JP2010028068A - 太陽電池用導電膜付ガラス基板 - Google Patents

太陽電池用導電膜付ガラス基板 Download PDF

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Abstract

【課題】FTO膜またはATO膜の成膜時に変形が生じにくい太陽電池用導電膜付ガラス基板を提供する。
【解決手段】0.05〜2mmの厚みを有するガラス基板上にフッ素ドープ酸化スズまたはアンチモンドープ酸化スズからなる導電膜が成膜されてなる太陽電池用導電膜付ガラス基板であって、ガラス基板の歪点が525℃以上であることを特徴とする太陽電池用導電膜付ガラス基板。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池用導電膜付ガラス基板に関する。具体的には、太陽電池の電極基板として用いられる太陽電池用導電膜付ガラス基板に関する。
近年、単結晶シリコン、多結晶シリコン太陽電池またはアモルファスシリコン太陽電池を始めとする太陽電池に対する需要がますます高まっている。これらの太陽電池は、主に家庭用発電、商業用発電などに利用されている。また、その他の太陽電池として、CIS太陽電池、CdTe太陽電池、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池などが開発されており、これらも実用化されようとしている。
アモルファスシリコン太陽電池や色素増感型太陽電池などには、電極基板として透明導電膜付ガラス基板が用いられる。ここで、ガラス基板としては、製造コストや汎用性の面で有利なことから、一般にソーダライムガラスが用いられている。また透明導電膜としては、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)などが用いられる。中でもFTOやATOは、ITOに比べ抵抗率では劣るものの、化学的および熱的に安定であり、さらに膜表面の凹凸形状による光の封じ込めや表面積の増大化による導電性向上などの効果が期待できるため、アモルファスシリコン太陽電池や色素増感型太陽電池用の電極基板として汎用されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
一般に、FTO膜およびATO膜の作製には、成膜性が良好であり、かつ低コストであることから熱化学気相成長(熱CVD)法が用いられる。具体的には、スズおよびフッ素を含む化合物の混合ガスを、約480℃以上に熱したガラス基板上で熱分解反応させることにより成膜される。なお、熱CVD法には、板ガラス製造ラインでその熱を利用して成膜するオンラインCVD法と、一旦冷却されたガラスを所定の寸法に切断し、再加熱して成膜するオフラインCVD法がある。
ところで、近年の携帯電子機器の普及に伴い、電源として、従来のバッテリーに加え、太陽電池も使用されるようになってきている。太陽電池が携帯電子機器に用いられる場合、従来の屋外設置の家庭用や商業用発電に用いられる太陽電池よりも、薄型化および軽量化が求められる。
太陽電池を薄型化および軽量化するためには、電極基板を薄型化することが最も有効である。電極基板を薄型化するためには、例えば、電極基板を構成するガラス基板を研磨して薄くする方法が挙げられる。通常、ガラスを研磨する場合、時間短縮やコスト削減などの理由により両面研磨が行われる。しかしながら、ガラス基板の片側に導電膜が成膜されている場合、片面しか研磨することができないため時間とコストが掛かる。また、研磨工程において導電膜にキズが入りやすいという問題がある。
そこで、予め薄板ガラス基板を用意し、その表面に導電膜を成膜する方法が提案されている。当該方法によれば、ガラス基板の研磨作業が不要であるため時間とコストの削減となり、太陽電池の薄型化および軽量化を効率よく実現することが可能となる。
特開2002−260448号公報 透明導電膜の技術(改訂2版)、オーム社、153〜165頁
既述のように、ガラス基板にFTO膜やATO膜をオフラインCVD法で成膜する場合、ガラス基板を約480℃以上まで加熱して成膜が行われる。しかしながら、ガラス基板に吹き付けられるガス温度は比較的低いため、成膜によりガラス基板の温度が低下しやすい。それにより、ガラス基板の面方向や厚み方向の温度分布にムラが生じたりすると、応力が発生し変形が生じやすい。したがって、従来のようにガラス基板厚みが十分に厚い場合は変形が生じにくいが、板厚が薄い場合、特に2mm以下となると変形は顕著となり、太陽電池用電極基板として使用できなくなるといった問題が生じていた。
したがって、本発明は、FTO膜またはATO膜の成膜時に変形が生じにくい太陽電池用導電膜付ガラス基板を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討を行った結果、薄板ガラス基板にFTO膜またはATO膜が成膜されてなる太陽電池用導電膜付ガラス基板において、ガラス基板の歪点を一定の範囲に限定することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
すなわち、本発明の太陽電池用導電膜付ガラス基板は、0.05〜2mmの厚みを有するガラス基板上にフッ素ドープ酸化スズまたはアンチモンドープ酸化スズからなる導電膜が成膜されてなるものであって、ガラス基板の歪点が525℃以上であることを特徴とする。本発明においてガラス基板の歪点は、JIS R3103に準じて測定された値をいう。
FTO膜およびATO膜の成膜温度は、例えば熱CVD法による場合、成膜に使用される原料や膜厚によっても異なるが、概ね480℃以上である。ガラス基板温度が480℃より低い場合、成膜速度が極端に遅くなるため、実用上好ましくない。基板温度が上がるにつれ成膜速度が速くなり、同時に膜表面の凹凸も大きくなる。この膜表面の凹凸は、光の封じ込め効果や表面積の増大化に寄与し、導電性向上につながる。良好な成膜速度および膜の表面状態を得るためには、成膜温度は510℃以上であること好ましい。特に、本発明で用いられるガラス基板は、厚みが0.05〜2mmと非常に薄く、成膜時に熱変形が生じやすいが、ガラス基板の歪点が525℃以上と成膜温度よりも十分に高ければ、成膜時におけるガラス基板の変形を防止することが可能となる。
第二に、本発明の太陽電池用導電膜付ガラス基板は、色素増感型太陽電池に用いることができる。
色素増感型太陽電池は、導電膜付ガラス基板と、導電膜付ガラス基板に形成された多孔質酸化物半導体層(主にTiO層)からなる多孔質酸化物半導体電極と、その多孔質酸化物半導体電極に吸着されたRu色素等の色素と、ヨウ素を含むヨウ素電解液と、触媒膜と透明導電膜が成膜された対極基板等で構成される。
色素増感型太陽電池においては、ガラス基板上にFTO膜やATO膜などの導電膜が成膜されたのち、さらに、約500℃の加熱温度にて多孔質酸化物半導体層が導電膜付ガラス基板上に形成される。一般に、ガラス基板上に成膜された導電膜の耐熱温度は、成膜温度に依存する。そのため、導電膜の成膜温度が500℃付近であると、多孔質酸化物半導体層形成工程にて膜特性が変化し、特に抵抗率が上昇し、エネルギー変換効率が低下してしまうおそれがある。本発明においては、ガラス基板の歪点が525℃以上であるため、従来のソーダライムガラス等の基板と比べて、より高温での導電幕の成膜が可能であるため、多孔質酸化物半導体層の形成工程によって膜特性が変化しにくい。したがって、本発明の導電膜付ガラス基板は色素増感型太陽電池用として好適である。
なお、FTO膜やATO膜は、ITO膜と比較して膜表面の凹凸の度合いが大きいため、TiO層などの多孔質酸化物半導体層が十分に固定されやすくなる効果(アンカー効果)も期待できる。
第三に、本発明の太陽電池用導電膜付ガラス基板において、ガラス基板の熱膨張係数が70〜110×10−7/℃であることを特徴とする。本発明において、ガラス基板の熱膨張係数は、JIS R3103に準じて測定された30〜380℃の範囲における熱膨張係数をいう。
例えば、色素増感型太陽電池では、導電膜付ガラス基板と対極基板の間に充填されたヨウ素電解液の漏れを防止するために、導電膜付ガラス基板と対極基板の外周縁を樹脂あるいは鉛ガラスやビスマスホウ酸ガラスなどの低融点ガラスで封止する必要がある。低融点ガラスにより封止する場合、ガラス基板との熱膨張係数の差が大きすぎると、封止部分またはガラス基板にクラックが生じ、ヨウ素電解液の漏れが発生するおそれがある。鉛ガラスやビスマスホウ酸ガラスなどの低融点ガラスは、一般に熱膨張係数が大きいため、耐火物フィラーを添加することにより熱膨張係数を低下させ、ガラス基板との熱膨張係数差を小さくするという手法がとられている。
近年、環境への配慮から、封止材として無鉛ガラスを用いられるようになってきている。しかしながら、ビスマスホウ酸ガラスは、鉛ガラスと比較して熱膨張係数を低下させにくく、低熱膨張ガラス基板への対応が困難であった。そこで、本発明では、ガラス基板の熱膨張係数を70×10−7/℃以上と比較的高い範囲に限定することにより、ビスマスホウ酸ガラスによる封止にも対応が容易であり、環境の面からも好ましい色素増感型太陽電池とすることができる。
一方、ガラス基板の熱膨張係数を110×10−7/℃以下に限定することにより、FTO膜やATO膜の成膜時における基板の熱変形や破損を防止することが可能となる。
第四に、本発明は、前記いずれかの太陽電池用導電膜付ガラス基板上に、厚さ5〜50μmの酸化物半導体層が形成されてなることを特徴とする色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極に関する。
第五に、本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極において、酸化物半導体層が、平均一次粒子径が30nm以下の酸化物粒子からなることを特徴とする。
このように、酸化物半導体層を構成する酸化物粒子の平均一次粒子径を小さくすることにより、酸化物半導体層の光透過性を高めることが可能となる。
第六に、本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極において、酸化物半導体層の気孔率が60〜80%であることを特徴とする。
酸化物半導体層の気孔率を当該範囲に限定することにより、発生する応力を緩和できるとともに、色素の吸着を十分に行うことができる。なお、本発明において、酸化物半導体層の気孔率は以下の式により算出される。
ρ=W/V
P=(1−ρ/D)×100〔%〕
ここで、Wは酸化物半導体層の質量、Vは酸化物半導体層の体積、ρは酸化物半導体層の見かけ密度、Dは酸化物半導体の理論密度、Pは酸化物半導体層の気孔率を示す。
本発明において、ガラス基板の歪点は525℃以上であり、成膜時の温度むらなどを考慮すると、好ましくは540℃以上である。ガラス基板の歪点が525℃未満であると、成膜時に熱変形が生じやすくなる。なお、FTO膜またはATO膜の成膜温度との兼ね合いで言えば、ガラス基板の歪点は、FTO膜またはATO膜の成膜温度より15℃以上、好ましくは30℃以上高いことが好ましい。ここで、成膜温度とは、成膜時におけるガラス基板の保持温度をいう。
このようなガラスとしては、SiO−Al−RO−R’O系、SiO−Al−B−RO系、SiO−Al−R’O系、SiO−B−R’O系、SiO−B−Al−RO−R’O系ガラスなどが挙げられる(ただし、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znのいずれかを示し、R’はLi、Na、Kのいずれかを示す)。
ここで、AlおよびZrOは、ガラスの歪点を高める成分であるが、高温粘性も同時に高くなり、溶融性が悪化する傾向がある。一方、LiO、NaO、KOなどのアルカリ金属酸化物は、高温粘性を下げる成分であるが、ガラスの歪点が低下する傾向がある。
MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOは、ガラスの高温粘性を下げる成分であり、アルカリ金属酸化物と比較して歪点を低下させる割合が少ないという性質を有する。よって、アルカリ金属酸化物をこれらの成分と適宜置換することにより、ガラスの高温粘性を比較的低いレベルに維持しつつ、ガラスの歪点を高めることができる。
例えば、SiO−Al−RO−R’O系ガラスとしては、質量%で、SiO 50〜70%、Al 0.5〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 10〜27%、LiO+NaO+KO 7〜15%、ZrO 0〜9%、TiO 0〜5%、SnO+Sb+As+SO 0〜1%の組成を含有するものが一例として挙げられる。
このようにガラス組成を限定した理由は以下のように説明される。
SiOはガラスの網目構成成分であり、その含有量は50〜70%、好ましくは52〜65%である。SiOの含有量が50%より少ないと、ガラスの歪点が低くなる傾向がある。一方、SiOの含有量が70%より多いと、溶融温度が高くなるため溶融性が悪化し、また失透しやすくなる。
Alはガラスの歪点を高めるための成分であり、その含有量は0.5〜15%、好ましくは2〜12%である。Alの含有量が0.5%より少ないと、歪点を高める効果が得られにくい。一方、Alの含有量が15%より多いと、溶融温度が高くなるため溶融性が悪化し、また失透しやすくなる。
MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは、いずれもガラスの溶融性を向上させるとともに、熱膨張係数を制御するための成分である。また既述のように、アルカリ金属酸化物と比較して歪点を低下させる割合が少ないという性質を有する。これらの成分の含有量は合量で10〜27%、好ましくは15〜25%である。これらの成分の合量が10%より少ないと、溶融温度が高くなり溶融性が悪化しやすく、一方、27%より多いと失透しやすく、成形が困難となりやすい。
LiO、NaOおよびKOは、いずれもガラスの溶融性を向上させるとともに、熱膨張係数を制御するための成分である。これらの成分の含有量は合量で7〜15%、好ましくは8〜13%である。これらの成分の合量が7%より少ないと、溶融温度が高くなり溶融性が悪化しやすく、一方、15%より多いと、歪点が低くなりやすくなる。
ZrOは歪点を高め、かつ化学的耐久性を向上させる成分である。ZrOの含有量は0〜9%、好ましくは1〜7%である。ZrOの含有量が9%より多くなると、溶融時に失透物が生成しやすく成形が困難となりやすい。
TiOはガラスの紫外線による着色(ソーラリゼーション)を防止する成分である。ガラス基板中に不純物として鉄イオンを含有していると(例えば、0.01〜0.2%)、当該ガラス基板を用いた太陽電池を長期間使用することにより、鉄イオンによる着色が生じやすくなる。そこで、TiOを含有することによって、この種の着色を防止することができる。TiOの含有量は0〜5%、好ましくは1〜4%である。TiOの含有量が5%より多くなると、失透しやすく、成形が困難となりやすい。
SnO、Sb、AsおよびSOは、いずれも清澄剤として使用する成分である。これらの成分の含有量は合量で0〜1%、好ましくは0.1〜0.8%である。これらの成分の合量が1%より多くなると、失透しやすく、成形が困難となりやすい。
また、より歪点の高いSiO−Al−B−RO系ガラスとしては、質量%で、SiO 50〜70%、Al 10〜20%、B 9〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 10〜18%、SnO+Sb+As 0.05〜1%の組成を含有するものが挙げられる。
このようにガラス組成を限定した理由は以下のように説明される。
SiOはガラスの網目構成成分である。SiOの含有量は50〜70%、好ましくは55〜65%である。SiOの含有量が50%より少ないと、歪点が低くなりやすい。一方、SiOの含有量が70%より多いと、溶融温度が高くなり溶融性が悪化し、また失透しやすくなる。
Alは、ガラスの歪点を高めるための成分である。Alの含有量は10〜20%、好ましくは12〜18%である。Alの含有量が10%より少ないと、歪点を高める効果が十分に得られにくい。一方、Alの含有量が20%より多いと、溶融温度が高くなり溶融性が悪化し、また失透しやすくなる。
は融剤として働き、ガラスの粘性を下げて溶融を容易にする成分である。Bの含有量は9〜15%、好ましくは9〜14%である。Bの含有量が9%より少ないと、融剤としての効果が不十分となりやすい。一方、Bの含有量が15%より多いと、歪点が低下しやすい。
MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは、いずれもガラスの溶融性を向上させるとともに、熱膨張係数を制御するための成分である。また既述のように、アルカリ金属酸化物と比較して歪点を低下させる割合が少ないという性質を有する。これらの成分の含有量は合量で10〜18%、好ましくは11〜16%である。これらの成分の合量が10%より少ないと、溶融温度が高くなり溶融性が悪化しやすく、一方、18%より多いと、失透しやすく、成形が困難となりやすい。なお、各成分の含有量としては、MgO 0〜2.5%(さらには0.1〜2%)、CaO 6.5〜15%(さらには、7〜13%)、SrO 3〜10%(さらには、3〜8%)、BaO 0〜3%(さらには、0.1〜2%)であることが好ましい。
SnO、Sb、Asはいずれも清澄剤としての働きを有する成分である。これらの成分の含有量は合量で0.05〜1%である。これらの成分の合量が0.05%より少ないと、清澄剤としての十分な効果が得られにくく、一方、1%より多いと、失透しやすくなる。
本発明において、ガラス基板の厚みは0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1.5mm、より好ましくは0.2〜1.2mmである。ガラス基板の厚みが2mmよりも大きい場合、太陽電池の薄型軽量化を達成しにくい。一方、ガラス基板の厚みが0.05mmよりも薄い場合、柔軟性(可撓性)に優れるものの、強度が低下し破損しやすくなる。
例えば熱CVD法などの成膜方法によるFTO膜、ATO膜の原料としては、スズ源としてSnCl、CSnCl、(CHSnCl、フッ素源としてHF、CFCOOH、CHF、CCl、またアンチモン源としてSbClなどを用いることができる。
FTO膜およびATO膜の膜厚は特に限定されないが、0.5〜1.5μmの範囲で調整することが好ましい。FTO膜およびATO膜の膜厚が0.5μmより薄いと、十分な導電性が得られず、一方、1.5μmより厚いと、太陽光スペクトルに対する透過率が下がり太陽電池の発電効率が低下しやすい。
FTO膜およびATO膜の抵抗値は、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは7Ω/□以下である。抵抗値が10Ω/□を超えると、膜の導電性が低下し、太陽電池としての性能に劣る傾向がある。
FTO膜およびATO膜の平均表面粗さ(Ra)は、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。膜の平均表面粗さを当該範囲とすることにより、光の封じ込め効果が発揮されるとともに、膜の表面積が増大し、導電性を向上させることができる。
なお、ガラス基板がアルカリ金属酸化物を含むガラスからなる場合、FTO膜またはATO膜とガラス基板の間にSiOなどのアンダーコート層を設けてもよい。このようなアンダーコート層を設けることにより、ガラスから溶出するアルカリイオンによるFTO膜またはATO膜の導電性低下を防止することができる。
本発明において、特に導電膜付ガラス基板を色素増感型太陽電池用として用いる場合、ガラス基板の熱膨張係数を70〜110×10−7/℃の範囲で調整することが好ましい。既述のように、ガラス基板の熱膨張係数が70×10−7/℃より小さいと、封止用の低融点ガラスとの熱膨張係数差が大きくなるため、封止部分またはガラス基板にクラックが生じ、ヨウ素電解液の漏れが発生するおそれがある。一方、ガラス基板の熱膨張係数が110×10−7/℃より大きいと、FTO膜やATO膜の成膜時において、基板が熱変形しやすくなる。
なお、ガラス基板の封止に、樹脂等の、低融点ガラス以外の封止材を用いる場合は、ガラス基板の熱膨張係数は上記範囲に限定されず、例えば、熱膨張係数が−5〜110×10−7/℃、さらには30〜110×10−7/℃のガラス基板を用いることができる。特に、熱膨張係数が70×10−7/℃より小さいガラス基板も用いることが可能であり、具体的には、熱膨張係数が60×10−7/℃以下、さらには50×10−7/℃以下のガラス基板を用いることができる。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極において、酸化物半導体層の厚さは5〜50μm、好ましくは8〜40μm、より好ましくは10〜30μmである。酸化物半導体層の厚さが5μmより薄いと、色素増感型太陽電池の発電効率が低くなりやすい。一方、酸化物半導体層の厚さが50μmより厚いと、照射光を有効活用しにくくなるとともに、酸化物半導体層の剥離が起こりやすくなる。
酸化物半導体層は、単層あるいは光透過性の異なる複数の層(少なくとも2層以上)で構成される。
酸化物半導体層は、光透過性の異なる複数の層(少なくとも2層以上)で構成すること、さらには、ガラス基板に近い側の層から順に光透過性の高い酸化物半導体層を配置することにより、照射光を有効活用し、色素増感型太陽電池の発電効率を向上させることが可能となることが知られている。一方、当該構成とした場合、各層の焼結挙動の違いによって酸化物半導体層とガラス基板の間に働く応力が増加しやすくなるため、酸化物半導体層の剥離が生じやすくなる。特に、ガラス基板の熱膨張係数が小さい場合(例えば、70×10−7/℃未満、60×10−7/℃以下、さらには50×10−7/℃以下)、酸化物半導体層の剥離が顕著になる傾向がある。そこで、このような酸化物半導体層の剥離を抑制するという観点では、酸化物半導体層を単層で構成することが好ましい。
酸化物半導体層の光透過性を高める手段としては、酸化物半導体を構成する酸化物粒子の粒子径を小さくすることが有効である。
酸化物粒子の平均一次粒子径は30nm以下、25nm以下、特に20nm以下が好ましい。酸化物粒子の平均一次粒子径が30nmを超えると、酸化物半導体層の光透過性に劣る傾向がある。
酸化物半導体層の気孔率は、60〜80%、特に65〜75%が好ましい。酸化物半導体層の気孔率が60%未満であると、焼成時に発生する応力により剥離が生じやすく、また十分な量の色素吸着が得られないため発電効率が低下する。酸化物半導体層の気孔率が80%を超えると、実効酸化物半導体粒子数が減る、あるいは、電子が移動するためのパスが減るなどにより発電効率が低下する。また、膜の機械的強度が落ち、僅かな外的衝撃が負荷されただけでも剥がれが生じやすくなる。
酸化物半導体層は、酸化チタンを含む酸化物粒子から構成されることが好ましい。酸化チタンの結晶系としては、エネルギー変換効率に優れるためアナターゼ型が好ましい。ただし、酸化物粒子は、酸化チタンに限定されるものではなく、色素増感型太陽電池としての性能を発揮するものであれば使用可能である。例えば、酸化亜鉛などが挙げられる。
酸化物半導体層は、酸化物半導体ペーストをガラス基板上に塗布し、焼成することにより形成される。酸化物半導体ペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スプレー法などが挙げられる。特に、スクリーン印刷法は、大面積に均一に数〜数十μmの厚膜を形成することができ、好ましい。
酸化物半導体ペーストは、主に酸化物粒子と溶媒と樹脂とからなる。樹脂はペーストの粘性を調整する目的で添加される。また、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤等を添加することもできる。
樹脂としては、アクリル酸エステル(アクリル樹脂)、エチルセルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系化合物、ポリエチレングリコール誘導体、ニトロセルロース、ポリメチルスチレン、ポリエチレンカーボネート、メタクリル酸エステル等が使用可能である。特に、アクリル酸エステル、エチルセルロース、ニトロセルロースは、熱分解性が良好であるため、好ましい。
溶媒としては、N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、α−ターピネオール、高級アルコール、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラリン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が使用可能である。特に、α−ターピネオールは、高粘性であり、樹脂等の溶解性も良好であるため、好ましい。
酸化物半導体ペーストの焼成温度は400〜600℃、420〜570℃、特に450〜550℃が好ましい。400℃未満であると、樹脂が完全に燃焼せず、酸化物粒子の結合が不十分であり、電池性能が低下する。一方、600℃より高いと、ガラス基板が変形しやすいとともに、酸化物半導体層の収縮に伴い、発生する応力が大きくなり、剥がれが生じやすくなる。
本発明の導電膜付ガラス基板の大きさは特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。なお、基板の大きさが大きくなるほど成膜時の温度分布のムラが生じやすくなり、熱変形が生じやすくなるため、本発明の効果が得られやすくなる。具体的には、導電膜付ガラス基板の面積が1000mm以上、さらには5000mm以上、特に10000mm以上の場合に本発明は有効である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4および比較例1、2)
表1に記載の各ガラス基板(120×120mm)上に、熱CVD法によりFTO膜を成膜した。具体的には、原料として(CHSnCl、CFCOOHを用い、これらを一旦ガス化した後、表1記載の成膜温度に加熱されたガラス基板上に吹き付けることにより成膜を行い、導電膜付ガラス基板を得た。成膜は、各ガラス基板を成膜温度にて10分間保持した後に行った。また、FTO膜の膜厚は約1μmとなるよう、2〜5分の範囲で成膜時間を調整した。
得られた各導電膜付ガラス基板を徐冷し、徐冷後の導電膜付ガラス基板を定盤上に載置して隙間ゲージにより変形の有無を確認した。変形が0.1mm未満の場合を「○」、0.1mm以上の場合を「×」として導電膜付ガラス基板の状態を評価した。結果を表1に示す。
実施例1〜4では、導電膜付ガラス基板の歪点がいずれも525℃以上であるため、成膜後の試料に変形は確認されなかった。一方、比較例1および2では、実施例1〜4よりガラス基板の厚みが大きく、かつ成膜温度が低いにも係わらず、0.5mm以上の変形が確認された。
(実施例5〜9)
実施例1および2の導電膜付膜付ガラス基板を15×15mmのサイズに切断し、200メッシュスクリーンを用いて、導電膜上に酸化チタンペーストをスクリーン印刷した。酸化チタンペーストは、焼成後半透明であるSolaronix社Ti−Nanoxide T/SP(以下T/SP、平均粒径13nm)、および焼成後不透明である同社Ti−Nanoxide D/SP(以下、D/SP、平均粒径13nm(一部、平均粒径400nm粒子含む))を用いた。実施例5および7ではD/SPのみを、実施例6および8ではT/SPのみを、さらに比較例3ではT/SP、D/SPの順でスクリーン印刷し、電気炉で500℃にて30分間焼成を行った。
次に、焼成された酸化チタン層にスコッチメンディングテープ810を貼り付け、ゴムローラーで加圧した後、一気に引き剥がすことによりガラス基板と酸化チタン層の密着性を確認した。このときの酸化チタン層とガラス基板の密着性の度合いを、酸化チタン層の印刷面積に対して、酸化チタン層が剥がれガラス基板(FTO膜表面)が剥き出しになっている面積の割合を求め、A:0〜10%未満、B:10〜30%未満、C:30〜80%未満、D:80〜100%のように評価し、AおよびBを良とした。結果を表2に示す。
本発明の太陽電池用導電膜付ガラス基板は、アモルファスシリコン太陽電池を始めとするシリコン系薄膜太陽電池、色素増感型太陽電池、CdTe太陽電池、などに用いられる電極基板として好適である。

Claims (6)

  1. 0.05〜2mmの厚みを有するガラス基板上にフッ素ドープ酸化スズまたはアンチモンドープ酸化スズからなる導電膜が成膜されてなる太陽電池用導電膜付ガラス基板であって、ガラス基板の歪点が525℃以上であることを特徴とする太陽電池用導電膜付ガラス基板。
  2. 太陽電池が色素増感型太陽電池であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用導電膜付ガラス基板。
  3. ガラス基板の熱膨張係数が70〜110×10−7/℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用導電膜付ガラス基板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用導電膜付ガラス基板上に、厚さ5〜50μmの酸化物半導体層が形成されてなることを特徴とする色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  5. 酸化物半導体層が、平均一次粒子径が30nm以下の酸化物粒子からなることを特徴とする請求項4に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  6. 酸化物半導体層の気孔率が60〜80%であることを特徴とする請求項4または5に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
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