JP6246544B2 - Cigs太陽電池用絶縁基板およびcigs太陽電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、ステンレス鋼板等の導電性基板を用いた場合には、太陽電池を直列接続するために、基板の裁断や導線での配線など複雑な製造プロセスが必要となり、コスト低減に課題がある。従って、基板上で複数のユニットセルを直列接続するため、金属基板上に絶縁層を設けることが必須となる。
特許文献2には、金属基板上に陽極酸化膜を有し、陽極酸化膜の表面に細孔が形成された基板が記載されている。このような多孔質陽極酸化膜を絶縁層として用いた場合、クラックの発生しづらい酸化膜が得られるが、多孔質であるために水分が吸着しやすく、リーク電流が流れやすいという問題を有している。
特許文献3および特許文献4には、金属基板上にガラス層を設けて金属基板使用時の絶縁性を確保するとともに、絶縁層にNaを含有させる試みがなされている。しかしながら、特許文献3の琺瑯は鉛を含有しており製品の安全性を損ねるとともに、熱膨張係数を鋼板の熱膨張係数と近づけることはできていない。特許文献4で設けられたガラス層もシリカ系ガラスであり、絶縁耐圧を高くすることができても熱膨張係数を合わせるまでには至っていない。さらに、Naを拡散しCIGS層の結晶成長を促進させるためには、NaFやNa3AlF6を含むようにするとの記載(段落0009)があるように、ベースのガラス層のみではNa拡散による効果は少ないと考えられる(表1)。
〔普通鋼〕
質量%で、C:0.001〜0.15%,Si:0.001〜0.1%,Mn:0.005〜0.6%,P:0.001〜0.05%,S:0.001〜0.5%,Al:0.001〜0.5%,Ni:0.001〜1.0%,Cr:0.001〜1.0%,Cu:0〜0.1%,Ti:0〜0.5%,Nb:0〜0.5%,N:0〜0.05%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼。
〔フェライト系ステンレス鋼〕
質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005%〜0.03%、Ni:0〜0.6%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.2%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼。
ここで、下限が0%である元素は任意元素であり、「0%」は通常の製鋼工程における分析値が測定限界以下である場合を意味する。
絶縁基板12の板厚は、例えば0.02〜2.00mm程度とすればよい。特にフレキシブル化を重視するためには、0.02〜0.5mmとすることが望ましい。
絶縁鋼板12の鋼板11としては、熱膨張係数がCIGS層と比較的近い普通鋼()や、フェライト系ステンレス鋼が好適な対象となる。ステンレス鋼は耐食性に優れるため、高い耐久性・信頼性が重視される用途においては好適である。規格鋼種としては、普通鋼の場合、例えばJIS G3141:2009に規定される冷延鋼板(鋼帯を含む)を素材とするものが適用できる。また、ステンレス鋼の場合、例えばJIS G4305:2005に規定されるフェライト系の化学組成を有する鋼板(鋼帯を含む)が適用できる。具体的な化学組成範囲は前述のとおりである。
アルカリ金属含有ビスマス系ガラスの組成は、Bi2O3:30〜90質量%、SiO2+B2O3:3〜55質量%を含み、さらにLi2O,Na2O,K2Oのいずれか1種以上を合計0.5〜20質量%含むガラス組成のものが好適である。10質量%までの範囲で、TiO2、Al2O3を添加しても良い。Bi2O3成分はガラス形成酸化物の役割を果たし、ガラスの安定性の向上に大きく寄与し、特に500℃以下の低いガラス転移点(Tg)という本発明の目的を達成するのに欠かせない成分である。本発明においてガラスの低Tg化にはBi2O3の含有量が強く依存するので、含有量が少ないと低Tgのガラスを得がたい。しかし、Bi2O3を過剰に含有するとガラス安定性が損なわれ、少なすぎると本発明の目的を満たすことが出来ない。よって、Bi2O3量は上限を90質量%とするのが好ましく、下限を30質量%とするのが好ましい。
アルカリ金属含有ガラス上における電極金属のマイグレーションは、アルカリ金属の溶出に伴う金属の溶出が影響すると考えられる。
アルカリ金属含有ビスマス系ガラスにおいてMoマイグレーションを防止できるのは、Bi2O3が所定量含まれた状態で、SiO2およびB2O3を適量含有されることにより、ガラスの網目構造内にアルカリ金属が安定して存在できるようになるため、アルカリ金属溶出が抑制されてマイグレーションの防止効果が発現するものと考えられる。
アルカリ金属含有ビスマス系ガラス層12の表面上に、下部電極層2としてMo皮膜を形成することにより、電極基板が得られる。Mo皮膜の形成手法は、スパッタリング法等、公知の手法が適用できる。この下部電極層2の厚さは0.2〜3.0μm程度とすればよい。
上記の下部電極層2(Mo電極)の表面上に、CIGS層3、バッファ層4、酸化亜鉛層5、透光性導電層6を順次形成することにより太陽電池セルが作製される。これら各層の形成方法としては従来公知の手法が適用可能である。例えばCIGS層3の形成は、下部電極層2(Mo皮膜)上にCu, In, Ga, Seを同時あるいは順次蒸着し、加熱拡散によりCIGS層を合成する手法が採用できる。加熱温度は500〜550℃の高温とすることが可能である。通常、この温度範囲でCIGS層の合成に最適な条件を見出すことができる。
普通鋼冷延鋼板:質量%で、C:0.003%、Al:0.038%、Si:0.003%、Mn:0.12%、P:0.012%、S:0.122%、Ni:0.02%、Cr:0.02%、Cu:0.01%、Ti:0.073%、N:0.0023%、残部Feおよび不可避的不純物
SUS430鋼板:質量%で、C:0.01%、Si:0.52%、Mn:0.19%、Ni:0.10%、Cr:18.4%、残部Feおよび不可避的不純物
普通鋼冷延鋼板の熱膨張率は10.8×10−6/℃、SUS430鋼板の熱膨張率は11.0×10−6/℃である。
これら鋼板を基材として、ビスマス系、亜鉛系、シリカ系のアルカリ金属含有ガラス層を形成し、絶縁基板を得た。
ガラス材料とビヒクルとを、ガラス材料が80質量%、ビヒクルが20質量%となるように混合して塗布用ペーストを調製した。ビヒクルはバインダ成分としてのエチルセルロース(2.5質量%)をターピネオールからなる溶剤(97.5質量%)に溶解したものである。なお、ガラス組成は表1に示すように変化させた。バーコーターにより板厚0.1mmのSUS430へペーストを塗布して300℃で乾燥後、700℃で10分焼き付けた。ガラス層の膜厚を15μmとした。
各ガラス粉末試料を白金セル中に投入し、示差熱分析装置(DTA)にて測定した。
<熱膨張係数の測定>
JIS R 3102に基づいた測定方法により、絶縁層を形成するガラスフリット単体で棒状に焼成し、焼成後の熱膨張係数を測定した。
ガラスペーストを塗布・焼成後、空冷した後の表面を観察することによって、クラック発生有無を評価した。目視および光学顕微鏡による観察のいずれでもクラックの発生がなかったものを○とし、目視ではクラックの発生がなく、光学顕微鏡による観察でクラックの発生があったものを△とし、目視および光学顕微鏡による観察のいずれでもクラックの発生があったものを×とした。
くし型電極をコートした絶縁鋼板を、設定温度121℃、2気圧、湿度95%の環境下に96時間保持し、その試験の前後において絶縁抵抗値を測定し、抵抗の低下のないものを○、低下が見られたものを×とした。
上述のように絶縁鋼板を作製した後、下部電極層としてRFスパッタリング法により平均厚さ1μmのMo皮膜を形成し、電極基板を得た。
各絶縁基板のMo皮膜上に、以下に示す方法で太陽電池セルを作製した。
まず、絶縁基板温度を約550℃とした状態でCu, In, Ga, Seを同時に蒸着することにより、厚さ2μmのCIGS層を形成した。
このようにして作製した太陽電池セルのITO透光性導電層の一部表面のみが露出するようにマスクした状態で、その露出部分に上部電極層となるAuを蒸着法により形成し、CIGS太陽電池を得た。
JIS C 2110に基づいた測定方法により、ガラス層を形成した絶縁鋼板の絶縁破壊電圧を測定した。
<耐冷熱衝撃性の評価>
サンプル温度を−40℃に30分間保持したあと、次いで250℃に30分間保持する条件を1サイクルとする冷熱衝撃試験を1000サイクル実施した。その後、試験実施後の鋼板とガラス層との界面や、ガラス層における亀裂や欠陥の発生有無を、目視および光学顕微鏡を用いて観察して評価した。クラック発生については、目視および光学顕微鏡による観察のいずれでもクラックの発生がなかったものを○とし、目視ではクラックの発生がなく、光学顕微鏡による観察でクラックの発生があったものを△とし、目視および光学顕微鏡による観察のいずれでもクラックの発生があったものを×とした。
上記の方法により作製したCIGS太陽電池に、山下電装社製「ソーラーシミュレーター:YSS−100」を用いてAM1.5、100mW/cm2の模擬太陽光を照射しながら、KEITHLEY社製「2400型ソースメータ」によりI−V特性を測定して、短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、形状因子FFの値を得た。これらの値から下記(1)式により光電変換効率ηの値を求めた。
光電変換効率η(%)=短絡電流密度Jsc(mA/cm2)x開放電圧Voc(V)x{形状因子FF/入射光100(mW/cm2)}x100・・・・(1)
ソーダライムガラスを基板に使用したCIGS太陽電池(表1の試験No.0)の光電変換効率η0を標準として、η0に対する各CIGS太陽電池の光電変換効率ηの比率η/η0の値(「変換効率比」という)を求めた。
以上の評価結果を表2に示す。
2 下部電極層
3 CIGS層
4 バッファ層
5 酸化亜鉛層
6 透光性導電層
7 上部電極層
8 導線
9 負荷
11 鋼板
12 アルカリ金属含有ビスマス系ガラス層
20 絶縁基板
Claims (2)
- 鋼板の表面に、軟化点が550℃以上、結晶化温度が800℃以上または結晶化せず、熱膨張係数が8〜13×10-6/℃であるアルカリ金属含有のガラス層からなる絶縁層が形成されたCIGS太陽電池用絶縁基板であって、
前記ガラス層は、Bi 2 O 3 :30〜90質量%、SiO 2 +B 2 O 3 :3〜55質量%(但し、質量%で、B 2 O 3 /SiO 2 の比が0.15〜5)を含み、さらにLi 2 O,Na 2 O,K 2 Oのいずれか1種以上を合計0.5〜20質量%含む組成のアルカリ金属含有ビスマス系ガラスで形成されると共に、その厚さが5〜50μmである、
ことを特徴とするCIGS太陽電池用絶縁基板。 - 請求項1に記載のCIGS太陽電池用絶縁基板の上にMo皮膜を有し、さらにそのMo皮膜上にCu(In,Ga)Se 2 型化合物層を有するCIGS太陽電池。
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