JP2009293267A - 鉄筋の定着構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 鉄筋10の端部を塑性硬化させた後に先細り状に切削加工して形成したテーパーネジ部30と、当該テーパーネジ部30に螺着するナット40とを備える。テーパーネジ部30とナット40との接合部における引っ張り強さが、鉄筋母材の引っ張り強さを上回るように設定する。
【選択図】 図12
Description
また、摩擦圧接を用いて鉄筋の端部にプレートを取り付けた定着構造や、ネジを用いた定着構造では、大型の製作装置を用いた特殊な加工が必要であり、このような設備を備えた工場等でないと製作が困難であった。
さらに、ネジを用いた定着構造では、ネジ部が弱点となることを回避して鉄筋の母材で確実に破断させるためには、ネジ部とナットとの接合部における引っ張り強さを適切に管理する必要がある。そのためには、ネジ部の締め付けトルクを適切に管理することが必要である。
本発明に係る鉄筋の定着構造は、鉄筋端部を塑性硬化させた後に先細り状に切削加工して形成したテーパーネジ部と、当該テーパーネジ部に螺着するナットとを備えている。
図1〜図3は加工前の鉄筋を示すもので、図1は鉄筋を平面視した模式図、図2は鉄筋を正面視した模式図、図3は図2において鉄筋をA−A断面視した模式図である。また、図4〜図6は塑性硬化処理を施した後の鉄筋を示すもので、図4は鉄筋を平面視した模式図、図5は鉄筋を正面視した模式図、図6は鉄筋を図5においてA−A断面視した模式図である。また、図7及び図8は、切削加工後の鉄筋を示すもので、図7は鉄筋を平面視した模式図、図8は鉄筋を正面視した模式図である。また、図9及び図10は、塑性硬化処理に用いる治具を示すもので、図9は治具を側面視した模式図、図10は治具を縦断面視した模式図である。さらに、図11は塑性硬化のイメージを示すもので、一般的な鉄筋の応力歪み関係の説明図である。
本発明の実施形態で用いる鉄筋は、一般的なコンクリート構造物に用いられるものであり、例えば図1〜図8に示すように、異径鉄筋を用いることができる。鉄筋10の端部に塑性硬化処理を施すための治具50は、図9及び図10に示すように、鉄筋10を挟み込むように二分割されている。二分割された各治具50は、内側へ向かって突出した凸部51を有している。治具50を組み合わせた状態で、対向する凸部51間の距離が塑性硬化処理後の鉄筋10の外径にほぼ等しくなっており、これ以外の箇所の距離が塑性硬化前の鉄筋10の外径にほぼ等しくなっている。また、図示しないが、一対の角柱状の部材を治具50としてもよい。なお、治具50の材質は、公知の塑性加工に用いられるものでよい。
鉄筋10の端部に塑性硬化処理を施すには、加工すべき箇所に治具50を取り付け、治具50をプレス機で挟み付けて圧力をかければよい。塑性硬化処理に用いるプレス機は、一般的に普及している公知の小型のプレス機を用いることができる。このようにして塑性硬化処理を施すと、図1〜図3に示すような形状を呈していた鉄筋10の端部が、図4〜図6に示すような形状に変化する。図4及び図5において、塑性加工処理を施した範囲を符号20で示す。
このように、鉄筋10の端部に塑性硬化処理を施すと、図11に示すように、加工前と比較して見かけ上の降伏点が増大して、鉄筋10の端部の強度を増加させることができる。なお、図11において、縦軸は応力、横軸は歪みを示す。
続いて、塑性硬化処理が施された鉄筋10の端部にネジ加工を施す。このネジ加工は、旋盤等の公知の切削機を用いて行うことができる。本実施形態では、図7及び図8に示すように、塑性硬化処理が施された箇所から先端部に向かって先細り状に切削加工することにより、テーパーネジ部30が形成される。
なお、上述した塑性硬化処理は、テーパーネジ部30の基端部分のみに施すことが好ましい。このように、テーパーネジ部30の基端部分のみに塑性硬化処理を施すことにより、塑性硬化処理を行うための治具50やプレス機等をさらに小型化することができる。
図12〜図16は、本発明の実施形態に係る鉄筋の定着構造を示すもので、図12はテーパーネジ部及びナットの一例を示す側面図、図13はテーパーネジ部及びナットの他の例を示す側面図、図14は第1の実施形態に係るトルク管理機構を有するナットの側面図(a)、斜視図(b)、図15は第2の実施形態に係るトルク管理機構を有するナットの平面図(a)、側面図(b)、斜視図(c)、図16は第3の実施形態に係るトルク管理機構を有するナットの側面図である。
テーパーネジ部30に螺着するナット40は、図12〜図16に示すように、その雌ネジ部41がテーパーネジ部30の傾斜角度に応じて傾斜している。そして、鉄筋10のテーパーネジ部30にナット40を螺着することにより、定着構造を形成することができる。なお、図12〜図14、及び図16に示す例では、雌ネジ部41がナット40を貫通していないが、ナット40を貫通して雌ネジ部41を設けてもよい。
図17は、ネジ長さと締め付けトルクとの関係を示す説明図である。
本発明では、テーパーネジ部30とナット40との接合部における引っ張り強さが、鉄筋母材の引っ張り強さを上回るように設定されている。この際、テーパーネジ部30とナット40との接合部における引っ張り強さは、ナット40の締め付けトルク及びテーパーネジ部30の螺合ネジ長さに応じて設定する。
図17では、鉄筋端部に塑性硬化処理を施した定着構造を示しているが、鉄筋端部に塑性硬化処理を施さない場合には、螺合ネジ長さと締め付けトルクとの関係を示す直線が、上方にシフトすることになる。
本実施形態のナット40は、図12及び図13に示すように、テーパーネジ部30へ螺着する側に、鉄筋母材方向に延長した延長部43を有している。
図12に示す例では、ナット40の基端部において、ナット本体部42と同軸であって、ナット本体部42の径よりも小さな径を有する延長部43を設けている。また、図13に示す例では、ナット本体部42をそのまま延長して延長部43を設けている。このように、延長部43を設けることにより、テーパーネジ部30の根元に嵌め合う雌ネジ部分を確保することができるので、引き抜き角度が付いたクサビ引っ張り試験においても、接合部の機械的性質が安定し、接合部の引っ張り強さが鉄筋母材の引っ張り強さを上回る定着構造となる。
本実施形態のナット40の雌ネジ部41の長さは、鉄筋母材の直径の0.9〜1.25倍に設定されている。
このように、ナット40の雌ネジ部41の長さを、鉄筋母材の直径の0.9〜1.25倍に設定することにより、接合部の機械的性質が安定し、接合部の引っ張り強さが鉄筋母材の引っ張り強さを上回る定着構造となる。
本発明のナット40は、締め付けトルクを調節可能なトルク管理機構を有している。
本発明の実施形態に用いるナット40は、図14〜図16に示すように、ナット40の本体部分と、このナット40の本体部分に連続して設けた締め付け作用部60とから構成される。
第1の実施形態に係るナット40の締め付け作用部60は、図14(a)、(b)に示すように、ナット40と同軸であって、ナット40の径よりも小さな径となっており、その外周面には軸方向に凹凸部61が形成されている。
第2の実施形態及び第3の実施形態に係るナット40は、それぞれ図15及び図16に示すように、締め付け作用部60がナット40と同軸に形成されている。この締め付け作用部60は、その横断面の外周形状がポリゴン曲線等の3葉曲線となっている。第2の実施形態に係るナット40は、図15に示すように、テーパーネジ部30の挿入側とは反対側に締め付け作用部60を設けている。また、第3の実施形態に係るナット40は、図16に示すように、テーパーネジ部30の挿入側に締め付け作用部60を設けている。
また、ボルトと螺合するナットの軸横断面の内周面形状が当初の外周面形状に相似する多葉曲線となり、一部に極端な変形部分を形成しないため、必要に応じてロック機能を解除してナットを外すことができる。
従来の一般的な切削ネジでは、ネジ部が弱点となり鉄筋10の母材で破断させることができないおそれがあった。したがって、従来の工法では、鉄筋10の母材で破断させるために、鉄筋10に対して強度の高いネジを接合し、あるいは冷間でネジ山を形成することで鉄筋10の断面積を減少させないようにしていた。また、冷間でネジ山を形成するためには、非常に大がかりな製作装置を必要としていた。
本発明に係る鉄筋の定着構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、鉄筋10の端部に対して塑性加工処理を施す範囲は、鉄筋10の材質、外径、素材等に応じて適宜変更して実施することができる。
20 塑性加工処理を施した範囲
30 テーパーネジ部
40 ナット
41 雌ネジ部
42 ナット本体部
43 延長部
50 治具
51 凸部
60 締め付け作用部
61 凹凸部
Claims (6)
- 鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の定着構造であって、
鉄筋端部を塑性硬化させた後に先細り状に切削加工して形成したテーパーネジ部と、当該テーパーネジ部に螺着するナットと、を備え
前記テーパーネジ部と前記ナットとの接合部における引っ張り強さが、鉄筋母材の引っ張り強さを上回るように設定することを特徴とする鉄筋の定着構造。 - 前記テーパーネジ部と前記ナットとの接合部における引っ張り強さは、前記ナットの締め付けトルク及び前記テーパーネジ部の螺合ネジ長さに応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の鉄筋の定着構造。
- 前記ナットの締め付けトルクの増大に応じて、前記テーパーネジ部の螺合ネジ長さを短縮することを特徴とする請求項2に記載の鉄筋の定着構造。
- 前記ナットは、締め付けトルクを調節可能なトルク管理機構を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄筋の定着構造。
- 前記ナットは、前記テーパーネジ部へ螺着する側に、鉄筋母材方向に延長した延長部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄筋の定着構造。
- 前記ナットの雌ネジ部の長さは、鉄筋母材の直径の0.9〜1.25倍であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉄筋の定着構造。
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