JP2013219079A - 電子デバイスとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極ライン上に封着層が良好に形成され、気密性が良好な電子デバイスを提供する。
【解決手段】電子デバイスは、電子素子13および電子素子13に電気的に接続された電極ライン14が素子形成面に設けられた第1のガラス基板11と、第1のガラス基板11の前記素子形成面側に間隔を設けて配置された第2のガラス基板12と、第1のガラス基板11と第2のガラス基板12との間に電子素子13を封止するとともに少なくとも一部に電極ライン14と交差する交差部を有し、電磁波吸収能を有する封着用ガラス材料に電磁波の照射を行って形成された枠状の封着層15とを有する。封着層15は、前記交差部における前記電磁波の照射前の幅に対する照射後の幅の割合が105〜300%となるように電磁波を照射して形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は電子デバイスとその製造方法に関する。
薄膜シリコン太陽電池、化合物半導体系太陽電池、色素増感型太陽電池のような太陽電池では、1対のガラス基板で電池素子(光電変換素子)を封止したガラスパッケージの適用が検討されている(例えば、特許文献1参照)。また、有機ELディスプレイ(Organic Electro−Luminescence Display:OELD)、電界放出ディスプレイ(Feild Emission Dysplay:FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)等の平板型ディスプレイ装置(FPD)においては、表示素子を形成した素子用ガラス基板と封止用ガラス基板とを対向配置し、これら1対のガラス基板で表示素子を封止した構造のガラスパッケージが適用されている。
このような電子デバイスに適用されるガラスパッケージでは、通常、電子素子と外部機器とを接続するために、少なくとも一方のガラス基板の対向面上に電子素子からガラスパッケージの外周部近傍へと延びるように取出電極等の電極ラインが設けられる。また、電子デバイスに適用されるガラスパッケージでは、例えば電子素子を囲むように封着用ガラス材料からなる封着層が設けられ、この封着層は一部が電極ラインと交差するように該電極ライン上に設けられる。電極ライン上に形成される封着層については、電子デバイスに適用されるガラスパッケージの気密性を良好にする観点から、クラックや割れ、剥離の発生等が抑制され、ガラス基板や電極ラインと良好に接合していることが求められる。
電極ライン上に封着層を形成する方法として、例えば、温度が一定となるようにレーザビームの移動速度や出力を調整する方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。また、電極ラインの損傷を抑制するとともに、電極ラインと封着層との接着力を向上させる方法として、電極ラインにおける封着層との交差部分に開口部を設ける方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。さらに、電極ラインの損傷を抑制する方法として、電極ライン上に保護層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献5、6参照)。
特開2007−042460号公報 特表2008−517446号公報 特表2011−529624号公報 特開2007−200835号公報 特開2007−220647号公報 特開2010−519702号公報
しかしながら、従来の方法については、必ずしも電極ライン上に封着層を良好に形成できず、電子デバイスに適用されるガラスパッケージの気密性を十分に確保できない。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、電極ライン上に封着層が良好に 形成された電子デバイスとその製造方法の提供を目的とする。
本発明の電子デバイスは、電子素子および前記電子素子に電気的に接続された電極ラインが素子形成面に設けられた第1のガラス基板と、前記第1のガラス基板の前記素子形成面側に間隔を設けて配置された第2のガラス基板と、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との間に前記電子素子を封止するとともに少なくとも一部に前記電極ラインと交差する交差部を有し、電磁波吸収能を有する封着用ガラス材料に電磁波の照射を行って形成された枠状の封着層とを有する。前記封着層は、前記交差部における前記電磁波の照射前の幅に対する照射後の幅の割合が105〜300%となるように電磁波を照射して形成されたことを特徴とする。
本発明の電子デバイスの製造方法は、以下の工程を有することを特徴とする。
電子素子および前記電子素子に電気的に接続された電極ラインが素子形成面に設けられた第1のガラス基板を用意する工程。
電磁波吸収能を有する封着用ガラス材料からなり、前記第1のガラス基板との積層時に前記電子素子を封止するとともに少なくとも一部に前記電極ラインと交差する交差部を有する枠状の封着層前駆体が封着層形成面に設けられた第2のガラス基板を用意する工程。
前記素子形成面と前記封着層形成面とが対向するように前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを積層する工程。
前記交差部における電磁波の照射前の前記封着層前駆体の幅に対する照射後に形成される封着層の幅の割合が105〜300%となるように、前記第1のガラス基板または前記第2のガラス基板を通して前記封着層前駆体に前記電磁波を照射して前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを前記封着層により封着する工程。
本発明の電子デバイスとその製造方法によれば、電極ラインとの交差部における電磁波の照射前の封着層前駆体の幅に対する照射後に形成される封着層の幅の割合が105〜300%となるように封着層で封着することで、電子デバイスの気密性を良好にできる。
電子デバイスの一実施形態を示す断面図。 電極ラインと封着層との交差部分の一例を示す平面図。 電極ラインと封着層との交差部分の一例を示す一部拡大断面図。 電極ラインと封着層との交差部分の他の例を示す一部拡大断面図。 電子素子の一例を示す断面図。 電子素子の他の例を示す断面図。 電子素子のさらに他の例を示す断面図。 電子素子のさらに他の例を示す断面図。 電子素子のさらに他の例を示す断面図。 電子デバイスの製造方法の一例を示す断面図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、電子デバイスの一実施形態を示す断面図である。
電子デバイス10は、例えば、薄膜シリコン太陽電池、化合物半導体系太陽電池、色素増感型太陽電池、有機太陽電池のような太陽電池、あるいはOELD、FED、PDP、LCD等のFPD、有機EL素子等の発光素子を使用した照明装置(有機EL照明等)を構成する。
電子デバイス10は、所定の間隔を持って対向配置されたガラス基板11とガラス基板12とを具備する。ガラス基板11とこれに対向するガラス基板12との間には、電子デバイス10に応じた電子素子13、および該電子素子13に電気的に接続され、該電子素子13から電子デバイス10の外周部近傍に延びる1以上の電極ライン14が設けられる。電子素子13および電極ライン14は、例えば一方のガラス基板11の対向面上に設けられる。ここで、図1に示すような電子デバイス10においては、電子素子13および電極ライン14が設けられる一方のガラス基板11が第1のガラス基板に相当し、他方のガラス基板12が第2のガラス基板に相当する。また、電子素子13および電極ライン14が設けられる対向面が素子形成面となる。
電子素子13は、例えば、太陽電池であれば太陽電池素子(光電変換素子)、OELDや有機EL照明であれば有機EL素子、PDPであればプラズマ発光素子、LCDであれば液晶表示素子を備える。太陽電池素子、発光素子、表示素子等を備える電子素子13は各種公知の構造を有し、素子構造は特に限定されない。また、電極ライン14の構造は、電子素子13の素子構造に応じて適宜変更でき、形状、位置、および本数等は特に限定されない。
ガラス基板11とガラス基板12との間は枠状の封着層15で封着されている。すなわち、封着層15は、ガラス基板11とガラス基板12との間に電子素子13を封止するように枠状に形成されている。封着は、ガラス基板11とガラス基板12との間に配置された封着層前駆体15に電磁波を照射して行われる。なお、本明細書では、封着層と、電磁波の照射により封着層となる封着層前駆体とについて同一の符号を付して説明する。
封着層15は、少なくとも一部に電極ライン14と交差する交差部15aを有する。なお、ガラス基板11とガラス基板12との間であって封着層15で封止された部分のうち電子素子13や電極ライン14を除いた空隙には、必要に応じて樹脂等が充填される。
図2は、図1に示す電極ライン14と封着層前駆体または封着層15との交差部分における電磁波の照射前と封着後の状態を示す平面図であり、図2(a)が電磁波の照射前(封着前)の状態、図2(b)が電磁波の照射後(封着後)の状態を示す。なお、図2は、ガラス基板12側から見た状態を示し、電極ライン14、封着層前駆体および封着層15以外の構成は図示を省略し、電極ライン14と封着層前駆体15との関係、および電極ライン14と封着層15との関係のみを示した。
また、図3は、図1に示す電極ライン14と封着層前駆体または封着層15との交差部分における電磁波の照射前と封着後の状態を拡大して示す一部断面図であり、図3(a)が電磁波の照射前(封着前)の状態、図3(b)が電磁波の照射後(封着後)の状態を示す。
電子デバイス10は、図2(a)または図3(a)に示すような電磁波の照射前(封着前)、すなわち電極ライン14上に単に封着層前駆体15(交差部15a)が積層されたときの交差部15aの幅wに比べて、図2(b)または図3(b)に示すように電磁波の照射後(封着後)の封着層15(交差部15a)の幅wが広くなるように、封着層前駆体15(交差部15a)に電磁波の照射が行われて封着されている。特に、電磁波の照射前の封着層前駆体15の交差部15aの幅wに対する電磁波の照射後の封着層15の交差部15aの幅wの割合(100×w/w[%])が105〜300%となるように電磁波の照射が行われて封着されている。以下、上記割合をシール割合とも記す。
なお、交差部15aの幅w、wは、図2、3に示されるように電極ライン14の延設方向(図2、3中、横方向)における交差部15aの長さとされる。また、封着層前駆体または封着層15のうち交差部15a以外の部分については、必ずしも電磁波の照射前後(封着前後)において上記したようなシール割合を満たす必要はない。また、必ずしも限定されるものではないが、通常、電磁波の照射前の封着層前駆体15の幅は一定とされ、すなわち電磁波の照射前においては交差部15aとそれ以外の部分との幅は同様とされる。
このように封着層15に電磁波を照射して封着を行うものについて、その交差部15aにおける電磁波の照射前後での幅の割合(シール割合)を上記したような所定の割合としている。これにより、ガラス基板11とガラス基板12とが電極ライン14を介して封着層15(交差部15a)により封着される部分についても、ガラス基板11とガラス基板12とが封着層15により直接封着される部分と同様、封着を良好に行うことができ、電子デバイス10の気密性を良好にできる。特に、所定のシール割合とすることで、電極ライン14の構成材料によらず、また電極ライン14上に予め保護膜を設けることなしに、または電極ライン14自体の形状を特別な形状とすることなしに、封着を良好に行うことができ、電子デバイス10の気密性を良好にできる。
封着温度が低い場合にはシール割合は小さくなり、封着温度が高い場合にはシール割合は大きくなる。シール割合が105%未満の場合、電磁波の照射後(封着後)における交差部15aの幅wが十分に広くないことから、接着力が不十分となり、剥離が発生しやすくなる。その結果、電子デバイス10の気密性を効果的に向上できず、特に電極ライン14の構成材料によっては十分な気密性が得られないおそれがある。一方、シール割合が300%を超える場合、封着温度が高くなり過ぎているため、発生応力が大きくなり、封着層や基板にクラックや割れが発生し、やはり電子デバイス10の気密性を向上できず、また生産性も低下するおそれがある。
シール割合は、電子デバイス10の気密性を効果的に向上させる観点から、110〜250%が好ましく、120〜200%がより好ましい。例えば、電極ライン14の構成材料がモリブデンまたはモリブデン合金の場合、従来の封着方法では必ずしも十分な気密性が得られないが、シール割合を130以上、250%以下、さらには150以上、200%以下とすることで、十分な気密性を得ることができる。
図4は、電極ライン14と封着層前駆体または封着層15との交差部分における電磁波の照射前後(封着前後)の他の状態を示す一部拡大断面図であり、図4(a)が電磁波の照射前(封着前)の状態、図4(b)が電磁波の照射後(封着後)の状態を示す。図4に示すように、交差部15aの断面形状が台形状等であって、電極ライン14の延設方向(図4中、横方向)における交差部15aの長さが厚さ方向(図4中、縦方向)に変化する場合、幅w、wは交差部15aの長さが最大となる部分での長さとする。
なお、図2に示すように、電極ライン14の延設方向における交差部15aの長さは、封着層15の延設方向では基本的に一定となるが、仮に封着層15の延設方向で変化する場合、電磁波の照射後(封着後)における電極ライン14の延設方向における交差部15aの長さが最大となる部分の長さを交差部15aの幅wとする。また、幅wは、上記した幅wの測定位置での長さとする。
交差部15aの幅w、wは、例えば、電子デバイス10の製造時、電磁波の照射前後(封着前後)の各段階において交差部15aの幅w、wを実際に測定して求めることができる。また、製造時の各段階で測定する以外にも、製造後の段階で測定して求めることができる。例えば、最初に封着層前駆体15が焼き付けて設けられるガラス基板12側から光学顕微鏡により製造後の電子デバイス10を観察した場合、電磁波の照射前(封着前)の封着層前駆体15が存在していた部分と、電磁波の照射(封着)によって封着層前駆体15が軟化流動して広がって形成された封着層15とでコントラスト差が見られる。従って、このコントラスト差を観察することで、製造後の電子デバイス10からも交差部15aの幅w、wを求めることができる。
電子デバイス10は、電極ライン14と封着層15との交差部分の少なくとも1箇所について上記シール割合を満たしていればよい。すなわち、電極ライン14が複数本ある場合、通常、電極ライン14と封着層15との交差部分は電極ライン14の本数分あるが、このような場合には少なくとも1箇所の交差部分について上記シール割合を満たしていればよい。好ましくは交差部分の個数の50%以上、より好ましくは交差部分の個数の70%以上、さらに好ましくは交差部分の個数の90%以上が、上記シール割合を満たすことが好ましい。
電磁波の照射後(封着後)の封着層15の交差部15aの幅wは、上記シール割合を満たすものであれば必ずしも限定されないが、通常、0.1〜5.0mmが好ましく、0.2〜3.0mmがより好ましく、0.5〜2.0mmがさらに好ましい。また、交差部15a以外の幅は、必ずしも限定されないが、通常、0.05〜4.0mmが好ましく、0.1〜2.0mmがより好ましく、0.3〜1.5mmがさらに好ましい。
ガラス基板11、ガラス基板12は、各種公知の組成を有するソーダライムガラス、無アルカリガラス、化学強化ガラス、物理強化ガラス等で構成される。ソーダライムガラスは80〜90(×10−7/℃)程度の熱膨張係数を有している。無アルカリガラスは35〜40(×10−7/℃)程度の熱膨張係数を有する。高い反射率を得るという観点からソーダライムガラスは、透明度が高い白板ガラス(高透過ガラス)が望ましい。ここで謂う白板ガラス(高透過ガラス)とは、可視光透過率が普通のソーダライムガラスより高く、90%以上の可視光透過率を有するガラスであり、例えば、普通のソーダライムガラスに対し鉄分をFeとして0.06%以下としたガラスである。また、強度の観点から、ソーダライムガラスは強化ガラスであることが望ましい。強化の方法は化学強化、風冷強化のいずれであってもよい。またソーダライムガラス以外の化学強化ガラスであってもよい。
ガラス基板11、ガラス基板12の厚さは0.03〜5mmの範囲が好ましい。ガラス基板11、ガラス基板12の厚さが0.03mm未満の場合、電子デバイス10の強度や信頼性が不充分になるおそれがある。一方、ガラス基板11、ガラス基板12の厚さが5mmを超えると、電子デバイス10が重くなるおそれがある。電子デバイス10の重さを考慮すると、ガラス基板11、ガラス基板12は薄い方が望ましく、具体的には0.03〜2.8mmがより好ましく、さらに好ましくは0.03〜1.1mmである。電子デバイス10の強度を考慮すると、ガラス基板11、ガラス基板12は厚い方が望ましく、具体的には0.07〜5mmがより好ましく、さらに好ましくは0.5〜5mmである。
電極ライン14は、電子素子13の素子構造等に応じて構成材料を適宜選択できる。例えば、金属材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、ニッケル、銅、モリブデン、タングステン、銀、金、またはこれらを含む合金が挙げられる。また、酸化物材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、特にモリブデンおよびモリブデン合金については、従来の封着方法では十分な気密性を確保することが難しいが、上記封着方法によれば十分な気密性を確保できる。
図5に、電子素子13としての色素増感型太陽電池素子21の一例を示す。図5に示す色素増感型太陽電池素子21において、主として太陽光の照射面となるガラス基板12の対向面には、酸化インジウムスズ(ITO)やフッ素ドープ酸化スズ(FTO)等からなる透明導電膜211を介して、増感色素を有する半導体電極(光電極/アノード)212が設けられる。ガラス基板12の対向面と対向するガラス基板11の対向面には、同様にITOやFTO等からなる透明導電膜213を介して、対向電極(カソード)214が設けられる。
半導体電極212は酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化亜鉛等の金属酸化物からなる。半導体電極212は金属酸化物の多孔質膜により構成されており、その内部に増感色素が吸着されている。増感色素としては、例えばルテニウム錯体色素やオスミウム錯体色素等の金属錯体色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素等の有機色素が用いられる。対向電極214は白金、金、銀等の薄膜からなる。ガラス基板11とガラス基板12との間には電解質215が封入されており、これら構成要素により色素増感型太陽電池素子21が構成される。
図6に、電子素子13の他の構成例としてタンデム型薄膜シリコン太陽電池素子22の一例を示す。図6に示すタンデム型薄膜シリコン太陽電池素子22は、太陽光の照射面となるガラス基板12の対向面上に順に設けられた、第1の透明電極221、非晶質シリコン光電変換層222、結晶質シリコン光電変換層223、第2の透明電極224、裏面電極225を備えている。透明電極221、224はSnO、ZnO、ITO等からなり、裏面電極225はAg等からなる。
非晶質シリコン光電変換層222は、p型アモルファスシリコン膜、i型アモルファスシリコン膜、n型アモルファスシリコン膜を有している。結晶質シリコン光電変換層223は、p型多結晶シリコン膜、i型多結晶シリコン膜、n型多結晶シリコン膜を有している。非晶質シリコン光電変換層222と結晶質シリコン光電変換層223との間には、必要に応じて透明中間層が設けられる。また、タンデム型薄膜シリコン太陽電池素子22とガラス基板11との間の空隙226には、必要に応じて樹脂等が充填される。
図7に、電子素子13の他の構成例として化合物半導体系太陽電池素子23の一例を示す。図7に示す化合物半導体系太陽電池素子23は、素子用ガラス基板としてのガラス基板11の対向面上に順に設けられた、裏面電極231、化合物半導体膜からなる光吸収層232、バッファ層233、透明電極234を備えている。裏面電極231はMo等の金属からなる。透明電極234はSnO、ZnO、ITO等からなる。
光吸収層232を構成する化合物半導体としては、Cu(In,Ga)Se(CIGS)、Cu(In,Ga)(Se,S)(CIGSS)、CuInS(CIS)等が用いられる。透明電極234上には、必要に応じて反射防止層が設けられる。また、化合物半導体系太陽電池素子23と太陽光の照射面となるガラス基板12との間の空隙235には、必要に応じて樹脂等が充填される。
図8に、電子素子13のさらに他の構成例として化合物半導体系太陽電池素子24の他の例を示す。図8に示す化合物半導体(CdTe)系太陽電池素子24は、太陽光の照射面となるガラス基板12の対向面上に順に設けられた、透明なn型CdS膜241、p型CdTe膜242、Cu含有炭素電極243、In含有Ag電極244を備えている。CdTe系太陽電池素子24とガラス基板11との間の空隙245には、必要に応じて樹脂等が充填される。
図9に、電子素子13のさらに他の構成例として有機太陽電池素子25の一例を示す。図9に示す有機太陽電池素子(有機薄膜太陽電池素子)25は、太陽光の照射面となるガラス基板12の対向面上に順に設けられた、透明電極251、バッファ層252、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等からなるp型有機半導体層253、ZnPcとフラーレン(C60)との混合物等からなるi型有機半導体層254、フラーレン(C60)等からなるn型半導体層255、バッファ層256、裏面電極(金属電極)257を備える。有機太陽電池素子25とガラス基板11との間の空隙258には、必要に応じて樹脂等が充填される。
電子素子13を構成する素子膜やそれらに基づく素子構造体は、ガラス基板11およびガラス基板12の対向面の少なくとも一方に形成される。図5に示す色素増感型太陽電池素子21では、ガラス基板11およびガラス基板12の各対向面に素子膜が形成される。図6に示す薄膜シリコン太陽電池素子22、図8に示す化合物半導体系太陽電池素子24、図9に示す有機太陽電池素子25では、ガラス基板12の対向面に素子膜が形成される。図7に示す化合物半導体系太陽電池素子23では、ガラス基板11の対向面に素子膜が形成される。OELDや有機EL照明等に適用される有機EL素子では、ガラス基板11が素子用ガラス基板として用いられ、その表面に素子構造体が形成される。ガラス基板12は有機EL素子の封止部材として用いられる。
電子素子13として色素増感型太陽電池素子21等を適用する場合には、ガラス基板11とガラス基板12との間の間隙全体に電子素子13が配置される。また、電子素子13として薄膜シリコン太陽電池素子22、化合物半導体系太陽電池素子23、24、有機太陽電池素子25、有機EL素子等を適用する場合、ガラス基板11とガラス基板12との間には一部空隙が残存する。そのような空隙はそのままの状態であってもよいし、また透明な樹脂等が充填されていてもよい。透明樹脂はガラス基板11およびガラス基板12に接着されていてもよいし、単にガラス基板11およびガラス基板12と接触しているだけであってもよい。
次に、電子デバイス10の製造工程について、図10を参照して説明する。
まず、封着層15の形成材料となる封着用ガラス材料を用意する。封着用ガラス材料は、低融点ガラスからなる封着ガラスと、電磁波吸収材や必要に応じて低膨張充填材のような充填材とを混合したものである。なお、黒色系の色調を有する封着ガラスのように、封着ガラス自体が電磁波吸収能を有する場合には、電磁波吸収材を配合することなく、封着ガラスと必要に応じて添加される低膨張充填材とで封着用ガラス材料を構成することができる。また、封着用ガラス材料はこれら以外の添加材を含有していてもよい。
封着ガラスとしては、例えばビスマス系ガラス、錫−リン酸系ガラス、バナジウム系ガラス、鉛系ガラス等が用いられる。これらのうち、ガラス基板11およびガラス基板12に対する接着性やその信頼性、さらに環境や人体に対する影響等を考慮して、ビスマス系ガラスや錫−リン酸系ガラスからなる封着ガラスを使用することが好ましい。
ビスマス系ガラスは、70〜90質量%のBi、1〜20質量%のZnO、および2〜12質量%のB(基本的には合計量を100質量%とする)の組成を有することが好ましい。
Biはガラスの網目を形成する成分である。Biの含有量が70質量%未満であると低融点ガラスの軟化点が高くなり、低温での封着が困難になる。Biの含有量が90質量%を超えるとガラス化しにくくなると共に、熱膨張係数が高くなりすぎる傾向がある。
ZnOは熱膨張係数等を下げる成分である。ZnOの含有量が1質量%未満であるとガラス化が困難になる。ZnOの含有量が20質量%を超えると低融点ガラス成形時の安定性が低下し、失透が発生しやすくなる。
はガラスの骨格を形成してガラス化が可能となる範囲を広げる成分である。Bの含有量が2質量%未満であるとガラス化が困難となり、12質量%を超えると軟化点が高くなりすぎて、封着時に荷重をかけたとしても低温で封着することが困難となる。
上記した3成分で形成されるガラスはガラス転移点が低く、低温用の封着材料に適したものであるが、Al、CeO、SiO、AgO、MoO、Nb、Ta、Ga、Sb、LiO、NaO、KO、CsO、CaO、SrO、BaO、WO、P、SnO(xは1または2である)等の任意成分を含有していてもよい。ただし、任意成分の含有量が多すぎるとガラスが不安定となって失透が発生したり、またガラス転移点や軟化点が上昇するおそれがあるため、任意成分の合計含有量は30質量%以下が好ましい。この場合のガラス組成は基本成分と任意成分との合計量が基本的には100質量%となるように調整される。
錫−リン酸系ガラスは、55〜68モル%のSnO、0.5〜5モル%のSnO、および20〜40モル%のP(基本的には合計量を100モル%とする)の組成を有することが好ましい。
SnOはガラスを低融点化させるための成分である。SnOの含有量が55モル%未満であるとガラスの粘性が高くなって封着温度が高くなりすぎ、68モル%を超えるとガラス化しなくなる。
SnOはガラスを安定化するための成分である。SnOの含有量が0.5モル%未満であると封着作業時に軟化溶融したガラス中にSnOが分離、析出し、流動性が損なわれて封着作業性が低下する。SnOの含有量が5モル%を超えると低融点ガラスの溶融中からSnOが析出しやすくなる。Pはガラス骨格を形成するための成分である。Pの含有量が20モル%未満であるとガラス化せず、その含有量が40モル%を超えるとリン酸塩ガラス特有の欠点である耐候性の悪化を引き起こすおそれがある。
上記した3成分で形成されるガラスはガラス転移点が低く、低温用の封着材料に適したものであるが、SiO等のガラスの骨格を形成する成分やZnO、B、Al、WO、MoO、Nb、TiO、ZrO、LiO、NaO、KO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO等のガラスを安定化させる成分等を任意成分として含有してもよい。ただし、任意成分の含有量が多すぎるとガラスが不安定となって失透が発生したり、またガラス転移点や軟化点が上昇するおそれがあるため、任意成分の合計含有量は30モル%以下が好ましい。この場合のガラス組成は基本成分と任意成分との合計量が基本的には100モル%となるように調整される。
電磁波吸収材としては、Fe、Cr、Mn、Co、Ni、およびCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属または前記金属を含む酸化物等の化合物(顔料)が好ましい。電磁波吸収材はこれら以外の顔料であってもよい。電磁波吸収材の含有量は、封着用ガラス材料に対して0.1〜10体積%の範囲が好ましい。電磁波吸収材の含有量が0.1体積%未満であると、電磁波の照射時に封着層15を十分に溶融させることができないおそれがある。電磁波吸収材の含有量が10体積%を超えると、ガラス基板11またはガラス基板12と封着層15との界面近傍で局所的に発熱し、ガラス基板11、ガラス基板12、または封着層15が破損するおそれがあり、また封着用ガラス材料の溶融時の流動性が劣化してガラス基板11またはガラス基板12と封着層15との接着性が低下するおそれがある。
低膨張充填材としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、コージェライト、ユークリプタイト、スポジュメン、リン酸ジルコニウム系化合物、酸化錫系化合物、石英固溶体、およびマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。リン酸ジルコニウム系化合物としては、(ZrO)、NaZr(PO、KZr(PO、Ca0.5Zr(PO、NbZr(PO、Zr(WO)(PO、これらの複合化合物が挙げられる。低膨張充填材とは封着ガラスより低い熱膨張係数を有するものである。
低膨張充填材の含有量は、封着用ガラス材料の熱膨張係数がガラス基板11やガラス基板12のそれに近づくように適宜に設定される。低膨張充填材の含有量は、封着ガラスやガラス基板11またはガラス基板12の熱膨張係数にもよるが、封着用ガラス材料に対して50体積%以下の範囲が好ましい。低膨張充填材の含有量が50体積%を超えると、封着用ガラス材料の流動性が劣化して接着強度が低下するおそれがある。低膨張充填材は必要に応じて配合されるものであり、必ずしも封着用ガラス材料に配合しなければならないものではない。従って、封着用ガラス材料における低膨張充填材の含有量は零を含むが、実用的には0.1体積%以上が好ましい。低膨張充填材の含有量が0.1体積%未満であると、封着用ガラス材料の熱膨張率を調整する効果を十分に得ることができないおそれがある。
電磁波吸収能を有する封着用ガラス材料によるガラス基板11とガラス基板12との封止工程は、レーザ光や赤外線等の電磁波を吸収する封着用ガラス材料の焼成層である封着層前駆体15をガラス基板12に配置し、これに電磁波を照射して局所的に加熱することにより実施する。電磁波による局所加熱によれば、ガラス基板11およびガラス基板12の全体を加熱する場合に比べて、封止工程による電子素子13の特性劣化を抑制できる。局所加熱の加熱源には、上記したようにレーザ光や赤外線等が用いられる。以下に、電磁波による局所加熱を適用した封止工程について詳述する。
まず、封着用ガラス材料とビヒクルとを混合して封着材料ペーストを調製する。ビヒクルは、バインダ成分である樹脂を溶剤に溶解したものである。ビヒクル用の樹脂としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、オキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、プロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマーの1種以上を重合して得られるアクリル系樹脂等の有機樹脂が用いられる。溶剤としては、セルロース系樹脂の場合にはターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等が、またアクリル系樹脂の場合にはメチルエチルケトン、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等が用いられる。
そして、一方のガラス基板12における他方のガラス基板11との対向面である封着層形成面の所定の封止領域に封着材料ペーストを塗布し、これを乾燥させて封着材料ペーストの塗布層を形成する。封着材料ペーストは、例えばスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を適用して封止領域上に塗布したり、あるいはディスペンサ等を用いて封止領域に沿って塗布する。封着材料ペーストの塗布層は、例えば120℃以上の温度で10分以上乾燥させることが好ましい。乾燥工程は塗布層内の溶剤を除去するために実施するものである。塗布層内に溶剤が残留していると、その後の焼成工程でバインダ成分を十分に除去することができないおそれがある。
次いで、封着材料ペーストの塗布層を焼成した焼成層からなる封着層前駆体15を形成する。焼成工程は、塗布層を封着用ガラス材料の主成分である封着ガラスのガラス転移点以下の温度に加熱し、塗布層内のバインダ成分を除去した後、封着ガラスの軟化点以上の温度に加熱し、封着ガラスを溶融してガラス基板12に焼き付ける。このようにして、図10(a)に示すようにガラス基板12の対向面である封着層形成面に封着用ガラス材料の焼成層からなる封着層前駆体15を形成する。また、他方のガラス基板11には、ガラス基板12との対向面である素子形成面に、電子素子13および電極ライン14を設ける。
次に、図10(b)に示すように、ガラス基板11とガラス基板12とを、これらの対向面が対向するように封着層前駆体15を介して積層する。次いで、図10(c)に示すように、ガラス基板12(またはガラス基板11)を通して封着層前駆体15にレーザ光や赤外線等の電磁波16を照射し、ガラス基板11とガラス基板12とを封着層15により封着する。
この際、電磁波の照射前(封着前)、すなわち電極ライン14上に単に封着層前駆体15(交差部15a)が積層されたときの封着層前駆体15の交差部15aの幅wに比べて、電磁波の照射後(封着後)の封着層15の交差部15aの幅wが広くなるように電磁波の照射を行う。特に、電磁波の照射前の交差部15aの幅wに対する電磁波の照射後の交差部15aの幅wの割合(シール割合:100×w/w[%] )が105〜300%となるように電磁波の照射を行う。
ここで、シール割合は、電極ライン14の構成材料や電磁波の照射条件等によって変化する。従って、電磁波の照射時、電極ライン14の構成材料、特に、反射率、吸収率、熱伝導率、保護膜の有無等に合わせて、電磁波の照射条件、特に、出力密度、走査速度、ビーム径、荷重等を調整し、シール割合を上記範囲内に調整することが好ましい。
例えば、電極ライン14の構成材料については、電磁波の反射率が高くなるほど反射によって封着層前駆体15が再加熱されて軟化流動しやすくなるためにシール割合が高くなり、電磁波の吸収率が高くなるほど電極ライン14の温度が上昇し、これにより封着層前駆体15が再加熱されて軟化流動しやすくなるためにシール割合が高くなる。また、電極ライン14の構成材料の熱伝導率が高いときにも、電極ライン14からの熱により封着層前駆体15が加熱されて軟化流動しやすくなるためにシール割合が高くなる。さらに、電極ライン14に保護膜を設ける場合、保護膜の反射率や吸収率が高くなるほど、上記と同様に封着層前駆体15が再加熱されて軟化流動しやすくなるためにシール割合が高くなる。
一方、電磁波の照射条件については、電磁波の出力密度が高くなるほど封着層前駆体15が加熱されて軟化流動しやすくなるためにシール割合が大きくなり、走査速度が小さくなるほど封着層前駆体15が加熱されて軟化流動しやすくなるためにシール割合が大きくなり、ビーム径が大きくなるほど封着層前駆体15が加熱されて軟化流動しやすくなるためにシール割合が大きくなる。また、ガラス基板11とガラス基板12とに加える荷重が大きくなるほど軟化した封着層前駆体15が広がりやすくなるためにシール割合が大きくなる。
電磁波16としてレーザ光を使用する場合、レーザ光は枠状の封着層前駆体15に沿って走査しながら照射する。レーザ光は特に限定されず、半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、HeNeレーザ等からのレーザ光が使用される。電磁波16として赤外線を使用する場合には、例えば封着層15の形成部位以外を赤外線反射膜等でマスキングすることによって、封着層前駆体15に赤外線を選択的に照射することが好ましい。
電磁波16としてレーザ光を使用した場合、レーザ光は封着層前駆体15に沿って走査され、レーザ光が照射された部分から順に封着層前駆体15が溶融し、レーザ光の照射終了と共に急冷固化されてガラス基板11に固着する。そして、封着層前駆体15の全周にわたってレーザ光を照射することによって、図10(d)に示すようにガラス基板11とガラス基板12との間が封着層15によって封止される。また、電磁波16として赤外線を使用した場合、封着層前駆体15は赤外線の照射に基づいて局所的に加熱されて溶融し、赤外線の照射終了と共に急冷固化されてガラス基板11に固着する。そして、図10(d)に示すようにガラス基板11とガラス基板12との間が封着層15によって封止される。
電磁波16による封着層前駆体15の加熱温度は、封着ガラスの軟化点(℃)に対して(軟化点+100℃)以上で(軟化点+400℃)以下の範囲が好ましい。封着層前駆体15の加熱温度が低すぎて十分に流動させることができないと、ガラス基板11とガラス基板12との接着強度が低下するおそれがある。このため、封着層前駆体15の加熱温度は(軟化点+100℃)以上が好ましい。一方、封着層前駆体15の加熱温度が(軟化点+400℃)を超えると、封着層前駆体15内における引張りの残留応力が大きくなり、ガラス基板11やガラス基板12および封着層15に割れ等が生じやすくなる。なお、本明細書における封着ガラスの軟化点は、示唆熱分析(DTA)の第4変曲点で定義されるものである。
また、ガラス基板11およびガラス基板12の少なくとも一方を化学強化ガラスで構成する場合、電磁波16による封着時に化学強化ガラスからなるガラス基板と封着層15との接着強度が低下し、または残留応力が増大して割れ等が生じやすくなるおそれがある。従って、ガラス基板11、ガラス基板12の少なくとも一方が化学強化ガラス基板からなる場合には、封着時に発生する応力を低減してガラス基板11、ガラス基板12、および封着層15の割れ等を抑制するために、以下に示す構造[1]および構造[2]の少なくとも一方を採用することが好ましい。
[1]封着層15中に電磁波吸収材および低膨張充填材を均一に分散させる。
[2]封着層15の膜厚を均一化し、それに基づいて封着層15の線幅を均一化する。
封着層15中に電磁波吸収材や低膨張充填材等の無機充填材が均一に分散していると、封着層15の熱膨張率が均一化される。このため、ガラス基板11やガラス基板12と封着層15との局所的な熱膨張差の増大による応力集中、さらには応力集中に基づくガラス基板11、ガラス基板12、および封着層15の割れ等を抑制することができる。すなわち、電磁波吸収材や低膨張充填材等の無機充填材が凝集していると、凝集部分とその周辺部分との間の熱膨張差が大きくなるため、応力集中が生じやすくなる。また、電磁波吸収材が凝集していると、凝集部分が極度に加熱されるため、熱による応力集中が生じやすくなる。応力集中部分は割れ等の起点になるため、封着時に発生する応力でガラス基板や封着層15の割れ等が発生しやすくなる。封着層15中に電磁波吸収材および低膨張充填材を均一分散させることで、応力集中による割れ等を抑制することができる。
構造[1]は、例えば電磁波吸収材と低膨張充填材の分散性を高めた封着材料ペーストを使用することにより実現可能である。このような電磁波吸収材や低膨張充填材の分散性を高めた封着材料ペーストは、以下に示す方法を適用することで得ることができる。
(1)封着用ガラス材料とビヒクルとの混合条件を適宜に選択し、ビヒクルに対する封着用ガラス材料、特に電磁波吸収材と低膨張充填材の分散性を高める。
(2)封着用ガラス材料とビヒクルとを混合する際に、分散剤を使用する。
(3)封着用ガラス材料の各構成材料(封着ガラス、電磁波吸収材、低膨張充填材)として、表面処理した材料を使用する。
(4)封着用ガラス材料中の電磁波吸収材や低膨張充填材として、比較的比表面積が小さい材料を使用する。
方法(1)に関しては、封着用ガラス材料とビヒクルとの混合方式に基づいて、分散性をより高めることが可能な条件を選択することが好ましい。例えば、ロールミルを用いて封着用ガラス材料とビヒクルとを混合する場合には、ロールミルに通す回数を増やす(例えば5回以上)ことによって、封着材料ペースト中の電磁波吸収材や低膨張充填材の分散性を高めることができる。ロールミル以外の混合・混練方式、例えばライカイ機、プラネタリーミキサ、ビーズミル等を使用する場合も同様であり、それぞれ使用方式に応じて条件を設定することによって、封着材料ペースト中の電磁波吸収材や低膨張充填材の分散性を高めることができる。
方法(2)に関しては、アミン系化合物、カルボン酸系化合物、リン酸系化合物等の分散剤を使用することによって、封着材料ペースト中の電磁波吸収材や低膨張充填材の分散性を高めることができる。方法(3)に関しても同様であり、アミン系化合物、カルボン酸系化合物、リン酸系化合物等で表面処理した電磁波吸収材や低膨張充填材を使用することによって、封着材料ペースト中における分散性を高めることができる。
方法(4)に関しては、粒径が小さい粉末は凝集しやすいため、比較的粒径が大きい粉末を使用することで、封着材料ペースト中の電磁波吸収材や低膨張充填材の分散性を高めることができる。具体的には、平均粒径が1〜15μmの範囲であると共に、比表面積が4.5m/g以下の粉末を使用することが好ましい。このような粉末状の電磁波吸収材や低膨張充填材を使用することで、封着材料ペースト中の分散性を高めることができる。
上述した方法(1)〜(4)は、それぞれ単独で適用してもよいし、また組合せて適用してもよい。封着材料ペースト中における電磁波吸収材や低膨張充填材の分散性をより高める上で、方法(1)〜(4)のうちの2つ以上の方法を組合せて適用することが好ましい。なお、封着材料ペースト中の電磁波吸収材や低膨張充填材の分散性は、それらの種類や形状、またビヒクルの種類等によっても異なるため、これらの条件に応じて方法(1)〜(4)から選ばれる1つまたは2つ以上の方法を適宜に選択することが好ましい。
構造[2]について、封着層前駆体15の膜厚にバラツキが生じていると、それに電磁波16を照射し封着用ガラス材料を溶融して固化する際に、ガラス基板11やガラス基板12に歪みやねじれ等が生じやすくなる。ガラス基板11やガラス基板12の歪みやねじれによって高い応力が発生し、ガラス基板11、ガラス基板12、または封着層15に割れ等が発生しやすくなる。このような点に対して、封着層前駆体15の膜厚を均一化することで、封着用ガラス材料の溶融・固着時におけるガラス基板11やガラス基板12の歪みやねじれを抑制することができ、それに基づいて、ガラス基板11、ガラス基板12、または封着層15の割れ等を抑制することが可能となる。ここで、封着層前駆体15の膜厚分布は、溶融・固着後においては封着層15の線幅分布として表れるため、封着層前駆体15の線幅、特に交差部15a以外の幅を均一化することで、ガラス基板11やガラス基板12の歪みやねじれによる割れを抑制することができる。
構造[2]は、例えば封着材料ペーストを塗布する際の条件を適宜選択することにより実現することができる。封着材料ペーストの塗布方法については、スクリーン印刷やディスペンサによる印刷等を適用することが好ましい。スクリーン印刷を適用する場合には、印圧および背圧、スキージの材質、硬度、形状、スキージのスクリーン版に対する角度、スキージの掃引速度、印刷基板とスクリーン版の平行度、印刷基板とスクリーン版のギャップ、印刷基板の温度等を適宜に調整することによって、封着層15の膜厚分布を小さくすることができる。また、ディスペンサによる印刷を適用する場合には、ディスペンサヘッドのスキャン速度、印刷基板とディスペンサヘッドとのギャップ、ペーストの吐出圧力や温度、ニードルの材質や形状、印刷基板の温度等を適宜に調整することによって、封着層15の膜厚分布を小さくすることができる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
(実施例1)
質量割合でBi83%、B5%、ZnO 11%、Al1%の組成を有するビスマス系ガラス(軟化点:410℃)、低膨張充填材として平均粒径(D50)が4.3μm、比表面積が1.6m/gのコージェライト粉末、質量割合でFe 16.0%、MnO 43.0%、CuO 27.3%、Al 8.5%、SiO 5.2%の組成を有し、平均粒径(D50)が1.2μm、比表面積が6.1m/gのレーザ吸収材(電磁波吸収材)を用意した。
コージェライト粉末の粒度分布は、粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。測定条件は、測定モード:HRA−FRAモード、Particle Transparency:yes、Spherical Particles:no、Particle Refractive index:1.75、Fluid Refractive index:1.33とした。粉末を水に分散させたスラリーを超音波で分散させた後に測定した。
レーザ吸収材の粒度分布は、粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。測定条件は、測定モード:HRA−FRAモード、Particle Transparency:yes、Spherical Particles:no、Particle Refractive index:1.81、Fluid Refractive index:1.33とした。粉末を水に分散させたスラリーを超音波で分散させた後に測定した。
コージェライト粉末およびレーザ吸収材の比表面積は、BET比表面積測定装置(マウンテック社製、Macsorb HM model−1201)を用いて測定した。測定条件は、吸着質:窒素、キャリアガス:ヘリウム、測定方法:流動法(BET1点式)、脱気温度:200℃、脱気時間:20分、脱気圧力:Nガスフロー/大気圧、サンプル質量:1gとした。
ビスマス系ガラス66.8体積%とコージェライト粉末32.2体積%とレーザ吸収材1.0体積%とを混合して封着用ガラス材料(熱膨張係数(50〜350℃):66×10−7/℃)を作製した。封着用ガラス材料83質量%を、バインダ成分としてエチルセルロース5質量%をジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル95質量%に溶解して作製したビヒクル17質量%と混合して封着材料ペーストを調製した。
次いで、ソーダライムガラスからなるガラス基板(旭硝子株式会社製、AS(熱膨張係数:85×10−7/℃)、寸法:50×50×1.8mmt、第2のガラス基板に相当)を用意し、このガラス基板の封止領域に封着材料ペーストをスクリーン印刷法で塗布した。スクリーン印刷には、メッシュサイズが325、乳剤厚が20μmのスクリーン版を使用した。スクリーン版のパターンは、線幅が0.5mmで30mm×30mmの額縁状パターンとし、コーナー部の曲率半径Rは2mmとした。封着材料ペーストの塗布層を120℃×10分の条件で乾燥させた後、480℃×10分の条件で焼成することによって、膜厚が15μm、線幅が0.55mmの封着層前駆体を形成した。
別途、上記ガラス基板と同様のガラス基板(第1のガラス基板に相当)上に、電子素子としての太陽電池素子(発電層)およびこの太陽電池素子に電気的に接続された電極ラインとしての取出電極を形成した。取出電極の構成材料は銀(Ag)とし、取出電極の幅は0.65mm、取出電極の膜厚は100nmとした。
次いで、太陽電池素子および取出電極が素子形成面に形成されたガラス基板と、封着層前駆体が封着層形成面に形成されたガラス基板とを、素子形成面と封着層形成面とが対向するように積層した。次いで、この積層体に0.25MPaの圧力を加えた状態で、封着層前駆体が形成されたガラス基板を通して封着層前駆体に対して、波長808nm、ビーム径2.2mm、出力密度:10.52W/mmのレーザ光(半導体レーザ)を8mm/秒の走査速度で照射し、封着層前駆体を溶融および急冷固化し封着層を形成することによって、上記した1対のガラス基板を封着した。レーザ光の強度分布は一定に整形せず、突形状の強度分布を有するレーザ光を使用した。このときのビーム径は、レーザ強度が1/e2となる等高線の半径を用いた。また、取出電極部分の封着条件も非取出電極部分と同じレーザ照射条件で封着して電子デバイスとしての太陽電池を製造した。
封着後の取出電極上における封着層の交差部の線幅wを測定により求めたところ0.79mmであった。封着前の封着層前駆体の交差部の線幅wは0.55mmであることから、封着層の交差部のシール割合(100×w/w[%])は144%であった。
なお、以下に示すように封着後の電子デバイスとしての太陽電池からもシール割合を求めることができた。すなわち、封着後の取出電極上における封着層の交差部を最初に封着層前駆体が形成されたガラス基板側から光学顕微鏡(明視野反射像・倍率50倍)で観察したところ、封着前に封着層前駆体が存在していた部分と、レーザ照射によって封着層前駆体が軟化流動して広がった部分とにコントラスト差があることが確認できた。従って、このコントラスト差から封着前に封着層前駆体が存在していた部分の長さを測定して封着前の交差部の線幅wを求めたところ、線幅wは0.55mmであり、交差部のシール割合は上記と同様に144%となることが確認できた。
レーザ封着後、1対のガラス基板および封着層の交差部の状態を観察して封着の可否を評価した。結果を表1に示す。なお、表中、「○」は、1対のガラス基板および封着層の交差部のいずれにもクラックや割れ、剥離の発生が認められなかったことを示し、「×」は1対のガラス基板および封着層の交差部のいずれかの部分にクラックや割れ、剥離の発生が認められたことを示す。
また、レーザ封着後、ヒートサイクル試験にて信頼性を評価した。すなわち、JIS C8990 10.11に準じた−40℃〜85℃のサイクル試験を200サイクルおよび400サイクル実施した。その後、気密性をヘリウムリークテストにより評価した。結果を表1に示す。なお、表中、「○」は、1対のガラス基板および封着層の交差部のいずれにもクラックや割れ、剥離の発生が認められず、ヘリウムリークテストの結果、気密性が良好であったことを示し、「×」は1対のガラス基板および封着層の交差部のいずれかの部分にクラックや割れ、剥離の発生が認められ、ヘリウムリークテストの結果、気密性が十分でなかったことを示す。
(実施例2〜15、比較例1〜5)
表1に示すように、取出電極の構成材料、幅、および膜厚、ならびに、レーザの出力密度、および走査速度を変更してレーザ封着を行った。なお、表1に示した封着条件以外は実施例1と同様とした。その後、実施例1と同様にして、シール割合、封着の可否、およびヒートサイクル試験による信頼性の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2013219079
表1から明らかなように、シール割合を105〜300%とした実施例の電子デバイスは、封着性が良好で、信頼性に優れることがわかる。一方、シール割合を105〜300%の範囲外とした比較例の電子デバイスは、封着性が十分でないものが多く、信頼性が低いことがわかる。
10…電子デバイス、11…ガラス基板、12…ガラス基板、13…電子素子、14…電極ライン、15…封着層前駆体または封着層、16…電磁波、w…電極ライン上における封着層前駆体の幅、w…電極ライン上における封着層の幅、21…色素増感型太陽電池素子、22…タンデム型薄膜シリコン太陽電池素子、23…化合物半導体系太陽電池素子、24…化合物半導体系太陽電池素子、25…有機太陽電池素子

Claims (6)

  1. 電子素子および前記電子素子に電気的に接続された電極ラインが素子形成面に設けられた第1のガラス基板と、前記第1のガラス基板の前記素子形成面側に間隔を設けて配置された第2のガラス基板と、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との間に前記電子素子を封止するとともに少なくとも一部に前記電極ラインと交差する交差部を有し、電磁波吸収能を有する封着用ガラス材料に電磁波の照射を行って形成された枠状の封着層とを有する電子デバイスであって、
    前記封着層は、前記交差部における前記電磁波の照射前の幅に対する照射後の幅の割合が105〜300%となるように電磁波を照射して形成されたことを特徴とする電子デバイス。
  2. 前記割合が110〜250%であることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
  3. 前記電磁波はレーザ光であることを特徴とする請求項1または2記載の電子デバイス。
  4. 電子素子および前記電子素子に電気的に接続された電極ラインが素子形成面に設けられた第1のガラス基板を用意する工程と、
    電磁波吸収能を有する封着用ガラス材料からなり、前記第1のガラス基板との積層時に前記電子素子を封止するとともに少なくとも一部に前記電極ラインと交差する交差部を有する枠状の封着層前駆体が封着層形成面に設けられた第2のガラス基板を用意する工程と、
    前記素子形成面と前記封着層形成面とが対向するように前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを積層する工程と、
    前記交差部における電磁波の照射前の前記封着層前駆体の幅に対する照射後に形成される封着層の幅の割合が105〜300%となるように、前記第1のガラス基板または前記第2のガラス基板を通して前記封着層前駆体に前記電磁波を照射して前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを前記封着層により封着する工程と
    を具備する電子デバイスの製造方法。
  5. 前記割合が110〜250%であることを特徴とする請求項4記載の電子デバイスの製造方法。
  6. 前記電磁波はレーザ光であることを特徴とする請求項4または5記載の電子デバイスの製造方法。
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