JP2009286036A - 撥液膜の成膜方法、液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法及び撥液膜の製造装置 - Google Patents

撥液膜の成膜方法、液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法及び撥液膜の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性に優れた撥液膜を容易に形成する撥液膜の形成方法を提供することである。
【解決手段】フッ素含有有機系撥液材料を蒸着原料とし、真空蒸着法により、蒸着源に対向する位置に配置された基板の上に前記蒸着原料の薄膜を形成する撥液膜の製造方法において、前記蒸着原料を蒸発させる蒸発工程と、前記蒸発工程で蒸発させた前記蒸着原料を前記基板に蒸着する蒸着工程と、を有し、前記蒸着工程において、前記蒸着源から前記基板に向かって前記蒸着原料が飛翔する飛翔空間における圧力が、該飛翔空間を取り巻く周囲空間における圧力より高い。
【選択図】図1

Description

本発明は、撥液膜の成膜方法、液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法及び撥液膜の製造装置に関する。
インクジェット式記録ヘッドの製造には、Si、ガラス、金属等の材料が用いられている。これらの材料を用いて、液滴を吐出するノズル孔を備えたノズルプレートやノズル孔に吐出する液体を供給する流路溝を備えたボディプレートが形成されている。
インクジェット式記録ヘッドにおいて、ノズルプレートのインクを吐出する吐出口がある面(吐出面)の撥インク性(撥液性)が不十分であるとインクの液滴が吐出口周辺に広がって付着しやすくなる。このため、インクの吐出量が不安定になったり直進性が損なわれたりして、印刷品質が低下する。
そこで、ノズルプレートの吐出面には撥液処理を施している。特許文献1においては、フッ素系樹脂をターゲットとなる固体表面に蒸着する撥水性有機膜の形成方法が開示されている。この方法は、真空容器内で加速した金属イオンビームをその容器内に配置されたターゲットとなる固体表面に向けて照射する工程の実行中に、その容器内で撥水性有機物質を蒸発させそのターゲットに撥水性有機膜を蒸着している。この方法によると、金属または撥水性有機物質の加速したイオンビームを固体表面に照射しているときに、撥水性有機物質を蒸着させると、蒸着した撥水性有機物質にそのイオンビームが突入し蒸着被膜を固体表面に固着させることができるとしている。
また、特許文献2においては、ノズルプレートの表面にスパッタ法によりSiO膜を形成し、このSiO膜の上にフッ素系撥水膜を蒸着法で形成した後、加熱によりフッ素系撥水膜を重合処理する液滴吐出ヘッドの製造方法が開示されている。
インクジェット式記録ヘッドによる印刷は、工業用途として印刷対象を紙とする以外に樹脂やガラスがあり、使用するインクは水性に限らず、溶媒を用いたものがある。また、工業用途においては、高精度で高品位の印刷が求められ、インクジェット式記録ヘッドにおけるインク吐出に対して、より高い精度及び信頼性が要求される。
また、撥液膜は、印刷時には印刷用紙と、またインク吐出口の清掃時にはワイピング用クリーナとの擦れが生じる。このため撥液膜は、容易に剥がれない高い耐久性が求められている。
従って、ノズルプレートの吐出面に、剥がれることなくインクが付着し難い高い耐久性を有する撥インク膜(撥液膜)が求められている。
特開平8−35058号公報 特開2007−125849号公報
しかしながら、特許文献1に記載の撥水性有機膜形成装置は、撥水性有機物質を蒸発させる蒸着源の他に、金属イオンビームを放射するイオン銃を備えた照射装置、照射装置からのイオンビームを加速させる加速電極、ターゲットがプラス電荷を持った際に中和する電荷中和用フィラメント等を必要としている。また、これら照射装置、加速電極及びフィラメントを駆動するための電源等も必要である。このため、撥水性有機膜形成装置は、複雑で高価のものとなる。また、撥水性有機物質にイオンビームを照射すると、撥水性有機物質が分解してしまい、本来の撥水性が十分に発揮できない場合がある。
特許文献2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法におけるノズルプレートにおいては、SiO膜の上にイオンビームを加速するノズルプレートの吐出面にまず撥液膜の下層としてSiO膜を設けた後にフッ素系撥水膜を蒸着法で形成するとしている。
しかしながら、有機物、特にフッ素含有物の蒸着原料を真空蒸着法で蒸着する場合、加熱によって一気に蒸着原料が蒸発し真空槽内の圧力が上がるため、圧力と真空ポンプの排気速度の平衡状態が崩れ、急激に排気が進み蒸着原料の蒸気圧の制御が困難となる。このため蒸着原料の蒸気圧が不安定になり、良好な膜を効率よく得ることが困難である。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、耐久性に優れた撥液膜を容易に形成する撥液膜の成膜方法、この方法を用いた液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法及び撥液膜の製造装置を提供することである。
上記の課題は、以下の構成により解決される。
1. フッ素含有有機系撥液材料を蒸着原料とし、真空蒸着法により、蒸着源に対向する位置に配置された基板の上に前記蒸着原料の薄膜を形成する撥液膜の製造方法において、
前記蒸着原料を蒸発させる蒸発工程と、
前記蒸発工程で蒸発させた前記蒸着原料を前記基板に蒸着する蒸着工程と、を有し、
前記蒸着工程において、前記蒸着源から前記基板に向かって前記蒸着原料が飛翔する飛翔空間における圧力が、該飛翔空間を取り巻く周囲空間における圧力より高いことを特徴とする撥液膜の成膜方法。
2. 前記飛翔空間における圧力が、前記周囲空間における圧力の2倍以上10倍以下であることを特徴とする1に記載の撥液膜の成膜方法。
3. 前記蒸着工程において、前記基板の温度を300℃以下とすることを特徴とする1又は2に記載の撥液膜の成膜方法。
4. 前記基板に前記蒸着原料の薄膜を形成した後、前記基板を冷却する冷却工程を有し、
前記冷却工程で前記基板の温度が100℃以下となった以降に、前記基板を大気開放することを特徴とする1乃至3の何れか一項に記載の撥液膜の成膜方法。
5. 板部材に液体を吐出するノズルを形成するノズル形成工程と、
前記ノズル形成工程で形成された前記ノズルの吐出口がある面に1乃至4の何れか一項に記載の撥液膜の成膜方法により撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、を有することを特徴とする液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法。
6. 前記板部材は、Siを材料とする板、又は表面にSiO膜を備えたSiを材料とする板であることを特徴とする5に記載の液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法。
7. フッ素含有有機系撥液材料を蒸着原料とし、真空蒸着法により、蒸着源に対向する位置に配置された基板の上に前記蒸着原料の薄膜を形成する撥液膜の製造装置において、
前記蒸着原料を蒸発させる蒸発手段と、
前記蒸発手段により蒸発させた前記蒸着原料が前記基板に向かって飛翔する飛翔空間における圧力を、該飛翔空間を取り巻く周囲空間における圧力より高くする空間分離手段と、を備えていることを特徴とする撥液膜の製造装置。
8. 前記空間分離手段は、前記蒸着源に対向する端と前記基板に対向する端とが開放され、前記飛翔空間を包む筒形状部材であることを特徴とする7に記載の撥液膜の製造装置。
9. 前記筒形状部材の前記蒸着源に対向する端は、該蒸着源が固定されている固定面より離れ、該筒形状部材の前記基板に対向する端は、前記基板の蒸着面より離れていることを特徴とする8に記載の撥液膜の製造装置。
本発明の撥液膜の成膜方法によれば、耐久性に優れた撥液膜を容易に形成することができる。また、本発明の液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法によれば、上記の撥液膜の形成方法を用いることにより、ノズルプレートに耐久性に優れた撥液膜を容易に形成することができる。更に、本発明の撥液膜の製造装置によれば、耐久性に優れた撥液膜を容易に形成することができる。
本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。
図3は液体吐出ヘッドの例であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドと称する。)Uを構成している、ノズルプレート1、ボディプレート2、圧電素子3を模式的に示している。
ノズルプレート1には、インク吐出のためのノズル孔11を複数配列してあり、ノズル孔11の吐出口がある吐出面12には、撥液膜45が設けてある。また、ボディプレート2には、ノズルプレート1を貼り合わせることで、ノズル孔11の開口である吐出口から吐出される液体を供給する圧力室となる圧力室溝24、インク供給路となるインク供給路溝23、共通インク室となる共通インク室溝22、及びインク供給口21が形成されている。
そして、ノズルプレート1のノズル孔11とボディプレート2の圧力室溝24とが一対一で対応するようにノズルプレート1とボディプレート2とを貼り合わせることで流路ユニットMを形成する。ここで、以後、上記で説明に使用した圧力室溝、供給路溝、共通インク室溝の各符号はそれぞれ圧力室、供給路、共通インク室にも使用する。
図4は、この記録ヘッドUにおけるノズルプレート1のY−Y’、及びボディプレート2のX−X’の位置での断面を模式的に示している。図4が示しているように、流路ユニットMに圧電素子3をインク吐出用アクチュエータとしてボディプレート2のノズルプレート1を接着する面と反対の各圧力室24の底部25の面に接着することで、記録ヘッドUが完成する。この記録ヘッドUの各圧電素子3に駆動パルス電圧が印加され、圧電素子3から発生する振動が圧力室24の底部25に伝えられ、この底部25の振動により圧力室24内の圧力を変動させることでノズル孔11からインク滴を吐出させる。
図5は、ノズルプレート1が備えている一つのノズル孔11の周辺部を示している。ノズル孔11は、小径部14と大径部15とで構成され、小径部14の液滴を吐出する吐出口13がある吐出面12には、撥液膜45が設けてある。
Siからなるノズルプレート1のノズル孔11を製造すること(ノズル形成工程)に関して図6、図7に沿って説明する。大径部15及び小径部14は、それぞれSi基板30の対向する面から形成する。
まず大径部15の形成に関して図6に沿って説明する。Si基板30に大径部15を形成する方法は、例えば、後述する小径部14と同じくエッチングとデポジションとを交互に繰り返す異方性エッチング方法を用いることができるが、これに限定されない。この異方性エッチング方法によるエッチングを行う際のエッチングマスクとなるSiOからなる熱酸化膜32、31を両面に設けてあるSi基板30を準備する(図6(a))。
次に大径部15を形成する側の熱酸化膜32の面にフォトレジスト34を塗布(図6(b))後、大径部15を形成するためのフォトレジストパターン34aを形成する(図6(c))。フォトレジストパターン34aをエッチングマスクとして、例えばCHFを用いたドライエッチングにより熱酸化膜パターンを形成し(図6(d))、これを異方性エッチング方法におけるエッチングマスクパターン32aとする。
フォトレジストパターン34aを除去後(図6(e))、エッチングとデポジションとを交互に繰り返す異方性エッチング方法より大径部15を形成する(図6(f))。異方性エッチング方法を行うエッチング装置は、ICP型RIE装置が好ましく、例えば、エッチング時のエッチングガスとして、6フッ化硫黄(SF)、デポジション時のデポジションガスとしてフッ化炭素(C)を交互に使用する。この後、エッチングマスクパターン32aを除去して大径部15が完成する(図6(g))。尚、大径部15を形成する方法を上記ではエッチングとデポジションとを交互に繰り返す異方性エッチング方法としたが、これに限定されない。また、大径部15の深さ(長さ)は、所定の深さとなるように、予め大径部15を形成する方法、装置を用いて実験等を行うことで形成条件を決めればよい。
次に、小径部14の形成に関して図7に沿って説明する。小径部14は大径部15と同様に、例えばエッチングとデポジションとを交互に繰り返す異方性エッチング方法を用いて形成することができる。
図7(a)に示す大径部15が形成されたSi基板30において、小径部14を形成する側の熱酸化膜31の面にフォトレジスト44を塗布(図7(b))後、小径部14を形成するためのフォトレジストパターン44aを形成する(図7(c))。フォトレジストパターン44aをエッチングマスクとして、熱酸化膜パターンを形成し(図7(d))、これを異方性エッチング方法におけるエッチングマスクパターン31aとする。フォトレジストパターン44aを除去後(図7(e))、エッチングとデポジションとを交互に繰り返す異方性エッチング方法により小径部14を大径部15に貫通するまで形成する(図7(f))。この後、エッチングマスクパターン31aを除去する(図7(g))。
以上のようにして、液体を吐出する小径部14及び大径部15で構成するノズルを備えたSi基板30を得ることができる。尚、小径部14の形成と大径部15の形成の順は、大径部15を先としても良い。
次に、撥液膜45に関して説明する。図5に示すノズルプレート1の吐出口13がある吐出面12に撥液膜45を設ける。撥液膜45を設けることで、例えばインクが吐出面12に馴染むことで吐出口13からの染み出しや広がりを抑制することができ、インクの直進性が損なわれないため良好な印刷品質を得ることが出来る。
撥液膜45を形成する蒸着原料は、フッ素含有有機系撥液材料が挙げられ、具体的には、フルオロアルキルシラン混合酸化物であるメルクジャパン社のEvaporation substance WR1及びWR4(真空蒸着用撥液膜材料。以降、撥液膜材料、WR1、WR4とも称する。)がある。WR1は、酸素と反応することにより撥液性を示す材料であって、例えばSi基板にWR1による撥液膜を形成する場合の下地としてSiO膜を予め形成しておくことが好ましい。WR1及びWR4により形成される膜は、水以外にエタノール等のアルコール、エチレングリコール(ポリエチレングリコールを含む)、シンナー及び塗料等の有機溶剤に対して撥液性を示す。
撥液膜材料WR4を用いてノズルプレート1に撥液膜を設けることに関して以下に説明する。撥液膜材料WR4は、真空蒸着法により蒸発させSi基板30に成膜することができ、Si基板30に撥液膜を形成する製造装置である蒸着装置Aの例を図1に示す。
51は真空槽、53は加熱用ヒーター(基板加熱手段)や冷却用流水パイプ(基板冷却手段)を内部に備えた基板フォルダ、30は被蒸着物である小径部14及び大径部15で構成するノズルが形成されたSi基板、55はSi基板30を蒸着する際に開いておくシャッタ、60は蒸着源、70は排気装置(図示しない真空ポンプ、ターボ分子ポンプ等)に通じる排気口を示す。蒸着源60とSi基板30との間には、本発明に係わる空間分離手段である両端が開放された円筒形状の遮蔽筒57を設けてある。
遮蔽筒57は、蒸着源60と、蒸着源60に対向して配置されているSi基板30とにより挟まれている空間を、この空間を取り巻く周囲の空間から分離するものである。遮蔽筒57のSi基板30側の端は、Si基板30の被蒸着面より離れ、遮蔽筒57の蒸着源60側の端は、蒸着源60が固定されている真空槽51の底面より離れるように真空槽51内に固定されている。
蒸着源60の例を図2に示す。図2(a)に示す蒸着源は、撥液膜材料を金属ポーラス体に含ませたペレット状の蒸着物質61を収容している、タングス線等の抵抗加熱線で形成された籠状の容器63(蒸発手段)である。また、図2(b)に示す蒸着源60は、撥液膜材料を金属ポーラス体に含ませたペレット状の蒸着物質61を収容している、タンタル線等の抵抗加熱線67を周囲に巻いた石英等からなるるつぼ65(蒸発手段)である。この例ように、撥液膜材料を直接加熱しない蒸着源にすることにより、撥液膜材料であるフッ素含有有機物を真空中で加熱した際にフッ素が解離してしまうことを回避することができる。
蒸着装置Aを用いて、Si基板30に撥液膜を形成すること(撥液膜形成工程)に関して以下に説明する。
基板ホルダ53にSi基板30を固定し、基板ホルダ53に内部に設けてあるヒーターによりSi基板を加熱する(基板加熱工程)。Si基板の加熱は、撥水膜をSi基板に密着性がより良好に成膜する上で好ましい。後述の蒸着工程におけるSi基板30の温度は、300℃以下が好ましい。300℃を超えると、Si基板30に蒸着された撥液膜材料が再び蒸発してしまうので良好な膜を効率良く製造できなくなってしまう。下限温度は、撥液膜の密着性より50℃程度が好ましい。
次に、上記で説明した、例えばタングス線等の抵抗加熱線で形成された籠状の容器63に電流を流して、容器63に収容している蒸着物質61を加熱し、蒸着原料である撥液膜材料を蒸発させる(蒸発工程)。
蒸着物質61を加熱すると蒸着物質61に含まれた撥液膜材料は蒸発し、撥液膜材料は、遮蔽筒57内を飛翔してSi基板30に到達し、Si基板30に撥液膜が形成される(蒸着工程)。撥液膜材料が蒸発し、Si基板に蒸着される間、撥液膜材料の蒸気となって飛翔する飛翔空間は、遮蔽筒57があるため、その蒸気が真空槽51内に一気に広がることがない。このため、遮蔽筒57がないために蒸気が真空槽51内に一気に広がり、真空槽51内の真空度が低下することにより真空ポンプによる排気が進むことが生じない。よって、遮蔽筒57の内側の撥液膜材料の蒸気を含む飛翔空間の圧力を、遮蔽筒57の周囲の周囲圧力、すなわち真空ポンプの排気口70が臨む真空槽51内の圧力より高く、安定に保つことができる。このため、Si基板30への撥液膜の形成を安定して効率良く行うことができる。
遮蔽筒57のSi基板30側の端は、Si基板30の被蒸着面より離れている。このようにすることにより、Si基板30の被蒸着面近傍の真空度を遮蔽筒57より外側の真空槽51の真空度近くにすることができ、Si基板30に撥液膜となる蒸着物が付着する際の蒸着物の平均自由工程を長くできる。よって、エネルギーが高い蒸着物がSi基板30に蒸着されることにより、Si基板に形成される撥液膜は、ひびや曇りの無い滑らかで密着性がよいものとすることができる。
遮蔽筒57の蒸着源60側の端は、蒸着源60が固定されている真空槽51の底面より離れるように真空槽51内に固定されている。このようにすることにより、蒸着物質61の加熱による放出ガス(アウトガス)を蒸着源60から効率良く排気することができ、放出ガスと蒸着物との反応が抑えられて良好な撥液膜を形成することができる。
また、遮蔽筒57の内径は、被蒸着物であるSi基板30の外接円より大きくするのが好ましい。このようにすることによりSi基板30にムラ無く撥液膜を形成することができる。尚、遮蔽筒57の断面形状は、円形状に限定されることは無く、四角形や六角形等としてもよい。
蒸着物質61を加熱して撥液膜材料を蒸発させて、Si基板に撥液膜を形成する際、真空ポンプの排気口70が臨む真空槽51の真空度は、10−3Pa台が好ましく、この時の遮蔽筒57内の圧力は、この2倍以上10倍以下が好ましい。2倍未満の場合、撥液膜材料の蒸気圧が低くすぎて成膜レートが低下し製造効率が低下してしまい、10倍を超えると成膜レートが高すぎて例えば緻密な膜とならない等の膜質が低下してしまう。
また、成膜後の大気開放の際は、Si基板30の温度は、100℃以下が好ましい。100℃を超えた状態で大気開放すると、形成された撥液膜が酸化して炭化等の変質が生じる。尚、温度の下限は、取り扱いを考慮して適宜決めればよい。加熱して成膜したSi基板30を冷却する(冷却工程)際は、基板ホルダ53の内部に冷却用流水パイプを設けて水を流す等により行うようにしても良いし自然冷却としてもよい。
上記で説明した撥液膜材料WR4の代わりに撥液膜材料WR1を使用する場合は、予めSi基板30の表面に酸化膜(SiO)を形成するのが好ましい。Si基板30の吐出面12に酸化膜を設ける方法は、例えば正珪酸四エチル(Si(OC)4:テトラエトキシシラン、TEOSとも称する。)のプラズマ合成による膜や熱酸化膜が挙げられ、この他、スパッタ法、ゾルゲル法によって作製してもよく、特にこれらに限定されない。
これまで説明したSi基板30に撥液膜45を形成した後、例えばダイシングソー等を用いて適宜Si基板30を切断・分離してノズルプレート1を得る。尚、Si基板30の切断は、撥液膜45の形成前としてもよい。
(実施例1)
図1に示すような蒸着装置Aを用いて、Si基板上にフッ素含有有機物の撥水膜を作製した。遮蔽筒57は、その下端が、蒸発源60が設けてある真空槽51の底面から5cmの高さになるように設けて蒸発源60の加熱によるアウトガスを排気できるように構成した。遮蔽筒57の長さは、Si基板30の被蒸着面から5cm下のところまでとし、Si基板30近傍は真空槽51の排気口70近傍の真空度とほぼ同じになるようにした。基板ホルダ53は、内部に基板加熱用ヒーターを備え、直径14cmとして4インチのSi基板30をセットし、遮蔽筒57の内側の直径は16cmとした。この構成で、予備実験より真空槽51の排気口70近傍の真空度が6.67×10−4Paの時、遮蔽筒57内の真空度は、蒸発物が無い(非蒸着時)とき1.06×10−3Pa、蒸発物がある(蒸着時)とき1.33×10−3Paであった。
撥液膜材料WR4を含ませたアルミナのポーラス体のペレット1個を蒸発物質61とした。蒸発源60の加熱方法は、図2(a)に示すφ1mmのタングステン線を用いた籠状のもので抵抗加熱(電流値15A)とした。蒸着装置Aは、真空ポンプとしてターボ分子ポンプと直結型ロータリーポンプとを用いて10−4Pa台まで排気した後、水晶式膜厚計でモニターして膜厚25nmの撥液膜を形成した。成膜時のSi基板30の温度は熱電対でモニターし90℃とし、成膜後、Si基板30の温度を40℃まで自然冷却した後、蒸着装置Aから取り出した。
(比較例1)
遮蔽筒57を設けない以外は同じ蒸着装置を使用した。蒸着源に配置した実施例1と同じ撥液膜材料WR4の含むペレット1個で形成できた撥液膜の膜厚が約5nmにしかならなかった。このため、蒸着作業を5回繰り返すことで実施例1と同等の膜厚の撥液膜を得た。
(撥液作用のテスト)
撥液膜材料WR4の仕様より、成膜したSi基板30を大気中で24時間放置した後、以下の試験を実施例1及び比較例1で製造した撥液膜に対して行った。
純水を染み込ませたキムワイプを100g/cmの圧力でSi基板30に形成した撥液膜に押し付けて、10回擦って接触角を測定し、これを10回毎繰り返した。この結果を表1に示す。
Figure 2009286036
表1より、撥液膜の耐久性は、比較例1で形成した撥水膜における接触角は次第に低下してしまうのに対して、実施例1で形成した撥水膜における接触角は低下がほとんど無く良好であることがわかり、遮蔽筒57の有効性が確認できた。
(実施例2)
蒸着源60以外は実施例1と同じ蒸着装置を使用した。撥液膜材料WR1を含ませたアルミナのポーラス体のペレット1個を蒸発物質61とした。蒸着源60の加熱方法は、図2(b)に示す石英るつぼ65の周囲にφ0.5mmのタンタル線67を巻いてこれをヒータ(電流値7A)にして石英るつぼ65を加熱した。被蒸着基板は熱酸化膜(SiO)付きのSi基板30を用いた。真空度について、予備実験より確認した所、真空槽51の排気口70近傍の真空度が6.67×10−4Paの時、遮蔽筒内の真空度は、蒸発物が無い(非蒸着時)とき9.33×10−4Pa、蒸発物がある(蒸着時)とき5.33×10−3Paであった。
実施例1と同じく、10−4Pa台まで排気した後、水晶式膜厚計でモニターして20nmの撥液膜を形成した。成膜時のSi基板温度は熱電対でモニターし270℃とし、成膜後、Si基板温度を80℃まで自然冷却した後、蒸着装置Aから取り出した。
(比較例2)
遮蔽筒57を設けない以外は同じ蒸着装置を使用した。蒸発源に配置した実施例2と同じペレット1個では形成できた撥液膜の膜厚が5nmにしかならなかった。このため、るつぼ65にペレットを4個入れて新たに膜形成を行い実施例2と同等の膜厚の撥液膜を得た。このとき、真空度は極度に悪くなり非常に不安定であった。
(撥液作用のテスト)
撥液膜材料WR1の仕様より、成膜したSi基板30を大気中で24時間放置した後、以下の試験を実施例2及び比較例2で製造した撥液膜に対して行った。
純水を染み込ませたキムワイプを100g/cmの圧力でSi基板30に形成した撥液膜に押し付けて、10回擦って接触角を測定し、これを10回毎繰り返した。この結果を表2に示す。
Figure 2009286036
表2に示すように、撥液膜の耐久性は、比較例2で形成した撥水膜における接触角は次第に低下してしまうのに対して、実施例2で形成した撥水膜における接触角は低下がほとんど無く良好であることがわかり、遮蔽筒57の有効性が確認できた。
ノズルプレートに撥液膜を設ける蒸着装置の例を示す図である。 蒸着装置に設ける蒸発源の例を示す図である。 液体吐出ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを示す図である。 インクジェット式記録ヘッドの断面を模式的に示す図である。 ノズルプレートのノズル孔周辺の断面を示す図である。 ノズルプレートの大径部の製造工程を説明するためのフロー図である。 ノズルプレートの小径部の製造工程を説明するためのフロー図である。
符号の説明
1 ノズルプレート
2 ボディプレート
3 圧電素子
11 ノズル孔
12 吐出面
13 吐出口
14 小径部
15 大径部
21 インク供給口
22 共通インク室(溝)
23 インク供給路(溝)
24 圧力室(溝)
30 Si基板
31、32 熱酸化膜
31a、32a エッチングマスクパターン
34、44 フォトレジスト
44a、34a フォトレジストパターン
45 撥液膜
53 基板ホルダ
55 シャッタ
57 遮蔽筒
60 蒸着源
61 蒸着物質
U インクジェット式記録ヘッド

Claims (9)

  1. フッ素含有有機系撥液材料を蒸着原料とし、真空蒸着法により、蒸着源に対向する位置に配置された基板の上に前記蒸着原料の薄膜を形成する撥液膜の製造方法において、
    前記蒸着原料を蒸発させる蒸発工程と、
    前記蒸発工程で蒸発させた前記蒸着原料を前記基板に蒸着する蒸着工程と、を有し、
    前記蒸着工程において、前記蒸着源から前記基板に向かって前記蒸着原料が飛翔する飛翔空間における圧力が、該飛翔空間を取り巻く周囲空間における圧力より高いことを特徴とする撥液膜の成膜方法。
  2. 前記飛翔空間における圧力が、前記周囲空間における圧力の2倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の撥液膜の成膜方法。
  3. 前記蒸着工程において、前記基板の温度を300℃以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥液膜の成膜方法。
  4. 前記基板に前記蒸着原料の薄膜を形成した後、前記基板を冷却する冷却工程を有し、
    前記冷却工程で前記基板の温度が100℃以下となった以降に、前記基板を大気開放することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の撥液膜の成膜方法。
  5. 板部材に液体を吐出するノズルを形成するノズル形成工程と、
    前記ノズル形成工程で形成された前記ノズルの吐出口がある面に請求項1乃至4の何れか一項に記載の撥液膜の成膜方法により撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、を有することを特徴とする液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法。
  6. 前記板部材は、Siを材料とする板、又は表面にSiO膜を備えたSiを材料とする板であることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド用ノズルプレートの製造方法。
  7. フッ素含有有機系撥液材料を蒸着原料とし、真空蒸着法により、蒸着源に対向する位置に配置された基板の上に前記蒸着原料の薄膜を形成する撥液膜の製造装置において、
    前記蒸着原料を蒸発させる蒸発手段と、
    前記蒸発手段により蒸発させた前記蒸着原料が前記基板に向かって飛翔する飛翔空間における圧力を、該飛翔空間を取り巻く周囲空間における圧力より高くする空間分離手段と、を備えていることを特徴とする撥液膜の製造装置。
  8. 前記空間分離手段は、前記蒸着源に対向する端と前記基板に対向する端とが開放され、前記飛翔空間を包む筒形状部材であることを特徴とする請求項7に記載の撥液膜の製造装置。
  9. 前記筒形状部材の前記蒸着源に対向する端は、該蒸着源が固定されている固定面より離れ、該筒形状部材の前記基板に対向する端は、前記基板の蒸着面より離れていることを特徴とする請求項8に記載の撥液膜の製造装置。
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WO2022044245A1 (ja) 2020-08-28 2022-03-03 コニカミノルタ株式会社 ノズルプレート及びインクジェットヘッド

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