JP2010002080A - 空調システム - Google Patents

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Abstract

【課題】扉の閉鎖後において早期に室圧を設定圧力に収束させること。
【解決手段】扉を介して連通するA室およびB室において、各室圧がその設定圧力となるように調節ダンパ(41)の開度が調節されて排気量が調節される。扉の閉鎖時には、「通常モード」のPID制御によって調節ダンパ(41)の開度が調節される。そして、扉の開放中には、「通常モード」よりも制御ゲインが低く設定された「扉開放モード」のPID制御によって調節ダンパ(41)の開度が調節される。
【選択図】図1

Description

本発明は、対象室等の室圧制御を行う空調システムに関するものである。
従来より、対象室等のクリーンルームでは、菌類の侵入を防止するため、室内を一定圧力に維持するように室圧制御が行われている。例えば、特許文献1の室圧監視装置は、互いに隣接して並列に配置された複数の対象室(クリーンルーム)の室圧を監視して制御している。
この特許文献1では、各対象室の室圧が清浄度順位に応じて異なる設定圧力に定められている。各対象室の給気側には、給気量を一定風量に制御する定風量装置が設けられ、各対象室の排気側には、排気量を調節するモータダンパが設けられている。そして、各対象室は、室圧が定期的に監視され、モータダンパによる排気量の調節によって個別に室圧が制御される。
特開平8−87693号公報
ところで、この種の隣接する対象室としては、その対象室同士を行き来するための扉が設けられているものがある。この場合、扉が開放されると、その開放によって互いに連通する設定圧力の高い対象室内と設定圧力の低い対象室内とが均圧される。つまり、設定圧力の高い対象室の室圧は急激に低下し、設定圧力の低い対象室の室圧は急激に上昇する。そうすると、室圧が低下した対象室ではモータダンパの開度が小さくなり、室圧が上昇した対象室ではモータダンパの開度が大きくなる。ここで、再び扉が閉鎖されると、モータダンパの開度が過小または過大となっているため、各対象室の室圧が乱れ、設定圧力に収束するのに多大な時間を要するという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、扉開放によって室圧が変動しても、扉の再閉鎖以降に室圧を設定値まで早期に収束させることである。
第1の発明は、互いに扉を介して連通し且つ室圧の設定値が異なる複数の対象室に対して給排気するための給排気流路(12,13,32,33)と、該給排気流路(12,13,32,33)の給気量および排気量の少なくとも一方を調節するためのダンパ(41)と、上記対象室の室圧がその設定値となるように上記ダンパ(41)の開度を調節する制御手段(50)とを備えた空調システムを前提としている。そして、上記制御手段(50)は、上記扉の閉鎖中において、上記対象室の室圧とその設定値との偏差に応じて設定された第1制御ゲインで上記ダンパ(41)の開度を調節する第1制御部(52)と、上記扉の開放中において、上記対象室の室圧とその設定値との偏差に応じて上記第1制御ゲインよりも低く設定された第2制御ゲインで上記ダンパ(41)の開度を調節する第2制御部(53)とを備えているものである。
上記の発明によれば、扉が閉鎖されているときは、第1制御ゲインでダンパ(41)の開度が調節され、扉が開放されているときは、第1制御ゲインよりも低く設定された第2制御ゲインでダンパ(41)の開度が調節される。制御ゲインは、室圧の偏差(室圧と設定値との差)に対するダンパ(41)の開度調節量である。ダンパ(41)の開度調節量は室圧の偏差が大きくなるに従って大きくなる。第2制御ゲインは第1制御ゲインよりも低いため、第1制御部(52)に比べて第2制御部(53)の方が室圧の偏差に対するダンパ(41)の開度調節量が小さい。
したがって、扉の閉鎖中は、ダンパ(41)の開度調節量が大きいため、室圧変動に対する応答性が高い。よって、安定した室圧制御を行うことができる。一方、扉が開放されると、室圧の設定値が高い対象室では室圧が急激に低下し、室圧の設定値が低い対象室では室圧が急激に上昇し、両室において室圧の偏差が大きくなる。ところが、この場合、ダンパ(41)の開度調節量が小さいため、扉の開放中においてダンパ(41)の開度はそれほど大きく変化しない。これにより、扉の開放中において、ダンパ(41)の開度が過小または過大となるのを抑制することができる。したがって、その後、扉が再閉鎖されて第1制御部(52)に切り換わると、室圧が速やかに変動して設定値に回復する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記制御手段(50)は、室圧の設定値が高い対象室の室圧が低下すると同時に室圧の設定値が低い対象室の室圧が上昇すると、これら対象室の扉が開放されたと判定し、その後、上記室圧の設定値が高い対象室の室圧が上昇すると同時に上記室圧の設定値が低い対象室の室圧が低下すると、上記開放された扉が閉鎖されたと判定する判定部(51)を備え、上記判定部(51)による扉開放の判定があると、上記第2制御部(53)によって上記ダンパ(41)の開度調節を行い、上記判定部(51)による扉閉鎖の判定があると、上記第1制御部(52)によって上記ダンパ(41)の開度調節を行うように構成されているものである。
上記の発明では、室圧の変動状態によって扉の開閉が判定される。室圧の設定値が高い対象室の室圧が低下すると同時に室圧の設定値が低い対象室の室圧が上昇すると、扉が開放されたとして、第2制御部(53)によってダンパ(41)を制御する。その後、室圧の設定値が高い対象室の室圧が上昇すると同時に室圧の設定値が低い対象室の室圧が低下すると、開放されていた扉が閉鎖されたとして、第1制御部(52)によってダンパ(41)を制御する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記制御手段(50)の判定部(51)は、室圧の設定値が高い対象室の室圧が低下すると同時に室圧の設定値が低い対象室の室圧が上昇し、且つ、これら対象室の室圧とその設定値との偏差が所定値を超えると、これら対象室の扉が開放されたと判定し、その後、上記室圧の設定値が高い対象室の室圧が上昇すると同時に上記室圧の設定値が低い対象室の室圧が低下し、且つ、これら対象室の室圧とその設定値との偏差が所定値未満になると、上記開放された扉が閉鎖されたと判定するように構成されているものである。
上記の発明では、上記第2の発明の条件に加えて、室圧の偏差が所定値を超えると、扉が開放されたと判定される。また、上記第2の発明の条件に加えて、室圧の偏差が所定値未満になると、扉が再閉鎖されたと判定される。
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記給排気流路(12,13,32,33)の給気流路(12,13)に設けられて給気量を一定に調節する給気量調節手段(26)を備えている。一方、上記ダンパ(41)は、上記給排気流路(12,13,32,33)の排気流路(32,33)に設けられて排気量を調節するように構成されているものである。
上記の発明では、対象室において、給気量が一定で、排気量を調節することで室圧が制御される。例えば、室圧が設定値より低い場合は、ダンパ(41)の開度を小さくして排気量を減少させ、逆に室圧が設定値より高い場合は、ダンパ(41)の開度を大きくして排気量を増大させる。
本発明によれば、扉の開放中には、扉の閉鎖中に比べて低い制御ゲインでダンパ(41)の開度を調節するようにした。したがって、扉の開放中において、ダンパ(41)の開度が過小(最小)または過大(最大)まで変化するのを抑制することができる。また、ダンパ(41)の開度制御を停止するわけではないため、室圧が著しく変動するの多少抑制することができる。そのため、扉の再閉鎖時において、給排気量のバランスはそれほど崩れず、室圧の乱れが発生するのを防止することができる。その結果、扉の再閉鎖後は、室圧を設定値までオーバーシュートさせることなく速やかに回復(収束)させることができる。よって、信頼性の高い空調システム(1)を提供することができる。
また、第2の発明によれば、室圧の設定値が高い対象室の室圧が低下すると同時に室圧の設定値が低い対象室の室圧が上昇すると、扉が開放されたと判定し、その後、室圧の設定値が高い対象室の室圧が上昇すると同時に上記室圧の設定値が低い対象室の室圧が低下すると、扉が閉鎖されたと判定するようにした。つまり、本発明によれば、室圧の変動によって扉の開閉を判定するようにした。したがって、例えばドアスイッチおよびそれに必要な配線等を新たに設けることなく、扉の開閉を検知することができる。室圧の変動を検知するためには室圧を検出する圧力センサが必要になるが、これは室圧制御するにあたって必要不可欠なセンサであるため、それを利用することで室圧の変動を容易に検知することができる。よって、本発明は、低コストで簡易な構成により、扉の開閉を検知することができ、第1制御部(52)による制御と第2制御部(53)による制御とを切り換えることができる。
さらに、第3の発明によれば、扉の開閉判定の条件として、室圧と設定値との偏差の大小も考慮するようにした。これにより、外乱等によって室圧が微変動した場合に、誤って扉の開閉を検知してしまう状態を確実に回避することができる。したがって、確実に扉の開閉を検知することができる。その結果、一層信頼性の高い空調システム(1)を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態の空調システム(1)は、医薬品等に関する対象室内の空調を行うものである。図1に示すように、この空調システム(1)は、隣接する複数(本実施形態では、2つ)の対象室(A室,B室)に適用される。本実施形態において、第1対象室としてのA室は医薬品の製造等を行う主室であり、第2対象室としてのB室は作業者が出入りする附室である。そして、A室とB室の間には互いに行き来するための扉が設けられ、その扉の開放によってA室とB室が連通する。なお、これら対象室は、対象室を構成している。
本実施形態の空調システム(1)は、各対象室へ空気を供給する給気系統(10)と、各対象室から空気を排出する排気系統(30)とを備えている。
上記給気系統(10)は、給気側主流路(11)と、2つの給気流路(12,13)とを備えている。
上記給気側主流路(11)は、外気が取り込まれて流れる。この給気側主流路(11)には、上流側から順に、外気処理空調機(21)および顕熱空調機(23)が設けられている。外気処理空調機(21)は、上流側から順に、中性能フィルタ(21a)、HEPAフィルタ(high efficiency particulate air filter)(21b)および給気ファン(21c)が配設されている。この外気処理空調機(21)では、取り込まれた空気が中性能フィルタ(21a)およびHEPAフィルタ(21b)によって塵埃等が除去される。顕熱空調機(23)は、上流側から順に、冷却コイル(23a)、電気ヒータ(23b)、加湿器(23c)および給気ファン(23d)が配設されている。この顕熱空調機(23)では、外気処理空調機(21)を出た空気が取り込まれ、必要に応じて冷却コイル(23a)で冷却され、電気ヒータ(23b)で加熱され、加湿器(23c)で加湿される。
また、上記給気側主流路(11)における外気処理空調機(21)と顕熱空調機(23)の間には、主遮断ダンパ(22)が設けられている。この主遮断ダンパ(22)は、流路の開放と遮断とを切り換えて行うように構成されている。なお、後述する各種遮断ダンパについても同様の構成である。
上記各給気流路(12,13)は、給気側主流路(11)における顕熱空調機(23)よりも下流部分に互いに並列接続されている。そして、第1給気流路(12)はA室に、第2給気流路(13)はB室にそれぞれ繋がっている。各給気流路(12,13)は、上流側から順に、遮断ダンパ(25)および定風量装置(26)を有し、給気側主流路(11)から各対象室へ空気を供給する。定風量装置(26)は、図示しないが、バルブと風速センサを備えた給気量調節手段である。つまり、この定風量装置(26)は、各対象室への給気量(風量)が一定になるように、風速センサの計測値に基づいてバルブの開度が調節される。なお、各対象室の給気流路(12,13)が繋がる入口部には、HEPAフィルタ(27)が設けられている。
上記排気系統(30)は、排気側主流路(31)と、2つの排気流路(32,33)とを備えている。
上記排気側主流路(31)には、排気ファン(43)が設けられ、その下流側に主遮断ダンパ(44)が設けられている。各排気流路(32,33)は、排気側主流路(31)における排気ファン(43)よりも上流部分に互いに並列接続されている。そして、第1排気流路(32)はA室に、第2排気流路(33)はB室にそれぞれ繋がっている。各排気流路(32,33)は、遮断ダンパ(42)が設けられている。この排気系統(30)では、排気ファン(43)によって各対象室の空気が各排気流路(32,33)および排気側主流路(31)を通って室外へ排出される。
上記排気系統(30)には、遮断ダンパ(42)以外に、開度可変に構成された調節ダンパが設けられている。具体的に、各排気流路(32,33)には、遮断ダンパ(42)の上流側に排気量調節手段としての調節ダンパ(41)が1つずつ設けられている。また、排気側主流路(31)には、主遮断ダンパ(44)の下流側に主調節ダンパ(45)が設けられている。この排気系統(30)では、各調節ダンパ(41)の開度調節によって、各対象室の排気量が調節され、その対象室の室圧制御が行われる。また、各対象室の排気流路(32,33)が繋がる出口部には、HEPAフィルタ(46)が設けられている。なお、本実施形態において、給気系統(10)の定風量装置(26)は本発明に係る給気量調節手段を構成し、排気系統(30)の調節ダンパ(41)は本発明に係るダンパを構成している。
上記給気系統(10)と排気系統(30)の間には、調節ダンパ(37)を有する還気流路(36)が接続されている。この還気流路(36)の入口側である一端は、排気側主流路(31)における排気ファン(43)と主遮断ダンパ(44)との間に接続されている。還気流路(36)の出口側である他端は、給気側主流路(11)における主遮断ダンパ(22)と顕熱空調機(23)との間に接続されている。つまり、還気流路(36)は、対象室から排気系統(30)に排出された空気の一部または全部を給気系統(10)に戻す循環流路を構成している。
この空調システム(1)は、室圧センサ(47)とコントローラ(50)を備えている。
上記室圧センサ(47)は、各対象室に設けられている。室圧センサ(47)は、対象室内の圧力(即ち、室圧)を検出する圧力検出手段を構成している。
上記コントローラ(50)は、判定部(51)と、第1制御部(52)と、第2制御部(53)とを備え、本発明に係る制御手段を構成している。コントローラ(50)は、各対象室の室圧がその設定圧力となるように調節ダンパ(41)の開度制御を行うものであり、「通常モード」と「扉開放モード」の2つの制御モードを有している。
上記判定部(51)は、各対象室の室圧の変動に基づいて扉の開閉を判定するものである。つまり、判定部(51)は扉が閉鎖状態であるか開放状態であるかを判定するものである。第1制御部(52)および第2制御部(53)は、各対象室の室圧がその設定圧力となるように、PID制御で調節ダンパ(41)の開度調節を行うものである。第1制御部(52)は、扉の閉鎖時において作動し、「通常モード」のPID制御を行う。第2制御部(53)は、扉の開放時において作動し、「扉開放モード」のPID制御を行う。
図2に示すように、上記「扉開放モード」のPID制御における比例帯は、「通常モード」のPID制御における比例帯よりも高く設定されている。例えば、「通常モード」では比例帯が10%に設定され、「扉開放モード」では比例帯が500%に設定される。この場合、「通常モード」では、室圧の変動範囲10Paに対して調節ダンパ(41)の開度が0%〜100%まで調節される。これに対し、「扉開放モード」では、室圧の変動範囲500Pa(=10Pa×10%/500%)に対して調節ダンパ(41)の開度が0%〜100%まで調節される。このように、室圧とその設定圧力との偏差が同じであっても、その偏差に対する調節ダンパ(41)の開度調節量は「通常モード」よりも「扉開放モード」の方が低くなる。つまり、「扉開放モード」のPID制御は、「通常モード」のPID制御に比べて、制御ゲインが低く設定されている。「通常モード」の制御ゲインおよび「扉開放モード」の制御ゲインは、それぞれ本発明に係る第1制御ゲインおよび第2制御ゲインを構成している。コントローラ(50)の詳細な制御動作については後述する。
−運転動作−
次に、この空調システム(1)の運転動作について説明し、続いて対象室の室圧制御について詳細に説明する。
この空調システム(1)では、無菌空気を対象室へ供給すると共に、対象室内の空気を室外へ排出する換気運転が行われる。この換気運転では、主遮断ダンパ(22,44)および遮断ダンパ(25,42)が開状態に設定され、主調節ダンパ(45)および調節ダンパ(37,41)が適切な開度に設定される。
この状態で、外気処理空調機(21)、顕熱空調機(23)および排気ファン(43)を運転させる。そうすると、先ず、室外から給気側主流路(11)へ取り込まれた空気は、外気処理空調機(21)で塵埃等が除去され、顕熱空調機(23)へ流入する。顕熱空調機(23)では、空気の温度および湿度が調節される。この調節された空気は、各給気流路(12,13)へ流れ、HEPAフィルタ(27)を通過して各対象室へ供給される。ここで、供給された空気は、外気処理空調機(21)やHEPAフィルタ(27)によって無菌空気となっている。また、各給気流路(12,13)へ流れた空気は、レヒートコイル(24)によって温度が微調整される。
各対象室の空気は、排気ファン(43)によって、HEPAフィルタ(46)を通過して排気流路(32,33)へ排出され、排気側主流路(31)へ流れる。この排気側主流路(31)の空気は、一部が還気流路(36)へ流れ、残りが主調節ダンパ(45)を通って室外へ排出される。還気流路(36)へ流れた空気は、給気側主流路(11)へ流れて外気処理空調機(21)からの空気と合流する。ここで、室外へ排出される空気量および還気流路(36)へ流れる空気量は、主調節ダンパ(45)および調節ダンパ(37)の開度制御によって調節される。以上の換気運転により、対象室における無菌状態が維持される。
−室圧制御−
上記換気運転時には、コントローラ(50)によって各対象室の室圧制御が行われる。ここでは、対象室の扉が閉鎖されている状態で上記換気運転を開始した場合について説明する。
図3に示すように、換気運転が開始されると、コントローラ(50)の第1制御部(52)による「通常モード」のPID制御が行われる。具体的に、運転中は、一定時間(例えば、0.3秒)毎にA室およびB室の室圧センサ(47)の検出値(以下、単に検出圧力という。)がコントローラ(50)に入力される。そして、第1制御部(52)は、入力される検出圧力がその設定圧力となるように調節ダンパ(41)の開度を調節する。例えば、第1制御部(52)は、検出圧力が設定圧力よりも高い場合、調節ダンパ(41)の開度を大きくして、対象室からの排気量を増大させる。また、第1制御部(52)は、検出圧力が設定圧力よりも低い場合、調節ダンパ(41)の開度を小さくして、対象室からの排気量を減少させる。この第1制御部(52)のPID制御により、各対象室の室圧が設定圧力に維持される。なお、本実施形態では、A室の設定圧力SVa(例えば、+50Pa)がB室の設定圧力SVb(例えば、+30Pa)よりも高く設定され、B室よりA室の方が無菌レベルが高い。
また、上記換気運転中は、常時、コントローラ(50)の判定部(51)によって扉の開閉が判定される。具体的に、この判定部(51)の判定動作は図4に示すフローチャートに基づいて行われる。
先ず、ステップST1において、4つの判定式を全て満たすと、扉が開いた(開放された)と判定してステップST2へ移行する。これら判定式において、「PVa2」および「PVa1」はそれぞれA室の直近の検出圧力およびその直前の検出圧力を示し、「PVb2」および「PVb1」はそれぞれB室の直近の検出圧力およびその直前の検出圧力を示す。例えば、図3に示すように、扉が開くと、A室ではその直後の検出圧力PVa2が設定圧力SVaよりも低くなり、B室ではその直後の検出圧力PVa2が設定圧力SVaよりも高くなる。これは、扉が開くことによって、A室とB室とが連通して室圧の高いA室から室圧の低いB室へ空気が流入するためである。この場合、ステップST1において、第1の判定式「検出圧力PVa2−検出圧力PVa1」が負の値となり、第2の判定式「検出圧力PVb2−検出圧力PVb1」が正の値となる。
さらに、ステップST1において、第3の判定式「設定圧力SVaと検出圧力PVa2の偏差」が定数aより大きくて、第4の判定式「設定圧力SVbと検出圧力PVb2の偏差」が定数bより大きい場合、4つの判定式を全て満たす。つまり、第3の判定式によってA室における室圧の低下度合いを、第4の判定式によってB室における室圧の上昇度合いをそれぞれみている。これにより、外乱等によって室圧が微変動したときに誤って扉の開放を検知してしまうことはなく、確実に扉の開放が識別される。以上のように、判定部(51)は、ステップST1において、設定圧力の高いA室の室圧が低下すると同時に設定圧力の低いB室の室圧が上昇し、且つ、こられ両室の室圧とその設定圧力との偏差が何れも所定値を超えると、扉が開放されたと判定するようになっている。
ステップST2では、第1制御部(52)による「通常モード」のPID制御から第2制御部(53)による「扉開放モード」のPID制御に切り換えられる。なお、ステップST1において、上記4つの判定式の1つでも満たさない場合は待機する。
第2制御部(53)による「扉開放モード」では、上記「通常モード」と同様に、入力されるA室およびB室の検出圧力がその設定圧力となるように調節ダンパ(41)の開度を調節する。つまり、A室では、検出圧力が設定圧力SVaよりも低下するため、調節ダンパ(41)の開度が小さくなり排気量が減少される。B室では、検出圧力が設定圧力SVbよりも高くなるため、調節ダンパ(41)の開度が大きくなり排気量が増大される。ところが、この「扉開放モード」のPID制御では、制御ゲインが「通常モード」の場合よりも低く設定されているため、検出圧力の低下または上昇に対して各調節ダンパ(41)の開度が少ししか変化しない。そのため、A室では給気量に対して排気量が過剰となり室圧が徐々に低下していく一方、B室では給気量に対して排気量が不足して室圧が徐々に上昇していく。そして、最終的にそれぞれの室圧は一定圧力に落ち着いてほぼ均圧状態となる(図3参照)。なお、厳密には、扉の開口部分における抵抗の分だけ、両室においてΔPの差圧が生じる(図3参照)。
この「扉開放モード」のPID制御においては、判定部(51)がステップST3に基づいて判定動作を行う。ステップST3において、4つの判定式を全て満たすと、扉が閉鎖されたと判定してステップST4へ移行する。これら判定式において、「PVa4」および「PVa3」はそれぞれA室の直近の検出圧力およびその直前の検出圧力を示し、「PVb4」および「PVb3」はそれぞれB室の直近の検出圧力およびその直前の検出圧力を示す。例えば、図3に示すように、扉が閉まると、A室ではその直後の検出圧力PVa4がその直前の検出圧力PVa3よりも高くなり、B室ではその直後の検出圧力PVa4がその直前の検出圧力PVb3よりも低くなる。これは、扉が閉鎖された直後において調節ダンパ(41)の開度が「通常モード」時よりも小さくまたは高くなっているため、A室では排気量が不足して室圧が上昇する一方、B室では排気量が過剰となって室圧が低下するからである。この場合、ステップST3において、第1の判定式「検出圧力PVa4−検出圧力PVa3」が正の値となり、第2の判定式「検出圧力PVb4−検出圧力PVb3」が負の値となる。
さらに、ステップST3において、第3の判定式「設定圧力SVaと検出圧力PVa4の偏差」が定数cより小さくて、第4の判定式「設定圧力SVbと検出圧力PVb4の偏差」が定数dより小さい場合、4つの判定式を全て満たす。つまり、第3の判定式によってA室における室圧の上昇度合いを、第4の判定式によってB室における室圧の低下度合いをそれぞれみている。これにより、外乱等によって室圧が微変動したときに誤って扉の閉鎖を検知してしまうことはなく、確実に扉の閉鎖が識別される。以上のように、判定部(51)は、ステップST3において、設定圧力の高いA室の室圧が上昇すると同時に設定圧力の低いB室の室圧が低下し、且つ、こられ両室の室圧とその設定圧力との偏差が何れも所定値を下回ると、扉が閉鎖されたと判定するようになっている。
ステップST4では、第2制御部(53)による「扉開放モード」のPID制御から再び第1制御部(52)による「通常モード」のPID制御に切り換えられる。なお、ステップST3において、上記4つの判定式の1つでも満たさない場合は待機する。
「通常モード」の制御に切り換えられた直後において、A室の調節ダンパ(41)の開度は室圧の低下量に対してそれほど小さくなっておらず、B室の調節ダンパ(41)の開度は室圧の上昇量に対してそれほど大きくなっていない。つまり、扉が閉鎖されたときの各調節ダンパ(41)は、「通常モード」時と比べてそれほど大きな開度差はついていない。したがって、扉が閉鎖された際、各対象室において給排気量のバランスがそれほど崩れず、室圧が乱れることはない。そのため、図3に示すように、扉の閉鎖後は、室圧が設定値までオーバーシュートすることなく速やかに回復(収束)する。よって、室圧が設定圧力まで回復する回復時間が短縮される。
−実験結果−
ここで、対象室の室圧制御を行った実験結果について図5および図6を参照しながら説明する。図5は、従来のように、扉の開閉に関係なく常時一定の制御ゲインで室圧制御を行った実験結果を示し、図6は、本発明に係る室圧制御を行った実験結果を示す。なお、この実験では、設定圧力SVa=40Paの対象室(以下、X室という。)と、設定圧力SVb=30Paの対象室(以下、Y室という。)とが扉を介して連通する場合について行った。また、X室の容積は、Y室の容積よりも大きいものである。
先ず、図5および図6に示すように、扉が開放されると、容積の大小関係により、X室の室圧はそれほど変動しないが、Y室の室圧は急激に上昇して一定圧力に落ち着く(ほぼ均圧状態)。なお、図5では扉が開放されても引き続き「通常モード」で室圧制御され、図6では扉が開放されると「扉開放モード」に切り換えられて室圧制御される。
そして、図5では、扉が閉鎖されると、X室の室圧はそれほど変動しないが、Y室の室圧は急激に低下して設定圧力SVbを大きく下回る(即ち、オーバーシュートする。)。その後、Y室の室圧は、徐々に上昇して設定圧力SVbに収束する。このように、扉が閉鎖されてから室圧が設定圧力SVbに収束するまでの時間(回復時間:4分20秒)が非常に長い。一方、図6では、扉が閉鎖されると、Y室の室圧は、急激に低下するが、設定圧力SVbをオーバーシュートすることなく設定圧力SVbに収束する。この場合、扉が閉鎖されてから室圧が設定圧力SVbに収束するまでの時間(回復時間:2分00秒)は従来に比べて非常に短くなるのが分かる。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、扉の開放中は、扉の閉鎖中に比べて低い制御ゲインでダンパ(41)の開度を調節するようにした。したがって、扉の開放中において、ダンパ(41)の開度が過小(最小)または過大(最大)まで変化するのを抑制することができる。また、ダンパ(41)の開度制御を停止するわけではないため、室圧が著しく変動するのを多少抑制することができる。そのため、扉の再閉鎖時において、給排気量のバランスはそれほど崩れず、室圧の乱れが発生するのを防止することができる。その結果、扉の再閉鎖後は、室圧を設定値までオーバーシュートさせることなく速やかに回復(収束)させることができる。よって、信頼性の高い空調システム(1)を提供することができる。
また、本実施形態では、設定圧力の高いA室の室圧が低下すると同時に設定圧力の低いB室の室圧が上昇すると、扉が開放されたと判定し、その後、A室の室圧が上昇すると同時にB室の室圧が低下すると、扉が閉鎖されたと判定するようにした。つまり、本発明によれば、室圧の変動によって扉の開閉を判定するようにした。したがって、例えばドアスイッチおよびそれに必要な配線等を新たに設けることなく、扉の開閉を検知することができる。室圧は室圧センサ(47)によって検出されるが、この室圧センサ(47)は室圧制御を行う空調システム(1)において必要不可欠なものであり、その既存のセンサを利用することで扉の開閉を容易に検知することができる。よって、本発明は、低コストで簡易な構成により、扉の開閉を検知することができ、第1制御部(52)による制御と第2制御部(53)による制御とを切り換えることができる。
さらに、本実施形態によれば、扉の開閉判定の条件として、室圧と設定圧力との偏差の大小(即ち、上記ステップST1および3における第3および第4の判定式)も考慮するようにした。つまり、これにより、外乱等によって室圧が微変動した場合に、誤って扉の開閉を検知してしまう状態を回避することができる。したがって、確実に扉の開閉を検知することができる。その結果、一層信頼性の高い空調システム(1)を提供することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態の判定部(51)は、ステップST1および3において第1および第2の判定式のみで扉の開閉を判定するようにしてもよい。
例えば、上記実施形態では、対象室が2室の場合について説明したが、3室以上が互いに扉を介して連通する場合でも本発明は適用することができる。
以上説明したように、本発明は、扉を介して連通する複数の対象室へ給排気して室圧制御する空調システムとして有用である。
実施形態に係る空調システムの全体構成を示す配管系統図である。 通常モードのPID制御と扉開放モードのPID制御を説明するための図である。 各対象室の室圧の変動を概略的に示す図である。 コントローラの制御動作を示すフローチャートである。 室圧制御の実験データである。 室圧制御の実験データである。
符号の説明
1 空調システム
12,13 第1,第2給気流路(給排気流路)
26 定風量装置(給気量調節手段)
32,33 第1,第2排気流路(給排気流路)
41 調節ダンパ(ダンパ)
50 コントローラ(制御手段)
51 判定部
52 第1制御部
53 第2制御部

Claims (4)

  1. 互いに扉を介して連通し且つ室圧の設定値が異なる複数の対象室に対して給排気するための給排気流路(12,13,32,33)と、該給排気流路(12,13,32,33)の給気量および排気量の少なくとも一方を調節するためのダンパ(41)と、上記対象室の室圧がその設定値となるように上記ダンパ(41)の開度を調節する制御手段(50)とを備えた空調システムであって、
    上記制御手段(50)は、上記扉の閉鎖中において、上記対象室の室圧とその設定値との偏差に応じて設定された第1制御ゲインで上記ダンパ(41)の開度を調節する第1制御部(52)と、上記扉の開放中において、上記対象室の室圧とその設定値との偏差に応じて上記第1制御ゲインよりも低く設定された第2制御ゲインで上記ダンパ(41)の開度を調節する第2制御部(53)とを備えている
    ことを特徴とする空調システム。
  2. 請求項1において、
    上記制御手段(50)は、
    室圧の設定値が高い対象室の室圧が低下すると同時に室圧の設定値が低い対象室の室圧が上昇すると、これら対象室の扉が開放されたと判定し、その後、上記室圧の設定値が高い対象室の室圧が上昇すると同時に上記室圧の設定値が低い対象室の室圧が低下すると、上記開放された扉が閉鎖されたと判定する判定部(51)を備え、
    上記判定部(51)による扉開放の判定があると、上記第2制御部(53)によって上記ダンパ(41)の開度調節を行い、上記判定部(51)による扉閉鎖の判定があると、上記第1制御部(52)によって上記ダンパ(41)の開度調節を行うように構成されている
    ことを特徴とする空調システム。
  3. 請求項2において、
    上記制御手段(50)の判定部(51)は、室圧の設定値が高い対象室の室圧が低下すると同時に室圧の設定値が低い対象室の室圧が上昇し、且つ、これら対象室の室圧とその設定値との偏差が所定値を超えると、これら対象室の扉が開放されたと判定し、その後、上記室圧の設定値が高い対象室の室圧が上昇すると同時に上記室圧の設定値が低い対象室の室圧が低下し、且つ、これら対象室の室圧とその設定値との偏差が所定値未満になると、上記開放された扉が閉鎖されたと判定するように構成されている
    ことを特徴とする空調システム。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項において、
    上記給排気流路(12,13,32,33)の給気流路(12,13)に設けられて給気量を一定に調節する給気量調節手段(26)を備える一方、
    上記ダンパ(41)は、上記給排気流路(12,13,32,33)の排気流路(32,33)に設けられて排気量を調節するように構成されている
    ことを特徴とする空調システム。
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