JP2009287400A - エンジンのバルブタイミング調節装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】フィードバック制御の信頼性と制御性との両立を図る。
【解決手段】左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型エンジンにおいて、位相調整機構と、カムシャフトの回転に同期して、カムシャフト1回転当たり等間隔で複数個のカム位置信号を発生するカム位置信号発生手段と、このカム位置信号に基づいて実際のバルブタイミングを検出するバルブタイミング検出手段と、実際のバルブタイミングが目標バルブタイミングと一致するように前記位相調整機構に与える指令値をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうち前記実際のバルブタイミングを検出するのに用いるカム位置信号の数をエンジンの運転条件に応じて変更する信号数変更手段(S34〜S38)とを備える。
【選択図】図16A
【解決手段】左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型エンジンにおいて、位相調整機構と、カムシャフトの回転に同期して、カムシャフト1回転当たり等間隔で複数個のカム位置信号を発生するカム位置信号発生手段と、このカム位置信号に基づいて実際のバルブタイミングを検出するバルブタイミング検出手段と、実際のバルブタイミングが目標バルブタイミングと一致するように前記位相調整機構に与える指令値をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうち前記実際のバルブタイミングを検出するのに用いるカム位置信号の数をエンジンの運転条件に応じて変更する信号数変更手段(S34〜S38)とを備える。
【選択図】図16A
Description
この発明はエンジンの吸排気バルブのタイミングを運転条件に応じて変更し得るバルブタイミング調節装置に関する。
左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンを対象とするバルブタイミング調節装置がある(特許文献1参照)。
特開平6−248917号公報
ところで、エンジンのクランクシャフトと、吸気バルブまたは排気バルブを駆動するカムを有するカムシャフとの間にクランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させ得る位相調整機構を用いてバルブタイミングをフィードバック制御する場合、適正なバルブタイミングは、エンジンの負荷や回転速度に応じて変化する。このため、バルブタイミング調節装置はこれらエンジンの運転条件の変化に対し素早く動作させるのが望ましい。そして、バルブタイミングを素早くフィードバックさせるためには、バルブタイミングのサンプリング周期を短くすること、つまりカムシャフト1回転の間に複数回の相対回転角の検出を行う必要がある。そのためにはカムシャフトの1回転の間に複数個のカム位置信号を発生させる必要がある。
しかしながら、カムシャフトの回転角速度は、吸気バルブや排気バルブのバルブ駆動のためにカムプロフィル面に受ける力に起因して変動している。このため、カムシャフト1回転の間に複数のカム位置信号を発生させようとすると、定常運転条件でありながらカムシャフトの角速度変動により、カム位置信号の発生タイミングがパルス信号毎に早くなったり遅くなったりする。そしてこのようなカム位置信号のずれのため、相対回転角(バルブタイミング)の検出結果がカムシャフトの回転に同期して周期的に変動するという問題がある。この問題は特に左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンにおいて著しい。
このようにして周期的に相対回転角の検出結果が変動すると、フィードバック制御の際、その変動分も制御しようとするため、バルブタイミングがハンチングして、なかなか目標バルブタイミングに収束しないことになり、フィードバック制御性が悪化する。
そこで、上記特許文献1の技術では、特に左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンを対象として、カムシャフトの駆動トルクの変化量あるいはカムシャフトの回転角速度のいずれかが略等しくなる回転位置においてカム位置信号を発生させるように構成し、カムシャフト1回転当たり3個のカム位置信号を発生させている。これによって、カムシャフトの回転角速度変動による複数個のカム位置信号の発生タイミングばらつきやカムシャフトの駆動トルクの変化量の違いによる複数個のカム位置信号の発生タイミングばらつきを抑制し、複数個のカム位置信号の発生毎にほぼ同じ条件で相対回転角を求めることができるようにしている。
しかしながら、左右バンクを有するV型8気筒エンジンでは、片バンクに4つの気筒が配置されているため、基本的にはカムシャフトの回転に同期して、カムシャフト1回転当たり等間隔で4個のカム位置信号を発生させる必要がある。従って、上記特許文献1の技術のように、カムシャフト1回転当たり3個のカム位置信号を発生させるのでは、バルブタイミングのサンプリング周期を却って長くすることになっており、特に低回転速度域でのフィードバック制御の信頼性が低下してしまう。
そこで本発明は、フィードバック制御の信頼性とフィードバック制御性との両立を図るようにした装置を提供することを目的とする。
本発明は、左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型エンジンにおいて、エンジンのクランクシャフトと、吸気バルブまたは排気バルブを駆動するカムを有するカムシャフとの間にクランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させ得る位相調整機構と、カムシャフトの回転に同期して、カムシャフト1回転当たり等間隔で複数個のカム位置信号を発生するカム位置信号発生手段とを備え、このカム位置信号発生手段の発生するカム位置信号に基づいて吸気バルブまたは排気バルブの実際のバルブタイミングを検出し、エンジンの運転条件に応じた目標バルブタイミングを算出し、前記バルブタイミング検出手段により検出される実際のバルブタイミングが目標バルブタイミングと一致するように前記位相調整機構に与える指令値をフィードバック制御し、前記カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうち前記実際のバルブタイミングを検出するのに用いるカム位置信号の数をエンジンの運転条件に応じて変更するように構成する。
左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンでは、センシングタイミングでのカム駆動トルクが正や負にバラツクためにカムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号が各バンクとも安定しない、という固有の問題がある。
この場合に、カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうちの1つだけに基づいて実際のバルブタイミングを検出するようにすれば、カム位置信号が安定し、フィードバック制御精度を向上させることができるものの、検出するのに用いる1のカム位置信号と、次に検出するのに用いる1のカム位置信号との間の間隔(つまり制御周期)が時間的に長くなる運転条件では、フィードバック制御の信頼性が悪化することになってしまう。
これに対して本発明によれば、エンジンのクランクシャフトと、吸気バルブまたは排気バルブを駆動するカムを有するカムシャフとの間にクランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させ得る位相調整機構と、カムシャフトの回転に同期して、カムシャフト1回転当たり等間隔で複数個のカム位置信号を発生するカム位置信号発生手段とを備え、このカム位置信号発生手段の発生するカム位置信号に基づいて吸気バルブまたは排気バルブの実際のバルブタイミングを検出し、エンジンの運転条件に応じた目標バルブタイミングを算出し、実際のバルブタイミングが目標バルブタイミングと一致するように位相調整機構に与える指令値をフィードバック制御し、カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうち実際のバルブタイミングを検出するのに用いるカム位置信号の数をエンジンの運転条件に応じて変更するので、左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型気筒エンジンであってもカム位置信号の安定性とフィードバック制御の信頼性とを両立できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は2プレーン・クランクシャフトのV型8気筒エンジン(以下単に「エンジン」という。)1の燃焼行程順序を説明する図を示している。図1上段において左右のバンク2、3には1番から8番までの気筒が割り振られている。以下、1番気筒を「#1気筒」、2番気筒を「#2気筒」、3番気筒を「#3気筒」、4番気筒を「#4気筒」、5番気筒を「#5気筒」、6番気筒を「#6気筒」、7番気筒を「#7気筒」、8番気筒を「#8気筒」という。
このエンジン1は、4個のクランクピンが90度ずつの位相をもって配列された2プレーン・クランクシャフトと称されるクランク配置を有している。この2プレーン・クランクシャフトの内容については特開2003−56374号公報に記載されているので、ここでは2プレーン・クランクシャフトの内容説明は省略する。
図2はエンジン1を正面から見たタイミングチェーンとスプロケットの配置を示す概略図である。左バンク2の吸気バルブ用カムスプロケット4及び排気バルブ用カムスプロケット5とクランクスプロケット1aとに左バンクのタイミングチェーン6が掛け回されており、クランクシャフトが2回転する間に左バンク2の吸気バルブ用カムシャフト及び排気バルブ用カムシャフトがその半分の1回転をするようになっている。同様にして、右バンク3の吸気バルブ用カムスプロケット7及び排気バルブ用カムスプロケット8とクランクスプロケット1aとに右バンクのタイミングチェーン9が掛け回されており、クランクシャフトが2回転する間に左バンク3の吸気バルブ用カムシャフト及び排気バルブ用カムシャフトもその半分の1回転をするようになっている。
エンジン1には、吸気バルブと吸気バルブの各バルブタイミングを連続的に変更可能な可変バルブタイミング機構(この可変バルブタイミング機構を以下「VTC機構」という。)11、12、13、14(位相調整機構)をバンク別に備えている。吸気バルブ用のVTC機構は「吸気VTC機構」と、また排気バルブ用のVTC機構は「排気VTC機構」という。4つの各VTC機構はいずれも同様の構成である。これら吸気VTC機構11、13及び排気VTC機構12、14は後述するように吸排気バルブのオーバーラップ量を制御するために設けられている。
吸排気バルブのオーバーラップ量をフィードバック制御するため、4つの各VTC機構11、12、13、14に対向して4つの各カム位置センサ61、62、71、72(カム位置信号発生手段)を備える。
吸気バルブ側と排気バルブ側の両方にVTC機構が設けられると、エンジンの運転条件に応じた吸排気バルブのオーバーラップ量が得られるようにするには、
〈1〉吸気VTC機構のみを制御する場合
〈2〉排気VTC機構のみを制御する場合
〈3〉吸気VTC機構と排気VTC機構の両方を制御する場合
の3つの態様が考えられるのであるが、本実施形態は〈1〉の場合を主に説明する。すなわち、制御が複雑になるのを避けるため排気VTC機構12、14は作動させないものとする。ただし、本発明は〈1〉の場合に限定されるものでない。
〈1〉吸気VTC機構のみを制御する場合
〈2〉排気VTC機構のみを制御する場合
〈3〉吸気VTC機構と排気VTC機構の両方を制御する場合
の3つの態様が考えられるのであるが、本実施形態は〈1〉の場合を主に説明する。すなわち、制御が複雑になるのを避けるため排気VTC機構12、14は作動させないものとする。ただし、本発明は〈1〉の場合に限定されるものでない。
吸気VTC機構11、13には油圧駆動式や電磁駆動式など様々なタイプのものがあり(特開2005−61244号公報、特開2002−130038号公報参照)、いずれでもかまわない。ここでは、油圧駆動式の場合で説明する。
図3は左バンク2の吸気VTC機構11をフロントプレート29を除去した状態でみた概略平面図、図4はフロントプレート29を取り付けた状態の吸気VTC機構11の斜視図である。図3に示すように、吸気VTC機構11は、クランクスプロケットからの駆動力により回転するカムスプロケット22と、このカムスプロケット22に固定される円筒状のハウジング23と、このハウジング23の内部において吸気バルブ用カムシャフト21(図8参照)に固定される内部ロータ24と、この内部ロータ24の外周面において開口する軸方向に沿う溝24aに挿入されると共に2つの油圧室25、26を仕切るブレード27と、内部ロータ24内にあって2つの油圧室25、26にオイルを供給するためのオイル供給通路(破線で示す)と、ブレード27のロック機構28とを備えている。
図5は右バンク3の吸気VTC機構13をフロントプレート39を除去した状態でみた概略平面図、図6はフロントプレート39を取り付けた状態の吸気VTC機構13の斜視図である。図5に示すように、吸気VTC機構13は、クランクスプロケットからの駆動力により回転するカムスプロケット32と、このカムスプロケット32に固定される円筒状のハウジング33と、このハウジング33の内部において吸気バルブ用カムシャフト31(図9参照)に固定される内部ロータ34と、この内部ロータ34の外周面において開口する軸方向に沿う溝34aに挿入されると共に2つの油圧室35、36を仕切るブレード37と、内部ロータ34内にあって2つの油圧室35、36にオイルを供給するためのオイル供給通路(破線で示す)と、ブレード37のロック機構38とを備えている。
これら2つの吸気VTC機構11、13の各部位に供給する油圧を制御する油圧制御系について図7を参照して次に説明する。2つの吸気VTC機構11、13を働かせる油圧制御系については、全体としてオイルポンプは1つであり、2つの吸気VTC機構11、13にオイルポンプ41からの作動油を並列的に供給する構成である。ここでは吸気VTC機構11に対する油圧制御系を先に説明する。
図7において、オイルポンプ41は、クランクシャフトの回転力に基づき機械的に駆動され、オイルパン42内の作動油を吸引し、供給油路R1を介して第1オイルコントロールバルブ(OCV)43に作動油を供給する。
第1オイルコントロールバルブ43はデューティ制御に基づき開度制御される4ポート弁であり、上記供給油路R1に加え、作動油をオイルパン42に還流する2本の排出油路R2,R3と、上記左バンク吸気VTC機構11の遅角油圧室26に連通する遅角油路R4と、進角油圧室25に連通する進角油路R5とがこの第1オイルコントロールバルブ43に接続されている。第1オイルコントロールバルブ43は、図示しないが、往復摺動可能に配設されたスプールと、同スプールを付勢するコイルバネと、電圧を印加されることによってスプールを吸引する電磁ソレノイドを内蔵する。
上記電磁ソレノイドに印加される電圧は、エンジンコントロールユニット51によってデューティ制御されている。電磁ソレノイドが発生する吸引力は、印加される電圧のデューティ比に応じて変化する。この電磁ソレノイドが発生する吸引力とコイルバネの付勢力との釣り合いによって、スプールの位置が決められる。
スプールが移動することによって、遅角油路R4及び進角油路R5と、供給油路R1及び排出油路R2,R3との連通量が変化し、遅角油路R4及び進角油路R5に対して供給される作動油の量、あるいはこれら油路R4,R5より排出される作動油の量が変化する。エンジンコントロールユニット51では、このようにして上記遅角油圧室26及び進角油圧室25内の油圧を調節することにより、内部ロータ24及びハウジング23の相対的な動きを制御する。
他方、オイルポンプ41によって吸引された作動油の一部は、供給油路R1から分岐する油路R6を通じてオイルスイッチングバルブ(OSV)44に供給される。オイルスイッチングバルブ44は、第1オイルコントロールバルブ43と同様、電磁ソレノイド及びコイルバネの協働によって往復動するスプールを内蔵し、電磁ソレノイドへの供給電圧がエンジンコントロールユニット51によってデューティ制御されることで開度制御される3ポート弁である。オイルスイッチングバルブ44には、上記油路R6に加え、作動油をオイルパン42に還流する排出油路R7と、内部ロータ24内の所定部位に連通するロックキー制御油路R8とが接続されている。エンジンコントロールユニット51では、第1オイルコントロールバルブ43と同様、ロックキー制御油路R8を通じて供給する作動油の油圧を調節することにより、ロックキー28bの作動状態を制御する。
なお、ハウジング23(カムスプロケット22)に対する内部ロータ24(カムシャフト21)の相対位相が図3の矢指方向αに向かって最も進んだ状態は、左バンク2の吸気バルブタイミングが最も進角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最進角位置」という。一方、ハウジング23に対する内部ロータ24の相対位相が図3の矢指方向αに向かって最も遅れた状態は、左バンク2の吸気バルブタイミングが最も遅角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最遅角位置」という。例えば最遅角位置で吸気バルブ閉時期(IVC)が吸気下死点よりも大きく遅れるようにし、これによって吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間とが重複しないようにする(オーバーラップをなくす)。また、最進角位置で吸気バルブ閉時期を吸気下死点に近づけ、これによってオーバーラップを大きくする。すなわち、本実施形態のエンジンでは、「最進角位置」および「最遅角位置」間で左バンクの吸気バルブタイミング(吸気バルブ閉時期や吸気バルブ開時期)が可動となる。そして、ロックキー28bは、このように内部ロータ24及びハウジング23の相対位相によって決定づけられる吸気バルブタイミングがその可変範囲内の中間状態にあるところで、内部ロータ24及びハウジング23の相対位相を固定する。このときの吸気バルブタイミングの位置を「固定位置」という。
次に、吸気VTC機構13に対する油圧制御系を説明する。図7において、オイルポンプ41は、供給油路R1から分岐される供給油路R11を介して第2オイルコントロールバルブ(OCV)47に作動油を供給する。
第2オイルコントロールバルブ47はデューティ制御に基づき開度制御される4ポート弁であり、上記供給油路R11に加え、作動油をオイルパン42に還流する2本の排出油路R12,R13と、上記吸気VTC機構13の遅角油圧室36に連通する遅角油路R14と、進角油圧室35に連通する進角油路R15とがこの第2オイルコントロールバルブ47に接続されている。第2オイルコントロールバルブ47は、図示しないが、往復摺動可能に配設されたスプールと、同スプールを付勢するコイルバネと、電圧を印加されることによってスプールを吸引する電磁ソレノイドを内蔵する。
上記電磁ソレノイドに印加される電圧は、エンジンコントロールユニット51によってデューティ制御されている。電磁ソレノイドが発生する吸引力は、印加される電圧のデューティ比に応じて変化する。この電磁ソレノイドが発生する吸引力とコイルバネの付勢力との釣り合いによって、スプールの位置が決められる。
スプールが移動することによって、遅角油路R14及び進角油路R15と、供給油路R11及び排出油路R12,R13との連通量が変化し、遅角油路R14及び進角油路R15に対して供給される作動油の量、あるいはこれら油路R14,R15より排出される作動油の量が変化する。エンジンコントロールユニット51では、このようにして上記遅角油圧室36及び進角油圧室35内の油圧を調節することにより、内部ロータ34及びハウジング33の相対的な動きを制御する。
なお、ハウジング33(カムスプロケット32)に対する内部ロータ34(カムシャフト31)の相対位相が図5の矢指方向αに向かって最も進んだ状態は、右バンク3の吸気バルブタイミングが最も進角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最進角位置」という。一方、ハウジング33に対する内部ロータ34の相対位相が図5の矢指方向αに向かって最も遅れた状態は、右バンク3の吸気バルブのバルブタイミングが最も遅角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最遅角位置」という。すなわち、本実施形態のエンジンでは、「最進角位置」および「最遅角位置」間で右バンクの吸気バルブタイミングが可動となる。
図8は左バンク2の吸気VTC機構11に備えられるカム位置センサ61の拡大正面図、図9は右バンク3の吸気VTC機構13に備えられるカム位置センサ71の拡大正面図である。なお、図8、図9においては回転方向が図3、図5と逆の場合で示している。
図8において、左バンク2のカム位置センサ61は、90°の等間隔で4個の突起P1、P2、P3、P4を形成したパルサ61aと、このパルサ61aの各突起の通過を検出するパルスピックアップ61bとを備えている。パルサ61aは図4にも示している。ここでは、吸気VTC機構11の初期位置(つまり最遅角位置)で突起P1の右端を#1気筒用カムのリフト開始点に設けている。これにより、カム位置センサ61は、カムシャフト21の回転に伴うパルサ61aの回転に応じて、このパルサ61aの各突起をパルスピックアップ61bにより順次検出する。
図9において、右バンク3のカム位置センサ71は、90度の等間隔で4個の突起P5、P6、P7、P8を形成したパルサ71aと、このパルサ71aの各突起の通過を検出するパルスピックアップ71bとを備えている。パルサ71aは図6にも示している。ここでは、吸気VTC機構13の初期位置(つまり最遅角位置)で突起P5の右端を#8気筒用カムのリフト開始点に設けている。これにより、カム位置センサ71は、カムシャフト31の回転に伴うパルサ71aの回転に応じて、このパルサ71aの各突起をパルスピックアップ71bにより順次検出する。
図10はエンジンの負荷と回転速度を一定とした条件でカム位置センサ61により検出されるカム位置信号を、カムシャフト21に有する4つのカム(#1、#7、#3、#5の各気筒用)の各リフトと共に示したものである。ただし、図10において横軸はカム角ではなくクランク角としているため、カム角を2倍すればクランク角に変換される。
ここでは、パルスの立ち下がりタイミングを用いているが、これに限定されるものでなくパルスの立ち上がりタイミングを用いる場合でもかまわない。
カム位置センサ61(パルスピックアップ61b)による検出信号を波形成形してパルス信号に変換すると、吸気VTC機構11が最遅角位置にあるとき、図10第2段目に示すカム位置信号が得られる。すなわち、パルスP1の立ち下がりのタイミングで#1気筒の吸気バルブ開時期が、パルスP2の立ち下がりのタイミングで#7気筒の吸気バルブ開時期が、パルスP3の立ち下がりのタイミングで#3気筒の吸気バルブ閉時期が、パルスP4の立ち下がりのタイミングで#5気筒の吸気バルブ閉時期がそれぞれ検出される。
なお、パルサ61aの突起P1、P2、P3、P4により得られる4つの各パルスには各突起に対応してパルスにもP1、P2、P3、P4を付けている。つまり、パルスP1はパルサ61aの突起P1により得られるパルス、パルスP2はパルサ61aの突起P2により得られるパルス、パルスP3はパルサ61aの突起P3により得られるパルス、パルスP4はパルサ61aの突起P4により得られるパルスであることを示している。
ここで、吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)に着目すると、#3、#5気筒についてはパルスP3、P4により直接的に検出されるが、#1、#7気筒についてはパルスP1、P2により直接的に検出されるのは吸気バルブ開時期(=カムリフト開始時)であって吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)を検出していない。しかしながら、吸気バルブの作動角(カムの作動角)は予め知り得るので(ここでは簡単に吸気バルブの作動角を90°CAとする。)、カム位置センサ61により検出される吸気バルブ開時期から作動角である90°CAだけ遅角側の値を吸気バルブ閉時期として求めればよい。
図11はエンジンの負荷と回転速度を一定とした条件でカム位置センサ71により検出されるカム位置信号を、カムシャフト31に有する4つのカムの各リフトと共に示したものである。ただし、図11においても横軸はカム角ではなくクランク角としているため、カム角を2倍すればクランク角に変換される。ここでもパルスの立ち下がりタイミングを用いているが、これに限定されるものでなくパルスの立ち上がりタイミングを用いる場合でもかまわない。
カム位置センサ71(パルスピックアップ71b)による検出信号を波形成形してパルス信号に変換すると、吸気VTC機構13が最遅角位置にあるとき、図11第2段目に示すカム位置信号が得られる。すなわち、パルスP5の立ち下がりのタイミングで#8気筒の吸気バルブ開時期及び#2気筒の吸気バルブ閉時期が、パルスP7の立ち下がりのタイミングで#6気筒の吸気バルブ開時期が、パルスP8の立ち下がりのタイミングで#4気筒の吸気バルブ開時期がそれぞれ検出される。
この場合、右バンク3では、パルスP5が#8気筒と#2気筒の2気筒分のバルブタイミングを検出することになっており、パルスP6はいずれの気筒のバルブタイミングも検出していない。従って、パルスP6は不要となっている。
なお、パルサ71aの突起P5、P6、P7、P8により得られる4つの各パルスには各突起に対応してパルスにもP5、P6、P7、P8を付けている。つまり、パルスP5はパルサ71aの突起P5により得られるパルス、パルスP6はパルサ71aの突起P6により得られるパルス、パルスP7はパルサ71aの突起P7により得られるパルス、パルスP8はパルサ71aの突起P8により得られるパルスであることを示している。
ここで、吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)に着目すると、#2気筒についてはパルスP5により直接的に検出されるが、#8、#6、#4の各気筒についてはパルスP5、P7、P8により直接的に検出されるのは吸気バルブ開時期(=カムリフト開始時)であって吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)を検出していない。しかしながら、吸気バルブの作動角(カムの作動角)は予め知り得るので(ここでは簡単に吸気バルブの作動角を90°CAとする。)、カム位置センサ71により検出される吸気バルブ開時期から作動角である90°CAだけ遅角側の値を吸気バルブ閉時期として求めればよい。
さて、吸気VTC機構11、13を用いて各バンク2、3の吸気バルブタイミングを進めたいときには、吸気VTC機構11、13に対して目標角度[°CA]を指令値として第1、第2のオイルコントロールバルブ43、47に与えることにより、各バンク2、3の全ての気筒で望みの吸気バルブタイミングが得られるようにしている。つまり、目標角度を指令値として第1オイルコントロールバルブ43に与えると、カムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相が目標角度だけ進角側に変化するため、理想的には図10第3段目に示したようにパルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりの各タイミングが、最遅角位置でのパルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりのタイミングより目標角度[°CA]だけ進角して、t1、t6、t11、t15となるはずである。
しかしながら、実際のカム位置信号は、図10第3段目に示したようにはならず、図10第4段目に示したようになる。すなわち、パルスP1は実角度1[°CA]だけ進角してパルスP1の立ち下がりのタイミングがt1よりt2まで遅れるのであり、目標位置との間にt1〜t2のズレが生じている。同様にしてパルスP4は実角度4[°CA]だけ進角してパルスP4の立ち下がりのタイミングがt15よりt16まで遅れ、目標位置との間にt15〜t16のズレが生じている。
一方、パルスP2は実角度2[°CA]だけ進角してパルスP2の立ち下がりのタイミングがt6よりt5まで進むのであり、目標位置との間にt5〜t6のズレが生じている。同様にしてパルスP3は実角度3[°CA]だけ進角してパルスP3の立ち下がりのタイミングがt11よりt10まで進むのであり、目標位置との間にt10〜t11のズレが生じている。
右バンク3についても、左バンク2と同じ目標角度[°CA]を指令値として第2オイルコントロールバルブ47に与えると、カムスプロケット32に対するカムシャフト31の位相が目標角度だけ進角側に変化するため、理論的には図11第3段目に示したようにパルスP5、P7、P8の立ち下がりの各タイミングが、最遅角位置でのパルスP5、P7、P8の立ち下がりのタイミングより目標角度[°CA]だけ進角して、t32、t38、t44となるはずである。
しかしながら、実際のカム位置信号は、図11第3段目に示したようにはならず、図11第4段目に示したようになる。すなわち、パルスP5は実角度5[°CA]だけ進角してパルスP5の立ち下がりのタイミングがt32よりt31まで進むのであり、目標位置との間にt31〜t32のズレが生じている。同様にしてパルスP8は実角度8[°CA]だけ進角してパルスP8の立ち下がりのタイミングがt44よりt43まで進み、目標位置との間にt43〜t44のズレが生じている。
一方、パルスP7は実角度7[°CA]だけ進角してパルスP7の立ち下がりのタイミングがt38よりt39まで遅れるのであり、目標位置との間にt38〜t39のズレが生じている。
ここで、左バンク2では4つの各パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりタイミングである実角度1、実角度2、実角度3、実角度4に、また右バンクでは3つの各パルスP5、P7、P8の立ち下がりタイミングである実角度5、実角度7、実角度8にそれぞれ目標角度からのズレが生じる、つまり左右バンク2、3のカム位置検出信号にズレが生じるのは、2プレーン・クランクシャフトのV型8気筒エンジンにおいては、図1下段に示したように、燃焼順序が#1−#8−#7−#3−#6−#5−#4−#2であり、左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるため、吸排気の脈動を効果的に利用した吸気慣性過給を行えず、各気筒の爆発力がバラツクことになるためである。
これについてさらに説明すると、図12は左バンク2についてエンジンの回転速度と負荷が一定である、ある運転条件のときのカム駆動トルクの変化を示したものである。図12においてクランク角720°CAの区間でほぼ3つのトルクの山が生じている。このうち最も左側のトルクの山は、#1気筒のカムリフトによるもの、最も右側のトルクの山は#5気筒のカムリフトによるものである。一方、中央のトルクの山は#7気筒のカムリフトによるものと#3気筒のカムリフトによるものとが重なったものである。
この場合に、センシングタイミングはクランク角180°CA毎に生じるようにしており、図12ではt61、t62、t63、t64の各タイミングがセンシングタイミングである。センシングタイミングは予め定められている。t61、t64のセンシングタイミングではカム駆動トルクがいずれも負となっており、この影響を受けて図10第4段目に示したようにパルスP1、P4の立ち下がりタイミング(t2、t16)が目標位置(t1、t15)より遅れ(実角度1、実角度4が目標角度より小さくなり)、またt62、t63のセンシングタイミングではカム駆動トルクがいずれも正となっており、この影響を受けて図10第4段目に示したようにパルスP2、P3の立ち下がりタイミング(t5、t10)が目標位置(t6、t11)より進んで(実角度2、実角度3が目標角度より大きくなり)しまうのである。
右バンク3についてはカム駆動トルクの変化を示すことはしないが、3つのセンシングタイミングでのカム駆動トルクが正や負にバラツクため、この影響を受けて図11第4段目に示したように3つの各パルスP5、P7、P8の立ち下がりタイミング(t31、t39、t43)が目標位置(t32、t38、t44)より遅れたり進んだり(実角度5、実角度7、実角度8が目標角度より大きくなったり小さくなったり)してしまう。
このように、左バンク2で4つの各パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりタイミングに、右バンク3で3つの各パルスP5、P7、P8の立ち下がりタイミングに目標位置からのズレが生じる、つまり左右バンク2、3のカム位置検出信号に目標位置からのズレが生じるのでは、吸排気バルブのオーバーラップ期間のフィードバック制御性が悪化する。
これについて説明すると、吸気VTC機構11、13により吸気バルブタイミングをエンジンの運転条件に応じてバンク毎に制御することで、排気バルブと吸気バルブとが共に開となるバルブオーバーラップ期間を制御することができ、高回転速度域では、バルブオーバーラップ期間の拡大により、残ガス率(排気バルブの閉弁タイミングで燃焼室内に残留する燃焼ガスの割合)を大きくして、燃費及び排気性能を向上させ、アイドルを含む低回転速度域では、バルブオーバーラップ期間の短縮により、燃焼安定性を確保することが可能である。
このため、図13に示したように、エンジンコントロールユニット51には、2つのカム位置センサ61、71及びクランク位置センサ73からの信号に加えて、エンジンの吸入空気量を検出するエアフローメータ75、エンジンの冷却水温を検出する水温センサ76、アクセル開度を検出するアクセルセンサ77、電制スロットル弁の開度を検出するスロットルセンサ78、車速を検出する車速センサ79からの信号が入力され、エンジンコントロールユニット51では、これら各種センサにより検出されるエンジンの運転条件に基づいて、左右バンク2、3のカムシャフト21、31の目標角度(吸気バルブの目標バルブタイミング)を設定し、この目標角度が得られるように第1、第2のオイルコントロールバルブ43、47に指令値を出力すると共に、左バンク2のカム位置センサ61及びクランク位置センサ73からの信号に基づいて左バンク2のカムシャフト21の実際の角度(吸気バルブの実バルブタイミング)を検出し、この検出される実際の角度が目標角度と一致するように、第1オイルコントロールバルブ43に与える指令値をフィードバック制御し、また右バンク3のカム位置センサ71及びクランク角センサ73からの信号に基づいて右バンク3のカムシャフト31の実際の角度(吸気バルブの実バルブタイミング)を検出し、この検出される実際の角度が目標角度と一致するように、第2オイルコントロールバルブ47に与える指令値をフィードバック制御している。また、エンジンコントロールユニット51は、同じくエンジンの運転状態に基づいて、燃料噴射弁81、点火プラグ82、電制スロットル弁83の作動を制御する。
さて、上記吸気バルブタイミングのフィードバック制御において、カム位置センサ61、71からのカム位置信号に、図10第4段目、図11第4段目に示したような目標位置からのズレがあると、フィードバック制御の制御精度が悪くなる。例えば、図10第4段目に示したように、パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりの各タイミングはエンジンの負荷と回転速度を一定の条件としても同じ値とならないため、各パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりタイミングである、実角度1、実角度2、実角度3、実角度4の4つの実角度を順次、制御上の実角度rθnowとして取り込むとすれば、制御上の実角度rθnowはある振れをもって動く値となり安定しない。従って、このような安定しない値の制御上の実角度rθnowをフィードバック信号に用いるとすれば、フィードバック制御精度が低下する。
例えば、パルスP1、P4の立ち下がりタイミングである実角度1、実角度4が制御上の実角度rθnowに取り込まれているときには、目標角度θtより制御上の実角度rθnowが小さいために制御上の実角度rθnowが大きくなる側に第1オイルコントロールバルブ43に指令値が送られ、カムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相を進角させようとする。ところが、パルスP2、P3の立ち下がりタイミングである実角度2、実角度3が制御上の実角度rθnowに取り込まれると、目標角度θtより制御上の実角度rθnowが大きいために制御上の実角度rθnowが小さくなる側に第1オイルコントロールバルブ43に指令値が送られ、カムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相を遅角させようとする。このように、制御上の実角度rθnowが目標角度θtより小さかったり大きかったりして安定しないと、定常運転状態でありながらカムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相を進角させようとしたり遅角させようとしたりする。つまり、カムシャフト21の実角度(バルブタイミング)がハンチングして、なかなか目標角度(目標バルブタイミング)に収束しないことになり、フィードバック制御の制御精度が悪くなるのである。
これに対処するため本実施形態では、カムシャフト1回転当たり4個のパルスのうちカムシャフト21、31の実角度(実際のバルブタイミング)を検出するのに用いるパルスの数をエンジンの運転条件に応じて変更する。
エンジンコントロールユニット51で行われるこの制御を図14、図15A、図15B、図16A、図16Bのフローチャートに基づいて詳述する。ただし、制御を複雑化させないため排気VTC機構12、14は作動させないものとし、2つの吸気VTC機構11、13のみを用いて吸排気バルブのオーバーラップ量を制御する場合で説明する。
まず図14は1信号使用フラグを設定するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ1、2では加速時であるか否か、エンジン回転速度Neは所定値以上であるか否かをみる。加速時であるか否かの判定に用いるパラメータはエンジン負荷のほか、後述する目標角度θtを用いることができる。例えば、目標角度θtの所定時間当たり変化量を算出し、この目標角度θtの所定時間当たり変化量と所定値を比較し、目標角度θtの所定時間当たり変化量が所定値以上となれば加速時であると、目標角度θtの所定時間当たり変化量が所定値未満であれば加速時でないと判定する。加速時でない場合には、定常時と減速時とがあるが、ここでは減速時は考えない。また、エンジン回転速度Neは、クランク位置センサ73からのクランク位置信号と、カム位置センサ61、71からのカム位置信号とに基づいて算出されている。
エンジン回転速度Neと比較する所定値は低回転速度域にあるかそれとも高回転速度域にあるかを判定するための値で、予め設定している。
加速時でない、つまり定常時であって回転速度Neが所定値以上の高回転速度域にあるときには、ステップ1、2よりステップ3に進んで、1信号使用フラグ(エンジン始動時にゼロに初期設定)=1とする。一方、加速時であるときにはステップ1よりステップ4に進んで、また定常時であってエンジン回転速度Neが所定値未満の低回転速度域にあるときには、ステップ1、2よりステップ4に進んで、1信号使用フラグ=0とする。
ここで、左バンク2のカム位置センサ61からのカム位置信号によれば、図10で示したようにクランク角720°CA区間で(つまりカムシャフト1回転当たりに)4つのパルスP1、P2、P3、P4が得られるが、1信号使用フラグ=1はこのうちの1つのパルスだけを用いて制御上の実角度rθnowを算出することを指示するものである。また、1信号使用フラグ=0は4つのパルスP1、P2、P3、P4の全てを用いて制御上の実角度rθnowを算出することを指示するものである。
同様にして、右バンク3のカム位置センサ71からのカム位置信号によれば、図11で示したようにクランク角720°CA区間で(つまりカムシャフト1回転当たりに)4つのパルスP5、P6、P7、P8が得られるが、1信号使用フラグ=1はこのうちの1つのパルスだけを用いて制御上の実角度rθnowを算出することを指示するものである。また、1信号使用フラグ=0は4つのパルスP5、P6、P7、P8の全てを用いて制御上の実角度rθnowを算出することを指示するものである。ただし、右バンク3ではパルス6は用いられないため、1信号使用フラグ=0は実質的には3つのパルスP5、P7、P8の全てを用いて制御上の実角度rθnowを算出することを指示するものとなる。
図15A、図15Bはカム位置センサ61からのカム位置信号に基づいて左バンク2のカムシャフト21の実角度を、カム位置センサ71からのカム位置信号に基づいて右バンク3のカムシャフト31の実角度をそれぞれ検出するためのもので、所定のクランク角毎(例えば1°CA毎)に実行する。
ステップ11、12、13、14では各パルスP1、P2、P3、P4の入力があるか否かをみる。エンジンコントロールユニット51ではカム位置センサからの信号とクランク位置センサからの信号とに基づいて気筒判別を行っているので、どのパルスの入力であるかは知り得る。
パルスP1の入力があれば、ステップ11よりステップ15に進み、パルスP1の立ち下がりタイミングである実角度1を#1気筒の実角度θnow1に移す。パルスP2の入力があれば、ステップ11、12よりステップ16に進み、パルスP2の立ち下がりタイミングである実角度2を#7気筒の実角度θnow2に移す。パルスP3の入力があれば、ステップ11、12、13よりステップ17に進み、パルスP3の立ち下がりタイミングである実角度3を#3気筒の実角度θnow3に移す。パルスP4の入力があれば、ステップ11、12、13、14よりステップ18に進み、パルスP4の立ち下がりタイミングである実角度4を#5気筒の実角度θnow4に移す。このようにして、左バンク2のカムシャフト1回転当たり4回センシング(検出)されることとなり、最新の実角度θnow1〜θnow4が得られる。
また、ステップ19、20、21では各パルスP5、P7、P8の入力があるか否かをみる。パルスP5の入力があれば、ステップ19よりステップ22に進み、パルスP5の立ち下がりタイミングである実角度5を#8、#2の気筒の実角度θnow5に移す。パルスP7の入力があれば、ステップ19、20よりステップ23に進み、パルスP7の立ち下がりタイミングである実角度7を#6気筒の実角度θnow6に移す。パルスP8の入力があれば、ステップ19、20、21よりステップ24に進み、パルスP8の立ち下がりタイミングである実角度8を#4気筒の実角度θnow3に移す。このようにして、右バンク3のカムシャフト1回転当たり3回センシング(検出)されることとなり、最新の実角度θnow5〜θnow7が得られる。
ここでの各実角度θnow1〜θnow7の単位は、クランク角[°CA]とする。ただし、これに限定されるものでなく、カム角としてしてもかまわない。
図16A、図16Bは左バンク2の吸気VTC機構11の第1オイルコントロールバルブ43に与えるデューティ値DTY1[%]及び右バンク3の吸気VTC機構13の第2オイルコントロールバルブ47に与えるデューティ値DTY2[%]を算出するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。この場合、第1オイルコントロールバルブ43に与えるデューティ値を大きくするほどカムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相が進角されるように、また第2のオイルコントロールバルブ47に与えるデューティ値を大きくするほどカムスプロケット32に対するカムシャフト31の位相が進角されるようになっているものとする。
まずステップ31ではエンジンの運転条件に応じた、左右バンク2、3のカムシャフト21、31の目標角度θt(吸気バルブの目標バルブタイミング)を算出する。この目標角度θtは例えばエンジンの負荷と回転速度をパラメータとするマップを検索することにより求めればよい。カムシャフト21、31の目標角度θtの単位もクランク角[°CA]である。
ステップ32ではこの目標角度θtを基本デューティ値DTY0[%]に変換する。基本デューティ値DTY0は目標角度θtが大きくなるほど大きくなる値である。
ステップ33では図15A、図15Bのフローにより得られている最新の7つの実角度θnow1〜θnow7[°CA]を読み込む。
ステップ34では、1信号使用フラグ(図14のフローにより設定済み)をみる。1信号使用フラグ=1であるときにはステップ35、36に進み、左バンク2の4つの実角度θnow1〜θnow4のうちいずれか一つを選択して左バンク2についての制御上の実角度rθnow1[°CA]に、また右バンク3の3つの実角度θnow5〜θnow7のうちいずれか一つを選択して右バンク3についての制御上の実角度rθnow2[°CA]に入れる。これは、その都度選択する対象を変えるのではなく、予め選択する対象は決めておく。例えば実角度θnow1を常に選択して制御上の実角度rθnow1に、また実角度θnow5を常に選択して制御上の実角度rθnow2に入れる。
一方、ステップ34で1信号使用フラグ=0であるときにはステップ37、38に進み、左バンク2の4つの実角度θnow1〜θnow4を全て用いて左バンク2についての制御上の実角度rθnow1[°CA]を、また右バンク3の3つの実角度θnow5〜θnow7を全て用いて右バンク3についての制御上の実角度rθnow2[°CA]を算出する。例えば、左バンク2についてクランク角720°CA毎に(カムシャフト21の1回転毎に)上記4つの実角度θnow1、θnow2、θnow3、θnow4の単純平均値を算出し、その単純平均値を左バンク2についての制御上の実角度rθnow1とする。あるいは、4つの実角度θnow1、θnow2、θnow3、θnow4の加重平均値を左バンク2についての制御上の実角度rθnow1として算出する。この加重平均値を算出するには次の式を用いればよい。
加重平均値1=加重平均値1(前回)×加重平気係数1
+今回値×(1−加重平均係数1)
…(1)
ただし、加重平均値1(前回):加重平均値1の前回値、
加重平気係数1 :一定値(0から1までの間の適当な値)、
ここで、(1)式右辺の今回値として左バンク2の実角度θnow1、θnow2、θnow3、θnow4を順次入れて計算する。
+今回値×(1−加重平均係数1)
…(1)
ただし、加重平均値1(前回):加重平均値1の前回値、
加重平気係数1 :一定値(0から1までの間の適当な値)、
ここで、(1)式右辺の今回値として左バンク2の実角度θnow1、θnow2、θnow3、θnow4を順次入れて計算する。
同様にして、右バンク3についてクランク角720°CA毎に(カムシャフト31の1回転毎に)上記3つの実角度θnow5、θnow6、θnow7の単純平均値を算出し、その単純平均値を右バンク3についての制御上の実角度rθnow2とする。あるいは、3つの実角度θnow5、θnow6、θnow7の加重平均値を右バンク3についての制御上の実角度rθnow2として算出する。この加重平均値を算出するには次の式を用いればよい。
加重平均値2=加重平均値2(前回)×加重平気係数2
+今回値×(1−加重平均係数2)
…(2)
ただし、加重平均値2(前回):加重平均値2の前回値、
加重平気係数2 :一定値(0から1までの間の適当な値)、
ここで、(2)式右辺の今回値として右バンク3の実角度θnow5、θnow6、θnow7を順次入れて計算する。
+今回値×(1−加重平均係数2)
…(2)
ただし、加重平均値2(前回):加重平均値2の前回値、
加重平気係数2 :一定値(0から1までの間の適当な値)、
ここで、(2)式右辺の今回値として右バンク3の実角度θnow5、θnow6、θnow7を順次入れて計算する。
ステップ39、40では、このようにして得た左バンク2についての制御上の実角度rθnow1と目標角度θtとの偏差Δθ1[°CA](=rθnow1−θt)を、また右バンク3についての制御上の実角度rθnow2と目標角度θtとの偏差Δθ2[°CA](=rθnow2−θt)を計算する。
ステップ41では、このうち左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値と所定値[°CA]とを比較する。左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値以上であれば、目標角度θtからのずれが大きいと判断し、ステップ42に進んで左バンク2についての偏差Δθ1とゼロとを比較する。左バンク2についての偏差Δθ1が正、つまり左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が目標角度θtより大きいときには、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1を目標角度θtへと小さくするため、ステップ43に進んでデューティ値のフィードバック量FB1[°CA]を所定値A[°CA]だけ減少する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB1を次式により更新し、ステップ45において更新後のフィードバック量FB1を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY1[%]として算出する。
FB1=FB1(前回)−A …(3)
ただし、FB1(前回):FB1の前回値、
A :正の一定値、
ここで、デューティ値DTY1には初期値として基本デューティ値DTY0を入れておく。
ただし、FB1(前回):FB1の前回値、
A :正の一定値、
ここで、デューティ値DTY1には初期値として基本デューティ値DTY0を入れておく。
ステップ43、45の操作でデューティ値DTY1は小さくなる側に更新され、このデューティ値DTY1で第1オイルコントロールバルブ43が制御されると、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が小さくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ43、45の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ41で左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ41よりステップ46に進んでデューティ値DTY1を維持する。
これに対して、ステップ41で左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値以上でありかつステップ42で左バンク2についての偏差Δθ1が負、つまり左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が目標角度θtより小さいときには、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1を目標角度θtへと大きくするため、ステップ44に進んでデューティ値のフィードバック量FB1[°CA]を所定値B[°CA]だけ増加する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB1を次式により更新し、ステップ45において更新後のフィードバック量FB1を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY1[%]として算出する。
FB1=FB1(前回)+B …(4)
ただし、FB1(前回):FB1の前回値、
B :正の一定値、
ステップ44、45の操作でデューティ値DTY1は大きくなる側に更新され、このデューティ値DTY1で第1オイルコントロールバルブ43が制御されると、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が大きくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ44、45の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ41で左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ41よりステップ46に進んでデューティ値DTY1を維持する。
ただし、FB1(前回):FB1の前回値、
B :正の一定値、
ステップ44、45の操作でデューティ値DTY1は大きくなる側に更新され、このデューティ値DTY1で第1オイルコントロールバルブ43が制御されると、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が大きくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ44、45の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ41で左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ41よりステップ46に進んでデューティ値DTY1を維持する。
ステップ47〜52はステップ41〜46と同様の処理である。すなわち、ステップ47では、右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値と所定値[°CA]とを比較する。右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値以上であれば、目標角度θtからのずれが大きいと判断し、ステップ48に進んで右バンク3についての偏差Δθ2とゼロとを比較する。右バンク3についての偏差Δθ2が正、つまり右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が目標角度θtより大きいときには、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2を目標角度θtへと小さくするため、ステップ49に進んでデューティ値のフィードバック量FB2[°CA]を所定値C[°CA]だけ減少する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB2を次式により更新し、ステップ51において更新後のフィードバック量FB2を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY2[%]として算出する。
FB2=FB2(前回)−C …(5)
ただし、FB2(前回):FB2の前回値、
C :正の一定値、
ここで、デューティ値DTY2についても初期値として基本デューティ値DTY0を入れておく。
ただし、FB2(前回):FB2の前回値、
C :正の一定値、
ここで、デューティ値DTY2についても初期値として基本デューティ値DTY0を入れておく。
ステップ49、51の操作でデューティ値DTY2は小さくなる側に更新され、このデューティ値DTY2で第2オイルコントロールバルブ47が制御されると、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が小さくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ49、51の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ47で右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ47よりステップ52に進んでデューティ値DTY2を維持する。
これに対して、ステップ47で右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値以上でありかつステップ48で右バンク3についての偏差Δθ2が負、つまり右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が目標角度θtより小さいときには、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2を目標角度θtへと大きくするため、ステップ50に進んでデューティ値のフィードバック量FB2[°CA]を所定値D[°CA]だけ増加する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB2を次式により更新し、ステップ51において更新後のフィードバック量FB2を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY2[%]として算出する。
FB2=FB2(前回)+D …(6)
ただし、FB2(前回):FB2の前回値、
D :正の一定値、
ステップ50、51の操作でデューティ値DTY2は大きくなる側に更新され、このデューティ値DTY2で第2オイルコントロールバルブ47が制御されると、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が大きくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ50、51の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ47で右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ47よりステップ52に進んでデューティ値DTY2を維持する。
ただし、FB2(前回):FB2の前回値、
D :正の一定値、
ステップ50、51の操作でデューティ値DTY2は大きくなる側に更新され、このデューティ値DTY2で第2オイルコントロールバルブ47が制御されると、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が大きくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ50、51の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ47で右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ47よりステップ52に進んでデューティ値DTY2を維持する。
このようにして算出したデューティ値DTY1は、エンジンコントロールユニット51の図示しない出力ポートから第1オイルコントロールバルブ43に、またもう一つのデューティ値DTY2は、エンジンコントロールユニット51の図示しない出力ポートから第2オイルコントロールバルブ47に出力される。
ここで本実施形態の作用効果を説明する。
図1に示したように左右バンク2、3で燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンでは、センシングタイミングでのカム駆動トルクが正や負にバラツクためにカムシャフト1回転当たり4個(複数個)のパルス(カム位置信号)が各バンク2、3とも安定しない、という固有の問題がある。
この場合に、カムシャフト1回転当たり4個のパルス(左バンク2ではP1、P2、P3、P4の4個のパルス、右バンク3では実質的にP5、P7、P8の3個のパルス)のうちの1つだけに基づいてカムシャフト21、31の実角度(実際のバルブタイミング)を検出するようにすれば、パルス(カム位置信号)が安定し、フィードバック制御精度を向上させることができる。しかしながら、こうした場合、センシングタイミングはカムシャフト21、31の1回転当たり一回だけとなる。このため、検出するのに用いる1のパルスと、次に検出するのに用いる1のパルスとの間の間隔(つまり制御周期)が時間的に長くなる運転条件では、フィードバック制御の信頼性が悪化することになってしまう。
これに対して本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、吸気VTC機構11、13(位相調整機構)と、カム位置センサ61、71(カム位置信号発生手段)とを備え、このカム位置センサ61、71の発生するカム位置信号に基づいてカムシャフト21の実角度θnow1〜θnow4及びカムシャフト31の実角度θnow5〜θnow7(吸気バルブの実際のバルブタイミング)を検出し(図15Aのステップ15〜18、図15Bのステップ22〜24参照)、エンジンの運転条件に応じた目標角度θt(目標バルブタイミング)を算出し(図16Aのステップ31参照)、カムシャフト21の実角度(θnow1〜θnow4)及びカムシャフト31の実角度θnow5〜θnow7が目標角度θtと一致するように吸気VTC機構11、13に与える指令値をフィードバック制御し(図16Aのステップ39、40、図16Bのステップ41〜52参照)、カムシャフト21、31の1回転当たり4個のパルスのうちカムシャフト21、31の実角度(制御上の実角度rθnow1、rθnow2)を検出するのに用いるパルスの数をエンジンの運転条件に応じて変更する(図14のステップ1〜4、図16Aのステップ34〜38参照)ので、左右バンク2、3で燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンであってもカム位置信号の安定性とフィードバック制御の信頼性とを両立できる。
本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、信号数変更手段は、カムシャフト21、31の1回転当たり4個(右バンクでは実質的に3個)のパルス(カム位置信号)のうちカムシャフト21、31の実角度(実際のバルブタイミング)を検出するのに用いるパルスの数を、エンジン回転速度Neが所定値以上の高回転速度域で1つとする。すなわち、高回転速度域でカムシャフト21、31の1回転当たり4個のパルス(右バンクでは実質的に3個のパルス)のうちの1つだけに基づいてカムシャフト21、31の実角度(制御上の実角度rθnow1、rθnow2)を検出するので(図14のステップ2、3、図16Aのステップ34、35、36参照)、パルスが安定し、高回転速度域でのフィードバック制御精度を向上させることができる。
一方、低回転速度域にもカムシャフト21、31の1回転当たり4個(右バンクでは実質的に3個)のパルスのうちカムシャフト21、31の実角度を検出するのに用いるパルスの数を1つとしたのでは、検出するのに用いる1のパルスと、次に検出するのに用いる1のパルスとの間の間隔(つまり制御周期)が時間的に長くなり低回転速度域のフィードバック制御の信頼性が悪化することになってしまうのであるが、本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、信号数変更手段は、カムシャフト21、31の1回転当たり4個のパルス(右バンクでは実質的に3個のパルス)のうちカムシャフト21、31の実角度(制御上の実角度rθnow1、rθnow2)を検出するのに用いるパルスの数を、エンジン回転速度が所定値未満の低回転速度域で全てとするとする。すなわち、低回転速度域になるとカムシャフト21、31の1回転当たり4個のパルス(右バンクでは実質的に3個のパルス)の全てに基づいてカムシャフト21、31の実角度(制御上の実角度rθnow1、rθnow2)を検出するので(図14のステップ2、4、図16Aのステップ34、37、38参照)、制御周期が時間的に短くなり、そのぶん低回転速度域のフィードバック制御の信頼性を高めることができる。
このようにして本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、左右バンク2、3で燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンであっても高回転速度域でのカム位置信号の安定性と低回転速度域でのフィードバック制御の信頼性とを両立できる。
なお、本実施形態では、カムシャフトの実角度を検出するのに用いるパルスの数を高回転速度域で1つだけとしているが、2つあるいは3つとしてもよい。
本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、信号数変更手段は、カムシャフト21、31の1回転当たり4個(右バンクでは実質的に3個)のパルス(カム位置信号)のうちカムシャフト21、31の実角度(実際のバルブタイミング)を検出するのに用いるパルスの数を、エンジンの定常運転状態で1つとする。すなわち、定常運転状態でカムシャフト1回転当たり4個のパルス(右バンクでは実質的に3個のパルス)のうちの1つだけに基づいてカムシャフト21、31の実角度(制御上の実角度rθnow1、rθnow2)を検出するので(図14のステップ1、3、図16Aのステップ34、35、36参照)、パルスが安定し、定常運転状態でのフィードバック制御精度を向上させることができる。
一方、エンジンの加速時にもカムシャフト21、31の1回転当たり4個(右バンクでは実質的に3個)のパルスのうちカムシャフト21、31の実角度を検出するのに用いるパルスの数を1つとしたのでは、検出するのに用いる1のパルスと、次に検出するのに用いる1のパルスとの間の間隔(つまり制御周期)が時間的に長くなり加速状態でのフィードバック制御の信頼性が悪化することになってしまうのであるが、本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、信号数変更手段は、カムシャフト21、31の1回転当たり4個のパルス(右バンクでは実質的に3個のパルス)のうちカムシャフト21、31の実角度(制御上の実角度rθnow1、rθnow2)を検出するのに用いるパルスの数を、エンジンの加速状態で全てとするとする。すなわち、エンジンの加速時になるとカムシャフト21、31の1回転当たり4個のパルス(右バンクでは実質的に3個のパルス)の全てに基づいてカムシャフト21、31の実角度(制御上の実角度rθnow1、rθnow2)を検出するので(図14のステップ2、4、図16Aのステップ34、37、38参照)、制御周期が時間的に短くなり、そのぶん加速状態でのフィードバック制御の信頼性を高めることができる。
このようにして本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、左右バンク2、3で燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンであっても定常運転状態でのカム位置信号の安定性と加速状態でのフィードバック制御の信頼性とを両立できる。
なお、本実施形態では、カムシャフトの実角度を検出するのに用いるパルスの数を高回転速度域で1つだけとしているが、2つあるいは3つとしてもよい。
請求項1において、バルブタイミング検出手段の機能は図15Aのステップ15〜18、図15Bのステップ22〜24により、目標バルブタイミング算出手段の機能は図16Aのステップ31により、フィードバック制御手段の機能は図16Aのステップ39、40、図16Bのステップ41〜52により、信号数変更手段の機能は図14のステップ1〜4、図16Aのステップ34〜38によりそれぞれ果たされている。
2、3 左右バンク
11、13 吸気VTC機構(位相調整機構)
61、71 カム位置センサ(カム位置信号発生手段)
21 左バンクのカムシャフト
31 右バンクのカムシャフト
51 エンジンコントロールユニット
73 クランク位置センサ
11、13 吸気VTC機構(位相調整機構)
61、71 カム位置センサ(カム位置信号発生手段)
21 左バンクのカムシャフト
31 右バンクのカムシャフト
51 エンジンコントロールユニット
73 クランク位置センサ
Claims (3)
- 左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型エンジンにおいて、
エンジンのクランクシャフトと、吸気バルブまたは排気バルブを駆動するカムを有するカムシャフとの間にクランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させ得る位相調整機構と、
カムシャフトの回転に同期して、カムシャフト1回転当たり等間隔で複数個のカム位置信号を発生するカム位置信号発生手段と、
このカム位置信号発生手段の発生するカム位置信号に基づいて吸気バルブまたは排気バルブの実際のバルブタイミングを検出するバルブタイミング検出手段と、
エンジンの運転条件に応じた目標バルブタイミングを算出する目標バルブタイミング算出手段と、
前記バルブタイミング検出手段により検出される実際のバルブタイミングが目標バルブタイミングと一致するように前記位相調整機構に与える指令値をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
前記カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうち前記実際のバルブタイミングを検出するのに用いるカム位置信号の数をエンジンの運転条件に応じて変更する信号数変更手段と
を備えることを特徴とするエンジンのバルブタイミング調節装置。 - 前記信号数変更手段は、カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうち実際のバルブタイミングを検出するのに用いるカム位置信号の数を、エンジン回転速度が所定値以上の高回転速度域で1つとすると共に、エンジン回転速度が所定値未満の低回転速度域で全てとすることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのバルブタイミング調節装置。
- 前記信号数変更手段は、カムシャフト1回転当たり複数個のカム位置信号のうち実際のバルブタイミングを検出するのに用いるカム位置信号の数を、エンジンの定常運転状態で1つとすると共に、エンジンの加速状態で全てとすることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのバルブタイミング調節装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008137610A JP2009287400A (ja) | 2008-05-27 | 2008-05-27 | エンジンのバルブタイミング調節装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008137610A JP2009287400A (ja) | 2008-05-27 | 2008-05-27 | エンジンのバルブタイミング調節装置 |
Publications (1)
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JP2009287400A true JP2009287400A (ja) | 2009-12-10 |
Family
ID=41456868
Family Applications (1)
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JP2008137610A Pending JP2009287400A (ja) | 2008-05-27 | 2008-05-27 | エンジンのバルブタイミング調節装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2009287400A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7366827B2 (ja) | 2020-03-31 | 2023-10-23 | 本田技研工業株式会社 | 検知装置及び制御装置 |
-
2008
- 2008-05-27 JP JP2008137610A patent/JP2009287400A/ja active Pending
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