JP2009293018A - 耐熱性に優れる有機重合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 付加重合性単量体に由来する構造単位からなる鎖状構造を有する数平均重合度が10〜200の、複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する有機重合体、及び当該有機重合体を、多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合停止剤または多環構造を有する脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いて重合の停止または重合体鎖末端のキャッピングを行なって製造するか、或いは多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合開始剤を用いて製造する方法。
【選択図】 なし
Description
かかる点から、取り扱い性、加工・成形性などに優れながら、耐熱性にも優れる有機重合体が求められている。
また、資源の有効利用の点から、有機重合体に対しても、再利用が容易で、リサイクル性に優れることが求められるようになっている。
有機重合体のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の指標の1つであって、鎖セグメントの並進運動が開始する温度に対応している。有機重合体のガラス転移温度は、基本的には分子構造に依存し、分子量にはあまり依存しないが、重合度の低い有機重合体では、重合体鎖の末端構造による影響を受け易い。
かかる点から、分子量2万以下の低重合度ポリメチルメタクリレートの末端にジメチルシロキシ基を有するカゴ型のシルセスキオキサンを導入して、ガラス転移温度を高くすることが行なわれており(非特許文献1を参照)、当該非特許文献1にはシルセスキオキサンの導入によってガラス転移温度が5℃以上高くなったことが記載されている。
しかしながら、非特許文献1に記載されている重合体材料は、ポリメチルメタクリレートとシルセスキオキサンが複合した有機−無機複合材料であって、シルセスキオキサンに由来する無機成分を含むことから、再利用性に劣り、リサイクル性などの点で問題がある。
本発明の目的は、使用後に加熱溶融処理などによって容易に再利用することのできる、リサイクル性に優れる有機重合体を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した優れた特性を有する有機重合体を、複雑な手間や、時間のかかる重合工程や処理工程などを要することなく、簡単に且つ円滑に製造する方法を提供することである。
本発明者は、付加重合性単量体に由来する構造単位からなる鎖状構造を有する低重合度の有機重合体について、その物性、特に耐熱性を向上させるべく種々検討を重ねてきた。その結果、付加重合性単量体に由来する構造単位からなる数平均重合度が10〜200の鎖状構造を有する有機重合体に対して、その複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに多環構造を有する脂環式炭化水素基を導入すると、低重合度の有機重合体が有する良好な取り扱い性、成形・加工性などの特性をそのまま維持しながら、ガラス転移温度が5℃以上も高くなり、また熱分解温度も高くなる傾向があり、耐熱性が向上することを見出した。
また、本発明者は、重合体鎖末端に多環構造を有する脂環式炭化水素基を導入した当該有機重合体は、使用後に溶融などによって容易に再利用することができ、リサイクル性に優れていることを見出した。
さらに、本発明者は、重合体鎖末端に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する当該有機重合体は、付加重合性単量体を用いて鎖状構造を有する有機重合体を製造するのに従来から採用されている重合方法を基本的に踏襲しながら、その際に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合開始剤を用いて付加重合性単量体を重合するか、および/または付加重合性単量体を重合して鎖状構造を有する有機重合体を製造した後に、多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合停止剤を用いて重合を停止させるか、または多環構造を有する脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いて重合体鎖末端のキャッピングを行なうことによって、簡単に且つ円滑に製造できることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
(1) 付加重合性単量体に由来する構造単位からなる鎖状構造を有する数平均重合度が10〜200の有機重合体であって、当該有機重合体における複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに、多環構造を有する脂環式炭化水素基を有することを特徴とする有機重合体である。
そして、本発明は、
(2) 前記有機重合体における複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに、下記の一般式(I);
(式中、R4は多環構造を有する1価の脂環式炭化水素基、nは0または1を示す)
で表される基(II)、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基であって、R1、R2およびR3のうちの少なくとも1つが上記の一般式(II)で表される基(II)である。]
で表される基(I)を有する上記(1)の有機重合体である。
(3) 有機重合体における複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに有する多環構造を有する脂環式炭化水素基が、橋架け脂環式炭化水素基である前記(1)または(2)の有機重合体;
(4) 多環構造を有する脂環式炭化水素基が、アダマンチル基またはビアダマンチル基である前記(1)〜(3)のいずれかの有機重合体;および、
(5) 芳香族ビニル単量体およびメタクリル酸エステルから選ばれる1種または2種以上の単量体に由来する構造単位を50モル%以上の割合で有する有機重合体である前記(1)〜(4)のいずれかの有機重合体;
である。
(6) (i)付加重合性単量体を重合して鎖状構造を有する有機重合体を製造した後に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合停止剤または多環構造を有する脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いて重合の停止または重合体鎖末端のキャッピングを行なうか、(ii)多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合開始剤を用いて付加重合性単量体を鎖状に重合させるか、或いは(iii)多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合開始剤を用いて付加重合性単量体を鎖状に重合した後に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合停止剤または多環構造を有する脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いて重合の停止または重合体鎖末端のキャッピングを行なう、ことを特徴とする前記(1)の有機重合体の製造方法である。
本発明の有機重合体は、重合度が低いことにより、成形・加工性、特に溶融成形性、取り扱い性に優れている。
本発明の有機重合体は、使用後に溶融などによって容易に再利用することができ、リサイクル性に優れている。
本発明の製造方法により、上記した優れた特性を有する本発明の有機重合体を、簡単に且つ円滑に製造することができる。
本発明の有機重合体は、前記した特性を活かして、各種用途、例えば、家電製品の筐体、OA機器、食品容器、包装材用発泡体、食品トレー、自動車部品、電気・電子部品、フィルム・シート、医療材料、伸縮部材などに有効に使用することができる。
本発明の有機重合体は、付加重合性単量体に由来する構造単位からなる鎖状構造を有する数平均重合度が10〜200の有機重合体であって、当該有機重合体における複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに、多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する。
本発明の有機重合体が、複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに有している「多環構造を有する脂環式炭化水素基」とは、2個以上の脂肪族環(脂環)を有する炭化水素基をいう。
また、本発明における「重合体鎖末端」とは、鎖状構造を有する有機重合体を構成している重合体鎖における末端の総称であり、主鎖(幹をなす重合体鎖)の末端および分岐鎖(枝をなす重合体鎖)の末端を包含する。
本発明の有機重合体は、付加重合性単量体に由来する構造単位からなり且つ鎖状構造を有する有機重合体であれば、直鎖状の有機重合体であってもよいし、または分岐鎖状の重合体であってもよく、分岐鎖状の有機重合体である場合は、グラフト構造を有する有機重合体であってもよいし、または星型構造を有する有機重合体であってもよい(以下「有機重合体」を単に「重合体」ということがある)。
また、本発明の重合体が分岐鎖構造(グラフト構造、星型構造など)を有する重合体である場合は、重合体における3つ以上の重合体鎖末端のうちの、1つの重合体鎖末端にのみ多環構造を有する脂環式炭化水素基を有していてもよいし、2つの重合体鎖末端に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有していてもよいし、3つ以上の重合体鎖末端に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有していてもよいし、或いは分岐鎖構造を有する重合体の全ての重合体鎖末端に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有していてもよい。多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合体鎖末端の割合が多くなるほど、ガラス転移温度の上昇度合が大きくなり、また熱分解温度も高くなる傾向にあり、有機重合体の耐熱性がより向上する。
本発明の重合体が分岐鎖構造を有する重合体である場合には、当該重合体における3つ以上の重合体鎖末端のうちの1/2以上、特に2/3以上に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有することが、耐熱性などの点から好ましい。
(式中、R4は多環構造を有する1価の脂環式炭化水素基、nは0または1を示す)
で表される基(II)、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基であって、R1、R2およびR3のうちの少なくとも1つが上記の一般式(II)で表される基(II)である。]
で表される基(I)を有する有機重合体であることが、製造の容易性、耐熱性などの点から好ましい。
多脂環式炭化水素基は、場合により多脂環式炭化水素基を構成している2個以上の脂環のうちの1個または2個以上に脂肪族不飽和結合を有していてもよい。但し、脂環中に存在する脂肪族不飽和結合は、重合に関与しないか又は重合性が低いことが必要である。そうでないと、重合体鎖末端への多脂環式炭化水素基の導入が円滑に行なわれない場合がある。
また、上記の一般式(II)においてnが1であるときの基(II)(多脂環式炭化水素基である基R4で置換されたフェニル基)の具体例としては、下記の化学式(a’)〜(c’)、(d1’)〜(d3’)、(e1’)〜(e2’)、(f’)、(g1’)〜(g2’)、(h’)に示すような、多脂環式炭化水素基R4を置換基として有するフェニル基を挙げることができる。
その際に、多脂環式炭化水素基R4のベンゼン環への結合位置は、重合体鎖末端の炭素原子への結合部位に対してオルト位、メタ位またはパラ位のいずれであってもよく、そのうちでもR4は、パラ位に結合していることが、重合体鎖末端に多脂環式炭化水素基(基R4)を定量的に導入し得る点から好ましい。
重合体のガラス転移温度の上昇度合を大きくし、また熱分解温度をも高くして、耐熱性をより向上させる観点からは、R1、R2およびR3のうちの2つまたは3つが、上記の一般式(II)で表される基(II)であることが好ましい。
上記の一般式(I)で表される基(I)において、R1、R2およびR3のうちの複数(2つまたは3つ)が上記の一般式(II)で表される基(II)である場合は、複数の基(II)は、互いに同じであってもよいし、または異なっていてもよい。
上記の一般式(I)で表される基(I)において、R1、R2およびR3のうちの2つが、基(II)以外の基である場合は、それらは互いに同じであっても、または異なっていてもよい。
R1、R2およびR3のうちの1つまたは2つが、基(II)以外の前記した水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基である場合は、水素原子、メチル基またはフェニル基であることが、製造の容易性の点から好ましい。
不飽和二重結合を有する単量体としては、例えば、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド系化合物、オレフィン、ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニルを、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンとしては例えば、塩化ビニル、弗化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデンなどを挙げることができる。
本発明の重合体が、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、1−(4−ビニルフェニル)アダマンタンなどの芳香族ビニル化合物の1種または2種以上に由来する構造単位から主としてなる場合は、当該芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の割合が、重合体を構成する全構造単位の合計モル数に基づいて、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70〜100モル%であることが更に好ましい。
本発明の重合体が、メタクリル酸メチル、メタクリル酸tert−ブチルやその他の上記したメタクリル酸エステルの1種または2種以上に由来する構造単位から主としてなる場合は、当該メタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合が、重合体を構成する全構造単位の合計モル数に基づいて、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70〜100モル%であることが更に好ましい。
重合体の数平均重合度が200を超えると、重合体鎖末端に多脂環式炭化水素基を導入したことによるガラス転移点の上昇効果、それに伴う耐熱性の向上効果が十分に発揮されにくくなる。一方、重合体の数平均重合度が10未満であると、重合体としての特性が発揮できにくくなる。
なお、本明細書における重合体の数平均重合度は、重合体の数平均重合度を、重合体の形成に用いた付加重合性単量体の分子量で除した値を示し、その詳細な測定(算出)方法は、以下の実施例に記載するとおりである。本発明の重合体が複数の付加重合性単量体から形成されている場合には、重合体を形成している各単量体のモル分率とその分子量との積の合計を「重合体の形成に用いた付加重合性単量体の分子量(M)」と見なして、当該分子量(M)で重合体の数平均分子量を除した値を「数平均重合度」とする。例えば、数平均分子量2000の重合体Aが、分子量100の付加重合性単量体aの80モル%と、分子量120の付加重合性単量体bの20モル%とから形成されている場合は、(100×0.80)+(120×0.20)=80+24=104を、重合体Aを形成している付加重合性単量体の分子量とし、重合体Aの分子量2000÷104=19.2≒19を、重合体Aの数平均重合度とする。
また、多脂環式炭化水素基の分子量は、本発明の効果を良好に発揮させるために、付加重合性単量体の分子量(M)よりも大きいことが好ましく、1.3倍以上であるのがより好ましく、2倍以上であるのがさらに好ましい。
そのうちでも、重合体鎖末端に多脂環式炭化水素基を定量的に導入するという観点から、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、リビングラジカル重合などのリビング重合を行なうことが好ましく、リビングアニオン重合を行なうことがより好ましい。
(i) リビング重合開始剤を使用して付加重合性単量体を重合して鎖状構造を有する末端成長型の有機重合体を製造した後に、多脂環式炭化水素基を有する重合停止剤または多環構造を有する脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いてリビング末端の重合の停止またはキャッピングを行なう方法[以下、「製造法(i)」という];
(ii) 多脂環式炭化水素基を有するリビング重合開始剤を用いて付加重合性単量体を鎖状に重合させる方法[以下、「製造法(ii)」という];
(iii) 多脂環式炭化水素基を有するリビング重合開始剤を用いて付加重合性単量体を鎖状に重合した後に、多脂環式炭化水素基を有する重合停止剤または多脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いてリビング末端における重合の停止またはキャッピングを行なう方法[以下、「製造法(iii)」という];
などを挙げることができる。
また、製造法(ii)による場合は、重合開始端に多脂環式炭化水素基を有する重合体が得られ、製造法(iii)による場合は重合開始端と重合停止端の両方に多脂環式炭化水素基を有する重合体を得ることができる。
下記の一般式(IV)で表されるキャッピング剤を用いた場合には、キャッピング後にメタノール、エタノール、各種ハロゲン化アルキルなどの重合停止剤を添加するか、または重合混合物を前記したメタノールなどの重合停止剤中に投入することによって、重合を停止することができる
[式中、R4は多脂環式炭化水素基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基または直接結合(結合手:−)、Xはハロゲン原子、R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基、nは0または1、pは1または2、qは0または1であって、p+q=2である。]
上記の一般式(III)で表される重合停止剤において、Xは臭素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子であり、そのうちでも臭素、塩素であることが、反応の定量性の点から好ましい。
例えば、1−(2−ブロモエチル)アダマンタンを例に挙げると、下記の反応式(1)で示すように、1−アダマンチル−2−エタノールと三臭化リンをジクロロメタン中で反応させることにより製造することができる。
例えば、対称型の1,1−ビス(4−アダマンチルフェニル)エチレンは、下記の反応式(2)に示すように、1−フェニルアダマンタンに臭素を反応させて得られる1−(4−ブロモフェニル)アダマンアンにマグネシウムを反応させて得られる4−アダマンチル−フェニルマグネシウムブロミド(Grignard試薬)の2当量以上と酢酸エチル1当量を反応させ、生成したアルコールを脱水することにより製造することができる。
アニオン重合開始剤の使用量は、一般に、付加重合性単量体の合計質量に基づいて、0.5〜10モル%、特に1〜10モル%であることが、本発明で規定する数平均重合度を有する重合体が円滑に得られる点から好ましい。
有機溶媒の使用量は、付加重合性単量体1gに対して、0.1〜30mL、特に1〜20mL程度であることが、撹拌の容易性、製造コストなどの点から好ましい。
上記の一般式(V)において、R6は炭素数1〜4のアルキレン基、すなわちメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基、或いは直接結合(結合手:−)あり、そのうちでもR6はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが、多脂環式炭化水素基を有するアニオン重合開始剤の製造の容易性、安定性、重合開始速度などの点から好ましい。
限定されるものではないが、一般式(V)で表されるリチウム触媒の具体例としては、2−アダマンチル−エチルリチウム、3−アダマンチル−プロピルリチウム、4−アダマンチル−ブチルリチウムなどを挙げることができる。
有機溶媒の使用量は、付加重合性単量体1gに対して、0.1〜30mL、特に1〜20mL程度であることが、撹拌の容易性、製造コストなどの点から好ましい。
以下の例において、参考例1〜4、実施例1〜6および比較例1〜5で得られた生成物(中間化合物、最終化合物、重合体)の構造の確認、各実施例および比較例で得られた重合体の数平均分子量、分子量分布の測定、数平均重合度、ガラス転移温度の測定は次のようにして行った。
以下の参考例1〜4で合成した生成物(中間化合物、最終化合物)、実施例1〜6および比較例1〜5で得られた重合体のそれぞれを重クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(ブルカー社製「BRUCKER DPX300」)を使用して、プロトン核(1H)、炭素核(13C)を27℃で測定して、その構造の確認を行った。
また、Grignard試薬の生成反応の追跡には、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製「GC−14B」)を使用し、カラム温度150〜230℃にて測定を行った。
ピーク分子量が既知の標準ポリスチレンを用い、該標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製「HLC−8020」)を使用して、重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定した(溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃)。分子量分布は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)として求めた。
上記(2)で得られた重合体の数平均分子量(Mn)を、重合体の製造に用いた付加重合性単量体の分子量(スチレンの分子量=104、α−メチルスチレンの分子量=118、メタクリル酸メチルの分子量=100)で除した値を数平均重合度とした。
DSC装置(Seiko Instruments社製「DSC6220」)を用いて測定した。
具体的には、ポリスチレンおよびメタクリル酸メチルの測定では、一旦毎分20℃の昇温速度で室温から130℃まで試料を加熱し、その後室温まで急冷した。この後昇温速度を毎分10℃として昇温して、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
また、ポリ(α−メチルスチレン)の測定では、毎分20℃の昇温速度で室温から180℃まで試料を加熱し、その後室温まで急冷した。その後、ポリスチレンと同様に昇温速度を毎分10℃として昇温し、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
熱分解測定装置(Seiko Instruments社製「TG/DTA6200」)を用いて、窒素気流下、室温から20℃/分で130℃まで加熱した後、室温まで急冷し、その後10℃/分で600℃まで昇温して試料の質量減少を測定し、10%重量減少した温度(T10)を熱分解温度の指標とした。
上記の反応式(1)に従って、1−(2−ブロモエチル)アダマンタンを合成した。
具体的には、窒素置換した100mLの二口フラスコに、1−アダマンタンエタノール1.00g(5.56mmol)と脱水した塩化メチレン10mLを入れ、ここに三臭化リンの1molを塩化メチレン20mLに溶解した溶液を0℃で滴下した。その後、室温で一晩放置した後、NMR測定にて原料の消費が確認されたため、水30mLを滴下して反応を停止させた。次いで、水層を塩化メチレンで3回抽出し、抽出に用いた塩化メチレン液と有機層(塩化メチレン層)を一緒にして水で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行ったところ、目的とする1−(2−ブロモエチル)アダマンタン0.27g(1.11mmol、収率20%)が得られた。
これにより得られた1−(2−ブロモエチル)アダマンタンの1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルは図1の(a)および(b)に示すとおりであり、それぞれのピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ= 1.51(s,6H,C(2)H2),1.64(m,8H,C(4)H2 and CH2C),1.95((br,3H,C(3)H), 3.41(t,J=9 Hz, 2H,CH2Br).
・13C−NMR(75MHZ,CDCl3):δ=28.9,29.5,34.4,37.4,42.5,48.5.
上記の反応式(2)に従って、1,1−ビス[4−(1−アダマンチル)フェニル]エチレンを合成した。
(1)1−(4−ブロモフェニル)アダマンタンの合成:
窒素雰囲気下で、500mLの二口フラスコに、1−フェニルアダマンタン6.41g(30.2mmol)と四塩化炭素40mLを加えた後、臭素30mL(582mmol、約20当量)を加え、室温で撹拌した。20分後、ガスクロマトグラフィーで原料の消費を確認し、1時間半後に反応溶液を氷浴中に注ぎ込み、過剰の臭素を亜硫酸水素ナトリウムで処理した後、塩化メチレンで3回抽出した。抽出に用いた塩化メチレン液と有機層を一緒にして水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去し、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行ったところ、目的とする1−(4−ブロモフェニル)アダマンタン6.61g(22.7mmol、収率75%)が得られた。NMR測定によって生成物が1−(4−ブロモフェニル)アダマンタンであることを確認した。
(i) 窒素雰囲気下で、200mLの二口フラスコに、マグネシウム0.74g(30.5mmol)とテトラヒドロフラン(以下「THF」という)10mLを加え、1,2−ジブロモエタンを数滴加えてマグネシウムの表面を活性化させた。そこに、上記(1)で得られた1−(4−ブロモフェニル)アダマンタン6.59g(22.6mmol)をTHF20mLに溶解した溶液を氷浴中で滴下し、85〜90℃で2時間半還流し、ガスクロマトグラフィーにて原料の消費を確認した。続いて系を0℃に冷却した後、酢酸エチル0.95g(10.8mmol)をTHF5mLに溶解した溶液を系中に滴下した。室温で終夜撹拌した後、系を90℃で3時間還流した。系を室温まで冷却した後、2N−HClで反応を停止させ、THFを減圧留去し、水層を塩化メチレンで3回抽出した。有機層(塩化メチレン層)を混合した後、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去したところ、4.65gの白色固体が得られた。
(ii) 次いで、上記(i)で得られた白色固体の全量をトルエン60mLに溶解した溶液に、触媒量のp−トルエンスルホン酸約20mg(0.1mmol)を加え、130℃で2時間還流した。系を室温に冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLで反応を停止させた後、トルエン層を分離した。その後、水層を塩化メチレンで3回抽出し、有機層(トルエン層と抽出に用いた塩化メチレンとの混合液)を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、有機溶媒を減圧留去し、粗1,1−ビス[4−(1−アダマンチル)フェニル]エチレン4.73g(10.6mmol、98%)を得た。
これによって得られた1,1−ビス[4−(1−アダマンチル)フェニル]エチレンの1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルは図2の(a)および(b)に示すとおりであり、それぞれのピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(300MHz,CDCL3):δ= 1.78(s,12H,C(4)H2),1.94(s,12H,C(2)H2),2.10(br,6H,C(3)H),5.40(s,2H,CH2=),7.31(s,8H,aromatic).
・13C−NMR(75MHz,CDCL3):δ= 29.3,36.4,37.2,43.5,113.5,124.9,128.3,139.0,150.0,151.2.
上記の反応式(3)に従って、1−[4−(1−アダマンチル)フェニル]エチレンを合成した。
(1) 窒素雰囲気下で、200mLの二口フラスコに、マグネシウム3.60g(143mmol)と20mLの脱水THFを加えた後、1,2−ジブロモエタンを数滴加えたマグネシウムの表面を活性化した。そこに、参考例2の(1)と同様にして製造した1−(4−ブロモフェニル)アダマンタン10.6g(36.5mmol)を脱水THF40mLに溶解した溶液を室温で滴下して還流した。ガスクロマトグラフィーにて反応の完結が確認された後に、系を0℃に冷却し、蒸留精製したアセトフェノン4.8g(40mmol)を滴下した。室温で1時間撹拌した後、水に注意深く注ぐことで反応を停止させた。2N−HClを加えて中和し、THFを減圧下で除去した後、水層をエーテルで3回抽出し、有機層(エーテル層)を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧留去し淡黄色固体状の粗生成物を得た。この粗生成物をヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、更にヘキサン中で再結晶を繰り返して白色結晶を得た。
これによって得られた1−[4−(1−アダマンチル)フェニル]−1−フェニルエチレンの1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルは図3の(a)および(b)に示すとおりであり、それぞれのピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ= 1.79(s,6H,C(4)H2),1.94(s,6H,C(2)H2),2.11(br,3H,C(3)H),5.41 and 5.47 (2s,2H,CH2=),7.31(m,9H,aromatic).
・13C−NMR(75MHz,CDCl3):δ= 29.3,36.4,37.1,43.5,114.1,125.0,127.9,128.2,128.4,128.7,138.8,142.1,150.2,151.3.
上記の反応式(4)に従って、1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエチレンを合成した。
(1)1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエタノールの合成:
200mLの二口フラスコに、窒素雰囲気下で、マグネシウム1.50g(61.7mmol)に脱水THF15mLを加えた後、1,2−ジブロモエタンを数滴加えてマグネシウムの表面を活性化した。これに、特許文献1に記載の方法にて合成した、3−(4−ブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン6.00g(14.1mmol)の脱水THF溶液120mLを室温で滴下した。ガスクロマトグフィーにて反応の完結が確認された後に、系を0℃に冷却し、蒸留精製したアセトフェノン2.67g(22.2mmol)を滴下した。室温で1時間撹拌した後、水に注意深く注ぐことで反応を停止させた。2N−HClを加えて中和し、水層をクロロホルムで3回抽出し、混合した有機層を水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧留去して、淡黄色固体[1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエタノール](8.83g)を得た。粗生成物は精製を行わずに、そのまま次の反応に使用した。
200mLの二口フラスコに、上記(1)で得られた淡黄色固体[1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエタノール]8.83g、トルエン80mLおよび触媒量(約20mg)のp−トルエンスルホン酸を加え、6時間加熱還流を行った。系を5%NaOH水溶液で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去した後、得られた茶褐色の粗生成物を、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルクロマトグラフィーにより分離精製し、目的とする白色固体状の1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエチレン0.81g(1.8mmol、収率13%、融点183−186℃)を得た。
これにより得られた1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエチレンの1H−NMRスペクトルおよび13C− NMRスペクトルを図4の(a)および(b)に示す。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、カリウムナフタレン129mg(0.775mmol)をTHF5mLに溶解した溶液に、スチレン549mg(5.28mmol)をTHF8mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリスチレンを合成した。反応溶液は濃赤色を呈していた。10分後に、参考例2で合成した1,1−ビス(4−アダマンチルフェニル)エチレン218mg(0.486mmol)をTHF37mLに溶解した溶液を−78℃で添加して10分間反応させた。反応系は濃赤色からやや明るい赤色に変化した。反応をメタノールで停止後、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の構造を1H−NMR測定で調べたところ、両末端に2,2−ビス(4−アダマンチルフェニル)エチル基を有するポリスチレンであることが確認された。
この重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、数平均分子量(Mn)が4000、重量平均分子量が4480、分子量分布(Mw/Mn)が1.12、数平均重合度が30、ガラス転移温度が113℃、熱分解温度(T10)が415℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、カリウムナフタレン64.0mg(0.386mmol)をTHF4mLに溶解した溶液に、スチレン493mg(4.74mmol)をTHF8mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリスチレンを合成した。反応溶液は濃赤色を呈していた。10分後に参考例3で合成した1−(4−アダマンチルフェニル)−1−フェニルエチレン122mg(0.390mmol)をTHF溶液3mLに溶解した溶液を−78℃で添加して10分間反応させた。反応系は濃赤色からやや明るい赤色に変化した。反応をメタノールで停止後、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の構造を1H−NMR測定で調べたところ、両末端に2−(4−アダマンチルフェニル)−2−フェニルエチル基を有するポリスチレンであることが確認された。
この重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、数平均分子量(Mn)が3200、重量平均分子量が3500、分子量分布(Mw/Mn)が1.10、数平均重合度が31、ガラス転移温度が100℃、熱分解温度(T10)が413℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、カリウムナフタレン69.4mg(0.418mmol)をTHF3mLに溶解した溶液に、スチレン518mg(4.98mmol)をTHF8mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリスチレンを合成した。反応溶液は濃赤色を呈していた。反応液に参考例1で合成した1−(2−ブロモエチル)アダマンタン112mg(0.460mmol)をTHF溶液2mLに溶解した溶液を−78℃で添加して、10分間反応させた。反応系の濃赤色は、1−(2−ブロモエチル)アダマンタンの添加直後には濃い紫色に変化した。ガラス製容器を開封後に、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の構造を1H−NMR測定で調べたところ、両末端に2−(1−アダマンチル)エチル基を有するポリスチレンであることが確認された。
この重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、数平均分子量(Mn)が2700、重量平均分子量が3000、分子量分布(Mw/Mn)が1.11、数平均重合度が26、ガラス転移温度が87℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、カリウムナフタレン38.0mg(0.228mmol)をTHF2mLに溶解した溶液に、スチレン355mg(3.41mmol)をTHF5mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリスチレンを合成した。反応溶液は濃赤色を呈していた。反応液に参考例4で合成した1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエチレン154mg(0.343mmol)をTHF溶液18mLに溶解した溶液を−78℃で添加して、10分間反応させた。反応系の濃赤色は、1−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−1−フェニルエチレンの添加直後には濃い紫色に変化した。ガラス製容器を開封後に、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の構造を1H−NMR測定で調べたところ、両末端に2−[4−(3−(1,1’−ビアダマンチル)フェニル)]−2−フェニルエチル基を有するポリスチレンであることが確認された。
この重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、数平均分子量(Mn)が3900、重量平均分子量が4200、分子量分布(Mw/Mn)が1.08、数平均重合度が29、ガラス転移温度が103℃、熱分解温度(T10)が412℃であった。
(1) 実施例2の(1)と同じように、高真空下に、ガラス製容器中で、カリウムナフタレン64.0mg(0.386mmol)をTHF2.5mLに溶解した溶液に、スチレン493mg(4.74mmol)をTHF7mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリスチレンを合成した。反応をメタノールで停止後、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体(両末端にスチレン由来の構造単位が存在する、末端に多脂環式炭化水素基を持たないポリスチレン)を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、数平均分子量(Mn)が2700、重量平均分子量が3000、分子量分布(Mw/Mn)が1.11、数平均重合度が26、ガラス転移温度が75℃、熱分解温度(T10)が400℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、リチウムナフタレン30.0mg(0.224mmol)をTHF3mLに溶解した溶液に、スチレン376mg(3.62mmol)をTHF5mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリスチレンを合成した。反応溶液は明るい赤色を呈していた。10分後に反応をメタノールで停止後、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体(両末端にスチレン由来の構造単位が存在する、末端に多脂環式炭化水素基を持たないポリスチレン)を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、数平均分子量(Mn)が3400、重量平均分子量が3770、分子量分布(Mw/Mn)が1.11、数平均重合度が33、ガラス転移温度が77℃、熱分解温度(T10)が400℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、sec−ブチルリチウム12.4mg(0.193mmol)をヘプタン3mLに溶解した溶液に、スチレン498mg(4.79mmol)をTHF7mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、片末端成長型リビングポリスチレンを合成した。反応溶液は橙赤色を呈していた。10分後に反応をメタノールで停止後、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体(片末端にsec−ブチル基を有し、もう一方の末端にスチレン由来の構造単位が存在するポリスチレン)を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、数平均分子量(Mn)が2600、重量平均分子量が2730、分子量分布(Mw/Mn)が1.05、数平均重合度が25、ガラス転移温度が65℃であった。
特に、重合体鎖末端に多脂環式炭化水素基を有する実施例1〜4の重合体は、片末端にsec−ブチル基を有し、もう一方の末端にスチレン由来の構造単位が存在する、多脂環式炭化水素基を持たない比較例3の重合体に比べて、ガラス転移温度が22℃以上も高くなっている。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、カリウムナフタレン20.4mg(0.123mmol)をTHF2mLに溶解した溶液に、α−メチルスチレン559mg(4.74mmol)をTHF3mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリ(α−メチルスチレン)を合成した。反応溶液は濃赤色を呈していた。20時間後に、参考例3で合成した1−(4−アダマンチルフェニル)−1−フェニルエチレン52.9mg(0.169mmol)をTHF4mLに溶解した溶液を−78℃で添加して、さらに10分間反応させた。反応系は濃赤色からやや明るい赤色に変化した。反応をメタノールで停止後、重合溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の構造を1H−NMR測定で調べたところ、両末端に2−(4−アダマンチルフェニル)−2−フェニルエチル基を有するポリ(α−メチルスチレン)であることが確認された。
この重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すように、数平均分子量(Mn)が3100、重量平均分子量が3300、分子量分布(Mw/Mn)が1.05、数平均重合度が26、ガラス転移温度が160℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、カリウムナフタレン21.6mg(0.130mmol)をTHF2mLに溶解した溶液に、−78℃で、α−メチルスチレン244mg(2.07mmol)をTHF3mLに溶解した溶液を激しく攪拌しながら加えて、両末端成長型リビングポリ(α−メチルスチレン)を合成した。反応溶液は濃赤色を呈していた。20時間後に重合反応をメタノールで停止後、反応溶液を大過剰のメタノールに注ぎ込むことにより重合体[両末端にα−メチルスチレン由来の構造単位が存在する、末端に多脂環式炭化水素基を持たないポリ(α−メチルスチレン)]を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すように、数平均分子量(Mn)が3300、重量平均分子量が3500、分子量分布(Mw/Mn)が1.06、数平均重合度が28、ガラス転移温度が140℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、sec−ブチルリチウム4.48mg(0.0700mmol)をヘプタン2mLに溶解した溶液に、−78℃下、参考例2で合成した1,1−ビス(4−アダマンチルフェニル)エチレン62.7mg(0.140mmol)をTHF10mLに溶解した溶液を添加して10分間反応させた。赤色を呈した系に、塩化リチウム14.9mg(0.350mmol)をTHF2mLに溶解した溶液を−78℃で添加した後、10分間静置した。続いて、メタクリル酸メチル392mg(3.92mmol)をTHF5mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、片末端成長型リビングポリメタクリル酸メチルを合成した。反応溶液は無色透明であった。1時間後に反応をメタノールで停止し、重合溶液を大過剰のヘキサンに注ぎ込むことにより重合体を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の構造を1H−NMR測定で調べたところ、片末端に5,5−ビス(4−アダマンチルフェニル)−3−メチルペンチル基を有するポリメタクリル酸メチルであることが確認された。
この重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すように、数平均分子量(Mn)が6800、重量平均分子量が7070、分子量分布(Mw/Mn)が1.04、数平均重合度が62、ガラス転移温度が113℃であった。
(1) 高真空下に、ガラス製容器中で、sec−ブチルリチウム3.58mg(0.056mmol)をヘプタン2mLに溶解した溶液に、−78℃下、1,1−ジフェニルエチレン20.2mg(0.112mmol)をTHF2mLに溶解した溶液を添加して10分間反応させた。赤色を呈した系に、塩化リチウム11.9mg(0.280mmol)をTHF2mLに溶解した溶液を−78℃で添加した後、10分間静置した。続いて、メタクリル酸メチル345mg(3.45mmol)をTHF5mLに溶解した溶液を、−78℃で激しく攪拌しながら加えて、片末端成長型リビングポリメタクリル酸メチルを合成した。反応溶液は無色透明であった。1時間後に反応をメタノールで停止し、重合溶液を大過剰のヘキサンに注ぎ込むことにより重合体を沈殿させた。
(2) 上記(1)で得られた重合体の分子量、分子量分布、重合度、ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すように、数平均分子量(Mn)が6300、重量平均分子量が6740、分子量分布(Mw/Mn)が1.07、数平均重合度が60、ガラス転移温度が89℃であった。
Claims (6)
- 付加重合性単量体に由来する構造単位からなる鎖状構造を有する数平均重合度が10〜200の有機重合体であって、当該有機重合体における複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに、多環構造を有する脂環式炭化水素基を有することを特徴とする有機重合体。
- 有機重合体における複数の重合体鎖末端のうちの少なくとも1つに有する多環構造を有する脂環式炭化水素基が、橋架け脂環式炭化水素基である請求項1または2に記載の有機重合体。
- 多環構造を有する脂環式炭化水素基が、アダマンチル基またはビアダマンチル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機重合体。
- 芳香族ビニル単量体およびメタクリル酸エステルから選ばれる1種または2種以上の単量体に由来する構造単位を50モル%以上の割合で有する有機重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機重合体。
- (i)付加重合性単量体 を重合して鎖状構造を有する有機重合体を製造した後に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合停止剤または多環構造を有する脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いて重合の停止または重合体鎖末端のキャッピングを行なうか、(ii)多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合開始剤を用いて付加重合性単量体を鎖状に重合させるか、或いは(iii)多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合開始剤を用いて付加重合性単量体を鎖状に重合した後に多環構造を有する脂環式炭化水素基を有する重合停止剤または多環構造を有する脂環式炭化水素基を有するキャッピング剤を用いて重合の停止または重合体鎖末端のキャッピングを行なう、ことを特徴とする請求項1に記載の有機重合体の製造方法。
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