JP2009293016A - インクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
インクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】少なくとも、第1の色材及び第2の色材の、2つの色材を含有するインクジェット用インクであって、前記第1の色材が、イエローインクに用いる色材の一般式(I)で表される化合物であり、前記第2の色材が、一般式(II)で表される化合物及び/又は一般式(III)で表される化合物であり、第1の色材及び第2の色材を特定の質量比率で含有することを特徴とするインクジェット用インク。
【選択図】なし
Description
近年、画像保存性に対する要求が特に高まってきており、特許文献1に記載された色材を含有してなるインクを用いても、形成した画像の耐光性は、もはや十分なものとは言えなくなってきている。さらに、特許文献1に記載された色材は、高い光学濃度を与える一方で、画像の色調が緑味を帯びており、シアンやマゼンタのインクと併用する場合に、レッドの色再現範囲が大きく損失するという別の課題があった。また、特許文献2に記載された技術について本発明者らが検討したところ、上記特許文献1に記載された色材と、それとは異なる色材とを併用しても、形成した画像がやはり緑味を帯びていることがわかった。このことは、従来の技術では、シアンやマゼンタのインクと併用する場合に、レッドの色再現範囲が大きく損失するという課題が依然として解決されておらず、未だ色調に優れるインクの提供がなされていないことを示している。
(一般式(I)中、R1、R2、Y1、及びY2はそれぞれ独立に、一価の基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に、ハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、Z1及びZ2はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。)
(一般式(II)中、R3及びY3はそれぞれ独立に、一価の基であり、X3はハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、Z3は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基である。)
(一般式(III)中、R4及びY4はそれぞれ独立に、一価の基であり、X4はハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、Z4及びZ5はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、M2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。)
なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、以下の記載において、第1の色材である、一般式(I)で表される化合物、及び一般式(IV)で表される化合物は、それぞれ「一般式(I)の化合物」、及び「一般式(IV)の化合物」と省略して記載することがある。また、第2の色材である、一般式(II)で表される化合物、及び一般式(III)で表される化合物は、それぞれ「一般式(II)の化合物」、及び「一般式(III)の化合物」と省略して記載することがある。さらに、第2の色材である、一般式(V)で表される化合物、及び一般式(VI)で表される化合物は、それぞれ「一般式(V)の化合物」、及び「一般式(VI)の化合物」と省略して記載することがある。
前記したように、インクジェット用インクとして広く用いられるイエロー、マゼンタ、及びシアンの各インクの中でも特に、イエローインクが、形成される画像の耐光性に劣る傾向がある。そこで、本発明者らはイエローインクに用いる色材について様々な検討を行った。その結果、特に、上記特許文献1に記載されている下記一般式(I)の化合物、及び、その中でも特に下記一般式(IV)の化合物が、耐光性及び発色性が優れることに着目した。
以下、本発明にかかるインクジェット用インク(以下、単にインクと呼ぶこともある)を構成する成分や、インクの物性などについて詳細に述べる。
〔第1の色材:一般式(I)で表される化合物、及び、一般式(IV)で表される化合物〕
本発明のインクは、耐光性及び発色性に優れるという特徴を有する、下記一般式(I)の化合物を、第1の色材として含有することが必要である。下記一般式(I)の化合物の中でも特に、下記一般式(IV)の化合物を使用することが好ましい。以下、これらの一般式について説明する。
アシル基(例えば、アセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル基)。アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基)。スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル基)。
アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基)。ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ基)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ基)。スルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ基)。2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基、ペンタクロロフェニル基)。複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル基)。
本発明のインクは、第1の色材として使用する上記で説明した前記一般式(I)の化合物又は前記一般式(IV)の化合物に加えて、発色性に優れるという特徴を有する第2の色材を含有してなることが必要である。本発明では、第2の色材として、下記一般式(II)の化合物及び/又は下記一般式(III)の化合物を用いる。下記一般式(II)の化合物の中でも特に下記一般式(V)の化合物、また、下記一般式(III)の化合物の中でも特に下記一般式(VI)の化合物を使用することが好ましい。
本発明で用いる色材がインク中に含まれているか否かの検証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークについての最大吸収波長
(3)(1)のピークについてのマススペクトルのM/Z(posi)、M/Z(nega)
・カラム:SunFire C18(日本ウォーターズ製)2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:下記表1
・イオン化法
・ESI
キャピラリ電圧:3.5kV
脱溶媒ガス:300℃
イオン源温度:120℃
・検出器
posi:40V 200〜1500amu/0.9sec
nega:40V 200〜1500amu/0.9sec
インク全質量を基準とした、第2の色材の含有量(質量%)は、第1の色材の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(第2の色材/第1の色材)=0.002以上0.50以下であることが必要である。より具体的には、{〔一般式(II)、一般式(III)、一般式(V)、及び一般式(VI)の化合物の含有量〕/〔一般式(I)、及び一般式(IV)の化合物の含有量〕}=0.002以上0.50以下であることが必要である。質量比率が0.002未満であると、インクの保存安定性が得られず、0.50を超えると、記録耐久性が得られない。色材の含有量の質量比率を上記範囲となるように構成することで、第1の色材が有する耐光性と、第2の色材が有する耐光性との組み合わせから予測される性能を上回る高いレベルの耐光性を有する画像を形成することができる。また、好ましい色調の画像が得られ、インクとしての信頼性も満足できる。
本発明のインクは、pHが7.0以上10.0以下であることが好ましい。インクのpHが10.0を超えると、インクカートリッジやインクジェット記録装置の、インクと接触する部材を構成する材料において、その材料の種類によっては、以下の問題が起こる場合があるためである。すなわち、不純物がインク中に溶出して、インクの性能が低下する場合がある。また、インクと接触する部材を構成する材料が劣化する場合がある。さらに、長期間連続して記録を行う際に、記録ヘッドの発熱部接液面の劣化(溶解)や、配線の断線が起きる場合がある。一方、インクのpHが7.0未満であると、一般式(I)の化合物又は一般式(IV)の化合物の溶解性が低下するため、インクの保存安定性が低下する場合がある。
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性ポリマーなど、種々の添加剤を含有してもよい。
本発明のインクは、インクジェット記録方法などに好適に用いられるが、フルカラーの画像などを形成するために、本発明のインクを、本発明のインクとは別の色調を有するインクと組み合わせて用いることができる。本発明のインクは、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク及びブルーインクなどから選択される少なくともいずれか1種のインクと共に用いることが好ましい。また、これらのインクと実質的に同一の色調を有する、所謂淡インクをさらに組み合わせて用いることもできる。これらのインク又は淡インクの色材は、公知の染料であっても、新規に合成された色材であっても用いることができる。
本発明のインクジェット記録方法は、インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、該インクが、上記で説明した本発明のインクジェット用インクであることを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法などに適用できる。特に、本発明は、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を適用することが好ましい。
本発明のインクカートリッジは、インクを収容してなるインク収容部を備えたインクカートリッジであって、収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクジェット用インクであることを特徴とする。
本発明の記録ユニットは、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットであって、収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクジェット用インクであることを特徴とする。本発明の記録ユニットの好適なものとしては、特に、前記記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用することによりインクを吐出する方式であるものを挙げることができる。さらに、本発明においては、金属やケイ素、及びこれらの酸化物を含有する発熱部接液面を有する記録ヘッドである場合に、より好ましい効果が得られる。前記発熱部接液面を構成する金属及び/又は金属酸化物の具体例としては、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、若しくはAlなどの金属、又はこれらの金属の酸化物などが挙げられる。
本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって、収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクジェット用インクであることを特徴とする。本発明のインクジェット記録装置の好適なものとしては、特に、前記記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用することによりインクを吐出する方式であるものを挙げることができる。
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。図4は、ヘッドカートリッジH1000の構成を示した図であり、また、ヘッドカートリッジH1000に、インクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
[例示化合物5の合成]
以下に示す合成フロー及び手順にしたがって、例示化合物5(カリウム塩)を合成した。
炭酸水素ナトリウム25.5g及びイオン交換水150mLを混合して40℃に加温し、これに塩化シアヌル(東京化成製;化合物a)25.0gを10分ごとに5等分して添加し、1時間撹拌して溶液を調製した。得られた溶液を、ヒドラジン一水和物52.8mL及びイオン交換水47mLの混液(8℃)中に、内温が10℃を超えないようにして滴下した。その後、内温を50℃に昇温して、30分撹拌した。析出した結晶をろ過して、23.4gの化合物b(ヒドラジン誘導体、融点>300℃)を得た。収率は94.7%であった。
上記で得られた化合物b(ヒドラジン誘導体)35.0gをエチレングリコール420mLに懸濁し、内温を50℃にして撹拌した。これに、濃塩酸59mLを添加し、次にピバロイルアセトニトリル(東京化成製)60.1gを添加し、温度50℃で10時間撹拌した。これに、濃塩酸95mL、メタノール145mLを添加して、さらに8時間撹拌した。室温になるまで冷却した後、析出した結晶をろ別し、81.6gの化合物c(5−アミノピラゾール誘導体、融点=233〜235℃)を得た。収率は94.2%であった。
化合物d(東京化成製)90.57gを、水500mLに懸濁して、これに、130mLの濃塩酸を添加し、添加後の内温が5℃以下になるまで冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム36.23gを含む70mLの水溶液を内温4〜6℃の範囲で滴下し、さらに内温を5℃以下として30分撹拌した。次に、159gの亜硫酸ナトリウム及び636mLの水を、内温を20℃以下に保ちながら添加し、さらに内温を25℃として250mLの濃塩酸を添加し、続いて内温を90℃として1時間撹拌した。その後、内温を室温まで冷却した後、ろ過を行い、200mLの水で洗浄した後、風乾して、80.0gの化合物eを得た。
上記で得た23.3gの化合物eを、209mLのエタノールに懸濁して、これに、トリエチルアミン28mLを室温で滴下した。その後、これに、12.2gのエトキシメチレンマロノニトリル(ALDRICH製)を数回に分けて添加した。さらに、3時間還流を行った後、室温まで冷却して、ろ過を行い、400mLのイソプロピルアルコールで洗浄した後、乾燥して、23.57gの化合物fを得た。
内温を4℃以下として硫酸32.4mLに酢酸145.56mLを添加し、内温を7℃以下として撹拌下で40質量%のニトロシル硫酸15.9mL(ALDRICH製)を滴下した。これに、上記で得た32.4gの化合物fを数回に分けて添加し、内温を10℃として60分撹拌した。その後、尿素1.83gを添加した18.8gの化合物cを470mLのメタノールに懸濁した溶液中に、内温を0℃未満として化合物fのジアゾニウム塩を滴下して、内温を0℃未満として30分撹拌した。その後、反応液の内温を室温まで昇温した後、ろ過を行い、メタノールで洗浄し、さらに水で洗浄して、粗結晶を得た。得られた粗結晶をメタノール400mLに懸濁して、還流下で60分撹拌した後、室温まで冷却して、ろ過を行い、メタノール、水、メタノールの順序でそれぞれ洗浄した後、75℃で一晩乾燥して、例示化合物5の遊離酸型結晶34.4gを得た。得られた結晶を水に溶解して10質量%の水溶液(25℃:pH≒8.3:KOH水溶液で調整)とした後、内温50℃でイソプロパノールを添加して晶析した後、冷却して、ろ過を行い、さらにイソプロパノールで洗浄して、乾燥した。このようにして、35.0gの例示化合物5(カリウム塩)を得た。
以下に示す合成フロー及び手順にしたがって、例示化合物19(カリウム塩)を合成した。
5−アミノ−3−tert−ブチルピラゾール(化合物h)に塩酸を加え、化合物iを得た。
化合物d(東京化成製)90.57gを、水500mLに懸濁して、これに、130mLの濃塩酸を添加し、添加後の内温が5℃以下になるまで冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム36.23gを含む70mLの水溶液を内温4〜6℃の範囲で滴下し、さらに内温を5℃以下として30分撹拌した。次に、159gの亜硫酸ナトリウム及び636mLの水を、内温を20℃以下に保ちながら添加し、さらに内温を25℃として250mLの濃塩酸を添加し、続いて内温を90℃として1時間撹拌した。その後、内温を室温まで冷却した後、ろ過を行い、200mLの水で洗浄した後、風乾して、80.0gの化合物eを得た。
上記で得た23.3gの化合物eを、209mLのエタノールに懸濁して、これに、トリエチルアミン28mLを室温で滴下した。その後、これに、12.2gのエトキシメチレンマロノニトリル(ALDRICH製)を数回に分けて添加した。さらに、3時間還流を行った後、室温まで冷却して、ろ過を行い、400mLのイソプロピルアルコールで洗浄した後、乾燥して、23.57gの化合物fを得た。
内温を4℃以下として硫酸32.4mLに酢酸145.56mLを添加し、内温を7℃以下として撹拌下で40質量%のニトロシル硫酸15.9mL(ALDRICH製)を滴下した。これに、上記で得た32.4gの化合物fを数回に分けて添加し、内温を10℃として60分撹拌した。その後、尿素1.83gを添加した7.00gの化合物iを470mLのメタノールに懸濁した溶液中に、内温を0℃未満として化合物fのジアゾニウム塩を滴下して、内温を0℃未満として30分撹拌した。その後、反応液の内温を室温まで昇温した後、ろ過を行い、メタノールで洗浄し、さらに水で洗浄して、粗結晶を得た。得られた粗結晶をメタノール400mLに懸濁して、還流下で60分撹拌した後、室温まで冷却して、ろ過を行い、メタノール、水、メタノールの順序でそれぞれ洗浄した後、75℃で一晩乾燥して、例示化合物19の遊離酸型結晶25.8gを得た。得られた結晶を水に溶解して10質量%の水溶液(25℃:pH≒8.3:KOH水溶液で調整)とした後、内温50℃でイソプロパノールを添加して晶析した後、冷却して、ろ過を行い、さらにイソプロパノールで洗浄して、乾燥した。このようにして、24.0gの例示化合物19(カリウム塩)を得た。
以下に示す合成フロー及び手順にしたがって、例示化合物33(カリウム塩)を合成した。
炭酸水素ナトリウム51.0g及びイオン交換水150mLを混合して40℃に加温し、これに水酸化ナトリウム水溶液を添加して、液体のpHを8.0(40℃)に調整した。これに塩化シアヌル(東京化成製;化合物a)25.0gを10分ごとに5等分して添加し、1時間撹拌して溶液を調製した。得られた溶液を、ヒドラジン一水和物26.4mL及びイオン交換水47mLの混液(8℃)中に、内温が10℃を超えないようにして滴下した。その後、内温を50℃に昇温して、30分撹拌した。析出した結晶をろ過して、20.5gの化合物j(ヒドラジン誘導体、融点>300℃)を得た。
上記で得られた化合物j(ヒドラジン誘導体)30.0gをエチレングリコール420mLに懸濁し、内温を50℃にして撹拌した。これに、濃塩酸59mLを添加し、次にピバロイルアセトニトリル(東京化成製)60.1gを添加し、温度50℃で10時間撹拌した。これに、濃塩酸95mL、メタノール145mLを添加して、さらに8時間撹拌した。室温になるまで冷却した後、析出した結晶をろ別し、60.6gの化合物k(5−アミノピラゾール誘導体、融点>200℃)を得た。
化合物d(東京化成製)90.57gを、水500mLに懸濁して、これに、130mLの濃塩酸を添加し、添加後の内温が5℃以下になるまで冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム36.23gを含む70mLの水溶液を内温4〜6℃の範囲で滴下し、さらに内温を5℃以下として30分撹拌した。次に、159gの亜硫酸ナトリウム及び636mLの水を、内温を20℃以下に保ちながら添加し、さらに内温を25℃として250mLの濃塩酸を添加し、続いて内温を90℃として1時間撹拌した。その後、内温を室温まで冷却した後、ろ過を行い、200mLの水で洗浄した後、風乾して、80.0gの化合物eを得た。
上記で得た23.3gの化合物eを、209mLのエタノールに懸濁して、これに、トリエチルアミン28mLを室温で滴下した。その後、これに、12.2gのエトキシメチレンマロノニトリル(ALDRICH製)を数回に分けて添加した。さらに、3時間還流を行った後、室温まで冷却して、ろ過を行い、400mLのイソプロピルアルコールで洗浄した後、乾燥して、23.57gの化合物fを得た。
内温を4℃以下として硫酸32.4mLに酢酸145.56mLを添加し、内温を7℃以下として撹拌下で40質量%のニトロシル硫酸15.9mL(ALDRICH製)を滴下した。これに、上記で得た32.4gの化合物fを数回に分けて添加し、内温を10℃として60分撹拌した。その後、尿素1.83gを添加した9.0gの化合物kを470mLのメタノールに懸濁した溶液中に、内温を0℃未満として化合物fのジアゾニウム塩を滴下して、内温を0℃未満として30分撹拌した。その後、反応液の内温を室温まで昇温した後、ろ過を行い、メタノールで洗浄し、さらに水で洗浄して、粗結晶を得た。得られた粗結晶をメタノール400mLに懸濁して、還流下で60分撹拌した後、室温まで冷却して、ろ過を行い、メタノール、水、メタノールの順序でそれぞれ洗浄した後、75℃で一晩乾燥して、例示化合物33の遊離酸型結晶29.1gを得た。得られた結晶を水に溶解して10質量%の水溶液(25℃:pH≒8.3:KOH水溶液で調整)とした後、内温50℃でイソプロパノールを添加して晶析した後、冷却して、ろ過を行い、さらにイソプロパノールで洗浄して、乾燥した。このようにして、27.8gの例示化合物33(カリウム塩)を得た。
上記で得られたイエロー色材である例示化合物5、19、及び33、並びにC.I.ダイレクトイエロー132を用いて、下記のようにしてインクをそれぞれ調製した。先ず、下記表3に示した各成分をそれぞれ混合して、十分撹拌した。その後、ポアサイズ0.2μmのフィルターにて加圧ろ過を行い、実施例及び比較例の各インクを調製した。また、インク中における第1の色材の含有量(質量%)に対するインク中における第2の色材の含有量(質量%)の質量比率(第2の色材/第1の色材)を下記表3に示した。
(1)耐光性
上記で得られた各インクをそれぞれ、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)に搭載した。記録条件を、温度23℃、相対湿度55%、記録密度2,400dpi×1,200dpi、吐出量2.5pLとした。ここで、以下のようにして、記録物の作製の際に用いる記録媒体を作製した。先ず、低密度ポリエチレン70部、高密度ポリエチレン20部、及び酸化チタン10部を含む樹脂組成物を、坪量155g/m2の基紙の両面に25g/m2となるように塗布することで、樹脂で被覆した支持体を作製した。そして、前記支持体上に、アルミナ水和物及びポリビニルアルコールを主成分としたインク受容層を形成した。このようにして、隙間タイプのインク受容層を備えてなり、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.49−1にしたがって測定した3分後の表面pHが5.0である記録媒体を作製した。
AA:光学濃度の残存率が95%以上。
A:光学濃度の残存率が90%以上95%未満。
B:光学濃度の残存率が80%以上90%未満。
C:光学濃度の残存率が80%未満。
上記で得られた各インクをそれぞれ、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)に搭載した。記録条件を、温度23℃、相対湿度55%、記録密度2,400dpi×1,200dpi、吐出量2.5pLとした。そして、上記と同様の記録媒体に記録デューティを60%とした画像を形成して、画像を温度23℃、相対湿度55%で24時間自然乾燥した。このようにして得られた記録物の画像の部分について、分光光度計(Spectorolino;Gretag Macbeth製)を用いて色相角を測定し、色調の評価を行った。色調の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示した。本発明においては、下記の評価基準でAA、A及びBを許容できるレベル、Cを許容できないレベルとした。
AA:色相角が88°以上90°以下。
A:色相角が85°以上88°未満、又は90°より大きく92°以下。
B:色相角が83°以上85°未満、又は92°より大きく94°以下。
C:色相角が83°未満、又は94°より大きい。
上記で得られた各インクをそれぞれ、インクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)用のインクカートリッジに充填し、インクカートリッジ内のインクが蒸発しないようにインク供給口を閉じた。このインクカートリッジを密閉容器に入れて、温度60℃の恒温槽の中で3ヶ月間保存した。その後、インクカートリッジを恒温槽から取り出し、上記インクジェット記録装置のヘッドカートリッジに装着した。そして、ヘッドカートリッジの吐出口を露出した状態で、温度35℃、湿度10%で2週間保存した。その後、ヘッドカートリッジを上記と同様のインクジェット記録装置に装着して、吸引を所定の回数行い、回復性を確認することで、インクの保存安定性の評価を行った。なお、吸引とは、前記インクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)に具備された機能の一つである、「プリントヘッドのクリーニング」のことである。保存安定性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示した。本発明においては、下記の評価基準でAA及びAを許容できるレベル、B及びCを許容できないレベルとした。
AA:4回以下の吸引で全ての吐出口が問題なく吐出できる状態に回復した。
A:5回の吸引で全ての吐出口が問題なく吐出できる状態に回復した。
B:6回の吸引で全ての吐出口が問題なく吐出できる状態に回復した。
C:7回以上の吸引を行っても吐出できない吐出口があった。
上記で得られたインクをそれぞれ、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置(商品名:BJ F890;キヤノン製)のマゼンタインクの位置に搭載した。そして、A4サイズの記録媒体(商品名:オフィスプランナー:キヤノン製)の全面に記録デューティを100%とした画像を記録して、記録耐久性の評価を行った。記録耐久性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示した。本発明においては、下記の評価基準でAA及びAを許容できるレベル、B及びCを許容できないレベルとした。
AA:20,000枚の記録を行ってもヨレやカスレが生じなかった。
A:15,000枚〜19,999枚の記録を行うと、微小ヨレによる若干のかすれが生じた。
B:10,000枚〜14,999枚の記録を行うと、微小ヨレによる若干のかすれが生じた。
C:10,000枚の記録に至る前に、かすれが生じたか、断線による不吐出が生じた。
Claims (10)
- 少なくとも、第1の色材及び第2の色材の、2つの色材を含有するインクジェット用インクであって、
前記第1の色材が、下記一般式(I)で表される化合物であり、前記第2の色材が、下記一般式(II)で表される化合物及び/又は下記一般式(III)で表される化合物であり、前記第2の色材のインク中における含有量(質量%)が、前記第1の色材のインク中における含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.002以上0.50以下であることを特徴とするインクジェット用インク。
(一般式(I)中、R1、R2、Y1、及びY2はそれぞれ独立に、一価の基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に、ハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、Z1及びZ2はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。)
(一般式(II)中、R3及びY3はそれぞれ独立に、一価の基であり、X3はハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、Z3は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基である。)
(一般式(III)中、R4及びY4はそれぞれ独立に、一価の基であり、X4はハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、Z4及びZ5はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、M2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。) - 前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物であり、前記一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(V)で表される化合物であり、前記一般式(III)で表される化合物が、下記一般式(VI)で表される化合物である請求項1に記載のインクジェット用インク。
(一般式(IV)中、R5、R6、Y1及びY2はそれぞれ独立に、一価の基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に、ハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、nは1以上の整数であり、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。)
(一般式(V)中、R7及びY3はそれぞれ独立に、一価の基であり、X3はハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、nは1以上の整数である。)
(一般式(VI)中、R8及びY4はそれぞれ独立に、一価の基であり、X4はハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基であり、nは1以上の整数であり、Zは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、M2は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。) - 前記第1の色材の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、1.0質量%以上8.0質量%以下である請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
- 前記第2の色材の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.004質量%以上3.5質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記第2の色材のインク中における含有量(質量%)が、前記第1の色材のインク中における含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.002以上0.43以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記第2の色材のインク中における含有量(質量%)が、前記第1の色材のインク中における含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.002以上0.12以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクを収容してなるインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
- インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とする記録ユニット。
- インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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