以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態の例である電気コネクタ1の斜視図であり、図2は電気コネクタ1の分解斜視図である。また、図3は、回路基板110上に配置されている電気コネクタ1の平面図であり、図4は電気コネクタ1の背面図である。図5は電気コネクタ1が有するハウジング11の斜視図である。図6は図3に示すVI−VI線の断面図であり、図7は図3に示すVII−VII線の断面図である。図8及び図9は同軸プラグ100が装着されている電気コネクタ1の断面図である。図8は図6と同様の切断面で得られる断面図であり、図9は図7と同様の切断面で得られる断面図である。
図2又は図3に示すように、電気コネクタ1は、信号端子として可動端子50と固定端子60とを有している。可動端子50と固定端子60は、それぞれ回路基板110に設けられた一対の信号用の導体パターン111,112に取り付けられる。また、電気コネクタ1は、回路基板110に設けられたグランド用の導体パターン113,114に取り付けられる一対のグランド端子70,70を有している。
電気コネクタ1は、同軸プラグ100を回路基板110に電気的に接続するためのコネクタである(図8及び図9参照)。同軸プラグ100は、例えば、回路基板110を検査するための高周波の信号を回路基板110の導体パターン111に入力するための検査用プラグである。図8及び図9に示すように、同軸プラグ100は、グランド用の外側導体102と信号用の中心導体101とを有している。外側導体102は、筒状に形成されている。中心導体101はピン状に形成され、外側導体102の中心において上下方向に延伸するよう配置されている。電気コネクタ1は同軸プラグ100が装着されることによって、同軸プラグ100を回路基板110に電気的に接続する。すなわち、電気コネクタ1は、同軸プラグ100の外側導体102を、導体パターン113,114に接続し、中心導体101を導体パターン111に接続する。以下、電気コネクタ1が備える各部材について詳説する。
図2又は図5に示すように、電気コネクタ1は、絶縁体(例えば、樹脂)によって形成されるハウジング11を備えている。ハウジング11の上部には、同軸プラグ100の外側導体102が上方から装着可能となるように形成された装着部12が設けられている。詳細には、装着部12は外側導体102の内側に嵌入可能なように円柱状に形成されている。
また、図6又は図7に示すように、装着部12の中心には、当該装着部12を上下方向に貫通する挿入孔12aが形成されている。同軸プラグ100の外側導体102が装着部12に装着された時には、挿入孔12aに中心導体101が挿入され、中心導体101の先端はハウジング11内に侵入する。
また、装着部12の上面は、その上縁12bから装着部12の中心に向かうに従って深くなるよう凹んでいる。すなわち、上縁12bの内側には円錐状のガイド面12dが形成されている。ガイド面12dは上縁12bから、挿入孔12aの上縁12cに向かって下方に傾斜している。
図2、図4又は図5に示すように、ハウジング11は装着部12より大きいハウジング基部13を有し、当該ハウジング基部13は装着部12の下方に位置している。ハウジング基部13は、概略箱状であり、前壁部14と、後壁部15と、右壁部16と、左壁部17とを有している。これらの壁部によって、固定端子60の先端側と可動端子50の先端側とを収容する収容室13aが構成されている(図6又は図7参照)。収容室13aの上方に装着部12が位置している。また、収容室13aは下方(回路基板110側)に開口している。可動端子50、固定端子60、及びグランド端子70,70は、ハウジング基部13によって保持されている。
図2に示すように、固定端子60は、前後方向(X1−X2方向)に長い板状の端子である。固定端子60は、差込部61と取付部62とを有している。取付部62は、固定端子60の前方(X1方向)側の端部に設けられている。取付部62は、電気コネクタ1の回路基板110への取り付け工程において、導体パターン112に半田で取り付けられる(図4参照)。
図2又は図6に示すように、ハウジング11の前壁部14には、当該前壁部14を前後方向に貫通する保持孔14aが形成されている。固定端子60は保持孔14aに圧入され、差込部61の縁に形成された爪部61a,61aは、保持孔14aの内面に引っ掛かっている。これによって、固定端子60は、ハウジング基部13に固定される。
差込部61の先端側は収容室13aに配置され、その先端61bは、挿入孔12aの手前側(前壁部14側)に位置している。なお、差込部61の先端側には、下方に僅かに突出する接触部61dが形成されている。後述するように、固定端子60は、この接触部61dを介して可動端子50に接触する。
図2又は図6に示すように、可動端子50は、左右方向(Y1−Y2方向)に長い板状の基部52と、当該基部52から延伸する一対の右延伸部53と左延伸部54と、右延伸部53と左延伸部54の先端に設けられた先端連結部55と、右延伸部53と左延伸部54との間に位置する被押圧部51とを有している。また、可動端子50の後側(X2方向)の端部には、導体パターン111に半田付けされる取付部57が設けられている。
ハウジング基部13の後壁部15には、当該後壁部15を前後方向に貫通する保持孔15aが形成されている。可動端子50は後方から保持孔15aに圧入され、基部52の縁に形成された爪部52a,52aは保持孔15aの内面に引っ掛かっている。これによって、可動端子50は、ハウジング基部13に固定される。基部52の左右方向の端部には、前方(X1方向)に突出するストッパ52b,52bが形成されている。一方、保持孔15aの奥部には、ストッパ52b,52bに対向する壁(不図示)が形成されている。これによって、保持孔15aにおける可動端子50の位置が規定されている。
右延伸部53と左延伸部54は、基部52における左右方向に離れた位置から前方(X1方向)に延伸している。先端連結部55は、左右方向に長い板状であり、右延伸部53と左延伸部54の先端とを連結している。この先端連結部55は、固定端子60の差込部61の下方に位置し、通常状態(同軸プラグ100が装着部12に装着されていない状態)においては、固定端子60に設けられた接触部61dに当接している。そのため、導体パターン111と導体パターン112は、可動端子50と固定端子60とを介して導通している。なお、後述するように、可動端子50は板ばねであり、弾性変形可能に形成されている。そして、可動端子50は、先端連結部55が固定端子60から離れるように弾性変形することによって導体パターン111,112の導通のオン/オフを切り換えるスイッチ機能を有している。
被押圧部51は、先端連結部55から、右延伸部53と左延伸部54の延伸方向とは反対方向(基部52側(X2方向))に延伸し、挿入孔12aを下方から塞ぐように配置されている。詳細には、被押圧部51は、挿入孔12aが形成された下面12hに対して略平行となっている。
図2又は図7に示すように、電気コネクタ1には2つのグランド端子70,70が設けられている。グランド端子70,70は、挿入孔12aの位置を挟んで互いに反対側に位置している。また、グランド端子70,70の位置は、可動端子50及び固定端子60が設けられた位置から、装着部12の周方向に約90度だけ離れている。
グランド端子70は、前後方向に延伸する棒状の基部71と、当該基部71の両端に位置する取付部72,72とを有している。グランド端子70は、取付部72,72と基部71との間において斜め下方に屈曲しており、取付部72,72は基部71より低い位置に位置している。そして、電気コネクタ1が回路基板110上に配置された時には、取付部72,72が導体パターン113,114に接し、基部71と回路基板110の表面との間には隙間が設けられる。取付部72,72は、電気コネクタ1の回路基板110への取り付け工程において、導体パターン113,114に半田付けされる。
また、グランド端子70は、基部71から上方に延伸する板状の固定部74と、当該固定部74からさらに上方に延伸する接触部73とを有している。接触部73は、ハウジング11の装着部12の外周面12iに沿うように配置されており、外側導体102の装着時には外側導体102の内側の面に接触する(図9参照)。接触部73は、装着部12の外周面12iの一部にのみ設けられている。すなわち、接触部73は板状であり、その幅Wは、外周面12iの外周より短くなっている(図1参照)。特に、ここで説明する例では、2つのグランド端子70は、挿入孔12aを挟んで対称の位置に配置されており、各グランド端子70の接触部73の幅Wは、外周面12iの半周より短くなっている。この接触部73の幅Wや上下の長さは、インピーダンス整合を図るために電気コネクタ1に要求される特性インピーダンスに応じて設定される。なお、要求される特性インピーダンスに応じて、接触部73は、平板状ではなく、外周面12iに合わせて円弧状に形成されてもよい。
図5に示すように、ハウジング11の装着部12の外周面12iには、上下方向に延伸する溝状の凹部12jが形成されている。図1に示すように、接触部73はこの凹部12jに配置されている。凹部12jの幅は、接触部73の幅Wに相応しており、凹部12jの内側における接触部73の動きは規制されている。
また、接触部73は、凹部12jの深さより厚く形成されており、接触部73の外面は、装着部12の外周面12iより、装着部12の半径方向の外側(図4においてY1方向及びY2方向)に位置している。これによって、外側導体102の装着時に、接触部73と外側導体102の内面とが安定的に接触し得る(図9参照)。なお、接触部73の外面は、外周面12i及び外側導体102の内側の面に合わせて僅かに湾曲している。
接触部73の外面には、接触部73の幅方向(X1−X2方向)に長い窪み部73aが形成されている(図2又は図7参照)。一方、外側導体102の内面には、図9に示すように、内側に突出する凸部102aが形成されている。外側導体102の装着時には、凸部102aは窪み部73aに嵌る。
凹部12jは、上述したように上下方向に長い溝状に形成されており、装着部12の上縁12bにまで達している(図5参照)。そして、接触部73は、その上端73cの高さが装着部12の上縁12bの高さと等しくなるよう配置されている(図7参照)。なお、上端73cの角部は面取りされている。
図7に示すように、グランド端子70は、ハウジング11に形成された保持孔16a,17aにおいて保持されている。詳細には、保持孔16aと1保持孔17aは、それぞれ右壁部16と左壁部17に形成されており、これらの壁部を上下方向に貫通している。この保持孔16a及び保持孔17aは、それぞれ凹部12j,12jの下方に位置しており、保持孔16aと保持孔17aは、それぞれ凹部12j,12jに連なっている。グランド端子70は保持孔16a,17aに下方から圧入されている。接触部73は、保持孔16a,17aを通過することによって、外部に露出するとともに、凹部12j,12jの内側に配置される。
保持孔16a,17aの幅は、固定部74の幅に相応している。また、図2に示すように、固定部74の縁には爪部74aが形成されている。爪部74aが保持孔16a,17aの内面に引っ掛かることによって、固定部74は保持孔16a,17aにおいて保持される。なお、ハウジング基部13の右壁部16には右方向(Y1方向)に突出する直方体状の凸部16bが形成され、左壁部17には、左方向(Y2方向)に突出する凸部17bが形成されている。そして、これらの凸部16b,17bの下方においてグランド端子70の基部71が前後方向に延伸している。これによって、基部71は、凸部16b,17bによって保護されている。
電気コネクタ1のスイッチ機能について説明する。上述したように、可動端子50の先端連結部55は、可動端子50が弾性変形していない通常状態においては、接触部61dに当接している。その結果、導体パターン111と導体パターン112は、可動端子50と固定端子60とを介して導通している。図8に示すように、装着部12に同軸プラグ100が装着された時には、挿入孔12aから挿入された中心導体101によって被押圧部51が押圧される。そして、これによって、右延伸部53と左延伸部54とが下方に弾性的に撓み、先端連結部55が接触部61dから離れ、導体パターン111と導体パターン112との導通が遮断される。一方、中心導体101が被押圧部51に当接することによって、当該中心導体101と導体パターン111は可動端子50を介して導通する。また、図9に示すように、同軸プラグ100の装着時には、外側導体102の内側に装着部12が嵌る。そして、接触部73の窪み部73aに凸部102aが嵌り、グランド端子70が外側導体102と接触部73を介して接触し、外側導体102とグランド用の導体パターン113,114とが導通する。
以上説明した電気コネクタ1では、ハウジング11の装着部12の外周面12iには、凹部12jが形成されている。そして、グランド端子70の接触部73は凹部12jに配置されている。これによって、接触部73を凹部12jによって保護することができ、電気コネクタ1の耐久性を良好に保つことができる。また、筒状の接触部を有するグランド端子とは異なり、接触部73を小さくすることによって(例えば、接触部73の幅Wを小さくすることによって)、電気コネクタ1の特性インピーダンスの過剰な低下を抑制できる。その結果、電気コネクタ1を小型化する場合であっても、良好なインピーダンス整合を得ることができる。
また、電気コネクタ1では、グランド端子70の接触部73は、凹部12jの深さに比べて厚い板状である。こうすることによって、接触部73と、同軸プラグ100の外側導体102との接触不良を抑制できる。
また、電気コネクタ1では、接触部73は、上端73cの高さが装着部12の上縁12bの高さと等しくなるように配置されている。これによって、同軸プラグ100を装着部12に装着する際に、接触部73が損傷することを抑制でき、さらに電気コネクタ1の耐久性を向上できる。
また、電気コネクタ1では、一対のグランド端子70,70が設けられ、これらのグランド端子70,70は、挿入孔12aを挟んで互いに反対側に位置している。これによって、中心導体101に対して一方側にのみグランド端子が配置される場合に比べて、良好な特性インピーダンスを得ることができる。
なお、本発明は、以上説明した電気コネクタ1に限られず、種々の変更が可能である。例えば、以上の説明では、接触部73は、その上端73cの高さが装着部12の上縁12bの高さと等しくなるように配置されていた。しかしながら、接触部73は、その上端73cの高さが装着部12の上縁12bの高さより低くなるように配置されてもよい。
また、以上の説明では、装着部12の外周面12iを凹ませることによって、接触部73が配置される凹部12jが形成されていた。しかしながら、外周面12iに、当該外周面12iから装着部12の半径方向に立つ一対の壁が形成され、接触部73は、当該一対の壁の間に配置されてもよい。すなわち、一対の壁が上下方向に延伸するように外周面12iに設けられ、一対の壁の内側に構成される凹部、すなわち一対の壁の間に接触部73が配置されてもよい。この場合、接触部73は、この一対の壁によってその動きが規制され、保護される。
1 電気コネクタ、11 ハウジング、12 装着部、12a 挿入孔、12b 上縁、12c 上縁、12d ガイド面、12h 下面、12i 外周面、12j 凹部、13 ハウジング基部、13a 収容室、14 前壁部、14a,15a,16a,17a 保持孔、15 後壁部、16 右壁部、16b 凸部、17 左壁部、17b 凸部、50 可動端子、51 被押圧部、52 基部、52a 爪部、52b ストッパ、53 右延伸部、54 左延伸部、55 先端連結部、57 取付部、60 固定端子、61 差込部、61a 爪部、61b 先端、61d 接触部、62 取付部、70 グランド端子、71 基部、72 取付部、73 接触部、73a 窪み部、73c 上端、74 固定部、74a 爪部、100 同軸プラグ、101 中心導体、102 外側導体102a 凸部、110 回路基板、111,112,113,114 導体パターン。