JP2010015662A - 抵抗変化型不揮発性記憶装置 - Google Patents

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一彦 島川
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亮太郎 東
Yoshihiko Kanzawa
好彦 神澤
Masanori Shirahama
政則 白濱
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Abstract

【課題】抵抗変化素子に対して最適な読み出し電圧を印加可能とする抵抗変化型不揮発性記憶装置を提供する。
【解決手段】下部電極309aと上部電極309cと両電極間に与えられる極性の異なる電気的信号に基づいて可逆的に変化する抵抗変化層309bとからなる抵抗変化素子309と、トランジスタ317とを直列に接続してなるメモリセル300を備え、抵抗変化層309bは酸素不足型の遷移金属の酸化物層からなり、下部電極309aと上部電極309cは、異なる元素からなる材料によって構成され、下部電極309aの標準電極電位V1と上部電極309cの標準電極電位V2と前記遷移金属の標準電極電位VtとがVt<V2かつV1<V2なる関係を満足し、図外の読み出し回路は電圧クランプ回路を介して下部電極309aを基準として上部電極309cが正になる読み出し電圧を印加する。
【選択図】図22

Description

本発明は、電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化素子とトランジスタとで構成されたメモリセルを有する抵抗変化型不揮発性記憶装置に関する。
近年、抵抗変化素子を用いて構成されたメモリセルを有する不揮発性記憶装置の研究開発が進んでいる。抵抗変化素子とは、電気的信号によって抵抗値が可逆的に変化する性質を有し、さらにはこの抵抗値に対応したデータを、不揮発的に記憶することが可能な素子をいう。
抵抗変化素子を用いた不揮発性記憶装置として、直交するように配置されたビット線とワード線、ソース線との交点の位置に、MOSトランジスタと抵抗変化素子を直列に接続した、いわゆる1T1R型と呼ばれるメモリセルをマトリックス状にアレイ配置した不揮発性記憶装置が一般的に知られている。
特許文献1では、ペロブスカイト型結晶構造の酸化物を抵抗変化素子として用いた1T1R型メモリセルで構成された不揮発性記憶装置が示されている。
図51は、その中で示されているメモリセルの断面の模式図である。
メモリセル1011は、トランジスタ1006と抵抗変化素子1010とを電気的に直列に接続して形成されている。
トランジスタ1006は、半導体基板1001上に作製した第1の拡散層領域であるソース領域1002、第2の拡散層領域であるドレイン領域1003、およびゲート酸化膜1004上に形成されたゲート電極1005からなる。
抵抗変化素子1010は、電圧印加によって抵抗値が変化する抵抗変化層1008を、下部電極1007と上部電極1009との間に挟持してなる。
ドレイン領域1003と下部電極1007とは電気的に接続されている。
上部電極1009は、ビット線1012となる金属配線に接続され、ゲート電極1005はワード線に接続され、ソース領域1002はソース線1013となる金属配線に接続される。
ここでは、抵抗変化層1008に用いる材料としては、Pr1-xCaxMnO3、La1-xCaxMnO3(PCMO)などが開示されているが、電極材料に関しては特に言及されていない。
また、メモリセル1011への書き込み方法については、上部電極1009にVpp、ソース領域1002にVss、ゲート電極に所定の電圧振幅Vwpのパルス電圧を印加すると、低抵抗状態から高抵抗状態に変化し、逆に、上部電極1009にVss、ソース領域1002にVpp、ゲート電極に所定のVweのパルス電圧を印加すると、高抵抗状態から低抵抗状態に変化できることが開示されている。
特許文献2では、前述の電気的信号により抵抗変化が生じる抵抗変化素子とは抵抗変化の原理が異なる抵抗変化素子を用いた、1T1R型メモリセルで構成された不揮発性記憶装置が示されている。この記憶装置は、相変化メモリと呼ばれている。
相変化メモリでは、カルコゲナイド材料と呼ばれる相変化材料が、結晶状態とアモルファス状態で抵抗が異なることを利用して、データが記憶される。書き換えは相変化材料に電流を流して融点近傍で発熱させることにより、状態を変化させて行う。リセット動作と呼ばれる高抵抗化(アモルファス化)は、比較的高温に保つ制御により行い、セット動作と呼ばれる低抵抗化(結晶化)は、比較的低温に十分な期間保つ制御により行われる。
また、相変化メモリではデータの書換えに必要な電流はリセット動作とセット動作で異なり、リセット動作の方が比較的大きな電流が必要とされることが開示されている。
図52は、特許文献2に開示される、相変化メモリの断面図である。
メモリセル1021は、記憶部1022とNMOSトランジスタ1027とを用いて、1T1R型で構成されている。NMOSトランジスタ1027は、ソースおよびドレインに対応するN型拡散層領域1029およびN型拡散層領域1030、ならびにそれらに挟まれたゲート電極1031からなる。
記憶部1022は、相変化素子1024を挟んで、上部側を第2メタル配線層1023、下部側をコンタクトビア1025、第1メタル配線層1026で形成され、NMOSトランジスタ1027のN型拡散層領域1029に繋がる。
NMOSトランジスタ1027の反対側のN型拡散層領域1030は、各配線層を介して第3メタル配線層1028に接続される。
ここでは第2メタル配線層1023がソース線、第3メタル配線層1028がビット線、NMOSトランジスタ1027のゲート電極1031がワード線に対応している。
特許文献2では、相変化メモリ装置においてソース線を制御する機構を取り入れ、セット動作時とリセット動作時で、電流を流す向きを切り替えることが開示されている。
比較的大きい電流を流す必要があるリセット動作時には、ソース線1023を所定のハイレベル、ビット線1028をロウレベルに設定し、比較的小さい電流で足りるセット動作時には、ビット線1028を所定のハイレベル、ソース線1023をロウに設定している。
この設定に従って、リセット動作時の電流の向きは、メモリセルのNMOSトランジスタ1027のソース電位(この場合、N型拡散層領域1030の電位に対応)が、半導体基板の電位とほぼ同じロウレベルに維持される方向となる。そのため、いわゆるMOSトランジスタの基板バイアス効果の影響が小さくなるので、トランジスタの駆動能力が高い(大きな電流が得られる)状態で、リセット動作が行われる。
他方、セット動作時の電流の向きは、メモリセルのNMOSトランジスタ1027のソース電位(この場合、N型拡散層領域1029の電位に対応)が、NMOSトランジスタ1027のオン抵抗値と相変化素子1024の抵抗値との分圧関係で決まる電圧値に上昇する方向となる。そのため、いわゆるMOSトランジスタの基板バイアス効果の影響が大きくなり、トランジスタを流れる電流が比較的小さく抑えられる状態で、セット動作が行われる。
この構成により、セット動作およびリセット動作のそれぞれに適した大きさの電流を区別して与えることが容易になり、それぞれの動作結果が安定的に得られるようになる。
特許文献3では、ペロブスカイト型結晶構造の酸化物を抵抗変化型素子として用いた1T1R型メモリセルで構成された読み出しディスターブを低減する不揮発性記憶装置が示されている。ここで、読み出しディスターブとは、抵抗状態を読み出すために抵抗変化型素子に印加する電圧で、抵抗変化型素子の抵抗状態を乱すことをいう。
図53(a)、図53(b)は、特許文献3に開示の抵抗変化型素子を用いた1T1R型メモリセルアレイを備えた不揮発性記憶装置において、電流方向の異なる2種類の読み出し電流を用いる読み出し方法を説明する図を示している。メモリセルアレイは列方向に延伸するビット線2本(BL1〜BL2)と行方向に延伸するワード線2本(WL1〜WL2)の交点にメモリセルが2×2個配置された構成となっている。また、ソース線が2本(SL1〜SL2)で、ワード線と平行に配置される構成となっている。
各メモリセルは、抵抗変化素子(R11、R12、R21、R22)の下部電極と各選択トランジスタ(TR11、TR12、TR21、TR22)のドレイン電極が接続され、ビット線に抵抗変化素子(R11、R12、R21、R22)の上部電極が接続され、ワード線に選択トランジスタ(TR11、TR12、TR21、TR22)のゲート電極が接続し、ソース線に選択トランジスタ(TR11、TR12、TR21、TR22)のソース電極が接続している。
このように、メモリセルを選択トランジスタ(TR11、TR12、TR21、TR22)と抵抗変化素子(R11、R12、R21、R22)の直列回路で構成することにより、ワード線(WL1)の電位によって選択されたメモリセルの選択トランジスタ(TR11、TR12)がオン状態となり、更に、ビット線(BL2)の電位によって選択されたメモリセルの抵抗変化素子にのみ選択的に読み出し、又は書き込み、消去電圧が印加され、所望の抵抗変化素子の抵抗値の読み出し、又は、抵抗値の書き換えを可能にする構成となっている。
ここで、読み出しは、図外のビット線デコーダを介して接続される読み出し回路にて抵抗値状態を判定することで行われる。図53(a)では、読み出し動作において、ワード線WL1がオン状態となり、選択ビット線BL2にVb+Vrが印加され、非選択ビット線BL1及びソース線(SL1、SL2)にVbが印加され、読み出し電流が、ビット線からメモリセルに流れ込むような読み出しになり、今この読み出し方を“+読み出し”と呼ぶ。
一方、図53(b)では、読み出し動作において、ワード線WL1がオン状態となり、選択ビット線BL2にVb−Vrが印加され、非選択ビット線BL1及びソース線(SL1、SL2)にVbが印加され、読み出し電流が、メモリセルからビット線に流れ込むような読み出しになり、今この読み出し方を“−読み出し”と呼ぶことにする。ここで、Vbは、メモリセルアレイのバイアス電圧であり、Vrは、読み出し電圧である。
“+読み出し”と“−読み出し”では、読み出し対象のメモリセルの記憶データが同じでも、読み出し電流の電流方向が異なると、それを電圧変換した電圧値が異なり、そのため、読み出し電圧の極性に応じて、読み出し電流を電圧変換した電圧値の判定方法を変化させる必要がある。例えば、電圧変換した電圧値を参照電圧と比較して差動増幅する場合は、読み出し電圧の極性に応じた適正な参照電圧を使用し、差動増幅出力の論理レベルを読み出し電圧の極性に応じて反転させる等の処理が必要となる。
図54は、上記交互に“+読み出し”と“−読み出し”を行った場合の読み出しディスターブ低減効果を説明する、初期状態が高抵抗状態にある抵抗変化素子に対する相対パルス印加回数と抵抗変化率の関係を示す特性図であり、具体的には、ペロブスカイト型金属酸化物の一種である、PCMO膜(Pr1-xCaxMnO3)を抵抗変化素子として用いた場合に、抵抗変化素子に、絶対値が書き込み電圧以下の読み出し電圧を同じ極性の連続パルスとして印加した場合の、相対パルス印加回数と抵抗変化率の関係を示す。
図54に示すように、抵抗変化素子の上部電極に正極性の電圧パルス(電圧+1V又は+2V、パルス幅100ns)を印加し続けると、初期状態が高抵抗状態にあった抵抗変化素子の抵抗値は、パルス印加の回数が増えるに従って低下する。また、負極性の電圧パルス(電圧−1V又は−2V、パルス幅100ns)を印加し続けると、パルス印加の回数が増えるに従って、抵抗値は上昇する。
尚、負極性の電圧パルスでは、パルス印加回数が増えるに従って抵抗値が上昇する傾向を示すが、高抵抗状態が更に高抵抗状態となることは、低抵抗状態との差異がより顕著になるため、当該抵抗変化は特性上問題とならない。正極性の電圧パルス印加時の抵抗値の低下が問題となる。
ここで、正極性の電圧パルスとは、下部電極に基準となる接地電圧を与え、上部電極に正の電圧パルス(例えば、1V)を印加する状態を指す。更に、負極性の電圧パルスとは、上部電極に基準となる接地電圧を与え、下部電極に正の電圧パルス(例えば、1V)を印加する状態を指す。
次に、正極性と負極性の電圧パルス(電圧振幅1V又は2V、パルス幅100ns)を交互に印加した場合、明らかに、正極性と負極性の電圧パルス(前者が“+読み出し”電圧印加で、後者が“−読み出し”電圧印加に相当)の場合の抵抗変化が、単極性の電圧パルスを連続印加した場合よりも大幅に抑制(読み出しディスターブ低減)される。
ここで、読み出し動作について説明すると、読み出し毎に読み出し回数をカウントし、それに対応して、“+読み出し”と“−読み出し”が交互に行われる。ある程度メモリセルの選択のされ方がランダムであるようであれば、各メモリセルへは“+読み出し”と“−読み出し”の回数は大体バランスし、読み出しディスターブはある程度低減される。
このように特許文献3では、読み出し毎に読み出し回数をカウントし、それに対応して、“+読み出し”と“−読み出し”が交互に行われ、読み出しディスターブを低減する読み出し手法が開示されている。
特許文献4では、ビット線電圧クランプ回路を用いた、クロスポイントタイプのメモリセルアレイを有する抵抗変化型半導体記憶装置が示されている。
図55は、特許文献4に記載の一般的なビット線電圧クランプ回路の構成を示す回路図である。NMOSトランジスタ1040のソース電極とビット線が接続され、ソース電極とインバータ1041の入力端子が接続され、インバータ1041の出力とNMOSトランジスタ1040のゲート電極が接続されている。
このようなインバータフィードバック型のクランプ回路を介してビット線電圧を供給することにより、ビット線電圧の変動を抑え、抵抗変化素子からなる読み出し対象のメモリセルの抵抗値に依存して変化するクロスポイントアレイのリーク電流を低減し、読み出しマージンを向上する技術が開示されている。
特開2005−25914号公報(図2) 特開2005−267837号公報(図7、図8) 特開2006−190376号公報(図6、図19) 特開2006−4479号公報(図4)
本願発明者らは、抵抗変化型不揮発性記憶装置の1つとして、遷移金属の酸素不足型の酸化物を抵抗変化層とする1T1R型メモリセルで構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置を検討している。
ここで、酸素不足型の酸化物とは、酸素が化学量論的組成から不足した酸化物をいう。遷移金属の1つであるタンタルの例で言えば、化学量論的な組成を有する酸化物としてTa25がある。このTa25では、酸素がタンタルの2.5倍含まれており、酸素含有率で表現すると、71.4%である。この酸素含有率71.4%よりも酸素含有率が低くなった状態の酸化物、すなわちTaOxと表現したとき、0<x<2.5を満足する非化学量論的な組成を有するタンタル酸化物(以下、タンタル酸化物をTa酸化物と略記)を、酸素不足型のTa酸化物と呼ぶ。
課題を説明するための準備として、酸素不足型のTa酸化物を抵抗変化層とする抵抗変化素子について、測定で得られたいくつかの特性を説明する。
図1は、測定に用いた抵抗変化素子の基本構造を示す模式図である。抵抗変化層3302に酸素不足型のTa酸化物を用い、これをPtからなる下部電極3301と、同じくPtからなる上部電極3303でサンドイッチしたような上下対称な構造とした。
以下、この不揮発性素子を素子Aと呼ぶ。なお、素子の名称と電極材料の関係は、実施の形態で説明する素子も含めて、表1に示した。
図2は、この素子Aの抵抗変化の様子の一例を示す電流−電圧のヒステリシス特性を示すグラフであり、図1の下部電極3301を基準にしたときの上部電極3303の電圧を横軸に表し、素子Aに流れる電流値を縦軸に表している。
図2において、下部電極3301を基準に上部電極3303に正電圧を印加していくと、電流はほぼ電圧に比例して増加し、A点で示す正電圧を超えると急激に電流は減少する。すなわち低抵抗状態から高抵抗状態へ変化(高抵抗化)している様子を示している。
一方、高抵抗状態において、下部電極3301を基準に上部電極3303に負電圧(上部電極3303を基準に下部電極3301に正電圧を印加することと等価)を印加していくと、B点で示す負電圧を超えると急激に電流は増加する。すなわち高抵抗状態から低抵抗状態へ変化(低抵抗化)している様子を示している。
図2の特性を示す抵抗変化素子と、特許文献1に開示される抵抗変化素子とは、抵抗変化層の材料は異なるものの、いずれも、極性の異なる印加電圧によって高抵抗状態と低抵抗状態が切り換わる、いわゆるバイポーラ動作をし、かつ、下部電極に対し上部電極へ、正電圧の印加で高抵抗化し、負電圧の印加で低抵抗化するという点で共通している。
しかしながら、本願発明者らは、検討を進める中で、1つの方向の抵抗変化(低抵抗化または高抵抗化)を安定的に生ぜしめる電圧印加方向(駆動極性)は必ずしも一様ではなく、上下電極にPtを用い、抵抗変化層に酸素不足型のTa酸化物を用いて同一材料で作製した抵抗変化素子の中でも、駆動極性が異なるものがあることを見出した。
例えば、ある抵抗変化素子は、下部電極3301よりも上部電極3303が高い電圧を正として、上下の電極間に+2.0V、100nsのパルス電圧を印加することで低抵抗化し、−2.6V、100nsのパルス電圧を印加することで高抵抗化することが確認された。
また、他の抵抗変化素子は、下部電極3301よりも上部電極3303が高い電圧を正として、上下の電極間に−2.0V、100nsのパルス電圧を印加することで低抵抗化し、+2.7V、100nsのパルス電圧を印加することで高抵抗化することが確認された。
図3(a)、図3(b)は、これらの抵抗変化素子について、低抵抗化を引き起こすパルス電圧と高抵抗化を引き起こすパルス電圧とを交互に印加し続けたときの、その都度の抵抗値を表したグラフである。横軸は加えた電気的なパルスの数を表し、縦軸は抵抗値を表している。
図3(a)に示されるように、ある抵抗変化素子は、最初、約33kΩの高抵抗状態にあり、上部電極3303に+2.0Vのパルス電圧の印加で約500Ωの低抵抗状態に変化し、次に−2.6Vのパルス電圧の印加で約40kΩの高抵抗状態に変化した後、下部電極3301に対し上部電極3303に正のパルス電圧の印加による低抵抗化と、下部電極3301に対し上部電極3303に負のパルス電圧の印加による高抵抗化とを繰り返す。
この抵抗変化の方向と印加電圧の極性との関係を、便宜的にAモードと呼ぶ。
図3(b)に示されるように、他の抵抗変化素子は、最初、約42kΩの高抵抗状態にあり、上部電極3303に−2.0Vのパルス電圧の印加で約600Ωの低抵抗状態に変化し、次に+2.7Vのパルス電圧の印加で約40kΩの高抵抗状態に変化した後、下部電極3301に対し上部電極3303に負のパルス電圧の印加による低抵抗化と、下部電極3301に対し上部電極3303に正のパルス電圧の印加による高抵抗化とを繰り返す。
この抵抗変化の方向と印加電圧の極性との関係を、便宜的にBモードと呼ぶ。図2に示した電圧−電流ヒステリシス特性は、このBモードに対応している。
なお、上述のパルス電圧値は、パルス発生器の設定出力電圧値を指しており、抵抗変化素子の両端間に印加されている実効的な電圧値は、測定系を通じた電圧降下のためこれより小さな電圧値と考えられる。
このような結果が得られた素子Aにおいて、上部電極3303と下部電極3301はいずれもPtからなり、それらに挟まれた酸素不足型のTa酸化物からなる抵抗変化層3302は、電極に対して電気的には上下対称な関係である。
このため、抵抗変化特性としてAモードおよびBモードのいずれが出現するかは必ずしも自明ではなく、経験則や実証的な測定結果に基づいていた。そしてこれらの現象は、抵抗変化のメカニズムにおいて解明されていない何らかの異方性要因により定まっていると予想される。
以下では、AモードおよびBモードが不定に出現する場合、1T1R型のメモリ装置を構成する上で考えられる課題について説明する。
図4(a)、図4(b)は、図1に示された抵抗変化材料の下部電極3301(BE)と選択トランジスタの拡散層領域が接続された1T1Rセル構造を示す回路図である。
図4(a)は選択トランジスタのゲート電極にゲート電圧Vg(2.4V)が印加され、選択トランジスタの基板及び上部電極TEが接地電位GNDに固定され、下部電極BEと接続されていない方の拡散層領域にバイアス電圧VMが印加された時に1T1Rセルに流れる電流iMを示している。このバイアス印加方式を負極性バイアス印加と呼ぶ。
一方、図4(b)は選択トランジスタのゲート電極にゲート電圧Vg(2.4V)が印加され、選択トランジスタの基板及び拡散層領域が接地電位GNDに固定され、上部電極TEにVMが印加された時に1T1Rセルに流れる電流iMを示している。このバイアス印加方式を正極性バイアス印加と呼ぶ。
図5は、図4の1T1Rセルの抵抗変化の様子を示す電流iM−電圧VMのシミュレーションによるヒステリシス特性で、下部電極BEを基準にしたときの上部電極TEの電圧VMを横軸に、そのときの1T1Rセルに流れる電流値iMを縦軸に示している。
図5において、抵抗変化材料の抵抗値Rがそれぞれ100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩの時の1T1Rセルの電流iM−電圧VM特性を示すが、ここでは、実測評価から得られた代表パラメータを用いてヒステリシス特性及び抵抗変化特性を説明する。具体的には、選択トランジスタのゲート幅(W)を0.44μm、ゲート長(L)を0.18μmとし、抵抗変化素子の抵抗値が、+2.0Vの正極性パルス(パルス幅100ns)を印加すると、低抵抗状態(10kΩ)から高抵抗状態(100kΩ)に変化し、−2.0Vの負極性パルス(パルス幅100ns)を印加すると、高抵抗状態(100kΩ)から低抵抗状態(10kΩ)に変化すると仮定した場合において、書込みを行った時に想定される軌跡を示している。
図5において、低抵抗状態(10kΩ)から高抵抗状態(100kΩ)への変化はC点(高抵抗化電圧〜1.3V、高抵抗化電流〜120μA)を通過して初めて起こり、高抵抗状態(100kΩ)から低抵抗状態(10kΩ)への変化はD点(低抵抗化電圧〜−1.0V、低抵抗化電流〜−100μA)を通過して起こる。
図6(a)、図6(b)は、図5でシミュレーションした1T1Rセルの実素子における読み出しディスターブ特性を示す。図6(a)、図6(b)はそれぞれ図4(a)、図4(b)に示されるバイアス印加方式に対応し、横軸は、1T1Rセル印加DC電圧VMを表し、縦軸は、高抵抗状態及び低抵抗状態の抵抗値を表す。但し、各バイアス電圧VMを印加した後の抵抗値測定は、VM=+0.05V印加時の電流値から算出している。
図6(a)は、高抵抗状態抵抗値(約90kΩ)及び低抵抗状態抵抗値(約8kΩ)の負極性バイアス電圧依存を表し、|VM|が1V以下の範囲において、低抵抗状態はほとんど変化せず、一方、高抵抗状態は、VM=0Vから−0.6Vの範囲では、高抵抗状態(約90kΩ)を保持していたが、VM=−0.7Vを印加すると、急激に抵抗値が減少(約11kΩ)した。これは、高抵抗状態の低抵抗化電圧(〜−1.0V)に近付いたことから、高抵抗状態が低抵抗化したためである。
このことから、負極性バイアス印加時における読み出し電圧は、絶対値が0.6V以下にしなければならない。ここで、この境界電圧(−0.6V)を高抵抗状態ディスターブ境界電圧と呼ぶことにする。
図6(b)は、高抵抗状態抵抗値(約100kΩ)及び低抵抗状態抵抗値(約8kΩ)の正極性バイアス電圧依存を表し、VMが1V以下の範囲において、高抵抗状態はほとんど変化せず、一方、低抵抗状態は、VM=+0.8V印加までは、低抵抗状態(約8kΩ)を保持していたが、VM=+0.9Vを印加すると、急激に抵抗値が増加(約23kΩ)した。これは、低抵抗状態の高抵抗化電圧(〜1.3V)に近付いたことから、低抵抗状態が高抵抗化したためである。
このことから、正極性バイアス印加時における読み出し電圧は、+0.8V以下にしなければならない。ここで、この境界電圧(+0.8V)を低抵抗状態ディスターブ境界電圧と呼ぶことにする。
図7は、図5に高抵抗状態ディスターブ境界電圧(−0.6V)と低抵抗状態ディスターブ境界電圧(+0.8V)を書き加えたヒステリシス特性を示す。図7において、読み出し電圧は、正極性バイアス側に印加した方が、高く設定でき、セル電流をより多く流すことができることが分かる。
上述のように、抵抗変化層の抵抗変化特性がBモードに限定されるのであれば、読み出しディスターブ耐性が強い正極性バイアス印加側で読み出し動作を行うようにすれば、読み出し電圧を高く(VM≦0.8V)でき、読み出しセル電流を大きく取ることができる。
しかしAモード特性を示す場合もあること想定すると、読み出し電圧を読み出しディスターブ耐性が弱い方に合わせて設定(VM≦0.6V)する必要があり、Bモードに限定できる場合に比べ、読み出し電圧を低く設定しなければならず、読み出しセル電流が低下し、高速読み出しに大きな弊害となり、好ましくない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、抵抗変化素子を用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について、抵抗変化素子の抵抗変化特性のAモードおよびBモードの出現を制御可能とし、抵抗変化素子に対して最適な読み出し電圧を印加可能とする技術を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の不揮発性記憶装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極と前記第2電極と接するように設けられており、前記第1電極と前記第2電極間に与えられる極性の異なる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層からなる不揮発性記憶素子と、前記不揮発性記憶素子に電圧を印加することにより前記不揮発性記憶素子の抵抗の状態を読み出す読み出し回路とを備え、前記抵抗変化層は酸素不足型のタンタルの酸化物層からなり、前記第1電極と前記第2電極は、異なる元素からなる材料によって構成され、前記第1電極の標準電極電位V1と、前記第2電極の標準電極電位V2と、前記タンタルの標準電極電位Vtとが、Vt<V2かつV1<V2を満足し、前記読み出し回路は、前記不揮発性記憶素子に対して、前記第1電極を基準として前記第2電極が正になる電圧を印加し、前記印加する電圧の最大値を制限するクランプ回路と、前記クランプ回路と直列に接続され、前記印加する電圧により前記不揮発性記憶素子に流れる電流を測定するセンスアンプ回路とを含む。
また、本発明の不揮発性記憶装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極と前記第2電極と接するように設けられており、前記第1電極と前記第2電極間に与えられる極性の異なる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層からなる不揮発性記憶素子と、前記不揮発性記憶素子に電圧を印加することにより前記不揮発性記憶素子の抵抗の状態を読み出す読み出し回路とを備え、前記抵抗変化層は、TaOxで表される組成を有する第1の酸素不足型のタンタル酸化物を含む第1の領域と、TaOy(但し、x<y)で表される組成を有する第2の酸素不足型のタンタル酸化物層を含む第2の領域とを有し、前記第1の領域が前記第1電極と接し、前記第2の領域が前記第2電極と接しており、前記読み出し回路は、前記不揮発性記憶素子に対して、前記第1電極を基準として前記第2電極が正になる電圧を印加し、前記印加する電圧の最大値を制限するクランプ回路と、前記クランプ回路と直列に接続され、前記印加する電圧により前記不揮発性記憶素子に流れる電流を測定するセンスアンプ回路とを含む。
本発明の不揮発性記憶装置によると、標準電極電位が低いために抵抗変化層の隣接する領域を酸化させにくい第1電極と、標準電極電位が高いために抵抗変化層の隣接する領域を酸化させやすい第2電極とで、酸素不足型の遷移金属酸化物を含む抵抗変化層を挟んでなる抵抗変化型の不揮発性記憶素子を用いるので、不揮発性記憶素子に対して、第1電極を基準にして第2電極に正の電圧を印加することで高抵抗化し、第2電極を基準にして第1電極に正の電圧を印加することで低抵抗化するように、抵抗変化のための電圧印加方向(駆動極性)を一義的に決定できる。
また、本発明の不揮発性記憶装置によると、酸素含有率が低いために抵抗変化が起こりにくい酸素不足型の遷移金属酸化物を含む第1の領域を第1電極と接して配置し、酸素含有率が高いために抵抗変化が起こりやすい酸素不足型の遷移金属酸化物を含む第2の領域を第2電極と接して配置してなる抵抗変化型の不揮発性記憶素子を用いるので、不揮発性記憶素子に対して、第1電極を基準にして第2電極に正の電圧を印加することで高抵抗化し、第2電極を基準にして第1電極に正の電圧を印加することで低抵抗化するように、抵抗変化のための電圧印加方向(駆動極性)を一義的に決定できる。
抵抗状態を読み取るために不揮発性記憶素子に電圧を印加する場合、不揮発性記憶素子を高抵抗化させる電圧と同じ極性の電圧を印加するほうが、逆極性の電圧を印加するよりもディスターブ耐性が強い、つまり、不揮発性記憶素子の抵抗状態を乱すことなく安全により高い電圧を印加できることが分かっている。
そこで、読み出し回路は、前記不揮発性記憶素子に対して、前記第1電極を基準として前記第2電極が正になる電圧を印加する。前記印加する電圧の最大値はクランプ回路で制限される。
その結果、読み出しディスターブ耐性が強い極性での電圧印加により読み出し動作を行うことができる。従って、読み出し電圧を高く設定できるため、読み出しセル電流を大きく取ることができ、高速読み出しが可能となる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置は、抵抗変化素子とMOSトランジスタとを直列に接続してなる1T1R型の不揮発性記憶装置であって、抵抗変化素子の抵抗変化特性のモードを固定するとともに、固定されるモードに応じてMOSトランジスタの構成を最適化するものである。
[本発明の基礎データ]
準備として、本発明の抵抗変化型不揮発性記憶装置に用いられる2種類の抵抗変化素子に関する基礎的なデータを説明する。
これらの抵抗変化素子は、異種の材料からなる上下の電極で、それぞれ酸素不足型のタンタル酸化物からなる抵抗変化層、および酸素不足型のハフニウム酸化物からなる抵抗変化層を挟んで構成される。
これらの抵抗変化素子は、可逆的に安定した書き換え特性を有する、抵抗変化現象を利用した不揮発性記憶素子を得ることを目的として本願発明者らにより発明されたものであり、それぞれ関連特許である特願2007−267583号で詳細に説明されている。
これらの抵抗変化素子が有している、抵抗変化特性を前述のAモードおよびBモードのいずれか意図した一方に固定できるという特徴を、本発明の抵抗変化型不揮発性記憶装置に利用する。以下では説明のために、前記関連特許出願の内容の一部を引用する。
なお、本明細書において、“抵抗変化素子”と“抵抗変化型の不揮発性記憶素子(または、短く不揮発性記憶素子)”とを同義で用いる。
[抵抗変化層に酸素不足型のタンタル酸化物を用いた抵抗変化素子]
まず、酸素不足型のTa酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子に関する第1の実験について説明する。
この実験では、酸素不足型のTa酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子を、上下のどちらかの電極近傍でのみ抵抗変化が起こりやすく構成することによって、可逆的に安定した書き換え特性が得られるかを検証した。
この検証のため、抵抗変化の起きやすさが電極の材料種によって変化すると想定して、異種材料の上下電極で酸素不足型のTa酸化物を挟んだ構造の抵抗変化素子を作製し、抵抗変化特性を測定した。
以下では、この実験の結果について説明する。
なお、この検証結果を説明する前に、酸素不足型のTa酸化物層の形成方法や、酸素含有率の好適な範囲を説明する。
その後、抵抗変化の起こりやすさが電極材料に依存するかどうかの確認を行うため、白金(Pt)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チッ化タンタル(以下、TaN)からなる電極でTaOx層を挟んだ構造を形成し、電気パルスによる抵抗変化現象の様子を調べた結果について述べる。
そして最後に、動作しやすい電極材料と動作しにくい電極材料で酸素不足型のTa酸化物を挟み込んだ構造の抵抗変化素子の抵抗変化の測定結果について述べる。
[スパッタリング時の酸素流量比とTa酸化物層の酸素含有率との関係]
まず、本実験における酸素不足型のTa酸化物層の作製条件及び酸素含有率の解析結果について述べる。
酸素不足型のTa酸化物層は、Taターゲットをアルゴン(Ar)と酸素ガス(O2ガス)雰囲気中でスパッタリングする、いわゆる、反応性スパッタリングで作製した。本実験での具体的な酸素不足型のTa酸化物の作製方法は次の通りである。
まずスパッタリング装置内に基板を設置し、スパッタリング装置内を7×10-4Pa程度まで真空引きする。Taをターゲットとして、パワーを250W、アルゴンガスと酸素ガスとをあわせた全ガス圧力を3.3Pa、基板の設定温度を30℃にし、スパッタリングを行った。ここでは、Arガスに対するO2ガスの流量比を0.8%から6.7%まで変化させた。
まずは、組成を調べる事が目的であるため、基板としては、シリコン(Si)上にSiO2を200nm堆積したものを用い、Ta酸化物層の膜厚は約100nmになるようにスパッタリング時間を調整した。
このようにして作製したTa酸化物層の組成をラザフォード後方散乱法(RBS法)、及びオージェ電子分光法(AES法)によって解析した結果を図8に示す。
この図から、酸素分圧比を0.8%から6.7%に変化させた場合、Ta酸化物層中の酸素含有率は約35at%(TaO0.66)から約70at%(TaO2.3)へと変化していることが分かる。
以上の結果より、Ta酸化物層中の酸素含有率を酸素流量比によって制御可能である事と、Taの化学量論的な酸化物であるTa25(TaO2.5)の酸素含有率71.4at%よりも酸素が不足している、酸素不足型のTa酸化物が形成されている事が明らかとなった。
なお、本実験では、Ta酸化物層の解析にラザフォード後方散乱法(RBS)及びオージェ電子分光法(AES)を利用したが、蛍光X線分析法(XPS)や電子線マイクロアナリシス法(EPMA)等の機器分析手法も利用可能である。
[酸素不足型のTa酸化物層の組成と抵抗変化特性]
以上のように作製した酸素不足型のTa酸化物のうち、どの程度の酸素含有率を有する酸素不足型のTa酸化物が抵抗変化を示すのかを調べた。ここで酸素不足型のTa酸化物層を挟む電極の材料として用いたのは、上下の電極ともにPtである。
上下にPtを用いた場合は、上述のように、バイポーラ型の抵抗変化型の不揮発性素子としては不適当である。しかしながら、Ptは後述するように、抵抗変化を非常に示しやすい電極材料であり、ある酸素含有率を有する酸素不足型のTa酸化物が抵抗変化を示すか否かの判定を行うには最も好適な材料である。
以上のような理由から、図9のような不揮発性記憶素子500を形成した。
すなわち、単結晶シリコン基板501上に、厚さ200nmの酸化物層502を熱酸化法により形成し、下部電極503としての厚さ100nmのPt薄膜を、スパッタリング法により酸化物層502上に形成した。
その後、Taをターゲットとして、反応性スパッタリングによって酸素不足型のTa酸化物層504を形成した。本実験で検討した範囲では、上記の分析試料と同様に、酸素ガスの流量比を、0.8%から6.7%まで変化させて不揮発性記憶素子を作製した。酸素不足型のTa酸化物層504の膜厚は30nmとした。
その後、酸素不足型のTa酸化物層504の上に、上部電極505としての厚さ150nmのPt薄膜をスパッタ法により堆積した。
最後にフォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程によって、素子領域506を形成した。なお、素子領域506は、直径が3μmの円形パターンである。
以上のように作製した不揮発性記憶素子の抵抗変化現象を測定した。その結果、図8のα点(酸素流量比約1.7%、酸素含有率約45at%)からβ点(酸素流量比約5%、酸素含有率約65at%)のTa酸化膜を使った不揮発性記憶素子では、高抵抗値が低抵抗値の5倍以上と良好であった。
図10(a)、図10(b)は、それぞれ、α点およびβ点の酸素含有率を有するTa酸化物層を使った不揮発性記憶素子についてのパルス印加回数に対する抵抗変化特性を測定した結果である。
図10(a)、図10(b)によれば、α点およびβ点の酸素含有率を有するTa酸化物層を使った素子では、共に、高抵抗値が低抵抗値の5倍以上と良好であることが判る。
従って、酸素含有率が45〜65at%の組成範囲、即ち抵抗変化層をTaOxと表記した場合におけるxの範囲が0.8≦x≦1.9の範囲がより適切な抵抗変化層の範囲であると言える(酸素含有率=45at%がx=0.8に、酸素含有率=65at%がx=1.9にそれぞれ対応)。
[W、Ta、TaNを上下の電極材料に用いた抵抗変化素子の抵抗変化特性]
次に、抵抗変化の起こりやすさが、電極材料に依存するかどうかの確認を行うため、図9の構造を持つ不揮発性記憶素子500を用い、Pt以外の材料として、W、Ta、TaNから成る下部電極503と上部電極505で酸素不足型のTa酸化物層504を挟んだ構造を作製し、電気パルスによる抵抗変化の様子を調べた結果について説明する。
なお、ここでも抵抗変化の起こりやすさだけを評価する目的で実験を行ったので、上下の電極材料は同一とした。また、使用した酸素不足型のTa酸化物の酸素含有率は、好適な酸素含有率の範囲のほぼ中間の58at%(TaO1.38)とした。素子の形成方法は上記とほぼ同じであり、Pt、W、Ta、TaNのいずれもスパッタリング法によって堆積した。
まず、比較のため、下部電極503と上部電極505のいずれもPtからなる薄膜により形成した不揮発性記憶素子(以下、素子Bと表す)の抵抗変化特性について述べる。
図11(a)、図11(b)は、このようにして作製した素子Bの電気パルスによる抵抗変化の測定結果である。
図11(a)は、下部電極503と上部電極505の間には、パルス幅が100nsecで、下部電極503を基準として上部電極505に+3.0Vと−1.5Vの電圧を有する電気的パルスを交互に印加した時の抵抗の測定結果である。
この場合、+3.0Vの電圧の電気パルスを印加する事で抵抗値は800〜1000Ω程度となり、−1.5Vの電圧の電気パルスを印加した場合は、150Ω程度と変化していた。すなわち、上部電極505に下部電極503よりも高い電圧の電気パルスを加えた時に高抵抗化する変化を示した。
また、詳細は省略するが、追加的な実験から、このときの抵抗変化は上部電極505の近傍で生じていることを推認する結果が得られた。
次に、印加する電圧のバランスを変化させ、負の電圧を大きくした場合の結果が図11(b)である。この場合、下部電極503に対して上部電極505に−3.0Vと+1.5Vの電圧の電気的パルスを印加した。すると、−3.0Vの電気パルスを印加した時に、高抵抗化し、抵抗値は600〜800Ω程度となり、+1.5Vの電気パルスを印加した時に低抵抗化して、抵抗値は150Ω程度となっている。すなわち、上部電極505に下部電極503よりも高い電圧の電気パルスを加えた時に低抵抗化しており、図11(a)を測定した時と、正反対の動作を示した。
また、詳細は省略するが、追加的な実験から、このときの抵抗変化は下部電極503の近傍で生じていることを推認する結果が得られた。
次に、下部電極503と上部電極505のいずれもWからなる薄膜により形成した不揮発性記憶素子(以下、素子Cと表す)の抵抗変化特性について述べる。
図12(a)、図12(b)は、このようにして作製した素子Cの電気パルスによる抵抗変化の測定結果である。
図12(a)は、上部電極505の近傍での抵抗変化を起こさせる(上部電極モード)事を目的に、下部電極503を基準にして上部電極505に+7Vと、−5Vを交互に印加した時の抵抗値の変化を示す。上部電極モードは、下部電極を基準として上部電極に正電圧を印加することで高抵抗化を起こすモードであり、前述のBモードに対応する。
図12(a)から分かるように、パルス数が30回程度まででは、弱いながらも、Bモードでの抵抗変化が観測されており、+7Vの電気パルスを印加した時に高抵抗化し、−5Vの電気パルスを印加した時に低抵抗化している。しかしながら、パルス数が30回を超えると、抵抗変化がほとんど観測されなくなっている。
逆に下部電極503の近傍での抵抗変化を起こさせる(下部電極モード)事を目的に、上部電極505に+5Vと、−7Vを交互に印加した時の抵抗値の変化を図12(b)示す。下部電極モードは、上部電極を基準として下部電極に正電圧を印加することで高抵抗化を起こすモードであり、前述のAモードに対応する。
図12(b)から分かるように、この場合はほとんど抵抗値の変化は観測されておらず、抵抗値は30Ω程度で一定の値になっている。
ここで図11(a)の上下の電極をPtで形成した素子Bの結果と図12(a)の結果を比較すると、Wを電極に使用した時、明らかに抵抗変化が起こりにくくなっているのが分かる。
素子Bの測定結果である図11(a)では、低抵抗状態の抵抗値は150Ω、高抵抗状態の抵抗値は約1000Ωと、比率にして7倍程度の変化をしているのに対し、Wを電極材料に使用した素子Cの測定結果である図12(a)では、大きく抵抗変化している範囲でも、高々、50Ωと100Ωの間で抵抗変化が起こっているだけであり、比率としては、2倍程度の変化をしているだけである。
印加している電圧も、図11(a)の測定時は、+3.0Vと−1.5Vであるのに対し、図12(a)では、+7Vと−5Vと非常に高い電圧を印加しているのも関わらず、ほとんど抵抗変化が見られていない。
以上のように、Wを電極に使用した場合、電極にPtを使用した場合に比べて、明らかに抵抗変化が起こりにくい事がわかる。
以上の結果は、酸素不足型のTa酸化物を抵抗変化層に用いた抵抗変化素子の動作は、使用する電極の材料に非常に強く依存する事を意味している。すなわち、少なくとも、Ptを電極に用いた場合は抵抗変化が起こりやすく、Wを電極に用いた場合、抵抗変化は起こりにくいのは明らかである。
また、詳しくは説明しないが、TaやTaNを上下の電極に用いた抵抗変化素子も作製し、抵抗変化特性の測定を行った。
図13(a)、図13(b)は下部電極503と上部電極505のいずれにも、Taを用いた素子Dの抵抗変化特性である。
図13(a)は、上部電極505に+7Vと−5Vの電気パルスを加えた場合で、図13(b)は上部電極505に+5Vと−7Vの電気パルスを加えた場合の測定結果である。いずれの場合も、ほとんど抵抗変化は起こっていない。
また、図14(a)は下部電極503と上部電極505のいずれにも、TaNを用いた素子Eの抵抗変化特性である。図14(a)は、上部電極505に+7Vと−5Vの電気パルスを加えた場合で、図14(b)は上部電極505に+5Vと−7Vの電気パルスを加えた場合の測定結果である。この場合も、ほとんど変化していないと言って良い程度の抵抗変化しか起こっていない。
以上のように、W以外にも抵抗変化が起こりにくい材料は存在する。
[WとPtを電極に用いた抵抗変化素子の抵抗変化特性]
次に抵抗変化を起こしやすい材料であるPtと、抵抗変化を起こしにくい材料でかつ、プロセス安定性の高い材料であるWで酸素不足型のTa酸化物を挟み込んだ形の抵抗変化素子である素子Fの抵抗変化特性について述べる。
用意した素子は、下部電極503としてW薄膜を用い、上部電極505としてPt薄膜を用いて作製した。W薄膜とPt薄膜は、それぞれ、WターゲットとPtターゲットをArガス中でスパッタリングする事で堆積した。
以上のようにして作製した素子Fの電気パルスによる抵抗変化の様子を図15(a)、図15(b)に示す。
図15(a)は、上部電極505の近傍での抵抗変化を起こさせる(Bモード)事を目的に、下部電極503を基準にして上部電極505に+2.5Vと、−1.5Vを交互に印加した時の抵抗値の変化である。この場合、抵抗値は、+2.5Vの電気パルスを印加した時には約600Ωとなり、−1.5Vの電気パルスを印加した時に60Ωとなって安定して変化している。
一方で、下部電極503の近傍での抵抗変化を起こさせる(Aモード)事を目的に、下部電極503を基準にして上部電極505に+1.5Vと、−2.5Vを交互に印加した時の抵抗値の変化を図15(b)に示す。この場合は、抵抗変化は、60Ωと100Ωの間で抵抗変化が起こっているだけであり、Bモードの抵抗変化を起こさせるための電圧印加と比較して、無視できる程度の抵抗変化しか起こっていない。
以上の図15(a)、図15(b)の結果から、素子Fは、片側の電極近傍だけで抵抗変化を起こすバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子の理想的な動作を示している。
また、AモードとBモードの混ざりあいのような現象もみられなかった。
例えば、図16は、図15(a)、図15(b)の測定結果を得た素子Fとは別の素子(同一基板上の異なる素子)に1000回程度電気パルスを加えた結果を示しているが、抵抗変化現象が非常に安定して発生しているのが見て取れる。
以上の事から、抵抗変化現象を起こしやすい電極と、抵抗変化現象を起こしにくい電極で抵抗変化膜を挟んだ構造を形成する事で、意図した片側の電極側で抵抗変化させることができるため安定動作し、望ましいバイポーラ動作を示す抵抗変化型の不揮発性記憶素子が作製可能である事が分かった。
また、印加電圧と抵抗値の関係は、抵抗変化を起こしやすい電極に正の電圧の電気パルスを印加した時に、抵抗値が高くなり、負の電圧の電気パルスを印加した時に抵抗値が低くなるような動作を示す。
[上下の電極材料種に応じた抵抗変化素子の抵抗変化特性]
次に、電極材料が相異なるいくつかの素子について抵抗変化の起こりやすさを評価した第2の実験の結果を示す。
本実験の結果として、下部電極503をWに固定し、上部電極505をPt以外の相異なる材料で構成した複数の素子の抵抗変化の様子について述べる。ここで下部電極503をWに固定したのは、Wが比較的酸化されにくく、安定した材料であり、加工も比較的容易である事による。
なお、素子の作製方法は、第1の実験で説明した方法と同様であり、下部電極503、上部電極505は全てスパッタリング法によって形成した。また、抵抗変化材料である酸素不足型のTa酸化物もTa金属をO2とAr中でスパッタリングして作製した。
電極の違いに応じた抵抗変化の特性を調べるため、酸素不足型のTa酸化物の組成は全て同じに設定した。すなわち、酸素含有率を約58at%の酸素不足型のTa酸化物(TaOxと表現した時、xは1.38)に固定した。
また、本実験では、下部電極503を動作しにくいWとしたので、抵抗値の変化がほとんど生じないAモード(上部電極に対し、下部電極に高い電圧を加えた時に高抵抗化するモード)の結果は省略し、Bモード(下部電極に対し、上部電極に高い電圧を加えた時に高抵抗化するモード)の結果のみを示す。Bモードで抵抗変化させた時の電気パルスの電圧は、素子によって若干の違いはあるが、下部電極を電圧の基準として、高抵抗化させる時の電圧は+1.8〜+2.0Vとし、低抵抗化させる時の電圧は−1.3〜−1.6Vとした。
図17(a)〜図17(h)に測定結果をまとめる。
まず、図17(a)の上部電極にIrを用いた素子G、図17(b)の上部電極にAgを用いた素子H、図17(c)の上部電極にCuを用いた素子Iの結果を見ると、比較的安定して、大きな幅で抵抗変化が生じているのが分かる。次に、図17(d)の上部電極にNiを用いた素子J、図17(h)の上部電極にTaNを用いた素子Nでは、若干の抵抗変化が見られたがその変化幅が小さい。
次に、図17(e)の上部電極にTaを用いた素子K、図17(f)の上部電極にTiを用いた素子L、図17(g)が上部電極にAlを用いた素子Mでは、全く抵抗変化現象は観測されなかった。これらの材料は、本質的に抵抗変化が生じにくい性質を持っていると考えられる。
以上の結果から分かる事は、酸素不足型のTa酸化物を用いた不揮発性記憶素子では、抵抗変化現象が生じやすい(動作しやすい)材料と、生じにくい(動作しにくい)材料が存在すると言う事である。本実験の範囲で言えば、動作しやすい電極はPt、Ir、Ag、Cuであり、動作しにくい電極材料はW、Ni、Ta、Ti、Al、TaNである。
これらの材料の組み合わせで酸素不足型のTa酸化物を挟んだ構造の抵抗変化素子を形成すれば、モードの混ざり合いのない安定した抵抗変化が得られる。但し、図11(a)、図15(b)、図17(d)、図17(h)を参照すると、W、Ni、TaN電極では、微弱ながらも抵抗変化は観測されている。それ故にこれらの材料を一つの電極に用い、例えば、本実験で全く抵抗変化が観測されなかった電極材料であるTa、Ti、Alをもう一つの電極に用いた場合、微弱ながらも安定した抵抗変化が期待できる。
次に、抵抗変化自体の起こるメカニズムと、抵抗変化の起こりやすさの材料依存性について若干の考察を行う。
図18は、第1の実験と第2の実験の結果をまとめたものである。横軸は電極材料、縦軸には標準電極電位をプロットしてある。図18の○は抵抗変化が起こりやすかった事を意味し、△は変化の割合が小さいものの抵抗変化が起こった事を意味し、×は抵抗変化が起こらなかった事を意味する。
図18を見ると、抵抗変化膜の構成元素であるTaよりも標準電極電位が高い材料では抵抗変化が起こっており、低い材料では抵抗変化が起こりにくくなっている事が分かる。そして、標準電極電位の差が大きいほど抵抗変化が起こりやすく、差が小さくなるにつれて、抵抗変化が起こりにくくなっているのが分かる。
一般に標準電極電位は、酸化のされ易さの一つの指標であり、この値が大きければ酸化されにくく、小さければ酸化されやすい事を意味する。この事から酸化のされやすさが抵抗変化現象のメカニズムに大きな役割を果たしているのではないかと推測される。
以上の結果をもとに、抵抗変化のメカニズムを考える。まず。抵抗変化が起こり易い材料(標準電極電位が大きく酸化されにくい材料)によって上部電極が構成されている場合について、図19(a)、図19(b)を使って説明する。
図19(a)のように、下部電極1401と、酸素不足型のTa酸化物層1402と、Taよりも酸化されにくい材料によって構成されている上部電極1403からなる抵抗変化素子に、下部電極1401に対して高い電圧を上部電極1403に印加した場合、酸素不足型のTa酸化物中の酸素原子がイオンとなって、電界によって移動し、上部電極1403の界面近傍に集まる。
しかし、上部電極1403を構成する金属はTaに比べて酸化されにくいので、酸素イオン1404は酸素不足型のTa酸化物層1402と上部電極1403の界面に滞留した状態になり、界面付近でTaと結合し、酸素濃度の高い酸素不足型のTa酸化物を形成する。この事によって素子は高抵抗化する。
次に、図19(b)のように、下部電極1401に高い電圧を印加した場合、酸素原子は再び酸素イオンとなって、酸素不足型のTa酸化物層1402の内部に戻ってゆく。これにより、低抵抗化が起っていると考えられる。
次に、Taよりも酸化されやすい材料によって上部電極が構成されている場合について説明した図が図20(a)、図20(b)である。
図20(a)のように下部電極1501と、酸素不足型のTa酸化物層1502と、Taよりも酸化され易い材料によって構成されている上部電極1503からなる抵抗変化素子に、下部電極1501に対して高い電圧を上部電極1503に印加した場合、酸素不足型のTa酸化物中の酸素原子がイオンとなって電界によって移動し、上部電極1503の界面近傍に集まる。
この場合、上部電極1503はTaよりも酸化されやすいので、酸素イオン1504は上部電極1503の内部に吸いとられて、上部電極1503を形成している材料と結合を起こす。この場合、図19(a)とは異なり、酸素不足型のTa酸化物層1502と上部電極1503の界面に高抵抗層が形成されず、さらに上部電極1503を構成する元素の数に対して酸素イオンの数は少ないために、抵抗値はほとんど上昇しない。
逆に、図20(b)のように、下部電極1501に高い電圧を印加した場合、上部電極1503に吸い取られた酸素は、上部電極材との結合がより安定であるため、酸素不足型のTa酸化物層1502の中には戻りにくく、抵抗値は大きくは変化しないと考えられる。
もし、図19(a)、図19(b)および図20(a)、図20(b)において、上部電極を構成する材料の酸化のされやすさがTaと同程度の場合、上記の2つの例の中間的な変化が生じ、微弱な抵抗変化が生じると考えられる。
以上の結果から分かるように、酸素不足型のTa酸化物を抵抗変化膜に使用した不揮発性記憶素子では、上部電極と下部電極とで異なる標準電極電位を有する材料を用いれば良い。
これにより、片側の電極近傍で優勢に抵抗変化が起こって、理想的なバイポーラ型の抵抗変化を実現できる。さらに、抵抗変化モードの混ざり合いも起こらず、安定した抵抗変化動作が可能となる。
より好適には、一方の電極材料には、Taの標準電極電位よりも大きく、かつ差の大きな材料を用い、もう一方の電極材料には、Taの標準電極電位よりも大きく、かつ差の小さな材料を用いればよい。
さらにより好適には、一方の電極材料には、Taの標準電極電位よりも大きな材料を用い、もう一方の電極材料には、Taの標準電極電位よりも小さな材料を用いればよい。
なお、本実験の結果としては記述していないが、金(Au)の標準電極電位は+1.692eVであるので、Taの標準電極電位−0.6eVよりも高い。したがって、抵抗変化膜としてTaを用いた場合に、抵抗変化しやすい電極材料としてAuを用いても、本実験の結果として述べた作用効果が期待できる。
また、TaNが、抵抗変化現象を起こしにくい電極材料の1つとして好適に用いられることが、経験的に分かっている。例えば、上部電極および下部電極に、それぞれTaNおよびPtを用いた抵抗変化素子について、安定した抵抗変化現象を示す良好な実験結果が得られている。
TaNの標準電極電位は、現在のところ特定できていないが、例えば500℃酸素雰囲気中で、TaNは比較的容易に酸化されるのに対し、Ptは酸化されにくいことが知られている。標準電極電位は酸化反応の起こりにくさと関係した物性値で、このことは少なくともPtの標準電極電位がTaNの標準電極電位よりも高いと推測される。
すなわち、電極材料としてTaNを用いても、本実験の結果として述べた作用効果が期待できる。
また、上記のメカニズムからも明らかなように、抵抗変化を起こしやすい電極に正の電圧の電気パルスを印加した時に、抵抗値が高くなり、負の電圧の電気パルスを印加した時に抵抗値が低くなるような動作を示す。
なお、上記の第1の実験及び第2の実験では、抵抗変化膜とした酸素不足型のTa酸化物を用いた例について説明したが、これに限定されるわけではなく、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコン(Zr)、ハフニウム(Hf)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)等の遷移金属の酸素不足型の酸化膜を抵抗変化膜に用いた不揮発性記憶素子にも応用可能である。
なぜならば、遷移金属の酸化膜を抵抗変化膜に使用した不揮発性記憶素子では、上記で説明したように電極に加えられた電界によって酸素原子の移動が起こるはずであるからである。
この場合、その遷移金属材料の標準電極電位を基準にして電極材料を選択すれば、片側で優勢的に動作する不揮発性記憶素子が形成できる。一例としてHfの酸素不足型酸化物を抵抗変化膜として用いた場合について考えると、Hfの標準電極電位は−1.55eVであるので、例えば、片側を標準電極電位が1.18eVのPt、片側を−1.63eVのTiで形成すれば、Ptからなる電極側だけで動作する不揮発性記憶素子が形成可能である。
[第1の実施の形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第1の実施の形態として、上記で説明した抵抗変化素子を用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
[NMOS構成の1T1R不揮発性記憶装置]
図21は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
図21に示すように、本実施の形態に係る不揮発性記憶装置200は、半導体基板上に、メモリ本体部201を備えており、メモリ本体部201は、メモリアレイ202と、行選択回路208、ワード線ドライバWLD、ソース線ドライバSLDからなる行ドライバ207と、列選択回路203と、データの書き込みを行うための書き込み回路206と、読み出し回路215と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路205とを備える。
読み出し回路215は、読み出し時に選択ビット線電圧を書換えが起こるに不十分な読み出し電圧にクランプするためのクランプ回路214と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、高抵抗状態をデータ「1」に、また低抵抗状態をデータ「0」と判定するセンスアンプ204とを直列に接続してなる。
さらには、書き込み用電源211として低抵抗(LR)化用電源212と高抵抗(HR)化用電源213を備え、低抵抗(LR)化用電源212の出力V2は、行ドライバ207に供給され、高抵抗(HR)化用電源213の出力V1は、書き込み回路206に供給されている。
さらに、外部から入力されるアドレス信号を受け取るアドレス入力回路209と、外部から入力されるコントロール信号に基づいて、メモリ本体部201の動作を制御する制御回路210とを備えている。
メモリアレイ202は、半導体基板の上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線WL0、WL1、WL2、・・・および複数のビット線BL0、BL1、BL2、・・・と、これらのワード線WL0、WL1、WL2、・・・、およびビット線BL0、BL1、BL2、・・・の交点に対応してそれぞれ設けられた複数のNMOSトランジスタN11、N12、N13、N21、N22、N23、N31、N32、N33、・・・(以下、「トランジスタN11、N12、・・・」と表す)と、トランジスタN11、N12、・・・と1対1に直列接続された複数の抵抗変化素子R11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33、・・・(以下、「抵抗変化素子R11、R12、・・・」と表す)とを備え、個々がメモリセルM11、M12、M13、M21、M22、M23、M31、M32、M33、・・・(以下、「メモリセルM11、M12、・・・」と表す)を構成している。
図21に示すように、トランジスタN11、N21、N31、・・・のゲートはワード線WL0に接続され、トランジスタN12、N22、N32、・・・のゲートはワード線WL1に接続され、トランジスタN13、N23、N33、・・・のゲートはワード線WL2に接続され、トランジスタN14、N24、N34、・・・のゲートはワード線WL3に接続されている。
また、トランジスタN11、N21、N31、・・・およびトランジスタN12、N22、N32、・・・はソース線SL0に共通に接続され、トランジスタN13、N23、N33、・・・およびトランジスタN14、N24、N34、・・・はソース線SL2に共通に接続されている。
また、抵抗変化素子R11、R12、R13、R14、・・・はビット線BL0に接続され、抵抗変化素子R21、R22、R23、R24、・・・はビット線BL1に接続され、抵抗変化素子R31、R32、R33、R34、・・・はビット線BL2に接続されている。
アドレス入力回路209は、外部回路(図示せず)からアドレス信号を受け取り、このアドレス信号に基づいて行アドレス信号を行選択回路208へ出力するとともに、列アドレス信号を列選択回路203へ出力する。ここで、アドレス信号は、複数のメモリセルM11、M12、・・・のうちの選択される特定のメモリセルのアドレスを示す信号である。
制御回路210は、データの書き込みサイクルにおいては、データ入出力回路205に入力された入力データDinに応じて、書き込み用電圧の印加を指示する書き込み信号を書き込み回路206へ出力する。他方、データの読み出しサイクルにおいて、制御回路210は、読み出し動作を指示する読み出し信号をセンスアンプ204へ出力する。
行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ207より、複数のワード線WL0、WL1、WL2、・・・のうちの何れかに対応するワード線ドライバ回路WLDより、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
また同様に、行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ207より、複数のソース線SL0、SL2、・・・のうちの何れかに対応するソース線ドライバ回路SLDより、その選択されたソース線に対して、所定の電圧を印加する。
また、列選択回路203は、アドレス入力回路209から出力された列アドレス信号を受け取り、この列アドレス信号に応じて、複数のビット線BL0、BL1、BL2、・・・のうちの何れかを選択し、その選択されたビット線に対して、書き込み用電圧または読み出し用電圧を印加する。読み出し用電圧は、クランプ回路214を介して印加される。
書き込み回路206は、制御回路210から出力された書き込み信号を受け取った場合、列選択回路203に対して選択されたビット線に対して書き込み用電圧の印加を指示する信号を出力する。
また、センスアンプ204は、データの読み出しサイクルにおいて、クランプ回路214を介して読み出し電圧(0.5V)を選択ビット線に印加し、読み出し対象となる選択ビット線に流れる電流量を検出し、記憶されているデータを「1」または「0」と判定する。その結果得られた出力データDOは、データ入出力回路205を介して、外部回路へ出力される。
書き込み用電源211は、低抵抗化用のLR化用電源212と高抵抗化用のHR化用電源213より構成され、その出力は各々、行ドライバ207および書き込み回路206に入力されている。
HR化用電源213は、図7の電流−電圧のヒステリシス特性において、C点で示す電圧以上の電圧および電流の供給が可能な電源回路であり、LR化用電源212は、図7の電流−電圧のヒステリシス特性において、D点で示す電圧の絶対値以上の電圧と、電流供給が可能な電源回路である。
図22は、図21におけるC部に対応するメモリセル300の構成(2ビット分の構成)を示す断面図、および抵抗変化素子309の拡大図である。
トランジスタ317、抵抗変化素子309は、各々図21におけるトランジスタN11、N12と抵抗変化素子R11、R12に対応している。
メモリセル300は、半導体基板301上に、第2のN型拡散層領域302a、第1のN型拡散層領域302b、ゲート絶縁膜303a、ゲート電極303b、第1ビア304、第1配線層305、第2ビア306、第2配線層307、第3ビア308、抵抗変化素子309、第4ビア310、第3配線層311を順に形成して構成される。
第4ビア310と接続される第3配線層311がビット線BL0に対応し、トランジスタ317の第2のN型拡散層領域302aに接続された、第1配線層305および第2配線層307が、この図面に垂直に走るソース線SL0に対応している。
半導体基板301の電圧は0Vで、0V電源線(図示なし)より、一般的に知られている構成で供給されている。
図22の拡大部分に示されるように、抵抗変化素子309は、第3ビア308上に下部電極309a、抵抗変化層309b、上部電極309cがサンドイッチ状に形成され、さらには第3配線と接続される第4ビア310につながっている。
ここで、抵抗変化層309bは酸素不足型のTa酸化物よりなり、下部電極309aと上部電極309cは異なる材料で構成され、下部電極309aが抵抗変化を起こしにくい電極材料であるTaNで構成され、ビアを介してトランジスタの第1のN型拡散層領域302bに接続され、上部電極309cは抵抗変化を起こしやすいPt(白金)で構成し、ビアを介して第3配線層311で形成のビット線BL0に接続される構造となっている。
図23は、クランプ回路214の一構成例を示す回路図である。図23において、NMOSトランジスタのゲート電極には、固定電圧(約1V)が入力され、ドレイン端子は、センスアンプ204と接続され、ソース端子は列選択回路203を介してビット線と接続され、基板は、接地電位GNDに接続される。
この時、ドレイン端子から入力された電圧を、固定電圧(約1V)より、NMOSトランジスタのしきい値電圧とNMOSトランジスタによる電圧ドロップを合わせた電圧値分(約0.5V)低い電圧にクランプし、ビット線がクランプ電圧(約0.5V)を超えないように制御する構成となっている。
このように読み出し電圧を制限することにより、読み出し時に誤書換えが起こらないようにしている。
また、クランプ回路214の他の構成例として、図55に記載の構成を取っても良い。
図24は、図55のクランプ回路のインバータ1041をMOSトランジスタで記述したクランプ回路の回路図である。図24において、図55に示す構成と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
NMOSトランジスタNI1のゲート端子とPMOSトランジスタPI1のゲート端子が接続され、インバータの入力端子を構成し、NMOSトランジスタNI1のドレイン端子とPMOSトランジスタPI1のドレイン端子が接続され、インバータの出力端子が構成される。
さらに、NMOSトランジスタNI1のソース端子と基板端子が接地電位GNDに接続され、PMOSトランジスタPI1のソース端子と基板端子が電源電圧VDD端子に接続されるインバータ1041において、インバータの出力端子は、NMOSトランジスタ1040のゲート端子と接続され、インバータの入力端子は、ビット線と接続される。
次に本クランプ回路において、ビット線クランプ電圧を約0.5Vに設定するための設計指針について説明する。
図25は、シミュレーションにおけるインバータ1041の静特性を示す図である。図25において、横軸は、インバータの入力電圧VINであり、縦軸は、インバータの出力電圧VOを表す。
ここでのシミュレーション条件は、電源電圧VDDは、1.8Vであり、PMOSトランジスタPI1のサイズは、ゲート幅0.44μm、ゲート長0.18μm、NMOSトランジスタPI1のサイズは、ゲート長0.18μmで、NMOSトランジスタのゲート幅Wnは、3μm、6μm、40μmと振られており、3つの静特性の右側から順番にゲート幅Wnが、3μm、6μm、40μmの結果となっている。
ここで、NMOSトランジスタ1040の飽和電流Idを式で表すと、Id=β/2×(VO−VIN−Vt)2となる。但し、βは、トランジスタ固有の定数で、Vtは、NMOSトランジスタ1040のしきい値電圧を表す。ここで、デバイス定数として、β/2=8200μA/V2、Vt=0.3V、及び、設計定数として、Id=82μAを代入して、式を変形すると、VO=VIN+0.4Vの関係式1を得る。この関係式1を図25にプロットすると、この関係式1と静特性の交点が、このクランプ回路214の動作点になる。
今、ビット線クランプ電圧を最適な約0.5Vに設定したいため、NMOSトランジスタNI1のゲート幅Wnは、6μmの設計を行うことになる。このように設計を行えば、ビット線クランプ電圧を約0.5Vに設定可能となる。
[抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作]
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、データを書き込む場合の書き込みサイクル、およびデータを読み出す場合の読み出しサイクルにおける動作例について、図26(a)〜図26(c)に示すタイミングチャート、図21の本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成図、図22の本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置のメモリセル部の構成の一例を示す断面図、および図7のヒステリシス特性における読み出しディスターブ電圧を説明する図を参照しながら説明する。
図26(a)〜図26(c)は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、抵抗変化層が高抵抗状態の場合をデータ「1」に、低抵抗状態の場合をデータ「0」にそれぞれ割り当てると定義して、その動作例を示す。また、説明は、メモリセルM11についてデータの書き込みおよび読み出しをする場合のみについて示す。
また、図26(a)において、V2は、LR化用電源212で発生されている電圧で、図7に示す電圧−電流ヒステリシス特性のD点を負側に超える電圧が、抵抗変化素子R11、R12、・・・に実効的に印加されるように調整された電圧値に対応している。
図26(b)において、V1は、HR化用電源213で発生されている電圧で、図7に示す電圧−電流ヒステリシス特性のC点を超える電圧が、抵抗変化素子R11、R12、・・・に実効的に印加されるように調整された電圧値に対応している。
図26(c)において、Vreadは、センスアンプ204で発生された電圧をクランプ回路でクランプした読み出し用電圧で、図7に示す電圧−電流ヒステリシス特性のE点における低抵抗状態ディスターブ境界電圧(〜0.8V)以下に調整された電圧値(0.5V)に対応している。
また、図26(a)〜図26(c)において、VDDは不揮発性記憶装置200に供給される電源電圧に対応している。
図26(a)に示すメモリセルM11に対するデータ「0」書き込みサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧V2に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VDDに設定し、図21の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。この段階では、図22のトランジスタ317の第2のN型拡散層領域302aと、第1のN型拡散層領域302bはともに電圧V2が印加されているので、電流は流れない。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧0Vに設定し、所定期間後、再度電圧V2となるパルス波形を印加する。この段階で、図22の抵抗変化素子309には下部電極309aを基準にして上部電極309cに、図7の電圧―電流ヒステリシス特性のD点を負側に超える電圧、電流が印加され、高抵抗値から低抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、トランジスタ317をオフして、データ「0」の書き込みが完了する。
図26(b)に示すメモリセルM11に対するデータ「1」書き込みサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VDDに設定し、図21の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧V1に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形を印加する。この段階で、図22の抵抗変化素子309には下部電極309aを基準にして上部電極309cに、図7の電圧―電流ヒステリシス特性のC点を超える電圧、電流が印加され、低抵抗値から高抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「1」の書き込みが完了する。
図27は、図22の抵抗変化素子309を含む実際のメモリセル300の電圧−電流特性を、抵抗変化素子309が高抵抗状態(HR)および低抵抗状態(LR)にある場合について示している。図27の横軸はセル端子間電圧を表し、縦軸はセル電流を表す。
図27に示される特性は、抵抗変化層309bが酸素不足型のTa酸化物よりなり、下部電極309aが抵抗変化を起こしにくい電極材料であるTaNで構成され、上部電極309cが抵抗変化を起こしやすい電極材料であるPt(白金)で構成された抵抗変化素子309を含む実際のメモリセル300の測定結果を表し、図27の横軸の負領域および正領域の特性は、それぞれ図4(a)および図4(b)に示されるバイアス印加による測定結果に対応する。
図28(a)、図28(b)は、実際の抵抗変化素子309の読み出しディスターブ特性図である。図28(a)、図28(b)における横軸、縦軸及び抵抗値測定法については、図6(a)、図6(b)について説明した方法と同一のため、ここでは、詳しい説明は省略する。
図28(a)は、高抵抗状態抵抗値(約90kΩ)及び低抵抗状態抵抗値(約8kΩ)の負極性バイアス電圧依存を表し、|VM|が1V以下の範囲において、低抵抗状態はほとんど変化せず、一方、高抵抗状態は、VM=−0.5V印加までは、高抵抗状態(約90kΩ)を保持していたが、VM=−0.6Vを印加すると、急激に抵抗値が減少(約39kΩ)した。これは、高抵抗状態の低抵抗化電圧(〜−1.0V)に近付いたことから、高抵抗状態が低抵抗化したためである。
このことから、負極性バイアス印加時における読み出し電圧は、絶対値が0.5V以下にしなければならない。ここで、この境界電圧(−0.5V)を高抵抗状態ディスターブ境界電圧と呼ぶことにする。
図28(b)は、高抵抗状態抵抗値(約190kΩ)及び低抵抗状態抵抗値(約8kΩ)の正極性バイアス電圧依存を表し、VMが1V以下の範囲において、高抵抗状態はほとんど変化せず、一方、低抵抗状態は、VM=+0.7V印加までは、低抵抗状態(約8kΩ)を保持していたが、VM=+0.8Vを印加すると、急激に抵抗値が増加(約15kΩ)した。これは、低抵抗状態の高抵抗化電圧(〜1.3V)に近付いたことから、低抵抗状態が高抵抗化したためである。
このことから、正極性バイアス印加時における読み出し電圧は、+0.7V以下にしなければならない。ここで、この境界電圧(+0.7V)を低抵抗状態ディスターブ境界電圧と呼ぶことにする。
図26(c)に示すメモリセルM11に対するデータの読み出しサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VDDに設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、クランプ回路214により供給される読み出し電圧Vreadを正極性バイアス印加方向の低抵抗状態ディスターブ境界電圧(+0.7V)以下の+0.5Vに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、記憶されているデータをデータ「0」またはデータ「1」と判定する。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データの読み出し動作を完了する。
[1T1R型メモリセルの特性]
図21の第1の実施の形態における1T1R型メモリセルM11、M12、・・・について、特にNMOSトランジスタN11、N12・・・の構成について説明する。
本実施の形態に従うと、図22の拡大部分に示すように、抵抗変化素子309は、上部電極309c側に抵抗変化層309bが抵抗変化をしやすい電極が使用されており、下部電極309aに対し上部電極309cに正電圧を印加で、この界面近傍で抵抗変化層の酸化現象が進行して高抵抗状態に変化し、逆方向の電圧で同じ界面近傍で還元現象が進行し低抵抗状態に変化すると考えられ、電圧印加方向に対する抵抗変化の状態が一通りに限定できる。
図29は、メモリセルの両端に2.2Vを印加したとき、実効的に抵抗変化素子に印加される電圧を抵抗変化素子の抵抗値との関係で示している。
印加方向1は図21において、ビット線BL0、BL1、・・・に所定の正電圧を、ソース線SL0、SL1・・・に0Vを印加したとき、すなわち、下部電極309aに対し上部電極309cに正の電圧を印加したときの特性である。
また、印加方向2は図21において、ビット線BL0、BL1、・・・に0Vを、ソース線SL0、SL1・・・に所定の正電圧を、すなわち、下部電極309aに対し上部電極309cに負の電圧を印加したとき印加したときの特性を示している。
例えば、素子抵抗値が1000Ωの時、印加方向1の場合は、抵抗変化素子には約2.1Vが印加できることを示しており、電流値としては、2.1V÷1000Ω=2.1mAが駆動できることを示している。また印加方向2の場合は、抵抗変化素子には約1.25Vが印加できることを示しており、電流値としては、1.25V÷1000Ω=1.25mAが駆動できることを示している。
このことから、NMOSトランジスタの基板バイアス効果の影響が少ない印加方向1が、印加方向2の場合に比べ、この場合であれば約1.7倍大きな電流が駆動できることがわかる。
上記で説明したように、本実施の形態の抵抗変化型不揮発性記憶装置では、抵抗変化を起こしやすい電極材料で上部電極を形成し、抵抗変化を起こしにくい電極材料で下部電極を形成してなる抵抗変化素子を用いるので、各メモリセルにおいて、1つの方向の抵抗変化(低抵抗化または高抵抗化)を安定的に生ぜしめる電圧印加方向(駆動極性)が一義的に決まる。
そして、この下部電極側とメモリセルを構成するNMOSトランジスタのソースまたはドレインを接続するので、より大きな電流が必要な低抵抗から高抵抗への抵抗変化を、印加方向1に確実に一致させることができ、印加方向2になる場合を想定する必要がなく、最適なトランジスタ寸法でメモリセルを設計することができる。
このことは、電流駆動能力に余裕があれば、特にHR化電源電圧V1を、より低電圧化できることでもあり、低電圧化や低消費電力化にも有効である。
さらに、抵抗変化膜がBモードの抵抗変化特性に確実に限定されるため、読み出しディスターブ耐性が強い正極性バイアス印加側で読み出し動作を行うことができる。従って、読み出し電圧を高く設定できるため、読み出しセル電流を大きく取ることができ、高速読み出しが可能となる。
さらには、駆動極性が一義的に決まることで、抵抗変化特性のモードを識別する情報を管理する必要がなく、単純で安価な回路構成にできる。
また、Pt(白金)の様な高価な電極材料を使用する場合、一方の電極材料だけの適用ですむので、製造コストの低減にも有効となる。
[その他の1T1R型メモリセルの構成例]
図30(a)、図30(b)は、実施の形態で説明した1T1R型メモリセルを含め、一般的に知られている抵抗変化素子に用いられている、1T1R型メモリセルの回路構成を示す回路図である。
図30(a)は、実施の形態で説明したNMOSトランジスタを使用した構成を示す。
図30(b)は、NMOSトランジスタを使用した図30(a)の構成に対し、PMOSトランジスタを使用した構成を示す。この場合、PMOSトランジスタの基板電圧は、電源電圧VDDなどの高電位が供給される。また、メモリセルはワード線をロウレベルにすることで選択される点が異なるが、その他の制御方法は図30(a)のNMOSトランジスタで構成した場合と同じである。
図31(a)、図31(b)は、それぞれ図30(a)、図30(b)の回路を実現するための、抵抗変化素子とトランジスタの本発明に係る接続関係を示す図である。
ここで、抵抗変化層309eは抵抗変化層309bと同じく酸素不足型のTa酸化物よりなり、下部電極309dは上部電極309cの構成材料と同じく抵抗変化を起こしやすいPt(白金)で構成され、上部電極309fは下部電極309aと同じく抵抗変化を起こしにくい電極材料であるTaNで構成される。
図31(a)は、図22(a)に示される構成と同一であるので、説明は省略する。
図31(b)は、図31(a)の場合とは反対に、抵抗変化を起こしにくい電極材用で構成された上部電極309fがソース線に接続され、抵抗変化を起こしやすい電極材料で構成された下部電極309dが、PMOSトランジスタを介してビット線に接続される。この場合も図31(a)の場合と同様、ソース線とワード線は同方向に配線され、ビット線はこれらに垂直方向に配線される。
図32は、PMOSトランジスタで構成される図31(b)の1T1R型のメモリセル400を、不揮発性記憶装置に適用した場合に、図21におけるC部(2ビット分)に対応する断面図、および抵抗変化素子409の拡大図である。なお、図22に示されるメモリセル300と共通する部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
メモリセル400は、半導体基板301上に、Nウェル418、第2のP型拡散層領域402a、第1のP型拡散層領域402b、ゲート絶縁膜303a、ゲート電極303b、第1ビア304、第1配線層305、第4ビア410、抵抗変化素子409、第5ビア411、第2ビア306、第2配線層307、第3ビア308、第3配線層311を順に形成して構成される。
ここで、トランジスタ417の第2のP型拡散層領域402aに接続された第3配線層311がビット線BLに対応し、トランジスタ417の第1のP型拡散層領域402bに抵抗変化素子409を介して接続された、第2配線層307が、この図面に垂直に走るソース線SLに対応している。Nウェルには、図21のこの不揮発性記憶装置200の電源電圧VDDが、VDD電源線(図示なし)より、一般的に知られている構成で供給されている。
図32の拡大部分に示されるように、抵抗変化素子409は、第4ビア410上に下部電極309d、抵抗変化層309e、上部電極309fがサンドイッチ状に形成され、さらには第2配線層307と接続される第5ビア411につながっている。
ここで、PMOSトランジスタで構成した1T1R型メモリセル(図31(b))の場合、NMOSトランジスタで構成した1T1R型メモリセル(図31(a))の場合とは逆に、トランジスタ417の第1のP型拡散層領域402bと接続される下部電極309dを、抵抗変化を起こしやすい電極材料であるPt(白金)で構成し、上部電極309fを、抵抗変化を起こしにくい電極材料であるTaNで構成している。
これは、基板バイアス効果の影響が少なく、電流駆動能力が大きく取れるトランジスタ417の駆動方向は、第2のP型拡散層領域402aをソースとし、このソース電位は、このPMOSトランジスタの基板電圧となるNウェル418の電圧(VDD)に近くなる方向、すなわち、下部電極309dをハイレベルとし、上部電極309fをロウレベルにする方向である。
この電圧印加方向に、より大きな電流が必要な低抵抗状態から高抵抗状態の抵抗変化方向を一致させるには、下部電極309dを抵抗変化を起こしやすい電極材料で構成し、反対に上部電極309fを抵抗変化を起こしにくい電極材料で構成することであり、上部電極309fに対し下部電極309dに正の電圧が印加され、このとき、下部電極309dの界面近傍で抵抗変化層の酸化現象が進行し高抵抗状態に変化できる。
つまり、上部電極309fに対し下部電極309dに正の電圧が印加される負極性バイアス印加で書換え時に低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する抵抗変化特性(Aモード)に確実に限定されるため、読み出しディスターブ耐性が強い、つまり、高抵抗化が起こる方の負極性バイアス印加側で読み出し動作を行うことができる。
なお、一般的には1T1R型メモリセルには、NMOSトランジスタが使用される場合が多いが、PMOSトランジスタでメモリセルを形成する場合として、次のような場合が考えられる。
例えば、選択するメモリセルにおいて、より大きなトランジスタの駆動電流を得る目的で、メモリセルのトランジスタの閾値電圧だけを低く設定することがある。この場合、選択メモリセルが属するビット線に接続される、選択メモリセル以外の非選択メモリセルへのリーク電流も増大する。その結果、読み出し特性が低下することが考えられる。
選択メモリセルの駆動電流を維持したままリーク電流増大を回避する一つの方法として、半導体基板301の領域をいくつかのブロックに電気的に分離した構造とし、選択メモリセルが属するブロック以外のトランジスタについてその閾値電圧が高くなるように、そのブロックの基板電圧を変えてそのリーク電流を低減する方法が考えられる。
一般的に、多くのCMOS型半導体装置において、半導体基板301にはP型シリコン半導体が用いられている。従って、このような構成を実施しようとすると、メモリセルのトランジスタをNMOSトランジスタで構成する場合、例えばトリプルウェル構造として知られているウェル構造を採用して、基板領域をいくつかのブロックに電気的に分離する必要がある。その場合、新たな製造工程の追加が必要になり、コスト増大につながる。
これに対し、メモリセルのトランジスタをPMOSトランジスタで構成する場合、Nウェル418を所望の単位でレイアウト設計してブロック化すればよいだけなので、製造工程の追加を伴わずブロックごとの分離が実施できる優位点が考えられる。
また、図22および図32の断面図は、それぞれ図31(a)、図31(b)に対応して示している。
表2は、図31(a)、図31(b)に対応するメモリセル構造に関して、その各々について、抵抗素子に低抵抗化書き込みを行う場合と、高抵抗化書き込みを行う場合の、ビット線とソース線の制御方法を示すものである。
各メモリセルにおいて、1つの方向の抵抗変化(低抵抗化または高抵抗化)を安定的に生ぜしめる電圧印加方向(駆動電圧極性)は、表2に従って一義的に決まるので、抵抗変化特性のモードを識別する情報を管理する必要がなく、回路構成が単純化できる。
なお、本実施の形態において、抵抗変化を起こしやすい電極材料としてPtを用いたが、他にIr、Pd、Ag、Cuを用いてもよい。
同様に、抵抗変化を起こしにくい電極材料としてTaNを適用したが、他にW、Ni、Ta、Ti、Alを適用しても良い。
ここまで、本発明の実施の形態として、異種材料からなる上下電極でタンタル酸化物からなる抵抗変化層を挟んでなる抵抗変化素子を用いた不揮発性記憶装置について説明した。
この不揮発性記憶装置は、抵抗変化素子が有している、抵抗変化のモード(つまり所定の抵抗変化を生じる電圧印加極性)を一義的に決めることができる特徴を利用して、抵抗変化素子と読み出し回路とを好適に接続することによって、抵抗変化素子の抵抗の状態を読み出す場合に、確実に、より大きなディスターブ耐性があるバイアス極性でより高い電圧を印加する。その結果、読み出しセル電流を大きく取ることが可能となり、読み出し速度の向上に寄与できる。
同様の効果が得られる不揮発性記憶装置は、実施の形態の抵抗変化素子に限らず、抵抗変化のモードが一義的に決まる特徴を有する他の抵抗変化素子を用いて構成することができる。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態として、抵抗変化のモード(つまり所定の抵抗変化を生じる電圧印加極性)を一義的に決めることができる特徴を有する他の抵抗変化素子を用いて構成した不揮発性記憶装置について説明する。
第2の実施の形態で用いる抵抗変化素子は、第1の実施の形態の抵抗変化素子と比べて、上下の電極で、酸素不足型のタンタル酸化物からなる抵抗変化層を挟んで構成される点で共通しているが、抵抗変化層の一方の電極に接した領域に、他の領域に比べて酸素含有率が高いタンタル酸化物層を設ける点で異なっている。また、第2の実施の形態における抵抗変化素子では、上下の電極の材料は、同種でもよく、異種であってもよい。
この抵抗変化素子もまた、可逆的に安定した書き換え特性を有する、抵抗変化現象を利用した不揮発性記憶素子を得ることを目的として本願発明者らにより発明されたものであり、関連特許である特願2007−149032号で詳細に説明されている。
以下では説明のために、前記関連特許出願の内容の一部を引用する。
[第2の実施の形態における抵抗変化素子]
まず、第2の実施の形態にかかる抵抗変化型の不揮発性記憶素子に関する第3の実験について説明する。
[抵抗変化素子の構成]
図33は、第3の実験に係る抵抗変化素子の一構成例を示した断面図である。
図33に示すように、本実験で用いた抵抗変化素子100は、基板101と、その基板101上に形成された酸化物層102と、その酸化物層102上に形成された下部電極103と、上部電極105と、下部電極103および上部電極105に挟まれた抵抗変化層104とを備えている。
ここで、抵抗変化層104は、酸素含有率が低い第1のタンタル含有層(以下、「第1のタンタル酸化物層」という)104aと、その第1のタンタル酸化物層104a上に形成された酸素含有率が高い第2のタンタル含有層(以下、「第2のタンタル酸化物層」という)104bとで構成されている。
この抵抗変化素子100を駆動する場合、外部の電源によって所定の条件を満たす電圧を下部電極103と上部電極105との間に印加する。電圧印加の方向に従い、抵抗変化素子100の抵抗変化層104の抵抗値が、可逆的に増加または減少する。例えば、所定の閾値電圧よりも大きなパルス電圧が印加された場合、抵抗変化層104の抵抗値が増加または減少する一方で、その閾値電圧よりも小さなパルス電圧が印加された場合、抵抗変化層104の抵抗値は変化しない。
下部電極103および上部電極105の材料としては、例えば、Pt(白金)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Cu(銅)などがある。
なお、基板101としては、シリコン単結晶基板または半導体基板を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。抵抗変化層104は比較的低い基板温度で形成することが可能であるため、樹脂材料などの上に抵抗変化層104を形成することができる。
[抵抗変化素子の製造方法]
次に、図34(a)〜図34(c)を参照しながら、本実験で用いた抵抗変化素子100の製造方法について説明する。
まず、図34(a)に示したように、単結晶シリコンである基板101上に、厚さ200nmの酸化物層102を熱酸化法により形成する。そして、下部電極103としての厚さ100nmのPt薄膜を、スパッタリング法により酸化物層102上に形成する。その後、下部電極103上に、第1のタンタル酸化物層104aを、Taターゲットを用いた反応性スパッタリング法で形成する。
次に、図34(b)のように、第1のタンタル酸化物層104aの最表面を酸化してその表面を改質する。これにより、第1のタンタル酸化物層104aの表面に、当該第1のタンタル酸化物層104aよりも酸素含有率の高い第2のタンタル酸化物層104bが形成される。これら第1のタンタル酸化物層104aと第2のタンタル酸化物層104bとが積層された積層構造により抵抗変化層104が構成される。
その後、第2のタンタル酸化物層104b上に、上部電極105としての厚さ150nmのPt薄膜をスパッタリング法により形成する。
最後に、フォトレジスト工程によって、フォトレジストによるパターン106を形成し、図34(c)のように、ドライエッチングによって、素子領域107を形成する。
上述した製造方法にしたがって、素子O〜素子Qを作製した。以下、詳細について説明する。
まず、上述したようにして、基板101、酸化物層102及び、Ptからなる下部電極103の積層構造を形成した。その後、下部電極103上に、第1のタンタル酸化物層104aを、Taターゲットをアルゴンガスと酸素ガス中でスパッタリングするいわゆる反応性スパッタリングで形成した。
このときの成膜条件は、スパッタリングを開始する前のスパッタリング装置内の真空度(背圧)が7×10-4Pa程度であり、スパッタ時のパワーは250W、アルゴンガスと酸素ガスとをあわせた全ガス圧力は3.3Pa、酸素ガスの流量比は3.4%、基板の設定温度は30℃、成膜時間は7分とした。これにより、酸素含有率が約58at%、すなわち、TaO1.4と表すことができる第1のタンタル酸化物層104aが30nm堆積された。
素子O〜素子Qの製造時には、第1のタンタル酸化物層104a及び第2のタンタル酸化物層104bの形成と、上部電極105の形成とは、スパッタリング装置内で連続的に行った。すなわち、第1のタンタル酸化物層104aを堆積した後、ガス圧力の条件およびパワー等のスパッタリングの条件はそのままにして、Taターゲットとそれに対向して設置されている基板101との間にシャッターを挿入し、その状態を所定時間保持した。
これにより、第1のタンタル酸化物層104aの最表面が酸素プラズマによって酸化された。その結果、第1のタンタル酸化物層104aの表面に、当該第1のタンタル酸化物層104aよりも酸素含有率の高い第2のタンタル酸化物層104bが形成された。
その後、上述したようにして、第2のタンタル酸化物層104b上に、Ptから成る上部電極105を形成した。
その後、フォトレジスト工程によって、素子領域107を形成した。なお、素子O〜素子Qの素子領域107は、直径が3μmの円形パターンとした。
本実験においては、上記の酸素プラズマによる酸化処理時間(酸素プラズマ暴露時間)を変化させることにより、素子O〜素子Qを作製している。作製した各素子の初期抵抗値と、X線反射率測定(後述する)から求めた第1のタンタル酸化物層(TaOx層)の膜厚および酸素含有量xおよび第2のタンタル酸化物層(TaOy層)の膜厚および酸素含有量yを表3にまとめる。
なお、素子Oの酸素プラズマ暴露時間が0分となっているのは、第1のタンタル酸化物層104aの堆積後、酸素プラズマに暴露せず、直ちに上部電極105としてPtを堆積したことを意味している。
以下では、このようにして作製された抵抗変化素子の特性等について説明する。
[抵抗変化層の初期抵抗]
まず、素子O〜素子Qの抵抗変化層104の初期抵抗を測定し、その結果について検討する。ここでは、各素子における下部電極103と上部電極105との間に、閾値電圧(例えば、1V程度)よりも低い50mVの微弱な電圧を印加し、流れる電流を測定して各実施例の抵抗変化層104の初期の抵抗率を求めた。
表3を参照すると、素子O(酸素プラズマ暴露時間0分)では1.7Ω、素子P(同0.5分)では650Ω、素子Qでは1890Ωとなっており、酸化プラズマ暴露時間が長くなるにしたがって抵抗変化層104の初期の抵抗値が上昇しているのが分かる。
これは、酸素プラズマ処理によって形成された第2のタンタル酸化物層104bに起因すると考えられる。
[抵抗変化特性]
次に、素子O〜素子Qに対して電気的パルスを印加して、抵抗変化を起こさせたときの特性について説明する。
図35(a)〜図35(c)は、第3の実験に係る不揮発性記憶素子が備える抵抗変化層の抵抗値と印加した電気的パルスとの関係を示す図であり、それぞれ素子O〜素子Qにおける結果を示している。ここでは、下部電極103と上部電極105との間に、パルス幅が100nsecで、下部電極103に対して上部電極105に負電圧−2.0V、正電圧3.0Vの2種類の電気的パルスを交互に繰り返し印加した場合の抵抗変化層104の抵抗値を測定した。
まず、酸素プラズマを0.5分照射して得られた素子Pの抵抗変化特性を示す図35(b)を見ると、測定直後の初期状態の試料に負電圧−2.0Vの電気的パルスを加えると、抵抗値が650Ωから約50Ωに低下しているのが分かる。その後、正電圧3.0Vの電気的パルスで抵抗値が5000Ωに増加しており、その後、50Ωと5000Ωの間で、非常に安定した、図3(b)に示した特性と同様のBモードの可逆的抵抗変化が起こっていることを確認することができる。
また、図35(c)から分かるように、酸素プラズマを1分間照射して得られた素子Qでも測定した範囲内で安定的に可逆的抵抗変化が起こっており、初期抵抗が1890Ωであった素子に、−2Vの電気的パルスを加えると抵抗値が約200Ωに減少し、次に+3Vの電気的パルスを加えると抵抗値が2000Ωに増加している。この場合も安定なBモードの抵抗変化が起こっている。
さらに、素子Pおよび素子Qでは図3(a)に示した特性と同様のAモードの可逆的抵抗変化は観測されず、Bモードのみの抵抗変化を示すことが確認された。
しかしながら、素子Oの抵抗変化特性を示す図35(a)を見ると、−2.0V及び3.0Vの2種類の電気的パルスを加えても、抵抗変化が起こっていないことが分かる。素子Oは、酸素プラズマ暴露時間が0分、すなわち、第1のタンタル酸化物層104aを堆積直後に上部電極105を堆積して作製しており、第2のタンタル酸化物層104bが存在しないか、したとしても非常に薄い状態であると考えられる。
これらの結果から、第2のタンタル酸化物層104bの膜厚の増加により、抵抗変化を可能とするとともに、Bモードの可逆的な抵抗変化を確認することができる。
以下では、これらの実験における抵抗変化層104をより詳しく調べた結果について述べる。
[抵抗変化層の解析]
本実験における抵抗変化層104の構造を解析するため、単結晶シリコン基板上に厚さ200nmの酸化物層が形成された基板上に、素子O〜素子Qと全く同じ条件で、タンタル酸化物を堆積して、酸素プラズマの照射処理まで行ったサンプルをそれぞれ用意した。
これらのサンプルを、それぞれサンプルO、サンプルP、サンプルQと表記する。それぞれのサンプルの酸素プラズマ暴露時間と、後述の分析結果をまとめた結果を表3に示す。なお、サンプルO〜サンプルQの上には、上部電極105に相当するPtは堆積されていないため、抵抗変化層が露出された状態となっている。
図36は、サンプルPのX線回折スペクトルを示すグラフである。ここでは薄膜のX線回折スペクトル測定であるので、X線のサンプル表面との角度を1°に固定し、入射したX線の延長線からディテクタまでの角度(2θ)を変化させ、回折スペクトル強度を測定した。
図36を参照すると、2θが36deg.付近においてピークが観測されていることから、サンプルPにおいてタンタル酸化物が形成されていることが分かる。また、このピークは30〜40deg.に及ぶような幅広いピークであることから、結晶の状態としては、アモルファスであると考えられる。なお、2θが56deg.におけるピークは、シリコン基板に起因するものである。
なお、サンプルO及びCについてもサンプルPの場合と同様のスペクトルが得られため、いずれのサンプルでも、アモルファスのタンタル酸化物を主成分とする抵抗変化層が形成されていることが分かった。但し、X線回折測定では、いずれも非常に類似したスペクトルが得られ、酸素プラズマ暴露時間の依存性は観測されなかった。
上述のように、本実験で用いたサンプルに対してはX線回折測定の測定感度はそれほど高くない。つまり、サンプルO〜サンプルQにおける抵抗変化層は、非常に薄く(膜厚30nm)、上述のようにアモルファス構造をとっているため、通常のX線回折スペクトルではこれらのタンタル酸化物の詳しい解析は困難である。
そこで、X線反射率法と呼ばれる方法でさらに詳しい解析を行った。これは、X線をサンプルの表面に対して浅い角度で入射させ、反射されたX線の強度を測定する方法である。
そして、このスペクトルに対して適切な構造モデルを仮定してフィッティングを行い、サンプルO〜サンプルQにおける抵抗変化層の膜厚および屈折率を評価する。このとき、フィッティングのパラメータとしては、抵抗変化層の積層構造、各層の膜厚及びδ(=1−屈折率)である。
図37(a)および図37(b)には、まず、一例として、サンプルPのX線反射率測定パターンを示している。なお、図37(a)および図37(b)における横軸は2θを、縦軸はX線の反射率をそれぞれ示している。
また、図37(a)は、実際にサンプルPのX線反射率を測定した際に得られたパターン(破線)と、基板上に単層のタンタル酸化物層が存在していることを仮定してフィッティングを行った結果(実線)とを示しており、図37(b)は、同じく測定した際に得られた反射率パターン(破線)と、基板上に2層のタンタル酸化物層が存在していることを仮定してフィッティングした結果(実線)とを示している。
図37(a)を見ると、測定値とフィッティング結果とは概ね一致しているものの、細かな点で相違が見受けられる。他方、図37(b)を見ると、実測の反射率パターンとフィッティングによって得られた反射率パターンとは、両者の識別が不可能な程、良好に一致している。以上の結果から、サンプルPは、第1及び第2のタンタル酸化物層の2層の異なるタンタル酸化物層から構成されていると考えられる。
この2層の積層構造を仮定してフィッティングしたときのサンプルPの解析結果では、表3に示すように、第1のタンタル酸化物層の膜厚は28.6nmで、δは29.3×10-6であり、第2のタンタル酸化物層の膜厚は約1.43nmで、δは22.3×10-6であるという値が得られた。一般に、金属タンタルのδは39×10-6、Ta2O5のδは22×10-6とされている。これらの値と今回得られた値とを比較すると、第1のタンタル酸化物層は、Taの化学量論的組成からは明らかにずれた、TaO1.43程度の酸素が不足した酸化物であると考えられる。
また、第2のタンタル酸化物層はδの値から組成比を求めると、TaO2.45であり、Ta25(TaO2.5)に近い酸化物である。しかしながら、化学量論的組成からは若干ずれた、酸素不足型の酸化物であると考えられる。
表3を参照すると、サンプルQの場合もほぼ同等の結果が得られている。すなわち、第1のタンタル酸化物層をTaOxと表現した時、29nm程度の膜厚で、xはほぼ1.4程度であり、第2のタンタル酸化物層をTaOyと表現した時、膜厚は1.2nm程度であって、yは約2.3となっている。
また、表3からは、酸素プラズマ暴露時間が0分のサンプルOでも、約1nm程度の第2のタンタル酸化物層が形成されていることが分かる。タンタル酸化物を堆積した、スパッタリング装置内は、背圧が7×10-4Paの高真空の状態に保たれており、装置内でこの酸化層が形成されたとは考えにくい。
従って、この層の大部分は、スパッタリング終了後にスパッタリング装置から取り出して、X線反射率測定までの間に形成されたのではないかと考えられる(実際にはスパッタ装置から取り出して数日後に測定を実施した)。つまり、スパッタリング装置から取り出さずに、上部電極を形成した場合は、第2のタンタル酸化物層は存在しないか、存在しても、1nm以下のわずかであろうと考えられる。
同様の推論から、サンプルP及びサンプルQでも、タンタル酸化物を堆積したスパッタリング装置から取り出した後(X線反射率測定を行うまでの間に)外気に晒され、第2のタンタル酸化物層の膜厚が若干量増加した可能性がある。しかしながら、一般に、酸化の進行は、最初は早く徐々に遅くなる傾向がある事が知られている。
従って、スパッタリング装置内で酸素プラズマに暴露して酸素の含有率の高い第2のタンタル酸化物を形成した場合は、スパッタリング装置外で増加した第2のタンタル酸化物層の割合は小さいと推察される。
この第2のタンタル酸化物層が存在していることは、表3を参照して上述したように、素子P及び素子Qの抵抗変化層104の初期抵抗が、第1のタンタル酸化物層が単層で設けられた場合と比べて非常に高いことと整合する。
すなわち、第2のタンタル酸化物層が存在していないと考えられる素子Oの抵抗値に比べて、素子P及び素子Qの抵抗値は2桁から3桁も高くなっている。これは、素子P及び素子Qにおいて、酸素含有率が高く抵抗が非常に高い第2のタンタル酸化物層104bが、第1のタンタル酸化物層104aと上部電極105との間に存在しているためであると考えられる。
一般に、化学量論的組成を有するTa25は絶縁体と考えられているが、上述したように、第2のタンタル酸化物層はTa25から酸素が欠損しており、絶縁体ではない。なお、本発明における絶縁体の定義は、一般的な定義に従う。すなわち、抵抗率が108Ωcm以上の材料を絶縁体と定義し(出展:「集積回路のための半導体工学」工業調査会(1992年)宇佐美晶、兼房慎二、前川隆雄、友景肇、井上森男)、108Ωcm未満の抵抗値を有する材料を導電体と定義する。
もし、本実施の形態の第2のタンタル酸化物層が絶縁体であって抵抗率が108Ωcmである場合、直径3μm(本実施の形態での素子領域107の直径)の円形で1nmの膜厚(第2のタンタル酸化物層のおよその膜厚)を有しているとすれば、抵抗値は1.4×108Ω程度となるはずである(「抵抗値=抵抗率×膜厚/面積」で計算)。さらに、第2のタンタル酸化物層の膜厚が0.1nmとしても、抵抗値は1.4×107Ωとなる。一方で、素子P及びQでは抵抗値は、表3を参照して、高々103〜104Ω程度であり、絶縁体を仮定した場合に比べて、少なくとも3〜4桁程度は低くなっている。
この計算の結果からも本実施の形態で形成した第2のタンタル酸化物層は、絶縁体ではなく、導電性の酸化物層であることが分かる。
なお、本実施例では、第2のタンタル酸化物層の分析にX線反射率測定法を用いたが、オージェ電子分光分析法(AES)、蛍光X線分析法(XPS)及び電子線マイクロアナリシス法(EPMA:検出の方式によってはWDS、EDS、EDXとも呼ばれる)等の機器分析手法も利用可能である。
[第2のタンタル酸化層の膜厚と抵抗変化現象との関係]
素子PとサンプルP、および素子QとサンプルQとでは、それぞれ全く同一の条件でスパッタリングし、酸素プラズマ照射処理を行っているので、素子P及び素子Qにおいても、サンプルP及びサンプルQと同様に、第1のタンタル酸化物層104aと上部電極105との間には第2のタンタル酸化物層104bが存在していると考えられる。
したがって、素子Pでは、サンプルPと同様の膜厚が1.1nmの第2のタンタル酸化物層104bが形成されており、素子Qでは、サンプルQと同様の膜厚が1.2nmの第2のタンタル酸化物層104bが形成されているといえる。
上述したように、素子P及び素子Qでは、安定したBモードの抵抗変化現象が認められる。しかしながら、酸素含有率が高い第2のタンタル酸化物層が存在しない素子Oでは抵抗変化現象が観測されない。すなわち、抵抗変化を発現させるには、第2のタンタル酸化物の存在が不可欠であると考えられる。そして、この第2のタンタル酸化物は、本実施例の範囲では、TaOyと表現した時に、yが2.1程度であれば良く、膜厚も1.1nm程度であれば良い。
[第1のタンタル酸化物層の膜厚と抵抗変化現象との関係]
次に、第1のタンタル酸化物層104aの膜厚が抵抗変化現象に与える影響を調べるため、上記の素子P及びQとは異なる膜厚の第1のタンタル酸化物層を有する抵抗変化素子(素子P’と表記する)を作製し、この抵抗変化特性を調べた。
素子P’は、素子Pと比べると、第1のタンタル酸化物層104aの膜厚だけが異なっており、素子Pにおける第1のタンタル酸化物層104aの膜厚が30nmであったのに対して、素子P’におけるその膜厚は90nmとした。素子P’を作製する際の酸素プラズマ暴露時間は、素子Pの場合と同様に0.5分とした。したがって、素子P’においても、第2のタンタル酸化物層104bの膜厚は1から2nm程度であると考えられる。
この素子P’の上部電極105および下部電極103間に、負電圧−2.0V及び正電圧3.0Vの100nsecの電気的パルスを交互に繰り返し印加したときの抵抗変化特性は、−2.0Vを印加する事で抵抗値が約500Ωから20Ωに変化し、それ以後、20Ω程度と200Ω程度との間での可逆的なBモードの抵抗変化を安定に示した。
以上の結果から、本実施の形態に係る不揮発性記憶素子における抵抗変化現象に対して、第1のタンタル酸化物層の膜厚はそれほど大きな影響を与えていないといえる。
以上説明したように、第3の実験では、第1のタンタル酸化物層をスパッタリング装置内で堆積したあと、連続して酸素プラズマによる酸化処理を行い、第2のタンタル酸化物層を形成した。しかし、この方法では使用した装置の都合上、厚い第2のタンタル酸化物層を形成することはできなかった。そこで、第4の実験として、膜厚の厚い第2のタンタル酸化物層を形成した場合の抵抗変化素子の動作について述べる。
[抵抗変化素子の製造方法]
第4の実験で用いた抵抗変化素子の構成および製造方法は、基本的に第3の実験と同一である。但し、酸化工程の都合上、タンタル酸化物の堆積条件や、形成した不揮発性記憶素子のサイズは第3の実験とは異なっている。以下、図34(a)〜図34(c)を参照しながら不揮発性素子の製造工程について説明する。
まず、図34(a)に示したように、単結晶シリコンである基板101上に、厚さ200nmの酸化物層102を熱酸化法により形成する。そして、下部電極103としての厚さ100nmのPt薄膜を、スパッタリング法により酸化物層102上に形成する。その後、下部電極103上に、第1のタンタル酸化物層104aを、Taターゲットを用いた反応性スパッタリング法で形成する。
ここで、第1のタンタル酸化物層104aは、以下に述べる条件で堆積を行った。すなわち、スパッタリング装置内に基板を設置した後、スパッタリング装置内を8×10-6Pa程度まで真空引きする。そして、タンタルをターゲットとして、パワーを1.6kW、アルゴンガスを34sccm、酸素ガスを21sccm流して、スパッタリング装置内の圧力を0.17Paに保ち、20秒間スパッタリングを行う。これにより、抵抗率が6mΩcmで酸素含有率が約61at%(TaO1.6)の第1のタンタル酸化物層が30nm堆積できる。
次に、図34(b)のように、その第1のタンタル酸化物層104aの最表面を酸化してその表面を改質する。ここで、表4に示すように、酸化処理の方法を変化させる事により、素子R、素子Sを作製した。すなわち、素子Rはスパッタリング終了後、装置から基板を取り出し、酸素プラズマ発生装置へと導入し、基板を250℃に昇温した状態で酸素プラズマに晒して酸化処理を行った。素子Sはランプアニール装置へと基板を導入し、基板を300℃に昇温した状態で酸素ガスを流して酸化を行った。これらの酸化処理により、第1のタンタル酸化物層104aよりも酸素含有率の高い第2のタンタル酸化物層104bが形成される(第2のタンタル酸化物層の膜厚組成についての分析結果は後述する)。
その後、第2のタンタル酸化物層104b上に、上部電極105としての厚さ150nmのPt薄膜をスパッタリング法により形成する。なお、第2のタンタル酸化物層104bが大気中で酸化されるのをさけるため、上部電極105は、第2のタンタル酸化物層104bを堆積後速やかに行った。最後に、フォトレジスト工程によって、フォトレジストによるパターン106を形成し、ドライエッチングによって、素子領域107を形成する。ここで素子領域の107は、一辺が0.5μmの四角の形状とした。
[素子R、素子Sの抵抗変化特性]
次に、第4の実験において実際に作製した素子R、素子Sに対して電気的パルスを印加して、抵抗変化を起こさせた時の特性について説明する。
図38(a)および図38(b)は、第4の実験の抵抗変化素子が備える抵抗変化層の抵抗値と印加した電気的パルスとの関係を示す図であり、それぞれ素子Rおよび素子Sの測定結果を示している。
まず、酸素プラズマによって酸化処理を行って第2のタンタル酸化物層を形成した素子Rの結果について述べる。図38(a)の結果を見れば分かるように、製造直後の抵抗変化素子の上部電極に負電圧−1.3Vを加えると、初期が約400Ωであった抵抗値が約200Ωに低下し、正電圧1.5Vを加えると抵抗値は2000Ω程度に増加している。その後、正電圧1.5Vと負電圧−1.3Vの電気的パルスを交互に加えることで抵抗値は約200Ωと約3000Ωの間を往復する安定したBモードの抵抗変化が起こっている。
次に、ランプアニールによって酸化を行った素子Sの結果である図38(b)を見ると、これも安定したBモードの抵抗変化が起こっていることが分かる。すなわち、初期約600Ωであった抵抗が負電圧−1.3Vを加える事で、300Ω程度に低下し、正電圧1.5Vを加える事で5000Ω程度に増加している。そしてその後は、正電圧1.5Vと負電圧−1.3Vの電気的パルスを交互に加える事で抵抗値は約200Ωと約5000Ωの間を往復する安定したBモードの抵抗変化が起こっている。
図39は、素子Rの抵抗変化の様子を示す電流−電圧のヒステリシス特性で、図33の下部電極103を基準にしたときの上部電極105の電圧を横軸に、そのとき素子Rに流れる電流値を縦軸に示している。
図39において、下部電極103を基準に上部電極105側に正電圧を印加していくと、電流はほぼ電圧に比例して増加し、A点で示す正電圧を超えると急激に電流は減少する。これは低抵抗状態から高抵抗状態に抵抗変化している様子を示している。
一方、高抵抗状態において、下部電極103を基準に上部電極105側に負電圧(上部電極105を基準に下部電極103側に正電圧印加と等価)を印加していくと、B点で示す負電圧を超えると急激に電流は増加する。これは高抵抗状態から低抵抗状態に抵抗変化している様子を示している。
また、図39において、低抵抗状態から高抵抗状態への変化はA点を通過して初めて起こり、高抵抗状態から低抵抗状態への変化はB点を通過して起こる。
従って、素子RはBモードでの抵抗変化を起こしていること、および低抵抗状態から高抵抗状態への抵抗変化電流が、高抵抗状態から低抵抗状態への抵抗変化電流より、より大きな電流駆動が必要とされることがわかる。
[抵抗変化層の解析]
本実験に用いた抵抗変化層104の構造を解析するため、単結晶シリコン基板上に厚さ200nmの酸化物層が形成された基板上に、素子Rおよび素子Sと全く同じ条件で、タンタル酸化物を堆積して、酸化処理まで行ったサンプルを用意した。これらのサンプルを、それぞれサンプルR、サンプルSと表記する。それぞれのサンプルのX線反射率測定の結果を表4に示す。なお、サンプルR及びサンプルSは、サンプルO〜サンプルQと同様に、第2のタンタル酸化物層が露出された状態とした。
表4を参照すると、酸素プラズマで酸化を行ったサンプルRは、第2のタンタル酸化物層TaOyの膜厚が8.1nmと当初の狙いどおり、サンプルOないしサンプルQに比べて厚くなっている。また、yは2.47となっており、化学量論的組成を有するTa25よりも酸素が欠損した状態になっているのが分かる。また、ランプアニール装置で酸化処理を行ったサンプルSでは、第2のタンタル酸化物層TaOyの膜厚が7.3nmで、yが2.38であった。
[不揮発性記憶素子の断面観察]
上述のように、本実験で抵抗変化素子に形成した第2のタンタル酸化物層の膜厚は7〜8nm程度の値である。この程度の膜厚があれば、透過型電子顕微鏡による不揮発性素子の断面観察によって、第2のタンタル酸化物層の存在が容易に観察できる。そこで、素子Rの酸素プラズマ酸化により第2のタンタル酸化物層を形成した抵抗変化素子の断面観察を実際に行った。
図40(a)、図40(b)にその結果を示す。この図を見ると明らかなように、Ptから成る第1電極、第1のタンタル酸化物層、第2のタンタル酸化物層、Ptから成る第2電極が明確に確認できる。さらに第1のタンタル酸化物層の膜厚は若干のばらつきはあるが約28nm、第2のタンタル酸化物層の膜厚は約8nm程度となっていることも分かる。
これらの値は、同一の酸化条件で作製したサンプルRのX線反射率測定の結果とほぼ一致している(表4より、第1のタンタル酸化物層の膜厚26.6nm、第2のタンタル酸化物層の膜厚8.1nm)。
以上のことから、第4の実験で用いた不揮発性記憶素子には、実際に第2のタンタル酸化物層が存在していることが明らかとなった。また、X線反射率測定による分析結果の妥当性の証明ともなっている。
さらに、第5の実験について、説明を続ける。
上述した第3の実験で用いた素子O〜素子Qの場合、第1のタンタル酸化物層104aの酸素含有率は58at%(TaO1.4)であった。また第4の実験で用いた素子Rおよび素子Sの第1のタンタル酸化物層104aの酸素含有率もこれに近く、61at%(TaO1.6)であった。
これに対し、第5の実験で用いた抵抗変化素子は、もう少し大きく酸素含有率を変化させた第1のタンタル酸化物層を備えている。第5の実験で用いた抵抗変化素子の構成については、第3の実験、および第4の実験の場合と同様であるので、図示は省略する。
以下、図34を参照しながら、第1のタンタル酸化物層の酸素含有率を変化させて作製した第5の実験にかかる抵抗変化素子の製造方法及びその抵抗変化特性等について説明する。
[スパッタリング時の酸素流量比と組成との関係]
まず、第5の実験におけるタンタル酸化物層の作製条件及び酸素含有率の解析結果について述べる。タンタルの酸化物は、第3の実験として説明した方法と同様の方法で作製した。但し、タンタル酸化物の酸素含有率は、スパッタリング時の酸素流量比を調整することで制御する。
具体的なスパッタリング時の工程に従って説明すると、まず、スパッタリング装置内に基板を設置し、スパッタリング装置内を7×10-4Pa程度まで真空引きする。そして、タンタルをターゲットとして、パワーを250W、アルゴンガスと酸素ガスとをあわせた全ガス圧力を3.3Pa、基板の設定温度を30℃にし、スパッタリングを行う。ここでは、酸素ガスの流量比を0.8%から6.7%まで変化させている。
まずは、組成を調べる事が目的であるため、基板としては、Si上にSiO2を200nm堆積したものを用い、タンタル酸化物層の膜厚は約100nmになるようにスパッタリング時間を調整した。また、第3の実験で行ったような、酸素プラズマへの暴露は行っていない。
図41に、このようにして作製したタンタル酸化物層の組成をラザフォード後方散乱法(RBS法)、及びオージェ電子分光法(AES法)によって解析した結果を示す。図41から、酸素分圧比を0.8%から6.7%に変化させた場合、タンタル酸化物層中の酸素含有率は約40at%(TaO0.66)から約70at%(TaO2.3)へと変化していることが分かる。すなわち、タンタル酸化物層中の酸素含有率を酸素流量比によって制御可能であることが分かる。
なお、組成測定用に用意した試料は、基板上に堆積後、測定までの間に大気中の酸素によって酸化され、表面に高酸素含有率層が形成されていると考えられる。しかしながら、RBS及びAESの測定を行う前に、表面をエッチングして測定を行ったので、この表面の高酸素含有率層が、酸素含有率の測定に与える影響は無視しうる。
なお、本実施の形態では、タンタル酸化物層の解析にラザフォード後方散乱法(RBS)及びオージェ電子分光法(AES)を利用したが、蛍光X線分析法(XPS)や電子線マイクロアナリシス法(EPMA)等の機器分析手法も利用可能である。
[第1のタンタル酸化物層の組成と抵抗変化特性]
次に、酸素含有率を変化させたタンタル酸化物層を、第1のタンタル酸化物層104aとして用いて抵抗変化層104を形成し、抵抗変化素子100を構成した場合の抵抗変化特性について説明する。
抵抗変化素子100の作製は、第3の実験で説明した方法と同様の方法を用いた。すなわち、単結晶シリコンである基板101上に、厚さ200nmの酸化物層102を熱酸化法により形成し、下部電極103としての厚さ100nmのPt薄膜を、スパッタリング法により酸化物層102上に形成する。その後、下部電極103上に、タンタルをターゲットとして、パワーを250W、アルゴンガスと酸素ガスとをあわせた全ガス圧力を3.3Pa、基板の設定温度を30℃としてスパッタリングを行い、第1のタンタル酸化物層104aを形成する。
本実験で検討した範囲では、酸素ガスの流量比を、0.8%から6.7%まで変化させて各実施例を作製した。
第1のタンタル酸化物層104aの膜厚は30nmになるようにスパッタリング時間を調節した。その後、第1のタンタル酸化物層104aの最表面に対して酸素プラズマを30秒間照射し、第2のタンタル酸化物層104bを形成した。最後に、第2のタンタル酸化物層104b上に、上部電極105としての厚さ150nmのPt薄膜をスパッタ法により形成して、抵抗変化素子100を作製した。
以上のように作製した抵抗変化素子の抵抗変化現象を測定した。その結果、図41のα点(酸素流量比約1.7%、酸素含有率約45at%)からβ点(酸素流量比約5%、酸素含有率約65at%)のタンタル酸化膜を使った不揮発性記憶素子では、高抵抗値が低抵抗値の5倍以上と良好であった。
図42(a)および図42(b)は、それぞれ、α点およびβ点の酸素含有率を有する試料についてのパルス印加回数に対する抵抗変化特性を測定した結果である。図42(a)および図42(b)によれば、α点およびβ点の酸素含有率においては、共に、高抵抗値が低抵抗値の5倍以上と良好であることがわかる。したがって、酸素含有率が45〜65at%の組成範囲、すなわち抵抗変化層をTaOxと表記した場合におけるxの範囲が0.8≦x≦1.9の範囲がより適切な抵抗変化層の範囲である(酸素含有率=45at%がx=0.8に、酸素含有率=65at%がx=1.9にそれぞれ対応)。
以上、第3の実験〜第5の実験で述べてきたように、図33で示す抵抗変化素子において、下部電極に接して配置されたTaOx(0.8≦x≦1.9)の組成式で表される第1の酸素不足型のタンタル酸化物層と、上部電極に接して配置されたTaOy(2.1≦y<2.5)の組成式で表される第2の酸素不足型のタンタル酸化物の積層構造からなる抵抗変化層104は、下部電極側に対し上部電極側に負の電圧パルス印加で低抵抗状態へ変化し、下部電極に対し上部電極側に正の電圧パルス印加で高抵抗状態への変化を繰り返すBモードの安定した抵抗変化を示すことがわかった。
また、このように構成された抵抗変化素子は、逆極性の抵抗変化であるAモードの抵抗変化を示すことはなかった。またこの構成において第2の酸素不足型のタンタル酸化物層の膜厚は1nm以上8nm以下がBモードの安定した抵抗変化を示すのに好適であった。
次に、ここまでの説明とは逆のAモードの抵抗変化を安定して生じる抵抗変化素子に関する第6の実験について説明する。
[抵抗変化素子の構成]
図43は、第6の実験にかかる抵抗変化素子の一構成例を示した断面図である。図43に示すように、第6の実験で用いた抵抗変化素子100は、基板101と、その基板101上に形成された酸化物層102と、その酸化物層102上に形成された下部電極103と、第2電極層(上部電極)105と、下部電極103および上部電極105に挟まれた抵抗変化層104とを備えている。
ここで、抵抗変化層104は、酸素含有率が低い第1のタンタル含有層(以下、「第1のタンタル酸化物層」という)104aと、その第1のタンタル酸化物層104a上に形成された酸素含有率が高い第2のタンタル含有層(以下、「第2のタンタル酸化物層」という)104bとで構成されている。
第6の実験で用いた抵抗変化素子について、第3の実験〜第5の実験の場合と異なる点は、第2のタンタル酸化物層104bが下部電極103と接するように配置され、第1のタンタル酸化物層104aが上部電極105と接するように配置されているところである。
[抵抗変化素子の製造方法]
次に、図44(a)〜図44(c)を参照しながら、本実施の形態の抵抗変化素子100の製造方法について説明する。
まず、図44(a)に示したように、単結晶シリコンである基板101上に、厚さ200nmの酸化物層102を熱酸化法により形成する。そして、下部電極103としての厚さ100nmのPt薄膜を、スパッタリング法により酸化物層102上に形成する。その後、下部電極103上に、第2のタンタル酸化物層104bを、Ta25ターゲットを用いたスパッタリング法で約3nm形成する。
次に、図44(b)のように、第2のタンタル酸化物層104b上に第1のタンタル酸化物層104aをTaターゲットを用いた反応性スパッタリング法で形成する。第1のタンタル酸化物層104aはタンタルをターゲットとして、パワーを1.6kW、アルゴンガスを34sccm、酸素ガスを21sccm流して、スパッタリング装置内の圧力を0.17Paに保ち、18秒間スパッタリングを行う。これにより、抵抗率が6mΩcmで酸素含有率が約61at%(TaO1.6)の第1のタンタル酸化物層が27nm堆積した。
これにより、第2のタンタル酸化物層104bの表面に、当該第2のタンタル酸化物層104bよりも酸素含有率の低い第1のタンタル酸化物層104aが形成される。このようにして第2のタンタル酸化物層104bと第1のタンタル酸化物層104aとが積層された積層構造により抵抗変化層104が構成される。
その後、第1のタンタル酸化物層104a上に、上部電極105としての厚さ150nmのPt薄膜をスパッタリング法により形成する。最後に、フォトレジスト工程によって、フォトレジストによるパターン106を形成し、図44(c)のように、ドライエッチングによって、素子領域107を形成する。
上述した製造方法にしたがって、素子Tを作製した。ここで素子領域の107は、一辺が0.5μmの四角の形状とした。
[素子Tの抵抗変化特性]
次に、第6の実験において実際に作製した素子Tに対して電気的パルスを印加して、抵抗変化を起こさせた時の特性について説明する。
図45は、素子Tに対し、下部電極を基準にして上部電極に正電圧1.5Vおよび負電圧−1.8Vのパルスを交互に印加し続けた場合の、その都度の抵抗変化層の抵抗値を表したグラフである。パルス幅は100nsecとした。
最初に上部電極に正電圧1.5Vを加えると、抵抗値が約200Ωに低下し、負電圧−1.8Vを加えると抵抗値は20000Ω程度に増加している。その後、正電圧1.5Vと負電圧−1.8Vの電気的パルスを交互に加えることで抵抗値は約100Ωと約8000Ωの間を往復する安定したAモードの抵抗変化が起こっている。
図46は、素子Tの抵抗変化の様子を示す電流−電圧のヒステリシス特性で、下部電極103を基準にしたときの上部電極105の電圧を横軸に、そのとき素子Tに流れる電流値を縦軸に示している。
図46において、下部電極103を基準に上部電極105側に負電圧を印加していくと、電流はほぼ電圧に比例して増加し、A点で示す負電圧を超えると急激に電流は減少する。つまり低抵抗状態から高抵抗状態に抵抗変化している様子を示している。
一方、高抵抗状態において、下部電極103を基準に上部電極105側に正電圧(上部電極105を基準に下部電極103側に負電圧印加と等価)を印加していくと、B点で示す負電圧を超えると急激に電流は増加する。つまり高抵抗状態から低抵抗状態に抵抗変化している様子を示している。
また、図46において、低抵抗状態から高抵抗状態への変化はA点を通過して初めて起こり、高抵抗状態から低抵抗状態への変化はB点を通過して起こる。
従って、素子TはAモードでの抵抗変化を起こしていること、および低抵抗状態から高抵抗状態への抵抗変化電流が、高抵抗状態から低抵抗状態への抵抗変化電流より、より大きな電流駆動が必要とされることがわかる。
[抵抗変化層の推定]
第6の実験で用いた抵抗変化素子における抵抗変化層104の構造、特に本実験で作製したTa25のターゲットを用いてスパッタ形成した第2のタンタル酸化物層の組成について検討する。
この第2のタンタル酸化物層の組成はスパッタ時のプラズマの影響で、Ta25そのものではなく、若干酸素の欠損した組成になると考えられる。したがってターゲット組成より若干酸素が少ないタンタル酸化物TaOy(y=2.3〜2.4)が形成されていると推察される。
したがって、本実験での抵抗変化層104の構造は、図43に示す抵抗変化素子において、第2のタンタル酸化物層104bはTaOy(y=2.3〜2.4)の組成で膜厚=3nmであり、第1のタンタル酸化物層104aはTaOx(x=1.6)の組成で膜厚=27nmであると同定できる。
以上、第6の実験について述べたように、図43で示す抵抗変化素子において、下部電極に接して配置されたTaOy(y=2.3〜2.4)の組成式で表される第2の酸素不足型のタンタル酸化物層と、上部電極に接して配置されたTaOx(x=1.6)の組成式で表される第1の酸素不足型のタンタル酸化物の積層構造からなる抵抗変化層104は、下部電極に対し上部電極に正の電圧パルス印加で低抵抗状態へ変化し、下部電極に対し上部電極に負の電圧パルス印加で高抵抗状態への変化を繰り返すAモードの安定した抵抗変化を示すことがわかった。
また、このように構成された抵抗変化素子は、逆極性の抵抗変化であるBモードの抵抗変化を示すことはなかった。またこの構成において第2の酸素不足型のタンタル酸化物層の膜厚は3nmであった。
この第6の実験における抵抗変化素子の構成と第3の実験〜第5の実験における抵抗変化素子の抵抗変化素子の組成とを組み合わせることにより、図43で示す構成の抵抗変化素子において、TaOx(0.8≦x≦1.9)の組成式で表される第1の酸素不足型のタンタル酸化物層104aと、TaOy(2.1≦y<2.5)の組成式で表される第2の酸素不足型のタンタル酸化物層104bの積層構造からなる抵抗変化層104を用いた抵抗変化素子は、下部電極側に対し上部電極側に正の電圧パルス印加で低抵抗状態へ変化し、下部電極に対し上部電極側に負の電圧パルス印加で高抵抗状態への変化を繰り返すAモードの安定した抵抗変化を示すことが十分に推測できる。
また、この構成においては逆極性の抵抗変化であるBモードの抵抗変化を示すことがないことも推測できる。またこの構成においても第2の酸素不足型のタンタル酸化物層の膜厚は1nm以上8nm以下であることがAモードの安定した抵抗変化を示すのに好適であることが推測できる。
[第2の実施の形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第2の実施の形態として、上記で説明した抵抗変化素子を用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図47は、第2の実施の形態における不揮発性記憶装置における、図21のC部に対応するメモリセル350の構成(2ビット分の構成)を示す断面図であり、図22に示す第1の実施の形態の不揮発性記憶装置のメモリセル300と異なるのは、抵抗変化素子359の構成のみである。図47において、図22に示す構成と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図47の拡大部分に示されるように、抵抗変化素子359は、第3ビア308上に下部電極309a、抵抗変化層309b、上部電極309cがサンドイッチ状に形成され、さらには第3配線層311と接続される第4ビア310につながっている。
ここで、下部電極309aおよび上部電極309cとも抵抗変化を起こしやすいPt(白金)で構成されている。
また、抵抗変化層309bは、下部電極309aに接する第1の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−1、および上部電極309cに接する第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−2を有している。
第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−2は、上部電極309c製造工程前に、第1の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−1の表面に酸化処理を施して作られ、そのため、第1の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−1と比べて酸素含有率が高く、つまり、抵抗値が高くなっている。
図48は、図47の抵抗変化素子359を含むメモリセル350の電圧−電流特性を、抵抗変化素子309が高抵抗状態(HR)および低抵抗状態(LR)にある場合について示している。図48の横軸はセル端子間電圧を表し、縦軸はセル電流を表す。
図48に示される特性は、抵抗変化素子359を含む実際のメモリセル350の測定結果を表し、図48の横軸の負領域および正領域の特性は、それぞれ図4(a)および図4(b)に示されるバイアス印加による測定結果に対応する。
図49(a)、図49(b)は、実際の抵抗変化素子359の読み出しディスターブ特性図である。図49(a)、図49(b)における横軸、縦軸及び抵抗値測定法については、図6について説明した方法と同一のため、ここでは、詳しい説明は省略する。
図49(a)は、高抵抗状態抵抗値(約60kΩ)及び低抵抗状態抵抗値(約8kΩ)の負極性バイアス電圧依存を表し、|VM|が1V以下の範囲において、低抵抗状態はほとんど変化せず、一方、高抵抗状態は、VM=−0.6V印加までは、高抵抗状態(約60kΩ)を保持していたが、VM=−0.7Vを印加すると、急激に抵抗値が減少(約15kΩ)した。これは、高抵抗状態の低抵抗化電圧(〜−1.0V)に近付いたことから、高抵抗状態が低抵抗化したためである。
このことから、負極性バイアス印加時における読み出し電圧は、絶対値が0.6V以下にしなければならない。ここで、この境界電圧(−0.6V)を高抵抗状態ディスターブ境界電圧と呼ぶことにする。
図49(b)は、高抵抗状態抵抗値(約70kΩ)及び低抵抗状態抵抗値(約10kΩ)の正極性バイアス電圧依存を表し、VMが1V以下の範囲において、高抵抗状態はほとんど変化せず、一方、低抵抗状態は、VM=+0.8V印加までは、低抵抗状態(約10kΩ)を保持していたが、VM=+0.9Vを印加すると、急激に抵抗値が増加(約34kΩ)した。これは、低抵抗状態の高抵抗化電圧(〜1.3V)に近付いたことから、低抵抗状態が高抵抗化したためである。
このことから、正極性バイアス印加時における読み出し電圧は、+0.8V以下にしなければならない。ここで、この境界電圧(+0.8V)を低抵抗状態ディスターブ境界電圧と呼ぶことにする。
抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作に関しては図22の抵抗変化素子309を用いた場合と同じであるため、ここでは説明を省略する。
本実施の形態に従うと、図47に示すように、抵抗変化素子359は、上部電極309c側により抵抗変化をしやすい第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−2が設けられており、下部電極309aに対し上部電極309cに正電圧を印加することで、第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−2における酸化現象が進行し高抵抗状態に変化し、逆方向の電圧で還元現象が進行し低抵抗状態に変化すると考えられ、電圧印加方向に対する抵抗変化の状態が一義的に限定(Bモード動作)できる。
このように、抵抗変化を起こしやすい第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309b−2を上部電極309cに接して形成し、下部電極309aとメモリセルを構成するNMOSトランジスタのソースまたはドレインを接続する本実施の形態によると、より大きな電流が必要な低抵抗から高抵抗への抵抗変化を、図29に示す印加方向1に確実に一致させることができ、印加方向2になる場合を想定する必要がなく、最適なトランジスタ寸法でメモリセルを設計することができる。
このことは、電流駆動能力に余裕があれば、特にHR化電源電圧V1を、より低電圧化できることでもあり、低電圧化や低消費電力化にも有効である。
さらに、抵抗変化膜がBモードの抵抗変化特性に確実に限定されるため、図7に示すように読み出しディスターブ耐性が強い正極性バイアス印加側で読み出し動作を行うことができる。従って、読み出し電圧を高く設定できるため、読み出しセル電流を大きく取ることができ、高速読み出しが可能となる。
さらには、駆動極性が一義的に決まることで、抵抗変化特性のモードを識別する情報を管理する必要がなく、単純で安価な回路構成にできる。
なお、本抵抗変化素子を用いた構成においても、第1の実施の形態で説明した抵抗変化素子309を用いた場合と同様に、図30(b)に示すように選択トランジスタをPMOSトランジスタで構成可能である。
図50(a)、図50(b)は、それぞれ図30(a)、図30(b)の回路図に対応し、抵抗変化素子とトランジスタの本抵抗素子構成の展開形に係る接続関係を示すものである。
抵抗変化層309eは、抵抗変化層309bと同じく酸素不足型のタンタル酸化物よりなり、下部電極309dおよび上部電極309fは、下部電極309aおよび上部電極309cと同様に抵抗変化を起こしやすいPt(白金)で構成されている。また、第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309e−2は、第1の酸素不足型のタンタル酸化物層309e−1と比べて、酸素含有率が高い、つまり、抵抗値が高いタンタル酸化物から構成される。
図50(a)は、図47に示される構成と同一であるので、説明は省略する。
図50(b)は、図50(a)の場合とは反対に、抵抗変化を起こしにくい上部電極309fがソース線に接続され、抵抗変化を起こしやすい第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309e−2と接する下部電極309dが、PMOSトランジスタを介してビット線に接続される。この場合も図50(a)の場合と同様、ソース線とワード線は同方向に、ビット線はこれらに垂直方向に配線される。
ここで、PMOSトランジスタで構成した1T1R型メモリセル(図50(b))の場合、NMOSトランジスタで構成した1T1R型メモリセル(図50(a))の場合とは逆に、PMOSトランジスタの拡散層領域と接続される下部電極309dに接して抵抗変化をより起こしやすい第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309e−2を設けている。
これは、基板バイアス効果の影響が少なく、電流駆動能力が大きく取れるPMOSトランジスタの駆動方向は、ビット線と接続されるP型拡散層領域をソースとし、ソース電圧がこのPMOSトランジスタの基板電圧となるNウェルの電圧(VDD)に近くなる方向、即ち、下部電極309dをハイレベルとし、上部電極309fをロウレベルにする方向である。
この電圧印加方向に、より大きな電流が必要な低抵抗状態から高抵抗状態の抵抗変化方向を一致させるには、下部電極309dに接して抵抗変化をより起こしやすい第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309e−2を設ける構成とすることであり、上部電極309fに対し下部電極309dに正の電圧が印加され、このとき、下部電極309dに接する第2の酸素不足型のタンタル酸化物層309e−2で酸化現象が進行し高抵抗状態に変化できる。
つまり、上部電極309fに対し下部電極309dに正の電圧が印加される負極性バイアス印加で書換え時に低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する抵抗変化特性(Aモード)に確実に限定されるため、読み出しディスターブ耐性が強い方向、つまり、高抵抗化が起こる方向の負極性バイアス印加にて読み出し動作を行うことができる。
以上、本発明の抵抗変化型不揮発性記憶装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本発明の範囲内に含まれる。
[抵抗変化素子の変形例]
例えば、抵抗変化特性のモードを一義的に固定できる抵抗変化素子として、第1の実施の形態では、上下電極を異なる材料種で作製した抵抗変化素子を利用し、また、第2の実施の形態では、抵抗変化層を酸素含有率が異なる2種類のタンタル酸化物層で作製した抵抗変化素子を利用した。変形例として、これらの構成を組み合わせた抵抗変化素子を用いてもよい。
具体的に、酸素含有率が高い第2の酸素不足型のタンタル酸化物層に接する電極を標準電極電位が高い(酸化されにくい)Ptなどで作製し、酸素含有率が低い第1の酸素不足型のタンタル酸化物層に接する電極を標準電極電位が低い(酸化されやすい)Wなどで作製することが好ましい。
そうすれば、酸素原子は、酸素含有率が高いタンタル酸化物層からPt電極へは吸収されず、逆に酸素含有率が低いタンタル酸化物層からW電極には吸収されることによって、酸素含有率が高いタンタル酸化物層に酸素原子が集散する傾向がますます強化され、抵抗変化特性のモードが強く固定される。
このことは、抵抗変化素子とトランジスタとを、抵抗変化素子のモードに応じてトランジスタに基板バイアス効果が生じにくい方向に接続してメモリセルを構成するという本発明の特徴構成を実現する上で、より好適である。
[抵抗変化層における不純物]
また、上記では説明しなかったが、抵抗変化素子の抵抗変化層に、例えば抵抗値を調整するための添加物など所定の不純物を混入する技術は周知である。本発明の抵抗変化型不揮発性記憶装置に用いる抵抗変化素子にこの技術を適用してもよい。例えば、抵抗変化層に窒素を添加すれば、抵抗変化層の抵抗値が上がり、抵抗変化の反応性を改善できる。
つまり、酸素不足型の遷移金属酸化物を抵抗変化層に用いた抵抗変化素子について、抵抗変化層は、TaOxで表される組成を有する第1の酸素不足型のタンタル酸化物を含む第1の領域と、TaOy(但し、x<y)で表される組成を有する第2の酸素不足型のタンタル酸化物を含む第2の領域とを有するという請求項の限定は、前記第1の領域および前記第2の領域が、対応する組成のタンタル酸化物のほかに、所定の不純物(例えば、抵抗値の調整のための添加物)を含むことを妨げない。
以上説明したように、本発明では、抵抗変化素子を用いた1T1R型メモリセルで構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置を、読み出しディスターブ耐性が強い極性の電圧印加にて読み出し処理することができるので、例えば、高速動作するメモリを実現するのに有用である。
本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の基本構造を示す模式図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗変化における電流−電圧のヒステリシス特性の一例を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係の一例を示す図 (a)、(b)トランジスタと不揮発性記憶素子とを接続してなる1T1Rセル構造の一例を示す回路図 1T1Rセルの抵抗変化のシミュレーション結果を示すヒステリシス特性図 (a)、(b)実際の抵抗変化素子における読み出しディスターブ特性図 ヒステリシス特性における読み出しディスターブ電圧を説明する図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子のTa酸化物層の組成の解析結果を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の構成を示す断面図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 (a)〜(h)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の電極材料種と標準電極電位の関係を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の動作を説明するための断面模式図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の動作を説明するための断面模式図 本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成図 本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置のメモリセル部の構成の一例を示す断面図 クランプ回路の構成の一例を示す回路図 クランプ回路の構成の他の一例を示す回路図 クランプ回路におけるインバータ部の静特性のシミュレーション結果を示す図 (a)〜(c)本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作タイミング説明図 実際のメモリセルの測定結果である電圧−電流特性図 (a)、(b)実際の抵抗変化素子における読み出しディスターブ特性図 本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置のメモリセル特性のシミュレーション図 (a)、(b)本発明の実施の形態に係るメモリセルの回路構成を示す回路図 (a)、(b)本発明の実施の形態に係るメモリセルを実現するための抵抗変化素子とトランジスタとの接続関係を示す図 本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置のメモリセル部の構成の一例を示す断面図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の構成を示す断面図 (a)〜(c)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の製造工程を説明する図 (a)〜(c)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子のX線回折スペクトルを示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子のX線反射率の測定結果を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗変化における電流−電圧のヒステリシス特性の一例を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の断面観察結果を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子のTa酸化物層の組成の解析結果を示す図 (a)、(b)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の構成を示す断面図 (a)〜(c)本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の製造工程を説明する図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図 本発明の基礎データとしての不揮発性記憶素子の抵抗変化における電流−電圧のヒステリシス特性の一例を示す図 本発明の実施の形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置のメモリセル部の構成の一例を示す断面図 実際のメモリセルの測定結果である電圧−電流特性図 (a)、(b)実際の抵抗変化素子における読み出しディスターブ特性図 (a)、(b)本発明の実施の形態に係るメモリセルを実現するための抵抗変化素子とトランジスタとの接続関係を示す図 従来の抵抗変化型不揮発性記憶装置のメモリセルの断面模式図 従来の相変化メモリを用いた半導体装置の断面図 (a)、(b)従来の不揮発性記憶装置の構成を示す回路図 読み出しディスターブ低減効果を説明する図 特許文献4に記載の一般的なビット線電圧クランプ回路の構成を示す回路図
符号の説明
100 抵抗変化素子
101 基板
102 酸化物層
103 下部電極
104 抵抗変化層
104a、104b タンタル酸化物層
105 上部電極
106 パターン
107 素子領域
200 不揮発性記憶装置
201 メモリ本体部
202 メモリアレイ
203 列選択回路
204 センスアンプ
205 データ入出力回路
206 書き込み回路
207 行ドライバ
208 行選択回路
209 アドレス入力回路
210 制御回路
211 書き込み用電源
212 低抵抗(LR)化用電源
213 高抵抗(HR)化用電源
214 クランプ回路
215 読み出し回路
300 メモリセル
301 半導体基板
302a、302b N型拡散層領域
303a ゲート絶縁膜
303b ゲート電極
304、306、308、310 ビア
305、307、311 配線層
309 抵抗変化素子
309a、309d 下部電極
309b、309e 抵抗変化層
309b−1、309e−1 第1の酸素不足型のタンタル酸化物層
309b−2、309e−2 第2の酸素不足型のタンタル酸化物層
309c、309f 上部電極
317 トランジスタ
350 メモリセル
359 抵抗変化素子
400 メモリセル
402a、402b P型拡散層領域
409 抵抗変化素子
410、411 ビア
417 トランジスタ
418 Nウェル
500 不揮発性記憶素子
501 単結晶シリコン基板
502 酸化物層
503 下部電極
504 酸素不足型のTa酸化物層
505 上部電極
506 素子領域
1040 NMOSトランジスタ
1041 インバータ
1401、1501 下部電極
1402、1502 酸素不足型のTa酸化物層
1403、1503 上部電極
1404、1504 酸素イオン
3301 下部電極
3302 抵抗変化層
3303 上部電極

Claims (21)

  1. 第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極と前記第2電極と接するように設けられており、前記第1電極と前記第2電極間に与えられる極性の異なる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層からなる不揮発性記憶素子と、
    前記不揮発性記憶素子に電圧を印加することにより前記不揮発性記憶素子の抵抗の状態を読み出す読み出し回路と
    を備え、
    前記抵抗変化層は酸素不足型のタンタルの酸化物層を含み、
    前記第1電極の標準電極電位V1と、前記第2電極の標準電極電位V2と、前記タンタルの標準電極電位Vtとが、Vt<V2かつV1<V2を満足し、
    前記読み出し回路は、
    前記不揮発性記憶素子に対して、前記第1電極を基準として前記第2電極が正になる電圧を印加し、
    前記印加する電圧の最大値を制限するクランプ回路と、
    前記クランプ回路と直列に接続され、前記印加する電圧により前記不揮発性記憶素子に流れる電流を測定するセンスアンプ回路とを含む
    ことを特徴とする抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  2. さらに、前記第1電極の標準電極電位V1と、前記タンタルの標準電極電位Vtとが、V1≦Vtを満足する
    ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  3. 前記第1電極は、タングステン、ニッケル、タンタル、チタン、アルミニウムからなる群から選択され、
    前記第2電極は、白金、イリジウム、パラジウム、銀、銅、金からなる群から選択される
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  4. 前記第1電極はチッ化タンタルを含む材料で構成され、前記第2電極は白金を含む材料によって構成される
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  5. 第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極と前記第2電極と接するように設けられており、前記第1電極と前記第2電極間に与えられる極性の異なる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層からなる不揮発性記憶素子と、
    前記不揮発性記憶素子に電圧を印加することにより前記不揮発性記憶素子の抵抗の状態を読み出す読み出し回路と
    を備え、
    前記抵抗変化層は、TaOxで表される組成を有する第1の酸素不足型のタンタル酸化物を含む第1の領域と、TaOy(但し、x<y)で表される組成を有する第2の酸素不足型のタンタル酸化物層を含む第2の領域とを有し、
    前記第1の領域が前記第1電極と接し、前記第2の領域が前記第2電極と接しており、
    前記読み出し回路は、
    前記不揮発性記憶素子に対して、前記第1電極を基準として前記第2電極が正になる電圧を印加し、
    前記印加する電圧の最大値を制限するクランプ回路と、
    前記クランプ回路と直列に接続され、前記印加する電圧により前記不揮発性記憶素子に流れる電流を測定するセンスアンプ回路とを含む
    ことを特徴とする抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  6. 前記抵抗変化層は、前記第1の領域としてのTaOx(但し、0.8≦x≦1.9)で表される組成を有する第1の酸素不足型のタンタル酸化物層と、前記第2の領域としてのTaOy(但し、2.1≦y<2.5)で表される組成を有する第2の酸素不足型のタンタル酸化物層との少なくとも2層が積層された積層構造を有している、
    請求項5に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  7. 前記第2の酸素不足型のタンタル酸化物層の厚みが1nm以上8nm以下である、
    請求項5または請求項6に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  8. 前記不揮発性記憶素子と前記読み出し回路とは半導体基板の主面に構成され、
    前記抵抗変化型不揮発性記憶装置は、
    さらに、前記半導体基板の主面に構成された、第1のN型拡散層領域と、ゲートと、前記ゲートを挟んで前記第1のN型拡散層領域と反対側に構成される第2のN型拡散層領域よりなる第1のN型MOSトランジスタを備え、
    前記標準電極電位がより低い前記第1電極と、前記第1のN型MOSトランジスタの前記第1のN型拡散層領域とを接続してメモリセルを構成する
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  9. 前記第1電極、前記第2電極、および前記抵抗変化層は、前記半導体基板の主面に積層され、
    前記第1電極が前記半導体基板の主面により近い下部電極として配置され、
    前記第2電極が前記半導体基板の主面からより遠い上部電極として配置される
    ことを特徴とする請求項8に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  10. さらに、複数のビット線と、複数のソース線と、前記複数のビット線の少なくとも1つを選択する列選択回路と、前記複数のソース線の少なくとも1つを選択する行選択回路とを備え、
    前記ビット線と前記ソース線の組み合わせごとに前記メモリセルが設けられ、
    各メモリセルの前記不揮発性記憶素子の第2電極は、前記複数のビット線の対応する1つに接続され、
    各メモリセルの前記第1のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域は、前記複数のソース線の対応する1つに接続され、
    前記クランプ回路は、第2のN型MOSトランジスタで構成され、
    前記第2のN型MOSトランジスタのゲート端子には固定電位が入力され、
    前記第2のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域は、前記列選択回路を介して、前記ビット線の1つと接続され、
    前記第2のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域は、前記センスアンプ回路と接続される
    ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  11. 前記固定電位は、前記第2のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域の電位に前記第2のN型MOSトランジスタのしきい値電圧を加えた電位よりも高い
    ことを特徴とする請求項10に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  12. 前記第2のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域の電位と前記第1のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域の電位との電位差が、0.5V以下である
    ことを特徴とする請求項11に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  13. さらに、複数のビット線と、複数のソース線と、前記複数のビット線の少なくとも1つを選択する列選択回路と、前記複数のソース線の少なくとも1つを選択する行選択回路とを備え、
    前記ビット線と前記ソース線の組み合わせごとに前記メモリセルが設けられ、
    各メモリセルの前記不揮発性記憶素子の第2電極は、前記複数のビット線の対応する1つに接続され、
    各メモリセルの前記第1のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域は、前記複数のソース線の対応する1つに接続され、
    前記クランプ回路は、第3のN型MOSトランジスタとインバータ回路で構成され、
    前記第3のN型MOSトランジスタのゲート端子は、前記インバータ回路の出力端子と接続され、
    前記第3のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域は、前記インバータ回路の入力端子と接続されるとともに、前記列選択回路を介して、前記ビット線の1つと接続され、
    前記第3のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域は、前記センスアンプ回路と接続される
    ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  14. 前記第3のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域の電位と前記第1のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域の電位との電位差が、0.5V以下である
    ことを特徴とする請求項13に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  15. 前記不揮発性記憶素子と前記読み出し回路とは半導体基板の主面に構成され、
    前記抵抗変化型不揮発性記憶装置は、さらに、
    前記半導体基板の主面に構成されたNウェルと、
    前記Nウェルの領域内に構成される、第1のP型拡散層領域と、ゲートと、前記ゲートを挟んで前記第1のP型拡散層領域と反対側に構成される第2のP型拡散層領域よりなるP型MOSトランジスタと
    を備え、
    前記第2電極と、前記P型MOSトランジスタの前記第1のP型拡散層領域とを接続してメモリセルを構成する
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  16. 前記第1電極、前記第2電極、および前記抵抗変化層は、半導体基板の主面に積層され、
    前記第1電極が前記半導体基板の主面からより遠い上部電極として配置され、
    前記第2電極が前記半導体基板の主面により近い下部電極として配置される
    ことを特徴とする請求項15に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  17. さらに、複数のビット線と、複数のソース線と、前記複数のビット線の少なくとも1つを選択する列選択回路と、前記複数のソース線の少なくとも1つを選択する行選択回路とを備え、
    前記ビット線と前記ソース線の組み合わせごとに前記メモリセルが設けられ、
    各メモリセルの前記不揮発性記憶素子の第1電極は、前記複数のソース線の対応する1つに接続され、
    各メモリセルの前記P型MOSトランジスタの第2のP型拡散層領域は、前記複数のビット線の対応する1つに接続され、
    前記クランプ回路は、第4のN型MOSトランジスタで構成され、
    前記第4のN型MOSトランジスタのゲート端子には固定電位が入力され、
    前記第4のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域は、前記列選択回路を介して、前記複数のビット線の1つと接続され、
    前記第4のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域は、前記センスアンプ回路と接続される
    ことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  18. 前記固定電位は、前記第4のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域の電位に前記第4のN型MOSトランジスタのしきい値電圧分を加えた電位よりも高い
    ことを特徴とする請求項17に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  19. 前記第4のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域の電位と前記第1電極の電位との電位差が、0.5V以下である
    ことを特徴とする請求項18に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  20. さらに、複数のビット線と、複数のソース線と、前記複数のビット線の少なくとも1つを選択する列選択回路と、前記複数のソース線の少なくとも1つを選択する行選択回路とを備え、
    前記ビット線と前記ソース線の組み合わせごとに前記メモリセルが設けられ、
    各メモリセルの前記不揮発性記憶素子の第1電極は、前記複数のソース線の対応する1つに接続され、
    各メモリセルの前記P型MOSトランジスタの第2のP型拡散層領域は、前記複数のビット線の対応する1つに接続され、
    前記クランプ回路は、第5のN型MOSトランジスタとインバータ回路で構成され、
    前記第3のN型MOSトランジスタのゲート端子は、前記インバータ回路の出力端子と接続され、
    前記第5のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域は、前記インバータ回路の入力端子と接続されるとともに、前記列選択回路を介して、前記ビット線の1つと接続され、
    前記第5のN型MOSトランジスタの第2のN型拡散層領域は、前記読み出し回路と接続される
    ことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
  21. 前記第5のN型MOSトランジスタの第1のN型拡散層領域の電位と前記第1電極の電位との電位差が、0.5V以下である
    ことを特徴とする請求項20に記載の抵抗変化型不揮発性記憶装置。
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