以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は2プレーン・クランクシャフトのV型8気筒エンジン(以下単に「エンジン」という。)1の燃焼行程順序を説明する図を示している。図1上段において左右のバンク2、3には1番から8番までの気筒が割り振られている。以下、1番気筒を「#1気筒」、2番気筒を「#2気筒」、3番気筒を「#3気筒」、4番気筒を「#4気筒」、5番気筒を「#5気筒」、6番気筒を「#6気筒」、7番気筒を「#7気筒」、8番気筒を「#8気筒」という。
このエンジン1は、4個のクランクピンが90度ずつの位相をもって配列された2プレーン・クランクシャフトと称されるクランク配置を有している。この2プレーン・クランクシャフトの内容については特開2003−56374号公報に記載されているので、ここでは2プレーン・クランクシャフトの内容説明は省略する。
図2はエンジン1を正面から見たタイミングチェーンとスプロケットの配置を示す概略図である。左バンク2の吸気バルブ用カムスプロケット4及び排気バルブ用カムスプロケット5とクランクスプロケット1aとに左バンクのタイミングチェーン6が掛け回されており、クランクシャフトが2回転する間に左バンク2の吸気バルブ用カムシャフト及び排気バルブ用カムシャフトがその半分の1回転をするようになっている。同様にして、右バンク3の吸気バルブ用カムスプロケット7及び排気バルブ用カムスプロケット8とクランクスプロケット1aとに右バンクのタイミングチェーン9が掛け回されており、クランクシャフトが2回転する間に左バンク3の吸気バルブ用カムシャフト及び排気バルブ用カムシャフトもその半分の1回転をするようになっている。
エンジン1には、吸気バルブと吸気バルブの各バルブタイミングを連続的に変更可能な可変バルブタイミング機構(この可変バルブタイミング機構を以下「VTC機構」という。)11、12、13、14(位相調整機構)をバンク別に備えている。吸気バルブ用のVTC機構は「吸気VTC機構」と、また排気バルブ用のVTC機構は「排気VTC機構」という。4つの各VTC機構はいずれも同様の構成である。これら吸気VTC機構11、13及び排気VTC機構12、14は後述するように吸排気バルブのオーバーラップ量を制御するために設けられている。
吸排気バルブのオーバーラップ量をフィードバック制御するため、4つの各VTC機構11、12、13、14に対向して4つの各カム位置センサ61、62、71、72(カム位置信号発生手段)を備える。
吸気バルブ側と排気バルブ側の両方にVTC機構が設けられると、エンジンの運転条件に応じた吸排気バルブのオーバーラップ量が得られるようにするには、
〈1〉吸気VTC機構のみを制御する場合
〈2〉排気VTC機構のみを制御する場合
〈3〉吸気VTC機構と排気VTC機構の両方を制御する場合
の3つの態様が考えられるのであるが、本実施形態は〈1〉の場合を主に説明する。すなわち、制御が複雑になるのを避けるため排気VTC機構12、14は作動させないものとする。ただし、本発明は〈1〉の場合に限定されるものでない。
吸気VTC機構11、13には油圧駆動式や電磁駆動式など様々なタイプのものがあり(特開2005−61244号公報、特開2002−130038号公報参照)、いずれでもかまわない。ここでは、油圧駆動式の場合で説明する。
図3は左バンク2の吸気VTC機構11をフロントプレート29を除去した状態でみた概略平面図、図4はフロントプレート29を取り付けた状態の吸気VTC機構11の斜視図である。図3に示すように、吸気VTC機構11は、クランクスプロケットからの駆動力により回転するカムスプロケット22と、このカムスプロケット22に固定される円筒状のハウジング23と、このハウジング23の内部において吸気バルブ用カムシャフト21(図8参照)に固定される内部ロータ24と、この内部ロータ24の外周面において開口する軸方向に沿う溝24aに挿入されると共に2つの油圧室25、26を仕切るブレード27と、内部ロータ24内にあって2つの油圧室25、26にオイルを供給するためのオイル供給通路(破線で示す)と、ブレード27のロック機構28とを備えている。
図5は右バンク3の吸気VTC機構13をフロントプレート39を除去した状態でみた概略平面図、図6はフロントプレート39を取り付けた状態の吸気VTC機構13の斜視図である。図5に示すように、吸気VTC機構13は、クランクスプロケットからの駆動力により回転するカムスプロケット32と、このカムスプロケット32に固定される円筒状のハウジング33と、このハウジング33の内部において吸気バルブ用カムシャフト31(図9参照)に固定される内部ロータ34と、この内部ロータ34の外周面において開口する軸方向に沿う溝34aに挿入されると共に2つの油圧室35、36を仕切るブレード37と、内部ロータ34内にあって2つの油圧室35、36にオイルを供給するためのオイル供給通路(破線で示す)と、ブレード37のロック機構38とを備えている。
これら2つの吸気VTC機構11、13の各部位に供給する油圧を制御する油圧制御系について図7を参照して次に説明する。2つの吸気VTC機構11、13を働かせる油圧制御系については、全体としてオイルポンプは1つであり、2つの吸気VTC機構11、13にオイルポンプ41からの作動油を並列的に供給する構成である。ここでは吸気VTC機構11に対する油圧制御系を先に説明する。
図7において、オイルポンプ41は、クランクシャフトの回転力に基づき機械的に駆動され、オイルパン42内の作動油を吸引し、供給油路R1を介して第1オイルコントロールバルブ(OCV)43に作動油を供給する。
第1オイルコントロールバルブ43はデューティ制御に基づき開度制御される4ポート弁であり、上記供給油路R1に加え、作動油をオイルパン42に還流する2本の排出油路R2,R3と、上記左バンク吸気VTC機構11の遅角油圧室26に連通する遅角油路R4と、進角油圧室25に連通する進角油路R5とがこの第1オイルコントロールバルブ43に接続されている。第1オイルコントロールバルブ43は、図示しないが、往復摺動可能に配設されたスプールと、同スプールを付勢するコイルバネと、電圧を印加されることによってスプールを吸引する電磁ソレノイドを内蔵する。
上記電磁ソレノイドに印加される電圧は、エンジンコントロールユニット51によってデューティ制御されている。電磁ソレノイドが発生する吸引力は、印加される電圧のデューティ比に応じて変化する。この電磁ソレノイドが発生する吸引力とコイルバネの付勢力との釣り合いによって、スプールの位置が決められる。
スプールが移動することによって、遅角油路R4及び進角油路R5と、供給油路R1及び排出油路R2,R3との連通量が変化し、遅角油路R4及び進角油路R5に対して供給される作動油の量、あるいはこれら油路R4,R5より排出される作動油の量が変化する。エンジンコントロールユニット51では、このようにして上記遅角油圧室26及び進角油圧室25内の油圧を調節することにより、内部ロータ24及びハウジング23の相対的な動きを制御する。
他方、オイルポンプ41によって吸引された作動油の一部は、供給油路R1から分岐する油路R6を通じてオイルスイッチングバルブ(OSV)44に供給される。オイルスイッチングバルブ44は、第1オイルコントロールバルブ43と同様、電磁ソレノイド及びコイルバネの協働によって往復動するスプールを内蔵し、電磁ソレノイドへの供給電圧がエンジンコントロールユニット51によってデューティ制御されることで開度制御される3ポート弁である。オイルスイッチングバルブ44には、上記油路R6に加え、作動油をオイルパン42に還流する排出油路R7と、内部ロータ24内の所定部位に連通するロックキー制御油路R8とが接続されている。エンジンコントロールユニット51では、第1オイルコントロールバルブ43と同様、ロックキー制御油路R8を通じて供給する作動油の油圧を調節することにより、ロックキー28bの作動状態を制御する。
なお、ハウジング23(カムスプロケット22)に対する内部ロータ24(カムシャフト21)の相対位相が図3の矢指方向αに向かって最も進んだ状態は、左バンク2の吸気バルブタイミングが最も進角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最進角位置」という。一方、ハウジング23に対する内部ロータ24の相対位相が図3の矢指方向αに向かって最も遅れた状態は、左バンク2の吸気バルブタイミングが最も遅角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最遅角位置」という。例えば最遅角位置で吸気バルブ閉時期(IVC)が吸気下死点よりも大きく遅れるようにし、これによって吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間とが重複しないようにする(オーバーラップをなくす)。また、最進角位置で吸気バルブ閉時期を吸気下死点に近づけ、これによってオーバーラップを大きくする。すなわち、本実施形態のエンジンでは、「最進角位置」および「最遅角位置」間で左バンクの吸気バルブタイミング(吸気バルブ閉時期や吸気バルブ開時期)が可動となる。そして、ロックキー28bは、このように内部ロータ24及びハウジング23の相対位相によって決定づけられる吸気バルブタイミングがその可変範囲内の中間状態にあるところで、内部ロータ24及びハウジング23の相対位相を固定する。このときの吸気バルブタイミングの位置を「固定位置」という。
次に、吸気VTC機構13に対する油圧制御系を説明する。図7において、オイルポンプ41は、供給油路R1から分岐される供給油路R11を介して第2オイルコントロールバルブ(OCV)47に作動油を供給する。
第2オイルコントロールバルブ47はデューティ制御に基づき開度制御される4ポート弁であり、上記供給油路R11に加え、作動油をオイルパン42に還流する2本の排出油路R12,R13と、上記吸気VTC機構13の遅角油圧室36に連通する遅角油路R14と、進角油圧室35に連通する進角油路R15とがこの第2オイルコントロールバルブ47に接続されている。第2オイルコントロールバルブ47は、図示しないが、往復摺動可能に配設されたスプールと、同スプールを付勢するコイルバネと、電圧を印加されることによってスプールを吸引する電磁ソレノイドを内蔵する。
上記電磁ソレノイドに印加される電圧は、エンジンコントロールユニット51によってデューティ制御されている。電磁ソレノイドが発生する吸引力は、印加される電圧のデューティ比に応じて変化する。この電磁ソレノイドが発生する吸引力とコイルバネの付勢力との釣り合いによって、スプールの位置が決められる。
スプールが移動することによって、遅角油路R14及び進角油路R15と、供給油路R11及び排出油路R12,R13との連通量が変化し、遅角油路R14及び進角油路R15に対して供給される作動油の量、あるいはこれら油路R14,R15より排出される作動油の量が変化する。エンジンコントロールユニット51では、このようにして上記遅角油圧室36及び進角油圧室35内の油圧を調節することにより、内部ロータ34及びハウジング33の相対的な動きを制御する。
なお、ハウジング33(カムスプロケット32)に対する内部ロータ34(カムシャフト31)の相対位相が図5の矢指方向αに向かって最も進んだ状態は、右バンク3の吸気バルブタイミングが最も進角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最進角位置」という。一方、ハウジング33に対する内部ロータ34の相対位相が図5の矢指方向αに向かって最も遅れた状態は、右バンク3の吸気バルブのバルブタイミングが最も遅角された状態にあたる。このときの吸気バルブタイミングの位置を「最遅角位置」という。すなわち、本実施形態のエンジンでは、「最進角位置」および「最遅角位置」間で右バンクの吸気バルブタイミングが可動となる。
図8は左バンク2の吸気VTC機構11に備えられるカム位置センサ61の拡大正面図、図9は右バンク3の吸気VTC機構13に備えられるカム位置センサ71の拡大正面図である。なお、図8、図9においては回転方向が図3、図5と逆の場合で示している。
図8において、左バンク2のカム位置センサ61は、90°の等間隔で4個の突起P1、P2、P3、P4を形成したパルサ61aと、このパルサ61aの各突起の通過を検出するパルスピックアップ61bとを備えている。パルサ61aは図4にも示している。ここでは、吸気VTC機構11の初期位置(つまり最遅角位置)で突起P1の右端を#1気筒用カムのリフト開始点に設けている。これにより、カム位置センサ61は、カムシャフト21の回転に伴うパルサ61aの回転に応じて、このパルサ61aの各突起をパルスピックアップ61bにより順次検出する。
図9において、右バンク3のカム位置センサ71は、90度の等間隔で4個の突起P5、P6、P7、P8を形成したパルサ71aと、このパルサ71aの各突起の通過を検出するパルスピックアップ71bとを備えている。パルサ71aは図6にも示している。ここでは、吸気VTC機構13の初期位置(つまり最遅角位置)で突起P5の右端を#8気筒用カムのリフト開始点に設けている。これにより、カム位置センサ71は、カムシャフト31の回転に伴うパルサ71aの回転に応じて、このパルサ71aの各突起をパルスピックアップ71bにより順次検出する。
図10はエンジンの負荷と回転速度を一定とした条件でカム位置センサ61により検出されるカム位置信号を、カムシャフト21に有する4つのカム(#1、#7、#3、#5の各気筒用)の各リフトと共に示したものである。ただし、図10において横軸はカム角ではなくクランク角としているため、カム角を2倍すればクランク角に変換される。
ここでは、パルスの立ち下がりタイミングを用いているが、これに限定されるものでなくパルスの立ち上がりタイミングを用いる場合でもかまわない。
カム位置センサ61(パルスピックアップ61b)による検出信号を波形成形してパルス信号に変換すると、吸気VTC機構11が最遅角位置にあるとき、図10第2段目に示すカム位置信号が得られる。すなわち、パルスP1の立ち下がりのタイミングで#1気筒の吸気バルブ開時期が、パルスP2の立ち下がりのタイミングで#7気筒の吸気バルブ開時期が、パルスP3の立ち下がりのタイミングで#3気筒の吸気バルブ閉時期が、パルスP4の立ち下がりのタイミングで#5気筒の吸気バルブ閉時期がそれぞれ検出される。
なお、パルサ61aの突起P1、P2、P3、P4により得られる4つの各パルスには各突起に対応してパルスにもP1、P2、P3、P4を付けている。つまり、パルスP1はパルサ61aの突起P1により得られるパルス、パルスP2はパルサ61aの突起P2により得られるパルス、パルスP3はパルサ61aの突起P3により得られるパルス、パルスP4はパルサ61aの突起P4により得られるパルスであることを示している。
ここで、吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)に着目すると、#3、#5気筒についてはパルスP3、P4により直接的に検出されるが、#1、#7気筒についてはパルスP1、P2により直接的に検出されるのは吸気バルブ開時期(=カムリフト開始時)であって吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)を検出していない。しかしながら、吸気バルブの作動角(カムの作動角)は予め知り得るので(ここでは簡単に吸気バルブの作動角を90°CAとする。)、カム位置センサ61により検出される吸気バルブ開時期から作動角である90°CAだけ遅角側の値を吸気バルブ閉時期として求めればよい。
図11はエンジンの負荷と回転速度を一定とした条件でカム位置センサ71により検出されるカム位置信号を、カムシャフト31に有する4つのカムの各リフトと共に示したものである。ただし、図11においても横軸はカム角ではなくクランク角としているため、カム角を2倍すればクランク角に変換される。ここでもパルスの立ち下がりタイミングを用いているが、これに限定されるものでなくパルスの立ち上がりタイミングを用いる場合でもかまわない。
カム位置センサ71(パルスピックアップ71b)による検出信号を波形成形してパルス信号に変換すると、吸気VTC機構13が最遅角位置にあるとき、図11第2段目に示すカム位置信号が得られる。すなわち、パルスP5の立ち下がりのタイミングで#8気筒の吸気バルブ開時期及び#2気筒の吸気バルブ閉時期が、パルスP7の立ち下がりのタイミングで#6気筒の吸気バルブ開時期が、パルスP8の立ち下がりのタイミングで#4気筒の吸気バルブ開時期がそれぞれ検出される。
この場合、右バンク3では、パルスP5が#8気筒と#2気筒の2気筒分のバルブタイミングを検出することになっており、パルスP6はいずれの気筒のバルブタイミングも検出していない。従って、パルスP6は不要となっている。
なお、パルサ71aの突起P5、P6、P7、P8により得られる4つの各パルスには各突起に対応してパルスにもP5、P6、P7、P8を付けている。つまり、パルスP5はパルサ71aの突起P5により得られるパルス、パルスP6はパルサ71aの突起P6により得られるパルス、パルスP7はパルサ71aの突起P7により得られるパルス、パルスP8はパルサ71aの突起P8により得られるパルスであることを示している。
ここで、吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)に着目すると、#2気筒についてはパルスP5により直接的に検出されるが、#8、#6、#4の各気筒についてはパルスP5、P7、P8により直接的に検出されるのは吸気バルブ開時期(=カムリフト開始時)であって吸気バルブ閉時期(=カムリフト終了時)を検出していない。しかしながら、吸気バルブの作動角(カムの作動角)は予め知り得るので(ここでは簡単に吸気バルブの作動角を90°CAとする。)、カム位置センサ71により検出される吸気バルブ開時期から作動角である90°CAだけ遅角側の値を吸気バルブ閉時期として求めればよい。
一方、吸気バルブの開閉時期やリフト量を変化させることで、スロットル弁に依存せずにエンジンに吸入される空気量を制御することができることから、本実施形態には、吸気バルブのリフト・作動角を連続的に変更可能な可変リフト・作動角機構(この可変リフト・作動角機構を以下「VEL機構」という。)81、82(リフト・作動角調整機構)をバンク別に備えている。このように左右の各バンク2、3に吸気バルブ用のVEL機構81、82が追加して構成されるときには、吸気バルブタイミングとして例えば吸気バルブの作動角の中心角を制御してやればよい。
また、吸気通路にスロットル弁はなく、代わりモータ等のアクチュエータにより開度が制御される負圧制御弁83が設けられている。この負圧制御弁83は、吸気通路内にブローバイガスの処理などのために必要なわずかな負圧(例えば−50mmHg)を発生させるためのものである。この負圧制御弁83は例えばバタフライ弁でよく、簡単なものであるので、図示しない。ここで、「負圧」とは、大気圧より低い圧力のことで、大気圧のときのをゼロとして、負の値で表示される。1mmHg≒133Paである。図13はエンジンの回転速度Neが一定の条件でアクセル開度APOを変化させたときの負圧制御弁83の開度特性を示している。図13に示すように、アクセル開度APOが所定値APO1以下の低負荷側の領域では、吸入負圧が一定(図のJ−K)となるように負圧制御弁83の開度(目標開度tBCV)が増加する(図のA−B)。そして、アクセル開度APOが所定値APO1を超える高負荷側の領域では、アクセル開度APOに比例して負圧制御弁83の開度がさらに増加する(図のB−E)。つまりアクセル開度APO(負荷)の増加に対し、負圧制御弁83の開度は、基本的にA−B−Eのように変化し、吸入負圧はJ−K−Nのように変化する。そして、エンジントルクは、F−G−Iのように得られる。なお、吸入負圧は、図の上方が大気圧側、下方が真空側となる方向で示してある。
VEL機構及び負圧制御弁を備え、負圧制御弁の開度を図13に示したように制御する構成そのものは、特開2005−171910号公報により公知であるので、この構成を本実施形態のV8エンジンに流用すればよい。本発明の要部はVEL機構の構成そのものにはないので、VEL機構及び負圧制御弁を備える構成を具体的に図示することはしていない。
さて、吸気VTC機構11、13を用いて各バンク2、3の吸気バルブタイミング(=吸気バルブの作動角の中心角)を進めたいときには、吸気VTC機構11、13に対して目標角度[°CA]を指令値として第1、第2のオイルコントロールバルブ43、47に与えることにより、各バンク2、3の全ての気筒で望みの吸気バルブタイミングが得られるようにしている。つまり、目標角度を指令値として第1オイルコントロールバルブ43に与えると、カムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相が基本角度だけ進角側に変化するため、理想的には図10第3段目に示したようにパルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりの各タイミングが、最遅角位置でのパルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりのタイミングより基本角度[°CA]だけ進角して、t1、t6、t11、t15となるはずである。
しかしながら、実際のカム位置信号は、図10第3段目に示したようにはならず、図10第4段目に示したようになる。すなわち、パルスP1は実角度1[°CA]だけ進角してパルスP1の立ち下がりのタイミングがt1よりt2まで遅れるのであり、基本位置との間にt1〜t2のズレが生じている。同様にしてパルスP4は実角度4[°CA]だけ進角してパルスP4の立ち下がりのタイミングがt15よりt16まで遅れ、基本位置との間にt15〜t16のズレが生じている。
一方、パルスP2は実角度2[°CA]だけ進角してパルスP2の立ち下がりのタイミングがt6よりt5まで進むのであり、基本位置との間にt5〜t6のズレが生じている。同様にしてパルスP3は実角度3[°CA]だけ進角してパルスP3の立ち下がりのタイミングがt11よりt10まで進むのであり、基本位置との間にt10〜t11のズレが生じている。
右バンク3についても、左バンク2と同じ目標角度[°CA]を指令値として第2オイルコントロールバルブ47に与えると、カムスプロケット32に対するカムシャフト31の位相が基本角度だけ進角側に変化するため、理論的には図11第3段目に示したようにパルスP5、P7、P8の立ち下がりの各タイミングが、最遅角位置でのパルスP5、P7、P8の立ち下がりのタイミングより基本角度[°CA]だけ進角して、t32、t38、t44となるはずである。
しかしながら、実際のカム位置信号は、図11第3段目に示したようにはならず、図11第4段目に示したようになる。すなわち、パルスP5は実角度5[°CA]だけ進角してパルスP5の立ち下がりのタイミングがt32よりt31まで進むのであり、基本位置との間にt31〜t32のズレが生じている。同様にしてパルスP8は実角度7[°CA]だけ進角してパルスP8の立ち下がりのタイミングがt44よりt43まで進み、基本位置との間にt43〜t44のズレが生じている。
一方、パルスP7は実角度6[°CA]だけ進角してパルスP7の立ち下がりのタイミングがt38よりt39まで遅れるのであり、基本位置との間にt38〜t39のズレが生じている。
ここで、左バンク2では4つの各パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりタイミングである実角度1、実角度2、実角度3、実角度4に、また右バンクでは3つの各パルスP5、P7、P8の立ち下がりタイミングである実角度5、実角度6、実角度7にそれぞれ基本角度からのズレが生じる、つまり左右バンク2、3のカム位置検出信号にズレが生じるのは、2プレーン・クランクシャフトのV型8気筒エンジンにおいては、図1下段に示したように、燃焼順序が#1−#8−#7−#3−#6−#5−#4−#2であり、左右バンクで燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるため、吸排気の脈動を効果的に利用した吸気慣性過給を行えず、各気筒の爆発力がバラツクことになるためである。
言い替えると、左右バンク2、3のカム位置検出信号に基づいて検出される実角度1〜7(気筒別の実際のバルブタイミング)にズレが生じるのは、予め定まっている所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクが相違するためである。これについてさらに説明すると、図12は左バンク2についてエンジンの回転速度と負荷が一定である、ある運転条件のときのカム駆動トルクの変化を示したものである。図12においてクランク角720°CAの区間でほぼ3つのトルクの山が生じている。このうち最も左側のトルクの山は、#1気筒のカムリフトによるもの、最も右側のトルクの山は#5気筒のカムリフトによるものである。一方、中央のトルクの山は#7気筒のカムリフトによるものと#3気筒のカムリフトによるものとが重なったものである。この場合に、センシングタイミングはクランク角180°CA毎に生じるようにしており、図12ではt61、t62、t63、t64の各タイミングがセンシングタイミングである。センシングタイミングは予め定められている。t61、t64のセンシングタイミングではカム駆動トルクがいずれも負となっており、この影響を受けて図10第4段目に示したようにパルスP1、P4の立ち下がりタイミング(t2、t16)が基本位置(t1、t15)より遅れ(実角度1、実角度4が基本角度より小さくなり)、またt62、t63のセンシングタイミングではカム駆動トルクがいずれも正となっており、この影響を受けて図10第4段目に示したようにパルスP2、P3の立ち下がりタイミング(t5、t10)が基本位置(t6、t11)より進んで(実角度2、実角度3が基本角度より大きくなり)しまうのである。
右バンク3についてはカム駆動トルクの変化を示すことはしないが、3つのセンシングタイミングでのカム駆動トルクが正や負にバラツクため、この影響を受けて図11第4段目に示したように3つの各パルスP5、P7、P8の立ち下がりタイミング(t31、t39、t43)が基本位置(t32、t38、t44)より遅れたり進んだり(実角度5、実角度7、実角度8が基本角度より大きくなったり小さくなったり)してしまう。
ここで、「目標角度」と「基本角度」の違いを説明しておくと、例えば左バンク2のうちの1つの気筒に着目して、吸気VTC機構11に指令値としての「目標角度」を与えたときに吸気VTC機構11が回転する角度が実際値としての「基本角度」である。従って、吸気VTC機構11の制作時に製作バラツキがなければ、「基本角度」は「目標角度」に一致するが、許容値を超える製作バラツキがあれば、「基本角度」は「目標角度」に一致せず「目標角度」からのズレが生じる。ここでのズレは、主に製作誤差から生じる機構的なバラツキに起因するものである。一方、本発明では、予め定まっている所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴って吸気VTC機構11が回転する角度に生じるズレを扱う。従って、主に製作誤差から生じる機構的なバラツキに起因するズレに加えて、この所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレをも合わせて扱うのでは、ズレの原因がいずれにあるのか不明確となるので、本発明では、2つのズレを明確に分けて扱う。すなわち、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ(第1のズレ)を考えるときには、主に製作誤差から生じる機構的なバラツキに起因するズレ(第2のズレ)はないものとして考える。
このように、左バンク2で4つの各パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりタイミングに、右バンク3で3つの各パルスP5、P7、P8の立ち下がりタイミングに基本位置からのズレが生じる、つまり左右バンク2、3のカム位置検出信号に所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴う、基本位置からのズレが生じるのでは、吸排気バルブのオーバーラップ期間のフィードバック制御性が悪化する。
これについて説明すると、吸気VTC機構11、13により吸気バルブタイミングをエンジンの運転条件に応じてバンク毎に制御することで、排気バルブと吸気バルブとが共に開となるバルブオーバーラップ期間を制御することができ、高回転速度域では、バルブオーバーラップ期間の拡大により、残ガス率(排気バルブの閉弁タイミングで燃焼室内に残留する燃焼ガスの割合)を大きくして、燃費及び排気性能を向上させ、アイドルを含む低回転速度域では、バルブオーバーラップ期間の短縮により、燃焼安定性を確保することが可能である。
このため、図14に示したように、エンジンコントロールユニット51には、2つのカム位置センサ61、71及びクランク位置センサ73からの信号に加えて、エンジンの吸入空気量を検出するエアフローメータ75、エンジンの冷却水温を検出する水温センサ76、アクセル開度を検出するアクセルセンサ77、車速を検出する車速センサ79からの信号が入力され、エンジンコントロールユニット51では、これら各種センサにより検出されるエンジンの運転条件に基づいて、左右バンク2、3のカムシャフト21、31の目標角度(吸気バルブの目標バルブタイミング)を設定し、この目標角度が得られるように第1、第2のオイルコントロールバルブ43、47に指令値を出力すると共に、左バンク2のカム位置センサ61及びクランク位置センサ73からの信号に基づいて左バンク2のカムシャフト21の実際の角度(吸気バルブの実バルブタイミング)を検出し、この検出される実際の角度が目標角度と一致するように、第1オイルコントロールバルブ43に与える指令値をフィードバック制御し、また右バンク3のカム位置センサ71及びクランク角センサ73からの信号に基づいて右バンク3のカムシャフト31の実際の角度(吸気バルブの実バルブタイミング)を検出し、この検出される実際の角度が目標角度と一致するように、第2オイルコントロールバルブ47に与える指令値をフィードバック制御している。
また、各種センサにより検出されるエンジンの運転条件に基づいて、左右バンク2、3の吸気バルブの各目標作動角tVELを設定し、この目標作動角tVELを実現するための制御信号を2つのVEL機構81、82の各アクチュエータ81A、82Aに出力する。VEL機構81、82にも製作バラツキがあることを考えると、左バンク2のVEL機構81に与える目標作動角tVEL1と、右バンク3のVEL機構82に与える目標作動角tVEL2とを多少相違させることも考え得るが、簡単には左バンク2のVEL機構81に与える目標作動角tVEL1と、右バンク3のVEL機構82に与える目標作動角tVEL1とを同じにしてよい(tVEL1=tVEL2=tVEL)。
また、エンジンコントロールユニット51は、同じくエンジンの運転状態に基づいて、燃料噴射弁84、点火プラグ85の作動を制御する。
さて、上記吸気バルブタイミングのフィードバック制御において、カム位置センサ61、71からのカム位置信号に、図10第4段目、図11第4段目に示したような基本位置からのズレがあると、フィードバック制御の制御精度が悪くなる。例えば、図10第4段目に示したように、パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりの各タイミングはエンジンの負荷と回転速度を一定の条件としても同じ値とならないため、各パルスP1、P2、P3、P4の立ち下がりタイミングである実角度1、実角度2、実角度3、実角度4の4つの実角度を順次、制御上の実角度rθnowとして取り込むとすれば、制御上の実角度rθnowはある振れをもって動く値となり安定しない。従って、このような安定しない値の制御上の実角度rθnowをフィードバック信号に用いるとすれば、フィードバック制御精度が低下する。
例えば、パルスP1、P4の立ち下がりタイミングである実角度1、実角度4が制御上の実角度rθnowに取り込まれているときには、目標角度θtより制御上の実角度rθnowが小さいために制御上の実角度rθnowが大きくなる側に第1オイルコントロールバルブ43に指令値が送られ、カムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相を進角させようとする。ところが、パルスP2、P3の立ち下がりタイミングである実角度2、実角度3が制御上の実角度rθnowに取り込まれると、目標角度θtより制御上の実角度rθnowが大きいために制御上の実角度rθnowが小さくなる側に第1オイルコントロールバルブ43に指令値が送られ、カムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相を遅角させようとする。このように、制御上の実角度rθnowが目標角度θtより小さかったり大きかったりして安定しないと、定常運転状態でありながらカムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相を進角させようとしたり遅角させようとしたりする。つまり、カムシャフト21の実角度(バルブタイミング)がハンチングして、なかなか目標角度(目標バルブタイミング)に収束しないことになり、フィードバック制御の制御精度が悪くなるのである。
これに対処するため本実施形態では、カム位置信号に基づいて算出される実角度1〜実角度7(気筒別の実際のバルブタイミング)を、予め定まっている所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分に相当する補正値で補正する。この補正された実角度(補正された気筒別のバルブタイミング)が目標角度(目標バルブタイミング)と一致するように吸気VTC機構11、13に与える指令値をフィードバック制御する。
実角度1〜実角度7の補正について図10、図11を参照して説明する。図10においてパルスP1に対しては、パルスP1の立ち下がりタイミングである実角度θ1[°CA]に正の値である第1補正値HOS1[°CA]を加えた値が基本角度と一致するように第1補正値HOS1を設定してやれば、補正後実角度(=実角度1+HOS1)は基本角度と一致することとなる(図10第5段目参照)。同様にして、パルスP4に対して、パルスP4の立ち下がりタイミングである実角度θ4[°CA]に正の値である第4補正値HOS4[°CA]を加えた値が基本角度と一致するように第4補正値HOS4を設定してやれば、補正後実角度(=実角度4+HOS4)は基本角度と一致する(図10第5段目参照)。図11においても、パルスP7に対して、パルスP7の立ち下がりタイミングである実角度θ6[°CA]に正の値である第6補正値HOS6[°CA]を加えた値が基本角度と一致するように第6補正値HOS6を設定してやれば、補正後実角度(=実角度6+HOS6)は基本角度と一致する(図11第5段目参照)。すなわち、第1、第4、第6の補正値HOS1、HOS4、HOS6は、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分に相当する#1気筒、#5気筒、#6気筒の補正値である。
一方、図10において、パルスP2に対しては、パルスP2の立ち下がりタイミングである実角度θ2[°CA]から正の値である第2補正値HOS2[°CA]を差し引いた値が基本角度と一致するように第2補正値HOS2を設定してやれば、補正後実角度(=実角度2+HOS2)は基本角度と、パルスP3に対しては、パルスP3の立ち下がりタイミングである実角度θ3[°CA]から正の値である第3補正値HOS3[°CA]を差し引いた値が基本角度と一致するように第3補正値HOS3を設定してやれば、補正後実角度(=実角度3+HOS3)は基本角度と一致する(図10第5段目参照)。同様にして、図11においてパルスP5に対しては、パルスP5の立ち下がりタイミングである実角度θ5[°CA]から正の値である第5補正値HOS5[°CA]を差し引いた値が基本角度と一致するように第5補正値HOS5を設定してやれば、補正後実角度(=実角度5+HOS5)は基本角度と、パルスP8に対して、パルスP8の立ち下がりタイミングである実角度θ7[°CA]から正の値である第7補正値HOS7[°CA]を差し引いた値が基本角度と一致するように第7補正値HOS7を設定してやれば、補正後実角度(=実角度7+HOS37は基本角度と一致する(図11第5段目参照)。すなわち、第2、第3、第5、第7の補正値HOS2、HOS3、HOS5、HOS7は、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分に相当する#7気筒、#3気筒、#8及び#2気筒、#4気筒の補正値である。
ただし、第1から第7までの各補正値HOS1〜HOS7を正の値で与えると、計算(補正)が加算となったり減算となったりするので、各補正値HOS1〜HOS7は正負を含む値で構成し、補正は加算のみによって行うこととする。図10、図11の場合であれば、第1、第4、第6の各補正値HOS1、HOS4、HOS6は正の値であるのに対して、第2、第3、第5、第7の各補正値HOS2、HOS3、HOS5、HOS7は負の値となる。
こうして7つの各実角度1〜実角度7を個別の補正値HOS1〜HOS7でそれぞれ補正してやれば、7つの各補正後実角度は左右バンク2、3のいずれの気筒でも基本角度に一致するはずであり、これにより所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分が解消されたことになる。そして、このとき、吸気VTC機構11、13に製作バラツキがなければ、補正後実角度(≒基本角度)は目標角度に一致する。一方、補正後実角度(≒基本角度)が目標角度に一致しなれば、そのズレ分は吸気VTC機構11、13に生じている製作バラツキに起因するズレ分(あるいはその後の経時劣化に伴うズレ分)であると考えられる。こうした製作バラツキに起因するズレ分については、補正後実角度が目標角度と一致するように行うフィードバック制御により解消することが可能である。
このように本発明では、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分と、製作バラツキに起因するズレ分とを分けて扱い、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分については実角度を気筒別に補正することで対処し、製作バラツキに起因するズレ分についてはフィードバック制御することで対処するようにしたものである。さらに述べると、6気筒エンジンでは、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクが各気筒で同じであるため、本発明の扱う第1のズレ(所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ)は生じず、第1のズレに関する限りにおいて本発明の適用の余地はないのである。
エンジンコントロールユニット51で行われるこの制御を図15A、図15B、図23A、図23Bのフローチャートに基づいて詳述する。ただし、制御を複雑化させないため排気VTC機構12、14は作動させないものとし、2つの吸気VTC機構11、13のみを用いて吸排気バルブのオーバーラップ量を制御する場合で説明する。
図15A、図15Bはカム位置センサ61からのカム位置信号に基づいて左バンク2のカムシャフト21の実角度を、カム位置センサ71からのカム位置信号に基づいて右バンク3のカムシャフト31の実角度をそれぞれ検出するためのもので、所定のクランク角毎(例えば1°CA毎)に実行する。
ステップ1では、エンジンの運転条件に応じた目標リフト・作動角(この目標リフト・作動角を以下単に「目標作動角」という。)tVELを算出する。この目標作動角tVELは例えばエンジンの負荷と回転速度Neをパラメータとするマップを検索することにより求めればよい。ここでは、左右バンク2、3とも同じ値の目標作動角tVELを用いている。
ステップ2、3、4、5では各パルスP1、P2、P3、P4の入力があるか否かをみる。エンジンコントロールユニット51ではカム位置センサからの信号とクランク位置センサからの信号とに基づいて気筒判別を行っているので、どのパルスの入力であるかは知り得る。
パルスP1の入力があれば、ステップ2よりステップ6に進み、パルスP1の立ち下がりタイミングである実角度1を#1気筒の実角度θnow1に移す。パルスP2の入力があれば、ステップ2、3よりステップ9に進み、パルスP2の立ち下がりタイミングである実角度2を#7気筒の実角度θnow2に移す。パルスP3の入力があれば、ステップ2、3、4よりステップ12に進み、パルスP3の立ち下がりタイミングである実角度3を#3気筒の実角度θnow3に移す。パルスP4の入力があれば、ステップ2、3、4、5よりステップ15に進み、パルスP4の立ち下がりタイミングである実角度4を#5気筒の実角度θnow4に移す。このようにして、左バンク2のカムシャフト1回転当たり4回センシング(検出)されることとなり、最新の実角度θnow1〜θnow4が得られる。
ステップ7、8、10、11、13、14、16、17は本発明により新たに追加して設けた部分である。すなわち、ステップ7ではエンジン回転速度Neとステップ1で算出済みの目標作動角tVELとから図16を内容とするマップを検索することにより第1補正値HOS1を求め、ステップ7でこの第1補正値HOS1を実角度θnow1に加算した値を補正後実角度θnow1HOSとすることにより、実角度θnow1を補正する。同様にしてステップ10ではエンジン回転速度Neとステップ1で算出済みの目標作動角tVELとから図17を内容とするマップを検索することにより第2補正値HOS2を求め、ステップ11でこの第2補正値HOS2を実角度θnow2に加算した値を補正後実角度θnow2HOSとすることにより、実角度θnow1を補正する。ステップ13ではエンジン回転速度Neとステップ1で算出済みの目標作動角tVELとから図18を内容とするマップを検索することにより第3補正値HOS3を求め、ステップ14でこの第3補正値HOS3を実角度θnow3に加算した値を補正後実角度θnow3HOSとすることにより、実角度θnow3を補正する。ステップ16ではエンジン回転速度Neとステップ1で算出済みの目標作動角tVELとから図19を内容とするマップを検索することにより第4補正値HOS4を求め、ステップ17でこの第4補正値HOS4を実角度θnow4に加算した値を補正後実角度θnow4HOSとすることにより、実角度θnow4を補正する。
このように4つの各実角度θnow1〜θnow4を気筒別に補正することにより、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレを解消でき、4つの各補正後実角度θnow1HOS〜θnow4HOSはそれぞれ安定した値となる。
また、ステップ18、19、20では各パルスP5、P7、P8の入力があるか否かをみる。パルスP5の入力があれば、ステップ18よりステップ21に進み、パルスP5の立ち下がりタイミングである実角度5を#8、#2の気筒の実角度θnow5に移す。パルスP7の入力があれば、ステップ18、19よりステップ24に進み、パルスP7の立ち下がりタイミングである実角度7を#6気筒の実角度θnow6に移す。パルスP8の入力があれば、ステップ18、19、20よりステップ27に進み、パルスP8の立ち下がりタイミングである実角度8を#4気筒の実角度θnow3に移す。このようにして、右バンク3のカムシャフト1回転当たり3回センシング(検出)されることとなり、最新の実角度θnow5〜θnow7が得られる。
ステップ22、23、25、26、28、29も本発明により新たに追加して設けた部分である。すなわち、ステップ22ではステップ1で算出済みのエンジン回転速度Neと目標作動角tVELとから図20を内容とするマップを検索することにより第5補正値HOS5を求め、ステップ23でこの第5補正値HOS5を実角度θnow5に加算した値を補正後実角度θnow5HOSとすることにより、実角度θnow5を補正する。同様にしてステップ25ではエンジン回転速度Neとステップ1で算出済みの目標作動角tVELとから図21を内容とするマップを検索することにより第6補正値HOS6を求め、ステップ26でこの第6補正値HOS6を実角度θnow6に加算した値を補正後実角度θnow6とすることにより、実角度θnow6を補正する。ステップ28ではエンジン回転速度Neとステップ1で算出済みの目標作動角tVELとから図22を内容とするマップを検索することにより第7補正値HOS7を求め、ステップ29でこの第7補正値HOS6を実角度θnow6に加算した値を補正後実角度θnow6とすることにより、実角度θnow6を補正する。
このように3つの各実角度θnow5〜θnow7を気筒別に補正することにより、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレを解消でき、3つの各補正後実角度θnow5HOS〜θnow7HOSはそれぞれ安定した値となる。
上記補正前の各実角度θnow1〜θnow7や補正後の各実角度θnow1HOS〜θnow7HOSの単位は、クランク角[°CA]とする。ただし、これに限定されるものでなく、カム角としてしてもかまわない。
ここで、運転条件が一つ定まったとして、上記第1補正値HOS1は基本角度からの実角度θnow1のズレ分に、上記第2補正値HOS2は基本角度からの実角度θnow2のズレ分に、上記第3補正値HOS3は基本角度からの実角度θnow3のズレ分に、上記第4補正値HOS4は基本角度からの実角度θnow4のズレ分に、上記第5補正値HOS5は基本角度からの実角度θnow5のズレ分に、上記第6補正値HOS6は基本角度からの実角度θnow6のズレ分に、上記第7補正値HOS7は基本角度からの実角度θnow7のズレ分に相当する値である。この基本角度からの実角度θnow1〜θnow7のズレ分は気筒毎に異なるため、補正値は気筒別に、つまり気筒別の7つの補正値HOS1〜HOS7を図16〜図22に示したように設定している。また、1つの気筒に着目すると、基本角度からの実角度のズレ分はエンジン回転速度Neに応じて変化するため、各補正値HOS1〜HOS7は図16〜図22に示したようにエンジンの回転速度Neに応じて設定している。さらに、VEL機構81、82を備え、目標作動角tVELが得られるようにVEL機構81、82に与える指令値を制御するときには、基本角度からの実角度のズレ分はこの目標作動角tVELに応じても変化するため、補正値HOS1〜HOS7は図16〜図22に示したように目標作動角tVELに応じても設定している。
実際には、気筒別の7つの補正値HOS1〜HOS7は適合(マッチング)により定める。基本角度としては目標角度を選択するかまたはこれに近い値を選択する。実際にエンジンの負荷と回転速度Neからなる運転条件を少しずつ変えて(定常運転条件)、エンジン回転速度Neと目標作動角tVELとに対する7つの各補正値HOS1〜HOS7を適合してみたところ、補正値HOS1〜HOS7の各特性は一様ではなかった。例えば、目標作動角tVELが一定の条件においてエンジン回転速度Neが大きくなるほど補正値が大きくなる気筒と、エンジン回転速度Neが大きくなるほど補正値が小さくなる気筒とがあった。ただし、エンジン回転速度Neが一定の条件においては目標作動角tVELが大きくなるほど補正値が大きくなる傾向がある。このように、気筒別の7つの補正値HOS1〜HOS7の各特性は一様でないため、図16〜図22に補正値HOS1〜HOS7の実際の値の概略の傾向は示していない。
図23A、図23Bは左バンク2の吸気VTC機構11の第1オイルコントロールバルブ43に与えるデューティ値DTY1[%]及び右バンク3の吸気VTC機構13の第2オイルコントロールバルブ47に与えるデューティ値DTY2[%]を算出するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。この場合、第1オイルコントロールバルブ43に与えるデューティ値を大きくするほどカムスプロケット22に対するカムシャフト21の位相が進角されるように、また第2のオイルコントロールバルブ47に与えるデューティ値を大きくするほどカムスプロケット32に対するカムシャフト31の位相が進角されるようになっているものとする。
まずステップ31ではエンジンの運転条件に応じた、左右バンク2、3のカムシャフト21、31の目標角度θt(吸気バルブの目標バルブタイミング)を算出する。この目標角度θtは例えばエンジンの負荷と回転速度をパラメータとするマップを検索することにより求めればよい。カムシャフト21、31の目標角度θtの単位もクランク角[°CA]である。
ステップ32ではこの目標角度θtを基本デューティ値DTY0[%]に変換する。基本デューティ値DTY0は目標角度θtが大きくなるほど大きくなる値である。
ステップ33では図15A、図15Bのフローにより得られている最新の7つの補正後実角度θnow1HOS〜θnow7HOS[°CA]を読み込む。
ステップ34、35では、左バンク2の4つの補正後実角度θnow1HOS〜θnow4HOSを全て用いて左バンク2についての制御上の実角度rθnow1[°CA]を、また右バンク3の3つの補正後実角度θnow5HOS〜θnow7HOSを全て用いて右バンク3についての制御上の実角度rθnow2[°CA]を算出する。例えば、左バンク2についてクランク角720°CA毎に(カムシャフト21の1回転毎に)上記4つの補正後実角度θnow1HOS、θnow2HOS、θnow3HOS、θnow4HOSの単純平均値を算出し、その単純平均値を左バンク2についての制御上の実角度rθnow1とする。あるいは、4つの補正後実角度θnow1HOS、θnow2HOS、θnow3HOS、θnow4HOSの加重平均値を左バンク2についての制御上の実角度rθnow1として算出する。この加重平均値を算出するには次の式を用いればよい。
加重平均値1=加重平均値1(前回)×加重平気係数1
+今回値×(1−加重平均係数1)
…(1)
ただし、加重平均値1(前回):加重平均値1の前回値、
加重平気係数1 :一定値(0から1までの間の適当な値)、
ここで、(1)式右辺の今回値として左バンク2の補正後実角度θnow1HOS、θnow2HOS、θnow3HOS、θnow4HOSを順次入れて計算する。
同様にして、右バンク3についてクランク角720°CA毎に(カムシャフト31の1回転毎に)上記3つの補正後実角度θnow5HOS、θnow6HOS、θnow7HOSの単純平均値を算出し、その単純平均値を右バンク3についての制御上の実角度rθnow2とする。あるいは、3つの補正後実角度θnow5HOS、θnow6HOS、θnow7HOSの加重平均値を右バンク3についての制御上の実角度rθnow2として算出する。この加重平均値を算出するには次の式を用いればよい。
加重平均値2=加重平均値2(前回)×加重平気係数2
+今回値×(1−加重平均係数2)
…(2)
ただし、加重平均値2(前回):加重平均値2の前回値、
加重平気係数2 :一定値(0から1までの間の適当な値)、
ここで、(2)式右辺の今回値として右バンク3の補正後実角度θnow5HOS、θnow6HOS、θnow7HOSを順次入れて計算する。
制御上の実角度rθnow1、rθnow2の算出方法はこれに限られない。例えば、左バンク2の4つの補正後実角度θnow1HOS〜θnow4HOSのうちいずれか一つを選択して左バンク2についての制御上の実角度rθnow1[°CA]に、また右バンク3の3つの補正後実角度θnow5HOS〜θnow7HOSのうちいずれか一つを選択して右バンク3についての制御上の実角度rθnow2[°CA]に入れることが考えられる。これは、その都度選択する対象を変えるのではなく、予め選択する対象は決めておく。例えば補正後実角度θnow1HOSを常に選択して制御上の実角度rθnow1に、また補正後実角度θnow5HOSを常に選択して制御上の実角度rθnow2に入れる。
ステップ36、37では、このようにして得た左バンク2についての制御上の実角度rθnow1と目標角度θtとの偏差Δθ1[°CA](=rθnow1−θt)を、また右バンク3についての制御上の実角度rθnow2と目標角度θtとの偏差Δθ2[°CA](=rθnow2−θt)を計算する。補正後実角度θnow1HOS〜θnow7HOSに基づいて算出される制御上の実角度rθnow1、rθnow2は基本角度とほぼ一致するはずであるから、小さくない値の偏差Δθ1、Δθ2があるということは、吸気VTC機構11、13の製作バラツキに起因するズレ分やその後の経時劣化に伴うズレ分が生じていることを意味する。
ステップ38では、このうち左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値と所定値[°CA]とを比較する。左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値以上であれば、吸気VTC機構11の製作バラツキに起因するズレ分やその後の経時劣化に伴うズレ分が大きく生じていると判断し、ステップ39に進んで左バンク2についての偏差Δθ1とゼロとを比較する。左バンク2についての偏差Δθ1が正、つまり左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が目標角度θtより大きいときには、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1を目標角度θtへと小さくするため、ステップ40に進んでデューティ値のフィードバック量FB1[°CA]を所定値A[°CA]だけ減少する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB1を次式により更新し、ステップ42において更新後のフィードバック量FB1を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY1[%]として算出する。
FB1=FB1(前回)−A …(3)
ただし、FB1(前回):FB1の前回値、
A :正の一定値、
ここで、デューティ値DTY1には初期値として基本デューティ値DTY0を入れておく。
ステップ40、42の操作でデューティ値DTY1は小さくなる側に更新され、このデューティ値DTY1で第1オイルコントロールバルブ43が制御されると、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が小さくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ40、42の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ38で左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ38よりステップ43に進んでデューティ値DTY1を維持する。
これに対して、ステップ38で左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値以上でありかつステップ39で左バンク2についての偏差Δθ1が負、つまり左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が目標角度θtより小さいときには、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1を目標角度θtへと大きくするため、ステップ41に進んでデューティ値のフィードバック量FB1[°CA]を所定値B[°CA]だけ増加する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB1を次式により更新し、ステップ42において更新後のフィードバック量FB1を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY1[%]として算出する。
FB1=FB1(前回)+B …(4)
ただし、FB1(前回):FB1の前回値、
B :正の一定値、
ステップ41、42の操作でデューティ値DTY1は大きくなる側に更新され、このデューティ値DTY1で第1オイルコントロールバルブ43が制御されると、左バンク2についての制御上の実角度rθnow1が大きくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ41、42の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ38で左バンク2についての偏差Δθ1の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ38よりステップ43に進んでデューティ値DTY1を維持する。
ステップ44〜49はステップ38〜43と同様の処理である。すなわち、ステップ44では、右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値と所定値[°CA]とを比較する。右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値以上であれば、吸気VTC機構13の製作バラツキに起因するズレ分やその後の経時劣化に伴うズレ分が大きく生じていると判断し、ステップ45に進んで右バンク3についての偏差Δθ2とゼロとを比較する。右バンク3についての偏差Δθ2が正、つまり右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が目標角度θtより大きいときには、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2を目標角度θtへと小さくするため、ステップ46に進んでデューティ値のフィードバック量FB2[°CA]を所定値C[°CA]だけ減少する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB2を次式により更新し、ステップ48において更新後のフィードバック量FB2を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY2[%]として算出する。
FB2=FB2(前回)−C …(5)
ただし、FB2(前回):FB2の前回値、
C :正の一定値、
ここで、デューティ値DTY2についても初期値として基本デューティ値DTY0を入れておく。
ステップ46、48の操作でデューティ値DTY2は小さくなる側に更新され、このデューティ値DTY2で第2オイルコントロールバルブ47が制御されると、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が小さくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ46、48の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ44で右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ44よりステップ49に進んでデューティ値DTY2を維持する。
これに対して、ステップ44で右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値以上でありかつステップ45で右バンク3についての偏差Δθ2が負、つまり右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が目標角度θtより小さいときには、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2を目標角度θtへと大きくするため、ステップ47に進んでデューティ値のフィードバック量FB2[°CA]を所定値D[°CA]だけ増加する側に更新する。つまりデューティ値のフィードバック量FB2を次式により更新し、ステップ51において更新後のフィードバック量FB2を基本デューティ値DTY0に加算した値を最終的なデューティ値DTY2[%]として算出する。
FB2=FB2(前回)+D …(6)
ただし、FB2(前回):FB2の前回値、
D :正の一定値、
ステップ47、48の操作でデューティ値DTY2は大きくなる側に更新され、このデューティ値DTY2で第2オイルコントロールバルブ47が制御されると、右バンク3についての制御上の実角度rθnow2が大きくなり目標角度θtに近づいてゆく。ステップ47、48の操作を何度か繰り返せば、やがてステップ44で右バンク3についての偏差Δθ2の絶対値が所定値未満となる。このときには、目標角度θtからの実角度のずれは許容範囲に収まっていると判断し、ステップ44よりステップ49に進んでデューティ値DTY2を維持する。
このようにして算出したデューティ値DTY1は、エンジンコントロールユニット51の図示しない出力ポートから第1オイルコントロールバルブ43に、またもう一つのデューティ値DTY2は、エンジンコントロールユニット51の図示しない出力ポートから第2オイルコントロールバルブ47に出力される。
VEL機構81、82を用いての吸入空気量の制御は特開2005−171910号公報に記載されており、この制御をそのまま流用すればよい。すなわち、図示しないフローにおいて、図15Aのステップ1と同じに目標作動角tVELが算出され、その算出した目標作動角tVELが、エンジンコントロールユニット51の図示しない出力ポートから2つのVEL機構81、82の各アクチュエータ81A、82Aに出力されることとなる。
ここで本実施形態の作用効果を説明する。
図1に示したように左右バンク2、3で燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンでは、センシングタイミングでのカム駆動トルクが正や負にバラツクために、図10、図11に示したようにカムシャフト1回転当たり4個(複数個)のパルス(カム位置信号)に基づいて得られる実角度1〜実角度4(左バンク)、実角度5〜実角度7(右バンク)(これら実角度1〜実角度7は気筒別の実際のバルブタイミング)が各バンク2、3とも安定しない、という固有の問題がある。
この場合に、カムシャフト1回転当たり4個のパルス(左バンク2ではP1、P2、P3、P4の4個のパルス、右バンク3では実質的にP5、P7、P8の3個のパルス)のうちの1つだけに基づいてカムシャフト21、31の実角度(実際のバルブタイミング)を検出するようにすれば、実角度(実際のバルタイミング)が安定し、フィードバック制御精度を向上させることができる。しかしながら、こうした場合、センシングタイミングはカムシャフト21、31の1回転当たり一回だけとなる。このため、検出するのに用いる1のパルスと、次に検出するのに用いる1のパルスとの間の間隔(つまり制御周期)が時間的に長くなる運転条件では、フィードバック制御の信頼性が悪化することになってしまう。
これに対して本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、吸気VTC機構11、13(位相調整機構)と、カム位置センサ61、71(カム位置信号発生手段)とを備え、このカム位置センサ61の発生するカム位置信号に基づいてカムシャフト21、31の実角度θnow1〜θnow4及びカムシャフト31の実角度θnow5〜θnow7(吸気バルブの実際のバルブタイミング)を検出し(図15Aのステップ6、9、12、15、図15Bのステップ21、24、27参照)、この検出された実角度1〜実角度4(左バンク)及び実角度5〜実角度7(右バンク)(気筒別の実際のバルブタイミング)を、第1から第7までの各補正値HOS1〜HOS7(所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分に相当する補正値)で補正してカムシャフト21の補正後実角度θnow1HOS〜θnow4HOS及びカムシャフト31の補正後実角度θnow5HOS〜θnow7HOSを求め(図15Aのステップ8、11、14、17、図15Bのステップ23、26、29参照)、エンジンの運転条件に応じた目標角度θt(目標バルブタイミング)を算出し(図23Aのステップ31参照)、カムシャフト21の補正後実角度θnow1HOS〜θnow4HOS及びカムシャフト31の補正後実角度θnow5HOS〜θnow7HOSが目標角度θtと一致するように吸気VTC機構11、13に与える指令値をフィードバック制御する(図23Bのステップ36〜49参照)ので、気筒別の補正後実角度θnow1HOS〜θnow7HOS(補正後の気筒別のバルブタイミング)が基本角度(基本のバルブタイミング)と一致し(図10、図11の第5段目参照)、気筒別の補正後実角度を安定させることができることから、左右バンク2、3で燃焼順序が交互とならず同一バンク内の燃焼間隔が不等間隔となるV型8気筒エンジンであっても補正後実角度(補正後の気筒別のバルブタイミング)の安定性とフィードバック制御の信頼性とを両立できる。
所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分は気筒別に相違する。これに対応して本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、補正値HOS1〜HOS7を気筒別の実角度θnow1〜θnow7毎(実際のバルブタイミング毎)に設定するので(図15Aのステップ7、10、13、16、図15Bのステップ22、25、28参照)、気筒が相違しても制御上の実角度rθnow(気筒別の実際のバルブタイミング)を安定させることができる。
所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分はエンジンの回転速度Neにより変化する。これに対応して本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、補正値HOS1〜HOS7をエンジンの回転速度Neに応じて設定するので(図16〜図22参照)、エンジン回転速度Neが相違しても補正後実角度θnow1HOS〜θnow7HOS(補正後の気筒別のバルブタイミング)を安定させることができる。
VEL機構81、82(リフト・作動角調整機構)と、エンジンの運転条件に応じた目標作動角tVELを算出する目標作動角算出手段(図15Aのステップ1参照)と、この目標作動角tVELが得られるようにVEL機構81、82に与える指令値を制御する制御手段(51)とを備える場合には、所定クランク角毎のセンシングタイミングにおけるカム駆動トルクの相違に伴うズレ分は目標作動角tVELによっても変化する。これに対応して本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、補正値HOS1〜HOS7をこの目標作動角tVELに応じても設定するので(図16〜図22参照)、目標作動角tVELが相違しても補正後実角度θnow1HOS〜θnow7HOS(補正後の気筒別のバルブタイミング)を安定させることができる。
請求項1において、バルブタイミング検出手段の機能は図15Aのステップ6、9、12、15、図15Bのステップ21、24、27により、バルブタイミング補正手段の機能は図15Aのステップ8、11、14、17、図15Bのステップ23、26、28により、目標バルブタイミング算出手段の機能は図23Aのステップ31により、フィードバック制御手段の機能は図23Bのステップ36〜49によりそれぞれ果たされている。