以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鍵構造体を含む鍵盤装置(鍵盤楽器装置)の断面図である。
本発明の第1の実施の形態の鍵構造体100は、主として楽器として使用される鍵盤装置において押鍵操作により回動する複数の鍵の1つとして機能する。同図はB鍵とC鍵との間で切断した断面を示す。従って、同図では、B鍵である1つの鍵構造体100について、奏者からみて右側面図が表されている。鍵構造体100は、白鍵に適用されるが、同様に構成したものを黒鍵にも適用してもよい。なお、以降、本鍵盤装置や鍵構造体100の奏者側を前方と呼称する。
鍵構造体100は、鍵ベース体40と鍵胴体部BODとが一体に結合して構成され、鍵胴体部BODは、上板体50と木製の木質部60とから成る。上板体50は、前部50aと、鍵操作面を提供する上板部50bとが樹脂で一体に形成されて成る。木質部60は、上板体50の上板部50bとほぼ同じ長さを有し、上板部50b及び前部50aに接着されることで、上板体50と結合して、鍵胴体部BODが構成される。
鍵ベース体40は、基端部40aと、該基端部40aから前方に延設された延設部40bとが樹脂部材で一体に形成されて成り、さらに延設部40bには、いずれも鍵機能部の1つ(乃至「他要素係合部」の1つ)である被キーガイド部42、質量体駆動部43、鍵アクチュエータ44及び鍵脱落防止機構部45が一体に形成されている。延設部40bは、上記鍵胴体部BODの長手方向に略平行に、上板体50の前部50aまで延びている。基端部40aは、鍵構造体100の後端部にも相当する。基端部40aの後部には回動支点41が設けられ、鍵構造体100は、回動支点41を中心として上下方向に回動自在になっている。質量体駆動部43の下端部には、円滑な摺動を確保するためのすべり部材46が装着されている。
一方、鍵構造体100の下方には、各鍵構造体100に対応して質量体71が配設される。質量体71の被駆動部71aは、押鍵操作に応じて、鍵ベース体40の質量体駆動部43を介してすべり部材46により駆動される。これによって、質量体71が質量体回動軸72を中心に回動することで、適当な押鍵感触が与えられる。また、本鍵盤装置には、それぞれ2メイク式の第1鍵スイッチ73、第2鍵スイッチ74が設けられる。第1鍵スイッチ73は、鍵ベース体40の鍵アクチュエータ44によって押圧駆動されて、押離鍵等の鍵動作を検出する。第2鍵スイッチ74は、質量体71に設けられた鍵アクチュエータ71bによって押圧駆動されて、鍵動作を検出する。両鍵スイッチ73、74が異なるタイミングでオフタッチを含む鍵動作を検出することから、これらの検出結果を基に多彩な楽音制御が可能となっている。
本鍵盤装置にはまた、鍵動作ガイド75及び係合部77が設けられる。鍵構造体100の被キーガイド部42は、鍵操作時には、鍵動作ガイド75に案内されて、鍵構造体100の鍵並び方向(鍵構造体100の左右方向)への揺動が抑制される。これら、被キーガイド部42及び鍵動作ガイド75に関連する詳細な構成については後述する。鍵脱落防止機構部45は、係合部77と係合して、鍵操作時における鍵構造体100の主として前方への脱落を防止する。
また、質量体回動軸72近傍から鍵構造体100の後部に亘って、平面視フォーク形状で側面視S字状となっているバネ51が懸架されている。このバネ51は、鍵構造体100を後方に押しつけると共に、質量体71を質量体回動軸72に押しつけ、鍵構造体100及び質量体71がシャーシ1000から容易に脱落しないようにしている。
図2は、鍵構造体100の各位置での断面を示す図である。同図(a)〜(f)はそれぞれ、図1のA−A線〜F−F線に沿う断面図である。なお、図2はB鍵を例示しているので、隣接する黒鍵(A#鍵)が配設されるための逃げ部を有することから、鍵構造体100の幅は、同図(b)〜(f)では奏者からみた左側(側面100a側)が狭くなっている。
図2(a)に示すように、鍵構造体100は、上板体50の上板部50bと鍵ベース体40とで木質部60を挟み込むようにして構成される。鍵ベース体40の延設部40bの上部には、前部から、延設部40bと基端部40aとの接続部近傍に亘って突条部40cが形成される。また、木質部60には、突条部40cに嵌合的な形状をした溝状凹部60cが形成されている。そして、まず、鍵胴体部BODを作成してから、木質部60の溝状凹部60cに延設部40bの突条部40cを嵌合させ、木質部60と延設部40bとを接着することで、鍵構造体100が構成される。
木質部60は、鍵構造体100に木質感を付与する役割も果たす。すなわち、押鍵時には、押鍵された鍵の隣の鍵の側面の一部が奏者から見えるが、木製の木質部60を鍵構造体100の側面100a、100bに配したことから、奏者にとっては、木質部60の側面60a、60bが視認され、鍵構造体100が上面や前面を除いて木材で構成されているかのように見える。これにより、鍵構造体100に木質感が付与され、高級感が与えられる。
また、図1に示すように、本鍵盤装置には、鍵構造体100の上方においてパネル部76が設けられている。パネル部76は、不図示の各種操作子や表示部を備えると共に、それより後方部分を目隠しする目隠し部としての役割も果たしている。ここで、木質部60は、鍵胴体部BODは、パネル部76より後方まで延設されているので、鍵胴体部BODと鍵ベース体40の基端部40aとの境目が奏者からは見えないようになっており、外観を向上させている。
このように、鍵胴体部BODの長手方向における側面に木質部60の木質面である側面60a、60bを配したので、鍵操作時には奏者から木質部60が視認され、木質感が付与される。また、長尺の鍵胴体部BODと鍵ベース体40とを一体に動作可能にすると共に、鍵ベース体40の延設部40bを鍵胴体部BODの長手方向に沿って略平行に形成し、さらに延設部40bには、被キーガイド部42等の、鍵としての機能を発揮する複数の鍵機能部を一体に形成したので、従来のように、木質鍵を採用して木質部分を加工することで鍵機能部を得る場合に比し、それらの機能や形状に関する設計の自由度が高く、加工精度の点でも優れることから、精度の高い鍵機能を確保することが容易である。よって、鍵に木質感を付与しつつ、鍵機能部の設計の自由度を高めて高精度の鍵機能を容易に確保することができる。
しかも、従来の、木の母材表面に樹脂等を貼着した鍵構造体に比し、加工が容易で、均質な鍵構造体を安価に製造することが可能である。よって、低コストで鍵に木質感を付与することができる。
また、鍵ベース体40を樹脂で形成したので、鍵機能部を含め、設計の自由度、耐久性及び耐摩耗性を高めることができ、鍵機能の一層高い精度を長期に亘って維持することができる。さらに、木質部60が鍵構造体100においていわゆる中詰まり状態となっていることから、高剛性が確保される。
また、鍵構造体100の後端部の回動支点41と、鍵構造体100の先端部に相当する上板体50の前部50aとの間であって長手方向における中間部に木質部60を設けたので、従来のように、アコースティックピアノ用の木製鍵を流用し、回動支点を長手方向における中間位置に設けてシーソー型の鍵として構成することなく、木質感が得られる。また、従来に比し、回動支点より後方部分の長さを短くすることができる。よって、鍵に木質感を付与しつつ、長手方向における小型化及び軽量化を図ることができる。
また、鍵ベース体40は、回動支点41と被キーガイド部42等の「他要素係合部」とを含んで樹脂で一体に形成した樹脂部材で成るので、これら他要素係合部を木質材で構成する場合に比し、容易に高精度が得られ、且つ形状の自由度も高い。しかも、従来のように、鍵構造体を、単に回動支点や他要素係合部を含んで樹脂等で一体に形成しただけであれば、木質感が全く得られないだけでなく、木製鍵に比べれば鍵としての剛性が低いことから、タッチ感にも悪影響が生じる。しかし、本実施の形態では、木質部60が鍵構造体100においていわゆる中詰まり状態となっていることから、高剛性が確保される。そして、高剛性により、各他要素係合部に押鍵力が正確に伝わるので、タッチ検出精度向上によるタッチ感向上につながる。また、鍵構造体100の反り変形の抑制にも寄与する。よって、鍵に木質感を付与しつつ、鍵機能の精度を維持すると共に、剛性を高めることができる。
ところで、木質部60を、白鍵用の鍵構造体1にのみ設けることで、コストが削減され、しかも側面のうち黒鍵が隣接しない部分においてのみ設けることで、木質部20を必要最小限の範囲に配して、木質感を維持しつつ一層のコスト削減を図ることができる。
なお、木質感を付与する観点からは、鍵構造体100の構成は例示したものに限られず、図3(a)〜(d)に示すような構成も採用可能である。
図3は、第1の実施の形態の鍵構造体の他の例を示す図である。同図(a)〜(d)では、該他の例の図2(a)に対応する断面図を示す。
例えば、図3(a)の例では、上記上板部50及び鍵ベース体40に相当する部分が樹脂で一体に形成されている。すなわち、上板部10aと下板部10cとが連結部10bで連結され、断面形状は、「H」を横倒させた形になっている。この例では、木質部は木質部20L、20Rに分けて構成され、連結部10bの左右両側に配設されることで、鍵構造体が構成される。
また、図3(b)の例では、樹脂製の上板部31から下方に向けて突条部31aを設ける一方、連結部32aと下板部32bとを樹脂で一体に形成し、連結部32aの上部には突条部31aに嵌合的な溝状凹部32aaを設ける。そして、上板部31の突条部31aを連結部32aの凹部32aaに接着嵌合させ、図3(a)の例と同様に木質部20L、20Rを配設することで、一体に結合した鍵構造体が構成される。
また、図3(c)に示すように、2本の連結部33b、33cで、上板部33aと下板部33d、33eを連結するように樹脂で一体に形成してもよい。この場合は、両連結部33b、33c間に凹部35が形成される。そして、上記木質部20L、20Rより薄い木質部34L、34Rが連結部33b、33cの外側に配設されることで、鍵構造体が構成される。
また、図3(d)に示すように、いずれも樹脂製の上板部36と下板部38とで木質部37を上下方向から挟み、接着して、一体に結合した鍵構造体を構成してもよい。
図4(a)は、本発明の第1の実施の形態の鍵構造体100の先端部の側面図である。図4(b)は、同先端部の底面図、図4(c)は、図4(b)のG−G線に沿う断面図、図4(d)は、図4(c)のX1部の拡大図である。
鍵構造体100の先端部は、平面視で幅広となっている(図2(a)参照)。すなわち、図4(a)に示すように、上板部50の幅広部50hの下方に、幅広部50hと略同幅の木質部60の幅広部60hが存在する。そして、図4(a)〜(c)に示すように、鍵構造体100の先端部において、木質部60の幅広部60hには、略直方体状の凹状逃げ部121が下方に開口して形成される。凹状逃げ部121は、例えば座グリ加工により形成される。また、凹状逃げ部121に対応する鍵ベース体40の部分には、被キーガイド部42に連接して凸状嵌合部47が設けられる。すなわち、被キーガイド部42は、鍵構造体100の先端部から押鍵方向に垂下した一対の垂下部であり、回動支点41を中心に鍵構造体100が回動するとき、動作ガイドされるためのものである。そして、この一対の垂下部に連接して上方に凸状嵌合部47が形成される。さらに、この凸状嵌合部47が凹状逃げ部121に嵌合されている。
凸状嵌合部47は、図4(c)に示すように、水平方向の壁47U及び鉛直方向の両壁47A、47Bで構成される。壁47Uは、木質部60のザグリ加工した凹状逃げ部121の上端部(鍵表面方向端部)にて閉じるように形成され、これにより閉面部を構成している。凸状嵌合部47の内側に、鍵動作ガイド75と摺接する凹部47aが形成される。この凸状嵌合部47は、後述するように、「潤滑剤避け機構部」としても機能する。なお、上記凹部47aは、鍵ガイド部として構成してもよい。
被キーガイド部42の構成を言い換えると、次のようになる。すなわち、被キーガイド部42は、主として、上記一対の垂下部の左右内壁42aと、これら左右内壁42aに連設されて、少なくとも左右内壁42aの下端位置から木質部60の下面60d位置まで押鍵方向に貫通した穴とから構成される。被キーガイド部42はまた、上記一対の垂下部の上部から鍵表面方向に向かって延設された一対の延設部である両壁47A、47Bを有し、木質部60には、上記延設部に対応する部分にザグリ加工による凹部である凹状逃げ部121が設けられている。
ここで、仮に、鍵動作ガイド75の高さを、押鍵時において鍵ベース体40の上面位置にまで抑える程度に小さく形成すれば、凹状逃げ部121は不要となる。その場合でも、被キーガイド部の上下方向の長さを鍵ベース体40の上下方向の厚みの分だけは確保できるので、上記押鍵方向に貫通した穴は、少なくとも、被キーガイド部42の下端位置から木質部60の下面60dと同一平面の位置まで貫通していればよい。すなわち、凹部47aの下面に相当する位置が木質部60の下面60dと面一であってもよい。その分だけでも、押鍵動作ガイド機能は、凹部47aの下面に相当する位置が鍵ベース体40の下面と面一である場合に比し、安定する。本実施の形態では、上述したように、凸状嵌合部47を、木質部60の凹状逃げ部121内に設け、その内部に鍵動作ガイド75が摺動可能としたので、押鍵動作ガイド機能が一層安定している。
また、図4(a)からわかるように、上板体50の前部50aは前木口部材に相当するが、この前部50aは、上板体50から正面視で鍵ベース体40に重なるまで木質部60に沿って延設され、被キーガイド部42に隣接している。これにより、前部50aにおけるつなぎ目が正面から見えるようなことがなく、外観が良好である。また、前部50aにつなぎ目がないので、鍵動作ガイド時においてひっかかりがなく、被キーガイド部42の安定したガイド性が得られる。
ここで、図4(c)、(d)に示すように、鍵並び方向における幅の設定は次のようになっている。まず、鍵構造体100の先端部の幅は、上板部50の幅広部50hの幅及び木質部60の幅広部60hの幅に等しく、これを「B0」とする。また、凹状逃げ部121の幅を「W0」、鍵動作ガイド75の幅を「B1」、凸状嵌合部47の鉛直方向の壁47A、47Bの幅をそれぞれ「B2」、「B3」、凸状嵌合部47の壁47A、47Bと木質部60との間隙を左右両側共に「B4」とする。すると、凹状逃げ部121の幅W0について、W0=B1+B2+B3+B4+B4が成立する。
一般のピアノで採用されている「標準鍵」と呼ばれる鍵の幅広部の幅は、およそ21〜23mmであるが、本実施の形態では、B0=22.5mmとする。ところで、鍵動作ガイド75は、その機能を確実に果たすためには、十分な剛性が必要であるので、その幅B1は、5.25mmに設定されている。凸状嵌合部47の両壁47A、47Bの幅B2、B3は、剛性確保の観点で、いずれも2.5mmに設定されている。また、凹状逃げ部121と凸状嵌合部47との寸法ばらつきを考慮して、間隙B4の狙い寸法は、0.5mmに設定される。
かかる状況から、適切な強度を有する鍵動作ガイド75を実装するためには、少なくとも凹状逃げ部121の幅W0を11.25mm以上に設定する必要がある。そこで、本実施の形態では、幅W0は11.25mmに設定され、従って、幅B0に対して50%の値に設定されている。
ここで、鍵動作ガイドの十分な剛性を確保する観点で、凹状逃げ部121の幅W0の、鍵構造体100の先端部の幅B0に対する比率を50%以上にすることは、他の幅の鍵についても同様に適用することができる。すなわち、鍵幅に応じて、鍵動作ガイドや凸状嵌合部の壁厚の適切値も変わるので、結局、鍵動作ガイドが適切に機能するために最低限必要な凹状逃げ部121の幅W0は、鍵構造体100の先端部の幅B0に対して50%以上、ということになる。
ところで、木質部60に凸状嵌合部を設けてそこに収容すべき機能部としては、鍵動作ガイド75以外に、上記した質量体駆動部43や鍵アクチュエータ44のような駆動部のほか、LED等の発光部、静電容量素子等のセンサ部、ピエゾ素子等の検知部等が考えられる。これら、鍵構造体100とは別部品として構成される機能部のほとんどは、幅W0の範囲内に収まるサイズであるので、上記50%以上という設定により、実装できる機能部の種類や範囲が実質的に広がる。
なお、質量体駆動部や鍵アクチュエータ等の機能部は、例えば、上板体50と一体に形成されて、上板体50から下方に垂下して設けられる場合がある。この場合は、凹状逃げ部121に代えて木質部60において貫通穴を設け、垂下する機能部が該貫通穴を貫通して垂設されるようにすれば、上記と同様の幅設定を活かすことができる。
一方、凹状逃げ部121の幅W0の最大許容値を検討すると、木質部60(の幅広部60h)の加工容易性に基づく制約から定めるのが、木質系の鍵構造体では好ましい。すなわち、木質部60の幅加工は、通常、回転工具等の切削工具で切削加工によってなされる。ところが、凹状逃げ部121の幅W0を大きく設定したために、木質部60の側部の肉厚があまりに薄くなると、加工が容易でなくなる。例えば、2mm以下、特に1mm程度になると、鍵幅加工の際に当て板を行う等の特殊な加工が必要になったり、木の加工に適した適切な切削条件で加工を行うことが困難になったりする。
かかる事情から、木質部60を含んだ加工を適切な加工条件で行う観点から、木質部60の側部の肉厚を最低限2mm程度確保するのが望ましく、これを考慮すれば、標準鍵では、凹状逃げ部121の幅W0の最大許容値を、約18mmに設定するのが望ましい。従って、比率でいえば、凹状逃げ部121の幅W0は、鍵構造体100の先端部の幅B0に対して80%以下に設定すれば、ほぼあらゆる鍵幅の鍵構造体に対して適用することができる。各種機能部の実装の自由度の観点を合わせて考えると、結局、幅W0は、幅B0に対して50〜80%の範囲で設定するのが好ましいといえる。
また、上板部50と、凸状嵌合部47の水平方向の壁47Uとの間に、木質部60の肉厚を数mm確保したので、上板部50と木質部60との接着により上板部50の上面の窪みが生じることを防止し、演奏面の均質化により、良好な外観を確保するだけでなく、演奏時における違和感を少なくすることができる。
ところで、鍵動作ガイド75の幅はB1であって、凸状嵌合部47の凹部47aの幅とほぼ同じである。従って、鍵動作ガイド75と凹部47aとが円滑に摺接するために、鍵動作ガイド75及び凹部47a間には潤滑剤(図示せず)が設けられる。ここで、凸状嵌合部47は、凹部47a内の潤滑剤と木質部60の主に凹状逃げ部121との間を遮断し、潤滑剤が木質部60側に浸入しないようにする「潤滑剤避け機構部」の役割を果たす。しかも、潤滑剤は、鍵動作ガイド75と凹部47aとでほぼ密閉状態とされ、揮発することがほとんどない。これらにより、木質部60の変色を防止できるだけでなく、潤滑剤が、拡散、変質により正常に機能しなくなることが防止される。
ここで、上記特許文献1で示される鍵構造体でも、木質部に設けられた凹部内に横振れ防止ピンが収容されるように構成されている。しかし、横振れ防止ピンは、その外周に被嵌されたプラスチックカバーの穴に対して摺動するように構成されているので、ここに潤滑剤を塗布することになる。そうすると、潤滑剤が常に空気に触れ、揮発したり変質したりして、やがて横振れ防止ピンが円滑に機能しなくなると考えられる。従って、潤滑効果を長期間維持する観点では、本発明の第1の実施の形態の構成の方が有利である。
なお、凸状嵌合部47の潤滑剤避け機構部としての機能を果たすのは、鍵動作ガイド75に対してだけではない。すなわち、機能部が、凹状逃げ部121内において押離鍵動作時に凹部47aに対して摺動関係になる場合であって、その機能部に潤滑剤塗布される場合は、その機能部に対する凸状嵌合部47の潤滑剤避け機構部としての機能が有効である。
本実施の形態によれば、木質部60により木質感が付与される。また、幅広部60hに形成される凹状逃げ部121の幅W0が、鍵構造体100の先端部の幅B0に対して50%以上80%以下の範囲で設定されたので、良好な加工性を維持しつつ、鍵構造体とは別部品として構成される機能部の実装の自由度を高めることができる。また、凸状嵌合部47により、鍵動作ガイド75に付着している潤滑剤から木質部60が遮断されるので、長期に亘って潤滑性能を維持することができる。
〈第1の実施の形態の変形例〉
図5は、本実施の形態の変形例Iに係る鍵構造体の先端部の断面図であり、図4(c)に対応している。
図4(a)〜(d)の例では、上板体50と鍵ベース体40とは別体で構成されたが、図5に示す変形例Iでは、鍵ベース体40に相当する部材がなく、木質部60に相当する木質部52が上板体50に相当する上板体48の上部下面に固定される。そして、凹状逃げ部121に相当する逃げ部122が木質部52に設けられる。逃げ部122の幅の設定は、凹状逃げ部121と同様であり、上板体48乃至木質部52の幅広部の幅に対して50〜80%の範囲で設定される。鍵動作ガイド75の構成は図4の例と同一である。
また、図4(a)〜(d)の例では、「潤滑剤避け機構部」である凸状嵌合部47は鍵ベース体40と一体に形成された。しかし、図5の変形例Iでは、凸状嵌合部47に相当する潤滑剤避け機構部51が、上板体48と一体に形成される。すなわち、上板体48の垂下部基端部51Uと、垂下部基端部51Uから下方に垂設される垂下部51A、51Bとで、潤滑剤避け機構部51が構成され、潤滑剤避け機構部51の内側に、鍵動作ガイド75と摺接する凹部51aが形成される。潤滑剤避け機構部51により、鍵動作ガイド75に付着している潤滑剤から木質部52が遮断される。
従って、図5に示す変形例Iによっても、図4の例と同様の効果を奏することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係る鍵構造体を含む鍵盤装置の部分断面図である。一例として、本発明の第2の実施の形態の鍵構造体200は、B鍵用として構成される。同図において、鍵構造体200については右側面図が表されている。鍵構造体200は、白鍵に適用されるが、黒鍵にも適用してもよい。なお、以降、本鍵盤装置や鍵構造体200の奏者側を前方と呼称する。
鍵構造体200は、鍵ベース体68の上部に木製の木質部67が固定され、さらに木質部67に上板体123が固定されて成る。上板体123は、前部である前木口部材81と、鍵操作面を提供する上板部66とが合成樹脂で一体に形成されて成る。なお、前木口部材81と上板部66とは別体で構成してもよい。木質部67は、長手方向において上板部66とほぼ同じ長さを有し、上板部66の下面に接着されると共に、木質部67の先端67bに前木口部材81の後面が接着されている。
鍵ベース体68は、長手方向において木質部67とほぼ同じ長さに合成樹脂で一体に形成される。鍵ベース体68の上部に、木質部67の下面67aが接着される。また、鍵構造体200は、鍵ベース体68の後端部に設けられた回動支点126を中心として先端部が上下方向に回動自在になっている。
フレーム82には、鍵復帰用バネ69及び押鍵リミッタ83等が設けられる。鍵復帰用バネ69は、鍵構造体200を常に上方に付勢し、押鍵された鍵構造体200を元の非押鍵位置に復帰させる。押鍵リミッタ83は、鍵構造体200の先端部と当接して、鍵構造体200の押鍵終了位置(下限である回動終了位置)を規制する。押鍵リミッタ83は、その回動規制機能が最も適切に働くように、極力、鍵構造体200の最先端部と当接するように配置され、具体的には、鍵ベース体68の先端部68a及び前木口部材81の双方に対する下方に配置される。
前木口部材81と鍵ベース体68の先端部68aとの間には、長手方向における間隙CL1が設けられる。これにより、木質部67が温度、湿度等の環境変化によって伸縮、変形しても、前木口部材81と鍵ベース体68とが干渉することがないので、前木口部材81と鍵ベース体68とが押し合うような現象が回避される。従って、前木口部材81と木質部67、あるいは鍵ベース体68と木質部67との剥離発生等、環境変化に起因する固定状態の悪化が防止され、鍵構造体200の耐久性が確保される。間隙CL1は、木質部67の伸縮、変形の量を考慮して最小限に設定される。
間隙CL1を確保した状態で、さらに、前木口部材81を平面視コ字状(三方が囲まれる形状)に構成することで、前木口部材81のみを手で持って鍵構造体200の移動、取り付け、取り外し作業を行う際、前木口部材81の破損防止に役立てることができる。
また、鍵ベース体68の先端部68aはやや下方に突出しており、その下端68aaは、前木口部材81の下端81aよりも下方に位置する。これにより、押鍵操作等で鍵構造体200が下方に回動したとき、押鍵リミッタ83には、鍵ベース体68の先端部68aの下端68aaが当接するが、前木口部材81の下端81aは当接することがない。これにより、押鍵終了時に、前木口部材81に上方への外力が加わらないので、押鍵動作の繰り返しによる前木口部材81と木質部67との固定状態の悪化が防止され、鍵構造体200の耐久性が確保される。一方、鍵構造体200の押鍵終了位置は、下端68aaと押鍵リミッタ83との当接で規制されることになるが、上記のように、間隙CL1は最小限(例えば、1mm程度)に設定されるので、押鍵リミッタ83は、鍵構造体200のほぼ最先端部と当接することができ、十分な回動規制機能が確保される。
また、前木口部材81の下端81aよりも、木質部67の最下部である下面67aの方が上方に位置するように、木質部67が配されている。奏者側からは、前木口部材81の下端81aより上方部分が見えないため、このように木質部67を配することで、木質感を確保しつつ、木質部67を構成する木材の無駄を少なくして有効利用が図られる結果、鍵構造体200の小型、軽量化が図られる。
本実施の形態によれば、木質感を付与し、且つ適切な回動規制機能を確保しつつ、前木口部材81乃至鍵ベース体68と木質部67との環境変化に起因する固定状態の悪化、及び、前木口部材81と木質部67との押鍵動作に起因する固定状態の悪化を回避して、耐久性を確保することができる。また、木質部67の無駄を少なくして鍵構造体200の小型、軽量化を図ることができる。
なお、押鍵リミッタ83は、通常の押鍵による鍵構造体200の押鍵終了位置を規制するものに限定されず、強押鍵時や、鍵構造体200に押鍵以外の強い外力が上方から加えられた場合等において、鍵構造体200の回動終了位置を規制するものであってもよい。
〈第2の実施の形態の変形例〉
ところで、押鍵終了位置が規制される際に、押鍵リミッタ83等の規制部材と前木口部材との当接を回避して、前木口部材と木質部との固定状態悪化を防止するという観点からは、上記図6の構成に限定されることはなく、例えば、図7に示す変形例II−1〜II−4、あるいは図8に示す変形例II−5のような構成であってもよい。
図7(a)〜(d)は、本発明の第2の実施の形態の変形例II−1、II−2、II−3、II−4に係る鍵構造体の先端部の右側面図である。なお、図7(a)〜(c)において、押鍵リミッタ83の構成及び配置は図6に示すものと同様である。また、図7(a)〜(d)において、図示しない構成部分は、図6に示す例と同様である。
同図(a)に示す変形例II−1では、前木口部材85が短く、木質部84の下面より前木口部材85の下端85aの方が高い位置にある。鍵ベース体86は、鍵ベース体68の先端部68aのように下方に突出していないが、長手方向において、前木口部材85の下端85aの位置まで延設されている。そして、前木口部材85の下端85aより鍵ベース体86の先端部下端86aの方が下方に位置する。
同図(b)に示す変形例II−2では、前木口部材88は変形例II−1と同様に短く、鍵ベース体89は、長手方向において、木質部84の先端位置まで延設される。そして、前木口部材88の下端88aより鍵ベース体89の先端部下端89aの方が下方に位置する。
同図(c)に示す変形例II−3では、前木口部材91が木質部84の下端まで延設される。鍵ベース体92は、長手方向において、木質部84の先端位置まで延設される。そして、前木口部材91の下端91aより鍵ベース体92の先端部下端92aの方が下方に位置する。
変形例II−1〜II−3のいずれの場合も、押鍵動作時において、前木口部材85、88、91は、押鍵リミッタ83に対して当接しないので、押鍵動作の繰り返しによる木質部84との固定状態の悪化が防止される。
同図(d)に示す変形例II−4では、押鍵リミッタの構成のみが図6の例と異なる。すなわち、押鍵リミッタ183は、鍵ベース体68の先端部68aの直下に配置され、前木口部材81は、押鍵リミッタ183の前端位置よりも前方に位置する。従って、押鍵操作等で鍵構造体200が下方に回動したとき、押鍵リミッタ183に鍵ベース体68の先端部68aの下端68aaが当接する点では図6の例と同様であるが、さらに、強押鍵時等、鍵構造体200に非常に強い力が加わったような場合であっても、下端68aaは押鍵リミッタ183に絶対に当接しない。
これにより、非常の操作状態に対しても、前木口部材81と木質部67との固定状態の悪化が確実に防止され、鍵構造体200の耐久性が確保される。
図8は、本発明の第2の実施の形態の変形例II−5に係る鍵構造体の先端部の右側面図である。図示しない構成部分は、図6に示す例と同様である。
本変形例II−5の鍵構造体300は、図6に示す鍵構造体200と同様に、鍵ベース体97の上部に木製の木質部95が固定され、さらに、前木口部材96と上板部94とで構成される上板体124が、木質部95に固定されて成る。押鍵リミッタ83の構成及び配置は図6に示すものと同様である。
木質部95の先端95bは、鍵ベース体97の先端97aよりも奏者側方向(前方)に位置することで、木質部95の先端部下面95aが露出している。また、上板体124の前木口部材96の下端96aよりも、木質部95の先端部下面95aの方が下方に位置する。これにより、押鍵動作時において、鍵構造体300の押鍵終了位置は、木質部95の露出した先端部下面95aと押鍵リミッタ83との当接で規定され、前木口部材96と押鍵リミッタ83との当接は回避されるので、押鍵動作の繰り返しによる前木口部材96と木質部95との固定状態の悪化が防止される。
これらの変形例によれば、適切な回動規制機能を確保しつつ、押鍵動作に起因する前木口部材と木質部との固定状態の悪化を回避して耐久性を向上させる点で、図6に示す例の構成と同様の効果を奏することができる。また、特に、変形例II−1、II−2、II−5では、前木口部材85、88、96と鍵ベース体86、89、97とが接していないので、環境変化に起因する固定状態の悪化防止についても同様の効果が期待できる。
第2の実施の形態においては、前木口部材81乃至鍵ベース体68と木質部67との固定状態の悪化を回避することに着目したが、これに限るものではない。例えば、前木口部材81が木質部67及び鍵ベース体68に対して固定されておらず、且つ上板部66と木質部67とが接着等で固定されている場合であっても、上記のような環境変化や押鍵動作に起因する上板部66と木質部67との固定状態の悪化を回避することができる。これにより、鍵構造体200の先端部の故障を回避して、耐久性を確保することができる。
ところで、木質部の無駄を少なくして鍵構造体の小型、軽量化を図るという観点からは、木質部を配する態様について、上記図6の構成に限定されることはなく、例えば、図9に示す変形例II−6のような構成であってもよい。
図9は、本発明の第2の実施の形態の変形例II−6に係る鍵構造体の先端部の右側面図である。本変形例II−6の鍵構造体は、鍵ベース体101の上部に木製の木質部99が固定され、さらに木質部99に上板体127が固定されて成る。変形例II−6では、前木口部材98の下端98aよりも、木質部99の最下部である下面99bの方が上方に位置するように、木質部99が配されており、この点では、図6に示す例と同様である。
隣接する白鍵である鍵構造体が押鍵され、当該押鍵された隣接鍵が押鍵終了位置にあるとき、当該押鍵された隣接鍵の押鍵面位置(以下、「隣接鍵押鍵面位置」と称する)を「L2」で示す。側面視において、当該押鍵された隣接鍵の隣接鍵押鍵面位置L2と木質部99の先端との交点を「P1」で示す。木質部99の上面99aから前木口部材98の下端98aまでの距離を「H3」、上面99aから口棒部上面102までの距離を「H4」、上面99aから交点P1までの距離を「H5」とする。
一般に、ピアノにおいて、前木口部材の下部は口棒部に隠れて見えないので、通常、H3>H4が成立する。また、一般に、隣接鍵の先端は、押鍵時においても口棒部より下方にはいかないので、通常、H4>H5が成立する。また、鍵構造体の側部において、上記隣接鍵押鍵面位置L2より下方は、演奏時に見えないので、木質部99の存在により木質感を与えるためには、上記隣接鍵押鍵面位置L2より上方の領域に木質部99を配すれば十分である。
これらのことから、木質部99の最下部である下面99bが水平であるとする場合は、下面99bが交点P1より高くない範囲で極力上方にあるのが望ましい。従って、図9に示すように、下面99bが交点P1よりやや低い位置となるよう、木質部99が配されている。
この変形例II−6によれば、木質感を付与すると共に、木材の無駄を一層効率よく少なくして鍵構造体の小型、軽量化を最大限に図ることができる。
なお、変形例II−6において、下面99bを、上記隣接鍵押鍵面位置L2より下方において上記隣接鍵押鍵面位置L2に略平行に形成してもよい。
なお、木質部の無駄を少なくするという観点に限定すれば、木質部99を固定保持する保持部材としては上板体127のみでもよく、鍵ベース体101は保持部材としては不要である。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図10は、第3の実施の形態に係る鍵構造体を含む鍵盤装置の部分断面図である。一例として、本発明の第3の実施の形態の鍵構造体400は、B鍵用として構成される。同図において、鍵構造体400については右側面図が表されている。鍵構造体400は、白鍵に適用されるが、黒鍵にも適用してもよい。なお、以降、本鍵盤装置や鍵構造体400の奏者側を前方と呼称する。
鍵構造体400は、鍵ベース体55の上部に木製の木質部54が固定され、さらに木質部54に上板体125が固定されて成る。上板体125は、前部である前木口部材128と、鍵操作面を提供する上板部53とが合成樹脂で一体に形成されて成る。上板体125と鍵ベース体55とで、木質部54を保持する「保持部材」が構成される。なお、前木口部材128と上板部53とは別体で構成してもよい。木質部54は、長手方向において上板部53とほぼ同じ長さを有し、上板部53の下面及び前木口部材128の後面に接着されている。
鍵ベース体55は、長手方向において木質部54とほぼ同じ長さに合成樹脂で形成され、鍵ベース体55の上部に、木質部54の下面が接着される。また、鍵構造体400は、木質部54の後端部に設けられた回動支点21を中心として先端部が上下方向に回動自在になっている。
鍵構造体400の上方においてパネル部76が設けられている。パネル部76は、不図示の各種操作子や表示部を備えると共に、それより後方部分を目隠しする目隠し部としての役割も果たしている。従って、長手方向における鍵構造体400の奏者側端部から回動支点21までの間においては、パネル部76より前方部分が、演奏時及び非演奏時に外観となって視認される「見えがかり部位R1」であり、パネル部76より後方部分が、「非見えがかり部位R2」である。
また、フレーム56の上面56aには、機能部としての鍵復帰用バネ57等が設けられる。鍵復帰用バネ57は、鍵構造体400を常に上方に付勢し、押鍵された鍵構造体400を元の非押鍵位置に復帰させる。鍵復帰用バネ57は、鍵構造体400の後端部に設けられた逃がし部58内に収容される。
すなわち、非見えがかり部位R2において、鍵構造体400の後端部に対応する木質部54の部分には、逃げ部54aが形成され、この逃げ部54aに沿って、鍵ベース体55にも逃げ部55aが形成されることで、逃がし部58が構成されている。鍵復帰用バネ57は、逃げ部55aの下面とフレーム56の上面56aとの間に係止されている。ここで、鍵復帰用バネ57は、所定の状態(例えば、押鍵途中状態)において長さH2程度であるのが適正状態であるとする。同図の例では、逃げ部55aの下面とフレーム56の上面56aとの間隔がH2であるので、鍵復帰用バネ57が適切に装着されている。
ところが、仮に、逃がし部58が設けられておらず、鍵ベース体55の下面が一様に水平であるとすると、鍵復帰用バネ57が装着される距離がH1となり、このままでは実装スペースが不足する。従って、鍵構造体400をフレーム56に対して上方に離間させ、距離H2が確保されるように設計しなければならない。
よって、図10に示すように、逃がし部58を設けたことで、鍵復帰用バネ57を実装する際、フレーム56と鍵構造体400との間隔を短く設定できるので、上下方向の省スペースが図られる。さらに、逃がし部58の逃がし量の分だけ、木質部54の無駄が少なくなって鍵盤装置が軽量化される。しかも、逃がし部58は、非見えがかり部位R2に設けられるので、木質感は良好に確保される。
なお、逃がし部58に相当する逃がし部に収容される機能部としては、鍵復帰用バネ57に限定されない。少なくとも鍵動作を実現するための機能部であればよく、例えば、鍵スイッチアクチュエータ、質量体駆動部、鍵抜け止め部材のほか、鍵及びハンマをそれぞれの回動支点に押しつける側面視S字状バネ、さらには、センサ部、検知部等が考えられる。特に、S字状バネのように、長手方向に長い機能部を実装する際には、上下方向のスペース上の制約が少なくなることで、長手方向の省スペースにも繋がる。
本実施の形態によれば、木質感を付与しつつ鍵盤装置の小型、軽量化を図ることができる。
なお、第3の実施の形態では、木質部を固定的に保持する保持部材が、別体の上板体125及び鍵ベース体55で構成されるものを示したが、これに限るものでなく、木質部が上板体のみに保持される構成、あるいは上板体と鍵ベース体とが一体に形成されて構成された保持部材に木質部が保持される構成にも本発明を適用可能である。
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4の実施の形態に係る鍵構造体を含む鍵盤装置の部分断面図である。本発明の第4の実施の形態では、上記した第3の実施の形態に対し、鍵構造体の逃がし部の形状が異なり、そのため、木質部及び鍵ベース体の形状が異なる。その他の構成は、第3の実施の形態と同様である。
図11に示すように、本発明の第4の実施の形態の鍵構造体500は、鍵ベース体63の上部に木製の木質部62が固定され、さらに木質部62に上板体125が固定されて成る。上板体125、フレーム56、鍵復帰用バネ57及びパネル部76の構成は、第3の実施の形態のものと同様である。上板体125と鍵ベース体63とで、木質部62を保持する「保持部材」が構成される。
同図において、隣接する白鍵である鍵構造体が押鍵され、当該押鍵された隣接鍵が押鍵終了位置にあるとき、当該押鍵された隣接鍵の押鍵面位置(以下、「隣接鍵押鍵面位置」と称する)を「L1」で示す。パネル部76より前方部分における木質部62の下面62aは、鍵構造体500の先端部から後方にいくにつれて上方に傾斜している。この下面62aは、下面62aの長手方向の全範囲で、隣接鍵押鍵面位置L1より低い位置に設定され、且つ隣接鍵押鍵面位置L1に略平行である。これにより、木質感が確保されつつ木質部62の無駄が効率よく排される。また、鍵ベース体63の傾斜部63aは、木質部62の下面62aに接着されており、同様の角度で傾斜している。
これにより、鍵構造体500の下方において、鍵ベース体63の傾斜部63aから鍵構造体500の後部にかけて、フレーム56との間に大きいスペースである逃がし部64が形成される。また、隣接鍵押鍵面位置L1より下方且つ後方の部位であって、パネル部76より後方の部位が、非見えがかり部位であり、逃がし部64は、この非見えがかり部位に形成されることになるので、外観に悪影響がなく、木質感は良好に確保される。
そして、鍵復帰用バネ57が、上記第3の実施の形態と同様に、逃がし部64内に実装される。鍵復帰用バネ57が係止される位置では、逃がし部64の上下方向の長さ(高さ)は逃がし部58と同じであり、従って、上記第3の実施の形態と同様に、上下方向の省スペースが図られる。さらに、逃がし部64は、上記逃がし部58(図10参照)に比し大きいので、木質部62の無駄が一層減少する。
なお、逃がし部64は、その十分な広さ及び高さを確保できることから、押離鍵検出センサ(鍵スイッチ、若しくは押鍵直後から鍵から指が離れるまでを検出する全行程センサ)を配することができる。
本実施の形態によれば、木質感を付与しつつ鍵盤装置の小型、軽量化を図ることに関し、第3の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、最小限の木質部にて良好な木質感を確保し、木質部を効率よく節約することができる。
なお、逃がし部64に収容される機能部としては、鍵復帰用バネ57に限定されないことは、第3の実施の形態と同様である。
なお、第1〜第4の実施の形態において、木質感付与の観点に限って言えば、木質部は木材でなくても、木質系材であればよく、例えば、木目調の化粧板(印刷、コート、塗装、つき板等も含む)、合板、木質材(MDF)等を採用してもよい。