JP3758590B2 - 鍵構造体及び鍵盤装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、木質部を有する鍵に適用される鍵構造体及び鍵盤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、質感向上等のため、鍵として機能する鍵構造体に木材を採用することが行われている。また、このような鍵構造体を鍵として複数有して成る鍵盤装置も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、木質系の鍵構造体としては、その入手性から、アコースティックピアノ用の木製鍵が流用される場合が多く、長手方向の長さが長いだけでなく、重量もかさむという問題があった。
【0004】
また、鍵構造体には回動支点が必要となるが、アコースティックピアノ鍵の場合は、通常、回動支点が鍵構造体の長手方向における途中に設けられ、いわゆるシーソー型の鍵として構成されるため、回動支点が後端部に設けられる鍵に比し、回動支点より後方部分の長さ分だけ長手方向の長さが長くなり、鍵構造体が一層長大化する一因になっている。
【0005】
さらに、鍵構造体には通常、質量体や鍵スイッチ等の他要素を駆動、乃至他要素と係合するための係合部が設けられる。しかしながら、これら係合部が木質であると、木工加工精度の問題で、駆動部に高精度を要求できない。その一方、鍵構造体を、回動支点や上記係合部を含んで樹脂等で一体に形成した場合は、木質感が全く得られないだけでなく、木製鍵に比べれば鍵としての剛性が低いことから、タッチ感にも悪影響が及びがちである。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、鍵に木質感を付与しつつ、長手方向における小型化及び軽量化を図ることができる鍵構造体を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、鍵に木質感を付与しつつ、鍵機能の精度を維持すると共に、剛性を高めることができる鍵盤装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために本発明の請求項1の鍵構造体は、鍵盤装置に取り付けられたとき、回動支点を中心に先端部が回動し、鍵として機能する鍵構造体であって、前記回動支点後端部に設けられた樹脂部と、前記回動支点と前記先端部との間であって長手方向における中間部に設けられた木質部とを有し、前記木質部は、中実であり、前記樹脂部の上に位置し、その前面が樹脂で覆われると共に、その上面には樹脂で覆われた操作面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、鍵に木質感を付与しつつ、長手方向における小型化及び軽量化を図ることができる。
【0010】
第2の目的を達成するために本発明の請求項2の鍵盤装置は、鍵ベース体と演奏操作部とから構成され鍵として機能する鍵構造体を複数有して成る鍵盤装置であって、前記鍵ベース体は、回動支点と他要素係合部とを含んで樹脂で一体に形成した樹脂部材で成ると共に、前記複数の各鍵構造体は、前記鍵ベース体と前記演奏操作部とを一体に結合して構成され、前記各鍵構造体の前記演奏操作部は、少なくとも一部が演奏時に外観となって視認されるように配設された木質部を有し、前記木質部は、中実であり、前記鍵ベース体の上に位置し、その前面が樹脂で覆われると共に、その上面には樹脂で覆われた操作面が形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、鍵に木質感を付与しつつ、鍵機能の精度を維持すると共に、剛性を高めることができる。
【0012】
また、請求項3の鍵盤装置は、上記請求項2記載の構成において、前記鍵構造体の上方に配設された目隠し部を備え、前記演奏操作部は、前記目隠し部より後方まで延設されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、鍵ベース体と演奏操作部との境目が外部から見えないようにして外観を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る鍵構造体を含む鍵盤装置の断面図である。
【0016】
鍵構造体100は鍵として機能し、同図はB鍵とC鍵との間で切断した断面を示す。従って、同図では、B鍵である鍵構造体100については、奏者からみて右側面図が表されている。鍵構造体100は、白鍵に適用されるが、黒鍵にも適用してもよい。なお、以降、本鍵盤装置や鍵構造体100の奏者側を前方と呼称する。
【0017】
鍵構造体100は、鍵ベース体40と鍵胴体部BOD(演奏操作部)とが一体に結合して構成され、鍵胴体部BODは、上板体50と木製の木質部60とから成る。上板体50は、前部50aと、鍵操作面を提供する上板部50bとが樹脂で一体に形成されて成る。木質部60は、上板体50の上板部50bとほぼ同じ長さを有し、上板部50b及び前部50aに接着されることで、上板体50に結合されて、これにより鍵胴体部BODが構成される。
【0018】
鍵ベース体40は、基端部40aと、該基端部40aから前方に延設された延設部40bとが樹脂部材で一体に形成されて成り、さらに延設部40bには、いずれも「他要素係合部」である被キーガイド部42、質量体駆動部43、鍵アクチュエータ44及び鍵脱落防止機構部45が一体に形成されている。延設部40bは、上記鍵胴体部BODの長手方向に略平行に、上板体50の前部50aまで延びている。基端部40aは、鍵構造体100の後端部にも相当する。基端部40aの後部には回動支点41が設けられ、鍵構造体100は、回動支点41を中心として上下方向に回動自在になっている。質量体駆動部43の下端部には、円滑な摺動を確保するためのすべり部材46が装着されている。
【0019】
一方、鍵構造体100の下方には、各鍵構造体100に対応して質量体71が配設される。質量体71の被駆動部71aは、押鍵操作に応じて、鍵ベース体40の質量体駆動部43を介してすべり部材46に駆動される。これによって、質量体71が質量体回動軸72を中心に回動することで、適当な押鍵感触が与えられる。また、本鍵盤装置には、それぞれ2メイク式の第1鍵スイッチ73、第2鍵スイッチ74が設けられる。第1鍵スイッチ73は、鍵ベース体40の鍵アクチュエータ44によって押圧駆動されて、鍵動作を検出する。第2鍵スイッチ74は、質量体71に設けられた鍵アクチュエータ71bによって押圧駆動されて、鍵動作を検出する。両鍵スイッチ73、74が異なるタイミングでオフタッチを含む鍵動作を検出することから、これらの検出結果を基に多彩な楽音制御が可能となっている。
【0020】
本鍵盤装置にはまた、鍵動作ガイド75及び係合部77が設けられる。鍵構造体100の被キーガイド部42は、鍵操作時には、鍵動作ガイド75に案内されて、これにより、鍵構造体100の鍵並び方向(鍵構造体100の左右方向)への揺動が抑制される。鍵脱落防止機構部45は、係合部77と係合して、鍵操作時における鍵構造体100の主として前方への脱落を防止する。
【0021】
図2は、鍵構造体100の各位置での断面を示す図である。同図(a)〜(f)はそれぞれ、図1のA−A線〜F−F線に沿う断面図である。なお、図2はB鍵を例示しているので、隣接する黒鍵(G#鍵)が配設されるための逃げ部を有することから、鍵構造体100の幅は、同図(b)〜(f)では奏者からみた左側(側面100a側)が狭くなっている。
【0022】
図2(a)に示すように、鍵構造体100は、上板体50の上板部50bと鍵ベース体40とで木質部60を挟み込むようにして構成される。鍵ベース体40の延設部40bの上部には、前部から、延設部40bと基端部40aとの接続部近傍に亘って突条部40cが形成される。また、木質部60には、突条部40cに嵌合的な形状をした溝状凹部60cが形成されている。そして、まず、鍵胴体部BODを作成してから、木質部60の溝状凹部60cに延設部40bの突条部40cを嵌合させ、木質部60と延設部40bとを接着することで、鍵構造体100が構成される。
【0023】
木質部60は、鍵構造体100に木質感を付与する役割を果たす。すなわち、押鍵時には、押鍵鍵の隣の鍵の側面の一部が奏者から見えるが、木製の木質部60を鍵構造体100の側面100a、100bに配したことから、奏者にとっては、木質部60の側面60a、60bが視認され、鍵構造体100が上面や前面を除いて木材で構成されているかのように見える。これにより、鍵構造体100に木質感が付与され、高級感が与えられる。
【0024】
また、図1に示すように、本鍵盤装置には、鍵構造体100の上方においてパネル部76が設けられている。パネル部76は、不図示の各種操作子や表示部を備えると共に、それより後方部分を目隠しする目隠し部としての役割も果たしている。ここで、木質部60は、鍵胴体部BODは、パネル部76より後方まで延設されているので、鍵胴体部BODと鍵ベース体40の基端部40aとの境目が奏者からは見えないようになっており、外観を向上させている。
【0025】
本実施の形態によれば、鍵構造体100の後端部の回動支点41と、鍵構造体100の先端部に相当する上板体50の前部50aとの間であって長手方向における中間部に木質部60を設けたので、従来のように、アコースティックピアノ用の木製鍵を流用し、回動支点を長手方向における中間位置に設けてシーソー型の鍵として構成することなく、木質感が得られる。また、従来に比し、回動支点より後方部分の長さを短くすることができる。よって、鍵に木質感を付与しつつ、長手方向における小型化及び軽量化を図ることができる。
【0026】
また、鍵ベース体40は、回動支点41と他要素係合部とを含んで樹脂で一体に形成した樹脂部材で成るので、これら他要素係合部を木質材で構成する場合に比し、容易に高精度が得られ、且つ形状の自由度も高い。しかも、従来のように、鍵構造体を、単に回動支点や他要素係合部を含んで樹脂等で一体に形成しただけであれば、木質感が全く得られないだけでなく、木製鍵に比べれば鍵としての剛性が低いことから、タッチ感にも悪影響が生じる。しかし、本実施の形態では、木質部60が鍵構造体100においていわゆる中詰まり状態となっていることから、高剛性が確保される。そして、高剛性により、各他要素係合部に押鍵力が正確に伝わるので、タッチ検出精度向上によるタッチ感向上につながる。また、鍵構造体100の反り変形の抑制にも寄与する。よって、鍵に木質感を付与しつつ、鍵機能の精度を維持すると共に、剛性を高めることができる。
【0027】
なお、鍵構造体100の構成は例示したものに限られない。
【0028】
図3は、鍵構造体の変形例を示す図である。同図(a)〜(d)では、該変形例の図2(a)に対応する断面図を示す。
【0029】
例えば、図3(a)の例では、上記上板部50及び鍵ベース体40に相当する部分が樹脂で一体に形成されている。すなわち、上板部10aと下板部10cとが連結部10bで連結され、断面形状は、「H」を横倒させた形になっている。この例では、木質部は木質部20L、20Rに分けて構成され、連結部10bの両側に配設されることで、鍵構造体が構成される。
【0030】
また、図3(b)の例では、樹脂製の上板部31から下方に向けて突条部31aを設ける一方、連結部32aと下板部32bとを樹脂で一体に形成し、連結部32aの上部には突条部31aに嵌合的な溝状凹部32aaを設ける。そして、上板部31の突条部31aを連結部32aの凹部32aaに接着嵌合させ、図3(a)の例と同様に木質部20L、20Rを配設することで、一体に結合した鍵構造体が構成される。
【0031】
また、図3(c)に示すように、2本の連結部33b、33cで、上板部33aと下板部33d、33eを連結するように樹脂で一体に形成してもよい。この場合は、両連結部33b、33c間に凹部35が形成される。そして、上記木質部20L、20Rより薄い木質部34L、34Rが連結部33b、33cの外側に配設されることで、鍵構造体が構成される。
【0032】
また、図3(d)に示すように、いずれも樹脂製の上板部36と下板部38とで木質部37を上下方向から挟み、接着して、一体に結合した鍵構造体を構成してもよい。
【0033】
なお、木質部の配設は黒鍵にも同様に適用してもよい。また、本実施の形態では、鍵構造体100の両側面に木質部60を配したが、演奏時に外観となって視認される部分の少なくとも一部に木質部60を配すればよく、押鍵操作面である上面部を除いて両側面以外にも木質部60を配してもよい。例えば、上板部50の前部50aを削除し、鍵構造体100の先端部からも木質部60が視認されるようにしてもよい。一方、これとは逆に、鍵操作時において外観となって視認される部分だけに木質部60を設けるようにしてもよい。すなわち、本実施の形態では、全白鍵用の鍵構造体100の両側面の前部から後部に亘って木質部60を配設したが、木質感を維持しつつコストを削減する観点からは、白鍵用の鍵構造体100の両側面のうち、黒鍵が隣接しない部分においてのみ配設するようにしてもよい。
【0034】
なお、木質感付与の観点からは、木質部は木材でなくても、木質系材であればよく、例えば、木目調の化粧板(印刷、コート、塗装、つき板等も含む)、合板、木質材(MDF)等を採用してもよい。
【0035】
なお、鍵ベース体40は樹脂で構成したが、一体に形成される被キーガイド部42等の他要素係合部の耐久性や性能が維持でき、且つ加工容易な材料であれば、他の材料、例えば金属で構成してもよい。また、すべての他要素係合部を鍵ベース体40と一体に形成する必要は必ずしもなく、一部の他要素係合部についてのみ適用してもい。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1によれば、鍵に木質感を付与しつつ、長手方向における小型化及び軽量化を図ることができる。
【0037】
本発明の請求項2によれば、鍵に木質感を付与しつつ、鍵機能の精度を維持すると共に、剛性を高めることができる。
【0038】
また、請求項3によれば、鍵ベース体と演奏操作部との境目が外部から見えないようにして外観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る鍵盤装置の断面図である。
【図2】 鍵構造体の各位置での断面を示す図である。
【図3】 鍵構造体の変形例を示す図である。
【符号の説明】
100 鍵構造体、 40 鍵ベース体、 40a 基端部(後端部)、 40b 延設部、 41 回動支点、 42 被キーガイド部(他要素係合部の一部)、 43 質量体駆動部(他要素係合部の一部)、 44 鍵アクチュエータ(他要素係合部の一部)、 45 鍵脱落防止機構部(他要素係合部の一部)、 50 上板体、 50a 前部(先端部)、 50b 上板部、 60 木質部、 76 パネル部(目隠し部)、 BOD 鍵胴体部(演奏操作部)

Claims (3)

  1. 鍵盤装置に取り付けられたとき、回動支点を中心に先端部が回動し、鍵として機能する鍵構造体であって、
    前記回動支点後端部に設けられた樹脂部と、
    前記回動支点と前記先端部との間であって長手方向における中間部に設けられた木質部とを有し、
    前記木質部は、中実であり、前記樹脂部の上に位置し、その前面が樹脂で覆われると共に、その上面には樹脂で覆われた操作面が形成されていることを特徴とする鍵構造体。
  2. 鍵ベース体と演奏操作部とから構成され鍵として機能する鍵構造体を複数有して成る鍵盤装置であって、
    前記鍵ベース体は、回動支点と他要素係合部とを含んで樹脂で一体に形成した樹脂部材で成ると共に、
    前記複数の各鍵構造体は、前記鍵ベース体と前記演奏操作部とを一体に結合して構成され、
    前記各鍵構造体の前記演奏操作部は、少なくとも一部が演奏時に外観となって視認されるように配設された木質部を有し、
    前記木質部は、中実であり、前記鍵ベース体の上に位置し、その前面が樹脂で覆われると共に、その上面には樹脂で覆われた操作面が形成されていることを特徴とする鍵盤装置。
  3. 前記鍵構造体の上方に配設された目隠し部を備え、前記演奏操作部は、前記目隠し部より後方まで延設されていることを特徴とする請求項2記載の鍵盤装置。
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