JP2009297894A - 補強用コードおよびそれを用いたゴム製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゴムとの接着性がさらに高く、且つ、被覆膜の形成工程における環境負荷が小さい補強用コードを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の補強用コードは、ゴム製品を補強するための補強用コードであって、補強用繊維と、補強用繊維の表面に設けられた被覆膜とを含んでいる。被覆膜は、水性接着剤を補強用繊維に塗布して乾燥させることによって形成された被覆膜である。水性接着剤は、カルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムから選ばれる少なくとも何れか一方のゴムのラテックスと、架橋剤とを含んでおり、且つ、前記水性接着剤におけるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量は、固形分質量比で、前記ゴム100質量部に対して0〜2質量部である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の補強用コードは、ゴム製品を補強するための補強用コードであって、補強用繊維と、補強用繊維の表面に設けられた被覆膜とを含んでいる。被覆膜は、水性接着剤を補強用繊維に塗布して乾燥させることによって形成された被覆膜である。水性接着剤は、カルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムから選ばれる少なくとも何れか一方のゴムのラテックスと、架橋剤とを含んでおり、且つ、前記水性接着剤におけるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量は、固形分質量比で、前記ゴム100質量部に対して0〜2質量部である。
【選択図】なし
Description
本発明は、ゴム製品を補強するための補強用コードとそれを用いたゴム製品とに関する。
自動車用の内燃機関のカムシャフト駆動に用いられる歯付ベルトは、適切なタイミングを維持するために、高度な寸法安定性が要求されている。また、インジェクションポンプなどの駆動や産業機械の動力伝達などに用いられるゴムベルトには、高負荷や高屈曲に耐えうる強度や弾性力が要求されている。このような要求に応えるため、これらのゴム製品のマトリックスゴムに、補強用繊維を含む補強用コードが埋め込まれる場合があった。また、例えば歯付ベルトを補強するための手段として、補強用コードに加えて、補強用シートをさらに用いる場合もあった(特開2006−144932号公報(特許文献1)参照)。
一般的に、補強用コードは、補強用繊維の表面に、補強用繊維の表面を保護するための被覆膜が設けられることによって形成されている。この被覆膜の形成には、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とラテックスとの混合物(以下、RFLと表記することがある。)が一般的に使用されている。また、補強用繊維は、それ自体がゴムとの馴染みが悪く、また、ゴムとの接着性が悪い。このため、補強用繊維を、表面に加工処理を施すことなく(表面に被覆膜を設けることなく)ゴム内に埋め込んだ場合、補強用繊維とゴムとが接着しない、あるいは接着力が弱いため使用中に繊維とゴムとが簡単に剥離してしまう、などの問題が生じ易かった。
そこで、マトリックスゴムとの接着性を改善するため、さらには補強用繊維の品質劣化防止のために、補強用繊維の表面に種々の被覆膜が設けられた補強用コードが提案されている。
例えば、特開昭63−270877号公報(特許文献2)には、ゴムとの良好な接着性を実現する補強用コードとして、補強用繊維であるガラス繊維に、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と水素化ニトリルゴム(H−NBR)のラテックスとの混合処理剤を塗布し、これを乾燥硬化させて形成した被覆膜を有するガラス繊維コードが開示されている。
特開平11−241275号公報(特許文献3)には、所定のゴムとの良好な接着性を実現する補強用コードとして、補強用繊維の表面上にレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物およびゴムラテックスを含む処理剤を用いて形成された第1被覆層を備え、さらにその上にゴム配合物、架橋剤およびマレイミド系架橋剤を主成分とする処理剤を用いて形成された第2被覆層を備えるゴム補強用コードが開示されている。
特開平1−272876号公報(特許文献4)には、ゴムラテックス単独で補強用繊維を処理することによって、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物のような熱硬化性樹脂成分を含まないゴム層が被覆膜として形成された補強用コードが開示されている。この補強用コードによれば、従来の補強用コードに比べて、優れた柔軟性と耐熱性とが実現できる。
特開2004−183121号公報(特許文献5)には、所定のゴムに対する良好な接着性と、高い耐熱性および耐屈曲疲労性とを備えた補強用コードとして、水素化ニトリルゴムのラテックスとマレイミド系架橋剤とを含む水性接着剤を用いて被覆膜が形成された補強用コードが提案されている。
特開2006−207600号公報(特許文献6)には、所定のゴムとの良好な接着性を実現する補強用コードとして、2種類のゴムラテックスを含有するRFLを用いて被覆膜が形成された補強用コードが開示されている。
特開2006−144932号公報
特開昭63−270877号公報
特開平11−241275号公報
特開平1−272876号公報
特開2004−183121号公報
特開2006−207600号公報
しかし、特許文献2に記載の補強用コードをもってしても、現状の要求に対して満足な接着力を得ることは難しかった。また、特許文献3に記載の補強用コードは、ゴムとの接着性の向上が見られるものの、2層の被覆層を形成しなければならないため製造工程が煩雑となるという問題があった。さらに、特許文献3のゴム補強用コードの製造において、第1被覆層の形成では多量のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物およびアンモニアを使用し、第2被覆層の形成では有機溶剤を使用することから、環境負荷が大きく、特に作業者のための環境対策が不可欠であった。同様に、特許文献6に記載されている補強用コードも、補強用繊維を処理する際に多量のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を使用するため、環境負荷が大きかった。
特許文献4および特許文献5に記載の補強用コードでは、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物およびアンモニアを使用しないものの、ゴムの種類によっては満足な接着性能が得られない場合があった。
そこで、本発明は、ゴムとの接着性がより良好で、且つ、被覆膜の形成工程における環境負荷が小さい補強用コードを提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような補強用コードを用いたゴム製品を提供することも目的とする。
本発明の補強用コードは、ゴム製品を補強するための補強用コードであって、補強用繊維と、前記補強用繊維の表面に設けられた被覆膜とを含んでいる。前記被覆膜は、水性接着剤を前記補強用繊維に塗布して乾燥させることによって形成された被覆膜である。前記水性接着剤は、カルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムから選ばれる少なくとも何れか一方のゴムのラテックスと、架橋剤とを含んでおり、且つ、前記水性接着剤におけるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量は、固形分質量比で、前記ゴム100質量部に対して0〜2質量部である。なお、本明細書において、固形分とは、溶媒や分散媒を除いた残部(物質)の総称であり、固形分質量比とは、構成成分の固形分についての質量比のことである。
本発明のゴム製品は、上記の本発明の補強用コードを含むゴム製品であって、前記補強用コードがゴム組成物に埋め込まれている。
本発明の補強用繊維コードによれば、耐屈曲疲労性および耐熱性に優れたマトリックスゴムとの接着性を、従来の補強用コードと比較して大きく改善できる。また、本発明で用いられる水性接着剤には、有機溶剤、ホルムアルデヒドおよびアンモニアなど環境負荷の大きい物質が含まれないか、または、含まれていても少量であるため、被覆膜形成工程における作業環境を改善することができる。さらに、本発明のゴム製品によれば、耐熱性と耐屈曲疲労性とが高い次元で要求されるタイミングベルトのようなものであっても、その要求を満足し得る。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の補強用コードは、補強用繊維と、この補強用繊維の表面に設けられた被覆膜とを含んでいる。この被覆膜は、水性接着剤を補強用繊維に塗布して乾燥させることによって形成される膜である。
以下に、本発明の補強用コードの補強用繊維と、補強用繊維の表面上に設けられる被覆膜の形成に用いられる水性接着剤とについて、詳細に説明する。
本発明の補強用コードにおいて用いられる補強用繊維は、ゴム製品のマトリックスゴムに埋め込まれた際にそのゴム製品の形状安定性や強度を高めるものであればよいため、種類や形状は特に限定されない。例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維に代表されるポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ナイロン、アラミド(芳香族ポリアミド)などのポリアミド繊維、カーボン繊維またはポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維などが利用できる。これらの中で、耐熱性と引張強度とに優れるガラス繊維が好適に用いられる。
補強用繊維の形態としては、マトリックスゴムに埋め込むことができる形態であれば特に限定されるものではなく、ステープル、フィラメント、コード状またはロープ状などを具体例として挙げることができる。
水性接着剤は、ゴムのラテックス(以下、ゴムラテックスということがある。)と、架橋剤とを含んでいる。ここで用いられるゴムのラテックスとは、
(A)カルボキシル変性水素化ニトリルゴムのラテックス
(B)カルボキシル変性ニトリルゴムのラテックス
から選ばれる少なくとも何れか一方である。水性接着剤には、(A)または(B)の何れか一方のゴムラテックスのみが含まれていてもよく、(A)および(B)の両方のゴムラテックスが含まれていてもよい。
(A)カルボキシル変性水素化ニトリルゴムのラテックス
(B)カルボキシル変性ニトリルゴムのラテックス
から選ばれる少なくとも何れか一方である。水性接着剤には、(A)または(B)の何れか一方のゴムラテックスのみが含まれていてもよく、(A)および(B)の両方のゴムラテックスが含まれていてもよい。
水性接着剤に含まれる架橋剤としては、たとえばP−キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系架橋剤、ラウリルメタアクリレートやメチルメタアクリレートなどのメタアクリレート系架橋剤、DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)およびTAIC(トリアリルイソシアヌレート)などのアリル系架橋剤、ビスマレイミド、フェニールマレイミドおよびN,N−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド系架橋剤、芳香族または脂肪族の有機ジイソシアネート、ポリイソシアネート、芳香族ニトロソ化合物、または硫黄などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの架橋剤は、水性接着剤に含まれるゴムラテックスおよび補強用コードが埋め込まれるマトリックスゴムの種類などを考慮して選択される。また、これら架橋剤は水分散体とすることが、水性接着剤中で均質に存在する上で好ましい。
上記に例示した架橋剤の中でも、マレイミド系架橋剤、ポリイソシアネート、キノンジオキシム系架橋剤および芳香族ニトロソ化合物から選ばれる少なくとも1つの架橋剤を用いることが好ましい。これらの中でもマレイミド系架橋剤が好適に用いられ、特にジフェニルメタン−4,4’−ビスマレイミドは、水に分散したときの安定性がよく、架橋効果が高く、架橋後の耐熱性も高いので、好適に用いられる。マレイミド系架橋剤、ポリイソシアネート、キノンジオキシム系架橋剤および芳香族ニトロソ化合物は、上記の(A)および/または(B)のゴムラテックスと組み合わせることによって、補強用コードとマトリックスゴムとの接着性を特異的に高めることができる。特に、カルボキシル変性水素化ニトリルゴムのラテックスとマレイミド系架橋剤との組み合わせは、接着性をより高めることができるため好ましい。
また、マレイミド系架橋剤、ポリイソシアネート、キノンジオキシム系架橋剤および芳香族ニトロソ化合物の4種の架橋剤から複数種を組み合わせて用いてもよい。特に、マレイミド系架橋剤とポリイソシアネートとの組み合わせは、より高い接着性を実現できるので好ましい。
水性接着剤に含まれる架橋剤が少なすぎれば、被覆膜とマトリックスゴムとの架橋が不十分となり、それらの界面において剥離が生じ易くなる場合がある。一方、架橋剤が多すぎれば、相対的にゴムラテックスが少なくなるため、被覆膜自体の強度が低下して、結果的に補強用繊維とマトリックスゴムとの接着性が不足し易くなる場合がある。このため、水性接着剤における架橋剤の含有量は、固形分質量比で、ゴム(水性接着剤に含まれるカルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムの合計)100質量部に対して5〜70質量部が好ましく、15〜60質量部がより好ましく、20〜50質量部がさらに好ましい。
水性接着剤において、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物は必須成分ではない。しかし、固形分質量比で、ゴム(水性接着剤に含まれるカルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムの合計)100質量部に対して2質量部以下であれば、水性接着剤にレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物が含まれていてもよい。すなわち、水性接着剤におけるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量は、ゴム100質量部に対して0〜2質量部である。水性接着剤におけるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量をこの範囲内で調製することによって、接着性を改善できる。なお、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量が2質量部を超えると、かえって接着性が低減する。また、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量をこのような範囲内(0〜2質量部)に抑えることで、高い接着性を実現しつつ、且つ、従来よりも環境や作業者に与える影響が抑制された補強用コードを作製できる。環境や作業者に与える影響を考慮すれば、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量は少ないことが望ましいため、固形分質量比で1.5質量部以下が好ましく、より好ましくは、水性接着剤にレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物が含まれないことである。また、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物は含まずともよく、その場合、ホルムアルデヒドおよびアンモニアなどの環境負荷の大きい物質を使用しなくてもすむため、特に作業者のための環境対策が不要になる。
また、被覆膜の構成成分として、カーボンブラックが含まれていてもよい。すなわち、水性接着剤が、カーボンブラックをさらに含んでいてもよい。カーボンブラックを加えることにより、補強用コードの製造コストを抑えることができ、且つ、補強用コードとマトリックスゴムとの接着性を効果的に高めることができる。水性接着剤におけるカーボンブラックの含有量は、固形分質量比で、ゴム(水性接着剤に含まれるカルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムの合計)100質量部に対して0〜50質量部が好ましく、0〜40質量部がより好ましく、0〜35質量部がさらに好ましい。また、カーボンブラックは水分散体とすることが、水性接着剤中で均質に存在する上で好ましい。
水性接着剤には、上記(A)および(B)のゴムラテックスに加え、例えば、ブタジエン・スチレン共重合体ラテックス、ジカルボキシル化ブタジエン・スチレン共重合体ラテックス、ビニルピリジン・ブタジエン・スチレンターポリマーラテックス、クロロプレンラテックス、ブタジエンラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックスなどが配合されてもよい。また、ゴムラテックスは、前記のものを数種類ブレンドしたものでもよい。
被覆膜の構成成分として、過酸化物が含まれていてもよい。すなわち、水性接着剤が、過酸化物をさらに含んでいてもよい。過酸化物を加えることにより、被覆膜とマトリックスゴムとの架橋が促進されるため、補強用コードとマトリックスゴムとの接着性を一層高めることができる。用いられる過酸化物の種類は限定されるものではなく、例えばヒドロペルオキシドおよびジアルキルペルオキシドなどの有機過酸化物を使用することができる。ただし、過酸化物には、マトリックスゴムに配合されている架橋剤と反応速度が同等のものを選択する必要がある。また、これら過酸化物の中でも水不溶性のものは水分散体とすることが、水性接着剤中で均質に存在する上で好ましい。種々の過酸化物の中でも、下記実施例で使用しているクーメンハイドロパーオキサイド(Cumen Hydrperoxide)が、接着性および水溶性で取り扱い性に優れていて好適である。水性接着剤における過酸化物の含有量は、固形分質量比で、ゴム(水性接着剤に含まれるカルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムの合計)100質量部に対して0〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
水性接着剤において、ゴム、架橋剤およびレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物などの上記構成成分は、水性溶媒中に分散または溶解される。水性溶媒としては、取り扱い性がよく、上記構成成分の濃度管理が容易であり、有機溶媒と比較して環境負荷が格段に軽減されることから、水溶媒が好適に用いられる。なお、水性溶媒は、低級アルコールなどを含んでいてもよい。
水性接着剤は、カーボンブラック以外の無機充填剤、可塑剤、老化防止剤、金属酸化物など、その他の構成成分を含んでいてもよい。
補強用繊維に水性接着剤を塗布し、被覆膜を形成する方法は、特に限定されるものではない。通常は、補強用繊維を水性接着剤の入った水漕中に浸漬し、これを引き上げた後に乾燥炉を潜らせることにより、溶媒を除去する。また、溶媒を除去するための乾燥条件も、特に限定されるものではなく、例えば80〜160℃の雰囲気下に0.1〜2分間曝露するなどして、溶媒を除去できる。このようにして被覆膜が形成された補強用繊維を、例えば所定の本数集めて撚りを施すことによって、補強用コードを作製できる。撚り数は、使用する繊維に応じて適切な撚り数を設定すればよい。また、必要な補強用コードの太さや仕様に合わせて、複数回に分けて撚りを施してもよく、その撚り方向も限定されない。2段階に分けて撚りを施す場合は、補強用繊維を数本束ねて下撚りした子縄を作り、さらにその子縄を数本束ねて上撚りしてコードを形成するとよい。
このようにして形成された補強用コードにおいて、被覆膜の付着率は10〜30質量%が好ましく、さらには12〜22質量%が好適である。この付着率が10質量%未満の場合は、補強用繊維の全表面を被覆膜で覆うことが困難となる。一方、付着率が30質量%を超えると、被覆膜の形成において、水性接着剤の液垂れが問題となり易く、さらには被覆膜が厚すぎて補強用繊維の中心部と周辺部とで特性が異なってしまうなどの問題を生じ易い。なお、被覆膜の付着率(R)とは、乾燥後の補強用コードについて、ガラス繊維などの補強用繊維の質量に対して被覆膜がどの程度付着しているかを示す質量百分率であり、次式で与えられる。
R(%)=((C1−C0)/C1)×100
被覆前の補強用繊維の乾燥質量:C0、被覆後の補強用繊維の乾燥質量:C1
R(%)=((C1−C0)/C1)×100
被覆前の補強用繊維の乾燥質量:C0、被覆後の補強用繊維の乾燥質量:C1
次に、本発明のゴム製品について説明する。
本発明のゴム製品は、上記に説明した補強用コードを含むものであり、この補強用コードがゴム組成物(マトリックスゴム)に埋め込まれて形成されている。ゴム製品の一例としては、例えば図1に示すような歯付ベルトなどが挙げられる。図1に示す歯付ベルト1は、ベルト本体11および補強用コード12を含む。ベルト本体11は、ベルト部13と、一定間隔でベルト部13から突き出した複数の歯部14とを含む。補強用コード12は、ベルト部13の内部に、ベルト部13の周方向(長手方向)に延びるような方向に配置されて、埋め込まれている。補強用コード12には、上記に説明した本発明の補強用コードが用いられる。
なお、本発明のゴム製品を製造する際、補強用コードをマトリックスゴム内に埋め込む手段は、特に限定されるものではなく、公知の手段をそのまま流用することができる。このようにして得られたゴム製品は、マトリックスゴムの特性に由来する高い耐熱性と、補強用コードが埋め込まれたことによる高い強度および高い耐屈曲疲労性とを併せ備える。したがって、このゴム製品は、車輌用エンジンのタイミングベルトなどの用途に特に適したものである。
本発明の補強用コードが埋め込まれるゴム組成物のゴムは、特には限定されるものではなく、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、水素化ニトリルゴムなどを用いることができるが、接着性を考慮すれば、例えば、水素化ニトリルゴムおよびアクリル酸亜鉛誘導体を微分散させた水素化ニトリルゴムから選ばれる少なくとも何れか一方のゴムなどが好適に用いられる。さらに、カルボキシル変性された水素化ニトリルゴムが含まれてもよい。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
(実施例1〜24)
ガラス繊維(Eガラス組成、平均径9μmのフィラメントを200本集束)を3本引き揃えて、101テックスの補強用繊維を得た。この補強用繊維を下記の表1〜4に示す組成の実施例1〜24の水性接着剤に浸漬し、その後150℃に設定した乾燥炉内で1分間乾燥させて、被覆膜を形成した。この被膜膜が形成されたガラス繊維を、8回/10cmの割合で下燃りし、この下撚りしたものをさらに11本引き揃えて8回/10cmの割合で上撚りを掛けて、実施例1〜24の補強用コードを作製した。実施例1〜24の補強用コードにおける被覆膜の付着率は、全て20質量%であった。
ガラス繊維(Eガラス組成、平均径9μmのフィラメントを200本集束)を3本引き揃えて、101テックスの補強用繊維を得た。この補強用繊維を下記の表1〜4に示す組成の実施例1〜24の水性接着剤に浸漬し、その後150℃に設定した乾燥炉内で1分間乾燥させて、被覆膜を形成した。この被膜膜が形成されたガラス繊維を、8回/10cmの割合で下燃りし、この下撚りしたものをさらに11本引き揃えて8回/10cmの割合で上撚りを掛けて、実施例1〜24の補強用コードを作製した。実施例1〜24の補強用コードにおける被覆膜の付着率は、全て20質量%であった。
(比較例1〜22)
表1〜4に示す組成の水性接着剤に代えて、以下の表5〜8に示す組成の水性接着剤を用いたこと以外は、実施例1〜24と同じ条件で比較例1〜22の補強用コードを作製した。
表1〜4に示す組成の水性接着剤に代えて、以下の表5〜8に示す組成の水性接着剤を用いたこと以外は、実施例1〜24と同じ条件で比較例1〜22の補強用コードを作製した。
実施例1〜24および比較例1〜22の補強用コードそれぞれについて、以下の表9に示した組成を有するゴムとの接着性を評価した。表9に示す組成からなるゴムシート(幅25mm×長さ50mm×厚さ5mm)上に、補強用コードを長辺沿いに(補強用コードの繊維方向がゴムシートの長辺方向とほぼ平行となるように)並べ、160℃で20分加熱して補強用コードとゴムシートとを互いに接着させて、試験片を作製した。この後、試験片を引張試験機に掛けて補強用コードの繊維方向に引っ張って、ゴムシートと補強用コードとの間の剥離強度(接着強度)を測定した。また、試験片の破壊面を目視で観察して、補強用コード側にゴムシートのゴムが完全に残った状態の「ゴム破壊」であるのか、あるいはゴムが補強用コード側にまったく残らない「界面剥離」であるのかを確認した。その結果は、併せて上記の表1〜8に示されている。
表1〜8に示すように、実施例は、比較例に比べて、補強用コードとゴムとの接着強度が高かった。詳しくは、ゴムラテックスとして、カルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムから選ばれる少なくとも何れか一方のゴムのラテックスを用いた実施例1〜24は、これらのゴムラテックスを用いていない比較例1〜12と比較して、高い接着強度が得られた。また、比較例13〜22では、カルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムから選ばれる少なくとも何れか一方のゴムのラテックスを用いているものの、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量(固形分質量比)が3質量部以上と多すぎるため、高い接着力が得られなかった。また、マレイミド系架橋剤を用いた場合に、より高い接着力が得られた。さらに、架橋剤として、マレイミド系架橋剤であるジフェニルメタン−4,4’−ビスマレイミドとポリイソシアネートとを組み合わせた実施例(実施例6,7,10,11,18,19,22,23)は、さらに高い接着力が得られることも確認された。
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
本発明の補強用コードは、ゴムとの良好な接着性を実現できるので、様々なゴム製品の補強に適用可能である。例えば、耐熱性と耐屈曲疲労性とが高い次元で要求されるタイミングベルトなどの補強用コードとしても好適に利用できる。また、本発明のゴム製品は、高負荷に耐え得ることができるので、様々な用途に適用可能である。
1 歯付ベルト
11 ベルト本体
12 補強用コード
13 ベルト部
14 歯部
11 ベルト本体
12 補強用コード
13 ベルト部
14 歯部
Claims (7)
- ゴム製品を補強するための補強用コードであって、
補強用繊維と、前記補強用繊維の表面に設けられた被覆膜とを含み、
前記被覆膜は、水性接着剤を前記補強用繊維に塗布して乾燥させることによって形成された被覆膜であり、
前記水性接着剤は、カルボキシル変性水素化ニトリルゴムおよびカルボキシル変性ニトリルゴムから選ばれる少なくとも何れか一方のゴムのラテックスと、架橋剤とを含み、且つ、前記水性接着剤におけるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の含有量は、固形分質量比で、前記ゴム100質量部に対して0〜2質量部である、補強用コード。 - 前記水性接着剤が、前記レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を含まない、請求項1に記載の補強用コード。
- 前記架橋剤が、マレイミド系架橋剤、ポリイソシアネート、キノンジオキシム系架橋剤および芳香族ニトロソ化合物から選ばれる少なくとも1つの架橋剤である、請求項1または2に記載の補強用コード。
- 前記水性接着剤が、前記架橋剤としてマレイミド系架橋剤およびポリイソシアネートを含む、請求項3に記載の補強用コード。
- 前記水性接着剤が、カーボンブラックをさらに含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の補強用コード。
- 前記水性接着剤が、過酸化物をさらに含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の補強用コード。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載の補強用コードを含むゴム製品であって、
前記補強用コードがゴム組成物に埋め込まれているゴム製品。
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