JP2010031078A - 芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の処理方法 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】芳香族ポリカーボネート樹脂より形成される成形品において、太陽光や室内の蛍光灯の下において観察される虹色の線状会合部を解消する方法を提供する。
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂より形成され、該射出成形品を2枚の偏光板に挟み、透過光を照射することによって虹色の線状会合部を観察することができる射出成形品の処理方法であって、該処理方法を実施することにより、該虹色の線状会合部に対して直交するように設定した仮想基準線に沿って、虹色の線状会合部と仮想基準線の交点を中心として300mmの範囲を測定間隔5mmで測定した透過方向の複屈折をもとにBrewsterの法則に従って得られた各測定点における主応力をS(i)(i=1、2、3・・・、61)とし、さらに隣接する主応力S(i+1)との差を測定間隔(5mm)で除することによって得られる主応力の勾配の絶対値[|S(i)−S(i+1)|/5]をG(i)としたときの、G(i)+G(i+1)+G(i+2)の値が0.4未満に低減されることを特徴とする射出成形品の処理方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂より形成される射出成形品の処理方法に関する。詳しくは、太陽光や室内の蛍光灯の下において成形品の表面に観察される虹色の線状会合部を解消する方法に関する。
近年、ポリカーボネート樹脂より形成される成形品は、自動車のパノラマルーフやバックドアウインドウを始めとするグレージング部材や液晶テレビ、プラズマテレビなどの前面板用途として使用されている。しかしながら、樹脂の会合部などを有する大型の成形品においては、太陽光や室内の蛍光灯の光などが成形品表面において反射光として干渉を起こし、虹色の線状会合部として観察される。なお、この虹色の線状会合部は、成形品面内における芳香族ポリカーボネート樹脂の分子の配向歪みに起因し、該樹脂の会合部において、太陽光や室内の蛍光灯が反射することにより、光の複屈折が生じ、色の連続的な変化により会合部において虹色の線状会合部として観察されるものである。太陽光や室内の蛍光灯の下において、該成形品の表面に虹色の線状会合部が観察されることは、実使用上、製品の外観が損なわれるため問題となる。また、成形品面内における一種のウエルドに起因していることより、製品の長期物性など耐久性に問題が生じる可能性も考えられ、成形品の表面に虹色の線状会合部が観察されない成形品が所望されている。
この樹脂の会合部における成形品表面のウエルドラインを解消する成形方法に関しては様々な知見が知られている。例えば、複数のホットランナーバルブゲートから射出された樹脂成形品においては、金型キャビティ内で溶融樹脂が合流することによって、樹脂の会合部分にウエルドラインが発生する。このウエルドラインを解消するため、複数のホットランナーバルブゲートをプログラム制御により、金型キャビティ内に射出された樹脂が各ゲートに到達するタイミングに応じてゲートを順次開放しながら樹脂を充填していく、いわゆるカスケード成形法により成形品表面のウエルドラインの発生を改善する成形方法は公知である。(非特許文献1参照)また、1点ゲートで射出成形される成形品を製造する場合においても、立壁形状や開口形状などを有する金型を使用して成形する場合、金型キャビティ内において複数の流路に溶融樹脂が分離されるため樹脂の会合部にウエルドラインが発生する。このウエルドラインを解消するため、急速加熱冷却金型成形や局部加熱金型成形などにより改善する成形方法は公知である。(特許文献1、2参照)しかし、これらの射出成形方法で得られた成形品は、成形品表面のウエルドラインを解消するのには効果的な成形方法ではあるが、かかる樹脂会合部における成形品面内の分子の配向歪みに起因した虹色の線状会合部に関する技術的知見を開示するものではなく、その解消方法も開示していない。
特開2001−207062号公報 特開2001−269978号公報 Plastics Technology.Dec.2003 P38
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、芳香族ポリカーボネート樹脂より形成される成形品において、太陽光や室内の蛍光灯の下において観察される虹色の線状会合部を解消することを目的とする。
本発明者らはこの目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂より形成される成形品を2枚の偏光板に挟み透過光を照射することによって観察される虹色の線状会合部において、ある特定の処理を行うことにより、虹色の線状会合部を低減させ、その結果、太陽光や室内の蛍光灯の下において観察される虹色の線状会合部を解消する方法を見出し、本発明に到達した。なお、本発明における会合部とは溶融樹脂の合流部のことである。
すなわち、(1)芳香族ポリカーボネート樹脂より形成され、該射出成形品を2枚の偏光板に挟み、透過光を照射することによって虹色の線状会合部を観察することができる射出成形品の処理方法であって、該処理方法を実施することにより、該虹色の線状会合部に対して直交するように設定した仮想基準線に沿って、虹色の線状会合部と仮想基準線の交点を中心として300mmの範囲を測定間隔5mmで測定した透過方向の複屈折をもとにBrewsterの法則に従って得られた各測定点における主応力をS(i)(i=1、2、3・・・、61)とし、さらに隣接する主応力S(i+1)との差を測定間隔(5mm)で除することによって得られる主応力の勾配の絶対値[|S(i)−S(i+1)|/5]をG(i)としたときの、G(i)+G(i+1)+G(i+2)の値が0.4未満に低減されることを特徴とする射出成形品の処理方法が提供される。
本発明の好適な態様の一つは(2)処理方法が、射出成形品をTg−50℃〜Tg−10℃の温度条件下に、0.5h〜24hの間静置することを特徴とする処理方法である上記構成(1)の処理方法である。なお、ここでTgは使用される芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度である。
本発明の好適な態様の一つは(3)上記構成(1)または(2)に記載の処理方法により虹色の線状会合部が低減された射出成形品である。
本発明の好適な態様の一つは(4)射出成形品が、車両用グレージング部材である上記構成(3)の射出成形品である。
本発明の好適な態様の一つは(5)JIS K7361−1に従い測定した全光線透過率が20%以上であることを特徴とする上記構成(3)〜(4)のいずれかの射出成形品である。
本発明の好適な態様の一つは(6)ゲートから流動末端までの流動長が15〜300cmであり、かつその最大投影面積が200〜60,000cmであることを特徴とする上記構成(3)〜(5)のいずれかの射出成形品である。
本発明の好適な態様の一つは(7)上記構成(3)〜(6)のいずれかの射出成形品を熱曲げまたは周縁部の除去を実施することによって得られた射出成形品である。
本発明の好適な態様の一つは(8)上記構成(3)〜(7)のいずれかの射出成形品を表面加飾することによって得られた射出成形品である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂より形成され、該成形品を2枚の偏光板に挟み、透過光を照射することによって線状会合部を観察することができる成形品の処理方法であって、該処理方法を実施することにより、該線状会合部に対して直交するように設定した仮想基準線に沿って、線状会合部と仮想基準線の交点を中心として300mmの範囲を測定間隔5mmで測定した透過方向の複屈折をもとにBrewsterの法則に従って得られた各測定点における主応力をS(i)(i=1、2、3・・・、61)とし、さらに隣接する主応力S(i+1)との差を測定間隔(5mm)で除することによって得られる主応力の勾配の絶対値[|S(i)−S(i+1)|/5]をG(i)(i=1、2、3・・・、59)としたときの、G(i)+G(i+1)+G(i+2)(i=1、2、3・・・、59)の値が0.40未満に低減される射出成形品の処理方法である。この処理方法を施された射出成形品は、太陽光や室内の蛍光灯の下においては、虹色の線状会合部が観察されない。なお、線状会合部が該射出成形品において複数箇所で認められる場合においては、全ての線状会合部におけるG(i)+G(i+1)+G(i+2)(i=1、2、3・・・、59)が0.40未満に低減される処理方法およびその処理方法により虹色の線状会合部が低減された成形品である。なお、G(i)+G(i+1)+G(i+2)は0.35未満であることが好ましく、0.30未満であることがより好ましい。
この処理方法としては射出成形品をTg−50℃〜Tg−10℃の温度条件下で0.5h〜24hの間静置させる方法が好ましい。この処理温度範囲はTg−40℃〜Tg−10℃がより好ましく、Tg−30℃〜Tg−15℃がさらに好ましい。処理温度がこの下限の範囲を外れると太陽光や室内の蛍光灯の下において観察される虹色の線状会合部を解消することができない。また、処理温度がこの上限の範囲を外れると、成形品が変形するおそれがある。また、処理時間は1h〜20hがより好ましく、1.5h〜12hがさらに好ましい。処理時間がこの下限の範囲を外れると太陽光や室内の蛍光灯の下において観察される虹色の線状会合部を解消することができない。また、処理時間がこの上限の範囲を外れると衝撃性が低下するおそれがある。
具体的な処理方法としては熱風乾燥機、遠赤外線などによる処理が挙げられる。例えば、射出成形品をクリップ付きのジグ等により吊り下げた状態で、熱風乾燥機内に所定の処理温度、処理時間、静置する方法が挙げられる。
なお、上記主応力S(i)は以下の方法により算出される。
(1)線状会合部の特定
図1に示す偏光観察台(10)の上下に設置されたガラス板(11)に、偏光板(12)がクロスニコルに配置されるようガラス板の表面に貼り付ける。偏光板が貼り付けられた上下のガラス板の間に成形品を置いて、偏光観察台の下部(13)より蛍光灯を照射し、偏光板及び成形品を透過する光によって生じる成形品の虹模様を目視観察し、線状会合部を特定する。
(2)仮想基準線の設定
仮想基準線は、上記特定された線状会合部と直交する方向にかつ線状会合部を5mm間隔で複屈折を測定した際に、最も複屈折が高い値を示す点に交点が定まるよう設定する。仮想基準線は、線状会合部の交点部を中心として定め、長さ300mmの範囲とする。なお、射出成形品において線状会合部が複数箇所確認された場合、全線状会合部において同様の方法で仮想基準線を設定する。なお、複屈折はStrainoptic Technologies社製の複屈折測定装置SCA−1500を用いて測定する。
(3)主応力の算出
長さ300mmの仮想基準線に沿って、測定間隔5mmで複屈折を測定する。測定点は1サンプル当り全61点となる。なお、複屈折はStrainoptic Technologies社製の複屈折測定装置SCA−1500を用いて測定する。次に下記式(1)に示すBrewsterの法則に従って、主応力S(i)を算出する。
S(i)=C×1/t×R(i)・・・(1)
[式中、S(i)は主応力、R(i)は複屈折、tは測定サンプルの厚み、Cは固有定数=72を表す。]
本願発明で使用される射出成形方法としては、通常の射出成形だけでなく、インサート成形、インモールドコーティング成形、二色成形、射出圧縮成形、射出プレス成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形及び超高速射出成形などが挙げられる。
また、ランナーとしてはコールドランナー方式またはホットランナー方式を用いることができ、ゲートは、1点ゲート、複数ゲートの制限はない。成形品のサイズは、ゲートから流動末端までの流動長が15〜300cmであり、かつその最大投影面積が200〜60,000cmであることが好ましい。成形品の形状は、平板形状、R形状、立壁形状、開口形状などを有し、成形品面内において樹脂会合部を有する成形品である。成形品の厚みは、一般的に芳香族ポリカーボネート樹脂を射出成形し得られる成形品の厚み範囲であれば、特に制限されるものではないが、1〜20mmが好ましく、2〜18mmがより好ましい。成形品の全光線透過率は20%以上であることが好ましい。全光線透過率は30%以上がより好ましく、35%以上が更に好ましい。
本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては例えば界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
中でもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は1×10〜1×10が好ましく、1.5×10〜3×10がより好ましく、1.7×10〜2.7×10が更に好ましい。かかる粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した場合、得られる成形品は、十分な強度及び良好な溶融流動性を有するため、車両用グレージング部材として好適な成形品である。
また、成形品の使用目的に応じて、光透過性を損なわない範囲で、芳香族ポリカーボネート樹脂に、慣用の添加剤、例えば熱安定剤、離型剤、赤外線吸収剤(ホウ化物粒子、フタロシアニン系色素、ITO、ATO、アルミニウム粉等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、補強剤(タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、扁平ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、グラファイト、導電性カーボンブラック、各種ウイスカー等)、難燃剤(ハロゲン系、リン酸エステル系、金属塩系、赤リン、シリコン系、フッ素系、金属水和物系等)、着色剤(カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、染料)、光拡散剤(アクリル架橋粒子、シリコン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子等)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等)、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、フォトクロミック剤を配合することができる。
本発明の処理方法を実施することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂より形成される成形品において、太陽光や室内の蛍光灯の下において観察される虹色の線状会合部を解消させることができる。従って、この処理方法が施された成形品は、自動車のパノラマルーフやバックドアウインドウを始めとするグレージング部材や液晶テレビ、プラズマテレビなどの前面板用途、パチンコなどの遊戯具における透明遊戯板として好適に使用され、工業的効果は極めて大である。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、虹色の線状会合部の有無、全光線透過率、主応力S(i)、主応力勾配の絶対値G(i)は下記の方法に従い測定、算出した。
(1)虹色の線状会合部の有無:室内蛍光灯で成形品表面の光を反射させて虹色の線状会合部の有無を目視にて観察した。
(2)全光線透過率:JIS K7361−1に従い、日本電色(株)製NDH−300Aにより測定した。
(3)主応力S(i):下記方法にて作成したサンプルを使用し、以下の方法にて主応力S(i)を測定した。
(i)線状会合部の特定
図1に示す偏光観察台(10)の上下に設置されたガラス板(11)に、偏光板(12)がクロスニコルに配置されるようガラス板の表面に貼り付けた。偏光板が貼り付けられた上下のガラス板の間に成形品を置いて、偏光観察台の下部(13)より蛍光灯を照射し、偏光板及び成形品を透過する光によって生じる成形品の線状会合部を目視観察にて特定した。
(ii)仮想基準線の設定
仮想基準線は、上記特定された線状会合部と直交する方向にかつ線状会合部を5mm間隔で複屈折を測定した際に、最も複屈折が高い値を示す点に交点が定まるよう設定した。なお、仮想基準線は、線状会合部の交点部を中心として定め、長さ300mmの範囲とした。なお、複屈折はStrainoptic Technologies社製の複屈折測定装置SCA−1500を用いて測定した。なお、全ての実施例、比較例において線状会合部は1箇所のみで観察された。
(iii)主応力の算出
長さ300mmの仮想基準線を測定間隔5mmでStrainoptic Technologies社製の複屈折測定装置SCA−1500を用いて複屈折を測定した。(測定点は1サンプル当り全61点)次に下記式(2)に示すBrewsterの法則に従って、主応力S(i)を算出した。
S(i)=C×1/t×R(i)・・・(2)
[式中、S(i)は主応力、R(i)は複屈折、tは測定サンプルの厚み、Cは固有定数=72を表す。]
(4)主応力勾配の絶対値G(i):得られた主応力S(i)を次式に挿入し算出した。
G(i)=[|S(i)−S(i+1)|/5]
[実施例1]
樹脂材料として99.57重量部のビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量23,700のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WP(商品名)、Tg=151℃)、0.3重量部の紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Tinuvin1577)、0.1重量部の離型剤(コグニスジャパン(株)製:ロキシオールVPG861)および0.03重量部の熱安定剤(Sandoz社製:サンドスタブP−EPQ)からなるポリカーボネート樹脂組成物よりなるペレットを120℃で5時間乾燥させた。かかる樹脂材料を4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて射出プレス成形し、図2に示す厚み4mm、長さ1,200mm、幅1,000mmの大型成形品を製造した。かかる成形機には、乾燥後のペレットが圧空輸送により成形機供給口に供給され成形に使用された。ランナーはHOTSYS社製のバルブゲート型のホットランナー(直径8mmφ)を用いた。
成形条件はシリンダ温度290℃、ホットランナー設定温度280℃、金型温度は可動側80℃、固定側80℃、圧縮ストローク2.0mm、中間型締め状態から最終型締め状態までの金型の移動速度10mm/秒、および保圧時間150秒であった。溶融樹脂の充填は図2(21)のゲートより射出を開始し、(22)のゲートに溶融樹脂が到達した後、(22)のバルブゲートを開放する、カスケード成形法にて行った。型圧縮は、充填完了直前に開始し、オーバーラップは0.5秒とした。充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて溶融樹脂がゲートからシリンダへ逆流しない条件とした。圧縮工程時の圧力は17.2MPaとし、保圧工程時の圧力は該圧力の半分の圧力で保持した。可動金型パーティング面は最終の前進位置において固定金型パーティング面に接触しないものとした。また、かかる成形においては、その4軸平行制御機構により、傾き量および捩れ量を表すtanθは約0.000025以下で保持された。
得られた成形品を取出し、130℃の温度条件下で2h静置処理した後、温度23℃、相対湿度50%の条件で24時間静置して十分に冷却し、前記評価項目に従って評価した結果を表1に示した。
[実施例2]
処理条件を温度120℃、静置時間20hとした以外は、すべて実施例1と同様に成形を行った。得られた成形品を評価した結果を表1に示した。
[実施例3]
処理温度140℃、静置時間0.6hとした以外は、すべて実施例1と同様に成形を行った。得られた成形品を評価した結果を表1に示した。
[実施例4]
樹脂材料として99.53重量部のビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量23,700のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WP(商品名)、Tg=151℃)、0.04重量部の表面被覆六ホウ化ランタン(住友金属鉱山社製:KHDS06−S11)、0.3重量部の紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Tinuvin1577)、0.1重量部の離型剤(コグニスジャパン(株)製:ロキシオールVPG861)、および0.03重量部の熱安定剤(Sandoz社製:サンドスタブP−EPQ)からなるポリカーボネート樹脂組成物よりなるペレットを用いた以外は、すべて実施例1と同様に成形を行った。得られた成形品を評価した結果を表1に示した。
[比較例1]
処理を施さなかった以外は、すべて実施例1と同様に成形を行った。得られた成形品を評価した結果を表1に示した。
[比較例2]
処理温度130℃、静置時間0.2hとした以外は、すべて実施例1と同様に成形を行った。得られた成形品を評価した結果を表1に示した。
[比較例3]
処理温度90℃、静置時間24hとした以外は、すべて実施例1と同様に成形を行った。得られた成形品を評価した結果を表1に示した。
Figure 2010031078
表から明らかなように、仮想基準線に沿って、300mmの範囲を測定間隔5mmで測定した透過方向の複屈折をもとにBrewsterの法則に従って得られた各測定点における主応力をS(i)(i=1、2、3・・・、61)とし、さらに隣接する主応力S(i+1)との差を測定間隔(5mm)で除することによって得られる主応力の勾配の絶対値を[|S(i)−S(i+1)|/5]をG(i)としたときに、成形品に特定の処理方法を実施することにより、G(i)+G(i+1)+G(i+2)の値を0.40以下に低減でき、該処理を施された成形品は太陽光や蛍光灯の下においては虹色の線状会合部が観察されないことがわかる。
偏光観察台 実施例で作成された成形品の正面概略図 実施例で測定された成形品の主応力S(i)の測定分布 比較例で測定された成形品の主応力S(i)の測定分布
符号の説明
10 偏光観察台
11 ガラス板
12 偏光板
13 蛍光灯
21 ゲート部分(第1充填ゲート)
22 ゲート部分(第2充填ゲート)
23 偏光板を通して観察される線状会合部
24 仮想基準線
25 複屈折を測定するために切り出したライン

Claims (8)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂より形成され、該射出成形品を2枚の偏光板に挟み、透過光を照射することによって虹色の線状会合部を観察することができる射出成形品の処理方法であって、該処理方法を実施することにより、該虹色の線状会合部に対して直交するように設定した仮想基準線に沿って、虹色の線状会合部と仮想基準線の交点を中心として300mmの範囲を測定間隔5mmで測定した透過方向の複屈折をもとにBrewsterの法則に従って得られた各測定点における主応力をS(i)(i=1、2、3・・・、61)とし、さらに隣接する主応力S(i+1)との差を測定間隔(5mm)で除することによって得られる主応力の勾配の絶対値[|S(i)−S(i+1)|/5]をG(i)としたときの、G(i)+G(i+1)+G(i+2)の値が0.4未満に低減されることを特徴とする射出成形品の処理方法。
  2. 処理方法が、射出成形品をTg−50℃〜Tg−10℃の温度条件下に、0.5h〜24hの間静置することを特徴とする処理方法である請求項1に記載の処理方法。
  3. 請求項1または2に記載の処理方法により虹色の線状会合部が低減された射出成形品。
  4. 射出成形品が、車両用グレージング部材である請求項3に記載の射出成形品。
  5. JIS K7361−1に従い測定した全光線透過率が20%以上であることを特徴とする請求項3〜4のいずれかに記載の射出成形品。
  6. ゲートから流動末端までの流動長が15〜300cmであり、かつその最大投影面積が200〜60,000cmであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の射出成形品。
  7. 請求項3〜6のいずれかに記載の射出成形品を熱曲げまたは周縁部の除去を実施することによって得られた射出成形品。
  8. 請求項3〜7のいずれかに記載の射出成形品を表面加飾することによって得られた射出成形品。
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