JP2010034238A - 配線板 - Google Patents

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Abstract

【課題】少なくとも片面に電気配線を有し、発熱部品を実装した配線板において、放熱特性を向上させ、かつ、第1金属層3と第3金属層7の熱膨張率差が大きい場合にも、金属層と樹脂絶縁層との密着性を向上させる。さらに、前記配線板の製造工程を簡略化する。
【解決手段】厚み0.5mm以上の第1金属層3と、第2金属層5と、厚み1mm以上の第3金属層6がこの順に配置され、第1金属層3と第2金属層5がクラッド構造で一体化され、第2金属層5と第3金属層7は樹脂絶縁層6で一体化されている。そして、第1金属層3の熱膨張率をα1、第2金属層5の熱膨張率をα2、第3金属層7の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が7ppm/℃以上であるときに、α1<α2≦α3の関係になるように設定される。さらに、第2金属層5の厚みが第1金属層3の厚みの20%以上である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、発熱素子を実装した構成においても、放熱特性が高く、かつ、金属層と樹脂絶縁層との密着性が良好である配線板に関する。
電子機器に搭載する配線板は、電子機器の軽薄短小化に伴う微細配線・高密度実装の技術が求められる一方で、発熱に対応する高放熱の技術も求められている。特に、各種制御・操作に大電流を使用する自動車などにおける電子回路では、導電回路の抵抗に起因する発熱やパワー素子からの発熱が非常に多く、配線板の放熱特性は高レベルであることが必須となってきている。
その対策として、例えば、図2において、第1金属層3’である銅層に発熱素子1を実装する技術や、樹脂封止体8’で発熱素子1と第1金属層3’及び第3金属層7’を覆う技術が提案されている(特許文献1の図1)。この構成は、樹脂封止体8’により第1金属層3’の熱膨張率を低減させながら、はんだ2にかかる熱応力を抑制するものである。また、第1金属層3’と第3金属層7’を同じ材質としているため、はんだ付リフロー工程などの熱処理を行なった場合でも、樹脂絶縁層6’に熱応力が発生することがない。
しかしながら、第3金属層7’を放熱板として使用するときは、加工性がよく、かつ、安価なアルミニウムを使用することが強く望まれている。この場合、第1金属層3’の熱膨張率(銅の場合、約17ppm/℃)と第3金属層7’の熱膨張率(アルミニウムの場合、約24ppm/℃)の差が大きくなる。このため、はんだ付リフロー工程などの熱処理を行なった場合に、樹脂絶縁層6’に熱応力が発生し、金属層と樹脂絶縁層との密着性が低下するという問題がある。また、第3金属層7’の影響によりはんだ2にかかる熱応力が大きくなり、はんだ接続信頼性が低下してしまうという問題がある。
また、特許文献2には、放熱特性やはんだ接続信頼性を向上させるために、銅と低膨張材からなる熱拡散板に発熱素子を実装する技術や、発熱素子とはんだを樹脂封止体で取り囲む技術が提案されている(特許文献2の図1)。この構成は、熱拡散板の熱膨張率が約10ppm/℃と小さく、また、樹脂封止体によりはんだにかかるひずみを緩和しているため、はんだ部のクラックを抑制することができる。
しかしながら、その製造方法は、発熱素子を熱拡散板にはんだ付けした後、その熱拡散板を更に電気回路にはんだ付けするという工程が開示されており、はんだ付け工程での工数が多くなるという問題がある。また、前記熱拡散板は高価であり、発熱素子を実装する金属層には、熱伝導率が高く、かつ、安価な銅を使用することが強く望まれている。この場合、発熱素子の熱膨張率(約4ppm/℃)と銅の熱膨張率(約17ppm/℃)の差が大きくなり、はんだ接続信頼性が大幅に低下してしまうという問題がある。
特開2007−115983号公報 特開2005−56873号公報
本発明が解決しようとする第一の課題は、樹脂絶縁層を介して一体化した第1金属層と第3金属層で両表面が構成され、少なくとも第1金属層が電気配線の機能を有する配線板において、放熱特性を向上させ、かつ、第1金属層と第3金属層の熱膨張率差が大きい場合にも、熱膨張率差による樹脂絶縁層の熱応力を低減し、金属層と樹脂絶縁層との密着性を向上させることである。さらに、前記配線板の製造工程を簡略化することである。また、本発明が解決しようとする第二の課題は、前記電気配線に実装された発熱素子と第1金属層の熱膨張率差が大きい場合にも、熱膨張率差によるはんだにかかるひずみを抑制し、はんだ接続信頼性を向上させることである。
上記課題を達成するために、本発明に係る配線板(請求項1)は、厚み0.5mm以上の第1金属層と、第2金属層と、厚み1mm以上の第3金属層がこの順に配置され、少なくとも第1金属層が電気配線の機能を有する配線板において、第1金属層と第2金属層がクラッド構造で一体化され、第2金属層と第3金属層は樹脂絶縁層で一体化されている。そして、第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が7ppm/℃以上であるときに、α1<α2≦α3の関係になるように設定される。さらに、第2金属層の厚みが第1金属層の厚みの20%以上であることを特徴とする。
第1金属層の熱伝導率は、好ましくは、300W/m・K以上である(請求項2)。また、好ましくは、第1金属層が銅であり、第2金属層がアルミニウムである(請求項3)。前記樹脂絶縁層の熱伝導率は、好ましくは、4W/m・K以上である(請求項4)。
上記請求項1〜4のいずれかの配線板において、好ましくは、前記電気配線には発熱素子が実装されており、少なくとも前記発熱素子及び第1金属層を取り囲む樹脂封止体を備えている(請求項5)。
上記請求項1〜5のいずれかの配線板において、好ましくは、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続する。また第2金属層の上に複数の第1金属層を一体化する。そして複数の第1金属層の上に、複数の発熱素子のうちの対応する1つの発熱素子をはんだ付け接続して、複数の発熱素子を第2金属層とそれぞれ電気的に接続する(請求項6)。
上記請求項1〜5のいずれかの配線板において、好ましくは、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続する。そして第1金属層の上には、複数の発熱素子をそれぞれはんだ付け接続して、複数の発熱素子を第2金属層とそれぞれ電気的に接続する(請求項7)。
なお配線板には、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続し、第2金属層の上に第1金属層を一体化し、第1金属層の上に1つの発熱素子をはんだ付け接続して構成した素子ユニットを、電気的に絶縁した状態で複数個配置してもよい(請求項8)。
上記請求項1〜5のいずれかの配線板において、好ましくは、第2金属層を、第1金属層が一体化される部分と電気配線部分とから構成する。また配線部分の上には電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層を一体化する。そして第2金属層を流れる電流の方向と第4金属層を流れる電流の方向とが逆方向になるように発熱素子と第4金属層とを電気的接続手段を介して接続する(請求項9)。
本発明に係る配線板においては、第1金属層と第3金属層の間に第1金属層とクラッド構造で一体化された第2金属層を配置したので、樹脂絶縁層で熱伝導が阻害されることが少なくなり、第2金属層を介した第1金属層と第3金属層の熱伝導性は確保され、放熱特性を向上することができる。このとき、第1金属層の厚みを0.5mm以上、第3金属層の厚みを1mm以上とする。これにより、充分な放熱特性を確保することができる。
また、第1金属層と第2金属層を、クラッド構造で一体化するようにしたので、第1金属層と第2金属層をはんだ付けやろう付けで接合する工程を省略することができ、経済的である。本発明においてクラッド構造とは、2種類以上の異種金属が板厚方向に層状に重なったものであって、異種金属が金属間接合された複合材のことである。
電気配線の機能を有する第1金属層上にパワー素子等の発熱部品を実装する場合、発熱素子を実装する第1金属層には、熱伝導率が高く、かつ、安価な銅を使用することが強く望まれている。また、第3金属層を放熱板として使用するときは、加工性がよく、かつ、安価なアルミニウムを使用することが強く望まれている。この場合、銅の熱膨張率(約17ppm/℃)とアルミニウムの熱膨張率(約24ppm/℃)の差が7ppm/℃以上と非常に大きくなる。このため、はんだ付リフロー工程などの熱処理を行なった場合に、樹脂絶縁層に熱応力が発生し、金属層と樹脂絶縁層との密着性が低下する。第1金属層の厚みが0.5mm以上、第3金属層の厚みが1mm以上の場合には、前記熱応力が大きくなり、金属層と樹脂絶縁層との密着性が大幅に低下する。
しかし、本発明に係る配線板においては、第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1<α2≦α3の関係になるように設定したので、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が第2金属層で緩和され、樹脂絶縁層にかかる熱応力を低減することができる。このとき、第2金属層の厚みを、第1金属層の厚みの20%以上とする。第2金属層の厚みが20%未満の場合、第2金属層の強度が低くなり、樹脂絶縁層にかかる熱応力を低減する効果が充分に得られない。また、好ましくは、第2金属層と第3金属層の熱膨張率の差を4ppm/℃以下になるように設定する。これにより、樹脂絶縁層にかかる熱応力を充分に低減することができ、金属層と樹脂絶縁層との密着性を確実に向上することができる。
上記の構成とすることにより、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が7ppm/℃以上であっても、樹脂絶縁層にかかる熱応力を低減し、金属層と樹脂絶縁層との密着性を高めることができる。また、第1金属層の熱膨張率(α1)が15ppm/℃以上であっても、はんだ部にかかる応力を分散し、はんだ部のクラックを抑制することができる。第1金属層の熱膨張率(α1)は、好ましくは、20ppm/℃以下である。
このとき、第1金属層の熱伝導率が300W/m・K以上、樹脂絶縁層の熱伝導率が4W/m・K以上であることが好ましい。また、第1金属層が銅であり、第2金属層がアルミニウムであることが好ましい。これにより、放熱効果はより一層大きくすることができる。
また、電気配線の機能を有する第1金属層上にパワー素子等の発熱部品を実装する場合、当該パワー素子の熱膨張率は4ppm/℃程度である。一方、パワー素子直下の第1金属層が銅である場合には熱膨張率は17ppm/℃程度、アルミニウムである場合には熱膨張率は約24ppm/℃程度である。パワー素子の発熱と発熱停止による、冷熱サイクルを繰り返すと、両者の熱膨張率の差に起因して、両者を接合しているはんだ部に応力が集中し、はんだ部にクラックが発生して接続信頼性が低下する。このため、本発明の配線板において、電気配線に発熱素子が実装される場合には、少なくとも発熱素子及び第1金属層を取り囲む樹脂封止体を備えることが好ましい。これにより、はんだ部にかかる応力を分散し、はんだ部のクラックを抑制することができる。
前記樹脂封止体は、好ましくは、20℃におけるヤング率を10GPa以上とする。これにより、はんだ部にかかる応力を充分に分散することができ、はんだ部のクラックを確実に抑制することができる。また、好ましくは、20℃におけるヤング率を30GPa以下とする。これにより、パワー素子が樹脂封止体から受ける応力を抑制することができ、パワー素子の破壊を防止することができる。
本発明の配線板にパワートランジスタ等の発熱素子を実装する場合には、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続することができる。第2金属層の上には複数の第1金属層が一体化されており、当該複数の第1金属層の上に、複数の発熱素子のうちの対応する1つの発熱素子をはんだ付け接続して、複数の発熱素子を第1金属層を介して第2金属層とそれぞれ電気的に接続する。このようにすると第2金属層を熱応力の緩和手段として利用するだけでなく、第2金属層を配線として利用することができるので、配線のための部材を省略することができる。特に第2の金属層上に複数の第1金属層を一体化すると、1つの第2金属層から複数の第1金属層を介して複数の発熱素子に電力を供給することができる。第1金属層の材料の価格が高い場合には、各発熱素子に対して個別に第1金属層を設けるのが好ましい。しかしながら第1金属層を価格の安い材料によって形成する場合には、複数の発熱素子に対して1つの第1金属層を設ければよい。この場合には、使用する1つの第1金属層の大きさを複数の発熱素子を実装できる大きさにすればよい。このようにすると部品点数を減らすことができる。また第2金属層を複数の発熱素子に対して兼用する上記構成は、直流を交流に変換するインバータのブリッジ回路の一部や、交流を直流に変換する整流回路のブリッジ回路の一部を構成する場合に使用することができる。
また配線板には、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続し、第2金属層の上に第1金属層を一体化し、第1金属層の上に1つの発熱素子をはんだ付け接続して構成した素子ユニットを、電気的に絶縁した状態で複数個配置してもよい。このような複数の素子ユニットを設けると、直流―直流コンバータ等の電力変換回路も配線板上に簡単に構成することができる。
また第2金属層を、第1金属層が一体化される部分と電気配線部分とから構成した場合には、配線部分の上に電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層を一体化するのが好ましい。そして第2金属層を流れる電流の方向と第4金属層を流れる電流の方向とが逆方向になるように発熱素子と第4金属層とを電気的接続手段を介して接続すれば、第2金属層を流れる電流によって発生する磁束と、第4金属層を流れる電流によって発生する磁束とが打ち消しあうように作用するため、回路のインダクタンスを小さくすることができる。
本発明を実施する具体的な形態は、例えば、図1(a)に示すような構成が望ましい。厚み0.5mm以上の第1金属層3と、第2金属層5と、厚み1mm以上の第3金属層7がこの順に配置されている。少なくとも第1金属層3は電気配線の機能を有する。電気配線の機能を有する第1金属層3には、発熱素子1がはんだ2により実装される。そして、第1金属層3と第2金属層5が接合層4でクラッド構造で一体化されている。第2金属層5と第3金属層7は樹脂絶縁層6で一体化されている。さらに、第1金属層3の熱膨張率をα1、第2金属層5の熱膨張率をα2、第3金属層7の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が7ppm/℃以上であるときに、α1<α2≦α3の関係になるように設定される。また、第2金属層5の厚みが第1金属層3の厚みの20%以上である。好ましくは、図1(b)に示すように、少なくとも発熱素子1及び第1金属層3を取り囲む樹脂封止体8を備えている。
第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が7ppm/℃未満の場合は、樹脂絶縁層にかかる熱応力が小さいため、第2金属層を配置して熱応力を緩和する効果が小さい。一方、前記熱膨張率の差が7ppm/℃以上の場合においては、第2金属層を配置して、熱応力を緩和する効果が大きく現れる。さらに、前記熱膨張率の差が15ppm/℃以上の場合は、第1金属層と第3金属層の間に第2金属層を2層以上配置して、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差を徐々に緩和させることにより、樹脂絶縁層にかかる熱応力をさらに低減できる。このとき、それぞれ隣接する金属層の熱膨張率の差を7ppm/℃以下になるように設定することが好ましい。
また、第1金属層の熱膨張率(α1)が15ppm/℃未満の場合は、はんだにかかる応力が小さいため、樹脂封止体を配置して応力を分散する効果が小さい。一方、α1が15ppm/℃以上の場合においては、樹脂封止体を配置して応力を分散する効果が大きく現れる。前記樹脂封止体は、好ましくは、20℃におけるヤング率を10GPa以上とする。また、好ましくは、20℃におけるヤング率を30GPa以下とする。
上記のような構成は、例えば、一般的に行なわれている積層板や多層板の製造法を適用することができる。すなわち、積層板の製造法のように、各材料を所定の構成に配置して加熱加圧成形により一体化できる。また、多層板の製造法のように、所定の構成単位毎に加熱加圧成形により順次一体化してもよい。そして、所定の発熱素子1を、所定形状に回路加工した第1金属層3上の実装領域に、はんだリフロー等の手段により実装する。
第1金属層の熱膨張率は、20ppm/℃以下が好ましい。また、第1金属層の熱伝導率を300W/m・K以上とすると、放熱特性が向上するので好ましい。例えば、銅、アルミニウム合金を使用することができる。その中でも銅は、熱伝導率が394W/m・K、熱膨張率が約17ppm/℃であり、放熱特性とはんだ接続信頼性が良好となり、また銅/インバー合金や銅/モリブデン合金などの銅合金よりも安価であるので好ましい。
第2金属層の熱膨張率を、第1金属層より大きく、第3金属層に近い熱膨張率とすると、樹脂絶縁層にかかる熱応力が低減できるので好ましい。例えば、アルミニウム合金を使用することができる。その中でもA6063材は、熱伝導率が210W/m・Kと大きく、さらに放熱特性を向上できるので好ましい。さらに、第2金属層の合計厚みが第1金属層の厚みの20%以上であれば、熱応力の緩和と放熱特性を向上できるが、第2金属層の合計厚みを第1金属層の厚みよりも厚くすると、さらに放熱特性を向上できるので好ましい。また、第2金属層と第3金属層の熱膨張率の差を7ppm/℃以下になるように設定すると、樹脂絶縁層にかかる熱応力を充分に低減することができ、金属層と樹脂絶縁層との密着性を確実に向上することができるので好ましい。
第3金属層を放熱板として使用するときは、アルミニウムやアルミニウム合金を使用することができる。アルミニウムやアルミニウム合金は、加工性が良い、コストが低い、錆びない、熱伝導率が高いという利点から放熱板として非常に適している。さらに、第3金属層の厚みが1mm以上であれば、強度や放熱特性が確保できるが、2〜3mm程度が一般的に使用されている。また、第3金属層の形状は、単なる平板でもよいが、冷却効率を高めるために、厚みを4〜10mm程度とし、樹脂絶縁層と接する反対面に冷却フィンのような形状を施すこともできる。
第1金属層と第2金属層は、クラッド構造で一体化される。例えば、圧延方式による金属拡散接合方法が挙げられる。第1金属層及び第2金属層の回路加工方法としては、例えば、ルーター加工やトリミング加工のような機械加工方法や、選択的エッチングのような化学的加工方法が挙げられる。例えば、第1金属層が銅であり、第2金属層がアルミニウムである場合は、アルミニウムをエッチングしない銅の選択的エッチング方法として、硫酸−過酸化水素系エッチング剤が使用できる。
樹脂絶縁層の厚みは、それぞれの層の厚みを150μm以下とすると、樹脂絶縁層で熱伝導が阻害されることが少なく、放熱特性を向上できるので好ましい。また、樹脂絶縁層の熱伝導率を4W/m・K以上とすると、放熱特性を向上できるので好ましい。
樹脂絶縁層を構成するシート状繊維基材は、ガラス繊維や有機繊維で構成された織布や不織布である。前記シート状繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に高熱伝導性の無機充填材を添加することで製造することができる。特に、高熱伝導率が要求される樹脂絶縁層とする場合には、例えば、以下のような樹脂組成を使用する。
すなわち、無機充填材を含有し(式1)で示す分子構造のエポキシ樹脂モノマを配合したエポキシ樹脂組成物を採用する。前記無機充填材は、熱伝導率20W/m・K以上であって、樹脂固形分100体積部に対し50〜250体積部の量で絶縁層中に存在するようにする。
Figure 2010034238
上記(式1)で示す分子構造のエポキシ樹脂モノマは、ビフェニル骨格あるいはビフェニル誘導体の骨格をもち、1分子中に2個以上のエポキシ基をもつエポキシ化合物全般である。エポキシ樹脂モノマの硬化反応を進めるために、硬化剤を配合する。硬化剤は、例えば、アミン化合物やその誘導体、酸無水物、イミダゾールやその誘導体、フェノール類又はその化合物や重合体などである。また、エポキシ樹脂モノマと硬化剤の反応を促進するために、硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤は、例えば、トリフェニルホスフィン、イミダゾールやその誘導体、三級アミン化合物やその誘導体などである。
上記硬化剤や硬化促進剤を配合したエポキシ樹脂組成物に配合する熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材は、金属酸化物又は水酸化物あるいは無機セラミックス、その他の充填材であり、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、アルミナ、酸化マグネシウム等の無機粉末充填材、合成繊維、セラミックス繊維等の繊維質充填材、着色剤等である。これら無機充填材は2種類以上を併用してもよい。
無機充填材は、樹脂固形分100体積部に対し50〜250体積部の量となるように配合する。前記無機充填材の熱伝導率と配合量の下限値は、樹脂絶縁層の熱伝導率を4W/m・K以上にする場合に必要である。また、エポキシ樹脂組成物に配合する無機充填材が少ないと、無機充填材をエポキシ樹脂組成物中に均一に分散させることが難しくなる。熱伝導性の確保と共にこの点においても、無機充填材配合量の下限値の規定は重要である。一方、無機充填材の配合量を多くすると、エポキシ樹脂組成物の粘性が増大して取り扱いが難しくなるので、無機充填材配合量の上限値は、このような観点から規定する。
尚、無機充填材の熱伝導率が30W/m・K以上であれば、樹脂絶縁層の熱伝導率をさらに高くできるので好ましい。また、無機充填材は、その形状が、粉末(塊状、球状)、短繊維、長繊維等いずれであってもよいが、平板状のものを選定すると、高熱伝導率の無機充填材自身が樹脂中で積み重なった状態で存在することになり、樹脂絶縁層の厚み方向の熱伝導性をさらに高くできるので好ましい。上記エポキシ樹脂組成物には、そのほか必要に応じて難燃剤や希釈剤、可塑剤、カップリング剤等を配合することができる。
樹脂絶縁層の形成は、上記エポキシ樹脂組成物を必要に応じ溶剤に希釈してワニスを調製しこれをシート状繊維基材に含浸し、加熱乾燥して半硬化状態にしたプリプレグを準備する。そして、これらを加熱加圧成形して樹脂絶縁層とする。前記加熱加圧成形に当っては、第3金属層−前記プリプレグ−第2金属層の順序で配置して積み重ね、これらを加熱加圧成形により一体化する。
エポキシ樹脂組成物を溶剤に希釈してワニスを調製する場合、溶剤の配合・使用が、エポキシ樹脂硬化物の熱伝導性に影響を与えることはない。
樹脂封止体を構成する樹脂組成物は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に無機充填材を添加したものである。無機充填材は、例えば、球状シリカや球状アルミナ等であり、これら無機充填材は2種類以上を併用してもよい。前記樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤や離型剤、可塑剤、カップリング剤等を配合することができる。また、樹脂封止体の形成は、例えば、前記樹脂組成物を閉じた金型内で加熱加圧成形して樹脂封止体とする。加熱加圧成形方法は、トランスファ成形等である。そのほか、ポッティング等により、樹脂封止体を形成してもよい。
樹脂封止体は、20℃におけるヤング率を10GPa以上とすると、はんだ部にかかる応力を充分に分散することができ、はんだ部のクラックを確実に抑制することができるので好ましい。また、20℃におけるヤング率を30GPa以下とすると、パワー素子が樹脂封止体から受ける応力を抑制することができ、パワー素子の破壊を防止することができるので好ましい。なお、20℃におけるヤング率とは、JIS−K−6911に準拠して測定した曲げ弾性率である。
図3に、樹脂封止体における無機充填材の充填量とヤング率、熱膨張率の関係を示す。樹脂封止体のヤング率及び熱膨張率は、無機充填材の充填量によって変化する。このため、無機充填材の充填量を40体積%以上とすることにより、樹脂封止体の20℃におけるヤング率を10GPa以上とすることができる。また、無機充填材の充填量を65体積%以下とすることにより、樹脂封止体の20℃におけるヤング率を30GPa以下とすることができる。
図4(a)は樹脂封止体のヤング率及び熱膨張率とはんだ部のひずみの関係を示したものであり、図4(b)は樹脂封止体のヤング率及び熱膨張率と発熱素子にかかる応力の関係を示したものである。それぞれ、図5に示す断面モデル構造において、105℃〜−40℃の範囲で温度サイクル試験を行った場合の、はんだクラック起点21の相当ひずみ及び発熱素子端部11の相当応力を有限要素法解析により計算した結果である。
図4(a)から、樹脂封止体8の20℃におけるヤング率が大きいほど、はんだクラック起点21の相当ひずみが小さくなり、かつ樹脂封止体8の熱膨張率が小さいほど、前記相当ひずみが小さくなることがわかる。特に20℃におけるヤング率が10GPa以上では、破線で示すはんだクラックが発生すると予測されるひずみ基準値(4%)と比較すると、樹脂封止体8の熱膨張率が10〜40ppm/℃の広い範囲で、はんだの相当ひずみは低い値を示し、はんだクラックは抑制されると考えられる。実際の加速試験でも、図5に示す構造では、別の原因での寿命低下がおきるまでに、はんだクラックに起因する寿命低下は生じないことが確認されている。
なお、はんだの相当ひずみは、温度サイクル試験の試験条件によっても左右される。例えば、最終製品の使用される温度範囲が小さく、90℃〜−30℃の範囲での温度サイクル試験であれば、発熱素子と第1金属層の熱膨張率差による影響が小さくなり、はんだの相当ひずみが比較的小さくなる。このため、樹脂封止体の20℃におけるヤング率が10GPa未満であっても、はんだの相当ひずみがひずみ基準値(4%)より小さくなり、はんだクラックが抑制される場合もある。
図4(b)から、樹脂封止体8の20℃におけるヤング率が30GPa以下であれば、発熱素子端部11にかかる相当応力が500MPa以下となり、発熱素子を破壊するような大きな応力は発生しないが、20℃におけるヤング率が30GPaを超えると発熱素子端部11にかかる相当応力は急激に上昇する傾向がある。すなわち、樹脂封止体8の20℃におけるヤング率が30GPaを超えると、発熱素子が破壊される危険性がある。従って、最適な樹脂設計としては、樹脂封止体8の20℃におけるヤング率を30GPa以下に低く抑え、発熱素子端部11にかかる相当応力を下げることが好ましい。20℃におけるヤング率の小さい樹脂封止体を用いることは、半導体チップ素子部、Al導体部、Si界面等の破壊を防止する上での効果は大きいと考えられる。
図6は、上記図1に示した構造を利用して複数(図6に示したものは3個)の発熱素子31を実装する場合の実施の形態の具体的な構成の一例を示している。図6は、本発明の配線板の要部を切り取ってクローズアップして描いたものであり、実際の配線板は更に別の配線や部品が実装されることになる。なお図6に示した実施の形態においては、図1に示した構造を構成する部材と同じ部材には、図1に付した符号の数に30の数を加えた数を符号として付して材質等の詳細な説明は省略する(樹脂封止体は図示していない)。図6の実施の形態では、配線板にパワートランジスタ等の発熱素子31を実装する場合に、第2金属層35が図示しない直流電源の一方の極性の出力端子(プラス端子及びマイナス端子の一方)に電気的に接続される。図6においては、第2の金属層35は第3金属層37と実質的に同じ大きさを有している。そして第2金属層35の上には、複数(3つ)の第1金属層33が接合層34を介して接合されている。3つの第1金属層33の上には、それぞれ発熱素子31がはんだ32によって接合されている。このような発熱素子31は、外装ケースの底壁部が金属によって形成されて電気的な端子を構成しており、外装ケースの底壁部と対向する上壁部に他の電気的な端子が設けられているタイプの部品である。したがって発熱素子31を第1金属層33にはんだ32によって直接接続するだけで、第1金属層33と発熱素子31とは機械的に電気的にも接続される。そして発熱素子31は、はんだ32、第1金属層33及び接合層34を介して第2導電層35と電気的に接続される。その結果、本実施の形態によれば、第2金属層35を熱応力の緩和手段として利用するだけでなく、第2金属層35を配線として利用することができる。
また本実施の形態では、第2金属層35を、第1金属層33がクラッド構造で一体化される(接合される)部分35Aと電気配線部分35Bとから構成されている。そしてこの配線部分35Bの上には、エポキシ樹脂などの電気絶縁樹脂層39を介して他の電気配線部分を構成する3つの第4金属層38が配置されて配線板に一体化されている。第4金属層38は、例えば図示しない3つの出力端子に3つの発熱素子31をそれぞれ電気的に接続する機能を果たす。この例では、第4金属層38は、CuまたはCu合金によって形成されている。電気絶縁樹脂層39は、隣り合う2つの第4金属層38の間、隣り合う2つの第1金属層33の間及び隣り合う第1金属層33と第4金属層38との間にも存在して、これら金属層間の電気的絶縁を図っている。また発熱素子31と第4金属層38とはワイヤボンディングからなる電気的接続手段40によって電気的に相互に接続されている。図6中には、矢印で示すように、電流が流れる方向を示してある。この例では、第2金属層35→接合層34→3つの第1金属層33→はんだ32→3つの発熱素子31→電気的接続手段40→3つの第4金属層38の経路で電流が流れている。その結果、第2金属層35を流れる電流の方向と第4金属層38を流れる電流の方向とが逆方向になっている。その結果、第2金属層35を流れる電流によって発生する磁束と、第4金属層38を流れる電流によって発生する磁束とが打ち消しあうように作用するため、回路のインダクタンスが小さくなっている。
本実施の形態のように、第2の金属層35上に複数の第1金属層33をクラッド構造で一体化すると、1つの第2金属層35から複数の第1金属層33を介して複数の発熱素子31に電力を供給することができる。第1金属層33の材料の価格が高い場合には、図6の実施の形態のように、各発熱素子31に対して個別に第1金属層33を設けるのが好ましい。しかしながら図7に示すように、第1金属層33’を価格の安い材料によって形成する場合には、複数の発熱素子31に対して1つの第1金属層33’を設ければよい。この場合には、1つの接合層34’により1つの第2金属層35と2つの第1金属層33’とが、機械的に且つ電気的に接続されるので、部品点数を減らすことができる。図6及び図7に示す構成は、1つの第2金属層35に3つの発熱素子31が電気的に接続されているので、直流−三相交流インバータモジュールのブリッジ回路の一部や、半導体三相整流回路モジュールのブリッジ回路の一部を構成する場合に利用することができる。
また例えば図6に示す構造において、第2金属層35を個別の第1金属層33に対応させて分離し、分離した複数の第2金属層を電気的に絶縁するようにして複数の素子ユニットを構成するようにしもよい。このような複数の素子ユニットを配線板に設ければ、直流−直流コンバータ等の他の電力変換回路も配線板上に少ない部品点数で構成することができる。
また上記図6及び図7の実施の形態において、第2金属層を2層以上の構造としてもよいのは勿論である。
以下、本発明に係る実施例を示し、本発明について詳細に説明する。尚、以下の実施例および比較例において、「部」とは「質量部」を意味する。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、本実施例に限定されるものではない。
実施例に使用する材料仕様は以下の通りである。
(a)エポキシ樹脂ワニスa;エポキシ樹脂モノマ成分としてビフェニル骨格をもつエポキシ樹脂モノマ(ジャパンエポキシレジン製「YL6121H」,エポキシ当量175)100部を用意し、これをメチルイソブチルケトン(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。前記「YL6121H」は、既述の分子構造式(式1)において、R=−CH,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマと分子構造式(式1)において、R=−H,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマを等モルで含有するエポキシ樹脂モノマである。
硬化剤として1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬製「1,5−DAN」,アミン当量40)22部を用意し、これをジメチルホルムアミド(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。
上記のエポキシ樹脂モノマ溶液と硬化剤溶液を混合・撹拌して均一なワニスにし、さらに無機充填材としてアルミナ(電気化学工業製「DAW−10」,平均粒子径:10μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:球状)425部(樹脂固形分100体積部に対し100体積部に相当)を加えて混練し、エポキシ樹脂ワニスaを調製した。
(b)エポキシ樹脂ワニスb;エポキシ樹脂ワニスa中の無機充填材であるアルミナ(電気化学工業製「DAW−10」,平均粒子径:10μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:球状)を540重量部(樹脂固形分100体積部に対し185体積部に相当)を加えて混練する以外はエポキシ樹脂ワニスaと同様にしてエポキシ樹脂ワニスbを調製した。
(c)プリプレグa;エポキシ樹脂ワニスaを、厚み100μmのガラス不織布に含浸し加熱乾燥して厚み120μmのプリプレグを得た。
(d)プリプレグb;エポキシ樹脂ワニスbを、厚み100μmのガラス不織布に含浸し加熱乾燥して厚み120μmのプリプレグを得た。
(e)樹脂封止体用の樹脂組成物;エポキシ樹脂モノマ成分としてビフェニル骨格をもつエポキシ樹脂モノマ(ジャパンエポキシレジン製「YL6121H」,エポキシ当量175)100部を用意し、これをメチルイソブチルケトン(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。前記「YL6121H」は、既述の分子構造式(式1)において、R=−CH,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマと分子構造式(式1)において、R=−H,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマを等モルで含有するエポキシ樹脂モノマである。
硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業製「TD−2090」)40部を用意し、メチルエチルケトンにて60℃で溶解し、室温に戻した。
上記のエポキシ樹脂モノマ溶液と硬化剤溶液を混合・撹拌して均一なワニスにし、さらに無機充填材として球状シリカ(電気化学工業製「FB−30X」,平均粒子径:30μm)及び硬化促進剤、離型剤を加えて混練し、エポキシ樹脂ワニスを調製した。このエポキシ樹脂ワニスを加熱乾燥した樹脂粉末を70℃で予備成形し、タブレット状の樹脂組成物を得た。
実施例1
図1(a)の構成材料として、下記の材料を準備した。
1)第1金属層3:銅/クロム合金(厚み0.5mm、熱膨張率10ppm/℃、熱伝導率180W/m・K)
2)第2金属層5:銅(厚み0.1mm、熱膨張率17ppm/℃、熱伝導率394W/m・K)
3)第3金属層7:アルミニウム合金3004(厚み1.0mm、熱膨張率24ppm/℃、熱伝導率160W/m・K)
4)樹脂絶縁層6:プリプレグa
第2金属層上に第1金属層を重ね合わせ、500℃程度の温度条件にて、圧延ロールで圧延することで、第1金属層と第2金属層を接合層4でクラッド構造で一体化した。
次に、図1(a)の構成となるように、第3金属層−プリプレグa1枚−(第1金属層をクラッド構造で一体化した第2金属層)の順序で配置して積み重ね、これらを加熱加圧成形して一体化し、厚み1.84mmの積層板を得た。加熱加圧成形は、温度175℃、圧力6MPaの条件で90分間加熱加圧の条件で行った。そして、前記積層板の第1金属層をルーター加工にて所定形状に回路加工して、配線板とした。樹脂絶縁層の熱伝導率は、3W/m・Kである。
そして、前記配線板の第1金属層に発熱素子(セラミックヒータチップ)をはんだ付した。
実施例1で得た配線板について、素子発熱温度、はんだ接続信頼性および剥離面積率を測定した結果を、金属層や樹脂絶縁層の構成と共に表1にまとめて示す。測定は、以下に示す方法による。
熱膨張率:金属板から5×10mmの板状試料を切り出し、TMA測定にて30℃〜260℃の範囲における平面方向の熱膨張率を測定した。
熱伝導率:各金属層や樹脂絶縁層の厚さ方向の熱伝導を、熱流計法(JIS−A−1412準拠)にて測定した。
素子発熱温度:発熱素子をはんだ付した配線板を使用し、第3金属層を冷却フィンにて冷却し、一定温度に保つ。発熱素子に80Wの電力を入力し、入力2分後の素子温度を測定した。
はんだ接続信頼性:発熱素子をはんだ付した配線板を使用し、105℃〜−40℃の範囲で冷熱サイクル試験を行ない、1000サイクル後のはんだ部のクラック発生の有無を調べた。
剥離面積率:所定形状に加工した配線板を最高温度300℃のリフロー炉で3分間熱処理を行なった。その後、超音波探傷器にて配線板の上部から観察し、金属と樹脂界面の剥離面積を測定した。そして、(剥離面積/配線板の全面積)×100を剥離面積率(%)とした。
実施例1においては、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が14ppm/℃であっても、樹脂絶縁層に剥離がみられず、金属層と樹脂絶縁層との密着性が良好である。
実施例2
実施例1において、第1金属層として銅/モリブデン合金(厚み0.5mm、熱膨張率13ppm/℃、熱伝導率300W/m・K)を使用し、第2金属層としてアルミニウム合金6063(厚み0.1mm、熱膨張率23ppm/℃、熱伝導率210W/m・K)を使用する以外は実施例1と同様にして配線板を得た。この配線板を樹脂成形金型内にセットした後、図1(b)の構成となるように樹脂封止体(無機充填材の充填量:40体積%、20℃におけるヤング率:10GPa、熱膨張率:18ppm/℃)をトランスファ成形することにより、発熱素子、第1金属層及び第2金属層を樹脂封止体にて取り囲んだ配線板を得た。
なお、素子発熱温度およびはんだ接続信頼性の測定は、発熱素子、第1金属層及び第2金属層を樹脂封止体にて取り囲んだ配線板を使用した。また、ヤング率の測定は、以下に示す方法による。
ヤング率:樹脂封止体の20℃における曲げ弾性率を測定した(JIS−K−6911準拠)。
第1金属層の熱伝導率を大きくすることにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。また、発熱素子、第1金属層及び第2金属層を樹脂封止体にて取り囲むことにより、はんだ接続信頼性が向上した。
実施例3
実施例2において、第1金属層として銅(厚み0.5mm、熱膨張率17ppm/℃、熱伝導率394W/m・K)を使用する以外は実施例2と同様にして配線板を得た。第1金属層の熱伝導率をさらに大きくすることにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
実施例4
実施例3において、樹脂絶縁層としてプリプレグbを使用する以外は実施例3と同様にして配線板を得た。樹脂絶縁層の熱伝導率は、4W/m・Kである。樹脂絶縁層の熱伝導率を高くしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
実施例5
実施例4において、第2金属層としてアルミニウム合金6063(厚み0.6mm、熱膨張率23ppm/℃、熱伝導率210W/m・K)を使用する以外は実施例4と同様にして配線板を得た。第2金属層を厚くしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。また、第2金属層を厚くしたことにより、第2金属層とクラッド構造で一体化された第1金属層の熱膨張率にも影響を受け、はんだ接続信頼性が若干低下したが、機能上問題ない範囲であった。
比較例1
実施例3において、第2金属層を配置しないこと以外は実施例3と同様にして配線板を得た。比較例1においては、第2金属層が配置されていないので、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差によって、樹脂絶縁層に熱応力がかかり、金属と樹脂の界面が広範囲で剥離が発生している。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が大幅に悪化した。
比較例2
実施例3において、第2金属層として銅/モリブデン合金(厚み0.1mm、熱膨張率13ppm/℃、熱伝導率300W/m・K)を使用すること以外は実施例3と同様にして配線板を得た。比較例2においては、第2金属層の熱膨張率が第1金属層の熱膨張率より小さいので、第2金属層と第3金属層の熱膨張率の差によって、金属と樹脂の界面が広範囲で剥離を発生している。また、剥離に伴って素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が大幅に悪化した。
比較例3
実施例3において、第1金属層として銅(厚み0.4mm、熱膨張率17ppm/℃、熱伝導率394W/m・K)を使用する以外は実施例3と同様にして配線板を得た。比較例3においては、第1金属層の厚みが薄いので、樹脂絶縁層にかかる熱応力が小さくなるため、第2金属層を配置しても、あまり応力緩和をする効果がない。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が悪化した。
比較例4
実施例3において、第2金属層としてアルミニウム合金6063(厚み0.05mm、熱膨張率23ppm/℃、熱伝導率210W/m・K)を使用する以外は実施例2と同様にして配線板を得た。比較例4においては、第2金属層の厚みが第1金属層の20%未満であるので、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差を緩和する効果が小さくなり、金属と樹脂の界面に剥離を発生している。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が大幅に悪化した。
比較例5
実施例3において、第3金属層としてアルミニウム合金3004(厚み0.5mm、熱膨張率24ppm/℃、熱伝導率160W/m・K)を使用する以外は実施例3と同様にして配線板を得た。比較例5においては、第3金属層の厚みが薄いので、樹脂絶縁層にかかる熱応力が小さくなるため、第2金属層を配置しても、あまり応力緩和をする効果がない。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が悪化した。
実施例2〜5、比較例1〜5の配線板についても、実施例1と同様に特性を測定し、結果を表1〜2に示した。
Figure 2010034238
Figure 2010034238

上記表に示したように、本発明に係る実施例においては、第1金属層と第2金属層がクラッド構造で一体化され、第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が7ppm/℃以上であるときに、α1<α2≦α3の関係になるように設定し、かつ、第2金属層の厚みが第1金属層の厚みの20%以上としたので、素子発熱温度、樹脂剥離面積率を抑えられていることが理解できる(実施例1〜5と比較例1〜5との対比)。
(a)は本発明の実施の形態に係る配線板断面図、(b)は本発明の他の実施の形態に係る配線板断面図である。 従来の配線板断面図である。 無機充填材の充填量と樹脂封止体の特性の関係を示す曲線図である。 (a)は樹脂封止体の特性とはんだ部の相当ひずみの関係を示す曲線図、(b)は樹脂封止体の特性と発熱素子にかかる相当応力の関係を示す曲線図である。 有限要素法解析を行った要部の断面図である。 複数の発熱素子を実装する場合の他の実施の形態の配線板の要部の斜視図である。 複数の発熱素子を実装する場合の更に他の実施の形態の配線板の要部の斜視図である。
符号の説明
1、31は発熱素子
2、32ははんだ
3、3’、33、33’は第1金属層
4、34’は接合層
5、35は第2金属層
6、6’、36は樹脂絶縁層
7、7’、37は第3金属層
8、8’は樹脂封止体

Claims (9)

  1. 厚み0.5mm以上の第1金属層と、第2金属層と、厚み1mm以上の第3金属層がこの順に配置され、少なくとも第1金属層が電気配線の機能を有する配線板において、
    第1金属層と第2金属層がクラッド構造で一体化され、第2金属層と第3金属層は樹脂絶縁層で一体化されており、
    第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が7ppm/℃以上であるときに、α1<α2≦α3の関係になるように設定され、
    第2金属層の厚みが第1金属層の厚みの20%以上であることを特徴とする配線板。
  2. 第1金属層の熱伝導率が300W/m・K以上であることを特徴とする請求項1記載の配線板。
  3. 第1金属層が銅であり、第2金属層がアルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の配線板。
  4. 前記樹脂絶縁層の熱伝導率が4W/m・K以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線板。
  5. 前記電気配線には発熱素子が実装されており、少なくとも前記発熱素子及び第1金属層を取り囲む樹脂封止体を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線板。
  6. 前記第2金属層が直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続されており、
    前記第2金属層の上に複数の前記第1金属層が一体化されており、
    前記複数の第1金属層の上には、複数の発熱素子のうちの対応する1つの前記発熱素子がはんだ付け接続されていて、前記複数の発熱素子が前記第2金属層とそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線板。
  7. 前記第2金属層が直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続されており、
    前記第1金属層の上には、複数の発熱素子がそれぞれはんだ付け接続されていて、前記複数の発熱素子が前記第2金属層とそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線板。
  8. 前記第2金属層が直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続され、
    前記第2金属層の上に前記第1金属層が一体化され、
    前記第1金属層の上に1つの発熱素子がはんだ付け接続されて構成された素子ユニットが、電気的に絶縁された状態で複数個配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線板。
  9. 前記第2金属層は、前記第1金属層が一体化される部分と電気配線部分とを備えており、
    前記配線部分の上には電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層が一体化されており、
    前記第2金属層を流れる電流の方向と前記第4金属層を流れる電流の方向とが逆方向になるように前記発熱素子と前記第4金属層とが電気的接続手段を介して接続されている請求項6〜8のいずれか1項に記載の配線板。
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