JP2009539412A - 汎細胞表面レセプター特異的な治療薬 - Google Patents

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Abstract

汎細胞表面レセプター特異的な治療薬、これらの調製方法およびこれらを用いる処置方法が提供される。とりわけ、汎細胞表面レセプター特異的な治療薬は、少なくとも2つの異なるHERレセプターリガンドと相互作用するか、そして/または、2以上のHER細胞表面レセプターと二量体化もしくは相互作用する、汎HER特異的治療薬である。これらの特性によって、この治療薬は、少なくとも2つの細胞表面レセプターの活性を調節し、そして、治療目的に有用となる。

Description

(関連出願)
本特許出願は、2006年6月12日出願の米国仮出願第60/813,260号;2006年9月29日出願の米国仮出願第60/848,542号;および2007年1月5日出願の米国仮出願第60/848,941号に対する優先権を主張する。
上で参照した関連出願およびこれらに付随する配列表の各々の主題は、その全体が参考として援用される。
(発明の分野)
汎HER特異的治療薬を含む汎細胞表面レセプター(pan−cell surface receptor)特異的な治療薬、ならびに、これらの作製方法および使用方法が提供される。
(背景)
細胞のシグナル伝達経路は、相互作用して、細胞外シグナル、細胞間シグナルおよび細胞内シグナルを中継する、ポリペプチドおよび低分子を含む分子のネットワークを伴う。このような経路は、相互作用して、その経路の1つのメンバーから次のメンバーへとシグナルを渡す。経路の1つのメンバーの調節は、シグナル伝達経路全体に中継されて、経路の他のメンバーの活性の調節、および、表現型、および、細胞もしくは生物のシグナルに対する応答への影響のようなシグナル伝達の結果の調節をもたらし得る。疾患および障害は、シグナル伝達経路の誤調節または調節における変化を伴い得る。薬物開発の目標は、シグナル伝達経路におけるより正常な調節を回復させるために、このような誤調節された経路を標的とすることである。
レセプターチロシンキナーゼ(RTK)は、多くのシグナル伝達経路に関与するポリペプチドの中の、細胞のシグナル伝達分子のファミリーである。RTKは、胚形成、細胞分裂、増殖、分化、遊走および代謝を含む、種々の細胞のプロセスにおいて役割を担う。RTKは、リガンドによって活性化され得る。このような活性化は、次いで、通常は、シグナル伝達経路のその後の活性化のための要件として、レセプターの二量体化または低重合体化をもたらす。オートクリン性もしくはパラクリン性の細胞のシグナル伝達経路を誘発することなどによるシグナル伝達経路の活性化(例えば、セカンドメッセンジャーの活性化)は、特定の生物学的作用をもたらす。RTKに対するリガンドは、同系のレセプターに特異的に結合する。
RTKはまた、多数の疾患の進行(癌、自己免疫疾患および他の慢性疾患を含む)に関与しているか、または、これらにおいて役割を担っている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。RTKが関係している癌としては、乳癌および結腸直腸癌、胃癌、神経膠腫、ならびに、中胚葉に由来する腫瘍が挙げられる。RTKの非調節は、いくつかの癌において指摘されている。例えば、乳癌は、p185−HER2の発現の増加と関連付けられ得る。RTKはまた、糖尿病性網膜症および黄斑変性症を含む眼の疾患にも関連している。RTKはまた、生理学的な血管形成および腫瘍性の血管形成を含む新脈管形成に伴う調節経路にも関連している。RTKはまた、細胞の増殖、遊走および生存の調節にも関連している。
疾患に関連するRTKの中でも、とりわけ重要なのが、レセプターのHER(ヒトEGFRファミリー、また、ErbBまたはEGFRとも呼ばれる)ファミリーである(例えば、その癌における役割の考察について、非特許文献1を参照のこと)。クラスIのレセプターと呼ばれるこれらのレセプターには、HER1/EGFR、HER2、HER3およびHER4が含まれる。呼称は多様である:HER1はまた、EGFRおよびHRBB1とも称される;HER2はまた、ERBB2およびNEUとも称される;HER3はまた、ERBB3とも称される;そして、HER4はまた、ERBB4とも称される。このファミリーのメンバーは全て、細胞外のリガンド結合領域と、1回膜貫通領域と、細胞質チロシンキナーゼ含有ドメインとを有する。HERは、上皮、間葉およびニューロンを起源とする種々の組織において発現される。
通常の生理学的条件下では、HERの活性化は、そのリガンドの空間的かつ時間的な発現により制御され、これらのリガンドは、増殖因子のEGFファミリーのメンバーである。リガンド結合は、内在性のキナーゼドメインの活性化につながるレセプターのホモ二量体およびヘテロ二量体の形成を誘導し、細胞質テイルにおける特定のチロシン残基のリン酸化をもたらし、最終的には、細胞内シグナル伝達経路の活性化をもたらす。
これらのレセプターの各々は、癌において役割を担っていることが示されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3を参照のこと;)。例えば、HER1(ErbB1)およびHER2(ErbB2)は、多くのヒトの癌の発症および病理に関連している;そして、これらのレセプターにおける変化は、より攻撃的な疾患および乏しい臨床上の成果を伴う疾患と関連している。以下の表は、特定の癌におけるHERレセプターファミリーメンバーおよびその同系リガンドの役割をまとめたものである:
癌および他の疾患におけるその役割に起因して、HERレセプターは、治療薬の標的となる。抗HER治療薬には2つのクラスがある:本明細書においてECDと称される細胞外(または外部ドメイン(ectodomain))を標的とする抗体と、低分子のチロシンキナーゼインヒビター。抗HER薬物は、限られた効能と限られた応答期間とを呈する。例えば、Herceptin(登録商標)(Trastuzimab)は、マウスモノクローナル抗体のヒト化バージョンであり、これは、HER2の細胞外ドメインを標的とする。薬が効き目を持つには、HER2の高い発現(少なくとも3〜5倍過剰な発現)を必要とする。結果として、乳癌患者のうち25%よりも少ない割合が、処置に適格とされる。この集団の中でも、大部分は、処置に対し応答しない(Piccart−Gebhart et al.2005;Romond et al.,2005)。さらに、低分子のチロシンキナーゼインヒビターは、しばしば、特異性を欠く。したがって、化学療法と組合せてHerceptinで処置された予め選択されたHER2を多く発現する患者を除いて、単一標的の抗HER剤、抗体または低分子のチロシンキナーゼインヒビターで観察される効能は、10〜15%の範囲である。
Hynes et al.(2005)Nature Reviews Cancer 5:341−35 Slamon et al.(1989)Science 244:707−712 Bazley et al.,(2005)Endocr.Relat.Cancer Jul12 補遺1:S17−S27
利用可能な治療の限られた有効性に起因して、これらの標的に対処するための代替的な戦略を開発する必要性が残されている。したがって、とりわけ、抗HER抗体および低分子よりも有効な治療薬の提供を含めて、HERレセプターファミリーを標的とするための代替的な戦略を提供することが本明細書における目的である。
(発明の簡単な要旨)
本明細書の一部として、配列表が、本発明の一部として添付されるように扱われる。配列は、本明細書の一部として組み込まれる。
本明細書において、治療薬および候補治療薬、ならびに、候補治療薬を同定または発見するための方法が提供される。このような治療薬を用いた処置方法が提供される。治療薬は、1以上の細胞表面レセプターの活性が調節される限りは、1以上のレセプターに対するリガンドへの結合および/または、1以上の細胞表面レセプターとの相互作用を介してなどで、1以上の細胞表面レセプターを特異的に標的とするという点で、汎細胞表面レセプター治療薬となるように設計される。治療薬としては、1以上のHERレセプターを標的とするもの、ならびに、1以上のHERレセプターおよびさらなるレセプター(例えば、抗HER治療に対する耐性の発生に寄与または関与するHERレセプター)を標的とするものが挙げられる。特定の実施形態において、治療薬および候補治療薬は、抗HER治療薬の有効性に対する制約に関連する問題(限られた効能および耐性の発生)に対処するように設計される。
本明細書において、2つの細胞表面レセプターの細胞外ドメイン(ECD)またはその一部分の多量体が提供される。多量体の成分としては、第一のECDポリペプチドおよび第二のECDポリペプチドが挙げられ、ここで、第一および第二のポリペプチドは、別個に、直接的に、または、リンカーを介して間接的に多量体化ドメインへと連結される。本明細書において提供される多量体において、第一のキメラポリペプチドは、HER1の全長ECDであり得るか;または、第一のキメラポリペプチドは、HER1、HER2、HER3もしくはHER4のECDの全長より短い部分を含み得、ECDの全体または一部分がHER2に由来する場合(この場合、HER2 ECDの二量体化を達成するためには、ドメインIVの少なくとも一部分(代表的には、ドメインIVのモジュール2〜5の十分な部分)が存在しなくてはならない)を除いて、ECD部分は、少なくとも、HERレセプターのリガンドに結合するために十分なサブドメインIおよびIIIの部分と、細胞表面レセプターと二量体化するために十分なECDの部分(サブドメインIIの十分な部分を含む)とを含む。ポリペプチドの第二の成分は、少なくとも、リガンドに結合するため、および/または、細胞表面レセプターと二量体化するために十分な細胞表面レセプター(CSR)のECDの部分とを含む、第二のキメラポリペプチドである。第二のキメラポリペプチドのCSRは、任意のECDもしくはこの一部分、または、CSR(これが望ましい)であり得る。しかしながら、短縮型HER2が二量体化を達成するために十分なドメインIVの部分を含む限り、全長HER1は短縮型HER2と組み合され得るものの、第一のキメラポリペプチドが全長HER1 ECDである場合、第二のキメラポリペプチドは、全長HER2ではあり得ない。第一および第二のキメラECDポリペプチドは、その多量体化ドメインの相互作用により多量体を形成する。本明細書において提供される、結果として生じる多量体は、第一のキメラポリペプチドもしくはそのホモ二量体と比べて追加のリガンドに結合し、そして/または、第一のキメラポリペプチドもしくはそのホモ二量体よりも多くの細胞表面レセプターと二量体化する。
他の多量体において、少なくとも1つのECDドメインもしくはその一部分は、変異を含み、この変異は、このような変異のない形態と比べてリガンド結合または他の活性を変化させる。このような多量体において、第二のECD部分は、同じECDドメイン、野生型もしくは変異形態、または、任意の他の細胞表面レセプターに由来するECDであり得る。上述のように、各単量体のECDもしくはその一部分は、多量体化ドメインに連結されるか、または、第二のECDもしくはその一部分へと、直接的に、または、リンカーを介して連結される。このような多量体の例は、サブドメインIIIに変異を含む少なくとも1つのHER1 ECDを含む多量体であり、この変異は、そのEGF以外のリガンドに対する親和性を増加させる。このような親和性の増加は、少なくとも10倍、代表的には、100倍、1000倍、10倍、10倍、10倍またはそれ以上である。
具体的には、そのリガンド結合親和性が変更された1つのECDもしくは複数のECDのような、改変されたECDを含む多量体もまた提供される。例えば、EGFにより活性化され、一般には、NRG−2βにより刺激されないEGFR1が、レセプターの二量体化/レセプターのシグナル伝達を促進するために、両方のリガンドがEGFR ECDと相互作用するように改変されている(Gilmore et al.(2006)Biochem J.396:79−88を参照のこと;Gilmoreらは、NRG2βが、野生型よりもEGFR変異型に対してより強力な刺激剤となることを示している)。例示的な改変型EGFRであるEGFR−S442Fの配列は、配列番号414に示され、ここで、ECDは、アミノ酸25から始まる。
ECD(配列番号414の25〜645;改変の位置は、最初の25アミノ酸シグナル配列を含むECDの配列に対して遺伝子座442にあり、そして、成熟な形態を参照する場合、遺伝子座418にある)もしくはその一部分、または、少なくともEGFR1およびNRG−2βに結合するために十分なドメインI〜IIIの部分(または、少なくとも、NRG−2βへの結合に十分な改変されたドメインIIIの部分)を含む、対立遺伝子改変体もしくは種改変体の対応する部分が、本明細書において提供される多量体、ならびに、本明細書において提供されるキメラおよび他の汎細胞表面治療薬において用いられ得る。本明細書において提供されるECDまたは当業者に公知のECDは、例示的な改変に対応する改変などにより、リガンド結合の特異性を変化させるように改変され得る。EGFR−S442Fに由来するECD、ならびに種々のECDに対して特異的なリガンドと相互作用するように改変された他のECDは、特に、Fcドメインのような多量体化ドメインに連結されたときに、汎細胞表面治療薬として用いられ得る。これらの改変されたECDは、本明細書中に記載されるあらゆる実施形態において用いられ得る。したがって、少なくとも2つのリガンド(各リガンドは、異なる野生型ECDと相互作用する)と相互作用するレセプターの改変されたECDのホモ多量体が本明細書において提供される。
本明細書において提供される多量体は、第一および第二のキメラポリペプチドの一方もしくは両方のECDが、少なくとも2つの異なる細胞表面レセプターECDに由来するサブドメインを含むハイブリッドECDであるものであり得る。また、本明細書には、第一のキメラポリペプチドが、HER2、HER3もしくはHER4のECDの全長より短い部分を含み得る多量体が含まれる。より頻繁には、第一のキメラポリペプチドは、HER3またはHER4の全長より短い部分を含む。
さらに、本明細書において提供される多量体中の第二のポリペプチドのECD部分には、第二のポリペプチドのECD部分がHER1ではないが、別のCSRのECDの全体もしくは一部分を含むものが含まれる。いくつかの場合において、他のECD部分には、第二のキメラポリペプチドのECDドメインがHER3またはHER4に由来するものが含まれる。
また、本明細書において提供されるECD多量体には、とりわけ、第二のキメラポリペプチドが、全長ECDであるECDポリペプチドを含むものが含まれる。あるいは、第二のキメラポリペプチドのECDドメインは短縮型であり、そして、少なくとも、そのリガンドに結合するため、および、細胞表面レセプターと二量体化するために十分なサブドメインI、IIおよびIIIの部分を含む。いくつかの場合、第二のキメラポリペプチドの短縮型ECDドメインは、リガンドに結合するために十分なドメインIおよびIIIの部分を含む。他の場合において、第二のキメラポリペプチドの短縮型ECDドメインは、細胞表面レセプターと二量体化するために十分なECDの部分を含む。
また、ECDもしくはこのようなECDを含む全長レセプターのリガンド結合または他の活性を、非改変ECDもしくは非改変ECDを含む全長レセプターと比べて変更するように改変されたECDドメインを含む多量体も含まれる。変更としては、リガンド結合の排除または追加が挙げられる。例えば、ECDは、非改変ECDと比べて追加されたリガンドに結合するように改変され得る。このような改変としては、改変S442(例えば、配列番号2)またはHERレセプターの対応する位置が挙げられ、この改変により、ECDは、NRG−2βのようなHER3に対するリガンドにも、EGFのようなHER1に対するリガンドにも結合する。
これらの多量体は、HER1に由来するECDもしくはその一部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその一部分とを含み得、それによって、結果として生じる多量体は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個または7個のHERレセプターと相互作用する。多量体の中には二量体が含まれる。多量体化ドメインとしては、Fcドメインまたはその改変体のような、上記または下記に列挙される任意のものを含め、当業者に公知の任意のものが挙げられる。
本明細書において提供される多量体中の第一および第二のポリペプチドの多量体化ドメインとしては、とりわけ、免疫グロブリン定常ドメイン(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性の(compatible)タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに、安定な多量体を形成する、腔内の隆起部(proturberance−into−cavity)および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔(compensatory cavity)に由来する任意の多量体化ドメインが挙げられる。いくつかの実施形態では、多量体化ドメインは、Fcドメインまたは多量体化を達成するその改変体である。Fcドメインは、IgG、IgMまたはIgEに由来するものを含めて、任意の免疫グロブリン分子に由来し得る。
代表的には、本明細書において提供される多量体について、細胞表面タンパク質の細胞表面レセプター(CSR)(ここから、第二のキメラポリペプチドが由来するか、そして/または、多量体が二量体化する)は、多量体のECDまたはその一部分に対し同系のレセプターである。CSRの例としては、HER2、HER3、HER4、IGF1−R、VEGFR、FGFR、TNFR、PDGFR、MET、Tie(すなわち、Tie−1またはTEK(Tie−2))、RAGE、EphレセプターおよびT細胞レセプターが挙げられる。いくつかの実施形態では、第二のキメラポリペプチドのECDは、VEGFR1、FGFR2、FGFR4、IGF1−RまたはTie1に由来する。他の場合において、第二のキメラポリペプチドのECDまたはその一部分は、多量体化ドメインに対し直接的に、または、リンカーを介して間接的に連結されたイントロン融合タンパク質である。いくつかの場合において、イントロン融合タンパク質はハースタイン(herstain)である。他の局面では、本明細書において提供される多量体は、少なくとも7個の異なるリガンドに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書において提供される多量体の第二のキメラポリペプチドは、HER1のECDの全体でも一部分でもない、別のレセプターチロシンキナーゼ(RTK)である。
このようなECD多量体は、任意のHER2リガンドである、EGF、TGF−α、アンフィレグリン(amphiregulin)、HB−EGF、β−セルリン、エピレグリン、ならびに、HER1以外の細胞表面レセプターのECDに結合する任意のさらなるリガンドと相互作用し得る。例えば、さらなるリガンドとしては、ニューレグリン−1、ニューレグリン−2、ニューレグリン−3およびニューレグリン−4のいずれかのような、ニューレグリンが挙げられ得る。
いくつかの例において、本明細書において提供される多量体は、第一のキメラポリペプチドとして、i)HER1レセプターに由来する全長ECDまたはii)リガンドへの結合および/もしくは二量体化に十分なこれらの部分のいずれかを含むものを、そして、第二のキメラポリペプチドとして、リガンドへの結合および/もしくは二量体化に十分な、HER3もしくはHER4のECDの全体もしくは一部分を、含む。
本明細書において提供される任意の多量体は、多量体化ドメインに連結されたキメラポリペプチド成分を含み、ここで、この多量体化ドメインは、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに、安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔のうちのいずれかであり得る。このような多量体は、その多量体化ドメインの相互作用により、背中合わせ(back−to−back)の立体配置で配置され、ここでは、両方のキメラポリペプチドのECDが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である。1つの例において、多量体化ドメインはFcドメインである。Fcドメインは、IgG、IgMまたはIgEに由来するもののように、任意の免疫グロブリン分子に由来し得る。
本明細書において提供される多量体には、少なくとも2つのキメラポリペプチドを有するものが含まれる。1つの例において、多量体は、少なくとも2つのキメラポリペプチドを含み、ここで、第一のキメラポリペプチドは、HER1の全体もしくは一部分を含み、そして、第二のキメラポリペプチドは、HER3またはHER4の全体もしくは一部分を含む。
また、本明細書において提供される多量体には、構成要素であるキメラポリペプチドのうちの一方が、融合ポリペプチドであるものも含まれる。いくつかの実施形態では、第一のキメラポリペプチドおよび第二のキメラポリペプチドの両方が、融合ポリペプチドである。他の例において、構成要素であるキメラポリペプチドは、化学結合により形成される。1つの例において、第一のキメラポリペプチドおよび第二のキメラポリペプチドの両方が、化学結合により形成される。さらなる例において、少なくとも1つのキメラポリペプチドの多量体化ドメインは、ECDに対して直接的に連結される。あるいは、1つのキメラポリペプチドの多量体化ドメインは、リンカーを介してECDポリペプチドに連結される。このうちのいくつかの実施形態では、第一のキメラポリペプチドおよび第二のキメラポリペプチドの各々の多量体化ドメインは、リンカーを介して各々のECDに連結される。リンカーは、化学リンカーであってもポリペプチドリンカーであってもよい。
本明細書において提供される多量体は、ヘテロ二量体であり得る。ヘテロ二量体は、構成要素であるキメラポリペプチドが背中合わせの立体配置であり、その結果、各キメラポリペプチド中のECDが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能であるようなものであり得る。
本明細書において、少なくとも1つのECDがHER ECDであり、かつ、ECDのサブドメインI、IIおよびIIIおよびその一部(少なくともモジュール1を含む)を含むが、サブドメインIVの全体は含まないように、1つのHERレセプター(すなわち、HER1、HER2、HER3またはHER4)に由来する細胞外ドメイン(ECD)と、第二のレセプターに由来するECDとを含むヘテロ多量体が提供される。このようなヘテロ多量体において、第一のレセプターおよび第二のレセプターのECDは異なる。いくつかの場合において、第一のレセプターおよび第二のレセプターのECDは、両方ともHER ECDである。したがって、本明細書において提供されるヘテロ多量体としては、一方のHERがHER1であり、そして、もう一方のHERがHER3またはHER4であるものが挙げられる。他の場合において、第二のレセプターのECDは、細胞表面レセプターに由来するものである。ヘテロ多量体における第一または第二のレセプターのECDの二量体化アームが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である。
本明細書中に提供されるヘテロ多量体の中には、各ECDが多量体化ドメインに対し直接的にもしくはリンカーを介して連結され、その結果、少なくとも2つのECDの多量体化ドメインが相互作用してヘテロ多量体を形成するものが含まれる。ヘテロ多量体における各ECDの多量体化ドメインとしては、免疫グロブリン定常(Fc)ドメイン、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに、安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔のいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、多量体化ドメインはFcドメインである。Fcドメインは、IgG、IgMまたはIgEを含む、任意の免疫グロブリン分子に由来し得る。
本明細書において提供されるヘテロ多量体の第二のレセプターの細胞表面レセプター(CSR)は、ヘテロ多量体の構成要素であるECDまたはその一部分に対して同系のレセプターである。CSRの例としては、HER2、HER3、HER4、IGF1−R、VEGFR、FGFR、TNFR、PDGFR、MET、Tie(すなわち、Tie−1またはTie−2(TEK))、RAGEおよびEPHレセプター、または、T細胞レセプターが挙げられる。いくつかの実施形態では、CSRは、VEGFR1、FGFR2、FGFR4、IGF1−RまたはTie−1のいずれかである。
また、ECDからのドメインまたはその一部分がそのドメイン中に変異を含むようなヘテロ多量体もまた企図され、このような変異は、リガンド結合もしくは特異性または他の活性を変化させる。この変異は、非改変型のECDまたは全長レセプターと比べて、ECDまたはこのようなECDを含む全長レセプターのリガンド結合または他の活性を変化させ、それにより、ヘテロ多量体は、変更されたリガンド結合または特異性を示す。このようなヘテロ多量体の例は、2つのリガンド(例えば、HER1リガンドおよびHER3リガンド)に結合するように改変されたHER1 ECDを含むものである。例えば、S442の例えばFでの置き換え、または、HERレセプターの対応する位置の置き換えによるHER ECDの改変は、リガンド結合を変化させる。このような改変は、NRG−2βと相互作用するHER1 ECDをもたらす。このようなヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその一部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその一部分とを含み得、それによって、結果として生じるECDは、少なくとも2以上(例えば、3、4、5、6および7)のHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る。
各々が1以上のCSRのECDの少なくともドメインI、IIおよびIIIの全体もしくは一部分を含み、その結果、これらのドメインのうち少なくとも2つが、異なる細胞表面レセプターのECDに由来し、そして、このハイブリッドECDが、多量体化ドメインに連結されたときに、細胞表面レセプターと二量体化するのに十分な細胞表面レセプターのECDの部分(ドメインIIの十分な部分を含む)、および/または、そのECDドメインもしくはその部分が由来するECDに対するリガンドと相互作用するのに十分なリガンド結合ドメインの部分を含む、ハイブリッドECDが本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、細胞表面レセプターは、HERファミリーのメンバーである。したがって、例えば、ドメインIがHER1に由来し、ドメインIIがHER2に由来し、そして、ドメインIIIがHER3に由来する。別の実施形態では、ドメインIおよびIIIが、ドメインIIIに変異を含むECDに由来し、この変異は、ドメインIIIが、HER3もしくはHER4に対するリガンドに結合することを可能にするものである。
ハイブリッドECDとしては、例えば、サブドメイン内に変異を含むECDに由来するサブドメインもしくはその一部分を含むものが挙げられ、この変異は、リガンド結合もしくは特異性を変化させる。このような変異の例は、上記および下記のようなものであり、例えば、HER1の改変では、この改変により、改変されたHER1が、EGFおよびNRG−2βのような2以上のリガンドと相互作用する。
また、多量体化ドメインに対し直接的に、またはリンカーを介して連結された、本明細書において提供されるハイブリッドECDのキメラポリペプチドも、本明細書において提供される。多量体化ドメインとしては、免疫グロブリン定常(Fc)ドメイン、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに、安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔のいずれかが挙げられる。いくつかの場合、多量体化ドメインはFcドメインである。Fcドメインは、IgG、IgMまたはIgEに由来するものを含め、任意の免疫グロブリン分子に由来し得る。本明細書において提供される少なくとも2つのキメラハイブリッドECDポリペプチド間で形成された多量体が、本明細書において提供される。
ヘテロ多量体がHER1、HER3もしくはHER4のECDの短縮型部分を含む場合に、これらの部分が、少なくともサブドメインI、IIおよびIIIを含むように、HER1に由来するECDの全体もしくは一部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDの全体もしくは一部分とを含むヘテロ多量体が本明細書において提供される。
多量体化ドメインに連結された、リガンド結合および/もしくは二量体化に十分なECDもしくはその一部分を含むキメラポリペプチドが本明細書において提供される。本明細書において提供されるキメラポリペプチドのECDもしくはその一部分は、HER2、HER3もしくはHER4のECDのいずれか、またはその改変された形態に由来し得る。このようなものの例は以下である:HER2−530(配列番号14)、HER2−595(配列番号16)、HER2−650(配列番号18)、Her3−500(配列番号20)、p85Her3(配列番号22)、HER3−519(配列番号24)、HER3−621(配列番号26)、HER4−485(配列番号28)、HER4−522(配列番号30)、HER4−650(配列番号32)、配列番号32、34、127、141、146、159おおよび54〜125のいずれかに示されるポリペプチド、ならびに、上述のECDのいずれかの対立遺伝子改変体および種改変体とその改変された形態(このような形態は、活性を変化させるように改変されている)(例えば、配列番号414の残基442Fを含む残基25〜645またはその一部分(配列番号414は、改変されたHER1の配列(EGFR1)を示し、ここで、442におけるSがFで置き換えられ、NRG2βとEGFに結合するECDをもたらす)を参照のこと)。また、以下のうちのいずれかに由来する2以上のキメラポリペプチドを含むヘテロ多量体も提供される:HER1−501(配列番号10)、HER1−621(配列番号12)、HER1 S442F(配列番号414の残基25〜645)、または、リガンド結合(S442F変異を含むHER1 S442Fについて)および/もしくはレセプター二量体化に十分な前記HER1ポリペプチドのいずれかの一部分、HER2−530(配列番号14)、HER2−595(配列番号16)、HER2−650(配列番号18)、Her3−500(配列番号20)、p85Her3(配列番号22)、HER3−519(配列番号24)、HER3−621(配列番号26)、HER4−485(配列番号28)、HER4−522(配列番号30)、HER4−650(配列番号32)、配列番号32、34、127、141、146、159および54〜125のいずれかに示されるポリペプチド、ならびに、前記ポリペプチドのいずれかの対立遺伝子改変体もしくは種改変体。このヘテロ多量体におけるECDまたはその一部分は、多量体化ドメインに対して、直接的にまたはリンカーを介して間接的に連結される。
上に列挙したいずれかのような多量体化ドメインに対して連結されたHER1レセプターのECDまたはその一部分を含むキメラポリペプチドが提供され、ここで、ECDもしくはその一部分は改変を含み、それによって、このECDが、非改変型のECDもしくはその一部分と比べて、追加のリガンドに結合する。このようなポリペプチドの例は、多量体化ドメインに対して連結された、配列番号414の残基25〜645に由来するアミノ酸の連続した配列の全体もしくは一部分、または、これに対して少なくとも約70%、80%、90%、95%の配列同一性を有し、かつ、配列番号414の442に対応する位置にリガンド結合を変化させる変異(例えば、SerからPheへの変異)を含むキメラポリペプチドである。リガンド結合における変化は、HER1のECDがまた、HER3リガンド(例えば、NRG−2β)にも結合するような改変を含む。例えば、キメラポリペプチドは、多量体化ドメインと、EGFおよびNRG−2βとの相互作用に十分な、改変型HER1のECDの部分とを含む。
多量体およびヘテロ多量体におけるキメラポリペプチドには、配列番号414のアミノ酸25〜645として示されるポリペプチド、または、少なくとも2つの異なるリガンドに対するリガンド結合を達成するのに十分なその部分に対して、直接的またはリンカーを介して間接的に連結された多量体化ドメインを含むキメラポリペプチドが含まれる。これらのキメラポリペプチドもまた提供される。
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドの多量体化ドメインまたはヘテロ多量体の多量体化ドメインは、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに、安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔のいずれかであり得、その結果、ヘテロ多量体におけるキメラポリペプチドは、背中合わせの立体配置で相互作用し、ここで、両方のキメラポリペプチドのECDは、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である。いくつかの場合、多量体化ドメインはFcドメインである。Fcドメインは、IgG、IgMまたはIgEを含む、任意の免疫グロブリン分子に由来し得る。
また、配列番号127、141、146、153、155、157、159、297または299のいずれかに示されるアミノ残基の配列を含む単離されたポリペプチドも、本明細書において提供される。このような単離されたポリペプチドは、キメラポリペプチドを提供するために、多量体化ドメインに対して連結され得る。また、配列番号127、141、146、153、155、157、159、297または299のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するキメラポリペプチドと、多量体化ドメインについての配列とを含むヘテロ多量体も提供される。このヘテロ多量体は、第二のポリペプチドとして、HER ECD、または、リガンド結合および/もしくはレセプター二量体化に十分なその部分を含み得る。
本明細書において提供されるキメラポリペプチド、または、本明細書において提供される多量体もしくはヘテロ多量体における少なくとも1つのキメラポリペプチド(本明細書において提供されるハイブリッドECDを含む)をコードする核酸分子が本明細書において提供される。核酸分子を含むベクターが、本明細書において提供される。また、本明細書において記載されるベクターを含む細胞も提供される。
本明細書において提供される多量体、ヘテロ多量体、もしくはキメラポリペプチド、または、コードする核酸分子を含む薬学的組成物が本明細書において提供される。また、本明細書において提供される核酸または本明細書において提供されるベクターを含む単離細胞を含む薬学的組成物も提供される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、単回投薬の投与(single dosage administration)のために処方される。いくつかの場合、薬学的組成物はまた、局部(local)投与、局所(topical)投与または全身投与のために処方され得る。
本明細書において記載される任意の薬学的組成物を投与することによって疾患もしくは状態を処置する方法が、本明細書において提供される。処置される疾患もしくは状態としては、癌、炎症性疾患、新脈管形成疾患または過増殖性疾患が挙げられる。癌の例としては、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌が挙げられる。処置される疾患には、増殖性疾患が含まれる。増殖性疾患の例としては、平滑筋細胞の増殖および/もしくは遊走を伴うもの、または、前眼部の疾患、糖尿病性網膜症または乾癬が挙げられる。他の処置される例示的な疾患としては、再狭窄、眼障害、狭窄、アテローム性動脈硬化症、血管肥厚による高血圧、膀胱疾患および閉塞性気道疾患が挙げられる。他の例示的な疾患としては、1以上のニューレグリン(「NRG」)(例えば、NRG1(タイプI、IIおよびIIIを含む)、NRG2、NRG3および/またはNRG4)に対する曝露に関連する(例えば、NRGによって引き起こされるか、または、NRGによって悪化される)疾患または状態が挙げられる。NRGに関連する疾患の例としては、神経性疾患もしくは神経筋肉性疾患(精神分裂病およびアルツハイマー病を含む)が挙げられる。
本明細書において提供される任意の薬学的組成物を別の抗癌剤と組合せて投与することによって癌を処置する方法が、本明細書において提供される。抗癌剤としては、放射線療法および/または化学療法剤が挙げられる。一例において、抗癌剤としては、チロシンキナーゼインヒビターまたは抗体が挙げられる。抗癌剤の例としては、キナゾリンキナーゼインヒビター、アンチセンス分子またはsiRNA分子または他の二本鎖RNA分子、HERレセプターと相互作用する抗体、および、放射性核種もしくは細胞毒に結合された抗体が挙げられる。他の例示的な抗癌剤としては、Gefitinib、Tykerb、Panitumumab、Eroltinib、Cetuximab、Trastuzimab、Imatinib、白金錯体またはヌクレオシドアナログが挙げられる。
ERレセプター媒介性の疾患の処置方法が本明細書において提供され、この方法は、この疾患を持つ被験体を検査して、どのHERレセプターが発現されているか、もしくは、過剰発現されているかを同定する工程と、この結果に基づいて、少なくとも1つ(代表的には、2つ)のHERレセプターを標的とする多量体を選択する工程とを包含する。一実施形態では、疾患は癌である。癌の例としては、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌が挙げられる。
配列番号54〜125または405のいずれか1つに示されるアミノ酸の配列を有するポリペプチドが本明細書において提供される。
最初に、試験分子またはその集合を、ドメインIIおよびIV、またはドメインIおよびIIIにおける、二量体化、リガンド結合および/もしくは係留のいずれかに関与する領域に基づいた少なくとも6アミノ酸、または、6アミノ酸〜約50アミノ酸、または、50アミノ酸のポリペプチドと接触させ、次いで、1以上のポリペプチドと相互作用する任意の試験分子を同定および選択することによって、HERレセプターと相互作用する候補治療分子を同定する方法が本明細書において提供される。一実施形態では、ポリペプチドは、ライブラリー(HERレセプターに基づくポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーである)内に含まれる。試験分子が接触され得るポリペプチドの例としては、配列番号54〜125のいずれかに示されるアミノ酸の配列を有する任意のもの、および、配列番号405の4、5、6、8、10、12もしくはそれより多くのアミノ酸残基を有する任意のポリペプチドの部分、ならびに、その6、8、10、12、14、15、18、20、25、30、35、40、45もしくは50、またはそれより多くのアミノ酸残基を有する部分が挙げられる。分子のライブラリーは、特に、固体支持体またはウイルスの表面上にあるポリペプチドを含むものである。一例では、ポリペプチドは、ファージディスプレイライブラリー内に含まれる。
一実施形態では、試験分子は分子のライブラリーを含む。したがって、一例では、試験分子は、ファージディスプレイライブラリーにおける分子を含む。別の実施形態では、分子は、小さな有機化合物またはポリペプチドである。
本明細書において提供される方法において、ドメインIおよび/もしくはIII、または、ドメインII、またはドメインIVに結合する試験分子が選択される。この方法の一局面では、2以上のポリペプチドのヘテロ二量体である同定された試験分子が作製され、ここで、ヘテロ二量体のペプチドのうちの一方はドメインIIに結合し、そして、もう一方は、ドメインIVに結合する。
配列番号54〜125または405のいずれかに示されるアミノ酸の配列を有する任意のポリペプチドと相互作用する単離された抗体が、本明細書において提供される。一実施形態では、抗体は、本明細書において提供される2以上のポリペプチドと相互作用するマルチクローナル抗体である。いくつかの例では、抗体は、各々が多量体化ドメインに連結された少なくとも2つの異なるポリペプチドを含む、レセプター本体の(receptabody)二量体もしくは多量体である。多量体化ドメインは、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔のいずれかである。一例では、多量体化ドメインはFcドメインである。Fcドメインは、IgG、IgMまたはIgEに由来するもののように、任意の免疫グロブリン分子に由来し得る。
ヘテロ多量体は、特に、ECDのサブドメインもしくはその一部分が、ドメイン内に、リガンド結合もしくは特異性もしくは他の活性を変化させる変異を含むものである。例えば、変異は、ECDまたはこのようなECDを含む全長レセプターのリガンド結合または他の活性を、非改変型のECDもしくは全長レセプターと比べて変化させ、それによって、ヘテロ多量体は、変化されたリガンド結合もしくは特異性を示す。このような改変としては、追加のリガンドへの結合のような活性(例えば、HER1のECDのHER3に対するリガンド(例えば、NRG−2βリガンド)との相互作用)を排除するか、追加するか、または、向上させる、任意のものが挙げられる。このような改変の例は、HER1の位置S442における改変(例えば、S442F)またはHERレセプターの対応する位置における改変に対応する改変である。結果として生じるECDは、少なくとも2つのリガンド(HER1に対するものリガンド(例えば、リガンドEGF)と、HER3に対する第二のリガンド(例えば、NRG−2β))に結合するか、または、これと相互作用する。
これらのヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその一部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその一部分とを含み得、それによって、結果として生じるハイブリッドは、少なくとも3つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る。これらのヘテロ多量体は、本明細書に記載されるか、または、当業者に公知である任意のもの(例えば、Fc多量体化ドメインもしくはその改変体(すなわち、そのT細胞相互作用が変化された改変体))のような多量体化ドメインを含み得る。
本発明はまた、ヘテロ多量体とホモ多量体との混合物を含む組成物を提供し、ここで、ヘテロ多量体は、HEr1に由来するECDもしくはその一部分と、HER3に由来する別のECDもしくはその一部分とを含み、そして、ホモ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその一部分、または、HER3に由来するECDもしくはその一部分を含む。いくつかの局面では、HER1部分は、リガンド結合および/または生物学的活性について向上されている。他の局面では、HER3部分は、リガンド結合および/または生物学的活性について向上されている。なお別の局面では、HER1部分およびHER3部分の両方が、リガンド結合および/または生物学的について向上されている。
本発明はまた、局所投与、経口投与、全身投与または局部投与のために処方された上記組成物を含む薬学的組成物を提供する。
別の局面では、本発明は、癌、炎症性疾患、新脈管形成疾患または過増殖性疾患を処置するための方法を提供し、この方法は、上に列挙した組成物の治療上有効な量を投与する工程を包含する。いくつかの局面では、癌は、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌である。他の局面では、疾患は、増殖性疾患である。他の局面では、増殖性疾患は、平滑筋細胞の増殖および/もしくは遊走を伴うものであるか、または、前眼部の疾患であるか、または、糖尿病性網膜症もしくは乾癬である。他の局面では、疾患は、再狭窄、眼障害、狭窄、アテローム性動脈硬化症、血管肥厚による高血圧、膀胱疾患および閉塞性気道疾患である。
相互作用は動的であるので、示されるアミノ酸位置は参照および例示のためのものである。示される位置は、2、3、4、5もしくはそれより多くのアミノ酸が変化する遺伝子座の範囲を反映する。この変化はまた、対立遺伝子改変体および種改変体の中に存在する。当業者は、容易に利用可能なアルゴリズムおよびソフトウェアを含む、視覚的な比較または他の比較によって、対応する配列を同定し得る。
図1(a)は、ヒトEGFレセプター1(HER1;ErbB1;EGFR)の概略を示し、そして、HER1に関する種々の特徴についての遺伝子座を示すが、このような構造はまた、他のファミリメンバー(すなわち、HER2、3、4)の間で保存されている。HER(ErbB)ファミリーメンバーのECDは、ドメインI(L1)、II(S1)、III(L2)およびIV(S2)と指定される4つのサブドメインを含む。サブドメインIおよびIIIはリガンド結合のために協働し;ドメインIIは、二量体化に必要な配列(「二量体化アーム」)を含み;そして、ドメインIVは、ドメインII/IVの係留を可能にする配列を含む(係留された立体配置をとらないHER2は除く)。ドメインIIおよびIV内のジスルフィド結合した小さなモジュールは、個別の四角で表される。ドメインII内に、β−ヘアピン/ループ(二量体化アームとも呼ばれる)(全長の成熟HER1のアミノ酸240〜260に対応)が示される。ドメインIV内に、係留を容易にするより短いβ−ヘアピン/ループ(全長の成熟HER1のアミノ酸561〜569およびアミノ酸572〜585に対応)が示される。レセプターの二量体化および/または係留に関与するループ領域内のいくつかのアミノ酸残基が特定される。HER全長レセプターはまた、膜貫通ドメイン(影をつけた領域)、膜近傍(juxtamembrane)(JM)ドメイン、キナーゼドメインおよび細胞質テイル(CT)を含む。 図1(b)は、リガンド誘導性のHERの二量体化の機構を示す。ドメインI、II、IIIおよびIVが示される。HERレセプターの多く(約95%)は、係留された立体配置で存在し、ここで、ドメインIIとドメインIVとが、分子内相互作用を形成する。細胞表面上の単量体性レセプターの残り5%は、非係留型、すなわち開いた立体配置である。リガンド(E)は、HERファミリーレセプターのドメインIおよび/またはドメインIIIに結合する。リガンド結合は、ドメインIIの二量体化アームが露出される、非係留型の立体配置を安定化させる。ドメインIIの二量体化アームは、別のHERファミリーレセプターのドメインII内の領域と相互作用して、ホモ二量体およびヘテロ二量体をもたらす。HERレセプターのリガンド結合および二量体化は、内在性のキナーゼドメインの活性化を誘導し、細胞質テイル内の特定のチロシン残基におけるリン酸化と、その後の、下流のシグナル伝達とをもたらす。 図2(a)は、全長EGFR(NP_005219、配列番号2のアミノ酸25〜1210に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER1(EGFR)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER1(EGFR)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF100(配列番号12)、HF110(配列番号10)、HF120(ERRP、配列番号34)、HE R1(EGFR)アイソフォームb(NP_958439、配列番号12のアミノ酸25〜628に対応)、HER1(EGFR)アイソフォームc(NP_958440、配列番号133のアミノ酸25〜405に対応)、およびHER1(EGFR)アイソフォームd(NP_958441、配列番号131のアミノ酸25〜705に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸1〜165に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸313〜481に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸166〜312に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸482〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER1(EGFR)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER1(EGFR)におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(a)は、全長EGFR(NP_005219、配列番号2のアミノ酸25〜1210に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER1(EGFR)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER1(EGFR)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF100(配列番号12)、HF110(配列番号10)、HF120(ERRP、配列番号34)、HE R1(EGFR)アイソフォームb(NP_958439、配列番号12のアミノ酸25〜628に対応)、HER1(EGFR)アイソフォームc(NP_958440、配列番号133のアミノ酸25〜405に対応)、およびHER1(EGFR)アイソフォームd(NP_958441、配列番号131のアミノ酸25〜705に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸1〜165に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸313〜481に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸166〜312に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸482〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER1(EGFR)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER1(EGFR)におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(a)は、全長EGFR(NP_005219、配列番号2のアミノ酸25〜1210に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER1(EGFR)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER1(EGFR)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF100(配列番号12)、HF110(配列番号10)、HF120(ERRP、配列番号34)、HE R1(EGFR)アイソフォームb(NP_958439、配列番号12のアミノ酸25〜628に対応)、HER1(EGFR)アイソフォームc(NP_958440、配列番号133のアミノ酸25〜405に対応)、およびHER1(EGFR)アイソフォームd(NP_958441、配列番号131のアミノ酸25〜705に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸1〜165に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸313〜481に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸166〜312に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸482〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER1(EGFR)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER1(EGFR)におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(a)は、全長EGFR(NP_005219、配列番号2のアミノ酸25〜1210に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER1(EGFR)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER1(EGFR)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF100(配列番号12)、HF110(配列番号10)、HF120(ERRP、配列番号34)、HE R1(EGFR)アイソフォームb(NP_958439、配列番号12のアミノ酸25〜628に対応)、HER1(EGFR)アイソフォームc(NP_958440、配列番号133のアミノ酸25〜405に対応)、およびHER1(EGFR)アイソフォームd(NP_958441、配列番号131のアミノ酸25〜705に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸1〜165に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸313〜481に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸166〜312に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER1(EGFR)のアミノ酸482〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER1(EGFR)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER1(EGFR)におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(b)は、全長HER2(AAA75493.1、配列番号4のアミノ酸23〜1255に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER2 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER2 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF200(配列番号18)、ErbB2.1e(配列番号137のアミノ酸23〜633に対応)、HF210(配列番号16)、HF220(配列番号14)、ErbB2.1d(配列番号136のアミノ酸25〜680に対応)、ErbB2.1f(配列番号138のアミノ酸23〜575に対応)、HER2−int11(配列番号141のアミノ酸23〜438に対応)、ハースタチン(herstatin)(AAD56009、配列番号135のアミノ酸23〜419に対応)およびErbB2.a(配列番号139のアミノ酸23〜90に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER2のアミノ酸1〜172に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER2のアミノ酸320〜488に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER2のアミノ酸173〜319に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER2のアミノ酸489〜628に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER2の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER2におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(b)は、全長HER2(AAA75493.1、配列番号4のアミノ酸23〜1255に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER2 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER2 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF200(配列番号18)、ErbB2.1e(配列番号137のアミノ酸23〜633に対応)、HF210(配列番号16)、HF220(配列番号14)、ErbB2.1d(配列番号136のアミノ酸25〜680に対応)、ErbB2.1f(配列番号138のアミノ酸23〜575に対応)、HER2−int11(配列番号141のアミノ酸23〜438に対応)、ハースタチン(herstatin)(AAD56009、配列番号135のアミノ酸23〜419に対応)およびErbB2.a(配列番号139のアミノ酸23〜90に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER2のアミノ酸1〜172に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER2のアミノ酸320〜488に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER2のアミノ酸173〜319に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER2のアミノ酸489〜628に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER2の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER2におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(b)は、全長HER2(AAA75493.1、配列番号4のアミノ酸23〜1255に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER2 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER2 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF200(配列番号18)、ErbB2.1e(配列番号137のアミノ酸23〜633に対応)、HF210(配列番号16)、HF220(配列番号14)、ErbB2.1d(配列番号136のアミノ酸25〜680に対応)、ErbB2.1f(配列番号138のアミノ酸23〜575に対応)、HER2−int11(配列番号141のアミノ酸23〜438に対応)、ハースタチン(herstatin)(AAD56009、配列番号135のアミノ酸23〜419に対応)およびErbB2.a(配列番号139のアミノ酸23〜90に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER2のアミノ酸1〜172に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER2のアミノ酸320〜488に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER2のアミノ酸173〜319に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER2のアミノ酸489〜628に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER2の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER2におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(b)は、全長HER2(AAA75493.1、配列番号4のアミノ酸23〜1255に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER2 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER2 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF200(配列番号18)、ErbB2.1e(配列番号137のアミノ酸23〜633に対応)、HF210(配列番号16)、HF220(配列番号14)、ErbB2.1d(配列番号136のアミノ酸25〜680に対応)、ErbB2.1f(配列番号138のアミノ酸23〜575に対応)、HER2−int11(配列番号141のアミノ酸23〜438に対応)、ハースタチン(herstatin)(AAD56009、配列番号135のアミノ酸23〜419に対応)およびErbB2.a(配列番号139のアミノ酸23〜90に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER2のアミノ酸1〜172に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER2のアミノ酸320〜488に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER2のアミノ酸173〜319に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER2のアミノ酸489〜628に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER2の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER2におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(b)は、全長HER2(AAA75493.1、配列番号4のアミノ酸23〜1255に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER2 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER2 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF200(配列番号18)、ErbB2.1e(配列番号137のアミノ酸23〜633に対応)、HF210(配列番号16)、HF220(配列番号14)、ErbB2.1d(配列番号136のアミノ酸25〜680に対応)、ErbB2.1f(配列番号138のアミノ酸23〜575に対応)、HER2−int11(配列番号141のアミノ酸23〜438に対応)、ハースタチン(herstatin)(AAD56009、配列番号135のアミノ酸23〜419に対応)およびErbB2.a(配列番号139のアミノ酸23〜90に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER2のアミノ酸1〜172に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER2のアミノ酸320〜488に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER2のアミノ酸173〜319に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER2のアミノ酸489〜628に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER2の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER2におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(c)は、全長HER3(NP_001973.1、配列番号6のアミノ酸20〜1342に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER3 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER3 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF300(配列番号26)、HF310(配列番号20)、p85HER3(配列番号22のアミノ酸20〜562に対応)、HER3−519(配列番号24)、HER3アイソフォーム(AAH02706、配列番号143のアミノ酸20〜331に対応)、HER3−int10(配列番号146のアミノ酸20〜403に対応)、p75sHER3(配列番号150のアミノ酸20〜534に対応)、HER3−int11(配列番号148のアミノ酸20〜425に対応)、p45sHER3(配列番号149のアミノ酸20〜331に対応)、p50sHER3(配列番号151のアミノ酸20〜400に対応)およびHER3アイソフォーム2(P21860−2、配列番号144のアミノ酸20〜183に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER3のアミノ酸1〜159に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER3のアミノ酸312〜480に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER3のアミノ酸160〜311に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER3のアミノ酸481〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER3の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER3におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(c)は、全長HER3(NP_001973.1、配列番号6のアミノ酸20〜1342に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER3 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER3 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF300(配列番号26)、HF310(配列番号20)、p85HER3(配列番号22のアミノ酸20〜562に対応)、HER3−519(配列番号24)、HER3アイソフォーム(AAH02706、配列番号143のアミノ酸20〜331に対応)、HER3−int10(配列番号146のアミノ酸20〜403に対応)、p75sHER3(配列番号150のアミノ酸20〜534に対応)、HER3−int11(配列番号148のアミノ酸20〜425に対応)、p45sHER3(配列番号149のアミノ酸20〜331に対応)、p50sHER3(配列番号151のアミノ酸20〜400に対応)およびHER3アイソフォーム2(P21860−2、配列番号144のアミノ酸20〜183に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER3のアミノ酸1〜159に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER3のアミノ酸312〜480に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER3のアミノ酸160〜311に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER3のアミノ酸481〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER3の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER3におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(c)は、全長HER3(NP_001973.1、配列番号6のアミノ酸20〜1342に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER3 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER3 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF300(配列番号26)、HF310(配列番号20)、p85HER3(配列番号22のアミノ酸20〜562に対応)、HER3−519(配列番号24)、HER3アイソフォーム(AAH02706、配列番号143のアミノ酸20〜331に対応)、HER3−int10(配列番号146のアミノ酸20〜403に対応)、p75sHER3(配列番号150のアミノ酸20〜534に対応)、HER3−int11(配列番号148のアミノ酸20〜425に対応)、p45sHER3(配列番号149のアミノ酸20〜331に対応)、p50sHER3(配列番号151のアミノ酸20〜400に対応)およびHER3アイソフォーム2(P21860−2、配列番号144のアミノ酸20〜183に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER3のアミノ酸1〜159に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER3のアミノ酸312〜480に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER3のアミノ酸160〜311に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER3のアミノ酸481〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER3の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER3におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(c)は、全長HER3(NP_001973.1、配列番号6のアミノ酸20〜1342に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER3 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER3 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF300(配列番号26)、HF310(配列番号20)、p85HER3(配列番号22のアミノ酸20〜562に対応)、HER3−519(配列番号24)、HER3アイソフォーム(AAH02706、配列番号143のアミノ酸20〜331に対応)、HER3−int10(配列番号146のアミノ酸20〜403に対応)、p75sHER3(配列番号150のアミノ酸20〜534に対応)、HER3−int11(配列番号148のアミノ酸20〜425に対応)、p45sHER3(配列番号149のアミノ酸20〜331に対応)、p50sHER3(配列番号151のアミノ酸20〜400に対応)およびHER3アイソフォーム2(P21860−2、配列番号144のアミノ酸20〜183に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER3のアミノ酸1〜159に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER3のアミノ酸312〜480に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER3のアミノ酸160〜311に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER3のアミノ酸481〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER3の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER3におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(c)は、全長HER3(NP_001973.1、配列番号6のアミノ酸20〜1342に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER3 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER3 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF300(配列番号26)、HF310(配列番号20)、p85HER3(配列番号22のアミノ酸20〜562に対応)、HER3−519(配列番号24)、HER3アイソフォーム(AAH02706、配列番号143のアミノ酸20〜331に対応)、HER3−int10(配列番号146のアミノ酸20〜403に対応)、p75sHER3(配列番号150のアミノ酸20〜534に対応)、HER3−int11(配列番号148のアミノ酸20〜425に対応)、p45sHER3(配列番号149のアミノ酸20〜331に対応)、p50sHER3(配列番号151のアミノ酸20〜400に対応)およびHER3アイソフォーム2(P21860−2、配列番号144のアミノ酸20〜183に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER3のアミノ酸1〜159に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER3のアミノ酸312〜480に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER3のアミノ酸160〜311に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER3のアミノ酸481〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER3の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER3におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(c)は、全長HER3(NP_001973.1、配列番号6のアミノ酸20〜1342に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER3 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER3 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF300(配列番号26)、HF310(配列番号20)、p85HER3(配列番号22のアミノ酸20〜562に対応)、HER3−519(配列番号24)、HER3アイソフォーム(AAH02706、配列番号143のアミノ酸20〜331に対応)、HER3−int10(配列番号146のアミノ酸20〜403に対応)、p75sHER3(配列番号150のアミノ酸20〜534に対応)、HER3−int11(配列番号148のアミノ酸20〜425に対応)、p45sHER3(配列番号149のアミノ酸20〜331に対応)、p50sHER3(配列番号151のアミノ酸20〜400に対応)およびHER3アイソフォーム2(P21860−2、配列番号144のアミノ酸20〜183に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER3のアミノ酸1〜159に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER3のアミノ酸312〜480に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER3のアミノ酸160〜311に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER3のアミノ酸481〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER3の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER3におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(c)は、全長HER3(NP_001973.1、配列番号6のアミノ酸20〜1342に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER3 ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER3 ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、HF300(配列番号26)、HF310(配列番号20)、p85HER3(配列番号22のアミノ酸20〜562に対応)、HER3−519(配列番号24)、HER3アイソフォーム(AAH02706、配列番号143のアミノ酸20〜331に対応)、HER3−int10(配列番号146のアミノ酸20〜403に対応)、p75sHER3(配列番号150のアミノ酸20〜534に対応)、HER3−int11(配列番号148のアミノ酸20〜425に対応)、p45sHER3(配列番号149のアミノ酸20〜331に対応)、p50sHER3(配列番号151のアミノ酸20〜400に対応)およびHER3アイソフォーム2(P21860−2、配列番号144のアミノ酸20〜183に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟HER3のアミノ酸1〜159に対応)およびドメインIII(全長の成熟HER3のアミノ酸312〜480に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟HER3のアミノ酸160〜311に対応)およびドメインIV(全長の成熟HER3のアミノ酸481〜621に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER3の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長HER3におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(d)は、全長HER4(ErbB4)(NP_005226、配列番号8のアミノ酸26〜1308に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER4(ErbB4)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER4(ErbB4)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、ErbB4−522(配列番号30)、HF400(配列番号32)、ErbB4−int11(配列番号157のアミノ酸26〜430に対応)、ErbB4−int12(配列番号159のアミノ酸26〜506に対応)、HF410(配列番号28)、ErbB4−int9(配列番号153のアミノ酸26〜391に対応)およびErbB4−int10(配列番号155のアミノ酸26〜421に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟ErbB4のアミノ酸1〜163に対応)およびドメインIII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸309〜477に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸164〜308に対応)およびドメインIV(全長の成熟ErbB4のアミノ酸478〜625に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER4(ErbB4)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長ErbB4におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(d)は、全長HER4(ErbB4)(NP_005226、配列番号8のアミノ酸26〜1308に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER4(ErbB4)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER4(ErbB4)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、ErbB4−522(配列番号30)、HF400(配列番号32)、ErbB4−int11(配列番号157のアミノ酸26〜430に対応)、ErbB4−int12(配列番号159のアミノ酸26〜506に対応)、HF410(配列番号28)、ErbB4−int9(配列番号153のアミノ酸26〜391に対応)およびErbB4−int10(配列番号155のアミノ酸26〜421に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟ErbB4のアミノ酸1〜163に対応)およびドメインIII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸309〜477に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸164〜308に対応)およびドメインIV(全長の成熟ErbB4のアミノ酸478〜625に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER4(ErbB4)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長ErbB4におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(d)は、全長HER4(ErbB4)(NP_005226、配列番号8のアミノ酸26〜1308に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER4(ErbB4)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER4(ErbB4)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、ErbB4−522(配列番号30)、HF400(配列番号32)、ErbB4−int11(配列番号157のアミノ酸26〜430に対応)、ErbB4−int12(配列番号159のアミノ酸26〜506に対応)、HF410(配列番号28)、ErbB4−int9(配列番号153のアミノ酸26〜391に対応)およびErbB4−int10(配列番号155のアミノ酸26〜421に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟ErbB4のアミノ酸1〜163に対応)およびドメインIII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸309〜477に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸164〜308に対応)およびドメインIV(全長の成熟ErbB4のアミノ酸478〜625に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER4(ErbB4)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長ErbB4におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(d)は、全長HER4(ErbB4)(NP_005226、配列番号8のアミノ酸26〜1308に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER4(ErbB4)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER4(ErbB4)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、ErbB4−522(配列番号30)、HF400(配列番号32)、ErbB4−int11(配列番号157のアミノ酸26〜430に対応)、ErbB4−int12(配列番号159のアミノ酸26〜506に対応)、HF410(配列番号28)、ErbB4−int9(配列番号153のアミノ酸26〜391に対応)およびErbB4−int10(配列番号155のアミノ酸26〜421に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟ErbB4のアミノ酸1〜163に対応)およびドメインIII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸309〜477に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸164〜308に対応)およびドメインIV(全長の成熟ErbB4のアミノ酸478〜625に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER4(ErbB4)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長ErbB4におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図2(d)は、全長HER4(ErbB4)(NP_005226、配列番号8のアミノ酸26〜1308に対応)の成熟形態(シグナルペプチドを欠く)と比較した、HER4(ErbB4)ECDアイソフォームのアラインメントとドメイン構成とを示す。整列させたHER4(ErbB4)ECDアイソフォーム(シグナルペプチドを欠く)は、ErbB4−522(配列番号30)、HF400(配列番号32)、ErbB4−int11(配列番号157のアミノ酸26〜430に対応)、ErbB4−int12(配列番号159のアミノ酸26〜506に対応)、HF410(配列番号28)、ErbB4−int9(配列番号153のアミノ酸26〜391に対応)およびErbB4−int10(配列番号155のアミノ酸26〜421に対応)を含む。ドメインI(全長の成熟ErbB4のアミノ酸1〜163に対応)およびドメインIII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸309〜477に対応)は、太字で示される。ドメインII(全長の成熟ErbB4のアミノ酸164〜308に対応)およびドメインIV(全長の成熟ErbB4のアミノ酸478〜625に対応)は、通常のフォントで示され、システインモジュールが強調される。全長の成熟HER4(ErbB4)の非ECD部分は、薄いグレーで示される。成熟な全長ErbB4におけるアミノ酸配列とアラインメントを示さないアミノ酸は、斜体で示す。 図3(a)は、MDA MB 468細胞を、RB200hおよびチロシンキナーゼインヒビターAG825で処理したときに観察される、相乗作用による増殖阻害作用を示す。図3(b)は、A431細胞を、RB200hおよびGefitinib(Iressa)で処理したときに観察される、相乗作用による増殖阻害作用を示す。 図4は、RB200h、Pan−Herリガンドトラップの概略を示す。 図5は、逆相HPLCにより分析した、ハーモジュリン(hermodulin)構築物(RB600、HFD100、HDF300およびRB200h)の純度を示す。 図6aは、加工した二量体が、125I−EGFおよび125I−HRGβに対する特異性を保持することを示す:レーン1:HFD100=HER1−621/Fc、レーン2:HFD200=HER2−628/Fc、レーン3:HFD300=HER3−621/Fcおよびレーン4:HFD400=HER4−625/Fc。図6bは、RB200hの加工した二量体が、125I−EGFおよび125I−HRGβに対する特異性を保持することを示す。 図7aは、RB200hに結合するEU−NRG1β1を示す。図7bは、RB200hへのEU−EGFの結合を示す。図7cは、他のHERリガンドによる競合的なEu−EGF結合を示す。図7dは、他のHERリガンドによるEu−NRG1−b1結合の競合を示す。 図8a〜cは、A431類表皮癌細胞における、RB200h、HerceptinまたはErbituxによる、EGFリガンド刺激によるHERファミリータンパク質のリン酸化の阻害を示す。図8d〜fは、A431類表皮癌細胞における、RB200h、HerceptinまたはErbituxによる、NRG1β1リガンド刺激によるHERファミリータンパク質のリン酸化の阻害を示す。 図9a〜cは、ZR−75−1乳癌細胞における、RB200h、HerceptinまたはErbituxによる、EGFリガンド刺激によるHERファミリータンパク質のリン酸化の阻害を示す。図9d〜fは、ZR−75−1乳癌細胞における、RB200h、HerceptinまたはErbituxによる、NRG1β1リガンド刺激によるHERファミリータンパク質のリン酸化の阻害を示す。 図10aは、EGFにより刺激されるレセプターリン酸化において、RB600がRB200hよりも強力であることを示す。図10bは、NRG1β1により刺激されるレセプターリン酸化において、RB600がRB200hよりも強力であることを示す。 図11aは、RB200hが培養腫瘍細胞であるA431細胞の増殖を阻害することを示す。図11bは、RB200hが培養腫瘍細胞であるMDA−MB−468乳癌細胞の増殖を阻害することを示す。 図12a〜bは、RB200hが、ZR−75−1腫瘍細胞(図11a)およびA549腫瘍細胞(図11b)の、リガンド刺激性および非刺激性の両方の、軟寒天コロニー増殖を阻害することを示す。 図13aは、RB200hが、乳癌細胞のEGFにより誘導されるリガンド誘導性の増殖を阻害することを示す。図13bは、RB200hが、乳癌細胞のNRG1β1により誘導されるリガンド誘導性の増殖を阻害することを示す。図13cは、RB200hが、LPAにより誘導される、乳癌細胞のリガンド誘導性の増殖を阻害することを示す。 図14aは、RB200hが、SUM149乳癌細胞のEGFによるリガンド誘導性の増殖を阻害することを示す。図14bは、RB200hが、SUM149乳癌細胞のLPAによるリガンド誘導性の増殖を阻害することを示す。 図15a〜dは、RB200hおよびチロシンキナーゼインヒビター:AG−825、GefitinibおよびErlotinibでの相乗作用性の増殖阻害を示す。 図16は、RB200hおよびチロシンキナーゼインヒビター:Gefitinibでの相乗作用性の増殖阻害を示す。 図17は、RB200hが、AG825チロシンキナーゼインヒビターと相乗作用性の抗増殖作用を有することを示す。 図18は、RB200hが、A431上皮癌細胞において、Iressaと相乗作用性の抗増殖応答を生じることを示す。 図19は、BT474乳癌細胞における、RB200hとIressaとの相乗作用を示す。 図20は、A431 s.c.モデルにおけるRB200hの治療評価を示す。ヌードマウスにおけるs.c.A431腫瘍の平均容積。投薬は、10日目に開始した。両側ANOVAおよびBonferroniの事後検定。図において、統計的有意差は、p<0.05を示し、**は、p<0.01を示し、そして、***は、p<0.001を示す。 図21は、HFD100からPCRによってHFD100変異体を生成するために使用した方法の概略を示す。 図22は、HFD100−T39Sが、EGF(図22a)、HB−EGF(図22b)およびTGF−α(図22c)に対する親和性が向上していることを示す。 図23は、HFD100変異体の、EGF、HB−EGFおよびTGF−αに対する結合親和性と、相対的な発現レベルとを示す。 図24は、試験的毒性研究についての平均体重(パネルA)および最終腫瘍容積(パネルB)を示す。 図25は、ヌードマウスにおけるs.c.A431腫瘍の平均容積を示す。投薬は、10日目に開始した。統計的有意差p<0.05、**p<0.01、***p<0.001は、両側ANOVAおよびBonferroniの事後検定を用いて計算した。 図25は、ヌードマウスにおけるs.c.A431腫瘍の平均容積を示す。投薬は、10日目に開始した。統計的有意差p<0.05、**p<0.01、***p<0.001は、両側ANOVAおよびBonferroniの事後検定を用いて計算した。 図25は、ヌードマウスにおけるs.c.A431腫瘍の平均容積を示す。投薬は、10日目に開始した。統計的有意差*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001は、両側ANOVAおよびBonferroniの事後検定を用いて計算した。 図25は、ヌードマウスにおけるs.c.A431腫瘍の平均容積を示す。投薬は、10日目に開始した。統計的有意差p<0.05、**p<0.01、***p<0.001は、両側ANOVAおよびBonferroniの事後検定を用いて計算した。 図26は、s.c.A431腫瘍の平均腫瘍重量を示す。統計的有意差は、片側ANOVAを用いて計算した。 図27は、治療研究の間のマウスの体重を示す。
詳細な説明
A.定義
B.汎細胞表面レセプター特異的な治療薬
C.HERレセプターおよび他の細胞表面レセプターの構造および活性
1.HER1 ECDの構造およびドメイン構成
2.HER2 ECDの構造およびドメイン構成
3.HER3 ECDの構造およびドメイン構成
4.HER4 ECDの構造およびドメイン構成
5.HERファミリーのリガンド、リガンド特異性およびリガンド媒介性のレセプター活性化
6.二量体化 対 係留ならびに活性なホモ二量体およびヘテロ二量体の作製
7.HERファミリーのレセプター活性
a.細胞の増殖
b.細胞の生存
c.新脈管形成
d.遊走および浸潤
8.他のCSRのECD
a.VEGFR1(Flt−1)およびVEGFR2(KDR)
b.FGFR1〜FGFR4
c.IGF−1R
d.RAGEおよび他のCSR
D.ECD多量体の成分とECD多量体の形成
1.ECDポリペプチド
a.HERファミリーの全長ECD
i.HER1 ECD
ii.HER2 ECD
iii.HER3 ECD
iv.HER4 ECD
b.HERファミリーの短縮型ECD
i.短縮型HER1 ECD
ii.短縮型HER2 ECD
iii.短縮型HER3 ECD
iv.短縮型HER4 ECD
c.ハイブリッドECD
d.他のCSRもしくはRTKのECD、またはこれらの一部分
e.ポリペプチドの選択的スプライシングを受けたアイソフォーム
2.多量体の形成
a.ペプチドリンカー
b.ヘテロ二官能性連結因子
c.ポリペプチド多量体化ドメイン
i.免疫グロブリンドメイン
(a)Fcドメイン
(b)腔内の隆起部(すなわち、ノブと穴)
ii.ロイシンジッパー
(a)fosおよびjun
(b)GCN4
iii.他の多量体化ドメイン
(a)R/PKA−AD/AKAP
3.キメラECDポリペプチド
a.例示的なキメラHER ECDポリペプチド
E.ECD多量体
a.全長HER1 ECDおよび別のCSRのECDの全体もしくは一部分
b.2以上の短縮型ECD成分
c.ハイブリッドECD多量体
d.同じであるかまたは同じCSRに由来するECD成分
F.キメラECDポリペプチド融合物をコードする核酸を生成する方法と結果として生じるECD多量体の生成
1.合成の遺伝子およびポリペプチド
2.ECDポリペプチドをクローニングおよび単離する方法
3.ECDポリペプチドキメラを生成およびクローニングする方法
4.発現系
a.原核生物による発現
b.酵母
c.昆虫細胞
d.哺乳動物細胞
e.植物
5.トランスフェクションおよび形質転換の方法
6.ECDポリペプチド、キメラポリペプチドおよび結果として生じるECD多量体の回収および精製
G.ECD多量体の活性を評価または監視するためのアッセイ
1.キナーゼ/リン酸化アッセイ
2.複合体化(complexation)/二量体化
3.リガンド結合
4.細胞増殖アッセイ
5.細胞疾患モデルアッセイ
6.動物モデル
H.ECD多量体およびECD多量体組成物の調製、処方および投与
I.ECD多量体を用いた例示的な処置方法
1.HER媒介性の疾患もしくは障害
a.癌
b.新脈管形成
c.ニューレグリン関連疾患
d.平滑筋の増殖に関連する疾患および状態
2.RTK媒介性の障害または疾患
a.新脈管形成に関連する眼の状態
b.新脈管形成に関連するアテローム性動脈硬化症
c.さらなる新脈管形成に関連する処置
d.癌
3.他のCSR媒介性の疾患または障害
4.ECD多量体のECDポリペプチド成分の選択
5.患者の選択
6.併用療法
J.汎HER治療薬を同定、スクリーニングおよび作り出すための方法
1.汎HER治療薬の標的
2.汎HER治療薬を同定するためのスクリーニング方法
a.ファージディスプレイ
i.ペプチドライブラリー
ii.多量体ポリペプチド(ヘテロ二量体ペプチド)
b.例示的なスクリーニングアッセイ
K.実施例
A.定義
そうでないと規定されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における開示全体を通じて参照される全ての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、GENBANK配列、ウェブサイトおよび他の公開された資料は、そうでないと示されない限り、その全体が参考として援用される。本明細書における用語について複数の定義が存在するような場合には、この節における定義が優先される。URLまたは他のこのような識別子もしくはアドレスに対して参照がなされる場合、このような識別子は変化し得、そして、インターネット上の特定の情報は変動し得るが、等価な情報は公知であり、そして、インターネットおよび/または適切なデータベースを検索することなどによって容易にアクセスされ得ることが理解される。これらに対する参照は、このような情報の有用性と公然の普及との証拠となる。
本明細書において使用される場合、「汎細胞表面レセプター治療薬」または「汎細胞表面レセプター特異的な治療薬」は、2以上の細胞表面レセプターの活性を調節し得る分子(ペプチドベースの化合物および低分子を含む)である。
本明細書において使用される場合、「汎HER治療薬」または「汎HER特異的な治療薬」は、2以上のHER(ErbB)レセプターの活性を調節し得る汎細胞表面レセプター治療薬(ペプチドベースの化合物および低分子を含む分子)である。一般に、汎HER治療薬は、例えば、リガンド結合および/またはレセプターとの相互作用を介して、少なくとも2つのHERレセプターを標的とする。
本明細書において使用される場合、抗癌剤は、任意の癌処置とそのための薬物とを包含し、そして、これには、放射線療法、外科手術、抗癌化合物(低分子を含む)、化学療法剤(例えば、シスプラチンおよびゲムシタビン(gencytinbine))およびモノクローナル抗体が含まれる。
本明細書において使用される場合、細胞表面レセプターは、細胞の表面上に発現されるタンパク質であり、そして、代表的には、膜貫通ドメインまたは細胞の表面にレセプターを固定させる他の部分を含む。レセプターとしては、細胞表面レセプターは、細胞表面レセプターの活性(例えば、シグナル伝達またはリガンドの内在化)を媒介するか、またはこれに関与するリガンドと結合する。細胞表面レセプターとしては、1回膜貫通型レセプターおよびGタンパク質共役型レセプターが挙げられるがこれらに限定されない。増殖因子レセプターのようなレセプターチロシンキナーゼもまた、このような細胞表面レセプターに含まれる。
本明細書において使用される場合、ドメインとは、構造的および/または機能的に区別可能であるかまたは特徴付け可能なポリペプチドの部分(3以上(一般には、5以上、もしくは7以上)のアミノ酸の配列)をいう。例えば、ドメインは、1以上の構造的モチーフから構成されるタンパク質内で、個別の折り畳まれた構造を形成し得(例えば、ループ領域でつながれたαヘリックスおよび/またはβストランドの組合せ)、そして/または、キナーゼ活性のような機能的活性によって認識されるものが挙げられる。タンパク質は、1、または2以上の別個のドメインを有し得る。例えば、ドメインは、内部の配列の、関連するファミリーメンバーに対する相同性(例えば、細胞外ドメインを規定するモチーフに対する相同性)によって、同定、規定または区別され得る。別の例では、ドメインは、酵素的活性(例えば、キナーゼ活性)または、生体分子と相互作用する能力(例えば、DNA結合、リガンド結合および二量体化)のようなその機能によって、区別され得る。ドメインは、独立して機能または活性を示し得、その結果、ドメインは、独立して、または、別の分子に融合されて、タンパク質分解活性またはリガンド結合のような活性を果たし得る。ドメインは、ポリペプチドに由来するアミノ酸の直鎖状配列またはアミノ酸非直鎖状配列であり得る。多くのポリペプチドが、複数のドメインを含む。例えば、HER1(EGFR)のドメイン構造が図1に示される:これは、ECDと、膜貫通ドメインと、膜近傍ドメインと、キナーゼドメインと、C末端細胞質ドメインとを含む。HER1(EGFR)について、ECDは、I(またはL1)、II(またはS1)、III(またはL2)およびIV(またはS2)と呼ばれる4つのサブドメインを含む。「L」サブドメイン(IおよびIII)は、リガンドとの相互作用に関与し、そして、II(S1)ドメインおよびIV(S2)ドメインは、係留領域を介して相互作用する;サブドメインII(S1)は、二量体化ループを含む。当業者は、これらのドメインに精通しており、そして、他のこのようなドメインとの構造的および/または機能的な相同性によってこれらを同定することができる。
本明細書において使用される場合、細胞質ドメインは、シグナル伝達に関与するドメインである。
本明細書において使用される場合、細胞外ドメイン(ECD)は、レセプターの表面上に出現する細胞表面レセプターの部分であり、リガンド結合部位を含む。本明細書における目的では、ECDに対する参照は、そのECDポリペプチドが、同系レセプターの別のドメイン(すなわち、膜貫通ドメイン、プロテインキナーゼドメインなど)に関連する任意の連続配列を含まない限りは、任意のECD含有分子またはその一部分を含む。したがって、例えば、ECDポリペプチドは、CSRの選択的スプライシングを受けたアイソフォームを含み、ここで、このアイソフォームは、ECD含有部分を有するが、同系のCSRの任意の他のドメインは欠き、そしてまた、同系CSRの別のドメイン配列と関連も整列もされないさらなる配列を有する。これらのさらなる配列は、イントロン融合タンパク質アイソフォームにおいて生じるようなイントロンをコードする(intron−encoded)配列であり得る。代表的には、さらなる配列は、CSRのECDポリペプチドのリガンド結合および/またはレセプター二量体化の活性を阻害も干渉もしない。ECDポリペプチドはまた、ハイブリッドECDを含む。
本明細書において使用される場合、ハイブリッドECDは、異なる細胞表面レセプターに由来するECDの一部分を含むECDをいう。代表的には、ハイブリッドECDは、異なる細胞表面レセプターに由来する少なくとも2つのECDサブドメインを含む。
本明細書において使用される場合、キメラポリペプチドは、少なくとも2つの異なるポリペプチドに由来するか、または、単一のポリペプチドの2つの非連続部分に由来する部分を含むポリペプチドをいう。したがって、キメラポリペプチドは、一般に、1つのポリペプチドの全体もしくは一部分に由来するアミノ酸残基の配列と、別の異なるポリペプチドの全体もしくは一部分に由来するアミノ酸残基の配列とを含む。この2つの部分は、直接的もしくは間接的に連結され得、そして、平衡条件下および生理学的条件下(例えば、等張性のpH7緩衝化生理食塩水中)でキメラポリペプチドの実質部分の一体性を維持するのに十分な強度のペプチド結合、他の共有結合もしくは他の非共有結合を介して連結され得る。本明細書における目的では、キメラポリペプチドは、多量体化ドメインに対して直接的もしくは間接的に連結されたCSRのECD部分の全体もしくは一部分を含むものを含む。キメラポリペプチドは、例えばエピトープタグのような、さらなる配列も含み得る。
本明細書において使用される場合、融合構築物は、1つの核酸分子に由来するコード配列と、別の核酸分子に由来するコード配列とを含む核酸分子をいい、ここで、これらのコード配列は、同じ読み取り枠内にあり、その結果、融合構築物が宿主細胞において転写および翻訳されると、2つのタンパク質を含むタンパク質が生成される。2つの分子は、構築物において隣接していても、1、2、3もしくはそれより多く、代表的には、10、9、8、7、6よりも少ないアミノ酸を含むリンカーポリペプチドによって隔てられていてもよい。融合構築物によりコードされるタンパク質生成物は、融合ポリペプチドと呼ばれる。スペーサーは、ポリペプチドの特性(例えば、溶解度または細胞内輸送)が変化させるポリペプチドをコードし得る。
本明細書において使用される場合、融合タンパク質は、直接的またはペプチド結合を介して間接的に連結された2以上のタンパク質もしくはペプチドに由来する2以上の部分を含むキメラタンパク質をいう。
本明細書において使用される場合、多量体化ドメインは、ポリペプチド分子の、相補的な多量体化ドメインを含む別のポリペプチド分子との安定な相互作用を容易にするアミノ酸の配列をいい、この相補的な多量体化ドメインは、第一のドメインと安定な多量体を形成するために、同じ多量体化ドメインであっても異なる多量体化ドメインであってもよい。一般に、ポリペプチドは、多量体化ドメインに対し直接的に、または間接的に接合される。例示的な多量体化ドメインとしては、免疫グロブリン配列またはその一部分、ロイシンジッパー、疎水性領域、親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン(例えば、PKAのRサブユニットおよびアンカードメイン(anchoring domain:AD)が挙げられるがこれらに限定されない)、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部(すなわち、穴内のノブ(knob into hole))および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔が挙げられる。多量体化ドメインは、例えば、免疫グロブリンの定常領域であり得る。免疫グロブリンの配列は、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgDおよびIgMに由来するFcドメインまたはこれらの一部分のような、免疫グロブリンの定常ドメインであり得る。
本明細書において使用される場合、「穴内のノブ」(また、本明細書において腔内の隆起部とも呼ばれる)は、このようなドメイン間および/または中での立体的な相互作用が、安定な相互作用を促進するのみならず、単量体の混合物から、ホモ二量体(またはホモ多量体)よりも多いヘテロ二量体(または多量体)の形成を促進するように設計された特定の多量体化ドメインをいう。これは、例えば、隆起部と腔とを構築することによって達成され得る。隆起部は、第一のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築され得る。この隆起部に対して同一もしくは類似の大きさの代償性の「腔」が、必要に応じて、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第二のペプチドの界面上に作製される。
本明細書において使用される場合、相補的な多量体化ドメインは、相互作用して各々がこのようなドメインに対して連結されたポリペプチドの安定な多量体を形成する2以上の多量体化ドメインをいう。相補的な多量体化ドメインは、例えば、Fc領域、ロイシンジッパーおよびノブと穴のような、同じドメインのものであっても、ドメインのファミリーメンバーであってもよい。
本明細書において使用される場合、「Fc」または「Fc領域」または「Fcドメイン」は、最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除いて抗体重鎖の定常領域を含むポリペプチドをいう。したがって、Fcは、IgA、IgDおよびIgEの最後から2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、または、IgEおよびIgMの最後から3つの定常領域免疫グロブリンドメインをいう。必要に応じて、Fcドメインは、これらのドメインに対してN末端側に柔軟性のあるヒンジ領域の全体もしくは一部分を含み得る。IgAおよびIgMについては、Fcは、J鎖を含み得る。IgGの例示的なFcドメインについて、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ2を含み、そして必要に応じて、Cγ1とCγ2との間のヒンジ領域の全体もしくは一部分を含む。Fc領域の境界は多様であり得るが、代表的には、ヒンジ領域の少なくとも一部分を含み得る。IgG Fcドメインの例示的な配列は、配列番号167に示される。さらに、Fcはまた、任意の対立遺伝子改変体もしくは種改変体、または、任意の改変体もしくは改変された形態(例えば、FcRに対する結合を変化させるか、または、Fc媒介性のエフェクター機能を変化させる任意の改変体または改変された形態)を含む。改変されたFcドメインを含む他のFcドメインの例示的な配列は、配列番号168または169に示される。
本明細書において使用される場合、「Fcキメラ」は、1以上のポリペプチドが、Fc領域もしくはその誘導体に対し、直接的または間接的に連結された、キメラポリペプチドをいう。代表的には、Fcキメラは、免疫グロブリンのFc領域を、例えば、ECDポリペプチドのような別のポリペプチドと組合せたものである。改変されたFcポリペプチドの誘導体は、当業者に公知である。
本明細書において使用される場合、ECD部分と多量体化ドメインとを含む少なくとも2つのキメラポリペプチドを含むポリペプチドもまた、「ECD多量体」と呼ばれる(また、ホモ多量体、ヘテロ多量体、ホモ二量体またはヘテロ二量体とも呼ばれる)。多量体化ドメインが抗体もしくはその一部分に由来する場合、ポリペプチドは、免疫付着因子またはレセプター本体の二量体または多量体と呼ばれ得る。多量体の構成要素であるポリペプチドはまた、本明細書において、キメラポリペプチドと呼ばれる。多量体化ドメインのECDへの結合は、直接的であっても間接的であってもよく、そして、融合タンパク質を生成するための組換え核酸法を用いて達成され得る。結合はまた、例えば、ヘテロ二官能化試薬を用いるなどの化学的カップリング法を用いて達成され得る。例示的なカップリング剤としては、以下が挙げられる:N−スクシンイミジル−3−(2−ミリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(iminothiolane)(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)、および、ビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)。
本明細書において使用される場合、抗体は、その標的に対して固有の特定の抗原を認識する特定のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子をいう。免疫グロブリンは、構造的には、2つの同一の重鎖(5クラスの重鎖のいずれかに由来:γ、δ、α、μ、ε)と、ジスルフィド結合で連結された2つの同一の軽鎖とを含む「Y」字型分子のように見える、糖タンパク質である。各重鎖は、同じクラスの全免疫グロブリンについて同一である定常領域(C)と、抗原結合部位として機能し、抗原特異性に依存して免疫グロブリン間で異なる可変領域(V)とを有する。重鎖γ、δ、αは、3つのドメイン(C1、C2およびC3)から構成される定常領域を有し、そして、ヒンジ領域を有するが、一方、重鎖μ、εの定常領域は、4つのドメイン(C1、C2、C3およびC4)から構成される。軽鎖は、1つの定常(C)ドメインと1つの可変(V)ドメインとを有する。本明細書における目的では、抗体に対する参照は、その1以上のドメインを含む免疫グロブリン分子の全体もしくは一部分を含む分子をいう。例えば、Fabフラグメントは、重鎖および軽鎖の各々の1つの定常ドメインと1つの可変ドメインとから構成される、抗体分子の一部である。Fcフラグメントは、2〜3の定常ドメインと、必要に応じて、重鎖のヒンジ領域の全体もしくは一部分(抗体のクラスに依存する)とから構成される。したがって、抗体に対する参照は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または、抗体分子の一部分を含む任意の分子(例えば、レセプター本体の二量体または多量体)をいい、ここで、2つのポリペプチド(すなわち、少なくとも2つのCSRのECDまたはその一部分)を連結する多量体化ドメインは、一緒になって、抗体またはその一部分(例えば、Fcフラグメント)である。
本明細書において使用される場合、モノクローナル抗体は、B細胞の腫瘍細胞との融合による単一のハイブリッド細胞のクローンにより実験室において作製される高度に特異的な抗体をいう。
本明細書において使用される場合、結合(conjugate)は、2以上の分子の接合、対形成または会合をいう。例えば、同じかもしくは異なる2以上のポリペプチド(または、そのフラグメント、ドメインもしくは活性部分)が一緒に接合されても、1つのポリペプチド(または、そのフラグメント、ドメインもしくは活性部分)が、合成分子もしくは化学分子または他の部分と接合されてもよい。2以上の分子の会合は、1つのポリペプチドをコードする核酸配列を、別のポリペプチドをコードする核酸配列と接合することなどにより、直接的な結合によってなされてもよいし、1つの分子の別の分子との非共有結合性もしくは共有結合性のカップリングなどにより、間接的になされてもよい。例えば、2以上の分子またはポリペプチドの結合は、化学結合によって達成され得る。
本明細書において使用される場合、「タグ」または「エピトープタグ」は、代表的には、ポリペプチドのN末端またはC末端に加えられるアミノ酸の配列である。ポリペプチドに融合されたタグを含めることで、ポリペプチドの精製および/または検出を促進し得る。代表的には、タグまたはタグポリペプチドは、抗体によって認識されるエピトープを提供するか、または、検出もしくは精製のために働き得るに十分な残基を有するが、このタグまたはタグポリペプチドが連結されるキメラポリペプチドの活性と緩衝しないように十分に短いポリペプチドをいう。タグポリペプチドは、代表的には十分に固有であるので、このタグポリペプチドに特異的に結合する抗体は、このタグポリペプチドが連結されるポリペプチドにおけるエピトープと、実質的に交差反応しない。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも5または6アミノ酸残基を有し、そして、通常は、約8〜50の間のアミノ酸残基、代表的には9〜30の間の残基を有する。タグは、多量体における1以上のキメラポリペプチドに対して連結され得、そして、サンプルもしくは混合物からの多量体の検出またはその回収を可能にする。このようなタグは周知であり、そして、容易に合成および設計され得る。例示的なタグポリペプチドとしては、アフィニティ精製のために使用されるものが挙げられ、そして、Hisタグ、インフルエンザ血球凝集素(HA)タグポリペプチドおよびその抗体である12CA5(Field et al.(1988)Mol.Cell.Biol.8:2159−2165);c−mycタグおよびこれに対する8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体および9E10抗体(例えば、Evan et al.(1985)Molecular and Cellular Biology 5:3610−3616を参照のこと);ならびに、単純疱疹ウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborsky et al.(1990)Protein Engineering 3:547−553(1990))が挙げられる。
本明細書において使用される場合、融合タグ化ポリペプチドとは、タグポリペプチドに融合されたECDポリペプチドを含むキメラポリペプチドをいう。
本明細書において使用される場合、係留(tethering)とは、単量体レセプターの2つのドメイン間の相互作用をいい、これによって、モノマーを相互作用にあまり利用可能でないようにする立体配座の単量体を生じる。例えば、サブドメインII(S1)は、HER1、HER3およびHER4において、そのサブドメインIV(S2)ドメインと相互作用して、係留された不活性な構造を形成し得る。係留された状態にあるとき、レセプターまたはそのアイソフォームは、二量体化および/またはレセプター結合にあまり利用可能でないか、または、全く利用可能でない。HER1、HER3およびHER4の単量体形態のECDは、非係留型の形態よりも低いリガンド親和性を示す係留型形態をとる。サブドメインIVにおいて特定の残基を欠くHER2は、非係留型の形態をとり、HER1、HER3およびHER4との二量体化に有効である。係留型(単量体性)形態とのリガンド結合の際に、係留相互作用が解かれ、そして、ECD(またはレセプター)が、2つのECDのドメインII間の相互作用を伴う二量体化に利用可能な立体配座となる。
本明細書において使用される場合、本明細書中でのCSRまたはHERレセプターの活性の調節に対する参照は、このようなレセプターの任意の活性(例えば、リガンド結合または他のシグナル伝達に関連する活性)が変更されることを意味する。
本明細書において使用される場合、背中合わせの立体配置とは、2つのECDの各々が、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能となるような2つのECDの立体配置をいう。背中合わせの立体配置をとるとき、多量体化ドメインを含むキメラポリペプチドのECD部分の各々は、ECD多量体の形成の際に、各ECDまたはその一部分が細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能となるように配向される。
本明細書において使用される場合、2つのキメラポリペプチドに関しての二量体および二量体化とは、2つのキメラポリペプチド間の相互作用をいう。適切に二量体化されるとき、キメラポリペプチドの各々または少なくとも一方におけるECDは、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である。
本明細書において使用される場合、「細胞表面レセプターとの二量体化」とは、細胞表面レセプターの、本明細書において提供される多量体中のECDまたは別の細胞表面レセプターとの相互作用をいう。この言葉が指す「二量体」または「二量体化」は、文脈から明らかである。
本明細書において使用される場合、「ドメインを含むポリペプチド」とは、同系レセプターの対応するドメインを参照して完全なドメインを含むポリペプチドをいう。完全なドメインは、同系のポリペプチド内のその特定のドメインの定義を参照して決定される。例えば、ドメインを含むレセプターアイソフォームは、同系レセプターにおいて見られるような完全なドメインに対応するドメインを含むアイソフォームをいう。例えば、同系レセプターがアミノ酸位置400〜420の間に21アミノ酸の膜貫通型ドメインを含む場合、このような膜貫通型ドメインを含むレセプターアイソフォームは、同系レセプターの21アミノ酸のドメインと実質的な同一性を有する21アミノ酸のドメインを含む。実質的な同一性とは、同系のレセプターのドメインと比較したときに、対立遺伝子のバリエーションおよび保存的置換を含み得るドメインをいう。実質的に同一なドメインは、同系レセプターのドメインと比較して、アミノ酸の欠失も、非保存的置換も、挿入も有さない。
本明細書において使用される場合、対立遺伝子改変体または対立遺伝子のバリエーションとは、遺伝子の参照形態とは異なる遺伝子によってコードされる(すなわち、対立遺伝子によりコードされる)ポリペプチドをいう。代表的には、遺伝子の参照形態は、ある種の集団または単一の参照メンバーに由来するポリペプチドの、野生型形態および/または優性な形態をコードする。代表的には、種間での改変体を含む対立遺伝子改変体は、代表的に、同じ種に由来する野生型形態および/または優性の形態に対して、少なくとも80%、90%またはそれより高いアミノ酸同一性を有する;同一性の程度は、遺伝子と、その比較が種間であるかまたは種内であるかに依存する。一般に、種内の対立遺伝子改変体は、野生型形態および/または優性の形態に対して、少なくとも約80%、85%、90%もしくは95%またはそれより高い同一性を有する(ポリペプチドの野生型形態および/または優性の形態に対する96%、97%、98%、99%またはそれより高い同一性を含む)。
本明細書において使用される場合、種改変体とは、種間での同じポリペプチドの改変体をいう。一般に、種間改変体は、別の種に由来する野生型形態および/または優性の形態に対して、少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%またはそれより高い同一性を有する(ポリペプチドの野生型形態および/または優性の形態に対する96%、97%、98%、99%またはそれより高い同一性を含む)
本明細書において使用される場合、改変とは、ポリペプチドのアミノ酸配列の改変、または、核酸分子におけるヌクレオチド配列の改変をいい、そして、それぞれ、アミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および置換を含む。
本明細書において使用される場合、オープンリーディングフレームとは、核酸分子における、機能的なポリペプチドまたはその一部分(代表的には、少なくとも50アミノ酸)をコードするヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列をいう。オープンリーディングフレームは、全長ポリペプチドまたはその一部分をコードし得る。オープンリーディングフレームは、イントロン内に終止コドンがあり、かつイントロンの全体もしくは一部分が翻訳されたmRNAである場合、1以上のエキソンまたは1つのエキソンとイントロンとを作動可能に連結することによって作製され得る。
本明細書において使用される場合、ポリペプチドは、共有結合された2以上のアミノ酸をいう。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において交換可能に使用される。
本明細書において使用される場合、核酸分子またはタンパク質の短縮に関して、短縮(truncation)または短縮(shortening)とは、タンパク質または核酸分子の野生型形態または優性な形態と比較して、全長よりも短い、核酸分子においてはヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの配列、または、ポリペプチドにおいてはアミノ酸残基の配列をいう。
本明細書において使用される場合、参照遺伝子とは、遺伝子内のイントロンおよびエキソンをマッピングするために使用され得る遺伝子をいう。参照遺伝子は、例えば、発現された遺伝子配列と比較されて、その遺伝子におけるイントロンおよびエキソンをマッピングし得る、ゲノムDNAまたはその一部分であり得る。参照遺伝子はまた、ポリペプチドの野生型形態または優性な形態をコードする遺伝子であり得る。
本明細書において使用される場合、タンパク質または遺伝子のファミリーまたは関連ファミリーとは、それぞれ、互いに対して相同性および/または構造的類似性および/または機能的類似性を有する、タンパク質または遺伝子のグループをいう。
本明細書において使用される場合、早発の(premature)終止コドンとは、終止コドンがタンパク質の全長形態(例えば、ポリペプチドの野生型形態または優性)を生成するまたは作製するために使用される前に、核酸分子のオープンリーディングフレーム内に生じる終止コドンである。早発の終止コドンの出現は、例えば、選択的スプライシングおよび変異の結果であり得る。
本明細書において使用される場合、キナーゼとは、高分子および低分子を含む分子(代表的には生体分子)のリン酸化を触媒するタンパク質である。例えば、分子は、低分子またはタンパク質であり得る。リン酸化は、自己リン酸化を含む。いくつかのキナーゼは、構成的なキナーゼ活性を有する。他のキナーゼは、活性化を必要とする。例えば、シグナル伝達に関与する多くのキナーゼは、リン酸化を受ける。リン酸化が、経路における別の分子に対するそのキナーゼ活性を活性化する。いくつかのキナーゼは、タンパク質構造の変化および/または別の分子との相互作用によって調節される。例えば、タンパク質の複合体化または分子のキナーゼへの結合が、キナーゼ活性を活性化または阻害し得る。
本明細書において使用される場合、調節するおよび調節とは、タンパク質のような分子の活性の変化をいう。例示的な活性としては、シグナル伝達のような生物学的活性が挙げられるがこれらに限定されない。調節は、活性の増加(すなわち、アップレギュレーションまたはアゴニスト活性、活性の低下(すなわち、ダウンレギュレーションまたは阻害)、または、活性の任意の他の変化(例えば、周期性、頻度、期間、動態または他のパラメーターの変化)を含み得る。調節は、文脈依存性であり得、そして代表的には、調節は、指定される状態(例えば、野生型タンパク質、構成的な状態のタンパク質、または、指定される細胞のタイプもしくは状態において発現されるタンパク質)に対して比較される。
本明細書において使用される場合、阻害するおよび阻害とは、阻害されていない活性と比べた活性の低下をいう。
本明細書において使用される場合、組成物は、あらゆる混合物をいう。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性またはこれらの任意の組合せであり得る。
本明細書において使用される場合、組合せ(combination)は、2以上のアイテム間の任意の結び付き(association)をいう。組合せは、2以上の別個のアイテム(例えば、2つの組成物または2つの集合物)であり得るか、その混合物(例えば、2以上のアイテムの単一の混合物)であり得るか、または、その任意のバリエーションであり得る。組合せの構成要素は、一般に、機能的に結び付けられているか、または関連している。キットは、必要に応じて、組合せまたはその構成要素の使用のための説明書を備える、包装された組合せである。
本明細書において使用される場合、薬学的な作用または治療的な作用とは、疾患もしくは障害の処置に意図される因子を投与した際に観察される作用、または、これらの症状の改善をいう。
本明細書において使用される場合、新脈管形成(新脈管形成)は、既存の血管からの新血管の形成をいう;新生血管形成(neovascularization)は、新生血管の形成をいう。生理学的な新脈管形成は、厳密に調節されており、そして、生殖および胚発生に必須である。出生後および成体の寿命の間、新脈管形成は、創傷修復において、および運動をした筋肉において生じ、そして一般には、数日または数週間に限定される。対照的に、病理学的な新脈管形成(または、異常な新脈管形成)は、数ヶ月または数年にわたって持続し得、例えば、固形腫瘍および白血病の増殖を支える。病理学的な新脈管形成は、炎症性細胞が慢性炎症の部位(例えば、クローン病および慢性膀胱炎)へと進入するための導管を提供する。病理学的な新脈管形成は、盲目の最も一般的な原因である;病理学的な新脈管形成は、慢性関節リウマチにおいて軟骨を破壊し、そして、アテローム性動脈硬化症のプラークの増殖および出血に寄与する。病理学的な新脈管形成は、子宮内膜症における腹腔内出血をもたらす。腫瘍の増殖は、新脈管形成依存的である。腫瘍は、新脈管形成を刺激する因子を放出することによって、その自身への血液供給を補充する。このような因子としては、VEGF、FGF、PDGF、TGF−β、Tek、EPHA2、AGEなどが挙げられる。AGE−RAGEは、NF−κBおよびAP−1因子を介してVEGF遺伝子の翻訳を活性化することにより新脈管形成を誘発させ得る。VEGFは、乳癌、肺癌、結腸直腸癌を含む多数のヒトの癌において過剰産生される。
本明細書において使用される場合、新脈管形成疾患(または新脈管形成関連疾患)は、新脈管形成のバランスが変わっているか、または、新脈管形成のタイミングが変わっている疾患である。新脈管形成疾患は、望ましくない血管新生のような新脈管形成の変化が生じる疾患を含む。このような疾患としては、細胞増殖性障害(癌、糖尿病性網膜症および他の糖尿病の合併症を含む)、炎症性疾患、子宮内膜症、および、上記したものを含めて、過度の血管新生が疾患プロセスの一部となる他の疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される場合、HER(ErbB)関連疾患またはHERレセプター媒介性疾患とは、その病因、病理または発症のいくつかの局面にHERレセプターおよび/またはリガンドが関与しているあらゆる疾患、状態または障害である。具体的には、この関与とは、例えば、HERレセプターファミリーメンバーまたはリガンドの発現または過剰発現または活性を含む。疾患としては、癌(例えば、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌であるがこれらに限定されない)を含む増殖性疾患が挙げられるがこれらに限定されない。他の状態としては細胞の増殖および/または遊走を伴うものを含み、これには、病理学的な炎症応答、非悪性の過増殖性疾患(例えば、眼の状態、皮膚の状態、平滑筋細胞の増殖および/または遊走から生じる状態、例えば、狭窄(再狭窄を含む)、アテローム性動脈硬化症、膀胱、心臓もしくは他の筋肉の肥厚、子宮内膜症または慢性関節リウマチ)が挙げられる。
本明細書において使用される場合、処置とは、状態、障害もしくは疾患の症状、または他の徴候が、改善されるか、または、他に有益なように変化させられる、任意の様式を意味する。
本明細書において使用される場合、治療的作用とは、疾患もしくは状態の症状を変化させる(代表的には、向上または改善する)か、または、疾患もしくは状態を治癒する、被験体の処置から得られる作用を意味する。治療上有効な量とは、被験体への投与後に治療的作用をもたらす、組成物、分子または化合物の量をいう。
本明細書において使用される場合、用語「被験体」とは、人間のような哺乳動物を含む動物をいう。
本明細書において使用される場合、「患者」とはヒト被験体をいう。
本明細書において使用される場合、「個体」は被験体であり得る。
本明細書において使用される場合、正常レベルまたは正常値は、当業者に公知の種々の方法で規定され得る。代表的には、正常レベルは、健常な集団におけるCSRまたはCSRリガンドの発現レベルをいう。正常レベル(または、参照レベル)は、特定の供給源(すなわち、血液、血清、組織または他の供給源)に由来するもののような、健常な被験体の測定値に基づく。しばしば、正常レベルは、「正常範囲」として特定され、これは、代表的には、健常な集団の中央の95%の値の範囲を指す。参照値は、本明細書において正常レベルと交換可能に使用されるが、被験体または供給源に依存して、正常レベルとは異なり得る。例えば、CSRまたはリガンドの正常レベルは、2歳の患者と、50歳の患者との間では異なり得る。したがって、参照レベルは、代表的には、その集団の特定の階層の正常レベルに依存する。したがって、本明細書における目的では、正常レベルまたは参照レベルは、予め決定された標準またはコントロールであり、これによって、試験患者が比較され得る。
本明細書において使用される場合、上昇したレベルとは、CSRまたはCSRリガンドの発現の、正常レベルまたは参照レベルについて上昇した任意のレベルをいう。試験被験体におけるCSRまたはCSRリガンドの発現は、CSRまたはリガンドの正常レベルもしくはコントロールレベルと比較され、そのレベルが上昇しているかどうかを決定し得る。
本明細書において使用される場合、活性とは、生体分子(例えば、ポリペプチド)の機能または機能性(functioning)または相互作用における変化をいう。このような活性の例は、以下であるがこれらに限定されない:複合体化、二量体化、多量体化、レセプターに関連するキナーゼ活性または他の酵素活性もしくは触媒活性、レセプターに関連するプロテアーゼ活性、リン酸化、脱リン酸化、自己リン酸化、他の分子と複合体を形成する能力、リガンド結合、触媒活性もしくは酵素活性、自己活性化および他のポリペプチドの活性化を含む活性化、別の分子の機能の阻害もしくは調節、シグナル伝達および/または細胞応答(例えば、細胞の増殖、遊走、分化および成長)の刺激または阻害、分解、膜局在化、膜結合、ならびに腫瘍形成。活性は、本明細書中に記載されるアッセイおよび当業者に公知の任意の適切なアッセイ(細胞ベースのアッセイを含めたインビトロアッセイ、特定の疾患についての動物モデルにおけるアッセイを含めたインビボアッセイが挙げられるがこれらに限定されない)によって評価され得る。
本明細書において使用される場合、複合体化は、複合体を形成するための、2以上の分子(例えば、2分子のタンパク質)の相互作用をいう。相互作用は、非共有結合および/または共有結合によるものであり得、そして、疎水性相互作用および静電性相互作用、ファンデルワールス力ならびに水素結合が挙げられるがこれらに限定されない。一般に、タンパク質−タンパク質相互作用は、疎水性相互作用と水素結合とを伴う。複合体化は、温度、pH、イオン強度および圧力、ならびにタンパク質の濃度のような環境条件によって影響され得る。
本明細書において使用される場合、二量体化は、2つの分子(例えば、2分子のレセプター)の相互作用をいう。二量体化は、2つの同一の分子が相互作用するホモ二量体化を含む。二量体化はまた、2つの異なる分子(例えば、2つの異なるレセプター分子)が相互作用するヘテロ二量体化を含む。代表的には、二量体化は、各分子に含まれる二量体化ドメインまたは多量体化ドメインの相互作用により、互いに相互作用する2つの分子を必要とする。同様に、多量体化は、二量体、三量体またはより高次の低重合体を形成する複数の分子の相互作用をいい、これらの分子は、同じタイプのものであるか、または異なるタイプのものである。
2つのキメラポリペプチドに関連する二量体化とは、各々の多量体化ドメイン間の相互作用によって生じる二量体化をいう。レセプターの二量体化は、レセプターの活性化をもたらす2つのレセプター間の二量体化、または、レセプターと二量体化して、次いで、そのレセプターの活性化を調節し得るECD部分(例えば、ECD多量体)とレセプターとの間の二量体化をいう。
本明細書において使用される場合、インシリコとは、コンピュータを用いて行われる研究および実験をいう。インシリコの方法としては、分子モデリング研究、生体分子ドッキング実験、ならびに、分子の構造および/またはプロセス(例えば、分子の相互作用)のバーチャル表示が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される場合、生物学的サンプルとは、生きた供給源もしくはウイルス性供給源または高分子および生体分子の他の供給源から得られる任意のサンプルをいい、そして、核酸またはタンパク質または他の高分子が得られ得る被験体の任意の細胞タイプまたは組織を含む。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接得られ得るか、または、サンプルは加工され得る。例えば、単離された核酸を増幅したものが、生物学的サンプルを構成する。生物学的サンプルとしては、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗のような体液、動物および植物に由来する組織および器官のサンプル、ならびに、これらに由来する加工されたサンプルが挙げられるがこれらに限定されない。また、土壌および水のサンプル、ならびに、他の環境的サンプル、ウイルス、細菌、真菌、藻類、原虫およびこれらの成分も含まれる。
本明細書において使用される場合、用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)ならびにRNAもしくはDNAのいずれかのアナログまたは誘導体のような、一本鎖および/または二本鎖のポリヌクレオチドをいう。また、用語「核酸」には、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエートDNAならびに他のこのようなアナログおよび誘導体またはこれらの組合せのような、核酸のアナログも含まれる。核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを指し得る。この用語はまた、等価物として、ヌクレオチドアナログ、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドから作製された、RNAもしくはDNAのいずれかの誘導体、改変体およびアナログも含む。デオキシリボヌクレオチドとしては、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシンおよびデオキシチミジンが挙げられる。RNAについては、ウラシル塩基はウリジンである。
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも2つの連結されたヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を含む低重合体または重合体をいい、このヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体としては、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、および、例えば、ヌクレオチドアナログもしくはホスホジエステル結合以外の「骨格」結合(例えば、ホスホロチオエート結合、チオエステル結合またはペプチド結合(ペプチド核酸)を含むDNAもしくはRNA誘導体が挙げられる。用語「オリゴヌクレオチド」はまた、本明細書において、「ポリヌクレオチド」と本質的に同義的に使用されるが、当業者は、オリゴヌクレオチド(例えば、PCRプライマー)が、一般には、約50〜100ヌクレオチドの長さより短いことを認識する。
ポリヌクレオチドは、ヌクレオチドアナログを含み、例えば、以下のようなものが挙げられる:ポリヌクレオチドの質量による区別を可能にする、質量改変ヌクレオチド;ポリヌクレオチドの検出を可能にする、蛍光標識、放射性標識、発光性標識もしくは化学発光標識のような検出可能な標識を含むヌクレオチド;または、固体支持体へのポリヌクレオチドの固定化を促進する、ビオチンもしくはチオール基のような反応性基を含むヌクレオチド。ポリヌクレオチドはまた、選択的に(例えば、化学的に、酵素的に、または光分解的に)切断可能な1以上の骨格結合を含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、後ろに1以上のリボヌクレオチドが続き、その後ろに1以上のデオキシリボヌクレオチドが続き得る1以上のデオキシリボヌクレオチド(例えば、塩基性加水分解によってリボヌクレオチド配列において切断可能な配列)を含み得る。ポリヌクレオチドはまた、比較的切断に対して抵抗性の1以上の結合を含み得る。例えば、キメラオリゴヌクレオチドプライマーは、ペプチド核酸結合によって連結されたヌクレオチドと、3’末端にあって、ホスホジエステル結合もしくは他の適切な結合によって連結され、そして、ポリメラーゼによって伸長され得る少なくとも1つのヌクレオチドとを含み得る。ペプチド核酸分子は、周知の方法(例えば、Weiler et al.Nucleic acids Res.25:2792−2799(1997)を参照のこと)を用いて調製され得る。
本明細書において使用される場合、オリゴヌクレオチドとは、DNA、RNA、核酸アナログ(例えば、PNA)およびこれらの組合せを含む重合体をいう。本明細書における目的では、プライマーおよびプローブは、一本鎖オリゴヌクレオチドであるか、または、部分的に一本鎖のオリゴヌクレオチドである。
本明細書において使用される場合、例えば、合成核酸または合成遺伝子または合成ペプチドに関する、合成とは、組換え法および/または化学合成法によって生成される核酸分子またはポリペプチド分子をいう。
本明細書において使用される場合、組換え技術または組換えDNA法を用いる方法による生成とは、クローニングされたDNAによってコードされるタンパク質を発現させるための分子生物学の周知の方法を使用することを意味する。
本明細書において使用される場合、用語「ベクター」とは、自身に連結された別の核酸分子を輸送し得る核酸分子をいう。ベクターの1つのタイプは、エピソーム、すなわち、染色体外複製が可能な核酸である。ベクターとしては、自身に連結される核酸を自律的に複製および/または発現させ得るものが挙げられる。自身に作動可能に連結される遺伝子の発現を指向させ得るベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、発現ベクターは、しばしば「プラスミド」の形態をとり、このプラスミドは、一般に、そのベクターの形態では染色体に結合しない二本鎖DNAループである。プラスミドは、ベクターの最も一般に使用される形態であるので、「プラスミド」および「ベクター」は、交換可能に使用される。他のこのような他の発現ベクターの形態も、同等の機能を果たし、そして、本明細書の後に当該分野において公知となる。
本明細書において使用される場合、核酸配列に関連する句「作動可能に連結される」とは、一般に、核酸分子またはそのセグメントが、一本鎖の形態であれ二本鎖の形態であれ、DNAもしくはRNAのような1片の核酸へと共有結合により連結されることを意味する。セグメントは、必ずしも連続ではなく、むしろ、2以上の成分がその意図される様式で機能することを可能にする関係で並置される。例えば、RNAのセグメント(エキソン)は、スプライシングなどによって作動可能に連結されて、単一のRNA分子を形成し得る。別の例では、DNAセグメントが作動可能に連結され得、それによって、一方のセグメントの制御に関する制御性配列または調節性配列が、他のセグメントの発現または複製または他のこのような制御を可能にする。したがって、調節性領域がレポーターもしくは任意の他のポリヌクレオチドに作動可能に連結される場合、または、レポーターもしくは任意のポリヌクレオチドが調節性領域に作動可能に連結される場合、ポリヌクレオチド/レポーターの発現は、調節性領域によって影響を受けるかまたは制御される(例えば、調節されるかまたは変化させられる(増加または減少など))。遺伝子の発現に関して、ヌクレオチドの配列および調節性配列は、適切な分子シグナル(例えば、転写活性化タンパク質)がその調節性配列に結合されるときに遺伝子の発現を制御するかまたは可能にするような方法で接続される。ヌクレオチドの調節性配列およびエフェクター配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写終止部位および翻訳終止部位、ならびに他のシグナル配列)への異種性の核酸(例えば、DNA)の作動可能な連結とは、このようなDNAとこのようなヌクレオチド配列との間の関係性をいう。例えば、プロモーターへの異種性DNAの作動可能な連結とは、このようなDNAの転写が、読み取り枠内のDNAを特異的に認識、結合および転写するRNAポリメラーゼによってそのプロモーターから開始されるような、そのDNAとそのプロモーターとの間の物理的な関係性をいう。
本明細書において使用される場合、ヌクレオチドの調節性配列およびエフェクター配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写終止部位および翻訳終止部位、ならびに他のシグナル配列)への異種性の核酸の作動可能な連結とは、このような核酸(例えば、DNA)とこのようなヌクレオチド配列との間の関係性をいう。例えば、プロモーターへの異種性DNAの作動可能な連結とは、このようなDNAの転写が、そのDNAを特異的に認識、結合および転写するRNAポリメラーゼによってそのプロモーターから開始されるような、そのDNAとそのプロモーターとの間の物理的な関係性をいう。したがって、作動可能に連結される、または、作動可能に関連付けられる、とは、核酸(例えば、DNA)の、ヌクレオチドの調節性配列およびエフェクター配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写終止部位および翻訳終止部位、ならびに他のシグナル配列)との機能的な関係性をいう。発現および/またはインビトロでの転写を最適化するためには、クローンの5’非翻訳部分を除去、追加または変更して、余分な、潜在的には不適切な選択的翻訳開始(initiation)(すなわち、開始(start))コドン、あるいは、転写もしくは翻訳のいずれかのレベルで発現と干渉し得るかまたは発現を減少させ得る他の配列を排除することが必要であり得る。あるいは、コンセンサスリボソーム結合部位(例えば、Kozak J.Biol.Chem.266:19867−19870(1991)を参照のこと)は開始コドンの直ぐ5’側に挿入され得、そして、発現を増強し得る。このような改変の妥当性(または必要性)は、経験的に決定され得る。
本明細書において使用される場合、例えば、句「細胞表面レセプターの少なくとも1つのサブドメインまたはその一部分が、別のサブドメインまたはその一部分に対して作動可能に連結される」という文脈において使用される場合のように、ポリペプチドに関する用語「作動可能に連結される」とは、2つのアミノ酸配列が、各配列における末端アミノ酸残基間のペプチド結合によって接合されて、単一のアミノ酸残基配列を形成することを意味する。
本明細書において使用される場合、アイソフォームおよびイントロン融合タンパク質のようなポリペプチドの生成(generating)に関する句「核酸から生成される」とは、文字通りのポリペプチド分子の生成と、核酸分子の翻訳によるポリペプチドの生成とを含む。
本明細書において使用される場合、ポリペプチドに関する、産生(production)とは、発現および発現されたタンパク質(または、回収可能もしくは単離可能な発現されたタンパク質)の回収をいう。タンパク質の産生に影響を及ぼし得る因子としては、選択される発現系および宿主細胞、細胞培養の条件、宿主細胞によるタンパク質の分泌、ならびに、精製の目的のためにタンパク質を検出する能力が挙げられる。タンパク質の産生は、例えば、細胞培養培地中などへのタンパク質の分泌を評価することによってモニタリングされ得る。
本明細書において使用される場合、分泌とは、タンパク質が細胞外環境へと輸送されるか、または、グラム陰性細菌の場合には、ペリプラズム空間へと輸送されるプロセスをいう。一般に、分泌は、細胞(例えば、真核生物細胞)における分泌経路を通って起こるが、これは、小胞体およびゴルジ装置を必要とする。
本明細書において使用される場合、異なる種に由来する分子(例えば、核酸分子またはポリペプチド)に関する相同とは、対応する分子(すなわち、種改変体)をいう。このような分子は、代表的に類似しており、そして一般に、約45%の配列同一性または相同性を共有する。当業者は、種間の相同体を同定し得る。
本明細書において使用される場合、異種性の核酸は、その核酸が発現される細胞によってインビボでは通常は産生されない核酸、または、その細胞によって産生はされるものの、異なる遺伝子座にあったり異なるように発現されたりする核酸、または、転写、翻訳もしくは他の調節可能な生化学プロセスに変化をもたらすことによって、外因性の核酸(例えば、DNA)の発現を変化させるメディエーターを媒介もしくはコードする核酸である。異種性の核酸は、一般に、その核酸が導入される細胞に対して内因性ではないが、別の細胞から得られるか、または、合成により調製されたものである。異種性の核酸は、内因性であり得るが、異なる遺伝子座から発現されるか、または、その発現が変化した核酸である。一般に、必ずしもそうではないが、このような核酸は、細胞によって通常は産生されないか、または、その核酸が発現される細胞と同じようには産生されないRNAおよびタンパク質をコードする。異種性の核酸(例えば、DNA)はまた、外来性の核酸(例えば、DNA)とも呼ばれ得る。したがって、異種性の核酸または外来性の核酸は、対応する核酸分子(例えば、DNA)がゲノムにおいて見出されるのとまさに同じ配向または位置では存在しない核酸分子を含む。また、これは、別の生物または種に由来する(すなわち、外来性)の核酸分子も指し得る。単離された核酸分子に関する、異種性の核酸とは、このような分子の別の部分に由来する異なる供給源または遺伝子座から誘導された、このような分子の一部分を指し得る。異種性の分泌シグナルの例としては、コードされる分子の内因性シグナル配列ではない、任意のプレ配列(すなわち、シグナル配列)またはプレプロ配列(例えば、tPAプレプロ配列、プレプロガストリン配列および当業者に公知の任意の他の配列であるが、これらに限定されない)が挙げられる。
同様に、ポリペプチドの一部分に関する、異種性とは、他の部分と比較したときの、キメラポリペプチドの一部分をいう。したがって、HER1由来のサブドメインI、HER2由来のサブドメインIIおよびHER3由来のサブドメインIIIを含むハイブリッドECDにおいて、サブドメインの各々は、他のサブドメインの各々に対して異種性である。
異種分子は、異なる遺伝子供給源または種に由来し得る。したがって、特定のCSR ECDまたはそのアイソフォームに対して異種性の分子としては、CSR ECDまたはそのアイソフォームに由来しないか、または、これに対して内因性ではない配列を含む任意の分子が挙げられる。異種分子の例としては、同じ種もしくは異なる種の異なるポリペプチドに由来する分泌シグナル、融合タグもしくは標識のようなタグ、または任意の他の分子の全体もしくは一部分が挙げられる。異種分子は、融合分子もしくはキメラ分子の生成のために、関心のある核酸もしくはポリペプチドの配列に対して融合され得るか、または、共有結合もしくは非共有結合によって化学的に連結され得る。
本明細書において使用される場合、異種性の分泌シグナルとは、内因性のシグナル配列とは配列が異なる、同じ種もしくは異なる種に由来するポリペプチドからのシグナル配列をいう。異種性の分泌シグナルは、そのシグナル配列が由来する宿主細胞において使用され得るか、または、シグナル配列が由来する細胞とは異なる宿主細胞において使用され得る。
本明細書において使用される場合、例えば、ECDの活性な部分に関してなどの、ポリペプチドの活性な部分とは、ポリペプチドの活性を有する部分をいう。
本明細書において使用される場合、タンパク質の精製とは、細胞および組織の構成要素(DNA、細胞膜および他のタンパク質を含む)を含み得るホモジネートなどから、タンパク質を単離するプロセスをいう。タンパク質は、当業者に公知の任意の種々の方法(例えば、段階的なpHのゲルもしくはイオン交換カラムを通すことによりその等電点に従って、サイズ排除クロマトグラフィーもしくはSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)解析によりそのサイズもしくは分子量に従って、または、その疎水性に従って)で精製され得る。他の精製技術としては、沈降またはアフィニティクロマトグラフィー(免疫アフィニティクロマトグラフィーを含む)ならびに、任意のこれらの方法の組合せを含む他の技術および方法が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、精製は、分子上にタグ(例えば、アフィニティ精製のためのhisタグ、または、同定のための検出可能なマーカー)を含めることによって促進され得る。
本明細書において使用される場合、分子(例えば、核酸分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチドまたは抗体)に関して、「単離された」とは、分子が、その天然環境において見られる状態から、人の手によって変えられたことを示す。例えば、組換え宿主細胞によって産生される分子、および/または組換え宿主細胞内に含まれる分子は、「単離された」とみなされる。同様に、天然の供給源もしくは組換え宿主細胞から部分的もしくは実質的に精製された分子、または、合成法によって生成された分子は、「単離された」とみなされる。意図される用途に依存して、単離された分子は、動物、細胞もしくはその抽出物中;脱水状態、蒸気、溶液もしくは懸濁液中;または、固体支持体上に固定される、などの任意の形態で存在し得る。
本明細書において使用される場合、実質的に純粋なポリペプチドまたは単離されたポリペプチド(または他の分子)は、交換可能に使用され、そして、クロマトグラフィー技術もしくは他のこのような技術(例えばクーマシーブルーもしくは銀染色を用いる、非還元条件もしくは還元条件下でのSDS−PAGEなど)によって検出される場合に、そのポリペプチドが供給源または均質なサンプルから精製されていることを意味する。均質とは、代表的には、他の供給源のタンパク質での汚染が約5%未満または5%未満であることを意味する。
本明細書において使用される場合、検出とは、タンパク質の(眼または機器による)可視化を可能にする方法を含む。タンパク質は、そのタンパク質に対して特異的な抗体を用いて可視化され得る。タンパク質の検出はまた、エピトープタグまたは標識を含むタグとのタンパク質の融合によって容易にされ得る。
本明細書において使用される場合、標識とは、標識されたポリペプチドを生成するようにポリペプチドに対して直接的もしくは間接的に結合される、検出可能な化合物もしくは組成物をいう。標識は、それ自体(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)によって検出され得るか、または、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物の組成物の化学的な変更を触媒し得る。標識の非限定的な例には、蛍光生成部分、緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼを含んだ。
本明細書において使用される場合、発現とは、遺伝子のコードする情報が、細胞中で存在し、機能している構造に変換されるプロセスをいう。発現される遺伝子としては、mRNAに転写され、次いで、タンパク質に翻訳されるもの、および、RNAには転写されるが、タンパク質には翻訳されないもの(例えば、トランスファーRNAおよびリボソームRNA)が挙げられる。本明細書における目的では、発現されるタンパク質は、細胞の内側(例えば、細胞質内)に保持され得るか、または、細胞から分泌され得る。
本明細書において使用される場合、プロモーター領域とは、その領域が作動可能に連結されるDNAの転写を制御する、遺伝子のDNAの一部分をいう。プロモーター領域としては、RNAポリペプチドの識別、結合および転写開始に十分な、DNAの特定の配列が挙げられる。プロモーター領域のこの部分は、プロモーターとも呼ばれる。さらに、プロモーター領域としては、RNAポリメラーゼのこの識別、結合および転写開始の活性を調節する配列が挙げられる。これらの配列は、シス作用性の因子であっても、トランス作用性の因子に応答性であってもよい。プロモーターは、調節の性質に依存して、構成的であっても、調節性であってもよい。
本明細書において使用される場合、調節性領域は、作動可能に連結された遺伝子の発現を正もしくは負の方向に影響する、シス作用性のヌクレオチド配列を意味する。調節性領域としては、遺伝子の誘導性(すなわち、転写の増加に基質もしくは刺激を必要とする)の発現を与えるヌクレオチドの配列が挙げられる。誘導因子が存在するかまたはその濃度が増大しているとき、遺伝子の発現は増加され得る。調節性領域としてはまた、遺伝子発現の抑制を与える配列が挙げられる(すなわち、基質もしくは刺激が転写を減少させる)。抑制因子が存在するかまたはその濃度が増大しているとき、遺伝子発現は減少させられ得る。調節性領域は、多くのインビボでの生物学的活性(細胞の増殖、細胞の成長および死、細胞の分化ならびに免疫調節を含む)に影響を与えるか、調節するか、または制御することが知られる。調節性領域は、代表的には、1以上のトランス作用性のタンパク質に結合し、遺伝子の転写の増加もしくは減少のいずれかをもたらす。
遺伝子調節性領域の例は、プロモーターおよびエンハンサーである。プロモーターは、転写開始部位もしくは翻訳開始部位付近に位置する(代表的には、翻訳開始部位の5’に位置する)配列である。プロモーターは通常、翻訳開始部位の1Kb以内に位置するが、さらに遠く離れて(例えば、2Kb、3Kb、4Kb、5kBまたはそれより遠く、最大で10Kb離れて)位置し得る。エンハンサーは、遺伝子の5’もしくは3’に位置するとき、あるいは、エキソンもしくはイントロン内、または、これらの部分に位置するとき、遺伝子の発現に影響を与えることが知られる。エンハンサーはまた、遺伝子からかなり離れた距離において(例えば、約3Kb、5Kb、7Kb、10Kb、15Kbまたはそれより離れた距離において)機能し得る。
調節性領域としてはまた、プロモーター領域に加えて、翻訳を促進する配列、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAのインフレームでの翻訳を可能にする遺伝子の正確な読み取り枠の維持、ならびに、終止コドン、リーダー配列および融合パートナー配列、複数の遺伝子の作製のための内部リボソーム結合部位(IRES)エレメント、多シストロン性のメッセージ(polycistronic messages)、関心のある遺伝子の転写の適切なポリアデニル化を提供するポリアデニル化シグナル、ならびに終止コドンが挙げられ、そして、必要に応じて、発現ベクター内に含められ得る。
本明細書において使用される場合、本明細書中に登場する種々のアミノ酸配列に見出される「アミノ酸」とは、その周知の三文字または一文字の省略形(表2を参照のこと)に従って同定される。種々のDNAフラグメントに見出されるヌクレオチドは、当該分野で慣用的に使用される標準的な一文字表記で示される。
本明細書において使用される場合、「アミノ酸残基」とは、そのペプチド結合におけるポリペプチドの化学的消化(加水分解)の際に形成されるアミノ酸をいう。本明細書において記載されるアミノ酸残基は、一般に、「L」異性体の形態である。所望の機能的特性がポリペプチドによって保持される限りは、「D」異性体の形態の残基が任意のL−アミノ酸残基を置き換え得る。NH2はポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシ基をいう。J.Biol.Chem.,243:3552−59(1969)に記載され、米国特許法施行規則§§1.821−1.822において採用された、標準的な命名法を遵守して、アミノ酸残基についての省略形を以下の表2に示す:
本明細書において式によって表現されるアミノ酸残基の配列は全て、アミノ末端からカルボキシル末端という従来の方向で、左から右の配向を有する。さらに、句「アミノ酸残基」は、対応表において列挙されるアミノ酸の改変されたもの、非天然のものおよび異常なアミノ酸を含むものと定義される。さらに、アミノ酸残基配列の開始または末端にあるダッシュ(−)は、そのペプチドが、1以上のアミノ酸残基のさらなる配列に、または、NH2のようなアミノ末端基に、または、COOHのようなカルボキシル末端基に結合されることを示す。
ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は、当業者に公知であり、そして、一般には、結果として生じる分子の活性を変化させることなくなされ得る。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が生物学的活性を実質的には変化させないことを認識する(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.co.,p.224を参照のこと)。
このような置換は、例えば、以下のような表3に示されるものに従ってなされ得る:
非保存的な変更を含む他の置換もまた許容され、そして、経験的に、または、他の公知の保存的置換もしくは非保存的置換に従って決定され得る。
本明細書において使用される場合、ペプチド模倣物とは、特定のペプチドの生物学的に活性な形態の立体配座および特定の立体化学的特徴を模倣する化合物である。一般に、ペプチド模倣物は、化合物の特定の所望の特性を模倣するが、生物学的に活性な立体配座の喪失および結合の破壊につながる望ましくない特性(例えば、柔軟性)は模倣しないように設計される。ペプチド模倣物は、望ましくない特性に寄与する特定の基または結合を生物同配体(bioisostere)で置き換えることによって、生物学的に活性な化合物から調製され得る。生物同配体は、当業者に公知である。例えば、メチレンの生物同配体であるCH2Sは、エンケファリンアナログにおけるアミド代替物として使用されている(例えば、Spatola(1983)pp.267−357 in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,Weinstein,Ed.volume 7,Marcel Dekker,New Yorkを参照のこと)。経口投与され得るモルヒネは、ペプチドエンドルフィンのペプチド模倣物である化合物である。本明細書における目的では、ペプチド模倣物には、1以上のペプチド結合が模倣物によって置き換えられたポリペプチドとして、環状ペプチドが含まれる。本明細書において提供されるヘテロ多量体および多量体およびハイブリッドECDおよびキメラポリペプチドは、結合を模倣物で置き換えることによって改変され得、このような分子が本明細書中に提供される。
本明細書において使用される場合、2つのタンパク質または核酸間の「類似性」とは、タンパク質のアミノ酸配列間または核酸のヌクレオチド配列間の関連性をいう。類似性は、配列およびその配列に含まれる残基の同一性および/または相同性の程度に基づき得る。タンパク質または核酸間の類似性の度合いを評価するための方法は当業者に公知である。例えば、配列の類似性を評価する1つの方法において、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列は、配列間で最大レベルの同一性を得る様式で整列される。「同一性」とは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が不変である程度をいう。アミノ酸配列の、そして、ある程度は、ヌクレオチド配列のアラインメントもまた、アミノ酸(またはヌクレオチド)における保存的な相違および/または頻繁な置換を考慮し得る。保存的な相違とは、関与する残基の物理化学的特性を保存する相違である。アラインメントは、グローバル(配列の全長にわたった、全ての残基を含む比較配列のアラインメント)またはローカル(最も類似的な領域のみを含む配列の一部分のアラインメント)であり得る。
「同一性」は本質的に、当該分野で認識される意味を有し、そして、公開された技術を用いて計算され得る(例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991を参照のこと)。2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列間の同一性を測定するための多数の方法が存在するが、用語「同一性」は、当業者に周知である(Carillo,H.& Lipton,D.,SIAM J Applied Math 48:1073(1988))。
本明細書において使用される場合、アイソフォームの全長に対して、各配列番号の全長に沿って比較される配列同一性は、特定の配列番号によって指定される参照ポリペプチドのその全長に対する、その全長に沿ったアイソフォームポリペプチドのアミノ酸配列の同一性の割合をいう。例えば、ポリペプチドAが100アミノ酸を有し、ポリペプチドBがポリペプチドAのアミノ酸1〜95に対して同一な95アミノ酸を有する場合、ポリペプチドBは、配列の同一性が、ポリペプチドBの全長に対して比較されるポリペプチドAの全長に沿って比較されるときに95%の同一性を有する。代表的には、アイソフォームポリペプチドまたは参照ポリペプチドがシグナル配列を欠く成熟ポリペプチドである場合、配列の同一性は、シグナル配列部分を除くポリペプチドの全長に沿って比較される。例えば、アイソフォームはシグナルペプチドを欠くが、参照ポリペプチドはシグナルペプチドを含む場合、配列の同一性を決定するための両方のポリペプチドの全長に沿った比較は、参照ポリペプチドのシグナル配列部分を除外する。以下に考察されるように、そして、当業者に公知であるように、同一性を評価するための種々のプログラムおよび方法が当業者に公知である。例えば、全長を考慮するとき、Needleman−Wunschのグローバルアラインメントアルゴリズムなどを用いるグローバルアラインメントが、2つの配列の最適なアラインメントおよび同一性を見出すために使用され得る。90%または95%の同一性のような高いレベルの同一性は、ソフトウェアなしで容易に決定され得る。
本明細書において使用される場合、(核酸および/またはアミノ酸配列に関して)相同とは、約25%以上の配列相同性、代表的には、25%以上、40%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の配列相同性を意味する;必要な場合、正確な割合が特定され得る。本明細書における目的について、用語「相同性」および「同一性」は、そうでないと示されない限り、しばしば、交換可能に使用される。一般に、相同性または同一性の割合の決定のために、配列は、最も高い次元のマッチ(match)が得られるように整列される(例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991;Carillo et al.(1988)SIAM J Applied Math 48:1073を参照のこと)。配列が相同であることにより、保存されたアミノ酸の数が、標準的なアラインメントアルゴリズムプログラムによって決定され、そして、各供給元によって確立されたデフォルトのギャップペナルティを用いて使用され得る。実質的に相同な核酸分子は、代表的には中程度のストリンジェンシーまたは高いストリンジェンシーにおいて、関心のある核酸の全長に沿ってハイブリダイズする。また、ハイブリダイズしている核酸分子中のコドンの代わりに変質したコドンを含む核酸分子も企図される。
任意の2つの核酸分子が、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%「同一」または「相同」であるヌクレオチド配列を有するかどうかは、以下のような公知のコンピューターアルゴリズムを用いて決定され得る:例えば、Pearson et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444におけるようなデフォルトパラメーターを用いる「FAST A」プログラム(他のプログラムとしては、GCGプログラムパッケージが挙げられる(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(I):387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul,S.F.,et al.,J Molec Biol 215:403(1990);Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,ed.,Academic Press,San Diego,1994およびCarillo et al.(1988)SIAM J Applied Math 48:1073)。例えば、National Center for Biotechnology InformationデータベースのBLAST機能が、同一性を決定するために使用され得る。他の市販または公的に利用可能なプログラムとしては、DNAStarの「MegAlign」プログラム(Madison,WI)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group(UWG)の「Gap」プログラム(Madison WI)が挙げられる。タンパク質および/または核酸分子の相同性または同一性の割合は、例えば、GAPコンピュータプログラム(例えば、Needleman et al.(1970)J.Mol.Biol.48:443、SmithおよびWaterman((1981)Adv.Appl.Math.2:482)によって改訂されたもの)を用いて配列情報を比較することによって決定され得る。簡単に述べると、GAPプログラムは、類似性を、整列された(同一である)記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を2つの配列うちの短い方における記号の総数で割ったものとして規定する。GAPプログラムについてのデフォルトパラメーターとしては以下が挙げられ得る:(1)Schwartz and Dayhoff,eds.,ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE,National Biomedical Research Foundation,pp.353−358(1979)によって記載されるような、単項比較マトリクス(同一なものについては1の値、そして、同一でないものについては0の値を含む)と、Gribskov et al.(1986)Nucl.Acids Res.14:6745の重み付け比較マトリクス;(2)各ギャップにつき3.0のペナルティと、各ギャップにおける各記号について追加の0.10のペナルティ;ならびに末端のギャップについてはペナルティなし。
したがって、本明細書において使用される場合、用語「同一性」または「相同性」は、試験ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドと参照ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドとの間の比較を表す。
本明細書において使用される場合、用語「〜に対して少なくとも90%同一」とは、参照の核酸配列またはアミノ酸配列に対して、90〜99.99の同一性%をいう。90%異常のレベルの同一性は、例示の目的で、100アミノ酸の長さの試験ポリペプチドと参照ポリペプチドとを比較すると仮定すると、試験ポリペプチドにおける10%(すなわち、100個中10個)以下のアミノ酸が、参照ポリペプチドのアミノ酸と異なるという事実を示す。同様の比較が、試験ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの間でなされ得る。このような相違は、アミノ酸配列の全長にわたって不規則に分布する点変異として表され得るか、または、許容される最大までの種々の長さの1以上の場所においてクラスター形成し得る。例えば、10/100のアミノ酸の相違(およそ90%の同一性)。相違は、核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失として規定される。約85〜90%を上回るレベルの相同性または同一性において、結果は、プログラムおよびギャップパラメーターの設定とは無関係であるべきである;このような高いレベルの同一性は、しばしば、ソフトウェアに頼らない手動でのアラインメントにより容易に評価され得る。
本明細書において使用される場合、整列された配列とは、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列における対応する位置を整列するために相同性(類似性および/または同一性)を使用することをいう。代表的には、50%以上の同一性により関連付けられる2以上の配列が整列される。配列の整列される組合せ(set)とは、対応する位置で整列される2以上の配列をいい、そして、ゲノムDNA配列と整列させた、RNAに由来する配列(例えば、ESTおよび他のcDNA)の整列を含み得る。
本明細書において使用される場合、特定の割合の参照ポリペプチド中に示されるアミノ酸を含むポリペプチドは、ポリペプチドと参照ポリペプチドとの間で共有される、連続した同一なアミノ酸の部分をいう。例えば、147アミノ酸を列挙する配列番号XXに示されるアミノ酸配列を持つ参照ポリペプチド中に示されるアミノ酸の70%を含むアイソフォームは、参照ポリペプチドが、配列番号XXのアミノ酸配列中に示される少なくとも103の連続したアミノ酸を含むことを意味する。
本明細書において使用される場合、「プライマー」とは、2以上の(一般には、3より多い)デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであって、そこからプライマー伸長産物の合成が開始され得るオリゴヌクレオチドをいう。プライマーは、適切な緩衝液中で、適切な温度において、適切な条件下で(例えば、4種の異なるヌクレオシド三リン酸および重合化剤(例えば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)の存在下で)、テンプレートにより指向されるDNA合成の開始点として機能し得る。合成を行う実験条件としては、ヌクレオシド三リン酸と重合および伸長のための因子(例えば、DNAポリメラーゼ)と適切な緩衝液、温度およびpHの存在が挙げられる。
特定の核酸分子は、「プローブ」として、そして「プライマー」として機能し得る。しかし、プライマーは、伸長のための3’ヒドロキシル基としてである。プライマーは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)−PCR、RNA PCR、LCR、複合PCR、パンハンドル(panhandle)PCR、捕捉PCR、発現PCR、3’および5’のRACE、インサイチュPCR、ライゲーションにより媒介されるPCR、ならびに他の増幅プロトコールを含む、種々の方法において使用され得る。
本明細書において使用される場合、「プライマーペア」は、増幅されるべき配列の5’末端にハイブリダイズする5’(上流)プライマーと、増幅されるべき配列の3’末端の相補体にハイブリダイズする3’(下流)プライマーとを含むプライマーのセットをいう。
本明細書において使用される場合、「特異的にハイブリダイズする」とは、ある核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)の、標的核酸分子への相補的な塩基対形成によるアニーリングをいう。当業者は、特異的なハイブリダイズに影響するインビトロおよびインビボのパラメーター(例えば、特定の分子の長さおよび組成)に精通している。特にインビトロハイブリダイゼーションに関連するパラメーターとしては、さらに、アニーリングおよび洗浄の温度、緩衝液の組成ならびに塩濃度が挙げられる。非特異的に結合した核酸分子を除くための例示的な洗浄条件は、高ストリンジェンシーにおいては0.1×SSPE、0.1% SDS、65°Cであり、そして、中程度のストリンジェンシーにおいては0.2×SSPE、0.1% SDS、50°Cである。等価なストリンジェンシー条件は当該分野で公知である。当業者は、特定の用途のために適切な、ある核酸分子の標的核酸分子への特異的なハイブリダイゼーションを達成するために、これらのパラメーターを容易に調整し得る。
本明細書において使用される場合、有効量とは、疾患もしくは障害の症状を、予防、治癒、改善、停止または部分的に停止するために必要な治療剤の量である。
本明細書において使用される場合、単位投薬形態とは、ヒトおよび動物の被験体に適切であり、かつ当該分野で公知であるように個別に包装された、物理的に別個の単位をいう。
本明細書において使用される場合、単回投薬用処方物(single dosage formulation)とは、直接的な投与のための処方物をいう。
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にそうでないと指示しない限り、複数への参照を含む。したがって、例えば、「細胞外ドメイン(an extracellular domain)」を含む化合物への参照は、1つまたは複数の細胞外ドメインを持つ化合物を含む。
本明細書において使用される場合、範囲および量は、「約」特定の値または範囲として表され得る。約、はまた、正確な量を含む。したがって、「約5塩基」は、「約5塩基」を意味するが、「5塩基」も意味する。
本明細書において使用される場合、「随意の」または「必要に応じて」とは、その後に記載される事象または状況が起こるか、または起こらないことを意味し、そして、この記載は、上記事象または状況が起こる場合と、上記事象または状況が起こらない場合を含む。例えば、必要に応じて置換された基とは、その基が置換されていないか、または、置換されていることを意味する。
B.汎細胞表面レセプター特異的な治療薬
1以上(代表的には2以上)の細胞表面レセプター(例えば、HERファミリーのメンバー、特に、HER1、HER3およびHER4、インシュリン様増殖因子−1レセプター(IGF−1RまたはIGF1R)、特に、IGF1R、ならびに、血管内皮細胞増殖因子レセプター(VEGFR)ファミリーのメンバー)と相互作用する、治療薬または候補治療薬である化合物が、本明細書において提供される。これらの治療薬および候補治療薬は、疾患の経路の活性化において協働する少なくとも1以上のレセプターおよび/またはそのリガンドを特異的に標的とすることによって作用する。このような治療薬は、単一のレセプターに対して標的化された治療薬に付随する問題を克服または対処する。
例えば、Herceptin(登録商標)(Trastuzimab)のような抗HER薬物に関する問題は、HER2の過剰発現が乳癌の一部分のみにおいて生じることに起因して有効性が限られていること、また、薬物に対する耐性が他のレセプターの活性などによって生じ得ることに起因して応答期間が限られていることである。同様の問題は、HERファミリーメンバー以外のレセプターを標的とする薬物でも観察される。Herceptin(登録商標)(Trastuzimab)の耐性に関する機構は、さらなるHERファミリーメンバーの共発現である。耐性の他の機構としては、IGF−1Rの共発現;メタロプロテアーゼにより媒介されるHER2の活性化(細胞外ドメインの「クリッピング」による);および、しばしば、PTEN(癌において変異しているホスファターゼおよびテンシンの相同体(phosphatase and tensin homology);例えば、Nahta et al.(2006)Cancer Lett.8:123−38;Hynes et al.(2005)Nature Reviews Cancer 5:341−354を参照のこと)の欠失によって媒介される、PI3K−AKT(ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ−プロテインキナーゼB)経路のアップレギュレーションが挙げられる。HER1/EGFR治療薬に対する耐性の機構は、Herceptin(登録商標)(Trastuzimab)に対する耐性に関する機構と同様である。データは、患者の60%(145人中88人の患者)が、1または2のHERファミリーメンバーを発現し;18.6%(145人中27人)が3つのHERファミリーメンバーを共発現することを示す。データはまた、レセプターの発現の累積が、かなりより重篤な疾患を予測することを示す(p<0.0001)。さらなるデータが、乳癌の約40%が、2つのHERファミリーメンバーを共発現することを示す。他の癌におけるHERファミリーメンバーの共発現の頻度は、乳癌における頻度に匹敵し、約50%までの患者がHERを同時に発現すると予測され、したがって、おそらくは、AKT(プロテインキナーゼB)、および細胞増殖を刺激する他の細胞経路の活性化の累積の結果として、単一の因子を標的とする治療薬に対して抵抗性であり得る(Hynes et al.(2005)Nature Reviews Cancer 5:341−354)。HERファミリーメンバーの同時の共発現はまた、サバイビン(survivin)(抗アポトーシス因子;Xia et al.,(2006)Oncogene 24:6213−6221)の誘導、ならびに、腫瘍の進行において重要な別の増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子;VEGF)の産生の媒介をもたらす。
任意の特定のHER指向性治療薬に対する耐性は、しばしば、他のHERファミリーメンバーの発現によって、または、関連するレセプターチロシンキナーゼ(例えば、IGF1R、VEGFR、FGFRなど)の発現によって媒介されると、本明細書において結論付けられる。例えば、IGF−1Rは、HER2とのヘテロ二量体化を介して、Herceptin(登録商標)(Trastuzimab)の活性を直接阻害する(Nahta et al.(2006)Cancer Lett.8:123−38)。
共過剰発現に加え、任意の特定のHERファミリーメンバーの過剰発現の頻度は、癌間で多様である。HERファミリーのうち最も一般に過剰発現されるのは、HER1およびHER3であり、最も一般に過剰発現されないメンバーはHER4であることが本明細書において見出される。TGF−αは、最も一般に発現されるリガンドである。以下の表は、確立された疾患の徴候と、推定されるHERファミリーメンバーの過剰発現頻度の寄与(文献の情報源から決定;全てのデータは、免疫組織化学に基づく)とを提供する:
代替のHERファミリーメンバーの代償性のアップレギュレーションによる応答の欠如または耐性の発現をもたらす、HERファミリーメンバーの共発現は、処置のための目標を生み出す。異なるHERファミリーメンバーが腫瘍の発生と進行に対して、部分的に重なり合う相乗作用性の様式で寄与するという観察が、本明細書において認識され、そして、耐性の問題を回避するように設計され得、かつ、腫瘍におけるレセプター発現に基づいて特定の腫瘍について設計され得る治療薬を提供するために、本明細書において利用される。本明細書において提供される治療薬および候補治療薬は、少なくとも1以上の細胞表面レセプター、代表的には2以上の細胞表面レセプター(例えば、複数のHERファミリーメンバー、ならびに/または、HERファミリーメンバーと、単一の細胞表面レセプターに対して標的化された薬物に対する耐性に関与する任意の他の細胞表面レセプターと)を標的とすることによって、本明細書において同定される問題およびその他の問題を含むこれらの問題に対処する。
HERファミリーメンバーならびに他の細胞表面レセプターの構造、機能および相互作用に基づいて、標的化および介入のための多数の治療効果のある遺伝子座が本明細書中に提供される。これらとしては、リガンド結合に関与するレセプターの領域、レセプター二量体化に関与する領域、および、係留に関与する領域が挙げられる。これらの領域は、1つの治療薬が2以上のレセプターのリガンド結合および/またはレセプター二量体化と干渉するように、複数のレセプターにおいて同時に標的化され得る。いくつかのアプローチと候補治療薬分子とが本明細書中に提供される。
二量体化、リガンド結合および/または係留を担うドメインを含むレセプターの領域を標的化するための方法が提供される。特に、レセプター二量体化は、複数のレセプターと相互作用する治療薬によってブロックされる。これらの治療薬としては、本明細書において提供され、そして、以下に詳細に説明されるヘテロ多量体が挙げられる。
また、標的化領域と相互作用する治療薬を産生するための方法が提供される。例えば、サブドメインIIおよびIVは、レセプター二量体化と干渉するため、そして/または、係留を安定化もしくは促進するために標的化される。これらの方法の第一の工程として、DIIおよびDIVの相同性領域に対して特異的に結合するペプチドが、ファージディスプレイの選択などによって、それぞれ同定される。その後、DIIおよびDIVに結合する高親和性の適切なペプチドペアが同定され、そして、ヘテロ二量体が、化学合成またはPEG化のような利用可能な方法のうちの1つを用いて構築される。DIIおよびDIVに同時に結合することが同定された高親和性のヘテロ二量体ペプチドは、その自己阻害性の(autoinhibited)立体配置においてレセプターをしっかりと保持し得る。さらに、選択されるペプチド結合因子は、HERファミリーレセプターのドメインIIおよびドメインIVにおける相同な領域を標的とし得る。この方法を用いて標的化されるペプチドは、係留された不活性なHERファミリーメンバー内のドメイン間領域(例えば、DII/IVの相互作用を安定化させる)を架橋し得るか;または、例えば、単一のレセプターのDII上にある別個の部位に結合し、それによって、その二量体化する能力を立体的に阻害し得る。
複数のリガンドに結合する治療薬でリガンドを標的化するための方法もまた提供される。レセプターリガンドは、そのリガンドに結合する分子を同定するためにスクリーニングされ得る。2以上のこのような分子を含むヘテロ多量体が産生され得る。
レセプターの係留された立体配座を安定化させるための方法が提供される。HER1、3および4は、係留された形態および開いた形態で存在する。係留は、サブドメインIIおよびIVが相互作用するときに形成される。この形態では、(DIIにおける)重要な二量体化アームは、他のレセプターと相互作用できず、したがって、二量体またはヘテロ二量体を形成できない。細胞表面上のHERレセプターは、構成的に「二量体化の準備ができている」ものと提唱されているHER2を除いて、(リガンドで刺激された場合でさえも)細胞上にある時間の約95%が係留された形態で生じるものと推定される。レセプターが開いた立体配置を取ることができないような、レセプターの係留された形態の安定化は、レセプターの活性を阻害する。
したがって、上記の考慮すべき事項および問題のうち1つまたは全てに対処する治療薬および方法が、本明細書において提供される。複数のレセプター、特に、HERファミリーのメンバーを標的とする治療薬が本明細書において提供される。具体的には、汎HER治療薬を含む汎細胞表面レセプター治療薬、このような治療薬の作製方法、ならびに、レセプターのHERファミリーおよびそのリガンドが関与する疾患および障害の処置のためのこのような治療薬の使用方法が、本明細書において提供される。また、汎Her治療薬候補分子を同定するための方法およびそのためのスクリーニングアッセイ方法も提供される。このような方法は、Jの節および実施例において、本明細書中に記載される。
いくつかの実施形態では、汎細胞表面レセプター特異的な治療薬は、2以上のレセプターの活性を調節する(一般には、阻害する)ために、1以上のレセプターのリガンドと相互作用するか、そして/または、1以上のレセプターと相互作用するように設計される。これは、少なくとも1つのHERと、別のRTKもしくは他のCSR(HERファミリーのメンバーであってもそうでなくてもよい)とに由来する2以上のECDまたはそのフラグメントのヘテロ多量体を形成することによって達成される。特に、ECDのうち少なくとも一方は、HERレセプターに由来し、そして、リガンド結合および細胞表面レセプターとの二量体化を可能にするために、少なくともドメインI、IIおよびIIIの一部分を含む。ヘテロ多量体は、代表的には、二量体化ドメインが細胞表面レセプターとの相互作用のために位置決めされるように連結される。代表的には、ECDは、2以上のECDSの二量体化または多量体化を容易にする多量体化ドメインを含み得る。ECDSには、2以上の異なるレセプターに由来するドメインを含むハイブリッドECDが含まれる。
ヘテロ多量体におけるECDのうち少なくとも1つは、そのヘテロ多量体が、少なくとも2つの細胞表面レセプターの活性を調節するように、ドメインI〜IIIの十分な部分と、必要に応じて、ドメインIVの十分な部分とを含む。この少なくとも2つの細胞表面レセプターは、一般に、少なくとも1つのHERレセプターファミリーメンバーを含む。
2つの異なるHERファミリーメンバーに由来する少なくとも2つのECDまたはその一部分を含む汎Her治療薬は、例えば、HerceptinおよびErbituxと同様にレセプターの細胞外ドメイン部分を結合させることによって、そして/または、1以上のレセプターを活性化するリガンドを結合させることによって、HERファミリーの2以上のメンバーの活性をブロックし得る。汎Her治療薬は、HERレセプターである少なくとも1つの細胞表面レセプターを含む、2以上の細胞表面レセプターの活性を調節する。
また、2以上のECDSが同じHERレセプターに由来するような多量体も提供される。しかし、このような多量体の二量体において、ECDSは、異なるECD部分を含む。
以下の節は、例示的な治療薬、これらの作製方法、これらのスクリーニング方法およびこれらの使用方法を説明する。
C.HERレセプターおよび他の細胞表面レセプターの構造および活性
レセプターのHERファミリーのメンバーを含む異なる細胞表面レセプターに由来するECDを含む多量体が、本明細書において提供される。多量体は、多量体化ドメインに連結された、レセプタードメインとサブドメインとの組合せを含む。本明細書中に提供されるようなECD多量体を設計するためには、レセプターの構造および機能の理解が有益である。本節は、このような説明を提供する。
レセプターチロシンキナーゼは、胚形成、細胞の増殖および分化、ならびに、いくつかの疾患(癌、自己免疫障害および他の慢性ヒト疾患のような多様な疾患を含む)の過程に関与する細胞シグナル伝達分子の大きなファミリーである(Hynes and Lane(2005)Nat Rev Cancer 5:341−54において概説される)。これらのうち最も特徴付けられたものは、レセプターチロシンキナーゼのヒトEGFレセプターファミリー(HER)である。これらは、クラスIのレセプターと呼ばれる。レセプターのHERファミリーは、レセプターチロシンキナーゼ(RTK)ファミリーに属し、そして、タンパク質チロシンキナーゼ活性を有する(HER3を除く;概略については、例えば、Jorissen et al.(2003)Exptl.Cell Res.284:31−53;Dawson et al.(2005)Mol.Cell Biol.25:7734−7742(本明細書において使用される命名法を示す);およびBazley et al.(2005)Endocrine−Related Cancer 12:S17−S27を参照のこと)。HERファミリーメンバーをコードする4つのレセプター遺伝子が存在する:HER1(EGFRまたはErbB1)、HER2(またはc−erbB−2またはErbB2またはNEU)、HER3(c−erbB3またはErbB3)およびHER4(c−erbB4またはErbB4)。コードする遺伝子は選択的スプライシングを受けて、短縮型改変体、およびイントロン融合タンパク質である改変体を含む、多数の改変体を生成し得る。これらのレセプターのいくつかは、必要不可欠な活動である、正常な発生、分化、遊走、創傷治癒およびアポトーシスにおいて役割を担う。異常な機能および活性は、癌を含む種々の疾患状態において役割を果たす。
例示的なヒトHERファミリーレセプターの配列は、配列番号2(HER1)、配列番号4(HER2)、配列番号6(HER3)および配列番号8(HER4)に示され、そして、それぞれ、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。代表的には、コードされるHERポリペプチドは、翻訳後プロセシングを受けて、シグナル配列を欠く成熟なポリペプチドを生じる。成熟な全長ポリペプチドのアミノ酸配列を、図2(A)〜(D)およびそれぞれの図の凡例に描写および記載する。本明細書における目的では、例示的なHERファミリーレセプター、そのECD部分またはECDアイソフォームを説明する際のアミノ酸の番号付けは、他のやり方で特定されない限り、成熟なポリペプチドの番号付けに関するものである。さらに、ドメイン構成を説明するために使用されるアミノ酸の位置は、例示的な目的のためのものであり、そして、提供される実施形態の範囲を制限することは意図されない。ポリペプチドおよびそのドメインの説明は、同様のレセプターとの相同性解析およびアラインメントに基づき、理論的に導かれたものであることが理解される。したがって、実際の遺伝子座は多様であり得、そして、各レセプターについて同じであるとは限らない。
図1に示されるように、HERファミリーの各メンバーは、約620アミノ酸の細胞外ドメイン部分(ECDまたは外部ドメインまたは細胞外ドメイン)と、膜貫通ドメインと、細胞質チロシンキナーゼドメインとを含む共通のドメイン構成を共有する。ECD部分は、I(L1)、II(S1)、III(L2)およびIV(S2)で指定される4つのサブドメインを示す。全長HERファミリー間の配列同一性は、HER1(EGFR)とHER3についての37%から、HER1とHER2についての49%まで変化し、各ドメイン間に、種々の程度の配列同一性がある。例えば、チロシンキナーゼドメインは、最も高い配列同一性(約59〜81%)を有し、そして、カルボキシ末端ドメインは、最も低い同一性(約12〜31%)を有する。ECDドメイン内では、サブドメインIおよびIIIが、約37%の配列同一性を共有し、そして、ドメインIIおよびIVは相同であり、かつ、約17%の配列同一性を共有する(Ferguson et al.(2003)Mol.Cell,11:507−517)。
サブドメインIおよびIIIはまた、Lドメインとも呼ばれ、二葉の(bilobal)リガンド結合部位を構成する。Lドメインは各々、両端がαヘリックスでキャップされたバレル様構造を形成する、6つのターンの一本鎖の右回転のβ−ヘリックスを含む。リガンドは、L1ドメインとL2ドメインとの間を結合する。
サブドメインIIおよびIVはまた、Sドメインまたはシステインリッチ(CR)ドメインとも呼ばれ(また、フリン様リピートドメインとも呼ばれる)、そして、システインリッチな領域を構成する。このCysリッチな領域は、ロッド形状の構造を形成する小さなジスルフィド結合モジュールの連続から構成される。各ドメインには、2つのタイプのジスルフィド結合した分子が見られる:単一のジスルフィド結合が介在する弓様ループを拘束するC1ジスルフィド結合、および、2つのジスルフィド結合が、Cys1−Cys3およびCys2−Cys4のパターンで4つの連続したシステインを連結して、結び目様の構造を与えるC2ジスルフィド結合(Ferguson et al.,(2003)Molecular Cell 11:507−517)。ドメインIIは、3つの連続したC2モジュールとその後に続く5つのC1モジュールを含むが、ドメインIVは、7つのモジュール(最初の2つはC1モジュールであり、その後、1つのC2モジュールと、2つのC1モジュールおよびもう1つのC2モジュールが続く)を含む。
一般に、ドメインIIおよびIVは、HER構造の分子内および分子間の両方の接触を媒介する。例えば、分子内相互作用は、「係留」と呼ばれるプロセスにおいて、サブドメインIとIVとの間で生じ、ここで、第5のCysリッチモジュールからβ−ループが突出している(図1を参照のこと)。このループは、ドメインIVにおけるモジュール5およびモジュール6からの等価ではあるがより小さなループと相互作用する。ドメインIIおよびIVの相互作用はさらに、2つの領域間の水素結合によって、ならびに、糖質の寄与によって安定化される。さらに、HER1のドメインII内のY246に対応するアミノ酸残基の側鎖は、ドメインIV内のD563およびK585に対応するアミノ酸残基の側鎖と水素結合を形成する。ドメインII/IV間の接触を媒介する際に重要な、成熟なHERファミリーレセプターのECDにおける対応するアミノ酸残基は、表5に示される。ドメインIIとIVとの間の相互作用は、HER2においては存在しない。これは、一部分は、他のHERファミリーメンバーと比較した場合の、保存されていないアミノ酸残基(すなわち、表5における斜体の残基)の存在に起因するものである。
分子間相互作用もまた生じ、そして、活性なHERレセプターのホモ二量体化およびヘテロ二量体化の特徴に必須の、レセプター−レセプター相互作用を可能にする。実際、係留を媒介する上記ドメインIIのモジュール5内の同じループはまた、二量体化も担う。このループはしばしば、「二量体化アーム」と呼ばれる。Y246に対応するアミノ酸残基はまた、二量体化のために必要とされる分子間相互作用の促進においても重要である。
HERファミリーレセプターはさらに、膜貫通(TM)ドメイン(残基621、622もしくは626〜644もしくは647において開始するものとして種々に報告されている)および細胞質ドメインを含む。膜貫通ドメインは、レセプターを固定する原形質膜に跨り、そして、一般には、疎水性残基を含む。代表的には、膜貫通ドメインを構成する残基は、α−へリッスを形成する。
膜貫通ドメインとキナーゼドメインとの間に位置する領域である膜近傍(JM)ドメインは、例えば、ダウンレギュレーションおよびリガンド依存性の内在化事象のような種々の調節性機能、例えば分極した細胞におけるEGFRのような側底膜での選別(basolateral sorting)、ならびに、eps8およびカルモジュリンのようなタンパク質との会合の機能を果たす。さらに、JMドメインは、レセプターの細胞内輸送においても役割を担い、そして、EGFRを小窩に対して標的化するために(膜貫通ドメインと共に)必要とされる。
チロシンキナーゼドメインは、レセプターチロシンキナーゼ(RTK)に共通する保存された触媒性コアであり、そして、カルボキシ末端ドメインに存在するカルボキシ末端チロシン残基のリン酸基転移の媒介を担う。チロシンキナーゼドメインの活性化は、リガンドがレセプターに結合する際に誘導される立体配座の変化の際に生じる。
カルボキシ末端(CT)ドメインは、チロシン残基を含み、ここで、リン酸化がシグナル伝達を調節する。このチロシン残基と、各HERファミリーメンバーのすぐ近くのアミノ酸とは、多様なセカンドメッセンジャーと相互作用して、特定の生物学的応答および生化学的応答を調節する。例えば、例えばSH2(srcホモロジー−2)構造またはPTBドメインを含むセカンドメッセンジャーは、リン酸化の「ドッキング部位」を認識し、そして、レセプターと相互作用して、他のシグナル伝達の構成要素との相互作用を介して、レセプターが受け取ったシグナルを細胞質または核のいずれかに伝達する。また、そのリン酸化がレセプターのダウンレギュレーションおよびエンドサイトーシスのプロセスに影響を及ぼす、いくつかのセリン/スレオニン残基が存在する。EGFRのC末端の残基984〜996(図1)は、アクチンのための結合部位として機能し、そして、キナーゼドメインのリガンドによる活性化の後に、より高次のレセプター低重合体の形成および/またはレセプターのクラスター化に関与する。
1.HER1 ECDの構造およびドメイン構成
全長の成熟なHER1 ECDおよび種々のHER1 ECDアイソフォームのドメイン構成は、図2(A)に示される。HER1の細胞外部分は、成熟なHER1レセプターの残基1〜621を含み、そして、サブドメインI(アミノ酸残基1〜165)、サブドメインII(アミノ酸残基166〜313)、サブドメインIII(アミノ酸残基314〜481)およびサブドメインIV(アミノ酸残基482〜621)を含む。HER1のドメインI、IIおよびIIIは、I型インシュリン様増殖因子レセプター(IGF−1R、例えば、Garret et al.,(2002)Cell,110:763−773を参照のこと)の最初の3つのドメインに対して、構造的相同性および配列相同性を有する。IGF−1Rと同様に、Lドメイン(すなわち、ドメインIおよびIII)は、ヘリックスによって両端がキャップされた6つのターンβヘリックスの構造とジスルフィド結合とを有する。IGF−1Rと比較すると、HER1配列は、HER1によるリガンド結合の媒介に重要な生化学構造に寄与するアミノ酸挿入を含む。これらには、ドメインIの大きなβシートの上に位置して、リガンド結合界面の主要な部分を形成するV字型の可動域(残基8〜18)が含まれる。ドメインIIIにおいて、対応する領域は、リガンド結合にも関与するループ(残基316〜326)を形成する。ドメインIIIに存在する第三の挿入領域(残基351〜369)は、ドメインIIIの第二のターン内の臨時のループである。このループは、リガンド結合を妨害する種々の抗体に対するエピトープである(すなわち、LA22、LA58およびLA90、例えば、Wu et al.,(1989)J Biol Chem.,264:17469−17475を参照のこと)。さらに、βヘリックスソレノイドの第四のターンにおける他のループが、リガンド結合に関与する。
HER1に対するリガンドであるTGF−αは、1つのレセプター分子のLドメインIおよびIIIの両方の大きなβシートと相互作用する。同様に、リガンドEGFもまた、HER1のドメインIおよびIIIの両方と相互作用するが、EGFのドメインIIIとの相互作用が、EGFのための主要な結合部位であると考えられる(Kim et al.,(2002)FEBS,269:2323−2329)。架橋の研究により、EGFリガンドのN末端部分およびC末端部分が、それぞれ、HER1レセプターのそれぞれドメインIおよびIIIと相互作用することが決定された。成熟な全長HER1に対応するドメインIII内のアミノ酸Gly441は、ヒトEGFのArg45との相互作用を介して、EGFへの結合の媒介に関与する。202アミノ酸のHER1の40kDaフラグメント(成熟HER1ポリペプチドのアミノ酸302〜503に対応)は、HER1のEGFに対する完全なリガンド結合能を保持するのに十分である。この202アミノ酸部分は、ドメインIIIの全体と、ドメインIIおよびドメインIVの各々の数残基のみとを含む(Kohda et al.,(1993)JBC 268:1976)。
EGFRのドメインIIは、8つのジスルフィド結合したモジュールを含む。ドメインIIは、ドメインIおよびIIIの両方と相互作用する。ドメインIIIとの接触は、モジュール6および7を介して生じるが、モジュール7および8は、ある程度の柔軟性を持ち、それによって、EGFR分子のリガンドを含まない形態においてヒンジを生じるように機能する。高次のループが、ドメインIIのモジュール5から形成され、そして、リガンド結合部位から離れる方向に突出する。このループは、残基240〜260(残基242〜259とも記載される)に対応し、そして、アンチパラレルなβ−リボンを含む。このループ(二量体化アームとも呼ばれる)は、分子内相互作用の媒介ならびにレセプター−レセプター接触の媒介において重要である。HER1の不活性型すなわち「係留型」の立体配座において、ループは、成熟な全長ECDの、それぞれアミノ酸561〜569および572〜585に対応する、モジュール5および6内の類似のループ構造の間に挿入することによって、分子内相互作用に寄与する(図1に参照のこと)。ドメインII/IVの相互作用に寄与するアミノ酸残基は、上記の表5に示される。
ドメインIIのループの欠失は、HER1 ECDの二量体化の能力を無効にし、したがって、分子間相互作用の促進におけるその重要性を示す。二量体化は、ドメインI、IIおよびIIIの間の空間において、第二のHER分子のドメインIIを横切って外に延びるループの突出によって媒介される。例えば、接触は、二量体化アームの残基244〜253と、第二のHER分子内のドメインIIの凹面上にある残基229〜239、262〜278および282〜288とによってなされる。ドメインII内のTyr246は、第二のHER分子内のGly264およびCys283と水素結合を形成し、そして、Tyr246のフェニル環もまた、隣接分子のSer262およびSer282と相互作用する。EGFRのドメインIIと別のHER分子との間での他のアミノ酸接触としては、Tyr251のPhe263、Gly264、Tyr275およびArg285との接触;Pro248のPhe230およびAla265との接触;Met253のThr278との接触;ならびにTyr251のArg285との接触が挙げられる。さらに、Asn247およびAsn256が、ループを適切な立体配座に維持するのに重要である。これらの残基のほぼ全ては、HERファミリーメンバー間で保存されており、そして、HERファミリーレセプター間で同様に機能する。さらに、プロリン残基が、位置243、248、255および257のいずれか1つにおいて、HERファミリーレセプターのループ内に存在し、そして、HER3は3つのプロリンを含む。プロリン残基は、ループの立体配座をさらに安定化させる。例えば、HER1は、位置248および257にプロリンを含む。
不活性なHER1分子の係留におけるドメインIV(モジュール5および6)の関与に加えて、HER1のドメインIVのモジュール1の少なくとも一部分がまた、活性なHER1分子の構造的な完全性を維持するために必要とされるようである。例えば、上述のように、ドメインIIIの全体と、ドメインIIおよびIVの一部分とを含むHER1の40kDaのタンパク質分解性フラグメントは、完全なリガンド結合能を保持する。この分子中に存在するドメインIVの部分は、アミノ酸482〜503に対応し、モジュール1の全体を含む。成熟なHER1分子におけるTrp492に対応するアミノ酸は、ドメインIII内の疎水性ポケットと相互作用することによって、HER1分子の安定性の維持において役割を担う。ドメインI、IIおよびIIIの全体を含むが、ドメインIVの全体を欠くHER1の組換え分子(成熟HER1のアミノ酸1〜476に対応、例えば、Elleman et al.,(2001)Biochemistry 40:8930−8939を参照のこと)は、リガンドに結合できない。したがって、少なくともドメインIVのモジュール1の全体もしくは一部分が、HER1のリガンド結合能に必要とされるようである。ドメインIVの残りは、リガンド結合およびシグナル伝達には不要である。例えば、HER1の正常なリガンド結合およびシグナル伝達特性が、成熟なHER1ポリペプチドの残基521〜603を欠くHER1分子に存在する。
2.HER2 ECDの構造およびドメイン構成
全長の成熟なHER2 ECDおよび種々のHER2 ECDアイソフォームのドメイン構成は、図2(B)に示される。HER2の細胞外部分は、成熟なHER2レセプターの残基1〜628を含み、そして、サブドメインI(アミノ酸残基1〜172)、サブドメインII(アミノ酸残基173〜319)、サブドメインIII(アミノ酸残基320〜488)およびサブドメインIV(アミノ酸残基489〜628)を含む。同様のドメイン構成を有するにも関わらず、HER2の結晶構造解析は、HER2が、他のHERファミリーメンバーの「係留型」の不活性な構造の特徴である、同じ分子内相互作用を有さないことを示している。換言すると、ドメインIIのモジュール5内のループは、ドメインIVの残基と相互作用しない。上の表5は、HERファミリーレセプターの中で、ドメインII/IV間の接触を媒介するアミノ酸を示しており、そして、HER2において保存されていないアミノ酸を示す。例えば、HER1、HER3およびHER4のそれぞれ位置564、563および561において保存されるGly残基は、HER2においてプロリンで置き換えられる。このプロリン残基は、他のHERファミリーレセプターの中で観察される相互作用を立体的に阻害する(すなわち、Gly残基は、対応するHER3のアミノ酸Phe251と相互作用する)。結果として、配列の相違に起因して、HER2は、「係留型」の不活性な状態では存在しないが、構成的に活性な立体配座で存在し、そして、そのドメインII内の二量体化アームが露出されている。
ドメインIIの二量体化アームは、HERファミリーレセプター間で33〜44%のみの配列相同性を有するが、機能的には、HER2を含む全HERファミリーレセプター間できわめて保存されている。HER2において、この二量体化アームは、成熟なHER2のアミノ酸残基246〜267に対応する。HER2は、常に、活性な非係留型の立体配座で存在し、その二量体化アームが露出されているので、HER2は、他のHERファミリーメンバーのための好ましいヘテロ二量体化パートナーである。しかし、HER2は、ホモ二量体は形成しない。ホモ二量体を形成できないことは、静電的反発作用に起因するもののようである。なぜならば、HER2の二量体化アームと、HER2においてこの二量体化アームが接触するポケットとは、共に電気陰性だからである。HER2の高い電気陰性度は、他のHERファミリーメンバーと比較して、HER2における酸性残基および塩基性残基の数が多いことによって説明され得る。しかし、HER2が細胞において過剰発現されているとき、HEr2は、ホモ二量体化し得る。過剰発現の際に観察されるホモ二量体化には、特に、レセプターの過剰発現の際に観察されるリガンド非依存性の多量体化について、HER2のカルボキシ末端ドメインにおける疎水性領域が関与している(Garret et al.(2003)Mol.Cell,11;495−505)。
さらに、他のHERファミリーレセプターとは異なり、HER2は、リガンドに結合しない。このリガンドに結合できないことについての1つの理由は、リガンド結合ドメインIおよびIIIの近接性と相対的な配向とである。HER2において、対向するドメインIおよびIIIは、互いに実質的に直接接触する。この立体配座では、各結合部位が対向するリガンド結合ドメインによって占有されているので、リガンドは、いかなる潜在的な結合部位にも結合できない(Garret et al.,(2003)Molecular Cell,11:495−505)。さらに、他のHERファミリーメンバーと比較して、HER2は、ドメインIおよびIIIのリガンド結合界面における配列の相違を含み、これがリガンドの相互作用を阻害し得る。例えば、Arg12(HER1におけるThr15、HER3におけるSer18およびHER4におけるSer12に対応する)およびPro14(HER1におけるLeu17、HER3におけるThr20およびHER4におけるLeu14に対応する)が、他のHERファミリーメンバーにおける等価な位置の対応する残基と異なる。これらの残基は、リガンドを含む拡張されたβシートを形成するV字型の可動域の一部であり、そして、HER2のリガンドに結合する能力と干渉する。ドメインIおよびIIIにおける他の配列の相違もまた、HER2がリガンドに結合できないことを説明する。
3.HER3 ECDの構造およびドメイン構成
全長の成熟なHER3 ECDおよび種々のHER3 ECDアイソフォームのドメイン構成は、図2(C)に示される。HER3の細胞外部分は、成熟なHER3レセプターの残基1〜621を含み、そして、サブドメインI(アミノ酸残基1〜166)、サブドメインII(アミノ酸残基167〜311)、サブドメインIII(アミノ酸残基312〜480)およびサブドメインIV(アミノ酸残基481〜621)を含む。他のHERファミリーレセプターと同様に、HER3のドメインI、IIおよびIIIの構造は、IGF−1Rと重ね合わせられ得、そして、他のHERレセプターと同じ構造的特徴の多くを示し得る。例えば、HER3のドメインIおよびIIIは、ジスルフィドを含むモジュールの張り出したリピートによって割り込まれるβ−ヘリックス構造を示す。ドメインIIとIIIとの間には、IGF−1Rには示されない高い程度のドメイン間の柔軟性が存在する。さらに、HER3は、ドメインII(HER3のアミノ酸242〜259に対応)内に特徴的なβ−ヘアピンループすなわち二量体化アームを示す。このβ−ヘアピンループは、ドメインIVにおいて保存された残基との分子内接触を提供し、閉じた、すなわち不活性型のHER3の構造をもたらす。この係留相互作用において重要な残基は、上の表5に示し、そして、YH246のD562およびK583との相互作用、F251のG563との相互作用、ならびに、Q252のH565との相互作用が含まれる。リガンドが結合すると、立体配座の変化が、ドメインIおよびIIIを新たに方向付けして、係留型の構造から二量体化アームを露出して、レセプターの二量体化を可能にする。
他のHERファミリーレセプターとは異なり、HER3は、機能的なキナーゼドメインを有さない。他のプロテインチロシンキナーゼの中では保存されているキナーゼ領域内の4つのアミノ酸残基の変更が、HER3のキナーゼを機能不全にしている。しかし、HER3は、そのカルボキシ末端ドメイン内にチロシン残基を保持し、そして、適切な活性化およびリン酸基転移を受けると、細胞のシグナル伝達を誘導し得る。このように、HER3のホモ二量体は、直線的なシグナル伝達は支援し得ない。HER3の優先的な二量体化パートナーは、HER2である。
4.HER4 ECDの構造およびドメイン構成
種々のHER4 ECDアイソフォームの全長のHER4 ECDアイソフォームのドメイン構成は、図2(D)に示される。HER4の細胞外部分は、成熟なHER4レセプターの残基1〜625を含み、そして、サブドメインI(アミノ酸残基1〜163)、サブドメインII(アミノ酸残基164〜308)、サブドメインIII(アミノ酸残基309〜477)およびサブドメインIV(アミノ酸残基478〜625)を含む。HER4は、HER1、HER4が共に、リガンドに結合し、そして、キナーゼ活性を示し得るという点で、最もよくHER1に似ている。係留および二量体化の両方に重要な二量体化アームの存在を含めたドメイン構成が、HER4に存在する。上の表5は、HER4を不活性な状態に固定する、ドメインIIおよびIV内の保存された残基を略述する。HER1における対応する二量体化アームは、HER4のアミノ酸残基237〜258に対応する。リガンド結合ドメインIおよびIIIのうち、ドメインIが、リガンドニューレグリン(NRG)のHER4への結合を担う主なドメインである。HER4のドメインIは、NRGのN末端残基を認識する(Kim et al.,(2002)Eur.J.Biochem 269:2323−2329)。
全長HER4レセプターは、4つの選択的スプライシングを受けたアイソフォームとして発現される。選択的スプライシングを受けたアイソフォームのうち2つは、細胞質テイル内が異なり(すなわち、CYT−1およびCYT−2)、そして、別の2つは、膜近傍領域内が異なる(すなわち、JM−aおよびJM−b)。選択的スプライシングの結果、異なるシグナル伝達能を持つアイソフォームが生じる。例えば、CYT−1アイソフォームは、CYT−2アイソフォーム内には存在しないシグナル伝達分子のための追加ドッキング部位(すなわち、SH2)を含む追加のエキソンを含む。さらに、JMアイソフォームは、例えば、腫瘍壊死因子−α変換酵素(TACE)などによる、プロテイナーゼ切断に対する感受性が異なる。
5.HERファミリーのリガンド、リガンド特異性およびリガンド媒介性のレセプター活性化
レセプターのErbB(HER)ファミリーメンバーの活性は、触媒活性をもたらし、最終的にはシグナル伝達を生じる、二量体化のためのリガンド結合を必要とする。各々がレセプターのEGFファミリーに属する、いくつかのHER特異的なリガンドが存在する(例えば、表6を参照のこと)。EGFリガンドは全て、6つのシステインを持つ45〜55アミノ酸のモチーフであるEGF様ドメインを有し、このシステインが相互作用して、ジスルフィド結合で共有結合された3つのループを形成する。この領域は、HERリガンドの結合特異性を与えるのに重要である。EGFリガンドにおけるさらなる構造モチーフとしては、免疫グロブリン様ドメイン、ヘパリン結合部位、およびグリコシル化部位が挙げられる。一般に、リガンドは最初に、溶液中で活性を獲得するため、そして/または、細胞表面HERタンパク質に結合するためにタンパク質分解による切断を必要とする、膜固定型タンパク質として発現される。この切断を必要とすることが、リガンドの利用能およびレセプターの活性化を制御するために機能する。EGFリガンドの放出に関与するプロテアーゼとしては、例えば、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAM)ファミリーを含むメタロプロテイナーゼファミリー、ならびに、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーからのものが挙げられる。Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の活性化は、EGFリガンドの産生を調節する。癌において、GPCRのシグナル伝達の調節異常および腫瘍におけるEGFリガンドの普及は、HERレセプターの構成的な活性化と関連する。
表6は、これらのリガンドの中でも、最も周知でありかつ特徴付けられているリガンドと、そのレセプター特異性とを列挙する。リガンドは、そのレセプターの選択性に基づいて、3つの群に分けられる(以下の表において群1〜3として略述される)。他のファミリーメンバーの各々とヘテロ二量体化するHER2に結合するリガンドはない。以下の表において、サイトカインのニューレグリン(NRG)ファミリーの代替名としては、Neu分化因子、NDFまたはヘレグリン(heregulin)(HRG)が挙げられる。リガンドのニューレグリン/ヘレグリンファミリーは、選択的にスプライシングを受けたNRG−1、NRG−2、NRG−3またはNRG−4遺伝子に由来する、構造的に関連する増殖因子である。例えば、NRG−1遺伝子に由来するものには、少なくとも14の可溶性で膜貫通型タンパク質アイソフォームが存在する。膜貫通型NRG−1アイソフォームの細胞外ドメインのタンパク質分解によるプロセシングは、可溶性の増殖因子を放出する。HRG−1βは、これらのうちの1つであり、そして、HER3およびHER4に直接結合するために必要なIgドメインおよびEGF様ドメインを含む。ヘレグリンβのEGFのみを含む組換えヒトHRG−1βは、HERレセプターに結合し、HERレセプターを活性化するのに十分である。NRG−1遺伝子の別のアイソフォームは、HRG1−αである。HRGαの結合親和性は、HER3およびHER4に対するHRGβの結合親和性よりも100倍弱い(Jones et al.(1999)FEBS Letters,447:227−231)。NRG2−αおよびNRG2−βと呼ばれる少なくとも2つのNRG−2のアイソフォームが存在する。NRG2αおよびNRG2βは共に、HER3のアゴニストであり、HER3のシグナル伝達を刺激する。NRG2βはまた、HER4のアゴニストでもあるが、NRG2αは、HER4のチロシンリン酸化またはシグナル伝達を強力に刺激するものではない。NRG−3およびNRG−4には、他に報告されるアイソフォームはない。
15を優に超える、HERファミリーメンバーに結合し得る異なるEGFリガンドが存在するので、HERファミリーのシグナル伝達の制御および調節は複雑である。この複雑なシグナル伝達の系を調節する因子の中には、レセプターリガンドの組織特異的な発現が挙げられる。例えば、NRGは、実質器官において優先的に発現され、そして、胚の中枢神経系および末梢神経系において発現される。さらに、リガンドは代表的には単量体レセプターに結合し得るが、これらは、単量体レセプターを活性化できない。代わりに、レセプターの二量体形成、そして、最終的にはHERにより媒介される活性化およびシグナル伝達は、単量体レセプターと比べてより高い、2つのHERレセプターとリガンドとの複合体の安定性によって駆動される。単量体レセプターへのリガンド結合は、単量体レセプターの立体配座変化を媒介して、レセプターのホモ二量体化またはヘテロ二量体化を可能にする(以下を参照のこと)だけではなく、一旦二量体レセプターが形成されると、リガンドはまた、二量体レセプターを安定化させる。したがって、種々の二量体ペアは活性化のために、レセプターの濃度ならびにリガンドの濃度に依存する。したがって、HERの活性化は、そのリガンドの空間的および時間的な発現によって制御される。
6.二量体化 対 係留ならびに活性なホモ二量体およびヘテロ二量体の作製
HERファミリーレセプターの活性化を支配する機構は、リガンド結合と、レセプターにおける立体配座の変化の誘導とに頼る。代表的には、HERレセプターの不活性形態と活性形態との間には平衡が存在する。少なくともHER1の場合、およそ95%が係留型形態すなわち不活性な形態で細胞表面上に存在し;そして、わずか5%が、活性な形態である。
結合したリガンドがない場合、単量体レセプターにおいて、ドメインII内の二量体化アームは、同じ分子内のサブドメインIVとの相互作用によって、分子内で係留されて隠され、それによって、レセプターを自己阻害する。したがって、通常は、HER2を除く全てのHERレセプターは、不活性型すなわち「係留型」の立体配座をとる。係留型の立体配座は、レセプターの閉じた構造であり、レセプターの他のHERファミリーメンバーとの相互作用を妨げる。通常は、この立体配座において、リガンド結合ドメインIおよびIIIは、間隔を空けて保持される。このことは、HER2を除く全てのHERファミリーレセプターに当てはまる。HER2については、単量体レセプターとしてであってさえ、ドメインIおよびIIIは構造的に互いに閉じており、そして、この領域へのリガンドの結合を立体的に阻害する。結果として、HER2は、リガンドに結合できず、そして常に、その二量体化アームが露出され、かつ、別のHERファミリーレセプターとの二量体化を促進する準備ができた状態である。
リガンドにより誘導される、HERレセプター分子の二量体化は、レセプターの活性化を誘導し、そして、レセプターのHERファミリーの通常の下流のシグナル伝達機構を提供する。活性化されたリガンドは、ドメインIおよび/またはIIIと相互作用し、ECDの再配列を促進し、そして、係留型の立体配座の開放と、二量体化アームの露出とをもたらす。結合したリガンドは、ドメインIおよびIIIの相対的な位置を固定して、これらを強制的に回転させる(HER1の場合、約130°)。この再配置は、分子内のドメインII/IV連結もしくは係留を崩壊させ、そして、二量体化アームを解放させ、その結果、二量体化アームが分子間相互作用に関与することが可能となる。このことが、レセプターの「開いた」すなわち活性な立体配座をもたらし、そして、この分子を、他のHERファミリーメンバーとの二量体化能を有するようにする。HER2は、単量体としてでさえ、常に開いた立体配座をとる。したがって、リガンドが存在しない場合でさえも、HER2は、別のHERファミリーメンバーと二量体化することができるが、HER2は、過剰発現されない限りは、自己と二量体化しない。開いた立体配置において、二量体化アーム(図1を参照のこと)は、ドメインIIから外に突出し、そして、非共有結合性の相互作用(例えば、親水性相互作用および疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用および水素結合)を介して、第二のレセプター内のドメインIIの二量体化ループの基部にあるポケットと相互作用することが可能である。二量体化ループ内の変異は、構成的な二量体化をもたらし得、これは、HER2の場合には、細胞の形質転換を誘導することが示されている(Bazley et al.(2005)Endocrine−Related Cancer 12:S17−S27)。サブドメインループIIとサブドメインIおよびIIとの間には接触が存在する。ヘテロ四量体のようなより高次の構造もまた形成され得る(例えば、Jorissen et al.(2003)Exptl.Cell Res.284:31−53を参照のこと)。
二量体化アーム単独では、二量体化には不十分である。ドメインII/III相互作用を含むさらなる相互作用が、レセプターの二量体化を安定化する(例えば、Dawson et al.,(2005)Mol.Cell.Biol.25:7734−7742を参照のこと)。上述のように、二量体化アームは、HER1、HER2、HER3およびHER4の間で高度に保存されているが、HER2は、ホモ二量体を形成できない。HER1に関して、モジュール6が、ホモ二量体化のためのさらなる自己相補的な相互作用(D279およびH280を含む)を提供する。モジュール7は、HER2/HER3のヘテロ二量体化に関与する。これらの残基は、4つ全てのHERレセプター間で保存されている(例えば、Dawson et al.,(2005)Mol.Cell.Biol.25:7734−7742を参照のこと)。
7.HERファミリーのレセプター活性
HERは、上皮、間葉およびニューロン起源の種々の組織において発現され、そして、成長、生存、増殖および分化を調節する。通常の生理学的条件下では、HERの活性化は、そのリガンドの空間的および時間的な発現によって制御され、これらのリガンドは、増殖因子のEGFファミリーのメンバーである(上記を参照のこと)。HERレセプターへのリガンドの結合は、レセプターのホモ二量体およびヘテロ二量体の形成と、内在性キナーゼドメインの活性化とを誘導し、細胞質テイル内の特定のチロシン残基におけるリン酸化をもたらす。これらのリン酸化された残基は、ある範囲のエフェクタータンパク質のためのドッキング部位として機能し、このエフェクタータンパク質の回収は、細胞内シグナル伝達経路の活性化をもたらす。例えば、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)−AKT経路は、PI3Kのp85アダプターサブユニットのレセプターへの回収によって刺激される。マイトジェン活性型プロテインキナーゼ(MAPK)経路は、増殖因子−レセプター結合タンパク質2(GRB2)またはSHCのレセプターへの回収によって活性化される。
各レセプターの活性化は、いくつかの局面で互いに異なる。例えば、HER2は、対応する増殖因子リガンドを持たず、そして、HER3には、十分に特徴付けられたチロシンキナーゼ活性がない。これらの2つのレセプターは、一般に、そのシグナル伝達の能力について、他のメンバーに共依存する(co−dependent)が、HER2は、十分に過剰発現されている場合、共レセプターもしくはリガンドなしで強力なシグナル伝達を行うことができる。対照的に、HER3ホモ二量体は、チロシンキナーゼドメインの不十分なキナーゼ活性に起因して、完全に不活性である。代表的には、HERヘテロ二量体は、シグナル伝達において、HERホモ二量体よりも強力である。このことは、ヘテロ二量体化が、2つの異なるレセプターに由来する別個の細胞質テイルを提供し、それによって、さらなるリン酸化チロシン残基と、別個のエフェクター分子の回収のための異なるリン酸化パターンとを提供することに起因する。したがって、HERヘテロ二量体化は、シグナル伝達が増幅かつ多様化され得る機構である。HER2/HER3ヘテロ二量体は、最も強力なレセプターシグナル伝達ペアである。HER2/HER3ヘテロ二量体の効力の増大には、いくつかの理由がある。第一に、HER2およびHER3は、細胞増殖において重要なマイトジェン活性型プロテインキナーゼ(MAPK)経路と、細胞の生存および抗アポトーシス性のシグナルを調節するホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)/Akt経路とを含む、多様なシグナル伝達経路に結び付けられる。さらに、HER2/HER3ヘテロ二量体はまた、レセプターの十分な再生利用と、細胞表面レセプター発現の不十分なダウンレギュレーションとに起因して、シグナル伝達が延長される。
HERレセプターは各々が、細胞分化、細胞増殖、細胞生存、新脈管形成、ならびに遊走および浸潤を含む、多様な細胞のプロセスにおいて役割を担うことが示されている。HERレセプターは、発生中の胚および成体の組織において、細胞の増殖および分化の必須のメディエーターであるが、その不適切な活性化は、多くの癌(例えば、乳癌、結腸癌および前立腺癌を含む)および他の疾患の発生および重篤度と関連している。疾患に関連するHERレセプターの不適切な活性化に影響を及ぼす多数の機構が存在する。これらには、例えば、レセプターの過剰発現をもたらす遺伝子の増幅または転写の異常、遺伝子の変異、および、HERリガンドの過剰産生から生じるオートクリンの刺激が含まれる。従って、例えば、本明細書において提供される汎治療薬などによるHERレセプターの標的化は、これらのプロセスが不適切なHERのシグナル伝達に関連する疾患もしくは状態を処置するために調節され得る機構である。以下は、このような活性およびHERレセプターのシグナル伝達によって媒介される対応の細胞のプロセスである。これらのプロセス、細胞増殖、細胞生存、新脈管形成、ならびに細胞の遊走および浸潤は、腫瘍形成の特徴である。これらのプロセスはまた、Gの節において記載されるように、このような治療薬の実現可能性を評価するために、インビトロで監視され得る。
a.細胞の増殖
HERレセプターのシグナル伝達は、細胞周期チェックポイントの制御によって増殖の調節において役割を担う。例えば、HER2の過剰発現は、G1からSへの移行の調節を異常にし、そして、細胞増殖を駆動する。HER2により誘導される活発なシグナル伝達は、タンパク質c−MycおよびサイクリンDのレベルの増加をもたらす。これらのタンパク質は各々が、サイクリンキナーゼインヒビターであるタンパク質p27を封鎖するように機能する。サイクリンE−CDK2は、細胞周期への進入を媒介する。p27の封鎖は、p27がサイクリンE−CDK2に結合してその活性を阻害することを妨害し、したがって、細胞増殖が制御されない結果となる。HER2のシグナル伝達の阻害は、MAPK経路およびPI3K/AKT経路のダウンレギュレーションをもたらし、これは、c−MycおよびサイクリンDのレベルを減少させる。このことにより、錯体形成していないp27がサイクリンE−CDK2に結合してE−CDK2を不活性化し、継続的な細胞増殖を妨害することを可能にする。
b.細胞の生存
HERファミリーレセプターは、内在性のアポトーシス経路に関与するエフェクタータンパク質を調節することによって、細胞の生存を調節する。例えば、HERシグナル伝達による細胞の生存は、PI3K/AKT経路を介して媒介され、このPI3K/AKT経路は、アポトーシス促進性のタンパク質BADおよびカスパーゼ9を阻害する基質を標的とする。さらに、AKTによりリン酸化される標的基質としてはまた、例えば、FASリガンドのような、いくつかのアポトーシス促進性遺伝子の発現を阻害する転写因子、ならびに、例えば、BCL−XLのような生存促進性タンパク質のレベルをアップレギュレートする他の転写因子(すなわち、NF−κB)が挙げられる。
c.新脈管形成
HERシグナル伝達は、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)のような種々の脈管形成促進因子の発現を誘導する。例えば、HER1の活性化は、VEGF産生を誘導する。さらに、HER2の過剰発現は、結腸癌、膵臓癌、胃癌、乳癌、腎細胞癌および非小細胞肺癌におけるVEGF産生の増加に関連する。VEGFの脈管形成作用は、その結合と、内皮細胞上に発現される2つの関連するレセプター(すなわち、VEGFR1−およびVEGFR−2)の活性化とによって、新血管の発生(すなわち、新脈管形成)、および、脈管の維持または未熟な血管の生存におけるその役割と関連している。新脈管形成は、腫瘍形成において役割を担う。
d.遊走および浸潤
HERシグナル伝達の刺激はまた、胚発生、創傷治癒の間、ならびに、腫瘍の増殖および転移において重要な役割を果たす、細胞の移動および遊走の種々の局面を媒介する。細胞の運動性応答は、HER活性化の際に誘導される広域スペクトルのシグナル伝達経路によって開始され得る。例えば、HER1によるPLCγ依存性経路の活性化は、HER1により誘導される細胞の遊走と関連付けられる。というのも、この酵素の阻害は、EGFにより誘導される細胞の動きをブロックするからである(Jorissen et al.(2003)Exp.Cell Res.284:31−53)。EGFにより媒介される細胞の遊走の機構は、アクチン改変タンパク質(すなわち、ゲルゾリン、プロフィリン(profiling)、コフィリンおよびCapG)のPLC−γにより媒介される放出に起因して、アクチン細胞骨格再配置の刺激に関連付けられる。MAPKはまた、例えば、インテグリンレベルの調節などによって、HERにより媒介される細胞運動性において役割を担う。HERにより媒介される細胞の遊走および運動性に関与する他のシグナル伝達経路またはエフェクター分子としては、PI3−Kおよびその下流のエフェクター分子であるRac(膜の波打ち運動(raffling)およびラメリポディウムの形成に関与)、およびRho(細胞の円形化(rounding)および皮質アクチンの重合化に関与)が挙げられる。
さらに、HERシグナル伝達により誘導される遊走および浸潤はまた、細胞外マトリックスの構成成分を切断するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の発現の増加と関連付けられている。例えば、ニューレグリンによるHER3およびHER4の刺激は、MMP−2およびMMP−9の誘導に起因した、腫瘍細胞による浸潤およびタンパク質分解活性の生成と関連付けられる。
8.他のCSRのECD
HERファミリーメンバーを標的とすることに加え、本明細書において提供される治療薬はまた、疾患の過程(腫瘍形成、新脈管形成または炎症性疾患が挙げられるがこれらに限定されない)に関与する任意の他の細胞表面レセプター(CSR)またはそのリガンドを標的とするように設計され得る。特に、他のECDは、1つのレセプターを標的とする治療薬に対する耐性の発生に関与するレセプターに由来する。
代表的には、このようなCSRは、レセプターチロシンキナーゼ(RTK)である。一般に、このような治療薬は、リガンドと相互作用するか、そして/またはレセプターの二量体化を妨害するのに十分な、CSRのECDまたはその一部分を含む。RTKの例としては、上皮増殖因子(EGF)レセプター(上述のようなもの)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプター、線維芽細胞増殖因子(FGF)レセプター、インシュリン様増殖因子(IGF)レセプター、神経増殖因子(NGF)レセプター、血管内皮増殖因子(VEGF)レセプター、エフリンに対するレセプター(Ephと称される)、肝細胞増殖因子(HGF)レセプター(METと称される)、TIE/Tie−1またはTEK/Tie−2(アンギオポエチン−1に対するレセプター)、ジスコイジン(discoidin)ドメインレセプター(DDR)および他のレセプター(例えば、Tyro3/Ax1)が挙げられるがこれらに限定されない。ECD部分が治療薬として使用され得る他のCSRとしては、TNFR(すなわち、TNFR1、TNFR2、CD27、4−1BB、OX40、HVEM、LtβR、CD30、GITR、CD40など)またはRAGEが挙げられるがこれらに限定されない。表7は、例示的なCSRを列挙し、そして、代表的なポリペプチドのECDを構成するアミノ酸を示す。RTKおよび他のCSRならびにコードされるアミノ酸の例示的な配列は、配列番号193〜262のいずれかに示される。
増殖因子レセプターを含むRTKの外部ドメインは、多様なグループのモジュラードメイン(フィブロネクチンIII型、システインリッチ、上皮増殖因子、および免疫グロブリン(Ig)様ドメインが挙げられるがこれらに限定されない)から構成される。多くのRTKについて、Ig様ドメインがリガンド結合を担う(Wiesmann et al.(2000)J Mol.Med.78:247−260を参照のこと)。Ig様ドメインは、代表的には、80〜110残基を含み、3〜5個のβ−ストランドの2つのアンチパラレルなβーシートを形成し、これらのβ−シートは、ある場合には、ジスルフィド結合によって接続されている。Ig様ドメインは、β−ストランドの数に依存して、以下の4つの分類にグループ分けされる:V(可変)、I(中間)およびC1およびC2(定常)。例えば、C2の分類のドメインは、第一のβ−シート内に4を含む最小数のβ−ストランドを含み、そして、第二のβ−シート内に4つのβ−ストランドを含む。表8は、Ig様ドメインを含む例示的なRTKファミリーメンバーと、これらに結合するリガンドとを示す。
以下の考察は、例示のためのものである。リガンド結合および/または二量体化に必要とされるECDまたはその一部分は、ヘテロ多量体において、特に、HER ECDまたはその一部分と合わせられ得るものと理解される。
(a)VEGFR1(Flt−1)およびVEGFR2(KDR)
VEGFR1およびVEGFR2は、VEGFに結合し、そして、VEGFにより誘導される脈管形成応答において役割を担う。VEGFR1は、内皮細胞の形態形成に必要とされるのに対し、VEGFR2は、有糸分裂誘発において役割を担う。VEGFR1およびVEGFR2の両方のECD構造は、7つのIg様ドメインを含み、そして、両方のレセプターはVEGFに対して同様に結合するが、VEGFR1はまた、リガンドPIGFにも結合する。したがって、VEGFR1とVEGFR2との間の機能の差は、レセプターの分子内チロシンキナーゼ配列と、その異なるシグナル伝達特性にあるようである。関連するレセプターVEGFR3もまた、7つのIg様ドメインを含むが、VEGFには結合しない。配列番号254に示されるVEGFR1の配列に関して、第一のIg様ドメインは、アミノ酸32〜123に対応し、第二のIg様ドメインはアミノ酸151〜214に対応し、第三のIg様ドメインは、アミノ酸230〜327に対応し、第四のIg様ドメインは、アミノ酸335〜421に対応し、第五のIg様ドメインは、アミノ酸428〜553に対応し、第六のIg様ドメインは、アミノ酸556〜654に対応し、そして、第七のIg様ドメインは、アミノ酸661〜747に対応する。配列番号256に示されるVEGFR2の配列に関して、第一のIg様ドメインは、アミノ酸46〜110に対応し、第二のIg様ドメインはアミノ酸141〜207に対応し、第三のIg様ドメインは、アミノ酸224〜320に対応し、第四のIg様ドメインは、アミノ酸328〜414に対応し、第五のIg様ドメインは、アミノ酸421〜548に対応し、第六のIg様ドメインは、アミノ酸551〜660に対応し、そして、第七のIg様ドメインは、アミノ酸667〜753に対応する。
VEGFR1に関して、第二のIg様ドメイン(ドメイン2)は、リガンド結合および特異性を決定し、VEGFR1 ECDからこのドメインを欠失させると、このレセプターがVEGFに結合する能力が無効になる(Smyth et al.(1996)EMBO J.15:4919−4927)。他のドメインを欠失させても、VEGFに対する結合を減少させるだけであるが、結合を無効にはしない。しかし、ドメイン2単独では、VEGFへの結合に不十分である。ドメイン1と2、またはドメイン2と3もまた、VEGFに対して結合しないか、または最小限に結合することが示されている。ドメイン1、2および3のみを含むVEGFR1のECD部分は、本質的に、全長VEGFR1と同一のVEGFに対する親和性を有する。
(b)FGFR1〜FGFR4
FGFRのECDは、3つのIg様ドメインを含む。例えば、配列番号236に示されるFGFR2の配列に関して、第一のIg様ドメインは、アミノ酸39〜125に対応し、第二のIg様ドメインは、アミノ酸154〜247に対応し、そして、第三のIg様ドメインは、アミノ酸256〜358に対応する。選択的スプライシングにより生成される4つのFGFRが存在する。個々のFGFRは、(少なくとも19の関連するFGFリガンドの中の)リガンドの一部分によって活性化され、そして、IgドメインIIIにおける選択的スプライシングは、特定のリガンドに対する特異性を劇的に変化させ得る(Chellaiah et al.(1999)JBC,274:34785−34794)。したがって、FGFリガンドに対する主要なリガンド結合部位は、代表的には、別個のIg様ドメイン内に、より一般には、ドメイン2およびドメイン3内に位置する(Cheon et al.(1994)PNAS,91:989−993)。例えば、FGFR2におけるドメイン3の変異は、FGF1およびFGF7の結合に影響を及ぼすことなく、FGF2の結合を阻害する。さらに、キメラFGFR分子を用いた研究は、FGF1がドメイン2またはドメイン3のいずれかに結合すること;FGF2が、Igドメイン2および3を含むFGFR1の遠位配列を優先的に認識すること;FGF8が、Igドメイン2またはFGFR2に対してN末端側およびC末端側の両方の配列を認識すること;そして、FGF9の結合が、FGFR3内のIgドメイン2に対してN末端側の配列およびFGFR3内のIgドメイン2を含む配列に依存し、ドメイン3は必要としないことを決定した(Chellaiah et al.(1999)JBC,274:34785−34794)。FGFのFGFRへの結合については、ヘアピンの存在がリガンド結合の親和性を最適化する。
(c)IGF−1R
RTKレセプターの例はIGF−1Rである。インシュリンレセプターファミリーは、インシュリンレセプター(IR)、インシュリン様増殖因子1レセプター(IFG1R)およびインシュリンレセプター関連レセプターを含む、相同なチロシンキナーゼレセプターを含む。IRおよびIGF−1Rは共に、単一のポリペプチド鎖として合成され、そして、タンパク質分解により切断されて、ジスルフィド結合によって連結されたαおよびβと呼ばれる2つの別個の鎖を生じる。α鎖は、レセプターの細胞外部分であり、そして、リガンドに結合するのに対し、β鎖は、細胞外領域と、一回膜貫通型セグメントと、リガンドが結合した際にシグナル伝達を媒介する分子内チロシンキナーゼドメインとを有する。IGF−1Rの細胞外部分は、6つの構造的に別個のドメインを有する。最初の3つは、HERの細胞外ドメインI〜III、すなわち、L1(配列番号260のアミノ酸51〜61に対応)、システインリッチドメイン(配列番号260のアミノ酸175〜333に対応)およびL2(配列番号260のアミノ酸352〜467に対応)に対して相同である。これらの3つのドメインは、レセプターの最小限のリガンド結合部分を形成し、そして、インシュリンに対する低親和性の結合を媒介する。L2ドメインに対するC末端は、3つの細胞外フィブロネクチン3型のモジュールであり、1つはα鎖(配列番号260のアミノ酸489〜587に対応)中であり、1つはα−β連結モジュール(配列番号260のアミノ酸611〜703に対応)中であり、そして、3つ目は、β鎖(配列番号260のアミノ酸831〜926に対応)中である。α鎖およびβ鎖は、αβヘテロ二量体を形成し、そして、2つのヘテロ二量体は、ジスルフィド結合を介して会合し、インタクトな(αβ)2レセプターを形成する。HERファミリーレセプターと同様に、リガンド結合は、レセプターを活性化し、そして、細胞質ドメインのリン酸基転移を誘導するために必要とされる。IGF−1Rの活性化は、細胞増殖、形質転換およびアポトーシスに関与する。
(d)RAGEおよび他のCSR
本明細書において企図される他のCSR ECDとしては、RAGE CSRSに由来するもの(同時係属中の米国出願第11/429,090号と、この中で援用されるRAGE CSRの説明に関する参考文献、ならびにまた、例示的なECDおよびCSRアイソフォームに関する参考文献を参照のこと)が挙げられる。上記表7はまた、全長RAGEおよびそのECD部分の配列を示す。
D.ECD多量体の成分とECD多量体の形成
ECDヘテロ多量体は、リガンドへの結合および/または二量体化のために、少なくとも2つの異なるECDまたはその一部分を含む。本明細書における例示的な実施形態では、構成要素のECDの少なくとも1つは、HER ECDであり、一般には、HER1、HER3もしくはHER4のうち少なくとも1つ、または、リガンド結合および/もしくは二量体化のためのこれらの一部分である。一般に、ECDのうち少なくとも2つは、HER、特に、HER1とHER3もしくはHER4である。他のECDとしては、他のCSR(一般にはRTK、特に、腫瘍形成もしくは新脈管形成もしくは炎症性疾患に関連するもの、代表的には、単一の細胞表面レセプターに対して標的化された薬物に対する耐性に関連するもの)に由来するECDが挙げられる。ECDポリペプチドはまた、2以上のCSRに由来するドメインを含むハイブリッドECD分子であり得る。ヘテロ多量体中のECDは連結され、それによって、多量体、少なくともヘテロ二量体が、形成される。ECDの相互作用を可能にするかまたはもたらして、ヘテロ多量体を形成する任意の結合が企図され、これにより、得られる多量体分子が、ECDの同系レセプターのうち1つまたは全体に対するリガンドと相互作用するか、そして/または、同系レセプターもしくは他の相互作用性のレセプターのうち一方もしくは両方と相互作用して、二量体化を阻害する。このような結合は、共有結合性の相互作用および非共有結合性の相互作用に基づく、任意の安定な結合であり得る。
1.ECDポリペプチド
本明細書において提供されるECD多量体の作製において使用するためのECDポリペプチドは、CSR(例えば、任意のRTKまたはその任意のECD含有部分)のECDの全体もしくは一部分であり得る。代表的には、ECDがHERの全体もしくは一部分でない限り、得られるECDは、リガンドに結合するその能力を保持する。さらに、HERファミリー(例えば、HER1、HER2、HER3またはHER4の全体もしくは一部分)のECDであるECDはまた、代表的に、HERファミリーレセプター(全長のHERファミリーレセプターを含む)と二量体化するその能力を保持する。したがって、多量体のパートナーがHER ECDである場合、HER ECDポリペプチド部分は、少なくとも、リガンドへの結合に十分なサブドメインIおよびサブドメインIIIの部分と、二量体化に十分なサブドメインIIの部分とを含む。一般に、HER ECDはまた、サブドメインIVのモジュール1の少なくとも一部分を含む。サブドメインIVの残りは任意である。
(a)HERファミリーの全長ECD
本明細書において提供されるHER多量体に含まれるECDポリペプチドは、HERポリペプチドの全長ECDであり得る。HERポリペプチドについて、HER ECDは、リガンドの結合を可能にし、そして、同系レセプターもしくは関連のHERファミリーレセプターとの二量体化を媒介するのに十分な、ドメインI、II、IIIおよびIVを含む。HER ECDポリペプチドとしてはまた、対立遺伝子改変体もしくは種改変体、または、結果として生じるHER ECDポリペプチドがリガンドに結合するその能力および/または、同系レセプターもしくは関連のHERファミリーレセプターと二量体化するその能力を保持する限り、HERポリペプチドのECD部分内の他の公知の改変体が挙げられる。
(i)HER1 ECD
全長HER1 ECDポリペプチドは、本明細書において提供されるECD多量体の形成において使用され得る。このような全長のHER1 ECDは、成熟なHER1レセプター(HER1−621;HF100)のアミノ酸残基1〜621を含む。HF100分子のヌクレオチド配列は、配列番号11に示され、そして、配列番号12に示されるアミノ酸配列を持つ全長HER1 ECDポリペプチドをコードする。全長HER1 ECDポリペプチドとしては、配列番号12に示される例示的なHER1 ECDポリペプチドと比べて、アミノ酸配列において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER1ポリペプチドにおける変化の例は、配列番号263に示されるような前駆体HER1ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。HER1の全長ECDポリペプチドにおける例示的な変化としては、配列番号12における、R74Q、P242R、R497KもしくはC604Sのうち任意の1つ以上に対応する任意の1以上の変化が挙げられる。
(ii)HER2 ECD
本明細書において提供されるECD多量体はまた、成熟なHER2レセプター(HER2−650;HF200)のアミノ酸残基1〜628を含む全長HER2 ECDポリペプチドを含み得る。HF200分子のヌクレオチド配列は、配列番号17に示され、そして、配列番号18に示されるアミノ酸配列を持つ全長HER2 ECDポリペプチドをコードする。全長HER2 ECDポリペプチドとしては、配列番号18に示される例示的なHER2 ECDポリペプチドと比べて、アミノ酸配列において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER2ポリペプチドにおける変化の例は、配列番号264に示されるような前駆体HER2ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。HER2の全長ECDポリペプチドにおける例示的な変化としては、配列番号18における、W430Cのうち任意の1つ以上に対応する任意の1以上の変化が挙げられる。
(iii)HER3 ECD
別の例では、全長HER3 ECDポリペプチドが、本明細書において提供されるECD多量体の形成において使用され得る。このような全長のHER3 ECDは、成熟なHER3レセプター(HER3−621;HF300)のアミノ酸残基1〜621を含む。HF300分子のヌクレオチド配列は、配列番号25に示され、そして、配列番号26に示されるアミノ酸配列を持つ全長HER3 ECDポリペプチドをコードする。全長HER3 ECDポリペプチドとしては、配列番号26に示される例示的なHER3 ECDポリペプチドと比べて、アミノ酸配列において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER3ポリペプチドにおける変化の例は、配列番号265に示されるような前駆体HER3ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。HER1の全長ECDポリペプチドにおける例示的な変化としては、配列番号26における、G541Eのうち任意の1つ以上に対応する任意の1以上の変化が挙げられる。
(iv)HER4 ECD
本明細書において提供されるECD多量体はまた、成熟なHER4レセプター(HER4−650;HF400)のアミノ酸残基1〜625を含む全長HER4 ECDポリペプチドを含み得る。HF400分子のヌクレオチド配列は、配列番号31に示され、そして、配列番号32に示されるアミノ酸配列を持つ全長HER4 ECDポリペプチドをコードする。全長HER4 ECDポリペプチドとしては、配列番号32に示される例示的なHER4 ECDポリペプチドと比べて、アミノ酸配列において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER4ポリペプチドにおける変化の例は、配列番号266に示されるような前駆体HER4ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。HER4の全長ECDポリペプチドにおける例示的な変化としては、配列番号32に示されるアミノ酸配列に対応する任意の1以上のアミノ酸変化が挙げられる。
(b)HERファミリーの短縮型ECD
本明細書において提供されるHER多量体内に含まれるECDポリペプチドは、HERポリペプチドの短縮型ECDであり得る。短縮型のHERポリペプチドに関して、HER ECDは、代表的に、リガンドへの結合に十分なドメインIおよびIIIの部分と、レセプターの二量体化を媒介するのに十分なドメインIIの部分とを含む。一般に、短縮型のHER ECDはまた、例えば、分子を安定化させるために、ドメインIVのモジュール1の少なくとも一部分を含む。ドメインIVの残りの部分は任意である。さらに、短縮型ECDポリペプチドはまた、追加の配列が、HER ECDポリペプチドのリガンド結合および/またはレセプター二量体化を阻害も干渉もしない限りは、HER ECDの一部ではない追加の配列を含み得る。例えば、短縮型ECDポリペプチドは、選択的スプライシングによって生成されるポリペプチド(例えば、イントロンによりコードされるアミノ酸を含むポリペプチドが挙げられるがこれらに限定されない)を含み得る。短縮型のHER ECDポリペプチドはまた、対立遺伝子改変体もしくは種改変体、または、結果として生じる短縮型HER ECDポリペプチドが、リガンドに結合するその能力および/または、同系レセプターもしくは関連のHERファミリーレセプターと二量体化するその能力を保持する限りは、短縮型HERポリペプチドのECD部分内の他の公知の改変体を含む。
(i)短縮型HER1 ECD
一例では、本明細書において提供されるECD多量体において使用され得る短縮型HER1 ECDポリペプチドは、成熟なHER1レセプター(HER1−501;HF110)のアミノ酸残基1〜501を含む。HF110分子のヌクレオチド配列は、配列番号9に示され、そして、配列番号10に示されるアミノ酸配列を持つ短縮型HER1 ECDポリペプチドをコードする。HF110は、同系のHER1 ECDのドメインI、IIおよびIIIの全体と、ドメインIVのモジュール1の全体とを含む。
また、ECD多量体における使用が企図されるのは、選択的スプライシングから生じる短縮型HER1 ECDポリペプチドである。このようなアイソフォームとしては、当該分野で公知の任意のもの、または、関連の米国特許出願公開番号US2005−0239088に記載される任意のもの、または、イントロン融合タンパク質として本明細書において以下に提供される任意のものが挙げられる。他のこのような例示的な短縮型HER1 ECDポリペプチドは、配列番号128に示されるヌクレオチド配列によってコードされるEGFRアイソフォームb(NP_958439;配列番号129)である。この短縮型HER1 ECDポリペプチドはアミノ酸残基1〜24に対応するシグナルペプチドを含む628アミノ酸であり、そして、そのC末端に、同系のHER1 ECDには存在しない1つの追加アミノ酸を含む。配列番号129に示される前駆体の短縮型HER1 ECDポリペプチドの成熟な形態(シグナル配列を含まない)は、図2(A)に示されるような長さ604のアミノ酸であり、そして、同系のHER1 ECDのドメインI、IIおよびIIIと、ドメインIVのほぼ全体(最大でモジュール7のほとんどを含む)とを含む。さらなる例において、短縮型HER1 ECDポリペプチドは、配列番号130に示されるヌクレオチド配列によりコードされるEGFRアイソフォームd(NP_958441;配列番号131)を含み得る。この短縮型HER1 ECDポリペプチドは、アミノ酸残基1〜24に対応するシグナルペプチドを含む705アミノ酸であり、そして、そのC末端に、同系のHER2 ECDには存在しない76の追加アミノ酸を含む。配列番号131に示される前駆体の短縮型HER1 ECDポリペプチドの成熟な形態(シグナル配列を含まない)は、図2(A)に示されるような長さ681のアミノ酸であり、そして、同系のHER1 ECDのドメインI、IIおよびIIIと、ドメインIVのほぼ全体(最大でモジュール7のほとんどを含む)とを含む。
短縮型HER1 ECDポリペプチドとしては、例えば、配列番号10、129または131に示される例示的な短縮型HER1 ECDポリペプチドに比べて、アミノ酸配列において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER1ポリペプチドにおける例示的な変化は、配列番号263に示されるような前駆体HER1ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。短縮型HER1 ECDポリペプチドにおける例示的な変化としては、配列番号10におけるR74Q、P242RもしくはR497Kのうち任意の1つ以上に対応する任意の1以上の変化が挙げられる。例示的な変化としてはまた、配列番号129もしくは131に示されるアミノ酸配列を有する短縮型HER1ポリペプチドにおけるR98Q、P266R、R521K、C628SもしくはV674Iに対応する任意の1以上のアミノ酸変化が挙げられ得る。
(ii)短縮型HER2 ECD
ECD多量体はまた、短縮型HER2 ECDポリペプチドを含み得る。例えば、成熟なHER2レセプター(HER2−595;HF210)のアミノ酸残基1〜573を含む短縮型HER2 ECDポリペプチドは、ECD多量体の形成において使用され得る。HF210分子のヌクレオチド配列は、配列番号15に示され、そして、配列番号16に示されるアミノ酸配列を持つ短縮型HER2 ECDポリペプチドをコードする。HF210は、同系のHER2 ECDのドメインI、IIおよびIIIの全体と、ドメインIVのモジュール5の一部分とを含む。また、成熟なHER2レセプター(HER2−530;HF220)のアミノ酸残基1〜508を含む短縮型HER2 ECDポリペプチドが、本明細書において多量体化パートナーとして提供される。H220のヌクレオチド配列は、配列番号13に示され、そして、配列番号14に示されるアミノ酸配列を持つ短縮型HER2 ECDポリペプチドをコードする。HF212は、同系のHER2 ECDのドメインI、IIおよびIIIの全体と、最大でドメインIVのモジュール1の全体とを含む。
また、ECD多量体における使用が企図されるのは、選択的スプライシングから生じる短縮型HER2 ECDポリペプチドである。このようなアイソフォームとしては、当該分野で公知の任意のもの、または、関連の米国特許出願公開番号US2005−0239088に記載される任意のもの、または、イントロン融合タンパク質として本明細書において以下に提供される任意のものが挙げられる。他のこのような例示的な短縮型HER2 ECDポリペプチドは、配列番号137に示されるアミノ酸配列を持つErbB2.1eである。この短縮型HER2 ECDポリペプチドはアミノ酸残基1〜22に対応するシグナルペプチドを含む633アミノ酸である。配列番号137に示される前駆体の短縮型HER2 ECDポリペプチドの成熟な形態(シグナル配列を含まない)は、図2(B)に示されるような長さ611のアミノ酸であり、そして、同系のHER2 ECDのドメインI、IIおよびIIIと、ドメインIVのほぼ全体(最大でモジュール7のほとんどを含む)とを含む。さらなる例において、短縮型HER2 ECDポリペプチドは、配列番号136に示されるアミノ酸配列を持つErbB2.1dである。この短縮型HER2 ECDポリペプチドは、配列番号3に示される同系のHER2内のシグナルペプチドと比べて2アミノ酸の挿入を含むアミノ酸残基1〜24に対応するシグナルペプチドを含む680アミノ酸である。ErbB2.1dはまた、C末端に、同系のHER2 ECDには存在しない30の追加アミノ酸を含む。配列番号136に示される前駆体の短縮型HER2 ECDポリペプチドの成熟な形態(シグナル配列を含まない)は、図2(B)に示されるような長さ656のアミノ酸であり、そして、同系のHER2 ECDのドメインI、IIおよびIIIと、ドメインIVのほぼ全体(最大でモジュール1〜7の全体を含む)とを含む。
短縮型HER2 ECDポリペプチドとしては、例えば、配列番号14、16、136および137に示される例示的な短縮型HER2 ECDポリペプチドに比べて、アミノ酸配列において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER2ポリペプチドにおける例示的な変化は、配列番号264に示されるような前駆体HER2ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。短縮型HER2 ECDポリペプチドにおける例示的な変化としては、配列番号14もしくは16におけるW430Cに対応する任意の1以上の変化が挙げられる。例示的な変化としてはまた、それぞれ、配列番号137もしくは136に示されるアミノ酸配列を有する短縮型HER2ポリペプチドにおけるW452CもしくはW454Cに対応する任意の1以上のアミノ酸変化が挙げられ得る。
(iii)短縮型HER3 ECD
ECD多量体はまた、成熟なHER3レセプター(HER3−500;HF310)のアミノ酸残基1〜500を含む短縮型HER3 ECDポリペプチドを含み得る。H310分子のヌクレオチド配列は、配列番号19に示され、そして、配列番号20に示されるアミノ酸配列を持つ短縮型HER3 ECDポリペプチドをコードする。HF310は、同系のHER3 ECDのドメインI、IIおよびIIIの全体と、最大でドメインIVのモジュール1の一部分とを含む。別の例では、ECD多量体は、成熟なHER3レセプター(HER3−519)のアミノ酸残基1〜519を含む短縮型HER3 ECDポリペプチドを含み得る。HER3−519のヌクレオチド配列は、配列番号23に示され、そして、配列番号24に示されるアミノ酸配列を持つ短縮型HER3 ECDポリペプチドをコードする。HER3−519は、同系のHER3レセプターのドメインI、IIおよびIIIの全体と、最大でドメインIVのモジュール3の一部分とを含む。
また、ECD多量体における使用が企図されるのは、選択的スプライシングから生じる短縮型HER3 ECDポリペプチドである。このようなアイソフォームとしては、当該分野で公知の任意のもの、または、関連の米国特許出願公開番号US2005−0239088に記載される任意のもの、または、イントロン融合タンパク質として本明細書において以下に提供される任意のものが挙げられる。他のこのような例示的な短縮型HER3 ECDポリペプチドは、配列番号22に示され、そして、配列番号21に示されるヌクレオチド配列によってコードされるp85HER3である。この短縮型HER3 ECDポリペプチドはアミノ酸残基1〜19に対応するシグナルペプチドを含む562アミノ酸であり、そして、そのC末端に、同系のHER3 ECDには存在しない24の追加アミノ酸を含む。配列番号22に示される前駆体の短縮型HER3 ECDポリペプチドの成熟な形態(シグナル配列を含まない)は、図2(C)に示されるような長さ543のアミノ酸であり、そして、同系のHER3 ECDのドメインI、IIおよびIIIと、最大でドメインIVのモジュール3の一部分とを含む。
短縮型HER3 ECDポリペプチドとしては、例えば、配列番号14、16、136および137に示される例示的な短縮型HER3 ECDポリペプチドに比べて、アミノ酸において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER3ポリペプチドにおける例示的な変化は、配列番号265に示されるような前駆体HER3ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。
(iv)短縮型HER4 ECD
さらに、短縮型HER4 ECDポリペプチドを含むECD多量体が形成され得る。一つの例示的な短縮型HER4 ECDポリペプチドは、成熟なHER4レセプター(HER4−522)のアミノ酸残基1〜522を含む短縮型HER4 ECDポリペプチドを含む。HER4−522分子のヌクレオチド配列は、配列番号29に示され、そして、配列番号30に示されるアミノ酸配列を持つ短縮型HER4 ECDポリペプチドをコードする。HER4−522は、同系のHER4 ECDのドメインI、IIおよびIIIの全体と、最大でドメインIVのモジュール1とを含む。別の短縮型HER4 ECDポリペプチドは、成熟なHER4レセプター(HF410;HER4−485)のアミノ酸残基1〜460を含む。H410のヌクレオチド配列は、配列番号27に示され、そして、配列番号28に示されるアミノ酸配列を持つ短縮型HER4 ECDポリペプチドをコードする。HF410は、同系のHER4 ECDのドメインI、IIの全体と、最大でドメインIIIのほぼ全体とを含む。
また、ECD多量体における使用が企図されるのは、選択的スプライシングから生じる短縮型HER4 ECDポリペプチドである。このようなアイソフォームとしては、当該分野で公知の任意のもの、または、関連の米国特許出願公開番号US2005−0239088に記載される任意のもの、または、イントロン融合タンパク質として本明細書において以下に提供される任意のものが挙げられる。他のこのような例示的な短縮型HER4 ECDポリペプチドは、配列番号159に示され、配列番号158に示されるヌクレオチド配列によってコードされるErbB4_int12である。この短縮型HER4 ECDポリペプチドはアミノ酸残基1〜25に対応するシグナルペプチドを含む506アミノ酸であり、そして、そのC末端に、同系のHER4 ECDには存在しない10の追加アミノ酸を含む。この追加アミノ酸は、選択的スプライシングを受けた産物として保持されるHER4遺伝子のイントロン12の一部分によってコードされる。配列番号159に示される前駆体の短縮型HER4 ECDポリペプチドの成熟な形態(シグナル配列を含まない)は、図2(D)に示されるような長さ481のアミノ酸であり、そして、同系のHER4 ECDのドメインI、IIと、ドメインIIIのほぼ全体とを含む。
短縮型HER4 ECDポリペプチドとしては、例えば、配列番号28、30または159に示される例示的な短縮型HER4 ECDポリペプチドに比べて、アミノ酸において1以上の変化を有する任意のものが挙げられる。HER4ポリペプチドにおける例示的な変化は、配列番号266に示されるような前駆体HER4ポリペプチドにおける任意の対立遺伝子改変体に対応する任意の変化である。
(c)ハイブリッドECD
2以上のHERレセプターに由来するサブドメインを含む、ハイブリッドECDまたはその一部分が、本明細書において提供される。一般に、ハイブリッドECDは、1以上のHERレセプターのドメインIもしくはIIIの全体またはリガンドへの結合に十分な部分と、ドメインIIの全体または同じHER ECDもしくは別のHER ECDからのレセプターの二量体化を媒介するのに十分な部分とを含む。したがって、ハイブリッドECD分子は、全てのHERファミリーのECDの一部分、一般には、3つのHERファミリーのECDの一部分と、2つのHERファミリーのECDの少なくとも一部分とを含み得る。代表的には、このようなECDは、HER2に由来するサブドメインIIと、ErbB1、ErbB3もしくはErbB4に由来するサブドメインIおよびIII(同じレセプターに由来するものであっても異なるレセプターに由来するものであってもよい)とを含む。各サブドメイン部分は、結果として生じるECDが二量体化し、そして、少なくとも1つのリガンドに結合し、そして、2以上の(異なる)リガンドに結合し得るように選択される。したがって、ドメインの組合せは、これらが、少なくとも1つのリガンドに結合し、そして、2つのリガンドに結合し得、そしてまた、二量体化のために十分なサブドメインIIの部分を含むように選択される。このようなハイブリッドの例は、HER3もしくはHER4に由来するサブドメインIと、HER2に由来するサブドメインIIと、HER1に由来するサブドメインIIIとを含む単量体性ハイブリッドECDである。例えば、ErbB3に由来するサブドメインIと、ErbB2に由来するサブドメインIIと、ErbB1に由来するサブドメインIIIとを含むハイブリッドECDが提供される。HRGは、HER3もしくはHER4(サブドメインI)に結合し、そして、EGFは、主にHER1のサブドメインIIIと相互作用する(例えば、Singer et al.,(2001)J.Biol.Chem.276:44266−44274;Kim et al.(2002)Eur.J.Biochem.269:2323−2329を参照のこと)。したがって、ハイブリッドは、少なくとも2つのリガンドに結合する(例えば、Singer et al.,(2001)J.Biol.Chem.276:44266−44274を参照のこと)。さらに、多量体化ドメインが追加され、キメラ多量体が形成すると、結果として生じるキメラ分子は、少なくとも2つの異なるHERレセプターおよび少なくとも2つの異なるリガンドと相互作用し得る。
(d)他のCSRもしくはRTKのECD、またはこれらの一部分
CSRまたは他のRTKの、リガンドへの結合に十分な任意のECD部分もしくはそのフラグメントを含む他のECDポリペプチドが、本明細書において提供されるECD多量体の形成において使用され得る。代表的には、このようなCSR ECDまたはその一部分は、疾患の病因に関与する任意のCSRのECD、および/または、単一の細胞表面レセプターに対して標的化された薬物に対する耐性に関与するCSRのECDである。例示的なCSRまたはRTKレセプターは、表7に示され、この表はまた、それぞれのレセプターのそれぞれのECD部分を示す。したがって、表7に示されるような任意の全長ECDは、本明細書における多量体化パートナーとして使用するために企図される。表7に示される任意のCSRの全長ECDの一部分またはフラグメントはまた、その一部分またはフラグメントが、リガンドへの結合および/または同系レセプターとの二量体化の能力を保持する限りは、多量体化パートナーとして使用するために企図される。例えば、VEGFR1のようなVEGFR ECDの一部分またはフラグメントは、少なくとも、Igドメイン1、2および3の、リガンドへの結合に十分な部分を含む。別の例では、FGFR1〜4のいずれかのようなFGFR ECDの一部分またはフラグメントは、少なくとも、Igドメイン2および3の、リガンドへの結合に十分な部分を含む。さらなる例では、IGF−1R ECDの一部分またはフラグメントは、少なくとも、L1ドメイン、システインリッチドメインおよびL2ドメインの、リガンドへの結合および/またはレセプターの二量体化の媒介に十分な部分を含む。
(e)ポリペプチドの選択的スプライシングを受けたアイソフォーム
本明細書において提供されるECD多量体の形成において使用するための他のECDポリペプチドとしては、CSRのECD部分またはそのフラグメントと、必要に応じて、同系レセプターのドメイン配列とは整列しない追加アミノ酸とを含む任意のアイソフォームが挙げられる。このようなECDポリペプチドとしては、例えば、選択的スプライシングを受けた、CSRまたは他のRTKが挙げられる。代表的には、ECDを含むポリペプチドアイソフォームは、リガンドに結合し、そして/または、細胞表面レセプターと二量体化する。選択的スプライシングを受けたアイソフォームとしては、例えば、エキソン伸長、エキソン挿入、エキソン欠失、エキソン短縮またはイントロン保持によって作製されたものが挙げられる。このような選択的スプライシングを受けたアイソフォームは、当該分野で公知であり(例えば、米国特許第6,414,130号;米国特許出願公開US2005/0239088、US2004/0022785A1、US20050123538;国際特許出願公開WO0044403、WO0161356およびWO0214470を参照のこと)、そして、配列番号22、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号143、配列番号144、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号301〜399、および配列番号408〜413のいずれか1つに示される。例えば、選択的スプライシングを受けたアイソフォームとしては、HER1のアイソフォーム(配列番号129、配列番号131もしくは配列番号133に示される任意のものが挙げられるがこれらに限定されない);HER2のアイソフォーム(配列番号135もしくは配列番号385〜399のいずれかに示されるハースタチンまたはその改変体が挙げられるがこれらに限定されない);または、他の選択的スプライシングを受けたアイソフォーム(配列番号136〜139もしくは配列番号408〜413に示される任意のものが挙げられるがこれらに限定されない);HER3のアイソフォーム(配列番号22、配列番号143、配列番号144、配列番号149、配列番号150もしくは配列番号151に示される任意のものが挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられる。
選択的スプライシングを受けたアイソフォームはまた、HER1遺伝子の他のアイソフォームを含み得る。HER1遺伝子(配列番号400)は、27のイントロンにより中断された28のエキソンから構成される。配列番号400として本明細書中に提供されるHER1の例示的なゲノム配列において、エキソン1は、5’非翻訳領域を含むヌクレオチド1〜254を含む。開始コドンは、ヌクレオチド位置167から始まる。イントロン1は、ヌクレオチド255〜614を含む;エキソン2は、ヌクレオチド615〜766を含む;イントロン2は、ヌクレオチド767〜1126を含む;エキソン3は、ヌクレオチド1127〜1310を含む;イントロン3は、ヌクレオチド1311〜1670を含む;エキソン4は、ヌクレオチド1671〜1805を含む;イントロン4は、ヌクレオチド1806〜2165を含む;エキソン5は、ヌクレオチド2166〜2234を含む;イントロン5は、ヌクレオチド2235〜2594を含む;エキソン6は、ヌクレオチド2595〜2713を含む;イントロン6は、ヌクレオチド2714〜3073を含む;エキソン7は、ヌクレオチド3074〜3215を含む;イントロン7は、ヌクレオチド3216〜3575を含む;エキソン8は、ヌクレオチド3576〜3692を含む;イントロン8は、ヌクレオチド3693〜4052を含む;エキソン9は、ヌクレオチド4043〜4179を含む;イントロン9は、ヌクレオチド4180〜4539を含む;エキソン10は、ヌクレオチド4540〜4613を含む;イントロン10は、ヌクレオチド4614〜4973を含む;エキソン11は、ヌクレオチド4974〜5063を含む;イントロン11は、ヌクレオチド5064〜5423を含む;エキソン12は、ヌクレオチド5424〜5623を含む;イントロン12は、ヌクレオチド5624〜5983を含む;エキソン13は、ヌクレオチド5984〜6116を含む;イントロン13は、ヌクレオチド6117〜6476を含む;エキソン14は、ヌクレオチド6477〜6567を含む;イントロン14は、ヌクレオチド6568〜6927を含む;エキソン15は、ヌクレオチド6928〜7085を含む;イントロン15は、ヌクレオチド7086〜7445を含む;エキソン16は、ヌクレオチド7446〜7484を含む;イントロン16は、ヌクレオチド7485〜7844を含む;エキソン17は、ヌクレオチド7845〜7988を含む;イントロン17は、ヌクレオチド7987〜8346を含む;エキソン18は、ヌクレオチド8347〜8469を含む;イントロン18は、ヌクレオチド8470〜8829を含む;エキソン19は、ヌクレオチド8830〜8295を含む;イントロン19は、ヌクレオチド8929〜9288を含む;エキソン20は、ヌクレオチド9289〜9474を含む;イントロン20は、ヌクレオチド9475〜9834を含む;エキソン21は、ヌクレオチド9835〜9990を含む;イントロン21は、ヌクレオチド9991〜10350を含む;エキソン22は、ヌクレオチド10351〜10426を含む;イントロン22は、ヌクレオチド10427〜10786を含む;エキソン23は、ヌクレオチド10787〜10933を含む;イントロン23は、ヌクレオチド10934〜11293を含む;エキソン24は、ヌクレオチド11294〜11391を含む;イントロン24は、ヌクレオチド11392〜11751を含む;エキソン25は、ヌクレオチド11752〜11919を含む;イントロン26は、ヌクレオチド11920〜12279を含む;エキソン26は、ヌクレオチド12280〜12327を含む;イントロン26は、ヌクレオチド12328〜12687を含む;エキソン27は、ヌクレオチド12688〜12796を含む;イントロン27は、ヌクレオチド12797〜13156を含む;そしてエキソン28は、ヌクレオチド13157〜15233を含む。エキソン28における終止コドンは、ヌクレオチド位置13516から始まり、そしてエキソン28の残りは、3’非翻訳領域を含む。RNAのスプライシングとイントロンの除去の後、HER1の主な転写物は、エキソン1〜28を含み、そして、1210アミノ酸のポリペプチド(配列番号2)をコードする。HER1遺伝子の選択的スプライシングを受けたアイソフォームは、実施例10に記載され、そして、保持されたイントロン配列を持つアイソフォームが含まれる。このような例示的なHER1アイソフォームの配列は、配列番号126に示され、そして、配列番号127に示されるアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする。
選択的スプライシングを受けたアイソフォームはまた、HER2遺伝子の他のアイソフォームを含み得る。HER2遺伝子(配列番号401)は、26のイントロンにより中断された27のエキソンから構成される。配列番号401として本明細書中に提供されるHER2の例示的なゲノム配列において、エキソン1は、5’非翻訳領域を含むヌクレオチド181〜349を含む。開始コドンは、ヌクレオチド位置277から始まる。イントロン1は、ヌクレオチド350〜709を含む;エキソン2は、ヌクレオチド710〜861を含む;イントロン2は、ヌクレオチド862〜1221を含む;エキソン3は、ヌクレオチド1222〜1435を含む;イントロン3は、ヌクレオチド1436〜1795を含む;エキソン4は、ヌクレオチド1796〜1930を含む;イントロン4は、ヌクレオチド1931〜2290を含む;エキソン5は、ヌクレオチド2291〜2359を含む;イントロン5は、ヌクレオチド2360〜2719を含む;エキソン6は、ヌクレオチド2720〜2835を含む;イントロン6は、ヌクレオチド2836〜3195を含む;エキソン7は、ヌクレオチド3196〜3337を含む;イントロン7は、ヌクレオチド3338〜3697を含む;エキソン8は、ヌクレオチド3698〜3817を含む;イントロン8は、ヌクレオチド3818〜4177を含む;エキソン9は、ヌクレオチド4178〜4304を含む;イントロン9は、ヌクレオチド4305〜4664を含む;エキソン10は、ヌクレオチド4665〜4738を含む;イントロン10は、ヌクレオチド4739〜5098を含む;エキソン11は、ヌクレオチド5099〜5189を含む;イントロン11は、ヌクレオチド5190〜5549を含む;エキソン12は、ヌクレオチド5550〜5749を含む;イントロン12は、ヌクレオチド5750〜6109を含む;エキソン13は、ヌクレオチド6110〜6242を含む;イントロン13は、ヌクレオチド6243〜6602を含む;エキソン14は、ヌクレオチド6603〜6696を含む;イントロン14は、ヌクレオチド6694〜7053を含む;エキソン15は、ヌクレオチド7054〜7214を含む;イントロン15は、ヌクレオチド7215〜7574を含む;エキソン16は、ヌクレオチド7575〜7622を含む;イントロン16は、ヌクレオチド7623〜7982を含む;エキソン17は、ヌクレオチド7983〜8121を含む;イントロン17は、ヌクレオチド8122〜8481を含む;エキソン18は、ヌクレオチド8482〜8604を含む;イントロン18は、ヌクレオチド8605〜8964を含む;エキソン19は、ヌクレオチド8695〜9067を含む;イントロン19は、ヌクレオチド9068〜9427を含む;エキソン20は、ヌクレオチド9428〜9610を含む;イントロン20は、ヌクレオチド9611〜9970を含む;エキソン21は、ヌクレオチド9971〜10126を含む;イントロン21は、ヌクレオチド10127〜10486を含む;エキソン22は、ヌクレオチド10487〜10562を含む;イントロン22は、ヌクレオチド10563〜10922を含む;エキソン23は、ヌクレオチド10923〜11069を含む;イントロン23は、ヌクレオチド11070〜11429を含む;エキソン24は、ヌクレオチド11430〜11527を含む;イントロン24は、ヌクレオチド11528〜11887を含む;エキソン25は、ヌクレオチド11888〜12076を含む;イントロン26は、ヌクレオチド12077〜12436を含む;エキソン26は、ヌクレオチド12437〜12689を含む;イントロン26は、ヌクレオチド12690〜13049を含む;そして、エキソン27は、ヌクレオチド13050〜14018を含む。エキソンにおける終止コドン27は、ヌクレオチド位置13403から始まり、そしてエキソン27の残りは、3’非翻訳領域を含む。RNAのスプライシングとイントロンの除去の後、HER2の主な転写物は、エキソン1〜27を含み、そして、1255アミノ酸のポリペプチド(配列番号4)をコードする。HER2遺伝子の選択的スプライシングを受けたアイソフォームは、実施例10に記載され、そして、保持されたイントロン配列を持つアイソフォームが含まれる。このような例示的なHER2アイソフォームの配列は、配列番号140に示され、そして、配列番号141に示されるアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする。
選択的スプライシングを受けたアイソフォームはまた、HER3遺伝子の他のアイソフォームを含み得る。HER3遺伝子(配列番号402)は、27のイントロンにより中断された28のエキソンから構成される。配列番号402として本明細書中に提供されるHER3の例示的なゲノム配列において、エキソン1は、5’非翻訳領域を含むヌクレオチド181〜460を含む。開始コドンは、ヌクレオチド位置379から始まる。イントロン1は、ヌクレオチド461〜820を含む;エキソン2は、ヌクレオチド821〜972を含む;イントロン2は、ヌクレオチド973〜1332を含む;エキソン3は、ヌクレオチド1333〜1519を含む;イントロン3は、ヌクレオチド1520〜1879を含む;エキソン4は、ヌクレオチド1880〜2005を含む;イントロン4は、ヌクレオチド2006〜2365を含む;エキソン5は、ヌクレオチド2366〜2431を含む;イントロン5は、ヌクレオチド2432〜2791を含む;エキソン6は、ヌクレオチド2792〜2910を含む;イントロン6は、ヌクレオチド2911〜3270を含む;エキソン7は、ヌクレオチド3237〜3412を含む;イントロン7は、ヌクレオチド3413〜3772を含む;エキソン8は、ヌクレオチド3773〜3886を含む;イントロン8は、ヌクレオチド3887〜4246を含む;エキソン9は、ヌクレオチド4247〜4367を含む;イントロン9は、ヌクレオチド4368〜4727を含む;エキソン10は、ヌクレオチド4728〜4801を含む;イントロン10は、ヌクレオチド4802〜5161を含む;エキソン11は、ヌクレオチド5162〜5252を含む;イントロン11は、ヌクレオチド5253〜5612を含む;エキソン12は、ヌクレオチド5613〜5818を含む;イントロン12は、ヌクレオチド5819〜6178を含む;エキソン13は、ヌクレオチド6179〜6311を含む;イントロン13は、ヌクレオチド6312〜6671を含む;エキソン14は、ヌクレオチド6672〜6762を含む;イントロン14は、ヌクレオチド6763〜7122を含む;エキソン15は、ヌクレオチド7123〜7277を含む;イントロン15は、ヌクレオチド7278〜7637を含む;エキソン16は、ヌクレオチド7638〜7691を含む;イントロン16は、ヌクレオチド7692〜8051を含む;エキソン17は、ヌクレオチド8052〜8193を含む;イントロン17は、ヌクレオチド8194〜8553を含む;エキソン18は、ヌクレオチド8554〜8673を含む;イントロン18は、ヌクレオチド8674〜9033を含む;エキソン19は、ヌクレオチド9034〜9132を含む;イントロン19は、ヌクレオチド9133〜9492を含む;エキソン20は、ヌクレオチド9493〜9678を含む;イントロン20は、ヌクレオチド9679〜10038を含む;エキソン21は、ヌクレオチド10039〜10194を含む;イントロン21は、ヌクレオチド10195〜10554を含む;エキソン22は、ヌクレオチド10555〜10630を含む;イントロン22は、ヌクレオチド10631〜10990を含む;エキソン23は、ヌクレオチド10991〜11137を含む;イントロン23は、ヌクレオチド11138〜11497を含む;エキソン24は、ヌクレオチド11498〜11595を含む;イントロン24は、ヌクレオチド11596〜11955を含む;エキソン25は、ヌクレオチド11956〜12147を含む;イントロン26は、ヌクレオチド12148〜12507を含む;エキソン26は、ヌクレオチド12508〜12579を含む;イントロン26は、ヌクレオチド12580〜12939を含む;エキソン27は、ヌクレオチド12940〜13240を含む;イントロン27は、ヌクレオチド13241〜13600を含む;そして、エキソン28は、ヌクレオチド13601〜14875を含む。エキソン28における終止コドンは、ヌクレオチド位置14125から始まり、そしてエキソン28の残りは、3’非翻訳領域を含む。RNAのスプライシングとイントロンの除去の後、ErbB3の主な転写物は、エキソン1〜28を含み、そして、1342アミノ酸のポリペプチド(配列番号6)をコードする。HER3遺伝子の選択的スプライシングを受けたアイソフォームは、実施例10に記載され、そして、保持されたイントロン配列を持つアイソフォームが含まれる。このような例示的なHER3アイソフォームの配列は、配列番号145および147に示され、そして、それぞれ、配列番号146および148に示されるアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする。
選択的スプライシングを受けたアイソフォームはまた、HER4遺伝子の他のアイソフォームを含み得る。HER4遺伝子(配列番号403)は、27のイントロンにより中断された28のエキソンから構成される。配列番号403として本明細書中に提供されるHER4の例示的なゲノム配列において、エキソン1は、5’非翻訳領域を含むヌクレオチド181〜295を含む。開始コドンは、ヌクレオチド位置215から始まる。イントロン1は、ヌクレオチド296〜655を含む;エキソン2は、ヌクレオチド656〜807を含む;イントロン2は、ヌクレオチド808〜1167を含む;エキソン3は、ヌクレオチド1168〜1354を含む;イントロン3は、ヌクレオチド1355〜1714を含む;エキソン4は、ヌクレオチド1715〜1849を含む;イントロン4は、ヌクレオチド1850〜2209を含む;エキソン5は、ヌクレオチド2210〜2275を含む;イントロン5は、ヌクレオチド2276〜2635を含む;エキソン6は、ヌクレオチド2636〜2754を含む;イントロン6は、ヌクレオチド2755〜3114を含む;エキソン7は、ヌクレオチド3115〜3256を含む;イントロン7は、ヌクレオチド3257〜3616を含む;エキソン8は、ヌクレオチド3617〜3730を含む;イントロン8は、ヌクレオチド3731〜4090を含む;エキソン9は、ヌクレオチド4091〜4217を含む;イントロン9は、ヌクレオチド4218〜4577を含む;エキソン10は、ヌクレオチド4578〜4651を含む;イントロン10は、ヌクレオチド4652〜5011を含む;エキソン11は、ヌクレオチド5012〜5102を含む;イントロン11は、ヌクレオチド5103〜5462を含む;エキソン12は、ヌクレオチド5463〜5662を含む;イントロン12は、ヌクレオチド5663〜6022を含む;エキソン13は、ヌクレオチド6023〜6155を含む;イントロン13は、ヌクレオチド6156〜6515を含む;エキソン14は、ヌクレオチド6516〜6609を含む;イントロン14は、ヌクレオチド6610〜6969を含む;エキソン15は、ヌクレオチド6970〜7124を含む;イントロン15は、ヌクレオチド7125〜7484を含む;エキソン16は、ヌクレオチド7485〜7559を含む;イントロン16は、ヌクレオチド7560〜7919を含む;エキソン17は、ヌクレオチド7920〜8052を含む;イントロン17は、ヌクレオチド8053〜8412を含む;エキソン18は、ヌクレオチド8413〜8535を含む;イントロン18は、ヌクレオチド8536〜8895を含む;エキソン19は、ヌクレオチド8896〜8994を含む;イントロン19は、ヌクレオチド8995〜9354を含む;エキソン20は、ヌクレオチド9355〜9540を含む;イントロン20は、ヌクレオチド9541〜9900を含む;エキソン21は、ヌクレオチド9901〜10056を含む;イントロン21は、ヌクレオチド10057〜10416を含む;エキソン22は、ヌクレオチド10417〜10492を含む;イントロン22は、ヌクレオチド10493〜10852を含む;エキソン23は、ヌクレオチド10853〜10999を含む;イントロン23は、ヌクレオチド11000〜11359を含む;エキソン24は、ヌクレオチド11360〜11457を含む;イントロン24は、ヌクレオチド11458〜11817を含む;エキソン25は、ヌクレオチド11818〜11988を含む;イントロン26は、ヌクレオチド11989〜12348を含む;エキソン26は、ヌクレオチド12349〜12396を含む;イントロン26は、ヌクレオチド12397〜12756を含む;エキソン27は、ヌクレオチド12757〜13054を含む;イントロン27は、ヌクレオチド13055〜13414を含む;そして、エキソン28は、ヌクレオチド13415〜15385を含む。エキソン28における終止コドンは、ヌクレオチド位置13858から始まり、そしてエキソン28の残りは、3’非翻訳領域を含む。RNAのスプライシングとイントロンの除去の後、HER4の主な転写物は、エキソン1〜28を含み、そして、1308アミノ酸のポリペプチド(配列番号8)をコードする。HER4遺伝子の選択的スプライシングを受けたアイソフォームは、実施例10に記載され、そして、保持されたイントロン配列を持つアイソフォームが含まれる。このような例示的なHER4アイソフォームの配列は、配列番号152、配列番号154、配列番号156または配列番号158に示され、そして、それぞれ、配列番号153、配列番号155、配列番号157または配列番号159に示されるアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする。
選択的スプライシングを受けたアイソフォームはまた、IGF−1R遺伝子のアイソフォームを含み得る。IGF1−R遺伝子(配列番号404)は、20のイントロンにより中断された21のエキソンから構成される。配列番号404として本明細書中に提供されるIGF1−Rの例示的なゲノム配列において、エキソン1は、5’非翻訳領域を含むヌクレオチド181〜306を含む。開始コドンは、ヌクレオチド位置213から始まる。イントロン1は、ヌクレオチド307〜666を含む;エキソン2は、ヌクレオチド667〜1212を含む;イントロン2は、ヌクレオチド1213〜1572を含む;エキソン3は、ヌクレオチド1573〜1884を含む;イントロン3は、ヌクレオチド1885〜2255を含む;エキソン4は、ヌクレオチド2256〜2394を含む;イントロン4は、ヌクレオチド2395〜2754を含む;エキソン5は、ヌクレオチド2755〜2899を含む;イントロン5は、ヌクレオチド2990〜3259を含む;エキソン6は、ヌクレオチド3260〜3474を含む;イントロン6は、ヌクレオチド3475〜3834を含む;エキソン7は、ヌクレオチド3835〜3961を含む;イントロン7は、ヌクレオチド3962〜4321を含む;エキソン8は、ヌクレオチド4322〜4560を含む;イントロン8は、ヌクレオチド4561〜4920を含む;エキソン9は、ヌクレオチド4921〜5088を含む;イントロン9は、ヌクレオチド5089〜5448を含む;エキソン10は、ヌクレオチド5449〜5653を含む;イントロン10は、ヌクレオチド5654〜6013を含む;エキソン11は、ヌクレオチド6014〜6297を含む;イントロン11は、ヌクレオチド6298〜6657を含む;エキソン12は、ヌクレオチド6658〜6794を含む;イントロン12は、ヌクレオチド6795〜7154を含む;エキソン13は、ヌクレオチド7155〜7314を含む;イントロン13は、ヌクレオチド7315〜7674を含む;エキソン14は、ヌクレオチド7675〜7777を含む;イントロン14は、ヌクレオチド7778〜8137を含む;エキソン15は、ヌクレオチド8138〜8208を含む;イントロン15は、ヌクレオチド8209〜8568を含む;エキソン16は、ヌクレオチド8569〜8798を含む;イントロン16は、ヌクレオチド8799〜9158を含む;エキソン17は、ヌクレオチド9159〜9269を含む;イントロン17は、ヌクレオチド9270〜9629を含む;エキソン18は、ヌクレオチド9630〜9789を含む;イントロン18は、ヌクレオチド9790〜10149を含む;エキソン19は、ヌクレオチド10150〜10279を含む;イントロン19は、ヌクレオチド10280〜10639を含む;エキソン20は、ヌクレオチド10640〜10774を含む;イントロン20は、ヌクレオチド10775〜11134を含む、そしてエキソン21は、ヌクレオチド11135〜12356を含む。エキソン21における終止コドンは、ヌクレオチド位置11514から始まり、そしてエキソン21の残りは、3’非翻訳領域を含む。RNAのスプライシングとイントロンの除去の後、IGF1−Rの主な転写物は、エキソン1〜21を含み、そして、1367アミノ酸のポリペプチド(配列番号290)をコードする。IGF1−R遺伝子の選択的スプライシングを受けたアイソフォームは、実施例11に記載され、そして、保持されたイントロン配列を持つアイソフォームが含まれる。このような例示的なIGF1−Rアイソフォームの配列は、配列番号297または299に示され、そして、それぞれ、配列番号298または300に示されるアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする。
本明細書において提供され、そして、配列番号127、配列番号141、配列番号146、配列番号148、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159、配列番号298もしくは配列番号300に示される、HER1、HER2、HER3、HER4およびIGF1−Rの選択的スプライシングを受けたアイソフォームは、本明細書において提供されるECD多量体の形成において使用され得る。あるいは、これらのアイソフォームは、その同系レセプターによって媒介される任意の疾患の処置のために、単独で、または、任意の他のアイソフォームと組合せて使用され得る。このような疾患の例は、本明細書において記載され、そして、当業者に公知であるような、任意の脈管形成疾患、腫瘍形成疾患または炎症性疾患、特に、癌である。
2.ECD多量体の形成
HER ECD多量体を含むECD多量体は、二量体、三量体またはより高次の多量体を形成するために、共有結合されたか、非共有結合されたか、または、化学的に連結されたECDのレセプターの多量体であり得る。いくつかの場合、多量体は、2以上のECDポリペプチドの二量体化により形成され得る。2つのECDポリペプチド間の多量体化は、自発的であっても、2以上のポリペプチドの強制的な結合に起因して生じてもよい。一例では、多量体は、異なるECDポリペプチド上のシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合によって連結され得る。別の例では、多量体は、可溶性ポリペプチドに融合されたペプチド部分との共有結合性もしくは非共有結合性の相互作用を介して接合されたECDポリペプチドを含み得る。このようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)または多量体化を促進する特性を持つペプチドであり得る。さらなる例では、多量体は、例えば、ヘテロ二官能性リンカーを用いるなどによって、化学結合により、2つのポリペプチド間で形成され得る。
a.ペプチドリンカー
ペプチドリンカーは、例えば、1つの多量体化パートナーがHERファミリーレセプターのECDの全体もしくは一部分である多量体のような、ポリペプチド多量体を生成するために使用され得る。一例では、ペプチドリンカーは、第一のポリペプチドのC末端および第二のポリペプチドのN末端に融合され得る。この構造は、少なくとも1つ(好ましくは、2、3、4またはそれより多く)の可溶性ポリペプチドが、そのそれぞれの末端において、ペプチドリンカーを介して互いに連結されるように、複数回繰り返され得る。例えば、多量体ポリペプチドは、配列Z−X−Zを有し得、ここで、ZおよびZは各々が、細胞表面ポリペプチドのECDの全体もしくは一部分の配列であり、そして、Xは、ペプチドリンカーの配列である。いくつかの場合には、Zおよび/またはZは、HERファミリーレセプターのECDの全体もしくは一部分である。別の例では、ZおよびZは、同じであるか、または異なる。別の例では、ポリペプチドは、Z−X−Z(−X−Z)の配列を有し、ここで、「n」は任意の整数であり、すなわち、一般には1または2である。
代表的には、ペプチドリンカーは、可溶性のECDポリペプチドに、隣接する可溶性ECDポリペプチドと結合を形成させるのに十分な長さのものである。ペプチドリンカーの例としては、以下が挙げられる:−Gly−Gly−、GGGGG(配列番号273)、GGGGSもしくは(GGGGS)n(配列番号174)、SSSSGもしくは(SSSSG)n(配列番号187)、GKSSGSGSESKS(配列番号175)、GGSTSGSGKSSEGKG(配列番号176)、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG(配列番号177)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号178)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号179)、またはAlaAlaProAlaもしくは(AlaAlaProAla)n(配列番号188)、ここで、nは1〜6(例えば、1、2、3または4)である。例示的なリンカーとしては、以下が挙げられる:
(1)NcoI末端有のGly4Ser 配列番号189
CCATGGGCGG CGGCGGCTCT GCCATGG
(2)NcoI末端有の(Gly4Ser)2 配列番号190
CCATGGGCGG CGGCGGCTCT GGCGGCGGCG GCTCTGCCAT GG
(3)NcoI末端有の(Ser4Gly)4 配列番号191
CCATGGCCTC GTCGTCGTCG GGCTCGTCGT CGTCGGGCTC GTCGTCGTCG GGCTCGTCGT CGTCGGGCGC CATGG
(4)NcoI末端有の(Ser4Gly)2 配列番号192
CCATGGCCTC GTCGTCGTCG GGCTCGTCGT CGTCGGGCGC CATGG。
連結部分は、例えば、Huston et al.(1988)PNAS 85:5879−5883、Whitlow et al.(1993)Protein Engineering 6:989−995およびNewton et al.,(1996)Biochemistry 35:545−553に記載される。他の適切なペプチドリンカーとしては、米国特許第4,751,180号または同第4,935,233号(これらは本明細書により参考として援用される)に記載される任意のものが挙げられる。所望のペプチドリンカーをコードするポリヌクレオチドは、任意の適切な従来の技術を用いて、可溶性ECDポリペプチドをコードするポリヌクレオチド間に、そして、このポリヌクレオチドと同じ読み取り枠で挿入され得る。一例では、融合ポリペプチドは、ペプチドリンカーによって隔てられた、2〜4の可溶性ECDポリペプチド(HER ECDポリペプチドの全体もしくは一部分であるものを含む)を有する。
b.ヘテロ二官能性連結因子
ヘテロ多量体融合ポリペプチドを作製するための、ECDポリペプチドの別のECDポリペプチドへの連結は、直接的であっても間接的であってもよい。例えば、2以上のECDポリペプチドの連結は、化学結合によって達成されても、当該分野で公知であるかまたは本明細書において提供される任意のもののような、ヘテロ二官能性リンカーによって促進されてもよい。
アミノ基とチオール基との間に共有結合を形成し、タンパク質中にチオール基を導入するために使用される多数のヘテロ二官能性架橋剤は、当業者に公知である(例えば、PIERCE CATALOG,ImmunoTechnology Catalog & Handbook,1992−1993を参照のこと、この文献は、このような試薬の調製および使用を記載し、そして、このような試薬の市販の供給源を提供する;また、例えば、Cumber et al.(1992)Bioconjugate Chem.3:397−401;Thorpe et al.(1987)Cancer Res.47:5924−5931;Gordon et al.(1987)Proc.Natl.Acad Sci.84:308−312;Walden et al.(1986)J.Mol.Cell Immunol.2:191−197;Carlsson et al.(1978)Biochem.J.173:723−737;Mahan et al.91987)Anal.Biochem.162:163−170;Wawryznaczak et al.(1992)Br.J.Cancer 66:361−366;Fattom et al.(1992)Infection & Immun.60:584−589も参照のこと)。これらの試薬は、ECDポリペプチドのN末端部分と、別のECDポリペプチドのC末端部分との間、または、これらの部分の各々とリンカーとの間に共有結合を形成するために使用され得る。これらの試薬としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:N−スクシンイミジル−3−(2−ミリジルジチオ)プロピオネート(SPDP;ジスルフィドリンカー);スルホスクシンイミジル 6−[3−(2−ミリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SPDP);スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチルベンジルチオスルフォート(SMBT、嵩高い二硫酸塩リンカー);スクシンイミジル 6−[3−(2−ミリジルジチオ)プロピオンアミド]−ヘキサノエート(LC−SPDP);スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC);スクシンイミジル 3−(2−ミリジルジチオ)ブチレート(SPDB;嵩高いジスルフィド結合リンカー);スルホスクシンイミジル 2−(7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセトアミド) エチル−1,3’−ジチオプロピオネート(SAED);スルホ−スクシンイミジル 7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセテート(SAMCA);スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ミリジルジチオ)トルアミド]−ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);1,4−ジ−[3’−(2’−ミリジルジチオ)プロピオン−アミド]ブタン(DPDPB);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ミリジルチオ)トルエン(SMPT、嵩高い二硫酸塩リンカー);スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリミジル−チオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(MBS);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミドエステル(スルホ−MBS);N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(SIAB;チオエーテルリンカー);スルホスクシンイミジル−(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(スルホ−SIAB);スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB);スルホスクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ−SMPB);アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)。これらのリンカーは例えば、柔軟性もしくは溶解性を高めるもの、または、立体障害を提供するかもしくは排除するもののような、ペプチドリンカーと組合せて使用され得る。ポリペプチド分子を別の分子に連結するための当業者に公知の任意の他のリンカーが使用され得る。一般的な特性は、結果として生じる分子が生体適合性(ヒトを含む動物への投与に関して)となり、そして、結果として生じる分子が、HERのような細胞表面分子または他の細胞表面分子もしくはレセプターの活性を調節するヘテロ多量体分子となるようなものである。
c.ポリペプチド多量体化ドメイン
2以上のポリペプチドの相互作用は、それ自体が相互作用して安定な構造を形成し得る任意の部分もしくは他のポリペプチドへの直接的もしくは間接的な結合によって促進され得る。例えば、別々にコードされるポリペプチド鎖が、多量体化によって結合され得、それによって、ポリペプチドの多量体化が、多量体化ドメインによって媒介される。代表的には、多量体化ドメインは、第一のキメラポリペプチドと第二のキメラポリペプチドとの間の安定なタンパク質−タンパク質相互作用の形成を提供する。キメラポリペプチドは、例えば、ポリペプチドのECD部分をコードする核酸の、多量体化ドメインをコードする核酸との(直接的または間接的な)結合を含む。代表的には、少なくとも1つの多量体化パートナーは、多量体化ドメインに直接的または間接的に連結されたHER ECDの全体もしくは一部分をコードする核酸である。ホモ多量体もしくはヘテロ多量体のポリペプチドは、別々のキメラポリペプチドの共発現から生成され得る。第一および第二のキメラポリペプチドは、同じであっても異なっていてもよい。
一般に、多量体化ドメインは、安定なタンパク質−タンパク質相互作用を形成し得る任意のものを含む。多量体化ドメインは、免疫グロブリン配列、ロイシンジッパー、疎水性領域、親水性領域、または、ホモ多量体もしくはヘテロ多量体のキメラ分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオールを介して相互作用し得る。さらに、多量体化ドメインは、例えば、米国特許出願第08/399,106号に記載されるような穴(hole)を含むアミノ酸配列に対して相補的な隆起部を含むアミノ酸配列を含み得る。このような多量体化領域は、立体的な相互作用が安定な相互作用を促進するだけでなく、さらに、キメラ単量体の混合物から、ホモ二量体よりも多くのヘテロ二量体の形成を促進するように加工され得る。一般に、隆起部は、第一のポリペプチドの界面から、小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。必要に応じて、この隆起部に対し同一もしくは類似のサイズの代償性の腔が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第二のポリペプチドの界面上に作製される。
例えば、本明細書において提供される任意のもののようなECDキメラポリペプチドの多量体化ドメインのN末端もしくはC末端への結合は、いずれの場所においてもなされるが、代表的には、そのN末端もしくはC末端を介してなされて、キメラポリペプチドを形成し得る。この結合は直接的なものであっても、リンカーを介した間接的なものであってもよい。また、キメラポリペプチドは、融合タンパク質であっても、共有結合性もしくは非共有結合性の相互作用などにより、化学結合によって形成されてもよい。例えば、多量体化ドメインを含むキメラポリペプチドを調製するとき、ポリペプチドのECDの全体もしくは一部分をコードする核酸は、直接的もしくは間接的にまたは必要に応じてリンカードメインを介して、多量体化ドメイン配列をコードする核酸に対して作動可能に連結され得る。代表的には、構築物は、ECDポリペプチドのC末端が多量体化ドメインのN末端に結合されたキメラポリペプチドをコードする。いくつかの場合では、構築物は、ECDポリペプチドのN末端が多量体化ドメインのN末端もしくはC末端に結合されたキメラタンパク質をコードし得る。
ポリペプチドの多量体は、2つの同じかもしくは異なるECDポリペプチドを、直接的もしくは間接的に多量体化ドメインに連結することによって生成された2つのキメラタンパク質を含む。多量体化ドメインがポリペプチドであるいくつかの例では、ECD−多量体化ドメインキメラポリペプチドをコードする遺伝子融合物が、適切な発現ベクター中に挿入される。結果として生じるECD−多量体化ドメインキメラタンパク質は、この組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞において発現され、そして、集合して多量体となることを可能にし得、ここで、この多量体化ドメインは、相互作用して多価ポリペプチドを形成する。多量体化ドメインのECDポリペプチドへの化学結合は、上述のようなヘテロ二官能性リンカーを用いて達成され得る。
結果として生じるキメラポリオペおよびそこから形成される多量体は、以下のFの節に詳述されるような任意の適切な方法によって、例えば、プロテインAもしくはプロテインGのカラムを通すアフィニティクロマトグラフィーなどによって、精製され得る。異なるECDキメラポリペプチドをコードする2つの核酸分子が細胞内に形質転換される場合、ホモ二量体およびヘテロ二量体の形成が起こる。発現のための条件は、ヘテロ二量体の形成が、ホモ二量体の形成を上回って起こるように調節され得る。
i.免疫グロブリンドメイン
多量体化ドメインとしては、追加アミノ酸配列の多量体化ドメインと反応して分子間ジスルフィド結合を形成し得る遊離チオールを含むものが挙げられる。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgMおよびIgE)の一部分が挙げられ得る。一般に、このような部分は、免疫グロブリンの定常領域(Fc)である。抗体由来のポリペプチド(Fcドメインを含む)の種々の部分に融合された可溶性ECDポリペプチドを含む融合タンパク質の調製が記載されており、例えば、Ashkenazi et al.(1991)PNAS 88:10535;Byrn et al.(1990)Nature,344:677;およびHollenbaugh and Aruffo,(1992)「Construction of Immnoglobulin Fusion Proteins」Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pp.10.19.1−10.19.11を参照のこと。
抗体は、特定の抗原に結合し、そして、ジスルフィド結合で共有結合された2つの同一の重鎖と、2つの同一の軽鎖とを含む。重鎖および軽鎖の両方が、抗原と結合する可変領域と、定常(C)領域とを含む。各鎖において、一方のドメイン(V)は、分子の抗体特異性に依存する多様なアミノ酸配列を持つ。もう一方のドメイン(C)は、同じ分類の分子の中で共通する幾分一定の配列を持つ。これらのドメインは、アミノ末端から配列が番号付けされる。例えば、IgG軽鎖は、V−Cの順序でN末端からC末端へと連結された2つの免疫グロブリンドメインから構成され、これらは、それぞれ、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインと呼ばれる。IgG重鎖は、V−C1−C2−C3の順序でN末端からC末端へと連結された4つの免疫グロブリンドメインから構成され、これらは、それぞれ、可変重鎖ドメイン、定常重鎖ドメイン1、定常重鎖ドメイン2および定常重鎖ドメイン3と呼ばれる。結果として生じる抗体分子は、各重鎖がジスルフィド結合によって軽鎖に連結され、そして、2つの重鎖がジスルフィド結合によって互いに連結された、4つの鎖の分子である重鎖の結合は、重鎖のヒンジ領域として知られる柔軟性のある領域によって媒介される。抗体分子のフラグメントは、例えば、酵素的切断などによって生成され得る。例えば、パパインによるプロテアーゼ切断の際に、重鎖定常領域、すなわちFcドメインの二量体が、2つのFab領域(すなわち、可変領域を含む部分)から切断される。
ヒトにおいては、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、ミュー(μ)およびアルファ(α)およびイプシロン(ε)と名付けられたその重鎖に基づいて分類される、5つの抗体アイソタイプが存在し、これらはそれぞれ、抗体の、IgD、IgG、IgM、IgAおよびIgEのクラスを生じる。IgAおよびIgGのクラスは、サブクラスIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。免疫グロブリン重鎖間の配列相違は、種々のアイソタイプにおいて、例えば、Cドメインの数、ヒンジ領域の存在、ならびに、分子間ジスルフィド結合の数および位置の違いをもたらす。例えば、IgMおよびIgEの重鎖は、ヒンジ領域にとってかわる、余剰のCドメイン(C4)を含む。IgG、IgDおよびIgAのFc領域は、そのCγ3、Cδ3およびCα3ドメインを介して互いに対になるが、IgMおよびIGEのFc領域は、そのCμ4およびCε4ドメインを介して二量体化する。IgMおよびIgAは、それぞれ、10および4の抗原結合部位を持つ多量体構造を形成する。
本明細書において提供されるECD免疫グロブリンキメラポリペプチドは、全長の免疫グロブリンポリペプチドを含む。あるいは、免疫グロブリンポリペプチドは、全長よりも短く、すなわち、重鎖、軽鎖、Fab、Fab2、FvまたはFcを含む。一例では、ECD免疫グロブリンキメラポリペプチドは、単量体またはヘテロ多量体もしくはホモ多量体として、そして、具体的には、二量体もしくは四量体として組み立てられる。種々の構造の鎖または基本単位が、単量体およびヘテロ多量体およびホモ多量体を組み立てるために利用され得る。例えば、ECDポリペプチドは、免疫グロブリン分子のCドメイン、Cドメイン、VドメインまたはVドメインの全体もしくは一部分を含む、免疫グロブリン分子の全体もしくは一部分に融合され得る(例えば、米国特許第5,116,964号を参照のこと)。キメラECDポリペプチドは、適切な核酸分子で形質転換された哺乳動物細胞によって、容易に産生および分泌され得る。分泌される形態としては、ECDポリペプチドが重鎖二量体中に存在するもの;軽鎖単量体もしくは二量体;ならびに、ECDポリペプチドが1以上の軽鎖もしくは重鎖に融合された重鎖および軽鎖のヘテロ二量体であって、最大で4つ全ての可変領域アナログが置換されているもの、が挙げられる。いくつかの場合、1または1より多い核酸融合分子が、多量体を産生するために宿主細胞中に形質転換され得、ここで、この多量体のECD部分は同じであるか、または、異なる。いくつかの例では、非ECDポリペプチド軽鎖−重鎖可変様ドメインが存在し、それによって、ヘテロ二官能性抗体を産生する。いくつかの例では、ヒンジのジスルフィドを欠く免疫グロブリン分子の一部分に対して融合されたキメラポリペプチドが作製され得、ここで、この2つのECDポリペプチド部分の非共有結合性もしくは共有結合性の相互作用が、この分子をホモ二量体もしくはヘテロ二量体中に会合させる。
(a)Fcドメイン
代表的には、ECDキメラポリペプチドの免疫グロブリン部分は、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖、最も通常は、重鎖の定常ドメインを含む。ヒトIgGサブタイプについての重鎖定常領域の例示的な配列は、配列番号163(IgG1)、配列番号164(IgG2)、配列番号165(IgG3)および配列番号166(IgG4)に示される。例えば、配列番号163に示される例示的な重鎖定常領域について、C1ドメインはアミノ酸1〜98に対応し、ヒンジ領域はアミノ酸99〜110に対応し、C2ドメインはアミノ酸111〜223に対応し、そして、C3ドメインはアミノ酸224〜330に対応する。
一例では、免疫グロブリンポリペプチドキメラタンパク質は、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含み得る。代表的に、このような融合物は、少なくとも1つの機能的に活性なヒンジと、免疫グロブリン重鎖の定常領域のC2ドメインおよびC3ドメインとを保持する。例えば、IgG1の全長Fc配列は、配列番号163に示される配列のアミノ酸99〜330を含む。hIgG1についての例示的なFc配列は、配列番号167に示され、そして、配列番号163のアミノ酸100〜110に対応するヒンジ配列のほぼ全体と、配列番号163に示されるC2ドメインおよびC3ドメインについての完全な配列とを含む。別の例示的なFcポリペプチドは、PCT出願公開WO 93/10151に示され、そして、ヒトIgG1抗体のFc領域のN末端のヒンジ領域からネイティブなC末端へとのびる一本鎖ポリペプチドである(配列番号168)。結合が起こる正確な部位は重要ではない:特定の部位が周知であり、そして、ECDポリペプチドの生物学的活性、分泌または結合特性を最適化するために選択され得る。例えば、他の例示的なFcポリペプチド配列は、配列番号163に示される配列のアミノ酸C109またはP113において開始する(例えば、US 2006/0024298を参照のこと)。
hIgG1 Fcに加えて、他のFc領域もまた、本明細書において提供されるECDキメラポリペプチド内に含まれ得る。例えば、Fc/FcγR相互作用によって媒介されるエフェクター機能が最小限にされるべき場合、補体またはエフェクター細胞の回収(recruit)が乏しいIgG(例えば、IgG2またはIgG4のFc)との融合が企図される。さらに、Fc融合物は、任意の抗体クラス(抗体のIgG(ヒトのサブクラスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4を含む)、IgA(ヒトのサブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgEおよびIgMクラスを含むがこれらに限定されない)に属する免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる免疫グロブリン配列を含み得る。さらに、Fcを別のポリペプチドに共有結合してFcキメラを作製するために、リンカーが使用され得る。
改変されたFcドメインもまた、本明細書において、ECDポリペプチドとのキメラにおいて使用するために企図される。例示的な改変については、例えば、米国特許出願番号US 2006/0024298;および国際特許出願公開WO 2005/063816を参照のこと。いくつかの例では、Fc領域は、野生型の免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能から変更された(すなわち、多いかまたは少ない)エフェクター機能を有するようなものである。抗体のFc領域は、多数のFcレセプターおよびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と呼ばれる多数の重要な機能的能力を与える。Fcエフェクター機能としては、例えば、Fcレセプター結合、補体結合、およびT細胞欠乏活性が挙げられる(例えば、米国特許第6,136,310を参照のこと)。T細胞欠乏活性、Fcエフェクター機能および抗体の安定性をアッセイする方法は、当該分野で公知である。例えば、IgG分子のFc領域は、FcγRと相互作用する。これらのレセプターは、種々の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、脂肪細胞、血小板、B細胞、大きな顆粒状リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびγδT細胞が挙げられる)において発現される。Fc/FcγR複合体の形成は、これらのエフェクター細胞を、再度、結合部位へと回収し、代表的には、細胞内でのシグナル伝達事象と、その後の重要な免疫応答(例えば、炎症性メディエーターの放出、B細胞活性化、エンドサイトーシス、食作用および細胞傷害性アタック)をもたらす。細胞傷害性および食作用性のエフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞を破壊する強力な機構である。FcγRを発現する細胞傷害性の細胞による、標的細胞上に結合した抗体の認識および溶解は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる。種々の抗体アイソタイプについての他のFcレセプターとしては、FcεR(IgE)、FcαR(IgA)およびFcμR(IgM)が挙げられる。
したがって、改変されたFcドメインは、変更された親和性を有し得る(Fcレセプターに対する親和性が増加したもの、低下したもの、親和性がないものが挙げられるがこれらに限定されない)。例えば、異なるIgGサブクラスは、FcγRに対して異なる親和性を有し、IgG1およびIgG3は、代表的には、実質的にIgG2およびIgG4よりも良好にレセプター結合する。さらに、異なるFcγRは、異なるエフェクター機能を媒介する。FcγR1、FcγRIIa/cおよびFcγRIIIaは、免疫複合体により誘発される活性化の正の調節因子であり、免疫レセプターチロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を持つ細胞内ドメインを有することによって特徴付けられる。しかし、FcγRIIbは、免疫レセプターチロシンベースの抑制モチーフ(ITIM)を有し、したがって、抑制性である。したがって、レセプターに対するFc領域の親和性の変更は、Fcドメインにより誘導されるエフェクター機能を調節し得る。
一例では、例えばADCCのようなエフェクター機能をより良好に媒介するために特定のFcγRへの結合を最適化するために改変されたFc領域が使用される。このような改変されたFc領域は、配列番号167に示される例示的なFc配列のG20S、G20A、S23D、S23E、S23N、S23Q、S23T、K30H、K30Y、D33Y、R39Y、E42Y、T44H、V48I、S51E、H52D、E56Y、E56I、E56H、K58E、G65D、E67L、E67H、S82A、S82D、S88T、S108G、S108I、K110T、K110E、K110D、A111D、A114Y、A114L、A114I、I116D、I116E、I116N、I116Q、E117Y、E117A、K118T、K118F、K118AおよびP180Lのうちの任意の1以上に対応する特定の改変またはこれらに組合せを含み得る。これらの変異を含む改変されたFcは、例えば、活性化レセプターFcγIIIaのようなFcRへの結合が増強され得るか、そして/または、抑制性レセプターFcγRIIbへの結合が減少され得る(例えば、US 2006/0024298を参照のこと)。FcRへの結合が増加するように改変されたFc領域は、ECDポリペプチドに連結された場合でさえも、患者における癌細胞の破壊を促進するのにより効果的であり得る。抗体が腫瘍細胞を破壊するのには多数の可能性のある機構が存在し、この機構としては、必要な増殖経路の遮断による抗増殖、アポトーシスをもたらす細胞内シグナル伝達、レセプターのダウンレギュレーションおよび/もしくはターンオーバーの増強、ADCC、ならびに、順応性免疫応答の促進を介するものが挙げられる。
別の例では、FcγRとの結合を減少もしくは除去するための置換を持つ種々のFc変異体もまた公知である。このようなムテインは、Fcにより媒介されるエフェクター機能の減少もしくは排除が必要とされる場合に有用である。これはしばしば、拮抗作用はあるが、標的抗原を持つ細胞を殺傷しないことが望ましい場合に当てはまる。このようなFcの例は、米国特許第5,457,035号に記載され、そして、配列番号169に示されるFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaへと変化し、アミノ酸20がLeuからGluへと変化し、そして、アミノ酸22がGlyからAlaへと変化していることを除いて、配列番号168に示されるFc配列と同一である。同様の変異が、例えば、配列番号167に示される例示的なFc配列のような任意のFc配列においてなされ得る。このムテインは、Fcレセプターに対して減少した親和性を示す。
いくつかの場合、本明細書において提供されるECDポリペプチドFcキメラタンパク質は、補体タンパク質C1qへの結合を増強するように改変され得る。FcRと相互作用するのに加えて、Fcはまた、補体タンパク質C1qと相互作用して、補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する。C1qは、セリンプロテアーゼC1rおよびC1sと複合体を形成して、C1複合体を形成する。C1qは6つの抗体を結合し得るが、補体カスケードの活性化には、2つのIgGへの結合で十分である。FcRとのFcの相互作用と同様に、異なるIgGサブクラスは、C1qに対して異なる親和性を持ち、そして、代表的に、IgG1およびIgG3は、IgG2およびIgG4よりも実質的に良好に結合する。したがって、C1qへの結合が増加した、改変されたFcは、増強されたCDCを媒介し、これは、抗体が腫瘍細胞の破壊を促進する潜在的な機構である。C1qへの結合を増加させるFc領域における例示的な改変としては、配列番号167におけるK110W、K110YおよびE117Sに対応するアミノ酸の改変が挙げられるがこれらに限定されない。
さらなる例において、そのFcRnへの結合が改変され、それによって、ECD−Fcキメラポリペプチドの薬物動態が改善されたFc領域が利用され得る。FcRnは、新生児のFcRであり、この結合は、エンドサイトーシスされた抗体をエンドソームから回収して血流へと戻す。このプロセスは、全長分子の大きなサイズに起因する腎臓での濾過の妨害と組み合わさって、1週間〜3週間の範囲の望ましい抗体の血清中半減期をもたらす。FcのFcRnへの結合はまた、抗体の輸送においても役割を担う。FcRnへの結合の増強についてのFcタンパク質における例示的な改変としては、配列番号267におけるT34Q、T34E、M212LおよびM212Fに対応するアミノ酸の改変が挙げられる。
代表的には、ポリペプチド多量体は、2つの同じかまたは異なるECDポリペプチドをFcポリペプチドに直接的もしくは間接的に連結することによって作製された2つのキメラタンパク質の二量体である。いくつかの例では、ECD−Fcキメラタンパク質をコードする遺伝子融合物は、適切な発現ベクター中に挿入される。結果として生じるECD−Fcキメラタンパク質は、組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞において発現され、そして、かなり類似した抗体分子を組み立てることを可能にし得、ここで、Fc分子間で分子間ジスルフィド結合が形成して、二価のECDポリペプチドが得られる。代表的には、宿主細胞および発現系は、配列番号167のN81に対応するアミノ酸のグリコシル化を可能にする哺乳動物の発現系である。この位置におけるグリコシル化は、Fcタンパク質を安定化させるために重要である。他の宿主細胞もまた使用され得るが、この位置におけるグリコシル化は、考慮の対象ではない。
結果として生じるF部分を含むキメラポリペプチドと、そこから形成される多量体とは、プロテインAもしくはプロテインGのカラムを通すアフィニティクロマトグラフィーによって容易に精製され得る。異なるECDキメラポリペプチドをコードする2つの核酸が細胞中に形質転換される場合、ヘテロ二量体の形成は、生化学的に達成されなければならない。というのも、Fcドメインを有するECDキメラ分子は、ジスルフィド結合されたホモ二量体としても発現されるからである。したがって、ホモ二量体は、分子間ジスルフィドの破壊を促進するが、鎖内ジスルフィドには影響を及ぼさない条件下で減少され得る。代表的には、異なる細胞外部分を持つキメラ単量体は、等モル量で混合され、そして、酸化されてホモ二量体およびヘテロ二量体の混合物を形成する。この混合物の成分は、クロマトグラフィー技術によって分離される。あるいは、このタイプのヘテロ二量体の形成は、ECDポリペプチドと、その後に、hIgGのFcドメインと、junもしくはc−fosのロイシンジッパーのいずれかとを含むECD融合分子を、遺伝子操作および発現させることによって偏らされ得る(以下を参照のこと)。ロイシンジッパーは、優先的にヘテロ二量体を形成するので、これらは、所望される場合、ヘテロ二量体の形成を駆動するために使用され得る。Fc領域を含むECDキメラポリペプチドはまた、金属キレートまたは他のエピトープを持つタグを含むように加工され得る。タグを付けたドメインは、金属−キレートクロマトグラフィーによる迅速な精製のために、および/または、ウェスタンブロットによる検出、免疫沈降もしくはバイオアッセイにおける活性の除去/ブロッキングを可能にするために、抗体によって使用され得る。
(b)腔内の隆起部(すなわち、ノブと穴)
一局面では、ECD多量体は、ホモ低重合体化よりもヘテロ低重合体化を促進するために、第一のキメラポリペプチドと第二のキメラポリペプチドとの間に界面を含むように加工される。代表的には、第一のECDキメラポリペプチドおよび第二のECDキメラポリペプチドの一方または両方の多量体化ドメインは、抗体分子の界面がヘテロ二量体化を助長および/もしくは促進するように改変された、改変抗体フラグメントである。いくつかの場合では、抗体分子は改変されたFc領域である。したがって、改変は、第一のFcポリペプチド内に隆起部を、そして、第二のFcポリペプチド内に腔を含み、その結果、この隆起部がこの腔内に位置付けられて、第一および第二のFc含有キメラECDポリペプチドの複合体化を促進することが可能となる。
代表的には、第一のキメラポリペプチドと第二のキメラポリペプチドとの安定な相互作用は、免疫グロブリン定常ドメインのC3ドメインの十分な部分を含む同じかまたは異なる多量体化ドメインの界面相互作用を介する。種々の構造的データおよび機能的データが、抗体重鎖の会合は、C3ドメインにより導かれることを示唆している。例えば、X線結晶解析法は、Fc領域内でのヒトIgG1重鎖間の分子間会合は、C3ドメイン間の広範囲にわたるタンパク質/タンパク質相互作用を含むが、グリコシル化されたC2ドメインは、その糖質を介して相互作用することを実証している(Deisenhofer et al.(1981)Biochem.20:2361)。さらに、重鎖がC2ドメインおよびC3ドメインを除くために短縮されていない限りは、哺乳動物細胞における抗体発現の間に効率的に形成される2つの重鎖間ジスルフィド結合が存在する(King et al.(1992)Biochem.J.281:317)。したがって、ジスルフィド結合の形成が重鎖の組み立てを促進するのではなく、重鎖の組み立てがジスルフィド結合の形成を促進するようである。C3ドメインの界面の加工は、異なる重鎖のヘテロ多量体の形成を促進し、そして、対応するホモ多量体の組み立てを妨害する(例えば、米国特許第5,731,168号;国際特許出願公開WO 98/50431およびWO 2005/063816;Ridgway et al.(1996)Protein Engineering,9:617−621を参照のこと)。
したがって、本明細書において提供されるECD多量体は、第一のキメラECDポリペプチドと第二のキメラECDポリペプチドとの間の界面の間で形成され得、ここで、第一のポリペプチドの多量体化ドメインは、少なくとも、隆起部を含むように改変されたFcドメインのC3界面の十分な部分を含み、そして、第二のポリペプチドの多量体化ドメインは、少なくとも、腔を含むように改変されたFcドメインのC3界面の十分な部分を含む。改変されたC3界面の全体もしくは十分な部分は、IgG免疫グロブリン、IgA免疫グロブリン、IgD免疫グロブリン、IgE免疫グロブリンおよびIgM免疫グロブリンに由来するものであり得る。種々の免疫グロブリン分子のC3ドメインにおける改変の標的とされる界面の残基は、米国特許第5,731,168号に示される。一般に、多量体化ドメインは、例えば、IgG1のようなIgG抗体に由来するC3ドメインの全体もしくは十分な部分である。
ポリペプチド内に隆起部または腔を作製するための置換および/または改変の標的とされるアミノ酸は、代表的に、第二のポリペプチドの界面にある1以上のアミノ酸と相互作用または接触する界面のアミノ酸である。隆起部を含むように改変される第一のポリペプチドは、ネイティブすなわち元のアミノ酸の、第一のポリペプチドの界面から突出し、したがって、第二のポリペプチドの隣接する界面における代償性の腔内に位置付けされ得る少なくとも1つの側鎖を持つアミノ酸での置換を含む。より頻繁に、置換アミノ酸は、元のアミノ酸残基よりも大きな側鎖の嵩を持つアミノ酸である。当業者は、アミノ酸残基の特性を決定および/または評価して、隆起部を作製するための理想的な置換アミノ酸であるアミノ酸を同定する方法を知っている。一般に、隆起部の形成のための置換残基は、天然に存在するアミノ酸残基であり、そして、例えば、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)またはトリプトファン(W)が挙げられる。いくつかの例では、置換のために同定される元の残基は、例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、スレオニンまたはバリンのような小さな側鎖を持つアミノ酸残基である。
腔を含むように改変される第二のポリペプチドは、ネイティブすなわち元のアミノ酸の、第二のポリペプチドの界面から凹んでおり、したがって、第一のポリペプチドの界面からの対応する隆起部を収容し得る少なくとも1つの側鎖を持つアミノ酸での置換を含むものである。より頻繁に、置換アミノ酸は、元のアミノ酸残基よりも小さな側鎖の嵩を持つアミノ酸である。当業者は、アミノ酸残基の特性を決定および/または評価して、腔の形成のための理想的な置換アミノ酸であるアミノ酸を同定する方法を知っている。一般に、腔の形成のための置換残基は、天然に存在するアミノ酸残基であり、そして、例えば、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)およびバリン(V)が挙げられる。いくつかの例では、置換のために同定される元のアミノ酸は、例えば、チロシン、アルギニン、フェニルアラニンまたはトリプトファンのような大きな側鎖を持つアミノ酸である。
例えば、ヒトIgG1のC3界面は、4つのアンチパラレルβ−ストランド上に位置するドメインの各々(各表面から1090Å2埋まっている)の上に16の残基を含む(例えば、Deisenhofer et al.(1981)Biochemistry,20:2361−2370;Miller et al.,(1990)J Mol.Biol.,216,965−973;Ridgway et al.,(1996)Prot.Engin.,9:617−621;米国特許第5,731,168号を参照のこと)。隆起部または腔を作製するためのC3ドメインの改変は、例えば、米国特許第5,731,168号;国際特許出願公開WO98/50431およびWO 2005/063816;ならびにRidgway et al.,(1996)Prot.Engin.,9:617−621に記載される。例えば、隆起部または腔を作製するためのC3ドメインの改変は、配列番号163に示される配列の、界面アミノ酸Q230、V231、Y232、T233、L234、V246、S247、L248、T249、C250、L251、V252、K253、G254、F255、Y256、K275、T276、T277、P278、V279、L280、D281、G285、S286、F287、F288、L289、Y290、S291、K292、L293、T294およびV295に対応する任意のアミノ酸の置換であり得る。いくつかの例では、隆起部または腔を作製するためのC3ドメインの改変は、代表的には、2つの中央のアンチパラレルβ−ストランド上に位置する残基に対して標的化される。この目的は、作製される隆起部が、パートナーのC3ドメイン内の代償性の腔によって収容されるのではなく、周囲の溶媒中に突出することによって適合され得るという危険性を最小限にすることである。このような改変の例としては、例えば、界面アミノ酸T249、L251、P278、F288、Y290およびK292に対応する任意のアミノ酸の置換が挙げられる。隆起部/腔相互作用を生じさせるためのC3ドメインの改変のためのアミノ酸対の例としては、T249とY290の改変;およびF288とT277の改変が挙げられる。例えば、改変は、T249YとY290T;T249WとY290A;F288AとT277W;F288WとT277S;およびY290TとT249Yを含み得る。
いくつかの例では、1以上の界面相互作用が作製され得る。例えば、改変はまた、例えば、第一のポリペプチドにおける隆起部を作製するための2以上の改変と、第二のポリオペにおける腔を作製するための2以上の改変とを含む。このような改変の例としては、例えば、第一のポリペプチドにおけるT249YおよびF288Aの改変と、第二のポリペプチドにおけるT277WおよびY290Tの改変;第一のポリペプチドにおけるT277WおよびF288Wの改変と、第二のポリペプチドにおけるT277SおよびY290Aの改変;または、第一のポリペプチドにおけるF288AおよびY290Aの改変と、第二のポリペプチドにおけるT249WおよびT277Sの改変、が挙げられる。
Fcドメインもしくはその改変体のような、任意の免疫グロブリン分子もしくはその改変体を含めて、本明細書において記載される他の多量体化ドメインと同様に、C3隆起部/腔の改変を含むFc改変体のECDポリペプチドへの結合は、いずれの場所においてもなされるが、代表的には、そのN末端もしくはC末端を介して、第一および/もしくは第二のECDポリペプチドのN末端もしくはC末端へとなされ、キメラポリペプチドを形成し得る。結合は、直接的であっても、リンカーを介して間接的であってもよい。また、キメラポリペプチドは、融合タンパク質であっても、共有結合性もしくは非共有結合性の相互作用などを介して、化学結合によって形成されてもよい。代表的には、ノブと穴の分子は、C3の隆起部改変を含むFc改変体に連結された第一のECDポリペプチドと、C3の腔改変を含むFc改変体に連結された第二のECDポリペプチドとの共発現によって作製される。
ii.ロイシンジッパー
ECDポリペプチド多量体の別の調製方法は、ロイシンジッパードメインの使用を含む。ロイシンジッパーは、これらが見られるタンパク質においてタンパク質の多量体化を促進するペプチドである。代表的には、ロイシンジッパーは、数種のタンパク質中で保存されたドメインとして存在する4〜5のロイシン残基を含む、反復性の7個からなるモチーフを指すために用いられる用語である。ロイシンジッパーは、短い、平行らせん状のコイルとして折り畳まれ、そして、このロイシンジッパーがドメインを形成するタンパク質の低重合体化を担うものと考えられる。ロイシンジッパーは元々、数種のDNA結合タンパク質において同定されたものであり(例えば、Landschulz et al.(1988)Science 240:1759を参照のこと)、そして、その後、種々のタンパク質において見出されている。既知のロイシンジッパーには、二量体化もしくは三量体化する、天然に存在するペプチドおよびその誘導体が含まれる。ロイシンジッパーペプチドに直接的または間接的に連結されたECDポリペプチドを含む組換えキメラタンパク質は、適切な宿主細胞において発現され得、そして、形成するECDポリペプチド多量体は、培養上清から回収され得る。
ロイシンジッパードメインは、短い、平行らせん状のコイルとして折り畳まれる(O’Shea et al.(1991)Science,254:539)。平行らせん状コイルの一般的な構造は、「穴内のノブ(knob into hole)」パッキングを持つものとして特徴付けられ、1953年にCrickによって最初に提唱された(Acta Crystallogr.,6:689)。ロイシンジッパードメインにより形成される二量体は、(abcdefg)nと示される7個からなるリピートによって安定化され(例えば、McLachlan and Stewart(1978)J.Mol.Biol.98:293を参照のこと)、ここで、残基aおよびdは一般に疎水性残基であり、残基dはロイシンであり、そして、これらは、らせんの同一面上に整列する。反対の電荷を持つ残基は、一般に、gおよびeの位置にある。したがって、2つのらせん状ロイシンジッパードメインから形成される平行ならせん状コイルにおいて、第一のらせんの疎水性側鎖によって形成される「ノブ」は、第二のらせんの側鎖間に形成される「穴」内に包まれる。
dの位置にあるロイシン残基は、大きな疎水性安定化エネルギーを与え、そして、二量体の形成に重要である(Krystek et al.(1991)Int.J.Peptide Res.38:229)。疎水性安定化エネルギーは、らせん状単量体からのらせん状コイルの形成のための主な駆動力を提供する。静電相互作用もまた、らせん状コイルの化学量論および幾何学に寄与する。
(a)fosおよびjun
2つの核癌遺伝子タンパク質、fosおよびjunは、マウスの癌原遺伝子の遺伝子産物であるc−mycと同様に、ロイシンジッパードメインを示す。ロイシンジッパードメインは、これらのタンパク質における生物学的活性(DNA結合)に必須である。核癌遺伝子の産物であるfosおよびjunは、優先的にヘテロ二量体を形成するロイシンジッパードメインを含む(O’Shea et al.(1989)Science,245:646;Turner and Tijian(1989)Science,243:1689)。例えば、ヒト転写因子c−junおよびc−fosのロイシンジッパードメインは、1:1の化学量論で安定なヘテロ二量体を形成することが示されている(例えば、Busch and Sassone−Corsi(1990)Trends Genetics,6:36−40;Gentz et al.,(1989)Science,243:1695−1699を参照のこと)。jun−junホモ二量体も形成することが示されているが、このホモ二量体は、jun−fosヘテロ二量体よりも約1000倍安定性が低い。
したがって、代表的には、本明細書において提供されるECDポリペプチド多量体は、jun−fosの組合せを用いて作製される。一般に、c−junまたはc−fosのいずれかのロイシンジッパードメインは、融合遺伝子を遺伝子操作することによって、ポリペプチドのECDのC末端において、インフレームで融合される。c−junおよびc−fosのロイシンジッパーの例示的なアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号170および171に示される。いくつかの場合、ロイシンジッパーの配列は、例えば、システイン残基を加えて、ジスルフィド結合の形成を可能にするか、または、C末端にチロシン残基を加えて、ペプチド濃度の測定を容易にすることより、改変され得る。改変されたc−junおよびc−fosのロイシンジッパーのコードされるアミノ酸のこのような例示的な配列は、それぞれ、配列番号172および173に示される。さらに、ロイシンジッパーとのECDポリペプチドの結合は、直接的であっても、柔軟性のあるリンカードメイン(例えば、IgGのヒンジ領域、または、種々の長さおよび組合せのグリシン、セリン、スレオニンもしくはアラニンのような小さなアミノ酸の他のポリペプチドリンカー)を用いてもよい。いくつかの場合では、コードされるポリペプチドのC末端からのロイシンジッパーの分離は、プロテアーゼ切断部位(例えば、トロンビン切断部位)をコードする配列との融合によって達成され得る。さらに、キメラタンパク質は、金属キレートクロマトグラフィーによる迅速な精製を可能にするために、例えば、6×Hisタグなどによって、および/または、ウェスタンブロットによる検出、免疫沈降もしくはバイオアッセイにおける活性の除去/ブロッキングを可能にするために、抗体が利用可能なエピトープ(例えば、mycタグ)によって、タグが付けられ得る。
(b)GCN4
ロイシンジッパードメインはまた、S.cerevisiaeにおける窒素の全体的な制御(General Control of Nitrogen)(GCN4)代謝に関与する遺伝子ファミリーの転写活性化因子として機能する核タンパク質において見出される。このタンパク質は、GCN4についての認識配列を含むプロモーター配列を二量体化および結合し、それによって、窒素欠乏時に転写を活性化することができる。二量体の複合体を形成し得るGCN4ロイシンジッパーの例示的な配列は、配列番号180に示される。
GCN4ロイシンジッパードメインを示す合成ペプチドのa残基およびd残基におけるアミノ酸置換(すなわち、配列番号180として示される配列におけるアミノ酸置換)は、ロイシンジッパードメインの低重合体化特性を変化させることが見出されている。例えば、aの位置における全残基がイソロイシンに変更される場合、ロイシンジッパーは、依然として平行な二量体を形成する。この変更に加えて、dの位置にある全てのロイシン残基もまた、イソロイシンに変更される場合、結果として生じるペプチドは、自発的に、溶液において三量体の平行ならせん状コイルを形成する。三量体を形成し得るこのようなGCN4ロイシンジッパードメインの例示的な配列は、配列番号181に示される。dの位置にある全てのアミノ酸をイソロイシンで、そして、aの位置にある全てのアミノ酸をロイシンで置換すると、四量体化するペプチドが生じる。四量体を形成し得るGCN4のロイシンジッパードメインのこのような例示的な配列は、配列番号182に示される。これらの置換を含むペプチドは、低重合体形成の機構が、上述されかつ配列番号180に示されるGCN4のような伝統的なロイシンジッパードメインについての機構と同じであると考えられるので、依然としてロイシンジッパードメインと呼ばれる。
iii.他の多量体化ドメイン
他の多量体化ドメインが当業者に公知であり、これは、別々に作製され、そしてECD融合物として発現される2以上のポリペプチドのタンパク質−タンパク質相互作用を促進する任意のものである。2つのキメラポリペプチド間にタンパク質−タンパク質相互作用を提供するために使用され得る他の多量体化ドメインの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:barnase−barstarモジュール(例えば、Deyev et al.,(2003)Nat.Biotechnol.21:1486−1492を参照のこと);特定のタンパク質ドメインを選択したもの(例えば、Terskikh et al.,(1997)PNAS 94:1663−1668およびMuller et al.,(1998)FEBS Lett.422:259−264を参照のこと);特定のペプチドモチーフを選択したもの(例えば、de Kruif et al.,(1996)J.Biol.Chem.271:7630−7634およびMuller et al.,(1998)FEBS Lett.432:45−49を参照のこと);および安定性を増強するためのジスルフィド架橋の使用(de Kruif et al.,(1996)J.Biol.Chem.271:7630−7634およびSchmiedl et al.,(2000)Protein Eng.13:725−734)。別のタイプの多量体化ドメインの例は、多量体化が、PKA/AKAP相互作用について以下に記載されるような、異なるサブユニットポリペプチド間のタンパク質−タンパク質相互作用によって促進されるものである。
(a)R/PKA−AD/AKAP
ヘテロ多量体性ECDポリペプチドはまた、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の調節性(R)サブユニットと、Aキナーゼアンカータンパク質のアンカードメイン(AD)との間のタンパク質−タンパク質相互作用を利用して作製され得る(AKAP、例えば、Rossi et al.,(2006)PNAS 103:6841−6846を参照のこと)。2つのタイプのRサブユニット(RIおよびRII)がPKAにおいて見られ、この各々が、αアイソフォームとβアイソフォームとを持つ。Rサブユニットは、二量体として存在し、そして、RIIについては、二量体化ドメインは、アミノ末端の44残基内に存在する(例えば、配列番号183を参照のこと)。AKAPは、そのADドメインの相互作用により、PKAのRサブユニットと相互作用して、その活性を調節する。AKAPは、二量体性のRサブユニットにのみ結合する。例えば、ヒトRIIαについて、ADは、アミノ末端の23残基から形成される疎水性表面に結合する。ADの例示的な配列は、配列番号184に示されるAD1であり、これは、AKAP−IS(RII選択的な結合に最適化された合成ペプチド)に由来する17アミノ酸残基の配列である。したがって、ヘテロ多量体性ECDポリペプチドは、HER ECDポリペプチドのようなECDポリペプチドをコードする核酸を、Rサブユニット配列をコードする核酸(すなわち、配列番号183)と(直接的または間接的に)連結することによって作製され得る。これにより、Rサブユニットにより達成される二量体の自発的な形成に起因して、ホモ二量体分子が生じる。前後して、別のECDポリペプチド融合物が、別のECDポリペプチドをコードする核酸を、AD配列をコードする核酸配列に連結することによって作製され得る。宿主細胞におけるECDキメラ成分の同時トランスフェクションなどの後にこの2つの成分が共発現すると、二量体のRサブユニットが、AD配列に結合してヘテロ多量体分子を生じさせるためのドッキング部位を提供する。この結合事象はさらに、例えば、ジスルフィド結合などの共有結合によって安定化され得る。いくつかの例では、柔軟性のあるリンカー残基が、ECDポリペプチドをコードする核酸と、多量体化ドメインとの間に融合され得る。別の例では、ECDポリペプチドをコードする核酸の融合は、共有結合を促進するために、Rサブユニットのアミノ末端付近に組み込まれたシステイン残基を含むRサブユニットをコードする核酸に対してなされ得る(例えば、配列番号185を参照のこと)。同様に、パートナーのECDポリペプチドをコードする核酸の融合は、これもまた、ADのアミノ末端およびカルボキシル末端の両方にシステイン残基の組み込みを含むADサブユニットをコードする核酸に対してなされ得る(例えば、配列番号186を参照のこと)。
3.キメラECDポリペプチド
キメラECDポリペプチドが、ECD多量体の形成において使用するために、本明細書中に記載されるように調製される。キメラECDポリペプチドは、代表的に、多量体化ドメインに対して直接的または間接的に連結された、CSRのECDの全体もしくは一部分を含む。例示的な多量体化ドメインは、本明細書中に記載される任意のものであり、以下が挙げられるがこれらに限定されない:免疫グロブリン配列(すなわち、定常領域(Fc))、ロイシンジッパー、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、らせん状コイルモチーフ、ヘリックスループモチーフ、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、腔内の隆起部、および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔、ならびに、安定な多量体を形成するのに十分な任意の他のもの。多量体分子の形成を可能にするために、多量体化ドメインは、第一のキメラポリペプチドと第二のキメラポリペプチドとの間で同じであるか、または、相補的である。別々のキメラECDポリペプチドの単量体は、一度発現されると、多量体化ドメインを介して安定に会合され、多量体のECDポリペプチドを形成する。
CSRの任意のECD部分が、多量体のパートナーとして使用され得る。例えば、上記のECDのうち任意のもの、または、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159、配列番号298、配列番号200もしくは配列番号301〜399のいずれかに示されるもの、または、FGFR、VEGFR、IGF1−Rおよびこれらのスプライシング改変体のECDを含むCSRの任意のECD部分(例えば、表7に記載され、そして、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号206、配列番号208、配列番号210、配列番号212、配列番号214、配列番号216、配列番号218、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号228、配列番号230、配列番号232、配列番号234、配列番号236、配列番号238、配列番号240、配列番号242、配列番号244、配列番号246、配列番号248、配列番号250、配列番号252、配列番号254、配列番号256、配列番号258、配列番号260もしくは配列番号262のいずれかに示される任意のCSRのECD部分)が、キメラECDポリペプチドを作製するために使用され得、ここで、ECDポリペプチドの全体もしくは一部分が、多量体化ドメインに連結される。代表的には、多量体化ドメインに連結されたECD部分の少なくとも一方(しかし、ときどき両方)は、リガンドへの結合および/または二量体化に十分なHERファミリーレセプターの全体もしくは一部分(すなわち、HER1、HER2、HER3またはHER4分子の全体もしくは一部分)である。多量体化パートナーとして使用するための、HERファミリーレセプターのECDもしくはその一部分の例は、本明細書において上に記載され、そして、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号129、配列番号131、配列番号136、配列番号137および配列番号159のいずれかに示される。いくつかの例において、多量体化パートナーのうち少なくとも一方が、HER1レセプターのECDの全体もしくは一部分である。例えば、多量体HER ECDポリペプチドの例は、HER1/HER3もしくはHER1/HER4のECDまたはその一部分の間に形成される多量体である。さらに、ECD多量体の形成に使用するためのキメラECDポリペプチドは、多量体化ドメインに連結されたハイブリッドCDポリペプチドを含み得る。
一例では、ECDキメラポリペプチドは、免疫グロブリン分子に由来する配列との、ECDポリペプチドの直接的もしくは間接的な結合を含む。一例では、多量体化成分は、ヒトIgG、IgM、IgD、IgMもしくはIgAに由来する免疫グロブリン由来のドメイン、または、別の動物(マウスを含むがこれに限定されない)に由来の類似する免疫グロブリンドメインである。他の例では、多量体化成分は、IgGのFcドメイン、IgGの重鎖およびIgGの軽鎖のうちのいずれかから選択される。代表的には、IgGのFcドメインが使用され、そして、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むIgGアイソタイプ、ならびに、各アイソタイプの群内の任意のアロタイプから選択され得る。多くの場合、Fcドメインは、IgG1、または、本明細書に記載されるような特に所望される特性について修飾され得るその誘導体である。Fc部分は、最も頻繁に、免疫グロブリン重鎖の、少なくともヒンジ領域の一部分と、C2ドメインおよびC3ドメインを含む。多量体化成分として使用するための例示的なFc配列は、配列番号167に示されるが、例えば、Fc配列において使用されるヒンジ部分の長さに依存して、他のものも公知である。代表的には、ECDポリペプチドの融合は、Fc配列との直接的な結合によってなされるが、また、ペプチドリンカーまたは化学的リンカー(ヘテロ二官能性の架橋剤を含む)などによる間接的な結合によってもなされ得る。一般に、任意のHERファミリーレセプターを含むCSRのN末端ECDもしくはその一部分は、C末端において、ヒトIgG1のFc部分、そして、必要な場合、リンカーペプチドおよび/またはエピトープタグへと融合される。
a.例示的なキメラHER ECDポリペプチド
本明細書において提供されるECD多量体の形成に使用するために含められるキメラポリペプチドは、HER1の全長ECDまたはその短縮された部分と、Fc多量体化成分とを含み、そして、必要に応じて、HER1 ECDキメラポリペプチドの精製および/もしくは検出のためのc−mycタグもしくはHisタグのようなエピトープタグを含む任意のものを含む。例示的なHER1−Fcキメラポリペプチドは、配列番号38および40に示され、そして、それぞれ、配列番号37および39に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。例えば、配列番号38として示される例示的なHER1−Fcキメラポリペプチド(HF110−Fc;HER1−501/Fc;HFD110)は、配列番号10に示されるHER1の短縮型ECD配列(配列番号38のアミノ酸1〜501に対応)を含み、この短縮型ECD配列は、N末端において、XhoI制限酵素リンカー(アミノ酸502〜503に対応)、ペプチドリンカー配列(アミノ酸504〜508に対応)、およびFc多量体化成分についての配列(アミノ酸509〜739に対応)を含む配列に対し、作動可能に連結される。別の例では、配列番号40として示される例示的なHER1−Fcキメラポリペプチド(HF100−Fc;HER1−621/Fc;HFD100)は、配列番号12に示されるHER1の全長ECD配列(配列番号40のアミノ酸1〜621に対応)、ペプチドリンカー配列(アミノ酸622〜626に対応)、およびFc多量体化成分についての配列(アミノ酸627〜857に対応)を含む。さらに、例えば、例示的なHF110−FcおよびHF100−Fc分子を含むHER1−Fc分子は、必要に応じて、エピトープタグを含み得る。例えば、配列番号38に示される例示的なHF110−Fc分子はまた、必要に応じて、mycエピトープタグセット(配列番号38のアミノ酸740〜749に対応)を含み得る。別の例では、配列番号40に示されるHF100−Fc分子はまた、必要に応じて、Hisエピトープタグまたは他のタグ(すなわち、HFD100T)を含み得る。例示的なHFD100T分子は、配列番号406に示され、そして、HER1の全長ECD配列(配列番号406のアミノ酸1〜621に対応)を含み、このECD配列は、N末端において、XbaIリンカー(アミノ酸622〜623に対応)、ペプチドリンカー配列(アミノ酸624〜627に対応)、Fc多量体化成分についての配列(アミノ酸628〜858に対応)、AgeIリンカーを含む配列(アミノ酸859〜860に対応)および6×Hisタグについての配列(配列番号406のアミノ酸861〜866に対応)を含む配列に対して、作動可能に連結される。
本明細書において提供されるECD多量体の形成において使用するために含められるキメラポリペプチドは、HER2の全長ECDまたはその短縮された部分と、Fc多量体化成分とを含み、そして、必要に応じて、HER2 ECDキメラポリペプチドの精製および/もしくは検出のためのc−mycタグもしくはHisタグのようなエピトープタグを含む任意のものを含む。例示的なHER2−Fcキメラポリペプチドは、配列番号42に示され、そして、配列番号41に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。配列番号40として示される例示的なHER2−Fcキメラポリペプチド(HF200−Fc;HER2−650/Fc;HFD200)は、配列番号18に示されるHER2の全長ECD配列(配列番号42のアミノ酸1〜628に対応)を含み、この全長ECD配列は、N末端において、ペプチドリンカー配列(アミノ酸629〜633に対応)、およびFc多量体化成分についての配列(アミノ酸634〜864に対応)を含む配列に対し、作動可能に連結される。さらに、例えば、例示的なHF200−Fcを含むHER2−Fc分子は、必要に応じて、エピトープタグを含み得る。
本明細書において提供されるECD多量体の形成に使用するために含められるキメラポリペプチドは、HER3の全長ECDまたはその短縮された部分と、Fc多量体化成分とを含み、そして、必要に応じて、HER3 ECDキメラポリペプチドの精製および/もしくは検出のためのc−mycタグもしくはHisタグのようなエピトープタグを含む任意のものを含む。例示的なHER3−Fcキメラポリペプチドは、配列番号44および46に示され、そして、それぞれ、配列番号43および45に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。例えば、配列番号44に示される例示的なHER3−Fcキメラポリペプチド(HF310−Fc;HER1−500/Fc;HFD310)は、配列番号20に示されるHER3の短縮型ECD配列(配列番号44のアミノ酸1〜500に対応)を含み、この短縮型ECD配列は、N末端において、ペプチドリンカー配列(アミノ酸501〜505に対応)、およびFc多量体化成分についての配列(アミノ酸506〜736に対応)を含む配列に対し、作動可能に連結される。別の例では、配列番号46として示される例示的なHER3−Fcキメラポリペプチド(HF300−Fc;HER3−621/Fc;HFD300)は、配列番号26に示されるHER3の全長ECD配列(配列番号46のアミノ酸1〜621に対応)を含み、この全長ECD配列は、N末端において、ペプチドリンカー配列(アミノ酸622〜626に対応)、およびFc多量体化成分についての配列(アミノ酸627〜857に対応)に対して作動可能に連結される。さらに、例えば、例示的なHF310−FcおよびHF300−Fc分子を含むHER3−Fc分子は、必要に応じて、エピトープタグを含み得る。
本明細書において提供されるECD多量体の形成において使用するために含められるキメラポリペプチドは、HER4の全長ECDまたはその短縮された部分と、Fc多量体化成分とを含み、そして、必要に応じて、HER2 ECDキメラポリペプチドの精製および/もしくは検出のためのc−mycタグもしくはHisタグのようなエピトープタグを含む任意のものを含む。例示的なHER4−Fcキメラポリペプチドは、配列番号48に示され、そして、配列番号47に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。配列番号48として示される例示的なHER4−Fcキメラポリペプチド(HF400−Fc;HER4−650/Fc;HFD400)は、配列番号32に示されるHER4の全長ECD配列(配列番号48のアミノ酸1〜625に対応)を含み、この全長ECD配列は、N末端において、ペプチドリンカー配列(アミノ酸626〜630に対応)、およびFc多量体化成分についての配列(アミノ酸631〜861に対応)を含む配列に対し、作動可能に連結される。さらに、例えば、例示的なHF400−Fcを含むHER4−Fc分子は、必要に応じて、エピトープタグを含み得る。
E.ECD多量体
本明細書において提供されるECD多量体は、そのそれぞれの多量体化ドメインの相互作用を介して安定に会合された、少なくとも2つのECDポリペプチドを含む。ECD多量体は、ホモ多量体であり得るが、最も頻繁には、多量体のECDポリペプチド成分が異なるヘテロ多量体である。ECDヘテロ多量体は、汎HER治療薬を含む汎レセプター治療薬である。ECD多量体は、HERファミリーメンバー上のいくつかのエピトープを標的とする。したがって、結果として生じるECD多量体分子は、2以上の同系または相互作用性のCSRの活性を調節(代表的には、阻害)する。調節は、1以上のリガンドとの相互作用、および/または、全長の同系レセプターもしくは他の相互作用性のCSRとの二量体化によってなされ得る。したがって、多量体ECDポリペプチドは、それぞれのECDポリペプチドの各々の1以上のリガンド(一般には2以上のリガンド)に結合し、そして/または、同系のレセプターもしくは細胞表面上の相互作用性レセプターと二量体化する。したがって、結果として得られるECDポリペプチド多量体は、同系のCSRのアンタゴニストとして有用である。このようなアンタゴニストは、リガンド結合および/または同系レセプターの活性化から生じる疾患の処置において有用である。
HERファミリーレセプターは、不活性形態であることがもっとも頻繁であり、膜内外のHER分子のほんの5%までが活性な立体配置である。通常は、全長HERレセプターについて、不活性な形態から活性な形態への移行を支配する機構はリガンド結合である。リガンド結合は、レセプター分子を再配向して、二量体化アームを係留型の立体配座から、別のHER分子と二量体する能力を持つ立体配座へと強制的にシフトさせる。HER分子の活性な形態は、HER分子の細胞外ドメインの全体もしくは一部分の、多量体化ドメイン(例えば、Fcフラグメントであるがこれに限定されない)との二量体化を推し進めることによって模倣され得る。したがって、多量体化ドメインとのHER ECDの融合は、構成的に活性化されたHER2分子と同様に、HER分子に、リガンド非依存性に活性化される立体配座(すなわち、非係留型)を採らせる。例えば、多量体化ドメインがFc分子である場合、キメラポリペプチドの発現物は、ホモ二量体として生成され得、ここで、Fcドメインの相互作用を介して、2つの発現された単量体性ポリペプチドの間で二量体化が推し進められる。いくつかの場合、このようなホモ二量体は、ECDの単量体形態と比べて、ECDポリペプチドの改善された特性をもたらし得る。一例では、HER ECDの全体もしくは一部分のFc多量体化ドメインとの結合は、高い親和性でのリガンド結合が可能な高親和性レセプター複合体を生成し得、この場合、ECDの単量体形態は、リガンドに結合できない。例えば、実施例4に記載されるように、成熟なHER1レセプターの完全なECD(すなわち、アミノ酸1〜621)を含む単量体ECD分子は、EGFに対する最小限の結合のみを示す。ECDポリペプチドがFc多量体化ドメインに連結される場合、ホモ二量体HER1 ECD分子のEGFへの結合能は、多いに増大される。
CSR分子のヘテロ多量体の安定化のためのこの同じ機構の利用は、広範な高親和性レセプター治療薬としての汎レセプターECD多量体(汎HER ECD多量体を含む)の作製に提案されている。
したがって、汎レセプター治療薬の活性は、1以上のリガンドに対する親和性を有する高親和性可溶性レセプター複合体としてのものである。したがって、汎レセプター多量体は、リガンド(増殖因子リガンドを含む)を封鎖するためのリガンドトラップとして使用され得る。ECD多量体によって封鎖され得るリガンドは、多量体のポリペプチドECDに結合するかまたはこれと相互作用することが知られるリガンドである。ECD多量体の成分が、HER分子の1以上のECDの全体またはリガンドへの結合に十分な部分を含む場合、ECD多量体は、潜在的に、表6に示されるリガンドの組合せの任意の1以上を封鎖し得る。例えば、多量体がHER1とHER4の組合せである場合、少なくとも10の異なるリガンドが標的となり得る。あるいは、多量体がHER1とHER3の組合せである場合、EGF、アンフィレグリン、TGF−α、ベタセルリン、ヘパリン結合EGF、エピレグリン、または、ニューレグリン1もしくは2(ヘレグリン1もしくは2)を含む任意の1以上のリガンドが、多量体分子によって封鎖され得る。したがって、多量体のECDポリペプチド成分のうちの1つがHER分子(例えば、HER1)であり、かつ、その他が別のCSRの全体もしくは一部分であるいくつかの場合において、ECD多量体は、少なくとも7つのリガンドと相互作用し得、このリガンドのうち6つは、HER1のECDによって認識されるリガンドであり、そして、残りの1以上のリガンドは、パートナーのECDポリペプチドによって認識される。追加のリガンドは、疾患(例えば、増殖性疾患、新脈管形成疾患もしくは炎症性疾患であるが、これらに限定されない)の過程に関与する増殖因子または他のリガンドであり得る。このようなリガンドの例としては、VEGF、FGF、インシュリン、HGF、アンジオポエチンなどが挙げられる。さらなる例では、1以上のハイブリッドECDポリペプチドの組合せから作製されるECD多量体は、その多量体が、2つ、3つ、または4つまでの異なるCSRについての十分なリガンド結合部分を含み、したがって、そのそれぞれの全長CSRから、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれより多いリガンドを封鎖する能力を有するように加工され得る。
本明細書において提供されるECD多量体によるCSRの調節はまた、同系レセプターまたは相互作用性の膜貫通型レセプターとの直接的な相互作用を介してなされ得る。例えば、ほぼ全てのRTKレセプターの活性化は、補レセプター(co−receptor)との二量体化を介してなされ、全長のホモ二量体レセプターおよびヘテロ二量体レセプターを作製し、そして、エフェクターの回収および下流のシグナル伝達のための触媒作用性のテイルの自己リン酸化を可能にする。例えば、HERレセプターは、HERのシグナル伝達を増幅および多様化するための1つの機構として、種々の組合せで二量体化する。全長HERレセプターの全組合せが観察されており、HER2が最も代表的な二量体化のパートナーである。したがって、CSR、特に、RTK(HERを含む)の二量体化する能力とのあらゆる干渉が、レセプター媒介性のシグナル伝達を損ねる。CSRの二量体化を損ね得る分子の例は、ECD多量体、特に、HER ECD多量体である。多量体化ドメインとの融合物(例えば、Fcタンパク質との融合物)を生じる、HER ECD多量体の活性化された高親和性の形態は、膜貫通型レセプターとの相互作用のための立体配置において、リガンドによって結合されていてもそうでなくても、ドメインII内に二量体化アームを呈する、「背中合わせの」立体配座を予測する(predict)。このような相互作用は、全長HERレセプターが、膜の内外で別の全長HERレセプターと対になる能力と干渉し得、それによって、レセプターの活性化を阻害する。同様の相互作用および阻害が、同系レセプターの二量体化と干渉する他のCSR ECD(他のRTK ECD多量体を含む)についても企図される。したがって、リガンドの封鎖に加えて、または、その代わりに、本明細書において提供される汎レセプター多量体は、1以上のレセプターと二量体化して、その活性を阻害し得る。以下に記載されるように、膜貫通型レセプターの活性は、アッセイ(リン酸化または細胞増殖が挙げられるがこれらに限定されない)によって評価され得る。
代表的には、ECD多量体は二量体であるが、例えば、多量体化の形成のために選択した多量体化ドメインに依存して、三量体またはより高次の多量体であり得る。例えば、Fcドメインは、二量体分子をもたらす。さらに、一般的には、ロイシンジッパーである多量体化ドメインもまた二量体性のECD分子をもたらすが、例えば、改変体GCN4のようなロイシンジッパーの改変形態が、三量体、または、より高次の多量体を作製するために使用され得る。より高次の多量体化ドメインが望ましい場合、それに従って多量体化ドメインが選択され得る。当業者は、例えば、本明細書中に提供されるもののような例示的な多量体化ドメインの構造体系を熟知している。
a.全長HER1 ECDおよび別のCSRのECDの全体もしくは一部分
本明細書では、多量体化ドメインに連結されたHER1の全長ECDを第一のポリペプチドとして、そして、これもまた多量体化ドメインに連結された別のCSRのECDの全体もしくは一部分を第二のポリペプチドとして含むECD多量体が提供される。第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドの多量体化ドメインは、同じであっても異なっていてもよいが、ことなる場合、多量体化ドメインは、多量体の成分間での安定なタンパク質−タンパク質相互作用を可能にするために相補的である。全長HER1 ECDポリペプチドの例は、HF100であり、これは、配列番号12に示されるもののような成熟なHER1レセプターのアミノ酸1〜621、またはその対立遺伝子改変体もしくは種改変体を含む。第二のポリペプチドのECDは、ECDポリペプチドが全長HER2分子でない限りは、任意のCSR(特に、増殖、新脈管形成もしくは炎症を伴う疾患の過程に関与する任意のCSR)のECDの全体もしくは一部分であり得る。しかし、第二のポリペプチドのECDは、HER2分子のECDの他のHER分子との二量体化に十分な部分であり得る。短縮型HER2 ECDポリペプチドの例としては、配列番号18に示されるHF220分子、および配列番号16に示されるHF210分子、ならびにこれらの対立遺伝子改変体が挙げられる。いくつかの場合、全長HER1分子と短縮型HER2分子HF210を含むECD多量体が好ましい。というのも、短縮型HER2分子のサブドメインIV内のモジュール2〜5の存在は、実施例5に記載されるように、短縮型HER2分子の二量体化能に影響を及ぼすからである。
全長HER1 ECDを第一のポリペプチドとして含むECD多量体は、その第二のポリペプチド成分として、HER3もしくはHER4レセプターのECDの全体もしくは一部分を有し得る。このような特定のECD多量体は、EGF、アンフィレグリン、TGF−α、ベタセルリン、ヘパリン結合EGF、またはエピレグリン、および1以上のニューレグリンの中からの2以上のリガンドと結合する能力を有するものである。このようなポリペプチドはまた、任意の1以上のHERレセプターと二量体化しうる。例えば、HER4 ECDポリペプチドの全体もしくは一部分と組み合わされるECD多量体は、ニューレグリン1〜4のいずれか(その任意のアイソフォームを含む)と結合する能力を有する。このようなECD多量体の例は、多量体の第一のポリペプチドが全長HER1 ECD(すなわち、配列番号12に示されるHF100またはその対立遺伝子改変体)であり、第二のポリペプチドが、リガンドに結合する能力のある短縮型HERポリペプチド(配列番号28に示されるHF410分子またはその対立遺伝子改変体が挙げられるがこれらに限定されない)であるものである。ECD多量体のHER4部分はまた、配列番号32に示されるような成熟なHER4レセプターの完全なECD部分(すなわち、HF400)を含む全長HER4分子であり得る。いくつかの例では、HER1 ECDと、HER4 ECDの全体もしくは一部分との多量体化は、多量体化ドメインを介して媒介される。例えば、配列番号40に示される例示的なキメラポリペプチド(HF100−Fc、または、配列番号406に示されるようなエピトープタグが付いたバージョン)および、配列番号48に示される例示的なキメラポリペプチド(HF400−Fc)は、共発現されて、多量体分子を生成し得る。
しかし、代表的には、全長のHER1 ECDポリペプチドは、多量体においてHER3 ECDポリペプチドの全体もしくは一部分と組み合わされ、その結果、結果として生じる多量体は、ニューレグリン1もしくは2(任意のそのアイソフォームを含む)のいずれかと結合し、そして/または、細胞表面上の任意の1以上のHERレセプターと二量体化する能力を有する。このようなECD多量体の例は、第一のポリペプチドが全長HER1 ECDであり、多量体の第二のポリペプチドが、HER3ポリペプチドの全体もしくは一部分であるものである。HER1およびHER3は、最も一般的に過剰発現されているレセプターのうちの2つである。したがって、HER1とHER3とのECD多量体は、最も一般的に過剰発現されているレセプターのうちの2つに結合するリガンドを捕捉する能力を有する一方で、癌において広い活性を有することが示されていないHER4に結合するいくつかのリガンド(すなわち、ニューレグリン3およびニューレグリン4)を節約する(Barnes et al.(2005)Clin Cancer Res 11:2163−8;Srinivasan et al.(1998)J Pathol.185:236−45)。
一例では、HER1 ECDおよびHER3 ECDのECD多量体は、第一のポリペプチドとしてHER1 ECDの全長を、そして、第二のポリペプチドとして短縮型のHER3 ECDポリペプチドを含み得、ここで、各ポリペプチドが多量体化ドメインに連結される。上述のように、全長HER1分子の例は、HF100分子(配列番号12)またはその対立遺伝子改変体である。そのポリペプチドが、ニューレグリン1もしくはニューレグリン2のアイソフォームの任意の1以上に結合し、そして/または二量体化する能力を保持する限り、任意の短縮型HER3 ECDポリペプチドが企図される。このような短縮型HER3 ECDポリペプチドの例としては、配列番号20に示されるHF310、配列番号22に示されるp85HER3、もしくは、配列番号24に示されるErbB3−519、またはこれらの対立遺伝子改変体が挙げられる。例えば、配列番号40に示される例示的なキメラポリペプチド(HF100−Fc、または、配列番号406に示されるもののようなそのエピトープタグ化バージョン)および配列番号44に示される例示的なキメラポリペプチド(HF310−Fc)が共発現されて、多量体分子を生成し得る。
別の例では、HER1 ECDおよびHER3 ECDのECD多量体は、第一のポリペプチドとして、HF100分子(配列番号12)のようなHER1 ECDの全長を、そして、第二のポリペプチドとして、全長HER3 ECD分子を含み得、ここで、各ポリペプチドが、多量体化ドメインに連結される。例示的な全長HER3 ECD分子としては、配列番号26(HF300)に示されるような、成熟なHER3全長レセプターのアミノ酸1〜621が挙げられる。HER1/HER3の全長ECD多量体は、そのそれぞれの多量体化ドメインの相互作用によって連結され得る。第一の全長HER1 ECDポリペプチドおよび第二のHER3 ECDポリペプチドの多量体化ドメインは、同じであっても異なっていてよいが、異なる場合には、これらの多量体化ドメインは、多量体の成分間で安定なタンパク質−タンパク質相互作用を可能にするために相補的である。一例では、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドの各々は、IgG1 Fcフラグメントのような(これに限定されない)Fcフラグメントに連結される。Fcフラグメントに連結される全長のHER1およびHER3のECDキメラポリペプチドの例は、それぞれ、配列番号40または配列番号46に示される。したがって、HER1/HER3 ECD多量体は、配列番号40(または配列番号406に示されるもののようなそのエピトープタグ化バージョン)および配列番号46(または、配列番号407に示されるもののようなそのエピトープタグ化バージョン)に示されるアミノ酸配列、またはこれらの対立遺伝子改変体を持つポリペプチドをコードする核酸配列を共発現させると形成され得る。さらに、必要に応じて、配列番号40または配列番号46に示されるキメラポリペプチドの配列のいずれかまたは両方は、c−mycタグまたはHisタグのようなエピトープタグの追加を含み得、したがって、これらのタグは、結果として生じるHER1/HER3 ECD多量体中に組み込まれ得る。例えば、一方または両方のキメラポリペプチドが配列番号406および/または配列番号407に示されるアミノ酸配列を持つ多量体が作製され得る。
さらに、ECD多量体を形成するために全長HER1 ECDと組み合され得る第二のポリペプチドは、この第二のポリペプチドが、リガンドへの結合および/または二量体化の能力を保持する限りは、任意の長さのCSR ECDポリペプチドであり得る。多量体において全長HER1 ECDポリペプチドと組み合され得る例示的なECDポリペプチドとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:VEGFR1もしくは2、FGFR1〜4、IGF1−R、Tie−1、Tie−2、MET、PDGFRAもしくはB、PDGFRB、Epha1〜8、TNFR、RAGE、または、増殖、脈管形成もしくは炎症性の要素によって特徴付けられる疾患の過程に関与する任意の他のCSR、の全体もしくは一部分。例示的なCSRの全長ECDポリペプチドの例示的な配列を表7に示す。リガンドへの結合に十分なその一部分は、いくつかの例示的なRTKについて本明細書中に記載されるように、当該分野で公知である。公知ではない場合、リガンド結合のために必要とされるサブドメインは、関連するレセプターとのアラインメントに基づいて、そして/または、リガンド結合アッセイと同時に組換えDNA技術を用いることによって、経験的に決定され得る。多量体において全長HER1 ECDポリペプチドと共に使用することが企図される他のCSRおよびそのECD部分は、処置されるべき疾患、および/または、単一の細胞表面レセプターに対して標的化された薬物に対する耐性へのCSRの寄与に基づいて、経験的に決定され得る。さらに、任意のCSRの選択的スプライシングを受けたアイソフォームが、多量体において、全長HER1 ECDポリペプチドと共に使用され得る。これらの例は、実施例11に記載され、かつ、配列番号298〜300として示されるようなIGF−1Rのアイソフォームである。ECD多量体において使用され得る他のCSRアイソフォームは、配列番号301〜384のいずれかに示される。
b.2以上の短縮型ECD成分
また、任意のCSR ECDの2以上の短縮型ECD部分の間で形成されるECD多量体分子も本明細書において提供され、ここで、少なくともCSRの一方は、短縮型のHER分子である。代表的には、短縮型ECD部分のうち少なくとも一つは、その短縮型ECDポリペプチドが、HER2に由来しない限りは、リガンドに結合するか、そして/またはCSRと二量体化する(代表的には、両方)のに十分であり、短縮型ECDポリペプチドがHER2に由来する場合には、このポリペプチド部分は、少なくとも、別の細胞表面レセプターと二量体化する能力を有さなければ成らない。このような分子は、1以上のHERレセプターおよび/または別のCSRを調節(代表的には阻害)することによって、汎レセプター治療薬として機能し得る。調節は、リガンドを封鎖することによって、そして/または、CSRと二量体化することによってなされ得る。いくつかの例では、第一のポリペプチド成分および第二のポリペプチド成分の各々は、直接的に、または、多量体化ドメインを介して間接的に連結され得る。第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドの多量体化ドメインは、同じであっても異なっていてもよいが、異なる場合には、これらの多量体化ドメインは、多量体の成分間での安定なタンパク質−タンパク質相互作用を可能にするために相補的である。ECD多量体は、そのリガンド結合能および/または二量体化能を保持する2つの短縮型HERポリペプチド(代表的には、異なるHERレセプターの短縮型ECDポリペプチド)の間で形成され得る。当業者は、短縮型HERポリペプチドのうち少なくとも一方(代表的には両方)が、リガンド結合能、そして/または、二量体化能を保持するような、ECD多量体を作製する際に使用するためのHER分子の部分を決定し得る。例えば、一般に、短縮型のHER1分子、HER2分子またはHER3分子は、リガンドへの結合に十分なサブドメインIおよびIIIの部分と、二量体化に十分なサブドメインIIの部分と、サブドメインIVの少なくともモジュールIとを含む。短縮型HER2分子は一般に、二量体化のために、サブドメインI、IIおよびIIIの少なくとも十分な部分と、サブドメインIVの少なくともモジュール2〜5とを含む。
短縮型HER ECDの任意の組合せが、ハイブリッドECD多量体における使用のために企図される。例えば、短縮型HER1 ECDポリペプチドは、短縮型HER2ポリペプチド、短縮型HER3ポリペプチドまたは短縮型HER4ポリペプチドと組み合され得る;短縮型HER2 ECDポリペプチドは、短縮型HER ECDポリペプチドまたは短縮型HER4 ECDポリペプチドと組み合され得る;そして、短縮型HER3ポリペプチドは、短縮型HER4 ECDポリペプチドと組み合され得る。短縮型HERポリペプチドの例としては、例えば、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号30、配列番号34に示されるもの、例えば、配列番号22、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157もしくは配列番号159のいずれかに示されるHERレセプターの選択的スプライシング改変体、または、これらの任意の対立遺伝子改変体もしくは種改変体のような、本明細書中に記載される任意のものが挙げられる。一例では、ハースタチン分子またはその改変体(例えば、配列番号135または385〜399のいずれかに示されるもの)は、任意の他の短縮型ECD HERポリペプチドと組み合され得る。一例では、ECD多量体は、第一のポリペプチドとしてHER1 ECDの一部分を、そして、第二のポリペプチドとして、HER3 ECDポリペプチドの一部分を含み得、ここで、各ポリペプチドは、多量体化ドメインに連結される。短縮型HER1分子の例は、HF110(配列番号10)またはその対立遺伝子改変体である。短縮型HER3分子の例は、HF310(配列番号20)、p85−HER3(配列番号22)もしくはErbB3−519(配列番号24)、または、これらの対立遺伝子改変体である。例えば、配列番号38に示される例示的なキメラポリペプチド(HER1−501/Fc;HFD110、c−mycタグ有またはなし)および配列番号44に示されるキメラポリペプチド(HER3−500/Fc;HFD310)は、短縮型HER1/HER3 ECDヘテロ多量体である多量体分子を生成するために共発現され得る。
他の例では、本明細書において提供されるECD多量体は、第一のポリペプチドとして短縮型HER ECDポリペプチドを、そして、第二のポリペプチドとして、レセプターのHERファミリーのものではない別の短縮型CSR ECDポリペプチドを含み得る。上述のように、多量体のポリペプチド成分の少なくとも一方(代表的には、両方)が、リガンドと結合し、そして/または、膜貫通型レセプターと二量体化する限りは、短縮型のHER ECDポリペプチドは、HER1、HER2、HER3またはHER4のECDの一部分であり得る。例示的な短縮型HERファミリーレセプターとしては、配列番号 10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号34、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159もしくは配列番号385〜399のいずれかに示される任意のもの、または、これらの任意の対立遺伝子改変体もしくは種改変体が挙げられる。キメラECDポリペプチドは、多量体化ドメインに連結された別の細胞表面レセプターのECDポリペプチドの全体もしくは一部分を含み得る。短縮型HER ECDポリペプチドとのECD多量体を形成するために、任意の短縮型ECD CSRの組合せが企図され、そして、このような組合せは、処置されるべき疾患、それぞれのCSRのその疾患に対する寄与、CSRに対する公知のリガンド、単一の細胞表面レセプターに対して標的化された薬物に対する耐性に対するCSRの寄与、および他の要因に基づいて、経験的に決定され得る。CSRの例は、本明細書において上記され、そして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:IGF−R1、VEGFR(すなわち、VEGFR1またはVEGFR2)、FGFR(すなわち、FGFR1、FGFR2、FGFR3またはFGFR4)、TNFR、PDGFRAもしくはPDGFRB、MET、Tie(Tie−1またはTie−2)、Ephレセプター、またはRAGE。例示的なCSRの全長ECDポリペプチドの例示的な配列を表7に示す。リガンドへの結合に十分なその部分は、いくつかの例示的なRTKについて本明細書中に記載されるように、当該分野で公知である。公知でない場合、リガンド結合に必要とされるサブドメインは、関連するレセプターとのアラインメントに基づいて、そして/または、リガンド結合アッセイと同時に組換えDNA技術を用いることによって、経験的に決定され得る。さらに、任意のCSRの選択的スプライシングを受けたアイソフォームが、多量体において使用され得る。これらの例は、実施例11に記載され、かつ、配列番号298〜300として示されるようなIGF−1Rのアイソフォームである。ECD多量体において使用され得る他のCSRアイソフォームは、配列番号301〜384のいずれかに示される。
c.ハイブリッドECD多量体
多量体のキメラECDポリペプチドの少なくとも一方または両方が、多量体化ドメインに連結された任意の2以上のCSRのECD部分の一部分に由来するリガンド結合ドメインおよび/または二量体化ドメインを含むハイブリッドECD部分である、ECD多量体が本明細書において提供される。このようなハイブリッドECD分子は、本明細書において上記される。例えば、1つのこのようなハイブリッドECDポリペプチドは、HER2に由来するサブドメインIIと、HER1、HER3もしくはHER4に由来する、サブドメインIおよびIII(これらは、同じレセプターに由来しても異なるレセプターに由来してもよい)を含む。ハイブリッドECDの他の組合せは、関連するCSRの公知のサブドメイン活性に基づいて、経験的に決定され得る。代表的には、ECDハイブリッドのうちの一つのサブドメインの少なくとも一つは、結果として生じるECD多量体に、二量体化能を与える。2以上の同じかまたは異なるハイブリッドECD分子は、直接的もしくは間接的に一緒に連結され得る。一例では、ハイブリッドECD分子は、第一のハイブリッドECDポリペプチドの多量体化ドメインとの融合、および、第二のハイブリッドECDポリペプチドの同じかもしくは相補的な多量体化ドメインとの融合によって連結され得る。ハイブリッドECD多量体の形成は、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドについてのそれぞれのコード核酸を共発現させた後に達成される。
さらに、多量体のポリペプチドのうちの一方のみがハイブリッドECDであり、第二のポリペプチドが、任意の他のCSR分子(例えば、上述のような任意の全長ECDポリペプチド、または、上述のような任意の短縮型ECDポリペプチド)の全体もしくは一部分であるECD多量体が形成され得る。代表的には、他のCSR ECDポリペプチドは、HERファミリーレセプター、HERファミリーレセプターの選択的スプライシングを受けたアイソフォーム、または、これらの対立遺伝子改変体の全体もしくは一部分である。HERファミリーレセプター以外の他のCSRが、ハイブリッドECDと組合され得、そして、処置されるべき疾患、および/または、単一の細胞表面レセプターに対して標的化された薬物に対する耐性に対するCSRの関連性に依存して、適切なように選択され得る。
d.同じであるかまたは同じCSRに由来するECD成分
また、リガンドを封鎖することによってか、そして/または、同系CSRもしくは他の相互作用性のCSRとの直接的な相互作用によって、少なくとも1つ(ときどき、2以上)のCSRを調節するホモ多量体またはヘテロ多量体もまた、本明細書において提供される。このようなECD多量体は、多量体化ドメインに連結された第一のECDポリペプチドと、多量体化ドメインに連結された第二のECDポリペプチドとのホモ多量体(代表的には、ホモ二量体)であり得、ここで、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドとは同じである。あるいは、このようなECD多量体は、ヘテロ多量体(第一のECDポリペプチドおよび第二のECDポリペプチドの各々が、同じ同系CSRに由来するが、異なるものである)であり得る。代表的には、常にではないが、ECD成分が同じであるか、または同じレセプターに由来する場合、単一のレセプターのみの活性が標的とされる。例えば、いくつかの場合には、第一のポリペプチドとして全長IGF1−R ECD(すなわち、配列260のアミノ酸31〜935に対応)を、そして、第二のポリペプチドとして、第一のポリペプチドと同じポリペプチドまたはその短縮型もしくはアイソフォームを有するECD多量体が、少なくとも全長IGF1−Rの活性を調節するための候補治療薬である。別の例では、ハースタチン、および/または、別のHER2 ECDの成分を含むホモ多量体もしくはヘテロ多量体が、少なくとも1つ(であるが、代表的には、2つ以上)のCSRを、細胞表面上の全長HER1、HER3またはHER4レセプターと直接的に相互作用するなどによって、調節するための候補である。
F.キメラECDポリペプチド融合物をコードする核酸を生成する方法と結果として生じるECD多量体の生成
ECD、その一部分、特に、リガンド結合および/もしくはレセプターの二量体化に十分な部分、そしてまた、選択的スプライシングを受けた部分と、多量体化ドメインとの間でキメラポリペプチドを作製するために、任意の適切な方法が使用され得る。同様に、キメラポリペプチドからの多量体の形成は、当業者に公知の任意の方法によって達成され得る。上述のように、多量体は、代表的には、少なくとも1つのHERファミリーメンバー(代表的には、HER1またはHER3またはHER4)に由来するECD、および第二のHERファミリーメンバーに由来するECD、および/または、CSR(例えば、IGF1−R、VEGFRおよびFGFR、または、腫瘍形成もしくは炎症もしくは他の疾患の過程に関与する他のレセプター)に由来するECDを含む。
本明細書に記載される多量体化ドメインに対して直接的もしくは間接的に連結されたECDポリペプチドを含む、ECDキメラポリペプチドをコードする核酸分子を作製するための例示的な方法が提供される。このような方法としては、PCR、合成遺伝子構築、ならびに、単離および/または合成した核酸フラグメントのインビトロライゲーションのような、核酸分子についてのインビトロ合成法が挙げられる。HERファミリーレセプターもしくは他のRTKを含むCSRについての核酸分子は、細胞から単離したRNAおよびDNAのPCR、ならびに、ハイブリダイゼーションおよび/もしくは発現のスクリーニング法による核酸分子ライブラリーのスクリーニングを含む、クローニング法によって単離され得る。
ECDポリペプチドまたはその一部分は、インビトロおよびインビボの合成法を用いて、ECDポリペプチドをコードする核酸分子から作製され得る。1以上のキメラECDポリペプチド(例えば、ECD−Fcタンパク質融合物またはECDの任意の他の多量体化ドメインとの結合など)を含むECD多量体は、投与および処置に必要とされるECDポリペプチド多量体の必要とされる量および形態を生じるのに適切な任意の生物において発現させた後に生成され得る。発現の宿主としては、E.coli、酵母、植物、昆虫細胞、哺乳動物細胞(ヒト細胞株およびトランスジェニック動物を含む)のような原核生物および真核生物が挙げられる。ECDポリペプチドまたはECDポリペプチド多量体はまた、これらが発現される細胞および生物(ECDポリペプチドを組換え的に産生する細胞および生物、ならびに、選択的スプライシング事象によって産生される遺伝的にコードされるアイソフォームのように、アイソフォームを組換え手段なしで合成するような細胞および生物を含む)から単離され得る。
1.合成の遺伝子およびポリペプチド
ECDポリペプチドをコードする核酸分子は、合成による遺伝子合成を用いて、当業者に公知の方法により合成され得る。このような方法において、ECDのポリペプチド配列は、ECDもしくはその一部分をコードする1以上の核酸分子を作製するように「逆翻訳(back−translated)」される。逆翻訳された核酸分子は、次いで、自動DNA合成技術を用いるなどによって、1以上のDNAフラグメントとして合成される。このフラグメントが、次いで、ECDポリペプチドをコードする核酸分子を形成するように作動可能に連結される。キメラECDポリペプチドは、ECDポリペプチドをコードする核酸分子を、多量体化ドメインをコードする任意のもののような追加の核酸分子、または、エピトープタグ、もしくは融合タグ、転写および翻訳を調節するための調節性配列、ベクターをコードする他の核酸、ならびに、他のポリペプチドをコードする核酸分子と接合することによって作製され得る。ECDをコードする核酸分子はまた、追跡などのために他の融合タグもしくは標識(放射標識および蛍光部分を含む)と作動可能に連結され得る。
逆翻訳のプロセスは、ECDポリペプチドのような任意の関心のあるポリペプチドについての核酸遺伝子を得るために遺伝子コードを使用する。遺伝子コードは、縮重しており、64のコドンが、20のアミノ酸と3の停止コドンとを特定する。このような縮重は、核酸の設計および作製における柔軟性を許容し、そして、例えば、核酸フラグメントの連結および/または、各合成フラグメント内への固有の識別配列の配置を容易にするために、制限酵素部位を組み込むことを可能にする。遺伝子コードの縮重はまた、望ましくないヌクレオチド配列(望ましくない制限酵素部位、スプライシングのドナー部位もしくはアクセプター部位、または、効率的な翻訳にとって潜在的に有害な他のヌクレオチド配列を含む)を回避するための核酸分子の設計を可能にする。さらに、生物は、ときおり、特定のコドンの使用法(usage)、および/または、GCヌクレオチドのATヌクレオチドに対する規定された比を好む。したがって、遺伝コードの縮重は、特定の生物または生物の群における発現について適応させた核酸分子の設計を可能にする。さらに、核酸分子は、配列の最適化(または、非最適化)に基づいて、異なるレベルの発現のために設計され得る。逆翻訳は、ポリペプチドをコードするコドンを選択することによってなされる。このようなプロセスは、遺伝子コードの表とポリペプチド配列とを用いて手動で行われ得る。あるいは、公的に利用可能なソフトウェアを含むコンピュータプログラムが、逆翻訳された核酸配列を作製するために使用され得る。
逆翻訳された核酸分子を合成するために、核酸合成について当該分野において利用可能なあらゆる方法が使用され得る。例えば、ヌクレオチドのECDコード配列のフラグメントに対応する個々のオリゴヌクレオチドは、標準的な自動化された方法によって合成され、そして、アニーリングまたはハイブリダイゼーション反応において一緒に混合される。このようなオリゴヌクレオチドは、相補的な配列の二重鎖化の際に形成される、一般に長さ約100ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングの重なりを用いて、アニーリングにより、オリゴヌクレオチドから遺伝子の自己集合を生じるように合成される。二重鎖DNAにおける単一ヌクレオチドの「ニック」は、例えば、バクテリオファージT4 DNAリガーゼを用いたライゲーションを用いてシールされる。次いで、制限エンドヌクレアーゼリンカー配列が、例えば、タンパク質の発現に適した種々の組換えDNAベクターのうちいずれか1つに、合成遺伝子を挿入するために使用され得る。別の類似の方法において、一連のオリゴヌクレオチドの重なりが、化学的なオリゴヌクレオチド合成法によって調製される。これらのオリゴヌクレオチドのアニーリングは、ギャップを持つDNA構造をもたらす。DNAポリメラーゼIのような酵素により触媒されるDNA合成は、これらのギャップを満たすために使用され得、そして、ライゲーションは、二重鎖構造におけるあらゆるニックをシールするために使用される。PCRおよび/または他のDNA増幅技術が、形成された線形のDNA二重鎖を増幅するために応用され得る。
ベクター(例えば、タンパク質発現ベクター、または、コアタンパク質をコードするDNA配列の増幅のために設計されたベクター)中に合成遺伝子をクローニングする目的で、制限エンドヌクレアーゼ部位を含むリンカー配列を含む、追加のヌクレオチド配列が、ECDをコードする核酸分子に接合され、それによって、ECD融合物を作製し得る。さらに、機能的なDNAエレメントの特性を持たせる追加のヌクレオチド配列は、ECDをコードする核酸分子に対して作動可能に連結され得る。このような配列の例としては、細胞内タンパク質発現を促進するように設計されたプロモーター配列、または、タンパク質分泌を促進するように設計された前駆体配列が挙げられるがこれらに限定されない。ECDをコードする核酸分子に対し作動可能に連結され得るヌクレオチド配列の他の例としては、ポリペプチドの精製および/または検出を容易にする配列が挙げられる。例えば、エピトープタグまたは蛍光部分のような融合タグが、アイソフォームに対して融合もしくは連結され得る。タンパク質の結合領域を特性する配列のような追加のヌクレオチド配列もまた、ECDをコードする核酸分子に対して連結され得る。このような領域としては、ECDポリペプチドの特定の標的細胞内への取り込みを促進するための配列、または、合成遺伝子の薬物動態を他の方法で増強するための配列が挙げられるがこれらに限定されない。
ECDポリペプチドはまた、自動化された合成のポリペプチド合成を用いて合成され得る。クローニングされたか、そして/または、インシリコで作製されたポリペプチド配列が、フラグメントで合成され得、次いで、化学的に連結され得る。あるいは、化学分子が、単一のポリペプチドとして合成され得る。このようなポリペプチドは、次いで、本明細書中に記載されるアッセイおよび処置の投与において使用され得る。
2.ECDポリペプチドをクローニングおよび単離する方法
ECD融合物をコードする核酸分子を含めて、ECDをコードする核酸分子は、核酸分子のクローニングおよび単離について、当該分野で公知の任意の利用可能な方法を用いてクローニングまたは単離され得る。このような方法としては、核酸のPCR増幅、ならびに、核酸のハイブリダイゼーションスクリーニング、抗体ベースのスクリーニングおよび活性ベースのスクリーニングを含むライブラリーのスクリーニングが挙げられる。
ECDポリペプチドをコードする核酸分子はまた、ライブラリーのスクリーニングを用いて単離され得る。例えば、cDNAとして発現されたRNA転写物を示す核酸ライブラリーは、ECDポリペプチドまたはその一部分をコードする核酸分子とのハイブリダイゼーションによってスクリーニングされ得る。例えば、ECDポリペプチドの一部分(例えば、HERファミリーECDのドメインIVのモジュール1の一部分)をコードする核酸配列は、相同な配列に対するハイブリダイゼーションに基づいて、ドメインIVを含む分子についてのスクリーニングに使用され得る。
発現ライブラリーのスクリーニングは、ECDポリペプチドをコードする核酸分子を単離するために使用され得る。例えば、発現ライブラリーは、特定のECDもしくはECDの一部分を認識する抗体を用いてスクリーニングされ得る。ECDポリペプチドまたは、ECD内に含まれる領域もしくはペプチドに特異的に結合する抗体が、得られ得るか、そして/または、調製され得る。ECDに特異的に結合する抗体は、ECD(例えば、HERファミリーレセプターのECD)をコードする核酸分子を含む発現ライブラリーをスクリーニングするために使用され得る。ポリクローナルおよびモノクローナルの抗体およびフラグメントを含む、抗体を調製および単離する方法は、当該分野で周知である。組換えおよび合成の抗体を調製および単離する方法もまた、当該分野で周知である。例えば、このような抗体は、固相ペプチド合成を用いて行われ得るか、または、候補ポリペプチドに特異的に結合する抗体の抗原結合部位のヌクレオチド配列情報およびアミノ酸配列情報を用いて、組換えにより産生され得る。抗体はまた、可変重鎖および可変軽鎖、または、これらの抗原結合部分を含むコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得られ得る。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および非天然抗体を調製、単離および使用する方法は、例えば、Kontermann and Dubel,eds.(2001)「Antibody Engineering」Springer Verlag;Howard and Bethell,eds.(2001)「Basic Methods in Antibody Production and Characterization」CRC Press;and O’Brien and Aitkin,eds.(2001)「Antibody Phage Display」Humana Pressにおいて概説される。このような抗体はまた、例えば、細胞、組織もしくは抽出物におけるECDポリペプチドの発現を検出するために、ECDポリペプチドの存在についてスクリーニングするために使用され得る。
核酸の増幅のための方法は、ECDポリペプチドをコードする核酸分子を単離するために使用され得、このような方法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖(PCR)反応が挙げられる。核酸を含む物質は、出発物質として使用され得、このような物質から、ECDをコードする核酸分子が単離され得る。例えば、DNAおよびmRNAの調製物、細胞抽出物、組織抽出物、体液サンプル(例えば、血液、血清、唾液)、健常な被験体および/または罹患した被験体からのサンプルが、増幅法において使用され得る。核酸ライブラリーもまた、出発物質の供給源として使用され得る。プライマーは、ECD分子を増幅するように設計され得る。例えば、プライマーは、発現される配列に基づいて設計され得、その発現される配列からECD分子が生成される。プライマーは、ECDアミノ酸配列の逆翻訳に基づいて設計され得る。増幅により生成された核酸分子は配列決定され、そして、ECDをコードすることが確認され得る。
3.ECDポリペプチドキメラを生成およびクローニングする方法
キメラタンパク質は、異なる、または、異種のタンパク質もしくはペプチドに由来する2以上の領域を含むポリペプチドである。キメラタンパク質は、シグナルペプチド配列と、CSR(例えば、HERファミリーレセプター)のECDまたはその一部分についての1以上の配列と、リンカー配列、多量体化ドメイン配列(すなわち、Fcドメイン、ロイシンジッパー、他の多量体形成配列)、および/または、タンパク質の精製を促進するエピトープタグもしくは他の部分についての配列のような、任意の他の異種の配列とを含むいくつかの配列を含み得る。例えば、ECDポリペプチドは、融合タンパク質を形成するために、別のポリペプチド(すなわち、別のECDポリペプチドもしくはその一部分、および/または、多量体化ドメイン)に対して直接的に連結され得る。あるいは、タンパク質は、そのタンパク質が、適切な二次構造および三次構造を形成することを確実にするのに十分な距離だけ間隔を空けられ得る。適切なリンカー配列は、(1)柔軟性のある長い立体配座を採り、(2)融合ポリペプチドの機能的ドメインと相互作用し得る規則正しい二次構造を発生させる傾向を示さず、そして(3)機能的なタンパク質ドメインとの相互作用を促進し得る、最小限の疎水性もしくは電荷の特性を有する。例示的なリンカー配列は、上述され、一般には、Gly、AsnもしくはSerを含むもの、または、ThrもしくはAlaを含む他の天然アミノ酸が挙げられる。一般に、ECD部分の異種配列との結合は、上記のような組換えDNA技術によってなされる。あるいは、異種配列は、本明細書中に記載される任意のもののような、ヘテロ二官能性架橋剤によってECD部分へと共有結合性に連結され得る。
一般に、ECD融合分子は、多量体の形成を促進する異種ポリペプチド(例えば、多量体化ドメイン)に連結されたリガンドへの結合に十分な、CSRのECDの全体もしくは一部分を有するキメラポリペプチドをコードする。
さらに、ECDポリペプチドはまた、1以上の他の異種配列に対して、直接的もしくは間接的に連結され得る。例えば、ECDキメラポリペプチドはまた、タグポリペプチドとの融合物を含み得、このタグポリペプチドは、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供する。このようなECDポリペプチド融合物のエピトープがタグ化した形態は有用である。というのも、その存在が、タグポリペプチドに対する標識化抗体を用いて検出され得るからである。また、エピトープタグを提供することは、ECD融合ポリペプチドが、抗タグ抗体を用いたアフィニティ精製によって容易に精製されることを可能にする。
キメラタンパク質は、所望の配列からのフラグメントの酵素により切断およびライゲーションの従来の技術を用いて調製され得る。例えば、所望の配列は、オリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成され得るか、適切な制限酵素消化によってタンパク質を産生する親細胞のDNAから単離され得るか、または、適切なプライマーを用いたゲノムDNAのPCRによって、細胞、組織、ベクターもしくは他の標的供給源のような標的供給源から得られ得る。一例では、ECDキメラ配列は、PCRにより増幅されたDNA標的配列を、ベクター中の加工した組換え部位内にライゲーションする連続ラウンドによって作製され得る。例えば、1以上のECDポリペプチド、融合タグおよび/または多量体化ドメイン配列についての核酸配列が、対向鎖にハイブリダイズし、そして、標的DNA内の関心領域を挟むプライマーを用いてPCR増幅され得る。標的DNA分子を発現することが知られる細胞もしくは組織もしくは他の供給源、または標的DNA分子についての配列を含むベクターが、PCR増幅事象のための出発産物として使用され得る。PCRの増幅産物は、ベクター内に既に含まれる別の核酸配列との融合物を作製するため、または、標的分子の発現のためなどの、配列のさらなる組換え操作のために、ベクター中にサブクローニングされ得る。
PCR増幅において使用されるPCRプライマーはまた、核酸配列の作動可能な連結を容易にするように加工され得る。例えば、鋳型に相補的でない5’伸長が、増幅事態に有意な影響を与えることなく、PCR産物の種々の増幅後操作を可能にするためにプライマーに追加され得る。例えば、これらの5’伸長は、制限酵素部位、プロモーター配列、制限酵素リンカー配列、プライマー切断部位配列、またはエピトープタグについての配列を含み得る。一例では、融合物の配列を作製する目的で、プライマー中に組み込まれ得る配列としては、例えば、mycエピトープタグ、または、他の小さなエピトープタグをコードする配列が挙げられ、その結果、増幅されたPCR産物は、関心のある核酸配列のエピトープタグとの融合物を効率的に含む。
別の例では、制限酵素部位のプライマー中への組み込みは、核酸配列のライゲーションのための突出末端を提供するなどによって、適合性の制限酵素部位を含むベクター中への増幅産物のサブクローニングを容易にし得る。単一のベクター中への複数のPCR増幅産物のサブクローニングは、異なる核酸配列を作動可能に連結または融合するための戦略として使用され得る。プライマー配列中に組み込まれ得る制限酵素部位の例としては、以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:Xho I制限酵素部位(CTCGAG、配列番号267)、NheI制限酵素部位(GCTAGC、配列番号268)、Not I制限酵素部位(GCGGCCGC、配列番号269)、EcoRI制限酵素部位(GAATTC、配列番号270)、AgeI部位(ACCGGT、配列番号271)またはXba I制限酵素部位(TCTAGA、配列番号272)。ベクター中へのPCR産物のサブクローニングのための他の方法としては、平滑末端クローニング、TAクローニング、ライゲーション非依存性のクローニング、およびインビボクローニングが挙げられる。
プライマー中への有効な制限酵素部位の作製は、その後のサブクローニングのために、突出末端、または、いくつかの制限酵素部位については平滑末端を露出するために、適合性の制限酵素を用いたPCRフラグメントの消化を必要とする。プライマーが、制限酵素に対する適合性を保持するような、プライマー中への制限酵素部位の加工には、いくつかの考慮しなければならない要因が存在する。第一に、PCRプライマーにおける加工された制限酵素部位の上流2〜6個の余分な塩基の追加は、一般に、増幅産物の消化効率を高め得る。制限酵素による制限酵素部位の消化の改善のために使用され得る他の方法としては、DNAをブロックし得るあらゆる耐熱性ポリメラーゼを除くためのプロテイナーゼK処理、KlenowもしくはT4 DNAポリメラーゼによる末端研磨(polishing)、および/または、スペルミジンの追加が挙げられる。PCR産物の消化効率を改善するための代替法としてはまた、増幅後のフラグメントのコンカテマー化が挙げられ得る。これは、まず、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いたPCR産物の清浄(プライマーが既にリン酸化されていない場合)の処理を行うことによって達成される。Pfuのようなプルーフリーディングの耐熱性ポリメラーゼが使用される場合には、末端は既に平坦であり得るか、または、Taqのような非プルーフリーディングの酵素が使用される場合には、末端を研磨するために増幅したPCR産物がT4 DNAポリメラーゼで処理され得る。PCR産物は、T4 DNAリガーゼを用いてライゲーションされ得る。これにより、制限酵素部位を、フラグメントの末端から離れるように効率的に移動され、効率的な消化が可能となる。
関心のある配列との融合物の作製などのために、露出された制限酵素部位を含むPCR産物のベクター中へのサブクローニングの前に、ときどき、消化されたPCR産物を、切断されないままのものから区別することが必要となる。このような例において、プライマーの5’末端への蛍光タグの追加は、PCRの前に追加され得る。これにより、首尾よく消化された産物は、消化の際に蛍光標識を失っているので、消化された生成物の同定が可能となる。
いくつかの場合、融合配列の作製のための、その後のベクター中へのサブクローニングのために制限酵素部位を含むPCR増幅産物の使用は、融合タンパク質生成物における制限酵素リンカー配列の組み込みをもたらし得る。一般に、このようなリンカー配列は、短く、これらの配列が作動可能に連結される限りは、ポリペプチドの機能を損ねない。
ECDキメラポリペプチドをコードする核酸分子は、核酸分子を含むベクターの形態で提供され得る。このようなベクターの一例は、プラスミドである。多くの発現ベクターが利用可能であり、かつ、当業者に公知であり、そして、キメラECDポリペプチドを含むECDポリペプチドの発現のために使用され得る。発現ベクターの選択は、宿主の発現系の選択によって影響を受け得る。一般に、発現ベクターは、転写プロモーター、必要に応じてエンハンサー、翻訳シグナル、ならびに、転写終結シグナルおよび翻訳終結シグナルを含み得る。安定な形質転換に使用される発現ベクターは、代表的に、形質転換された細胞の選択および維持を可能にする選択可能なマーカーを有する。いくつかの場合、多コピーのベクターを増幅するために、複製起点が使用され得る。さらに、ベクターから発現される任意の結果として生じたタンパク質が、ポリペプチドの配列とインフレームで挿入されたエピトープタグを有するように、多くの発現ベクターは、マルチプルクローニング部位に隣接して、N末端もしくはC末端のいずれかのエピトープタグを与える。エピトープタグが挿入された例示的な発現ベクターは、pcDNA/myc−His哺乳動物発現ベクター(Invitrogen、配列番号161)である。したがって、例えば、このベクターからのECDポリペプチドの発現は、C末端にmyc−Hisタグを含むポリペプチドの発現をもたらし、ここで、myc−Hisタグは、配列番号162に示されるアミノ酸配列を有する。従って、任意のECDポリペプチドまたはその一部分は、myc−Hisタグと共に発現され得る。タグを含むこのような例示的なポリペプチドは、実施例に記載されており、そして、「T」で指定される。例えば、HER1−621(T)分子は、HER1 ECDの全長と、その後にC末端のmyc−Hisタグとを含むポリペプチドである。エピトープタグ配列を含む、本明細書に提供されるECDポリペプチドの例示的な配列は、配列番号274および275に示される。エピトープタグ(例えば、c−mycタグ、Hisタグまたは配列番号162に示されるようなc−myc/Hisタグの組合せであるが、これらに限定されない)を含む任意のECDポリペプチドまたはその短縮型部分は、当業者に公知の任意の方法によって作製され得る。
4.発現系
本明細書において提供される任意のもののようなキメラポリペプチドをコードするDNAは、発現のために宿主細胞中へとトランスフェクトされる。ECD多量体ポリペプチドが所望され、それゆえに、多量体化が、多量体化ドメインによって媒介されるいくつかの場合、宿主細胞は、多量体を形成する別個のキメラECD分子をコードするDNAを用いて形質転換され、そして、宿主細胞は、この多量体の別個の鎖を所望の様式で組み立て得るように最適に選択される。別個の単量体ポリペプチドの組み立ては、それぞれの多量体化ドメインの各々の相互作用によって促進され、これらの多量体化ドメインの各々は、キメラECDポリペプチド間で同じであるか、または相補的である。HERファミリーレセプターECDまたはその一部分が、多量体ポリペプチドの一方または両方のECD部分である場合、多量体化ドメインは、単量体の組み立てが、HER分子の二量体化アームを、パートナーの多量体分子から離して方向付けるように選択される。この方向付けは、「背中合わせ」と呼ばれ、二量体化アームが、細胞表面上の同系HERとの二量体化に利用可能となることを確実にする。
キメラECDポリペプチドを含むECDポリペプチドは、投与および処置に必要とされるポリペプチドの必要とされる量および形態を生成するのに適切な任意の生物において発現され得る。一般に、異種DNAを発現するように加工され得、そして、分泌経路を有するあらゆる細胞のタイプが適切である。発現宿主は、E.coli、酵母、植物、昆虫細胞、哺乳動物細胞(ヒト細胞株およびトランスジェニック動物を含む)のような原核生物および真核生物を含む。発現宿主は、そのタンパク質産生レベル、ならびに、発現されたタンパク質上に存在する翻訳後修飾のタイプにおいて異なり得る。発現宿主の選択は、これらおよび他の因子(例えば、調節および安全性の考慮、生産コスト、ならびに、精製の必要性およびその方法)に基づいてなされ得る。
a.原核生物による発現
原核生物、特に、E.coliは、本明細書中に提供されるECDポリペプチドおよびECDポリペプチド融合物のような多量のタンパク質を産生するための系を提供する。桿菌(例えば、Bacillus subtilis、種々の種のPseudomonas)または他の細菌株のような他の微生物株もまた使用され得る。E.coliを含む細菌の形質転換は、当業者に周知の、単純でかつ迅速な技術である。このような原核生物の系において、しばしば、宿主と適合性の種に由来する複製部位および制御配列を含むプラスミドベクターが使用される。例えば、E.coliについて一般的なベクターとしては、pBR322、pUC18、pBADおよびこれらの派生物が挙げられる。転写開始のためのプロモーター、必要に応じてオペレーターを、リボソーム結合部位配列と共に含む、一般に使用される原核生物制御配列としては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、アラビノースプロモーター、ならびに、λ由来PlプロモーターおよびN遺伝子リボソーム結合部位のような一般に使用されるプロモーターが挙げられる。しかし、原核生物と適合性である任意の利用可能なプロモーター系が使用され得る。E.coliのための発現ベクターは、誘導性のプロモーターを含み得、このようなプロモーターは、高いレベルのタンパク質発現を誘導するため、そして、宿主細胞におい対していくらか毒性を示すタンパク質を発現させるために有用である。誘導性プロモーターの例としては、lacプロモーター、trpプロモーター、ハイブリッドtacプロモーター、T7およびSP RNAプロモーター、ならびに、温度調節性のλPLプロモーターが挙げられる。
ECDポリペプチドは、E.coliの細胞質環境において発現され得る。細胞質は、還元性の環境であり、そして、いくつかの分子にとっては、このことは、不溶性の封入体の形成をもたらし得る。ジチオスレイトールおよびβ−メルカプトエタノールのような還元剤と、グアニジン−HClおよび尿素のような変性剤とが、タンパク質を溶解するために使用され得る。代替的アプローチは、酸化性の環境と、シャペロン様かつジスルフィドのイソメラーゼを提供し、そして、可溶性タンパク質の産生をもたらし得る、細菌のペリプラズム空間におけるECDポリペプチド融合物を含むECDポリペプチドの発現である。いくつかの例において、OmpA、OmpF、PelBまたは他の前駆体配列を含む、細菌において使用するための前駆体配列またはシグナル配列が、タンパク質をペリプラズムへと指向させる内因性の前駆体配列を置き換えることなどによって、発現されるべきタンパク質へと融合される。次いで、リーダーペプチドが、ペリプラズム内部のシグナルペプチダーゼによって除去される。ペリプラズムを標的とする前駆体配列またはリーダー配列の例としては、ペクチン酸リアーゼ遺伝子に由来するpelBリーダー配列、および、アルカリホスファターゼ遺伝子に由来するリーダー配列が挙げられる。いくつかの場合、ペリプラズムでの発現は、発現された細胞の培養培地中への漏出を可能にする。タンパク質の分泌は、培養上清からの迅速かつ単純な精製を可能にする。分泌されないタンパク質は、浸透性溶解によってペリプラズムから得られ得る。細胞質での発現と同様に、いくつかの場合、タンパク質は、不溶性となり得、そして、可溶化およびリフォールディングを促進するために変性剤および還元剤が使用され得る。誘導および増殖の温度もまた、発現レベルおよび溶解度に影響を及ぼし得、代表的には、25℃と37℃との間の温度が使用される。代表的には、細菌は、グリコシル化タンパク質を生成する。したがって、タンパク質が機能するためにグリコシル化を必要とする場合、宿主細胞から精製した後に、グリコシル化が加えられ得る。
b.酵母
Saccharomyces cerevisae、Schizosaccharomyces pombe、Yarrowia lipolytica、Kluyveromyces lactisおよびPichia pastorisのような酵母は、ECDポリペプチドの産生のために使用され得る周知の酵母発現宿主である。酵母は、エピソームの複製ベクターを用いて、または、相同組換えによる安定な染色体組み込みによって、形質転換され得る。代表的には、遺伝子発現を調節するために、誘導性のプロモーターが使用される。このようなプロモーターの例としては、GAL1、GAL7およびGAL5、ならびにメタロチオネインプロモーター(例えば、CUP1)、AOX1、もしくは、他のPichia、または、他の酵母プロモーターが挙げられる。他の酵母プロモーターとしては、解糖系の酵素の合成のためのプロモーター(例えば、3−ホスホグリセレートキナーゼの合成のためのプロモーター)、または、Yep13から得られるエノラーゼ遺伝子もしくはLeu2遺伝子に由来するプロモーターが挙げられる。発現ベクターは、しばしば、形質転換したDNAの選択および維持のために、LEU2、TRP1、HIS3およびURA3のような選択可能なマーカーを含む。酵母において使用するための例示的な発現ベクター系は、POT1ベクター系(例えば、米国特許第4,931,373号を参照のこと)であり、これは、グルコース含有培地における増殖により、形質転換された細胞を選択することを可能にする。酵母において発現されるタンパク質は、しばしば、可溶性である。Bipのようなシャペロニンおよびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼとの共発現は、発現レベルおよび溶解度を改善させ得る。さらに、酵母において発現されるタンパク質は、Saccharomyces cerevisaeに由来する酵母接合型α因子分泌シグナル(mating type α−factor secretion signal)のような分泌シグナルペプチド融合物、および、Aga2p接合接着レセプター(mating adhesion receptor)もしくはArxulaアデニニボラングルコアミラーゼ(adeninivorans glucoamylase)のような酵母細胞表面タンパク質との融合物、または、酵母におけるポリペプチドの分泌を促進する任意の他の異種もしくは同種の前駆体配列を用いて、分泌を指向され得る。例えばKex−2プロテアーゼのようなプロテアーゼ切断部位が、これらが分泌経路を出るときに、発現されるポリペプチドから融合配列を除去するように加工され得る。酵母はまた、Asn−X−Ser/Thrモチーフにおいてグリコシル化し得る。
c.昆虫細胞
昆虫細胞は、特に、バキュロウイルスの発現を用いて、ECDポリペプチド融合物を含むECDポリペプチドのようなポリペプチドを発現させるために有用である。昆虫細胞は、高レベルのタンパク質を発現し、そして、より高次の真核生物によって使用されるほとんどの翻訳後修飾を行い得る。バキュロウイルスは限定的な宿主範囲を持ち、安全性を改善しそして、真核生物発現に関する調節性の問題を減少させる。代表的な発現ベクターは、バキュロウイルスのポリヘドリン(polyhedrin)プロモーターのような高レベルの発現のためのプロモーターを使用する。一般に使用されるバキュロウイルス系としては、バキュロウイルス(例えば、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)およびbombyx mori核多角体ウイルス(BmNPV))ならびに、昆虫細胞株(例えば、Spodoptera frugiperdaに由来するSf9、Pseudaletia unipuncta(A7S)およびDanaus plexippus(DpN1))が挙げられる。高レベルの発現のために、発現されるべき分子のヌクレオチド配列は、ウイルスのポリヘドリン開始コドンの直ぐ下流に融合される。哺乳動物の分泌シグナルは、昆虫細胞において正確にプロセシングを受け、発現されたタンパク質を培養培地中へと分泌するために使用され得る。例えば、哺乳動物の組織プラスミノーゲンアクチベーター前駆体配列は、昆虫細胞によるタンパク質の発現および分泌を促進する。さらに、細胞株Pseudaletia unipuncta(A7S)およびDanaus plexippus(DpN1)は、哺乳動物細胞系に類似するグリコシル化パターンを持つタンパク質を生成する。
昆虫細胞における代替的な発現系は、安定に形質転換された細胞の使用である。Schnieder 2(S2)細胞およびKc細胞(Drosophila melanogaster)およびC7細胞(Aedes albopictus)のような細胞株が、発現のために使用され得る。Drosophilaのメタロチオネインプロモーターは、カドミウムもしくは銅による重金属誘導の存在下で、高レベルの発現を誘導するために使用され得る。発現ベクターは、代表的には、ネオマイシンおよびハイグロマイシンのような選択可能なマーカーの使用によって維持される。
d.哺乳動物細胞
哺乳動物発現系は、本明細書中に提供されるECDポリペプチド融合物を含むECDポリペプチドを発現させるために使用され得る。発現構築物は、アデノウイルスベクターを用いるなどによるウイルス感染によって、または、リポソーム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランを含む従来のトランスフェクション法、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションのような物理的な手段などによる直接的なDNAの移入によって、哺乳動物細胞へと移入され得る。例示的な発現ベクターとしては、例えば、pcDNA3.1/myc−His(Invitrogen、配列番号161)が挙げられる。哺乳動物細胞のための発現ベクターは、代表的には、mRNAのキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(Kozakコンセンサス配列)およびポリアデニル化エレメントを含む。このようなベクターは、しばしば、高レベルの発現のための転写プロモーター−エンハンサー(例えば、SV40プロモーター−エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(例えば、hCMV−MIEプロモーター−エンハンサー)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)の長い末端反復、または、ポリオーマ、アデノウイルスII、ウシパピローマウイルス、もしくはサル肉腫ウイルスに由来するもののような他のウイルスプロモーター)を含む。さらなる適切な哺乳動物プロモーターとしては、β−アクチンプロモーター−エンハンサー、およびヒトメタロチオネインIIプロモーターが挙げられる。これらのプロモーター−エンハンサーは、多くの細胞タイプにおいて活性である。組織および細胞のタイプのプロモーターおよびエンハンサーの領域もまた、発現のために使用され得る。例示的なプロモーター/エンハンサー領域としては、エラスターゼI、インシュリン、免疫グロブリン、マウス乳腺癌ウイルス、アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシン、βグロビン、ミエリン塩基性タンパク質、ミオシン軽鎖2およびゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御配列のような遺伝子に由来するものが挙げられるがこれらに限定されない。発現構築物を持つ細胞の選択および維持のために、選択可能なマーカーが使用され得る。選択可能なマーカー遺伝子の例としては、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、およびチミジンキナーゼが挙げられるがこれらに限定されない。TCR−ζおよびFcεRI−γのような細胞表面シグナル伝達分子との融合物は、細胞表面上での活性な状態のタンパク質の発現を指向し得る。
多くの細胞株が哺乳動物の発現に利用可能であり、これらとしては、マウス、ラット、ヒト、サル、トリおよびハムスターの細胞が挙げられる。例示的な細胞株としては、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNS0(非分泌型)、および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、繊維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293T、293S、2B8およびHKB細胞が挙げられるがこれらに限定されない。細胞培養培地からの分泌されたタンパク質の精製を容易にする無血清培地に適合させた細胞株もまた利用可能である。一つのこのような例は、無血清のEBNA−1細胞株(Pham et al.,(2003)Biotechnol.Bioeng.84:332−42)である。
e.植物
トランスジェニックの植物細胞および植物が、ECDポリペプチドを発現させるために使用され得る。発現構築物は、代表的には、微粒子銃(microprojectile bombardment)およびPEG媒介性のプロトプラスト内への移入のような直接的なDNAの移入、ならびに、アグロバクテリウムにより媒介される形質転換を用いて、植物へと移入される。発現ベクターは、プロモーター配列およびエンハンサー配列、転写開始エレメント、ならびに、翻訳制御エレメントを含み得る。発現ベクターおよび形質転換技術は、通常、双子葉植物宿主(例えば、Arabidopsisおよびタバコ)と、単子葉植物宿主(例えば、トウモロコシおよびコメ)との間で分けられる。発現に使用される植物プロモーターの例としては、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、ノパリン(nopaline)シンターゼプロモーター、リボースビスホスフェートカルボキシレートプロモーター、ならびに、ユビキチンおよびUBQ3プロモーターが挙げられる。ハイグロマイシン、ホスホマンノースイソメラーゼおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼのような選択可能なマーカーが、しばしば、形質転換された細胞の選択および維持を容易にするために使用される。形質転換された植物細胞は、細胞、凝集物(カルス組織)として培養中に維持され得るか、または、完全な植物へと再生され得る。トランスジェニック植物細胞はまた、CSRアイソフォームを生成するように加工された藻類を含み得る(例えば、Mayfield et al.(2003)PNAS 100:438−442を参照のこと)。植物は、哺乳動物細胞とは異なるグリコシル化パターンを有するので、このことは、これらの宿主において生成されるCSRアイソフォームの選択に影響を及ぼし得る。
5.トランスフェクションおよび形質転換の方法
宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションは、選択した宿主細胞に適切な標準的な方法を用いて達成される。トランスフェクションの方法は当業者に公知であり、例えば、リン酸カルシウム法およびエレクトロポレーション、ならびに、トランスフェクションを促進する市販のカチオン性リポソーム試薬(例えば、LipofectamineTM、LipofectamineTM 2000またはLipofectin(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad CA))の使用である。使用する宿主細胞に依存して、形質転換は、このような細胞に適切な標準的な技術を用いて行われる。例えば、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理、または、エレクトロポレーションは、一般に、実質的な細胞壁障壁を持つ原核生物細胞または他の細胞に使用される。Agrobacterium tumefaciensを用いた感染は、特定の植物細胞の形質転換に使用される。このような細胞壁のない哺乳動物細胞については、リン酸カルシウム沈降が用いられ得る。形質転換の一般的な局面は、植物細胞について(例えば、Shaw et al.,(1983)Gene,23:315、WO89/05859を参照のこと)、哺乳動物細胞について(例えば、米国特許第4,399,216号、Keown et al.,Methods in Enzymolog.,(1990)185:527;Mansour et al.,(1988)Nature 336:348を参照のこと)、または酵母細胞について(例えば、Val Solingen et al.,(1977)J Bact(1977)130:946,Hsiao et al.,(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.,76:3829を参照のこと)記載されている。宿主細胞中のDNAを導入するための他の方法としては、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、インタクトな細胞との細菌のプロトプラスト融合、または、ポリブレンもしくはポリオルニチンのようなポリカチオンの使用が挙げられるがこれらに限定されない。
6.ECDポリペプチド、キメラポリペプチド、および結果として生じるECD多量体の回収および精製
ECDポリペプチドおよびキメラECDポリペプチド(ECDポリペプチド多量体を含む)は、当該分野で周知の種々の技術を用いて単離され得る。当業者は、本明細書において提供される単離されたポリペプチドまたはタンパク質のうちの1つを得るために、ポリペプチドおよびタンパク質を単離するための公知の方法に容易に従い得る。これらとしては、イムノクロマトグラフィー、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられるがこれらに限定されない。イオン交換クロマトグラフィーの例としては、アニオン交換クロマトグラフィーおよびカチオン交換クロマトグラフィーが挙げられ、DEAEセファロース、DEAE Sephadex、CMセファロース、SPセファロースまたは当業者に公知の任意の他の類似のカラムの使用が挙げられる。細胞培養培地から、または、溶解細胞からの、ECDポリペプチドまたはECD多量体ポリペプチドの単離は、キメラECDポリペプチド中のエピトープタグまたはECDポリペプチドのいずれかに対して指向される抗体を用いて促進され得、次いで、免疫沈降法により単離され得、そして、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分離され得る。あるいは、ECDポリペプチドまたはキメラECDポリペプチド(ECD多量体を含む)は、ポリペプチド特異的な抗体のECDポリペプチドへの結合、そして/または、その後の、プロテインAもしくはプロテインGセファロースカラムへのこの抗体の結合、そして、このカラムからのタンパク質の溶出によって単離され得る。ECDポリペプチドの精製はまた、タンパク質に結合する試薬を固定したアフィニティカラムまたはビーズと、その後の、結合剤からタンパク質を溶出するための1以上のカラムの工程とを含み得る。アフィニティ因子の例としては、コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−トーヨーパール(toyopearl)またはCibacromブルー3Gaセファロースが挙げられる。タンパク質はまた、フェニルエーテル、ブチルエーテルまたはプロピルエーテルのような樹脂を用いた、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製され得る。
いくつかの例では、キメラECDポリペプチドは、イムノアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製され得る。このような例において、ECDポリペプチドは、本明細書中に記載されるもののようなエピトープタグを持つ融合タンパク質として発現され得、これらのタグとしては、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、またはチオレドキシン(TRX)、mycタグおよび/またはHisタグが挙げられるがこれらに限定されない。このような融合タンパク質の発現および精製のためのキットは、New England BioLab(Beverly,Mass.)、Pharmacia(Piscataway,N.J.)、Invitrogenなどから市販されている。タンパク質はまた、タグに融合され得、その後、このようなエピトープに対して指向された特異的な抗体を用いることによって精製され得る。いくつかの例において、エピトープタグ結合剤を固定したアフィニティカラムまたはビーズが、ECDポリペプチド融合物を精製するために使用され得る。例えば、結合剤は、GSTエピトープタグとの相互作用のためにグルタチオンを、ポリHisタグとの相互作用のためにCu2+またはNi2+のような固定金属−アフィニティ因子を、キメラECDタンパク質の精製のために、抗myc抗体のような抗エピトープ抗体、および/または、カラムに固定され得る任意の他の因子を含み得る。
Fcドメインもしくはその混合物を含む精製したホモ多量体分子もしくはヘテロ多量体分子が所望される場合、分子は、当業者に公知でありかつ実施例において詳述される方法を用いて回収または精製され得る。宿主細胞が、Fcドメインを含む第一のポリペプチドをコードする核酸、および、これもまたFcドメインを含む第二のポリペプチドをコードする核酸と共に共発現される場合、結果として発現される分子は、第一のポリペプチドのホモ二量体として、第二のポリペプチドのホモ二量体として、そして、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドのヘテロ二量体として形成され、ここで、各二量体は、Fc多量体化ドメインの相互作用を介して連結される。ホモ二量体およびヘテロ二量体の組合せは、分泌されるポリペプチドとして培養培地から回収され得るが、これはまた、シグナル配列なしで直接生成される場合、宿主細胞の溶解物からも回収され得る。ホモ多量体もしくはヘテロ多量体が膜に結合している場合、これは、適切な界面活性剤溶液(例えば、Triton−X 100)を用いて膜から放出され得る。
抗体の定常ドメインを含むホモ二量体もしくはヘテロ二量体またはこれらの混合物は、種々の方法(ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない)によって、他の粒子状細胞片または不純なタンパク質から離して、馴化培地から簡便に精製され得る。多量体がC3ドメインを有する場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。回収されるポリペプチドによっては、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース上のクロマトグラフィー、アニオン交換樹脂もしくはカチオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)上のクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング(chromatofocusing)、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿のような、タンパク質精製のための他の技術もまた利用可能である。
さらに、プロテインAまたはプロテインGが使用され得る。プロテインAのアフィニティリガンドとしての適合性は、キメラにおいて使用される免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2もしくはγ4の重鎖に基づいて免疫付着因子を精製するために使用され得る(Lindmark et al.(1983)J.Immunol.Meth.62:1−13)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3について推奨される(Guss et al.(1986)EMBO J.5:1567−1575)。プロテインAもしくはプロテインGのようなアフィニティリガンド、または多量体分子と相互作用し得る他のリガンドに対するマトリクスは、アガロースであることが最も多いが、他のマトリクスもまた利用可能である。制御された孔を持つガラスもしくはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのような機械的に安定なマトリクスは、アガロースを用いた場合に達成され得るよりも、より速い流速とより短い処理時間とを可能にする。プロテインAもしくはプロテインGアフィニティカラムへと免疫付着因子を結合させるための条件は、完全にFcドメインの特徴によって指示される;特徴とは、すなわち、種およびアイソタイプである。一般に、適切なリガンドが選択される場合、効率的な結合が、非馴化培養流体から直接生じる。結合したECD−Fc含有分子は、酸性pH(pH3.0以下)において、または、中程度のカオトロピズム塩を含む中性pHの緩衝液中で溶出され得る。あるいは、またはさらに、結合した分子は、過剰のIgGを用いて溶出され得る。必要に応じて、溶出された分子は、塩基性pHにおいて中和され得る。得られた精製分子は、精製された(代表的には、95%より高い)ホモ多量体およびヘテロ多量体を含む。
ホモ二量体から離してヘテロ多量体を富化するために、いくつかの因子が使用され得、これらの因子としては、抗エピトープタグもしくは多量体分子のただ1つのみのキメラポリペプチド成分を認識するレセプター特異的な抗体の使用が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、1つのキメラポリペプチドが、エピトープタグ(すなわち、c−mycタグまたはHisタグ)へと融合され得る。したがって、例えば、プロテインAカラムもしくは使用される多量体化ドメインに応じた他の初期精製法を用いるなどの精製の後に、精製した分子は、さらに、第二のアフィニティカラムもしくは他のマトリックスを用いて富化され得る。例えば、ECD多量体のさらなる精製のたえに、任意の結合剤がアフィニティカラムもしくはビーズに固定され得る。この例は、ニッケルアフィニティ金属クロマトグラフィーカラムへのNi2+のような金属アフィニティ因子の固定である。第一のキメラポリペプチドのみが第二のアフィニティカラムによって認識される場合、第二のキメラポリペプチドを含むホモ二量体は、第一のポリペプチドのホモ二量体と、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドのヘテロ二量体のみを残して洗い流され得る。さらに続くアフィニティ工程は、ヘテロ多量体を精製するために使用され得る。このようなさらなるアフィニティ工程としては、ヘテロ多量体中に存在する第二のキメラポリペプチドのみを認識するが、残りのホモ多量体は認識しない抗レセプター抗体もしくはリガンドのアフィニティカラムもしくは他のマトリックスへの固定が挙げられる。例えば、実施例3は、EGFアフィニティカラムを第一の精製工程として用い、その後に、あらゆる過剰なリガンドを除くために分取SECカラムを用いる、HER1/HER3 ECD多量体の精製を記載する。最終的な富化方法として、同様のアフィニティカラムが、例えば、ECD多量体の1つの成分を認識する任意の結合剤、リガンド、または、抗レセプター抗体を用いて、ECD多量体の成分に依存して、経験的に設計され得る。
さらに、疎水性RP−HPLC媒体(例えば、ペンダントのメチル基もしくは他の脂肪族基を持つシリカゲル)を用いる1以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)工程が、タンパク質をさらに精製するために用いられ得る。上述の精製工程のいくつかまたは全てはまた、種々の組合せにおいて、実質的に均質な単離組換えタンパク質を提供するために用いられ得る。
精製の前に、分泌されたECDポリペプチド(キメラECDポリペプチドおよび/またはECD多量体を含む)を含む馴化培地は、清澄化および/または濃縮され得る。清澄化は、遠心分離後に濾過することによってなされ得る。濃縮は、例えば、接線流れメンブラン(接線流 membrane)を用いるか、または撹拌細胞系フィルタを用いるなどの当業者に公知の任意の方法によってなされ得る。濃縮プロセスには、種々の分子量(MW)の分離カットオフが使用され得る。例えば、10,000MWの分離カットオフが使用され得る。実施例は、HER1/HER3のヘテロ多量体(例えば、Rb200およびRb200h)の種々の精製方法、ならびに、ホモ多量体(HER1/HER1およびHER3/HER3)とヘテロ多量体(HER1/HER3)の混合物の種々の精製方法を詳述する。したがって、いくつかの局面では、本発明は、ヘテロ多量体とホモ多量体の混合物を含む組成物を提供し、ここで、ヘテロ多量体は、HER1に由来するECDまたはその一部分と、HER3に由来する別のECDまたはその一部分とを含み、そして、ホモ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその一部分、または、HER3に由来するECDもしくはその一部分を含む。混合物は、任意の比の3つの多量体成分の比を有し得る。いくつかの場合、3つの多量体成分の比は、使用される発現系のタイプに依存する。一実施形態では、3つの多量体成分の比は、互いにほぼ等しい。
G.ECD多量体の活性を評価または監視するためのアッセイ
一般に、ECD多量体は、1以上(代表的には2以上)の同系のCSRまたは他の相互作用性のCSRの1以上の生物学的活性を調節する。ECD多量体の生物学的活性を監視するために、インビトロおよびインビボのアッセイが使用され得る。RTK ECD多量体、特に、HER ECD多量体の生物学的活性を評価するための例示的なインビトロおよびインビボのアッセイが、本明細書中に提供される。多くのアッセイが、他のCSR ECD多量体に適用可能である。さらに、CSRの生物学的活性のための多数のアッセイが当業者に公知であり、そして、特定のCSRの活性を評価することが公知の任意のアッセイが、試験されるECD多量体に依存して選択され得る。RTK活性に対するECD多量体の作用について試験するためのアッセイとしては、キナーゼアッセイ、ホモ二量体化およびヘテロ二量体化アッセイ、タンパク質:タンパク質相互作用アッセイ、構造アッセイ、細胞シグナル伝達アッセイ、ならびに、インビボ表現型決定アッセイが挙げられるがこれらに限定されない。アッセイはまた、疾患モデルを含む動物モデルの使用を含み、ここで、この疾患モデルにおいて、生物学的活性が観察および/または測定され得る。このようなアッセイにおけるECD多量体の用量応答曲線は、生物学的活性の調節を評価するため、ならびに、投与のためのECD多量体の治療上有効な量を決定するために使用され得る。例示的なアッセイは、以下に記載される。
1.キナーゼ/リン酸化アッセイ
キナーゼ活性は、直接的および間接的に検出および/または測定され得る。例えば、ホスホチロシンに対する抗体は、RTKのリン酸化を検出するために使用され得る。例えば、RTKのチロシンキナーゼ活性の活性化は、RTKに対するリガンドの存在下で測定され得る。リン酸基転移は、抗ホスホチロシン抗体によって検出され得る。リン酸基転移は、ECD多量対の存在下および非存在下で測定および/または検出され得、したがって、RTKのリン酸基転移を調節するECD多量体の能力を測定し得る。簡単に述べると、RTKを発現する細胞は、ECD多量体に対して曝露され得、そして、リガンドで処理され得る。細胞は、溶解され、そして、タンパク質抽出物(全細胞抽出物または分画された抽出物)が、ポリアクリルアミドゲル上にロードされ、電気泳動により分離され、そして、ウェスタンブロッティングに使用するなどのために、メンブランに移される。抗RTK抗体を用いた免疫沈降はまた、ゲル電気泳動およびウェスタンブロッティングを行う前に、RTKタンパク質を分画および単離するために使用され得る。メンブレンは、リン酸化を検出するために抗ホスホチロシン抗体でプローブされ得、同時に、総RTKタンパク質を検出するための抗RTK抗体でプローブされ得る。RTKアイソフォームを発現しない細胞およびリガンドに対して曝露されない細胞のようなコントロール細胞が、比較のために同じ手順に供され得る。
チロシンリン酸化はまた、質量分析法などによって直接測定され得る。例えば、RTKのリン酸化状態に対するECD多量体の影響は、種々の濃度のECD多量体を用いてインタクトな細胞を処理し、そして、RTKの活性化に対する影響を測定することなどによって測定され得る。RTKは、質量分析法による解析のためのペプチドフラグメントを生成するために、免疫沈降により単離され得、そしてトリプシン処理され得る。ペプチドの質量分析法は、タンパク質のチロシンリン酸化の程度を定量的に決定するための十分に確立された方法である;チロシンのリン酸化は、ホスホチロシンを含むペプチドイオンの質量を増加させ、そして、このペプチドは、質量分析法によって、リン酸化されていないペプチドから容易に分離される。
例えば、チロシン−1139およびチロシン−1248は、HER2 RTKにおいて自己リン酸化されることが知られる。トリプシン処理されたペプチドは、例えば、ExPASy−PeptideMassプログラムを用いることによって、ポリペプチド配列に基づいて経験的に決定または推定され得る。チロシン−1139およびチロシン−1248のリン酸化の程度は、これらのチロシンを含むペプチドの質量分析データから決定され得る。このようなアッセイは、RTKの自己リン酸化の程度と、RTKのリン酸基転移を調節するECD多量体の能力とを評価するために使用され得る。
2.複合体化/二量体化
RTKとECD多量体との二量体化のような複合体化が、検出および/または測定され得る。例えば、単離されたポリペプチドが、一緒に混合され、ゲル電気泳動およびウェスタンブロッティングに供され得る。RTKおよび/またはECD多量体はまた、細胞および細胞抽出物(例えば、全細胞抽出物または分画された抽出物)に加えられ得、そして、ゲル電気泳動およびウェスタンブロッティングに供され得る。ポリペプチドを認識する抗体は、単量体、二量体および他の複合体化形態の存在を検出するために使用され得る。あるいは、標識されたRTKおよび/または標識されたECD多量体がアッセイにおいて検出され得る。このようなアッセイは、ECD多量体の存在下および非存在下で、RTKのホモ二量体化または2以上のRTKのヘテロ二量体化を比較するために使用され得る。アッセイはまた、RTKと二量体化するECD多量体の能力を評価するために行われ得る。例えば、HER ECD多量体は、HER1、HER2、HER3およびHER4とヘテロ二量体化するその能力について評価され得る。さらに、ECD多量体は、ホモ二量体化またはヘテロ二量体化するRTKの能力を調節するその能力について評価され得る。例えば、HER ECD多量体は、他の組合せの中でも、HER2と、HER1、HER3またはHER4とのヘテロ二量体化を調節するその能力について評価され得る。
別の例では、分子サイズ排除解析が行われ得る。分子サイズ排除は、特定のサイズ排除カラムを用いて行われ、そして、溶出された分子と固定された参照標準とを比較する。分子は、単独で与えられても、別の分子と組み合わされてもよい。例えば、任意のRTKポリペプチド、キメラポリペプチドまたはECD多量体が、サイズ排除カラムに与えられ得る。溶出容積が決定され得、そして、実施例4に記載されるように、分子の各々について分子量が計算される。あるいは、2以上のポリペプチドが、同時に与えられて、その2以上のポリペプチドまたは分子が、低重合体分子を形成し得るかどうかを決定するために溶出プロフィールが評価され得る。
3.リガンド結合
一般に、RTKは、1以上のリガンドに結合する。リガンド結合は、レセプターの活性を調節し、したがって、例えば、シグナル伝達経路内のシグナル伝達を調節する。ECD多量体へのリガンド結合およびRTKのリガンド結合が、ECD多量体の存在下で測定され得る。例えば、放射標識リガンドのような標識されたリガンドが、ECD多量体の存在下および非存在下(コントロール)で、精製されたかもしくは部分的に精製されたRTKに加えられ得る。ECD多量体の存在下および非存在下で、RTKに結合したリガンドの量を定量するために、免疫沈降および放射活性の測定が使用され得る。ECD多量体はまた、標識されたリガンドと共にECD多量体をインキュベートし、そして、例えば、対応するrTKの野生型もしくは優性な形態により結合された量と比較して、ECD多量体により結合された標識リガンドの量を決定することなどによって、リガンド結合について評価され得る。
4.細胞増殖アッセイ
多数のRTK(例えば、VEGFR、HERファミリーレセプター、および他の増殖因子レセプター)が、細胞増殖に関与している。細胞増殖に対するECD多量体の影響が測定され得る。試験される細胞は、代表的には、標的のRTKレセプターを発現する。例えば、RTKを発現する細胞にリガンドが加えられ得る。ECD多量体は、リガンドを加える前、同時または後にこのような細胞に加えられ得、そして、細胞増殖に対する影響が測定され得る。細胞増殖のレベルは、アラマーブルーもしくはクリスタルバイオレットのような色素または他の同様の色素で細胞を標識し、その後、最適な密度を測定することによって評価され得る。MTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]もまた、細胞の増殖を評価するために使用され得る。増殖試薬としてのMTTの使用は、生存細胞に由来するミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ酵素が、淡黄色のMTTのテトラゾリウム環を切断し、暗青色のホルマザン結晶を形成する能力に基づくものであり、この暗青色の結晶は、細胞膜に不透過性であるので、健常な細胞内に蓄積される。界面活性剤を加えることによる細胞の可溶化は、結晶の放出および可溶化をもたらす。生存している増殖細胞の数に直接比例する色は、分光測光手段によって定量され得る。したがって、選択した細胞を、リガンドの存在下または非存在下でECD多量体と共にインキュベートした後、MTTがこれらの細胞に加えられ得、細胞が、界面活性剤を用いて可溶化され得、そして、吸光度が570nmにおいて読まれ得る。あるいは、細胞は、増殖実験の前に、3H−トリチウムのような放射性標識、または、CFSEのような他の蛍光標識で予め標識され得る。
5.細胞疾患モデルアッセイ
疾患もしくは状態に由来する細胞、または、疾患もしくは状態を模倣するように調節され得る細胞が、ECD多量体の影響を測定および/または検出するために使用され得る。ECD多量体は、細胞に加えられるか、または細胞において発現され、そして、ECD多量体に対して曝露されていない細胞またはECD多量体を発現しない細胞と比較して、表現型が測定または検出される。このようなアッセイは、細胞増殖、転移、炎症、新脈管形成、病原体の感染、および骨再吸収に対する影響を含む影響を測定するために使用され得る。
例えば、新脈管形成において、ECD多量体の影響が測定され得る。例えば、インビトロでのヒト臍帯静脈内比細胞(HUVEC)のような内皮細胞による細管の形成が、新脈管形成、および新脈管形成に対する影響を測定するためのアッセイとして使用され得る。種々の量のECD多量体をインビトロ新脈管形成アッセイに加えることは、新脈管形成のモジュレーターとしてのECD多量体の有効性をスクリーニングするために適切な方法である。
6.動物モデル
動物モデルが、ECD多量体の影響を評価するために使用され得る。例えば、癌細胞の増殖、遊走および侵襲性に対するECD多量体の影響が測定され得る。1つのこのようなアッセイにおいて、卵巣癌のような癌細胞は、インビトロで培養した後に、トリプシン処理され、適切な緩衝液中に懸濁され、そして、マウス(例えば、Balb/cヌードマウスのようなモデルマウスの側腹部および肩部)に注射される。マウスには、マウスへの癌細胞の投与の前、同時または後のいずれかに、任意の適切な投与経路(すなわち、皮下、静脈内、腹腔内および他の経路)によって、同時に投与される。腫瘍の増殖が経時的に監視される。同様のアッセイが、他の細胞のタイプおよび動物モデル(例えば、マウス肺癌(LLC)細胞ならびにC57BL/6マウスおよびSCIDマウス)についても行われ得る。腫瘍の増殖は、ECD多量体を投与されていないマウス、または、それぞれの同系レセプターもしくはECD多量体の相互作用性レセプターが欠失したマウスに対して比較され得る。
別の例では、眼の障害に対するECD多量体の影響が、角膜マイクロポケットアッセイのようなアッセイを用いて評価され得る。簡単に述べると、マウスは、アッセイの2〜3日前に注射によってECD多量体(またはコントロール)を投与される。その後、マウスは麻酔をかけられ、そして、VEGFもしくは他の増殖因子リガンドのようなリガンドのペレットが、眼の角膜マイクロポケット内へと移植される。次いで、例えば、移植から5日後に新生血管形成が測定される。次いで、コントロールと比較した、新脈管形成に対するECD多量体の影響が評価される。
当該分野で公知の任意の動物モデルが、HER多量体のようなECD多量体の影響を評価するために使用され得、この動物モデルとしては、以下のようなトランスジェニックマウスが挙げられる:例えば、DRおよびDQの主要組織適合複合体II分子を発現するアテローム性動脈硬化症マウスのようなヒト化トランスジェニックマウスモデル(これは、例えば、慢性関節リウマチ、セリアック病、多発性硬化症およびインシュリン依存性糖尿病を含む自己免疫疾患のためのモデルとして使用され得る)(Gregersen et al.(2004)Tissue Antigens 63(5):383−94)、アポリポタンパク質E欠損マウス(ApoE−/−)(これは、アテローム性動脈硬化症のためのモデルとして使用され得る)、IL−10ノックアウトマウス(これは、例えば、炎症性腸疾患およびクローン病のためのモデルとして使用され得る)(Scheinin et al.(2003)Clin.Exp.Immunol.133(1):38−43)、ならびに、変異アミロイド前駆体タンパク質を過剰発現するトランスジェニックマウスおよび家族性常染色体優性連鎖PS1を発現するマウスのようなアルツハイマー病のモデル。動物モデルはまた、多発性硬化症のためのモデルとして使用されるEAE誘導性動物のように、疾患を呈するように誘導もしくは処理された動物を含む。
H.ECD多量体およびECD多量体組成物の調製、処方および投与
ECD多量体およびECD多量体組成物(HER ECD多量体およびHER ECD多量体組成物を含む)は、当業者に公知の任意の経路(筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内注射、皮下、硬膜外、鼻腔、経口、直腸、局所、吸入、バッカル(例えば、舌下)および経皮投与または任意の経路を含む)による投与のために処方され得る。ECD多量体は、例えば、注入もしくは大量注射により、上皮もしくは粘膜皮膚の内層を通した吸収(例えば、経口粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)により、任意の簡便な経路によって投与され得、そして、他の生物学的に活性な薬剤と共に、連続的に、断続的に、または、同じ組成物中で、のいずれかで投与され得る。投与は、処置の場所に依存して、局部、局所または全身性であり得る。処置を必要とする領域への局部投与は、例えば、外科手術の間の局部注入によって、例えば、外科手術後の創傷包帯と組合せた局部適用によって、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、または、移植によって達成され得るがこれらに限定されない。投与はまた、制御放出処方物および制御放出デバイス(例えば、ポンプによるもの)を含む、制御放出システムを含み得る。任意の所定の場合における最も適切な経路は、処置される疾患もしくは状態の性質および重篤度、ならびに、使用される特定の組成物の性質に依存する。
種々の送達システムが公知であり、そして、ECD多量体を投与するために使用され得、これらは、例えば、リポソーム中へのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現し得る組換え細胞、レセプターにより媒介されるエンドサイトーシス、および、ECD多量体をコードする核酸分子の送達(例えば、レトロウイルス送達システム)であるが、これらに限定されない。
ECD多量体を含む薬学的組成物が調製され得る。一般に、薬学的に受容可能な組成物は、監督官庁の認可の観点で調製されるか、または、他には、動物およびヒトにおける使用のための一般に認識される薬局方に従って調製される。薬学的組成物は、ECD多量体と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルのようなキャリアを含み得る。このような薬学的キャリアは、水および油(石油、動物起源のもの、植物起源のものまたは合成起源のもの(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油およびゴマ油))のような滅菌された液体であり得る。薬学的組成物が静脈内投与される場合、水が代表的なキャリアである。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、液体キャリア、特に、注射用溶液として使用され得る。組成物は、活性成分と共に以下を含み得る:乳糖、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロースのような希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよび滑石のような滑沢剤;およびデンプン、天然ゴム(例えば、アカシアゴム)、ゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドンのような結合剤、ならびに、当業者に公知の他の結合剤。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、乳糖、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦、粉乳、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水およびエタノールが挙げられる。組成物はまた、必要に応じて、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、または、pH緩衝化剤(例えば、酢酸、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリル酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン)および他のこのような因子を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、および持続放出処方物の形態をとり得る。組成物は、伝統的な結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリド)と共に、坐剤として処方され得る。経口用処方物は、医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムおよび他のこのような因子のような標準的なキャリアを含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinにより「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において記載される。このような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するように、化合物(一般に精製された形態のもの)の治療上有効な量を、適切な量のキャリアと共に含む。処方物は、投与様式に適したものであるべきである。
処方物は、適切な量の化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体を含む、錠剤、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤、滅菌の非経口用の溶液もしくは懸濁液、または、経口用の溶液もしくは懸濁液、および油:水エマルジョンのような単位投薬形態で、ヒトおよび動物への投与のために提供される。薬学的、治療的に活性な化合物およびその誘導体は、代表的には、単位投薬形態または複数投薬形態で処方および投与される。本明細書において使用される場合、単位用量形態とは、ヒト被験体および動物被験体に適切な物理的に区別された単位をいい、そして、当該分野で公知であるように、個別に包装されている。各単位用量は、所望の治療作用を生じるのに十分な所定の量の治療上活性な化合物を、必要とされる薬学的キャリア、ビヒクルもしくは希釈剤と共に含む。単位用量形態の例としては、アンプルおよびシリンジ、ならびに、個別に包装された錠剤もしくはカプセル剤が挙げられる。単位用量形態は、画分、または複数の画分で投与され得る。複数用量形態は、単一の容器内に包装された、複数の同一の単位投薬形態であり、これは、区分された単位用量形態で投与される。複数用量形態の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、または、数パイントもしくは数ガロンの瓶が挙げられる。したがって、複数用量形態は、包装においては区分されていない、複数の単位用量である。
0.005%〜100%の範囲の活性成分を、非毒性キャリアから構成されるバランスを伴って含む投薬形態または組成物が調製され得る。経口投与については、薬学的組成物は、例えば、結合剤(例えば、予めゼラチン状にしたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプン);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に受容可能な賦形剤を用いて従来の手段によって調製された錠剤またはカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当該分野で周知の方法によってコーティングされ得る。
薬学的調製物はまた、液体形態(例えば、溶液、シロップまたは懸濁液)の形態であっても、使用前に水もしくは他の適切なビヒクルを用いて再構成するための薬物製品として提供されてもよい。このような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加された食用脂質);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、または、分画された植物油);および保存料(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)のような薬学的に受容可能な添加物を用いて、従来の手段によって調製され得る。
直腸投与に適切な処方物は、単位用量の坐剤として提供され得る。これらは、活性な化合物を1以上の従来の固体キャリア(例えば、カカオ脂)と混合し、次いで、この得られた混合物を成形することによって調製され得る。
皮膚または眼への局所適用に適切な処方物としては、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルおよびオイルが挙げられる。例示的なキャリアとしては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらの2以上の組合せが挙げられる。局所用処方物はまた、0.05重量%〜15重量%、20重量%、25重量%の、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキレングリコール)、ポリヒドロキシアルキル、(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリルアミドの中から選択される増粘剤を含み得る。局所用処方物は、しばしば、結膜嚢内に、点眼により、もしくは軟膏として適用される。局所用処方物はまた、眼、顔面の洞、および外耳道の洗浄または潤滑のためにも使用され得る。局所用処方物はまた、前眼房および他の場所へも注射され得る。液体状態の局所用処方物はまた、ストリップまたはコンタクトレンズの形状の親水性の三次元ポリマーマトリックスとして提供され得、ここから、活性な組成物が放出される。
吸入による投与について、本明細書において使用するための組成物は、適切な圧縮不活性ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)の使用によって、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。加圧されたエアロゾルの場合には、投薬単位は、一定量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。吸入器または噴霧器において使用するための、化合物の粉末混合物と、乳糖もしくはデンプンのような適切な粉末基材とを含む、例えば、ゼラチンのカプセルおよびそのカートリッジが処方され得る。
バッカル(舌下)投与のために適切な処方物としては、例えば、風味付けした基材(通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガント)中に活性な化合物を含むロゼンジ;および、不活性な基材(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)中に化合物を含むトローチが挙げられる。
ECD多量体の薬学的組成物は、例えば、大量注射もしくは連続注入による、注射による非経口投与のために処方され得る。注射のための処方物は、例えば、アンプルまたは複数用量の容器中に、保存料を加えて、単位投薬形態として提供され得る。組成物は、懸濁液、溶液、または、油性もしくは水性ビヒクル中のエマルジョンであり得、そして、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方用の因子を含み得る。あるいは、活性な成分は、使用前に、適切なビヒクル(例えば、滅菌した発熱物質を含まない水もしくは他の溶剤)を用いて再構成するための粉末形状であり得る。
経皮投与に適した処方物は、長期間にわたってレシピエントの表皮と直接接した状態で残るように適合された不連続のパッチとして提供され得る。このようなパッチは、活性化合物を、適切に、例えば、活性化合物に関して0.1〜0.2M濃度の必要に応じて緩衝化された水溶液として含む。経皮投与に適した処方物はまた、イオン浸透療法(例えば、Pharmaceutical Research 3(6)、318(1986)を参照のこと)によって送達され得、そして、代表的には、活性化合物の必要に応じて緩衝化された水溶液の形態をとる。
薬学的組成物はまた、制御放出の手段および/または送達デバイスによって投与され得る(例えば、米国特許第3,536,809号;同第3,598,123号;同第3,630,200号;同第3,845,770号;同第3,847,770号;同第3,916,899号;同第4,008,719号;同第4,687,610号;同第4,769,027号;同第5,059,595号;同第5,073,543号;同第5,120,548号;同第5,354,566号;同第5,591,767号;同第5,639,476号;同第5,674,533号および同第5,733,566号を参照のこと)。
特定の実施形態では、リポソームおよび/またはナノ粒子もまた、ECD多量体の投与に用いられ得る。リポソームはリン脂質から形成され、水性媒体中に分散され、そして、自発的に、多層構造の同心性二重層小胞(多層小胞(MLV)とも呼ばれる)を形成する。MLVは一般に、25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、200Å〜500Åの範囲の直径を有し、コア中に水溶液を含む小さな単層小胞(SUV)の形成を生じる。
リン脂質は、その脂質の水に対するモル比に依存して、水中に分散されたときに、リポソーム以外の種々の構造を形成し得る。割合が低いと、リポソームが形成される。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性物質および極性物質に対して低い透過性を示すが、温度が上昇すると、相転移を受けて、その透過性が劇的に変わる。相転移は、ゲル状態として知られる、ぎっしりと詰め込まれた規則正しい構造から、流体状態として知られる、ゆるく詰められたあまり規則正しくない構造への変化を伴う。これは、特有の相転移温度において生じ、そして、イオン、糖および薬物に対する透過性の増加をもたらす。
リポソームは、以下のような種々の機構を介して細胞と相互作用する:マクロファージおよび好中球のような網内系の食作用細胞によるエンドサイトーシス;非特異的な弱い疎水性もしくは静電的な力、または、細胞表面成分との特異的な相互作用のいずれかによる、細胞表面への吸着;形質膜中へのリポソームの脂質二重膜の挿入による形質細胞膜との融合と、細胞質中へのリポソーム内容物の自発的な放出;および、リポソーム内容物の任意の関与を伴わない、細胞もしくは非細胞膜へのリポソームの脂質の移送(またはその逆)。リポソームの処方を変えることで、作動する機構が変わり得るが、1以上の機構が同時に作動し得る。
ナノカプセルは、一般に、安定かつ再現可能な方法で化合物を捕捉し得る。細胞内の重合体の過負荷に起因する副作用を回避するために、このような超微細粒子(直径約0.1μmの大きさ)は、インビボで分解され得る重合体を用いて設計され得る。これらの要件を満たす生分解性のポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子が、本明細書における使用に企図され、そして、このような粒子は、容易に作製され得る。
投与法は、タンパク質分解による分解、ならびに、抗原性応答および免疫原性応答を介した免疫学的介入などの、分解プロセスへのECD多量体の曝露を減らすために用いられ得る。このような方法の例は、処置部位における局部投与が挙げられる。ECD多量体はまた、血清中の安定性および半減期を調節し、同時に、免疫原性を減らすように改変され得る。このような改変は、当該分野で公知の任意の手段によって達成され得、そして、ペグ化、および、血清アルブミンのようなキャリアタンパク質の追加、およびグリコシル化のような、ECD多量体への分子の追加が挙げられる(Raju et al.(2001)Biochemistry 40(3):8868−76;van Der Auwera et al.(2001)Am J Hematol.66(4):245−51)。さらに、Fcの多量体化ドメイン間で形成されたこれらのECD多量体のFc部分は、血清中の安定性および半減期を調節する。
治療薬のペグ化は、タンパク質分解に対する抵抗性を増加させること;血漿中半減期を増加させること、そして、抗原性および免疫原性を減少させることが報告されている。ペグ化の方法の例は、当該分野で公知である(例えば、Lu and Felix,Int.J.Peptide Protein Res.,43:127−138,1994;Lu and Felix,Peptide Res.,6:142−6,1993;Felix et al.,Int.J.Peptide Res.,46 :253−64,1995;Benhar et al.,J.Biol.Chem.,269:13398−404,1994;Brumeanu et al.,J Immunol.,154:3088−95,1995;see also,Caliceti et al.(2003)Adv.Drug Deliv.Rev.55(10):1261−77 and Molineux(2003)Pharmacotherapy 23(8 Pt 2):3S−8Sを参照のこと)。ペグ化はまた、核酸分子のインビボでの送達においても使用され得る。例えば、アデノウイルスのペグ化は、安定性および遺伝子の転移を増加させ得る(例えば、Cheng et al.(2003)Pharm.Res.20(9):1444−51を参照のこと)。
所望される血中レベルは、血漿中レベルによって確認される、活性因子の継続的な注入によって維持され得る。主治医は、毒性、または、骨髄、肝臓もしくは腎臓の機能不全に起因して投薬量を低下させるために治療を終了、中断または調節する方法およびタイミングを認識することに注意すべきである。逆に、主治医はまた、臨床応答が不適切(毒性の副作用を除く)である場合に、例えば、経口、肺、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、吸入(微粉末処方物による)、経皮、鼻腔、膣、直腸、または、舌下の塘路経路によって、より高いレベルが投与されるように処置を調節する方法およびタイミングを認識し、そして、各投与経路に適切な投薬形態で処方し得る(例えば、国際PCT出願公開番号WO 93/25221およびWO 94/17784;ならびに欧州特許出願第613,683号を参照のこと)。
ECD多量体は、処置される患者に対して所望されない副作用を生じさせることなく、治療上有用な作用を与えるのに十分な量で、薬学的に受容可能なキャリア中に含められる。治療上有効な濃度は、公知のインビトロおよびインビボの系(例えば、本明細書において提供されるアッセイ)において化合物を検査することにより、経験的に決定され得る。
組成物中のECD多量体の濃度は、複合体の吸収、不活性化および排泄速度、複合体の物理化学的特徴、投薬計画、ならびに、投与される量、そして、当業者に公知の他の要因に依存する。
疾患または状態(例えば、癌、自己免疫疾患および感染)の処置のために投与されるECD多量体の量は、標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、最適な投薬範囲の同定を補助するために、インビトロアッセイおよび動物モデルが用いられ得る。経験的に決定され得る正確な投薬量は、投与経路および疾患の重篤度に依存し得る。投与のための適切な投薬範囲は、約0.01pg/体重1kg〜1mg/体重1kgの範囲であり得、より代表的には、患者の体重1kgあたり0.05mg〜200mgのECD多量体である。
ECD多量体は、一度で投与されても、数回分のより小さな用量に分けられて時間間隔を空けて投与されてもよい。ECD多量体は、処置時間の過程(例えば、数時間、数日間、数週間または数ヶ月間)にわたり1以上の用量で投与され得る。いくつかの場合、連続投与が有用である。正確な投薬量と処置期間とは、処置される疾患の関数であり、そして、公知の検査プロトコールを用いて、または、インビボもしくはインビトロの検査データからの外挿によって経験的に決定され得ることが理解される。濃度および投薬量の値はまた、状態の重篤度が軽減されるにつれ変化し得ることにも注意すべきである。任意の特定の被験体について、個人の必要性と、組成物の投与を行うかもしくは管理する人物の専門的な判断によって、特定の投薬レジメンが、経時的に調節されるべきであり、そして、本明細書において示される濃度範囲は、単なる例示に過ぎず、組成物および組成物を含む組合せの範囲もしくは使用を制限することは意図されないことがさらに理解されるべきである。
I.ECD多量体を用いた例示的な処置方法
疾患および状態のためのECD多量体およびECD多量体の混合物を用いて処置する方法が本明細書中に提供される。HER ECD多量体を含むECD多量体は、CSR(RTK、および特に、本明細書中に記載されるものを含めてタンパク質のHERファミリーを含む)を伴う種々の疾患および状態の処置において使用され得る。CSRのシグナル伝達は、種々の疾患および障害の病因に関与しており、そして、任意のこのような疾患または障害は、本明細書において提供されるECD多量体による処置が企図される。本明細書において提供されるECD多量体を用いた処置としては、新脈管形成に関連する疾患および状態(眼の疾患、アテローム性動脈硬化症、癌および血管損傷、神経変性性疾患(アルツハイマー病を含む))、炎症性の疾患および状態(アテローム性動脈硬化症を含む)、細胞増殖に関連する疾患および状態(癌を含む)、および、平滑筋細胞に関連する状態、ならびに、種々の自己免疫疾患の処置が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な処置および前臨床研究は、RTK媒介性(特に、HER媒介性)の疾患および障害のECD多量体による処置および治療について記載されている。他のCSR媒介性の疾患および障害(例えば、RAGE媒介性の疾患および障害が挙げられるがこれらに限定されない)の例示的な処置もまた記載される。このような記載は、例示のみを意図し、特定のECD多量体に限定されることは意図されない。処置は、分子処方物に適切な経路によって投与することによって達成され得、この分子処方物は、組成物中にポリペプチドとして提供され得、そして、標的化された送達のために標的化因子に連結されても、リポソームのような送達ビヒクル中に被包されても、裸の核酸として送達されても、またはベクター中で送達されてもよい。特定の処置および投薬量は、当業者によって決定され得る。処置を評価する際に考慮すべき点としては、処置される疾患、疾患の重篤度および経過、分子が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、以前の治療、患者の臨床上の病歴、および、治療に対する応答、ならびに、主治医の判断が挙げられる。
1.HER媒介性の疾患もしくは障害
HER(ErbB)に関連する疾患またはHERレセプター媒介性の疾患は、HERレセプターおよび/またはリガンドが、病因、病理もしくはその発症のある局面において関与している、あらゆる疾患、状態もしくは障害である。具体的には、関与としては、例えば、HERレセプターファミリーメンバーまたはリガンドの発現、過剰発現または活性が挙げられる。疾患としては、癌(例えば、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌または乳癌であるが、これらに限定されない)を含む増殖性疾患が挙げられるがこれらに限定されない。他の状態としては、細胞の増殖および/または遊走を伴う状態(病理学的な炎症応答を伴う状態、非悪性の過増殖性疾患(眼の状態、皮膚の状態など)、平滑筋細胞の増殖および/または遊走から生じる状態(再狭窄を含めた狭窄、アテローム性動脈硬化症、膀胱、心臓もしくは他の筋肉の筋肥厚など)を含む)が挙げられる。本明細書において提供されるHER ECD多量体を用いて処置され得る他の疾患としては、HERファミリーレセプターまたはそのリガンドによって媒介されるあらゆる疾患または障害が挙げられ、これには、攻撃性(aggressiveness)、成長遅延(growth retardation)、精神分裂病、ショック、パーキンソン病、アルツハイマー病、うっ血性心筋症、子癇前症、神経系疾患および心不全が挙げられるがこれらに限定されない。このような疾患もしくは処置の例は、以下に示される。

a.癌
上述のように、HERファミリーレセプターは、種々のヒトの癌において頻繁に発現されており、その発現は、多くの癌の病理と関連している。例えば、HERシグナル伝達の過活性化または調節異常は、異常な細胞の活性化(細胞の増殖、新脈管形成、および遊走、ならびに、腫瘍形成に関連する浸潤を含む)をもたらし得る。いくつかの機構が、HERファミリーレセプターのシグナル伝達の調節異常を説明し得、これらの機構としては、リガンドの過剰産生、レセプターの過剰産生、または、レセプターの構成的な活性化が挙げられるがこれらに限定されない。癌および他の疾患におけるその役割に起因して、HERレセプターは、治療薬の標的となる。しかしながら、HERファミリーメンバーの共発現は、しばしば、このような治療薬の応答の欠如、または、代替的なHERファミリーメンバーの代償性のアップレギュレーションによる耐性の発生をもたらす。したがって、本明細書中に提供されるHER ECD多量体は、癌、特に、2以上の細胞表面レセプターの共発現によって特徴付けられるかまたは関連付けられる癌に対する代替的な処置として使用され得る。
HER1、HER2、HER3またはHER4のECDの全体もしくは一部分を含むECD多量体は、癌の処置において使用され得る。一局面では、本発明は、ヘテロ多量体とホモ多量体との混合物を含む薬学的組成物の治療上有効な量を投与することによって種々のタイプの癌、炎症性疾患、新脈管形成疾患を処置するための方法を提供し、ここで、ヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその一部分と、HER3に由来する別のECDもしくはその一部分とを含み、ホモ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその一部分、またはHER3に由来するECDもしくはその一部分を含む。いくつかの場合、癌は、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌である。他の場合には、処置される疾患は、増殖性疾患である。このような増殖性疾患の非限定的な例としては、平滑筋細胞の増殖および/もしくは遊走が挙げられるか、または、眼前部の疾患であるか、または、糖尿病性網膜症もしくは乾癬である。他の場合には、処置される疾患は、再狭窄、眼障害、狭窄、アテローム性動脈硬化症、血管肥厚による高血圧、膀胱疾患および閉塞性気道疾患である。
本明細書において処置される癌の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病または悪性リンパ球。このような癌のさらなる例としては、以下が挙げられる:扁平上皮細胞癌(例えば、上皮有棘細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、食道癌、神経膠腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、肛門癌、陰茎癌、ならびに、頭頚部癌。HER ECD多量体と共に、併用治療薬が使用され得、これらの治療薬としては、抗ホルモン化合物、心保護剤(cardioprotectants)、抗癌剤(例えば、化学療法剤および増殖阻害剤)、および本明細書中に記載されるような任意の他のものが挙げられる。
HER ECD多量体で処置可能な癌は、一般に、少なくとも1つのHERレセプター、代表的には、1以上のHERレセプターを発現する癌である。このような癌は、HERの発現を検出するための当該分野で公知の任意の手段によって同定され得る。例えば、HER2の発現は、利用可能な診断/予後アッセイ(HERCEPTEST.RTM.(Dako)を含む)を用いて評価され得る。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片を、IHCアッセイに供し、そして、HER2タンパク質染色の強度基準と適合させる。閾値スコア未満と適合される腫瘍は、HER2を過剰発現しないものとして特徴付けられ得るのに対して、閾値以上のスコアを持つ腫瘍は、HER2を過剰発現するものとして特徴付けられ得る。処置の一例において、HER2を過剰発現する腫瘍は、HER ECD多量体(例えば、本明細書中に提供される任意のHER ECD多量体)を用いた処置の候補として評価される。
b.新脈管形成
新脈管形成は、既存の血管からの新規血管の調節された形成を伴うプロセスであり、この新規血管は、しばしば、腫瘍に栄養を与え、癌の転移を促進するものである。VEGFの産生は、新脈管形成と癌細胞の遊走に必須の因子である。HERファミリーレセプターによるEGFおよびTGF−αのシグナル伝達を含む多数の因子が、VEGFの発現を誘導する。実際、HER1およびHER2の両方が、新脈管形成に関与する癌関連遺伝子である(Yance et al.(2006)Int.Can.Ther.,5:9−29)。HERファミリーレセプターはまた、内皮細胞において差次的に発現される。例えば、正常な内皮細胞においては、HER2、HER3およびHER4が発現されるが、腫瘍由来の内皮細胞においては、HER1、HER2およびHER4が発現される(Amin et al.(2006)Cancer Res.66:2173−80)。したがって、正常細胞と比較すると、腫瘍由来の内皮細胞は、HER3の発現の喪失と、HER1の発現の獲得とを有し、これは、VEGFの産生および新脈管形成の促進におけるEGFに対する内皮細胞の反応性と一致している。
本明細書において提供されるECD多量体などによるHERファミリーレセプターの標的化は、新脈管形成の処置として使用され得る。インビトロもしくはインビボのアッセイが、新脈管形成に対するECD多量体の影響を評価するために使用され得る。例えば、脈管形成因子VEGFを分泌するヒト乳癌由来のMDA−MB−231細胞が、ECD多量体が脈管形成因子の産生と拮抗し得るかどうかを決定するために調べられ得る。さらに、これらの細胞の上清において産生される脈管形成因子の活性、または、ECD多量体の存在下もしくは非存在下における組換え脈管形成因子の存在下での脈管形成因子の活性は、ヒト臍帯静脈内非細胞(HUVEC)の増殖についてアッセイすることによって調べられ得る。増殖性のHUVEC中に[3H]−チミジンを組み込んだHUVECは、ECD多量体の存在下で増殖が軽減されるかどうかを決定するために比較され得る。
c.ニューレグリン関連疾患
ニューレグリン(NRG)は、4つの異なる遺伝子によってコードされるリガンド(NRG1〜4)の複雑な組である。これらの分子のうちいくつかは、遊離リガンド(NRG細胞外ドメインから構成される)のような膜貫通型の前駆体形態において活性であると考えられる。NRGの膜貫通型形態および遊離形態は、HER1〜4レセプターを介してその生物学的作用を発揮する。これらのリガンドは、神経筋シナプスの発生、ニューロン−グリア相互作用、ならびに、心臓の発生および機能を調節する細胞の相互作用において役割を担う。HER1〜4の細胞外ドメインに由来する治療薬(例えば、HERファミリーのリガンド結合ドメインを含む単量体分子、ホモ二量体分子およびヘテロ二量体分子)は、疾患(例えば、少なくとも1つのNRGに対する曝露に関連する(例えば、この曝露によって引き起こされるかまたは増大される)神経学的疾患または神経筋疾患)の処置のために使用され得る。一実施形態では、疾患は、NRG1(NRG1のタイプI、IIおよびIIIを含む、これらは全てHER3およびHER4に結合する)と関連する。本明細書中に記載されるようなHER ECD治療薬によって処置され得るNRGに関連する疾患の例としては、アルツハイマー病および精神分裂病が挙げられるがこれらに限定されない。
NRGが調節異常になっている神経学的疾患の例は、アルツハイマー病であり得る。Chaudhury et al.(2003)J Neuropathol Exp Neurol 62:42−54。Chaudhury et al.は、認知的には正常な老齢のヒト、アルツハイマー病患者、および、アルツハイマー病の表現型を発現するダブルトランスジェニックマウスからの海馬において、NRG1およびerbBキナーゼの発現および分泌を調べた。NRG−1およびerbB4の両方の発現が、神経炎症局面内の反応性の細胞要素と特異的に関連しており、オートクリンおよび/またはパラクリンの相互作用が示唆された。本明細書中に記載されるようなHER ECD多量体は、アルツハイマー病および関連の状態を処置するために使用され得る。ヒトアルツハイマー病について、種々のマウスモデルが利用可能であり、これらのモデルとしては、変異アミロイド前駆体タンパク質を過剰発現するトランスジェニックマウス、および、家族性常染色体優性連鎖PS1を発現するマウス、および、これらの両方のタンパク質を発現するマウス(PS1 M146L/APPK670N:M671L)が挙げられる。アルツハイマー病のモデルは、HER ECD多量体の注射などによって処置される。プラークの発生は、染色および抗体免疫反応性アッセイを用いた、海馬、内側嗅皮質および大脳皮質における神経炎性局面の観察などによって評価され得る。
精神分裂病は、神経系の深刻でありかつ大部分が解決されていない疾患のままである。全世界の人口のうち推定1%が、この疾患の特徴である重篤な挙動、情動および認知障害に苦しんでいる。現在、この疾患は、診断を補助するための分子マーカーが足りない症候群と考えられている。NRGと精神分裂病との間の関連性についての証拠は、Stefannson et al.(2002)Am J Hum Genet 71:877−892によって最初に示された。より最近のデータは、精神分裂病患者の前頭葉前部の皮質および周縁の白血球に、増加したレベルのNRG1転写物が存在することを示唆している。Hashimoto et al.(2004)Mol Psychiatry 9:299−307;Petryshen et al.(2005)Mol Psychiatry 10:366−74。NRG1と精神分裂病との間の関係は、特定の神経のシナプスの長期にわたる相乗作用のNRG1による逆転に関連付けられ得る。Kwon et al.(2005)J Neurosci 25:9378−83。本明細書中に記載されるようなHER ECD多量体は、精神分裂病を処置するために使用され得る。
d.平滑筋の増殖に関連する疾患および状態
HER ECD多量体は、ヒトのような哺乳動物における平滑筋細胞の増殖を伴う種々の疾患および状態の処置に利用され得る。例は、脈管平滑筋細胞(VSMC)の増殖を伴い、心内膜の過形成(例えば、脈管狭窄)、血管形成術もしくは外科手術もしくはステント移植物から生じる再狭窄、アテローム性動脈硬化症および高血圧へとつながる、心疾患の処置である。このような状態において、放出された種々の細胞およびサイトカインの相互作用は、オートクライン、パラクリンまたはジャクスタクリンの様式で機能し、その正常な位置から、損傷を受けた内膜へのVSMCの遊走をもたらす。遊走したVSMCは、過度に増殖し、そして、内膜の肥厚をもたらし、これが、結果として血管の狭窄または閉塞を生じる。この問題は、病巣部位における血小板の凝集と堆積によって構成される。多機能性セリンプロテアーゼであるα−トロンビンは、脈管の損傷部位において濃縮され、VSMCの増殖を刺激する。このレセプターの活性化の後に、VSMCは、種々のオートクリン増殖因子(PDGF−AA、HB−EGFおよびTGFを含む)を産生および分泌する。EGFRは、シグナル伝達カスケードに関与し、最終的には、繊維芽細胞とVSMCの遊走および増殖をもたらし、ならびに、VSMCを刺激して、内皮細胞に対して有糸分裂促進性である種々の因子を分泌させ、そして、内皮細胞における化学走性応答を誘導する。HER ECD多量体を用いた処置は、このようなシグナル伝達および応答を調節するために使用され得る。
HER2およびHER3の一方もしくは両方のECDの全体もしくは一部分を含むHER ECDヘテロ多量体のようなHER ECD多量体は、HER2およびHER3のようなHERが、膀胱SMCを調節する状態(例えば、下位尿路に影響を及ぼす閉塞性の症候群に応答して生じる膀胱壁の肥厚)を処置するために使用され得る。HER ECD多量体は、膀胱平滑筋細胞の増殖の制御、そして、結果として、尿路の閉塞性症候群の予防もしくは処置においても使用され得る。
HER ECD多量体は、平滑筋細胞の増殖を伴う基本的な病理を持つ閉塞性気道疾患を処置するために使用され得る。一例は、気道の炎症および気管支収縮において現れる喘息である。EGFは、ヒトの気道SMCの増殖を刺激することが示されており、そして、閉塞性気道疾患における気道SMCの病理学的な増殖に関与する因子であり得る。HER ECD多量体は、HER1によるEGFに対する影響および応答を調節するために使用され得る。
2.RTK媒介性の障害または疾患
a.新脈管形成に関連する眼の状態
ECD多量体(VEGFR、PDGFR、TIE/TEK、FGF、EGFRおよびEphAのECDもしくはその一部分の1以上を含むものが挙げられるがこれらに限定されない)は、新脈管形成に関連する眼の疾患および状態(新生血管形成を伴う眼の疾患を含む)の処置において使用され得る。眼の血管新生疾患は、網膜または角膜のような眼の構造中への新しい血管の浸潤によって特徴付けられる。これは、失明の最も一般的な原因であり、そして、約20の眼の疾患に関与している。加齢性黄斑変性において、付随する視覚上の問題は、ブルーフ膜における傷を通る脈絡膜毛細血管の内殖と、網膜色素上皮下にある線維性の管状組織の増殖によって引き起こされる。脈管形成による損傷はまた、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖症にも付随する。角膜の新生血管形成を伴う他の疾患としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの使い過ぎ、アトピー性角膜炎、上辺縁角膜炎、翼状乾性角結膜炎、シェーグレン病、酒さ性ざ瘡、フィレクテヌローシス(phylectenulosis)、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学物質による熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純疱疹感染、帯状疱疹感染、原虫感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角質溶解、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性動脈炎、外傷、ウェゲナー類肉腫症、強膜炎、スティーブンズ−ジョンソン病、類天疱瘡外側角膜切開術および角膜移植片拒絶。網膜/脈絡膜の新生血管形成を伴う疾患としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:糖尿病性網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、類肉腫、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頚動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎もしくは脈絡膜炎を引き起こす感染、推定眼ヒトプラスマ症、ベスト病、近視、視神経乳頭外側部の限局性陥没、シュタルガルト病、周縁部ブドウ膜炎(pars planitis)、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザ照射後の合併症。他の疾患としては、皮膚潮紅(角の新生血管形成)を伴う疾患、および、線維性血管もしくは線維性組織の異常な増殖により引き起こされる疾患(増殖性硝子体網膜症のあらゆる形態を含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
眼の疾患の処置などにおける新脈管形成に対するECD多量体治療薬の作用は、本明細書中に記載されるような、動物モデルにおいて(例えば、角膜移植物において)評価され得る。例えば、RTKにより媒介されるような新脈管形成の調節は、ヌードマウスにおける類表皮A341腫瘍、およびヌードマウスに移植したVEGFもしくはPIGF形質導入ラットC6神経膠腫のようなヌードマウスモデルにおいて評価され得る。ECD多量体は、タンパク質として局所的もしくは全身性に注射され得る。腫瘍は、腫瘍阻害の表現型(血管分布が乏しく白色に近い腫瘍、壊死、増殖の低下、および、腫瘍細胞のアポトーシスの増加を含む)を観察するために、コントロール処置モデルとECD多量体処置モデルとの間で比較され得る。
TIE/TEK ECDの全体もしくは一部分を含むECDヘテロ多量体で処置され得る眼の障害の例は、眼の新生血管形成によって特徴付けられる眼の疾患であり、この疾患としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:糖尿病性網膜症(糖尿病の主要な合併症)、未熟児網膜症(しばしば慢性の視覚上の問題につながり、高いリスクの失明をもたらすこの破壊的な眼の状態は、早産の乳児の看護中の重篤な合併症である)、血管新生緑内障、網膜芽腫、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅、ブドウ膜炎、黄斑変性および角膜移植片新生血管形成。他の眼の炎症性疾患、眼の腫瘍、および脈絡もしくは虹彩の新生血管形成を伴う疾患もまた、TIE/TEK ECD多量体で処置され得る。
PDGFR ECDの全体もしくは一部分を含むECDヘテロ多量体はまた、増殖性硝子体網膜症の処置において使用され得る。ウサギの結膜線維芽細胞(RCF)が、眼の硝子体部分に注射され得る。例えば、ウサギ動物モデルにおいて、約1×10個のRCFが、ガスによる硝子体切除術(gas vitreomy)によって注射される。ECD多量体の局所性もしくは全身性の投与が、同じ日に注射され得る。増殖性硝子体網膜症に対する作用(例えば、疾患の症状の減少)は、例えば、外科手術後2〜4週間にわたって観察され得る。
EphA ECDの全体もしくは一部分を含むECDヘテロ多量体は、(例えば、眼の疾患における)誤って調節されたか、そして/もしくは、不適切な新脈管形成を伴う疾患または状態を処置するために使用され得る。例えば、EphA ECD多量体は、エフリンA−1誘導性の新脈管形成に対する作用について、マウス角膜モデルのような動物モデルにおいて評価され得る。エフリンA−1を単独でまたはECD多量体と共に含むヒドロン(hydron)ペレットが、マウスの角膜内に移植される。新脈管形成のECD多量体による阻害もしくは減少を観察するために、移植後の数日にわたり視覚的な観察が行われる。
b.新脈管形成に関連するアテローム性動脈硬化症
RTK ECD多量体(例えば、VEGFR1(Flt−1)ECDの全体もしくは一部分、またはTIE/TEK ECDの全体もしくは一部分の一方または両方を含むECDヘテロ多量体)は、アテローム性動脈硬化症プラークの新生血管形成のような、アテローム性動脈硬化症に関連する新脈管形成状態を処置するために使用され得る。血管管腔内に形成されるプラークは、脈管形成の刺激活性を有することが示されている。ヒトの冠状動脈アテローム性動脈硬化症病巣におけるVEGFの発現は、ヒト冠状動脈アテローム性動脈硬化症の進行と関連している。
動物モデルは、アテローム性動脈硬化症の処置においてECD多量体を評価するために使用され得る。アポリポタンパク質−E欠損マウス(ApoE−/−)は、アテローム性動脈硬化症になる傾向がある。このようなマウスは、5週齢、10週齢および20週齢から開始して例えば5週間にわたる期間にわたって、ECD多量体(例えば、VEGFR ECD多量体)を注射することによって処置される。大動脈根における病巣は、アイソフォームで処置したマウスにおけるアテローム性動脈硬化症病巣の減少を観察するために、コントロールのApoE−/−マウスと、アイソフォームで処置したApoE−/−マウスとの間で評価される。
c.さらなる新脈管形成に関連する処置
RTK ECD多量体(例えば、VEGFR ECDの全体もしくは一部分、または、EphA ECDの全体もしくは一部分を含むECDヘテロ多量体)はまた、慢性関節リウマチ(RA)において存在するような滑膜細胞の増殖、炎症性細胞の浸潤、軟骨の破壊、および、パンヌスの形成のような脈管形成および炎症に関連する状態を処置するために使用され得る。II型コラーゲン誘導性関節炎の自己免疫モデル(例えば、マウスにおいて誘導した多関節関節炎)は、ヒトRAについてのモデルとして使用され得る。タンパク質の局部注入などによりECD多量体で処置されたマウスは、関節炎の症状の減少(脚の腫れ、紅斑、および関節強直を含む)について観察され得る。滑膜新脈管形成および滑膜炎症の減少もまた観察され得る。新脈管形成は、RAにおけるパンヌスの形成および維持において重要な役割を担う。ECD多量体は、新脈管形成を調節するために、単独で、そして、他のアイソフォームおよび他の処置と組み合わせて使用され得る。例えば、新脈管形成インヒビターが、RAを処置するために、ECD多量体と組み合わせて使用され得る。例示的な新脈管形成インヒビターとしては、アンジオスタチン、抗脈管形成性アンチトロンビンIII、カンスタチン(canstatin)、軟骨由来インヒビター、フィブロネクチンフラグメント、IL−12、バスキュロスタチン(vasculostatin)および当該分野で公知の他のものが挙げられるがこれらに限定されない(例えば、Paleolog(2002)Arthritis Research Therapy 4(補遺3)S81−S90を参照のこと)。
ECD多量体(例えば、VEGFR ECD多量体を含む)での処置に馴染む他の新脈管形成に関連する状態としては、血管腫が挙げられる。小児の最も頻繁に起こる新脈管形成疾患の一つが、血管腫である。多くの場合、腫瘍は良性であり、そして、介入なしで退行する。より重篤な症例においては、腫瘍は、大きく、海綿状でかつ浸潤性の形態へと進行し、そして、臨床上の合併症を生じる。血管腫の全身的な形態である、血管腫症は、高い死亡率を有する。処置できないか、または、現在使用中の治療薬では処置困難な血管腫の多くの症例が存在する。
ECD多量体(例えば、VEGFR ECD多量体)は、Osler−Weber−Rendu病または遺伝性出血性毛細管拡張症のような、新脈管形成が損傷を担うような疾患および状態の処置において使用され得る。これは、多発性の小さな血管腫、血管もしくはリンパ管の腫瘍によって特徴付けられる遺伝性の疾患である。血管腫は、皮膚および粘膜において見られ、しばしば、鼻出血(鼻血)または胃腸出血を、そして、ときどき、肺もしくは肝臓の動静脈フィステルを伴う。所望されない血管透過性によって特徴付けられる疾患および障害はまた、ECD多量体によって処置され得る。これらとしては、脳腫瘍に伴う浮腫、悪性疾患に伴う腹水、メージュ症候群、肺の炎症、ネフローゼ症候群、心膜滲出および胸膜滲出が挙げられる。
新脈管形成はまた、生殖および創傷治癒のような正常な生理学的プロセスにおいても関与している。新脈管形成は、排卵において、そしてまた、授精後の胞胚の着床においても重要な段階である。ECD多量体(例えば、VEGFR ECDの全体もしくは一部分を含むECDヘテロ多量体)による新脈管形成の調節は、無月経を誘導するか、排卵をブロックするか、または、胞胚による着床を防止するために使用され得る。ECD多量体はまた、外科処置において使用され得る。例えば、創傷治癒において、過剰な修復または線維増殖は、外科処置の有害な副作用であり得、そして、これは、新脈管形成によって引き起こされ得るか、または、悪化され得る。癒着は、外科手術の頻繁に起こる合併症であり、そして、小腸閉塞のような問題をもたらす。
新脈管形成に関連する疾患および状態の処置において有用なRTK ECD多量体はまた、例えば、RTK関連経路における他のシグナル伝達分子と相互作用する(VEGFRリガンドまたは他の増殖因子リガンドの調節を含む)抗新脈管形成性の薬物、分子と共に、併用療法において使用され得る。例えば、公知の抗リウマチ薬であるブシラミン(BUC)は、その作用機構内に、滑膜細胞によるVEGF産生の阻害を含むことが示された。BUCの抗リウマチ作用は、滑膜細胞によるVEGF産生の阻害を通じて、関節炎の滑膜における新脈管形成および滑膜細胞の増殖を抑制することによって媒介される。EGF多量体とこのような薬物との併用療法は、処置のための複数の作用機構と作用部位とを可能にし得る。
d.癌
TIE/TEK、VEGFR、METおよびFGFRのアイソフォームのようなRTKアイソフォームは、癌の処置において使用され得る。RTKアイソフォーム(VEGFRアイソフォーム(例えば、Flt1アイソフォーム)、FGFRアイソフォーム(例えば、FGFR4アイソフォーム)およびEphA1アイソフォームが挙げられるがこれらに限定されない)は、癌を処置するために使用され得る。本明細書において処置される予定の癌の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病または悪性リンパ球。このような癌のさらなる例としては、以下が挙げられる:扁平上皮細胞癌(例えば、上皮有棘細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、食道癌、神経膠腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、肛門癌、陰茎癌、ならびに、頭頚部癌。
例えば、TIE/TEK ECDの全体もしくは一部分を含むECDヘテロ多量体は、腫瘍に関連する新脈管形成を調節するなどによって、癌の処置において使用され得る。血管新生は、癌の増殖および拡大の調節に関与する。例えば、新脈管形成および新生血管形成の阻害は、腫瘍の増殖および拡大を阻害する。Tie2のようなTie/Tekレセプターは、正常組織および癌組織における血管の発生に影響を及ぼすことが示されている。TIE/TEK ECD多量体は、腫瘍の新脈管形成のインヒビターとして使用され得る。新脈管形成に対する作用は、例えば、ラット角膜のマイクロポケット内に外科的に移植されるヒドロンペレット中の馴化培地として、または、ウィンドウチャンバ(window chamber)に投与される精製タンパク質(例えば、100μg/投薬)として処方されるTIE/TEK ECD多量体を用いて、ラット角膜を処置するなどによって、動物モデルにおいて監視され得る。例えば、無血管の角膜を持つF344ラットのようなラットモデルは、新脈管形成を誘導するために、腫瘍細胞の馴化培地と組み合わせて、または、眼のウィンドウチャンバ内に腫瘍のフラグメントを移植することによって使用され得る。角膜は、腫瘍細胞の馴化培地によって誘導される新脈管形成の阻害を検出するために、組織学的に検査され得る。TIE/TEK ECD多量体はまた、固形腫瘍(原発性および転移性の肉腫および癌腫を含む)のような、悪性かつ転移性の状態を処置するために使用され得る。
FGFR4 ECDの全体もしくは一部分を含むECDヘテロ多量体は、癌、例えば、下垂体腫瘍を処置するために使用され得る。動物モデルは、ヒト下垂体腫瘍の進行を模倣するために使用され得る。例えば、トランスジェニックマウスにおいて発現されるFGFRのN末端短縮形態であるptd−FGFR4は、下垂体の腫瘍形成(持続的かつ充実の過形成がない、下垂体腺腫の形成を含む)を再現する(Ezzat et al.(2002)J.Clin.Invest.109:69−78)。FGFR4 ECD多量体は、ptd−FGFR4マウスに投与され得、そして、下垂体の構造および腫瘍進行の過程が、コントロールマウスと比較され得る。
3.他のCSR媒介性の疾患または障害
また、非RTK CSR(例えば、TNFRまたはRAGEであるが、これらに限定されない)の成分のうち少なくとも1つを含むECDヘテロ多量体を用いた疾患の処置が本明細書中に提供される。例えば、RAGEの少なくともECDの全体もしくは一部分を含むECD多量体は、糖尿病に関連する疾患および状態(歯周疾患、自己免疫疾患、血管疾患および尿細管間質性疾患を含む)を処置するために使用され得る。RAGE ECD多量体を用いた処置としてはまた、眼の疾患(黄斑変性を含む)、心血管疾患、神経変性疾患(アルツハイマー病を含む)、炎症性の疾患および状態(慢性関節リウマチを含む)、ならびに、細胞増殖を伴う疾患および状態(癌を含む)の処置が挙げられる。別の例では、レセプターのTNFRファミリーの少なくともECDの全体もしくは一部分を含むECD多量体は、慢性関節リウマチ、クローン病、自己免疫疾患、リウマチ性疾患、炎症性腸疾患、アルツハイマー病および他の疾患(特に、炎症性疾患)を処置するために使用され得る。
4.ECD多量体のECDポリペプチド成分の選択
ECD多量体の成分の決定は、選択された疾患の処置の際にどのECD多量体分子を使用するかを決定するときの考慮点である。疾患もしくは障害の処置のためのECDヘテロ多量体を合理的に設計するために、いくつかの要因が、経験的に決定され得る。第一に、処置されるべき疾患が同定されるべきである。代表的には、このような疾患は、例えば、疾患の病因に寄与する複数のCSR(RTKおよび特にHERを含む)の過剰発現に起因して、単一のレセプターを標的とする治療に対して抵抗性を示す疾患である。第二に、疾患の病因に関与する1以上のCSRまたはCSRのリガンドが同定され得る。このようなCSRまたはリガンドは、ECD多量体が、CSRまたはそのリガンドの活性を調節する(代表的には、阻害する)ように設計されるように設計されたECD多量体の標的であり得る。したがって、ECD多量体は、成分として、CSRとの二量体化に十分な標的CSRのECDの全体もしくは一部分、および/または、標的CSRリガンドへの結合に十分なECDの全体もしくは一部分を含む。当業者は、選択された疾患の病因に関与するCSR(RTKまたはHERファミリーレセプターを含む)および/またはそのリガンドを知っているか、または、同定することが可能である。例えば、いくつかの例示的な疾患および障害に対するCSRの寄与は上述される。第三に、リガンドへの結合および/または同系もしくは相互作用性のCSRとの二量体化に十分なECDの成分が決定され得る。例示的なECD分子のこのような部分は、本明細書中に記載されるか、あるいは、当業者に公知であるか、または、例えば、関連するレセプターとのアラインメントに基づいて、および/もしくは、リガンド結合アッセイと組み合わせて組換えDNA技術を用いることなどによって、当業者によって合理的に決定され得る。少なくとも2以上の同定された標的CSRのECDの全体もしくは一部分が、例えば、その個別の多量体化ドメインへの連結などによって多量体を形成するために、直接的もしくは間接的に連結され得る。いくつかの場合、多量体は、個別の成分を連結するために使用される方法に依存して、二量体またはより高次の多量体であり得る。したがって、結果として生じるECD多量体は、選択された疾患を処置するための候補治療薬となる。
例えば、HER1のようなHERレセプターは、種々の癌(HER1が過剰発現される癌(すなわち、結腸直腸癌、頭頚部癌、前立腺癌、膵臓癌、肝臓癌、肺癌、腎細胞癌、乳癌、食道癌、卵巣癌、子宮頸部/子宮癌、神経膠腫、膀胱癌など)が挙げられるがこれらに限定されない)に関与している。したがって、癌を処置する機構としてHER1のシグナル伝達を標的とするために、成分としてHER1 ECDの全体もしくは一部分を有するECD多量体が設計され得る。ヘテロ多量体の設計において、別のCSR分子(これもまた選択された疾患に関与している)が同定され得、そして、ヘテロ多量体の第二のポリペプチド成分として使用され得る。例えば、他のHERレセプターおよびそのリガンドが、種々の癌において過剰発現されるか、または、種々の癌に関与している。例えば、HER1と同様に、HER3は、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌および食道癌において過剰発現される。したがって、種々の癌の処置のための候補ECD治療薬は、HER1のECDの全体もしくは一部分と、HER2のECDの全体もしくは一部分とのヘテロ多量体であるものである。第二の例では、選択される疾患は新脈管形成であり得る。当業者は、VEGFR1およびRAGEが共に、血管形成の病因に関与することを知っている。したがって、ヘテロ多量体は、VEGFR1のECDの全体もしくは一部分とRAGEのECDの全体もしくは一部分とを含む候補治療薬として設計され得る。
5.患者の選択
先に述べたように、種々の疾患および障害が、例えば、リガンドの過剰産生、レセプターの過剰産生、または、レセプターの構成的な活性化に起因した、CSR(特に、HERファミリーレセプター)の不適切な活性化により引き起こされる。しばしば、本明細書において提供されるECD多量体のような薬物または分子に対する患者の応答は、その薬物または分子が標的とするCSRまたはリガンドの相対的な発現に根拠を置かれ得る。したがって、所望される場合、疾患もしくは障害の処置の前に、患者は、本明細書において提供されるECD多量体による処置に対し増加した応答性を有すると予測される患者を選択するために、リガンドまたはCSRの発現についてアッセイされ得る。例えば、ECD多慮付帯が、少なくとも1つのHER1レセプターを標的とする場合、患者は、HER1の発現について検査され得る。別の例において、処置されるべき疾患が特定のリガンドによって媒介されることが知られている場合、患者は、そのリガンドを標的とするECD多量体を用いた処置の前に、リガンドの発現についてアッセイされ得る。患者サンプル(すなわち、血液、血清、腫瘍、組織、細胞または他の供給源)中のリガンドまたはCSRの発現は、CSRもしくはリガンドのレベルが上昇した患者を選択するために、コントロールまたは正常なサンプルと比較され得る。このような患者の選択は、患者のほとんどが所与の治療に対して応答すると予測された集団の部分集団の処置を確実なものとし得る。
一局面では、CSRの発現は、患者において評価され得る。一例では、発現は、(例えば、免疫組織化学アッセイ;IHCによって)組織または細胞の表面に存在するCSRタンパク質のレベルの増加を評価することによって、診断アッセイまたは予後アッセイにおいて決定され得る。あるいは、もしくはさらに、細胞におけるCSRをコードする核酸のレベルは、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH;WO 98/45479を参照のこと)、サザンブロッティング、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、リアルタイム定量PCR(RT−PCR))によって評価され得る。さらに、CSRの過剰発現は、血清のような生物学的流体中に流れる(shed)抗原(例えば、可溶性CSR)を測定することによって評価され得る(例えば、米国特許第4,933,294号;WO91/05264;米国特許第5,401,638号;Sias et al.(1990)J.Immunol.Methods,132:73−80を参照のこと)。別のアッセイでは、細胞は、患者から単離され、そして、必要に応じて検出可能な標識(例えば、放射性同位体または蛍光標識)で標識されたCSR特異的抗体に対して曝露され、そして、細胞への抗体の結合がアッセイされ得る。別の例では、患者の細胞は、インビボで抗体に対して曝露され得、そして、抗体の結合が、例えば、放射能の外部からの走査によって、または、以前に抗体に対して曝露された患者から採取した生検を解析することによって、評価され得る。当業者に公知の任意の他のアッセイが、患者におけるCSRのレベルを決定するために使用され得、このようなアッセイは、イムノブロット、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)などであるが、これらに限定されない。いくつかの場合、レセプターのリン酸化形態の発現が増加した患者の選択は、活性型レセプターのレベルが上昇した患者の部分集団を具体的に同定するために使用され得る。CSRのリン酸化を検出するための種々のアッセイが当該分野で公知であり、このようなアッセイとしては、例えば、抗ホスホチロシン抗体または抗リン特異的CSR抗体を用いるイムノブロットまたはELISAが挙げられるがこれらに限定されない。
いくつかの場合、CSRリガンドのレベルは、患者の選択の指標として決定され得る。例えば、患者の組織または腫瘍におけるリガンドのレベルは、免疫組織化学(IHC,例えば、Scher et al.(1995)Clin.Cancer Research,1:545−550を参照のこと)を用いて決定され得る。あるいは、またはされない、サンプル、組織、腫瘍もしくは他の供給源におけるリガンドのレベルは、タンパク質またはこれをコードする核酸を検出するための任意の公知の手順にしたがって決定され得る。この例は、ELISA、RT−PCRを含むPCR、フローサイトメトリー、FISH、サザンブロッティングなどである。さらに、上述のように、CSRリガンドは、例えば、検出されるべき分子に結合し、検出可能な標識(すなわち、放射性標識)でタグが付けられた分子(例えば、抗体)を投与し、そして、標識の局在について患者を外部から走査することによって、インビボ診断アッセイを用いて評価され得る。例えば、TGF−α、EGFまたはアンフィレグリンのようなHERファミリーレセプターリガンドが、患者のサンプルにおいて(例えば、血清において)、標準的なELISA法(すなわち、R&D systems製などの市販のELISA)を用いて、または、ホルマリン固定した原発性腫瘍の切片において免疫組織化学および組織マイクロアレイによってアッセイされ得る(例えば、Ishikawa et al.(2005)Cancer Res.65:9176を参照のこと)。別の例では、RT−PCRは、患者の細胞サンプルにおいて(例えば、腫瘍細胞において)(Mahtouk et al.(2005)Oncogene,24:3512−3524)、または、患者の血液、骨髄もしくはリンパ節において(例えば、これらから単離した単核細胞において)、リガンドの発現を評価するために使用され得る。
6.併用療法
RTK ECD多量体(HER ECD多量体を含む)のようなECD多量体は、疾患および状態を処置するために、互いに組み合わせて、そして、他の既存の薬物および治療薬との混合物として用いられ得、相加作用もしくは相乗作用のいずれかである治療効果をもたらす。例えば、本明細書中に記載されるように、多数のECD多量体が、新脈管形成に関連する状態および疾患を処置するため、そして/または、腫瘍の増殖を制御するために使用され得る。このような処置は、抗脈管形成性および/または抗腫瘍形成性の薬物および/または治療と組み合わせて行われ得る。併用療法に有用な抗脈管形成性および抗腫瘍形成性の薬物および治療の例としては、チロシンキナーゼインヒビターが挙げられ、そして、チロシンキナーゼシグナル伝達を調節し得る分子(4−アミノピロロ[2,3−d]ピリミジン(例えば、米国特許第5,639,757号を参照のこと)、ならびにキナゾリンの化合物および組成物(例えば、米国特許第5,792,771号))は、併用療法において使用され得る。併用療法において有用な他の化合物としては、以下が挙げられる:ステロイド(例えば、血管安定性の(angiostatic)4,9(11)−ステロイドおよびC21−酸化ステロイド)、アンジオスタチン、エンドスタチン、バスキュロスタチン、カンスタチンおよびマスピン(maspin)、アンジオポエチン、細菌性多糖類CM101および抗体LM609(米国特許第5,753,230号)、トロンボスポンジン(TSP−1)、血小板因子4(PF4)、インターフェロン、メタロプロテイナーゼインヒビター、薬理学的因子、例えば、AGM−1470/TNP−470、サリドマイドおよびカルボキシミドトリアゾール(CAI)、コルチゾン(例えば、ヘパリンもしくはヘパリンフラグメントの存在下)、抗浸潤因子、レチン酸およびパクリタキセル(米国特許第5,716,981号;本明細書中に参考として援用される)、サメ軟骨抽出物、アニオン性ポリアミドもしくはポリ尿素低重合体、オキシインドール誘導体、エストラジオール誘導体およびチアゾロピリミジン誘導体。
癌の処置(HERを過剰発現する癌の処置を含む)は、抗HER抗体、低分子チロシンキナーゼインヒビター、アンチセンス、オリゴヌクレオチド、HER/リガンド指向性ワクチン、または免疫結合体(すなわち、放射性同位体もしくは細胞毒に結合させた抗体)のような抗癌剤との併用療法を含み得る。このような抗癌剤の例としては、Gefitinib、Tykerb、Panitumumab、Erlotinib、Cetuximab、Trastuzimab、Imatinib、白金錯体またはヌクレオシドアナログが挙げられる。他の抗癌剤としては、放射線療法もしくは化学療法剤、および/または、増殖阻害剤(異なる化学療法剤のカクテルの同時投与を含む)が挙げられる。細胞傷害剤または化学療法剤の例としては、例えば、以下が挙げられる:タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、およびアントラサイクリン抗生物質、ドキソルビシン/アドリアマイシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、メトプテリン、ジクロロメトトレキセート、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体(例えば、エトポシドまたはリン酸エトポシド)、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン(leurosidine)、ビンデシン、ロイロシドン(leurosidne)、メイタンシノール(maytansinol)、エポシロン(epothilone)AまたはB、タキソテール、タキソールなど。他のこのような治療剤としては、エクストラムスチン、シスプラチン、コンブレタスタチン(combretastatin)およびアナログ、ならびにシクロホスファミドが挙げられる。このような化学療法剤についての調製および投薬計画は、製造業者の説明書に従って、または、当業者によって経験的に決定されるように使用され得る。このような化学療法についての調製および投薬計画はまた、Chemotherapy Service Ed.,M.C.Perry,Williams & Wilkins,Baltimore,Md.(1992)に記載される。
さらなる化合物が、ECD多量体との併用療法において使用され得る。抗ホルモン化合物が、ECD多量体などと共に併用療法において使用され得る。このような化合物の例としては、このような分子について公知の投薬量の、抗エストロゲン化合物(例えば、タモキシフェン);抗プロゲステロン化合物(例えば、オナプリストン)および抗アンドロゲン化合物(例えば、フルタミド)が挙げられる。また、心保護剤(治療に関連し得る心筋の機能不全を防止または減少させるためのもの)または1以上のサイトカインを同時に投与することがまた有益であり得る。上の治療レジメンに加えて、患者は、癌細胞の外科的除去および/または放射線療法に供され得る。
併用療法は、処置の有効性を増加させ得、そして、いくつかの場合においては、併用が、別々に行った処置の相加作用よりも有効となるような相乗作用をもたらし得る。例えば、化学療法剤(例えば、チロシンキナーゼインヒビター)および本明細書に記載されるECD多量体を用いた併用療法は、腫瘍細胞の増殖の相乗的な阻害、すなわち、2つの因子を別々に投与した場合の相加作用の組合せよりも大きな増殖の阻害作用を示し得る。
アジュバントおよび他の免疫調節因子が、例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答を高めるために、癌の処置においてECD多量体と組み合わせて使用され得る。アジュバントの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:細菌のDNA、弱毒化マイコバクテリア細胞の核酸画分(BCG;Bacillus−Calmette−Guerin)、BCGゲノムに由来する合成オリゴヌクレオチド、およびCpGモチーフを含む合成オリゴヌクレオチド(CpG ODN;Wooldridge et al.(1997)Blood 89:2994−2998)、レバミゾール、水酸化アルミニウム(alum)、BCG、不完全フロイントアジュバント(IFA)、QS−21(植物由来の免疫刺激因子)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)ならびにジニトロフェニル(DNP)。免疫調節因子の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−1α、IL−1βおよびIL−1 RA)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、オンコスタチンM、エリスロポエチン、白血病抑制因子(LIF)、インターフェロン、B7.1(CD80としても公知)、B7.2(B70、CD86としても公知)、TNFファミリーメンバー(TNF−α、TNF−β、LT−β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4−1BBL、Trail)、およびMIF、インターフェロン、サイトカイン(例えば、IL−2およびIL−12));および、化学療法剤(例えば、メトトレキセートおよびクロラムブシル)。
実施例は、既存の治療薬に加えて、ヘテロ多量体、ヘテロ多量体とホモ多量体との混合物の種々の形態を使用することで、相乗的な結果を提供することを示す。
J.汎HER治療薬を同定、スクリーニングおよび作り出すための方法
本明細書中に提供されるECD多量体に加えて、他の候補汎HER治療薬が同定され得る。本明細書中には、汎HER治療薬を同定する方法およびそのためのスクリーニングアッセイが提供される。この方法は、リガンド結合および/またはレセプター二量体化および/または係留に関与する1以上のHERレセプターファミリーメンバー上の領域と相互作用する分子(例えば、低分子およびポリペプチド)を同定することによって、リガンド結合および/またはレセプター二量体化および/または係留と干渉するECDサブドメインを標的とする分子を同定するように設計される。このような治療薬は、HERレセプターの同時発現を有さないHERファミリーのいくつかのメンバーを同時に標的とし得る。
1.汎HER治療薬の標的
このような汎HER治療分子を設計するために、特定の活性に関与するものとして同定される類似のエピトープまたは保存された領域が同定される。例えば、係留に関与する領域は、係留を安定化または促進する候補分子をスクリーニングするために同定され;リガンド結合に関与する領域は、2以上のHERファミリーメンバーとのリガンドの相互作用と干渉する候補薬をスクリーニングするために同定され、そして、二量体化に関与する領域が同定される。
これらの領域は、レセプターファミリーについての結晶構造データに基づいて同定された(同定される)。例えば、アンタゴニスト治療薬の設計は、細胞表面上のHERファミリーレセプターの約5%までを構成する活性型レセプターを優先的に標的とするために、レセプターが不活性な立体配座であるか活性な立体配座であるかを決定するレセプターの性質を標的とする。結晶構造によって予測されるこのような構造成分の例としては、例えば、レセプターを係留型または不活性状態に保つ構造成分、二量体化を促進する構造成分、および/または、リガンド結合を促進する構造成分が挙げられる。これらの各々は、汎HER治療薬の設計のための強力な標的として、以下に記載される。
例えば、サブドメインII(D II)およびIV(D IV)内の領域は、係留およびレセプターの二量体化に関与する。保存された領域は、1以上のHERファミリーメンバーの二量体化を阻害し、そして/または、係留ドメインもしくは架橋ドメインを安定化させて、係留型の立体配座を安定化させる、候補化合物についてスクリーニングするために同定され得る。いくつかのHERファミリーメンバーからこのように同定されたポリペプチドは、実施例において例示される。
このアプローチのために、標的とされる構造領域の各々の内部にある相同なポリペプチド配列が、各HERレセプター(HER1、HER2、HER3およびHER4)間で同定された。いくつかの例では、IGF1−Rおよび他の細胞表面レセプターにおいて相同な領域もまた、潜在的な標的配列を同定するために整列され得る。代表的には、標的とされる配列は、1以上のHERレセプター(代表的には、HER1および/またはHER3)におけるアミノ酸配列を用い、そして、結晶構造からモデリングし、その後、この同定された配列の他のHERファミリーレセプターとのアラインメントを行い、そして、最も保存されている配列をピックアップすることによって導かれる。他のHERレセプターにおける対応する配列もまた同定される。これらの標的配列に結合するタンパク質は、例えば、ファージディスプレイなどを用いて同定され得る。結合したタンパク質は、1以上のこれらの領域に結合し、そして1)リガンド結合を阻害し、2)二量体もしくはヘテロ二量体としてのレセプターの会合を阻害し、そして/または、3)脱係留反応(すなわち、HER分子の活性化)を阻害するタンパク質を同定するために富化され得る。いくつかの場合、同定されるペプチドの親和性は、2以上のペプチドの架橋によって(すなわち、ペプチドヘテロ二量体を形成することによって)増加され得、その結果、架橋したペプチドが、同じレセプター分子の2つの領域に結合し、そして、そのレセプターが開くことを防止する。架橋したペプチドは、同じドメイン内の別個のエピトープを認識するものであり得るか、または、これらは、異なるドメイン内の別個のエピトープを認識するものであり得る。例えば、係留型の立体配座の脱係留を阻害するために、HERレセプターの係留型の立体配座において、ドメインIIおよびドメインIVが接近していることに起因して、ドメインII内のエピトープを認識するペプチドが、ドメインIVの係留領域内のエピトープを認識するペプチドに架橋され得る。
一例では、汎HER治療用アンタゴニストは、二量体化を防止することによって、レセプターを自己阻害性の立体配置に固定するように設計される。したがって、ドメインII内の領域および/またはドメインIV内の領域が標的とされ得る。例えば、HERファミリーレセプターの二量体化および会合を防止するために、二量体化アーム内にあるドメインII内の領域、または、二量体化アームを囲む領域が標的とされ得る。別の例では、レセプターが係留型の立体配座にあるときに起こるドメインIV内の相同な領域との二量体化アームの会合を防止するために、ドメインIV内の領域が標的とされ得る。したがって、例えば、単一のレセプターのドメインII上の別個の部位に結合し、それによって、その二量体化能を立体的に阻害する、ファージディスプレイによって同定されるペプチドのようなアンタゴニスト、または、抗体もしくは他の低分子治療薬のような他の分子が同定され得る。ドメインIIもしくはドメインIVのいずれか内にある標的とされるエピトープ領域(HER3とのアラインメントに基づいてHERファミリーメンバー間で保存されている)は、これらの領域に対する抗体を作製するための免疫原として使用され得るか、または、例えば、ファージディスプレイ技術を用いてこれらの部位へのペプチド結合剤を富化するための標的物質として使用され得る。実施例8は、例示的な相同の標的エピトープの同定を記載し、これはまた、配列番号63〜93のいずれか(ドメインIIのエピトープ)または、配列番号94〜125のいずれか(ドメインIVのエピトープ)に示される。さらに、実施例5は、二量体化に関与するHER2内の例示的領域(配列番号405に示される)を記載する。したがって、例えば、ファージディスプレイは、ドメインIIおよび/またはドメインIVの相同な領域内にある別個の部位に結合するペプチドを同定するために使用され得、これらのペプチドは、ドメインIIおよび/またはドメインIV内の領域に別々に結合し、二量体化を阻害することによって、レセプターを自動阻害性の立体配置に保持し得る。より高い親和性のペプチド結合剤が、本明細書中で以下に記載されるように、ペプチドヘテロ二量体を生成することによって作製され得る。このアプローチの利点は、細胞表面上のHERレセプターのほんの約5%だけを占める、レセプターの非係留型形態を標的とすることである。したがって、結果として生じる治療薬は、細胞表面上の係留されかつ不活性な95%のレセプターの代わりに、これらのレセプターのうち、活発にシグナル伝達を行う部分集団のみを標的とする。標的の総数が約15〜20倍減少するので、このことは、レセプターの有効な標的化を増加させ、そして、必要とされる薬物の用量を減少させる。
別の例では、ドメインIIおよびドメインIV上の同様な相同性領域が、HERレセプターの係留型の立体配座を安定化させる汎HER治療用アンタゴニストを作製するための標的とされ得る。このような治療薬は、HERレセプターの不活性な形態(すなわち、HER細胞表面レセプターの約95%)を標的とし、そして、その活性な立体配座を採る能力を妨害する。このアプローチの実現可能性は、HERレセプターの非係留型もしくは不活性な形態におけるドメインIIとドメインIVとの間の密接な相互作用を実証する結晶構造データによって支持される。HER1およびHER3のECDの結晶構造は、リガンドによる刺激の前に、レセプターが、自己阻害性または係留型の立体配置で細胞表面上に保持されることを示唆する。この立体配置では、ドメインII内の二量体化アームとドメインIV内の相同性領域との間の分子内の特異的な接触が、リガンド結合を担う2つの領域(すなわち、ドメインIおよびIII)の相対的な配向を拘束し、したがって、これらが共に、同時にリガンドと接触することはできない。これらの構造上の特徴は、レセプターが自己阻害性の係留型立体配置に固定され得る場合、リガンド依存性のHERレセプター活性化が妨害され得ることを示唆する。ドメインIIおよびドメインIVの配列の接近性は、その密接な接近性に起因して、これらの配列が架橋され得ることを予測する。したがって、上記および実施例8に記載され、そして、配列番号62〜93のいずれか(ドメインIIのエピトープ)および配列番号94〜125のいずれか(ドメインIVのエピトープ)に示されるようなドメインIIおよびドメインIV内の同じエピトープ領域が標的とされ得る。このアプローチのために、例えば、ファージディスプレイ法などによって同定される、HERファミリーレセプターのドメインIIおよびドメインIVの両方における相同な領域を標的とするペプチド結合剤が選択される。2つのペプチド(一方はドメインIIに結合し、そしてもう一方がドメインIVに結合する)が、本明細書中に記載される方法などを用いてヘテロ二量体化される場合、これらのペプチドは、係留型の不活性なHERファミリーメンバーにおいて、ドメイン間領域を架橋し得る(例えば、ドメインIIとドメインIVとの相互作用を安定化する)。したがって、結果として生じるアンタゴニスト分子は、レセプターの係留型の形態に結合し、そして、その係留型の形態をその場に「固定」し、それによって、レセプターの高親和性の非係留型の形態の形成を妨害する。
さらなる例では、ドメインIおよびIII内のリガンド結合領域は、本明細書中に記載される方法によって同定される汎HER治療薬によって標的とされ得る。上述のように、リガンド結合に参加する相同な標的領域が、HERファミリーレセプター間で同定され得る。例えば、リガンド結合に参加するHER1の領域は、TGF−αとの複合体におけるHER1の結晶構造によって決定され得る(Garrett et al.(2002)Cell,110:763−773)。この結晶構造は、一次元のPDBタンパク質データバンクである1MOXから検索され得る。他のHERファミリーレセプターにおける相同な領域は、HER1、HER2、HER3およびHER4の並列アラインメントによって決定され得る。実施例7は、このようなアラインメントによって同定される領域を記載し、そして、整列された配列は、配列番号54〜61のいずれかに示される。これらの配列は、例えば、コンビナトリアルペプチドライブラリー、ファージディスプレイ技術によって、または、多クローン性のアプローチ(例えば、Haurum and Bregenholt(2005)IDrugs,8:404−409を参照のこと)によって標的とされ得る。このようなアプローチにより同定される汎HER治療薬は、ドメインIおよび/またはIIIにおける部位をブロックすることによって、立体阻害などにより、複数のHERレセプターへの多様なリガンドの結合を阻害することが期待される。このような治療薬は、不活性なHERレセプターを標的とし、そして、リガンドの結合後にのみ生じる活性な立体配座を採る能力を阻害する。
2.汎HER治療薬を同定するためのスクリーニング方法
本明細書中には、1以上のHERファミリーレセプターを標的とする汎HER治療薬を同定するための方法が提供される。分子のコレクションがスクリーニングされる。このようなコレクションは、例えば、低分子化合物および他の生体分子(ペプチド、多糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログまたはこれらの組合せを含む)を含む。一例では、コレクションは、レセプターファミリー間で保存されており、特定の活性に関与するものと同定されたポリペプチドに対してスクリーニングされる。
同定されたポリペプチドはまた、同定されたポリペプチドと相互作用する分子を同定するために、分子ライブラリーをスクリーニングするための種々の方法のいずれかによってスクリーニングされ得る。例えば、候補汎HER治療薬は、ファージディスプレイ由来のペプチドによって同定され得る。このようなペプチドは、上述のようなHERレセプターファミリーの間で保存されている配列エレメント(すなわち、配列番号54〜125または405のいずれかに示される1以上のペプチドエピトープのいずれか)に結合するものを同定するために富化される。
a.ファージディスプレイ
ファージディスプレイ技術は、十分に確立された技術であり、ファージ上にディスプレイされるペプチドのライブラリーを生成することを伴う。これらは、例えば、1010個ほどの異なるペプチドを含み得、したがって、多くの低分子コンビナトリアルライブラリーを超越している。ペプチド(しばしば、7〜20アミノ酸またはそれより長い)とタンパク質標的との相互作用は、非常に特異的であり得、ときおり、低分子よりも特異的であり得る。ペプチドは、その治療上の効能を高めるように修飾され得る。例えば、短い血清中滞留時間と、迅速な腎濾過は、PEG化またはアルブミンのような他の血清タンパク質との融合によって減少され得る。PEG化は、血清中滞留時間を増やすだけでなく、免疫原性も低下させ得る。さらに、タンパク質標的に対するペプチドの親和性は、2以上の相乗作用性かつ非重複性のペプチドを連結して、高親和性のヘテロ二量体結合剤を形成することによって改善され得る。
ファージディスプレイおよび他のこのような方法は、異なる方法で使用され得る。第一に、本明細書において同定されたポリペプチドは、ライブラリーにおいて、候補汎HER治療薬となり得るポリペプチドを同定するために、ディスプレイされたポリペプチドのライブラリーに対してスクリーニングされ得る。あるいは、本明細書において同定されたポリペプチドは、汎HER治療薬候補を同定するために、低分子および他のポリペプチドのライブラリーに対してディスプレイおよびスクリーニングされ得る。
i.ペプチドライブラリー
本明細書において提供される方法において産生およびスクリーニングされるペプチドライブラリーは、HERファミリーレセプターについての新規リガンドを提供すること、そして、汎HER治療薬を産生することにおいて有用である。ペプチドライブラリーは、本明細書において詳細に記載される方法および当業者に一般に利用可能な方法に従って、設計およびパニングされ得る(例えば、米国特許第5,723,286号および米国特許出願番号US20040023887を参照のこと)。一局面では、市販のファージディスプレイライブラリー(例えば、RAPIDLIB(登録商標)またはGRABLIB(登録商標)、DGI BioTechnologies,Inc.,Edison,N.J.;C7C Disulfide Constrained Peptide Libraryまたは7−aaおよび12−aaの線形ライブラリー、New England Biolabs)が使用され得る。別の局面では、オリゴヌクレオチドライブラリーは、当該分野で公知の方法にしたがって調製され得、そして、ペプチド発現のための適切なベクター中に挿入され得る。例えば、バクテリオファージの構造タンパク質(好ましくは、バクテリオファージのコートタンパク質のようなアクセス可能なファージのタンパク質)をコードするベクターが使用され得る。当業者は、種々のバクテリオファージが使用され得ることを理解するが、代表的には、ベクターは、例えば、f1、fd、Pf1、M13などのような糸状バクテリオファージに由来するものである。特に、fd−tetベクターは、文献において包括的に記載されている(例えば、Zacher et al.,(1980)Gene 9:127−140;Smith et al.,(1985)、Science 228:1315−1317;Parmley and Smith(1988)Gene,73:305−318を参照のこと)。
ファージベクターは、バクテリオファージの構造タンパク質をコードする遺伝子の5’領域に位置するクローニング部位を含むように選択されるか、またはこのクローニング部位を含むように構築され、その結果、ペプチドは、本明細書において以下に記載されるようなアフィニティ富化手順においてレセプターにアクセス可能となる。ファージの構造タンパク質は、一般にコートタンパク質である。適切なコートタンパク質の例は、ピル(pill)である。適切なベクターは、ペプチドが、成熟なコートタンパク質のN末端から約100アミノ酸残基の距離またはその内側に発現されるように、ペプチドをコードするオリゴヌクレオチド配列の方向を定めたクローニングを可能にし得る。コートタンパク質は、代表的には、リーダー配列を有するプレタンパク質として発現される。
代表的には、オリゴヌクレオチドライブラリーは、プロセシングを受けたバクテリオファージの外殻タンパク質のN末端がペプチドの第一の残基となるように、すなわち、リーダータンパク質をコードする配列の3’末端と、成熟なタンパク質をコードする配列の5’末端またはその5’末端の一部分との間に挿入される。ライブラリーは、ライブラリーメンバーの多様な領域(および以下に考察されるような任意のスペーサー)を含むオリゴヌクレオチドを、選択したクローニング部位へとクローニングすることによって構築される。1)望ましくない制限酵素部位を除いて望ましい制限酵素部位を加える;2)除かれた任意の配列の正しい部分(例えば、正しいシグナルペプチダーゼ部位)を再構築する;3)必要な場合、スペーサー残基を挿入する;そして/または、4)必要に応じて、翻訳フレームを正しくして、活性かつ感染性のファージを産生する、公知の組換えDNA技術(一般的には、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)を用いると、オリゴヌクレオチドが構築され得る。
オリゴヌクレオチドの中央部分は、一般に、1以上のHERファミリーレセプターエピトープ結合配列と、必要に応じて、スペーサー配列とを含む。配列は、最終的には、組み立てられたバクテリオファージ粒子の外側のアクセス可能な表面上の成熟なコートタンパク質のN末端に融合されたか、もしくは、この中にあるペプチド(スペーサーはあってもなくてもよい)として発現される。ライブラリーのサイズは、多様なコドンの数によって、したがって、所望されるペプチドのサイズによって変化する。一般に、ライブラリーは、少なくとも約10のメンバー、通常は少なくとも10のメンバー、そして代表的には10以上のメンバーである。アミノ酸のランダムなコレクションをコードする一連のコドンを形成し、そして、最終的にはベクター中にクローニングされるオリゴヌクレオチドのコレクションを作製するために、(NNK)のようなコドンモチーフが使用される。ここで、Nは、A、C、GまたはT(名目上は等モル量)であり得、KはGまたはT(名目上は等モル量)であり、そして、xは、代表的には、約5、6、7、8、またはそれ以上であり、それによって、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチドおよびオクタペプチドまたはこれより長いペプチドのライブラリーを生成する。第三位はまた、「S」と指定される、GまたはCでもあり得る。したがって、NNKまたはNNSは、1)全てのアミノ酸をコードし;2)ただ1つの停止コドンをコードし;そして、3)コドンの偏りの範囲を6:1から3:1へと減らす。
ペプチドが長くなると、作製されるライブラリーのサイズが、クローニングのプロセスにおける制約となり得ることが理解されるべきである。適切な組換えベクターにおいてランダムに作製されたオリゴヌクレオチドの混合物からのペプチドの発現は、当該分野で公知である(例えば、Oliphant et al.,Gene 44:177−183を参照のこと)。例えば、コドンモチーフ(NNK)は、12アミノ酸の各々について1つ、5アミノ酸の各々について2つ、3アミノ酸の各々について3つ、そして、1つの(アンバー)終止コドンの、32のコドンを生成する。このモチーフは、オリゴヌクレオチド合成の標準的な方法を用いて利用可能なものと同等に公平なコドンの分布を生じるが、これは、1つのコドンの残基を持つペプチドに対する偏りをもたらす。具体的には、ヘキサコドンの完全なコレクションは、1つのコドンのアミノ酸のみから構成されるペプチドの各々をコードする1つの配列を含むが、3つのコドンのアミノ酸のみを持つペプチドの各々をコードする729(26)の配列を含む。
1コドンの残基に対する偏りを最小限にするための代替的なアプローチは、20の活性型トリヌクレオチド(各々が20の遺伝子によりコードされるアミノ酸のうちの1つに対するコドンを表す)の合成を伴う。これらは、従来の手段によって合成され、塩基および5−OH−保護基を維持したまま支持体から取り外され、そして、モノヌクレオシドの活性化のために使用される方法によって、3’O−ホスホラミダイト(およびb−シアノエチル基でのリン酸基保護)を加えることによって活性化される(一般的には、McBride and Caruthers,1983,Tetrahedron Letters 22:245を参照のこと)。変質オリゴコドンは、これらの三量体を建築ブロックとして用いて調製される。三量体は、所望のモル比で混合され、そして、合成装置に入れられる。この比は、通常は、ほぼ等モルであるが、変質オリゴヌクレオチドコレクションによりコードされる特定のアミノ酸の過剰〜過小な出現を得るために、制御された一様でない比であり得る。オリゴコドンを形成するための三量体の濃縮は、本質的には、活性化したモノヌクレオシドを建築ブロックとして用いて、従来の合成について記載されたようにして行われる(例えば、Atkinson and Smith,1984,Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait,Ed.,p.35−82を参照のこと)。この手順は、潜在的なペプチド配列の一様な分布(または、制御された一様でない分布)をコードし得る、クローニング用のオリゴヌクレオチド集団を生成する。有利なことに、このアプローチは、(NNK)モチーフにより生成される偏りの範囲が、アミノ酸残基を追加するごとに3倍増加するので、より長いペプチド配列を作製する際に用いられ得る。
コドンモチーフが、上に規定されるような(NNK)であり、かつ、xが8である場合、2.6×1010の潜在的なオクタペプチドが存在する。オクタペプチドのモチーフを含むライブラリーは、生成するのが困難であり得る。したがって、オクタペプチドのサンプリングは、潜在的な配列の約10%までを用いて、部分集合ライブラリーを構築することによって達成され得、次いで、この組換えバクテリオファージ粒子の部分集合がスクリーニングされる。所望される場合、部分集合ライブラリーの多様性を拡げるために、回収したファージの部分集合が、突然変異誘発に供され、次いで、その後のスクリーニングのラウンドに供され得る。この突然変異誘発の工程は、2つの一般的な方法で達成され得る:回収したファージの多様な領域が突然変異を生成され得るか、または、追加の多様なアミノ酸が、最初の多様な配列に隣接する領域に加えられ得る。
パニングの早いラウンドで見出される活性なペプチド(すなわち、結合剤)に関して多様化するために、ポジティブなファージを配列決定して、活性なペプチドの素性を決定し得る。次いで、オリゴヌクレオチドが、これらのペプチド配列に基づいて合成され得る。合成は、一次のオリゴヌクレオチド配列にわずかなバリエーションを生じるように、各工程において、低いレベルの全塩基が組み込まれるようにしてなされる。この(わずかに)変質したオリゴヌクレオチドの混合物は、次いで、当業者に公知の方法によって、アフィニティファージへとクローニングされ得る。この方法は、二次ライブラリーの一部として、出発ペプチド配列の系統だった制御されたバリエーションを生じる。しかし、この方法は、個々のポジティブファージが突然変異誘発の前に配列決定されることを必要とし、したがって、少数の回収したファージの多様性を拡げるのに有用である。
選択したファージを多様化するための代替的なアプローチは、回収したファージのプールまたは部分集合の突然変異誘発を可能にする。このアプローチによれば、パニングから回収したファージがプールされ、そして、一本鎖DNAが単離される。DNAは、例えば、亜硝酸、ギ酸またはヒドラジンでの処理によって突然変異を生成される。これらの処理はDNAに種々の損傷を与える。損傷を受けたDNAは、次いで、逆転写酵素によってコピーされ、この逆転写酵素は、損傷部位に遭遇すると、塩基の組み込みを誤る。次いで、ペプチドをコードする配列を挟む部位に特異的な制限酵素での切断によって、レセプター結合ペプチドをコードする配列を含むセグメントが単離される。次いで、この突然変異を生成されたセグメントは、損傷を受けていないベクターDNA内に再度クローニングされ、DNAが細胞中に形質転換され、そして、公知の方法に従って二次ライブラリーが作製される。一般的な突然変異誘発の方法は当該分野で公知である(例えば、Myers et al.,1985,Nucl.Acids Res.13:3131−3145;Myers et al.,1985,Science 229:242−246;Myers,1989,Current Protocols in Molecular Biology Vol.I,8.3.1−8.3.6,F.Ausubel et al.,eds,J.Wiley and Sons,New Yorkを参照のこと)。
別の一般的なアプローチにおいて、活性であることが分かったペプチドへのアミノ酸の追加は、種々の方法を用いて行われ得る。一つの方法において、早期のパニングにおいて選択されたペプチドの配列が個々に決定されそして、この決定した配列と、隣接する変質配列とを組み込んだ新しいオリゴヌクレオチドが合成される。これらは、次いで、二次ライブラリーを生成するためにクローニングされる。あるいは、ペプチドを有するファージのプールに、第二のHER結合配列を加えるための方法が使用され得る。1つの方法によれば、制限酵素部位が、第一のHER結合配列の隣に入れられる。好ましくは、酵素は、その認識配列の外側を切断すべきである。この認識部位は、第一の結合配列から数塩基の場所に位置し得る。第二のHER結合配列を挿入するために、ファージDNAのプールが消化され、そして、Klenowフラグメントを用いてオーバーハングを埋めることによって平滑末端処理される。二重鎖でかつ平滑末端でかつ変質するように合成されたオリゴヌクレオチドが、次いで、この部位にライゲーションで導入され、第一の結合配列に並置する第二の結合配列を生じる。次いで、この二次ライブラリーが、先に述べたように、増幅およびスクリーニングされる。
いくつかの場合では、特定のレセプターに結合するより長いペプチドを合成することが適切であるが、他の場合では、スペーサー(例えば、リンカー)残基によって隔てられた2以上のHER結合配列を有するペプチドを提供することが望ましい。例えば、結合配列は、ペプチドの領域がレセプターに対して種々の方法で提示されることを可能にするスペーサーによって隔てられ得る。結合領域間の距離は、わずか1残基ほど、または、少なくとも2〜20残基、または、少なくとも100残基までであり得る。好ましいスペーサーは、長さ3残基、6残基、9残基、12残基、15残基または18残基である。大きな結合部位またはタンデムな結合部位(例えば、ドメインII上のエピトープとドメインIV上のエピトープ)を追跡するために、結合領域は、20〜30アミノ酸までの残基のスペーサーによって隔てられ得る。存在する場合、スペーサー残基の数は、代表的には、少なくとも2残基であり、そしてしばしば、20残基未満である。
オリゴヌクレオチドライブラリーは、スペーサー(例えば、リンカー)によって隔てられた結合配列を有し得、そして、したがって、以下の式によって表され得る:(NNK)−(abc)−(NNK)、ここで、NおよびKは、先に規定したとおりであり(先に規定されたようなSが、Kを置き換え得ることに留意)、そして、y+zは、約5、6、7、8もしくはそれ以上であり、a、bおよびcは、スペーサーアミノ酸をコードするコドンを含む同じかもしくは異なるヌクレオチドを表し、nは、約3、6、9もしくは12アミノ酸まで、またはそれ以上である。スペーサー残基は、ファージタンパク質への付着によって比較的束縛されていない大きな結合部位内の部位と相互作用する能力を持つライブラリーの多様なドメインを提供するために、幾分柔軟性があり得、例えば、オリゴ−グリシンまたはオリゴ−グリシン−グリシン−セリンを含む。例えば、オリゴ−プロリンのような柔軟性のないスペーサーもまた、グリシンスペーサーを含む他のスペーサーとは別に、または、他のスペーサーと組み合わせて挿入され得る。例えば、配列グリシン−プロリン−グリシンのスペーサーによって提供され得るような、2つの配列間にターンを用いることによって、HER結合配列を互いに近接させ、そして、スペーサーを用いて、互いに関してこれらの結合配列を方向付けることが望ましくあり得る。このようなターンに安定性を加えるために、各可変領域の一端もしくは両端にシステイン残基を加えることが所望され得るか、または必須であり得る。次いで、このシステイン残基は、ジスルフィド架橋を形成して、可変領域を一緒にループ内に保持し、そして、この様式において、また、環状ペプチドを模倣するように機能し得る。当然のことながら、当業者は、環化のための種々の他のタイプの共有結合もまた使用され得ることを理解する。
上述のようなスペーサー残基はまた、HER結合配列の一端または両端に据えられ得る。例えば、環状ペプチドは、ペプチドの両端にシステイン残基を持つことで、介在性のスペーサーなしで設計され得る。上述のように、柔軟性のあるスペーサー(例えば、オリゴ−グリシン)は、選択されたレセプターとのペプチドの相互作用を容易にし得る。あるいは、柔軟性のないスペーサーは、ペプチドが、柔軟性のないアームの末端にあるかのように提示されることを可能にし得、ここで、残基(例えば、プロリン残基)の数は、アームの長さを決定するだけでなく、ペプチドが方向付けられるアームの方向もまた決定する。荷電および/または非荷電の親水性アミノ酸(例えば、Thr、His、Asn、Gln、Arg、Glu、Asp、Met、Lys)から構成される親水性スペーサー、または、疎水性アミノ酸(例えば、Phe、Leu、Ile、Gly、Val、Ala)から構成される疎水性スペーサーが、種々の局所的環境を持つレセプター結合部位に対してペプチドを提示するために使用され得る。
特筆すべきは、いくつかのペプチドは、そのサイズおよび/または配列に起因して、そのキャリアファージの感染性に重篤な欠陥をもたらし得る。これは、パニングの各サイクルの後の再感染および増幅の間に、集団からのファージの減損をもたらす。感染性の欠陥に関連する問題を最小限にするために、溶出したファージから調製したDNAは、好ましくは、エレクトロポレーション(例えば、Dower et al.,Nucl.Acids Res.16:6127−6145を参照のこと)または周知の化学的手段によって、適切な宿主細胞(例えば、E.coli)中に形質転換され得る。これらの細胞は、マーカーの発現に十分な期間にわたり培養され、そして、代表的にはDNAの形質転換についてなされる選択が適用される。コロニーが増幅され、そして、確立された方法にしたがって、アフィニティ富化のためにファージが回収される。アフィニティ富化において同定されたファージは、宿主細胞中への感染によって再度増幅され得る。上手くいった形質転換体が、適切な抗生物質(例えば、テトラサイクリンまたはアンピシリン)中での増殖によって選択される。これは、固体増殖培地上、または液体増殖培地中で行われ得る。
固体培地上での増殖について、細胞は、例えば、選択用の抗生物質を含むL−寒天の広い表面上に高い密度(約10〜10の形質転換体/m)で増殖され、コンフルエントなローン(lawn)を形成する。細胞と成形されたファージとが表面からはがされ、そして、ファージが、第一ラウンドのパニングのために調製される(例えば、Parmley and Smith,1988,Gene 73:305−318を参照のこと)。液体培地中での増殖について、細胞は、約10倍以上の倍加速度でL−ブロスおよび抗生物質中で増殖され得る。ファージは、標準的な手順によって回収される(Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,2nd ed.を参照のこと)。液体培地中での増殖は、ライブラリーのサイズに起因してより簡便であり得るが、固体培地上での増殖は、増幅プロセスの間に偏りを提供する機会が少なくなり得る。
所望のクローンのアフィニティ富化について、一般には、約10〜10のライブラリー等価物(ライブラリー等価物とは、各組換え体のうちの1つである;10メンバーのライブラリーの10の等価物は、10×10=1013のファージである)であるが、代表的には、少なくとも10のライブラリー等価物、約10〜10までのライブラリー等価物が、レセプター(またはその一部分)と共にインキュベートされ、このレセプターに対して所望のペプチドが探索される。レセプターは、アフィニティ富化スキームに適切ないくつかの形態のうちの1つである。一例では、レセプターは、表面または粒子上に固定され、そして、ペプチドを有するファージのライブラリーが、次いで、一般には当該分野で公知の手順に従って、この固定されたレセプター上でパニングされる。例えば、レセプターは、(トランスフェクションに起因して、または、適切なレセプターを天然に発現する細胞を利用するなどで)単層細胞の細胞表面上に発現され得る。さらに、HER分子のECD部分がFcドメインに連結され得、そして、プロテインAアガロースに固定されたHER−Fc複合体に対して選択が行われ得る。このような例において、ファージディスプレイライブラリーは、無関係なFc融合タンパク質−プロテインA(またはG)アガロース複合体に対して消耗(deplete)され得る。代替的なスキームにおいて、レセプターは、認識可能なリガンドに固定される(テザーを介して固定され得る)。このようなリガンドの特定の例は、ビオチンである。このように修飾されたレセプターは、ファージのライブラリーと共にインキュベートされ、そして、溶液中の両方の反応物質との結合が生じる。次いで、結果として生じる複合体が、ビオチン部分を介して、ストレプトアビジンまたはアビジンに結合される。ストレプトアビジンは、プラスチックプレートのような表面上または粒子上に固定され得、この場合には、複合体(ファージ/ペプチド/レセプター/ビオチン/ストレプトアビジン)が物理的に保持されるか;または、ストレプトアビジンは、例えば、蛍光細胞分析分離装置上での分離手順による検出および/または単離のために、例えば、活性なファージ/ペプチドにタグを付すためにフルオロフォアで標識され得る。
結合したファージの富化は、より特異的な標的(例えば、サブドメインI〜IVのいずれかにおいて同定されたエピトープ領域)に対するその後のパニングによって促進され得る。したがって、例えば、ポジティブファージクローンが、HER分子の標的とされるサブドメイン(例えば、配列番号54〜61のいずれか(サブドドメインIおよびIII)、配列番号62〜93のいずれか(サブドメインII)および/または、配列番号94〜125もしくは405(サブドメインIV)に示される任意の1以上のもの)に依存して、個々の合成ペプチドに対してさらにスクリーニングされ得る。ファージは、配列番号54〜125もしくは405のいずれかに示される個々のペプチドに対して富化され得る。このような富化は、HERファミリーレセプター上のファージ結合部位の決定を可能にする。汎HER治療薬である分子を同定するために、その後、他のHERファミリーレセプター、すなわち、HER−Fc−プロテインAアガロース複合体または他のHERレセプターを発現する単層細胞に対してスクリーニングが行われ得、1以上のHERファミリーレセプターに結合する分子を同定し得る。
各工程において、非特異的な相互作用によってHERファミリーレセプターと会合するファージが、洗浄によって除かれる。必要とされる洗浄の程度およびストリンジェンシーは、関心のあるレセプター/ペプチドの各々について決定される。結合インキュベーションおよびその後の洗浄の条件を調整することによって、ある程度の制御が、回収されるペプチドの結合特性について及ぼされ得る。洗浄の温度、pH、イオン強度、二価カチオン濃度、ならびに、容量および時間が、レセプターに対する親和性の特定の範囲内のペプチドを選択する。遅い解離速度(通常は、高い親和性を予測する)に基づいた選択が、最も実用的な経路である。これは、飽和量の遊離リガンドの存在下でインキュベーションを継続するか、または、洗浄の容量、回数および長さを増やすかのいずれかによって行われ得る。各場合において、解離したペプチド−ファージの再結合が防止され、そして、時間を長くすることで、よりいっそう高い親和性のペプチド−ファージが回収される。特別な条件下でレセプターに結合するペプチドを見出すために、結合および洗浄の手順のさらなる修正が適用され得る。一度、レセプター分子に対していくらかの親和性と特異性とを与えるペプチド配列が分かると、この結合モチーフに関する多様性が装飾(embellish)され得る。例えば、可変ペプチド領域が、同定された配列の一端または両端に置かれ得る。公知の配列は、文献から同定されても、パニングの早期ラウンドから導かれてもよい。
ii.多量体ポリペプチド(ヘテロ二量体ペプチド)
多量体ポリペプチド(リガンド)は、2以上の同定された結合ペプチド(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて同定されたもの)のアミノ酸配列を共有結合により連結することによって調製され得る。多価リガンドについて意図される目的に依存して、HER分子上の同じかまたは異なるドメイン部位に結合するポリペプチドが、単一の分子を形成するように合わされ得る。多価リガンドが、異なるレセプター上、または、レセプターの異なるサブドメイン上の同じかまたは対応する部位に結合するように構築される場合、これらのレセプターに結合するためのペプチドリガンドのアミノ酸配列は、同じであっても異なっていてもよく、ただし、異なるアミノ酸配列が使用される場合は、これらは両方とも、同じ部位に結合する。他の細胞表面特異的なポリペプチドも同様に調製され得る。
多価ポリペプチドは、個々の部位に結合するアミノ酸配列を別々に発現させ、次いで、これらを一緒に共有結合により連結するか、または、多価リガンドを、結合のための特定のアミノ酸配列の組合せを内部に含む単一のアミノ酸配列として発現させるかのいずれかによって調製され得る。サブドメイン内またはサブドメイン間の別個の部位に結合するアミノ酸ポリペプチドの組合せは、より高い親和性のペプチドリガンドであるか、または、HERレセプター上の異なるサブドメイン上で一緒に架橋し得る分子を生成するために使用され得る。
組換え遺伝子発現によって産生されようと、従来の連結技術によって産生されようと、種々のポリペプチドは、種々の長さのリンカーを介して連結され得る。連結された配列が組換え的に発現される場合、そして、約4Åの平均アミノ酸長さに基づくと、2つのアミノ酸配列を接続するためのリンカーは、代表的には、約3アミノ酸〜約12アミノ酸の範囲である。アミノ酸配列間でのリンカーの柔軟性の程度は、リンカーを構築するために使用されるアミノ酸の選択によって調節され得る。グリシンとセリンの組合せは、柔軟性があり比較的制限のないリンカーを生成するのに有用である。より柔軟性の低いリンカーは、結合配列内により複雑な側鎖を持つアミノ酸を用いて構築され得る。
一例では、多量体構築物の調製は、1以上の結合ペプチドを含む。例えば、ファージディスプレイによって、標的に結合するものと同定されたペプチドは、ビオチン化され、そして、アビジン、ストレプトアビジン、またはノイトラアビジン(neutravidin)と複合体化されて、四量体構築物を形成する。これらの四量体構築物は、次いで、標的またはその一部分(例えば、所望されるHER標的を発現する細胞、および、所望されるHER標的を発現しない細胞)と共にインキュベートされ、そして、四量体構築物の結合が検出される。結合は、当該分野で公知の任意の検出法を用いて検出され得る。例えば、結合を検出するために、アビジン、ストレプトアビジンまたはノイトラアビジンが、検出可能なマーカー(例えば、放射性標識、蛍光標識、または、HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、TMB(テトラメチルベンジジン)もしくはアルカリホスファターゼのような、色の変化を受ける酵素標識)に結合され得る。多量体複合体は、必要に応じて、血清の存在下でスクリーニングされ得る。したがって、このアッセイはまた、標的へのペプチドの結合に対する血清の影響を迅速に評価するために使用され得る。
ビオチン化ペプチドは、好ましくは、ノイトラアビジン−HRPと複合体化される。ノイトラアビジンは、ノイトラアビジン中にレクチンに結合する炭水化物部分と細胞接着レセプターに結合するRYDドメインが存在しないことに起因して、他の代替物よりも少ない分子に対する非特異的な結合を示す(例えば、Hiller et al.(1987)Biochem J.248:167−171;Alon et al.(1990)Biochem.Biophys.Res.Commum.,170:236−41を参照のこと)。
ビオチン/アビジン複合体の使用は、1〜4の異なる結合ペプチドを含む四量体構築物の比較的簡単な調製を可能にする。さらに、標的化構築物の親和性およびアビディティは、同じ標的上の異なるエピトープに結合する2以上の標的化部分を含めることによって増大され得る。本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイは、このような多量体構築物に含めた場合に、親和性が増大し、そして/または、別個のサブドメインを架橋させる(すなわち、係留型の立体配座を安定化させる)結合ポリペプチドの組合せを同定する際に有用であり得る。
b.コンピュータ支援による最適化
薬理学的に活性な汎HER治療用分子を同定するために使用され得る別の方法は、リガンドへの高い親和性の結合をもたらす潜在的な変異を通じて選別するために、コンピュータ支援による最適化技術を用いることである。実施例は、このようなコンピュータ支援による最適化技術がいかにして使用され得るかについての手引きを提供する。例えば、リガンドへの結合が増強されたHER1、HER2、HER3またはHER4がこの方法で作製され得、そして、ヘテロ多量体、ホモ多量体およびこれら両方の混合物を作製するための構成要素として使用され得る。
c.例示的なスクリーニングアッセイ
また、薬理学的に活性な汎HER治療用分子を同定するためのスクリーニングアッセイが本明細書中に提供される。汎細胞表面特異的分子は、特定の細胞表面レセプター活性についての公知のアッセイを用いて、同様に同定され得る。
汎治療用分子としては、例えば、以下が挙げられる:1)可溶性ペプチドのようなペプチド(ランダムペプチドライブラリーのIg−テイル融合ペプチド(例えば、Lam et al.,1991,Nature 354:82−84;Houghten et al.,1991,Nature 354:84−86を参照のこと)、ならびに、D−立体配置アミノ酸および/または、L−立体配置アミノ酸から構成される、コンビナトリアル化学由来の分子ライブラリーを含む);2)ホスホペプチド(例えば、ランダムホスホペプチドライブラリーおよび部分的に変質した指向型のホスホペプチドライブラリーのメンバー、例えば、Songyang et al.,1993,Cell 72:767−778を参照のこと);3)抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体および短鎖抗体、ならびに、Fab、F(ab’)、Fabを発現するライブラリーフラグメント、ならびに、抗体のエピトープ結合フラグメント);ならびに4)有機低分子および無機低分子。例示的な分子は、本明細書において上に記載されたような、ファージディスプレイ方法から同定されたペプチドリガンドである。
試験分子はまた、多数の化学物質の分類を包含し得るが、代表的には、これらは、有機分子、好ましくは、50より大きく約2,500ダルトンより小さい分子量を有する低分子有機化合物である。このような分子は、タンパク質との構造的な相互作用、特に、水素結合に必要な官能基を含み得、そして、代表的には、少なくとも、アミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含み得、好ましくは、これらの官能性化学基のうち少なくとも2つを含み得る。分子はしばしば、上記官能基の1以上で置換された、環状炭素、または、複素環式構造および/または、芳香族もしくは多価芳香族の構造を含む。分子は、合成もしくは天然の化合物のライブラリーを含む、広範な種々の供給源から得られ得る。合成化合物ライブラリーは、例えば、Maybridge Chemical Co.(Trevillet,Cornwall,UK)、Comgenex(Princeton,N.J.)、Brandon Associates(Merrimack,N.H.)およびMicrosource(New Milford,Conn.)から市販されている。レアケミカルライブラリーは、Aldrich Chemical Company,Inc.(Milwaukee,Wis.)から入手可能である。細菌、真菌、植物または動物の抽出物を含む天然化合物のライブラリーは、例えば、Pan Laboratories(Bothell,Wash.)から入手可能である。さらに、広範な種々の有機化合物および生体分子(ランダム化されたオリゴヌクレオチドの発現を含む)のランダム合成および指向型合成に、多数の手段が利用可能である。
あるいは、細菌、真菌、植物または動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、容易に生成され得る。分子ライブラリーの合成のための方法は、容易に利用可能である(例えば、DeWitt et al.,1993 ,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erb et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermann et al.,1994,J.Med.Chem.37:2678;Cho et al.,1993,Science 261:1303;Carell et al.,1994,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell et al.,1994,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallop et al.,1994,J.Med.Chem.37:1233を参照のこと)。さらに、天然または合成の化合物ライブラリーまたは化合物は、従来の科学的、物理的および生化学的な手段によって容易に改変され得(例えば、Blondelle et al.,1996,Trends in Biotech.14:60を参照のこと)、そして、コンビナトリアルライブラリーを生成するために使用され得る。別のアプローチでは、先に同定された薬理学的因子が、指向型またはランダムな化学修飾(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化)に供され得、そして、アナログが、HER調節活性についてスクリーニングされ得る。
コンビナトリアルライブラリーを生成するための多数の方法が当該分野で公知であり、これらとしては、生物学的ライブラリーを必要とするもの;空間的にアドレス可能な(spatially addressable)パラレル固相または液相ライブラリー;逆重畳を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ 1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法が挙げられる。生物学的ライブラリーアプローチは、ポリペプチドまたはペプチドのライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ポリペプチド、ペプチド、非ペプチド低重合体または化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(K.S.Lam,1997,Anticancer Drug Des.12:145)。
ライブラリーは、リガンドが共通の結合部位において競合的に結合するかどうかを決定するための、当該分野で一般に知られる方法によって、溶液中でスクリーニングされ得る。このような方法としては、以下が挙げられ得る:溶液中でのライブラリーのスクリーニング(例えば、Houghten,1992,Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ上でのライブラリーのスクリーニング(Lam,1991,Nature 354:82−84)、チップ上でのライブラリーのスクリーニング(Fodor,1993,Nature 364:555−556)、細菌もしくは芽胞におけるライブラリーのスクリーニング(Ladner、米国特許第5,223,409号)、プラスミドにおけるライブラリーのスクリーニング(Cull et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)、または、ファージ上でのライブラリーのスクリーニング(Scott and Smith,1990,Science 249:386−390;Devlin,1990,Science 249:404−406;Cwirla et al.,1990,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 97:6378−6382;Felici,1991,J.Mol.Biol.222:301−310;Ladner,上掲)。これらのライブラリーのうちのいずれか1つ(そのあらゆる試験分子を含む)が、HER分子の全体もしくは一部分(例えば、サブドメインI、II、IIIもしくはIVにおいて同定され、そして、配列番号54〜125のいずれかに示されるHERエピトープの任意の部分)と接触され、そして、HER ECDまたはその一部分との試験分子の相互作用が評価され得る。少なくとも1以上のエピトープ領域との相互作用を示す候補汎HER治療薬が同定され得る。このような汎HER治療薬はまた、少なくとも1以上の全長HER分子、またはそのECD部分(代表的には、少なくとも2つ、または少なくとも3つのHER分子)との相互作用を示す。
スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、HERの全体もしくは一部分、または、そのHER ECDの全体もしくは一部分(例えば、配列番号54〜125および405に示されるペプチドエピトープのうちの任意の1つ)、または試験分子は、標識に接合され得、この標識は、直接的もしくは間接的に検出可能な信号を提供し得る。種々の標識としては、放射性同位体、蛍光分子、化学発光分子、酵素、特異的結合分子、粒子(例えば、磁気粒子)などが挙げられる。特異的結合分子としては、ビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンとアンチジゴキシンなどのような対が挙げられる。特異的結合分子について、相補的なメンバーは、通常、公知の手順にしたがって検出をもたらす分子で標識される。種々の他の試薬がスクリーニングアッセイに含められ得る。これらとしては、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進し、そして/または、非特異的もしくは背景の相互作用を減少させるために使用される、塩、中性タンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などのような試薬が挙げられる。アッセイ効率を改善する試薬(例えば、プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビターまたは抗微生物剤)が使用され得る。成分は、任意の順序で加えられ、必須の結合を生じる。インキュベーションは、最適な活性を促進するあらゆる温度、代表的には4℃〜40℃の間の温度で行われる。インキュベーション時間は、最適な活性について選択されるが、迅速なハイスループットスクリーニングを促進するために最適化もされ得る。通常、0.1時間〜1時間の間で十分である。一般に、複数のアッセイ混合物が、異なる試験因子の濃度で平行して処理されて、これらの濃度に対する差次的な応答が得られる。代表的には、これらの濃度のうちの1つは、ネガティブコントロールとして機能する、すなわち、ゼロ濃度または検出レベル以下の濃度である。
一例では、ファージディスプレイライブラリーは、上述のように、HERレセプター分子またはその一部分に結合するリガンドについてスクリーニングされ得る。これらのライブラリーの構築および解析、ならびに、結合剤の生体パニングおよび選択の関する基本的な手順の詳細は、公開されている(例えば、WO 96/04557;Mandecki et al.,1997,Display Technologies−−Novel Targets and Strategies,P.Guttry(ed)、International Business Communications,Inc.Southborogh,Mass.,pp.231−254;Ravera et al.,1998,Oncogene 16:1993−1999;Scott and Smith,1990,Science 249:386−390);Grihalde et al.,1995,Gene 166:187−195;Chen et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1997−2001;Kay et al.,1993,Gene 128:59−65;Carcamo et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:11146−11151;Hoogenboom,1997,Trends Biotechnol.15:62−70;Rader and Barbas,1997,Curr.Opin.Biotechnol.8:503−508を参照のこと;これらは全て、本明細書中に参考として援用される)。
公知の薬学的に活性な化合物に対する模倣物の設計は、「リード」化合物を元にした薬物の開発のための公知のアプローチである。これは、活性化合物の合成が困難であるか、もしくは合成が高コストである場合、または、活性化合物が特定の投与方法に不適切である場合(例えば、ペプチドは、消化管においてプロテアーゼにより迅速に分解される傾向があるので、一般に、経口用組成物としては不適切な活性因子である)に望ましくあり得る。模倣物の設計、合成および試験は、一般に、標的特性についての分子の大規模スクリーニングを回避するために使用される。
所与の標的特性を持つ化合物からの模倣物の設計において一般に採用されるいくつかの工程がある。第一に、標的特性の決定に重大および/または重要な化合物の特定の部分が決定される。ペプチドの場合には、これは、ペプチド中のアミノ酸残基を体系的に変化させることによって(例えば、ターンにおける各残基を置換することによって)なされ得る。化合物の活性な領域を構成するこれらに部分または残基は、「ファルマコフォア」として知られる。
一度ファルマコフォアが見出されると、様々な供給源からのデータ(例えば、分光技術、X線回折データおよびNMR)を用いて、その物理的特性(例えば、立体化学、結合、サイズおよび/または電荷)にしたがって、その構造がモデリングされる。コンピュータ解析、類似性マッピング(原子間の結合ではなく、ファルマコフォアの電荷および/または容量をモデリングする)および他の技術が、このモデリングプロセスにおいて使用され得る。このアプローチの別法において、リガンドおよびその結合パートナーの三次元構造がモデリングされる。これは、リガンドおよび/または結合パートナーが結合の際に立体配座を変化させる場合に特に有用であり得、そのモデルが、模倣物の設計においてこのことを考慮に入れることを可能にする。次いで、鋳型分子が選択され、そして、ファルマコフォアを模倣する化学基が、鋳型上にグラフトされ得る。鋳型分子およびこの鋳型分子上にグラフトされる化学基は、模倣物が、合成が容易となり、薬理学的に受容可能であり、インビボで分解されず、そして、リード化合物の生物学的活性を保持するように、好都合に選択され得る。次いで、見出された模倣物が、標的特性を示す程度、または、それをどの程度阻害するかを確認するためにスクリーニングされる。次いで、さらなる最適化または修飾が行われ、インビボもしくは臨床試験のための1以上の最終的な模倣物にたどり着き得る。
上記の方法において同定された汎HER治療薬は、1以上のHER活性を機能的に調節するその能力について試験され得る。このような活性は、当業者に公知であり、そして、本明細書においてもGの節に記載されている。このようなアッセイの例としては、リガンド結合、細胞増殖、細胞リン酸化および複合体化/二量体化が挙げられる。したがって、
HER分子またはその一部分への高い親和性の結合に基づいて本明細書において候補として同定されたあらゆる候補汎HER治療薬は、その候補治療薬が、汎HER治療特性、すなわち、HER活性に対する阻害特性を有するかどうかを決定するためのさらなるスクリーニングアッセイにおいて試験され得る。例えば、ドメインII内の二量体化アームを標的とする汎HER治療薬は、HER分子がその分子自体と、または、他のHERファミリー分子と二量体化する能力を阻害することが最も望ましい。同様に、二量体化がない場合、このような候補治療薬はまた、適切なリガンドで刺激されたときに、細胞のリン酸化または細胞の増殖を誘導するHER分子の能力を阻害することが期待される。別の例では、例えば、ドメインIIとドメインIVを架橋することによって係留型を安定させるように機能する汎HER治療薬は、HER分子が活性な状態に遷移する能力を阻害する。したがって、このような候補汎HER治療薬は、リガンドの存在下で刺激された細胞の増殖または細胞のリン酸化によって評価される、二量体化または細胞の活性化を調節する(代表的には、阻害する)その能力について試験され得る。さらなる例では、候補の汎HER治療薬は、任意の1以上のHERファミリーへのリガンド(EGF、アンフィレグリン、TGF−α、またはニューレグリンのうち任意の1つ(すなわち、HRGβ)が挙げられるがこれらに限定されない)の結合についてアッセイすることによって、リガンド結合を阻害するその能力について試験され得る。同定された汎HER治療薬は、少なくとも2つのHERレセプターに対する上記HER媒介性の活性のうち1以上を調節(代表的には阻害)する。
K.実施例
以下の実施例は、例示の目的のみのために含まれ、そして、本発明の範囲を制限することは意図されない。
(実施例1 HER細胞外ドメインのクローニング)
HER分子の細胞外ドメインの全体もしくは一部分を含む種々のHER誘導体をクローニングし、そして、発現させた。
A.HER ECD誘導体のクローニング
HER1−621(配列番号12)を、以下のようにしてクローニングした:細胞外ドメイン(全長のHER1レセプターのアミノ酸配列のアミノ酸1〜621;Gail Clintonから入手;配列番号2)を、PCR増幅し、そして、KpnI−Xho1制限酵素部位を介してpcDNA3.1 Myc−Hisベクター(Invitrogen;また、pcDNA3.1 Myc−Hisの配列については、配列番号161もまた参照のこと)中にサブクローニングし、pcDNA/HER1−621−myc−Hisベクターを作製した。
HER3−621(配列番号26)を、以下のようにしてクローニングした:細胞外ドメイン(全長のHER3レセプターのアミノ酸配列のアミノ酸1〜621;配列番号6を参照のこと)を、PCR増幅し、そして、KpnI−XbaI制限酵素部位を介してpcDNA3.1 Myc−Hisベクター中にサブクローニングし、pcDNA/HER3−621−myc−Hisベクターを作製した。
さらなるECD誘導体をクローニングした。この名称と、それぞれをコードする核酸およびそのコードされるアミノ酸の識別番号を、以下の表に示す:
図2(A)〜2(D)は、これらのクローニングしたアイソフォームの各々と、そのそれぞれの同系レセプターとのアラインメントを示す。
B.タンパク質の発現と分泌
ヒト細胞においてHER ECD誘導体を発現させるために、ヒト胚性腎臓293T細胞を、6ウェルプレート中に2×10細胞/ウェルで撒き、そして、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)および10%胎仔ウシ血清(Invitrogen)中に維持した。LipofectAMINE 2000(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って用いて、細胞のトランスフェクションを行った。トランスフェクションの日に、5μgのプラスミドDNAを、0.5mlの無血清DMEM中で、15μlのLipofectAMINE 2000と混合した。この混合物を室温で20分間インキュベートし、その後、これを細胞に加えた。細胞を、COインキュベーター中、37℃にて48時間インキュベートした。HER ECD誘導体のタンパク質分泌を研究するために、馴化培地を、48時間後に回収した。馴化培地を、SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、その後、抗His抗体(Qiagen)を用いたイムノブロッティングによって解析した。抗体は、1:5000に希釈した。
培養ヒト細胞からの培養培地を、HER ECD誘導体の各々の分泌について評価した。HER ECD誘導体の分泌の比較を、以下の表10に示す。
(実施例2 HER−Fc融合調製物およびタンパク質の発現)
A.ヒトIgG1のFcフラグメントのクローニング
ヒトIgG1のFcフラグメント(配列番号167に示され、そして、配列番号163に示されるアミノ酸配列のアミノ酸Pro100〜Lys330に対応する)を、以下のフォワードプライマーおよびリバースプライマーのペアを用いて、一本鎖cDNAプールからPCR増幅した:
5’ CCC AAA TCT TGT GAC AAA ACT ACT C 3’(配列番号49)
5’ TTT ACC CGG GGA CAG GGA G 3’(配列番号50)。
PCRフラグメントをゲル精製し、pDriveクローニングベクター(Qiagen PCRクローニングキット、Qiagen,Valencai CA、配列番号160)中にサブクローニングし、pDrive/IgG1Fcを作製した。
B.FcのHER細胞外ドメインへの融合
HER1−621/Fc(配列番号40)を、以下のようにしてクローニングした:pcDNA/HER1−621−myc−Hisベクターを、XhoIおよびAgeIで制限酵素消化した。切断したプラスミドを、Qiagenゲル精製キット(Qiagen)を用いて精製した。ヒトIgG1 Fcフラグメントを、以下のプライマーを用いて、pDrive/IgG1FcベクターからPCR増幅した:
5’ATTA CTCGAG GGA CGA ATG GAC CCC AAA TCT TGT GAC AAA ACT C 3’(XhoI部位を含む、配列番号51)
5’ ACTT ACCGGT TTT ACC CGG GGA CAG GGA G 3’(AgeI部位を含む、配列番号52)。
PCR増幅したFcフラグメントを、XhoIおよびAgeIで消化し、そして、消化したpcDNA/HER1−621−myc−Hisベクター中にライゲーションした。
HER3−621/Fc(配列番号46)を、以下のようにしてクローニングした:pcDNA/HER3−621−myc−Hisベクターを、XbaIおよびAge1で制限酵素消化した。切断したプラスミドを、Qiagenゲル精製キットを用いて精製した。ヒトIgG1 Fcフラグメントを、以下のプライマーによって、pDrive/IgG1からPCR増幅した:
5’ ATTA TCTAGA GGA CGA ATG GAC CCC AAA TCT TGT GAC AAA ACT C(XbaI部位を含む、配列番号53)
5’ ACTT ACCGGT TTT ACC CGG GGA CAG GGA G 3’(AgeI部位を含む、配列番号52)。
PCR増幅したFcフラグメントを、XbaIおよびAgeIで消化し、そして、消化したpcDNA/HER3−621−myc−Hisベクター中にライゲーションした。
他の融合構築物を同様に調製した。結果として生じた融合構築物を全て、DNA配列決定により確認した。例示的なFc融合タンパク質構築物を、以下の表に示す:
C.タンパク質の発現と分泌
HER−Fcキメラタンパク質を作製するために、HER ECD Fc融合構築物(HER1−621/Fc;HER3−621/Fc;HER2−650/Fc;HER4−650/Fc)を、個々に、実施例1に記載したように、lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて293T細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に馴化培地を回収した。等量の馴化培地(20μl)を、変性タンパク質ゲル上で分離させた。ウェスタンブロットを抗His抗体(Qiagen)または抗Fc抗体(Sigma)でプローブして、タンパク質の発現と分布を確認した。HER ECD誘導体の分泌の比較を、以下の表12に示す。
HER1およびHER3の多量体を作製するために、HER Fc融合構築物(HER1−621/FcおよびHER3−621/Fc)の各々を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って用いて、293T細胞中に同時にトランスフェクトした。各トランスフェクションからの馴化培地を、トランスフェクションから48時間後に回収した。等量の馴化培地(20μl)を変性タンパク質ゲル上で分離させた。ウェスタンブロットを抗His抗体(Qiagen)または抗Fc抗体(Sigma)でプローブして、タンパク質の発現と分布を確認した。
RB200h(HFD 100/300Hとも呼ばれる(Fcドメインを介して全長HER3 ECDに連結された全長HER1 ECD))を発現させるために、Her1およびHer3の構築物を、1:3(Her1:Her3)の比で同時にトランスフェクトした。TTから5時間後に、培地を、DMEM+1% FBS(低IgG)で置き換える。最初の馴化培地を、TTから4日後に回収し、その後、補給し、二回目の回収を行った。
前もって無血清培地(FreeStyle 293)に適合させたCHO細胞およびHEK 293T細胞を用いて、懸濁細胞タンパク質の発現(suspension cell protein expression)もまた行った。HEK 293T細胞を、Freestyle 293培地(Invitrogen)を用いて、1×10細胞/mlでWaveBioReactorsに撒いた。次の日、HER ECD構築物(HER1−621/FcおよびHER3−621/Fc)を、25kDの直鎖状PEI(Polysciences):DNAを1:2の比で用いて、293T細胞中にTT処理した。RB200hのヘテロ二量体を発現させるために、Her1およびHer3の構築物を、1:3(Her1:Her3)の比で同時にトランスフェクトした。TTから5時間後に、培地の容量を倍にした。生存細胞とタンパク質の産生を毎日監視した。TTから6日後に馴化培地を回収した。
(実施例3 HER(HF)誘導体およびHER−Fc(HFD)分子の精製)
末尾に「T」を沿えたHF分子は全て、金属アフィニティ精製のために、C末端に6−ヒスチジンテイルを含む。これらの分子を全て、Ni−アフィニティ金属クロマトグラフィーを用いて精製し、その後、分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。第一に、分泌されたHF分子を含む馴化培地(CM)を、遠心分離(30分、10,000rpm)によって清澄にし、その後、フィルタ処理した(0.3ミクロン)。清澄にしたCMを、次いで、Pall接線流濃縮機(Pall Corporation,Ann Arbor,MI)を用いて4倍に濃縮し、最終的なCMの容量を約400mlとした。
10×Ni−NTAローディング緩衝液を加えて、CMを50mM NaPO(pH8.0)および350mM NaClにした。次いで、この溶液を、予め緩衝液A(緩衝液A:50mM NaPO(pH8)、350mM NaCl)で平衡化した1.5mlのニッケルアフィニティ金属クロマトグラフィーカラム(Ni−NTA Agarose,Qiagen,Germany)上に、0.6ml/分の流速でロードした。ローディング後に、280nmにおける吸光度が非結合のタンパク質が残っていないことを示すようになるまで、カラムを緩衝液Aで洗浄した。次いで、HF分子を、無勾配の緩衝液A+150mMイミダゾールによって溶出した。HF分子を含むピーク画分をプールして1mlまで濃縮し、次いで、分取SECカラム(Superose 12 10/300 GL、Amersham Biosciences,Sweden)上にロードした。HF単量体を含むピーク画分を、ホースラディッシュペルオキシダーゼを結合した抗His6−Tag抗体(HyTest Ltd.,Turku,Finland)を用いたイムノブロッティングによって同定した。HF分子のアミノ酸配列決定を行って、各分子を確認した。
HFD100/HFD300Tヘテロ二量体は、HFD100およびHFD300TのFc融合物である。この分子を生成するための一過的なトランスフェクションはまた、HFD100およびHFD300Tと指定されるホモ二量体も生成する。HFD300Tホモ二量体およびHFD100/HFD300Tヘテロ二量体を、Ni−NTAアフィニティクロマトグラフィー(Ni−NTA Agarose,Qiagen,Germany)によって精製した。というのも、HF300Tは、C末端に6−ヒスチジンタグを含むからである。馴化培地(CM)を、清澄にし、そして、上述のように濃縮した。得られたCMを、1.5mlのプロテインAカラム(nProteinA Sepharose 4 Fast Flow,Amersham Biosciences,Sweden)上にロードし、そして、ImmunoPure IgG溶出緩衝液(Pierce,Rockford,IL)で溶出した。溶出の際に、50μlの1M tris−HCl緩衝液(pH8.0)を加えて、画分を中和した。タンパク質を含む画分をプールし、そして、溶液を、50mM NaPO(pH8.0)および350mM NaClにした。このプールを、予め緩衝液Aで平衡化した1.5mlのニッケルアフィニティ金属クロマトグラフィーカラム(Ni−NTA Agarose,Qiagen,Germany)上にロードした。HFD100ホモ二量体を含むフロースルー(flow−through)を回収した。緩衝液Aで洗浄した後、HFD300Tホモ二量体およびHFD100/HFD300Tヘテロ二量体タンパク質を、無勾配の緩衝液A+150mMイミダゾールを用いて溶出した。
3mlのCNBr活性化Sepharose 4 Fast Flowビーズ(Amersham Biosciences,Finland)を用いて、10mgのEGF(R&D Systems,Minneapolis,MN)をセファロース固体支持体に共有結合することによって、10mlのEGFアフィニティカラムを生成した。Ni−NTA溶出物からのピーク画分をプールし、そして、直ちに、EGFアフィニティカラム上でクロマトグラフィーにより分離した。HFD300Tに対応するピークを、フロースルーに回収した。HFD100/HFD300Tヘテロ二量体をIgG溶出緩衝液で溶出し、そして、タンパク質を含む画分をプールし、分取SECカラム(Superose 12 10/300 GL,Amersham Biosciences,Sweden)を用いてクロマトグラフィーにより分離した。この工程は、EGFアフィニティカラムの工程の間に溶出されるあらゆるEGFを排除する。精製HFD100/300Tを含む画分を、50μl 1M tris(pH8.0)で中和し、緩衝液をPBSに交換し、そして、30kDカットオフAmiconスピン濾過カラム(Millipore,Billerica,MA)で濃縮した。
実施例2のトランスフェクトした細胞から馴化培地をとり、12,000×gにて4℃で15分間遠心分離して清澄にし、その後、3μmのVersapore 3000Tフィルタ(Pall Corporation,East Hills,NY)を通して濾過することによって、RB600を精製した。清澄にした馴化培地を、30 kDaカットオフUltrasette Screen Channel接線流濾過デバイス(Pall Corporation,East Hills,NY)による限外濾過により10倍に濃縮し、そして、これをMabSelect SuReアフィニティカラム(GE Healthcare Biosciences AB,Sweden)にアプライした。このカラムを、0.1%(v/v) TX−114を含むPBSで徹底的に洗浄し、そして、IgG溶出緩衝液(Pierce Biotechnology Inc.,Rockville,IL)で溶出した。溶出した画分を、直ちに、1M Tris−HCLでpH8.0に中和した。
この段階で、MabSelect SuReアフィニティカラムから溶出したFcを含むタンパク質は、RB200hヘテロ二量体、および、HFD100とHFD300hとのホモ二量体から構成される。このRB200hヘテロ二量体、および、HFD100とHFD300hとのホモ二量体の混合物は、RB600と呼ばれる。このホモ二量体/へテロ二量体混合物を、PBSに対して透析した後の混合物(RB600)として直接使用するか、または、RB200h(Fcドメインを介して全長HER3 ECDに連結された全長HER1 ECD;HFD1000/HFD300Hとも呼ばれる)のさらなる精製のための出発物質として使用した。RB200hの構造は図4に示す。
純度解析
分析用逆相HPLCを用いて、タンパク質の純度を決定した。タンパク質の逆相HPLCを、AKTA:Purifier System(GE−Healthcare)に取り付けたKromasil製の分析用C4カラム(150×46mm;5mm;100 A)を用いて行った。緩衝液Aは、水中0.1%(v/v)のTFAから構成され、そして、緩衝液Bは、25%の2−プロパノール;75%のアセトニトリル;0.1%(v/v)のTFAを含んだ。代表的には、50〜100mgのタンパク質をロードし、そして、5〜95%の緩衝液Bの線形勾配を用いてサンプルを溶出した(流速=0.5mL/分;勾配=6%/分)。
この系における条件下では、2つのerbB3鎖を含むホモ二量体がまず溶出し、その後、ヘテロ二量体(RB200h)が、次いで、erbB1ホモ二量体が溶出する。ピークの割り当ては、以下の2つのアプローチを用いて行った。第一に、単独のトランスフェクションを行った細胞から精製した鎖(1つのみのポリペプチド鎖をコードするもの)を用いて、ホモ二量体のピークを同定した(図5を参照のこと)。第二に、各ピークからの画分をN末端配列決定(Stanford:PAN施設)に付託し、最初の割り当てを確認した(データ示さず)。
精製スキームは、プロテインAカラム、Ni−セファロースカラムおよびEGFR−Affybodyカラムの組合せを用いた。SDS PAGEおよび逆相HPLCにより>90%の純度であったものとして、精製RB200hを判断した。分析用の逆相HPLCクロマトグラムにより示されるように、RB200h(Fcドメインを介して全長HER3 ECDに連結された全長HER1 ECD)は純粋であり、そして、HFD 100およびHFD 300の汚染は、10%以下であった(図5)。
(実施例4 HER ECDまたはHER−Fcのリガンドへの結合)
A.HER ECD誘導体の上皮増殖因子(EGF)への結合
HER1(HER1)、HER2、HER3およびHER4の細胞外ドメインを、ヒトFc(実施例1および2を参照のこと)に融合して、キメラポリペプチドを生成した。HER ECD(HER−T)またはHER−Fcは、対応するベクター(上記の実施例1および2を参照のこと)でトランスフェクトした細胞からの馴化培地から得た。対応するcDNA構築物で一過的にトランスフェクトした293T細胞から上清を回収した。HER1−621/Fc、HER2−650/Fc、HER3−621/Fc、HER4−650/Fc、HER1−501/Fc、HER1−621(T)、HER1−501(T)を含む上清への、放射標識EGF(Amersham)の結合を、以下のようにして決定した:結合は、pH7.5のHepes緩衝液中、室温にて2時間、1000倍過剰の冷EGFを伴ってか、または伴わずに、20μlの上清と5nMの125I−EGFとを混合することによって行った。結合アッセイの終わりにBS(化学的な架橋剤(Pierce))を加えて、結合した分子を架橋させた。サンプルを、SDS−PAGEゲル上で分離し、そして、検出のためにフィルムに感光させた。推定されるHER分子への125Iの結合を、等モル濃度に対して基準化した。結果は、125I−EGFがHER1誘導体にのみ結合し、そして、HER2−650/Fc(HFD200)、HER3−650/Fc(HFD300)またはHER4−650/Fc(HDD400)に結合した125I−EGFは検出されなかったことを示す。125I−EGFのHER1−621/Fc(HFD100)への結合は、過剰量の冷EGFにより完全に競合された。
抗HER1抗体(R&D Systems)を用いたウェスタンブロッティングと、その後のデンシトメトリーを用いて、相対的なHER1誘導体レベルを推定し、次いで、各タンパク質に対するリガンド結合を基準化した。結果は、HER1−621/Fc(HFD100)が、HER1−501/Fc(HFD110)およびHER1−501(HF110)よりも高く、そして、非Fc全長HER1 ECD(HER1−621;HF100)よりもかなり高い125I−EGFに対する結合親和性を有することを示す。Fc融合物が、発現の際に二量体を形成することが、以下に示される。したがって、これらのリガンド結合は、Fc部分により媒介される融合/二量体化が、HER1の全長ECDの高い親和性の結合を回復し、これは、HER1−501単量体分子の親和性を上回ることを示す。
さらなる実験が、HFD100(HER−621/Fc)およびHFD110(HER1−501/Fc)が、HF100と比較して125I−EGFリガンドへの結合の実質的な増加を示す一方で、HF110は、125I−EGFに対して検出可能な結合を示さなかったことを実証する。さらに、データは、予想通り、HER1/HER3(HFD100/HFD300)ヘテロ二量体が、実質的にHF100およびHF110よりも多いが、HFD100ホモ二量体もしくはHFD110ホモ二量体よりも少なく125I−EGFに結合したことを実証する。
B.HER ECD誘導体のヘレグリン(HRG)への結合
HER ECD誘導体のヘレグリンへの結合は、上記Aパートに記載したEGFへの結合について記載されたものと同様のアッセイを用いて行った。簡単に述べると、HF300(HER3−621)、HF310(HER3−501)、HFD300(HER3−621/Fc)、HFD310(HER3−501/Fc);および精製HFD110/HFD310ヘテロ多量体(IgG1のFcフラグメントを介して連結されたHF110およびHF310の構築物)をコードするcDNA構築物で一過的にトランスフェクトした293T細胞から上清を回収した。結合は、20μlのHepes緩衝液(pH7.5)中、室温にて2時間、増加する量の上清(2.5μl〜20μlの上清)と5nMの125I−HRGとを混合することによって行った。結合アッセイの終わりに1mMのBS架橋剤を加えて、結合した分子を架橋させた。結合反応物をSDS−PAGEゲル上で分離させた。タンパク質ゲルを乾燥させ、そして、2時間および6時間、フィルムに感光させた。
結果は、試験した全ての誘導体がある程度HRGに結合したが、その程度は多様なレベルであったことを示す。試験した全ての誘導体について、結合は、用量依存的であり、20μlの上清において最大の結合が観察された。並行して行った、抗HER3抗体(R&D Systems)を用いたウェスタンブロットと、その後のデンシトメトリーを用いて、相対的なHER3誘導体レベルを推定し、次いで、結合部位の平均数(これは、抗HER3結合部位と等価である)に基づいて各タンパク質に対するリガンド結合を基準化した。このような基準化の後、結果は、HRGが、HF300分子に対して最低の結合を示し、これは、試験した他の誘導体と比較して、わずか約10%の結合であったことを示した。HF310、HFD300、HFD310およびHFD110/HFD310の各々は、基準化の後、HRGに対して等価な結合を示した。
C.HER誘導体の上皮増殖因子(EGF)およびヘレグリン(HRG)への結合の競合的解析
125I−EGF(HER1に対する天然のリガンド)および125I−HRG(HER3およびHER4に対する天然のリガンド)へのその結合について、種々のHER誘導体を試験することによって、種々のHER誘導体の特異性を比較した。放射標識したEGFのHER1−621/Fc、HER2−650/Fc、HER3−621/Fc、HER4−650/Fcへの結合を、上述のようにして決定した。125Iで放射標識したHRGのHER1−621/Fc、HER2−650/Fc、HER3−621/Fc、HER4−650/Fcへの結合は、125I−EGFへの結合について記載したものと同じ条件を用いて決定した。ウェスタンブロットを、抗His抗体でプローブして、タンパク質のレベルを比較した。結果は、放射標識したEGFが、HER1−621/Fcにのみ結合し、そして、試験した他の分子には結合しないことを示す。放射標識したHRGは、HER3−621/Fc分子およびHER4−650/Fc分子にのみ結合する。
HER1−621/FcおよびHER3−621/Fc(実施例2を参照のこと)、またはHER1−501/FcおよびHER3−501/Fcを用いて同時トランスフェクションを行った細胞からの馴化培地を、125I−EGFおよび125I−HRGへの結合について試験した。データは、HER1−621/Fc:HER3−621/Fcを用いて同時トランスフェクションを行った細胞は、放射標識したEGFと、HRGに結合するタンパク質を生成することを示す。
ウェスタンブロットを、抗HER1抗体および抗HER3抗体(R&D Systems)でプローブして、タンパク質のレベルを比較した。放射標識したリガンドの結合は、同時トランスフェクションを行った細胞によって発現されるタンパク質(HER1/HER1ホモ二量体、HER1/HER3ヘテロ二量体およびHER3/HER3ホモ二量体を含む)の量に比例していた。
HER1−621/Fcホモ二量体(HFD100と呼ばれる)が125I−EGFに結合する一方で、HER3−621/Fcホモ二量体(HFD300)およびHER4−625/Fc(HFD400)は、125I−HRG1β1に結合する(図6a)。HER2−628/Fc(HFD200)は、いかなる検出可能な125I−EGFもしくは125I−HRG1β1への結合も示さなかった(図6a)。データは、HFD100、HFD200、HFD300およびHFD400が、EGFおよびHRG1β1に対するその特異性を保持することを示す(図6a):レーン1:HFD100=HER1−621/Fc、レーン2:HFD200=HER2−628/Fc、レーン3:HFD300=HER3−621/Fc、そしてレーン4:HFD400=HER4−625/Fc。並行して行った研究において、これらのリガンドの架橋は、そのそれぞれの非標識のリガンドによって競合され得、これらの結合が特異的であることが示唆された。
汎HERリガンド結合するハーモジュリンを作製するために、HER1−621/FcとHER3−621/Fcのキメラ構築物(RB200hと称される)を作製した。この分子(RB200h)を、125I−EGFもしくは125I−HRG1β1を用いた架橋研究によって、HER1またはHER3リガンドに結合するその能力について試験した。データは、RB200hが、EGFおよびHRG1β1の両方に結合することを示す(図6b)。これらの知見は、キメラハーモジュリン(RB200h)におけるHER1およびHER3が、そのそれぞれのリガンドに結合する能力を保持することを明らかにし、そして、RB200hを汎HERリガンド結合剤の候補として示唆した。
(実施例5 HER細胞外ドメインおよびHER/Fc分子の二量体構造および低重合体構造の形成)
活性型の形態において、HER分子は、その二量体化アームを、他の細胞表面レセプターとの二量体の形成を促進するような方向で呈する。HER誘導体のFcドメインへの結合は、活性型レセプターを模倣する「背中合わせの」立体配座をとるものと予測される。HER誘導体および/またはHER/Fcキメラポリペプチドが多量体を形成することを示すために、HERファミリーの細胞外ドメインポリペプチドに対して分子サイズ排除解析を行った。この方法論は、レセプターの外部ドメインがホモ二量体もしくはヘテロ二量体のいずれかとして会合する能力の簡略化された解析を可能にする。分子サイズ排除解析を行うために、溶出した分子を参照標準に対して比較した。以下の表13は、使用した分子量標準とその溶出容量とを示す。より少ない容量が、カラムの保持容量内で溶出するが、分子が大きくなるにつれ、その増加する分子量に従って、溶出する容量はより少なくなる。
分子サイズ排除解析は、PBSで平衡化したA TSK3000サイズ排除カラム(Tosoh Bioscience,Montgomeryville,PA)を、0.7ml/分の流速で用いて行った。カラムを校正するために、ゲル濾過標準(BioRad,Hercules,CA)を用いた。その溶出容量と分子量とをプロットした。PBS中の30μgの各未知分子を注射することによって、各未知分子について溶出容量を決定し、その見かけの分子量を計算した。注射間でカラム全体の流れを維持した。分子量標準に関する標準曲線を用いて分子量を決定した。表14は、この結果を要約する:
データは、HERファミリーの細胞外ドメインのいくつかが多量体構造を形成することを示す。化合物は、リガンドを捕捉し、そして、「モック」二量体を形成して、膜貫通型レセプターの二量体化を妨害し、そして、それによって、膜貫通型タンパク質に結合して、膜貫通型タンパク質の活性と干渉し得る。
HER1−501は、112,170ダルトンの見かけ上の分子量を示し、これは、その60,000ダルトンという予測される分子量よりも大きい;HER2−595は、162,000ダルトンの見かけ上の分子量を示すのに対し、その予測される分子量は、67,000ダルトンであった。HER2−595(HF210T)と比較して、ドメインIV内のモジュール2〜5に跨るHER2の細胞外ドメインの一セグメント(CSQFLRGQECVEECRVLQGLPREYVNARHCLPCHPECQPQNGSVTCFGPEADQCVACAHYKDPPF、配列番号16のアミノ酸508〜573に対応)を欠くHER2−530(HF220T)は、二量体構造を形成しない。この後者の結果は、この欠いたセグメント(またはこのセグメントの一部分)が二量体化に重要であることを示す。この2つのポリペプチド配列中の相違は、以下に下線が付され、そして太字にされている。影を付けた配列は使用したタグであり、そして、これは、両方の分子について同じものである。タグは、両方の分子に共通であるので、これらは、観察される二量体化に対する影響において役割は担わない。
データはまた、HER−Fcタンパク質がまた高次の低重合体を形成することを示す。HER1−621/FcおよびHER3−621/Fcの各々が、180,000ダルトンの予測分子量を有し、そして、サイズ排除クロマトグラフィーによって観察された分子量は、それぞれ、970,000ダルトンおよび843,000ダルトンより大きかった。これらのアッセイは、リガンドの非存在下で行ったので、この結果はさらに、二量体化(またはより高次の)構造を生成するためにリガンドが必要とされないことを実証する。
(実施例6 HERレセプターの増殖およびリン酸化:HER誘導体による阻害)
A.細胞株におけるHERの発現プロフィール
HERの発現レベルを、蛍光細胞分析分離(FACS)によって解析して、種々の細胞株の表面上のレセプターおよびその相対量を同定した。選択した細胞を、レセプター特異的な抗体と接触させ、そして、細胞がレセプター特異的な抗体と結合した際の蛍光強度を評価した。
細胞を5nM EDTAを用いて組織培養プレートから浮かせ、そして、1%のBSAを含むPBS(PBS.BSA)中に再懸濁した。懸濁物中の細胞を、それぞれのチューブ内で、HER1、HER2、HER3およびHER4の各々に対するモノクローナル抗体と共に、4℃にて1時間インキュベートした。一次抗体とのインキュベーションの後、細胞を冷PBS.BSAで一度洗浄した。次いで、蛍光色素PE(Jackson)でタグを付けたマウスまたはヒトのIgG(一次抗体の起源に依存)に対する二次抗体を追加した。細胞を4℃にて30分間インキュベートし、そして、PBS.BSAで2回洗浄した。Cytofix(BD−554655)を加えて細胞を固定し、そして、暗所にて4℃に維持した。Cell Sorter装置(BD FACSCalibur Flow Cytometer)を用いてFACSを行った。10,000細胞の各細胞株を解析した。各細胞株における各HERレセプターの平均蛍光強度(MFI)を、BD CellQuest Proソフトウェアを用いてMFIによって測定した。スコア付け:++++ >1000のMFI、+++ 100〜1000のMFI、++ 50〜100のMFI、+ <50のMFIであるが、バックグラウンドよりも高いシグナルを有するもの。
表15は、種々の細胞株におけるレセプターのHERファミリーの発現プロフィールの結果を示す。
B.細胞増殖アッセイ
細胞株MCF7、ZR75−1、ME180を、ATCCから購入し、そして、10%のFBS DMEM中に維持した。細胞を、1% FBSを補充したDMEM中、96ウェルプレートに1ウェルあたり2000細胞で撒いた。撒いてから2〜3時間後に、増加する濃度の候補HER ECD誘導体を、リガンド(EGFまたはHRGβ)の存在下で、この培養物に加えた。細胞を、37℃にて約72時間インキュベートした。細胞の相対密度を、アラマーブルー法により測定した。アラマーブルー(Sigma)は、4μMの濃度でPBS中に調製し、これを、培養培地の1/10容量(最終濃度0.4μM)でマイクロプレートに加え、そして、プレートをインキュベーターに戻した。37℃にて2〜4時間後、蛍光を、Ex.=530nm/Em.=590nmにて読み取った。
結果
細胞増殖のデータ:HFD100/300調製物は、未知の割合のHFD100/100分子、HFD300/300分子およびHFD100/300分子のプールであった。それにも関わらず、データは、ハイブリッド物質が阻害を行う能力を実証した。HFD100/300は、HRGβにより刺激されたME180の増殖を阻害した(5nM)。データは、約3nMのHFD100/300において80%を上回る阻害を示し、EGFにより刺激されたHER1に対しても同様であった。HF310Tは、HRGβによって刺激されたMCF7の増殖を阻害した(1μMで約95%)。
C.ELISAベースのHERレセプターのリン酸化アッセイ
HERレセプターのリン酸化を、ELISAベースのHERレセプターリン酸化アッセイにおいて評価した。種々の細胞(A431、MCF7、SK−BR3、SK−OV3、MCF7/HER2)を、無血清培地において約24時間、血清欠乏状態にさせた。次いで、細胞を、増加する濃度の候補HER ECD誘導体(以下を参照のこと)で、37℃にて30分間処理し、次いで、リガンド(EGF、3nMおよび/またはHRGβ、5nM)を加えて、10分間インキュベーションした。処理後、細胞をPBSで一度洗浄し、そして、100μlの1×Cell Lysis Buffer(Cell Signaling)と、プロテアーゼインヒビターおよびホスファターゼインヒビター(Protease Inhibitor Cocktail SetおよびPhosphatase Inhibitor Set,Calbiochem)を加えて、細胞を溶解した。
細胞は、氷上で15分間溶解し、そして、細胞溶解物を、製造業者によって推奨される濃度(0.4〜4μg/ml)かつ条件(PBS中、室温で一晩)によって、それぞれのレセプター特異的捕捉抗体(抗体は、R&D Systemより購入した)で予めコーティングした96ウェルプレートにアプライした。細胞溶解物を、室温で3時間、捕捉Abと共にインキュベートした。プレートを、PBST緩衝液で3回洗浄した。HRPを結合した抗ホスホチロシン抗体クローン4G10(Upstate)を1%のBSA.PBS中1:1000に希釈して、このプレートに100μl/ウェルで1時間加えて、チロシンがリン酸化されたHERレセプターを特異的に検出した。PBSTで3回洗浄した後に、100μlの基質溶液(TMB,Sigma)を加えてプレートを発色させ、そして、50μlのSDS停止溶液によって発色を停止させた。650nmのマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,VERSAmax)によって光学密度を決定した。
i.HER1−501
HER1−501の、HER1およびHER2のリン酸化を阻害する能力を、A431細胞およびMCF7細胞において試験した。HER1−501の増加する濃度(最大濃度600nMまで)を、EGFの存在下で細胞に加えた。予想通りに、MCF7細胞においてはHER1のリン酸化を観察されなかった。対照的に、HER1は、A431細胞においてHER1のリン酸化を用量依存的に阻害し、IC50は98nMであった。600nMのHER1−501で達成されたHER1リン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約60%であった。HER1−501はまた、MCF7細胞およびA431細胞においてHER2のリン酸化を用量依存的に阻害し、IC50はそれぞれ、18nMおよび42nMであった。試験した両方の細胞株において、600nMのHER1−501において達成されたHER2リン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約50%であった。
ii.HER2−595およびHER2−530
HER2−595およびHER2−530の、HER2およびHER3のリン酸化を阻害する能力を、MCF7/HER2細胞において試験した。HER2−595またはHER2−530の増加する濃度(0nM、7.4nM、22.2nM、66.7nM、200nMおよび600nM)を、HRGの存在下で細胞に加えた。データは、HER2−595およびHER2−530が、HER2およびHER3のリン酸化を用量依存的に阻害し;HER2−595がより強力であったことを示す。MCF7/HER2細胞において600nMのHER2−595で達成されたHER2およびHER3のリン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約55%であったのに対し、600nMのHER2−530で達成された最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約35%であった。
iii.HER3−621およびHER3−500
HER3−621およびHER3−500の、HER3のリン酸化を阻害する能力を、MCF7細胞において試験した。HER3−621およびHER3−500の増加する濃度(最大濃度600nMまで)を、HRGの存在下で細胞に加えた。データは、HER3−621およびHER3−500が、HER3のリン酸化を用量依存的に阻害したが;HER3−500がより強力であったことを示す。HER3−500のIC50は39nMであり、HER3−621のIC50は48nMであった。MCF7細胞において600nMのHER3−500で達成されたHER3のリン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約78%であったのに対し、600nMのHER3−621で達成された最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約38%であった。
HER3−621およびHER3−500の、HER1およびHER3のリン酸化を阻害する能力を、SK−BR3細胞において試験した。HER3−621およびHER3−500の増加する濃度(最大濃度600nMまで)を、HRGの存在下で細胞に加えた。HER1のリン酸化は、HER3−500によって刺激されたSK−BR3細胞において観察されなかった。MCF7細胞と同様に、HER3−621およびHER3−500が、SK−BR3細胞において、HER3のリン酸化を用量依存的に阻害したが;HER3−500がより強力であった。600nMのHER3−500で達成されたSK−BR3細胞におけるHER3のリン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約75%であったのに対し、600nMのHER3−621で達成された最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約55%であった。
iv.HER1−621/Fc
HER1−621/Fcの、HER1のリン酸化を阻害する能力を、A431細胞において試験した。HER1−621/Fcの増加する濃度(0.8nM〜600nM)を、EGFの存在下で細胞に加えた。HER1−621/Fcは、A431細胞においてHER1のリン酸化を用量依存的に阻害し、IC50は8.8nMであった。600nMにおいて、HER1−621/Fcは、HER1リン酸化のほぼ完全な阻害を示し、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約99%のリン酸化を阻害した。
v.HER3−621/Fc
HER3−621/Fcの、HER3のリン酸化を阻害する能力を、MCF7細胞において試験した。HER3−621/Fcの増加する濃度(0.8nM〜600nM)を、HRGの存在下で細胞に加えた。HER3−621/Fcは、MCF7細胞においてHER3のリン酸化を用量依存的に阻害した。600nMのHER3−621/Fcで達成されたMCF7細胞におけるHER3リン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約70%であった。
vi.HER1−621/Fc:HER3−621/Fcキメラ
HER1−621/Fc:HER3−621/Fcキメラの、HER1のリン酸化を阻害する能力を、A431細胞において試験した。HER1−621/FcおよびHer3−621/Fcを用いて同時トランスフェクションを行った細胞からの馴化培地上清を、段階的に2倍に希釈し、そして、EGFの存在下で細胞に加えた。希釈していない上清中の組換えタンパク質は、約2μg/ml(約10nM)である。HER ECD/Fcタンパク質でトランスフェクトしていない細胞からの上清をコントロールとして用いた。結果は、コントロールの上清が、HER1リン酸化の阻害をほとんど〜全く示さず、希釈していない上清では、わずかな阻害(10%未満)のみが観察されたことを示す。対照的に、HER1−621/Fc:HER3−621/Fcキメラを含む上清は、EGFにより刺激されたA431細胞においてHER1のリン酸化を用量依存的に阻害した。HER1−621/Fc:HER3−621/Fcキメラを含む希釈していない上清によって達成されたA431細胞におけるHERリン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約55%であった。
D.精製HFD100/300 ECD多量体によるHERレセプターの増殖およびリン酸化の阻害
1.リン酸化
HERレセプターのリン酸化を、上記Cの節に記載されるようにして、精製HFD100/300Hにより評価した。精製HFD100/300H(Hisエピトープタグを持つ、HER1−621/FcおよびHER3−621/Fcを含むECD分子)の、HER1およびHER3のリン酸化を阻害する能力を、SK−BR3細胞において試験した。EGFによって誘導されるHER1リン酸化の影響を評価するために、増加する濃度のHFD100/300H(0.3nM〜600nM)を、EGFの存在下で細胞に加えた。結果は、HFD100/300H分子が、EGFによって刺激されたSK−BR3細胞のHER1リン酸化を用量依存的に阻害したことを示した。600nMのHFD100/300Hで達成されたSK−BR3細胞におけるHER1リン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約60%であった。HRGβによって誘導されるHER3リン酸化の影響を評価するために、増加する濃度のHFD100/300H(0.3nM〜600nM)を、HRGβの存在下で細胞に加えた。結果は、HFD100/300H分子が、約67nMまでの濃度のHRGβによって刺激されたSK−BR3細胞のHER3リン酸化を用量依存的に阻害し、阻害のレベルは、約67nMの濃度においてプラトーに達したことを示した。67nM〜600nMの範囲の濃度のHFD100/300Hで達成されたSK−BR3細胞におけるHER3リン酸化の最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約65%であった。
EGFまたはHRGβのいずれかによって刺激されたSK−BR3細胞におけるHER1、HER2およびHER3のリン酸化に対するHFD100/300Hの影響を、HER2の二量体化ドメインを標的とするモノクローナル抗体である2C4(petuzumabとも呼ばれる)と比較した。結果は、HFD100/300H(600nM)が、リガンドによって刺激されたSK−BR3細胞におけるHER1(約60%)、HER2(約65%)およびHER3(約55%)のリン酸化を阻害したこをと示す。2C4モノクローナル抗体は、HER2(約35%)、HER3(約65%)のリン酸化を阻害したが、HER1リン酸化の検出可能な阻害を示さなかった。したがって、2C4抗体と比べて、HFD100/300Hは、HER1、HER2およびHER3のリン酸化を阻害し得る汎HERインヒビターとなる。
2.増殖
HERリガンドにより刺激された細胞の増殖に対する精製HFD100/300Hの影響を、上記Bの節に記載したようにして評価した。結果は、精製HFD100/300(プロテインAで精製)が、EGF(3nM)またはHRG(5nM)のいずれかによって刺激されたHT−29細胞の増殖を用量依存性の様式で阻害したことを示す。約200nMのHFD100/300で達成された増殖の最大の阻害は、試験した両方のリガンドの存在下で、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約55%であった。リガンドにより刺激されたZR−75−1細胞の増殖に対する精製HFD100/300H(Hisタグを含む)の影響もまた試験した。結果は、精製HFD100/300Hは、HRGにより刺激されたZR−75−1細胞の増殖を用量依存性の様式で阻害し、約80%の最大の阻害は、約600nMにおいて観察されたことを示す。HFD100/300Hがまた、約1nMまでのEGFによって刺激されたZR−75−1細胞の増殖を用量依存的に阻害し、この観察される阻害は、約600nMまでの濃度のHFD100/300Hでプラトーに達した。約1nMの精製HFD100/300Hで観察された最大の阻害は、このタンパク質が存在しない場合と比較して、約80%であった。
E.HERのリン酸化に対するHER ECD誘導体の阻害作用のまとめ
種々の例示的なHER ECD分子を、HERのリン酸化を阻害するその能力について試験した。結果のまとめを表16に示す。阻害作用の結果が示されない場合、実験は行わなかった。結果は、HER1−621/Fc:HER3−621/Fcキメラが、汎HER候補分子であることを示す。
(実施例7 HER1、HER3、HER4のリガンド結合表面とHER2の類似配列の同定)
HERファミリーの4つ全てのメンバーについてのおおよそのリガンド結合領域の同定を決定した。これらの領域は、TGF−α(一次元のPDBタンパク質データバンクである1MOX;例えば、Garrett et al.(2002)Cell,110:763−773を参照のこと)と複合体化したヒトEGFR(残基1〜501)の結晶構造と、HER1(配列番号2)、HER2(配列番号4)、HER3(配列番号6)およびHER4(配列番号8)の成熟な形態(すなわち、参照の配列番号と比較して、シグナルペプチドを欠くもの)での並列アラインメントとによって決定した。リガンド結合に重要なドメインI(DI)およびドメインIII(DIII)におけるアミノ酸の同定を表17に示す。番号付けは、HERタンパク質の成熟な形態に従う。これらのアミノ酸配列は、それぞれのHERタンパク質に対するリガンドの結合と干渉するように標的化され得る。
(実施例8 HERファミリー分子のサブドメインII(DII)およびサブドメインIV(DIV)中の標的ポリペプチドの同定)
この実施例において、HER3およびHER1、HER2およびHER4からの連続した領域を、(例えば、ファージディスプレイにおいて使用するための)ペプチド結合のための基質として、または、多クローン性抗体を作製するための免疫源として使用するために同定し、HERファミリーのサブドメインII(DII)またはサブドメインIV(DIV)を標的とし得る分子を同定した。このような分子は、二量体化ドメインを標的とし、そして/または、係留に関与するDIIおよびDIVの配列と相互作用することによって、係留を標的化および安定化する、候補汎HER治療薬として機能し得る。
HERファミリーレセプター間でDIIまたはDIVの配列を整列させた。HER3は、相同性解析のためのプロトタイプであり、そして、配列によって保存されるペプチドを、DIIまたはDIVの標的として同定した。以下の表18は、DIIにおける同定された標的ペプチドを示し、配列番号(#)を横の欄に示す。以下の表19は、DIVにおける同定された標的ペプチドを示し、配列番号(#)を横の欄に示す。
(実施例9 HERファミリー中の露出され、かつ保存された残基を結合するペプチドのファージディスプレイによる同定)
ファージディスプレイは、実施例7〜8において同定されたもの、および、配列番号54〜125のいずれかに示される同定された標的ペプチドのような、標的ポリペプチドと相互作用する候補治療薬をスクリーニングするために使用され得る方法の例である。
A.ファージライブラリーの選択
ファージディスプレイペプチドライブラリー(束縛されたループのC7Cライブラリー、ならびに、7−aaおよび12−aaの線形ライブラリー)を、New England BioLabsから入手した。ファージディスプレイライブラリーを、無関係のFc融合タンパク質−プロテインA(またはプロテインG)アガロース複合体に対して消耗させた。この消耗されたファージライブラリーを、ヒトHER3−621/Fc−プロテインAアガロース複合体に対して選択した。IgG1 Fc領域に融合されたHER3の細胞外ドメインであるHER3−621/Fcは、R&D systemsから購入し、実施例2に記載したように調製した。ファージを、低pHの緩衝液(または、HER3ドメイン内で保存される配列エレメントから選択した合成ペプチドプール(上記実施例6および7を参照のこと))で溶出した。4ラウンドの選択を行い、この後、個々のプラークを無作為にピックアップして、ファージ酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)および、E.coliにおける増幅後のDNA配列決定による解析に供した。
B.ファージELISA
ファージELISAを行うために、96ウェルプレートをHER3−621/Fcでコーティングし;洗浄し、そして、BSA/スクロース緩衝液でブロッキングした。ブロッキングした後、個々のファージ培養培地をウェルに加え、そして、室温で2時間インキュベートした。繰り返し洗浄して、結合していないファージを除いた。結合したファージを、HRPを結合したM13抗体(R&D Systems)を用いて検出する。ポジティブなファージクローンを、HERレセプターファミリーメンバーの間で保存されているHER3細胞外ドメインから選択された個々の合成ペプチド(上記実施例6および7を参照のこと)に対してさらにスクリーニングし、HER3上の潜在的なファージ結合部位を決定した。同様のファージ結合が、HER3を発現する単層細胞を用いて行われ得る。
C.ヘテロ二量体化のためのペプチドの同定
一度、ポジティブなファージが同定され、結合ペプチドが決定されると、ヘテロ二量体化に適切な相乗作用性ペプチドペアを同定するためにアビジン−ビオチン相互作用を使用した。このアッセイは、4つの異なるビオチン分子に高い親和性および特異性で結合する、単一のアビジン分子の能力を利用する。簡単に述べると、ビオチン化したペプチドとノイトラアビジン−HRPを4:1の比で混合した。この混合物を、ローテータ上で4℃にて60分間インキュベートし、その後、低放出性(soft release)のアビジン−セファロースを加えて、過剰なペプチドを除去した。この低放出性のアビジン−セファロースを遠心分離してペレット状にした。得られた上清を、HER3結合アッセイのために所望される濃度まで希釈した。
(実施例10 他のHERアイソフォームをクローニングするための方法)
A.メッセンジャーRNAの調製
健常もしくは疾患状態の組織または細胞株からの主要なヒト組織タイプから単離したmRNAをClontech(BD Biosciences,Clontech,Palo Alto,CA)およびStratagene(La Jolla,CA)から購入した。等量のmRNAをプールし、そして、逆転写酵素ベースのPCR増幅(RT−PCR)のための鋳型として用いた。
B.cDNAの合成
mRNAを、40%のDMSOの存在下で、70℃にて10分間変性させ、氷上でクエンチした。第一鎖cDNAは、10%DMSO、50mM Tris−HCl(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl、10mM DTT、各2mMのdNTP、5μgのmRNAおよび200単位のStrataScript(登録商標)逆転写酵素(Stratagene,La Jolla,CA)を含む20μlの反応中、200ngのオリゴ(dT)または20ngのランダムヘキサマーのいずれかを用いて合成した。37℃にて1時間インキュベーションした後、両方の反応からのcDNAをプールし、そして、10単位のRNaseH(Promega,Madison,WI)で処理した。
C.PCR増幅
RT−PCRクローニングのためのフォワードプライマーおよびリバースプライマーは、HERファミリーメンバーのスプライシング改変体をクローニングするように設計した。遺伝子特異的なPCRプライマーは、Oligo 6.6ソフトウェア(Molecular Biology Insights,Inc.,Cascade,CO)を用いて選択し、そして、Qiagen−Operon(Richmond,CA)により合成した。フォワードプライマー(F1、F2)は、開始コドンを挟むように選択した。リバースプライマー(R1)は、Hillerら(Genome Biology(2005)、6:R58)により記載された方法を用いて、HER遺伝子(表20を参照のこと)のイントロン配列から選択した(表21を参照のこと)。各PCR反応は、合計70μlの容量中に、10ngの逆転写cDNA、0.2μMのF1/R1プライマーミックス、1mMのMg(OAc)、0.2mMのdNTP(Amersham,Piscataway,NJ)、1×XL−Buffer、および0.04U/μlのrTth DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を含んだ。PCRの条件は、94℃で45秒間、60℃で1分間および68℃で2分間の36サイクルであった。反応は、68℃で20分間の伸長ステップで終了させた。
D.PCR産物のクローニングおよび配列決定
PCR産物を、0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、そして、検出可能なバンドからのDNAをGelstar(BioWhitaker Molecular Application,Walkersville,MD)で染色した。DNAのバンドをQiaQuickゲル抽出キット(Qiagen,Valencia,CA)で抽出し、pDrive UAクローニングベクター(Qiagen)中にライゲーションし、そして、DH10B細胞中に形質転換した。組換えプラスミドを、25μg/mlのカナマイシン、0.1mMのIPTGおよび60μg/mlのX−galを含むLB寒天プレート上で選別した。各トランスフェクションについて、12のコロニーを無作為にピックアップし、UAベクタープライマーを用いたPCRによりそのcDNA挿入物のサイズを決定した。次いで、これらのクローンを、M13フォワードプライマーおよびリバースベクタープライマーを用いて両方向から配列決定した。全てのクローンを、隙間のある領域にわたる指向型の配列決定完了(directed sequencing completion across gapped regions)のためのカスタムプライマーを用いて完全に配列決定した。
E.配列解析
SIM4(スプライシング改変体の解析のためのコンピュータプログラム)を用いて、各cDNA配列のそのそれぞれのゲノム配列に対するアラインメントにより、選択的スプライシングのコンピュータによる解析を行った。正規の(例えば、GT−AG)ドナー−アクセプタースプライシング部位を持つ転写体のみを解析に考慮した。HERアイソフォームをコードするクローンをさらに研究した(以下の表22を参照のこと)。
F.例示的なHERアイソフォーム
本明細書において記載される方法を用いて調製した例示的なHERアイソフォームは、以下の表22に示される。HERアイソフォームをコードする核酸分子が提供され、その配列は、表中に示される配列番号の下で示される。例示的なHERアイソフォームポリペプチドのアミノ酸配列は、示される配列番号の下で示される。
(実施例11 IGF1Rアイソフォームをクローニングするための方法)
A.メッセンジャーRNAの調製
健常もしくは疾患状態の組織または細胞株からの主要なヒト組織タイプから単離したmRNAをClontech(BD Biosciences,Clontech,Palo Alto,CA)およびStratagene(La Jolla,CA)から購入した。等量のmRNAをプールし、そして、逆転写酵素ベースのPCR増幅(RT−PCR)のための鋳型として用いた。
B.cDNAの合成
mRNAを、40%のDMSOの存在下で、70℃にて10分間変性させ、氷上でクエンチした。第一鎖cDNAは、10%DMSO、50mM Tris−HCl(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl、10mM DTT、各2mMのdNTP、5μgのmRNAおよび200単位のStrataScript(登録商標)逆転写酵素(Stratagene,La Jolla,CA)を含む20μlの反応中、200ngのオリゴ(dT)または20ngのランダムヘキサマーのいずれかを用いて合成した。a Jolla,CA)。37℃にて1時間インキュベーションした後、両方の反応からのcDNAをプールし、そして、10単位のRNaseH(Promega,Madison,WI)で処理した。
C.PCR増幅
RT−PCRクローニングのためのフォワードプライマーおよびリバースプライマーは、IGF1Rのスプライシング改変体をクローニングするように設計した。遺伝子特異的なPCRプライマーは、Oligo 6.6ソフトウェア(Molecular Biology Insights,Inc.,Cascade,CO)を用いて選択し、そして、Qiagen−Operon(Richmond,CA)により合成した。フォワードプライマー(F1、F2)は、開始コドンを挟むように選択した。リバースプライマー(R1)は、Hillerら(Genome Biology(2005)、6:R58)により記載された方法を用いて、IGFR1遺伝子(配列番号404、表23)のイントロン配列から選択した(表24を参照のこと)。各PCR反応は、合計70μlの容量中に、10ngの逆転写cDNA、0.2μMのF1/R1プライマーミックス、1mMのMg(OAc)、0.2mMのdNTP(Amersham,Piscataway,NJ)、1×XL−Buffer、および0.04U/μlのrTth DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を含んだ。PCRの条件は、94℃で45秒間、60℃で1分間および68℃で2分間の36サイクルであった。反応は、68℃で20分間の伸長ステップで終了させた。
D.PCR産物のクローニングおよび配列決定
PCR産物を、0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、そして、検出可能なバンドからのDNAをGelstar(BioWhitaker Molecular Application,Walkersville,MD)で染色した。DNAのバンドをQiaQuickゲル抽出キット(Qiagen,Valencia,CA)で抽出し、pDrive UAクローニングベクター(Qiagen)中にライゲーションし、そして、DH10B細胞中に形質転換した。組換えプラスミドを、25μg/mlのカナマイシン、0.1mMのIPTGおよび60μg/mlのX−galを含むLB寒天プレート上で選別した。各トランスフェクションについて、12のコロニーを無作為にピックアップし、UAベクタープライマーを用いたPCRによりそのcDNA挿入物のサイズを決定した。次いで、これらのクローンを、M13フォワードプライマーおよびリバースベクタープライマーを用いて両方向から配列決定した。全てのクローンを、隙間のある領域にわたる指向型の配列決定完了のためのカスタムプライマーを用いて完全に配列決定した。
E.配列解析
SIM4(スプライシング改変体の解析のためのコンピュータプログラム)を用いて、各cDNA配列のそのそれぞれのゲノム配列に対するアラインメントにより、選択的スプライシングのコンピュータによる解析を行った。正規の(例えば、GT−AG)ドナー−アクセプタースプライシング部位を持つ転写体のみを解析に考慮した。IGF1Rアイソフォームをコードするクローンをさらに研究した(以下の表25を参照のこと)。
F.例示的なIGF1Rアイソフォーム
本明細書において記載される方法を用いて調製した例示的なIGF1Rアイソフォームは、以下の表25に示される。IGF1Rアイソフォームをコードする核酸分子が提供され、その配列は、配列番号297および299のいずれかに示される。例示的なHERアイソフォームポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号298および300のいずれかに示される。
(実施例12 HER1 ECD/HER3 ECDヘテロ多量体およびチロシンキナーゼインヒビター(TKI)を用いた腫瘍細胞増殖の相乗作用性の阻害)
急激に増殖する腫瘍細胞(ATCCから購入)を、96ウェルのマイクロ希釈プレートに1ウェルあたり1000細胞の密度で移した。(MDA MB 468乳癌細胞は、図3aに示す実験に使用し、そして、A431扁平上皮細胞癌細胞は、図3bに示す実験に使用した)。細胞を24時間接着させ、そして、1×の最終希釈倍率で試験化合物を加えた:RB200h(Fcドメインを介して全長HER3 ECDに連結させた全長HER1 ECD)については1μMと、50μMのAG−825(HER2に関連するチロシンキナーゼのインヒビター;Osherov et al.,1993;図3A)または50μMのGefitinib/Iressa(EGFRに関連するキナーゼのインヒビター;Herbst,2002;図3b)のいずれか。次いで、化合物を二連で同時に加え、そして、段階的な2倍希釈を行った。
72時間のインキュベーションの後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、そして、メタノール中0.5%のクリスタルバイオレットで染色した。次いで、プレートを水中で穏やかに洗浄し、そして、一晩乾燥させた。付着細胞のタンパク質に結合したクリスタルバイオレットをSorenson緩衝液(50%のエタノール中、0.025Mのクエン酸ナトリウム、0.025Mのクエン酸)中に、0.1ml/ウェルで溶解させた。プレートを、540nMの波長で、ELISAプレートリーダーにて解析した。コントロールに対する生存細胞の割合をプロットし、そして解析した(CalcuSyn;Biosoft,Cambridge,UK)。
試験した最低濃度からの結果を図3Aおよび3Bに示す。「組み合わせ」とラベルを付けた欄を横切る破線は、試験した薬物(RB200h+AG 825,図3A;RB200h+Iressa,図3B)の相加的な作用から予測される結果である。図3Aおよび3Bに示されるように、HER1 ECD/HER3 ECDヘテロ多量体(RB200h)の、試験したチロシンキナーゼインヒビターのいずれかとの組み合わせは、増殖に対する組み合わせの相加作用よりもかなり大きい、相乗作用性の増殖阻害作用を示した。
この結果は有意である。というのも、この結果は、化学療法剤に伴う毒性が、RB200hとの組み合わせによって回避され得ることを意味するからである。具体的には、非小細胞肺癌の処置について認可されたIressaの生命を脅かす毒性(http://www.medscape.com/viewarticle/456223を参照のこと)が回避され得る。さらに、アジア人の約30%、そして、白色人種の10%のみが、Iressa/Gefitinibの効能に必要とされるEGFR/HER1の変異を発現しており、そして、同様の状況が、他のTKIについても存在し得る(http://en.wikipedia.org/wiki/Gefitinib)。耐性の機構(EGFRチロシンキナーゼに関連する腫瘍による野生型アミノ酸配列の保持以外)もまた記載されている。これらの中でも、特筆すべきは、「第二部位」の変異の獲得(Pao et al.,2005)および増殖因子の過剰発現(Ishikawa et al.,2005)である。したがって、感受性が増加し得、そして、TKIに伴う毒性がRB200hまたは他のレセプター多量体との組み合わせによって回避され得る場合、これは、効能の相乗作用性の増強 対 毒性によるものである。この結果、癌または他のチロシンキナーゼに関する疾患について首尾よく処置され得る患者の数が劇的に増加する。
(実施例13 Biacore表面プラズモン共鳴による、EGFおよびNRG1β1のRB200hへの結合)
RB200h(100/300hとも呼ばれる(HISエピトープタグを持つ、HER1−621/FcおよびHER3−621/Fcを含むECD分子))に対する増殖因子リガンドの親和性を決定するために、Biacoreによる結合研究を行った。結合実験は、25℃にて表面プラズモン共鳴をベースとしたバイオセンサー機器であるBIAcore 3000(BIAcore AB,Uppsala,Sweden)を用いて行った。リガンドの固定について、凍結乾燥したヒトのキャリアなしのEGFおよびHRG(R&D Systems)を、HBP−ES緩衝液(20mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、pH7.5,BIAcore AB)中に溶解し、そして、0.2mg/mlに希釈した。PBS中のRB200hを同じ緩衝液中で0.2mg/mlに希釈した。これらの分子のBIAcore CM5チップへの固定は、NHS/EDCカップリングを用いて行った。EGFまたはNRG1β1のいずれかをBiacoreチップ上に固定し、その後、RB200h溶液を流した。一度標的表面共鳴が10000応答単位に到達したら、表面をエタノールアミンでクエンチした。全ての実験にブランクのフローセルを準備した。
種々の流速および種々の分析物濃度での注入を行い、物質移動作用が存在しないことを確認した。表26に示す最終測定は、二連または三連のいずれかで行った。データの評価は、Scrubber(BioLogicソフトウェア)を用いてグローバルフィッティングにより行った。リガンド解離速度のリガンド結合速度に対する比から、リガンドの解離定数(Kd)を決定した。これらの研究からのデータは、ハーモジュリンRB200hが24nMのKdでEGFに結合したのに対し、ハーモジュリンRB200hは、NRG1β1には56nMのKdで結合したことを明らかにした(表26)。
(実施例14 ユーロピウム標識したEGFまたはNRG1β1とのRB200hの飽和結合研究)
Biacore法では、HER3リガンド(NRG1β1)のRB200hに対する結合は、NRG1β1が固定されたときにのみ決定され得るので、RB200hの結合研究は、別の方法、時間分解蛍光アッセイ(DELFIA)によって行った。ハーモジュリンのリガンド結合活性を、抗IgG Fcでコーティングしたマイクロタイタープレート上で、ユーロピウムタグ化したリガンド(HER1リガンド活性についてはEu−EGF、または、HER3リガンド活性についてはEu−NRG1β1)を用いて、DELFIA法によって決定した。RB200hを、抗Fcコーティングした96ウェルプレートに固定し、そして、EGFまたはNRG1β1の結合親和性を、図7aおよびbに示されるような広範囲な濃度にわたって、ランタニド(ユーロピウム)タグ化リガンド(Eu−EGFまたはEu−NRG1β1)を用いて決定した。DELFIA 96ウェル黄色プレート(PerkinElmer)を、0.5μg/ウェル(100μl/ウェル容量)の抗ヒトIgG Fc抗体を用いて、4℃にて一晩コーティングした。このプレートを、PBS/0.05% Tween−20で2回洗浄し、次いで、1%BSA、5%スクロースおよび0.01%アジ化ナトリウムを含むPBS緩衝液を用いて、室温(およそ22℃、RT)にて2時間ブロッキングした。ブロッキングの後、緩衝液を吸引し、そして、プレートをRTにて一晩風乾させ、シールし、次いで、4℃にて1ヶ月まで乾燥させ状態で保存した。アッセイの日に、抗IgG Fcでコーティングしたプレートを、DELFIA LR洗浄緩衝液(PerkinElmer)で3回洗浄し、そして、ハーモジュリンを、DELFIA結合緩衝液中、50μl/ウェルの容量にて10もしくは20ng/ウェルで加えた。30℃にて2時間穏やかに振盪させながらインキュベーションした後、50μlのユーロピウム(Eu)標識したリガンドを、図および以下に示される種々の濃度でこれらのウェルに加えた。
飽和結合研究について、非特異的な結合を決定するために、Euタグ化したリガンドと一緒に、100倍過剰の非標識リガンドを追試ウェルに含めた。30nMのEu−EGF単独の固定した飽和濃度(総結合について)または5μMの非標識EGFの存在下(非特異的な結合について)を、HER1リガンド結合能を定量するために使用したことを除いて、ハーモジュリンのリガンド結合活性の慣用的なアッセイについて、上述のようにして研究を行った。同様に、HER3リガンド結合能を定量するために、ハーモジュリンを、100nMのEu−NRG1β1単独(総結合について)または10μMの非標識NRG1β1の存在下(非特異的な結合について)を用いてアッセイした。リガンドを加えた後、穏やかに振盪させながら30℃にて2時間インキュベーションを行った。ついで、プレートを氷上に置き、0.02% Tween−20を含む氷冷DELFIA洗浄緩衝液(PerkinElmer)で迅速に3回洗浄して、非結合のリガンドを除いた。結合したEuタグ化リガンドを定量するために、130μl/ウェルのDELFIA増強溶液を加え、プレートをRTにて15分間インキュベートし、次いで、Eu時間分解フィルタ設定の下で、蛍光プレートリーダー(Envision,モデル2100,PerkinElmer)にて読み取った。データは、一面もしくは両面の結合曲線フィッティングソフトウェアにGraphPad Prismを用いて解析して、KdおよびBmaxを生成した。慣用的なアッセイについて、ハーモジュリンの特異的結合活性を、タンパク質1mgもしくはハーモジュリン1fmolあたりの結合リガンドのfmol数として表した。
ハーモジュリンRB200hは、飽和可能な様式でEu−EGFまたはEu−NRG1βのいずれかに結合した。Euタグ化リガンドの結合は、そのそれぞれの非標識リガンドEGFまたはNRG1β1によって置き換えられ得、結合が特異的であることが示唆された(図7aおよびb)。Eu−EGFまたはEu−NRG1β1についてのKdは、約10nMであった。さらに、NRG1β1は、Biacoreで観察されたよりも高い親和性(Kd約10nM)で固定されたRB200hに結合する。併せて考えると、データは、RB200hが、高い親和性でHER1およびHER3のリガンドに結合することを示す。
(実施例15 ハーモジュリンRB200hは、EGFおよびニューレグリン−1βにより刺激されたHERファミリータンパク質のチロシンリン酸化を阻害する)
上記実施例は、ハーモジュリンRB200hが、EGF(HER1リガンド)およびNRG1β1(HER3リガンド)の両方に結合することを実証した。次いで、RB200hが、HERファミリータンパク質のチロシンリン酸化のリガンド誘導性の刺激をブロックするかどうかを決定するための研究を行った(リガンドは、EGFまたはNRG1β1のいずれかである)。
方法
細胞株および組織培養
ヒト結腸直腸腺癌細胞株HT−29、ヒト肺癌A549、胃癌NCI−N87、乳腺管癌ZR−75−1、類表皮癌A431および乳腺癌細胞株SK−BR−3、ACHN腎癌細胞株は、American Type Culture Collection(Manassa,VA)から購入したが、SUM149細胞は、Asterandから購入した。HT−29細胞およびSK−BR−3細胞は、10%胎仔ウシ血清を補充したMcCoys 5a(Mediatech,Herndon,VA)中で培養し、NCI−N87細胞およびZR−75−1細胞は、10%胎仔ウシ血清を補充したRPMI(Mediatech)中で培養し、そして、A549細胞およびA431細胞は、10%胎仔ウシ血清を補充したDMEM(Mediatech)中で培養した。SUM149細胞は、インシュリン(5μg/ml)、ヒドロコルチゾン(1μg/ml)、HEPES緩衝液(10mM)および5%胎仔ウシ血清を補充したHamのF−12培地中で培養した。全ての細胞は、37℃のインキュベーター内、5%COおよび95%空気の加湿雰囲気中で増殖させた。細胞は、1週間に2度継代した。
HERファミリータンパク質についてのホスホチロシンELISA
細胞株のうち、A431細胞、A549細胞、HT−29細胞、N87細胞、SK−BR−3細胞およびZR−75−1細胞を調べた。A431細胞は、高いレベルのHER1と、低いレベルのHER2およびHER3とを有する。細胞を、96ウェルプレートにおいて、そのそれぞれの増殖速度に適切な密度(代表的には、1ウェルあたり5,000〜20,000細胞)で増殖培地中に撒き、そして、一晩インキュベートし、その後、24時間血清欠乏状態にした。静止期の細胞を、50μl/ウェルの0.1%のBSA(Sigma,St.Louis,MO)を含むDMEMで前処理し、そして、段階希釈したインヒビター(ハーモジュリンまたはHerceptinまたはErbitux)を加え、そして、細胞を、37℃、5% COにて30分間インキュベートした。HERファミリータンパク質のリン酸化を、37℃、5% COにて10分間、増殖因子(3nMのEGFまたは1nMのNRG−β1)で刺激した。刺激後、細胞を含むプレートを氷上に置き、200μl/ウェルの氷冷PBSで一度洗浄し、そして、100μl/ウェルの氷冷1×Cell Lysis Buffer(Cell Signaling,Danvers,MA)(ホスファターゼインヒビターカクテルセットIおよびセットII(EMD Biosciences,San Diego,CA)、ならびに一般的な用途のためのプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)を含有)を用いて、氷上にて約30分間溶解させた。
最初の研究において、このハーモジュリンで処理した細胞に由来する溶解物中にRB200hの持ち越しが存在し、そして、このレベルのRB200hがその捕捉抗体へのHER1の結合と競合したが、以下に記載されるようなそのそれぞれの捕捉抗体へのHER3またはHER2の結合については、RB200hによる有意な競合は観察されなかったことが分かった。HER1捕捉抗体に対するRB200hによるHER1とのこの競合は、以下に記載されるようにRB200hのFcドメインに結合するプロテインA−セファロースビーズを用いた溶解物の清浄化によって排除された。このことは、研究において用いた最高濃度のRB200hが、HER1、HER2およびHER3を含む細胞溶解物中に加えられ、次いで、プロテインAビーズで処理し、その後、HER1もしくはHER2もしくはHER3の捕捉抗体に対しELISAを行った実験から証明された。
上述のように、RB200hで処理した細胞からの細胞溶解物を、溶解緩衝液中に平衡化した、20μl/ウェルの50%プロテインA−セファロースビーズのスラリー(Invitrogen,Carlsbad,CA)と共に、プレート振盪機上で4℃にて一晩インキュベートして、RB200hを清澄にした。次いで、遠心分離によりビーズを溶解物から除き、そして、RB200h汚染物を含まない上清を、ホスホチロシンELISAに使用した。ELISAのためのHER1もしくはHER2もしくはHER3の捕捉抗体プレートを、以下のようにして調製した。96ウェルのImmulon 4HXBマイクロタイタープレート(Thermo,Waltham,MA)を、100μ/ウェルのPBS中の以下に記載される捕捉抗体を用いて、室温にて2時間または4℃にて一晩コーティングした。以下の抗HER細胞外ドメイン捕捉抗体を用いた。HER1の検出については、抗ヒトEGFR抗体(#AF231,0.4μg/ml)を捕捉抗体とした;HER2の検出については、ヒト抗ErbB2捕捉抗体(#DYC1768,4μg/ml)をRB200hを用いた研究のみに用いた(以下を参照のこと);HER3の検出については、ヒトErb3 DuoSet IC(#DYC1769,4μg/ml)を捕捉抗体とした。本発明者らは、Herceptinが、上述したHER2捕捉抗体(DYC1768)に対するHER2の結合とは競合したが、Herceptinは、AF1129と呼ばれる抗ErbB2捕捉抗体(R&D Systems製)に対する細胞のHER2の結合とは競合しなかったことを発見した。したがって、HerceptinまたはC225を用いた場合、HER2の検出は、抗ヒトErbB2抗体(#AF1129,2μg/ml)上に捕捉された細胞溶解物において行った。全ての捕捉抗体はR&D Systems(Minneapolis,MN)製であり、これらをPBS中に希釈し、そして、PBS中2%ウシ血清アルブミン(Equitech,Kerrville,TX)および0.05% Tween−20(Fisher,Waltham,MA)でブロッキングした。上述のように処理した細胞溶解物(75μl)を、コーティングしたプレートの各ウェルに移し、混合しながら4℃にて一晩インキュベートし、次いで、0.05% Tween−20を含むPBS(PBS−Tween)で4回洗浄した。HERタンパク質上のチロシンリン酸化を、製造業者の説明書に従って、2% BSAを含むPBS中に希釈した100μl/ウェルの抗ホスホチロシン−HRP結合体(R&D Systems)を用いて検出し、そして、室温で2時間インキュベートした。プレートをPBS−Tweenで4回洗浄し、次いで、100μl/ウェルのTMB基質で発色させ、その後、100μl/ウェルのTMBの停止試薬(ともにSigma製)を加えた。発色は多様であったので、発色したプレートの光学密度は、0.5と1.0の間であった。光学密度は、650nmにてVERSAmaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)により決定した。
結果
A431細胞のEGF処理は、3つ全てのHERタンパク質のチロシンリン酸化の刺激をもたらした:HER1が最も刺激が強く(約10倍)、次にHER2の刺激が強く(4倍)、最後がHER3(2倍)であった。EGFは、調べた全ての細胞株においてHER1のリン酸化を2倍〜10倍刺激したが、EGFは、表27に列挙される調べて細胞株のうち、A431細胞、HT−29細胞、SK−BR−3細胞およびZR−75−1細胞においてのみ、HER2のリン酸化を1.6倍〜4倍刺激した。EGFは、調べた細胞株のうち、A431細胞およびSK−BR−3細胞においてのみ、HER3のリン酸化の2倍〜3倍の刺激を誘導した(表27)。A431細胞を増加する用量のRB200hで処理し、その後、EGFで刺激した場合、EGFで刺激しただけの細胞と比較すると、抗ホスホチロシンELISAにより測定するとき、HER1、HER2およびHER3の3つ全てのタンパク質のチロシンリン酸化には用量依存性の阻害が存在した(図8a)。RB200hの最大の応答(160nMのEC50で約75%の阻害)は、HER1リン酸化について観察された(図8a、ならびに表27および28)。EGFにより刺激されたリン酸化に対するRB200hのこの阻害作用は、表IIに列挙される調べた全細胞株において観察された。しかし、HerceptinおよびC225(Erbitux)のような他のHERファミリー指向型の生物製剤の中でも、HER1へのEGFの結合を阻害するC225のみが、RB200hと同程度に有効であった(表27および28)。Herceptinは、HERタンパク質のEGF刺激によるリン酸化をいかなる有意なレベルまでも阻害しなかった。これらの研究は、以下でさらに考察する。
HER1リン酸化を刺激したにも関わらず、EGFは、HER2(4倍)およびHER3(3倍)のリン酸化の刺激を引き起こし、EGFが、HER1のHER2もしくはHER3とのヘテロ二量体化を誘導したことが示唆された。このEGFにより刺激されたHER2もしくはHER3のリン酸化はまた、RB200hにより約60%まで阻害された(図8a)。EGFのような増殖因子は、HERファミリーレセプタータンパク質のヘテロ二量体化を誘導し、そして、そのそれぞれのパートナーのリン酸基転移を誘導するので、リガンドにより刺激された3つ全てのHERタンパク質に対する分子の阻害作用を評価することが重要である。これは、リン酸化の阻害のデータを「汎HER指数」として表すことによって行った。
これは、HERファミリータンパク質の平均%阻害を測定し、そして以下のように導く:ハーモジュリンまたは別の因子による汎HER指数=([HER1+HER2+HER3]のリガンドにより刺激されたリン酸化の%阻害/3)。EGFにより刺激されたA431細胞におけるRB200hに対する汎HER指数は70%であり、EGFの有効な封鎖が、HERタンパク質のシグナル伝達を誘導したことを示唆する(表27)。別の腫瘍細胞株であるZR−75−1乳癌細胞(低いレベルのHER1を有するが、HER2およびHER3のレベルは中程度である)においては、RB200hは、EGFにより刺激されたHER1およびHER2のリン酸化を、それぞれ、40%および20%阻害し、汎HER指数は約20%、そして、EC50は50〜100nMであった(図9a、表27および28)。ZR−75−1細胞においては、EGF刺激後にHER3リン酸化の有意な増加はなく、結果として、EGF処理した細胞においては、HER3リン酸化に対し、RB200hによる影響はなかった。
A431細胞のNRG1β1(HER3リガンド)処理は、HER3リン酸化の約2倍〜4倍の刺激をもたらした。NRG1β1によるHER3リン酸化の刺激のこのレベルは、ZR−75−1を除く他の細胞において見られ、ZR−75−1においては、NRG1β1は、HER3リン酸化の約7倍の刺激をもたらした。研究したほとんどの腫瘍細胞では、NRG1β1は、HER2のリン酸化を刺激したが、HER1のリン酸化は、試験した腫瘍細胞株のいくつかにおいてのみ観察された。NERG1β1で刺激したA431細胞またはZR−75−1細胞において、RB200hは、HER3リン酸化の最大の、60〜80%の最大阻害までの、用量依存性の阻害をもたらし、そして、EC50は、約120nMであり、そして、汎HER指数は、45〜60%であった(図8dおよび9d、表27および28)。A431細胞のNRG1β1による刺激は、HER1リン酸化にいかなる有意な変化をももたらさず、したがって、RB200hのHER1に対する作用は観察されなかった。一方で、ZR−75−1細胞のNRG1β1による処理は、HER1、HER2およびHER3の3つ全てのリン酸化の刺激をもたらし、そして、これらのリン酸化は、RB200hによって40〜60%阻害され、汎HER指数は約50%であり、そして、EC50は、HERタンパク質に依存して24〜90nMであった(図9d、表27および28)。RB200hを用いた同様の研究を、他の腫瘍細胞株を用いて行い、そして、RB200hは、多様な範囲の腫瘍細胞株においても同様に、EGFもしくはNRG1β1により刺激されたリン酸化を阻害した(表27および28)。
EGFもしくはNRG1β1により刺激されたリン酸化に対する、HERファミリータンパク質のリン酸化を調節することが知られる、HERファミリータンパク質に指向された他の生物製剤(すなわち、C225すなわちErbitux(HER1指向性)およびHerceptin(HER2指向性))の作用を調べた。A431細胞およびZR−75−1細胞において、C225は、EGFにより刺激されたHER1リン酸化の最大の用量依存性の阻害を引き起こし、EC50は約8nMであり、最大作用は40〜80%の阻害であった(図8cおよび9c、表27および28)。同様に、C225は、試験した他の細胞株においても、RB200hに匹敵する効能で、EGFにより刺激されたHER1のリン酸化を阻害した(表27および28)。EGFにより刺激されたA431細胞またはZR−75−1細胞において、C225はまた、HER2のリン酸化も阻害したが、RB200hの作用と同様に、A431細胞においてのみHER3のリン酸化を阻害したものの、HER3に対する効能は、RB200hと比較して低いものであった(図8c、表27および28)。しかし、RB200hの作用とは異なり、HER1に結合するC225は、試験した細胞株のいずれにおいても、NRG1β1により刺激されたHERファミリータンパク質のリン酸化は阻害しなかった(図8cおよび9c、ならびに表27および28)。
HER2指向性のHerceptinを、HERファミリータンパク質のチロシンリン酸化を調節するその能力について試験した。EGFにより刺激されたA431において、Herceptinは、HER2もしくはHER3リン酸化の低レベル(約20%)の阻害のみを引き起こした一方で、NRG1β1により刺激された細胞においては、HER3のリン酸化のみが、低い(約30%)阻害まで阻害された(図8bおよびe、表27および28)。しかし、EGFより刺激されたZR−75−1細胞において、Herceptinは、HERファミリータンパク質のリン酸化は阻害しなかったが、代わりに、HER2のリン酸化の約60%の刺激をもたらした(図9b)。しかし、HER2に対するその作用とは対照的に、Herceptinは、ZR−75−1細胞のNRG1β1による刺激の後に、HER3のリン酸化を50%阻害した。特に、NRG1β1により刺激された細胞における、HerceptinによるHER3チロシンリン酸化の低レベル(20〜30%)の阻害は、試験した全ての細胞株(A431細胞、A549細胞、HT29細胞、N87細胞、SK−BR−3細胞およびZR−75−1細胞)において一貫して観察された。上述の試験した細胞株のうち、A431細胞においてのみ、Herceptinでの処理が、HER2リン酸化のわずかな阻害(約20%)をもたらした。全ての他の細胞株において、上述したように、Herceptinでの処理は、処理していない細胞と比較して、10〜60%の範囲のHER2チロシンリン酸化の刺激をもたらした。
リガンドにより刺激されたリン酸化のRB200h、HerceptinおよびC225による阻害に関する同様の研究を、他の細胞株においても行った。データを表27および28にまとめる。いくつかの細胞株についての、RB200h、HerceptinおよびC225のHERファミリータンパク質のリン酸化の平均%阻害(汎HER指数)を比較すると、ハーモジュリンRB200hが、リガンドにより誘導されるHERファミリータンパク質のリン酸化の阻害において最も有効であった。C225は、EGFにより刺激されたHERファミリータンパク質のリン酸化の阻害においてRB200hと同程度に有効であるが、C225は、NRG1β1により刺激されたHERタンパク質のリン酸化の阻害においては有効ではなかった。NRG1β1により刺激された細胞では、汎HER指数により判断すると、RB200hのみが全HERファミリータンパク質のリン酸化の抑制において有効であり、HerceptinもC225も有効ではなかった(表27および28)。データは、ハーモジュリンRB200hは、3つ全てのHERファミリー、HER1、HER2およびHER3のEGF(HER1リガンド)またはNRG1β1(HER3リガンド)の両方により刺激されたチロシンリン酸化をブロックするが、C225またはHerceptinはブロックしないことを示す。併せて考慮すると、データは、RB200hが、HER1およびHER3タンパク質にためのリガンドトラップであり、そして、広い抗HER活性を有することを示す。
(実施例16 多様な範囲のHER1およびHER3のリガンドがRB200hに結合する)
EGF以外の他のHER1リガンドまたはNRG1β1以外のHER3リガンドがRB200hに結合するかどうかを決定するための研究を行った。この研究において、リガンドの結合能は、RB200hに結合したEu−EGFまたはEu−NRG1β1のいずれかを置き換える能力により試験した。実験は、実施例14に記載したように行った。
図7cおよびdに示す ように、非標識のEGF、HB−EGF、TGF−αは、Eu−EGFの結合を阻害し、これらのHER1リガンドがRB200hに結合することが示唆された。同様の研究において、NRG1−α、NRG1β3aおよびNRG1β1は、RB200hへのEu−NRG1β1の結合を阻害したが、EGFはこれを阻害せず、これらのニューレグリンがRB200hに結合することが示唆された(図7d)。さらに、HERファミリーリガンドと関連のないインシュリンまたはインシュリン様増殖因子−1のような増殖因子は、Eu−EGFまたはEu−NRG1β1の結合のいずれかとも競合せず(図7cおよびd)、RB200hが、HER1またはHER3のリガンドとの結合に特異的であることが示唆された。このことは、RB200hが、増殖因子に非特異的には結合しないが、HER1またはHER3のリガンドへの結合には非常に特異的であることを示唆する。このデータは、併せて考えると、RB200hにおけるHER1 ECDおよびHER3 ECDは、その本来の対応物として、リガンド結合能において機能的であることを示す。
(実施例17 RB200hにおけるHER1およびHER3のリガンド結合能は互いに独立している)
RB200hにおけるHER1およびHER3上のリガンド結合部位が互いに独立しているかどうかを調べるために、RB200hに対するEu−EGF結合の競合研究を、HER3リガンド(NRG1β1)の存在下で行った。また、逆の実験(非標識のEGFによるEu−NRG1β1の競合)も行った。実験は、実施例14に記載したように行った。
データは、Eu−EGF結合の場合には、非標識のEGF、HB−EGFまたはTGF−αのみが、RB200hに対するEu−EGF結合と競合したが、NRG1β1は競合しなかったことを示す。同様に、非標識のNRG1β1のみが、Eu−NRG−1β1の結合と競合したが、EGFは競合しなかった。併せて考えると、データは、HER1のリガンド結合部位は、HER3のリガンド結合部位とは無関係にそのリガンドと結合することを示す。逆のこともまた言え、すなわち、HER3のリガンド結合部位は、HER1のリガンド結合部位とは無関係にそのリガンドに結合し得る。
(実施例18 ハーモジュリンは単層培養および軟寒天における細胞増殖を阻害する)
RB200hはEGF(HER1リガンド)およびNRG1β1(HER3リガンド)の両方に結合し、そして、増殖因子により刺激されたHERファミリータンパク質のチロシンリン酸化を阻害するので、RB200hはまた、細胞増殖も阻害する可能性がある。このことを、RB200hを伴ってかもしくは伴わずに単層細胞増殖研究を行うことによって試験した。
軟寒天コロニー増殖アッセイを、アッセイを、基底層として10%胎仔ウシ血清を含む培養培地中0.5%アガロース(1.5ml)を備える24ウェルプレート中で行い、そして、細胞を含む上部層には、10%胎仔ウシ血清中0.25%のアガロース(0.5ml)であったことを除いて、Hudziak et al(1987)によって記載された方法に基づいて行った。化合物を、上部層に加えた。コロニーを、5% COおよび95%空気の加湿したインキュベーター中37℃にて増殖させた。約3日ごとに、50μl/ウェルの滅菌水を加えて乾燥を防いだ。細胞のコロニーを、1.0ml/ウェルの水中0.001%のクリスタルバイオレットで4℃にて一晩染色した。細胞のコロニーを、顕微鏡を用いてカウントした。
ハーモジュリンRB200hは、A431類表皮癌およびMDA−MB−468乳癌細胞の増殖を用量依存性の様式で阻害し、EC50は、それぞれ、71nMおよび1.4nMであった(図11)。単層培養において、いくつかの他の腫瘍細胞株を、RB200hに対する感受性についてスクリーニングした。この研究を、他の無作為に選択した腫瘍細胞を含めて拡大した。多様な範囲の腫瘍細胞(皮膚癌、乳癌および肺細胞癌を含む)の増殖が、RB200hによって阻害される(表29)。しかし、乳癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞および胃癌細胞を含むいくつかの腫瘍細胞株は、RB200hによる増殖阻害に感受性ではない(表29)。
RB200hをまた、軟寒天コロニー増殖アッセイにより、固定に非依存性の増殖を阻害する能力について試験した。2つの腫瘍細胞株、単層増殖においてRB200hによる増殖阻害に感受性であったZR−75−1乳癌細胞およびA549肺癌細胞を、軟寒天アッセイにおいて試験した。ZR−75−1細胞は、軟寒天中でほとんど増殖しなかったが、EGF(HER1リガンド)またはNRG1β1(HER3リガンド)のいずれかにより刺激を受けてコロニーを形成した。後者の増殖因子がより有効であり、9倍の刺激を生成したのに対し、EGFは、コロニー増殖の3倍の刺激を引き起こした(図12a)。RB200hは、EGFまたはNRG1β1の両方により刺激されたZR−75−1細胞の軟寒天コロニー増殖を阻害し、RB200hが、これらの増殖因子に対するリガンドトラップのように挙動することが示唆された(図12a)。A549肺癌細胞株は軟寒天中で容易にコロニーを形成したが、NRG1β1またはEGFによって、増殖因子処理なしの場合と比較して、それぞれ、1.3倍および1.4倍刺激され得た(図12b)。このコロニー増殖刺激のレベルは、ZR−75−1細胞について観察されたものよりもかなり少ない。A549細胞のRB200hでの処理は、増殖因子の非存在下でのコロニー増殖の約65%の阻害をもたらした(図12b)。しかし、RB200hは、EGFまたはNRG1β1により処理されたコロニー増殖の統計的に有意な阻害をもたらさなかった(図12b)。この後者の知見は、A549細胞が、増殖因子を加えることなく軟寒天において容易にコロニーを形成したこと、そして、EGFもしくはNRG1β1の添加が、コロニー増殖において瑣末な(約1.3倍)刺激のみを引き起こし、したがって、これらが、コロニー増殖に対するこれらのリガンドに対し非依存性であったという事実に起因するものであり得る。併せて考えると、データは、RB200hが、増殖因子リガンドトラップとしての機能と、そして、非リガンドトラップ機構との両方によって、細胞増殖を阻害することを示す。
(実施例19 無血清培地におけるEGFもしくはNRG1β1誘導性の細胞増殖のRB200hによるブロッキングに関する研究)
RB200hがHER1もしくはHER3のリガンドトラップであるという仮説をさらに試験するために、RB200hがEGFもしくはNRG1β1により刺激された細胞増殖を阻害するかどうかを決定するための研究を行った。
細胞増殖研究を、示されるような無血清培地中で行った。細胞を、96ウェル組織培養プレート(Falcon #35−3075,Becton Dickinson,NJ)中に、細胞株に適切であるように、1ウェルあたり2000〜6000細胞で撒き、その後、一晩(15〜18時間)増殖させた。血清含有培地において行った細胞増殖研究では、細胞を、その後、化合物あり、または化合物なしで処理し、そして、3〜5日間増殖させた。増殖因子(EGFまたはNRG1β1)により刺激された増殖に対するRB200hの作用を、以下のような無血清増殖条件下で研究した。血清中で細胞を撒いた後、細胞を一晩(15〜20時間)増殖させ、次いで、これらの細胞を、無血清培地に切替え、そして、24〜48時間増殖させた(血清欠乏状態)。これらを、次いで、増殖因子またはLPAで、RB200hを伴ってもしくは伴わずに処理し、3〜5日間増殖させた。細胞の増殖を、先に記載されたクリスタルバイオレット色素法(Sugarman et al.,1987)によって定量した。簡単に述べると、培養培地をデカンテーションにより捨て、細胞を、一度PBSで洗浄し、その後、50μ/ウェルのメタノール中0.5%(w/v)のクリスタルバイオレット色素(Sigma−Aldrich,St Loius,MO)を加え、20分間インキュベートした。プレートを水で3回洗浄し、その後、一晩風乾させた。細胞に結合した色素を、100μl/ウェルのSorenson緩衝液(50%エタノール中25mMのクエン酸ナトリウム)を用いて、プレート振盪機上で15分間溶出した。次いで、プレートを、540nmの波長にてプレートリーダー上で吸光度を読み取り、この吸光度は、ウェル内の細胞の量に直接比例していた。
EGFは、SUM149細胞の増殖を刺激した。このEGFにより刺激された増殖は、RB200hによって完全にブロックされた(図13aおよび14a)。NRG1β1に対して応答することが報告されているMCF−7細胞(Lewis,GD et al.,Cancer Res.1996,56:1457−65)を、NRG1β1で処理した(図13b)。この増殖因子は、無血清条件において、用量依存性のMC7細胞増殖の刺激を生成した。このNRG1β1により刺激された細胞増殖は、RB200hによって完全にブロックされた。
併せて考えると、リガンドにより刺激された増殖の拮抗作用のデータは、RB200hが、HER1およびHER3のリガンドの両方に対するリガンドトラップであることを示唆する。
(実施例20 ハーモジュリンは、GPCRリガンドにより刺激された細胞増殖を阻害する)
腫瘍細胞に対する増殖因子の重要な供給源は、膜貫通結合したアンフィレグリン、HB−EGFまたはTGF−αのような増殖因子を切断し、結果としてこれらの増殖因子を放出するADAMメタロプロテイナーゼ(Huovila,AJ et al.,TIBS 2005,30:413−422)のGPCRリガンド活性化を介して得られる。こうして生成した増殖因子は、次いで、パラクリンもしくはオートクリンのいずれかの様式で腫瘍細胞の増殖を刺激するために利用可能となる。RB200hはHER1およびHER3の両方のリガンドに結合するので、RB200hは、腫瘍細胞に対するこの供給源をブロックし、そして、腫瘍細胞の増殖阻害をもたらし得る。この仮説を、アンフィレグリン(AR)をオートクリン様式で産生することが報告されているSUM149乳癌細胞およびAR依存性細胞(Willmarth,NE and Ethier,SP.J.Biol.Chem.2006,281:37728−37737)を用いて試験した。
実施例19に記載されるように、細胞増殖を行った。GPCRリガンドであるLPAにより刺激された増殖の作用を、無血清増殖下で研究した。
リゾホスファチジン酸(LPA)を用いたSUM149細胞の処理は、細胞増殖の用量依存性の増加をもたらした(図13bおよび14b)。このLPAにより刺激された増殖は、RB200hによって完全にブロックされ(図13bおよび14b)、これは、ハーモジュリンが、増殖因子のGPCRにより活性化された放出に対する増殖因子のリガンドトラップとして機能するという考えと一致している。
(実施例21 ハーモジュリンは、チロシンキナーゼインヒビターと相乗作用性である)
HERファミリータンパク質に対して指向される生物製剤は、HER1もしくはHER2キナーゼに対して指向されるチロシンキナーゼインヒビターと組み合わされたときに、細胞増殖の阻害において相乗作用性の応答を示している(Mendelsohn,J and Baselga,J.Semin.Oncol.2006,33:369−385)。したがって、本発明者らは、単層細胞増殖アッセイにおいて、RB200hおよびチロシンキナーゼインヒビターであるGefitinib(Iressa)、Erlotinib(Tarceva)(共に、FDAにより認可されたEGFRキナーゼインヒビターである)と、チロホスチンAG825(HER2キナーゼインヒビター)とを用いた組合せ研究を行った。
細胞増殖研究は、示されるような血清含有培地または無血清培地のいずれかにおいて行った。細胞を、96ウェル組織培養プレート(Falcon #35−3075,Becton Dickinson,NJ)中に、細胞株に適切であるように、1ウェルあたり2000〜6000細胞で撒き、その後、一晩(15〜18時間)増殖させた。血清含有培地において行った細胞増殖研究では、細胞を、その後、化合物あり、または化合物なしで処理し、そして、3〜5日間増殖させた。細胞増殖について、無血清培地条件において研究を行った。血清中で細胞を撒いた後、細胞を一晩(15〜20時間)増殖させ、次いで、これらの細胞を、無血清培地に切替え、そして、24〜48時間増殖させた(血清欠乏状態)。次いで、化合物(例えば、RB200h、IRS、Irressa、Gefitinib、ErlotinibおよびAG−825)を二連で同時に加え、そして、段階2倍希釈を行った。細胞の増殖を、先に記載されたクリスタルバイオレット色素法(Sugarman et al.,1987)によって定量した。簡単に述べると、培養培地をデカンテーションにより捨て、細胞を、一度PBSで洗浄し、その後、50μ/ウェルのメタノール中0.5%(w/v)のクリスタルバイオレット色素(Sigma−Aldrich,St Loius,MO)を加え、20分間インキュベートした。プレートを水で3回洗浄し、その後、一晩風乾させた。細胞に結合した色素を、100μl/ウェルのSorenson緩衝液(50%エタノール中25mMのクエン酸ナトリウム)を用いて、プレート振盪機上で15分間溶出した。次いで、プレートを、540nmの波長にてプレートリーダー上で吸光度を読み取り、この吸光度は、ウェル内の細胞の量に直接比例していた。
NSCLC(H1437)細胞において、RB200hまたはAG 825は単独で、細胞増殖を低いレベルまで阻害した。これらの腫瘍細胞は、EGFRおよびHER2キナーゼインヒビターに対して抵抗性である。RB200hおよびAG 825の組合せは、顕著な相乗作用を生成した(図15a)。この相乗作用データは、薬物の組合せ研究における相乗作用の客観的な決定のために特別に設計されたプログラムである、CalcuSyn(Biosoft,Cambridge UK)(T−C Chou and P.Talalay;Trends Pharmacol.Sci 4,450−454)によって解析した。アッセイデータを用いて、CalcuSynプログラムは、組合せ指数(CI)と呼ばれるパラメーターを生成する。CIが1.0未満である場合、2つの化合物の間には相乗作用が存在し、CIが1である場合は、相加性の応答が存在することを意味し、そして、1よりも大きいCIは、化合物の間には拮抗作用が存在することを示す。AG−825のRB200hとの組合せでは、NSCLC H1437細胞において、試験した全ての濃度においてCIが0.20であり、相乗作用性であった。
別のチロシンキナーゼインヒビターである、EGFRに対して指向されるGefitinibもまた、RB200hと高度に相乗作用性であり、乳癌細胞株MDA−MB−468において、CIは、0.20であった(図15b)。このRB200hとの相乗作用性はまた、別のFDAにより認可されたEGFRキナーゼインヒビターであるErlotinibでも観察された(図15c)。Rb200hはまた、NSCLC細胞H2122において、Erlotinbと相乗作用性に作用することが分かった(図16)。対照的に、Hs578 Bstのような正常細胞において、RB200hは、細胞増殖の有意な阻害を示さず、そしてまた、RB200hとGefitinibとの間には相乗作用が存在しなかった(図15d)。RB200hとAG−825もしくはIressaのいずれかとの間の相乗作用は、いくつかの他の腫瘍細胞株において見られる。
図17〜20は、A431細胞におけるRB200hおよびAG825の段階希釈を示し、A431細胞においてRB200hとIrressaが、そして、BT474においてRB200hとIRSが、RB200hまたはチロシンキナーゼインヒビターと比較して、細胞増殖を相乗作用性に阻害するように作用する。いくつかの細胞においては相乗作用が強いが、他の細胞においては、弱い相乗作用が存在する(表30)。
併せて考えると、データは、RB200hが、非常に低い用量で、HER1もしくはHER2キナーゼに対して指向されるチロシンキナーゼインヒビターの増殖阻害活性の相乗作用を示すことを示す。このことは、RB200hが、HER1もしくはHER2キナーゼに対して指向されるチロシンキナーゼインヒビターとの組合せで、これらのキナーゼインヒビターに対して抵抗性の患者を含めて、治療薬として最大の有用性を有し得ることを示す。
(実施例22 ハーモジュリンRB200hは、A431ヒト腫瘍異種移植モデルにおいてインビボ抗腫瘍性の効能をを有する)
RB200hのインビボ効能を、ヌードマウスを用いて、A431ヒト腫瘍異種移植モデルにおいて試験した。使用した一般的なプロトコールは、使用した一般的なプロトコールからのいくらかの逸脱と共に、この実施例に記載する。
動物
マウスを、市場の供給元(Harlan,UK)より入手した。マウスは、この研究の開始時に4〜6週齢であった。マウスを、the United Kingdom Home Office Animals(Scientific Procedures) Act 1986において推奨されるように、12時間の明暗周期(07.00に点灯、19.00に消灯)を与えるように設定された蛍光灯で照射される障壁付きのユニット内で、無菌アイソレーター中に維持した。部屋は、23±2℃の気温範囲を維持するように設計されたシステムによって空調管理した。マウスは、処置の間、2または5の群に分けて、放射線滅菌した藁床を備え、ネスティング材料(nesting material)および環境富化(environmental enrichment)の両方を提供されたプラスチックケージ(Techniplast UK)内で飼育した。滅菌照射された2019げっ歯類の食餌(Harlan Teckland UK,製品コードQ219DJ1R2)と、オートクレーブ処理した水を、自由に与えた。
予備毒性研究
以下のような各群2匹のマウスの3群を用いた:第1群:(n=2)30mg/kgのRB200hを週に3回i.p.、第2群:(n=2)75mg/kgのIRESSAを週に1〜5日目のサイクルでi.p.、および、第3群:(n=2)10mg/kgのRB200hを週に3回i.p.、そして、38mg/kgのIRESSAを週に1〜5日目のサイクルでi.p.。
治療の評価
以下の8群を用いた:
第1群:(n=10)RB200hのためのビヒクルを週に3回i.p.、第2群:(n=10)10mg/kgのRB200hを週に3回i.p.、第3群:(n=10)30mg/kgのRB200hを週に3回i.p.、第4群:(n=10)IRESSAのためのビヒクルを週に1〜5日目のサイクルでi.p.、第5群:(n=10)38mg/kgのIRESSAを週に1〜5日目のサイクルでi.p.、第6群:(n=10)75mg/kgのIRESSAを週に1〜5日目のサイクルでi.p.、第7群:(n=10)RB200hおよびIRESSAのためのビヒクル、および、第8群:(n=10)10mg/kgのRB200hを週に3回i.p.そして、38mg/kgのIRESSAを週に1〜5日目のサイクルでi.p.。
腫瘍のイニシエーション
A431細胞は、PRECOSから供給され、そして、これを、10%(v/v)の熱不活性化胎仔ウシ血清(Sigma,Poole,UK)を含むRPMI 1640培養培地(Gibco,Paisley,UK)中で、5% COおよび加湿条件にて37℃にインビトロで維持した。コンフルエント未満の単層からの細胞を、0.025%EDTAで回収し、上記培養培地中で2回洗浄し、そして、インビボ投与のために、滅菌したリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4;PBS)中に再懸濁した。細胞を、100μlの用量で1×10細胞にて、マウスに皮下注射した。
腫瘍の監視
予備毒性研究のために、マウスを、それぞれの処置群に割り当て、そして、5日目に、注射1回あたり150μlの投薬容量で2週間の処置を開始した。治療研究のために、マウスを、そのそれぞれの処置群に割り当て、平均腫瘍容積が50〜100mmに達したときに処置を開始し、そして、注射1回あたり150μlの投薬容量で3週間にわたり投薬した。腫瘍の寸法を週に3回記録し(長さおよび幅のキャリパによる測定、腫瘍の断面積と容積を計算した)、そして、毎週体重を計測した。
終了
各マウスは、終了とされるまでか、または、そのマウスを研究から除く必要が生じるまで、研究に留めた。動物は、腫瘍サイズが大き過ぎになるか、または、任意の有害な影響が認められる場合に終了とした。終了時に、マウスに麻酔をかけ(Hypnorm/Hynovel)、そして、約1mlの血液を心臓穿刺により除去し、血漿へと処理し、予備研究および治療研究の両方のために凍結した。次いで、マウスを、認可されたS1法によって終了とした。治療研究については、腫瘍を切開し、秤量し、測定し、そして、ホルマリン中に固定した。
データおよび統計的解析
体重のデータ、腫瘍の増殖および最終的な腫瘍の重量を記録し、そして、スプレッドシートおよび図式的なフォーマットで報告した。適切な場合、Minitabを用いて統計的解析を行った。
予備研究からの逸脱(deviation)
投薬から3時間後に血漿サンプルを回収するために、予備毒性研究を、投薬から12日後に終了させた。治療研究のための追加の群が、以下のようにPRECOSによって加えられた。第9群:30mg/kgのヒトIgGを週に3回i.p.。Iressaは、PBS中の10% DMSOおよび5%CremaphorでPRECOSによって調製された。治療研究のために、腫瘍を、マウス1匹あたり2×10細胞でイニシエーションした。責任者によって要求されたとおりに、治療研究のためにRB200hおよびIgGを静脈内投薬した。第2群、第3群および第8群における初回投薬後に認められる有害な影響に起因して、投薬は、この研究の残りについて、i.p.投与に戻した。研究は、多数のマウスにおける腫瘍の潰瘍化に起因して、26日目に終了させた。
結果
予備毒性研究のために、皮下腫瘍を、プロトコールに詳述されるようにA431細胞でイニシエーションし、そして、Rb200hおよび/またはIressaの投薬を5日目に開始した。A431腫瘍担持マウスにおいては有害な影響は認められなかった。マウスの体重は、毒性研究の全体を通じて、許容可能な範囲内に留まった(図24A)。腫瘍の容積をまた終了前にも測定し、第1群についての平均腫瘍サイズは、極めて大きかった。Iressa処置群における腫瘍サイズの抑制が見られた(第2群および第3群)(図24B)。
1×10細胞を注射してから2週間後に存在する腫瘍の大きなサイズに起因して、研究の時間フレームを増やすために、腫瘍をイニシエーションするために使用した細胞数を2×10に減らした。この研究を、2バッチの細胞およびマウス(バッチAおよびバッチB)を用いて2日にわたってイニシエーションした。10日目に、平均腫瘍サイズは、50〜100mmに到達し、そして、投薬を開始した、RB200h、IgGおよびRB200hビヒクルの投薬は、腹腔内ではなく静脈内投与に変更した。最初のバッチを投薬し、そして、第2群、第3群および第8群のRB200h処置マウスにおいて有害な反応を観察した。第3群(30mg/kgのRB200h、この研究に使用した最高濃度)において、マウスのうちの1匹は回復しなかった。残りのマウスについて観察し、そして1時間後に回復した。RB200hは前もってi.v.投与していたが、RB200hのバッチおよび腫瘍モデルは、この研究において使用したものとは異なった。エンドトキシンレベルもまた、先に使用したものよりもこのバッチの方が低かった。RB200hを、i.v.投薬前に37℃まで温め、そして、第3群の2匹のマウスに投薬して観察した。以前と同様に、マウスは、10分後に赤/紫の血色を呈し、そして1時間後には回復した。したがって、投薬は、残りのマウスについてi.p.に戻し、さらなる反応は認められなかった。
研究の全体を通じて腫瘍のサイズを監視し、そして、群ごとの平均を経時的にプロットしたものを図25A〜Dに示す。データはまた、以下の表40に要約する。最終的な腫瘍の重量もまた測定し、群ごとの平均を図26に示す。データはまた、表40に要約する。
高い方の用量のRB200h単独(30mg/kg、第3群)が、ビヒクル群と比較して、腫瘍の増殖速度を有意に低下させた(p<0.05,両側Anova)。最終的な腫瘍の重量もまた、50%有意に減少した(p=0.016,片側ANOVA,図26)。比較すると、10mg/kgのRB200hは、A431腫瘍の増殖を有意には弱めなかったが、腫瘍サイズは、約15〜20%減少する傾向があった。RB200hの用量(30mg/kg、第9群)に対して等用量のヒトIgGもまた、タンパク質コントロールとして、PRECOSによって含められた。IgGでは、腫瘍増殖に対する影響は見られなかった。
高い方の用量のIressa(75mg/kg、第6群)が、腫瘍の増殖速度を有意に低下させた(図2,p<0.001,両側ANOVA)一方で、38mg/kgのIressaは、ビヒクル群と匹敵しなかった(第4群)。最終的な腫瘍の重量もまた、75mg/kgのIressaで処置したときに69%減少した(p=0.016,片側Anova,図26)。Iressanためのビヒクル(第4群)もまた、経時的に、ビヒクル群からの阻害の影響を有し(図25D,p<0.05,両側ANOVA)、そして、最終的な腫瘍のサイズを43%減少させた(図26)が、これは有意ではなかった。組合せでは、10mg/kgのRB200hおよび38mg/kgのIressa(第8群)は、A431腫瘍の増殖に影響を及ぼさなかった(図25Cおよび26)。ビヒクル群(第7群)は、腫瘍サイズを30%減少させることが分かったが、これは、有意ではなかった。
マウスの体重もまた、研究の期間にわたり監視し、そして、マウスの年齢について予測されるように、次第に増加した(図27)。
考察
この実施例におけるこれらの実験の目的は、A431皮下異種移植モデルにおける、RB200hの単独の影響、およびIressaとの組合せの影響を評価することであった。A431類表皮癌は、高いレベルのEGFRおよびHer2を発現することが報告されており(Ono M,et al.,2006.Clin Cancer Res.12(24):7242−51)、そして、現在NSCLCの処置についてUSで臨床上利用可能なEGFRチロシンキナーゼドメインの選択的インヒビターであるIressaの前臨床評価において使用されている(Wakeling AE,et al.,2002.Cancer Res.62(20):5749−54)。RB200hは、汎Her発現腫瘍について特異的に設計されたリガンドトラップ分子であり、したがって、RB200hを評価するためにA431異種移植モデルを選択した。
最初の予備毒性研究は、この腫瘍を担持するマウスにおいて、i.p.投与が十分に耐え得ることを示したが、経路をi.v.に変更すると、有害な反応が観察された。これは、RB200hをi.v.投薬したZR75−1担持マウスにおいては観察されなかった(P130:ZR75−1皮下腫瘍を担持するヌードマウスにおけるRB200hの予備毒性研究)。エンドトキシンレベルもまた、現在の研究に使用したバッチよりも低いと報告された。結果として生じる影響は、したがって、RB200h調製のバッチおよび/または腫瘍のタイプにおける選択的なパラメーターにおける変化に起因するものであり得る。
30mg/kgの用量のRB200hは、A431腫瘍の増殖を有意に減少させたことが分かったが、10mg/kgは減少させなかった。同様に、75mg/kgの最高用量のIressaは、腫瘍増殖を有意に減少させたが、38mg/kgは減少させなかった。より低い用量のRB200hおよびIressaを組み合わせたとき、腫瘍増殖の減少は観察されなかった。この研究では、より高い用量は組み合わせなかった。Iressaは、RB200hよりも高い治療効果を有したが、この研究において使用したIressaの用量はMTDに近かった一方で、RB200hのMTDは、まだ決定されていない。
RB200hのMTDを最大の治療応答を決定するための臨床上達成可能な用量との境界内で決定するために、さらなる用量増大研究を行った。皮下ZR75−1(高いHer2を発現する乳癌細胞株)およびMDA−MB231(高いEGFRを発現する乳癌細胞株)の骨転移モデルのような他のモデルにおける、RB200hの影響について別の組の実験試験。BT20乳癌細胞株は、EGFRおよびHer2の両方を高いレベルで発現し、したがって、RbB200hの評価に有用である。
(実施例23 より高いリガンド結合親和性および能力の汎HERリガンドトラップについての加工:HER1 ECDの構造に基づいた突然変異誘発)
RB200hは、約10nMにおいて、HER1またはHER3のリガンドに対して比較的高い結合親和性を示したが、細胞は、約0.3〜3nMのKdにおいて、EGFまたはTGF−αのようなHER1リガンドに結合し、そして、HER3リガンドであるNRG1β1についてのKdは約0.1nM〜7.0nMである(Holmes et al;Slikowski et al;Pinkas−Kramarski et al,1996)。これは、腫瘍細胞が、約10nMのEGFもしくはNRG1−β1結合に対するKdを有するRB200hよりも、HER1もしくはHER3のリガンドに対してより高い親和性を有することを示唆する。したがって、RB200hで観察されるよりも高い汎HERリガンドトラップを設計することを試みた。これは、まず、そのリガンドに対する高い親和性のHER1/Fcを最適化するために、EGFR(HER1)に結合したEGFの公開された共結晶構造を用いるコンピュータモデリングによって行った。ヒト上皮増殖因子およびレセプター細胞外ドメインの複合体の結晶構造(Ogiso H et al.Cell(2002)775−787)を、リガンド−レセプター相互作用のコンピュータベースの最適化に使用した。三次元タンパク質構造は、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(RCSB)のProtein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb)に由来するものであった。リガンド−レセプター相互作用の設計された最適化は、アミノ酸の物理化学特性および分類(例えば、荷電、極性、芳香族など)に基づくものであった。また、残基の嵩、表面積、溶媒の接近性なども考慮した。PAM250マトリクスを用いてアミノ酸置換の予測を補助した(W.A Pearson,Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA,in Methods in Enzymology,ed.R.Doolittle(ISBN 0−12−182084−X,Academic Press,San Diego)183(1990)63−98;そしてまた、M.O.Dayhoff,ed.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure,Vol.5)。
A.ハイスループットの突然変異誘発
この後に、突然変異誘発による単一アミノ酸置換を行い、その後発現させ、EGF、HB−EGF、TGF−αおよびアンフィレグリン(AR)に対するリガンド結合活性についてクローンをスクリーニングした。HER1の位置39にあるスレオニンのセリンへの置換を持つ変異(T39S呼ばれる)は、モデリング研究によって高い親和性を生じると予測され、これを、スクリーニングして、EGF、TGF−αおよびHB−EGFに結合することを見出した。このHER1/Fc T39S変異体はHFD120と呼ばれる。HFD120に加え、いくつかの他の変異体を作製した。
Elongase(Invitrogen)およびpfuポリメラーゼ(Stratagene)を用いてオーバーラッピングPCRを行い、設計した点変異を、HFD100(鋳型)に導入した(図21および表31)。
使用したフォワードプライマーは、EGFR−F1:5’−AATTCGTACG ACCGCCACC ATG GGA CCCTCCGGGACGGCC−3’であり、使用したリバースプライマーは、EGFR650−R1:GGGGACCACTTTGT ACAAGAAAGCTGGGT CTA GGA CGG GAT CTT AGG CCC Aであった。
第1ラウンドのPCR:HFD100をPCR鋳型として用いた。PCRは、Elongaseおよびpfuポリメラーゼを、プライマーEGFR−F1およびEGFRmu_R2と共に用いて行った。PCRの条件は、94℃で2分間と、94℃で45秒間、60℃で45秒間および68℃で3分間の26サイクルであった。プライマーEGFRmu_F2およびEGFR−R1については、条件は、94℃で2分間と、94℃で45秒間、60℃で45秒間および68℃で3分間の26サイクルであった。増幅の後、PCR産物を、1%アガロースゲル上で分離し、そして、Qiagenゲル精製キット(Qiagen)を用いて精製した。
第2ラウンドのPCR:第一ラウンドのPCR産物を、1:1のモル比で混合した。PCRは、Elongaseおよびpfuポリメラーゼと、9℃で2分間、94℃で45秒間、57℃で45秒間、68℃で30分間の8サイクルの条件とを用いて行った。
第3ラウンドのPCR:第二ラウンドのPCR産物を鋳型として用いた。PCRは、Elongaseおよびpfuポリメラーゼを、プライマーEGFR−F1およびEGFR−R1と共に用いて行った。PCRの条件は、94℃で2分間と、94℃で45秒間、60℃で45秒間および68℃で3分間の26サイクルであった。PCR産物を、1%アガロースゲル上で分離し、そして、Qiagenゲル精製キットを用いて精製した。精製したPCR産物を、p221DONRベクター中にサブクローニングした。
確認されたpDONR221中のHFD100の変異体を、LR反応によってpcDNA3.2−DEST発現ベクター中にサブクローニングした。
B.タンパク質の発現と分泌
pcDNA3.2−DEST発現ベクター中のHFD100変異体を、製造業者の説明書に従ったLipofectamin 2000により媒介される一過的な遺伝子発現(Invitrogen)を用いて、293T細胞中に発現させた。トランスフェクションの48時間後に馴化培地を回収した。15μlの用量の馴化培地を、ウェスタンブロッティングにより解析した。ウェスタンブロットを抗Fc抗体でプローブして、タンパク質の発現と分泌を確認した。Duoset Human EGFR ELISAキット(R&D System)を用いて、馴化培地中の組換えHFD100変異体を決定した。ELISAプレートを、0.4μg/mlの抗EGFR抗体を用いて、室温で一晩コーティングする。コーティングしたプレートを、PBS+0.05% Tween20中で3回洗浄し、PBS/1%BSAでRTにて2時間ブロッキングし、そして、再度、PBS+0.05% Tween20中で3回洗浄した。馴化培地を、まず1:1000に希釈し、そして、さらに、1:2の比に希釈した。この希釈した馴化培地(CM)を、製造業者の説明書に従ったELISA検出のためにプレートにアプライした。
C.リガンド結合のスクリーニング
Eu標識したEGFの結合:プレートを、5μg/mlの抗Fc抗体を用いて、RTにて一晩コーティングした。コーティングの後、プレートをPBS/0.05% Tween20中で3回洗浄し、そして、PBS/1%BSAでRTにて2時間ブロッキングした。ブロッキングの後、プレートを、PBS/0.05% Tween20中で3回洗浄した。馴化培地中の組換えタンパク質(20ng)を、1×DELFIA結合緩衝液で希釈し、そして、プレートに加えた(100μl/ウェル)。プレートをRTにて2時間インキュベートした。この後、120μl/ウェルの氷冷DELFIA洗浄緩衝液で3回洗浄した。その後、DELFIA結合緩衝液中のEu−EGF(0.5nM)を各ウェルに加え(100μl/ウェル)、そして、プレートをRTにて2時間インキュベートした。プレートを、氷冷DELFIA洗浄緩衝液(120μl/ウェル)で3回洗浄した。
DELFIA増強溶液(110μl/ウェル)を各ウェルに加え、そして、プレートをさらにRTにて20分間インキュベートした。インキュベーションの後、プレートを、Envision(PerkinElmer)によって読み取り、時間分解蛍光を検出した。
D.TGF_またはHB−EGFの結合
TGF_またはHB−EGFのELISAキット(R&D System)を、リガンド結合アッセイのために改変した。プレートを、1μg/mlの抗Fc抗体(Sigma)を用いてRTにて一晩コーティングし、そして、PBS/1% BSAを用いてRTにて2時間ブロッキングした。ブロッキングしたプレートを、20ngのHFD100変異体タンパク質と共にRTにて2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、そしてさらに、100μl/ウェルの結合緩衝液(PBS/1% BSA)中、それぞれ、5〜50nMのTGF_または5nMのHB−EGFと共にRTにて2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、そしてさらに、300ng/mlのビオチン化ヤギ抗ヒトTGF_抗体またはビオチン化ヤギ抗ヒトHB−EGF抗体と共にRTにて2時間インキュベートした。その後、ストレプトアビジン−HRP(1:200希釈)をプレートに加え、そして、20分後に、発色のために基質溶液をアプライした。プレートをマイクロプレートリーダーにより読み取り、OD650nmにおける値を決定した。
E.結果
詳細なリガンド結合研究は、HRF120が野生型(HF100)よりも高い親和性でHER1リガンドに結合することを明らかにした。野生型(HF100)と比較すると、HFD120変異体は、EGFに対して2倍高い親和性を、HB−EGFに対して7倍改善された親和性を、そして、TGF−αに対して30倍より大きく改善された親和性を与えた(図22a〜cおよび表32)。
T43K/S193N/E330D/G588Sと呼ばれる1つの変異体は、T43Kと指定される変異の他にも、ランダムなPCRにより導入された変異を有した。この4つの変異は、HER1のリガンド結合活性を実質的に増加させた(図23)。この変異体を、S193N/E330D/G588SおよびE330D/G588Sと呼ばれる2つの他のHER1変異体を生じるために体系的に変更した。これらの変異体は、両方ともに、HER1のリガンドであるEGF、HB−EGFおよびTGF−αに結合して、野生型(HFD100)と比較して、実質的に増加したレベルのタンパク質分泌を与えるが;S193N/E330D/G588Sが、E330D/G588Sよりも高いタンパク質の分泌レベルを与えた(図23)。
(実施例24 より高いリガンド結合親和性および能力の汎HERリガンドトラップについての加工:リガンド結合能が増加したハーモジュリン)
HER1リガンドに対して高い親和性を有するHFD120(実施例18において上述される)の他に、HER1アームにT39S変異を持つRB220hと呼ばれるヘテロ二量体HER1/Fc:HER3/Fc構築物を作製した。このT39S変異は、HDF120におけるものと同じである。HFD120を発現させ、そして、実施例2および3におけるHFD100と同様に発現および精製させた。ハーモジュリンはまた、ホモ二量体およびヘテロ二量体を含む混合物(RB620と呼ばれる)としても発現され、この混合細胞発現系は、HFD120、HFD300およびRB220hとして構成される。表33を参照のこと。RB620を実施例2に記載したように発現させ、そして、実施例3においてRB600について記載したようにして精製した。
変異体のHER1またはHER3のリガンド結合活性(結合能)を、野生型の構築物と比較した。ホモ二量体HFD100 対 HFD120(変異体構築物)、または、RB200h 対 RB220h(変異体構築物)のいずれかを比較すると、HER1にT39S変異を含む変異体は、その野生型の対応物の約2.5倍のEGF結合能を有する(表34、35、38、39)。また、データは、RB600またはRB620のいずれかとしての混合物が、良好な、3倍〜10倍高いHER1リガンドEGF結合能を有することを示す(表35、38および39)。
野生型および変異体のハーモジュリンのHER3リガンド(NRG1β1)結合能に関して、差異は、EGF結合について観察されたものより顕著ではなかった。第一に、ヘテロ二量体RB200hは、混合物RB600より約1.6倍高いNRG1β1結合能を有する。変異体ヘテロ二量体(RB220h)または変異体混合物RB620のNRG1β1結合能は、ほぼ同じである(表38および39を参照のこと)。しかし、興味深い知見は、野生型RB200hもしくは変異体(RB220h)のいずれかのヘテロ二量体のNRG1β1結合活性をHER3ホモ二量体(HFD300)と比較する場合、このHER3ホモ二量体HFD300は、ヘテロ二量体のわずか30%の結合活性しか有さないことである(表36および37を参照のこと)。

Claims (159)

  1. 多量体であって、以下:
    a)以下:
    i)多量体化ドメインに対し直接的もしくはリンカーを介して間接的に連結された、HER1レセプターに由来する全長細胞外ドメイン(ECD)を含むキメラポリペプチド、または
    ii)多量体化ドメインに対し直接的もしくはリンカーを介して間接的に連結された、HER1、HER2、HER3またはHER4レセプターに由来する細胞外ドメイン(ECD)の全長より短い部分を含むキメラポリペプチドであって、該ECDは、少なくとも、該レセプターのリガンドに結合するために十分なサブドメインIおよび/もしくはIIIの部分と、細胞表面レセプターと二量体化するのに十分なサブドメインIIの部分を含めたECDの十分な部分とを含み、該キメラポリペプチドにおける該ECDがHER2レセプターに由来するものではない場合には、該ECDはまた、細胞表面レセプターとの二量体化を達成するために十分なサブドメインIVのモジュール2〜5の部分もしくは全体を含めたドメインIVの全体もしくは一部分も含む、キメラポリペプチド
    のいずれかから選択される第一のキメラポリペプチドと;
    b)多量体化ドメインに対して直接的もしくはリンカーを介して間接的に連結され、かつ、少なくとも、リガンドに結合するため、および/もしくは、細胞表面レセプターと二量体化するために十分な細胞表面タンパク質のECDの部分を含む、第二のキメラポリペプチドと
    を含み、該第一のキメラポリペプチドおよび該第二のキメラポリペプチドにおける該多量体化ドメインは、相補的であるかまたは同じであり、ただし、該第一のキメラポリペプチドが全長HER1 ECDである場合、該第二のキメラポリペプチドは、HER2に由来するECDを含まないか、または、含む場合には、該HER2 ECDが全長より短くかつ、該レセプターの二量体化に十分な部分が、二量体化を達成するために十分なドメインIVの部分を含み、それにより:
    該キメラポリペプチドが多量体を形成し;そして
    結果として生じる該多量体が、該第一のキメラポリペプチドもしくはそのホモ二量体と比べて追加されたリガンドに対して結合するか、そして/または、該第一のキメラポリペプチドもしくはそのホモ二量体よりも多くの細胞表面レセプターと二量体化する、
    多量体。
  2. 前記第一のキメラポリペプチドおよび前記第二のキメラポリペプチドの一方もしくは両方のECDが、ハイブリッドECDであり、該ハイブリッドECDが、少なくとも2つの異なる細胞表面レセプターのECDに由来するサブドメインを含む、請求項1に記載の多量体。
  3. 前記第一のキメラポリペプチドが、HER2、HER3またはHER4の全長より短いECDを含む、請求項1に記載の多量体。
  4. 前記第一のキメラポリペプチドが、HER3またはHER4の全長より短いECDを含む、請求項1に記載の多量体。
  5. ヘテロ多量体である請求項1に記載の多量体であって、前記第二のキメラポリペプチドのECD部分が、HER1に由来する異なる細胞表面レセプターに由来する、多量体。
  6. 前記第二のキメラポリペプチドにおけるECDが、HER3またはHER4に由来するものである、請求項5に記載の多量体。
  7. 前記第二のキメラポリペプチドにおけるECDドメインが、全長ECDを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の多量体。
  8. 前記第二のキメラポリペプチドのECDドメインが、少なくとも、そのリガンドに結合するため、および、細胞表面レセプターと二量体化するために十分な、サブドメインI、IIおよびIIIの部分を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の多量体。
  9. 前記第二のキメラポリペプチドが、全長より短いECDを含み、かつ、そのリガンドに結合するために十分なドメインIおよびIIIの部分を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の多量体。
  10. 前記第二のキメラポリペプチドが、全長より短いECDを含み、かつ、細胞表面レセプターと二量体化するために十分なECDの部分を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の多量体。
  11. 前記多量体化ドメインが、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔、の中から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の多量体。
  12. 前記多量体化ドメインが、Fcドメイン、または、多量体化を達成するその改変体である、請求項1〜10のいずれかに記載の多量体。
  13. 前記Fcドメインが、IgG、IgMまたはIgEに由来する、請求項12に記載の多量体。
  14. 前記細胞表面レセプターが、前記多量体のECDまたは該ECDのサブドメインに対して同系のレセプターである、請求項1〜13のいずれかに記載の多量体。
  15. 前記第二のキメラポリペプチドのECDが、HER2、HER3、HER4、IGF1−R、VEGFR、FGFR、TNFR、PDGFR、MET、Tie、RAGE、EPHレセプターおよびT細胞レセプターの中から選択される、請求項1〜13および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  16. 前記第二のキメラポリペプチドのECDが、VEGFR1、FGFR2、FGFR4、IGF1−RおよびTie1の中から選択される、請求項15に記載の多量体。
  17. 前記第二のキメラポリペプチドのECDが、前記多量体化ドメインに連結されたイントロン融合タンパク質である、請求項2〜16のいずれかに記載の多量体。
  18. 前記第二のECDが、全長のHER2、HER3もしくはHER4、または、細胞表面レセプターとのレセプターの二量体化および/もしくは、細胞表面レセプターに対するリガンドとの結合に十分なその一部分である、請求項2〜16のいずれかに記載の多量体。
  19. 前記第二のECDが、HER1以外のレセプターチロシンキナーゼに由来するものである、請求項2〜17のいずれかに記載の多量体。
  20. 少なくとも3個、4個、5個、6個または7個の異なるリガンドに結合する、請求項2〜19、105、106および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  21. 前記リガンドが、EGF、TGF−α、アンフィレグリン、HB−EGF、β−セルリン、エピレグリン、および、HER1以外の細胞表面レセプターのECDに結合するさらなるリガンドの中から選択される、請求項20に記載の多量体。
  22. 前記さらなるリガンドが、ニューレグリン−1、ニューレグリン−2、ニューレグリン−3およびニューレグリン−4の中から選択される、請求項21に記載の多量体。
  23. 請求項1に記載の多量体であって、以下:
    前記第一のキメラポリペプチドが、i)HER1に由来する全長ECD、または、ii)リガンドへの結合および/もしくは二量体化に十分な該ECDの部分のいずれかを含み;そして、
    前記第二のキメラポリペプチドが、リガンドへの結合および/もしくは二量体化に十分な、HER3もしくはHER4のECDの全体もしくは一部分を含む、
    多量体。
  24. 請求項1〜23、105、106および117〜126のいずれかに記載の多量体であって、前記キメラポリペプチドの各々における多量体化ドメインが、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに、安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔の中から選択され、それによって、該キメラポリペプチドが、背中合わせの立体配置で相互作用し、それによって、該キメラポリペプチドの両方のECDが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である、多量体。
  25. 前記多量体化ドメインがFcドメインである、請求項23または24に記載の多量体。
  26. 前記Fcドメインが、IgG、IgMまたはIgEに由来する、請求項25に記載の多量体。
  27. 少なくとも2つのキメラポリペプチドを含む、請求項1、7〜14、106および117〜122のいずれかに記載の多量体であって、以下:
    前記第一のキメラポリペプチドが、HER1のECDの全体または一部分を含み;そして
    前記第二のキメラポリペプチドが、HER3またはHER4のECDの全体または一部分を含む、
    多量体。
  28. 構成要素であるキメラポリペプチドが、融合ポリペプチドである、請求項1〜27、106および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  29. キメラポリペプチドa)およびb)は融合ポリペプチドである、請求項1〜27、106および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  30. 構成要素であるキメラポリペプチドが、化学結合により形成される、請求項1〜27、106および116〜126のいずれかに記載の多量体。
  31. キメラポリペプチドa)およびb)が、化学結合により形成される、請求項1〜27、106および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  32. 少なくとも1つのキメラポリペプチドの前記多量体化ドメインが、ECDに直接連結される、請求項1〜31、106および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  33. 少なくとも1つのキメラポリペプチドの多量体化ドメインが、リンカーを介してECDに連結される、請求項1〜31、106および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  34. 前記構成要素であるキメラポリペプチド全ての多量体化ドメインが、それぞれのECDに直接連結される、請求項32に記載の多量体。
  35. 前記構成要素であるキメラポリペプチド全ての多量体化ドメインが、リンカーを介してそれぞれのECDに連結される、請求項33に記載の多量体。
  36. 前記リンカーが、化学リンカーまたはポリペプチドリンカーである、請求項33または35に記載の多量体。
  37. ヘテロ二量体である、請求項1〜36、105、106および117〜126のいずれかに記載の多量体。
  38. ヘテロ二量体である請求項1〜37、105、106および117〜126のいずれかに記載の多量体であって、該ヘテロ二量体は、前記構成要素であるキメラポリペプチドを背中合わせの立体配置で含み、それによって、各キメラポリペプチドにおけるECDが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である、多量体。
  39. ヘテロ多量体であって、以下:
    1つのHERレセプターに由来する細胞外ドメイン(ECD);および
    第二のレセプターに由来するECD
    を含み、ここで:
    該ECDの少なくとも1つが、HER ECDであり、かつ、サブドメインI、IIおよびIII、ならびに、サブドメインIVの一部分を含むが、サブドメインIVの全体は含まず;
    サブドメインIVは少なくともモジュール1を含み;そして
    該ECDは各々異なる、
    ヘテロ多量体。
  40. 前記第二のECDが細胞表面レセプターに由来する、請求項39および127〜134のいずれかに記載のヘテロ多量体。
  41. 一方のHERがHER1であり、かつ、もう一方のHERがHER3またはHER4である、請求項39および127〜134のいずれかに記載のヘテロ多量体。
  42. 請求項39、104および127〜134のいずれかに記載のヘテロ多量体であって、該ヘテロ多量体における少なくとも1つのECDの二量体化ドメインが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である、ヘテロ多量体。
  43. 請求項39〜42および127〜134のいずれかに記載のヘテロ多量体であって、各ECDが、多量体化ドメインに対し直接的もしくはリンカーを介して連結され、それにより、少なくとも2つのECDの多量体化ドメインが相互作用して該ヘテロ多量体を形成する、ヘテロ多量体。
  44. 前記多量体化ドメインが、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔の中から選択される、請求項43に記載のヘテロ多量体。
  45. 前記多量体化ドメインがFcドメインである、請求項43または44に記載のヘテロ多量体。
  46. 前記Fcドメインが、IgG、IgMまたはIgEに由来する、請求項45に記載の多量体。
  47. 請求項40および42〜46のいずれかに記載のヘテロ多量体であって、前記細胞表面レセプターが、該ヘテロ多量体のECDまたは該ECDのサブドメインに対して同系のレセプターである、ヘテロ多量体。
  48. 前記第二のECDは、HER2、HER3、HER4、IGF1−R、VEGFR、FGFR、TNFR、PDGFR、MET、Tie、RAGE、EPHレセプターおよびT細胞レセプターの中から選択されるレセプターに由来する、請求項38〜47のいずれかに記載のヘテロ多量体。
  49. 前記ECDが、VEGFR1、FGFR2、FGFR4、IGFR1およびTie1の中から選択される、請求項48に記載のヘテロ多量体。
  50. ハイブリッド細胞外ドメイン(ECD)であって、
    1つ以上の細胞表面レセプターのECDの少なくともドメインI、IIおよびIIIの全体もしくは一部分
    を含み、
    該ドメインのうち少なくとも2つは、異なる細胞表面レセプターのECDに由来し;
    該ハイブリッドECDは、該ハイブリッドECDが多量体化ドメインに対して連結されるときに、細胞表面レセプターの1以上のECDに由来するドメインIもしくはIIIの、リガンドへの結合に十分な部分と、ドメインIIの十分な部分を含む、細胞表面レセプターのECDの、細胞表面レセプターとの二量体化に十分な部分と、を含む、
    ハイブリッドECD。
  51. 前記細胞表面レセプターが、HERファミリーのメンバーである、請求項50に記載のハイブリッドECD。
  52. ドメインIがHER1に由来し、ドメインIIがHER2に由来し、そして、ドメインIIIがHER3に由来する、請求項50に記載のハイブリッドECD。
  53. 多量体化ドメインに対し、直接的またはリンカーを介して連結された、請求項50〜52および135〜142のいずれかに記載のハイブリッドECDを含む、キメラポリペプチド。
  54. 請求項53に記載のキメラポリペプチドであって、前記多量体化ドメインが、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔の中から選択される、キメラポリペプチド。
  55. 前記多量体化ドメインがFcドメインである、請求項53または54に記載のキメラポリペプチド。
  56. 前記Fcドメインが、IgG、IgMまたはIgEに由来する、請求項55に記載のキメラポリペプチド。
  57. 請求項50〜56および147〜142のいずれかに記載のキメラポリペプチドを少なくとも2つ含む、多量体。
  58. 以下:
    HER1レセプターに由来する細胞外ドメイン(ECD)の全体もしくは一部分;および
    HER3もしくはHER4レセプターに由来するECDの全体もしくは一部分
    を含むヘテロ多量体であって、該一部分は、少なくともサブドメインI、IIおよびIIIを含む、ヘテロ多量体。
  59. 請求項1〜49、50〜53、58、96、102〜106および143〜150のいずれかに記載のヘテロ多量体における少なくとも1つのキメラポリペプチドをコードする核酸配列、請求項95、97、98、99、101、127〜134、151および152のいずれかに記載のキメラポリペプチドをコードする核酸配列、または、このようなキメラポリペプチドを含むヘテロ多量体をコードする核酸配列、あるいは、請求項50〜52および137〜142のいずれかに記載のハイブリッドECDをコードする核酸配列、を含む、核酸分子。
  60. 請求項59に記載の核酸を含む、ベクター。
  61. 請求項59に記載の核酸分子、または、請求項60に記載のベクターを含む、単離細胞。
  62. 請求項1〜58、95〜99、101、102、104、105、106および117〜152のいずれかに記載の多量体、ヘテロ多量体キメラポリペプチド、もしくはポリペプチド、または、請求項59に記載の核酸分子、または、請求項61に記載の細胞を含む、薬学的組成物。
  63. 単回投薬の投与のために処方された、請求項59に記載の薬学的組成物。
  64. 局部投与、局所投与または全身投与のために処方された、薬学的組成物。
  65. 癌、炎症性疾患、新脈管形成疾患または過増殖性疾患を処置する方法であって、請求項62〜64のいずれかに記載の薬学的組成物の治療上有効な量を投与する工程を包含する、方法。
  66. 前記癌が、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌である、請求項65に記載の方法。
  67. 前記疾患が増殖性疾患である、請求項65に記載の方法。
  68. 前記増殖性疾患が、平滑筋細胞の増殖および/もしくは遊走を伴うか、または、前眼部の疾患であるか、または、糖尿病性網膜症もしくは乾癬である、請求項67に記載の方法。
  69. 前記疾患が、再狭窄、眼障害、狭窄、アテローム性動脈硬化症、血管肥厚による高血圧、膀胱疾患および閉塞性気道疾患である、請求項65に記載の方法。
  70. 癌を処置する方法であって、請求項62〜64のいずれかに記載の薬学的組成物と、別の抗癌剤とを投与する工程を包含する、方法。
  71. 前記抗癌剤が、放射線療法および/または化学療法剤である、請求項70に記載の方法。
  72. 前記抗癌剤が、チロシンキナーゼインヒビターまたは抗体である、請求項70に記載の方法。
  73. 前記抗癌剤が、キナゾリンキナーゼインヒビター、アンチセンスRNA分子もしくはsiRNA分子もしくは他の二本鎖RNA分子、または、HERレセプターと相互作用する抗体、または、放射性核種もしくは細胞毒に結合された抗体である、請求項72に記載の方法。
  74. 前記抗癌剤が、Gefitinib、Tykerb、Panitumumab、Eroltinib、Cetuximab、Trastuzimab、Imatinib、白金錯体、またはヌクレオシドアナログである、請求項73に記載の方法。
  75. HERレセプター媒介性の疾患の処置方法であって、以下:
    該疾患を持つ被験体を検査して、どのHERレセプターが発現されているか、もしくは、過剰発現されているかを同定する工程;および
    この結果に基づいて、少なくとも2つのHERレセプターを標的とする多量体を選択する工程
    を包含する、方法。
  76. 前記疾患が癌である、請求項75に記載の方法。
  77. 前記癌が、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌である、請求項76に記載の方法。
  78. リガンド結合のための標的ポリペプチドである、以下:
    CSQFLRGQECVEECRVLQGLPREYVNARHCLPCHPECQPQNGSVTCFGPEADQCVACAHYKDPPF(配列番号405);
    および
    ならびに、配列番号54〜61の中から選択される、ポリペプチド。
  79. HERレセプターと相互作用する候補分子を同定するための方法であって、
    a)二量体化、リガンド結合および/または係留のいずれかに関与するドメインIIとIVまたはドメインIとIIIにおける領域に基づいて、少なくとも約6アミノ酸、または6アミノ酸〜約50アミノ酸、または50アミノ酸のポリペプチドに、試験分子またはその集合物を接触させる工程;ならびに
    b)該ポリペプチドの1つ以上と相互作用する任意の試験分子を同定および選択する工程
    を包含する、方法。
  80. 前記ポリペプチドが、HERレセプターに基づいたポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーであるライブラリーを含む、請求項79に記載の方法。
  81. 前記ポリペプチドが、以下:
    CSQFLRGQECVEECRVLQGLPREYVNARHC LPCHPECQPQ NGSVTCFGPE ADQCVACAHY KDPPF(配列番号405)、および、その6、8、10、12、14、15、18、20、25、30、35、40、45もしくは50またはそれ以上のアミノ酸残基を含む部分;
    配列番号54〜61に示されるポリペプチド;および、その4、5、6、8、10、12またはそれ以上のアミノ酸残基を含む該ポリペプチドの任意の部分
    の中から選択される1以上のポリペプチドを含む、請求項79に記載の方法。
  82. 前記試験分子が分子のライブラリーを含む、請求項79に記載の方法。
  83. 前記分子が、小さな有機化合物またはポリペプチドである、請求項82に記載の方法。
  84. 前記ライブラリーが、固体支持体またはウイルスの表面上にディスプレイされるポリペプチドを含む、請求項80に記載の方法。
  85. 前記ポリペプチドが、ファージディスプレイライブラリーを含む、請求項84に記載の方法。
  86. ドメインIおよび/もしくはIII、または、ドメインII、または、ドメインIVに結合する試験分子が選択される、請求項79〜85のいずれかに記載の方法。
  87. 請求項86に記載の方法であって、2以上のポリペプチドを含むヘテロ二量体を形成する工程をさらに包含し、該ポリペプチドの一方はドメインIIに結合し、そして、該ポリペプチドのもう一方は、ドメインIVに結合する、方法。
  88. 前記試験分子はファージディスプレイライブラリーを含む、請求項79に記載の方法。
  89. 請求項78に記載のポリペプチドと特異的に相互作用する、単離された抗体。
  90. 請求項78に記載の2以上のポリペプチドと特異的に相互作用する、単離されたマルチクローナル抗体。
  91. 各々が多量体化ドメインに連結された2つの異なるポリペプチドを含む合成抗体である、請求項89または90に記載の単離された抗体。
  92. 請求項91に記載の抗体であって、前記多量体化ドメインが、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔の中から選択されるポリペプチドである、抗体。
  93. 前記多量体化ドメインがFcドメインである、請求項91に記載の抗体。
  94. 前記FcドメインがIgG、IgMまたはIgEに由来する、請求項93に記載の抗体。
  95. キメラポリペプチドであって、以下:
    ECDまたはリガンド結合および/もしくはレセプター二量体化に十分なその部分と;
    多量体化ドメインと
    を含み、該ECDまたはその部分は、HER2−530(配列番号14)、HER2−595(配列番号16)、HER2−650(配列番号18)、HER3−500(配列番号20)、P85HER3(配列番号22)、HER3−519(配列番号24)、HER3−621(配列番号26)、HER4−485(配列番号28)、HER4−522(配列番号30)、HER4−650(配列番号32)、配列番号414のアミノ酸25〜645として示されるHER1 ECD、配列番号32、34、127、141、146、148、159および54〜125のいずれかに示されるポリペプチド、ならびに、上記ECDのいずれかの対立遺伝子改変体および種改変体の中から選択される、キメラポリペプチド。
  96. 2以上のキメラポリペプチドを含むヘテロ多量体であって、ここで:
    ECDは、配列番号10に示されるHER1−501および配列番号12に示されるHER1−621、または、リガンド結合および/もしくはレセプター二量体化に十分な部分、請求項95に記載のキメラポリペプチド、ならびに、上記ポリペプチドのいずれかの対立遺伝子改変体および種改変体の中から選択され;そして
    該キメラポリペプチドの各々が、多量体化ドメインに対して、直接的またはリンカーを介して間接的に連結される、ヘテロ多量体。
  97. 請求項95に記載のキメラポリペプチドまたは請求項96に記載のヘテロ多量体であって、前記多量体化ドメインは、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔の中から選択されるポリペプチドであり、それによって、該キメラポリペプチドは、背中合わせの立体配置で相互作用し、それにより、両方のキメラポリペプチドのECDが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である、キメラポリペプチドまたはヘテロ多量体。
  98. 前記多量体化ドメインがFcドメインである、請求項97に記載のキメラポリペプチドまたはヘテロ多量体。
  99. 前記FcドメインがIgG、IgMまたはIgEに由来する、請求項98に記載のキメラポリペプチドまたはヘテロ多量体。
  100. 配列番号127、141、146、148、153、155、157、159、297および299のいずれかに示されるアミノ酸残基を含む、単離ポリペプチド。
  101. 請求項100に記載のペプチドと、請求項151または152に記載の多量体化ドメインまたはポリペプチドとを含む、キメラポリペプチド。
  102. 請求項101に記載のキメラポリペプチドを含む、ヘテロ多量体。
  103. HER ECD、または、リガンド結合および/もしくはレセプター二量体化に十分な該ECDの部分である第二のポリペプチドを含む、請求項102に記載のヘテロ多量体。
  104. 両方のECDがHER ECDである、請求項39に記載のヘテロ多量体。
  105. 前記イントロン融合タンパク質がハースタチンまたはその改変体である、請求項17に記載の多量体。
  106. 少なくとも2つのキメラポリペプチドを含む、請求項1〜25のいずれかに記載の多量体。
  107. 多量体化ドメインに連結されたHER1レセプターのECDまたはその部分を含むキメラポリペプチドであって、
    該ECDまたはその部分が改変を含み、それによって、該ECDが、非改変のECDもしくはその部分と比べて追加されたリガンドに結合する、
    キメラポリペプチド。
  108. 多量体化ドメインに連結されたキメラポリペプチドであって、配列番号114のアミノ酸25〜645の全体もしくはその一部分、または、該全体もしくは一部分に対し少なくとも約70%、80%、90%、95%の配列同一性を有するが、配列番号114の442に対応する位置にSerからPheへの変異を含む配列、を含む、キメラポリペプチド。
  109. 前記多量体化ドメインが、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔の中から選択される、請求項107または108に記載のキメラポリペプチド。
  110. 前記多量体化ドメインが、Fcドメイン、または、多量体化を達成するその改変体である、請求項107〜109のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
  111. 前記FcドメインはIgG、IgMまたはIgEに由来する、請求項110に記載のキメラポリペプチド。
  112. 前記ECDがHER1レセプターに由来する、請求項107〜111のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
  113. 前記改変が、位置S442、または、HERレセプターの対応する位置における改変に対応する、請求項107〜112のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
  114. 前記改変が、HER1レセプターのECD内にあり、それによって、前記HER1 ECDがNRG−2βと相互作用する、請求項113に記載のキメラポリペプチド。
  115. 前記改変が、配列番号2におけるS442Fであるか、またはこれに対応するものである、請求項114に記載の多量体。
  116. 前記改変されたHER1のECDの、EGFおよびNRG−2βと相互作用するのに十分な部分を含む、請求項107〜115のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
  117. 請求項1〜14のいずれかに記載の多量体であって、以下:
    前記ECDが改変されたECDであり;
    該改変が、非改変ECDもしくは該非改変ECDを含む全長レセプターと比べて、該ECDもしくは該ECDを含む全長レセプターのリガンド結合もしくは他の活性を変化させる、
    多量体。
  118. 請求項1〜14のいずれかに記載の多量体であって、前記ECDが、リガンド結合または他の活性を変化させるように改変されていない、多量体。
  119. 前記改変がリガンド結合を変化させる、請求項15に記載の多量体。
  120. 前記改変が、位置S442またはHERレセプターの対応する位置における改変に対応する、請求項119に記載の多量体。
  121. 前記改変が、HER1レセプターのECD内にあり、それによって、前記HER1 ECDがNRG−2βと相互作用する、請求項120に記載の多量体。
  122. 前記改変が、配列番号2におけるS442Fであるか、またはこれに対応するものである、請求項121に記載の多量体。
  123. 請求項117〜122のいずれかに記載の多量体であって、該多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じる多量体は、少なくとも2つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用する、多量体。
  124. 請求項117〜122のいずれかに記載の多量体であって、該多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じる多量体は、少なくとも3つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用する、多量体。
  125. 二量体である、請求項117〜124のいずれかに記載の多量体。
  126. Fc多量体化ドメインを含む、請求項117〜125のいずれかに記載の多量体。
  127. 請求項39に記載のヘテロ多量体であって、ECDに由来するドメインもしくはその一部分は、該ドメイン中にリガンド結合もしくは特異性を変化させる変異を含み;該変異は、非改変ECDもしくは該非改変ECDを含む全長レセプターと比べて、該ECDもしくは該ECDを含む全長レセプターのリガンド結合もしくは他の活性を変化させ、それによって、該ヘテロ多量体は、変更されたリガンド結合もしくは特異性を示す、ヘテロ多量体。
  128. 前記改変が、リガンド結合を変化させる、請求項127に記載のヘテロ多量体。
  129. 前記改変が、位置S442、または、HERレセプターの対応する位置における改変に対応する、請求項128に記載のヘテロ多量体。
  130. 前記改変が、HER1レセプターのECD内にあり、それによって、前記HER1 ECDがNRG−2βと相互作用する、請求項129に記載のヘテロ多量体。
  131. 前記改変が、S442Fであるか、またはこれに対応するものである、請求項130に記載のヘテロ多量体。
  132. 請求項127〜131のいずれかに記載のヘテロ多量体であって、該ヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じるECDは、少なくとも2つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る、ヘテロ多量体。
  133. 請求項127〜132のいずれかに記載のヘテロ多量体であって、該ヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じるハイブリッドは、少なくとも3つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る、ヘテロ多量体。
  134. Fc多量体化ドメインを含む、請求項127〜133のいずれかに記載のヘテロ多量体。
  135. 請求項50に記載のハイブリッドECDであって、該ハイブリッドECDは、ECDに由来するドメインもしくはその一部分を含み、該ECDは、該ドメイン中に、リガンド結合もしくは特異性を変化させる変異を含み;
    該変異は、非改変のECDもしくは該非改変ECDを含む全長レセプターと比べて、該ECDもしくは該ECDを含む全長レセプターのリガンド結合もしくは他の活性を変化させ、
    該ハイブリッドECDは、変更されたリガンド結合または特異性を示す、
    ハイブリッドECD。
  136. 前記改変がリガンド結合を変化させる、請求項135に記載のハイブリッドECD。
  137. 前記改変が、位置S442、またはHERレセプターの対応する位置における改変に対応する、請求項136に記載のハイブリッドECD。
  138. 前記改変がHER1レセプターのECD内にあり、それによって、前記HER1 ECDがNRG−2βと相互作用する、請求項137に記載のハイブリッドECD。
  139. 前記改変が、S442Fであるか、または、これに対応するものである、請求項138に記載のハイブリッドECD。
  140. 請求項135〜139のいずれかに記載のハイブリッドECDであって、該ハイブリッドECDは、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じるECDは、少なくとも2つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る、ハイブリッドECD。
  141. 請求項135〜139のいずれかに記載のハイブリッドECDであって、該ハイブリッドECDは、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じるハイブリッドは、少なくとも3つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る、ハイブリッドECD。
  142. Fc多量体化ドメインを含む、請求項135〜141のいずれかに記載のハイブリッドECD。
  143. 請求項58に記載のヘテロ多量体であって、該ヘテロ多量体は、ECDに由来するドメインもしくはその一部分を含み、該ECDは、該ドメイン中に、リガンド結合もしくは特異性を変化させる変異を含み;
    該変異は、非改変のECDもしくは該非改変ECDを含む全長レセプターと比べて、該ECDもしくは該ECDを含む全長レセプターのリガンド結合もしくは他の活性を変化させ、
    該ヘテロ多量体は、変更されたリガンド結合または特異性を示す、
    ヘテロ多量体。
  144. 前記改変がリガンド結合を変化させる、請求項143に記載のヘテロ多量体。
  145. 前記改変が、位置S442、または、HERレセプターの対応する位置における改変に対応する、請求項144に記載のヘテロ多量体。
  146. 前記改変がHER1レセプターのECD内にあり、それによって、前記HER1 ECDがNRG−2βと相互作用する、請求項145に記載のヘテロ多量体。
  147. 前記改変がS442Fであるか、またはこれに対応するものである、請求項146に記載のヘテロ多量体。
  148. 請求項143〜147のいずれかに記載のヘテロ多量体であって、該ヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じるECDは、少なくとも2つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る、ヘテロ多量体。
  149. 請求項143〜148のいずれかに記載のヘテロ多量体であって、該ヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3もしくはHER4に由来するECDもしくはその部分とを含み、それによって、結果として生じるECDは、少なくとも3つのHERレセプターに対するリガンドと相互作用し得る、ヘテロ多量体。
  150. Fc多量体化ドメインを含む、請求項143〜149のいずれかに記載のヘテロ多量体。
  151. 配列番号414のアミノ酸25〜645に示されるポリペプチド、または、少なくとも2つの異なるリガンドに対するリガンド結合を達成するのに十分なその部分に対して、直接的またはリンカーを介して間接的に連結された多量体化ドメインを含む、キメラポリペプチド。
  152. 請求項151に記載のポリペプチドであって、前記多量体化ドメインは、免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性のタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間で分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール、ならびに安定な多量体を形成する、腔内の隆起部および同一もしくは類似の大きさの代償性の腔の中から選択され、それによって、前記キメラポリペプチドは、背中合わせの立体配置で相互作用し、それによって、両方のキメラポリペプチドのECDが、細胞表面レセプターとの二量体化に利用可能である、ポリペプチド。
  153. ヘテロ多量体とホモ多量体との混合物を含む組成物であって、該ヘテロ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分と、HER3に由来する別のECDもしくはその部分とを含み、該ホモ多量体は、HER1に由来するECDもしくはその部分、または、HER3に由来するECDもしくはその部分を含む、組成物。
  154. 局所投与、経口投与、全身投与、もしくは局部投与のために処方された、請求項153に記載の組成物を含む、薬学的組成物。
  155. 癌、炎症性疾患、新脈管形成疾患または過増殖性疾患を処置する方法であって、請求項153または154に記載の組成物の治療上有効な量を投与する工程を包含する、方法。
  156. 前記癌が、膵臓癌、胃癌、頭頚部癌、子宮頸部癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、食道癌、卵巣癌、子宮癌、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌または乳癌である、請求項155に記載の方法。
  157. 前記疾患が増殖性疾患である、請求項155に記載の方法。
  158. 前記増殖性疾患が、平滑筋細胞の増殖および/もしくは遊走を伴うか、または、前眼部の疾患であるか、または、糖尿病性網膜症もしくは乾癬である、請求項157に記載の方法。
  159. 前記疾患が、再狭窄、眼障害、狭窄、アテローム性動脈硬化症、血管肥厚による高血圧、膀胱疾患および閉塞性気道疾患である、請求項155に記載の方法。
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