JP2010006775A - シクロアルカノンオキシムの製造方法 - Google Patents

シクロアルカノンオキシムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光ニトロソ化法において、光源としては、水銀やナトリウム等を封入した放電灯ランプに変わる次世代の光源として、発光ダイオードを用いたシクロアルカノンオキシムの製造方法を提供する。
【解決手段】シクロアルカンと光ニトロソ化剤とを、光の照射により光化学反応させる方法において、光源として発光ダイオードを使用し、かつ該光源の波長に対する発光エネルギー分布の中で、最大の発光エネルギーを発生させる波長が400nm〜760nmの範囲にあることを特徴とするシクロアルカノンオキシムの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、光ニトロソ化法において、光源として発光ダイオードを使用したシクロアルカノンオキシムの製造方法に関する。
光反応は光化学反応とも言われ、光照射により分子、すなわちラジカル反応剤にエネルギーを吸収させることで分子をエネルギー準位の高い状態、いわゆる励起状態とし、励起された分子により反応を起こさせる化学反応全般を指す。非特許文献1によれば、光反応には光による酸化・還元反応、光による置換・付加反応などの種類があり、適用用途としては写真工業、コピー技術、光起電力の誘起の他、有機化合物の合成に利用されることが知られている。また、非意図的な光化学反応としては光化学スモッグなども光化学反応に属する。
光化学反応としては特許文献1や非特許文献2に記載の通り、光化学反応により、シクロヘキサノンオキシムを光化学反応により合成することは知られており、またシクロアルカンの光ニトロソ化についても特許文献2に示されるとおり、現在では広く知られた技術である。
これまでに用いられてきた光反応のための光源はいずれも真空または真空に近い環境に水銀やタリウム、ナトリウム、その他金属を封入して電圧を印可し、放出される電子線を封入金属に照射することで、気体または蒸気の中での放電による発光を利用したランプ、例えば放電灯や蛍光灯を光源として使用する場合がほとんどである。
例えば、特許文献1では、高圧水銀灯を光源として、有効波長は365nm〜600nmとしている。しかし、この種の水銀を用いる放電灯は、365nm未満の紫外線を含む波長領域にも水銀による特有の発光エネルギーが存在している。そのため、特許文献3や特許文献4のように、350nm未満の紫外線を含む短波長領域に発光エネルギーを有する場合、多くの化学結合の解離エネルギーに匹敵するので、目的以外の反応が進行したり、副反応を助長し、かつタール状の褐色被膜が放電灯の光照射面に生成し収率を低下させてしまう。したがって、紫外線をカットするために、水溶性蛍光剤の使用や紫外線カットガラスを提案している。
水銀灯の問題を低減し、かつ発光効率を上げるために、波長535nmに有効な発光エネルギーを示すタリウム灯や波長589nmに有効な発光エネルギーを示すナトリウム灯が提案された。特許文献5では、ナトリウム灯を光源として、飛躍的に収率を上げ、安定した反応を可能にした。さらに、特許文献6では高圧ナトリウム放電灯により、工業的な有効波長は400〜700nmとし、波長600nm〜700nmの波長領域で効率アップを提案している。この範囲での、ピーク波長は約580〜610nm程度と推定できる。しかし、放電灯の電気特性や始動を良好にするためには、水銀の共存は避けられず、紫外線をカットするフィルターは必要である。ここでは、波長400nm未満の短波長はエネルギーが強すぎ、不要な副反応を引き起こすため不要な波長とされている。
さらに、ナトリウム灯は、波長780〜840nmの赤外線を含む波長領域に、特有の発光エネルギーピークを有し、そのエネルギー強度はナトリウム灯での最大発光エネルギーに匹敵するレベルのものも多い。塩化ニトロシルの解離エネルギーは約156J/molであり、Einsteinの法則より、波長760nm付近の発光エネルギーに匹敵するため、それ以上の長波長領域では光エネルギーが小さく、塩化ニトロシルが解離しないので、反応に寄与せず大きなエネルギーロスになる。特許文献7においては、理論的な根拠は不明だが、光ニトロソ化反応においては、500nm〜700nmの波長、好ましくは565〜620nmの波長を出す水銀またはナトリウム蒸気ランプが良いと記載されているが、最大発光エネルギーの波長や光照射ロスとなる波長についての言及はない。
放電灯による光反応においては、放電灯の光照射方向に大量の熱放射をするため、特許文献8のように放電灯の光照射面を冷却する必要がある。さらに、放電灯の冷却だけでは十分に冷却できず、残存する輻射熱と光反応による反応熱により反応温度が上昇するため、光反応槽の外側全体にジャケットを設けて冷却する必要があり、反応温度の上昇を抑制するには巨大な冷却面積が必要となり、光反応槽も複雑となる問題があった。
発光ダイオードは、半導体を用いて電気エネルギーを直接光に転換できる利点があり熱の発生を抑制し、省エネ、長寿命等の点で注目されている。その開発の歴史はまだ浅く、1962年に赤色LEDが商品化され、2000年頃から青色、緑色、白色といったLEDが開発され、表示用、照明用途として商品化された。一方、光反応用に使用されている放電灯は、非常に高出力であり、発光効率も高いため、必要な発光エネルギーを得るためには、LEDは到底及ばず、LEDの必要個数が膨大となり、回路設計やLEDの熱対策やコスト面の課題があり光反応の光源に適用することは困難と考えられてきた。さらに、光反応には反応液に均一な光を照射させることが必要であるが、LEDは指向性が強く、反応に必要な波長を高効率で得ることも困難であり、この点からも光反応の光源への適用は困難と考えられてきた。
東京化学同人 化学事典p457〜458 石油学会誌 第17巻 第10号(1974) p72〜p76 特公昭39−15976号公報 特開平10−25279号公報 特公昭39−10336号公報 特公昭39−22959号公報 特公昭44−13498号公報 特開平11−265687号公報 特表2001−509472号公報 特公昭39−25041号公報
以上のように、光源として水銀やナトリウムを封入した放電灯ランプを用いた場合、光ニトロソ化法において、シクロアルカノンオキシムを製造する場合の光照射の有効波長は、紫外線を含む短波長をカットした360nmから、理論的な塩化ニトロシルの解離エネルギーに匹敵する波長760nmまでの領域と考えられるが、400nm未満の短波長でも不要な反応を起こす可能性がある点、および放電灯は原子スペクトルでの発光であるため、実質的には620〜760nmの波長領域で最大発光エネルギーを示す発光は困難であるという観点から、実用的には400〜620nmの波長領域が主流と考えられる。また、水銀やナトリウムを封入した放電灯は、波長に対するエネルギー分布が幅広くなり、長波長領域では反応に寄与しない無駄なエネルギーが存在して効率的でなく、短波長領域ではエネルギーが高いため、意図しないラジカル化が生じることで不純物発生やタール状物質の付着が著しく、抑制するために短波長領域をカットするフィルターなどの対策が必要となっている問題が顕在している。
すなわち、本発明は、光ニトロソ化法において、光源としては、水銀やナトリウム等を封入した放電灯ランプに変わる次世代の光源として、発光ダイオードを用いたシクロアルカノンオキシムの製造方法を提供することを課題とする。
そこで、これらの課題を解決するため鋭意検討を行った結果、従来の放電ではなく、新光源として、電気エネルギーを直接光に変えることができ、その波長帯が狭く、任意の波長および波長領域の光を放出する事ができる発光ダイオードを用いて、光ニトロソ化を行い、高い光量子収率でシクロアルカノンオキシムが得られることを見出した。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
(1)シクロアルカンと光ニトロソ化剤とを、光の照射により光化学反応させる方法において、光源を発光ダイオードとして使用し、かつ該光源の波長に対する発光エネルギー分布の中で、発光エネルギーの最大値を示す波長が400nm〜760nmであることを特徴とするシクロアルカノンオキシムの製造方法。
(2)前記光源の波長に対する発光エネルギー分布において、波長400nmよりも短波長領域での波長に対する発光エネルギーが、発光エネルギーの最大値の5%以下であり、かつ、波長760nmよりも長波長領域での波長に対する発光エネルギーが、前記発光エネルギーの最大値の5%以下であることを特徴とする(1)に記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
(3)前記発光ダイオードにおいて、エネルギー変換効率が3%以上であるものを使用することを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
(4)光反応液を含む光化学反応器の側面に沿って面状に配列した複数の発光ダイオードを使用して、透過性の光化学反応器を介して光反応液に光照射することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
(5)前記光反応液に冷却器を浸漬して、光反応液の冷却を行うことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
(6)前記シクロアルカンがシクロヘキサンであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
(7)前記光ニトロソ化剤が塩化ニトロシルであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のシクロアルカンオキシムの製造方法。
(8)前記シクロアルカノンオキシムがシクロヘキサノンオキシムであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
なお、発光ダイオードとは、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体のことであり、LED(Light Emitting Diode)とも呼ばれ、発光原理としてエレクトロルミネセンス(EL)効果を利用するものである。
本発明のように、光ニトロソ化剤のラジカル化エネルギー(解離エネルギー)が小さい光ニトロソ化反応において、発光エネルギー分布の極めて狭い光源である発光ダイオードを採用することで、波長に対する発光エネルギー分布におけるエネルギーロスを抑制でき、これまでの放電灯では不可能であった任意での波長に対して、光ニトロソ化反応によるシクロアルカノンオキシムの製造を可能にし、発光エネルギーに伴うエネルギーロスの削減、紫外線カットフィルター等の波長吸収剤を必要としない。特に、有効波長領域の400〜760nmの範囲における光量子数に対して高い収率、すなわち高い光量子収率でシクロアルカノンオキシムを得ることができる。かつ、光源の光照射面の熱発生が非常に少ないので、光源の照射面の冷却を無くし、さらに光反応液の冷却を軽減できるため、放電灯による光反応の場合に比較して省エネルギーおよび光反応装置の簡略化が可能となる。また、機械的強度面からは放電灯の投光性気密容器としてガラスを用いるため、その強度は低く、点灯消灯時の温度差により破損することもあるが、発光ダイオードは化合物半導体のため機械強度が強く、樹脂等のレンズで覆われているので、破損が少ない。破損した場合でも、多数使用している発光ダイオードやそのモジュール中の破損した発光ダイオードやそのモジュールを変えるだけで修理が出来る利点も大きい。放電灯の場合は1本交換する必要があり、それに比較して大がかりな修繕を要しない点で修繕面のコストを大きく抑えられる。
発光ダイオードの発光色は用いる材料によって異なり、放電灯のようなランプと違い紫外線領域から可視光領域、赤外線領域と、任意の波長で発光することが可能であるため、特に、シクロアルカノンオキシムの製造においては、発光エネルギーのほぼ全量を光反応に有効な波長領域のみに収めることも可能となり、発光エネルギーのロスを大きく削減できるという効果がある。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明で用いる光源は、発光ダイオードであり、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体のことである。発光ダイオードは、LED(Light Emitting Diode)とも呼ばれ、発光原理はエレクトロルミネセンス(EL)効果を利用しているものである。
本発明で用いる発光ダイオードの波長に対する発光エネルギー分布の好ましい形態を図1を用いて説明する。発光エネルギー分布とは、図1のように、横軸に波長、縦軸に発光エネルギーを示したスペクトル分布のことである。図1は、波長625nm付近に発光エネルギーの最大値を有する発光ダイオードの一例の発光エネルギー分布を表すグラフである。
本発明の発光エネルギーの最大値は、図1に示すように、波長に対する発光エネルギー分布において、Emaxで示されるエネルギーの最大値のことである。
本発明では、発光ダイオードから発光される光において、波長に対する発光エネルギー分布の中で、発光エネルギーの最大値を示す波長が400nm〜760nmの範囲にあるものを用いる。高いシクロアルカノンオキシムの収量を得るためには、430nm〜650nmが好ましい。また光照射面でのタール状物質の生成をよりいっそう抑制するという観点では、500〜650nmが良い。また、白色LEDのようなピーク波長が2つ以上ある場合では、例えば最大ピークが400nm以上500nm未満にあったとしも、その他のピーク波長が500nm以上であれば、波長帯域を長波長に拡張できるので、タール状物質の発生を抑制できる場合もある。さらには、水銀灯やナトリウム灯等の放電灯の主なピークスペクトルよりも長波長の620nm〜650nmでは投入電力に対して高い光量子数が得られるので望ましい。例えば、紫外線カット等の波長フィルターを使用した場合では、カットした波長帯域を除いた発光エネルギー分布として、該分布における発光エネルギーの最大値を求めれば良いが、当然ながら波長フィルターを行った分の発光エネルギーはロスすることになる。
本発明の波長に対する発光エネルギー分布において、発光エネルギーのロスや副反応を抑制するためには、可能な限り400nmよりも短波長、760nmよりも長波長での発光を抑制すると良い。すなわち光源の波長に対する発光エネルギー分布において、波長400nmよりも短波長領域での波長に対する発光エネルギーは最大値の5%以下であることが好ましい。また、波長760nmよりも長波長領域での波長に対する発光エネルギーは最大値の5%以下であることが望ましい。
例えば、図1に示すように発光ダイオードのエネルギー分布では、波長400nmよりも短波長領域、波長760nmよりも長波長領域では、発光エネルギーの最大値の5%、すなわち図1中の0.05Emax以下とすることが可能であり、発光エネルギーの大半が光ニトロソ化反応に有効に利用できる。
しかし、例えば、図2は、発光エネルギーの最大値を示す波長が400〜760nmの範囲にある水銀灯の一例の発光エネルギー分布を表すグラフであるが、それによれば、発光エネルギー分布が非常に幅広く、さらに、複数のピークスペクトルを有している。波長400nmよりも短波長領域に波長に対する発光エネルギーの最大値の5%、すなわち図2中の0.05Emaxよりも高い発光エネルギーを示す波長があり、発光した光を光ニトロソ化反応に利用できない発光エネルギーが存在するため、高効率化は難しい。図3は、発光エネルギーの最大値を示す波長が400〜760nmの範囲にあるナトリウム灯の一例の発光エネルギー分布を表すグラフであるが、それによれば、発光エネルギー分布が非常に幅広く、波長760nmよりも長波長領域に、波長に対する発光エネルギーの最大値の5%よりも高い発光エネルギーを示す波長があり、発光した光を光ニトロソ化反応に利用できない発光エネルギーが存在する。また、ナトリウム灯の場合、発光エネルギーの最大値が波長760nmよりも長波長領域に存在することもあり、長波長領域の発光エネルギーは非常に大きい。したがって、長波長では赤外線による発熱も大きく反応温度を一定に保つのが難しい。
発光ダイオードは、目的の収量や効率に見合った波長での発光エネルギーを放射できるため、種類やロットの異なる発光ダイオードを用いて、最適化を図っても良い。
本発明において、発光エネルギー分布は、後述する方法により測定することができるが、複数の発光ダイオードを使用する場合の発光エネルギー分布は、発光ダイオードそれぞれの発光エネルギー分布を測定した後、使用する発光ダイオード全数量に集約した発光エネルギー分布を求めて、最大の発光エネルギーを示す波長が400nm〜760nmであればよい。用いる複数の発光ダイオードが単一ロットで、質も均質であることが明らかな場合には、簡便法として任意の発光ダイオードを測定して判断することも可能である。また、複数種類の発光ダイオードを使用する場合には、簡便法として質の等しい種類毎に任意の発光ダイオードを測定し、各種類の数量も勘案して、用いる発光ダイオード全数量に集約した発光エネルギー分布を計算して求めることも可能である。
さらに、本発明においては、前記光源の波長に対する発光エネルギー分布において、波長400nmよりも短波長領域での波長に対する発光エネルギーが、発光エネルギーの最大値の5%以下であり、かつ、波長760nmよりも長波長領域での波長に対する発光エネルギーが、前記発光エネルギーの最大値の5%以下であることが好ましい。複数の発光ダイオードを用いる場合、それぞれの発光エネルギー分布を用いて、使用する発光ダイオード全数量に集約した発光エネルギー分布を求めて、波長400nmよりも短波長領域での波長に対する発光エネルギーが発光エネルギーの最大値の5%以下であり、波長760nmよりも長波長領域での波長に対する発光エネルギーが、発光エネルギーの最大値の5%以下であっても良い。用いる複数の発光ダイオードが単一ロットで、質も均質であることが明らかな場合には、簡便法として任意の発光ダイオードを測定して判断することも可能である。また、複数種類の発光ダイオードを使用する場合には、簡便法として質の等しい種類毎に任意の発光ダイオードを測定し、各種類の数量も勘案して、用いる発光ダイオード全数量に集約した発光エネルギー分布を計算して求めることも可能である。
本発明においては、それぞれの種類および/またはロットにおいて、波長に対する発光エネルギー分布において、波長400nmよりも短波長領域での波長に対する発光エネルギーが、発光エネルギーの最大値の5%以下であり、かつ波長760nmよりも長波長領域での波長に対する発光エネルギーが、発光エネルギーの最大値の5%以下であることがより好ましい。さらに、有効波長での光ニトロソ化反応を行うには、400〜760nmの波長領域の発光エネルギーの積算(有効エネルギー)が、全体の発光エネルギー分布の積算(全発光エネルギー)に対して90%以上、好ましくは95%以上、さらには98%以上が望ましい。上記全発光エネルギーに対する有効エネルギーの割合の算出は、使用する発光ダイオードそれぞれの発光エネルギー分布を用いて、発光ダイオード全数量に集約した発光エネルギー分布を求めて、集約した有効エネルギーの、集約した全発光エネルギーに対する割合を求めることにより行う。発光ダイオードとして、同一種類、同一ロットであるなど質も均質であることが明らかなものを複数個使用する場合は、簡便法として任意の発光エネルギー分布を有する発光ダイオードを用いて測定して判断することも可能である。また、種類および/またはロットが異なるなど、複数種類の発光ダイオードを使用する場合には、簡便法として質の等しい種類毎に任意の発光ダイオードを測定し、各種類の数量も勘案して、用いる発光ダイオード全数量に集約した発光エネルギー分布を計算して求めることも可能である。
さらに本発明においては、発光ダイオードを複数個用いる場合、それぞれの種類および/またはロットにおける波長に対する発光エネルギー分布において、それぞれ400〜760nmの波長領域の発光エネルギーの積算が、それぞれの全体の発光エネルギー分布の積算に対して90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上であることが望ましい。
ここで、発光エネルギー分布における波長領域は、紫外線、可視光線、近赤外線の領域であり、本発明においては少なくとも一般的な発光スペクトル測定器にて検出可能な300〜830nmの領域でのエネルギースペクトルで確認するものとする。
発光ダイオードの照射特性は駆動電流値や温度の影響を受けるので、発光エネルギー分布の測定は光化学反応で光照射させる時と同様の駆動電流および温度条件で行うものとする。すなわち測定する発光ダイオードにかける駆動電流は、光化学反応で光照射させる時にかける発光ダイオード1個あたりの平均駆動電流値と同様の駆動電流値とし、発光させる。測定する発光ダイオードの温度は、発光ダイオードの裏面側の表面温度(発光ダイオードの裏面に放熱板、放熱基板、ヒートシンク等が設けられている場合はその表面温度、発光ダイオードが基板等にマウントされている場合はその基板の表面温度でよい)が、光化学反応で発光ダイオードを照射したときの平均温度と同様の温度条件で測定を行う。発光ダイオードの裏面に設ける放熱板、放熱基板、ヒートシンク等としては、熱伝導性の良いアルミニウムや銅製のものなどが挙げられる。測定の際、発光させる発光ダイオードは反応条件と同様の温度となるよう、放熱板、放熱基板、ヒートシンク等を設けて、放熱を行ってもよいし、場合により冷却してもよい。発光ダイオードは、駆動時に発熱により温度が上昇するので、温度上昇は1℃以内になるようにして、測定時間を10〜300msの範囲で測定する。光化学反応で光照射させた時の温度は発光ダイオードの放熱板、放熱基板、ヒートシンク等の表面温度の平均温度を用いる。発光エネルギー分布は、波長5nm以下毎の集計出力での分布とする。さらに精度よく測定する必要がある場合の発光エネルギー分布は、波長0.5〜1nm毎の集計出力が好ましい。波長は集計出力の波長帯の中心値を用いるのが好ましい。光化学反応を行う前に測定を行う場合には、光化学反応を行う予定の温度、駆動電流値を用いて測定を行うものとする。
本発明で用いる発光ダイオードは、エネルギー変換効率、すなわち発光ダイオード1個あたりの投入電力に対する400〜760nmの波長領域の発光エネルギー積算値(有効エネルギー)を3%以上であるものを用いることが好ましい、さらに収量を向上させるには10%以上が好ましい。上限については特に制限はないが、投入電子数に対して外部に取り出される光量子数の比率、つまり外部量子効率での理論上100%の性能から、エネルギー変換効率は75%が上限となり、十分な効果が得られ、エネルギー変換効率が60%以下であっても、放電灯よりも発熱量を抑えることができ、十分な効果が得られる。
上記エネルギー変換効率の測定は以下の方法で行う。測定は前記波長に対する発光エネルギー分布を測定した駆動電流および温度条件で行い、波長400〜760nmの各波長における発光エネルギーの積算値を用いる。各波長の発光エネルギーは、前記方法で測定した全体の発光エネルギー分布のうち、波長400〜760nmの積算値(有効エネルギー)を用いる。
本発明において発光エネルギーの測定装置としては、各波長の発光エネルギーの絶対値が測定できるものが好ましく、積分球を用いる。積分球は、内径として3inch(7.6cm)以上のものを用いるが、測定が困難な場合には、10inch(25.4cm)以上のものを用いる。各波長の測定幅は5nm以下が好ましく、さらに0.5〜1nmが望ましい。本発明においては、上記のとおり積分球での発光エネルギー分布による測定を行うが、それが何らかの事情により適切でない場合には、光照射を受けた単位面積あたりの発光エネルギー、つまり放射照度を用いる。放射照度を用いる場合は、光源からの測定距離における全照射面積を用いて各波長の発光エネルギーの絶対値を算出する。例えば、放電灯の様な点光源の場合、測定距離における球体面積として算出すれば良いが、発光ダイオードの場合、照射方向が前方方向であるので、測定距離は同一でも測定位置や角度により測定値が異なるため、光源の中心に対して、一定の測定距離での角度10°以下毎に放射照度を測定して、各点の放射照度を用いて、測定距離における半球体面積に換算して各波長の発光エネルギーの絶対値を算出する。
光源の中心からの測定距離は、点光源とみなせる距離、つまり一定距離で任意の角度において放射照度が変化しない距離とし、少なくとも発光長の5倍以上、さらに発光長の10倍以上が好ましい。当然のことながら、発光エネルギーの測定には、発光無しでのブランクや他の光源から入り込む反射等を測定して補正を行う。
エネルギー変換効率(%)=有効エネルギー(W)/測定時の投入電力(W)×100
複数の発光ダイオードを用いる場合のエネルギーの変換効率の算出は、使用する発光ダイオードそれぞれについて、投入電力、有効エネルギーから、下記のように求める。
エネルギー変換効率(%)=有効エネルギーの全個数分(W)/測定時の投入電力の全個数分(W)×100
ここで、単一ロットであるなど、質が均一であることが明らかな場合については簡便法として任意の1個での測定値を用いても良いが、異なるロットおよび/または別種類の発光ダイオードを用いる場合は、各ロット毎および/または各種類毎の測定を行い、各ロット毎および/または種類毎の発光ダイオードは同一の発光エネルギー分布として、各種類の発光ダイオードの数量も勘案して全発光ダイオードに集約したエネルギー変換効率を求める。具体的には、各ロット毎および/または種類毎の発光ダイオードの発光エネルギー分布を用いて、使用する発光ダイオード全数量に集約した発光エネルギー分布を求め、有効エネルギーおよび発光ダイオードの全数量の投入電力より求める。ロットや種類が不明の場合には、所定あるいは定格の駆動電流において、発光エネルギーの最大値の波長(nm)、光束(lm)、発光エネルギー(W)、光量子数(Photon/s)、電圧(V)の少なくとも3項目を測定した結果に基づき、種類別に分類してエネルギー変換効率を求める。同じ分類に含まれる発光ダイオードの質が均質である場合には任意の一個の発光エネルギー分布の積算値を測定し、数量を勘案して、集約することも可能である。
本発明の発光ダイオードを用いた光化学反応の一例を、図7を参照して説明する。
本発明の光源である発光ダイオード1は、一般的な砲弾型や表面実装型、チップ型等のいずれでも良いが、発光ダイオード1の光照射方向にある光化学反応器2内の光反応液の温度上昇を抑制するには、発光ダイオード1の裏面から放熱できるものが望ましい。
光源からの光照射の方式は、光反応液であるシクロアルカンと光ニトロ化剤あるいはそれらの反応物で構成される光反応液に有効に照射出来ればいずれであっても良い。例えば、図7のように光化学反応器2の外側から光反応液に光を照射する様な外部照射型や光化学反応器2の内部、つまり光反応液に光源を直接あるいは間接的に浸漬させて照射する内部照射型がある。これまでの放電灯、蛍光灯等のランプは、球状あるいは棒状光源が多く、光を有効に活用するには内部照射が主流であった。
発光ダイオード1は非常に小型の光源であり、発光ダイオード1を複数個用いて配列を自由にでき、例えば発光ダイオードを複数個単位で配列させたモジュールを組み合わせることができるので、放電灯では困難な種々の光照射形態が取れる利点があり、平面、曲面等の照射が可能となり、指向性の強い発光ダイオードを、均一に発光させることが可能である。例えば、図7のように、発光ダイオード1を複数使用して、光反応液を含む光化学反応器2の側面に沿って、面状に配置され、光透過性の光化学反応器2を介して光反応液に光照射させることにより、光反応液に均一に光照射ができるので望ましい。透過性の光化学反応器2の側面の材質は、用いる発光ダイオードが発する光の透過性が良好な材質ではいずれでも良く、例えば、ガラスや石英製、アクリル等の透明樹脂製が挙げられる。
また、円筒状や多角形状の棒の外側に発光ダイオードを配列することで、放電灯に類似するような内部照射形態が取れる。この円筒や多角形状の棒は放熱可能なアルミニウムや銅等の金属材質が望ましい。この場合、反応槽の光源の配置や放射形態を変えずに、放電灯を該内部照射型の発光ダイオードのモジュールに交換するだけで、従来の光化学反応装置を大きく改造する必要がないという利点がある。
発光ダイオード1の発光は、特に温度の制限はないが、例えば外気温等の周囲温度や発光ダイオードの接合部分や基板や放熱板等の温度の影響を受ける。一般には、温度が高いほど、単位電力あたりの発光エネルギーは低下するので、温度上昇を抑制することが望ましく、光ニトロソ化反応が可能であれば、低温程良い。発光ダイオード1の発光での温度上昇を抑制する方法は、外気温が一定で十分に発光ダイオードの発熱を抑えられ、発光ダイオードの発光させるときの温度上昇を抑制できるなら放冷で良い。例えば、発光ダイオード1の裏面にアルミニウムや銅等の金属製のヒートシンク3を設けて、外気との接触面積を向上するために、フィン等を設けて放熱および冷却可能な方式が望ましい。また、発光ダイオード1の放熱や除熱を容易にするために、発光ダイオード1の裏面にアルミニウムや銅等の金属製放熱基板を設けても良い。さらに、発熱が多く、発光が低下するようなら、発光ダイオードに強制冷却をすることも可能である。例えば、ヒートシンク3の温度が30℃以下、好ましくは20℃以下が望ましい。さらに、光反応液が凍結しなければいずれでも温度でも良いが、実用性から0℃以上が好ましい。
本発明のシクロアルカンは、特にその炭素数には限定しないが、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンが好ましい。特に、カプロラクタムの原料となるシクロヘキサン、ラウリルラクタムの原料となるシクロドデカンが好ましい。例えば、シクロアルカンはシクロアルカン導入ライン4より光化学反応器2に導入できる。光ニトロソ化剤としては、例えば、塩化ニトロシル、塩化ニトロシルと塩化水素との混合ガスが好ましい。その他、一酸化窒素と塩素との混合ガス、一酸化窒素と塩素と塩化水素との混合ガス、ニトローゼガスと塩素との混合ガス等のいずれも光反応系にて、塩化ニトロシルとして作用するので、これらニトロソ化剤の供給形態に限定されるものではない。また、塩化ニトロシルとクロロホルムを光反応させて得られるようなトリクロロニトロソメタンをニトロソ化剤として用いても良い。例えば、光ニトロソ化剤は光ニトロソ化剤導入ライン5より導入できる。上記のシクロアルカンおよび光ニトロソ化剤を用いて発光ダイオードの光照射による光化学反応の結果、シクロアルカンの炭素数に応じたシクロアルカノンオキシムを得ることができる。光化学反応を塩化水素の存在下で行う場合、シクロアルカノンオキシムはその塩酸塩となるが、そのまま塩酸塩の形態でも良い。例えば、シクロヘキサンを用いた塩化ニトロシルによる光ニトロソ化反応ではシクロヘキサノンオキシムが得られる。反応により得られたシクロアルカノンオキシムは、光化学反応器2の槽内で沈降し、油状物として蓄積される。この油状物は反応生成物ライン10から抜き出される。未反応および生成した排ガスは、未反応ガスライン9より排出させた。
光化学反応における反応温度、すなわち光反応液の温度は、30℃以下、好ましくは20℃以下とすることが望ましい。例えば、発光ダイオード1を用いた場合、光照射方向への発熱は少なくなるが、光反応による反応熱により、反応温度が上昇するため、この反応熱を除熱するのが望ましい。例えば、光反応液に冷却器6を設けて、冷却器6を浸漬させて、反応冷却水導入ライン7より冷却水を導入し、反応冷却水排出ライン8より排出するような強制的に間接冷却する方式が望ましい。下限は原料シクロアルカンの凝固点の点から凝固点以上が好ましく、シクロアルカンがシクロヘキサンであれば6.5℃以上であることが好ましい。
放電灯による光化学反応では、光照射方向に膨大な光照射熱が発生するため、図8のように、放電灯の照射面での冷却および光化学反応器2の外側での冷却が必要であったが、発光ダイオード1を用いた場合、反応熱の除去のみで反応温度を一定に保つことができるので、冷却器6は少ない伝熱面積で冷却することができ、冷却器の小型化が可能となるため、光反応液に冷却器6を浸漬させて冷却するだけで所定の反応温度を維持できる。
例えば、図7のような、円筒状の冷却器6で冷却するだけで、除熱することが可能である。また、光化学反応器2の内部に管状のコイルやドラフトチューブ等を設けて冷却しても良い。冷却水の温度は所定の反応温度を維持できれば良いが、好ましくは0〜30℃、より好ましくは5〜20℃である。冷却水は、冷却できればいずれでも良いが、工業用水、無機系ブライン、有機系ブライン等が挙げられる。
さらに、冷却器6が小型化できるので、冷却器6が光を吸収したり、反射させることで光照射を邪魔することを軽減させる位置に冷却器6を設置することが可能である、例えば、光源が両サイド、円周状等の多方向から照射させる場合、光源の照射表面からの距離が最も遠い位置に冷却器6を配置することで、例えば、図7のように光源間の中央部に冷却器6を配置して光照射のロスを軽減できる。
以下実施例により、本発明を具体的に説明する。
実施例1
光反応試験
光反応試験には、図7の光化学反応装置を用いた。光化学反応器2は外径14cmの円筒型のガラス製を用いた。光源である発光ダイオード1は、波長454nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 RoyalBlue LXHL−LR3C、ロット番号P5KY(ここでは、Lumileds社のBinコードを示す))である。なお発光ダイオード1はすべて同一ロットを使用した。発光ダイオード1は、光化学反応器2の外側側面に沿って、光照射面を光化学反応器2側に向けて、均等に配列させ、光化学反応器2の外側から光化学反応器2の外壁ガラスを通して光反応液に照射するような外部照射方式を用いた。発光ダイオード1の配列は、光反応液の液面より下部の位置に、円周状に24列、縦方向に9列として、光化学反応器2の底部に反応生成物が油状物として蓄積するので、底部の油状物に光照射が直接当たらない位置で、かつ光反応液に均等に照射できるように配列させた。発光ダイオード1は216個を用いて、36個を直列に繋ぎ、その2系列を並列にして3セットの直流電源装置を用いて発光させた。各電源からの駆動電流値が均等になるように3セットの直流電源装置の電圧および電流を調整した。発光ダイオード1個あたりの平均駆動電流値は0.5A/個であり、全発光ダイオードへの総投入電力は376Wである。
光反応における反応熱の冷却は、光化学反応器2の中央部に外径5cmの円筒型のガラス管を冷却器6として光反応液に浸漬させて、冷却器6に、反応冷却水導入ライン7より6〜13℃の冷却水を連続的に供給して、反応冷却水排出ライン8より排出して間接的に強制冷却を行い、光反応液の温度、すなわち反応温度を20℃±2℃に保った。平均反応温度は20℃であった。
光反応液の温度は光化学反応器2の外壁と冷却器6の外壁との水平距離での中間部、かつ反応液の液面と光ニトロソ化剤導入ライン5の吐出部との垂直距離における中間部の位置で反応液の温度を測定した。光反応液の冷却面積は、冷却器6が光反応液と接触する面積として381cmである。放電灯を用いる場合、放電灯の発熱のため、光照射面を冷却する必要があるが、発光ダイオード1では光照射面への発熱が非常に低いので、光照射面での冷却は必要としない。
発光ダイオード1には、放熱および除熱のため発光ダイオード1の裏面にアルミニウム製のヒートシンクを用いて放熱したが、除熱が不十分のときは、室温を下げたり、エアクーラによる冷風や冷却水を用いて、ヒートシンクの温度を25±5℃になるように除熱した。ヒートシンクの表面の平均温度は25℃である。前記ヒートシンクの表面の温度は、発光ダイオードの裏側に設けられているヒートシンクの発光ダイオード側表面の温度を測定した。表面温度はヒートシンクの垂直長さ基準での中間部で、配列した発光ダイオードの隙間部分で発光ダイオードをはさんで対角に2箇所を温度センサーで連続測定した。
光化学反応器2に、シクロアルカン導入ライン4よりシクロヘキサン(特級試薬、片山化学社製)3L仕込み、反応温度を20±2℃に維持し、塩化水素(鶴見曹達社製)ガスを2000ml/minの流量で光ニトロソ化剤導入ライン5より供給して、光化学反応器2の下部より連続的に吹き込んだ。10min後に発光ダイオード1を点灯した。点灯開始10min後に、塩化ニトロシル(ニトロシル硫酸を塩化水素と反応させて合成し、蒸留精製して得た)ガスを200ml/minの流量で塩化水素ガス2000ml/minと混合して、光ニトロソ化剤導入ライン5より、光化学反応器の下部より連続的に吹き込んだ。
排ガスは、未反応ガスライン9より排出して、スクラバーにて水吸収し、吸収液をソーダ灰にて中和した。
光反応生成物であるシクロヘキサノンオキシムは油状物となり、未反応のシクロヘキサンとの比重差にて油状物が光化学反応器2の底部に蓄積される。点灯開始を反応開始として30min毎に油状物を反応生成物ライン10より抜き出した。光反応試験は点灯開始後、30min〜60minでの油状物より評価を行った。また、油状物を抜き出す毎に、抜き出した体積量に相当するシクロヘキサンを補充して光反応液の液面を一定に保った。
シクロヘキサノンオキシムは、抜き出した油状物を、エタノール溶液に溶解し、粉末重炭酸ソーダで中和後、GC分析(島津製作所社製、GC−14B)にて測定し、検量線よりシクロヘキサノンオキシムの濃度(wt%)を求め、油状物の重量(g)から反応で得られたシクロヘキサノンオキシムの生成量(g)を求めた。GC分析条件は、固定相液体はThermon−3000 7%、固定相担体はChromosorb W−AW(DMCS)80〜100mesh、カラムは内径3.2mmガラス2.1m、キャリアーガスは窒素25ml/分、温度はカラム恒温槽180℃、注入口240℃、検出器はFID、内部標準物質はジフェニルエーテルである。
シクロヘキサノンオキシムの収量(g/kWh)は、1h当たりの投入電力(kWh)に対するシクロヘキサノンオキシムの生成量(g)で算出した。
光量子収率は、以下のように、シクロヘキサノンオキシムの収量から求まるシクロヘキサノンオキシムの個数と点灯時に照射される総光量子数から求めた。
光量子収率(%)={1秒あたりのシクロヘキサノンオキシムの生成量(g/s)/113(分子量)×6.022×10+23(アボガドロ数:個/mol)}/{波長400〜760nmの総光量子数(Photon/s)}×100
ここで、総光量子数は発光ダイオードの特性評価にて説明する。
反応後の光照射面の汚れ、すなわちタール状物質の有無を確認した。
発光ダイオードの特性評価
発光ダイオードの波長に対する発光エネルギー分布は、PMA−12マルチチャンネル分光器(BTCCDタイプ、C10027−01型、浜松ホトニクス社製)を検出器として用いて、内径3inch(7.6cm)の積分球にて、発光ダイオード1個で、波長領域200〜950nmでの発光エネルギー分布を0.7nm毎に発光エネルギーの絶対値を測定した。発光ダイオードは、縦4cm×横7cm×高さ4.5cmのアルミニウム製のヒートシンク上に据え付けた。ヒートシンクには4枚のフィンを備えて放熱させた。発光ダイオードの特性評価では、光反応試験での発光ダイオードの点灯と同条件の温度および駆動電流で測定を行った。発光温度条件はヒートシンクを予め冷却しておき、ヒートシンクの温度が25℃となるときに測定を行った。発光電流条件は光反応試験での発光ダイオード1個あたりの平均駆動電流値で測定を行った。発光ダイオードの特性評価では長時間の点灯では発光ダイオードの温度上昇により特性が変化するので、短時間の測定やヒートシンクの冷却が必要になる場合もある。発光ダイオードの駆動時に発熱により温度上昇するので、温度上昇は1℃以内になるようにして、測定時間を200msで測定した。発光エネルギー分布の測定時の駆動電流は0.5Aである。
波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図4に示す。図4は、発光エネルギーの最大値を1とした相対発光エネルギー分布である。全発光エネルギーは、波長300〜830nmの積算値(W)を用いた。有効エネルギーは、波長400〜760nmの積算値(W)を用いた。
有効エネルギー(W)=400〜760nmの発光エネルギーの積算値(W)
エネルギー変換効率は、発光エネルギー分布データの有効エネルギーと発光エネルギー測定時の投入電力を用いて、以下のように求めた。
エネルギー変換効率(%)=有効エネルギー(W)/発光エネルギー測定時の投入電力(W)×100
総光量子数は、発光エネルギー分布から得られた各波長の発光エネルギーから各波長の光量子数を求め、波長400〜760nmの範囲で、0.7nmの測定毎での各波長の光量子数を積算した積算値(Photon/s)を用いた。
ここで、各波長の光量子数および総光量子数は以下のように求めた。
各波長の光量子1個の発光エネルギー(J/Photon)=6.626×10−34(プランク定数:J・s)×2.998×10+8(光速度:m/s)/波長(m)
各波長の光量子数(Photon/s)=各波長の発光エネルギー(W)/各波長の光量子1個の発光エネルギー(J/Photon)
単位エネルギーあたりの光量子数は以下のように求めた。
単位エネルギーあたりの光量子数(Photon/J)=総光量子数(Photon/s)/発光エネルギー測定時の投入電力(W)
結果を表1に示す。
実施例2
発光ダイオードとして波長463nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 Blue LXHL−LB3C、ロット番号Q3JB)を用いた。光反応試験の発光ダイオード1の平均駆動電流は0.5A/個で、総投入電力は352Wで行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図4に示す。発光エネルギー分布は、1個の発光ダイオードを用いて測定し、駆動電流は光反応試験の平均駆動電流と同じ0.5Aである。
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例3
発光ダイオードとして波長515nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 Cyan LXHL−LE3C、ロット番号T6MC)を用いた。光反応試験の発光ダイオード1の平均駆動電流は0.5A/個で、総投入電力は408Wで行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図4に示す。発光エネルギー分布は、1個の発光ダイオードを用いて測定し、駆動電流は光反応試験の平均駆動電流と同じ0.5Aである。
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例4
発光ダイオードとして波長528nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 Green LXHL−LM3C、ロット番号T4JG)を用いた。光反応試験の発光ダイオード1の平均駆動電流は0.5A/個で、総投入電力は352Wで行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図4に示す。発光エネルギー分布は、1個の発光ダイオードを用いて測定し、駆動電流は光反応試験の平均駆動電流と同じ0.5Aである。
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例5
発光ダイオードとして波長591nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 Amber LXHL−LL3C、ロット番号E4HA)を用いた。光反応試験の発光ダイオード1の平均駆動電流は0.6A/個で、総投入電力は328Wで行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図5に示す。発光エネルギー分布は、1個の発光ダイオードを用いて測定し、駆動電流は光反応試験の平均駆動電流と同じ0.6Aである。
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例6
発光ダイオードとして波長624nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 Red−Orange LXHL−LH3C、ロット番号G2GH)を用いた。光反応試験の発光ダイオード1の平均駆動電流は0.6A/個で、総投入電力は320Wで行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図5に示す。発光エネルギー分布は、1個の発光ダイオードを用いて測定し、駆動電流は光反応試験の平均駆動電流と同じ0.6Aである。
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例7
発光ダイオードとして波長632nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 Red LXHL−LD3C、ロット番号G4GR)を用いた。光反応試験の発光ダイオード1の平均駆動電流は0.6A/個で、総投入電力は318Wで行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図5に示す。発光エネルギー分布は、1個の発光ダイオードを用いて測定し、駆動電流は光反応試験の平均駆動電流と同じ0.6Aである。
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例8
発光ダイオードとして波長443nmに最大エネルギーピークを有したもの(Lumileds社製 White LXHL−LW3C、ロット番号TV1JW)を用いた。光反応試験の発光ダイオード1の平均駆動電流は0.5A/個で、総投入電力は360Wで行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図5に示す。発光エネルギー分布は、1個の発光ダイオードを用いて測定し、駆動電流は光反応試験の平均駆動電流と同じ0.5Aである。
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
比較例1
光反応試験
光反応試験には、図8の光化学反応装置を用いた。光化学反応器2は外径9.5cmの円筒型のガラス製を用いた。光源には放電灯11として高圧水銀ランプ(発光管封入金属:Hg)を用い、波長365nmに最大エネルギーピークを有したもの(東芝ライテック社製)である。光化学反応器2は中央部に棒状の放電灯11を有しており、放電灯11はランプ冷却器12の内部に挿入して、光反応液に浸漬させて光を照射する内部照射方式である。点灯は交流電源にて、安定器を用いて電力調整し、投入電力は250Wで行った。
光反応における冷却は、放電灯11の発光時の高い発熱による反応系への影響を低減するため放電灯の光照射に伴う照射熱を除熱する光照射面での冷却、および光反応による反応熱と光照射熱を除熱するための光反応液の冷却を行った。光照射面での冷却は、光化学反応器2の中央部に、ランプ冷却器12として外管外径5cmと内管外径3cmの二重円筒型のガラス管を浸漬させて、ランプ冷却器12の内部にランプを挿入して、放電灯11サイドと光反応液サイドを冷却できる。ランプ冷却水導入ライン13よりランプ冷却導入管14を通じて、冷却水を導入し、ランプ冷却水排出ライン15より排出して冷却させた。10±2℃の冷却水を5〜9L/minで供給した。ランプ冷却器12の冷却面積は、ランプ冷却器12の内管の面積224cmとランプ冷却器12が光反応液と接触する面積381cmとの合計605cmである。
さらに、光反応液の冷却には、光反応液を20±2℃に維持するために、光化学反応器2の外側に冷却バス16を設け、反応冷却水導入ライン7より6〜13℃の冷却水を連続的に供給して、反応冷却水導入ライン8より排出した。平均反応温度は20℃であった。反応温度の測定個所は実施例1と同様である。光反応液の冷却面積は、冷却バス16中の冷却水が光化学反応器2の外壁と接触し、光反応液の液面の高さまでの面積として、876cmである。
光化学反応器2にシクロヘキサン(特級試薬、片山化学社製)1L仕込み、光化学反応器2の反応温度を20±2℃に維持し、塩化水素(鶴見曹達社製)ガスを1440ml/minの流量で光ニトロソ化剤導入ライン5より供給して、光化学反応器の下部より連続的に吹き込んだ。10min後に放電灯11を点灯した。点灯開始10min後に、塩化ニトロシル(ニトロシル硫酸を塩化水素と反応させて合成し、蒸留精製して得た)ガスを160ml/minの流量で塩化水素ガス1440ml/minと混合して、光ニトロソ化剤導入ライン5より、光化学反応器2の下部より連続的に吹き込んだ。
排ガスは、未反応ガスライン9より排出して、スクラバーにて水吸収し、吸収液をソーダ灰にて中和した。
その他の条件等は、実施例1と同様に行った。
放電灯の特性評価
放電灯の波長に対する発光エネルギー分布は、放電灯11が棒状光源で大きいため、積分球での測定が困難であり、放射照度による測定で評価した。分光器(ニコン社製、G−250)、光電子増幅管(浜松ホトニクス社製、R1509)を用いて、5nm毎に300〜830nmの発光エネルギーを測定したものを用い、波長は5nm毎の中心値を用いた。投入電力は250Wである。測定距離は発光管の中心から60cmとして、放射照度(W/cm)による発光エネルギー分布を測定した。放電灯11の発光管17の長さとして、発光長は6cmである。測定照射面積は、点光源として測定距離での球面積としたが、封止管部分による放射照度の低下、放射面積の減少分はその角度の放射照度を測定して補正を行った。波長領域300〜830nmにおける発光エネルギー分布を図6に示す。図6は、発光エネルギーの最大値を1とした相対発光エネルギー分布である。全発光エネルギーは、波長300〜830nmの積算値(W)を用いた。
エネルギー変換効率は、発光エネルギー分布データの波長400〜760nmの有効発光エネルギーと発光エネルギー測定時の投入電力を用いて、以下のように求めた。
有効発光エネルギー(W)=400〜760nmの発光エネルギーの積算値(W)
エネルギー変換効率(%)=有効発光エネルギー(W)/発光エネルギー測定時の投入電力(W)×100
総光量子数は、発光エネルギー分布から得られた各波長の発光エネルギーから各波長の光量子数を求め、波長400〜760nmの範囲で、5nmの測定毎での各波長の光量子数を積算した積算値(Photon/s)を用いた。
ここで、各波長の光量子数および総光量子数は以下のように求めた。
各波長の光量子1個の発光エネルギー(J/Photon)=6.626×10−34(プランク定数:J・s)×2.998×10+8(光速度:m/s)/波長(m)
各波長の光量子数(Photon/s)=各波長の発光エネルギー(W)/各波長の光量子1個の発光エネルギー(J/Photon)
単位エネルギーあたりの光量子数は以下のように求めた。
単位エネルギーあたりの光量子数(Photon/J)=総光量子数(Photon/s)/発光エネルギー測定時の投入電力(W)
その他の条件や光反応は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
比較例2
ランプ冷却器12に導入する冷却水に、波長400nmよりも短波長をカットするための蛍光剤(Whitex RP、住友化学社製)を0.05%の濃度となるように導入した。波長400nm未満の波長をカットしたので、波長に対する発光エネルギー分布における最大エネルギーを示す波長は、435nmとなる。発光エネルギー分布は比較例1を用いて、波長400nm未満を含まないとした。
その他の条件等は、比較例1と同様に行った。結果を表1に示す。
表1中、短波長カットとは、波長400nm未満の短波長を蛍光剤によりカットしたことの有無を示す。
最大波長とは、波長300〜830nmの発光エネルギー分布において、発光エネルギーが最大値を示す波長である。
有効波長領域以外の波長とは、波長300〜830nmの発光エネルギー分布において、波長400nmよりも短波長領域および波長760nmよりも長波長領域では、波長に対する発光エネルギーが最大発光エネルギーの5%を超える波長の有無を示す。
有効エネルギー/全発光エネルギーは、発光エネルギー分布における300〜830nm波長領域の発光エネルギーの積算値(全発光エネルギー)に対する波長400〜760nmを有効波長として積算した発光エネルギー(有効エネルギー)の割合である。
光量子数とは、単位エネルギーあたりの光量子数(Photon/J)である。
反応温度は、光反応液の温度として平均値で示した。
オキシム収量は、1hの投入電力あたりのシクロヘキサノンオキシムの収量(g/kWh)である。
Figure 2010006775
以上の結果より、実施例1〜8による発光ダイオードを用いた光ニトロソ化反応により、シクロヘキサノンオキシムが得られることがわかった。いずれも比較例1および2で用いた高圧水銀ランプよりも高いオキシム収量が得られた。
発光ダイオードの特性より、実施例1〜8の最大波長はいずれも波長400〜760nmであり、有効波長領域の発光エネルギーは99.3%以上と非常に高い性能である。発光ダイオードのエネルギー変換効率が放電灯よりも低くても、高効率で反応に有効な波長に光照射できることを示している。
発光ダイオードは光反応に必要な波長400〜760nmの範囲に効率的に発光できるため、光源の性能となるエネルギー変換効率が高圧水銀ランプよりも低い実施例において、高圧水銀ランプを上回るオキシム収量が得られた。さらに、光反応の収量に重要な因子である光量子数が高圧水銀ランプよりも低い実施例においても、発光ダイオードでは光量子収率が高くできるため、高いオキシム収量が得られた。
実施例1〜8より、発光ダイオードを用いた光反応ではエネルギー変換効率および/あるいは光量子数が高いほど、高いオキシム収量が得られる傾向にある。実施例1〜8ではエネルギー変換効率が3%以上であるが、エネルギー変換効率が10%以上ではさらに高いオキシム収量が得られる。光量子数では2×10+17(Photon/J)以上で、高いオキシム収量が得られる。
発光ダイオードの波長より、実施例6および7では、これまで放電灯では実現出来なかった最大エネルギーを示す波長が600nm以上でも、シクロヘキサノンオキシムを十分に得ることができた。これは、Einsteinの法則から、単位発光エネルギーあたりの光量子数、すなわち同じエネルギー変換効率での光量子数は長波長ほど多いので、長波長領域での光ニトロソ化が可能であれば、高収量が望めることを示している。
発光ダイオードは効率的に有効波長領域に発光できるのみならず、発光ダイオードを面状に配置でき、均等に光反応液に照射できるため、局部的な発光である高圧水銀ランプよりも高い光量子収率(実施例1〜8)が得られた。
光反応の冷却においても、実施例1〜8の発光ダイオードは光照射方向への発熱が少ないため、光反応液を冷却すれば良く、冷却面積を比較例1および2の半分以下と削減できる。比較例1および2の高圧水銀ランプでは、さらに放電灯の照射面の冷却が必要であり、その冷却面積も大きい。また、本発明の実施例においては比較例1および2のような場合には必要であった反応器外側の冷却も軽減できる。また、放電灯で必要な光照射面の冷却に使用した冷却エネルギーを発光ダイオードの冷却に用いることもできる。
比較例1および2は放電灯の一種である高圧水銀灯を使用しているが、比較例1のように、最大エネルギーを示す波長が365nmの短波長では、シクロヘキサノンオキシムの収量が低い。また、波長400nm以下の短波長をカットしていないので、光照射面の汚れが多量に生じて、光透過ロスを生じてオキシム収量が低い。比較例2では蛍光剤により波長400nm以下をカットしたことで、光照射面の汚れが減少でき、オキシム収量がアップするが、汚れ低減は完全ではなく、さらに蛍光剤の透過ロス等も生じる。
実施例3〜7のように発光ダイオードでは、短波長のカットをしなくても、光照射面での汚れはない。つまり、最大波長500〜650nmでは光照射面の汚れはない。実施例1、2および8では比較例1よりも光照射面での汚れは少ないながらも、比較的短波長では光照射面での汚れを示す結果となった。しかし、これらは比較例1および2よりもオキシム収量が良い結果となり、光照射面での汚れによる反応への影響は放電灯に比べ少ない。これも発光ダイオードでは面状の光照射が可能となり、単位照射面積あたりの発光エネルギーを低減できるため、光照射面の汚れを緩和できる利点である。実施例8の白色発光ダイオードでは最大波長が443nm、発光エネルギー分布の2番目のピーク波長が555nmであり、長波長サイドに波長を拡張できるので、光照射面のタール状物質の付着を抑制できる。
地球環境に優しく、省エネ、長寿命等で次世代の光源として期待されている発光ダイオードを光源として、光化学反応、特に光ニトロソ化反応を可能にした。この結果、発光ダイオードは表示用途や照明用途のランプ代替として、脚光を浴びているが、光化学反応に適用できることで大いに、発光ダイオードの新たな用途や可能性を広げられる。さらに、光化学反応を用いた製造、その応用範囲がこれらに限られるものではないが、例えばカプロラクタムやラウリルラクタムの製造、特に、光ニトロソ化法によるシクロヘキサンノンオキシムからのカプロラクタムの製造において、発光ダイオードを適用することにより、発光エネルギーを効率的に光ニトロソ化反応に利用できるとともに、環境負荷低減、省エネルギー、寿命延長が可能となり大幅なコストダウンが期待できる。
図1は、波長625nm付近に発光エネルギーの最大値を有する発光ダイオードの一例の発光エネルギー分布を表すグラフである。 図2は、発光エネルギーの最大値を示す波長が400〜760nmの範囲にある放電灯の一例の発光エネルギー分布を表すグラフである。 図3は、発光エネルギーの最大値を示す波長が400〜760nmの範囲にある放電灯の一例の発光エネルギー分布を表すグラフである。 図4は、実施例1〜4で用いた各発光ダイオードの波長に対する相対発光エネルギー分布である。 図5は、実施例5〜8で用いた各発光ダイオードの波長に対する相対発光エネルギー分布である。 図6は、比較例で用いた高圧水銀ランプの波長に対する相対発光エネルギー分布である。 図7は、本発明の発光ダイオードを用いた光化学反応の一例である。 図8は、比較例の放電灯を用いた光化学反応の一例である。
符号の説明
1 発光ダイオード
2 光化学反応器
3 ヒートシンク
4 シクロアルカン導入ライン
5 光ニトロソ化剤導入ライン
6 冷却器
7 反応冷却水導入ライン
8 反応冷却水排出ライン
9 未反応ガスライン
10 反応生成物ライン
11 放電灯
12 ランプ冷却器
13 ランプ冷却水導入ライン
14 ランプ冷却導入管
15 ランプ冷却水排出ライン
16 冷却バス
17 発光管

Claims (8)

  1. シクロアルカンと光ニトロソ化剤とを、光照射により光化学反応させる方法において、光源として発光ダイオードを使用し、かつ該光源の波長に対する発光エネルギー分布の中で、発光エネルギーの最大値を示す波長が400nm〜760nmの範囲にあることを特徴とするシクロアルカノンオキシムの製造方法。
  2. 前記光源の波長に対する発光エネルギー分布において、波長400nmよりも短波長領域での波長に対する発光エネルギーが、発光エネルギーの最大値の5%以下であり、かつ、波長760nmよりも長波長領域での波長に対する発光エネルギーが、前記発光エネルギーの最大値の5%以下であることを特徴とする請求項1に記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
  3. 前記発光ダイオードとして、エネルギー変換効率が3%以上であるものを使用することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
  4. 光反応液を含む光化学反応器の側面に沿って面状に配列した複数の発光ダイオードを使用して、透過性の光化学反応器を介して光反応液に光照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
  5. 前記光反応液に冷却器を浸漬して、光反応液の冷却を行うことを特徴とする1〜4のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
  6. 前記シクロアルカンがシクロヘキサンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
  7. 前記光ニトロソ化剤が塩化ニトロシルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシクロアルカンオキシムの製造方法。
  8. 前記シクロアルカノンオキシムがシクロヘキサノンオキシムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシクロアルカノンオキシムの製造方法。
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