JP2009291968A - 昇華捺染型転写紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたインク乾燥性と裏抜け防止性を有するとともに、転写による画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華捺染型転写紙を提供すること。
【解決手段】基材上に昇華捺染インク受容層を有する昇華捺染型転写紙であって、前記基材は、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行なうことで片面を艶面とした片艶紙であり、前記昇華捺染インク受容層は、前記艶面上に形成され、かつ、主成分として水溶性樹脂と微細粒子からなり、JISP8147に準拠した前記昇華捺染インク受容層表面同士の静摩擦係数が0.30〜0.90の範囲である、ことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、昇華捺染型転写紙に関し、具体的には、転写紙に昇華捺染インクを用いた印刷を行い、この転写紙上の印刷された画像をポリエステル等の布帛に転写して昇華転写捺染する際に使用する昇華捺染型転写紙に関する。
転写捺染法には、ワックスや樹脂等の熱軟化性固着剤と顔料からなるインクを用いた溶融転写捺染法、ポリ塩化ビニル等の粉末及び可塑剤及び顔料からなるプラスチゾルインキを用いたラバープリント転写捺染法、熱昇華性染料を用いた昇華捺染転写法がある。
溶融転写捺染法では捺染物の風合いや伸縮性が不十分であり、ラバープリント転写捺染法による捺染物は通気性や感触が良くない。昇華捺染転写法は、捺染物の風合いを損なわず、他の転写法では出せないシャープな図柄がプリントできることから、現在主に行われている捺染転写法である。従来、熱転写捺染シートはその形成に際してスクリーン版、グラビア版などの印刷版とそれに応じた印刷機が必要であったが、個性の多様化により、小ロットに対応した例えばインクジェット印字用の転写捺染シートの報告がなされ、小ロットに対応した昇華転写が広まり、需要が伸びてきている。
昇華捺染転写法とはポリエステル生地等の被転写物と昇華捺染型転写紙とを重ね合わせたものを180〜220℃に加熱されたドライヤーに密着させて、昇華捺染型転写紙に印刷された印刷インクを熱にて昇華させ、被転写物に転写捺染を行うものである。
前記インクジェット印字用の昇華捺染型転写紙としては、基材上に、シリカ等の顔料や、ポリビニルアルコール等の結着剤等を含有するインク受容層を設けてなるものが知られている(特許文献1〜4を参照)。
特開2002−292995号公報 特開2003−276309号公報 特開2004−255715号公報 特開2004−255717号公報
ところが、従来の昇華捺染型転写紙においては、特にインクジェット印刷する際には、昇華捺染インク乾燥性が不十分で、往々にして印字面で望ましくない汚れが発生することがあった。一方、被転写物に転写捺染する際においては、昇華捺染インクが昇華捺染型転写紙の昇華捺染インク受容層とは異なる裏面側に裏抜けを生じたり、被転写物である布帛等を通過(裏抜け)し、転写用プレス機等に昇華捺染インクが付着してしまう問題があった。しかしながら、この昇華捺染インク乾燥性と昇華捺染インク裏抜け防止性は相反する性質であり、これを両立させた、すなわち印刷時には昇華捺染インクを速やかに吸収乾燥させ、かつ転写時には裏抜けをさせない昇華捺染型転写紙を製造することは困難であった。さらに、昇華捺染型転写紙における画像の再現性や、被転写物への転写効率(転写画像の解像性や、転写画像濃度レベルと、その均一性等)についても十分なレベルのものとする必要があった。
本発明は、上記現状に鑑み、昇華捺染インクを用いた昇華捺染型転写紙への印刷時の優れた昇華捺染インク乾燥性と画像再現性と裏抜け防止性を有するとともに、転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華捺染型転写紙を提供することを課題とするものである。
本発明は、基材上に昇華捺染インク受容層を有する昇華捺染型転写紙であって、前記基材は、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行なうことで片面を艶面とした片艶紙であり、前記昇華捺染インク受容層は、前記艶面上に形成され、かつ、主成分として水溶性樹脂と微細粒子からなり、JISP8147に準拠した前記昇華捺染インク受容層表面同士の静摩擦係数が0.30〜0.90の範囲である、ことを特徴とする昇華捺染型転写紙である。
好ましくは、前記昇華捺染インク受容層表面には、前記微細粒子の凝集塊にて凹凸が形成され、その凸部の幅が30μm以下である。
好ましくは、前記片艶紙の米坪が60〜150g/m2であり、前記艶面のJISP8119に準拠したベック平滑度が40〜200秒である。
好ましくは、前記昇華捺染インク受容層は、アセチレンアルコール系及び/又はアセチレングリコール系のノニオン性界面活性剤を含有する。
また、JISP8117に準拠した透気度が1,500〜25,000秒であることで、さらに好適な昇華捺染型転写紙を得ることができる。
本発明の昇華捺染型転写紙は、印刷時には昇華捺染インクの吸収乾燥性と画像再現性や作業性に優れているとともに、昇華捺染のための加温転写時に昇華捺染インクが昇華捺染型転写紙の裏側に裏抜けするのを防止する特性においても優れている。さらには、転写による被転写物の画像再現性や、転写効率の点においても優れた特性を有する。
特に、インクジェットプリンタにて昇華捺染インクを用いた印刷が施される、インクジェット記録用に適した昇華捺染型転写紙が得られる。
本発明の昇華捺染型転写紙は、湿紙状態で一方の面を加熱した鏡面ロールに圧接し乾燥して艶面とした片艶紙の艶面に、少なくとも水溶性樹脂と微細粒子を含有するインク受容層を設けている。片艶紙とは、一般に湿紙の状態で片面のみを加熱した鏡面ドライヤー、いわゆるヤンキードライヤーに密着させて乾燥したものをいい、一般的には包装紙・建材用途等に使用されている。片艶紙は、多筒式ドライヤーを用いる湿紙の乾燥方式に比べ、ヤンキードライヤーに湿紙を貼り付けて乾燥するため、多筒ドライターによる乾燥手段と比べ乾燥時にストレス(例えば引張り、圧縮)を与え難いため寸法安定性に優れているので、優れた画像再現性を達成することができる。また、艶面の平坦性が高いので、艶面上にインク受容層を設けることによって均質性の高いインク受容層を得ることが可能になり、画像再現性や作業性に優れているとともに、裏面がベック平滑度において18秒程度と上質紙よりも粗面(加熱された空気溜りが生じやすい)であり、昇華捺染のための加温転写時に粗面での熱保持性にすぐれ、昇華捺染インクに対する熱保持性の特質により被転写物の画像再現性や、転写効率の点においても優れた特性を有することができる。
本発明者らは、従来の上質紙を基材とする製法に対し、裏面が粗面で熱保持性に優れ、片艶紙の艶面に少なくとも水溶性樹脂と微細粒子を含有するインク受容層を形成し、当該インク受容層表面同士の静摩擦係数を特定の範囲とした塗工紙を、昇華捺染型転写紙として用いることで、均質性の高いインク受容層と、凹凸にて被覆されたインク受容層表面の形成を可能とし、印刷時の昇華捺染インクの吸収乾燥性と画像再現性が非常に高く、昇華捺染型転写紙の裏側への裏抜けするのを防止する特性にも優れ、被転写物の画像再現性や昇華捺染インクの転写効率が非常に高くなることを見出した。
本発明の昇華捺染型転写紙は、片艶紙の艶面に少なくとも水溶性樹脂と微細粒子を含有するインク受容層を形成し、当該インク受容層表面同士の静摩擦係数がJISP8147に準拠して0.30〜0.90の範囲であることを特徴とする。好ましくは、0.35〜0.85である。インク受容層表面同士の静摩擦係数が0.30未満であるとインク受容層の昇華捺染インクの吸収乾燥性が著しく低下する。また、0.90を超えると被転写物への昇華捺染インクの転写効率が著しく低下するとともに、裏抜け防止性が低下する。尚、従来品における静摩擦係数は0.30未満である。
特に基材表面のみが、あたかもアイロンで平坦化処理された態様の片艶紙を基材に用いることで、艶面に設けられた水溶性樹脂と微細粒子を含有するインク受容層が、水溶性樹脂や微細粒子の紙中への浸透や沈み込み等による塗工層ムラを生じさせる恐れが少なく、均等な平坦性を醸し出せるため、水溶性樹脂と微細粒子に起因する静摩擦係数を得ることができ、昇華捺染インクを用いた昇華捺染型転写紙への印刷時の優れた昇華捺染インク乾燥性と画像再現性と裏抜け防止性を有するとともに、転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華捺染型転写紙を提供することができる。
本発明の好ましい実施形態では、昇華捺染インク受容層は、微細粒子の凝集体からなる凝集塊を形成しているため、昇華捺染インク受容層の表面は微細粒子の凝集体や凝集体からなる凝集塊による凹凸にて被覆された性状を呈しており、この性状が、印刷時には昇華捺染インクの吸収乾燥性と紙における画像再現性や作業性を良好にするとともに、昇華捺染のための加温転写時に昇華捺染インクが昇華捺染型転写紙の裏側に裏抜けするのを防止する特性においても優れ、さらには、転写による被転写物の画像再現性や、転写効率の点においても優れた特性を醸し出すものである。
本発明では、インク受容層がノニオン性界面活性剤、特にアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を含有することが好ましく、これによって、理由は定かではないが、インク受容層表面の凹凸の形成において、均等な凝集塊や凝集体の凹凸部の形成が得られるばかりか、昇華捺染インクによる印刷時には昇華捺染インクを速やかに乾燥させ、かつ転写時には裏抜けのない昇華捺染型転写紙を得ることができ、さらに昇華捺染インク受理層の凹凸部の強度が向上し、印字、捺染時における昇華捺染インクの吸収性やインク転写性を損なうことなく保持することができることを見出した。
本発明の実施に用いられる片艶紙は、米坪が60〜150g/m2であることが好ましく、90〜110g/m2がより好ましい。本発明で得られる昇華捺染型転写紙は、昇華捺染インクにて印刷が行われるにおいて、昇華捺染インクにより基材の寸法安定性が損なわれる場合があり、また、昇華捺染時において、高温域を経る工程を有するため、片艶紙の米坪が60g/m2未満であると、寸法安定性が劣るとともに、引張強度と引裂強度の低下により紙切れが起きやすくなる。片艶紙の米坪が150g/m2を超えると被転写物への昇華捺染インクの加熱転写時に熱伝達が悪くなり、転写効率が低下する。
また、片艶紙の艶面のJISP8119記載のベック平滑度が40〜200秒であることが好ましく、60〜100秒がより好ましい。艶面のベック平滑度が40秒未満であると印刷時の昇華捺染インクの吸収乾燥性は高くなるももの、画像再現性が低下し、被転写物への昇華捺染インクの転写時の画像再現性と転写効率が著しく低下する。また、200秒を超えると水溶性樹脂と微細粒子からなるインク受容層の形成にムラが発生し、画像再現性が低下する。
非艶面である裏面の平滑度は、18秒程度が好ましい。裏面が艶面と同等以上の平滑度を有すると、加熱時の熱保持性が劣り、転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点で劣る問題が発現する恐れがある。従って、表裏面とも平坦性の高い多筒ドライヤー等で平坦化された上質紙などは、片艶紙に比べ転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点で劣る。
本発明に係る片艶紙はいわゆる製紙分野で使用される原料より構成される。使用するパルプとしては特に限定されないが、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)や広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ;サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)等の機械パルプ;デインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)等の化学パルプや機械パルプを含む古紙パルプ等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。これらのうち、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプを、紙質強度と基材表面の平坦性、昇華捺染インクの昇華捺染型転写紙における品質確認において適宜組合せて用いることが好ましい。
前記基材は、好適にはJISP8117に準拠した昇華捺染型転写紙の透気度が1,500〜25,000秒に調整可能な範囲で、酸化チタン、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の填料を含有するものであってもよい。また、酸化澱粉、アセチル化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の各種澱粉や、紙力増強剤、内添サイズ剤、外添サイズ剤、歩留向上剤等の添加薬品を含有することもできる。
インク受容層の塗工量としては、3〜15g/m2が好ましく、3g/m2未満では十分な昇華型インクの吸収容量が確保できず転写画像の解像性、ベタ画像部のムラが発現する。インク受容層の塗工量が15g/m2を超えると、相対的に表面強度が低下し、粉落ち等作業性を低下させる原因になる。
微細粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物(擬ベーマイト等)、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。中でも多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸カルシウム、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ(擬ベーマイト、δアルミナ)などが好ましく用いられる。これらの微細粒子の中においては、有機顔料に比べ熱可塑性が無い微細粒子が好適に用いられる、熱可塑性が無い微細粒子は、加熱による昇華捺染時に熱により微細粒子が可塑化されて昇華捺染インクの昇華を阻害することがなく、昇華捺染がスムーズに進み、画像再現性や作業性に優れているとともに、昇華捺染のための加温転写時に被転写物の画像再現性や、転写効率の点においても優れた特性を得ることが出来る。
本発明で用いられる微細粒子は微細な粒子の凝集体であることが好ましく、凝集体の平均粒子径が2μm〜10μmであることが好ましい。平均粒子径が2μm〜10μmの微細な粒子の凝集体からなる微細粒子とすることにより、高品質な色再現性、画像再現性を得ることができる。微細な粒子の凝集体の平均粒子径が2μm未満であると昇華捺染インクの吸収性が悪化する問題が発生し、また、微細な粒子の凝集体の平均粒子径が10μmを超えると転写したプリント物の発色濃度が低くなる問題が生じる。
本発明で用いられる好適な微細粒子としては、細孔容積の多い多孔性合成非晶質シリカが好ましい。このような合成非晶質シリカとは、ケイ酸のゲル化により、SiO2の三次元構造を形成させた、多孔性、不定形微粒子であり、細孔径10〜2000オングストローム程度を有する。該合成非晶質シリカを用いると本発明の被転写物の昇華捺染インク吸収性を向上させると共に、昇華捺染インクの被転写物への転写率も向上し、被転写物上の画像を一層鮮明にすることができる。
このような合成非晶質シリカは、市販のものを好適に用いることができ、例えば、ミズカシルP−526、ミズカシルP−801、ミズカシルNP−8、ミズカシルP−802、ミズカシルP−802Y、ミズカシルC−212、ミズカシルP−73、ミズカシルP−78A、ミズカシルP−78F、ミズカシルP−87、ミズカシルP−705、ミズカシルP−707、ミズカシルP−707D、ミズカシルP−709、ミズカシルC−402、ミズカシルC−484(以上水澤化学工業(株))、トクシールU、トクシールUR、トクシールGU、トクシールAL−1、トクシールGU−N、トクシールN、トクシールNR、トクシールPR、ソーレックス、ファインシールE−50、ファインシールT−32、ファインシールX−30、ファインシールX−37、ファインシールX−37B、ファインシールX−45、ファインシールX−60、ファインシールX−70、ファインシールRX−70、ファインシールA、ファインシールB(以上、(株)トクヤマ)、シペルナート、カープレックスFPS−101、カープレックスCS−7、カープレックス22S、カープレックス80、カープレックス80D、カープレックスXR、カープレックス67(以上、DSL.ジャパン(株))、サイロイド63、サイロイド65、サイロイド66、サイロイド77、サイロイド74、サイロイド79、サイロイド404、サイロイド620、サイロイド800、サイロイド150、サイロイド244、サイロイド266(以上、富士シリシア化学(株))、ニップジェルAY−200、ニップジェルAY−6A2、ニップジェルAZ−200、ニップジェルAZ−6A0、ニップジェルBY−200、ニップジェルBY−200、ニップジェルCX−200、ニップジェルCY−200、ニップシールE−150J、ニップシールE−220A、ニップシールE−200A(以上東ソー・シリカ(株))などが挙げられる。
本発明者らが見出した好適な微細粒子としては、平均粒子径が異なる少なくとも2種類の微細粒子を組合わせ使用する事が好ましく、特に好ましくは、平均粒子径が2〜5μmのシリカ粒子凝集体と、平均粒子径が5μmを超えるシリカ粒子凝集体とを併用し、組合せた微細粒子の混合体を用いることが好ましい。このように平均粒子径が異なるシリカ凝集体を併用することによって、凝集体と凝集体の間隙を異なる平均粒子径の凝集体が補完する凝集塊が形成され、理由が明確ではないが、後述の凹凸の形成が容易になり、優れた昇華捺染インク乾燥性など本発明の効果を達成することができる。
このようなシリカ凝集体としては、市販のものを用いることができ、例えば、平均粒子径が2〜5μmのシリカ粒子の市販品としてはニップジェルAY−200等が挙げられ、平均粒子径が5μmを超えるシリカ粒子凝集体の市販品としてはニップジェルAY−6A2等が挙げられる。
本発明でいう平均粒子径は、少量のサンプルをメタノール溶液に添加し、超音波分散器で3分間分散した溶液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTERELECTRONICSINS製TA−II型)にて、50μm若しくは200μmのアパチャーを用いて測定を行った。
好適な平均粒子径が異なる微細粒子の組合わせにおいて、平均粒子径が2〜5μmのシリカ粒子凝集体と、平均粒子径が5μmを超えるシリカ粒子凝集体の配合比としては、特に限定されないが、好適には、固形分の重量比で10:90〜50:50程度であることが好ましい。固形分の重量比で10:90〜50:50程度とすることで、粒子径の大きいシリカ凝集体の間隙を、粒子径の小さいシリカ凝集体が埋めるため、得られる凝集体や凝集塊の多孔性が増し、昇華捺染インク受容層表面の凹凸の形成において、均等な凝集塊や凝集体の凹凸部、被覆が得られるため、優れた昇華捺染インク乾燥性、昇華捺染型転写紙における画像の再現性、被転写物における画像の再現性と高い昇華捺染インクの転写効率を得ることができ、本発明の効果を達成することができる。
なお、シリカ以外の顔料については、本発明の効果を奏する限りにおいて配合することが可能である。
本発明において水溶性樹脂は主としてバインダーとして用いられ、例えば、澱粉、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースサルフェート等のセルロース誘導体、各種鹸化度のポリビニルアルコール又はそのシラノール変性物、カルボキシル化物、カチオン化物等の各種誘導体、カゼイン、ゼラチン、変性ゼラチン、大豆蛋白等の天然高分子、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム等の水溶性合成高分子が挙げられ、これらの水溶性高分子を単独で若しくは併用して用いることができる。
本発明者らが見出した最も好適な水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコールとカルボキシメチルセルロースが挙げられ、最も好適には、両者を併用することが好ましい。
ポリビニルアルコールとカルボキシメチルセルロースを併用することで、本発明の特徴である基材に片艶紙を用いることと相俟って、片艶紙表面の被覆性とアンカー効果、塗工層の昇華捺染インク付与や過熱工程における寸法安定性、含有する微細粒子の分散性と凹凸形成性に優れた効果を発揮し、本発明が課題とする昇華捺染インクを用いた昇華捺染型転写紙への印刷時の優れた昇華捺染インク乾燥性と画像再現性と裏抜け防止性を有するとともに、転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華捺染型転写紙を提供することができる。
ポリビニルアルコールとしては特に限定されず、各種ケン化度のポリビニルアルコールを使用することができるが、ケン化度としては、87〜99mol%程度が好ましい。分子量としては特に限定されないが、例えば、数平均分子量で約1000以下のものが特に好ましい。このようなポリビニルアルコールの市販品としては、ポバールPVA−210、ポバールPVA−105(以上、(株)クラレ)等が挙げられる。
ポリビニルアルコールの配合量としては、固形分で、微細粒子、好適にはシリカ粒子100重量部に対して1〜200重量部程度が好ましく、2〜100重量部程度がより好ましい。この範囲によって、優れた昇華捺染インクの乾燥性と、高度の昇華捺染インク裏抜け防止性を両立することができる。
好適に用いられる水溶性樹脂としてのカルボキシメチルセルロースとしては、特に限定されず、エーテル化度で0.5〜1.0の範囲のものが好ましい。市販品としては、セロゲン7A(以上、第一工業製薬(株))、カセローズX−10(以上、四国化成工業(株))等を使用することができる。カルボキシメチルセルロースの配合量としては、固形分で、微細粒子、好適にはシリカ粒子100重量部に対して100〜500重量部程度が好ましく、150〜350重量部程度がより好ましい。カルボキシメチルセルロースの配合量として、固形分で、微細粒子、好適にはシリカ粒子100重量部に対して100重量部未満では、昇華捺染インクの被転写物への転写効率が低下するとともに、昇華捺染型転写紙における昇華捺染インクの裏抜け問題が生じる。カルボキシメチルセルロースの配合量として、固形分で、微細粒子、好適にはシリカ粒子100重量部に対して500重量部を超えると、昇華捺染インクの乾燥性が低下し、保管時に昇華捺染インクが裏移りなど汚損の問題が生じる。
好適には、ポリビニルアルコールとカルボキシメチルセルロースを前記範囲にて併用した水溶性樹脂を用いることによって、優れた昇華捺染インクの乾燥性と、高度の昇華捺染インク裏抜け防止性を両立することができる。
本発明における好適なノニオン性界面活性剤としては、例えば、長鎖または分岐アルキルフェノールのポリアルキレンオキサイドエーテル、長鎖アルキルアルコールのポリアルキレンオキサイドエーテル、脂肪酸エステル、アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルチオエーテル、リン酸エステルなどに代表されるポリオキシエチレングリコール類のノニオン性界面活性剤;脂肪酸アンヒドロソルビットエステル、脂肪酸アンヒドロソルビットエステルと酸化エチレンの縮合物、脂肪酸グリセリンエステル、ペンタエリスリットエステル、脂肪酸ショ糖エステル、グルコシド、グルコンアミド、脂肪酸アルキロールアミドに代表される多価アルコール類;プロパギルアルコール、ブチンジオール、アセチレンアルコール類などを挙げることができる。
本発明における好適なノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコール系の界面活性剤とアセチレンアルコール系の界面活性剤が挙げられる。特には、アセチレン基を中央に持ち、左右対称の構造をしたアセチレングリコール系のノニオン性の界面活性剤が好適に用いられる。
アセチレングリコール系のノニオン性の界面活性剤は、広いpH領域で使用可能で、かつ泡切れが良好であるという特長を有するので、本発明における昇華捺染インク受容層の形成において、熱伝達を阻害する要因となる、塗工層中の不要な気泡領域の発生や、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース等の水溶性樹脂、微細粒子との混和において安定した濡れ性を発揮し、本発明における特徴である、昇華捺染インク受容層表面同士の静摩擦係数が0.30〜0.90の範囲にある昇華捺染インク受容層の形成を促すことができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、その混合物、あるいは酸化エチレン付加体等を挙げることができる。更にはHLB値が9〜13のアセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
アセチレンアルコール系の界面活性剤としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、その混合物、あるいは酸化エチレン付加体等を挙げることができる。更にはHLB値が6以上のアセチレンアルコール類が好ましい。
本発明で云うHLB値は、グリフィン法に準拠し、親水基の式量と分子量を元に、HLB値=20×(親水基の重量%)の計算式で求めたものである。
上記ノニオン性界面活性剤の含有量は、微細粒子100重量部に対して0.1〜2.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5重量部である。ここで、含有量が0.1重量部未満であると昇華捺染インクのインク吸収乾燥性が劣る等ノニオン性界面活性剤を用いる事による効果が得られない、また、2.0重量部を超えると、昇華捺染インク受容層表面の凹凸の形成が劣り、昇華捺染インク受容層表面が平坦になると共に、昇華捺染インクの転写性が低下する等のため好ましくない。
好ましい実施形態では、本発明の昇華捺染型転写紙は、昇華捺染インク受容層が特異な凹凸の表面構造を呈している。従来品では図2に示すように、昇華捺染インク受容層は顔料とバインダーがほぼ一定の厚みで基材表面を被覆するものであったが、本発明の好ましい実施形態では、昇華捺染インク受容層は図1に示すように、微細粒子による凝集体や凝集塊による凹凸が形成されている。凹凸の形成は、微細粒子による凝集体や凝集塊であれば本発明において好適に使用できるが、より好ましくはシリカ、特に粒子径の異なる2種類のシリカが凝集することによって得られる凝集体や凝集塊により凹凸を形成することが好ましく、凝集体や凝集塊により、好ましくは幅10μm以上の凹凸を基材上に多数形成し、これら凹凸を有する昇華捺染インク受容層が基材の表面を被覆することによって本発明の昇華捺染型転写紙の表面が形成されている。
本発明においては、昇華捺染インク受容層を設けない片艶紙を基材に用いるところ、裏面が粗面であることから、粗面に生じる空気溜りにて熱が保持され、昇華捺染インク受容層の凸部まで十分に熱伝達が可能になり、昇華捺染インク受容層に設けた凹凸に吸収された昇華捺染インクの昇華転写を助長する効果を有する。
また、この凹凸が存在するために基材表面の比表面積が増大するので、昇華捺染インクを昇華捺染インク受容層で瞬時に吸収、保持(乾燥)することが可能になり昇華捺染インク乾燥性が向上する。更に、滲みが少なく、画像再現性に優れ、基材に昇華捺染インクが含浸し難いため、寸法安定性と耐コックリング性にも優れたものとなる。これとともに、昇華捺染型転写紙として比較的透気度が低いため当該熱が用紙の厚み方向に伝達しやすくなり、熱の損失が少なくなる。そのため、凝集塊に保持された昇華捺染インクへの熱伝達速度が高くなり、かつ伝達熱量も多くなることから、転写効率が飛躍的に向上するものと考えられる。
ここで、本発明で云う凹凸とは、微細粒子の凝集体や凝集塊による昇華捺染インク受容層表面の起伏のことを云い、その形成は昇華捺染インク受容層を形成する塗工液の攪拌段階で水溶性樹脂に微細粒子と、必要に応じてノニオン性界面活性剤とを添加し、混合分散処理する事により得られるものである。混合分散時の物理的剪断力が強すぎると、微細粒子の均質な分散が生じ凹凸を形成し難くなるため、好適には分散処理を適宜調整し、塗工液中に微細粒子の凝集塊を形成させ、昇華捺染インク受容層形成時に凹凸を形成させる。凹凸を形成するメカニズムは明確ではないが、水溶性樹脂が基材に含浸することで、水溶性樹脂中に分散された微細粒子の凝集塊が表出し、基材表面上に昇華捺染インク受容層を形成すると共に、凝集体や凝集塊による凹凸を形成する。
凝集塊を形成する好適な条件としては、水溶性樹脂中に、予め水溶液に分指させた微細粒子と、必要に応じてノニオン性界面活性剤とを固形分濃度2〜25%になるように含有させ、分散時間を30分以内、好適には20分以内とする事で、30μm以下、好適には20μm以下の凝集塊を形成できる。更に好適には固形分濃度を3〜12%とすることが、凝集塊に均一な物理的剪断力を加え易く、均質な凝集体や凝集塊が得られ、均質な昇華捺染インク受容層の凹凸を形成させることができるので好ましい。前記条件をはずれると、微細又は過大な凝集体や凝集塊の生成が生じ、均質な昇華捺染インク受容層の凹凸を形成し難くなる。
凹凸の存在は後述のように分析走査型電子顕微鏡(日本電子データム(株)製JSM−6390A型)を用いて確認することができる。本発明者らの知見によると、凹凸を形成する凝集体や凝集塊の凸部の幅が大きくなりすぎると、昇華捺染インクの裏抜け防止性が低下する傾向があるので、30μm程度以下が好ましく、20μm程度以下がより好ましい。
また、基材に片艶紙を用いることによる、粗面の空気溜りの熱保持性との相乗効果を得るために、凝集塊の大きさは30μm程度以下が好ましく20μm程度以下がより好ましい。
なお、この幅は無作為に選択した凝集塊60個の、個々の長短の幅からの平均値を実測し、最小値5個、最大値5個を除く50個の実測平均値を測定した。
また、当該昇華捺染インク受容層の表面粗さをレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製カラーレーザー顕微鏡高解像度タイプVK−9700型)で測定すると、二乗平均粗さで4μm以上を満足することが好ましい。好ましくは5μm以上である。上限は20μm以下、あるいは15μm以下程度が好ましい。表面粗さが4μm未満と低すぎると昇華捺染インクの乾燥性が十分でなく、20μm以上の過大な粗さの場合は、昇華捺染型転写紙における画像再現性が低下すると共に、被転写物における画像再現性、転写効率が低下するほか本発明の効果を達成するのに不都合である。なお、従来品における二乗平均粗さは4μm未満である。
本発明の好ましい実施形態による昇華捺染型転写紙は、凹凸を形成する微細粒子による凝集体や凝集塊に保持された昇華捺染インクに転写時の熱が迅速に伝達することによって、昇華捺染インクの転写効率を向上させるものであるが、基材中の空気は熱の伝達を阻害するものと考えられ、当該昇華捺染型転写紙の透気度は低く調整したほうが好ましい。
具体的には、JISP8117に準拠した透気度として、25000秒以下が好ましく、20000秒以下がより好ましい。しかし逆に低すぎると転写効率や昇華捺染インクの裏抜け防止性が低下するので、1500秒以上が好ましく、2000秒以上が好ましく、8000秒以上がより好ましい。
基材として透気度の高い基材を用いることが好ましいが、昇華捺染型転写紙としての透気度が昇華捺染インクへの加熱時の熱を伝える上で調整が必要であり、透気度をJISP8117に準拠した透気度として、25000秒以下とし、基材に片艶紙を用い、昇華捺染インク受容層における昇華捺染インクの保持と昇華が適切に成される微細粒子を用い、好適には緻密な多孔性を形成する少なくとも粒子径の異なる2種類の凝集体を併用して形成される凝集塊を用い、更には、昇華捺染インク受容層を前記凝集体や凝集塊から成る凹凸で被覆することで、印刷時には昇華捺染インクの吸収乾燥性と紙における画像再現性や作業性に優れているとともに、昇華捺染のための加温転写時に昇華捺染インクが昇華捺染型転写紙の裏側に裏抜けするのを防止する特性においても優れ、更には、転写による被転写物の画像再現性や、転写効率の点においても優れた昇華捺染型転写紙を得ることができる。
片艶紙は、先にも述べたが、ヤンキードライヤーに湿紙を貼り付けて乾燥するため、多筒ドライターによる乾燥手段と比べ乾燥時にストレス(例えば引張り、圧縮)を与え難い特徴を有すると共に、基材表面のみが、あたかもアイロンで平坦化処理された態様であるため、本発明者らが知見した昇華捺染型転写紙で好ましい、JISP8117に準拠した透気度として、25000秒以下、より好ましくは20000秒以下に、更に、1500秒以上、より好ましくは2000秒以上の調整が容易である。
昇華捺染インク受容層の塗工にあたってその手法は特に限定されないが、本発明の効果を効率よく達成するには、微細粒子の好適な例としてシリカを選択し説明すると、まず、濃度が25重量%未満のシリカ粒子(特に粒子径の異なる2種類のシリカ)分散液とポリビニルアルコールとノニオン性界面活性剤とを予め混合しておき、次にカルボキシメチルセルロースを加えた後、5%濃度に調整した塗工液を、塗工量が乾燥重量で3〜15g/m2となるように基材上に塗工する方法が好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の公知の塗工機を用いて塗工することができる。その後、凹凸の調整又は、静摩擦係数の調整に、マシンカレンダーやソフトカレンダー等を用いて平坦化処理することも出来る。またカール等の補正を目的にバックコート層を設けることも可能である。
以下に、インクジェット記録方法を用いて昇華捺染インクにて昇華捺染型記録用紙に記録を行った場合の実施例を掲げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例で示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量部、及び重量%を示す。なお、配合において示す部数は、固形分の部数である。
<基材の作成>
フリーネス530ml(C.S.F.)の広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30重量%とフリーネス580ml(C.S.F.)の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)70重量%を配合し、助剤として、カチオン化デンプンを0.8重量%、内添サイズ剤を1.1重量%、アニオン変性ポリアクリルアマイドを0.3重量%添加し紙料を調製し、ヤンキードライヤーを備えた抄紙機で抄紙し、米坪100g/m2の片艶紙を製造した。艶面のベック平滑度をJISP8119に準拠して測定したところ80秒であった。
実施例1
微細粒子として、凝集体の平均粒径が2.3μmのシリカA(東ソー・シリカ社製、型番:ニップジェルAY−200)を固形分の重量比で30重量部、凝集体の平均粒径が6.3μmのシリカB(東ソー・シリカ社製、型番:ニップジェルAY−6A2)を固形分の重量比で70重量部、前記微細粒子100重量部に対して、水溶性樹脂としてカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬社製、商品名:セロゲン7A)を200重量部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−210)を50重量部、ノニオン性界面活性剤として、HLB値13のアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)を微細粒子100重量部に対し0.7重量部使用し、固形分濃度5%の昇華捺染インク受容層塗料を調整した。調整においては、微細粒子の凝集塊が15μmになるよう、分散調整し、前記基材の艶面に乾燥塗工量が6g/m2になるよう塗工し、昇華捺染型転写紙を得た。
実施例2〜36、比較例1〜3は、実施例1の条件を基本に、表1に示すとおり、基材、微細粒子、水溶性樹脂、界面活性剤、塗工量を変更して用い実施例1と同様に評価した。
特に、実施例2では、シリカAの代わりに、シリカC:平均粒子径1.7μm(東ソー・シリカ社製、型番:ニップジェルAY−204)を使用し、シリカBの代わりに、シリカD:平均粒子径4.3μm(塩野義製薬社製、型番:カープレックスBS−312AJ)を使用した。
実施例3では、シリカAの代わりに、シリカE:平均粒子径7.8μm(塩野義製薬社製、型番:カープレックス80D)を使用し、シリカBの代わりに、平均粒径13.0μmの焼成クレーを使用した。
実施例4では、シリカAとシリカBを固形分の重量比でそれぞれ、10重量部と90重量部使用した。
実施例5では、シリカAとシリカBを固形分の重量比でそれぞれ、50重量部と50重量部使用した。
実施例6では、シリカAとシリカBを固形分の重量比でそれぞれ、70重量部と30重量部使用した。
実施例7では、シリカAのみ100重量部使用した。
実施例8では、カルボキシメチルセルロースを500重量部使用し、ポリビニルアルコールを使用しなかった。
実施例9では、カルボキシメチルセルロースを使用せず、ポリビニルアルコールを200重量部使用した。
実施例10では、カルボキシメチルセルロースを600重量部、ポリビニルアルコールを50重量部使用した。
実施例11では、カルボキシメチルセルロースを500重量部、ポリビニルアルコールを50重量部使用した。
実施例12では、カルボキシメチルセルロースを350重量部、ポリビニルアルコールを2重量部使用した。
実施例13では、カルボキシメチルセルロースを150重量部、ポリビニルアルコールを100重量部使用した。
実施例14では、カルボキシメチルセルロースを200重量部、ポリビニルアルコールを200重量部使用した。
実施例15では、カルボキシメチルセルロースを200重量部、ポリビニルアルコールを300重量部使用した。
実施例16では、カルボキシメチルセルロースを使用せず、ポリビニルアルコールを50重量部使用した。
実施例17では、ノニオン性界面活性剤を使用しなかった。
実施例18では、ノニオン性界面活性剤の使用量を0.1重量部に変更した。
実施例19では、ノニオン性界面活性剤の使用量を0.2重量部に変更した。
実施例20では、ノニオン性界面活性剤の使用量を1.5重量部に変更した。
実施例21では、ノニオン性界面活性剤の使用量を2.0重量部に変更した。
実施例22では、ノニオン性界面活性剤の使用量を3.0重量部に変更した。
実施例23では、ノニオン性界面活性剤として、HLB値9のアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノールTG45)を使用した。
実施例24では、ノニオン性界面活性剤として、HLB値6のアセチレンアルコール系ノニオン性界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール61)を使用した。
実施例25では、ノニオン性界面活性剤として、HLB値13のアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)を0.6重量部、及び、HLB値6のアセチレンアルコール系ノニオン性界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール61)を0.2重量部使用した。
実施例26では、基材に、LBKP40重量%とNBKP60重量%を配合し米坪150g/m2、艶面のベック平滑度が45秒の片艶紙を使用した。
実施例27では、基材に、LBKP50重量%とNBKP50重量%を配合し、米坪100g/m2、艶面のベック平滑度が40秒の片艶紙を使用した。
実施例28では、基材に、米坪120g/m2、艶面のベック平滑度が65秒の片艶紙を使用した。
実施例29では、基材に、LBKP20重量%とNBKP80重量%を配合し、米坪100g/m2、艶面のベック平滑度が90秒の片艶紙を使用した。
実施例30では、基材に、米坪80g/m2、艶面のベック平滑度が110秒の片艶紙を使用した。
実施例31では、基材に、米坪60g/m2、艶面のベック平滑度が130秒の片艶紙を使用した。
実施例32では、基材に、米坪40g/m2、艶面のベック平滑度が200秒の片艶紙を使用した。
実施例33では、基材に、米坪30g/m2、艶面のベック平滑度が250秒の片艶紙を使用した。
実施例34では、乾燥塗工量を3g/m2に変更した。
実施例35では、乾燥塗工量を15g/m2に変更した。
実施例36では、乾燥塗工量を20g/m2に変更した。
比較例1では、基材に、LBKP30重量%とNBKP70重量%を配合し、米坪100g/m2、表面(塗工面)のベック平滑度が40秒の上質紙を使用した。
比較例2では、基材の非艶面に昇華捺染インク受容層塗料を塗工した。当該非艶面のベック平滑度は18秒であった。
比較例3では、昇華捺染インク受容層塗料に微細粒子を配合しなかった。
比較例4では、水溶性樹脂としてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールを使用せず、水不溶性でエマルジョンタイプのアクリル酸エステル樹脂を200重量部使用した。
市販品は、現在昇華捺染型転写紙として市販されている、基材が上質紙の巻取り品を購入し、試験に供した。
測定・評価方法
昇華捺染インクを用いたインクジェット記録評価には、ミマキ株式会社製、JV4型インクジェットプリンタを用いて、ISO300にて規定されているインクジェット記録評価用の画像を、ミマキ製の昇華型インク(SPC−370シリーズ)を用いて行った。
被転写物には、ポリエステル布素材を使用した。
(1)凹凸部の幅:製造した各転写紙のインク受容層表面に対して、走査型電子顕微鏡(日本電子データム社製JSM−6390A型)を用い、任意の凝集塊60個の幅を実測し、個々の長短の幅からの平均値を実測し、最小値5個、最大値5個を除く50個の実測平均値を測定した。
(2)凹凸部の表面粗さ:凹凸部の表面粗さをレーザー顕微鏡(キーエンス社製カラーレーザー顕微鏡VK−9700型)を用い、2乗平均粗さ(μm)を測定した。
(3)静摩擦係数:製造した各転写紙についてJISP8147に記載の「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」に準拠し、転写紙のインク受容層面同士の静摩擦係数を測定した。おもりは寸法(幅60mm、長さ100mm)及び質量(1000g)を使用し、合計5回の平均値を静摩擦係数とした。
(4)透気度:製造した各転写紙について、JISP8117に準拠して低圧法にて測定した。
(5)インク乾燥性:製造した各転写紙にインクジェットプリンタで黒ベタ印字した直後に印字面をテッシュペーパーにて擦り、拭取った際に紙面上のインクの伸びを目視で確認し下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:乾燥が早い。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びがない。
4:乾燥が早い。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びが殆どない。
3:乾燥が若干遅いが、実用上問題ないレベル。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びが少しある。
2:乾燥が遅く、テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びがある。
1:乾燥が遅く、装置汚れや印字部の汚れにつながり、使用不可。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びが長い。
(6)画像再現性:目視にて、ISO300に規定されるデジタル画像の転写紙紙面への画像再現性を下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:原版と差異の無い画像再現性である。
4:画像再現性が良好。
3:画像再現性がやや劣るが使用可能。
2:画像再現性が劣り、使用不可能。
1:画像再現性が悪く、使用不可。
(7)寸法安定性:10×150mmの各転写紙について、自動式紙伸縮計(熊谷理機工業株式会社製)を用いて温度による伸びを測定した。測定は、20℃におけるサンプルの長さを基準にして60℃で30分保持後の伸びを測定し、20℃におけるサンプルの長さ(基準長さ)に対する伸びを%表示した。下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:換算値が30未満
4:換算値が30以上〜35未満
3:35以上〜40未満
2:40以上〜50未満
1:50以上
(8)インクの裏抜け(昇華性染料裏抜け防止性):製造した各転写紙に昇華性インクを印字し、熱源より熱を加えた際に、製造した転写紙のインク受容層面の反対面へのインクの裏抜けを目視で判定し、裏抜け防止性を下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:昇華性インクの裏抜けが全くない。
4:僅かに昇華性インクの裏抜けが殆どない。
3:僅かに昇華性インクの裏抜けがあるが実用上全く問題がない。
2:昇華性インクの裏抜けが認められ、熱源が少し汚れる。
1:昇華性染料の裏抜けが多く認められ、熱源装置を激しく汚す。
(9)転写効率:(i)解像性の評価、(ii)ベタ画像部の評価(ベタ画像部の画像濃度と均一性)に分けて目視で判定して昇華捺染型インクジェット記録の転写効率を下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
(i)解像性
5:解像性良好。印字面にゆがみなどの現象が認められず、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がある。
4:解像性良好。印字面にゆがみなどの現象が認められないが、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性が若干劣る。
3:解像性がやや劣るが、実用上全く問題が無い。印字面にゆがみなどの現象が認められず、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がやや劣るが被転写物の使用上問題が起こらない。
2:解像性がやや悪いが、条件によって使用可能。印字面にゆがみなどの現象が僅かに認められ、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がやや劣る。
1:解像性が悪く、使用不可。印字面にゆがみなどの現象が認められ、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がない。
(ii)ベタ画像部
5:画像濃度が高く、ベタ画像部にムラがない。
4:画像濃度が高く、ベタ画像部に若干ムラが認められる。
3:画像濃度やや高く、ベタ画像部にムラが認められるが実用上全く問題がない。
2:画像濃度がやや低く、ベタ画像部にムラが認められる。
1:画像濃度が低く、ベタ画像部に多くのムラが認められる。
以上の結果を表2に示す。
インク受容層表面に凹凸が形成されている場合(本発明の好ましい実施形態)を示す電顕写真 インク受容層表面に凹凸が形成されていない場合(従来品:市販品)を示す電顕写真

Claims (5)

  1. 基材上に昇華捺染インク受容層を有する昇華捺染型転写紙であって、
    前記基材は、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行なうことで片面を艶面とした片艶紙であり、
    前記昇華捺染インク受容層は、前記艶面上に形成され、かつ、主成分として水溶性樹脂と微細粒子からなり、
    JISP8147に準拠した前記昇華捺染インク受容層表面同士の静摩擦係数が0.30〜0.90の範囲である、ことを特徴とする昇華捺染型転写紙。
  2. 前記昇華捺染インク受容層表面には、前記微細粒子の凝集塊にて凹凸が形成され、その凸部の幅が30μm以下である、請求項1記載の昇華捺染型転写紙
  3. 前記片艶紙の米坪が60〜150g/m2であり、
    前記艶面のJISP8119に準拠したベック平滑度が40〜200秒である、請求項1又は2に記載の昇華捺染型転写紙。
  4. 前記昇華捺染インク受容層は、アセチレンアルコール系及び/又はアセチレングリコール系のノニオン性界面活性剤を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の昇華捺染型転写紙。
  5. JISP8117に準拠した透気度が1,500〜25,000秒である、請求項1〜3のいずれかに記載の昇華捺染型転写紙。
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