JP2010010874A - 弾性表面波フィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】スプリアスのレベルを低減できる弾性表面波フィルタの提供。
【解決手段】圧電基板10と、圧電基板10上に形成されたすだれ状電極からなる入出力電極20,30と、入出力電極20,30を挟んで入出力電極20,30の両隣に位置するように圧電基板10上に形成された反射器40と、を備えた弾性表面波フィルタであって、入出力電極20,30及び反射器40の電極指21,22,31,32,41は、それぞれ、一部が斜めに折り曲げられた折り曲げ部21a,21b,22a,22b,31a,31b,32a,32b,41a,41bを2つ有し、例えば、電極指21の折り曲げ部21a,21bにおいて、折り曲げ部21aと折り曲げ部21bとでは、電極指21の折り曲げ角度θ1,θ2と、折り曲げ部21a,21bにおける電極指21の、折り曲げられた部分の延設方向に直交する方向の寸法W1,W2と、が異なる。
【選択図】図1

Description

本発明は、弾性表面波(SAW)を利用した弾性表面波フィルタに関する。
従来、弾性表面波を利用した弾性表面波フィルタは、高周波帯域の周波数フィルタとして携帯電話機などを始めとする各種電子機器に用いられている。
この弾性表面波フィルタに関しては、圧電基板上に形成されたすだれ状電極からなる入出力電極及び反射器の電極指が、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに一定の距離だけ離れた少なくとも2つの直線部を有するようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この構成の弾性表面波フィルタは、電極指の直線部を、斜めに折り曲げられた部分(以下、折り曲げ部という)で少なくとも2つの直線部に分割することで、各直線部の交差幅(各電極指の互いに対向している部分の長さ)が小さくなる。
これにより、上記構成の弾性表面波フィルタは、弾性表面波の伝搬方向と垂直にエネルギーが分布する横モードの共振によるスプリアス(以下、単にスプリアスという)を低減できることが知られている。
特開2005−12544号公報
上記の弾性表面波フィルタは、実施の形態において、入出力電極及び反射器の電極指に折り曲げ部が複数形成されている。
そして、この複数の折り曲げ部の構成の詳細に関して、特許文献1では触れられていないが、特許文献1の図2などから、この複数の折り曲げ部は、互いに同一曲げ角度、同一長さとして形成され、折り曲げ部の互いに隣り合う電極指のピッチ(電極指の延設方向に直交する方向の寸法)は、直線部の電極指のピッチより狭い構成であることが想定される。
ここで、電極指の複数の折り曲げ部が、上記の構成である場合は、後述するように、弾性表面波フィルタの通過域の中心周波数より高周波側に、スプリアスが高レベルで発生するという問題が、本発明の発明者らの実験によって判明している。
この問題は、1つには、折り曲げ部の互いに隣り合う電極指のピッチが、直線部の電極指のピッチより狭いことで、入力電極の折り曲げ部に直線部より周波数の高い弾性表面波が発生していること、1つには、各折り曲げ部が互いに同一曲げ角度であることから、この弾性表面波が合成されて合成波となった際に、各直線部の弾性表面波と略等しい伝搬角で出力電極に伝搬されること、などに起因していると考えられる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例にかかる弾性表面波フィルタは、圧電基板と、前記圧電基板上に形成されたすだれ状電極からなる入出力電極と、前記入出力電極を挟んで前記入出力電極の両隣に位置するように前記圧電基板上に形成された反射器と、を備えた弾性表面波フィルタであって、前記入出力電極の電極指は、それぞれ、一部が斜めに折り曲げられた折り曲げ部を2つ以上有し、前記折り曲げ部の少なくとも1つは、他の前記折り曲げ部に対して、前記電極指の折り曲げ角度と、前記折り曲げ部における前記電極指の、折り曲げられた部分の延設方向に直交する方向の寸法と、が異なることを特徴とする。
この構成によれば、弾性表面波フィルタは、入出力電極の電極指が、それぞれ、一部が斜めに折り曲げられた折り曲げ部を2つ以上有し、折り曲げ部の少なくとも1つは、他の折り曲げ部に対して、電極指の折り曲げ角度と、折り曲げ部における電極指の、折り曲げられた部分の延設方向に直交する方向の寸法とが異なる。
これにより、弾性表面波フィルタは、少なくとも1つの折り曲げ部の電極指のピッチと他の折り曲げ部の電極指のピッチとが異なる。
このことから、弾性表面波フィルタは、弾性表面波の特性により、少なくとも1つの折り曲げ部に発生する弾性表面波の周波数と、他の折り曲げ部に発生する弾性表面波の周波数とが異なる。
加えて、弾性表面波フィルタは、少なくとも1つの折り曲げ部に発生する弾性表面波の伝搬方向と、他の折り曲げ部に発生する弾性表面波の伝搬方向との、折り曲げ部以外の部分(直線部)に発生した弾性表面波(以下、主弾性表面波ともいう)の伝搬方向に対する角度が異なる。
これにより、弾性表面波フィルタは、少なくとも1つの折り曲げ部に発生する弾性表面波と、他の折り曲げ部に発生する弾性表面波とが合成された合成波の伝搬方向が、主弾性表面波の伝搬方向に対して一致しなくなることから、合成波の伝搬角が0°とならない。
上記のように、弾性表面波フィルタは、少なくとも1つの折り曲げ部に発生する弾性表面波の周波数と、他の折り曲げ部に発生する弾性表面波の周波数とが異なることから、上記合成波に起因して発生するスプリアスの周波数が分裂して、合成ピークが小さくなる。
また、弾性表面波フィルタは、合成波の伝搬角が0°とならないことから、合成波の励振効率が低下し、スプリアス成分が発生しにくくなる。
これらのことから、弾性表面波フィルタは、発生するスプリアスのレベルを低減することができる。
[適用例2]上記適用例にかかる弾性表面波フィルタは、前記電極指の前記折り曲げ部の両端に直線部が接続され、前記折り曲げ部の一端に接続された一方の直線部の位置と、前記折り曲げ部の他端に接続された他方の直線部の位置と、が弾性表面波の伝搬方向において、前記弾性表面波の1/2波長分離れていることが好ましい。
この構成によれば、弾性表面波フィルタは、折り曲げ部の一端に接続された一方の直線部の位置と、折り曲げ部の他端に接続された他方の直線部の位置と、が弾性表面波の伝搬方向において、弾性表面波の1/2波長分離れている。
これにより、高次横モードの抑圧が可能となり、弾性表面波フィルタは、横モードのスプリアスによる帯域内リップルと、帯域外スプリアスとが抑制された、優れたフィルタ特性を得ることができる。
[適用例3]上記適用例にかかる弾性表面波フィルタは、前記入出力電極を構成する入力電極及び出力電極のそれぞれの前記折り曲げ部が、前記入力電極と前記出力電極とで、前記入力電極と前記出力電極との互いに隣接する一端同士、またはグレーティングを介して隣接する2つの電極指の一端同士を結んだ線の中心と、前記2つの電極指の他端同士を結んだ線の中心と、を結んだ直線である中心線に対して線対称形状に形成され、前記反射器のそれぞれの前記折り曲げ部が、前記入力電極側と前記出力電極側とで、前記中心線に対して線対称形状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、弾性表面波フィルタは、入力電極及び出力電極のそれぞれの折り曲げ部が、入力電極と出力電極とで、中心線に対して線対称形状に形成され、反射器のそれぞれの折り曲げ部が、入力電極側と出力電極側とで、中心線に対して線対称形状に形成されている。
これにより、弾性表面波フィルタは、電極指のそれぞれの折り曲げ部に発生する弾性表面波の合成波の伝搬角が、入力電極側と出力電極側とで一致しないことから、合成波の入力電極から出力電極への伝達効率が低下する。
従って、弾性表面波フィルタは、発生するスプリアスのレベルを低減することができる。
[適用例4]上記適用例にかかる弾性表面波フィルタは、前記圧電基板が水晶基板であることが好ましい。
この構成によれば、弾性表面波フィルタは、圧電基板が水晶基板であることから、水晶の特性により周囲の温度変化に伴う弾性表面波の周波数の変動が少なく、周波数の温度特性を向上させることができる。
以下、弾性表面波フィルタの実施形態について図面を参照して説明する。
(実施形態)
図1は、本実施形態の弾性表面波フィルタとしての縦結合3重モードフィルタの、基本構成を示した模式図である。図2、図3は、図1の部分拡大図である。
縦結合3重モードフィルタ(以下、3重モードフィルタという)とは、弾性表面波の伝搬方向に関する1次、2次、3次の振動モードによって周波数フィルタとしての通過帯域を得ることができる弾性表面波フィルタである(3重モードフィルタの詳細については、特許第3476151号公報を参照)。
図1に示すように、本実施形態の3重モードフィルタ1は、圧電基板10と、圧電基板10上に形成されたすだれ状電極からなる入出力電極としての入力電極20及び出力電極30と、入力電極20及び出力電極30を挟んで両隣に位置するように圧電基板10上に形成された2つの反射器40と、を備えている。
また、3重モードフィルタ1は、入力電極20と出力電極30との間に、反射器状のミドルグレーティング50を備えている。
圧電基板10は、例えば、水晶基板からなり矩形板状に形成されている。入力電極20、出力電極30、反射器40、ミドルグレーティング50は、圧電基板10の表面に導体金属を蒸着またはスパッタリングなどにより薄膜状に形成した後に、フォトリソグラフィ技術などを用いて形成されている。なお、導体金属には、アルミ、アルミ合金などの金属が用いられている。
入力電極20は、互いにかみ合う複数対の櫛歯状の電極指21,22からなり、電極指21,22は、延設方向(長手方向)の一端側がそれぞれ共通接続されている。
図2(a)は、入力電極20の部分拡大図である。図2(a)に示すように、電極指21は、一部が斜めに折り曲げられた2つの折り曲げ部21a,21bと、弾性表面波の伝搬方向Aと直交する方向に沿って分割して配置された直線部21c,21d,21eとからなる。
直線部21cと直線部21dとは、折り曲げ部21aを介して接続され、直線部21dと直線部21eとは、折り曲げ部21bを介して接続されている。
また、直線部21cと直線部21eとは、一直線上に位置するように配置され、直線部21dは、直線部21c及び直線部21eと、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、弾性表面波の波長をλとしてλ/2分離れて配置されている。
電極指22は、電極指21と同様に、折り曲げ部22a,22bと、直線部22c,22d,22eとからなる。
直線部22cと直線部22dとは、折り曲げ部22aを介して接続され、直線部22dと直線部22eとは、折り曲げ部22bを介して接続されている。
また、直線部22cと直線部22eとは、一直線上に位置するように配置され、直線部22dは、直線部22c及び直線部22eと、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れて配置されている。
電極指21,22の折り曲げ部21a,22aと折り曲げ部21b,22bとは、各直線部に対する折り曲げ角度θ1(折り曲げ部21a,22a)とθ2(折り曲げ部21b,22b)とが異なり、折り曲げ部21a,22aの方が大きい角度で折り曲げられている(θ1>θ2)。
また、電極指21,22の折り曲げ部21a,22aと折り曲げ部21b,22bとは、電極指21,22の各折り曲げ部における延設方向に直交する方向の寸法W1(折り曲げ部21a,22a)とW2(折り曲げ部21b,22b)とが異なり、W1の方が小さい値となっている(W1<W2)。同様に折り曲げ部21aと22aの電極指ピッチP1と折り曲げ部21bと22bの電極指ピッチP2の関係は、P1<P2となる。
また、寸法W1,W2とも直線部21c,21d,21e,22c,22d,22eの延設方向に直交する方向の寸法W3より小さい値となっている(W1<W2<W3)。詳述すれば、W1=W3cosθ1、W2=W3cosθ2であり、θ1>θ2であるから、W1<W2<W3となる。同様に、電極指ピッチP1、P2、P3の関係はP1<P2<P3となる。
図1に戻って、出力電極30は、互いにかみ合う複数対の櫛歯状の電極指31,32からなり、電極指31,32は、延設方向の一端側がそれぞれ共通接続されている。
図2(b)は、出力電極30の部分拡大図である。図2(b)に示すように、電極指31は、一部が斜めに折り曲げられた2つの折り曲げ部31a,31bと、弾性表面波の伝搬方向Aと直交する方向に沿って分割して配置された直線部31c,31d,31eとからなる。
直線部31cと直線部31dとは、折り曲げ部31aを介して接続され、直線部31dと直線部31eとは、折り曲げ部31bを介して接続されている。
また、直線部31cと直線部31eとは、一直線上に位置するように配置され、直線部31dは、直線部31c及び直線部31eと、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れて配置されている。
電極指32は、電極指31と同様に、折り曲げ部32a,32bと、直線部32c,32d,32eとからなる。
直線部32cと直線部32dとは、折り曲げ部32aを介して接続され、直線部32dと直線部32eとは、折り曲げ部32bを介して接続されている。
また、直線部32cと直線部32eとは、一直線上に位置するように配置され、直線部32dは、直線部32c及び直線部32eと、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れて配置されている。
電極指31,32の折り曲げ部31a,32aと折り曲げ部31b,32bとは、電極指21,22と同様に、各直線部に対する折り曲げ角度θ1(折り曲げ部31a,32a)とθ2(折り曲げ部31b,32b)とが異なり、折り曲げ部31a,32aの方が大きい角度で折り曲げられている(θ1>θ2)。
また、電極指31,32の折り曲げ部31a,32aと折り曲げ部31b,32bとは、電極指21,22と同様に、電極指31,32の各折り曲げ部における延設方向に直交する方向の寸法W1(折り曲げ部31a,32a)とW2(折り曲げ部31b,32b)とが異なり、W1の方が小さい値となっている(W1<W2)。同様に折り曲げ部31aと32aの電極指ピッチP1と折り曲げ部31bと32bの電極指ピッチP2の関係は、P1<P2となる。
また、寸法W1,W2とも直線部31c,31d,31e,32c,32d,32eの延設方向に直交する方向の寸法W3より小さい値となっている(W1<W2<W3)。同様に、電極指ピッチP1、P2、P3の関係はP1<P2<P3となる。
図1に戻って、反射器40は、複数の電極指41からなり、電極指41は、延設方向の両端がそれぞれ共通接続されている。
図3(a)は、反射器40の部分拡大図である。図3(a)に示すように、電極指41は、一部が斜めに折り曲げられた2つの折り曲げ部41a,41bと、弾性表面波の伝搬方向Aと直交する方向に沿って分割して配置された直線部41c,41d,41eとからなる。
直線部41cと直線部41dとは、折り曲げ部41aを介して接続され、直線部41dと直線部41eとは、折り曲げ部41bを介して接続されている。
また、直線部41cと直線部41eとは、一直線上に位置するように配置され、直線部41dは、直線部41c及び直線部41eと、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れて配置されている。
電極指41の折り曲げ部41aと折り曲げ部41bとは、電極指21と同様に、各直線部に対する折り曲げ角度θ1(折り曲げ部41a)とθ2(折り曲げ部41b)とが異なり、折り曲げ部41aの方が大きい角度で折り曲げられている(θ1>θ2)。
また、電極指41の折り曲げ部41aと折り曲げ部41bとは、電極指21などと同様に、電極指41の各折り曲げ部における延設方向に直交する方向の寸法W4(折り曲げ部41a)とW5(折り曲げ部41b)とが異なり、W4の方が小さい値となっている(W4<W5)。同様に折り曲げ部41aの電極指ピッチP4と折り曲げ部41bとの電極指ピッチP5の関係は、P4<P5となる。
また、寸法W4,W5とも直線部41c,41d,41eの延設方向に直交する方向の寸法W6より小さい値となっている(W4<W5<W6)。同様に、電極指ピッチP4、P5、P6の関係はP4<P5<P6となる。
図1に戻って、ミドルグレーティング50は、複数の電極指51からなり、電極指51は、延設方向の両端がそれぞれ共通接続されている。
図3(b)は、ミドルグレーティング50の部分拡大図である。図3(b)に示すように、電極指51は、一部が斜めに折り曲げられた2つの折り曲げ部51a,51bと、弾性表面波の伝搬方向Aと直交する方向に沿って分割して配置された直線部51c,51d,51eとからなる。
直線部51cと直線部51dとは、折り曲げ部51aを介して接続され、直線部51dと直線部51eとは、折り曲げ部51bを介して接続されている。
また、直線部51cと直線部51eとは、一直線上に位置するように配置され、直線部51dは、直線部51c及び直線部51eと、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れて配置されている。
電極指51の折り曲げ部51aと折り曲げ部51bとは、電極指21と同様に、各直線部に対する折り曲げ角度θ1(折り曲げ部51a)とθ2(折り曲げ部51b)とが異なり、折り曲げ部51aの方が大きい角度で折り曲げられている(θ1>θ2)。
また、電極指51の折り曲げ部51aと折り曲げ部51bとは、電極指21と同様に、電極指51の各折り曲げ部における延設方向に直交する方向の寸法W7(折り曲げ部51a)とW8(折り曲げ部51b)とが異なり、W7の方が小さい値となっている(W7<W8)。同様に折り曲げ部51aの電極指ピッチP7と折り曲げ部51bとの電極指ピッチP8の関係は、P7<P8となる。
また、寸法W7,W8とも直線部51c,51d,51eの延設方向に直交する方向の寸法W9より小さい値となっている(W7<W8<W9)。同様に、電極指ピッチP7、P8、P9の関係はP7<P8<P9となる。
なお、各電極指は、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、それぞれ所定のピッチで配置されている。また、入力電極20、出力電極30、反射器40、ミドルグレーティング50は、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、所定の間隔で、例えばλ/2分ずつ離れて配置されている。
なお、折り曲げ角度θ1,θ2、寸法W1〜W9のそれぞれの値は、各電極指間で略同一の値となっているが、弾性表面波の伝搬効率、反射の程度などに応じて異なる値を設定してもよい。
上記の構成から、3重モードフィルタ1の入力電極20の電極指21と電極指22との総交差幅は、直線部21cと直線部22cとの交差幅cと、直線部21dと直線部22dとの交差幅dと、直線部21eと直線部22eとの交差幅eと、折り曲げ部21aと折り曲げ部22aとの交差幅aと、折り曲げ部21bと折り曲げ部22bとの交差幅b、の和となる。
また、出力電極30の電極指31と電極指32との総交差幅は、同様に、直線部31cと直線部32cとの交差幅cと、直線部31dと直線部32dとの交差幅dと、直線部31eと直線部32eとの交差幅eと、折り曲げ部31aと折り曲げ部32aとの交差幅aと、折り曲げ部31bと折り曲げ部32bとの交差幅b、の和となる。
また、3重モードフィルタ1の各電極指における各折り曲げ部の上記各直線部に沿った方向の交差幅a,bは、交差幅bの方が長くなる(a<b)。
ここで、3重モードフィルタ1の動作について図1〜図3を参照して説明する。
まず、電気信号が入力電極20に供給されると、圧電効果により弾性表面波に変換される。この弾性表面波は、入力電極20の電極指21,22の延設方向に対して直交する方向Aに伝搬され、出力電極30まで伝搬される。
このようにして生じた弾性表面波は、両側の反射器40によりエネルギーが外部に漏れずに閉じ込められる。
ついで、出力電極30に弾性表面波が入射すると、弾性表面波の振幅に比例した電圧が電極指31,32に発生し、所定のフィルタ特性に応じた信号が抽出されて外部に出力される。
このとき、弾性表面波の伝搬方向Aと垂直にエネルギーが分布する横モードの共振によるスプリアスが発生する。
ここで、3重モードフィルタ1は、入力電極20の電極指21と電極指22との総交差幅及び出力電極30の電極指31と電極指32との総交差幅が、各直線部の交差幅c,d,eに分割されていて、個々の交差幅としては小さくなっているので、スプリアスを通過帯域の中心周波数から遠ざけることができる。
また、3重モードフィルタ1は、交差幅c,e部分の各直線部と交差幅d部分の各直線部とが、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れて配置されていることから、総交差幅に対する横モードの共振を抑えることが可能となり、フィルタ特性において、横モードスプリアスによる帯域内リップルと帯域外スプリアスの発生とが抑制できる。
ここまでは、従来技術と同様の動作であるが、本実施形態の3重モードフィルタ1は、従来技術と異なり、交差幅a部分の各折り曲げ部と交差幅b部分の各折り曲げ部とが、互いに異なる形状で形成されている(θ1>θ2)(W1<W2)(W1<W2<W3)(a<b)。これにより、3重モードフィルタ1は、従来技術と異なる以下のような動作が想定される。
図2(a)に示すように、3重モードフィルタ1は、入力電極20の交差幅a部分の各折り曲げ部21a,22aの電極指ピッチP1と、交差幅b部分の各折り曲げ部21b,22bの電極指ピッチP2と、が異なる(P1<P2)。
従って、3重モードフィルタ1は、弾性表面波の特性により交差幅a部分の各折り曲げ部21a,22a(以下、単に交差幅a部という)に発生する弾性表面波の周波数と、交差幅b部分の各折り曲げ部21b,22b(以下、単に交差幅b部という)に発生する弾性表面波の周波数とが異なる。
さらに、3重モードフィルタ1は、交差幅a部と交差幅b部との折り曲げ角度がθ1>θ2の関係である。
これにより、3重モードフィルタ1は、交差幅a部に発生する弾性表面波の伝搬方向Bと交差幅b部に発生する弾性表面波の伝搬方向Cとの、各直線部に発生する主弾性表面波の伝搬方向Aに対する角度θ1’(伝搬方向B),θ2’(伝搬方向C)が異なり、θ1’>θ2’となる。
従って、3重モードフィルタ1は、交差幅a部に発生する弾性表面波と交差幅b部に発生する弾性表面波が合成された合成波の伝搬方向Dが、主弾性表面波の伝搬方向Aに対して一致しないことから、合成波の伝搬角が0°とならない。
これらのことから、3重モードフィルタ1は、上記合成波に起因して発生するスプリアスのピーク周波数が2つに分裂して、合成ピークが小さくなる。また、3重モードフィルタ1は、合成波の伝搬角が0°とならないことから、合成波の励振効率が低下し、スプリアス成分が発生しにくくなる。
ここで、本実施形態の3重モードフィルタ1の基本構成に基づいて形成された試作品の実験結果について、図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態による試作品及び従来技術による試作品のフィルタ特性図である。図4(a)は、本実施形態による試作品のフィルタ特性図であり、同図(b)は、従来技術による試作品のフィルタ特性図である。
なお、試作品の主要な仕様は、以下のとおりである。
[本実施形態による試作品と従来技術による試作品との共通仕様]
・中心周波数:315MHz
・圧電基板:水晶基板
・電極指材料:アルミ
・各直線部交差幅:76μm(交差幅c,d,eのそれぞれに相当)、11区間形成。
[本実施形態による試作品と従来技術による試作品との相違仕様]
・本実施形態による試作品の入出力電極の各折り曲げ部交差幅:交差幅a相当部9μm、交差幅b相当部17μm、各5区間形成、上記11区間を交差幅a相当部と交差幅b相当部とで交互に接続。これにより、θ1>θ2、W1<W2、W1<W2<W3となっている。
・従来技術による試作品の入出力電極の各折り曲げ部交差幅:交差幅a相当部、交差幅b相当部ともに13μm、各5区間形成、上記11区間を交差幅a相当部と交差幅b相当部とで交互に接続。これにより、θ1=θ2、W1=W2、(W1=W2)<W3となっている。
なお、本実施形態及び従来技術はいずれも、W1=W4=W7、W2=W5=W8、W3=W6=W9としている。
図4では、横軸が周波数(MHz)、縦軸が減衰量(dB)を表している。図4に示すように、本実施形態による試作品は、中心周波数より高周波数側に破線Eで囲まれたスプリアスが発生している。また、従来技術による試作品も、中心周波数より高周波数側に破線Fで囲まれたスプリアスが発生している。
本実施形態による試作品のスプリアスと従来技術による試作品のスプリアスとを比較してみると、本実施形態による試作品のスプリアスは、従来技術による試作品のスプリアスのピークが1つであるのに対して、スプリアスのピークが2つに分裂している。
また、本実施形態による試作品は、2つに分裂しているスプリアスのピークのレベルが、従来技術による試作品のスプリアスのピークのレベルを大幅(約10dB)に下回っている。
この実験結果により、前述の3重モードフィルタ1の動作説明に関して、基本的な裏付けが得られた。
上述したように、本実施形態の3重モードフィルタ1は、入力電極20、出力電極30、反射器40及びミドルグレーティング50の各電極指が、それぞれ、一部が斜めに折り曲げられた折り曲げ部を2つ有する(交差幅a部、交差幅b部)。そして、2つの折り曲げ部は、各電極指の折り曲げ角度(θ1,θ2)と、各電極指の折り曲げられた部分の、各電極指の延設方向に直交する方向の寸法(W1とW2、W4とW5、W7とW8)と、が異なる(θ1>θ2)(W1<W2、W4<W5、W7<W8)。
これにより、3重モードフィルタ1は、2つの折り曲げ部の各電極指のピッチ(P1とP2、P4とP5、P7とP8)が異なる(P1<P2、P4<P5、P7<P8)。このことから、3重モードフィルタ1は、2つの折り曲げ部に発生する弾性表面波の周波数が異なる。
加えて、3重モードフィルタ1は、2つの折り曲げ部に発生する弾性表面波が合成された合成波の伝搬方向Dが、主弾性表面波の伝搬方向Aに対して一致しないことから、伝搬角が0°とならない。
これにより、3重モードフィルタ1は、上記合成波に起因して発生するスプリアスのピーク周波数が2つに分裂して、合成ピークが小さくなる。また、3重モードフィルタ1は、合成波の伝搬角が0°とならないことから、合成波の励振効率が低下し、スプリアス成分が発生しにくくなる。
これらのことから、3重モードフィルタ1は、発生するスプリアスのレベルを低減することができる。
また、3重モードフィルタ1は、各電極指の各折り曲げ部の一端に接続された各直線部の位置と、各折り曲げ部の他端に接続された各直線部の位置と、が主弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れている。
これにより、3重モードフィルタ1は、横モードスプリアスによる帯域内リップルと帯域外スプリアスとが抑制された、優れたフィルタ特性を得ることができる。
また、3重モードフィルタ1は、圧電基板10が水晶基板であることから、水晶の特性により周囲の温度変化に伴う弾性表面波の周波数の変動が少なく、周波数の温度特性を向上させることができる。
ここで、上記実施形態の変形例について図面を参照して説明する。
(変形例)
図5は、上記実施形態の変形例の3重モードフィルタの基本構成を示した模式図である。図5(a)は平面図、同図(b)は、同図(a)の部分拡大図である。なお、上記実施形態との共通部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、上記実施形態との異なる部分を中心に説明する。
図5に示すように、変形例の3重モードフィルタ101は、入力電極20及び出力電極130の各折り曲げ部が、入力電極20と出力電極130とで、入力電極20と出力電極130との、ミドルグレーティング150を介して互いに隣接する2つの電極指22,131の一端同士を結んだ線の中心と、他端同士を結んだ線の中心とを結んだ直線である中心線Gに対して、線対称形状に形成されている。
具体的には、入力電極20の電極指21,22の折り曲げ部21a,21b,22a,22bと、出力電極130の電極指131,132の折り曲げ部131a,131b,132a,132bとが、中心線Gに対してそれぞれの交差幅a部分、交差幅b部分において、線対称形状に形成されている。詳述すれば、21aと132aとが、21bと132bとが、22aと131aとが、22bと131bとが、それぞれ中心線Gに対して線対称形状に形成されている。
そして、3重モードフィルタ101は、反射器40,140の電極指41,141の各折り曲げ部が、入力電極20側の反射器40と出力電極130側の反射器140とで、中心線Gに対して線対称形状に形成されている。
具体的には、反射器40の電極指41の折り曲げ部41a,41bと、反射器140の電極指141の折り曲げ部141a,141bとが、中心線Gに対してそれぞれの交差幅a部分、交差幅b部分において、線対称形状に形成されている。
そして、3重モードフィルタ101は、ミドルグレーティング150の電極指151,152の各折り曲げ部が、中心線Gに対して線対称形状に形成されている。
具体的には、中心線Gを境界にして、ミドルグレーティング150の紙面左側の電極指151の折り曲げ部151a,151bと、紙面右側の電極指152の折り曲げ部152a,152bとが、中心線Gに対してそれぞれの交差幅a部分、交差幅b部分において、線対称形状に形成されている。
なお、ミドルグレーティング150は、延設方向の寸法が交差幅dと略等しく、延設方向と直交する方向の寸法が直線部151d,152dの同方向の寸法と略等しい矩形状のダミー電極指153が、直線部151dと直線部152dとの間に、隣り合う直線部151d及び直線部152dの交差幅c部分と交差幅e部分との直線部を、それぞれ結んだ直線上に形成されている。
これにより、3重モードフィルタ101は、入力電極20の各直線部に発生した主弾性表面波が、途切れることなくスムーズに出力電極130に伝搬していく。なお、3重モードフィルタ101は、各電極指の交差幅d部分の各直線部も、中心線Gに対して線対称形状に形成されている。このことから、各電極指の交差幅d部分の各直線部は、交差幅c部分、交差幅e部分の各直線部と、弾性表面波の伝搬方向Aにおいて、λ/2分離れて配置されている。
このように構成された3重モードフィルタ101は、入力電極20側の各折り曲げ部と出力電極130側の各折り曲げ部とが、中心線Gに対して線対称形状である。このことから、3重モードフィルタ101は、入力電極20側の各折り曲げ部に発生した弾性表面波の合成波の伝搬角と、出力電極130側の各折り曲げ部に発生した弾性表面波の合成波の伝搬角とが、一致しなくなる。換言すれば、両合成波の伝搬方向D,Hが一致しなくなる。
これにより、3重モードフィルタ101は、各折り曲げ部における弾性表面波の入力電極20から出力電極130への伝達効率が低下する。
従って、3重モードフィルタ101は、発生するスプリアスのレベルをさらに低減することができる。
なお、上記実施形態及び変形例では、入力電極20と出力電極30,130との間に、ミドルグレーティング50,150を設けたが、ミドルグレーティング50,150を設けずに、入力電極20と出力電極30,130とを隣接させ、1次、2次の振動モードによって周波数フィルタとしての通過帯域を得る縦結合2重モードフィルタと呼ばれる弾性表面波フィルタとしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、入力電極20と出力電極30,130との間に、反射器状のミドルグレーティング50,150を設けたが、ミドルグレーティング50,150に代えて、入出力に接続されていない、入力電極20または出力電極30,130と同様のすだれ状電極を設けてもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、各折り曲げ部の折り曲げ角度θ1,θ2のそれぞれの値を各電極指間で略同一の値として設定している。上述したように、各折り曲げ部の折り曲げ角度θ1,θ2の値は、これに限定するものではなく、各電極指間で異なる値にしてもよい。
これによれば、弾性表面波フィルタは、各折り曲げ部の曲げ角度が各電極指間で異なることで、各折り曲げ部に発生する弾性表面波の伝搬方向が分散され、入力電極から出力電極への伝達効率がさらに低下することから、発生するスプリアスのレベルをさらに低減することができる。
なお、上記実施形態及び変形例では、圧電基板を水晶基板としたが、これに限定するものではなく、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料を用いた基板としてもよい。
本実施形態の縦結合3重モードフィルタの基本構成を示した模式図。 本実施形態の縦結合3重モードフィルタの部分拡大図。 本実施形態の縦結合3重モードフィルタの部分拡大図。 本実施形態による試作品及び従来技術による試作品のフィルタ特性図。 変形例の3重モードフィルタの基本構成を示した模式図。
符号の説明
1…弾性表面波フィルタとしての3重モードフィルタ、10…圧電基板、20…入力電極、21,22…入力電極の電極指、21a,21b,22a,22b…入力電極の折り曲げ部、30…出力電極、31,32…出力電極の電極指、31a,31b,32a,32b…出力電極の折り曲げ部、40…反射器、41…反射器の電極指、41a,41b…反射器の折り曲げ部、θ1,θ2…電極指の折り曲げ角度、W1,W2,W4,W5,W7,W8…電極指の折り曲げられた部分の延設方向に直交する方向の寸法。

Claims (4)

  1. 圧電基板と、前記圧電基板上に形成されたすだれ状電極からなる入出力電極と、前記入出力電極を挟んで前記入出力電極の両隣に位置するように前記圧電基板上に形成された反射器と、を備えた弾性表面波フィルタであって、
    前記入出力電極の電極指は、それぞれ、一部が斜めに折り曲げられた折り曲げ部を2つ以上有し、
    前記折り曲げ部の少なくとも1つは、他の前記折り曲げ部に対して、前記電極指の折り曲げ角度と、前記折り曲げ部における前記電極指の、折り曲げられた部分の延設方向に直交する方向の寸法と、が異なることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
  2. 請求項1に記載の弾性表面波フィルタにおいて、前記電極指の前記折り曲げ部の両端には直線部が接続され、前記折り曲げ部の一端に接続された一方の直線部の位置と、前記折り曲げ部の他端に接続された他方の直線部の位置と、が弾性表面波の伝搬方向において、前記弾性表面波の1/2波長分離れていることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
  3. 請求項1または2に記載の弾性表面波フィルタにおいて、前記入出力電極を構成する入力電極及び出力電極のそれぞれの前記折り曲げ部が、前記入力電極と前記出力電極とで、前記入力電極と前記出力電極との互いに隣接する一端同士、またはグレーティングを介して隣接する2つの電極指の一端同士を結んだ線の中心と、前記2つの電極指の他端同士を結んだ線の中心と、を結んだ直線である中心線に対して線対称形状に形成され、
    前記反射器のそれぞれの前記折り曲げ部が、前記入力電極側と前記出力電極側とで、前記中心線に対して線対称形状に形成されていることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性表面波フィルタにおいて、前記圧電基板は、水晶基板であることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
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