JP2010007150A - 溶鋼炭素濃度推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】実施中の吹錬の挙動を表す脱炭酸素効率モデルの精度を向上させ、吹錬中の炭素濃度を精度良く推定する、溶鋼炭素濃度推定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】脱炭酸素効率を溶鋼炭素濃度の関数として表す脱炭酸素効率モデルによって、吹錬末期に測定した溶鋼炭素濃度の測定値を起点として、それ以降の溶鋼炭素濃度を、送酸量に基いて逐次推定する溶鋼炭素濃度推定方法であって、
前記脱炭酸素効率モデルのパラメータを、対象チャージと類似する過去の操業データから対象チャージ毎に算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、実施中の吹錬の挙動を表す脱炭酸素効率モデルを調整し、吹錬中の炭素濃度を精度良く推定する溶鋼炭素濃度推定方法に関するものである。
転炉吹錬では、吹錬終了時における溶鋼の温度や成分が目標範囲内に収まるようすることが、製品の品質維持、炉耐火物の延命、2次精錬の負荷低減などの観点から非常に重要である。
このため、吹錬操業時には、メインランスから送り込まれる高圧酸素により脱炭素昇温反応を進めるとともに、ランスの高さを調整するなどにより、溶鋼中の成分や溶鋼温度の調整を行っている。また、その際、吹錬中末期にサブランスを炉内に挿入して、溶鋼の温度と溶鋼炭素濃度を測定し、この測定結果に基づいて制御量を修正することにより、溶鋼温度、成分を目標に到達させるようにしている。
吹錬末期に測定した溶鋼温度および溶鋼炭素濃度を起点にして、脱炭酸素効率や昇温酸素効率のモデルを用い、送酸量に応じて終点までの溶鋼温度、溶鋼炭素濃度の推定が行われ、その推定値を参考に吹錬終点を判定する方法がある。このとき使用される脱炭酸素効率モデルは、脱炭、昇温に必要な積算酸素量を求めるモデルとほぼ同じものが用いられ、そのモデル調整方法も同様なものが使われることになる。
溶鋼炭素推定についてのモデルの調整方法としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この技術では、吹錬末期に測定した溶鋼炭素濃度から終点炭素濃度まで脱炭酸素効率の関数を積分して必要酸素量を計算するとき、そのモデルに含まれる複数の係数を操業条件の関数と操業が終了する都度補正される学習項の和として表し、操業条件の関数にふくまれる係数を、吹錬制御の複数回の実績データに基づいて決定し、学習項を実績炭素濃度と目標炭素濃度の誤差に基づいて補正する方法をとっている。
また、特許文献2には、脱炭酸素効率の理論モデルから得られる必要酸素量と実績酸素量の誤差をニューラルネットワークを用いて推定する方法が開示されている。
なお、以下に上述の特許文献とともに、発明の開示で参照する非特許文献についても、あわせて記載する。
特開2001−11520号公報 特開平7−268433号公報 W.N.ヴェナブルズ、B.D.リプリー、S-PLUSによる統計解析、シュプリンガーフェアラーク東京、p402〜411
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、モデルパラメータを新たに回帰するモデルを構築したうえで、誤差項の学習を吹錬終了後に行うという方法であるため、モデルパラメータの回帰モデルという2重構造でメンテナンスが難しい上、吹錬終了後での誤差パラメータ学習であるため、当該チャージの推定精度はその場で調整できないという課題がある。
また、特許文献2に開示されている技術は、モデル誤差をニューラルネットワークで学習させる方法であるが、ニューラルネットワークの学習はあらかじめ十分な実績データを用いて実施しておかなければならず、炉の使用に伴う炉体損耗が与える影響など、逐次変わっていく変化に対応するのは不得手な学習方法である。さらに、モデルを固定して誤差をすべてニューラルネットワークで処理することになり、操業条件変動で脱炭速度の挙動が大きく変化した場合にもその補償内容が限られてしまうという課題がある
本発明は、このような課題を鑑みなされたものであり、実施中の吹錬の挙動を表す脱炭酸素効率モデルの精度を向上させ、吹錬中の炭素濃度を精度良く推定する、溶鋼炭素濃度推定方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る発明は、脱炭酸素効率を溶鋼炭素濃度の関数として表す脱炭酸素効率モデルによって、吹錬末期に測定した溶鋼炭素濃度の測定値を起点として、それ以降の溶鋼炭素濃度を、送酸量に基いて逐次推定する溶鋼炭素濃度推定方法であって、前記脱炭酸素効率モデルのパラメータを、対象チャージと類似する過去の操業データから対象チャージ毎に算出することを特徴とする溶鋼炭素濃度推定方法である。
また本発明の請求項2に係る発明は、脱炭酸素効率を溶鋼炭素濃度の関数として表す脱炭酸素効率モデルによって、吹錬末期に測定した溶鋼炭素濃度の測定値を起点として、それ以降の溶鋼炭素濃度を、送酸量に基いて逐次推定する溶鋼炭素濃度推定方法であって、前記脱炭酸素効率モデルのパラメータを、過去の操業データをあらかじめクラスタリングしておき、そのクラスタの代表パラメータを保存し、保存されたパラメータのうち、対象チャージに近いクラスタのパラメータから選択することを特徴とする溶鋼炭素濃度推定方法である。
さらに本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の溶鋼炭素濃度推定方法において、前記操業データは、サブランス投入時の溶鋼炭素濃度と溶鋼温度、スラグ量、終点溶鋼温度および終点溶鋼炭素濃度のいずれかまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする溶鋼炭素濃度推定方法である。
本発明は上述のような構成をとるようにしているので、溶鋼炭素濃度推定が正確に行われるとともに、終点の温度精度、成分精度の向上が期待でき、製品の品質が向上するとともに、耐火物の延命効果および2次精錬の負荷低減などの効果が得られる。
以下、図面および数式を参照しながら、本発明を具体的に説明してゆく。図3は、吹錬時の溶鋼炭素濃度と脱炭酸素効率の関係を説明する図である。
図3のように脱炭酸素効率には、最大脱炭酸素効率を示す上限値aがあり、吹錬進行によって溶鋼炭素濃度が下がるとともに、実線で示すように脱炭酸素効率も徐々に小さくなり、遷移炭素濃度前後で急に左下がりとなり、脱炭限界炭素濃度で遂には脱炭酸素効率が0になるという挙動をとる。
[第一の実施の形態]
第一の実施の形態では、脱炭酸素効率を溶鋼炭素濃度の関数として表す脱炭酸素効率モデルのパラメータを、吹錬中のチャージと類似の過去実績を用いて最適な値を求めるものである。図1は、本発明に係る溶鋼炭素濃度推定方法の処理手順を示す図である。図に従って、処理内容を以下に説明を行う。
Step01:脱炭酸素効率モデルの関数形式決定
脱炭酸素効率モデルの関数の形を定める処理であり、例えば以下の(1)式のように決める。
dC/dO=f(C,a1,a2,...an)・・・(1)
C:溶鋼炭素濃度
O:送酸量
ai:パラメータ
Step02:関数の積分形の算出
前処理で決めた関数の積分形を、以下の(2)式のように求める。
C(O,a1,a2,...an)=∫(dC/dO) dO ・・・(2)
Step03:類似したチャージの抽出
末期のサブランス投入で測定した溶鋼炭素濃度と溶鋼温度と操業条件、たとえば、終点溶鋼温度目標、終点炭素濃度目標、スラグ量などを用い、これらをベクトル化し、過去実績から類似したチャージを所定数N個抽出する。
Step04:関数パラメータの算出
抽出されたチャージを用い、(2)式を用いて、末期の脱炭量と送酸流量の関係を最も良く表すパラメータa1,...,anを求める。この方法は制約付き非線形最適化計算手法を用いると良い。近年計算機能力は飛躍的に向上しており、推定パラメータ数が少なければこのような最適化計算は数秒以内に収束せさることも可能である。
Step05:溶鋼炭素濃度の推定
前処理で定まったパラメータを(1)式に代入し、その脱炭酸素効率を所定のサンプル周期ごとに、サンプル周期で送酸される酸素量ΔOを用いて計算する。
C(k)=C(k-1) + ΔO*dC/dO(C=C(k-1))・・・(3)
(3)式が決まれば、終点に向けてCを推定しつづけ、その値が終点目標の所定範囲に入った時点で終点判定をすればよいことになる。
[第二の実施の形態]
第二の実施の形態では、上述したようにモデルパラメータa1,...anをチャージ毎に毎回計算するのではなく、あらかじめ用意するようにする。図2は、本発明に係る溶鋼炭素濃度推定方法の他の処理手順を示す図である。Step11およびStep12は、図1で示したStep01およびStep02とそれぞれ同じであるが、図1のStep04「関数パラメータの算出」の手順を、過去の実績データを用いてそれぞれのチャージをクラスタリングするという方法で関数パラメータを事前に準備(Step13)し、対象チャージに近いクラスタのパラメータを抽出する(Step14)という方法をとる。
クラスターの数は、特定するものではないものの、数個〜数十個を目安とするとよい。また、クラスタリング方法には汎用的な方法がいくつか提案されており、ここでは特に規定しないが、たとえば、末期のサブランス投入で得られた途中溶鋼温度、途中炭素濃度、終点溶鋼温度、終点炭素濃度、スラグ量を要素とするベクトルを用い、k-means法などでクラスターを作る方法などが考えられる(例えば、非特許文献1参照)。そして分類された各クラスターごとにパラメータa1,...anを定める。この方法もさまざまな重み平均法や単純平均法などが使用できる。
このようにして、各クラスターを代表するパラメータをa1,...anを定めたら、対象とするチャージの操業条件に最も近いクラスタを求め、そのクラスタのパラメータを採用する。
脱炭酸素効率のモデルはさまざま提案されているが、先ず、第一の実施の形態に対応した実施例では、以下に示す(4)式の関数形とする。
Figure 2010007150
末期のサブランス投入時の炭素濃度をCt、終点時の炭素濃度Cfとし、その間に送酸した酸素量をDO2とすると、(4)式の積分からCfは下記の(5)式で計算できる。
Figure 2010007150
(5)式のパラメータa1,a2,C0を実績データから最適なものにする。ただし、a1は脱炭酸素効率の上限をあらわすため、例えば、装入した酸素量がすべて脱炭に使われたとする脱炭酸素効率100%に対応する値より大きくはなりえない。このため、上限制約が存在する。
また、脱炭の限界炭素濃度C0についても同様に、通常転炉の脱炭での限界値が存在するため、これも下限制約が存在する。このような制約の中で最適パラメータ計算を実施する。
計算に用いるデータは、Step03で記述した方法で集める。類似したデータの収集に使うベクトルの要素には、末期のサブランス投入で測定した溶鋼炭素濃度と溶鋼温度と、終点溶鋼温度目標、終点炭素濃度目標、スラグ量を用いる。
これらを並べたベクトルをつくり、過去実績から距離の近いものを選択する。このとき過去実績のベクトルでは、終点溶鋼温度と終点炭素濃度は実績を用いる。
なお、ベクトルの要素に数値の大きさの違いが大きい場合は、各データの平均値、標準偏差を用いて正規化する方法を使うとよい。例えば、末期サブランス投入時の溶鋼温度Tmiの平均をμ1、標準偏差をσ1とすると、溶鋼温度の正規化データNTmiは、下記の(6)式で表される。
NTmi=(Tmi-μ1)/σ1 ・・・(6)
上記計算を溶鋼温度の過去データすべてについて実施する。同様に、その他の要素、すなわち末期サブランス投入時の溶鋼中炭素濃度、スラグ量、終点溶鋼温度、終点溶鋼炭素濃度についても同様な処理を行う。
正規化されたベクトルで、過去の実績チャージを距離の小さいものから適切な数だけ選択する(N個)。距離は、ベクトル間の距離でユークリッドノルムなどを用いる。このNの決定方法もさまざま考えられるが、例えば、事前にNの値をさまざま変更したシミュレーションを行い、予測誤差が最小となるようなNを求めておくことが可能である。
こうして集めたN個の過去実績データを用い、推定C誤差最小となるパラメータ推定を行う。評価関数は、(5)式で推定されるC予測値と実績C値の誤差の絶対値の和、あるいは二乗誤差の和などを用い、パラメータ推定には制約付非線形最適化計算を用いる。この最適化計算は、過去実績の数は数千点程度でパラメータが3つ程度であれば、汎用計算機程度の能力があれば、数秒で計算が可能である。
本実施例では、a1,C0を固定し、a2のみをチャージごとに最適化した結果について説明を行う。先ず、図4は、固定パラメータによる溶鋼炭素濃度推定誤差分布を示すヒストグラムである。パラメータa2も固定してシミュレーションした結果と実績との誤差を正規化して示しており、シミュレーションしたデータは150チャージで、誤差平均:0.16,誤差標準偏差;1.1となった。なお、正規化は、後述する本発明のモデル予測誤差の標準偏差で割って実施した。
また、図5は、チャージごと最適化したパラメータによる溶鋼炭素濃度推定誤差分布を示すヒストグラムである。上述のパラメータa2を150チャージ毎に最適化してもとめた結果であり、誤差平均:0.18,誤差標準偏差;1.0であった。誤差平均に差はないが、標準偏差が10%程度改善されている。ヒストグラムで見ても誤差分布が中心に集まり、誤差の小さなデータが増加しており、本発明の有効性が確認できている。なお、このケースでは、過去チャージは約4000チャージ参照して、そのなかから上述の条件ベクトルを用いて、200チャージのデータを選んでパラメータ最適化を行った。
次に、第二の実施の形態に対応した、毎回パラメータを最適化するのではなく、あらかじめ求めた最適化パラメータをクラスタリングした実施例について述べる。
現在の汎用計算機のCPUは処理能力が非常に高く、ここで述べたようなデータの検索から、非線形の最適化まで、極短時間に処理することも可能である。しかしながら、製鉄所内のプロセスコンピュータの場合、場所によっては15年以上前の計算機が使われている場合もある。この場合には、上述の最適化計算を数秒で実施するのは困難である。このケースでは、最適化パラメータがいくつか存在し、その中から選択するだけで精度向上が期待できると良いと考え考案したものである。
まずあらかじめ、学習用のデータを準備する(数百チャージ程度でM個とする)。その学習用データですべてに対して、最適化パラメータを計算する。
次に、M個あるチャージをクラスタリングする。その方法はさまざま考えられるが、ここでは下記の(7)式のように条件ベクトルVを定めて、それによるクラスタリングを実施した。
条件ベクトルV=[v1 v2 v3 v4 v5] ・・・・・ (7)
ここで、
v1:末期溶鋼炭素濃度
v2:末期溶鋼温度
v3:スラグ量
v4:終点溶鋼炭素濃度
v5:終点溶鋼温度
本実施例では、k-means法で分類したケースの結果を示す。k-meansは、最初ランダムにクラスタに割り振った各ベクトルを各クラスタの中心からの距離で割り振りなおし、これを繰り返し計算してクラスタを決める方法である。クラスタリングには、このほかファジーc-平均法やエントロピー法などが使える。
分類数は10種類とし、前述の150チャージのデータに対して最適化パラメータが求まっているので、上記ベクトルで10分割し、それぞれのクラスタに分類されたチャージには、そのクラスタ内にあるチャージの各最適化パラメータの平均値を代表パラメータとした。これによって、パラメータ数は10種類となった。
図6は、クラスタリングしたパラメータによる溶鋼炭素濃度推定誤差分布を示すヒストグラムである。結果は、誤差平均:0.13,誤差標準偏差;1.0であり、毎チャージパラメータを最適化した場合(図5)とほぼ同等の推定精度であり、本発明の効果が検証できている。
本発明に係る溶鋼炭素濃度推定方法の処理手順を示す図である。 本発明に係る溶鋼炭素濃度推定方法の他の処理手順を示す図である。 吹錬時の溶鋼炭素濃度と脱炭酸素効率の関係を説明する図である。 固定パラメータによる溶鋼炭素濃度推定誤差分布を示すヒストグラムである。 チャージごと最適化したパラメータによる溶鋼炭素濃度推定誤差分布を示すヒストグラムである。 クラスタリングしたパラメータによる溶鋼炭素濃度推定誤差分布を示すヒストグラムである。

Claims (3)

  1. 脱炭酸素効率を溶鋼炭素濃度の関数として表す脱炭酸素効率モデルによって、吹錬末期に測定した溶鋼炭素濃度の測定値を起点として、それ以降の溶鋼炭素濃度を、送酸量に基いて逐次推定する溶鋼炭素濃度推定方法であって、
    前記脱炭酸素効率モデルのパラメータを、対象チャージと類似する過去の操業データから対象チャージ毎に算出することを特徴とする溶鋼炭素濃度推定方法。
  2. 脱炭酸素効率を溶鋼炭素濃度の関数として表す脱炭酸素効率モデルによって、吹錬末期に測定した溶鋼炭素濃度の測定値を起点として、それ以降の溶鋼炭素濃度を、送酸量に基いて逐次推定する溶鋼炭素濃度推定方法であって、
    前記脱炭酸素効率モデルのパラメータを、過去の操業データをあらかじめクラスタリングしておき、そのクラスタの代表パラメータを保存し、保存されたパラメータのうち、対象チャージに近いクラスタのパラメータから選択することを特徴とする溶鋼炭素濃度推定方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の溶鋼炭素濃度推定方法において、
    前記操業データは、サブランス投入時の溶鋼炭素濃度と溶鋼温度、スラグ量、終点溶鋼温度および終点溶鋼炭素濃度のいずれかまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする溶鋼炭素濃度推定方法。
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