以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子鍵盤楽器の概略の縦断面図である。以降、本電子鍵盤楽器の奏者側(鍵11(黒鍵11B、白鍵11W)の先端方向)を「前方」と呼称し、左右方向については、奏者からみた方向で呼称する。
本電子鍵盤楽器の筐体は、下ケース30、上ケース40及び側板19で構成される。本実施の形態では、電子鍵盤楽器としての機能を果たす「機能部品」として、上ケース40を例示する。
下ケース30は、底板31と口棒部32とでなり、底板31の前部に金具33を介して口棒部32が螺着固定されている。底板31は、例えば4本の円柱型の脚部27で支持される。底板31の上面31aに樹脂製等の鍵フレーム10が配設固定され、鍵フレーム10に、鍵盤部KB及び複数のハンマ体20が配設される。
鍵盤部KBは、例えばオクターブ毎に構成され、合成樹脂で各々一体成形された黒鍵ユニットBU、及び、互いに隣接しない白鍵同士の組み合わせとなるように2分割された白鍵ユニットWUから成る。黒鍵ユニットBUは共通基端部13を有し、2つの白鍵ユニットWUはそれぞれ共通基端部14、15を有する。共通基端部13、14、15が互いに上下方向に積層されて3層構造となっている。積層された共通基端部13、14、15は、上方からネジ29によって鍵フレーム10に固定されている。
黒鍵ユニットBUは、複数の黒鍵11Bを有し、白鍵ユニットWUは、複数の白鍵11Wを有する。黒鍵11Bは、その鍵本体部が水平ヒンジ部18を介して共通基端部13に接続されている。白鍵11Wは、その鍵本体部が水平ヒンジ部17及び垂直ヒンジ部16を介して共通基端部14、15に接続されている。黒鍵11B、白鍵11Wは、各々、水平ヒンジ部18、17を介して押鍵方向(上下方向)に揺動自在にされる。
鍵11は左右方向に複数配列され、各鍵11の下方には、各鍵11に対応するハンマ体20が配設される。鍵フレーム10には、支点機構部28が設けられ、支点機構部28におけるハンマ支点P1を中心に、各ハンマ体20が図1の時計及び半時計方向に揺動自在になっている。ハンマ体20の前端部には、主被駆動部21及び副被駆動部22が設けられている。
各鍵11には、ハンマ駆動部12(12W、12B)が垂下して設けられる。ハンマ体20の主被駆動部21及び副被駆動部22は、対応する鍵11のハンマ駆動部12と常に係合状態にあり、対応する鍵11に連動してハンマ体20が揺動するようになっている。奏者による押鍵操作に応じて、鍵11のハンマ駆動部12により主被駆動部21が駆動され、ハンマ体20が同図反時計方向(押鍵方向に対応する方向)に回動することで、適正な押鍵感触が与えられる。
ハンマ体20は、後端部に集中した自身の質量によって、同図時計方向(離鍵方向に対応する方向)に常に付勢されており、初期状態である非押鍵状態では、図1に示す位置に位置する。鍵11の押鍵状態から離鍵されると、ハンマ駆動部12により副被駆動部22が駆動され、鍵11が非押鍵位置に復帰する。
鍵フレーム10の前後方向中央部には、スイッチ基板94が取り付けられ、スイッチ基板94には、各鍵11に対応して鍵スイッチ95が配設されている。各鍵スイッチ95は、対応する鍵11の鍵本体部の下面によって押圧され、当該鍵11の押鍵操作を検出する。
ところで、底板31の上面31aは面一であり、鍵フレーム10は、底板31の上面31aに対して不図示の位置決め部を基準として前後及び左右方向の位置が規定されると共に、上面31aによって上下方向の位置が規定されて、不図示のネジで上面31aに固定されている。
底板31の上面31aにはまた、基準部材50が配設される。本実施の形態では、基準部材50は、上ケース40が位置決めされつつ固定され、鍵フレーム10と上ケース40との相対的な位置関係を規定するものであり、その詳細については後述する。側板19は、本楽器の左右両側部に配設される。
上ケース40は、いずれも樹脂等でなるパネル部41及び背面カバー42で構成される。背面カバー42の上端部にパネル部41の後部が連結固定されている。上ケース40は、本楽器の後半部を上方及び後方から覆うように配設される。特に、パネル部41は、鍵盤部KBの後部から後方にかけて上方を覆う後方上面部となっている。
パネル部41の下面には、複数の取付部44を介してパネル基板45が取り付けられる。パネル基板45には、操作スイッチ46が配設され、操作スイッチ46は、パネル部41を貫通して上方に露出している。パネル基板45には、操作スイッチ46の他に、各種操作態様のスイッチや表示部が配設されていてもよい。パネル基板45の下面にはまた、基準部材50に取り付けられるための複数(例えば4つ)のボス43が突設される。
上ケース40の背面カバー42の前面には、楽音発生用の回路基板35が配設される。回路基板35には、楽音信号生成部(音源)、CPU、アンプ、外部接続端子等が設けられる。上記鍵スイッチ95によって検出された鍵操作に基づいて、回路基板35によって楽音制御がなされる。あるいは、記憶された、または外部から供給される演奏データに基づいて楽音制御がなされる。
背面カバー42の下部は、前方に屈曲した延設部49となっている。上ケース40が基準部材50に固定された状態では、延設部49が底板31の下面に当接する。背面カバー42の上下方向中間位置には、前方に突出して位置決め片48が一体に形成されている。位置決め片48は、下駄の歯のような左右2枚の片が対となっていて、板状部50aの鉛直板部51を挟持する。位置決め片48(の特に右側の片の左端面)は、基準部材50に対する背面カバー42の左右方向における位置を規制する役割を果たす。
上ケース40及び下ケース30は、本楽器の左右方向全長に亘る長さに構成される。上ケース40のパネル部41及び背面カバー42と、下ケース30の底板31及び口棒部32とに、左右の側板19が不図示のネジで固定される。ただし、下ケース30に対する上ケース40の前後及び左右方向における位置は、基準部材50で規制されるものである。側板19が固定される上ケース40の箇所には、例えば、前後方向に長い長穴が設けられる。そして、該長穴を介して、パネル部41及び背面カバー42が、不図示のネジで側板19のネジ穴にそれぞれ螺合固定されている。
図2は、基準部材50を斜め後方上方からみた斜視図である。基準部材50は、金属等の剛性の高い素材で一体に形成される。本実施の形態では、基準部材50は、本楽器の左右方向におけるほぼ中央位置に1つ設けられる。基準部材50は、概略の形状としては、並列配置された2枚の板状部50a、60aを2つのブリッジ70、72で一体に連結した形状を呈している。板状部50a、60aの板状の部分は前後及び上下方向に平行で、板状部50aが右側となるように底板31に配設される。
図1、図2に示すように、板状部50aは、側面視コ字状に形成され、鉛直板部51と上側延設部52と下側延設部53とでなる。上側延設部52の上縁には、右方に屈曲形成された取付片56が一体に2つ設けられ、各取付片56には取付穴56aが形成される。上側延設部52の前後方向におけるほぼ中間位置には、下方に垂下した位置決め片58が一体に形成される。位置決め片58の右側面58aであって根本からは、鉤部59が下方に向かってプレス加工等によって一体に突設形成されている。
鉛直板部51の後縁には、右方に屈曲形成された取付片55が一体に2つ設けられ、各取付片55にはネジ穴55aが形成される。取付片55の後面55bは上下及び左右方向に平行である。あるいは、背面カバー42が斜めに形成される場合は、後面55bも、背面カバー42と平行に斜めに形成してもよい。下側延設部53の右側面53aからは、鉤部57が前方に向かってプレス加工等によって一体に突設形成されている。下側延設部53の下部には、右方に屈曲形成された固定用片54が一体に形成される。固定用片54には、固定用ネジ穴54aが2つ形成される。
これら、固定用片54、取付片55、56、位置決め片58等は、例えば、プレス切断及びプレス加工により折曲形成される。基準部材50が樹脂で構成される場合は、各部は金型によって一体に成形される。
ここで、板状部50aの右側面50aaは平坦面であり、位置決め片58の右側面58a、下側延設部53の右側面53aは、いずれも右側面50aaと連続した面一で実質的に同じ平坦面である。
板状部60aの基本的構成は板状部50aと同様である。板状部60aは、側面視コ字状に形成され、鉛直板部61と上側延設部62と下側延設部63とでなる。板状部60aにおける、取付片66、取付穴66a、位置決め片68、鉤部69、取付片65、ネジ穴65a、後面65b、鉤部67、固定用片64が、板状部50aにおける取付片56、取付穴56a、位置決め片58、鉤部59、取付片55、ネジ穴55a、後面55b、鉤部57、固定用片54に相当する。ただし、取付片56、固定用片64の各屈曲方向は左方である。
後に説明するように、鍵フレーム10及び上ケース40の基準部材50に対する左右方向の位置決めについては、板状部50aの右側面50aa(位置決め片58の右側面58a、下側延設部53の右側面53aを含む)のみが実質的にその役割を果たし、板状部60aの右側面60aaは位置決めに寄与しない。
図2に示すように、板状部50a、60aの間隔は問わないが、例えば、1オクターブに相当する間隔である。また、板状部60aは2枚以上並列に設けてもよい。ブリッジ70、72は、2つの取付片55、65の上方位置で板状部50aと板状部60aとを連結している。ブリッジ70、72の上方には、腕部71、73がブリッジ70、72と平行に延設されている。腕部71、73は、板状部50aと板状部60aの双方から互いに対向する方向に延設され、片持ち状態で左右方向中間位置まで延びている。腕部71、73は、本実施の形態では使用せず、使用態様の一例については後述する変形例(図5)で説明する。腕部71、73は、回路基板や配線止め用の固定具の取り付け部として利用することも可能である。
図1に示すように、固定用片54が底板31の上面31aに当接した状態で、下方からネジ34が底板31を貫通して固定用ネジ穴54aに螺合されている。固定用片64についても同様で、不図示の固定用ネジ穴を用いて螺着固定されている。これらにより、基準部材50が底板31に固定される。
ところで、図1に示すように、鍵フレーム10の後部上部には、共通基端部13、14、15のすぐ後方に位置する垂直壁24と、垂直壁24の下部から後方に延設された水平壁23が形成される。水平壁23の下面には、ハンマストッパ(図示せず)が取り付けられる。垂直壁24と水平壁23とに連接して上側垂直リブ25が一体に形成されている。また、鍵フレーム10の後部下部には、下側垂直リブ26が一体に形成されている。
上側垂直リブ25、下側垂直リブ26は、いずれも上下及び前後方向に平行で、基準部材50に対する鍵フレーム10の前後及び左右方向の位置決め機能を果たす。これらリブ25、26は、いずれも鍵並び方向に多数設けられるが、左右方向の位置決め機能を果たすものは各1つであって、その他のものは基準部材50に対して当接しないか、または、位置決めの支障とならないような位置に設けられる。以下、上側垂直リブ25、下側垂直リブ26につき、特に区別しないときは、これら位置決め用の上側垂直リブ25、下側垂直リブ26のことを指すものとする。位置決め用の上側垂直リブ25、下側垂直リブ26は、本楽器の左右方向における中央位置に形成される。中央位置は厳格なものではなく、左右方向の位置決めによって、基準部材50の板状部50aの右側面50aaが設計上、極力中央位置にくるように、上側垂直リブ25、下側垂直リブ26の形成位置が設定されるのが最良である。
本実施の形態では、板状部50aの右側面50aa(位置決め片58の右側面58a、下側延設部53の右側面53aを含む)に、上側垂直リブ25、下側垂直リブ26及び背面カバー42の位置決め片48が当接し、それによって、基準部材50を基準として、鍵フレーム10と上ケース40との左右方向における相対的な位置が規定されるようになっている。
具体的には、まず、位置決め片58の右側面58aと上側垂直リブ25との当接、及び下側延設部53の右側面53aと下側垂直リブ26との当接によって、鍵フレーム10と基準部材50との左右方向における相対的な位置が規定される。また、板状部50aの右側面50aa(特に鉛直板部51の右側面50)と上ケース40の位置決め片48との当接によって、上ケース40と基準部材50との左右方向における相対的な位置が規定される。
前後方向の位置決めは次のように規制される。まず、鉤部57、鉤部67の各根本部57a、67a(図2参照)に、それぞれ位置が対応している下側垂直リブ26の後端が突き当たることで、鍵フレーム10と基準部材50との前後方向における相対的な位置が規定される。ここで、下側垂直リブ26については、板状部50aに対応するもののみを設けると共に、根本部67aについては前後方向の位置決めに関与しないように構成してもよい。
また、取付片55、65の各後面55b、65bと上ケース40の背面カバー42の前面との当接によって、基準部材50に対する上ケース40の前後方向における相対的な位置が規定される。
ここで、基準部材50において、鉤部57、59と右側面50aa(右側面53a、右側面58a)との間隔は、鉤部67、69と右側面60aaとの間隔よりも狭くなっている。そのため、板状部50aに位置が対応している位置決め用の上側垂直リブ25、下側垂直リブ26については、それぞれ、鉤部59と位置決め片58の右側面58aとの間、鉤部57と下側延設部53の右側面53aとの間に挟持される形となる。
しかし、板状部60aに位置が対応している位置決め用でない上側垂直リブ25、下側垂直リブ26については、鉤部69と位置決め片68との間、鉤部67と下側延設部63との間に遊嵌される形となる。なお、各鉤部59、69、57、67は、先端に向けて広がるようなテーパが設けられていて、リブ25、26の挿入が容易になっている。左右方向の位置決めをすることに限れば、各鉤部を設けることは必須でなく、板状部50aの右側面50aaに当接する部分があればよい。さらには、板状部60a自体も必須でない。
基準部材50及び上ケース40の組み付けは、次のようになされる。まず、下ケース30の底板31に鍵フレーム10を配設固定し、鍵フレーム10に鍵盤部KB及びハンマ体20を配設する。一方、パネル部41及び背面カバー42を接着、螺着または嵌合等で固定して上ケース40を作製する。そして、背面カバー42の位置決め片48を基準部材50の板状部50aの右側面50aaに当接させた状態で、基準部材50の取付片56、66の取付穴56a、66a(図2参照)を介して、パネル部41のボス43(図1参照)にネジ47を螺合する。これにより、基準部材50に上ケース40が前後及び左右方向において位置決めされた状態で固定される。
次に、基準部材50と上ケース40とが一体となったものを、鍵フレーム10が固定された下ケース30に対して後方から配設する。その際、鉤部59、69と板状部50a、60aの位置決め片58、68との間に上側垂直リブ25が挿入されると共に、鉤部57、67と板状部50a、60aの下側延設部53、63との間に下側垂直リブ26が挿入されるように基準部材50を移動させる。
そして、鉤部57、鉤部67の各根本部57a、67aにそれぞれ位置が対応している下側垂直リブ26の後端が突き当たるまで基準部材50を前方に移動させる。その際、固定用片54、64を底板31の上面31aに当接させると共に、延設部49を底板31の下面に当接させる。すなわち、固定用片54、64と延設部49とで、底板31を挟み込むような形で後方から係合させる。その状態で、下方からネジ34で底板31に固定用片54、64を固定する。
その後、左右の側板19を上ケース40及び下ケース30に対して固定する。なお、上ケース40と下ケース30の底板31とは、基準部材50による前後及び左右方向の位置決めに支障がないような形で互いに固定されるように構成してもよい。
本実施の形態によれば、基準部材50の鉤部57、鉤部67の各根本部57a、67aが、鍵フレーム10に対する基準部材50の前後方向の相対的な位置を位置決めする「第1前後位置決め部」となり、基準部材50の右側面53a、右側面58aが、鍵フレーム10に対する基準部材50の左右方向の相対的な位置を位置決めする「第1左右位置決め部」となる。また、基準部材50の取付片55、65の後面55b、65bが、機能部品である上ケース40に対する基準部材50の前後方向の相対的な位置を位置決めする「第2前後位置決め部」となり、板状部50aの右側面50aaが、上ケース40に対する基準部材50の左右方向の相対的な位置を位置決めする「第2左右位置決め部」となる。
これらの位置決め部によって、基準部材50を基準として、鍵フレーム10と上ケース40との前後及び左右方向の位置決めが正確になされる。よって、上ケース40の寸法精度を過剰に高くすることなく、鍵盤部KBに対する上ケース40の前後及び左右方向の相対的な位置精度を確保することができる。
特に、板状部50aの右側面50aaは、上ケース40に対して、本電子鍵盤楽器の左右方向における中間位置で当接するので、上ケース40につき、左右方向の長さに製造誤差があっても、左右端部において生じる位置ずれが小さくなる。よって、上ケース40の左右方向において必要とされる寸法精度を大きく緩和することができる。
しかも、基準部材50の右側面53a、右側面58aと、基準部材50の板状部50aの右側面50aaとは、連続した面一な同じ平坦面であるので、鍵フレーム10と上ケース40との左右方向における相対的な位置精度を高めることができる。
さらに、底板31の面一な上面31aに、鍵フレーム10と基準部材50とが固定されることによって、両者の上下方向の相対的な位置が規定されるので、基準部材50に固定される上ケース40につき、鍵フレーム10に固定される鍵盤部KBに対する上下方向の相対的な位置精度も確保することができる。
(第2の実施の形態)
図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る電子鍵盤楽器の後半部の概略の縦断面図である。本実施の形態では、上ケース40に代えて上ケース140(本例では特に上ケース140−1と記す)が採用される。それに対応して、基準部材50において、上ケース40に対する前後、左右方向の相対的な位置をそれぞれ位置決めする「第2前後位置決め部」、「第2左右位置決め部」の構成が異なる。「第1前後位置決め部」、「第1左右位置決め部」の構成については変わりない。
基準部材50については、腕部71、73を省略した点、位置決め突起74、75を設けた点、及び、板状部50aは1枚であるが板状部60aは複数枚設けられる点が、第1の実施の形態のものと異なる。板状部50aは、本楽器の左右方向中間位置に配置され、板状部60aは、図示はしないが、板状部50aの左右両側に、楽器の全幅に亘ってほぼ均等間隔に(例えば、1オクターブ毎に)配置される。また、上側延設部52、62には、取付片56、66が3箇所に設けられる(上側延設部62、取付片66は図3(a)では図示せず:図2参照)。ブリッジ70、72は、すべての板状部50a、60aを連結している。その他の構成は同様である。
まず、基準部材50の板状部50aの右側面50aaであって、特に上側延設部52の右側面に、位置決め突起74、75が一体に突設形成されている。位置決め突起74、75は板状部60aには設けられない。
一方、上ケース140−1については、パネル部と背面カバーとが一体となった形で構成され、後部下部には、二股状の係合部81が形成される。上ケース140−1のパネル部に相当する部分の下面には、位置決め片48(図1参照)に相当する位置決め片82が突設形成されている。位置決め片82は、本楽器の左右方向中間位置に1つだけ設けられる。位置決め片82の構造は、下駄の歯のような左右2枚の片が対となっている点で位置決め片48(図1参照)と同様である。
下ケース30の底板31の後端部には、被係合部83が立設される。被係合部83には、外部スピーカ接続用端子やUSB端子等の端子部96が設けられる。係合部81と被係合部83とが嵌合状態で係合すると共に、上ケース140−1のパネル部の下面に基準部材50の取付片56、66がネジ47で螺着固定されることで、上ケース140−1が基準部材50及び下ケース30に対して固定される。被係合部83は、上ケース140−1と共に、筐体のうち背板部としての役割も果たす。
また、基準部材50の上側延設部52、62の前部下部には、押鍵表示機構86が配設された表示部配設部85が固着される。表示部配設部85は、ほぼ本楽器の全幅に亘る長さに板状に形成され、すべての板状部50a、60aに亘って固着される。押鍵表示機構86には、LED等でなる複数の押鍵表示部88が、各鍵11に対応して配設される。
上ケース140−1のパネル部のうち、押鍵表示部88に対応する部分は半透明となっている。押鍵表示部88は、その上部が、上ケース140−1のパネル部の上記半透明の部分を介して視認可能になっている。押鍵表示部88は、演奏データに従って発光し、演奏ガイドにおける押鍵すべき鍵を指示する。表示部配設部85の上部には、位置決め突起89が1つ突設される。位置決め突起89は、本楽器の左右方向中間位置に1つだけ設けられる。位置決め突起89は、表示部配設部85の上にはんだ付け等で設けられる。
表示部配設部85の下面には、基端部押圧部87が垂下して固定されている。基端部押圧部87は、表示部配設部85の全長に亘って配設される。本実施の形態では、鍵取り付け部である積層された共通基端部13、14、15を、ネジ29(図1参照)に代えて、基端部押圧部87で押さえるようになっている。共通基端部13、14、15の抜け止めを確実にするために、共通基端部15の後部からは係合爪90が下方に延設され、係合爪90が鍵フレーム10に対して貫通して係合している。
組み付け時には、この係合爪90にて、共通基端部13、14、15を一体にして仮止めしつつ基端部押圧部87で共通基端部13、14、15を押さえて固定する。また、ネジ34を締め付けることで、基端部押圧部87は共通基端部13、14、15を下方に強く押さえつけるようになる。従って、共通基端部13、14、15を固定するためのネジが不要となる。
本実施の形態では、「機能部品」として、上ケース140−1、表示部配設部85を例示する。まず、基準部材50と鍵フレーム10との、前後及び左右方向の位置決めについては第1の実施の形態と同様である。上ケース140−1、表示部配設部85の、基準部材50に対する前後及び左右方向の位置決めについては、板状部50aのみが実質的にその役割を果たし、板状部60aは位置決めに寄与しない。すなわち、板状部60aは、位置決めの支障とならないような位置に設けられる。
上ケース140−1に関して、本実施の形態では、板状部50aの右側面50aa(特に上側延設部52の右側面)に、上ケース140−1の位置決め片82が当接することで、上ケース140−1と基準部材50との左右方向における相対的な位置が規定される。その結果、基準部材50を基準として、鍵フレーム10と上ケース140−1との左右方向における相対的な位置が規定される。
また、前後方向については、位置決め突起75の後端に位置決め片82の前端が当接することで、鍵フレーム10と上ケース140−1との前後方向における相対的な位置が規定される。その結果、基準部材50を基準として、鍵フレーム10と上ケース140−1との前後方向における相対的な位置が規定される。
表示部配設部85に関しては、板状部50aの右側面50aa(特に上側延設部52の右側面)に、表示部配設部85の位置決め突起89が当接することで、表示部配設部85と基準部材50との左右方向における相対的な位置が規定される。その結果、基準部材50を基準として、鍵フレーム10と表示部配設部85との左右方向における相対的な位置が規定される。
また、前後方向については、位置決め突起89の後端に位置決め突起74の前端が当接することで、表示部配設部85と基準部材50との前後方向における相対的な位置が規定される。基準部材50を基準として、鍵フレーム10と表示部配設部85との前後方向における相対的な位置が規定される。
基準部材50及び上ケース140−1の組み付けは、次のようになされる。まず、下ケース30に鍵フレーム10、鍵盤部KB及びハンマ体20を配設する点は第1の実施の形態と同様である。さらに、底板31に被係合部83を立設する。
一方、上ケース140−1の位置決め片82を、基準部材50の板状部50aの右側面50aaと位置決め突起75の後端とに当接させた状態で、基準部材50の取付片56を介して上ケース140−1にネジ47を螺合する。これらにより、基準部材50に上ケース140−1が前後及び左右方向において位置決めされた状態で固定される。その後、すべての板状部60aについても、各々の取付片66(図2参照:図3(a)では図示せず)を介してネジ47を螺合する。
一方、表示部配設部85に、押鍵表示部88を含む押鍵表示機構86、及び基端部押圧部87を配設固定しておく。表示部配設部85は、上ケース140−1の固定の前または後に、基準部材50に固定される。その際、基準部材50の位置決め突起74の前端に位置決め突起89の後端が当接するようにしつつ、表示部配設部85の上面を基準部材50の上側延設部52、62の前部下縁に接着等によって固定する。なお、上側延設部52、62の前部下縁に、取付片56と同様の取付片を設け、この取付片に表示部配設部85をネジ止めで固定するようにしてもよい。
次に、基準部材50に上ケース140−1と表示部配設部85とが固定され一体となったものを、鍵フレーム10が固定された下ケース30に対して上方且つ後方から配設する。その際、係合部81と被係合部83とが嵌合されるようにする。鉤部59、69と上側垂直リブ25、鉤部57、67と下側垂直リブ26とを係合させる態様は、第1の実施の形態と同様である。
その後、下方からネジ34で底板31に固定用片54、64を固定することで、係合部81と被係合部83との嵌合状態が強まった状態で、基準部材50、上ケース140−1及び表示部配設部85が鍵フレーム10及び下ケース30に対して固定状態となる。左右の側板19の固定については、第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態によれば、上ケース140−1の寸法精度を過剰に高くすることなく、鍵盤部KBに対する上ケース140−1の前後及び左右方向の相対的な位置精度を確保することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
さらに、機能部品である表示部配設部85が、基準部材50に前後及び左右方向の位置を規制されて固定されるので、表示部配設部85に配設される基端部押圧部87、押鍵表示部88についても、寸法精度を過剰に高くすることなく、鍵盤部KB(特に共通基端部13、14、15や各鍵11)に対する前後及び左右方向の相対的な位置精度を確保することができる。特に、押鍵表示部88については、対応する鍵11の直後に配設され、左右方向の位置ずれがあると目立つため、位置決めの効果は高い。
また、上ケース140−1は、背面カバー42(図1参照)を廃止した構成であり、あるいは鍵盤部KBの後部から後方にかけての上方を覆うパネル部と背面カバーとを一体に構成したものと把握することもできる。これにより、構成が簡単で、ネジ止め数も少なくて済む。
ところで、本実施の形態において、上ケース140について、形状が異なる複数種類を用意しておき、そのうち1つを選択して実際に配設できるようにしてもよい。例えば、上ケース140−1に代えて上ケース140−2を採用した例を、図3(b)に示す。
上ケース140−2は、上ケース140−1に比し、後部が後方に拡張された点が異なり、前半部の構成は全く同一である。後部の拡張部分の内部には、スピーカボックス76が設けられ、スピーカボックス76にはスピーカ84が配設される。放音穴の図示は省略されている。
このように、基準部材50に対する固定部分の構成が同じ上ケース140を複数種類用意しておき、選択したものを基準部材50に固定するようにすることで、後部の筐体形状の異なる異機種間で、下ケース30と基準部材50とを共通化することができる。種類数は3以上でもよい。なお、他の機能部品についてもこれを応用できる。例えば、表示部配設部85の構成を同じくして、表示部配設部85に配設された基端部押圧部87、押鍵表示部88の構成を異ならせたものを複数種類設けてもよい。
前述の第1の実施の形態において、図4で、パネル部等を改良した変形例を説明する。図4は、変形例の電子鍵盤楽器の後部上部の概略の縦断面図である。
この例では、上ケース40のパネル部41には、見かけ上黒色の半透明部41aが設けられる。これは、特許第3882604号公報で示されるのと同様の構成である。半透明部41aの下方において、非接触型のタッチスイッチ部97が配設される。タッチスイッチ部97は、プリント基板上に非接触の静電誘導型の指検知部(タッチスイッチ)が多数配設されてなるセンサ集合体であり、特開2006−189515号公報等で示されるような、いわゆるパネルスイッチと同様のものである。
タッチスイッチ部97は、前後の取付片56、66に橋渡しされる形で取り付けられる。タッチスイッチ部97からは、被位置決片98が垂下して設けられる。被位置決片98は、位置決め片48(図1参照)と同様に、下駄の歯のような左右2枚の片が対となって構成されている。被位置決片98が基準部材50の上側延設部52を上方から挟持するようにタッチスイッチ部97が配設される。被位置決片98(の特に右側の片の左端面)が、上側延設部52の右側面に当接することで、基準部材50に対するタッチスイッチ部97の左右方向における位置を規制する役割を果たす。
タッチスイッチ部97には、特定のスイッチが設けられることがあるが、上記位置規制によって、その特定のスイッチが、特定の鍵11に対して、左右方向の位置が対応乃至一致するようになる(特開2006−189515号公報参照)。このようなスイッチ構造にも、本発明は有効である。
ところで、前述の第1の実施の形態において、基準部材50の腕部71、73の使用態様を他の変形例として説明する。
図5(a)は、基準部材50の腕部71、73を後方に延ばした状態を示す斜視図である。基準部材50が金属で構成される場合は、初期状態では左右方向に屈曲延設されている腕部71、73を90°曲げて後方に延ばすことができる。さらに、腕部71、73の先端部を右方に屈曲させて、屈曲された先端部の後端面である取付面71b、73bが左右方向に平行になるようにする。腕部71、73の先端部には、ネジ穴71a、73aが設けられている。
上ケースについて、形状が異なる複数種類を用意しておき、そのうち1つを選択して実際に配設できるようにする。例えば、図1に示した上ケース40に代えて上ケース40−2を採用した例を、図5(b)に示す。上ケース40−2は、パネル部41−2及び背面カバー42−2で構成される。パネル部41−2が、鍵盤部KBの後部から後方にかけて上方を覆う後方上面部となる。上ケース40−2は、上ケース40に対して後部が後方に拡張している。後部の拡張部分の内部にはスピーカ84が配設される。スピーカ84は、スピーカ保持部材91によって基準部材50に取り付けられている。すなわち、スピーカ84が取り付けられたスピーカ保持部材91の取付部91a、91bが、基準部材50に係合固定されている。パネル部41−2、上ケース40−2には、それぞれ、放音穴93、92が設けられている。
この例では、背面カバー42−2の固定に取付片55、65を用いず、代わりに、腕部71、73の取付面71b、73bに背面カバー42−2の前面を当接させ、ネジ穴71a、73aに螺着することで、上ケース40−2が、前後方向の位置を規制されつつ基準部材50に固定される。上ケース40−2については、基準部材50に対する他の固定部分の構成と前半部の構成は、図1の例と同一である。
このように、上ケース40を複数種類用意しておき、選択したものに応じて基準部材50の腕部71、73の姿勢を変え、基準部材50に固定するようにすることで、後部の筐体形状の異なる異機種間で、下ケース30と基準部材50とを共通化することができる。なお、他の機能部品についてもこれを応用できる。
なお、第1の実施の形態において、基準部材50を左右方向に複数配設してもよい。その場合、それらのうち1つの基準部材50だけを前後、左右方向の位置決めに用いる。また、その場合において、基準部材50の腕部71、73を、図5(a)に示すよりもさらに外側に90°曲げ、隣接する基準部材50の腕部71、73同士を連結してもよい。
なお、「機能部品」としては、上記各実施の形態で例示したもののほか、鍵11の後部上方に配設される鍵暴れ防止部、USB等の端子部、パネルスイッチ、あるいはこれらが配設される配設部等が考えられる。鍵暴れ防止部は、鍵支点が鍵の長手方向中間部にあってハンマ体を有さず、鍵が鍵スイッチを押下して鍵の下限位置が規制されるような鍵盤構成において特に有効である。