JP2010037901A - 既存建物の保存・建て替え方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】保存する建物部分1Aの上部躯体構造について補強工事を行い、保存する建物部分1Aを基礎構造から切り離して、曳き家が可能な移動機構上に仮受け支持させる段階と、保存する建物部分1Aを曳き家して、解体した建物部分1Bの跡地に構築した仮受け用基礎上まで移動させて仮置きする段階と、保存する建物部分1Aが移動し去った跡地に、保存する建物部分1Aの永続的支持が可能な新基礎構造を新築し又は増・改築する段階と、仮受け用基礎上に仮置きしておいた保存する建物部分1Aを再び曳き家して元の場所へ戻し、新築し又は増・改築した新基礎構造上へ保存する建物部分1Aを支持させて定着する段階と、先に解体した建物部分1Bの跡地に構築した新築建物用基礎4A上に新築建物を構築する。
【選択図】図2
Description
もっとも、下記の特許文献1に記載されているように、既存建物の存立に支障が生じた場合に、既存建物の敷地内にスペースの余裕があるときは、単純に既存建物を解体・撤去して建て替える方法を避ける手段として、既存建物をその存立に支障がない場所へ移動させる曳き家工法を実施することも知られている。
また、下記の特許文献2に開示された建物の建て替え方法では、解体・撤去を予定する既存建物を、ひとまず空き地へ移動させる曳き家を行い、移動した既存建物はそのまま従前通り住居などの用途に利用して、引っ越しにかかる手間や費用の負担、住民の拒絶反応を軽減する。そして、既存建物の跡地に新築建物が完成し利用可能となった後には、前記既存建物を解体・撤去する方法である。
しかし、既存建物を建て替えるにあたり、単純に既存建物を全部解体・撤去して、その跡地に新規の建物を構築する方法は、市街に新しい空間、景観を創造する意義は認められるが、他方では、時代や歴史を証言する旧い町並みや景観を全部破壊し去る結果になる。レトロな旧い町並みや景観をそのまま残したい、或いは建築物として歴史的に価値ある文化遺産や建築デザインの評価が高いもの、一時代を代表する記念碑的な建築物、文化的価値の高い町並みや景観を可能なかぎり残して時代や歴史の証言とする運動も盛んに行われており、そうした要望に応える技術開発の必要性が高まっている。もっとも、耐震性の低い旧い既存建物をそのまま残すことは、震災時の安全性の確保が懸念されるので、耐震性、耐久性との調和がとれた解決策が待望されている。
なお、旧い既存建物を保存する方法の一例として、上記特許文献3に開示された発明のように、建物の免震化を図ることも一案である。しかし、当該公知発明のように、既存建物の直下地盤に移設およ免震化のための新設基礎を併設して、既存建物を既存基礎(柱基礎)から切り離し、新設基礎上への移設を行い免震化する方法の場合は、既存建物を仮受けしつつ、その直下地盤に必要な基礎構造を増築、改築する工事を余儀なくされる。ところが前記増築、改築の基礎工事には、空間的制限があるため、大型の重機類の使用は制限され、制約された狭い地下空間で特殊な施工機械を多用して工事を行わねばならないから、工事の能率が悪く、工期が長引き、工費が嵩むという問題点がある。
既存建物1のうち保存するべき建物部分1Aを残し、他の建物部分1Bは解体・撤去して、その跡地4に新築建物用基礎4Aを構築すると共に、同新築建物用基礎4A上に、前記保存するべき建物部分1Aを曳き家して受け入れる仮受け用基礎6を設ける段階と、
前記保存する建物部分1Aの上部躯体構造について補強工事を行い、同保存する建物部分1Aを基礎構造から切り離して、曳き家が可能な移動機構7上に仮受け支持させる段階と、
前記保存する建物部分1Aを曳き家して、前記解体した建物部分1Bの跡地に構築した前記仮受け用基礎6上まで移動させて仮置きする段階と、
前記保存する建物部分1Aが移動し去った跡地に、同保存する建物部分1Aの永続的支持が可能な新基礎構造を新築し又は増・改築する段階と、
前記仮受け用基礎6上に仮置きしておいた保存する建物部分1Aを再び曳き家して元の場所へ戻し、新築し又は増・改築した新基礎構造上へ同保存する建物部分1Aを支持させて定着する段階と、
更に、先に解体した建物部分1Bの跡地に構築した前記新築建物用基礎4A上に新築建物を構築する段階とより成ることを特徴とする。
既存建物と隣接する敷地に、同既存建物を曳き家して受け入れる仮受け用基礎を構築する段階と、
既存建物の上部躯体構造について補強工事を行い、同既存建物の上部躯体構造を基礎構造から切り離し、曳き家が可能な移動機構上に仮受け支持させる段階と、
前記既存建物を曳き家して、隣接の敷地に構築した前記仮受け用基礎上まで移動させて仮置きする段階と、
前記既存建物が移動し去った跡地に、同既存建物の永続的支持が可能な新基礎構造を新築し又は増・改築する段階と、
前記隣接敷地の仮受け用基礎上に仮置きしておいた既存建物を再度曳き家して元の場所へ戻し、新築し又は増・改築した新基礎構造上へ同既存建物を支持させて定着する段階とから成ることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、上記請求項2に記載した既存建物の保存方法において、
更に、隣接の敷地に新築建物用基礎を構築し、その上に新築建物を構築する段階を含むことを特徴とする。
保存する建物部分又は既存建物が移動し去った跡地に新築し又は増・改築した新基礎構造上へ再び曳き家して戻した前記建物部分又は既存建物は、新基礎構造上に設置した免震装置により支持させて免震建物とすることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項1又は3に記載した既存建物の保存・建て替え方法において、
解体した建物部分の跡地に構築した新築建物又は隣接の敷地に構築した新築建物もそれぞれ、免震装置により支持させた免震建物として構築することを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項2〜5のいずれか一に記載した既存建物の保存・建て替え方法において、
元の場所へ曳き家して戻し保存した建物部分又は既存建物と、解体・撤去した建物部分の跡地に構築した新築建物又は隣接の敷地に構築した新築建物とは、それぞれ構造的に、および機能的に合体させることを特徴とする。
前記保存する建物部分1Aの上部躯体構造に補強工事を行い、同保存する建物部分1Aを基礎構造から切り離し、曳き家が可能な移動機構8上に仮受け支持させる。
保存する建物部分1Aを曳き家して、前記解体した建物部分の跡地4の仮受け用基礎構造7まで移動させて仮置きする。
前記保存する建物部分1Aが去った跡地には、同保存する建物部分1Aの永続的支持が可能な新基礎構造9を新築し又は増・改築する。その後、仮置きしておいた保存する建物部分1Aを再び曳き家して元の場所へ戻し、新築し又は増・改築した新基礎構造9上へ保存する建物部分1A支持させて定着する。
更に、先に解体した建物部分1Bの跡地に新築建物11を構築して既存建物の建て替え目的を達成する。
前記既存建物が移動し去った跡地に、同既存建物の永続的支持が可能な新基礎構造を新築し又は増・改築する。そして、前記隣接敷地に仮置きしておいた既存建物を再度曳き家して元の場所へ戻し、新築し又は増・改築した新基礎構造上へ同既存建物を支持させて定着し保存する。
図1〜図6は、上記請求項1および請求項4〜6の発明に係る既存建物の保存・建て替え方法の実施例を示したもので、図1は既存建物1の全体平面と、敷地境界線2との関係、そして、既存建物1のうち保存するべき建物部分1Aと、その他の解体・撤去するべき建物部分1Bとの関係、および平面計画を概念的に示している。既存建物1のうち、どの建物部分を保存し、どの建物部分を解体・撤去するかは、全て建築計画の観点で当事者が自由に定めることである。
図2では、左側の建物部分1Bは既に解体・撤去されており、その跡地4ではバックホウ5等の大型重機を入れて、後でこの跡地4に新築する建物用基礎の新築工事が進められている。もとより跡地4に構築する新築建物用基礎の構造型式は、その上に新築する建物を支持するためのものであることを考慮して、一例として図示した杭基礎4Aを構築する場合のほか、地盤改良等による直接基礎、その他の最適な型式で基礎を自由に設計、施工する。
なお、新築建物用基礎4Aの構築は、先に解体した建物部分1Bの基礎を全部解体・撤去して新築する場合と、旧い基礎構造のうちで利用可能な部分は再利用し、その上で不足、追加するべき基礎構造を増築、改築する方法のいずれかを建築条件に応じて適宜に選択して実施される。
また、前記仮受け用基礎構造6の構造を具体的に言えば、図3のように保存する建物部分1Aの基礎の深さに応じて跡地4を掘削し、保存する建物部分1Aの曳き家が可能なレベルに揃える。その上で、掘削底面に底盤6を施工し(図3)、その上に曳き家工事に使用するレール7を敷設する(図4)等々の用意が行われる。
その一方では、上記保存する建物部分1Aが去った跡地には、図5に示したように、同建物部分1Aの永続支持に必要な耐力性能や機能、構造を備えた新基礎構造9の構築を行う。新基礎構造9の構築は、旧い基礎を全部解体・撤去して新しく新築する方法、又は旧い基礎構造のうちで有用な部分は利用し、更に不足、追加するべき基礎構造を増築、改築する方法のいずれかをを行う。
図5に示す新基礎構造9は、杭基礎9Aを新設して、その杭頭部に定着用底盤9Bを構築し、更に免震装置10を設置するなど、保存する建物部分1Aの永続支持と保存に必要な構造、機能などを満たす内容で構成している。
当然、杭基礎9Aを構築する基礎工事は、平地における新築工事と同じように、空間的制限を受けないので、大型重機類を使用して効率よく実施することができる。新基礎構造9の構築は、保存する建物部分1Aが残した旧い基礎を全部解体・撤去して新しく新築する方法、又は旧い基礎構造のうちで使用可能な部分は利用し、更に不足、追加するべき基礎構造を増築、改築する方法のいずれかを選択して実施でき、自由度が大きい。
図7は、保存する建物部分1Aを免震装置10の上へ据え付けて免震化した構成の要部を示している。但し、保存する建物部分1Aの耐力性能が十分大きい場合には免震化しないことも選択肢である。
即ち、実施例1において建物の一部分が保存される代わりに、本発明では1個の既存建物が全部そっくり保存される場合である。また、実施例1では解体・撤去した建物部分1Bの跡地4であることに代わり、本発明では、既存建物を全部曳き家できる大きさ、形状の隣接敷地が確保されることを条件として同様に実施される。
先ず、既存建物に隣接する敷地を確保して、その敷地に、とりあえず同敷地上に、前記既存建物を曳き家して受け入れる仮受け用基礎を設置し、曳き家に必要なレールの敷設も行う。
次に、前記既存建物の上部躯体構造について補強工事を行い、同既存建物を基礎から切り離し、仮受け用ジャッキを使用して荷重の盛り替えを行い、曳き家を実施可能な移動機構上に既存建物の上部躯体構造仮受け支持させる。
しかる後に、前記既存建物を曳き家して、前記隣接敷地の仮受け用基礎まで移動させて仮置きする。
次に、前記既存建物が移動し去った跡地には、同既存建物1Aの永続支持に必要な新基礎構造を新築し又は増・改築する。この新基礎構造の構築はやはり、既存建物1Aが残した旧い基礎を全部解体・撤去して新築するか、又は旧い基礎のうち使用可能な部分は利用して、更に必要な構造を増築、改築する方法のいずれかで行う。
その一方、既存建物が移動し去った隣接の敷地には、必要に応じて、新築建物用基礎を構築して、新築建物をを構築(増築)する。この新築建物も免震建物として構築する場合がある。もとより、この新築建物の増築は必須の要件ではなく、隣接の敷地は庭園等のフリースペースとして利用することもできる。
また、保存した既存建物と新築建物とを構造的に、および機能的に合体させて一つの建物とすることも実施される。勿論、この実施例2の場合でも、新築建物は、自由な発想の建築計画に基づいて設計・施工すればよい。
1A 保存するべき建物部分
1B 解体・撤去する建物部分
4 跡地
4A 新築建物用基礎
7 仮受け用基礎構造(レール)
8 移動機構
9 新基礎
10 免震装置
Claims (6)
- 既存建物のうち保存するべき建物部分を残し、他の建物部分は解体・撤去し、その跡地に新築建物用基礎を構築すると共に、同新築建物用基礎上に、前記保存する建物部分を曳き家して受け入れる仮受け用基礎を設ける段階と、
前記保存する建物部分の上部躯体構造について補強工事を行い、同保存する建物部分を基礎構造から切り離し、曳き家が可能な移動機構上に仮受け支持させる段階と、
前記保存する建物部分を曳き家して、前記解体した建物部分の跡地に構築した前記仮受け用基礎上まで移動させて仮置きする段階と、
前記保存する建物部分が移動し去った跡地に、同保存する建物部分の永続的支持が可能な新基礎構造を新築し又は増・改築する段階と、
前記仮受け用基礎上に仮置きしておいた保存する建物部分を再び曳き家して元の場所へ戻し、新築し又は増・改築した新基礎構造上へ保存する建物部分を支持させて定着する段階と、
更に、先に解体した建物部分の跡地に構築した前記新築建物用基礎の上に新築建物を構築する段階とより成ることを特徴とする、既存建物の保存・建て替え方法。 - 既存建物と隣接する敷地に、同既存建物を曳き家して受け入れる仮受け用基礎を構築する段階と、
既存建物の上部躯体構造について補強工事を行い、同既存建物の上部躯体構造を基礎構造から切り離し、曳き家が可能な移動機構上に仮受け支持させる段階と、
前記既存建物を曳き家して、隣接の敷地に構築した前記仮受け用基礎上まで移動させて仮置きする段階と、
前記既存建物が移動し去った跡地に、同既存建物の永続的支持が可能な新基礎構造を新築し又は増・改築する段階と、
前記隣接敷地の仮受け用基礎上に仮置きしておいた既存建物を再度曳き家して元の場所へ戻し、新築し又は増・改築した新基礎構造上へ同既存建物を支持させて定着する段階とから成ることを特徴とする、既存建物の保存方法。 - 更に、隣接の敷地に新築建物用基礎を構築し、その上に新築建物を構築する段階を含むことを特徴とする、請求項2に記載した建物の保存方法。
- 保存するべき建物部分又は既存建物が曳き家により移動し去った跡地に新築し又は増・改築した新基礎構造上へ再び曳き家して戻した前記建物部分又は既存建物は、新基礎構造上に設置した免震装置により支持させて免震建物とすることを特徴とする、請求項1又は3に記載した既存建物の保存・建て替え方法。
- 解体した建物部分の跡地に構築した新築建物又は隣接の敷地に構築した新築建物はそれぞれ、免震装置により支持された免震建物とすることを特徴とする、請求項1又は3に記載した既存建物の保存・建て替え方法。
- 元の場所へ曳き家して戻し保存した建物部分又は既存建物と、解体・撤去した建物部分の跡地に構築した新築建物又は隣接の敷地に構築した新築建物とは、それぞれ構造的に、および機能的に合体させることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一に記載した既存建物の保存・建て替え方法。
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