JP4533426B2 - 鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の端部構造及び定着構造 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋に関するものであり、特に、その端部構造、及び端部構造に定着部材を組み合わせた定着構造に関するものである。
従来、鉄筋コンクリート構造物に鉄筋の端部を定着させるには、端部を90度折り曲げてL字状としたり、端部を180度折り曲げてU字状としたりして定着部を形成していた。また、摩擦圧接を用いて鉄筋の端部にプレートを取り付けて定着部を形成するものや、ネジ構造を用いて定着部を形成するものが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1に記載された技術は、鉄筋の一端部を180度曲げ加工してU字状のフック部を形成するとともに、鉄筋の他端部に雄ネジ部を形成し、この雄ネジ部に掛止板を取り付けてナットで固定することにより鉄筋の定着を行うようにしたものである。
特許文献2に記載された技術は、板状の定着部と、定着部の片側表面に設けた突出部と、突出部に沿って設けた鉄筋螺着用の雌ネジ部とを有している。そして、ネジ鉄筋の端部を定着部に設けた雌ネジ部にネジ込むとともにグラウト材を注入して、鉄筋の定着を行うようにしたものである。
特開平10−196120号公報 特許第2662150号公報
しかし、鉄筋の端部を曲げ加工した定着構造では、柱と梁の接合部等のように鉄筋が密になる箇所や中間帯鉄筋の端部などにおいては配筋が極めて困難であるという問題があった。
また、摩擦圧接を用いて鉄筋の端部にプレートを取り付けた定着構造や、ネジを用いた定着構造では、大型の製作装置を用いた特殊な加工が必要であり、このような設備を備えた工場等でないと製作が困難であった。
また、鉄筋にネジ加工を施す場合にはネジ部が弱点となるため、鉄筋母材よりも強度の大きいネジを用意して、このネジを鉄筋端部に接合したり、ネジ部の断面積を増加させたりすることにより、定着構造に必要とされるネジ部の強度を確保していた。この場合にも、大型の製作装置を用いた特殊な加工が必要であった。
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、建築現場等で小型の製作装置を用いて加工することが可能であるとともに、ネジ部が弱点となることを回避して鉄筋の母材で破断させることが可能な鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の端部構造及び定着構造を提供することを目的とする。
本発明は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。
すなわち、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の端部構造は、鉄筋端部を塑性硬化させて見かけ上の降伏点を増加させ、鉄筋の母材と比較して鉄筋端部の強度を増加させた後、塑性硬化させた部分を残して、その先端部分を先細り状に切削加工してテーパーネジ部を形成し、鉄筋端部の塑性硬化処理は、テーパーネジ部の基端部分にのみ施したことを特徴とするとするものである。
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の定着構造は、鉄筋端部を塑性硬化させて見かけ上の降伏点を増加させ、鉄筋の母材と比較して鉄筋端部の強度を増加させた後、塑性硬化させた部分を残して、その先端部分を先細り状に切削加工して形成したテーパーネジ部と、このテーパーネジ部に螺着するナットと、を備え、鉄筋端部の塑性硬化処理は、テーパーネジ部の基端部分にのみ施したことを特徴とするものである。
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の端部構造及び定着構造では、鉄筋の端部を塑性硬化させる処理と、塑性硬化させた部分を残して、その先端部分を先細り状に切削加工する処理とを行うだけでよい。したがって、大型の製作装置を用いた特殊な加工を行う必要がなく、建築現場等で小型の製作装置を用いて容易に加工することができる。また、ネジ部を形成する鉄筋端部に塑性硬化処理を施すことにより、見かけ上の降伏点が増加して、鉄筋の母材と比較して鉄筋端部の強度が増加する。このため、ネジ部が弱点となることを回避して鉄筋の母材で破断させることができる。
特に、テーパーネジ部の基端部分にのみ鉄筋端部の塑性硬化処理を施すことにより、より一層、製作装置の小型化を図ることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の端部構造及び定着構造の実施形態を説明する。
図1〜図3は加工前の鉄筋を示すもので、図1は鉄筋を平面視した模式図、図2は鉄筋を正面視した模式図、図3は図2において鉄筋をA−A断面視した模式図である。また、図4〜図6は塑性硬化処理を施した後の鉄筋を示すもので、図4は鉄筋を平面視した模式図、図5は鉄筋を正面視した模式図、図6は鉄筋を図5においてA−A断面視した模式図である。また、図7及び図8は、切削加工後の鉄筋を示すもので、図7は鉄筋を平面視した模式図、図8は鉄筋を正面視した模式図である。また、図9は、テーパーネジ部に螺着するナットの縦断面形状を示す模式図である。また、図10及び図11は、塑性硬化処理に用いる治具を示すもので、図10は治具を側面視した模式図、図11は治具を縦断面視した模式図、図12は他の形状の治具を示す模式図である。さらに、図13は塑性硬化のイメージを示すもので、一般的な鉄筋の応力歪み関係の説明図である。
<塑性硬化処理に用いる治具>
本発明の実施形態で用いる鉄筋は、一般的なコンクリート構造物に用いられるものであり、例えば図1〜図8に示すように、異径鉄筋を用いることができる。鉄筋10の端部に塑性硬化処理を施すための治具50は、図10及び図11に示すように、鉄筋10を挟み込むように二分割されている。二分割された各治具50は、内側へ向かって突出した凸部51を有している。治具50を組み合わせた状態で、対向する凸部51間の距離が塑性硬化処理後の鉄筋10の外径にほぼ等しくなっており、これ以外の箇所の距離が塑性硬化前の鉄筋10の外径にほぼ等しくなっている。また、図12に示すように、一対の角柱状の部材52を治具50としてもよい。なお、治具50の材質は、公知の塑性加工に用いられるものでよい。
<塑性硬化処理>
鉄筋10の端部に塑性硬化処理を施すには、加工すべき箇所に治具50を取り付け、治具50をプレス機で挟み付けて圧力をかければよい。塑性硬化処理に用いるプレス機は、一般的に普及している公知の小型のプレス機を用いることができる。このようにして塑性硬化処理を施すと、図1〜図3に示すような形状を呈していた鉄筋10の端部が、図4〜図6に示すような形状に変化する。図4及び図5において、塑性加工処理を施した範囲を符号20で示す。
このように、鉄筋10の端部に塑性硬化処理を施すと、図13に示すように、加工前と比較して見かけ上の降伏点が増加して、鉄筋10の端部の強度を増加させることができる。なお、図13において、縦軸は応力、横軸は歪みを示す。
<ネジ加工>
続いて、塑性硬化処理が施された鉄筋10の端部にネジ加工を施す。このネジ加工は、旋盤等の公知の切削機を用いて行うことができる。本実施形態では、図7及び図8に示すように、塑性硬化処理が施された箇所から先端部に向かって先細り状に切削加工することにより、テーパーネジ部30が形成される。
<ナット>
テーパーネジ部30に螺着するナット40は、図9に示すように、その雌ネジ部41がテーパーネジ部30の傾斜角度に応じて傾斜している。そして、鉄筋10のテーパーネジ部30にナット40を螺着することにより、定着構造を形成することができる。
従来の一般的な切削ネジでは、ネジ部が弱点となり鉄筋の母材で破断させることができないおそれがあった。したがって、従来の工法では、鉄筋の母材で破断させるために、鉄筋に対して強度の高いネジを接合し、あるいは冷間でネジ山を形成することで鉄筋の断面積を減少させないようにしていた。また、冷間でネジ山を形成するためには、非常に大がかりな製作装置を必要としていた。
これに対して本発明では、鉄筋10の端部のみに塑性硬化処理を施し、この端部をテーパーネジ部30とすることにより、鉄筋10とナット40との間における応力の伝達が円滑なものとなり、ネジ部が弱点とならずに、鉄筋10の母材で破断させることが可能となる。また、鉄筋の端部のみを冷間加工し、ネジ山は切削によって形成しているため、製作装置を小型化することが可能となる。
なお、テーパーネジを用いた鉄筋継ぎ手に関する技術は、例えば特開平6−57883号公報に詳細に記載されている。
<現場における鉄筋端部の加工処理>
上述したように、本発明では、建築現場等で小型の製作装置を用いて鉄筋10の端部を加工することができる。この点、従来の定着構造のように、鉄筋メイカーの工場等において大型の製作装置を用いた特殊な加工を行う必要がなく、工賃及び運賃等に要するコストが低減される。また、鉄筋メイカーとの工程調整を行う必要がないので、建築現場等における工程に柔軟性を持たせることができる。また、必要に応じてその都度、鉄筋10の端部を加工すればよいので、工程間の仕掛在庫を最小限に抑えることができる。このため、仮置きヤードを削減することが可能となり、この点でもコストを低減することができる。さらに、従来の機械式定着工法と同等の施工性を発揮することができるとともに、施工の容易性を損なうことがない。
<他の実施形態>
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋10の端部構造及び定着構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、鉄筋10の端部に対して塑性加工処理を施す範囲は、鉄筋10の材質、外径、素材等に応じて適宜変更して実施することができる。また、テーパーネジ部30及びナット40の雌ネジ部41の傾斜角度は、鉄筋10の材質、外径、素材等に応じて適宜変更して実施することができる。
本発明の実施形態に用いる加工前の鉄筋を平面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる加工前の鉄筋を正面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる加工前の鉄筋を図2においてA−A断面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる塑性硬化処理後の鉄筋を平面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる塑性硬化処理後の鉄筋を正面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる塑性硬化処理後の鉄筋を図5においてA−A断面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる切削加工後の鉄筋を平面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる切削加工後の鉄筋を正面視した模式図。 本発明の実施形態に用いるナットの縦断面形状を示す模式図。 本発明の実施形態に用いる治具を側面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる治具を縦断面視した模式図。 本発明の実施形態に用いる他の形状の治具を示す模式図。 一般的な鉄筋の応力歪み関係の説明図。
符号の説明
10 鉄筋
20 塑性加工処理を施した範囲
30 テーパーネジ部
40 ナット
41 雌ネジ部
50 治具
51 凸部
52 角柱状の部材

Claims (2)

  1. 鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の端部構造であって、
    鉄筋端部を塑性硬化させて見かけ上の降伏点を増加させ、鉄筋の母材と比較して鉄筋端部の強度を増加させた後、塑性硬化させた部分を残して、その先端部分を先細り状に切削加工してテーパーネジ部を形成し、
    前記鉄筋端部の塑性硬化処理は、前記テーパーネジ部の基端部分にのみ施したことを特徴とする鉄筋の端部構造。
  2. 鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の定着構造であって、
    鉄筋端部を塑性硬化させて見かけ上の降伏点を増加させ、鉄筋の母材と比較して鉄筋端部の強度を増加させた後、塑性硬化させた部分を残して、その先端部分を先細り状に切削加工して形成したテーパーネジ部と、このテーパーネジ部に螺着するナットと、を備え、
    前記鉄筋端部の塑性硬化処理は、前記テーパーネジ部の基端部分にのみ施したことを特徴とする鉄筋の定着構造。
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