JP2010017791A - ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超硬合金からなる工具基体表面に、直接あるいはTi化合物層からなる密着下地層を介して、組成式:W(C1−XNX)を満足する組成(但し、Xは原子比で0.001≦X≦0.1)を有するWCN層からなる下部層を設け、この上に、粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜及び微粒多結晶ダイヤモンド皮膜のいずれか単層または2層以上の複層からなるダイヤモンド皮膜層を設ける。
【選択図】なし
Description
したがって、CFRP、Al合金等の高速切削加工にダイヤモンド被覆工具を用いた場合、ダイヤモンド皮膜の密着性が十分でないためチッピング、欠損、剥離等が発生しやすく、工具寿命が短命化するばかりか、被削材のバリ発生のために仕上げ面精度が粗くなり、寸法精度も劣るという問題点があった。
組成式:W(C1−XNX)
で表した場合、0.001≦X≦0.1(ただし、Xは原子比)を満足する組成を有する炭窒化タングステン(以下、WCNで示す)層からなる下部層を形成する(請求項1)ことによって、ダイヤモンドの気相合成時に、工具基体の結合相成分であるCoの拡散を防止することができ、その結果、ダイヤモンド皮膜の密着性向上を図り得ることを見出した。
「(1) 炭化タングステン(WC)基超硬合金で構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、0.02〜2μmの平均層厚を有し、
組成式:W(C1−XNX)
で表した場合、0.001≦X≦0.1(ただし、Xは原子比)を満足する組成を有する炭窒化タングステン(WCN)層、
(b)上部層として、5〜30μmの合計平均層厚を有し、平均粒子サイズ0.5μm以上の粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜及び平均粒子サイズ0.1μm以下の微粒多結晶ダイヤモンド皮膜のいずれか単層または2層以上の複層からなるダイヤモンド皮膜層、
上記(a)、(b)からなる被覆層を形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具(ダイヤモンド被覆工具)。
(2) 炭化タングステン(WC)基超硬合金で構成された工具基体の表面と、前記下部層(a)との間に、0.1〜2μmの合計平均層厚を有し、チタンの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層及び炭窒化物(TiCN)層のうちから選ばれた1層または2層以上のTi化合物層からなる密着性下地層を介在形成した前記(1)に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具(ダイヤモンド被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
本発明のダイヤモンド被覆工具におけるWCN層からなる下部層は、WC基超硬合金からなる工具基体表面上に、通常の化学蒸着装置にて、例えば、
反応ガス組成:容量%で、WF6:0.5〜3%、CH3CN:0.5〜5%、
N2:2〜10%、H2:40〜50%、Ar:残り、
反応雰囲気温度:980〜1100℃、
反応雰囲気圧力:5〜20kPa、
の条件で蒸着することにより、
組成式:W(C1−XNX)
で表した場合、0.001≦X≦0.1(ただし、Xは原子比)を満足する組成を有する炭窒化タングステン層(WCN層)を形成することができ、そして、このWCN層は、ダイヤモンド皮膜の気相合成時に工具基体からのCo成分の拡散を防止し、工具基体とダイヤモンド皮膜の双方に対して密着強度にすぐれることから、工具基体−ダイヤモンド皮膜間での密着性を向上させる。
ここで、WCN層からなる下部層におけるCとの合量に占めるNの含有割合Xの値(原子比)が0.001未満では、下部層におけるCo拡散防止効果が低下し、ダイヤモンド皮膜の密着性改善を図ることができず、一方、Xの値が0.1を超えるとWCN層自体の靭性が低下するとともに、工具基体との熱膨張差が拡大し、密着強度低下するため、Nの含有割合Xの値(原子比)を0.001〜0.1と定めた。
また、WCN層からなる下部層の層厚について、その平均層厚が0.02μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方前記作用は2μmまでの平均層厚で十分であることから、その平均層厚を0.02〜2μmと定めた。
請求項2に係る本発明のダイヤモンド被覆工具は、工具基体表面に形成したTi化合物層(TiC層、TiN層及びTiCN(粒状結晶、縦長成長結晶)層のうちから選ばれた1層または2層以上)からなる密着性下地層を介して、その上に、上記WCN層を形成するものであるが、上記Ti化合物層からなる密着性下地層は、切削工具として必要とされる所定の硬さと強度を保持するほか、工具基体及び上記WCN層のいずれに対してもすぐれた密着強度を有し、また、ダイヤモンド皮膜の気相合成時に、工具基体からのCo成分の拡散防止にも寄与するため工具基体−ダイヤモンド皮膜間での密着性を一段と向上させる。
上記Ti化合物層からなる密着性下地層は、化学蒸着、物理蒸着等いずれの成膜方法によっても成膜することができるが、その平均層厚が0.1μm未満では、密着性向上効果が期待できず、一方、平均層厚が2μmを超えると、Ti化合物層が急激に粗大(粒)化する傾向にあり、皮膜にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
ダイヤモンド皮膜層は、そのすぐれた硬度により、基本的に、ダイヤモンド被覆工具の耐摩耗性を確保する層であり、粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜及び微粒多結晶ダイヤモンド皮膜のいずれか単層または2層以上の複層から構成される。
粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜は、例えば、
フィラメント温度 1900〜2200℃、
フィラメント−基板間隔 10〜30mm、
基体温度 700〜850℃、
雰囲気圧力 1.33〜13.3kPa、
反応ガス CH4:1〜10vol%,H2:残、
という条件の気相合成法によって、平均粒子サイズが0.5μm以上の粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜が形成される。
また、微粒多結晶ダイヤモンド皮膜は、例えば、
フィラメント温度 1900〜2100℃、
フィラメント−基板間隔 10〜30mm、
基体温度 700〜800℃、
雰囲気圧力 1.33〜13.3kPa、
反応ガス CH4:11〜30vol%,H2:残、
という条件の気相合成法によって、平均粒子サイズが0.1μm以下の微粒多結晶ダイヤモンド皮膜が形成される。
なお、本発明でいう「平均粒子サイズ」とは、ダイヤモンド皮膜断面について透過型電子顕微鏡を用い倍率2万〜20万倍の暗視野法による観察、写真撮影を行い、例えば図1に示すように、測定領域内にランダムに6本の線を引き、線と交わった結晶粒界の数(n)を数え、上記ランダムに引いた線の全長(L)を上記結晶粒界の数(n)で除した値(L/n)を「平均粒子サイズ」と定義する。
また、粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜は耐摩耗性に優れ、また、微粒多結晶ダイヤモンド皮膜は、コーティングしても切刃のシャープさが維持され、かつ、表面平坦性も良い(表面粗さが小)ため、溶着の発生が抑制され、溶着性の高い被削材の高速切削において優れた耐チッピング性を示す。
さらに、粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜と微粒多結晶ダイヤモンド皮膜を2層以上の複層として積層した場合には、それぞれのダイヤモンド皮膜の有する上記作用に加え、切削加工時にダイヤモンド皮膜にクラック(亀裂)が発生した場合にも、皮膜中のクラック(亀裂)伸展が抑制され、その結果として、耐欠損性、耐チッピング性がより一層向上する。
したがって、粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜及び微粒多結晶ダイヤモンド皮膜のいずれか単層または2層以上の複層として構成されたダイヤモンド皮膜層は、CFRP、Al合金等の高速切削加工においてすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する。
したがって、上記本発明のダイヤモンド被覆工具は、CFRP、Al合金等の難削材の高速切削加工に用いた場合でも、シャープな切刃を維持しバリの発生は少なく、また、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を示し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
(イ)工具基体(エンドミル)A−1〜A−8の表面に、直接あるいは密着性下地層を介して、1μmまたは2μmの厚さの金属Wをアークイオンプレーティングで形成し、
(ロ)ダイヤモンド粉末スラリー液を用いて超音波洗浄器で超音波処理を行なった後、
(ハ)マイクロ波プラズマCVD法によって励起されたCH4:2vol%、H2:残からなるメタン−水素混合ガス雰囲気中で、室温から800〜900℃までを40〜60分間で昇温し、金属Wを炭化して、WC層を形成した。
なお、本発明でいう上記「平均粒子サイズ」とは、既に述べたように、ダイヤモンド皮膜断面について透過型電子顕微鏡を用い倍率2万〜20万倍の暗視野法による観察、写真撮影を行い、例えば図1に示すように、測定領域内にランダムに6本の線を引き、線と交わった結晶粒界の数(n)を数え、上記ランダムに引いた線の全長(L)を上記結晶粒界の数(n)で除した値(L/n)をである。
(a)切削条件A
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 250 m/min.、
切断加工:(5 mm)、
テーブル送り: 1650 mm/分、
エアーブロー、
の条件での上記CFRPの乾式高速切断加工試験、
(b)切削条件B
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmの、JIS・ADC12の板材、
切削速度: 460 m/min.、
溝深さ(切り込み):径方向(ae)2.0mm,軸方向(ap)8mm、
テーブル送り: 1530 mm/分、
エアーブロー、
の条件での上記Al合金の乾式高速側面切削加工試験、
をそれぞれ行い、切削長(m)を測定した。
なお、比較エンドミル1〜10については、チッピング、欠損、剥離発生、バリ発生等を原因として寿命に至るまで切削長(m)を測定した。
これらの測定結果を表5、表6にそれぞれ示した。
(c)切削条件C
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:8mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 180 m/min.、
送り: 0.09 mm/rev、
貫通穴:(8 mm)、
エアーブロー、
の条件での上記CFRPの乾式高速穴あけ切削加工試験、
(d)切削条件D
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:15mmの、JIS・ADC12の板材
切削速度: 230 m/min.、
送り: 0.1 mm/rev、
貫通穴:(15 mm)、
エアーブロー、
の条件での上記Al合金の乾式高速穴あけ切削加工試験、
をそれぞれ行い、穴あけ加工数を測定した。
なお、比較エンドミル1〜10については、チッピング、欠損、剥離発生、バリ発生等を原因として寿命に至るまで穴あけ加工数を測定した。
この測定結果を表7、表8にそれぞれ示した。
Claims (2)
- 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、0.02〜2μmの平均層厚を有し、
組成式:W(C1−XNX)
で表した場合、0.001≦X≦0.1(ただし、Xは原子比)を満足する組成を有する炭窒化タングステン層、
(b)上部層として、5〜30μmの合計平均層厚を有し、平均粒子サイズ0.5μm以上の粗粒多結晶ダイヤモンド皮膜及び平均粒子サイズ0.1μm以下の微粒多結晶ダイヤモンド皮膜のいずれか単層または2層以上の複層からなるダイヤモンド皮膜層、
上記(a)、(b)からなる被覆層を形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。 - 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面と、前記下部層(a)との間に、0.1〜2μmの合計平均層厚を有し、チタンの炭化物層、窒化物層及び炭窒化物層のうちから選ばれた1層または2層以上のTi化合物層からなる密着性下地層を介在形成した請求項1に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。
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