金センター13から貨幣処理機10の情報を得ることができるので、店舗内に権限のある操作者が常駐していなくとも、貨幣処理システムの運用ができる。各データについて、データを取得した日時や店舗識別情報、貨幣処理機識別情報を含め、いつ、どの貨幣処理機から取得したデータであるかを明確にする。また、締めデータ、引渡データ、警備回収データ、納金データ、出金データ、補充データ、精算データ、両替データ、逆両替データ、枚数計数データおよび障害データについては、操作者のID情報等、操作者に関する情報や操作を行った日時も含めることにより、誰がいつどの貨幣処理機10にどのように貨幣に関する操作を行ったのかを管理することができる。
本実施の形態に係る貨幣処理機10においては、制御部15は、リサイクル式紙幣収納部27やリサイクル式硬貨収納部34に収納されている紙幣や硬貨の貨幣量を、複数の区分の貨幣量を用いて管理するようになっている。より具体的には、制御部15は、リサイクル式貨幣収納繰出部(以下では、リサイクル式紙幣収納部27とリサイクル式硬貨収納部34を合わせて、リサイクル式貨幣収納繰出部とする)の貨幣量を、第1の区分の貨幣量および第2の区分の貨幣量の少なくとも2つの区分の貨幣量を用いて管理し、この貨幣量が変化する際に、第1の区分の貨幣量について変化量を制御部15に入力でき、この変化量を、第1の区分の貨幣量に対して加算または減算することができるようになっている。ここで、制御部15は、貨幣量について、合計金額、あるいは貨幣の金種毎の数量または金額を管理するようになっている。また、複数の区分の貨幣量を合計すると、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の総量となるようになっている。
さらに詳細には、図6(a)に示すように、制御部15は、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の貨幣量について、店舗側に管理権限がある店舗金と、収集特定者側に管理権限が移されるべき売上金とに分けて管理するようになっている。この際に、制御部15は、店舗金について、紙幣や硬貨の合計金額、あるいは紙幣や硬貨の金種毎の数量または金額を管理するとともに、売上金について、紙幣や硬貨の合計金額、あるいは紙幣や硬貨の金種毎の数量または金額を管理することとなる。
より具体的に説明すると、図6(a)に示すように、貨幣処理機10の機内の貨幣の在高は、貨幣収納部40における貨幣の在高(すなわち、引渡済の金額)と、リサイクル式貨幣収納繰出部における貨幣の在高(引渡前金額)との合計値となる。そして、リサイクル式貨幣収納繰出部における貨幣の在高は、店舗金の在高と売上金の在高との合計値となる。
本実施の形態の貨幣処理機10の動作について、図8および図9に示すフローチャートを用いてより詳細に説明する。
まず、操作者が携帯するIDカードのID情報をカードリーダ46により読み取ることにより、操作者のID情報を取得する(図8のSTEP1)。次に、表示部44における表示が図5(a)に示すような待機状態の画面となっているときに、操作部45により納金キーを選択した場合には、以下に示す納金処理が行われる(図8のSTEP2の「YES」)。納金処理が行われる際に、まず、操作者によって店舗金の入金額(入金量)が操作部45により制御部15に入力される(図8のSTEP3)。
そして、貨幣が投入口に投入された後、操作者がスタートキーを押下すると(図8のSTEP4の「YES」)、納金貨幣の計数とリサイクル式貨幣収納繰出部における納金貨幣の一時保留が行われる(図8のSTEP5)。その後、確定キーが押下されると(図8のSTEP7の「YES」)、リサイクル式貨幣収納繰出部における納金貨幣の収納処理が行われる(図8のSTEP8)。
この際に、制御部15は、操作者によって制御部15に入力された入金量を、店舗金区分の貨幣量に加算する(図8のSTEP9)。また、制御部15は、納金処理において計数された貨幣量から入金量を減算した貨幣量を、売上金区分の貨幣量に加算する(図8のSTEP10)。なお、納金処理においてリサイクル式貨幣収納繰出部に収納された貨幣量の区分として、3つ以上の貨幣量の区分が設けられている場合には、納金処理においてリサイクル式貨幣収納繰出部に収納された貨幣量から入金量を減算した貨幣量を、店舗金以外の複数の区分の貨幣量に分けて加算してもよい。また、貨幣量を金種毎の数量または金額で管理している場合、納金処理が行われた貨幣では入金量を構成できない場合があるが、入金量より多くなるように納金処理が行われた貨幣を構成して店舗金に加算し、入金量との差を店舗金の貨幣で構成して店舗金から減算する。
なお、制御部15は、入力された操作者のID情報に対応する、操作者への貸与済店舗金の金額を入金量とするようになっていてもよい。ここで、貸与済店舗金とは、各キャッシュレジスタ18の釣銭用貨幣等を目的として店員等が貨幣処理機10から出金処理を行った貨幣のことをいう。すなわち、貨幣処理機10に収納される店舗金が、各キャッシュレジスタ18に貸与されるような態様となる。
なお、この際に、制御部15に入力される識別情報としては、操作者のID情報に限定されることはない。他の例としては、例えば、キャッシュレジスタ18の識別番号、あるいは操作者以外の担当者のID情報等を、識別情報として制御部15に入力してもよい。この場合、制御部15は、入力された識別情報に対応する所定の金額を入金量とする。
また、操作者がスタートキーを押下し(図8のSTEP4の「YES」)、納金貨幣の計数とリサイクル式貨幣収納繰出部における納金貨幣の一時保留が行われた(図8のSTEP5)後に、操作者が確定キーではなく取消キーを押下すると(図8のSTEP6の「YES」)、リサイクル式貨幣収納繰出部に一時保留された納金貨幣が筐体11の外部に返却される(図8のSTEP11)。
なお、上述のような納金処理において、リサイクル式貨幣収納繰出部がフルとなった場合は、制御部15は、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨のうち金種毎の数量または金額の店舗金に相当する貨幣を除く貨幣の一部または全部を貨幣収納部40に送らせる。このことにより、リサイクル式貨幣収納繰出部には、店舗金に相当する貨幣が残ることとなる。
次に、引渡処理について説明する。表示部44における表示が図5(a)に示すような待機状態の画面となっているときに、操作部45により引渡キーを選択した場合には、以下に示す引渡処理が行われる(図8のSTEP12の「YES」)。
まず、売上金区分の貨幣量を引渡貨幣量に決定する(図8のSTEP13)。あるいは、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の貨幣量から、店舗金を減算して求めた貨幣量を引渡貨幣量としてもよい。
次に、操作者がスタートキーを押下すると(図8のSTEP14の「YES」)、制御部15は、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている貨幣のうち引渡貨幣量の貨幣を貨幣収納部40に送らせる(図8のSTEP15)。このことにより、リサイクル式貨幣収納繰出部には、引渡処理時点で貨幣処理機に収納されている店舗金に相当する貨幣が残ることとなる。そして、制御部15は、売上金区分の貨幣量から引渡貨幣量を減算する(図8のSTEP16)。なお、引渡処理中に貨幣収納部40内の紙幣収納カセット41と硬貨収納カセット42の少なくとも一方が満杯となったときは、少なくとも満杯になった方のカセットへの引渡処理は中止する(満杯という状態は、カセット内の紙幣や硬貨の収納量を検知するセンサやカセットへの収納枚数等により検知される)。
また、表示部44における表示が図5(a)に示すような待機状態の画面となっているときに、操作部45により店舗金キーを選択した場合には、以下に示す店舗金処理が行われる(図9のSTEP21の「YES」)。店舗金キーが選択されると、表示部44における表示が図5(b)に示すような画面に切り替わる。なお、店舗金処理が選択されない場合には(図9のSTEP21の「NO」)、他の店舗側処理が行われる。
図5(b)に示すような表示部44の画面において、操作者が入金キーを選択した場合には(図9のSTEP22の「入金を選択」)、以下に示す入金処理が行われる。具体的には、操作者が入金キーを選択した後、スタートキーを押下した場合には(図9のSTEP23の「YES」)、投入口に投入された入金貨幣の計数とリサイクル式貨幣収納繰出部における入金貨幣の一時保留が行われる(図9のSTEP24)。その後、確定キーが押下されると(図9のSTEP26の「YES」)、リサイクル式貨幣収納繰出部における入金貨幣の収納処理が行われる(図9のSTEP27)。この際に、制御部15は、計数された入金貨幣の貨幣量を、店舗金区分の貨幣量に加算する(図9のSTEP28)。なお、一時保留中にリサイクル式貨幣収納繰出部のリサイクル式紙幣収納部27とリサイクル式硬貨収納部34の少なくとも一方が満杯となったときは、少なくとも満杯となった方のリサイクル式紙幣収納部27とリサイクル式硬貨収納部34への一時保留は中止され、投入された貨幣は返却される。
また、操作者がスタートキーを押下し(図9のSTEP23の「YES」)、入金貨幣の計数とリサイクル式貨幣収納繰出部における入金貨幣の一時保留が行われた(図9のSTEP24)後に、操作者が確定キーではなく取消キーを押下すると(図9のSTEP25の「YES」)、リサイクル式貨幣収納繰出部に一時保留された入金貨幣が筐体11の外部に返却される(図9のSTEP29)。
一方、図5(b)に示すような表示部44の画面において、操作者が出金キーを押下した場合には(図9のSTEP22の「出金を選択」)、以下に示す出金処理が行われる。具体的には、出金処理が行われる際に、操作者によって出金額(出金量)が操作部45により制御部15に入力される(図9のSTEP30)。そして、操作者がスタートキーを押下すると(図9のSTEP31の「YES」)、制御部15は、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨から、出金量に相当する紙幣や硬貨を筐体11の外部に投出させる(図9のSTEP32)。また、制御部15は、店舗金区分の貨幣量から、出金した貨幣量を減算する(図9のSTEP33)。この際に、制御部15は、店舗金区分の貨幣量が、出金した貨幣量よりも小さい場合には、不足する貨幣量を負の値として店舗金の管理を行う。また、制御部15は、カードリーダ46に読み取られた操作者のID情報と出金量とを関連付けて記憶部47に記憶させる(図9のSTEP34)。
上述のような出金処理が行われる際に、カードリーダ46により読み取られたID情報が制御部15に入力され、制御部15は、入力された操作者のID情報に対応する所定の金額を出金量とするようになっていてもよい。
以上のように、本実施の形態の貨幣処理機10によれば、制御部15は、リサイクル式貨幣収納繰出部(リサイクル式紙幣収納部27やリサイクル式硬貨収納部34)に収納されている紙幣や硬貨の貨幣量を、複数の区分の貨幣量を用いて管理するようになっている。このように、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の貨幣量について、複数の区分の貨幣量を用いて管理することにより、貨幣処理機10は1台で複数の区分の貨幣を管理することができ、この貨幣処理機10をより利便性の高いものとすることができる。
より具体的には、制御部15は、リサイクル式貨幣収納繰出部の貨幣量を、第1の区分の貨幣量(例えば、店舗側に管理権限がある店舗金)および第2の区分の貨幣量(例えば、店舗以外の者(具体的には、収集特定者側)に管理権限が移されるべき売上金)の少なくとも2つの貨幣量を用いて管理し、リサイクル式貨幣収納繰出部の貨幣量が変化する際に、第1の区分の貨幣量について変化量を制御部15へ入力でき、この変化量を、第1の区分の貨幣量に対して加算または減算するようになっている。なお、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨について、店舗側に管理権限がある店舗金と、店舗以外の者に管理権限が移されるべき売上金とに分けて管理するようにした場合には、貨幣処理機10は1台で店舗金と売上金の2つの費目を管理することができ、店舗金の在高を正確に管理することができるようになる。また、制御部15は、貨幣量について、紙幣や硬貨の合計金額、あるいは紙幣や硬貨の金種毎の数量または金額を管理するようになっている。そして、複数の区分の貨幣量を合計すると、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の総量となる。
なお、本発明による貨幣処理機は、上記の態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の貨幣量を、複数の区分の貨幣量を用いて管理するにあたり、図6(a)に示すように、店舗金と売上金とに分けて管理する代わりに、図6(b)に示すように、店舗金と収納部合計金額とに分けて管理してもよい。ここで、収納合計金額とは、リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の総量のことをいう。
リサイクル式貨幣収納繰出部に収納されている紙幣や硬貨の貨幣量を、店舗金と収納部合計金額とに分けて管理した場合、引渡非連動形態における納金処理が行われる際に、この納金処理の前に操作者によって店舗金の入金額が操作部45により制御部15に入力され、制御部15は、この入金額を店舗金に加算する。そして、制御部15は、納金処理においてリサイクル式貨幣収納繰出部に収納された貨幣量を、収納部合計金額に加算する。
また、例えば、表示部44において、図5(a)等に示すように、準備されているキーを全てLCD等により表示しているが、このような例に限定されることはない。
すなわち、図5(a)等に示すように、準備されているキーを全てLCD等により表示する場合は、貨幣処理機10の内部の貨幣の在高状況や操作者の権限等によって実際には実行することができないキーがあるときに、操作者にとってこのことがわかりづらいという問題がある。このため、貨幣処理機10の内部の貨幣の在高状況により実行することのできないキーについては消灯したり、操作者の権限を確認するまでは全てのキーを消灯して権限が確認された後にこの操作者にとって操作可能なキーを表示したりする方法を用いるということが考えられる。
上記事項について図7を用いてより詳細に説明する。貨幣処理機10のリサイクル式貨幣収納繰出部に十分な量の紙幣や硬貨がある場合には、図7(a)に示すように表示部44において全てのキーが表示される。一方、リサイクル式貨幣収納繰出部における紙幣や硬貨が不足し、両替処理を行うことができない可能性がある場合は、図7(b)に示すように表示部44において両替キーが消灯する。
また、表示部44における表示において、図7(c)に示すように操作者の権限を確認するまでは全てのキーが消灯していてもよい。この場合、例えば操作者が携帯するIDカードのID情報の読み取りがカードリーダ46により行われることによって、操作者の権限が確認されたら、図7(d)に示すようにこの操作者にとって操作可能なキーが表示される。なお、図7(d)に示されるキーは、操作者が店舗側の店員である場合における表示部44における表示内容である。
また、納金処理、両替処理、逆両替処理、出金処理、引渡処理、締め処理、警備回収処理において、現金センター13やデータセンター14側からの応答電文上にある時刻を使用して、時刻の遅れ事象が発生した場合だけでなく時刻の進み事象が発生した場合にも時刻を補正するようにしてもよい。すなわち、従来の貨幣処理機では、警備回収処理における時刻の遅れ事象のみを補正しており、時刻の進み事象については貨幣処理機の保守メンテナンス時にマニュアルで修正している。これに対して、現金センター13やデータセンター14側からの応答電文上にある時刻を使用して、時刻の遅れ事象が発生した場合だけでなく時刻の進み事象が発生した場合にも時刻を補正した場合には、短いステップで1日に何回も補正を行うことができ、時刻が進んだ場合でも、時刻の補正を的確に行うことができるようになる。