JP2010026147A - 可動構造体及びそれを用いた光走査ミラー - Google Patents

可動構造体及びそれを用いた光走査ミラー Download PDF

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Abstract

【課題】可動構造体において、外部から衝撃が加わってもヒンジが破損しないようにし、耐衝撃性を高める。
【解決手段】光走査ミラー1は、可動板2と、可動板2の両側部に一端部がそれぞれ接続されており、可動板2の1つの揺動軸を構成する一対のヒンジ3と、可動板2の周囲を囲むように配され各ヒンジ3の他端部を支持する固定フレーム4と、固定フレーム4に形成されたストッパ部6を備えている。ストッパ部6は、ヒンジ3の側方にヒンジ3に沿うように形成されており、その先端部が、可動板2のヒンジ3が接続された部位に形成された凹部2eの内側に位置するように配置されている。可動板2が側方に変位すると、ストッパ部6が凹部2eの側縁部に接触し、可動板2の側方への変位が制限され、外部から衝撃が加わってもヒンジ3の破損が防止される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ヒンジに軸支され揺動可能に構成された可動板を有する可動構造体とそれを用いた光走査ミラーに関する。
従来より、例えばバーコードリーダやプロジェクタ等の光学機器として、ミラー面が設けられた可動板を揺動させて、そのミラー面に入射した光ビーム等をスキャンする光走査ミラーを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。光走査ミラーとしては、例えば、マイクロマシニング技術を用いて成形される可動構造体を有する小型のものが知られている。このような可動構造体は、光走査ミラーとして用いられるときにミラー面が形成される可動板と、可動板を支持する固定フレームとを有している。可動板と固定フレームとは互いにヒンジにより連結されている。可動板は、可動板に駆動力が加えられることにより、ヒンジを捻りながら固定フレームに対し回動し、ヒンジを軸として揺動する。駆動力としては、例えば、可動板と固定フレームとの間に形成された互いに噛み合う一対の櫛歯電極に電圧が印加されて発生する静電力や、圧電効果により発生する力や、電磁力等が用いられる。
ところで、このような光走査ミラーにおいて、小さな駆動電圧で駆動力を発生させ、光を走査するのに必要な振れ角を確保するためには、ヒンジを細くし、ヒンジのねじり方向のばね定数を小さくすればよい。しかしながら、このようにヒンジを細くすると、ヒンジが脆弱になる。そのため、外部から衝撃が加わったときに可動板が変位してヒンジの変形量が大きくなると、ヒンジが破損し、光走査ミラーが動作不能になることがある。
なお、特許文献1には、可動板の傾斜中心となる中央部を支持可能なピボットが形成されたマイクロミラー装置が開示されている。しかしながら、このマイクロミラー装置は、ピボットを、可動板の中央部に対応し、且つ、可動板に近接するように、所定位置に正確に形成する必要がるため、容易に製造しにくいという問題がある。
特開2003−57575号公報
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、容易に製造可能であり、且つ、外部から衝撃が加わったときにヒンジの破損が防止され高い耐衝撃性を有する可動構造体及びそれを用いた光走査ミラーを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、可動板と、それぞれ前記可動板に一端部が接続され前記可動板の1つの揺動軸を構成する一対のヒンジと、前記一対のヒンジのそれぞれの他端部が接続されており前記ヒンジを支持するフレーム部とを備え、前記可動板が、前記一対のヒンジをねじりながら前記フレーム部に対して揺動可能に構成されている可動構造体において、前記ヒンジの側方には、当該ヒンジに沿うようにストッパ部が形成されており、前記可動板が側方へ変位するときに当該ストッパ部と可動構造体の他の部位とが接触することにより、前記可動板の側方への変位量が制限されているものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ストッパ部は、前記可動板又はフレーム部に一体に形成されているものである。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記可動板には、前記ヒンジにより軸支される部位の近傍にヒンジの長手方向に凹むように形成された凹部が設けられており、前記ストッパ部は、前記フレーム部に一体に形成されており、前記ヒンジと前記凹部を形成する可動板の側縁部との間に位置するように形成されているものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項の発明において、前記ストッパ部の角部には、R面取り形状の面取部が形成されているものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項の発明において、前記ストッパ部は、前記ヒンジ部と同電位になるように構成されているものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項の発明において、前記ストッパ部の少なくとも一部には、当該ストッパ部に接触したものとの間でスティッキングが発生しないように、スティッキング防止膜又は突起部が形成されているものである。
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6記載のいずれか一項に記載の可動構造体を有し、前記可動板の上面に、入射した光を反射するミラー面を設けたものである。
請求項1の発明によれば、例えば外部からの衝撃が可動構造体に加わって可動板が側方に変位しても、ストッパ部が他の部位に接触することにより可動板の側方への変位量が制限される。従って、可動板が大きく変位せず、ヒンジの破損が防止されるので、可動構造体の耐衝撃性を向上させることができる。ストッパ部は、ヒンジの近傍に配置されているので、可動板がフレーム部に対し傾いているような場合であっても、可動板の側方への変位を効果的に制限することができる。また、従来のようにピボット状の突起等を形成する場合と比較して、ストッパ部の位置や形状の精度が要求される程度は低いので、比較的容易に可動構造体を製造可能である。ストッパ部はヒンジに接触しないので、確実にヒンジの破損を防止することができる。
請求項2の発明によれば、可動板又はフレーム部を構成する部材を加工し可動板又はフレーム部を形成する際にストッパ部を容易に形成することができ、可動構造体をより容易に製造可能である。
請求項3の発明によれば、可動板の変位時に、ストッパ部が凹部の側縁部に接触することにより可動板の変位量を制限することができる。従って、可動板の変位量を制限するための構造をより容易に且つ堅牢に構成することができる。
請求項4の発明によれば、可動板の変位時に可動構造体の他の部位に接触するストッパ部の部位に尖り形状が無くなるので、ストッパ部とストッパ部に接触する部位とが接触したときにこれらの部位に応力が集中しにくくなる。従って、ストッパ部や可動構造体のストッパ部に接触する部位の破損を防止することができる。
請求項5の発明によれば、可動板が側方へ変位してストッパ部が可動構造体の他の部位に接触しても、静電引力によるスティッキングが発生し可動板が揺動不能になることを防止することができる。
請求項6の発明によれば、可動板が側方へ変位してストッパ部が可動構造体の他の部位に接触しても、スティッキング防止膜又は突起部によりスティッキングの発生が防止され、可動板が揺動不能になることを防止することができる。
請求項7の発明によれば、光走査ミラーの耐衝撃性を向上させ、且つ、光走査ミラーを容易に製造可能にすることができる。
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)、(b)、図2、及び図3は、本実施形態に係る光走査ミラー(可動構造体)の一例を示す。光走査ミラー1は、例えば、バーコードリーダ、外部のスクリーン等に画像を投影するプロジェクタ装置、又は光スイッチ等の光学機器に搭載される小型のものであり、外部の光源等(図示せず)から入射する光ビーム等をスキャンする機能を有している。
先ず、光走査ミラー1の構成について以下に説明する。光走査ミラー1は、SOI(Silicon on Insulator)基板200をいわゆるマイクロマシニング技術等を用いて加工することにより作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子である。SOI基板200は、例えば、導電性を有する第1シリコン層(活性層)200aと第2シリコン層(基板層)200bとをシリコンの酸化膜(BOX(Buried OXide)層)220を介して接合して成る、3層構成の基板である。酸化膜220は絶縁性を有しているので、第1シリコン層200aと第2シリコン層200bとは互いに絶縁されている。第1シリコン層200aの厚みは、例えば30μm程度であり、第2シリコン層200bの厚みは、例えば400μm程度である。図1(a)に示すように、光走査ミラー1は、例えば、上面視で一辺が数mm程度の略正方形又は略矩形である直方体状の素子である。
光走査ミラー1は、上面視で略矩形形状であり上面にミラー面10が形成された可動板2と、可動板2の両側部に一端部がそれぞれ接続され、可動板2の1つの揺動軸を構成する一対のヒンジ3と、可動板2の周囲を囲むように配され各ヒンジ3の他端部を支持する固定フレーム(フレーム部)4と、可動板2の一部の電極2a及び固定フレーム4の一部の電極4aを有する櫛歯電極5と、固定フレーム4に形成されたストッパ部6を備えている。図1(b)に示すように、可動板2の下方には空隙が設けられており、可動板2は、一対のヒンジ3をねじりながら、そのヒンジ3を揺動軸として固定フレーム4に対して揺動可能に、そのヒンジ3を介して支持されている。一対のヒンジ3は、それらが成す軸が、上面視で可動板2の重心位置を通過するように形成されている。ヒンジ3の幅寸法は、例えば、数マイクロメートル乃至数十マイクロメートル程度である。固定フレーム4の上面には、例えば金属膜である電圧印加部10a,10bが形成されている。なお、可動板2やミラー面10等の形状は、矩形に限られず、円形等、他の形状であってもよい。光走査ミラー1は、例えば、ガラス基板110などが固定フレーム4の下面に接合され、回路基板B等に実装される。
図3に示すように、可動板2及びヒンジ3は、第1シリコン層200aに形成されている。ミラー面10は、例えばアルミニウム製の薄膜であり、可動板2の上面に外部から入射する光ビームを反射可能に形成されている。可動板2は、可動板2に対し垂直でヒンジ3を通る平面に対し略対称形状に形成されており、ヒンジ3回りにスムーズに揺動するように構成されている。
固定フレーム4は、第1シリコン層200a、酸化膜220、及び第2シリコン層200bにより構成されている。本実施形態において、固定フレーム4には、例えば、第1シリコン層200aを互いに絶縁された3つの部位に分割するように、トレンチ101が形成されている。トレンチ101は、第1シリコン層200aに、第1シリコン層200aの上端から下端まで連通し酸化膜220に到達するように溝形状に形成された空隙である。トレンチ101は第1シリコン層200aにのみ形成されているので、固定フレーム4全体は一体に構成されている。トレンチ101は、固定フレーム4のうち、一対のヒンジ3とそれぞれ接続される2つの支持部4bが他の部位から絶縁されるように、4箇所に形成されている。トレンチ101が形成されていることにより、固定フレーム4は、一対のヒンジ3それぞれに接続され可動板2と同電位となり、上面に電圧印加部10aが形成された2つの支持部4bと、上面にそれぞれ電圧印加部10bが形成された2つの部位とに分割されている。トレンチ101は、第1シリコン層200aを分離しているので、これらの部位は、互いに絶縁されている。すなわち、図2にそれぞれの部位に模様を付して示すように、可動板2、ヒンジ3、及び固定フレーム4は、互いに絶縁された3つの部位で構成されている。
櫛歯電極5の電極2aは、可動板2のうちヒンジ3が接続されていない自由端側の側縁部に形成されており、電極4aは、固定フレーム4のうち当該可動板2の側縁部に対向する部分に形成されている。櫛歯電極5を構成する電極2a及び電極4aは、互いに噛み合うように形成されている。電極2a,4a間の隙間は、例えば、2μm乃至5μm程度である。
ストッパ部6は、可動板2の側方、すなわちヒンジ3で構成される揺動軸に略垂直でSOI基板200の上面に略平行な方向への変位量を制限するために設けられている。図2に示すように、ストッパ部6は、第1シリコン層200aに固定フレーム4に一体に形成されており、ヒンジ3の両側方に、ヒンジ3に沿うように、固定フレーム4から可動板2に向けて突設されている。本実施形態において、可動板2のうちヒンジ3が接続された部位には、固定フレーム4から離れる方向すなわちヒンジ3の長手方向に凹むように形成された凹部2eが設けられている。換言すると、ヒンジ3は、可動板2に設けられた凹部2eの内側縁部に接続されている。ストッパ部6は、その可動板2に近い先端部が、ヒンジ3と凹部2eとを形成する可動板2の側縁部との間に位置するように形成されている。ストッパ部6は、光走査ミラー1に外部から衝撃等が加わっていない平常時において、可動板2の揺動を妨げないようにヒンジ3との間に所定の隙間を有するように形成されている。従って、ヒンジ3がストッパ部6に当接して破損することがない。ストッパ部6は、固定フレーム4のうちヒンジ3が接続された支持部4bから突設されており、可動板2、ヒンジ3、及びストッパ部6は互いに同電位となるように構成されている。
図2に示すように、ストッパ部6の先端部近傍部位の角部には、R面取り形状に形成された面取部6aが設けられている。また、凹部2eのうちストッパ部6に面する部位にある角部にも、R面取り形状に形成された面取部2fが設けられている。ストッパ部6は、ストッパ部6とヒンジ3との間の隙間よりも、ストッパ部6と可動板2の凹部2eとの間の隙間のほうが狭くなるように形成されている。なお、ストッパ部6のうち、可動板2に面する部位には、スティッキング防止膜(図示せず)が形成されている。スティッキング防止膜は、例えば、DLC(Diamond Like Carbon)膜や、SAM(Self-assembled Monolayer)を、ストッパ部6の可動板2に面する部位に形成させることにより設けられる。
次に、上記のように構成された光走査ミラー1の動作について説明する。光走査ミラー1の可動板2は、櫛歯電極5が所定の駆動周波数で駆動力を発生することにより駆動される。櫛歯電極5は、例えば、支持部4bに配された電圧印加部10aがグランド電位に接続され、可動板2の電極2aが基準電位である状態で、電極4aと同電位となる電圧印加部10bの電位を周期的に変化させて、電極2a,4a間に所定の駆動周波数の電圧を印加することにより駆動される。櫛歯電極5のうち2つの電極4aの電位が、同時に所定の駆動電位(例えば、数十ボルト)まで変化することにより、可動板2の両端部に設けられた2つの電極2aが、それぞれと対向する電極4aに、静電気力により同時に引き寄せられる。この光走査ミラー1において、櫛歯電極5には、例えば矩形波形状のパルス電圧が印加され、櫛歯電極5による駆動力が周期的に発生するように構成されている。
本実施形態において、光走査ミラー1は、例えば静電力を駆動力として可動板2を揺動させるように構成されている。電極2a,4aの間に周期的に電圧が印加されると、両電極2a,4a間に互いに引き合う方向に作用する静電引力が発生し、この静電引力が可動板2の自由端部に、可動板2の上面に対し略垂直方向に作用する。すなわち、電圧印加部10a,10bの電位を変更して外部から櫛歯電極5に駆動電圧が印加されると、静電力により、ヒンジ3まわりのトルクが可動板2に発生する。
このような光走査ミラー1において、一般に多くの場合、その成型時に内部応力等が生じることにより、静止状態でも可動板2が水平姿勢ではなく、きわめて僅かであるが傾いている。そのため、静止状態からであっても、櫛歯電極5が駆動されると、可動板2にそれに略垂直な方向の駆動力が加わり、可動板2がヒンジ3を回転軸として回動する。そして、櫛歯電極5の駆動力を、可動板2が電極2a,4aが完全に重なりあうような姿勢となったときに解除すると、可動板2は、その慣性力により、ヒンジ3を捻りながら回動を継続する。そして、可動板2の回動方向への慣性力と、ヒンジ3の復元力とが等しくなると、可動板2のその方向への回動が止まる。このとき、櫛歯電極5が再び駆動され、可動板2は、ヒンジ3の復元力と櫛歯電極5の駆動力により、それまでとは逆の方向への回動を開始する。可動板2は、このような櫛歯電極5の駆動力とヒンジ3の復元力による回動を繰り返して揺動する。櫛歯電極5は、可動板2とヒンジ3により構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数の電圧が印加されて駆動され、可動板2が共振現象を伴って駆動され、その揺動角が大きくなるように構成されている。なお、櫛歯電極5の電圧の印加態様や駆動周波数は、上述に限られるものではなく、例えば、駆動電圧が正弦波形で印加されるように構成されていても、また、電極2a,4aの電位が互いに逆位相で変化するように構成されていてもよい。
ここで、光走査ミラー1は、ストッパ部6が設けられていることにより、ストッパ部6が設けられていない場合と比較して高い耐衝撃性を有している。図4(a)、(b)は、光走査ミラー1のうち、ストッパ部6の近傍部位を示す。外部から衝撃等が加わっていない平常時においては、図4(a)に示すように、ヒンジ3はほとんど撓んでおらず、ストッパ部6と凹部2eの側縁部との間にも空隙がある状態である。このとき、例えば光走査ミラー1に外部からの振動や衝撃等が加わると、図4(b)に示すように、可動板2が、ヒンジ3を変形させながら、平常時よりも側方(図に黒矢印で示す)に向けて変位することがある。さらに変位量が大きくなると、ストッパ部6が凹部2eの側縁部に接触するので、可動板2のその方向への変位が妨げられ、それ以上ヒンジ3の変形量が増えなくなる。なお、可動板2が平常時から変位してストッパ部6が凹部2eの側縁部に接触するまでの間、ヒンジ3はストッパ部6に接触しない。
なお、光走査ミラー1は、例えば次のようにして製造される。すなわち、先ず、第1シリコン層200aに酸化膜220を形成して第2シリコン層200bを貼り合わせてSOI基板200を作成する。次に、そのSOI基板200のうち第1シリコン層200a側に、フォトリゾグラフィやエッチング等、いわゆるバルクマイクロマシニング技術による加工を施すことにより、可動板2、ヒンジ3、固定フレーム4、櫛歯電極5、ストッパ部6となる形状を形成する(第1工程)。このように、バルクマイクロマシニング技術を用いることにより、光走査ミラー1の各部を微細な形状も含めて容易に形成することができる。その後、例えばスパッタリング等の方法を用いることによって、SOI基板200の第1シリコン層200aの上面に金属膜を形成する。この金属膜をパターニングすることにより、可動板2の上面にミラー面10を形成し、固定フレーム4の上面に電圧印加部10a,10bを形成する。
次に、第2シリコン層200bに、同様にバルクマイクロマシニング技術による加工を施し、固定フレーム4となる形状を形成する(第2工程)。第1シリコン層200a、第2シリコン層200bに加工を行った後、酸化膜220のエッチングを行う。例えば、光走査ミラー1の下面側からエッチングを行うことにより、固定フレーム4以外の部位の酸化膜220が除去される(第3工程)。これにより、可動板2がヒンジ3を介して固定フレーム4に軸支され、固定フレーム4に対し揺動可能な状態になる。上記第1工程乃至第3工程を経ると、SOI基板200に複数の光走査ミラー1が形成される。第3工程の後、SOI基板200上に形成された複数の光走査ミラー1を個々に切り分ける。この一連の工程により、複数の光走査ミラー1を同時に製造し、光走査ミラー1の製造コストを低減させることが可能である。なお、光走査ミラー1の製造工程はこれに限られるものではなく、例えば、レーザ加工や超音波加工等により成形したり、1つずつ成形してもよい。また、第2シリコン層200bの加工を第1シリコン層200aの加工に先立ち行うようにしてもよい。
上記説明したように、本実施形態では、ストッパ部6が設けられていることにより、可動板2が大きく変位せず、ヒンジ3の破損が防止されるので、光走査ミラー1の耐衝撃性を向上させることができる。ストッパ部6は、ヒンジ3の近傍に配置されているので、可動板2が固定フレーム4に対し傾いているような場合であっても、可動板2の側方への変位を効果的に制限することができ、ヒンジ3の破損をより確実に防止することができる。このとき、ストッパ部6はヒンジ3に接触しないので、確実にヒンジ3の破損を防止することができる。なお、可動板2は、ヒンジ3に軸支されているため、ヒンジ3で構成される揺動軸の長手方向には変位しにくい。従って、SOI基板200の上面に平行な面内の方向での可動板2の変位量は、このようにストッパ部6を設けることによりほぼ制限することができ、効果的にヒンジ3の破損を防止することができる。また、可動板2の変位時に、ストッパ部6を凹部2eで支えるので、ストッパ部6を支えるための堅牢な構造を容易に構成することができる。さらにまた、ストッパ部6には面取部6aが設けられ、凹部2eの側縁部に接触しうる部位が尖り形状ではなく、同様に、凹部2eの側縁部には、面取部2fが設けられ、ストッパ部6に接触しうる部位が尖り形状ではない。従って、ストッパ部6と凹部2eの側縁部との接触部位に応力が集中しにくくなり、ストッパ部6や可動板2の破損を防止することができる。
また、ストッパ部6と凹部2eの側縁部とは、互いに同電位であって、さらに、ストッパ部6のうち凹部2eの側縁部に当接しうる部位にはスティッキング防止膜が配されている。従って、ストッパ部6と凹部2eとが接触したとき、静電引力によるスティッキングが発生しにくくなり、可動板2が揺動不能になることをより確実に防止することができる。さらにまた、ストッパ部6は、ヒンジ3の側方に、可動板2の揺動を妨げないように、且つ、可動板2が側方に変位したときに可動板2の凹部2eに当接するように設ければよく、ストッパ部6の位置決めを高精度に行う必要がないので、比較的容易に光走査ミラー1を製造可能である。特に、本実施形態においては、第1シリコン層200aを加工して固定フレーム4を形成する工程において同時にストッパ部6を形成することができるので、ストッパ部6と固定フレーム4との適正な間隔を容易に確保することができ、容易に製造可能である。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態に係る光走査ミラー21を示す。以下、上述の第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、上述の第1実施形態と相違する部分についてのみ説明する。光走査ミラー21は、光走査ミラー1の可動板2とは異なる形状の可動板22を有している。すなわち、図に示すように、可動板22は、凹部2eを有しておらず、ヒンジ3の両側部の、ストッパ部6よりもヒンジ3から離れた位置に、それぞれ固定フレーム4に向けて突出するように形成された当接突起22eを有している。可動板22のその他の構成、及び光走査ミラー21の可動板22以外の構成は、第1実施形態の光走査ミラー1と同様である。この光走査ミラー21も、第1シリコン層200aにバルクマイクロマシニング技術による加工を施すことにより当接突起22eを含む形状を形成し、容易に製造することができる。
図6(a)、(b)は、光走査ミラー21のうちストッパ部6の近傍部位を示す。2つの当接突起22eは、それぞれ、当該当接突起22eよりもヒンジ3に近い位置のストッパ部6の側部に近接するように配置されている。図6(a)に示すように、平常時においては、ストッパ部6と当接突起22eとの間の隙間は、ストッパ部6とヒンジ3との間の隙間よりも若干狭くなるように構成されている。また、当接突起22eのうち、ストッパ部6側の角部には、R面取形状の面取部22fが形成されている。図6(b)に示すように、可動板22が側方に変位すると、一方のストッパ部6と当接突起22eとが接触し、それ以上可動板22が変位しない。従って、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、ヒンジ3の破損を防止し、光走査ミラー21の耐衝撃性を向上させることができる。ストッパ部6はヒンジ3に接触しないので、確実にヒンジ3の破損を防止することができる。ストッパ部6と当接突起22eとは互いに同電位であるので、ストッパ部6と当接突起22eとが接触したときに、スティッキングが発生しにくく、光走査ミラー21をより確実に動作可能な状態に維持することができる。
図7は、本発明の第3実施形態に係る光走査ミラー41を示す。光走査ミラー41は、光走査ミラー1の可動板2に替えて、ヒンジ3に沿うように形成されたストッパ部46を有する可動板42を備えている。また、固定フレーム4の支持部4bには、当接突起44eが設けられている。当接突起44eは、ヒンジ3の両側部であってストッパ部46よりもヒンジ3から離れた位置に、それぞれ可動板42に向けて突出するように形成されている。光走査ミラー41の可動板42及び当接突起44e以外の構成は、第1実施形態の光走査ミラー1と同様である。この光走査ミラー41も、第1シリコン層200aにバルクマイクロマシニング技術による加工を施すことにより、可動板42及び当接突起44eを含む形状を形成し、容易に製造することができる。
図8(a)、(b)は、光走査ミラー41のうちストッパ部46の近傍部位を示す。2つの当接突起44eは、それぞれ、当該当接突起44eよりもヒンジ3に近い位置のストッパ部46の側部に近接するように配置されている。図6(a)に示すように、平常時においては、ストッパ部46と当接突起44eとの間の隙間は、ストッパ部46とヒンジ3との間の隙間よりも若干狭くなるように構成されている。当接突起44e及びストッパ部46には、それぞれ、光走査ミラー1の凹部2eについての面取部2f、ストッパ部6についての面取部6aと同様に、面取部44f、面取部46aが形成されている。図6(b)に示すように、可動板42が側方に変位すると、一方のストッパ部46と当接突起44eとが接触し、それ以上可動板42が変位しない。従って、本実施形態においても、上述の第1実施形態や第2実施形態と同様に、ヒンジ3の破損を防止し、光走査ミラー41の耐衝撃性を向上させることができる。また、ストッパ部46はヒンジ3に接触しないので、確実にヒンジ3の破損を防止することができる。さらにまた、当接突起44eには面取部44fが形成されており、ストッパ部46には面取部46aが形成されているので、ストッパ部46や当接突起44eの破損を防止することができる。
図9は、本発明の第4実施形態に係る光走査ミラーのストッパ部56の近傍部位を示す。第4実施形態において、光走査ミラーの全体の構成は第1実施形態の光走査ミラー1と同様であるため、説明を省略する。第4実施形態では、スティッキング防止膜が設けられたストッパ部6に替えて、突起部56cが形成されたストッパ部56が設けられている。突起部56cは、図に示すように、例えば上面視で鋸歯形状を成すように設けられており、ストッパ部56のうち、可動板2が変位したときに凹部2eの側縁部と接触する部位に設けられている。
第4実施形態では、ストッパ部56に突起部56cが設けられているので、ストッパ部56と凹部2eの側縁部とが接触したとき、互いの接触面積が少なくなる。これにより、ストッパ部56と凹部2eの間で静電引力の影響が小さくなるため、スティッキングの発生が防止される。なお、突起部56cの形状は鋸歯形状に限られるものではない。突起部56cは、ストッパ部56と凹部2eと接触したときにその接触部位に応力が集中しすぎないような形状に形成されるのが望ましい。さらにまた、第4実施形態において、さらに、ストッパ部56と凹部2eの側縁部とが接触しうる部分にスティッキング防止膜を形成してもよく、これにより、スティッキングの発生をより確実に防止することができる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で適宜に種々の変形が可能である。例えば、光走査ミラーは、上記実施形態のような1軸に揺動可能なものではなく、例えば固定フレームに対し揺動可能に軸支された可動フレーム(フレーム部)を有し、可動フレームに対して揺動可能にミラー面が設けられたミラー部が軸支されている2軸ジンバル型のものであってもよい。この場合、ストッパ部を、可動フレームが軸支されるヒンジに沿うように形成することにより、可動フレーム及びミラー部を含む可動板の変位量を制限することができる。同様に、ストッパ部を、ミラー部が軸支されるヒンジに沿うように形成することにより、可動板としてのミラー部の可動フレームに対する変位量を制限することができる。また、光走査ミラーは、SOI基板でなく、単一のシリコン基板や金属板から構成されていてもよく、また、可動板を揺動する駆動力は、櫛歯電極間に働く静電力ではなく、平板電極間に働く静電力や、電磁力、電歪力、熱歪力であってもよい。さらにまた、ストッパ部は、可動板やフレーム部に一体に形成されていなくてもよく、可動板やフレーム部とは離れて、可動板の変位量を制限可能に配置されていてもよい。いずれの場合も、ストッパ部を、可動板を軸支するヒンジの側方にヒンジに沿うように形成することにより、可動板の側方への変位を制限することができ、ヒンジの破損を防止し、光走査ミラーの耐衝撃性を向上させることができる。
さらにまた、本発明は、ミラー面を有し光を走査する光走査ミラーに限られず、一対のヒンジにより固定フレームに対し揺動可能に構成された可動板が半導体基板に形成されてなる可動構造体に広く適用可能である。すなわち、ヒンジの側方にヒンジに沿うようにストッパ部を設けることにより、可動構造体の耐衝撃性を向上させることができる。
(a)は本発明の第1実施形態に係る可動構造体である光走査ミラーの上面側を示す斜視図、(b)は同光走査ミラーの下面側を示す斜視図。 上記光走査ミラーの平面図。 図2のA−A線断面図。 (a)は上記光走査ミラーのストッパ部近傍部位を示す平面図、(b)は可動板が平常時から変位したときの同部位を示す平面図。 本発明の第2実施形態に係る光走査ミラーを示す斜視図。 (a)は上記光走査ミラーのストッパ部近傍部位を示す平面図、(b)は可動板が平常時から変位したときの同部位を示す平面図。 本発明の第3実施形態に係る光走査ミラーを示す斜視図。 (a)は上記光走査ミラーのストッパ部近傍部位を示す平面図、(b)は可動板が平常時から変位したときの同部位を示す平面図。 本発明の第4実施形態に係る光走査ミラーのストッパ部近傍部位を示す平面図。
符号の説明
1,21,41 光走査ミラー(可動構造体)
2,22,42 可動板
2e 凹部
3 ヒンジ
4 固定フレーム(フレーム部)
6,46,56 ストッパ部
6a,46a 面取部
10 ミラー面
56c 突起部

Claims (7)

  1. 可動板と、それぞれ前記可動板に一端部が接続され前記可動板の1つの揺動軸を構成する一対のヒンジと、前記一対のヒンジのそれぞれの他端部が接続されており前記ヒンジを支持するフレーム部とを備え、
    前記可動板が、前記一対のヒンジをねじりながら前記フレーム部に対して揺動可能に構成されている可動構造体において、
    前記ヒンジの側方には、当該ヒンジに沿うようにストッパ部が形成されており、前記可動板が側方へ変位するときに当該ストッパ部と可動構造体の他の部位とが接触することにより、前記可動板の側方への変位量が制限されていることを特徴とする可動構造体。
  2. 前記ストッパ部は、前記可動板又はフレーム部に一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の可動構造体。
  3. 前記可動板には、前記ヒンジにより軸支される部位の近傍にヒンジの長手方向に凹むように形成された凹部が設けられており、
    前記ストッパ部は、前記フレーム部に一体に形成されており、前記ヒンジと前記凹部を形成する可動板の側縁部との間に位置するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の可動構造体。
  4. 前記ストッパ部の角部には、R面取り形状の面取部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の可動構造体。
  5. 前記ストッパ部は、前記可動板が側方へ変位するときに当該ストッパ部に接触する可動構造体の他の部位と同電位になるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の可動構造体。
  6. 前記ストッパ部の少なくとも一部には、当該ストッパ部に接触したものとの間でスティッキングが発生しないように、スティッキング防止膜又は突起部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の可動構造体。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の可動構造体を有し、
    前記可動板の上面に、入射した光を反射するミラー面を設けたことを特徴とする光走査ミラー。
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