JP4413980B1 - 昇華型インクジェット捺染転写紙 - Google Patents

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【課題】昇華型捺染インクを用いた昇華型インクジェット捺染転写紙への印刷時の優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性と画像再現性と裏抜け防止性を有するとともに、転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を提供する。
【解決手段】基材上に昇華型捺染インク受容層を有する昇華型インクジェット捺染転写紙であって、前記基材中に、浸透剤を含有し、前記昇華型捺染インク受容層は、水溶性樹脂と微細粒子を含有するとともに、前記微細粒子は、合成非晶質シリカである。前記浸透剤としては、ノニオン性界面活性剤、特にアセチレンアルコール系及び/又はアセチレングリコール系のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、昇華型インクジェット捺染転写紙に関し、具体的には、インクジェット記録方式により転写紙に昇華型捺染インクを用いた印刷を行い、この転写紙上の印刷された画像をポリエステル等の布帛に転写して昇華転写捺染する際に使用する昇華型インクジェット捺染転写紙に関する。
転写捺染法には、ワックスや樹脂等の熱軟化性固着剤と顔料からなるインクを用いた溶融型転写捺染法、ポリ塩化ビニル等の粉末及び可塑剤及び顔料からなるプラスチゾルインキを用いたラバープリント型転写捺染法、熱昇華性染料を用いた昇華型捺染転写法がある。
溶融転写捺染法では捺染物の風合いや伸縮性が不十分であり、ラバープリント型転写捺染法による捺染物は通気性や感触が良くない。昇華型捺染転写法は、捺染物の風合いを損なわず、他の転写法では出せないシャープな図柄をプリントできることから、現在主に行われている転写捺染法である。従来、熱転写捺染シートはその形成に際してスクリーン版、グラビア版などの印刷版とそれに応じた印刷機が必要であったが、個性の多様化により、小ロットに対応したインクジェット印字用の転写捺染シートの報告がなされ、小ロットに対応した昇華型捺染転写が広まり、需要が伸びてきている。
昇華型捺染転写法とは、ポリエステル生地等の被転写物と昇華型インクジェット捺染転写紙とを重ね合わせたものを180〜220℃に加熱されたドライヤーに密着させて、昇華型インクジェット捺染転写紙に印刷された印刷インクを熱にて昇華させ、被転写物に転写捺染を行うものである。
前記インクジェット印字用の昇華型インクジェット捺染転写紙としては、基材上に、シリカ等の顔料や、ポリビニルアルコール等の結着剤等を含有するインク受容層を設けてなるものが知られている(特許文献1及び2を参照)。
特開2003−276309号公報 特開2002−292995号公報
ところが、従来の昇華型インクジェット捺染転写紙においては、特にインクジェット印刷する際には、昇華型捺染インク吸収・乾燥性が不十分で、往々にして印字面で望ましくない汚れが発生することがあった。一方、被転写物に転写捺染する際においては、昇華型捺染インクが昇華型インクジェット捺染転写紙の昇華型捺染インク受容層とは異なる裏面側に裏抜けを生じたり、被転写物である布帛等を通過(裏抜け)し、転写用プレス機等に昇華型捺染インクが付着してしまう問題があった。しかしながら、この昇華型捺染インク吸収・乾燥性と昇華型捺染インク裏抜け防止性は相反する性質であり、これを両立させた、すなわち印刷時には昇華型捺染インクを速やかに吸収・乾燥させ、かつ転写時には裏抜けをさせない昇華型インクジェット捺染転写紙を製造することは困難であった。さらに、昇華型インクジェット捺染転写紙における画像の再現性や、被転写物への転写効率(転写画像の解像性や、転写画像濃度レベルと、その均一性等)についても十分なレベルのものとする必要があった。
本発明は、上記現状に鑑み、昇華型捺染インクを用いた昇華型インクジェット捺染転写紙への印刷時の優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性と画像再現性と裏抜け防止性を有するとともに、転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を提供することを課題とするものである。
本発明は、基材上に昇華型捺染インク受容層を有する昇華型インクジェット捺染転写紙であって、前記基材中に、浸透剤を含有し、前記昇華型捺染インク受容層は、水溶性樹脂と微細粒子を含有し、前記水溶性樹脂として、ポリビニルアルコールを前記微細粒子100重量部に対し、1〜200重量部、及び、カルボキシメチルセルロースを前記微細粒子100重量部に対し、100〜400重量部の割合で含有し、前記微細粒子として、合成非晶質シリカを含有することを特徴とする昇華型インクジェット捺染転写紙に関する。
好ましくは、前記浸透剤は、ノニオン性界面活性剤であり、より好ましくは、アセチレンアルコール系及び/又はアセチレングリコール系のノニオン性界面活性剤である。
さらに好ましくは、前記基材が片艶クラフト紙であり、前記片艶クラフト紙の艶面に前記昇華型捺染インク受容層を有し、前記微細粒子として、平均粒子径が1.7〜6.2μmの合成非晶質シリカ凝集体と、平均粒子径が6.2〜12.7μmの合成非晶質シリカ凝集体とを併用した、平均粒子径が異なる2種類以上の合成非晶質シリカ凝集体を含有し、前記昇華型捺染インク受容層の塗工量が3〜25g/m であり、より好ましくは、昇華型インクジェット捺染転写紙のJIS P 8117に準拠した透気度が1,500〜25,000秒である事で、更に好適な昇華型インクジェット捺染転写紙を得ることができる。
本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙は、印刷時には昇華型捺染インクの吸収・乾燥性と画像再現性に優れているとともに、昇華型捺染のための加温転写時に昇華型捺染インクが昇華型インクジェット捺染転写紙の裏側に裏抜けするのを防止する特性においても優れている。さらには、転写による被転写物の画像再現性や、転写効率の点においても優れた特性を有する。
特に、インクジェットプリンタにて昇華型捺染インクを用いた印刷が施される、インクジェット記録用に適している。
本発明の実施に用いられる基材としては、昇華型捺染インク受容層が設けられる基材であればその素材は限定されない。即ち、木材パルプを主成分とする紙や、無機微粒子を含有する熱可塑性樹脂からなる多孔性樹脂フィルム、更には不織布、布帛、樹脂被覆紙、合成紙等が挙げられる。本発明の効果が顕著に現れる基材としては、昇華型インクジェット捺染転写紙の裏面への加熱により、昇華型捺染インクが昇華しやすい多孔質な素材であり、具体的には、木材パルプを主成分とする紙や、不織布、布帛である。
基材として、木材パルプを主成分とする紙を使用することが好ましく、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行うことで片面を艶面とした片艶紙を使用することが特に好ましい。片艶紙は従来の紙と異なり、寸法安定性に優れ、フィルムと異なりリサイクルが可能であり、昇華型捺染インクの吸収・乾燥性に優れる特徴を有する。
本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙における基材は、昇華型捺染インク受容層が設けられる支持体であれば、その素材は限定されないが、本発明者が最も好適として見出した片艶紙を基材として以下に説明する。
片艶紙は、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行うことでヤンキードライヤー面を艶面とした紙である。片艶紙は、湿紙をヤンキードライヤーに貼り付けて乾燥させるため、多筒式ドライヤーを用いる湿紙の乾燥方式に比べ、寸法安定性に優れているので、優れた画像再現性を達成することができる。これに用いる片艶紙は、米坪が60〜150g/mであることが好ましく、90〜110g/mがより好ましい。片艶紙の米坪が60g/m未満であると、引張強度と引裂強度の低下により紙切れが起きやすくなる。片艶紙の米坪が150g/mを超えると被転写物への昇華型捺染インクの加熱転写時に熱伝達が悪くなり、転写効率が低下する傾向がある。
また、片艶紙の艶面のJIS P 8119記載のベック平滑度が40〜200秒であることが好ましく、50〜100秒がより好ましい。艶面のベック平滑度が50秒未満であると印刷時の昇華型捺染インクの吸収・乾燥性は高くなるももの、画像再現性が低下し、被転写物への昇華型捺染インクの転写時の画像再現性と転写効率が低下する傾向がある。また、200秒を超えると水溶性樹脂と微細粒子からなる昇華型捺染インク受容層の形成にムラが発生し、画像再現性が低下する傾向がある。
本発明に係る片艶紙はいわゆる製紙分野で使用される原料より構成される。使用するパルプとしては特に限定されないが、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)や広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ;サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)等の機械パルプ;デインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)等の化学パルプや機械パルプを含む古紙パルプ等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。これらのうち、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプを、紙質強度と基材表面の平坦性、昇華型捺染インクの昇華型インクジェット捺染転写紙における品質確認において適宜組合せて用いることが好ましい。
本発明で基材に配合する浸透剤とは、紙基材に対する油性成分の浸透性を改善する薬剤として一般に知られているものである。具体的には、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられ、本発明では特にノニオン性界面活性剤を好適に使用することができる。
浸透剤として、本発明で好適に使用できるノニオン性界面活性剤のほか、カチオン性、両性、アニオン性を呈する界面活性剤が市販されているものの、カチオン性の脂肪族アミン塩や芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩等は、水溶液中でイオンに解離してカチオン性を示す界面活性剤である。昇華型捺染インクの定着を促進し、加熱時のインクの昇華を抑制する場合がある、両性を有する界面活性剤には、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられ、分子内にアニオン性親水基とカチオン性親水基を同時に持つため、溶液のpHによりアニオン性やカチオン性いずれにも解離し、アルカリ側ではアニオン性の、酸性側ではカチオン性の、中性付近では非イオン性の界面活性剤として作用するものの、部分的にカチオン性を呈する基を保有するため、カチオン性と同様に昇華型捺染インクの昇華を抑制する場合がある。アニオン性を有する界面活性剤は、水溶液中でイオン解離してアニオン部分が界面活性を示す物質であり、昇華型捺染インクの溶媒のみならず、溶質部分も基材中に浸透させる問題が生じる場合がある。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、長鎖または分岐アルキルフェノールのポリアルキレンオキサイドエーテル、長鎖アルキルアルコールのポリアルキレンオキサイドエーテル、脂肪酸エステル、アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルチオエーテル、リン酸エステルなどに代表されるポリオキシエチレングリコール類、アセチレングリコール系のノニオン性界面活性剤;脂肪酸アンヒドロソルビットエステル、脂肪酸アンヒドロソルビットエステルと酸化エチレンの縮合物、脂肪酸グリセリンエステル、ペンタエリスリットエステル、脂肪酸ショ糖エステル、グルコシド、グルコンアミド、脂肪酸アルキロールアミドに代表される多価アルコール類;プロパギルアルコール、ブチンジオール、アセチレンアルコール類などを挙げることができる。
本発明における最も好適なノニオン性界面活性剤としては、理由は定かではないが、親水性基はOH基の数が多いほど親水性を高め得る性状を呈する界面活性剤であるため、アセチレングリコール系の界面活性剤とアセチレンアルコール系の界面活性剤が、昇華型捺染インクの定着を生じさせることなく、溶媒を基材中に速やかに吸収し乾燥を促すためと推定され、好適に用いられる。
ノニオン性界面活性剤、特にアセチレングリコール系界面活性剤とアセチレンアルコール系界面活性剤は、昇華型捺染インク受容層表面の凹凸の形成において、昇華型捺染インクの溶媒を効率的に基材中に含浸させるため、昇華型捺染インク受容層に形成される凝集塊が溶媒の浸透に応じて不用意に再凝集されることがなく、均等な凝集塊による凹凸部の形成が得られるばかりか、昇華型捺染インクによる印刷時には昇華型捺染インクを速やかに吸収・乾燥させ、かつ転写時には裏抜けのない昇華型インクジェット捺染転写紙を得ることができる。
特には、アセチレン基を中央に持ち、左右対称の構造をしたアセチレングリコール系のノニオン性の界面活性剤が好適に用いられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、その混合物、あるいは酸化エチレン付加体等を挙げることができる。更にはHLB値が9〜13のアセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
アセチレンアルコール系の界面活性剤としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、その混合物、あるいは酸化エチレン付加体等を挙げることができる。更にはHLB値が6以上のアセチレンアルコール類が好ましい。
本発明で云うHLB値は、グリフィン法に準拠し、親水基の式量と分子量を元に、HLB値=20×(親水基の重量%)の計算式で求めたものである。
基材に浸透剤、特にアセチレンアルコール系及び/又はアセチレングリコール系のノニオン性界面活性剤を含有させることで、昇華型捺染インクに含有される溶媒を昇華型捺染インク受容層から選択的に基材中に浸透させ、溶質に当る昇華型捺染インク成分を昇華型捺染インク受容層中に留める効果を醸し出すため、昇華型捺染インクの吸収・乾燥性を促進する。さらに、溶媒より粒径の大きい昇華型捺染インク成分(溶質)が昇華型捺染インク受容層を経て基材まで及ぶことを制御し、被転写物への昇華型捺染インクの転写効率と昇華型捺染インク濃度の向上を図ることができ、昇華型インクジェット捺染転写紙への印刷時の優れた昇華型捺染インク乾燥性と画像再現性と裏抜け防止性を有するとともに、転写による被転写物の画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を得る事ができる。
上記浸透剤の含有量は、原料パルプ(絶乾)に対し、0.01〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8質量%である。ここで、含有量が0.01質量%未満であると昇華型捺染インクのインク吸収・乾燥性に対する浸透剤の効果が得られ難く、また、1.0質量%を超えると、昇華型捺染インク受容層の形成において、水溶性樹脂成分が基材中に過度に浸透・含浸されるため塗工層強度の低下や加工時に紙粉が発生する問題が生じるため好ましくない。
本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙は、好適にはJIS P 8117に準拠した昇華型インクジェット捺染転写紙の透気度が1,500〜25,000秒、より好適には8,000〜21,000秒、さらに好適には、9,000〜20,000秒である。透気度が、1,500秒未満では、転写効率や昇華型捺染インクの裏抜け防止性が低下する問題が生じ、25,000秒を超えると、熱伝達が低下し昇華型捺染インクの転写効率が低下すると共に、画像再現性が悪くなる。
透気度の調整には、基材に用いる原料パルプの選択、叩解処理等の公知の手段を使用できる他、本発明で基材として好適に用いる事ができる片艶紙においては、ヤンキードライヤー面への接触圧によってより好適に透気度を調整できる。本発明では浸透剤を基材中に含有させることにより、均等な凝集塊による凹凸部の形成が得られるため、透気度においてもより調整が可能になる。
片艶紙の艶面は表面の平坦性が高いので、ここに昇華型捺染インク受容層を設けることによって均質性の高い昇華型捺染インク受容層を得ることが可能になり、画像再現性や作業性に優れているとともに、昇華型捺染のための加温転写時に被転写物の画像再現性や、転写効率の点においても優れた特性を有することができ、本発明における昇華型インクジェット捺染転写紙に特に優れた基材として好適に用いられる。
また、基材中には、酸化澱粉、アセチル化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の各種澱粉や、紙力増強剤、内添サイズ剤、外添サイズ剤、歩留向上剤等の添加薬品、更に調整可能な範囲で、酸化チタン、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の填料を含有してもよい。
当該基材上に設ける昇華型捺染インク受容層は、微細粒子と、バインダーとして水溶性樹脂とを含有するものであるが、更には、前記浸透剤を昇華型捺染インクの過度の浸透を生じさせない量含有させる事もできる。また、後述するが、昇華型捺染インク受容層の表面を微細粒子の凝集塊による凹凸にて被覆形成させる性状を呈することが、浸透剤との組合せから好ましい。この性状を有すると、印刷時の昇華型捺染インク吸収・乾燥性が浸透剤との相乗効果により良好になり、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点においてもより良好な特性を得ることができる。
本発明では、微細粒子として、合成非晶質シリカを用いることが好ましい。このような合成非晶質シリカとは、ケイ酸のゲル化によりSiOの三次元構造を形成させた、細孔容積の多い多孔性で不定形の微粒子であり、10〜2000オングストローム程度の細孔径を有する。該合成非晶質シリカを用いることによって、本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙の昇華型捺染インクの吸収・乾燥性を向上させると共に、昇華型捺染インクの被転写物への転写効率も向上し、被転写物上の画像を一層鮮明にすることができる。
このような合成非晶質シリカとしては、市販のものを好適に用いることができ、例えば、ミズカシルP−526、ミズカシルP−801、ミズカシルNP−8、ミズカシルP−802、ミズカシルP−802Y、ミズカシルC−212、ミズカシルP−73、ミズカシルP−78A、ミズカシルP−78F、ミズカシルP−87、ミズカシルP−705、ミズカシルP−707、ミズカシルP−707D、ミズカシルP−709、ミズカシルC−402、ミズカシルC−484(以上、水澤化学工業(株)製)、トクシールU、トクシールUR、トクシールGU、トクシールAL−1、トクシールGU−N、トクシールN、トクシールNR、トクシールPR、ソーレックス、ファインシールE−50、ファインシールT−32、ファインシールX−30、ファインシールX−37、ファインシールX−37B、ファインシールX−45、ファインシールX−60、ファインシールX−70、ファインシールRX−70、ファインシールA、ファインシールB(以上、(株)トクヤマ製)、シペルナート、カープレックスFPS−101、カープレックスCS−7、カープレックス22S、カープレックス80、カープレックス80D、カープレックスXR、カープレックス67(以上、DSL.ジャパン(株)製)、サイロイド63、サイロイド65、サイロイド66、サイロイド77、サイロイド74、サイロイド79、サイロイド404、サイロイド620、サイロイド800、サイロイド150、サイロイド244、サイロイド266(以上、富士シリシア化学(株)製)、ニップジェルAY−200、ニップジェルAY−6A2、ニップジェルAZ−200、ニップジェルAZ−6A0、ニップジェルBY−200、ニップジェルBY−200、ニップジェルCX−200、ニップジェルCY−200、ニップシールE−150J、ニップシールE−220A、ニップシールE−200A(以上、東ソー・シリカ(株)製)などが挙げられる。
本発明で用いられる合成非晶質シリカは微細な粒子の凝集体であることが好ましく、凝集体の平均粒子径が1.7μm〜13.0μm、好適には3.7μm〜12.7μmの範囲内にあることが好ましい。合成非晶質シリカとして平均粒子径が1.7μm〜13.0μmの凝集体を使用することにより、高品質な色再現性、画像再現性を得ることができる。微細な粒子の凝集体の平均粒子径が1.7μm未満であると昇華型捺染インクの吸収・乾燥性が低下する傾向があり、また、微細な粒子の凝集体の平均粒子径が13.0μmを超えると転写したプリント物の発色濃度が低くなる場合がある。
本発明では、合成非晶質シリカ1種類のみの単独での凝集体を用いることができるが、好適には、凝集体の平均粒子径が異なる2種類以上の合成非晶質シリカ凝集体を組み合わせて使用することが好ましい。特に、凝集体の平均粒子径が1.7〜6.2μmの合成非晶質シリカ凝集体と、凝集体の平均粒子径が5.0μmを超える合成非晶質シリカ凝集体とを併用し、組合せた微細粒子の混合体を用いることが好ましい。このように平均粒子径が数μmの範囲で異なる合成非晶質シリカ凝集体を併用することによって、凝集体と凝集体の間隙を異なる平均粒子径の凝集体が補完する凝集塊が形成され、昇華型捺染インクを用いた昇華型インクジェット捺染転写紙への印刷時の優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性がより良好になり、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でもより良好な特性を得ることができる。
更に好適には、理由が明確ではないが、2種類以上の合成非晶質シリカ凝集体を組み合わせて使用することで、本発明で規定する吸水速度の達成が容易になり、浸透剤による基材の吸水速度の向上効果との相乗効果にて優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性など本発明の効果を達成することができる。
このような合成非晶質シリカ凝集体としては、市販のものを用いることができ、例えば、凝集体の平均粒子径が1.7〜6.2μmの合成非晶質シリカ凝集体の市販品としてはニップジェルAY−200等が挙げられ、凝集体の平均粒子径が5.0μmを超える合成非晶質シリカ凝集体の市販品としてはニップジェルAY−6A2等が挙げられる。
本発明でいう平均粒子径は、少量のサンプルをメタノール溶液に添加し、超音波分散器で3分間分散した溶液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTER ELECTRONICS INS製TA−II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定を行い、微細粒子の凝集塊については、分析走査型電子顕微鏡(日本電子データム(株)製JSM−6390A型)による顕微鏡写真から実測測定を行った。
好適な平均粒子径が異なる合成非晶質シリカ凝集体の組合せにおいて、凝集体の平均粒子径が1.7〜6.2μm、好適には3.7〜4.3μmの合成非晶質シリカ凝集体と、凝集体の平均粒子径が5.0μmを超える、好適には6.2〜12.7μmの合成非晶質シリカ凝集体の配合比としては、特に限定されないが、好適には、固形分の重量比で90:10〜50:50程度であることが好ましい。固形分の重量比で90:10〜50:50程度とすることで、粒子径の大きいシリカ凝集体の間隙を、粒子径の小さいシリカ凝集体が埋めるため、得られる凝集塊の多孔性が増し、より優れた昇華型捺染インクの吸収・乾燥性を達成することができ、また、昇華型インクジェット捺染転写紙における画像再現性、加熱転写時の耐熱性、被転写物における画像再現性と、高い昇華型捺染インクの転写効率を得ることができる。
本発明の効果を奏する限りにおいて、合成非晶質シリカとともに、合成非晶質シリカ以外の微細粒子を配合することが可能である。他の微細粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物(擬ベーマイト等)、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
前記昇華型捺染インク受容層中の微細粒子の含有量は20〜60質量%が好ましく、23〜50質量%がより好ましい。含有量が20質量%未満だと昇華型捺染インク受容量が少なくなり転写効率が低下する傾向がある。また60質量%を超えると、昇華型捺染インク受容量は多くなるが、転写時の昇華効率が低下する傾向があり、汚損の問題が生じる場合がある。なお、昇華型捺染インク受容層中の水溶性樹脂が熱可塑性を示すため、昇華型捺染インク受容層中の微細粒子の含有率を高くすることにより、昇華型捺染転写紙の耐熱性が向上する。
本発明において水溶性樹脂は主としてバインダーとして用いられ、例えば、澱粉、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースサルフェート等のセルロース誘導体、各種鹸化度のポリビニルアルコール又はそのシラノール変性物、カルボキシル化物、カチオン化物等の各種誘導体、カゼイン、ゼラチン、変性ゼラチン、大豆蛋白等の水溶性天然高分子、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム等の水溶性合成高分子が挙げられ、これらの水溶性高分子を単独で若しくは併用して用いることができる。
本発明者らが見出した最も好適な水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコールとカルボキシメチルセルロースが挙げられ、最も好適には、両者を併用することが好ましい。
ポリビニルアルコールとしては特に限定されず、各種ケン化度のポリビニルアルコールを使用することができるが、ケン化度としては、87〜89mol%程度が好ましい。重合度としては特に限定されないが、例えば、重合度が約1000以下のものが、カルボキシメチルセルロースとの相溶性や昇華型捺染インクを昇華型捺染インク受容層に留め置くに特に好ましい。このようなポリビニルアルコールの市販品としては、ポバールPVA−210、ポバールPVA−205((株)クラレ製)等が挙げられる。
水溶性樹脂として、ケン化度が87〜89mol%程度で、重合度が約1000以下のポリビニルアルコールを昇華型捺染インク受容層に用いることで、印刷時の優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性を達成しやすくなるとともに、浸透剤により、昇華型捺染インクの溶質が昇華型捺染インク受容層を経て基材に浸透するのを制御する機能と、溶媒成分をすみやかに基材に至らしめる効果を醸し出すため、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でもより良好な特性を有することができる。
ポリビニルアルコールの配合量としては、固形分で、少なくとも合成非晶質シリカを含む微細粒子100重量部に対して1〜200重量部程度が好ましく、2〜100重量部程度がより好ましい。この範囲によって、より優れた昇華型捺染インクの吸収・乾燥性を達成することができる。微細粒子100重量部に対してポリビニルアルコールの配合量が1重量部未満では、ポリビニルアルコールによるバインダー効果が十分に発揮されず、昇華型捺染インク受容層の剥離や傷が入りやすくなり、画像再現性を低下させる問題が生じる。微細粒子100重量部に対してポリビニルアルコールの配合量が200重量部を超えると、ポリビニルアルコールによる被膜形成のため、昇華型捺染インクの吸収・乾燥性の低下が問題となる。
本発明の課題である、昇華型インクジェット捺染転写紙の昇華型捺染インク受容層がきわめて急速に昇華型捺染インクを吸収・乾燥させる性能の発現には、水溶性樹脂として好適に用いる事ができるカルボキシメチルセルロースの重合度または分子量が影響を与えるため、好適には所定の重合度、分子量の製品を使用し、塗工時の温度をコントロールすることが好ましい。
好適に用いられる水溶性樹脂としてのカルボキシメチルセルロースとしては、重合度が120〜500、分子量27000〜110000の範囲のものが好ましい。
水溶性樹脂として、重合度が120〜500、分子量27000〜110000のカルボキシメチルセルロースは、粘性と作業性から微細粒子の凝集塊を形成させやすく、また形成した凝集塊を塗工しやすくするのに重要なファクターとなる。重合度が120未満、分子量が27000未満だと水溶性樹脂の粘度が低いため凝集塊ができにくい。また重合度が500より大きく、分子量が110000より大きいと凝集塊を塗工するのに作業性が悪い塗工液となる。例えば、粘度が高すぎ塗工できなかったり、粘度を下げために固形分を下げると乾燥負荷がかかったり、また粘度を下げるため長時間高温に保つと皮膜形成に悪影響がおこる。
カルボキシメチルセルロースは、好適に組合わせて使用されるポリビニルアルコール、特にケン化度が87〜89mol%程度で、重合度が約1000以下のポリビニルアルコールとの相溶性が良好であると共に、合成非晶質シリカの分散性、特に2種類以上の合成非晶質シリカ凝集体を組み合わせて使用する際における凹凸の形成能を阻害させることなく、昇華型捺染インクを用いた昇華型インクジェット捺染転写紙への印刷時の昇華型捺染インク吸収・乾燥性をより優れたものとするとともに、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でもより良好な特性を有することができる。
市販品としては、セロゲンPR(以上、第一工業製薬(株)製)等を使用することができる。カルボキシメチルセルロースの配合量としては、固形分で、少なくとも合成非晶質シリカを含む微細粒子100重量部に対して100〜400重量部程度が好ましく、好適には100〜350重量部程度がより好ましい。カルボキシメチルセルロースの配合量が100重量部未満では、昇華型捺染インクの被転写物への転写効率が低下する問題が生じる場合がある。カルボキシメチルセルロースの配合量が400重量部を超えると、昇華型捺染インクの吸収・乾燥性が低下し、保管時に昇華型捺染インクが裏写りなど汚損の問題が生じやすくなる。
本発明に係る好適な転写紙表面の昇華型捺染インク受容層は、水溶性樹脂と微細粒子を含有し、前記微細粒子として、合成非晶質シリカを含有することに加えて、前記水溶性樹脂として、カルボキシメチルセルロースとポリビニルアルコールを、重量基準で100:1〜400:200の割合で含有することが好ましい。さらに、昇華型捺染インク受容層を形成する際に使用する塗工液の調製条件を制御して、昇華型捺染インク受容層表面が、前記微細粒子の凝集塊により被覆されるようにすることにより、上記の吸水速度を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を得ることができる。
昇華型捺染インク受容層の塗工量としては、3〜25g/mの範囲が好ましく、5〜15g/mの範囲がより好ましい。3g/m未満では、基材に含有される浸透剤の効果にて、昇華型捺染インク成分全体(溶質・溶媒)が基材まで及び、十分な昇華型捺染インクの吸収容量が確保できず、転写画像の解像性が悪化し、ベタ画像部にムラが発生する傾向がある。昇華型捺染インク受容層の塗工量が25g/mを超えると、昇華型捺染インクの溶媒成分が基材に至る速度が遅くなり、浸透剤を基材に含有させる効果が発現され難くなるとともに、相対的に表面強度が低下し、粉落ち等が発生して作業性を低下させる原因になる。
昇華型捺染インク受容層の塗工にあたってその手法は特に限定されないが、本発明の効果を効率よく達成するには、上述のように調整した塗工液を、塗工量が乾燥重量で3〜25g/cmとなるように基材上に塗工する方法が好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の公知の塗工機を用いて塗工することができるが、上述のように塗工手段としてベントブレードを用いることが好ましい。
更に、本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙は、昇華型捺染インク受容層側における超音波透過強度の相対値における最小値のピークを、測定時間3秒以内に有することが好ましい。
超音波透過強度とは、発信した超音波信号が試料を透過した後受信機が受信する超音波信号の強度で、一般に超音波は溶媒中では強度の減衰がないが、試料を通過時は強度の減衰が発生する。
紙による超音波の透過性は紙が液体を吸収すると変化し、一連のメカニズムによって影響される。(1)紙が濡れることで、紙と液体の界面での超音波の反射の減衰による受信信号の増加、(2)不均一な液体の浸透に伴い、紙内の局所的に取残された気泡によって超音波の散乱による受信信号の減少、(3)細孔や毛細管が液体で完全に満たされることによって超音波の吸収が減少により受信信号の増加のメカニズムにより紙が濡れて繊維の弾力性が変化し超音波の減衰が変化する。 超音波透過強度の相対値は、受信信号の最小値を100%になるように次式より算出できる。
超音波透過強度の相対値(%)=超音波受信信号の最小値/各測定時間における超音波受信信号×100 (超音波受信信号は負の値で。)超音波透過強度の測定方法は、試料ホルダーに両面テープを気泡が入らないように貼り、両面テープの上に試料を張り合わせる。試験機に試料ホルダーをセットし、測定を開始し、超音波透過強度データを得ることができる。本用紙の場合、測定エリアおよび測定周波数によらず、超音波透過強度の相対値が概ね同一データとなるため、これらは規定しない。
本発明で超音波透過強度の相対値を算出するために使用した動的液体浸透性測定装置はドイツEMCO社製 DPM33およびDPM3−2−Tである。
本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙では、超音波透過強度の相対値を測定すると、図4で示すように、測定時間3秒以内に、最小値のピークが現れる。具体的には、超音波透過強度の相対値は測定開始後経時的に変化するものであるが、当該相対値が、測定開始直後から減少し続け、3秒以内に、当該減少が緩やかな増加に転じる。この減少から増加に転じる時点を超音波透過強度の相対値の最小値のピークが現れる時間とする。
一方、従来の昇華型インクジェット捺染転写紙では、図4の市販品1又は2として示すように、時間の経過とともに超音波透過強度の相対値が塗工層表面との界面での濡れのため一旦上昇した後、超音波透過強度の相対値が低下し続けて最小値のピークを持たないか、又は、最小値のピークを持っている場合でも、3秒を大きく超えて、例えば10秒前後に当該ピークを有する。
昇華型インクジェット捺染転写紙が超音波透過強度の相対値における最小値のピークを、測定時間3秒以内に有すると、吸水速度が極めて速いものであるため、昇華型捺染インク吸収・乾燥性が非常に優れたものとなり、印刷後に転写紙を巻き取りした場合でも裏写りや、汚れ、コスレの問題が発生しにくくなり、高速印刷時の作業性を改善することができる。最小値のピークが存在しなかったり、測定時間3秒を超えて現れる場合には、昇華型捺染インク吸収・乾燥性が不十分であり、印刷後の巻き取りの際に、裏写りや、汚れ、コスレが発生しやすく、高速印刷時の作業性が著しく悪化する。具体的には、印刷速度が1m/分を超えるような高速でインクジェット印刷をしつつ、印刷後の転写紙を高速で巻き取る際、印刷が施された昇華型捺染インク受容層表面の乾燥が不十分なまま巻き取られることになり、裏写りや、汚れ、コスレの問題が発生することになる。また、このようにして生じた裏写りや、汚れ、コスレにおける不要な昇華型捺染インクが、加熱転写時に転写設備や被転写物に付着して、最終転写物の品質低下や汚れも生じやすくなる。本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙を用いずに以上の問題を回避しようとすると、印刷時に乾燥設備を別途設置する必要が生じるためコストの上昇につながる。すなわち、本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙を用いると、乾燥設備等を設けなくとも、裏写りや、汚れ、コスレの問題を生じることなく、巻き取りをしながらの高速印刷を行うことが可能になる。なお、乾燥設備を設けると更なる高速印刷を行うことも可能になる。
また、最小値のピークが測定時間3秒を超えて現れる場合には、加熱転写時に被転写物と反対方向へ昇華型捺染インクを昇華させる用紙となるため、転写機を汚し、転写機に付着した昇華型捺染インクがさらに昇華し、上記とことなるメカニズムで最終転写物の品質低下や汚れを生じやすくなることになる。
以上から、最小値のピークは測定開始後、より短時間で現れるほうが好ましく、具体的には、測定時間2秒以内に有することが好ましく、測定時間1秒以内に有することが特に好ましい。
超音波透過強度の相対値における最小値のピークを、測定時間3秒以内に有する昇華型インクジェット捺染転写紙を製造する好適な手段には、先に記載した昇華型捺染インク受容層において、水溶性樹脂と微細粒子を含有し、前記微細粒子として、合成非晶質シリカを所定の割合で含有させることに加えて、より好適には昇華型捺染インク受容層の表面を微細粒子の凝集塊による凹凸にて被覆形成させることで可能であり、より優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性、作業性を向上するとともに、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を好適に製造することができる。
本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙の特に好適な態様では、従来品とは異なり、昇華型捺染インク受容層が特異な凹凸の表面構造を呈している。従来品では図2に示すように、昇華型捺染インク受容層は顔料とバインダーがほぼ一定の厚みで基材表面を被覆するものや、図3に示すように、昇華型捺染インク受容層に顔料を含まずバインダーのみで基材表面を被覆するものであったが、本発明の好適な態様では、昇華型捺染インク受容層の表面には図1に示すように凹凸が形成されている。この凹凸は、微細粒子による凝集塊であることが好ましいが、特に、粒子径の異なる2種類の合成非晶質シリカ凝集体が凝集することによって得られる凝集塊により形成された凹凸であることがより好ましい。最も好ましくは、凝集塊により、好ましくは幅が10μm以上の凸部が多数形成され、このような凹凸を表面に有する昇華型捺染インク受容層が基材の表面を被覆することによって本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙が形成されている。
この凹凸が存在すると基材表面の比表面積が増大するので、昇華型捺染インクを昇華型捺染インク受容層で瞬時に吸収、保持(乾燥)することが可能になり昇華型捺染インクの吸収・乾燥性が向上し、優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性を有しており作業性が良好であるとともに、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を製造することができる。
ここで、本発明で云う凹凸とは、微細粒子の凝集塊による昇華型捺染インク受容層表面の起伏のことを云い、その形成は昇華型捺染インク受容層を形成する塗工液の攪拌段階で水溶性樹脂に微細粒子を添加し、混合分散処理する事により得られるものである。
混合分散時の物理的剪断力が強すぎると、微細粒子の均質な分散が生じ凹凸を形成し難くなるため、好適には分散処理を適宜調整し、塗工液中に微細粒子の凝集塊を形成させ、昇華型捺染インク受容層形成時に凹凸を形成させる。凹凸を形成するメカニズムは明確ではないが、水溶性樹脂が基材に含浸することで、水溶性樹脂中に分散された微細粒子の凝集塊が表出し、基材表面上に昇華型捺染インク受容層を形成すると共に、凝集塊による凹凸を形成する。
凹凸の存在は後述のように分析走査型電子顕微鏡(日本電子データム(株)製JSM−6390A型)を用いて確認することができる。本発明者らの知見によると、凹凸を形成する凝集塊の凸部の幅が大きくなりすぎると、昇華型捺染インクの裏抜け防止性が低下する傾向があるので、30μm程度以下が好ましく、20μm程度以下がより好ましい。なお、この幅は無作為に選択した凝集塊60個の、個々の長短の幅からの平均値を実測し、最小値5個、最大値5個を除く50個の実測平均値を測定した。
また、当該昇華型捺染インク受容層の表面粗さをレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製カラーレーザー顕微鏡 高解像度タイプVK−9700型)で測定すると、二乗平均粗さで3μm以上を満足することが好ましい。好ましくは4μm以上である。上限は21μm以下、あるいは20μm以下程度が好ましい。表面粗さが3μm未満と低すぎると昇華型捺染インクの乾燥性が十分でなく、21μmを超える過大な粗さの場合は、昇華型インクジェット捺染転写紙における画像再現性が低下すると共に、被転写物における画像再現性、転写効率が低下するほか本発明の効果を達成するのに不都合である。なお、従来品における二乗平均粗さは3μm未満である。
昇華型捺染インク受容層の表面を微細粒子の凝集塊による凹凸にて被覆形成させる具体的方法の例としては、前記塗工液を下記の手順で作成する。すなわち、まずカルボキシメチルセルロースの溶液を比較的高温(例えば50〜80℃程度)で調製する。別途、合成非晶質シリカのスラリーを比較的低温(例えば20〜40℃程度)で調製する。前記カルボキシメチルセルロースのスラリーに前記シリカのスラリーを添加することで、シリカを凝集させ、ゲル化した混合物を得る。その後、さらにポリビニルアルコールを添加する。得られた混合物では微細粒子の固形分濃度を2〜25質量%、好ましくは3〜12質量%程度に調整する。この混合物に対して、常温付近(例えば15〜45℃、この20〜35℃)で30分以内、好ましくは20分以内の混合分散処理を行い、これによりほぼ均一な粒径を有するシリカ凝集塊を形成する。この混合分散時において、シリカ凝集塊の大きさが数十μm(具体的には10〜30μm程度)になるように物理的剪断力を調整することで、本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙を製造するのに適した塗工液を製造することができる。
塗工液中に含まれる凝集塊に起因してストリークが生じやすいので、好適な塗工手段としてベントブレードを用いることで、ストリークを生じさせることなく、所望の塗工量で塗工層を形成することができる。以上の工程により、優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性を有しており作業性が良好であるとともに、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を好適に製造することができる。
その後、凹凸の調整又は静摩擦係数の調整のために、マシンカレンダーやソフトカレンダー等を用いて平坦化処理することも出来る。またカール等の補正を目的にバックコート層を設けることも可能である。
さらに本発明の昇華型インクジェット捺染転写紙は、昇華型捺染インク受容層の表面の、JIS R 3257に準拠したぬれ性試験方法の静滴法による接触角が50〜85度であることが好ましい。
接触角とは、固体、液体及び気体(一般的には空気)の接する部位から、液体の曲面に接線を引いたとき、この接線と固体表面のなす角度として定義され、静滴法による接触角は固体表面上に液滴を静置して接触角を求める方法である。 昇華型捺染インク受容層の表面の接触角を測定するには、JIS R 3257に準拠すればよいが、ここで固体表面上に静置する液滴は4μl以下の純水を用いることが適当である。また測定は水滴を試験片に静置してから即座、10秒以内に測る必要がある。10秒を超えて測定すると塗工層表面に水分が浸透し、接触角が正確に測れなくなるためである。 接触角を50〜85度に制御することで、より迅速な昇華型捺染インクの吸収・乾燥性を確保できるとともに、昇華型捺染インク受容層の表面での昇華型捺染インクのにじみを防止することができる。さらに、加熱転写時においては、熱対応性が高く、転写効率を向上させることができる。当該接触角が50度未満であると、昇華型捺染インクが浸透しすぎるため加熱転写においての転写効率が低くなる。一方、85度を超えると、昇華型捺染インクのインク吸収・乾燥性が不十分であり、印刷後の巻き取りの際に、裏写りや、汚れ、コスレが発生しやすく、高速印刷時の作業性が著しく悪化する。好ましくは50〜75度度である。なお、従来の昇華型インクジェット捺染転写紙では、当該接触角は60度程度であった。
このような接触角を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を製造するには、転写紙表面の昇華型捺染インク受容層に配合するカルボキシメチルセルロースとポリビニルアルコールを、重量基準で100:1〜400:200の割合で含有することが好ましい。さらには、上述と同様に塗工液の調製条件や塗工条件を制御して、昇華型捺染インク受容層表面が、前記微細粒子の凝集塊により被覆されるようにすると、上記接触角の条件を満足するとともに、更に優れた昇華型捺染インク吸収・乾燥性を有しており作業性が良好であり、転写紙表面での画像再現性、加熱転写時の耐熱性、転写後の被転写物表面での画像再現性や転写効率の点でも良好な特性を有する昇華型インクジェット捺染転写紙を製造することができる。
以下に、インクジェット記録方法を用いて昇華型捺染インクにて昇華型捺染型記録用紙に記録を行った場合の実施例を掲げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例で示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量部、及び重量%を示す。なお、配合において示す部数は、固形分の部数である。
実施例1
フリーネス530ml(C.S.F.)の広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とフリーネス580ml(C.S.F.)の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を等重量配合し、助剤として、カチオン化デンプンを0.8%、内添サイズ剤を1.1%、アニオン変性ポリアクリルアマイドを0.3%、浸透剤としてアセチレングリコール1(日信化学工業社製アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、型番:サーフィノール440、HLB 8)を0.10%添加して紙料を調製し、ヤンキードライヤーを備えた抄紙機で抄紙し、米坪100g/m、平滑度60秒の片艶紙を製造した。
微細粒子として、平均粒子径が3.7μmの合成非晶質シリカであるシリカA(トクヤマ社製、型番:ファインシールX37B)を85部、平均粒子径が6.2μmの合成非晶質シリカであるシリカB(トクヤマ社製、型番:ファインシールX60)を15部、前記微細粒子100部に対して、水溶性樹脂としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下CMCと略す。) CMC−A(第一工業製薬社製、商品名:セロゲンPR、重合度220〜250、分子量47000〜54000)を200部、ポリビニルアルコール(以下PVAと略す。) PVA−A(クラレ社製、商品名:PVA−205、ケン化度87〜89mol%、重合度500)を25部使用し、固形分濃度6.6%の昇華型捺染インク受容層塗料を調製した。微細粒子の凝集塊を形成するため、65〜80℃の高温のCMC中に、20℃〜30℃の低温のシリカ分散スラリーを添加しシリカを凝集させ、ゲル化した混合物を得た。その後PVAを添加し、20〜45℃にて混合分散しシリカ凝集塊の大きさが15μmになるよう物理的剪断力を調整した。
微細粒子の凝集塊を調整した塗液は、前記基材の艶面に乾燥塗工量が5g/mになるよう塗工し、昇華型捺染転写紙を得た。製造した昇華型捺染転写紙を、後述する評価基準により評価した。
以下の実施例、比較例は、実施例1の条件を基本に、表1に示すとおり、基材、微細粒子、水溶性樹脂、塗工量を変更して昇華型捺染転写紙を製造し、実施例1と同様に評価した。
実施例2では、坪量及び平滑度を表1に記載のとおり変更し、アセチレングリコール1の代わりに、アセチレングリコール2(日信化学工業社製アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、型番:サーフィノール465、HLB 13)0.50%を使用するとともに、シリカAの代わりに、凝集体の平均粒子径が1.7μmの合成非晶質シリカ凝集体であるシリカC(東ソー・シリカ社製、型番:ニップジェルAZ−204)を使用した。
実施例3では、坪量及び平滑度を表1に記載のとおり変更し、アセチレングリコール1の代わりに、アセチレングリコール3(日信化学工業社製アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、型番:サーフィノール485、HLB 17)を0.05%使用するとともに、シリカAの代わりに、凝集体の平均粒子径が4.3μmの合成非晶質シリカ凝集体であるシリカD(DSL.ジャパン(株)製、型番:カープレックスBS−312AJ)を使用した。
実施例4では、坪量及び平滑度を表1に記載のとおり変更し、アセチレングリコール1の代わりに、アセチレングリコール4(日信化学工業社製アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、型番:オルフィンSTG、HLB 9〜10)を0.01%使用するとともに、シリカAの代わりにシリカBを使用し、シリカBの代わりに、凝集体の平均粒子径が12.7μmの合成非晶質シリカ凝集体であるシリカG(DSL.ジャパン(株)製、型番:カープレックスBS−303)を使用した。
実施例5では、平滑度を表1に記載のとおり変更し、アセチレングリコール1の代わりに、アセチレンアルコール1(第一工業製薬製アセチレンアルコール系ノニオン性界面活性剤、型番:ノイゲンET83、HLB 6.4)を0.50%使用するとともに、シリカBの代わりに、凝集体の平均粒子径が10.1μmの合成非晶質シリカ凝集体であるシリカF(DSL.ジャパン(株)製、型番:カープレックスBS−304N)を使用した。
実施例6では、アセチレングリコール1の代わりに、アセチレンアルコール2(第一工業製薬製アセチレンアルコール系ノニオン性界面活性剤、型番:ノイゲンET802、HLB 10.8)を0.50%使用するとともに、シリカAとシリカBの配合量を表1に記載のように変更した。
実施例7では、アセチレングリコール1の代わりに、アセチレンアルコール3(第一工業製薬製アセチレンアルコール系ノニオン性界面活性剤、型番:ノイゲンET143、HLB 12.6)を0.50%使用するとともにシリカAとシリカBの配合量を表1に記載のように変更した。
実施例8では、坪量及び平滑度を表1に記載のとおり変更し、アセチレングリコール1の代わりに、アセチレンアルコール4(第一工業製薬製アセチレンアルコール系ノニオン性界面活性剤、型番:ノイゲンET69、HLB 5.7)を0.50%使用するとともに、シリカAの代わりにシリカCを使用し、シリカBの代わりに、平均粒径6.3μmの焼成クレーを使用した。
実施例9では、アセチレングリコール1の使用量を0.50%に変更するとともに、CMC−Aの代わりに、CMC−B(第一工業製薬社製、商品名:セロゲン7A、重合度120〜150、分子量27000〜33000)を100部使用した。
実施例10では、アセチレングリコール1の代わりにアセチレングリコール2を0.50%使用し、CMC−A 200部の代わりに、CMC−C(第一工業製薬社製、商品名:セロゲン5A、重合度120以下、分子量27000以下)を100部使用し、かつ、PVA−Aの使用量を2部に変更した。
実施例11では、アセチレングリコール1の代わりにアセチレンアルコール1を0.50%使用し、CMC−Aの代わりに、CMC−D(第一工業製薬社製、商品名:セロゲンWS−A、重合度460〜500、分子量100000〜110000)を使用した。
実施例12では、アセチレングリコール1の代わりにアセチレンアルコール2を0.50%使用し、CMC−Aの代わりに、CMC−E(第一工業製薬社製、商品名:セロゲンBS−H、重合度500〜800、分子量180000〜190000) 42部を使用した。
実施例13では、アセチレングリコール1の使用量を0.50%に変更するとともに、PVA−Aの代わりに、PVA−B(クラレ社製、商品名:PVA210、ケン化度87〜89mol%、重合度1000)を使用した。
実施例14では、アセチレングリコール1の代わりにアセチレングリコール2を0.50%使用し、PVA−Aの代わりに、PVA−C(クラレ社製、商品名:PVA203、ケン化度87〜89mol%、重合度300)を使用した。
実施例15では、アセチレングリコール1の代わりにアセチレンアルコール1を0.50%使用し、CMC−Aを310部使用し、PVA−Aの代わりに、PVA−D(クラレ社製、商品名:PVA110、ケン化度98〜99mol%、重合度1000)を使用した。
実施例16では、アセチレングリコール1の代わりにアセチレンアルコール2を0.50%使用し、CMC−Aを300部使用し、かつ、PVA−A 25部の代わりに、PVA−E(クラレ社製、商品名:PVA120、ケン化度98〜99mol%、重合度2000) 100部を使用した。
実施例17では、アセチレングリコール1の代わりに、両性界面活性剤(アルキルポレイアミノエチレルグリシン、竹本油脂社製、型番:パイオニンC−156)を0.50%使用し、塗工量を表1に記載のとおり変更した。
実施例18では、アセチレングリコール1の代わりに、カチオン性界面活性剤(ラウルルピリジニウムクロライド、竹本油脂社製、型番:パイオニンB−251)を0.60%使用し、CMC−A及びPVA−Aの使用量を表1に記載のとおり変更した。
実施例19では、アセチレングリコール1の代わりに、アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォネート、竹本油脂社製、型番:パイオニンA−41C)を0.80%使用し、塗工量を表1に記載のとおり変更した。
実施例20では、基材に、サイズ剤を外添した上質紙を使用し、アセチレングリコール1の使用量を1.00%に変更した。
比較例1では、浸透剤及び微細粒子を使用せずに水溶性樹脂のみを塗工した。
比較例2では、浸透剤を使用せず、微細粒子として、平均粒径6.3μmの焼成クレー(エンゲルハード社製、型番:アンシレックス)のみを使用し、前記微細粒子100部に対して、水溶性樹脂として、PVA−Aのみを25部使用した。
市販の昇華型捺染転写紙である市販品1、市販品2を購入し、評価対象とした。
測定・評価方法
昇華型捺染インクを用いたインクジェット記録評価には、ミマキ株式会社製、JV4型インクジェットプリンタを用いて、ISO300にて規定されているインクジェット記録評価用の画像を、ミマキ製の昇華型インク(SPC−370シリーズ)を用いて行った。
被転写物には、ポリエステル布素材を使用した。
(1)シリカ凝集塊の有無:走査型電子顕微鏡(日本電子データム社製JSM−6390A型)を用い、シリカ凝集隗の有無を確認した。
○:凝集隗を確認でき、凝集隗と凝集隗との間に5μm以上の空隙が確認できる。
△:凝集隗を確認できるが、凝集隗と凝集隗の間に5μm以上の空隙が確認できない。
×:凝集隗が確認できない。
(2)塗工液の塗工性:シリカ凝集隗を塗工する際には、凝集隗を起点としたストリーク欠陥の発生と樹脂の中の泡による未塗工欠損による塗工性を考慮する必要がある。
(i)ストリーク欠陥:基材に塗工液をウェブし、定量塗工する目的でブレードにて余除塗工液を掻き落す際に、異物またはシリカ凝集隗を起点に未塗工部が発生する欠陥の発生を、塗工機に設置した反射型欠陥検出器による欠陥検出個数で決定した。
◎:流れ10,000mに0〜1個
○:流れ10,000mに2〜4個
△:流れ10,000mに5〜7個
×:流れ10,000mに8個以上
(ii)スクラッチ欠陥:基材に塗工液をウェブし、定量塗工する目的でブレードにて余除塗工液を掻き落す際に、樹脂の破泡等による未塗工欠損の発生の数を塗工機で目視確認した数で決定した。
◎:流れ5,000mに1回
○:流れ5,000mに2回
△:流れ5,000mに3〜4回
×:流れ5,000mに5回以上
(3)瞬間吸液性:試料ホルダーに両面テープを気泡が入らないように貼り、両面テープの上に試料を張り合わせた。動的液体浸透性測定装置(ドイツEMCO社製 DPM33およびDPM3−2−T)試料ホルダーをセットし、測定を開始し、超音波透過強度データを得た。超音波透過強度の相対値は、受信信号の最小値を100%になるように次式より算出した。
超音波透過強度の相対値(%)=超音波受信信号の最小値/各測定時間における超音波受信信号×100 (超音波受信信号は負の値で。)
超音波透過強度の相対値の経時変化を図4のようにグラフに表示し、最小値のピークが現れた時間を表2に示す。
(4)接触角:JIS R 3257に準拠したぬれ性試験方法の静滴法により、昇華型捺染インク受容層の表面の接触角を測定した。
(5)凹凸の有無及び凸部の幅:製造した各転写紙のインク受容層表面に対して、走査型電子顕微鏡(日本電子データム社製JSM−6390A型)を用い、凹凸の有無を観察し、凹凸がある場合については、任意の凝集塊60個の幅を実測し、個々の長短の幅からの平均値を実測し、最小値5個、最大値5個を除く50個の実測平均値を測定した。
(6)インク受容層の表面平均粗さ:インク受容層の表面粗さをレーザー顕微鏡(キーエンス社製カラーレーザー顕微鏡 VK−9700型)を用い、2乗平均粗さ(μm)として測定した。
(7)インク乾燥性:製造した各転写紙にインクジェットプリンタで黒ベタ印字した直後に印字面をテッシュペーパーにて擦り、拭取った際に紙面上のインクの伸びを目視で確認し、下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:乾燥が早い。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びがない。
4:乾燥が早い。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びが殆どない。
3:乾燥が若干遅いが、実用上問題ないレベル。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びが少しある。
2:乾燥が遅く、テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びがある。
1:乾燥が遅く、装置汚れや印字部の汚れにつながり、使用不可。テッシュペーパーによる擦り拭取りした紙面は、インクの伸びが長い。
(8)画像再現性:目視にて、ISO300に規定されるデジタル画像の転写紙紙面への画像再現性を下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:原版と差異の無い画像再現性である。
4:画像再現性が良好。
3:画像再現性がやや劣るが使用可能。
2:画像再現性が劣り、使用不可能。
1:画像再現性が悪く、使用不可。
(9)寸法安定性:10×150mmの各転写紙について、自動式紙伸縮計(熊谷理機工業株式会社製)を用いて温度による伸びを測定した。測定は、20℃におけるサンプルの長さを基準にして60℃で30分保持後の伸びを測定し、20℃におけるサンプルの長さ(基準長さ)に対する伸びを%表示した。下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:換算値が30未満
4:換算値が30以上〜35未満
3:35以上〜40未満
2:40以上〜50未満
1:50以上
(10)インクの裏抜け(昇華性染料裏抜け防止性):製造した各転写紙に昇華性インクを印字し、熱源より熱を加えた際に、製造した転写紙のインク受容層面の反対面へのインクの裏抜けを目視で判定し、裏抜け防止性を下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
5:昇華性インクの裏抜けが全くない。
4:僅かに昇華性インクの裏抜けが殆どない。
3:僅かに昇華性インクの裏抜けがあるが実用上全く問題がない。
2:昇華性インクの裏抜けが認められ、熱源が少し汚れる。
1:昇華性染料の裏抜けが多く認められ、熱源装置を激しく汚す。
(11)耐熱性:製造した各転写紙に昇華性インクを印字し、温度条件を変えた熱源より熱を加えた際に、製造した転写紙のインク受容層面の劣化が始まる温度を測定した。210℃以上が実用レベルである。
(12)転写効率:(i)解像性の評価、(ii)ベタ画像部の評価(ベタ画像部の画像濃度と均一性)に分けて目視で判定して昇華捺染型インクジェット記録の転写効率を下記の基準にて5段階評価した。3段階以上の評価が実用レベルである。
(i)解像性
5:解像性良好。印字面にゆがみなどの現象が認められず、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がある。
4:解像性良好。印字面にゆがみなどの現象が認められないが、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性が若干劣る。
3:解像性がやや劣るが、実用上全く問題が無い。印字面にゆがみなどの現象が認められず、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がやや劣るが被転写物の使用上問題が起こらない。
2:解像性がやや悪いが、条件によって使用可能。印字面にゆがみなどの現象が僅かに認められ、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がやや劣る。
1:解像性が悪く、使用不可。印字面にゆがみなどの現象が認められ、印字原稿に匹敵する印字調子の再現性がない。
(ii)ベタ画像部
5:画像濃度が高く、ベタ画像部にムラがない。
4:画像濃度が高く、ベタ画像部に若干ムラが認められる。
3:画像濃度やや高く、ベタ画像部にムラが認められるが実用上全く問題がない。
2:画像濃度がやや低く、ベタ画像部にムラが認められる。
1:画像濃度が低く、ベタ画像部に多くのムラが認められる。
以上により得られた結果を表2に示す。
昇華型捺染インク受容層表面に凹凸が形成されている場合(本発明の好適な態様)を示す電顕写真 昇華型捺染インク受容層表面に凹凸が形成されていない場合(従来品:市販品)を示す電顕写真 昇華型捺染インク受容層表面に凹凸が形成されていない場合(従来品:市販品)を示す電顕写真 実施例1並びに市販品1及び2において超音波透過強度の相対値の時間変化を示すグラフ

Claims (4)

  1. 基材上に昇華型捺染インク受容層を有する昇華型インクジェット捺染転写紙であって、
    前記基材中に浸透剤を含有し、
    前記昇華型捺染インク受容層は、水溶性樹脂と微細粒子を含有し
    前記水溶性樹脂として、ポリビニルアルコールを前記微細粒子100重量部に対し、1〜200重量部、及び、カルボキシメチルセルロースを前記微細粒子100重量部に対し、100〜400重量部の割合で含有し、
    前記微細粒子として、合成非晶質シリカを含有することを特徴とする昇華型インクジェット捺染転写紙。
  2. 前記基材が片艶クラフト紙であり、前記片艶クラフト紙の艶面に前記昇華型捺染インク受容層を有し、
    前記微細粒子として、平均粒子径が1.7〜6.2μmの合成非晶質シリカ凝集体と、平均粒子径が6.2〜12.7μmの合成非晶質シリカ凝集体とを併用した、平均粒子径が異なる2種類以上の合成非晶質シリカ凝集体を含有し、
    前記昇華型捺染インク受容層の塗工量が3〜25g/m である、請求項1に記載の昇華型インクジェット捺染転写紙。
  3. JIS P 8117に準拠した透気度が1,500〜25,000秒である請求項1又は2に記載の昇華型インクジェット捺染転写紙。
  4. 前記浸透剤は、ノニオン性界面活性剤である請求項1〜3のいずれかに記載の昇華型インクジェット捺染転写紙。
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